以下に、本発明のインクジェット用インク、それに用いることができるジピロメテン系ホウ素錯体化合物及びその互変異性体、カラーフィルタ、及びカラーフィルタの製造方法について詳述する。
≪インクジェット用インク≫
本発明のインクジェット用インクは、下記一般式(I)で表されるジピロメテン系ホウ素錯体化合物(以下、適宜、「特定ホウ素錯体化合物」と称する)の少なくとも一種を含有することを特徴とする。
一般式(I)中、R1〜R6は各々独立に、水素原子、又は置換基を表し、R7は、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、又はヘテロ環基を表し、X1及びY1は各々独立に、ハロゲン原子、アルコキシ基、アリールオキシ基、水酸基、アルキルチオ基、アリールチオ基、又はヘテロ環チオ基を表す。
一般式(I)中、のR1〜R6における置換基は、例えば、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子)、アルキル基(好ましくは炭素数1〜48、より好ましくは炭素数1〜24の、直鎖、分岐鎖、又は環状のアルキル基で、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、2−エチルヘキシル、ドデシル、ヘキサデシル、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル、1−ノルボルニル、1−アダマンチル)、アルケニル基(好ましくは炭素数2〜48、より好ましくは炭素数2〜18のアルケニル基で、例えば、ビニル、アリル、3−ブテン−1−イル)、アリール基(好ましくは炭素数6〜48、より好ましくは炭素数6〜24のアリール基で、例えば、フェニル、ナフチル)、ヘテロ環基(好ましくは炭素数1〜32、より好ましくは炭素数1〜18のヘテロ環基で、例えば、2−チエニル、4−ピリジル、2−フリル、2−ピリミジニル、1−ピリジル、2−ベンゾチアゾリル、1−イミダゾリル、1−ピラゾリル、ベンゾトリアゾール−1−イル)、シリル基(好ましくは炭素数3〜38、より好ましくは炭素数3〜18のシリル基で、例えば、トリメチルシリル、トリエチルシリル、トリブチルシリル、t−ブチルジメチルシリル、t−ヘキシルジメチルシリル)、ヒドロキシル基、シアノ基、ニトロ基、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜48、より好ましくは炭素数1〜24のアルコキシ基で、例えば、メトキシ、エトキシ、1−ブトキシ、2−ブトキシ、イソプロポキシ、t−ブトキシ、ドデシルオキシ、シクロアルキルオキシ基で、例えば、シクロペンチルオキシ、シクロヘキシルオキシ)、アリールオキシ基(好ましくは炭素数6〜48、より好ましくは炭素数6〜24のアリールオキシ基で、例えば、フェノキシ、1−ナフトキシ)、ヘテロ環オキシ基(好ましくは炭素数1〜32、より好ましくは炭素数1〜18のヘテロ環オキシ基で、例えば、1−フェニルテトラゾール−5−オキシ、2−テトラヒドロピラニルオキシ)、シリルオキシ基(好ましくは炭素数1〜32、より好ましくは炭素数1〜18のシリルオキシ基で、例えば、トリメチルシリルオキシ、t−ブチルジメチルシリルオキシ、ジフェニルメチルシリルオキシ)、アシルオキシ基(好ましくは炭素数2〜48、より好ましくは炭素数2〜24のアシルオキシ基で、例えば、アセトキシ、ピバロイルオキシ、ベンゾイルオキシ、ドデカノイルオキシ)、アルコキシカルボニルオキシ基(好ましくは炭素数2〜48、より好ましくは炭素数2〜24のアルコキシカルボニルオキシ基で、例えば、エトキシカルボニルオキシ、t−ブトキシカルボニルオキシ、シクロアルキルオキシカルボニルオキシ基で、例えば、シクロヘキシルオキシカルボニルオキシ)、アリールオキシカルボニルオキシ基(好ましくは炭素数7〜32、より好ましくは炭素数7〜24のアリールオキシカルボニルオキシ基で、例えば、フェノキシカルボニルオキシ)、カルバモイルオキシ基(好ましくは炭素数1〜48、より好ましくは炭素数1〜24のカルバモイルオキシ基で、例えば、N,N−ジメチルカルバモイルオキシ、N−ブチルカルバモイルオキシ、N−フェニルカルバモイルオキシ、N−エチル−N−フェニルカルバモイルオキシ)、スルファモイルオキシ基(好ましくは炭素数1〜32、より好ましくは炭素数1〜24のスルファモイルオキシ基で、例えば、N,N−ジエチルスルファモイルオキシ、N−プロピルスルファモイルオキシ)、アルキルスルホニルオキシ基(好ましくは炭素数1〜38、より好ましくは炭素数1〜24のアルキルスルホニルオキシ基で、例えば、メチルスルホニルオキシ、ヘキサデシルスルホニルオキシ、シクロヘキシルスルホニルオキシ)、
アリールスルホニルオキシ基(好ましくは炭素数6〜32、より好ましくは炭素数6〜24のアリールスルホニルオキシ基で、例えば、フェニルスルホニルオキシ)、アシル基(好ましくは炭素数1〜48、より好ましくは炭素数1〜24のアシル基で、例えば、ホルミル、アセチル、ピバロイル、ベンゾイル、テトラデカノイル、シクロヘキサノイル)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2〜48、より好ましくは炭素数2〜24のアルコキシカルボニル基で、例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、オクタデシルオキシカルボニル、シクロヘキシルオキシカルボニル、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルシクロヘキシルオキシカルボニル、下記構造式(i)で表される基)、
アリールオキシカルボニル基(好ましくは炭素数7〜32、より好ましくは炭素数7〜24のアリールオキシカルボニル基で、例えば、フェノキシカルボニル)、カルバモイル基(好ましくは炭素数1〜48、より好ましくは炭素数1〜24のカルバモイル基で、例えば、カルバモイル、N,N−ジエチルカルバモイル、N−エチル−N−オクチルカルバモイル、N,N−ジブチルカルバモイル、N−プロピルカルバモイル、N−フェニルカルバモイル、N−メチル−N−フェニルカルバモイル、N,N−ジシクロへキシルカルバモイル)、アミノ基(好ましくは炭素数32以下、より好ましくは炭素数24以下のアミノ基で、例えば、アミノ、メチルアミノ、N,N−ジブチルアミノ、テトラデシルアミノ、2−エチルへキシルアミノ、シクロヘキシルアミノ)、アニリノ基(好ましくは炭素数6〜32、より好ましくは6〜24のアニリノ基で、例えば、アニリノ、N−メチルアニリノ)、ヘテロ環アミノ基(好ましくは炭素数1〜32、より好ましくは炭素数1〜18のヘテロ環アミノ基で、例えば、4−ピリジルアミノ)、カルボンアミド基(好ましくは炭素数2〜48、より好ましくは炭素数2〜24のカルボンアミド基で、例えば、アセトアミド、ベンズアミド、テトラデカンアミド、ピバロイルアミド、シクロヘキサンアミド)、ウレイド基(好ましくは炭素数1〜32、より好ましくは炭素数1〜24のウレイド基で、例えば、ウレイド、N,N−ジメチルウレイド、N−フェニルウレイド)、イミド基(好ましくは炭素数36以下、より好ましくは炭素数24以下のイミド基で、例えば、N−スクシンイミド、N−フタルイミド)、アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2〜48、より好ましくは炭素数2〜24のアルコキシカルボニルアミノ基で、例えば、メトキシカルボニルアミノ、エトキシカルボニルアミノ、t−ブトキシカルボニルアミノ、オクタデシルオキシカルボニルアミノ、シクロヘキシルオキシカルボニルアミノ)、アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数7〜32、より好ましくは炭素数7〜24のアリールオキシカルボニルアミノ基で、例えば、フェノキシカルボニルアミノ)、スルホンアミド基(好ましくは炭素数1〜48、より好ましくは炭素数1〜24のスルホンアミド基で、例えば、メタンスルホンアミド、ブタンスルホンアミド、ベンゼンスルホンアミド、ヘキサデカンスルホンアミド、シクロヘキサンスルホンアミド)、スルファモイルアミノ基(好ましくは炭素数1〜48、より好ましくは炭素数1〜24のスルファモイルアミノ基で、例えば、N、N−ジプロピルスルファモイルアミノ、N−エチル−N−ドデシルスルファモイルアミノ)、アゾ基(好ましくは炭素数1〜32、より好ましくは炭素数1〜24のアゾ基で、例えば、フェニルアゾ、3−ピラゾリルアゾ)、
アルキルチオ基(好ましくは炭素数1〜48、より好ましくは炭素数1〜24のアルキルチオ基で、例えば、メチルチオ、エチルチオ、オクチルチオ、シクロヘキシルチオ)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6〜48、より好ましくは炭素数6〜24のアリールチオ基で、例えば、フェニルチオ)、ヘテロ環チオ基(好ましくは炭素数1〜32、より好ましくは炭素数1〜18のヘテロ環チオ基で、例えば、2−ベンゾチアゾリルチオ、2−ピリジルチオ、1−フェニルテトラゾリルチオ)、アルキルスルフィニル基(好ましくは炭素数1〜32、より好ましくは炭素数1〜24のアルキルスルフィニル基で、例えば、ドデカンスルフィニル)、アリールスルフィニル基(好ましくは炭素数6〜32、より好ましくは炭素数6〜24のアリールスルフィニル基で、例えば、フェニルスルフィニル)、アルキルスルホニル基(好ましくは炭素数1〜48、より好ましくは炭素数1〜24のアルキルスルホニル基で、例えば、メチルスルホニル、エチルスルホニル、プロピルスルホニル、ブチルスルホニル、イソプロピルスルホニル、2−エチルヘキシルスルホニル、ヘキサデシルスルホニル、オクチルスルホニル、シクロヘキシルスルホニル)、アリールスルホニル基(好ましくは炭素数6〜48、より好ましくは炭素数6〜24のアリールスルホニル基で、例えば、フェニルスルホニル、1−ナフチルスルホニル)、スルファモイル基(好ましくは炭素数32以下、より好ましくは炭素数24以下のスルファモイル基で、例えば、スルファモイル、N,N−ジプロピルスルファモイル、N−エチル−N−ドデシルスルファモイル、N−エチル−N−フェニルスルファモイル、N−シクロヘキシルスルファモイル)、スルホ基、ホスホニル基(好ましくは炭素数1〜32、より好ましくは炭素数1〜24のホスホニル基で、例えば、フェノキシホスホニル、オクチルオキシホスホニル、フェニルホスホニル)、ホスフィノイルアミノ基(好ましくは炭素数1〜32、より好ましくは炭素数1〜24のホスフィノイルアミノ基で、例えば、ジエトキシホスフィノイルアミノ、ジオクチルオキシホスフィノイルアミノ)、またはこれらを組み合わせた基が挙げられる。
R1〜R6の置換基が更に置換可能な基である場合には、R1〜R6で説明した置換基を有していてもよく、2個以上の置換基を有している場合には、それらの置換基は同一であっても異なっていてもよい。
R1とR2、R2とR3、R4とR5、又は/及びR5とR6とが各々独立に互いに結合して5員、6員、又は7員の飽和環、又は不飽和環を形成していてもよい。形成される5員、6員、及び7員の環が、更に置換可能な基である場合には、上記R1〜R6で説明した置換基で置換されていてもよく、2個以上の置換基で置換されている場合には、それらの置換基は同一であっても異なっていてもよい。
一般式(I)中のR7は、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、又はヘテロ環基を表し、上記R1〜R6の置換基で説明したハロゲン原子、アルキル基、アリール基、及びヘテロ環基と同じ基を表し、その好ましい範囲も同様である。
R7のアルキル基、アリール基、及びヘテロ環基が、更に置換可能な基である場合には、上記R1〜R6の置換基で説明した置換基で置換されていてもよく、2個以上の置換基で置換されている場合には、それらの置換基は同一であっても異なっていてもよい。
一般式(I)中のX1及びY1は、各々独立に、ハロゲン原子、アルコキシ基、アリールオキシ基、水酸基、アルキルチオ基、アリールチオ基、又はヘテロ環チオ基を表す。これらのハロゲン原子、アルコキシ基、アリールオキシ基、水酸基、アルキルチオ基、アリールチオ基、及びヘテロ環チオ基の好ましい範囲は、上記R1〜R6で述べたのと同様である。
一般式(I)中のX1及びY1が置換可能な基である場合には、上記R1〜R6の置換基で説明した基で置換されていてもよく、2個以上の置換基で置換されている場合には、それらの置換基は同一であっても異なっていてもよい。
次に、一般式(I)で表される化合物の好ましい範囲について説明する。
