本発明を実施するための最良の形態を図面を参照して説明する。まず、本実施の形態における検査装置1の構成を図1を参照して説明する。図1は、検査装置1の回転部分の構成を表す側面図である。図1に示すように、検査装置1は、ポリスチレン樹脂から成る円盤形状の検査対象受体2と、回転部3とから構成される。回転部3は、図1に示すように、チャック部4と、チャック部4の下面中央に取り付けられた回転軸5と、回転軸5を回転駆動する回転モータ7と、回転軸5を軸支する軸受け6と、軸受け6に取り付けられたカバー部材部8とを有している。そして、上記チャック部4の上面には、図示しない開口部が形成され、その開口部は図示しない吸引ポンプと連通しており、吸引ポンプが吸引することにより、検査対象受体2の下面とチャック部4の上面4bが相対移動不可能に密着する。すなわち、チャック部4と検査対象受体2とが一体に回転する。
検査対象受体2を、その中心が回転軸5と同軸となるように、チャック部4に固定した状態で回転モータ7を駆動すると、検査対象受体2は回転軸5(すなわち、検査対象受体2の中心)を回転中心として回転する。回転部3は、CPU、ROM、RAM等を有する制御部9に接続されている。この制御部9の図示しないROM(記憶媒体)に記憶されたプログラムにより、回転部3の動作は制御される。
次に、検査対象受体2の構成の概略を図2〜図5を参照して説明する。図2は、検査対象受体2の平面図であり、図3は、検査パターン構成部20の拡大図である。図4は、検査対象受体2のカバー部材50の平面図である。図5は、検査パターン構成部20の縦断面図である。
検査対象受体2は、図2に示す本体部10と、当該本体部10の上部に貼り付けられるカバー部材50(図4参照)とから成る。尚、カバー部材50は、透明な合成樹脂製の膜により形成されている。また、図2に示すように、本体部10は円盤型の部材の片面に、扇形の検査パターン構成部20を24組形成したものである。検査対象受体2の本体部10は、一例として、ポリスチレン樹脂から形成され、直径10cm、厚み2mmの円盤である。また、カバー部材50は、PET,PMMA,シリコンフィルム等から構成された透明の合成樹脂フィルムであり、一例として直径10cm、厚み25μm〜200μmである。
次に、図3を参照して、検査パターン構成部20の構成の詳細について説明する。尚、検査パターン構成部20の流路については、扇形の中心側を「上流側」、検査対象受体2の回転により遠心力の向く方向である周方向を「下流側」という。 図3に示す検査パターン構成部20は、中心角15度の扇形の中に、上方が開口した断面略長方形の溝、リブ、突起、各液の導入部等が設けられている。具体的には、検査パターン構成部20には、図3に示すように、扇形の中心角の部分を上方にした場合に、その右側の端部(図2に示す本体部10の動径)方向に伸びる、幅一定の溝である第一流路21が設けられている。この第一流路21は、一定幅で扇形の半径方向(本体部10の動径方向)に延設された壁部42と、当該検査パターン構成部20の右側に配置される他の検査パターン構成部20の一定幅で扇形の半径方向(本体部10の動径方向)に延設された壁部45との間に直線状に延設された溝部として形成されている。
また、第一流路21の上流側には、後述する検査対象導入部35から導入された検査対象物を所定量計り取るための定量化部26が設けられている。定量化部26の上流側には、洗浄液を導入するための凹部である洗浄液導入部23が設けられ、洗浄液導入部23の上流側には、平面視円形の凹部である洗浄液注入口底部22が設けられている。また、洗浄液導入部23の下流側には、洗浄液の染み出しを防止する染み出し防止リブ25が複数設けられている。
また、第一流路21の下流側には、検査部27が設けられている。この検査部27は、一定幅で扇形の半径方向(本体部10の動径方向)に延設された壁部43と、当該検査パターン構成部20の右側に配置される他の検査パターン構成部20の一定幅で扇形の半径方向(本体部10の動径方向)に延設された壁部45との間に直線状に延設された溝部として形成されている。そして、検査部27は、平面視楕円(横断面が楕円形状)の楕円柱形状を有する突起を溝部の底面から多数立設させている。この突起等の詳細については後述する。また、検査部27の下流側の端部近傍には、前記突起が形成されていない空間部29が形成されている。
