JP5550846B2 - 荷役機械及び荷役機械の制御方法 - Google Patents

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Description

本発明は、荷役物を昇降して搬送するための荷役機械に関し、特にエアー式の駆動源によって昇降機構を駆動する荷役機械に関する。
従来から、工場の生産ラインあるいは倉庫などでは、比較的重量のある機材の脱着作業に伴う搬送、半製品荷役物の次工程への搬送、また出荷製品の運搬など多種多様な搬送が行われている。
こうした各種荷役物の搬送作業では、労力軽減化と安全化を図り、かつ、小回りが利き機動性と簡便さを備えた荷役機械が使用されている。
この荷役機械101の基本構造は、例えば図6に示すように、底面または台車から垂直に立ち上げた支柱を有する本体103を備えている。
荷役機械101の本体103の内部にはエアーシリンダ120が配設され、このエアーシリンダ120のピストンロッド120aの先端部には、昇降機構105を構成するアーム104(104a〜104c)がリンク機構によって連結されている。
このリンク機構はアーム104の上昇下降動作時の力点となるとともに、アーム104は本体103内部で支持されこの支持部がアーム104の支点となっている。
そして、先端部側のアーム104cには、負荷バランスボタン109a、無負荷バランスボタン109b、把持ボタン109c、把持解除ボタン109dを有する操作ボックス109が設けられている。また、アーム104cの先端部には、荷役物100を保持するための把持機構108が設けられている。
エアーシリンダ120にはエアー給排気用の制御回路123が接続配管され、操作ボックス109からの上昇・下降指令に応じて、エアー源121から圧力比例制御弁122を介してエアーシリンダ120へエアーの給排気処理を行うように構成されている。
この場合、例えば、操作グリップ(図示せず)を上方向に操作すると、エアーシリンダ120には制御回路123を介してエアーが給気され、これによりエアーシリンダ120のピストンロッド120aは図中下方向に動作し、アーム104c先端部の把持機構108で把持された荷役物100は、てこの原理で上方向に移動する。
ところで、このような荷役機械101としては、作業者130が直接荷役物100を掴んで無重力感覚で自在に移動・移載できるバランスモードという制御モードが装備されているものがある。
バランスモードにおける回路動作を図6を使って説明する。
バランスモードでは、荷役機械101は、支点Aに対してアーム104の重量及び把持された荷役物100の重量による反時計回り方向の力のモーメントM1と、エアーシリンダ120のピストンロッド120aに支持された力点Bによる時計回り方向の力のモーメントM2を一致させることにより、アーム104が停止した状態(以下、バランスモードという。)になる。
バランスモードでは、エアーシリンダ120内のエアー圧が常に一定圧になるように、制御回路123によって圧力比例制御弁122の出力エアー圧が制御されている。このバランス状態で作業者130が荷役物100に力を加えると、これら両方の力のモーメントM1、M2のバランスが崩れ、作業者130が力を加えた方向に荷役物100を自在に動かすことが可能になる。
例えば、荷役機械101で荷役物100を搬送する場合の操作方法について説明すると、把持機構108によって荷役物100を把持した後、作業者130が負荷バランスボタン109aを押すと、制御回路123は圧力比例制御弁122の入力ポート(図示せず)に荷役物100を把持する際のエアーシリンダ圧(負荷バランス圧)を設定し、荷役機械101を負荷バランスモードに設定する。
負荷バランスモードで荷役物100を所定の場所に搬送し荷役物100を着地させた後、無負荷バランスボタン109bを押すと、荷役機械101は無負荷バランスモードに設定される。
この状態で把持解除ボタン109dが押下されると、荷役物100はリリース(把持解除)されるが、荷役機械101が無負荷バランスモードに設定されているため、荷役機械101は上昇することなくその場で停止状態を保つ。