一般式(I)中において好ましくは、R1及びR6は各々独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、シリル基、ヒドロキシル基、シアノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アミノ基、アニリノ基、ヘテロ環アミノ基、カルボンアミド基、ウレイド基、イミド基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルホンアミド基、アゾ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、又はホスフィノイルアミノ基を表し、R2及びR5は各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、ヒドロキシル基、シアノ基、ニトロ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、イミド基、アルコキシカルボニルアミノ基、スルホンアミド基、アゾ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、又はスルファモイル基、又は上記構造式(i)で表される基を表し、R3及びR4は各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、シリル基、ヒドロキシル基、シアノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アニリノ基、カルボンアミド基、ウレイド基、イミド基、アルコキシカルボニルアミノ基、スルホンアミド基、アゾ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルファモイル基、又はホスフィノイルアミノ基を表し、R7は、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、又はヘテロ環基を表し、X1、及びY1は、フッ素原子、アルコキシ基、アリールオキシ基を表す。
より好ましくは、一般式(I)において、R1及びR6は各々独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、シアノ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アミノ基、ヘテロ環アミノ基、カルボンアミド基、ウレイド基、イミド基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルホンアミド基、アゾ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、又はホスフィノイルアミノ基を表し、R2及びR5は各々独立に、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、シアノ基、ニトロ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、イミド基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、又はスルファモイル基、又は上記構造式(i)で表される基を表し、R3及びR4は各々独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、シアノ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、カルボンアミド基、ウレイド基、イミド基、アルコキシカルボニルアミノ基、スルホンアミド基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、又はスルファモイル基を表し、R7は、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、又はヘテロ環基を表し、X1及びY1は、フッ素原子、アルコキシ基、アリールオキシ基を表す。
特に好ましくは、一般式(I)中、R1及びR6の少なくとも一つは、アミノ基、カルボンアミド基、ウレイド基、アルコキシカルボニルアミノ基、又はイミド基を表し、R1及びR6の他の一つは、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、シアノ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アミノ基、ヘテロ環アミノ基、カルボンアミド基、ウレイド基、イミド基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルホンアミド基、アゾ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、又はホスフィノイルアミノ基を表し、R2及びR5の少なくとも一つは、シアノ基、又は前記構造式で表される基を表し、R2及びR5の他の一つは、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、シアノ基、ニトロ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、イミド基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、又はスルファモイル基、又は上記構造式(i)で表される基を表し、R7は、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、又はヘテロ環基を表し、X1及びY1は、フッ素原子、アルコキシ基、アリールオキシ基を表す。
最も好ましくは、一般式(I)中、R1及びR6の少なくとも一つは、アミノ基を表し、R1及びR6の他の一つは、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、シアノ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アミノ基、ヘテロ環アミノ基、カルボンアミド基、ウレイド基、イミド基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルホンアミド基、アゾ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、又はホスフィノイルアミノ基を表し、R2及びR5の少なくとも一つは、シアノ基、又は上記構造式で表される基で表され、R2、及びR5の他の一つは、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、シアノ基、ニトロ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、イミド基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、又はスルファモイル基、又は上記構造式(i)で表される基を表し、R7は、メチル基又は水素原子を表し、X1及びY1は、フッ素原子を表す。
一般式(I)中、R1とR2、R2とR3、R4とR5、又は/及びR5とR6とが、各々独立に、互いに結合して、置換基を有しない5員、6員、又は7員の飽和環、又は不飽和環を形成する場合、置換基を有しない5員、6員、又は7員の飽和環、又は不飽和環としては、例えば、ピロール環、フラン環、チオフェン環、ピラゾール環、イミダゾール環、トリアゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、ピロリジン環、ピペリジン環、シクロペンテン環、シクロヘキセン環、ベンゼン環、ピリジン環、ピラジン環、ピリダジン環が挙げられ、好ましくは、ベンゼン環、ピリジン環が挙げられる。
また、置換基を有する場合、該置換基としては、例えば、前記R1〜R6で説明した置換基が挙げられ、好ましい置換基もR1〜R6と同様である。
なお、一般式(I)で表される化合物は、互変異性体であってもよい。
本発明における特定ホウ素錯体化合物のモル吸光係数は、膜厚の観点から、できるだけ高いほうが好ましい。また、最大吸収波長λmaxは、色純度向上の観点から、520nm〜570nmが好ましく、530nm〜570nmが更に好ましい。なお、最大吸収波長、及びモル吸光係数は、分光光度計UV−2400PC(島津製作所社製)により測定されるものである。
本発明における特定ホウ素錯体化合物の融点は、溶解性の観点から、高すぎない方がよい。
本発明に用いる特定ホウ素錯体化合物であるジピロメテン錯体は、ピラゾロアゾール系アゾメチン色素と比較すると、1)吸収がシャープで、且カラーフィルタの青に必須な要件の450nmの吸収が小さく(透過率が高い)色純度が高い。2)ピラゾロアゾール系アゾメチン色素が吸光係数60000に対して、ジピロメテン錯体は吸光係数130000で、吸光係数が高い(色価が高い)。3)ジピロメテン錯体は耐熱性が高く堅牢である。4)ジピロメテンホウ素錯体は、単独で耐光性が高く堅牢である。
次に、本発明における特定ホウ素錯体化合物(例示化合物Ia−1〜Ia−19、Ib−1〜Ib−13、Ic−1〜Ic−17、II−1〜II−17、III−1〜III−15、IIIa−1〜IIIa−47、IV−1〜IV−20)の具体例を以下に示すが、本発明はこれらの限定されるわけではない。
上記一般式(I)で表されるホウ素錯体化合物は、米国特許第4,774,339号、同−5,433,896号、特開2001−240761号、同2002−155052号、特許第3614586号、Aust.J.Chem,1965,11,1835−1845、J.H.Boger et al,Heteroatom Chemistry,Vol.1,No.5,389(1990)等に記載の方法で合成することができる。
以下に、前述した例示化合物(Ia−1、Ib−1、Ic−6、III−4)の合成例を詳述する。
−合成例1−
(例示化合物Ia−1の合成)
以下の反応スキームAに従って合成した。
(中間体1の合成)
96.2g(1.04mol)の300mlのクロルアセトンにN−メチルピロリドン(NMP)を加えて15〜20℃で撹拌した。この溶液に、175g(0.945mol)のフタルイミドカリウムを、反応液の温度が30℃以下に保つように、数回に分けて添加した。添加終了後、2時間室温で撹拌して反応を完結させた。反応終了後、反応液を3000mlの水中に撹拌しながら注ぎ、結晶を析出させた。この結晶をろ過して、水洗し、乾燥した。163g(収率:84.9%)の中間体1を得た。
(中間体2の合成)
56.2g(0.66mol)のシアノ酢酸と、136g(0.6mol)の2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルシクロヘキサノールにトルエン400mlを加えて室温で撹拌した。この溶液に53.5mlのピリジンを滴下した。次いで、125ml(0.132mol)の無水酢酸を、反応液の温度を30℃以下に保つように滴下した。滴下終了後、室温で4時間撹拌して反応を完結させた。この反応液を110gの炭酸水素ナトリウム、2000mlの水からなる水溶液中にゆっくり添加した。次いで、1200mlの酢酸エチルを加えて抽出した。この酢酸エチル溶液を水洗した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。この酢酸エチル溶液を減圧下で濃縮し、残留物に400mlのメタノールを添加し、撹拌して結晶を析出させた。更に、100mlの水を滴下して、室温で1時間撹拌した。この結晶をろ過して、メタノール/水=4/1の混合液で洗浄してから、乾燥した。137g(収率:77.8%)の中間体2を得た。
(中間体3の合成)
上記の方法で得た102g(0.5mol)の中間体1と、147g(0.5mol)の中間体2に500mlのエタノールを加えて5℃〜10℃に冷却して撹拌した。この分散液に、201mlのSM−28(ナトリウムメトキシド28%メタノール溶液)を滴下した。反応液の温度は10℃以下に保った。滴下終了後、室温に戻して30分間撹拌し、次いで、20mlの水を添加して、加熱還流しながら4時間撹拌した。反応終了後、反応液を室温に冷却してから、750mlの水を滴下して結晶を析出させた。この結晶をろ過して、水洗して乾燥した。この結晶を1000mlのn−ヘキサンに分散、撹拌して洗浄し、ろ過して乾燥した。143g(収率:82.2%)の中間体3を得た。
(中間体4の合成)
上記の方法で得た14.0g(0.04mol)の中間体3に50mlの酢酸を加えて室温で撹拌した。この溶液に3.3g(0.022mol)のオルト蟻酸トリエチルを滴下した。滴下終了後、室温で12時間撹拌した。析出した結晶をろ過して、アセトニトリルで洗浄して乾燥した。9.5g(収率:67.2%)の中間体4を得た。
酢酸エチル溶液中の最大吸収波長(λmax=531.7nm)で、モル吸光係数(ε)は65400であった。融点は236〜238℃であった。
(例示化合物Ia−1の合成)