さらに、検査パターン構成部20の外周側(中心と反対側)には、検査部27から流れ出した廃液を溜める凹部である廃液溜部31が設けられている。また、検査部27の下流側の端部には、当該検査部27と廃液溜部31とを接続する溝部である連通部30が設けられ、当該連通部30を介して検査部27から流れ出した廃液が廃液溜部31に溜まるようになっている。尚、廃液溜部31の外周部には、壁部44が形成されているので、廃液溜部31は、壁部43,44,45により囲まれている。
また、第一流路21と洗浄液導入部23との間の定量化部26の近傍(図3に於ける左側)には、略円形の凹部である検査対象導入部35が設けられている。この検査対象導入部35からは、検査対象である抗原や血清等を注入するようになっている。検査対象導入部35は溝部である誘導部36を介して定量化部26に接続されている。尚、検査対象導入部35の周囲は、壁部46及び壁部47により囲まれている。
また、検査対象導入部35と廃液溜部31との間には、抗体、ブロッキング剤、基質等の試薬を検査部27に注入するための凹部である試薬導入部40が形成されている。この試薬導入部40の上流側の端部(図3に於ける上側の端部)には、試薬導入部40に試薬を注入するための凹部である試薬注入口底部39が設けられている。また、試薬導入部40の下流側と第一流路21との間には、試薬導入部40から試薬を第一流路21に導入する試薬導入路28が設けられている。そして、試薬導入路28には、検査対象受体2を回転する前に試薬が染み出すことを防止する染み出し防止部48が設けられている。
さらに、検査対象導入部35と廃液溜部31との間には、検査対象導入部35と廃液溜部31とを接続する溝部である第二流路37が設けられ、当該第二流路37を介して検査対象導入部35から注入され定量化部26で計り取られた残りの不要な検査対象液が廃液溜部31に流れ込むようになっている。また、第二流路37の廃液溜部31への出口部分には、廃液溜部31から廃液の逆流を防止する逆流防止リブ38が設けられている。
また、面積の比較的広い洗浄液導入部23、試薬導入部40及び廃液溜部31には、合成樹脂製のカバー部材であるカバー部材50が内側に撓んで容積が減るのを防止する支持用リブ24,41,32,33,34が各々設けられている。
次に、カバー部材50に設けられている各注入口について図4を参照して説明する。図4に示すように、合成樹脂製の膜から形成されたカバー部材50には、洗浄液注入口底部22に対向した部分であり、且つ、その上流側の端部近傍に対向した部分に洗浄液注入口51が開口されている。また、カバー部材50には、検査対象導入部35に対向した部分であり、且つ、その上流側の端部近傍に対向した部分に検査対象注入口52が開口されている。さらに、カバー部材50には、試薬注入口底部39に対向した部分であり、且つ、その上流側の端部近傍に対向した部分に試薬注入口53が開口されている。
次に、図5を参照して、洗浄液注入口底部22の構造を説明する。図5に示すように、洗浄液注入口底部22は、洗浄液導入部23の深さよりも深く形成されており、洗浄液注入口底部22の最深部から洗浄液導入部23に向けて傾斜面22aが形成されている。従って、洗浄液注入口51から注入された洗浄液は、洗浄液注入口底部22から傾斜面22aを昇って洗浄液導入部23に流れやすくなっている。尚、他の検査対象導入部35及び試薬注入口底部39にも同様の傾斜面が形成されている。従って、各導入部の窪み部への液の残留を防止できる。
次に、図6を参照して、第二流路37に設けられている逆流防止リブ38について説明する。図6は、逆流防止リブ38の近傍の拡大図である。図6に示すように、第二流路37には、廃液溜部31からの廃液の第二流路37への逆流を防止する逆流防止リブ38が壁部43の側面から下流方向へ傾斜して3本延設されている。また、壁部43に対向する壁部45の側面からは、前記3本の逆流防止リブ38の間に入るように、下流方向へ傾斜して3本の逆流防止リブ38が各々延設されている。尚、逆流防止リブ38は、壁部の側面に繋がっていてもいなくても構わない。
次に、図7を参照して、洗浄液導入部23に設けられている染み出し防止リブ25について説明する。図7は、染み出し防止リブ25及び検査対象導入部35の近傍の拡大図である。図7に示すように、洗浄液導入部23の下流側には、洗浄液導入部23からの洗浄液の染み出しを防止する染み出し防止リブ25が洗浄液導入部23の右側壁(図7に於ける)から下流方向へ傾斜して3本延設されている。また、当該右側壁に対向する壁部47の側面からは、前記3本の染み出し防止リブ25の間に入るように、下流方向へ傾斜して3本の染み出し防止リブ25が各々延設されている。尚、染み出し防止リブ25は、壁部の側面に繋がっていてもいなくても構わない。