ところで、バランスモードで作業を行う場合は、クレーンモードによる作業と比較すると、素早い搬送作業ができること、さらに位置決め作業が容易になるなどのメリットがある反面、操作力が重い(大きい)荷役機械101を使って長時間バランスモードで作業を行うなどの場合は、作業者130が大きな疲労感を感じたり、場合によっては筋肉痛などを引き起こす可能性もある。
また、近年は、高齢者及び女性による搬送作業も増えてきているため、バランスモード時の操作力は極力軽くしたい等の要望が増えてきている。
以上のような理由・要望もあって、バランスモードでの荷役物100の搬送作業を行う場合は、バランス時の操作力を極力小さくする必要がある。
バランスモード時では、搬送する荷役物100の重量が軽量で、荷役機械101のリンク機構部に摩擦等がない理想的な状態にあれば、比較的小さな操作力で荷役物100を動かすことができるが、実際の荷役機械101では、エアーシリンダ120が動作するときのピストン120bとシリンダチューブ内壁120cの摺動摩擦、各アーム104a〜104cのリンク機構部の摩擦、搬送する荷役物100及び荷役機械101のアーム104の慣性などがあるため、ある程度の操作力が必要となる。
加えて、荷役物100の重量が重くなり大型の荷役機械101が必要になってくると、特に大きな操作力を要することになる。
荷役機械101のバランスモード時の操作力が軽い場合、作業者130が長時間に渡って荷役機械101を操作しても疲労は出にくいが、操作力が重くなってくると、作業時間が延びてしまうだけではなく、上述したように作業者130の健康上の問題等も発生する可能性も出てくる。
このバランスモード時の操作力を軽減するためには、上記の操作力を重くしている要因についてそれぞれ検討を行い改良を行う必要がある。
近年では、使用部品の改良・見直し、品質向上等により操作力の課題は改善されてきてはいるが、荷役機械の構造上の問題、製造コストの問題、物理的な問題等もあって、従来の荷役機械では操作力を軽減していくことは容易ではなかった。
我々は、上述した操作力の問題を解決するため、特願2005−285975号(特開2007−91439号公報:特許文献1)において、力センサを利用したバランス時の操作力軽減機能を発明し提案した。
この発明では、バランスモード時に作業者が荷役機械の操作ハンドルに加えた力を力センサで検出し、シリンダ圧を調整して操作力を軽減するように制御している。そして、この操作力軽減機能を荷役機械に装備することによって、バランス時の操作力を大幅に軽減することができた。
しかし、この操作力軽減機能の制御方式については以下の問題があった。
すなわち、この従来技術では力センサを操作ハンドルに取り付けてバランスモード時の操作力を検出しようとしたが、操作ハンドル以外の場所を把持して操作した場合(例えば、荷役機械のアームを持って操作する場合)には、操作力が検出できなくなるため、操作力軽減機能が有効に機能しないという問題がある。
また、バランスモード時の力センサを含めた操作力検出部(力センサ部)は、操作力を精度良く検出でき、かつ、応答性に優れ、さらに長期間の使用に耐えうる高品質の機械的構造が必要になるため、製造原価が高いという問題がある。
特開2007−91439号公報
本発明は、前記課題を解消するためになされたもので、低コストでバランスモード時の操作力を確実に軽減することができる荷役機械を提供することを目的とする。
上記目的を達成するためになされた本発明は、バランスモードに設定可能なエアー式の荷役機械であって、上下方向及び水平方向に移動自在に構成され、所定の荷役物を保持する保持機構を有する昇降機構と、前記昇降機構をエアーの圧力によって上下方向に駆動するエアーシリンダと、所定のエアー源から供給されるエアーの圧力を所定の圧力に調整して前記エアーシリンダに供給する圧力比例制御弁と、前記昇降機構の上下方向についての加速度の向きと加速度の大きさの情報を検出するための加速度情報検出用センサとを備え、前記バランスモードにおいて、前記荷役物を保持した前記昇降機構を作業者が上方向又は下方向に移動させた場合に前記加速度情報検出用センサからの情報に基づき得られた当該昇降機構及び当該荷役物の加速度の向きと加速度の大きさの情報と、所定のバランス圧に設定された前記エアーシリンダ内の圧力情報とに基づいて、前記加速度の向きに前記昇降機構を付勢動作させるように、以下の式に従い、前記エアーシリンダを新たなバランス圧に設定すべく当該エアーシリンダに対する前記圧力比例制御弁の出力エアー圧力を調整するように構成されているものである。