上記の方法で得た中間体4、7.07g(0.01mlo)に、脱水テトラヒドロフラン 100mlを加えて室温で撹拌した。この溶液に1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン(DBU)1.8gを加えて室温で撹拌した後、46〜49wt%の濃度のトリフロロボランジエチルエーテル溶液32mlを滴下した。この反応液を室温で、1時間撹拌した後、加熱還流撹拌を5時間行った。反応終了後、室温に冷却してから、3%重曹水1500ml中に撹拌しながらゆっくり注いだ。次いで酢酸エチル500mlを添加して抽出した。この酢酸エチル溶液を飽和食塩水で洗浄してから、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。この酢酸エチル溶液を減圧下で濃縮した。残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:n−ヘキサン/酢酸エチル=2/1)で分離精製し、アセトニトリルから結晶を析出させて、ろ過して乾燥した。例示化合物Ia−1、4.2g(収率:55.6%)を得た。酢酸エチル中の可視部の最大吸収波長は561.4nmであり、吸光係数は163300であった。
得られた例示化合物(Ia−1)の1H−NMRのデータを以下に示す。
1HNMR(CDCl3):6.94(s,1H)、6.80〜6.45(br,4H)、6.00(s,2H)、2.48(s,6H)、1.75〜1.63(br,4H)、1.60〜1.45(br,4H)、1.35〜1.15(m,6H)、1.02(d,6H)、0.88(s,36H)
−合成例2−
(例示化合物Ib−1の合成)
合成例1と同様な方法に従って合成した。
例示化合物Ib−1の酢酸エチル溶液中のλamx=583.5nmで、吸光係数は169500であった。
−合成例3−
(例示化合物1c−6の合成)
合成例1と同様な方法に従って合成した。
例示化合物Ic−6の酢酸エチル溶液中のλamx=588.1nmで、吸光係数は163000であった。
(例示化合物III−4の合成)
以下の反応スキームBにしたがって合成した。
(中間体7の合成)
脱水ジメチルホルムアミド(DMF)100mlを5℃に冷却して撹拌した。この溶液にオキシ塩化リン14.0mlを滴下した。滴下終了後、5℃〜10℃で、30分間撹拌した。この溶液に、特開2000−63353号記載の方法に従って合成した中間体6、32.2g(0.1mol)を、数回に分けて添加した。反応温度は5〜10℃に保った。添加終了後、室温に戻してから1時間撹拌を行った。反応終了後、反応液を水1000ml中に撹拌しながら注ぎ、次いで、2N−水酸化ナトリウム水溶液を用いて、pHが7〜8になるように調製した。この溶液を室温で、1時間撹拌した後、析出する結晶をろ過して、水洗し、乾燥した。中間体7を30.7g(収率:87.6%)得た。
(中間体9の合成)
上記の方法で得た中間体7、7.0g(0.02mol)と、合成例1と同じ方法に従って合成した中間体8、8.2g(0.02mol)に酢酸30mlを加えて室温で撹拌した。次いで、この溶液に、トリフロロ酢酸2mlを添加して室温で5時間撹拌した。反応終了後、この反応液にアセトニトリル20mlを添加して撹拌した。析出した結晶をろ過して、アセトニトリルで洗浄した後乾燥した。中間体9を12.3g(収率:82.7%)得た。
(例示化合物III−4の合成)
上記の方法で得た中間体9、7.43g(0.01mol)に脱水テトラヒドロフラン60mlを加えて室温で撹拌した。この溶液にDBU2.3gを添加した。次いで、46%〜49wt%のトリフロロボランジエチルエーテル溶液を15ml滴下した。滴下終了後、3時間加熱還流撹拌した。反応終了後、水600ml中に撹拌しながら注いだ。次いで、重曹を用いて中和し、酢酸エチル500mlを添加して抽出した。この酢酸エチル溶液を水洗した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。この酢酸エチル溶液を減圧下で、濃縮し、残留物をカラムクロマトグラフィー(溶離液:n−ヘキサン/酢酸エチル=2/1)で分離、精製した。2−プロパノールを添加して結晶を析出させてからろ過して乾燥した。例示化合物III−4を5.32g(収率:67.3%)得た。酢酸エチル溶液中のλmax=525.6nmで、ε=79700であった。
得られた例示化合物(III−4)の1H−NMRのデータを以下に示す。
1HNMR(CDCl3):
8.15〜8.00(br,1H)、7.6〜7.2(m,9H)、6.62(s,1H)、6.45〜6.30(br,1H)、5.90(s,1H)、4.05(t,2H)、3.07(s,3H)、2.36(s,3H)、1.35〜1.13(m,6H)、1.07〜0.96(m,2H)、0.82(s,18H)、0.73(d,3H)、0.50〜0.30(m,2H)
尚、上述した例示化合物Ia−1、Ib−1、Ic−6、及びIII−4以外の他の例示化合物についても、上記と類似の方法により合成することができる。
本発明のインクジェット用インクは、上記特定ホウ素錯体化合物をそれぞれ1種単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。
本発明における上記特定ホウ素錯体化合物のインクジェット用インク中における含有量は、分子量及びモル吸光係数によって異なるが、インクジェット用インクの全固形分成分に対して、0.5〜80質量%が好ましく、0.5〜60質量%がより好ましく、0.5〜50質量%が最も好ましい。
<一般式(A)で表されるテトラアザポルフィリン系シアン色素>
本発明のインクジェット用インクは、上記特定ホウ素錯体化合物に加え、下記一般式(A)で表されるテトラアザポルフィリン系シアン色素(以下、適宜、「特定色素−A」と称する)を併用することで、色純度に優れ、堅牢性に優れ、インクジェット用インクを用いてインクジェット法を用いてカラーフィルタを作製することができる。特に、インクジェット用インクを用いて形成された色画素を備えるカラーフィルタを製造することができ、これを用いる液晶ディスプレイ、画像表示デバイスに好適に用いることができる。
一般式(A)中、M1は、金属原子又は金属化合物を表し、Z1、Z2、Z3、及びZ4は、各々独立に、炭素原子、窒素原子、及び水素原子より選ばれる原子で構成された6員環を形成する原子群を表す。
上記金属原子又は金属化合物としては、錯体を形成可能な金属原子又は金属化合物であればいずれであってもよく、2価の金属原子、2価の金属酸化物、2価の金属水酸化物、又は2価の金属塩化物が含まれる。
一般式(A)中のM1は、例えば、Zn、Mg、Si、Sn、Rh、Pt、Pd、Mo、Mn、Pb、Cu、Ni、Co、及びFe等、並びに、AlCl、InCl、FeCl、TiCl2、SnCl2、SiCl2、GeCl2などの金属塩化物、TiO、VO等の金属酸化物、Si(OH)2等の金属水酸化物が含まれる。
一般式(A)中のZ1、Z2、Z3、及びZ4は、各々独立に、炭素原子、窒素原子、及び水素原子より選ばれる原子で構成される6員環を形成するために必要な原子群を表す。該6員環は、飽和環であっても、不飽和環であってもよく、無置換であっても置換基を有していてもよい。更に、他の5員又は6員の環が縮合していてもよい。6員環にはベンゼン環、シクロヘキサン環、ピリジン環、ピリミジン環、ピラジン環などが含まれる。
本発明における特定色素−Aの最大吸収波長λmaxは、色純度向上の観点から、580nm〜700nmが好ましく、600nm〜680nmが更に好ましい。なお、最大吸収波長は、特定ホウ素錯体化合物と同様に測定した。
<下記一般式(B)で表されるフタロシアニン系色素>
上記一般式(A)で表されるテトラアザポルフィリン系色素の中でも、特に下記一般式(B)で表されるフタロシアニン系色素(以下、適宜、「特定色素−B」)が好ましい。
一般式(B)中、R101〜R116は、各々独立に、水素原子又は置換基を表し、M2は、金属原子又は金属化合物を表す。
一般式(B)中、M2は上記一般式(A)で表される化合物におけるM1の例と同義であり、その好ましい態様も同様である。
一般式(B)中、R101〜R116は各々独立に、水素原子又は置換基を表し、R101〜R116で表される置換基は、既述の一般式(I)中のR1〜R6で表される置換基の例示と同義であり、その好ましい態様も同様である。一般式(B)で表される化合物のR101〜R116の置換基が更に置換可能な基である場合には、上記R1〜R6で説明した置換基で置換されていてもよく、2個以上の置換基で置換されている場合には、それらの置換基は同一であっても異なっていてもよい。
また、R101〜R116で表される置換基の好ましい態様の一つとして、「*−S(=O)m−(L)n−(A)p」(以後、置換基Aと称する)で表される基が挙げられる。Aはそれぞれ独立に水素原子または置換基を表し、該置換基の定義はR101〜R116で表される置換基と同義である。*はベンゼン環との結合位置を示す。なお、R101〜R116の少なくとも一つが置換基Aであることが好ましく、1〜4つが置換基Aであることが好ましい。一般式(B)中の各ベンゼン環基に1つずつ置換基Aがあることも好ましい。複数の置換基Aが含まれる場合、それらは同一でも、異なっていてもよい。
mはそれぞれ独立に1または2を表し、mは2である場合が好ましい。nはそれぞれ独立に0または1を表し、nは1である場合が好ましい。pはそれぞれ独立に1〜5の整数を表し、1〜3である場合が好ましく、1である場合がより好ましい。
Lは、脂肪族または芳香族の連結基を表し、複数のLは同一でも異なってもよい。Lで表される脂肪族の連結基としては、無置換でも置換基を有していてもよく、総炭素数1〜20の脂肪族基が好ましく、総炭素数1〜15の脂肪族基がより好ましい。例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基等が挙げられる。
Lで表される芳香族の連結基としては無置換でも置換基を有していてもよく、総炭素数6〜20の芳香族基が好ましく、総炭素数6〜16の芳香族基がより好ましい。例えば、フェニレン基、ナフチレン基等が挙げられ、最も好ましいのはフェニレン基である。
なお、nが0の場合は、AとS(硫黄原子)とが直接結合する。
なお、本発明の効果の点で、Aは、ハロゲン原子、脂肪族基(アルキル基など)、シアノ基、カルボキシ基、カルバモイル基、脂肪族オキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、ヒドロキシ基、脂肪族オキシ基、カルバモイルオキシ基、ヘテロ環オキシ基、脂肪族オキシカルボニルオキシ基、カルバモイルアミノ基、スルフアモイルアミノ基、脂肪族オキシカルボニルアミノ基、脂肪族スルホニルアミノ基、アリールスルホニルアミノ基、脂肪族チオ基、アリールチオ基、脂肪族スルホニル基、アリールスルホニル基、スルファモイル基、脂肪族スルホニルカルバモイル基、アリールスルホニルカルバモイル基、脂肪族カルボニルスルファモイル基、アリールカルボニルスルファモイル基、脂肪族スルホニルスルファモイル基、アリールスルホニルスルファモイル基、イミド基、スルホ基、またはこれらを組み合わせた基であることが好ましい。
本発明においては、分子中の複数のAはそれぞれ同一であっても異なっていてもよく、複数のA中、少なくとも1つのAは、−OY、−COOY、−SO3Y、−CON(Y)CO−、CON(Y)SO2−又は−SO2N(Y)CO−を有することが好ましい。
上記−OY、−COOY、−SO3Y、−CON(Y)CO−、CON(Y)SO2−又は−SO2N(Y)CO−は、連結基Lに結合していてもよく、連結基Lを介さずに−S(=O)m−と直接結合していてもよい。連結基Lを介さずに−S(=O)m−と直接結合している場合、R1は−OYであることが好ましく、−S(=O)m−と共にテトラアザポルフィリン環に直接結合する−SO3Yを構成する(m=2)ことが好ましい。
Yは水素原子、金属原子または共役酸を表す。Yで表される金属原子はLi、Na、K、Mg、Caが挙げられ、好ましいのはLi、Na、Kである。Yで表される共役酸を形成する塩基としては、3級アミン類(例えば、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、N−メチルピペリジン、4−メチルモルホリン)、グアニジン類(例えば、グアニジン、N,N−ジフェニルグアニジン、1,3−ジ−o−トリルグアニジン)、ピリジン類(例えば、ピリジン、2-メチルピリジン)等が挙げられる。中でも、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、N,N−ジフェニルグアニジン、1,3−ジ−o−トリルグアニジンが好ましい。
以下、特定色素−BのR101〜R116の置換基の例(T−1〜T141)を示す。但し、本発明においては、これらに限定されるものではない。なお、以下の例の中では、好ましくはT−87、T−89、T−94、T−95、T−96、T−97、T−98、T−125、T−126、T−127、T−128、T−129、T−140、T−141が挙げられる。
次に、一般式(B)で表されるフタロシアニン系色素の好ましい範囲について説明する。