次に、図7を参照して、定量化部26の構造の詳細について説明する。図7に示すように定量化部26は、平面視楕円の楕円柱形状(横断面が楕円形状)を有する突起261を、第一流路21の底面から多数立設させた部分である。突起261は千鳥格子状に規則正しく配列されており、突起同士の間隔は、液状の検査対象が毛細管現象により広がる間隔である。この定量化部26では、複数の突起261により毛細管現象で一定量の検査対象の液体が保持されることになる。この突起261は、その長径方向を定量化部26の流路方向(図7に於ける上下方向)に向けた楕円柱形状の突起である。即ち、第一流路21の延設方向と直交する方向における突起261の径は、第一流路21の延設方向における突起261の径よりも短くなっている。よって、定量化部26を流れる液体によって突起261の流路方向下流側に双子渦ができ難いようになっている。また、突起261の高さは、定量化部26の溝の深さと同じである。
また、検査対象導入部35からは、定量化部26に向けて溝部である誘導部36が形成されている。この誘導部36には、図14に示すように、一例として直径が30μmの円柱形状を有する突起361が、底部から千鳥配置に多数立設されている。また、定量化部26の突起261の上流側には、突起261の配列間隔よりも間隔を密に配列された突起262が複数配列され、また、定量化部26の突起261の下流側には、突起261の配列間隔よりも間隔を密に配列された突起263が複数配列されている。この突起262及び突起263により、検査対象受体2を回転させる前に定量化部26からの検査対象の液体の染み出しを防止することにより、より正確な定量化が可能になる。
次に、図8及び図9を参照して、検査部27の構造について説明する。図8は、検査部27及び試薬導入路28の近傍の拡大図であり、図9は、検査部27の下流側端部の拡大図である。図8に示すように、検査部27は、平面視楕円の楕円柱形状(横断面が楕円形状)を有する突起271を、検査部27の底面から多数立設させた部分である。突起271は千鳥格子状に規則正しく配列されており、突起同士の間隔は、液状の検査対象が毛細管現象により広がる間隔である。また、突起271の高さは、検査部27の溝の深さと同じである。
この検査部27では、検査対象導入部35から注入された抗原等の検査対象が複数の突起271の表面に付着し、試薬導入部40から注入された試薬(抗体、基質等)と生物・化学的反応を起こす。例えば、検査部27において光学的反応(発光、発色等)を起こさせる。その光学的反応を検出することにより、極めて正確に検査対象の定量化がなされる。この突起271は、その長径方向を検査部27の流路方向(図8に於ける上下方向)に向けた楕円柱形状の突起である。即ち、検査部27の延設方向と直交する方向における突起271の径は、検査部27の延設方向における突起271の径よりも短くなっている。よって、検査部27を流れる液体によって突起271の流路方向下流側に双子渦ができ難いようになっている。尚、図9に示すように、検査部27の下流側には、検査部27の幅の2乗以上の面積の空間部29を設けている。この空間部29には、突起271等が設けられておらず、単に溝のみの領域となっている。そして、空間部29の下流側には、一例として直径が30μmの円柱形状を有する突起272が、底部から千鳥配置に多数立設されている。また、検査部27の下流側の端部は、連通部30を介して、廃液溜部31に接続されている。
次に、図8を参照して、試薬導入路28の構造について説明する。図8に示すように、試薬導入部40の下流側には、第一流路21の下流側の端部に試薬導入部40から抗体、ブロッキング剤、基質等の試薬を導入するための試薬導入路28が接続されている。そして、この試薬導入路28には、検査対象受体2の回転前に試薬が染み出すのを防止する突起481が複数設けられた染み出し防止部48が設けられている。この突起481は、試薬導入路28の延設方向の下流側の端部が上流側の端部よりもすぼまった紡錘形になっている。また、試薬導入路28の第一流路21への接続の角度は、第一流路21の上流側の内角θ1が90度より小さくなっている。従って、外角θ2は、90度より大きくなっている。従って、試薬導入部40から第一流路21への接続流路である試薬導入路28の延設方向と検査対象が第一流路21を流下する方向とのなす角度は、鋭角であるので、試薬導入部40から第一流路21への試薬導入路28に試薬が残留することを防止できる。