P’=P(1+K・a)
(式中、Pはバランスモード設定時における前記エアーシリンダ内のバランス圧、P’は新たに設定する前記エアーシリンダ内のバランス圧、aは前記荷役物を保持した前記昇降機構を作業者が上方向又は下方向に移動させた場合に前記加速度情報検出用センサからの情報に基づき得られた当該昇降機構及び当該荷役物の加速度の向きと加速度の大きさ、Kは0より大きく1/G以下の定数で、Gは重力加速度である。
また、本発明では、前記エアーシリンダ内の圧力を検出する圧力センサを有し、前記バランスモードにおいて、前記加速度検出用センサにて得られた情報及び前記圧力センサにて得られた圧力情報に基づいて、前記エアーシリンダに対する前記圧力比例制御弁の出力エアー圧力を調整するように構成されている場合にも効果的である。
また、本発明では、前記保持機構に、前記加速度情報検出用センサとして、上下方向の加速度を検出する加速度センサが設けられている場合にも効果的である。
また、本発明では、前記昇降機構が荷役物昇降用のアームを有し、当該アームに、前記加速度情報検出用センサとして、ジャイロセンサ又は傾斜センサが設けられている場合にも効果的である。
また、本発明では、前記エアーシリンダのピストンロッドに、前記加速度情報検出用センサとして、位置センサ又は速度センサが設けられている場合にも効果的である。
一方、本発明は、上述したいずれかの荷役機械を制御する方法であって、前記昇降機構によって荷役物を保持し当該荷役機械をバランスモードに設定して前記エアーシリンダを所定のバランス圧に設定した状態において、作業者が前記昇降機構を上方向又は下方向に移動させた場合に、前記加速度情報検出用センサからの情報に基づき当該昇降機構及び当該荷役物の加速度の向きと加速度の大きさを検出し、検出された前記加速度の向きに前記昇降機構を付勢動作させるように、以下の式に従い、前記エアーシリンダに対する前記圧力比例制御弁の出力エアー圧力を増減させて新たなバランス圧に設定する荷役機械の制御方法である。
P’=P(1+K・a)
(式中、Pはバランスモード設定時における前記エアーシリンダ内のバランス圧、P’は新たに設定する前記エアーシリンダ内のバランス圧、aは前記荷役物を保持した前記昇降機構を作業者が上方向又は下方向に移動させた場合に前記加速度情報検出用センサからの情報に基づき得られた当該昇降機構及び当該荷役物の加速度の向きと加速度の大きさ、Kは0より大きく1/G以下の定数で、Gは重力加速度である。
本発明の場合、バランスモードにおいて、荷役物を保持した昇降機構を作業者が上方向又は下方向に移動させた場合に加速度情報検出用センサからの情報に基づき得られた当該昇降機構及び当該荷役物の加速度の向きと加速度の大きさの情報と、エアーシリンダ内の圧力情報に基づいて、加速度の向きに昇降機構を付勢動作させるように、エアーシリンダに対する圧力比例制御弁の出力エアー圧力を調整するようにしたことから、作業者が、昇降機構によって動く部分(操作部、操作ハンドル、荷役物、アーム等)のいずれの部分を把持した場合であっても、確実に操作力を軽減させることができる。
したがって、本発明によれば、バランス機能を効果的に活用することが可能になり、幅広い作業に対応させることが可能になる。
また、本発明において、加速度情報検出用センサとして、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)技術による小形で低コスト加速度センサを用いるようにすれば、操作力軽減機能を有する荷役機械を低コストで提供することができる。
本発明によれば、バランスモードにおける操作力を確実且つ大幅に軽減することができるため、作業者は長時間バランスモードで作業を行っても疲労感を感じることがなく作業を行うことができる。
本発明に係る荷役機械の実施の形態の外観構成を示す概略図 同荷役機械の制御系を示すブロック図 本発明による操作力軽減機能の基本原理を説明するための概念図 本発明に係る荷役機械の他の実施の形態の制御系を示すブロック図 本発明に係る荷役機械の更に他の実施の形態の制御系を示すブロック図 従来技術に係る荷役機械の制御系を示すブロック図