上記一般式(B)で表されるフタロシアニン系色素は、α位の置換体(α置換体)として、(R101とR104)、(R105とR108)、(R109とR112)、及び(R113とR116)の組み合わせの少なくとも1組に置換基を有しているか、β位の置換体(β置換体)として(R102とR103)、(R106とR107)、(R110とR111)、及び(R114とR115)の組み合わせの少なくとも1組に置換基を有しているか、あるいはα位、及びβ位の置換体として、(R101とR103及び/又はR102とR104)、(R105とR107及び/又はR106とR108)、(R109とR111及び/又はR110とR112)、及び(R113とR115及び/又はR114とR116)の組み合わせの中で、少なくとも1組に置換基を有していることが好ましい。
ここで、上記R101〜R116で表される置換基としては、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、シリル基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、シアノ基、ニトロ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、シリルオキシ基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、カルバモイルオキシ基、スルファモイルオキシ基、アルキルスルホニルオキシ基、アリールスルホニルオキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、アミノ基、アニリノ基、カルボンアミド基、ウレイド基、イミド基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルホンアミド基、スルファモイルアミノ基、アゾ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルファモイル基、スルホ基、ホスホニル基、ホスフィノイルアミノ基が挙げられる。M2としては、Zn、Mg、Si、Sn、Rh、Pt、Pd、Mo、Mn、Pb、Cu、Ni、Co、Fe、TiO、VO等が挙げられる。
上記一般式(B)で表されるフタロシアニン系色素の好ましい範囲として、α置換体(モノ置換体)として(R101又はR104)、(R105又はR108)、(R109又はR112)、及び(R113又はR116)のうち少なくとも一つに置換基を有するか、又は、β置換体(モノ置換体)として(R102又はR103)、(R106又はR107)、(R110又はR111)、及び(R114又はR115)のうち少なくとも一つに置換基を有する化合物である。
ここで、上記R101〜R116で表される置換基としては、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、シリル基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、シアノ基、ニトロ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、アミノ基、アニリノ基、カルボンアミド基、ウレイド基、イミド基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルホンアミド基、スルファモイルアミノ基、アゾ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルファモイル基、スルホ基、ホスフィノイルアミノ基が挙げられる。M2としては、Zn、Pd、Cu、Ni、Co、TiO、VO等が挙げられる。
上記一般式(B)で表されるフタロシアニン系色素のより好ましい範囲として、α置換体として(R101又はR104)、(R105又はR108)、(R109又はR112)、及び(R113又はR116)の内の少なくとも3つに置換基を有するか、又は、β置換体として(R102又はR103)、(R106又はR107)、(R110又はR111)、及び(R114又はR115)の内の少なくとも3つに置換基を有する化合物である。
ここで、上記R101〜R116で表される置換基としては、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、シアノ基、ニトロ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アミノ基、アニリノ基、カルボンアミド基、ウレイド基、イミド基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルホンアミド基、スルファモイルアミノ基、アゾ基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルファモイル基、スルホ基が挙げられる。M2は、Zn、Pd、Cu、Ni、Co、VO等が挙げられる。
上記一般式(B)で表されるフタロシアニン系色素の更に好ましい範囲として、α置換体として(R101又はR104)、(R105又はR108)、(R109又はR112)、及び(R113又はR116)の内の少なくとも3つに同一の置換基を有するか、又は、β置換体として(R102又はR103)、(R106又はR107)、(R110又はR111)、及び(R114又はR115)の内の少なくとも3つに同一の置換基を有する化合物である。
ここで、上記R101〜R116で表される置換基としては、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、カルボキシル基、シアノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、カルボンアミド基、ウレイド基、イミド基、スルホンアミド基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルファモイル基、スルホ基が挙げられる。M2としては、Zn、Pd、Cu、Ni、Co、又はVO等が挙げられる。
上記一般式(B)で表されるフタロシアニン系色素の特に好ましい範囲として、α置換体として(R101又はR104)、(R105又はR108)、(R109又はR112)、及び(R113又はR116)の少なくとも3つに置換基を有するか、又はβ置換体として(R102又はR103)、(R106又はR107)、(R110又はR111)、及び(R114又はR115)の内の少なくとも3つに置換基を有し、その置換基が全て同一の化合物である。
ここで、上記R101〜R116で表される置換基としては、ハロゲン原子、アルキル基、ヘテロ環基、カルボキシル基、シアノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルファモイル基、又はスルホ基が挙げられる。M2としては、Zn、Pd、Cu、Ni、Co、又はVO等が挙げられる。
上記一般式(B)で表されるフタロシアニン系色素の最も好ましい範囲として、α置換体として(R101又はR104)、(R105又はR108)、(R109又はR112)、及び(R113又はR116)の少なくとも3つに置換基を有するか、β置換体として(R102又はR103)、(R106又はR107)、(R110又はR111)、及び(R114又はR115)の内の少なくとも3つに置換基を有し、その置換基全てが同一の化合物であって、該R101〜R116で表される置換基としては、ハロゲン原子、アルキル基、ヘテロ環基、カルボキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルファモイル基、又はスルホ基が挙げられる。M2としては、Zn、Cu、Co、VO等が挙げられる。
以下に、一般式(A)で表されるテトラアザポルフィリン系色素(一般式(B)で表されるフタロシアニン系色素を含む)の具体例(例示化合物CA−1〜CA−46、CB−1〜CB−46、CC−1〜CC−10、CK−1〜CK−19、CE−1〜CE−46、CF−1〜CF−46、CG−1〜CG−46、CI−1〜CI−46、並びにCH−1〜CH−46)を示す。但し、本発明においてはこれらに限定されるものではない。
−合成例−
次に前記一般式(A)又は(B)で表される色素の合成例について、上述の例示化合物CI−29の合成を一例に下記スキームDを参照にして詳述する。
(中間体Aの合成)
3−ニトロフタロニトリル(25g、0.144mol)、DMSO(200ml)、3−メルカプトプロパンスルホン酸ナトリウム塩(32g、0.18mol)の混合物に炭酸ナトリウム(16.5g、0.156mol)を加えて、60℃に加熱し3時間撹拌した。反応混合物を10%食塩水(300g)に注ぎ、析出した固体をろ取し、イソプロパノール/水(3/1)混合液で洗浄した。ここで得られた固体に水(200ml)、酢酸(3ml)、Na2WO4(2g)を加え、31%過酸化水素水(50ml)を添加した後、60℃で加熱、撹拌した。4時間撹拌した後、イソプロパノール(500ml)に反応混合物を注ぎ析出した固体をろ取後、イソプロパノール/水(3/1)混合液で洗浄した。ここで得られた固体を乾燥し、中間体A24gを得た(3−ニトロフタロニトリルからの収率49%)。
(中間体Bの合成)
中間体A67.3g(0.2mol)にアセトニトリル200mlを加えて70℃〜75℃に加熱して撹拌した。この分散液にオキシ塩化リン37mlを滴下した。滴下終了後、70〜75℃で4時間撹拌を行い、反応を完結させた。反応終了後、反応液を室温に冷却してから水2000ml中に撹拌しながら注ぎ、結晶を析出させた。この結晶をろ過して、水洗してから、2−プロパノール300ml中に分散させた。この分散液を1時間撹拌した後、ろ過して、乾燥した。中間体Bを63.0g(収率:94,5%)得た。
(中間体Cの合成)
上記の方法で得た中間体B50.0g(0.15mol)にアセトニトリル250mlを加えて5℃に冷却して撹拌した。この溶液に、3−エトキシプロピルアミン31.0gを滴下した。滴下終了後、室温に戻してから2時間撹拌を行い、反応を完結させた。この反応液を水1500ml中に撹拌しながら注ぎ、結晶を析出させた。この結晶をろ過して水洗した後、2−プロパノール500ml中に分散させた。室温で2時間撹拌を行った後、ろ過して乾燥した。中間体Cを52.6g(収率:87.7%)得た。
(CI−29の合成)
上記の方法で得た中間体C、7.99g(0.02mol)、o−フタロニトリル1.28g(0.01mol)と、中間体A3.36g(0.01mol)にジエチレングリコール30ml、2−メトキシプロパノール100mlとを加えて100℃に加熱して撹拌した。この溶液に安息香酸アンモニウム3.87gと酢酸銅1.26gとを添加した。添加終了後、95℃〜100℃で6時間撹拌を行い、反応を完結させた。この反応液を室温に冷却してからメタノール60mlを添加した後、塩酸75mlを水800mlで希釈した水溶液に撹拌しながら注いだ。析出する結晶をろ過して、水洗し乾燥した。この結晶をメタノール250mlに加熱溶解してろ過して不溶物を除去した。このロ液を減圧下で濃縮し、残渣に酢酸エチル250mlを添加して撹拌した。分散している結晶をろ過して乾燥した。例示化合物CI−29を24.7g(収率:92.9%)得た。クロロホルム中におけるCI−29の最大吸収波長、モル吸光係数は、それぞれ、λmax=665.6nmでε=84600であった。
得られた色素の酢酸エチル中における極大吸収波長(λmax)及びモル吸光係数(ε)の分光光度計UV−2400PC(島津製作所社製)による測定を行ったところ、最大吸収波長λmax、モル吸光係数(ε)は、それぞれ、623.4nm、47000であった。
尚、上述した色素CI−29以外の他の例示化合物についても、上記と同様な方法により合成することができる。
本発明における特定色素−Bの最大吸収波長λmaxは、色純度向上の観点から、580nm〜700nmが好ましく、600nm〜680nmが更に好ましい。なお、最大吸収波長は、分光光度計UV−2400PC(島津製作所社製)で測定した。
<一般式(C)で表されるピロロアゾール系アゾメチン色素>
本発明においては、上記特定色素−A及び特定色素−Bの他に、下記一般式(C)で表されるピロロアゾール系アゾメチン色素(以下、適宜、「特定色素−C」と称する)を好適に用いることができ、色純度に優れる、特に450nm以下の透過率が高いインクジェット用インク硬化物、及び硬化物を用いたカラーフィルタを得ることが出来る。該カラーフィルタは液晶ディスプレイ、画像表示ディスプレイ等に好適に用いることができる。
一般式(C)中、R50〜R55は、各々独立に水素原子、又は置換基を表し、R56、R57は、各々独立に水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、又はヘテロ環基を表し、Za及びZbは各々独立に−N=、又は−C(R58)=を表す。R58は水素原子、又は置換基を表す。R52とR53、R53とR57、R54とR55、R55とR56、及び/又はR56とR57とが互いに結合して5員、6員、又は7員の環を形成してもよい。
一般式(C)中のR50〜R55の置換基は、上記一般式(I)中のR1〜R6の置換基で説明した基と同義であり、その好ましい範囲も同様である。