次に、図10及び図11を参照して、第一流路21及び定量化部26の断面構造について説明する。図10は、第一流路21の図3のI−I線に於ける矢視方向断面図であり、図11は、図3のII−II線に於ける矢視方向断面図である。図10に示すように、第一流路21の断面は、上方が開放された所定幅及び所定深さの溝となっている。そして、第一流路21は、当該第一流路21が形成された検査パターン構成部20の右隣の検査パターン構成部20の壁部45と、当該第一流路21が形成された検査パターン構成部20の壁部42との間に設けられている。
また、図11に示すように定量化部26は、上方が開放された所定幅及び所定深さの溝となっており、その底面から突起261が複数立設されている。そして、定量化部26は、当該定量化部26が形成された検査パターン構成部20の右隣の検査パターン構成部20の壁部45と、当該定量化部26が形成された検査パターン構成部20の壁部42との間に設けられている。
次に、検査対象受体2を本体部10とともに構成するカバー部材50について図4、図12及び図13を参照して説明する。図12は、カバー部材50をした状態の第一流路21の図3のI−I線に於ける矢視方向断面図であり、図13は、カバー部材50をした状態の定量化部26の図3のII−II線に於ける矢視方向断面図である。図4に示すように、カバー部材50は、本体部10と同一の直径を有する円盤型の部材であり、透明な合成樹脂製の膜から形成されている。このカバー部材50は、本体部10のうち、検査パターン構成部20が形成されている側の面に、互いの中心が一致するように取り付けられる。こうすることにより、本体部10の検査パターン構成部20は、図12及び図13に示すように、カバー部材50によって上方の開口部を閉じられる。
また、定量化部26や検査部27のように、突起部が設けられた部分では、図13に示すように、突起部の上面がカバー部材50に接するようになる。更に、カバー部材50には、図4に示すように、穴51,52,53が多数設けられている。これら穴51,52,53は、カバー部材50を本体部10に取り付けたとき、検査パターン構成部20において検査対象や試薬を注入する必要がある位置(例えば、洗浄液注入口底部22、検査対象導入部35、試薬注入口底部39)に重なり、それぞれ洗浄液注入口51、検査対象注入口52、試薬注入口53となるように形成されている。このことにより、カバー部材50を本体部10に取り付けた状態で、検査対象や試薬を検査パターン構成部20に供給することができる。
次に、図15及び図16を参照して、定量化部26の液体の染み出し防止構造について説明する。図15は、染み出し防止構造を設けていない定量化部26の拡大図であり、図16は、染み出し防止構造を設けている定量化部26の拡大図である。検査対象受体2の回転前の状態においては、検査対象導入部35から注入され、定量化部26にて所定量が量り取られた検査対象の液体が漏れないことが望まれる。図15に示すように、定量化部26に染み出し防止構造を設けていない場合には、突起261間に蓄えられた検査対象液体は、突起261間から漏れ出し、検査データの再現性が取れなくなる場合がある。これに対して、図16に示すように、定量化部26に染み出し防止構造として、径の小さい突起263を突起261間の間隔よりも密に配置した場合には、突起263間に働く毛細管現象により検査対象液体の漏れ出すことを防止でき、正確に再現性のある検査データを取ることができる。
次に、図17乃至図19を参照して、廃液溜部31から検査部27への廃液の逆流を防止する逆流防止構造について説明する。図17は、逆流防止構造を設けていない検査部27の拡大図である。図18は、第一の逆流防止構造を設けている検査部27の拡大図であり、図19は、第二の逆流防止構造を設けている検査部27の拡大図である。検査対象受体2では、廃液溜部31から検査部27への廃液の逆流が無いことが望まれる。廃液が検査部27へ逆流すると、測定の精度が低下するからである。図17に示すように、検査部27に逆流防止構造を設けていない場合には、廃液溜部31から検査部27の突起271間に廃液の逆流が起こる場合がある。これに対して、図18に示すように、検査部27に逆流防止構造として、検査部27の幅の2乗の面積以上の空間である空間部29を設けた場合には、突起272の上側に液体のメニスカスが形成されて廃液の逆流を防止できる。また、図19に示すように、突起271より径の小さい突起272を突起271間の間隔よりも密に配置した場合には、突起272間に働く毛細管現象により廃液の逆流を防止できる。