以下、本発明の好ましい実施の形態を図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明に係る荷役機械の実施の形態の外観構成を示す概略図、図2は、同荷役機械の制御系を示すブロック図である。
図1に示すように、本実施の形態の荷役機械1は、鉛直に立設された支柱2を有し、この支柱2の上部に制御ボックスからなる本体3が設けられている。
図2に示すように、この本体3内には、従来技術と同様のエアーシリンダ20が設けられている。このエアーシリンダ20は、エアー配管部28、圧力比例制御弁22、エアー配管部27を介してエアー源21に接続されている。
荷役機械1は、荷役物10を昇降搬送するための昇降機構5を備え、この昇降機構5は、第1〜第3のアーム4a〜4cから構成されるアーム4を有している。ここで、第1のアーム4aは、上下方向に所定の角度回動可能な状態で、てこを構成するように支点Aにおいて支持され、エアーシリンダ20のピストンロッド20aによって駆動されるように力点Bにおいてリンク機構により連結されている。
また、第1のアーム4aは、支柱2の中心軸を中心にして水平方向に旋回するように支持されている。
第1のアーム4aの先端部には、第2のアーム4bが、関節部6を介して常に水平状態を保持する状態で連結され、さらに、第2のアーム4bの先端部(下端部)には、鉛直方向に延びる第3のアーム4cが水平方向に回転可能な状態で連結されている。
また、第3のアーム4cの下側部分には、操作グリップ90aを有する操作ボックス9が取り付けられている。
ここで、操作ボックス9には、負荷バランスボタン9a、無負荷バランスボタン9b、把持ボタン9c、把持解除ボタン9dが設けられている。
これら負荷バランスボタン9a、無負荷バランスボタン9b、把持ボタン9c、把持解除ボタン9dは、制御回路23に接続されており、それぞれオン・オフ信号を制御回路23に送出するように構成されている。
制御回路23は、マイクロコンピュータ、メモリ等を有して構成されている。この制御回路23は、D/A変換器26を介して上記圧力比例制御弁22に電気的に接続され、後述するように、圧力比例制御弁22に対して種々の制御信号を送出して圧力比例制御弁22を制御する。
さらに、第3のアーム4cの下端部には、例えばエアーの吸引により荷役物10を保持(把持)する把持機構(保持機構)8が取り付けられている。
この把持機構8は、操作ボックス9に設けられた把持ボタン9c又は把持解除ボタン9dを操作することによって荷役物10を把持し又は把持を解除するように構成されている。
本実施の形態においては、エアー源21から供給されるエアーの圧力を、制御回路23からの命令により圧力比例制御弁22によって調整してエアーシリンダ20に出力するように構成されている。
また、圧力比例制御弁22の後段には、圧力センサ24が設けられている。この圧力センサ24は、圧力比例制御弁22とエアーシリンダ20との間のエアー配管部28内の圧力を測定するもので、A/D変換器25を介して制御回路23に電気的に接続され、測定した圧力データを制御回路23に送出するようになっている。
本実施の形態においては、把持機構8に、上下方向の加速度を検出する加速度センサ11が設けられている。この加速度センサ11は、A/D変換器25を介して制御回路23に電気的に接続され、検出した加速度データを制御回路23に送出するようになっている。
図3は、本発明による操作力軽減機能の基本原理を説明するための概念図である。
ここでは、説明を簡単化するため、理想的な荷役機械を想定して説明を行うこととする。
すなわち、以下説明を行う荷役機械1は、エアーシリンダ20内には摺動摩擦はなく、また、アーム4の関節部その他のメカ部は摩擦が全くない理想的な機構とし、荷役機械1のアーム4の重量は図中、作用点Cに集中しているとする。
また、圧力比例制御弁22からエアーシリンダ20内へのエアー供給は遅れることなく瞬時に行うことができるとし、さらに圧力比例制御弁22の入力設定圧が一定の場合、如何なる装置状態においてもエアーシリンダ20内のエアー圧を一定に保つことができると仮定する。
まず、エアーシリンダ20内のエアー圧をP(負荷バランス圧)に設定し負荷バランスモードになったとすると、支点Aにおいて時計回り方向と反時計回り方向の力のモーメントが等しくなることから次式が成り立つ。