一般式(C)中のR50〜R55の置換基が更に置換可能な基である場合には、上記R1〜R6の置換基で説明した基で置換されていてもよく、2個以上の置換基で置換されている場合には、それらの置換基は同一であっても異なっていてもよい。
一般式(C)中のR56及びR57は、各々独立に水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、又はヘテロ環基を表す。アルキル基、アルケニル基、アリール基、及びヘテロ環基の好ましい範囲は、上記一般式(I)中のR1〜R6で説明したアルキル基、アルケニル基、アリール基、及びヘテロ環基と同義である。
一般式(C)中のR56及びR57のアルキル基、アルケニル基、アリール基、及びヘテロ環基は、更に、上記R1〜R6で説明した置換基で置換されていてもよく、2個以上の置換基で置換されている場合には、それらの置換基は同一であっても異なっていてもよい。
一般式(C)中のZa及びZbは、各々独立に−N=、又は−C(R58)=を表す。R58は水素原子又は置換基を表す。R58の置換基は、上記一般式(I)中で説明した置換基と同義であり、その好ましい範囲も同様である。R58の置換基が更に置換可能な基である場合には、上記一般式(I)中の説明した置換基を有していてもよく、2個以上の置換基で置換されている場合にはそれらの置換基は同一であっても異なっていてもよい。
一般式(C)で表される色素のR52とR53、R53とR57、R54とR55、R55とR56、及び/又はR56とR57が互いに結合して5員、6員、又は7員の環を形成してもよい。
特定色素−Cは、好ましくは、R50とR51が、上記R1〜R6で説明した置換基から選択され、R50とR51で表される置換基のハメット置換基定数σp値の総和が0.7以上となる置換基を表し、R59は、水素原子、アルキル基、アリール基、又はヘテロ環基で表される。
ハメット則は1935年にL.P.Hammettにより提唱された経験則であり、一般的な成書に記載されている。例えば、J.A.Dean編「Lange’s and book of Chemistry」第12版、1979年(McGrew−Hill)や「化学の領域」増刊、122号、96〜103頁、1979年(南光堂)に詳しい。但し、本発明において各置換基をハメットの置換基定数σp値によって限定若しくは特定した場合であっても上記の成書で見出せる文献既知の値がある置換基にのみ限定されるものではなくハメット則に基づいて測定した場合に、その値が範囲内に含まれる置換基も含む。尚、本発明のおける「ハメットの置換基定数σp値」はベンゼン誘導体ではない置換基についても置換基の電子効果を示す尺度として置換位置に関係なくσp値を使用するものとする。
ハメット置換基定数σp値が0.3以上の電子吸引性基としては、例えば、アシル基(好ましくは炭素数1〜24、より好ましくは炭素数2〜18のアシル基で、例えば、アセチル、ピバロイル、2−エチルヘキシル、ベンゾイル、シクロヘキサノイル)、アシルオキシ基(好ましくは炭素数2〜24、より好ましくは炭素数2〜12のアシルオキシ基で、例えば、アセトキシ、ピバロイルオキシ)、カルバモイル基(好ましくは炭素数1〜24、より好ましくは炭素数1〜18のカルバモイル基で、例えば、カルバモイル、N−メチルカルバモイル、N−エチルカルバモイル、N−t−ブチルカルバモイル、N−シクロヘキシルカルバモイル、N−フェニルカルバモイル、N,N−ジエチルカルバモイル、N,N−ジイソプロピルカルバモイル、N−エチル−N−フェニルカルバモイル)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数1〜24、より好ましくは炭素数1〜18のアルコキシカルボニル基で、例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、イソプロピルオキシカルボニル、シクロヘキシルカルボニル)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは炭素数7〜24、より好ましくは炭素数7〜18のアリールオキシカルボニル基で、例えば、フェノキシカルボニル)、シアノ基、ニトロ基、アルキルスルフィニル基(好ましくは炭素数1〜24、より好ましくは炭素数1〜18のアルキルスルフィニル基で、例えば、メチルスルフィニル、エチルスルフィニル、ブチルスルフィニル、2−エチルヘキシルスルフィニル、シクロペンチルスルフィニル)、アリールスルフィニル基(好ましくは炭素数6〜24、より好ましくは炭素数6〜18のアリールスルフィニル基で、例えば、フェニルスルフィニル、p−トルエンスルフィニル)、アルキルスルホニル基(好ましくは炭素数1〜24、より好ましくは炭素数1〜18のアルキルスルホニル基で、例えば、メチルスルホニル、エチルスルホニル、イソプロピルスルホニル、シクロヘキシルスルホニル)、アリールスルホニル基(好ましくは炭素数6〜24、より好ましくは炭素数6〜18のアリールスルホニル基で、例えば、フェニルスルホニル、ナフチルスルホニル)、スルファモイル基(好ましくは炭素数24以下、より好ましくは炭素数18以下のスルファモイル基で、例えば、N−エチルスルファモイル、N,N−ジプロピルスルファモイル、N−エチル−N−フェニルスルファモイル、N−フェニルスルファモイル、N−シクロヘキシルスルファモイル)、ハロゲン化アルキル基(好ましくは炭素数1〜24、より好ましくは炭素数1〜12のハロゲン化アルキル基で、例えば、トリフロロメチル、ペンタフロロプロピル)、ハロゲン化アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜24、より好ましくは炭素数1〜18のハロゲン化アルコキシ基で例えば、トリフロロメトキシ)、ハロゲン化アリールオキシ基(好ましくは炭素数6〜24、より好ましくは炭素数6〜12のハロゲン化アリールオキシ基で、例えば、ペンタフロロフェニルオキシ)、ヘテロ環基(好ましくは炭素数1〜24、より好ましくは炭素数1〜12のヘテロ環基で、例えば、2−ベンゾオキサゾイル、2−ベンゾチアゾリル、1−フェニル−2−ベンゾイミダゾリル、5−クロロ−1−テトラゾリル、1−ピロリル)等をあげることができる。
一般式(C)で表される化合物の具体例(CD−1〜CD−46)を以下に示すが、本発明はこれらに限定されるわけではない。
一般式(C)で表される化合物の合成は、特開平5−177959号の段落番号〔0070〕〜〔0072〕、特開2003−96326号の段落番号〔0041〕〜〔0054〕、特開2003−96327号の段落番号〔0043〕〜〔0056〕等に記載の方法で合成できる。
本発明における特定色素−Cの最大吸収波長λmaxは、色純度向上の観点から、580nm〜700nmが好ましく、600nm〜680nmが更に好ましい。なお、最大吸収波長、及びモル吸光係数は、分光光度計UV−2400PC(島津製作所社製)で測定した。
上記特定色素−A、特定色素−B、及び/又は特定色素−Cを含有する場合の含有量は、それぞれのモル吸光係数や、求められる分光特性、膜厚等により異なるが、本発明におけるインクジェット用インクの全固形分に対して、1質量%〜80質量%であることが好ましく、10質量%〜70質量%であることがより好ましい。
これらの着色剤は、本発明におけるインクジェット用インク中に、それぞれ単独で含有されていてもよく、2種以上を併用して用いてもよい。
本発明のインクジェット用インク、及び該インクジェット用インクを用いたカラーフィルタには、本発明における上記色素以外にも、550nm〜650nmに吸収極大を有するトリアリールメタン系の着色剤、例えば、シー・アイ・アシッドブルー7(C.I.AcidBlue7)、シー・アイ・アシッドブルー83(C.I.Acid Blue83)、シー・アイ・アシッドブルー90(C.I.Acid Blue90)、シー・アイ・ソルベント・ブルー38(C.I.Solvent Blue38)、シー・アイ・アシッド・バイオレット17(C.I.Acid Violet17)、シー・アイ・アシッド・バイオレット49(C.I.Acid Violet49)、シー・アイ・アシッド・グリーン3(C.I.Acid Green3)等を用いることが出来る。
更に、500nm〜600nmに吸収極大を有するキサンテン系の色素、例えば、シー・アイ・アシッド・レッド289(C.I.Acid.Red 289)等も使用できる。
上記トリアリールメタン系の着色剤の含有量は、本発明の効果を損なわない範囲で使用でき、本発明のインクジェット用インクの全固形分に対して、0.5質量%〜50質量%であることが好ましい。
また、青色フィルタアレイを作製するためには、上記特定ホウ素錯体化合物と、上記特定色素−A、上記特定色素−B、及び上記特定色素−Cの少なくとも一種とを混合して用いることが好ましい。
この時、それぞれの混合比率は、それぞれのモル吸光係数や、求められる分光特性、膜厚等により異なるが、一般的には、含有比で(上記特定ホウ素錯体化合物の総含有量):(上記特定色素−A、上記特定色素−B、上記特定色素−Cの総含有量)=20:1〜1:20の範囲で使用できる。好ましくは10:1〜1:10の範囲であり、より好ましくは4:1〜1:1の範囲で用いられる。
<溶媒>
本発明のインクジェット用インクは、溶媒を含有することが好ましい。溶媒としては、各成分の溶解性や後述する溶媒の沸点を満足すれば基本的に特に限定されないが、特に後述するバインダーの溶解性、塗布性、安全性を考慮して選ばれることが好ましい。溶媒の具体例としては、エステル類、例えば、ギ酸アミル、酢酸イソアミル、プロピオン酸ブチル、酪酸イソプロピル、酪酸エチル、酪酸ブチル、アルキルエステル類、乳酸メチル、乳酸エチル、オキシ酢酸メチル、オキシ酢酸エチル、オキシ酢酸ブチル、メトキシ酢酸メチル、メトキシ酢酸エチル、メトキシ酢酸ブチル、エトキシ酢酸メチル、エトキシ酢酸エチルなど;3−オキシプロピオン酸メチル、3−オキシプロピオン酸エチルなどの3−オキシプロピオン酸アルキルエステル類、例えば、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチルなど;2−オキシプロピオン酸メチル、2−オキシプロピオン酸エチル、2−オキシプロピオン酸プロピルなどの2−オキシプロピオン酸アルキルエステル類、例えば、2−メトキシプロピオン酸メチル、2−メトキシプロピオン酸エチル、2−メトキシプロピオン酸プロピル、2−エトキシプロピオン酸メチル、2−エトキシプロピオン酸エチル、2−オキシ−2−メチルプロピオン酸メチル、2−オキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、2−メトキシ−2−メチルプロピオン酸メチル、2−エトキシ−2−メチルプロピオン酸エチルなど;ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ピルビン酸プロピル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、2−オキソブタン酸メチル、2−オキソブタン酸エチルなど;エーテル類、例えば、ジエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールプロピルエーテルアセテートなど;ケトン類、例えば、シクロヘキサノン、2−ヘプタノン、3−ヘプタノンなど;芳香族炭化水素類、例えば、キシレンなど;ジシクロヘキシルメチルアミンなどが好適に挙げられる。これらは1種または2種以上を併用して使用しても構わない。
本発明のインクジェット用インク中の該溶媒の含有量は、30〜90質量%が好ましく、50〜90質量%がさらに好ましい。30質量%以上であると1画素内に打滴されるインク量が保たれ、画素内でのインクの濡れ広がりが良好である。また、90質量%以下であると、インク中の機能膜(例えば画素など)を形成するための溶剤以外の成分量を所定量以上に保つことができる。これより、カラーフィルタを形成する場合には、1画素当たりのインク必要量が多くなり過ぎることがなく、例えば隔壁で区画された凹部にインクジェット法でインクを付与する場合に、凹部からのインク溢れや隣の画素との混色の発生を抑制することができる。
本発明のインクジェット用インクは、ノズルに対するインクの吐出性および基板に対する濡れ性の点で、上述した溶剤のうち、沸点の高い溶剤を含有していることが好ましい。沸点の低い溶剤は、インクジェットヘッド上でもすばやく蒸発するため、ヘッド上でのインクの粘度上昇や固形分の析出等を容易に引き起こし、吐出性の悪化を伴う場合が多い。また、インクが基板面に着弾し、基板面上を濡れ拡がる場合も、濡れ拡がりの縁の部分において溶剤が蒸発することでインクの粘度上昇が起こり、ピニング(PINNING)という現象により、濡れ拡がりが抑えられる場合がある。