次に、図20乃至図26を参照して、カバー部材50の支持構造について説明する。図20は、カバー部材50の支持構造を設けていない検査パターン構成部20の平面図であり、図21及び図22は、支持構造を設けていない廃液溜部31の縦断面図であり、図23及び図24は、支持構造を設けている廃液溜部31の縦断面図である。図25及び図26は、支持構造の変形例の平面図である。
図20に示すように、面積の比較的広い洗浄液導入部23、試薬導入部40及び廃液溜部31には、カバー部材50の支持構造を設けていない場合には、合成樹脂製のカバー部材であるカバー部材50が内側に撓んで、面231、面401、面301に接触する虞がある。例えば、図21に示すように、初期状態では、カバー部材50が水平に張られて、廃液溜部31の底面に接触していない。しかし、外部から圧力を受けたりすると図22に示すように、カバー部材50が撓んで、廃液溜部31の底面に接触する場合がある。これを防止するために、図23に示すように、廃液溜部31に突起33,34等を設けると、外部から圧力を受けても、図24に示すように、廃液溜部31の突起33,34がカバー部材50を支持して、カバー部材50が廃液溜部31の底面に接触したり、内側に撓んだりすることを防止できる。
本実施の形態では、図3に示すように、洗浄液導入部23、試薬導入部40及び廃液溜部31には、カバー部材50の支持構造として、支持用リブ24,41,32,33,34を設けているので、カバー部材50が洗浄液導入部23、試薬導入部40及び廃液溜部31の底面に接触したり、内側に撓んだりして、洗浄液導入部23、試薬導入部40及び廃液溜部31の体積が減少するのを防止できる。
次に、図25乃至26を参照して、支持用リブの変形例について説明する。図25乃至図26は、支持用リブの変形例を示す検査パターン構成部20の平面図である。図25に示すように、支持用リブ124,支持用リブ141,支持用リブ132は、円柱形状としても良い。また、図26に示すように、支持用リブ125,支持用リブ142,支持用リブ133は、平面視L字形状(横断面L字形状)の突起としても良い。
次に、図27を参照して、試薬注入口底部39の周囲の構造について説明する。図27は、試薬注入口底部39の近傍の拡大図である。図27に示すように、試薬注入口底部39の周囲は、壁部により取り円形に囲まれ、試薬導入部40側に開口している。この試薬注入口底部39と試薬導入部40への接続部は、壁部371及び壁部421により幅が狭小になり、流路がくびれるようになっている。このような構成にすることにより、壁部371及び壁部421によりカバー部材50が内側に撓み、試薬注入口53周辺のカバー部材と試薬注入口底部39とが密着し、注入口を塞いでしまうことを防止できる。
次に、図28及び図29を参照して、カバー部材50に形成された洗浄液注入口51の形状の変形例について説明する。図28及び図29は、洗浄液注入口51の形状の変形例の縦断面図である。図28に示すように、洗浄液注入口51は、上方に向けて開口径が大きくなるように形成されたテーパ形状となっている。従って、洗浄液注入口51への注射針等の先の挿入が容易となる。また、図29に示す例では、洗浄液注入口51は、下方に向けて開口径が大きくなるように形成された逆テーパ形状となっている。従って、洗浄液注入口51内の容積を大きくすることができる。また、検査対象受体2の回転時に穴からの液の飛び出しを防止できる。
次に、図3を参照して、廃液溜部31の容積について説明する。検査対象導入部35から注入された検査対象の液体は、定量化部26で規定量計り取られて、検査対象受体2の回転により、検査部27に送り込まれ、残りの余分な液体は第二流路37を通過して廃液溜部31に排出される。また、洗浄液導入部23から検査部27へ送り込まれる洗浄液は、検査部27の洗浄後に廃液溜部31に排出される。また、試薬導入部40から検査部27に送り込まれる抗体、ブロッキング剤、基質等の試薬は、検査部27で反応に使われた後は、廃液溜部31に排出される。従って、廃液溜部31の容積は、検査対象導入部35から注入された検査対象の液体の予め定められている注入量と、試薬導入部40から注入される試薬の予め定められている注入量と、洗浄液導入部23から注入される洗浄液の予め定められている注入量との和よりも大きい容量となるよう設計されている。この場合には、廃液溜部31には、支持用リブ32〜34が立設しているので、廃液溜部31の容積としては、この支持用リブ32〜34の体積を引いた容積を用いる。例えば、試薬導入部40に注入される試薬が10μl、洗浄液導入部23に注入される試薬が10μl、検査対象導入部35から注入される抗原が1μlならば、支持用リブ32〜34の体積を引いた廃液溜部31の容積は、21μlより大きい体積とする。