(Ma+Mw)・G・La=P・S・Lb (G:重力加速度)
Mt・G・La=P・S・Lb …式(1)
ここでは、アーム4の有効長をLa、本体3内のアーム4の有効長をLbとし、荷役物10の重量をMa、アーム4の重量をMwとし、Mt=Ma+Mwとする。
このバランスモードにおいて、作業者30が荷役機械1で把持した荷役物10に力を加えて上方向に加速度aで動かそうとすると、次式で表される力Fが必要になる。

F=(Ma+Mw)・a=Mt・a …式(2)
また、このバランスモードにおいて、仮にエアーシリンダ20内の圧力をΔPだけ上昇させた場合、アーム4先端の作用点Cに発生する力をF1とすると、F1は次式で表される。

F1・La=Lb・ΔP・S
F1=ΔP・S・Lb/La …式(3)
エアーシリンダ20内のエアー圧をΔP上昇させた状態において、作業者30が荷役物10に力を加えて加速度aで上昇させるのに必要な力をF2とすると、F2は、式(2)、式(3)より、次式で表される。

F=F1+F2=Mt・a
F2=Mt・a−F1
=Mt・a−ΔP・S・Lb/La …式(4)

式(4)において、エアーシリンダ20内の圧力上昇分ΔPを次のように設定する。

ΔP=k・Mt・a(kは比例定数) …式(5)

式(5)を式(4)に代入すると、F2は次式で表される。

F2=Mt・a−k・Mt・a・S・Lb/La
=Mt・a(1−k・S・Lb/La) …式(6)

式(6)において、操作力F2を限りなく0にするためには、

1−k・S・Lb/La=0 …式(7)

が成立すればよい。
式(7)から式(5)で設定した比例定数kを求めると、

k=La/(S・Lb) …式(8)

になる。
式(1)より、アーム4の重量と荷役物10の重量を加算したトータルの重量Mtは次式で表される。

Mt=P・S・Lb/(G・La) …式(9)

エアーシリンダ20内の圧力をバランスモード時のエアー圧から増減することにより、バランスモードにおける操作力F2を限りなく0にすることができると考える。
バランスモード時にエアーシリンダ20内に設定するエアー圧増減分ΔPは、式(8)、式(9)を式(5)に代入して次式で求めることができる。

ΔP=k・Mt・a={La/(S・Lb)}{P・S・Lb/(G・La)}・a
=P・a/G …式(10)

式(10)は、操作力を軽減するために設定するバランスモード時のエアーシリンダ20の圧力上昇分ΔPは、アーム4先端の加速度及びバランスモード時のエアーシリンダ20内の圧力に比例させて設定すれば良いことを示している。
したがって、式(10)を、比例定数Kを使って次式のように書き換える。

ΔP= K・P・a(K=0〜1/G) …式(11)

式(11)において、K=0の場合はΔP=0になるため、上記式(4)よりF2=Mt・aとなり、操作力軽減機能は無効になる。
一方、K=1/Gとすると、ΔP=P・a/G、F2=0となり、バランス時の操作力を0(理想的な状態)に設定することができることを示している。
もっとも、実際の作業では、操作力が軽すぎた場合、昇降機構5が僅かな力で動いてしまうことになるため、かえって使いづらくなることも考えられる。
そのため、作業内容に応じてKの値を設定しバランス時の操作力を調整したり、また、検出した加速度値を有効として処理するか否かの判断する閾値を設けたりする必要がある。
以下、本発明の具体例を図2、図4及び図5に示す実施の形態に即して説明する。
図2に示す実施の形態の荷役機械1においては、把持機構8に設けた加速度センサ11によって荷役物10の上下方向の加速度を検出し、さらに、エアーシリンダ20内のエアー圧については、エアーシリンダ20と圧力比例制御弁22を接続するエアー配管部28に設けた圧力センサ24によってエアーシリンダ20への供給エアー圧(≒エアーシリンダ20内のエアー圧)を検出している。
この場合、圧力センサ24からのシリンダ圧の情報は、荷役物10の重量、荷役機械1の重量等の情報を等価なものとして検出している。
そして、加速度センサ11及び圧力センサ24で検出したセンサ情報は、A/D変換器25を介して制御回路23に読み込まれる。
圧力比例制御弁22への入力設定圧の設定は、D/A変換器26を介して行われる。この圧力比例制御弁22への入力設定圧を一定に保つと、エアーシリンダ20内のエアー圧はピストンロッド20aの位置に関係なく一定圧に保たれる。
そして、作業者30が操作ボックス9の負荷バランスボタン9aを押した場合には、エアーシリンダ20内のエアー圧は荷役物10を把持した状態でバランス状態が保てるように設定され、また、無負荷バランスボタン9bを押すと、荷役物10をリリースしているときにバランス状態になるように設定されるようになっている。
このような構成において、例えば荷役物10を把持して負荷バランスモードに設定されたと仮定する。
この状態において、作業者30が把持機構8又は把持した荷役物10等に力を加えて上下方向に操作すると、制御回路23は、把持機構8に装備した加速度センサ11からの出力情報により、把持機構8(又はアーム4)が動かされた上下方向の向きと、そのときの加速度の大きさを知ることができる。
ここで、この動作時に検出した加速度をaとし、エアーシリンダ20内の負荷バランス圧をPとすると、加速度検出時に圧力比例制御弁22を介して新たに設定するエアーシリンダ20内のエアー圧P’は、上記式(11)に基づき次式で表される。
この場合、加速度aは上昇方向に動いた場合は正値、下降方向に動かした場合は負値とする。