本発明で用いられる溶媒の沸点は、インクジェット用インクに用いられる好適範囲であれば限定されないが、吐出安定性(連続吐出および休止後吐出)などの観点から、好ましくは130〜260℃である。130℃より低いと、面内の画素の形状の均一性の点で好ましくない。260℃より高いと、プリベークによる溶媒除去の点で好ましくない。なお、溶媒の沸点は、圧力1atmのもとでの沸点を意味し、化合物辞典(Chapman & Hall社)などの物性値表により知ることができる。これらは1種または2種以上を併用してもよい。
なお、上述のインクジェット用インクが後述する重合性モノマーなどを含まない場合、インクに含まれる溶剤を除去して得られるインク残部(色画素)の厚みが薄くなるため、混色などの防止目的で基板上に形成された隔壁の高さを低くすることができ、コスト・生産性の面から好ましい。
<重合性モノマー>
本発明のインクジェット用インクは、重合性モノマーを含んでいてもよい。重合性モノマーの添加により、インク液滴と基板との密着性が向上する。併せて、上述したジピロメテン系ホウ素錯体化合物のインク中での分散均一性の向上や、耐候性・耐熱性などの堅牢性の向上が期待できる。この重合性モノマーとしては、特に制限は無いが、各種置換基のバリエーションが多く、入手が容易な点で、(メタ)アクリル系モノマー、エポキシ系モノマー、およびオキセタニル系モノマーから選択される1種以上を含有することが好ましい。
重合性モノマーとしては、重合性基を2つ以上有するモノマー(以下、「2官能以上のモノマー」ともいう)が好ましい。重合性モノマーとしては、活性エネルギー線および/または熱により重合反応可能であれば特に限定されるものではないが、膜の強度や耐溶剤性などの点から、重合性基を3つ以上有するモノマー(以下、「3官能以上のモノマー」ともいう)がより好ましい。
上述した重合性基の種類としては、特に制限はないが、上記の通り、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、エポキシ基、オキセタニル基が特に好ましい。重合性モノマーの具体例としては、特開2001−350012号公報の段落番号[0061]〜[0065]に記載のエポキシ基含有モノマー、特開2002−371216号公報の段落番号[0016]に記載のアクリレートモノマーおよびメタクリレートモノマー、特開2001−220526号公報、特開2001−310937号公報、特開2003−341217号公報の段落番号[0021]〜[0084]および特開2004−91556号公報の段落番号[0022]〜[0058]などに記載のオキセタニル基含有モノマー、並びに、シーエムシー出版「反応性モノマーの市場展望」に記載のモノマーなどが挙げられる。
エポキシ系モノマーであるエポキシ基含有モノマーとしては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ジフェニルエーテル型エポキシ樹脂、ハイドロキノン型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、フルオレン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、トリスヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂、3官能型エポキシ樹脂、テトラフェニロールエタン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエンフェノール型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールA含核ポリオール型エポキシ樹脂、ポリプロピレングリコール型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、グリオキザール型エポキシ樹脂、脂環型エポキシ樹脂、複素環型エポキシ樹脂などを挙げることができる。
より具体的には、商品名エピコート828(油化シェルエポキシ社製)などのビスフェノールA型エポキシ樹脂、商品名YDF−175S(東都化成社製)などのビスフェノールF型エポキシ樹脂、商品名YDB−715(東都化成社製)などの臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、商品名EPICLON EXA1514(大日本インキ化学工業社製)などのビスフェノールS型エポキシ樹脂、商品名YDC−1312(東都化成社製)などのハイドロキノン型エポキシ樹脂、商品名EPICLON EXA4032(大日本インキ化学工業社製)などのナフタレン型エポキシ樹脂、商品名エピコートYX4000H(油化シェルエポキシ社製)などのビフェニル型エポキシ樹脂、商品名エピコート157S70(油化シェルエポキシ社製)などのビスフェノールA型ノボラック系エポキシ樹脂、商品名エピコート154(油化シェルエポキシ社製)、商品名YDPN−638(東都化成社製)などのフェノールノボラック型エポキシ樹脂、商品名YDCN−701(東都化成社製)などのクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、商品名EPICLON HP−7200(大日本インキ化学工業社製)などのジシクロペンタジエンフェノール型エポキシ樹脂、商品名エピコート1032H60(油化シェルエポキシ社製)などのトリスヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂、商品名VG3101M80(三井化学社製)などの3官能型エポキシ樹脂、商品名エピコート1031S(油化シェルエポキシ社製)などのテトラフェニロールエタン型エポキシ樹脂、商品名デナコールEX−411(ナガセ化成工業社製)などの4官能型エポキシ樹脂、商品名ST−3000(東都化成社製)などの水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、商品名エピコート190P(油化シェルエポキシ社製)などのグリシジルエステル型エポキシ樹脂、商品名YH−434(東都化成社製)などのグリシジルアミン型エポキシ樹脂、商品名YDG−414(東都化成社製)などのグリオキザール型エポキシ樹脂、商品名エポリードGT−401(ダイセル化学社製)などの脂環式多官能エポキシ化合物、トリグリシジルイソシアネート(TGIC)などの複素環型エポキシ樹脂などを例示することができる。また、必要であれば、エポキシ反応性希釈剤として、商品名ネオトートE(東都化成社製)などを混合することができる。
また、(メタ)アクリル系モノマーであるアクリレートモノマーおよびメタクリレートモノマーとしては、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、などの単官能のアクリレートやメタアクリレートや、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオール(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(アクリロイルオキシプロピル)エーテル、トリ(アクリロイロキシエチル)イソシアヌレートなどのアクリレートまたはメタクリレートや、グリセリンやトリメチロールエタンなどの多官能アルコールにエチレンオキサイドやプロピレンオキサイドを付加させた後(メタ)アクリレート化して得られるトリメチロールプロパンPO(プロピレンオキサイド)変性トリ(メタ)アクリレートやトリメチロールプロパンEO(エチレンオキサイド)変性トリ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、特公昭48−41708号、特公昭50−6034号、特開昭51−37193号の各公報に記載のウレタンアクリレート類、特開昭48−64183号、特公昭49−43191号、特公昭52−30490号の各公報に記載のポリエステルアクリレート類、エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸との反応生成物であるエポキシアクリレート類などの多官能のアクリレートやメタアクリレート、およびこれらの混合物を挙げることができる。またさらに、日本接着協会誌Vol.20、No.7、300〜308頁に光硬化性モノマー及びオリゴマーとして紹介されているものが挙げられるなどが挙げられる。単管能モノマー、2官能モノマー、3官能以上の多官能モノマー、オリゴマーを適宜組み合わせて粘度を調整することが好ましい。単官能モノマーや2官能モノマーを併用すると、インクの粘度が低下し、ノズル詰まりを防止できる効果が得られ、膜の強度を補ったり、基板との密着を付与するために、25℃での粘度が700mPa・s以上の高粘度の多官能モノマーやウレタンアクリレートなどの高極性モノマー、オリゴマーなどを少量併用しても構わない。
また、オキセタニル系モノマーであるオキセタニル基含有モノマーとしては、特開2003−341217号公報の段落番号[0021]〜[0084]に記載の化合物を好適に使用できる。更に、特開2004 −91556号公報の段落番号[0022]〜[0058]に記載の化合物も使用することができる。
上述した重合性モノマーの含有量は、インクジェット用インクの固形分中の30〜80量%が好ましく、40〜80質量%がより好ましい。モノマーの使用量が上記範囲内であれば、画素部の重合が十分となるため、画素部の膜強度の不足に起因する傷の発生が起こりにくくなったり、透明導電膜を付与する際にクラックやレチキュレーションが発生しにくくなったり、配向膜を設ける際の耐溶剤性が向上したり、電圧保持率を低下させない等の効果が得られる。ここで、配合割合を特定するためのインクジェット用インクの固形分とは、溶剤を除く全ての成分を含み、液状の重合性モノマーなども固形分に含まれる。
<バインダー樹脂>
本発明のインクジェット用インクには、粘度の調整やインク硬度の調整などの目的で、バインダー樹脂を入れてもよい。バインダー樹脂としては、それ自体は重合反応性のない樹脂のみから構成されるような単に乾燥固化するバインダー樹脂を用いてもよい。しかしながら、塗工膜に十分な強度、耐久性、密着性を付与するためには、インクジェット法により基板上に画素のパターンを形成後、該画素を重合反応により硬化させることのできるバインダー樹脂を用いるのが好ましく、例えば、可視光線、紫外線、電子線等により重合硬化させることができる光硬化性のバインダー樹脂や、加熱により重合硬化させることができる熱硬化性のバインダー樹脂のような、重合硬化可能なバインダー樹脂を用いることができる。
バインダー樹脂の総添加量は、本発明の効果を奏する範囲であれば特に制限されない。バインダー樹脂は溶剤に溶解させて用いてもよく、また溶剤に分散させて用いることも可能である。溶剤に分散させて用いる場合は、分散されるバインダー樹脂の平均粒径は1.0μm以下が好ましく、0.1μm以下がより好ましい。平均粒径が1.0μm以下であると、ヘッドでの詰まり、膜の透明性、平滑性の低下を防止することができる。また、バインダー樹脂は、インクジェット用インクの粘度を上昇させる場合があり、本質的にこれを用いないことも好ましい。
それ自体は重合反応性のないバインダー樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、ジアリルフタレート樹脂、シリコーン樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、アイオノマー樹脂、エチレンエチルアクリレート樹脂、アクリロニトリルアクリレートスチレン共重合樹脂、アクリロニトリルスチレン樹脂、アクリロニトリル塩化ポリエチレンスチレン共重合樹脂、エチレン酢ビ樹脂、エチレンビニルアルコール共重合樹脂、アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合樹脂、塩化ビニル樹脂、塩素化ポリエチレン樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、酢酸セルロース樹脂、フッ素樹脂、ポリオキシメチレン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアリレート樹脂、熱可塑性ポリウレタンエラストマー、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン、ポリスチレンマレイン酸共重合樹脂、ポリスチレンアクリル酸共重合樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、メチルペンテン樹脂、ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネート樹脂、ブチラール樹脂、ホルマール樹脂、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ゼラチン、およびこれらの共重合樹脂などを挙げることができる。これらは、膜強度、粘度、インクジェット用インクの残部粘度、顔料の分散安定性、熱安定性、非着色性、耐水性、耐薬品性を考慮し、適宜選択することができる。
(1)光硬化性バインダー樹脂