次に、廃液溜部31の容積、透明な合成樹脂製のカバー部材フィルムであるカバー部材50の厚さ、剛性、想定される外力を用いれば、必要となる支持用リブの形状、数等が決定できる根拠について説明する。カバー部材50を支持する支持用リブ32〜34の廃液溜部31端面からの距離は、材料力学の不静定梁の両端支持梁モデルから算出した。ここで、廃液溜部31の囲む壁部43,44,45から最も離れた地点(中央部)に人指による押圧等で力が掛かった場合を想定する。
最大撓み量の計算式は、 б=WL3/192EI
ここで、
荷重 W
液溜まり端面間の距離 L
フィルムのヤング率 E
慣性モーメント I
慣性モーメントの計算式は、 I=bh3/12
フィルムの張り幅 b
厚さ h
とする。
例えば、二軸延伸PETフィルム 厚さ75ミクロン、ヤング率4500N/mm2の合成樹脂フィルムのカバー部材50で、検査対象受体2(ディスク)を持つ際の指の力を0.2Nとし、カバー部材50の張り幅を15mmとした場合、液溜まり端面間の距離とカバー部材50の撓み量について算出すると、
距離 L=2mm の場合
撓み量 б=0.0035mm б=WL3/192EI
力 W=0.2N
ヤング率 E=4500N/mm^2
慣性モーメント I=0.000527344 I=bh3/12
幅 b=15mm
フィルム厚さ h=0.075mm
距離 L=4mmの場合
撓み量 б=0.028mm
距離 L=6mm の場合
撓み量 б=0.095mm
距離 L=8mmの場合
撓み量 б=0.224mm
この計算例では、液溜まりの深さを0.1mmとした場合、端面間の距離が4mmならば、カバー部材が撓んで底面に付着する恐れは無いので、リブを形成しなくても良いが、6mmの距離が離れていると0.095mm撓んで底面にカバー部材50が付着する恐れが生じてくるため、支持用リブを形成することが好ましいと判断できる。8mmであれば、0.224mm撓むと底面にカバー部材50は確実に付着するため、リブ形成が必須となる。以上より、液溜まり端面から支持用リブ間距離、及び、支持用リブ−支持用リブ間距離は上記条件の場合の3mmまでが適切と判断される。このように、液溜まりの大きさ、カバー部材50の厚さ、剛性、想定される外力を用いれば、必要となるリブの形状、数等が決定できる。
次に、カバー部材50の本体部10への接着について説明する。カバー部材50を検査対象受体2に接着する場合の接着剤のカバー部材50への塗布面積は、検査対象受体2の壁部42,43,44,45,46,47の接着面よりも広く塗布される。このようにすることにより、カバー部材50の本体部10への接着時に位置が少しずれても確実に接着することができる。従って、接着時の位置ずれの公差を大きくとれる。また、接着面への試薬等の進入を防止できる。尚、接着剤の一例としては、アクリル系やシリコン系の接着剤を用いることができる。
次に、図30を参照して、支持用リブ24及び支持用リブ41の変形例について説明する。図30は、検査パターン構成部20の変形例の拡大図である。図30に示すように、洗浄液導入部23に設けられた支持用リブ24及び試薬導入部40に設けられた支持用リブ41は、各々、下流側の端部が上流側の端部よりもすぼまった紡錘形になっている。従って、洗浄液導入部23を流れる洗浄液や試薬導入部40を流れる試薬がスムーズに流れる。
次に、上記構成の検査対象受体2の使用方法の一例として、ELISA法により、人の血液中のトランスフェリン濃度を定量し、貧血の程度を少量の試薬にて正確に調べる方法を説明する。
(i)検査対象受体2への抗体の固定
各検査パターン構成部20のそれぞれについて、検査部27にGoat由来のトランスフェリン抗体の炭酸ナトリウム緩衝溶液希釈液(0.05M NaHCO3、pH9.6、10μg/ml、以下一次抗体溶液とする)を15μLずつ流す。