P’=P+ΔP
=P+K・P・a(但し、K=0〜1/G)
=P(1+K・a) …式(12)

式(12)において、例えば上昇方向に0.1[G]で動かす場合を想定すると、圧力比例制御弁22を制御することにより、このときの操作力を限りなく0に近づけようとした場合(K=1/G)、エアーシリンダ20内のエアー圧は次のように設定することになる。

P’=P(1+(1/G)・0.1G)=1.1×P …式(13)

式(13)は、昇降機構5によって荷役物10を0.1Gで上昇させる場合は、エアーシリンダ20内のバランス圧を1.1倍にすると、操作力を限りなく0にすることができることを示している。
従来の荷役機械では、作業者が荷役物を上昇方向に加速度0.1Gで動かそうとすると、理想的な荷役機械においてもMt(=Ma+Mw)×0.1Gの力を必要とするが、本実施の形態による荷役機械1では、荷役物10を上昇方向に同じ加速度で動かすために必要な操作力を、エアーシリンダ20内のエアー圧を上昇させることによって得ることができるため、初動時に作業者30が荷役物10又は把持機構8に対して僅かな力を加えれば、手を添えるだけで昇降機構5を所望の加速度で動かすことができることを示している。
ただし、以上の説明は理想的な荷役機械を想定して行ったもので、実際の荷役機械では、荷役機械各部の摩擦、制御処理のレスポンスに遅れ等があるため、上述したように操作力を全く0にすることはできない。しかし、実際の荷役機械でも本実施の形態の荷役機械1の構成により、バランスモード時の操作力は大幅に軽減できることを確認している。
以上述べたように本実施の形態によれば、バランスモードにおける操作力を大幅に軽減することができるめ、作業者は長時間バランスモードで作業を行っても疲労感を感じることがなく作業を行うことができる。
また、本実施の形態において使用する加速度センサ11は、MEMS技術による小形で低コストの部品によって構成することができるので、低コストで作業性の優れた荷役機械1を提供することができる。
さらに、従来の歪みゲージなどを使用した力センサによる操作力軽減機能の場合、例えば、操作ハンドルのように操作力を検出できる箇所を把持して動かす必要があるなどの使用条件による制限があったが、本実施の形態では、加速度センサ11は荷役機械1のアーム4が上下方向に動きさえすれば動き(加速度)を検出できるため、操作グリップ90a、把持機構8、荷役物10、アーム4など如何なる場所を把持しても操作力軽減機能を有効にすることになる。したがって、バランス機能を効果的に活用することが可能になり、幅広い作業に対応させることが可能になる。
なお、以上の実施の形態では、加速度センサ11を把持機構8に装備した場合を例にとって説明したが、加速度センサ11はアーム4に取り付けても良いし、また、荷役機械1の本体3内のピストンロッド20aや、力点B部分に装備しても同等の効果が得られる。
この場合、例えば本体3内の力点B部分に加速度センサ11を取り付けた場合では、検出できる加速度は小さくなるが、制御回路23が当該加速度情報を読み込んだ後、読み込んだ加速度値をアーム比倍(La/Lb)すれば、把持機構8に装備した場合と同等になる。
図4は、本発明の他の実施の形態の制御系を示すブロック図であり、以下、上記実施の形態と対応する部分には同一の符号を付しその詳細な説明を省略する。
図2に示す実施の形態では把持機構8に加速度センサ11を設けて昇降機構5の上下動作時の加速度を検出するようにしたが、本実施の形態では、図4に示すように、荷役機械1Aのアーム4にジャイロセンサ31又は傾斜センサ32が設けられている。
そして、ジャイロセンサ31又は傾斜センサ32は、A/D変換器25を介して制御回路23に電気的に接続され、検出したデータを制御回路23に送出するようになっている。
ここで、ジャイロセンサ31の場合には、アーム4の上下動作時の角速度を検出することになるが、ジャイロセンサ31で検出した角速度情報を1階時間微分して角加速度を算出し、算出した角加速度に有効アーム長を乗ずればアーム4先端部の加速度を算出することができる。
一方、傾斜センサ32は、角度成分を検出するセンサであるため、傾斜センサ32で検出した角度情報を2階時間微分して角加速度を算出することにより、ジャイロセンサ31と同様、アーム4先端部の加速度情報を算出することができる。