紫外線、電子線等の光により重合硬化させることができる光硬化性樹脂(光硬化性バインダー樹脂)においては、付与された着色組成物の液滴の形状安定性や基盤に対する密着性を付与することを目的として比較的分子量の大きい重合体を含むことができる。ここでいう比較的分子量が大きいとは、所謂モノマーやオリゴマーよりも分子量が大きいことを意味し、重量平均分子量10000以上を目安にすることができる。また、これらに上述のそれ自体は重合反応性のない重合体を更に用いてもよい。
光硬化性バインダー樹脂としては、非重合性バインダーの分子に重合性の官能基を導入してなるオリゴマーまたはオリゴマーよりも大分子量のポリマーであって、光照射を受けてそれ自体が重合反応を生じるか、または、光照射を受けて活性化した光重合開始剤などの他の成分の作用により重合反応を誘起するものを用いることができる。各種のエチレン性二重結合含有化合物は、それ自体が重合反応性を有し、光硬化性バインダー樹脂として利用できる。従来において、例えばインク、塗料、接着剤などの各種分野で用いられているUV硬化性樹脂組成物に配合されているプレポリマーは、本発明における比較的分子量の高い重合体として使用できる。従来から知られているプレポリマーとしては、ラジカル重合型プレポリマー、カチオン重合型プレポリマー、チオール・エン付加型プレポリマーなどがあるが、いずれを用いてもよい。
この中で、ラジカル重合型プレポリマーは、市場において最も容易に入手でき、例えば、エステルアクリレート類、エーテルアクリレート類、ウレタンアクリレート類、エポキシアクリレート類、アミノ樹脂アクリレート類、アクリル樹脂アクリレート類、不飽和ポリエステル類などを例示できる。
本発明においては、インクジェット用インクの粘度が高すぎて吐出ヘッドからの吐出性に悪影響を及ぼさないように、それ自体が重合反応性を有する重合体として用いられるエチレン性二重結合含有化合物の分子量は、重量平均分子量で100,000以下であることが好ましい。
(2)熱硬化性バインダー樹脂
熱硬化性バインダー樹脂としては、1分子中に熱硬化性官能基を2個以上有する化合物と硬化剤との組み合わせが通常用いられ、更に、熱硬化反応を促進できる触媒を添加してもよい。熱硬化性官能基としてはエポキシ基が好ましく用いられる。また、これらに上述のそれ自体は重合反応性のない重合体を更に用いてもよい。
1分子中に熱硬化性官能基を2個以上有する化合物として、通常は、1分子中にエポキシ基2個以上を有するエポキシ化合物が用いられる。1分子中にエポキシ基2個以上を有するエポキシ化合物は、エポキシ基を2個以上、好ましくは2〜50個、より好ましくは2〜20個を1分子中に有するエポキシ化合物(エポキシ樹脂と称されるものを含む)である。エポキシ基は、オキシラン環構造を有する構造であればよく、例えば、グリシジル基、オキシエチレン基、エポキシシクロヘキシル基などを示すことができる。エポキシ化合物としては、カルボン酸により硬化しうる公知の多価エポキシ化合物を挙げることができ、このようなエポキシ化合物は、例えば、新保正樹編「エポキシ樹脂ハンドブック」日刊工業新聞社刊(昭和62年)などに広く開示されており、これらを用いることが可能である。
エポキシ化合物としては、硬化膜に耐溶剤性や耐熱性を付与するために、比較的分子量の大きい重合体と、硬化膜の架橋密度を高くしたり、低粘度化によりインクジェット吐出性能を向上させたりするために、比較的分子量の小さい化合物とを併用することが好ましい。
比較的分子量の大きい重合体であるエポキシ化合物(以下、「バインダー性エポキシ化合物」ということがある)としては、少なくとも下記一般式(11)で表される構成単位の少なくとも1種と下記一般式(12)で表される構成単位の少なくとも1種とから構成され且つグリシジル基を2個以上有する重合体を用いることができる。
比較的分子量の大きい重合体であるエポキシ化合物(以下、「バインダー性エポキシ化合物」ということがある)としては、少なくとも下記一般式(11)で表される構成単位の少なくとも1種と下記一般式(12)で表される構成単位の少なくとも1種とから構成され且つグリシジル基を2個以上有する重合体を用いることができる。
一般式(11)中、R1は水素原子または炭素数1〜3のアルキル基であり、R2は炭素数1〜12の炭化水素基である。また、一般式(12)中のR3は、水素原子または炭素数1〜10のアルキル基である。
上述の一般式(11)で表される構成単位は、下記一般式(13)で表されるモノマーから誘導することができる。
上述の一般式(13)中、R1およびR2は、上述した一般式(11)におけるR1およびR2と同義である。
上述した一般式(13)で表されるモノマーをバインダー性エポキシ化合物の構成単位の少なくとも1種として用いることにより、本発明のインクジェット用インクにより形成される機能膜(例えば着色画素)に良好な硬度および透明性を付与することができる。一般式(13)において、R2は、炭素数1〜12の炭化水素基であり、直鎖脂肪族、脂環式、芳香族いずれの炭化水素基であってもよく、さらに付加的な構造、例えば二重結合、炭化水素基の側鎖、スピロ環の側鎖、環内架橋炭化水素基等を含んでいてもよい。
上記一般式(13)で表されるモノマーとして、具体的には、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、i−プロピル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、パラ−t−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレートなどを例示することができる。
上述した一般式(13)において、R1として好ましいのは水素原子またはメチル基であり、R2として好ましいのは炭素数1〜12のアルキル基であり、その中でも特にメチル基およびシクロヘキシル基が好ましい。上述の一般式(13)で表されるモノマーの中で好ましいものとして、具体的にはメチルメタクリレート(MMA)およびシクロヘキシルメタクリレート(CHMA)を挙げることができる。
重合体中の上記の一般式(12)で表される構成単位は、下記一般式(14)で表されるモノマーから誘導される。下記一般式(14)中、R3は上記一般式(12)におけるR3と同義である。
上記の一般式(14)で表されるモノマーは、例えば、重合体中にエポキシ基(エポキシの反応点)を導入するために用いることができる。上述した一般式(14)において、R3として好ましいのは水素原子またはメチル基である。一般式(14)で表されるモノマーとして、具体的にはグリシジル(メタ)アクリレートを例示することができ、特にグリシジルメタクリレート(GMA)が好ましい。
上記重合体は、ランダム共重合体であってもよいし、ブロック共重合体であってもよい。また、この重合体は、カラーフィルタの各細部に必要とされる性能、例えば硬度や透明性等が確保できる限り、上述した一般式(11)あるいは上述した一般式(12)以外の主鎖構成単位を含んでいてもよい。そのようなモノマーとして具体的には、アクリロニトリル、スチレン等を例示することができる。
上述したバインダー性エポキシ化合物中の上述した一般式(11)で表される構成単位と上述した一般式(12)で表される構成単位の含有量は、一般式(11)で表される構成単位を誘導する単量体と一般式(12)で表される構成単位を誘導する単量体との仕込み質量比(一般式(11)を誘導する単量体:一般式(12)を誘導する単量体)で表したとき、10:90〜90:10の範囲内であるのが好ましい。
一般式(11)で表される構成単位の割合が上記の質量比90:10以下であることにより、硬化の反応点の比率を多くすることができ架橋密度をより高くすることができる。また、一般式(12)の構成単位の量が上記の比10:90以下であることにより、嵩高い骨格の比率を多くすることができ硬化収縮を抑制することができる。
また、バインダー性エポキシ化合物の重量平均分子量は、ポリスチレン換算重量平均分子量で表したときに、3,000以上、特に4,000以上であることが好ましい。上記バインダー性エポキシ化合物の重量平均分子量が3,000以上であることにより、カラーフィルタの細部としての画素に要求される強度、耐溶剤性等の物性が良好になる。
更に、バインダー性エポキシ化合物の重量平均分子量は、ポリスチレン換算重量平均分子量で表したときに、20,000以下であることが好ましく、更に15,000以下であることが特に好ましい。当該分子量が20,000以下であることにより、粘度上昇を抑制することができ、吐出ヘッドから吐出する時の吐出量の安定性や吐出方向の直進性が良好になる。また、長期保存の安定性が良好になる。
上記バインダー性エポキシ化合物としては、ポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)が上記範囲にあるグリシジルメタクリレート(GMA)/メチルメタクリレート(MMA)系共重合体を用いるのが特に好ましい。なお、GMA/MMA系共重合体は本発明の目的を達成し得るものである限り、他のモノマー成分を含有していてもよい。
<重合開始剤>
本発明のインクジェット用インクは、重合性モノマーおよびバインダー樹脂の重合反応を促進する目的で、重合開始剤を併用してもよい。重合開始剤は、インクジェット用インクに用いる重合性モノマーおよびバインダーの種類、重合経路にあわせて選択することができる。
(1)アクリレート(メタクリレート)モノマー、光硬化性バインダー樹脂に好適な重合開始剤
アクリレートモノマー、メタクリレートモノマー、光硬化性バインダー樹脂に好適な重合開始剤としては、重合反応を活性エネルギー線により行わせる場合には光重合開始剤が用いられ、重合反応を熱により行わせる場合には熱重合開始剤が用いられる。光重合開始剤としては、ハロメチルオキサジアゾール系化合物およびハロメチル−s−トリアジン系化合物から選択される少なくとも一つの活性ハロゲン化合物、3−アリール置換クマリン化合物、ロフィン2量体、ベンゾフェノン化合物、アセトフェノン化合物およびその誘導体、シクロペンタジエン−ベンゼン−鉄錯体およびその塩、オキシム系化合物、などが挙げられる。
上記ハロメチルオキサジアゾール系化合物である活性ハロゲン化合物として、特公昭57−6096号公報に記載の2−ハロメチル−5−ビニル−1,3,4−オキサジアゾール化合物などや、2−トリクロロメチル−5−スチリル−1,3,4−オキサジアゾール、2−トリクロロメチル−5−(p−シアノスチリル)−1,3,4−オキサジアゾール、2−トリクロロメチル−5−(p−メトキシスチリル)−1,3,4−オキサジアゾール、などが挙げられる。
上記ハロメチル−s−トリアジン系化合物である活性ハロゲン化合物として、特公昭59−1281号公報に記載のビニル−ハロメチル−s−トリアジン化合物、特開昭53−133428号公報に記載の2−(ナフト−1−イル)−4,6−ビス−ハロメチル−s−トリアジン化合物及び4−(p−アミノフェニル)−2,6−ジ−ハロメチル−s−トリアジン化合物、などが挙げられる。
その他の具体例として、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−p−メトキシスチリル−s−トリアジン、2,6−ビス(トリクロロメチル)−4−(3,4−メチレンジオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,6−ビス(トリクロロメチル)−4−(4−メトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−(1−p−ジメチルアミノフェニル−1,3−ブタジエニル)−s−トリアジン、2−トリクロロメチル−4−アミノ−6−p−メトキシスチリル−s−トリアジン、2−(ナフト−1−イル)−4,6−ビス−トリクロロメチル−s−トリアジン、2−(4−メトキシ−ナフト−1−イル)−4,6−ビス−トリクロロメチル−s−トリアジン、2−(4−エトキシ−ナフト−1−イル)−4,6−ビス−トリクロロメチル−s−トリアジン、2−(4−ブトキシ−ナフト−1−イル)−4,6−ビス−トリクロロメチル−s−トリアジン、2−〔4−(2−メトキシエチル)−ナフト−1−イル〕−4,6−ビス−トリクロロメチル−s−トリアジン、2−〔4−(2−エトキシエチル)−ナフト−1−イル〕−4,6−ビス−トリクロロメチル−s−トリアジン、2−〔4−(2−ブトキシエチル)−ナフト−1−イル〕−4,6−ビス−トリクロロメチル−s−トリアジン、2−(2−メトキシ−ナフト−1−イル)−4,6−ビス−トリクロロメチル−s−トリアジン、2−(6−メトキシ−5−メチル−ナフト−2−イル)−4,6−ビス−トリクロロメチル−s−トリアジン、2−(6−メトキシ−ナフト−2−イル)−4,6−ビス−トリクロロメチル−s−トリアジン、2−(5−メトキシ−ナフト−1−イル)−4,6−ビス−トリクロロメチル−s−トリアジン、2−(4,7−ジメトキシ−ナフト−1−イル)−4,6−ビス−トリクロロメチル−s−トリアジン、