具体的には、検査対象受体2を図1に示すように検査装置1に取り付け、各検査パターン構成部20の試薬導入部40のそれぞれに、上記一次抗体溶液を15μLずつ注入する。尚、試薬導入部40への注入は、カバー部材50に形成された試薬注入口53(図4参照)を通して行う。注入された溶液は、染み出し防止部48によって試薬導入部40の内部にとどまっている。
その後、検査対象受体2を100〜3000rpmの回転数(回転数R2)で、図2の方向から見て反時計回りに回転させる。すると、遠心力により、一次抗体液は、試薬導入部40から流れだし、第一流路21に入り、検査部27の中を流れ、連通部30を介して廃液溜部31に至る。その後、検査対象受体2の回転を停止する。
(ii)ブロッキング
各検査パターン構成部20のそれぞれについて、検査部27にブロッキング溶液(50mM Tris、0.14M NaCl 1%BSA、pH8.0)15μLを流す。
具体的には、まず、検査対象受体2を150〜15000rpmの回転数(回転数R1)で回転させることにより、検査部27から、前記(i)の工程で流した一次抗体溶液を除く。次に、試薬導入部40のそれぞれに、上記ブロッキング溶液を15μLずつ注入し、検査対象受体2を100〜3000rpmの回転数(回転数R2)で反時計回りに回転させる。すると、ブロッキング液は、前記(i)の工程における一次抗体溶液と同様に、試薬導入部40から流れ出し、第一流路21に入り、検査部27の中を流れ、廃液溜部31から外部に排出される。
ここまでの工程で、検査部27には一次抗体が固定される。その後、以下の洗浄工程を行う。洗浄工程では、まず、各検査パターン構成部20の洗浄液導入部23に洗浄液(50mM Tris、0.14M NaCl、0.05% Tween20、pH8.0、以下、洗浄液とする)を注入する。洗浄液を注入する場所は、洗浄液導入部23の洗浄液注入口底部22に対向したカバー部材50の洗浄液注入口51(図4参照)を通して行う。
次に、検査対象受体2を100〜3000rpmの回転数(回転数R2)で回転させることにより、検査部27を洗浄液で満たした後、検査対象受体2を150〜15000rpm(回転数R1)で回転させ、検査部27から洗浄液を除く。除かれた洗浄液は、廃液溜部31を経て外部に排出される。
尚、定量化部26に立設された突起261及び検査部27に立設された突起271は、その長径方向を洗浄液の流路方向に平行にするように立設された楕円柱であるので、上記洗浄工程においても、突起261及び突起271の流路方向に於ける後部側に双子渦が生じることがなく、突起261及び突起271の前記後部側の洗浄も十分に行うことが出来る。従って、検査時のS/N値を良好に保つことが出来る。
(iii)検査対象の抗原−抗体反応による捕捉
ここでは、検査対象をトランスフェリンとする。トランスフェリンのトリス緩衝食塩水(50mM Tris、0.14M NaCl、1% BSA、0.05 Tween20、pH8.0)で濃度を125ng/mlに調製した溶液(以下、抗原溶液とする)1μLずつ各検査パターン構成部20に流す。
具体的には、各検査パターン構成部20のそれぞれについて、検査対象導入部35に上記抗原溶液を1μLずつ注入する。このとき、抗原溶液の注入は、検査対象導入部35に対応するようにカバー部材50に設けられた検査対象注入口52(図4参照)を通して行う。この検査対象注入口52は、検査対象導入部35の上流側(図3に於ける上側)に設けられている。そのため、抗原溶液は、検査対象導入部35のうち、一番奥側に供給される。
供給された抗原溶液は、誘導部36から定量化部26の内部に毛細管現象により広がる。このとき、定量化部26の中に広がる抗原溶液の量は、定量化部26を構成する複数の突起261の隙間の体積に等しくなる。次に、検査対象受体2を100〜3000rpm(回転数R2)の回転数で回転させると、定量化部26に保持されていた抗原溶液は、第一流路21に入り、検査部27の中を進み、その外周端まで至る。その後、検査対象受体2の回転を停止する。
このとき、検査パターン構成部20では、定量化部26に保持されたものだけが検査部27に流れ、誘導部36に保持されたものは、そのまま残る。これは、誘導部36の延設方向が本体部10の周方向に沿っているので、検査対象受体2を回転させても、遠心力により検査部27に向かって検査対象を流そうとする力が働かないためである。また、検査対象導入部35に注入された抗原溶液のうち、定量化部26に保持されず、検査対象導入部35に残ったものは、検査対象受体2を回転させたとき、第二流路37を介して廃液溜部31に流れ込む。従って、検査部27に流入する抗原溶液は、定量化部26に保持されていた、一定量だけである。