そして、このようにして得られた加速度情報に基づいて圧力比例制御弁22を制御することにより、エアーシリンダ20内のバランス圧を所定の値に設定し、操作力を限りなく0に近づけるようにする。
以上述べた本実施の形態においても、上記実施の形態と同様、バランスモードにおける操作力を大幅に軽減することができるため、作業者30は長時間バランスモードで作業を行っても疲労感を感じることがなく作業を行うことができる。
また、本実施の形態によれば、MEMS技術による低コストのジャイロセンサ31を使用するため、低コストでアーム4の角加速度を検出し、アーム4先端の加速度を算出できるという効果がある。
その他の構成及び作用効果については上述の実施の形態と同一であるのでその詳細な説明を省略する。
図5は、本発明の更に他の実施の形態の制御系を示すブロック図であり、以下、上記実施の形態と対応する部分には同一の符号を付しその詳細な説明を省略する。
本実施の形態では、図5に示すように、荷役機械1Bの本体3側のピストンロッド20aに、位置検出センサ41又は速度検出センサ42が設けられている。
そして、位置検出センサ41又は速度検出センサ42は、A/D変換器25を介して制御回路23に電気的に接続され、検出したデータを制御回路23に送出するようになっている。
ここで、ピストンロッド20aに位置検出センサ41を設けた場合には、2階時間微分することにより加速度を算出することができる。
一方、速度検出センサ42の場合は、1階時間微分して加速度を算出することができる。
そして、このようにして得られた加速度情報に基づいて圧力比例制御弁22を制御することにより、エアーシリンダ20内のバランス圧を所定の値に設定し、操作力を限りなく0に近づけるようにする。
以上述べた本実施の形態においても、上記実施の形態と同様、バランスモードにおける操作力を大幅に軽減することができるため、作業者30は長時間バランスモードで作業を行っても疲労感を感じることがなく作業を行うことができる。
また、本実施の形態によれば、図2、図4の実施の形態では加速度センサ11、ジャイロセンサ31などのようにMEMS技術によって近年急速に普及してきているセンサを使用して本発明を実現したが、本実施の形態によれば、旧来からあるリニアスケールなどのセンサを使用しても本発明を実現できるという効果がある。
その他の構成及び作用効果については上述の実施の形態と同一であるのでその詳細な説明を省略する。
なお、本発明は上述の実施の形態に限られることなく、種々の変更を行うことができる。
例えば、図2に示す実施の形態では、荷役機械1の加速度及びバランスモード時のエアーシリンダ20内のエアー圧を加速度センサ11及び圧力センサ24で検出してバランス圧を制御するようにしたが、エアーシリンダ20内のエアー圧を検出することなく、加速度センサ11によって加速度を検出して制御するだけでも、ある程度の操作力軽減効果は得られる。
また、エアーシリンダ20内のエアー圧力は、圧力センサ24によって負荷バランスモード時のシリンダ圧を検出しなくても、予め制御回路23に記憶・登録させておいた負荷又は無負荷バランス圧情報を用いて計算処理して算出することもできる。この場合には、装置構成を簡素化することができるというメリットがある。
さらに、図2に示す実施の形態では、低価格で本発明の操作力軽減機能を実現するため低価格の圧力センサ24及び加速度センサ11を用いた場合を説明したが、上記式(9)から理解されるように、圧力センサの代わりに、荷役物10の重量をロードセルなどの重量センサで用いて直接重量を測定し制御に用いても同じような効果が得られる。
さらにまた、上記各実施の形態においては、アーム式荷役機械を例にとって説明したが、バランスモードを備えたホイストタイプの荷役機械においても、荷役物の把持機構部に加速度センサを装備することにより、アーム式荷役機械と同様に本発明を適用できることは明らかである。
1…荷役機械
3…本体
4…アーム
5…昇降機構
8…把持機構
9…操作ボックス
10…荷役物
11…加速度センサ(加速度情報検出用センサ)
20…エアーシリンダ
21…エアー源
22…圧力比例制御弁
23…制御回路
24…圧力センサ

Claims (6)

  1. バランスモードに設定可能なエアー式の荷役機械であって、
    上下方向及び水平方向に移動自在に構成され、所定の荷役物を保持する保持機構を有する昇降機構と、
    前記昇降機構をエアーの圧力によって上下方向に駆動するエアーシリンダと、
    所定のエアー源から供給されるエアーの圧力を所定の圧力に調整して前記エアーシリンダに供給する圧力比例制御弁と、
    前記昇降機構の上下方向についての加速度の向きと加速度の大きさの情報を検出するための加速度情報検出用センサとを備え、
    前記バランスモードにおいて、前記荷役物を保持した前記昇降機構を作業者が上方向又は下方向に移動させた場合に前記加速度情報検出用センサからの情報に基づき得られた当該昇降機構及び当該荷役物の加速度の向きと加速度の大きさの情報と、所定のバランス圧に設定された前記エアーシリンダ内の圧力情報とに基づいて、前記加速度の向きに前記昇降機構を付勢動作させるように、以下の式に従い、前記エアーシリンダを新たなバランス圧に設定すべく当該エアーシリンダに対する前記圧力比例制御弁の出力エアー圧力を調整するように構成されている荷役機械。
    P’=P(1+K・a)
    (式中、Pはバランスモード設定時における前記エアーシリンダ内のバランス圧、P’は新たに設定する前記エアーシリンダ内のバランス圧、aは前記荷役物を保持した前記昇降機構を作業者が上方向又は下方向に移動させた場合に前記加速度情報検出用センサからの情報に基づき得られた当該昇降機構及び当該荷役物の加速度の向きと加速度の大きさ、Kは0より大きく1/G以下の定数で、Gは重力加速度である。
  2. 前記エアーシリンダ内の圧力を検出する圧力センサを有し、前記バランスモードにおいて、前記加速度検出用センサにて得られた情報及び前記圧力センサにて得られた圧力情報に基づいて、前記エアーシリンダに対する前記圧力比例制御弁の出力エアー圧力を調整するように構成されている請求項1記載の荷役機械。
  3. 前記保持機構に、前記加速度情報検出用センサとして、上下方向の加速度を検出する加速度センサが設けられている請求項1又は2のいずれか1項記載の荷役機械。
  4. 前記昇降機構が荷役物昇降用のアームを有し、当該アームに、前記加速度情報検出用センサとして、ジャイロセンサ又は傾斜センサが設けられている請求項1又は2のいずれか1項記載の荷役機械。
  5. 前記エアーシリンダのピストンロッドに、前記加速度情報検出用センサとして、位置センサ又は速度センサが設けられている請求項1又は2のいずれか1項記載の荷役機械。
  6. 請求項1乃至5のいずれか1項記載の荷役機械を制御する方法であって、
    前記昇降機構によって荷役物を保持し当該荷役機械をバランスモードに設定して前記エアーシリンダを所定のバランス圧に設定した状態において、
    作業者が前記昇降機構を上方向又は下方向に移動させた場合に、前記加速度情報検出用センサからの情報に基づき当該昇降機構及び当該荷役物の加速度の向きと加速度の大きさを検出し、検出された前記加速度の向きに前記昇降機構を付勢動作させるように、以下の式に従い、前記エアーシリンダに対する前記圧力比例制御弁の出力エアー圧力を増減させて新たなバランス圧に設定する荷役機械の制御方法。
    P’=P(1+K・a)
    (式中、Pはバランスモード設定時における前記エアーシリンダ内のバランス圧、P’は新たに設定する前記エアーシリンダ内のバランス圧、aは前記荷役物を保持した前記昇降機構を作業者が上方向又は下方向に移動させた場合に前記加速度情報検出用センサからの情報に基づき得られた当該昇降機構及び当該荷役物の加速度の向きと加速度の大きさ、Kは0より大きく1/G以下の定数で、Gは重力加速度である。
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