この工程により、検査部27に固定されていた抗体が、トランスフェリンを捕捉する。その後、前記(ii)と同様の洗浄液を用い、以下の工程により、検査部27を洗浄する。洗浄液を注入する場所は、検査パターン構成部20では洗浄液導入部23である。洗浄液の注入は、洗浄液注入口底部22に対応したカバー部材50の洗浄液注入口51(図4参照)を通して行う。
(iv)標識された抗体の結合
各検査パターン構成部20のそれぞれについて、検査部27に、HRP標識されたGoat由来のトランスフェリン抗体をトリス緩衝食塩水(50mM Tris、0.14M NaCl、1%BSA、0.05Tween20、pH8.0)で濃度10ng/mlに調製した溶液(以下、二次抗体溶液)を10μLずつ流す。
具体的には、各検査パターン構成部20の試薬導入部40のそれぞれに、上記二次抗体溶液を10μLずつ注入し、検査対象受体2を100〜3000rpmの回転数(回転数R2)で反時計回りに回転させる。すると、遠心力により、二次抗体液は、試薬導入部40から第一流路21に入り、検査部27の中を流れ、その外周端まで至る。
この工程により、前記(iii)で捕捉されたトランスフェリンに、Goat由来のトランスフェリン抗体が結合する。その後、前記(iii)と同様の洗浄工程により、検査部27を洗浄する。
(v)検査対象の定量
各検査パターン構成部20のそれぞれについて、検査部27に、基質溶液としての、ABTSのリン酸−クエン酸溶液(0.05M リン酸ナトリウム、0.05M クエン酸)と過酸化水素水(以下、発色溶液とする)を流し、検査対象であるトランスフェリンを発色させる。
具体的には、各検査パターン構成部20の試薬導入部40のそれぞれに、上記発色溶液を注入し、検査対象受体2を100〜3000rpmの回転数(回転数R2)で反時計回りに回転させる。すると、遠心力により、発色溶液は、試薬導入部40から第一流路21に入り、検査部27の中を流れ、その外周端まで至る。その後、検査対象受体2を蛍光アナライザーにかけ、その画像をスキャナーで取り込み、暗度解析ソフトにより発色の度合いを数値化する。
次に、本実施の形態の検査対象受体が奏する効果を説明する。本実施の形態の検査対象受体2において、検査パターン構成部20に導入した液状の検査対象を定量化部26に接触させると、毛細管現象により所定量の検査対象が定量化部26の中に吸収される。その後、定量化部26に吸収された検査対象に、検査対象受体2を回転させることにより生じる遠心力を作用させれば、定量化部26に吸収された検査対象を取り出すことができる。
このとき、定量化部26に一旦吸収される検査対象の量は、定量化部26保持部全体の体積から突起部の体積を差し引いたもの(つまり、突起間の隙間の体積)であるから一定の量となる。そのため、本実施の形態の検査対象受体2を用いて上記のような操作を行えば、所定量の検査対象を計り取ることができる。
また、本実施の形態の検査対象受体2によれば、nL〜μLオーダーの微細な量を精度良く計り取ることができる。更に、本実施の形態の検査対象受体2は、樹脂の射出成形法を用いれば一工程で作製できるので、微小バルブを別途作製し、高精度の組付けを行う必要がないので、製造が容易であり、量産性に富み、製造コストが低い。
本実施の形態の検査対象受体2では、上記のように計り取った検査対象に対し、検査パターン構成部20の一部に設けた検査部27において生物、化学反応による検査を行うことができる。
また、廃液溜部31の容積は、検査対象導入部35から注入される検査対象の予め定められている注入量と、試薬導入部40から注入される試薬の予め定められている注入量と、洗浄液導入部23から注入される洗浄液の予め定められている注入量との和よりも大きいので、廃液溜部31から廃液が逆流したり廃液が漏れたりすることがない。また、試薬導入部40から第一流路21への接続流路の延設方向と検査対象が第一流路21を流下する方向とのなす角度は、鋭角であるので、試薬導入部40から第一流路21への導入路に試薬が残留することを防止できる。
尚、本発明は前記実施の形態になんら限定されるものではなく、本発明を逸脱しない範囲において種々の態様で実施しうることはいうまでもない。例えば、突起271の横断面を前記流路の延設方向の下流側の端部が上流側の端部よりもすぼまった紡錘形に形成しても良い。
尚、突起261は、円柱に限られず、円筒でも良い。突起271についても楕円柱に限られず楕円筒でも良い。