2−(6−エトキシ−ナフト−2−イル)−4,6−ビス−トリクロロメチル−s−トリアジン、2−(4,5−ジメトキシ−ナフト−1−イル)−4,6−ビス−トリクロロメチル−s−トリアジン、4−〔p−N,N−ジ(エトキシカルボニルメチル)アミノフェニル〕−2,6−ジ(トリクロロメチル)−s−トリアジン、4−〔o−メチル−p−N,N−ジ(エトキシカルボニルメチル)アミノフェニル〕−2,6−ジ(トリクロロメチル)−s−トリアジン、4−〔p−N,N−ジ(クロロエチル)アミノフェニル〕−2,6−ジ(トリクロロメチル)−s−トリアジン、4−〔o−メチル−p−N,N−ジ(クロロエチル)アミノフェニル〕−2,6−ジ(トリクロロメチル)−s−トリアジン、4−(p−N−クロロエチルアミノフェニル)−2,6−ジ(トリクロロメチル)−s−トリアジン、4−(p−N−エトキシカルボニルメチルアミノフェニル)−2,6−ジ(トリクロロメチル)−s−トリアジン、4−〔p−N,N−ジ(フェニル)アミノフェニル〕−2,6−ジ(トリクロロメチル)−s−トリアジン、4−(p−N−クロロエチルカルボニルアミノフェニル)−2,6−ジ(トリクロロメチル)−s−トリアジン、4−〔p−N−(p−メトキシフェニル)カルボニルアミノフェニル〕−2,6−ジ(トリクロロメチル)−s−トリアジン、4−〔m−N,N−ジ(エトキシカルボニルメチル)アミノフェニル〕−2,6−ジ(トリクロロメチル)−s−トリアジン、4−〔m−ブロモ−p−N,N−ジ(エトキシカルボニルメチル)アミノフェニル〕−2,6−ジ(トリクロロメチル)−s−トリアジン、
4−〔m−クロロ−p−N,N−ジ(エトキシカルボニルメチル)アミノフェニル〕−2,6−ジ(トリクロロメチル)−s−トリアジン、4−〔m−フロロ−p−N,N−ジ(エトキシカルボニルメチル)アミノフェニル〕−2,6−ジ(トリクロロメチル)−s−トリアジン、4−〔o−ブロモ−p−N,N−ジ(エトキシカルボニルメチル)アミノフェニル〕−2,6−ジ(トリクロロメチル)−s−トリアジン、4−〔o−クロロ−p−N,N−ジ(エトキシカルボニルメチル)アミノフェニル−2,6−ジ(トリクロロメチル)−s−トリアジン、4−〔o−フロロ−p−N,N−ジ(エトキシカルボニルメチル)アミノフェニル〕−2,6−ジ(トリクロロメチル)−s−トリアジン、4−〔o−ブロモ−p−N,N−ジ(クロロエチル)アミノフェニル〕−2,6−ジ(トリクロロメチル)−s−トリアジン、4−〔o−クロロ−p−N,N−ジ(クロロエチル)アミノフェニル〕−2,6−ジ(トリクロロメチル)−s−トリアジン、4−〔o−フロロ−p−N,N−ジ(クロロエチル)アミノフェニル〕−2,6−ジ(トリクロロメチル)−s−トリアジン、4−〔m−ブロモ−p−N,N−ジ(クロロエチル)アミノフェニル〕−2,6−ジ(トリクロロメチル)−s−トリアジン、4−〔m−クロロ−p−N,N−ジ(クロロエチル)アミノフェニル〕−2,6−ジ(トリクロロメチル)−s−トリアジン、
4−〔m−フロロ−p−N,N−ジ(クロロエチル)アミノフェニル〕−2,6−ジ(トリクロロメチル)−s−トリアジン、4−(m−ブロモ−p−N−エトキシカルボニルメチルアミノフェニル)−2,6−ジ(トリクロロメチル)−s−トリアジン、4−(m−クロロ−p−N−エトキシカルボニルメチルアミノフェニル)−2,6−ジ(トリクロロメチル)−s−トリアジン、4−(m−フロロ−p−N−エトキシカルボニルメチルアミノフェニル)−2,6−ジ(トリクロロメチル)−s−トリアジン、4−(o−ブロモ−p−N−エトキシカルボニルメチルアミノフェニル)−2,6−ジ(トリクロロメチル)−s−トリアジン、4−(o−クロロ−p−N−エトキシカルボニルメチルアミノフェニル)−2,6−ジ(トリクロロメチル)−s−トリアジン、4−(o−フロロ−p−N−エトキシカルボニルメチルアミノフェニル)−2,6−ジ(トリクロロメチル)−s−トリアジン、4−(m−ブロモ−p−N−クロロエチルアミノフェニル)−2,6−ジ(トリクロロメチル)−s−トリアジン、4−(m−クロロ−p−N−クロロエチルアミノフェニル)−2,6−ジ(トリクロロメチル)−s−トリアジン、4−(m−フロロ−p−N−クロロエチルアミノフェニル)−2,6−ジ(トリクロロメチル)−s−トリアジン、4−(o−ブロモ−p−N−クロロエチルアミノフェニル)−2,6−ジ(トリクロロメチル)−s−トリアジン、4−(o−クロロ−p−N−クロロエチルアミノフェニル)−2,6−ジ(トリクロロメチル)−s−トリアジン、4−(o−フロロ−p−N−クロロエチルアミノフェニル)−2,6−ジ(トリクロロメチル)−s−トリアジン、などが挙げられる。
その他、みどり化学社製のTAZシリーズ(例えば、TAZ−107、TAZ−110、TAZ−104、TAZ−109、TAZ−140、TAZ−204、TAZ−113、TAZ−123など)、PANCHIM社製のTシリーズ(例えば、T−OMS、T−BMP、T−R、T−Bなど)、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製のイルガキュアシリーズ(例えば、イルガキュア369、イルガキュア784、イルガキュア651、イルガキュア184、イルガキュア500、イルガキュア1000、イルガキュア149、イルガキュア819、イルガキュア261など)、ダロキュアシリーズ(例えばダロキュア1173など)、
4,4’−ビス(ジエチルアミノ)−ベンゾフェノン、2−(O−ベンゾイルオキシム)−1−[4−(フェニルチオ)フェニル]−1,2−オクタンジオン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−4−モルホリノブチロフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2−(o−クロルフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾリル二量体、2−(o−フルオロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾリル二量体、2−(o−メトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾリル二量体、2−(p−メトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾリル二量体、2−(p−ジメトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾリル二量体、2−(2,4−ジメトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾリル二量体、2−(p−メチルメルカプトフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾリル二量体、ベンゾインイソプロピルエーテル、なども有用である。
上記の光重合開始剤には増感剤や光安定剤を併用することができる。その具体例として、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾイン、9−フルオレノン、2−クロロ−9−フルオレノン、2−メチル−9−フルオレノン、9−アントロン、2−ブロモ−9−アントロン、2−エチル−9−アントロン、9,10−アントラキノン、2−エチル−9,10−アントラキノン、2−t−ブチル−9,10−アントラキノン、2,6−ジクロロ−9,10−アントラキノン、キサントン、2−メチルキサントン、2−メトキシキサントン、2−エトキシキサントン、チオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、アクリドン、10−ブチル−2−クロロアクリドン、ベンジル、ジベンザルアセトン、p−(ジメチルアミノ)フェニルスチリルケトン、p−(ジメチルアミノ)フェニル−p−メチルスチリルケトン、ベンゾフェノン、p−(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン(またはミヒラーケトン)、p−(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、ベンゾアントロンなどや、特公昭51−48516号公報に記載のベンゾチアゾール系化合物など、チヌビン1130、同400などが挙げられる。
また、上記のほかに更に、熱重合防止剤を加えておくことが好ましく、例えば、ハイドロキノン、p−メトキシフェノール、ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ピロガロール、t−ブチルカテコール、ベンゾキノン、4,4’−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2−メルカプトベンゾイミダゾールなどが有用である。
さらに、光重合開始剤として特開2006−28455号公報の段落番号[0079]〜[0088]に記載のものも挙げられ、好ましい具体例としては、2−トリクロロメチル−5−スチリル−1,3,4−オキサジアゾールや、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−[4’−(N,N−ビスエトキシカルボニルメチルアミノ)−3’−ブロモフェニル]−s−トリアジンが挙げられる。
また、熱重合開始剤としては、一般に知られている有機過酸化物系化合物やアゾ系の化合物を用いることができる。また、熱重合開始剤の他に、イミダゾールなどの硬化触媒を用いることもできる。有機過酸化物系化合物およびアゾ系の化合物は、1種単独で用いる以外に2種以上を併用することができる。ここで、有機過酸化物は、過酸化水素(H−O−O−H)の誘導体であり、分子内に−O−O−結合を持つ有機化合物をいう。
化学構造で分類すると、ケトンパーオキサイド、パーオキシケタール、ハイドロパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、ジアシルパーオキサイド、パーオキシエステル、パーオキシジカーボネート等が挙げられる。具体的には、3,3’,4,4’−テトラキス(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、ベンゾイルパーオキサイド、2,2−ビス(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ジ−t−ブチルパーオキシベンゾエート、ジ−t−ブチルパーオキシイソフタレート、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ヘキシルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシラウレート、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカルボネート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート、2,5−ビス(m−トルイルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ビス(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、
t−ブチルパーオキシイソブチレート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、2,5−ジメチル−2,5−ビス(2−エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシマレイックアシッド、シクロヘキサノンパーオキサイド、メチルアセトアセテートパーオキサイド、メチルヘキサノンパーオキサイド、アセチルアセトンパーオキサイド、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−2−メチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン、2,2−ビス(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、キュメンハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド等が好ましく、2,2−ビス(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン等のパーオキシケタール系化合物、ベンゾイルパーオキシド等のジアシルパーオキシド系化合物、t−ブチルパーオキシベンゾエート等のパーオキシエステル系化合物が好ましい。
また、上述したアゾ系化合物としては、例えば特開平5−5014号公報の段落番号[0021]〜[0023]に記載の化合物が挙げられる。これらの化合物の中でも、好ましくは分解温度がある程度高く常温では安定なもので、熱をかけると分解してラジカルを発生し、重合開始剤となる化合物である。有機過酸化物系化合物またはアゾ系化合物(熱重合開始剤)の中でも、半減期温度の比較的高いもの(好ましくは50℃以上、更に好ましくは80℃以上)のものを使用すると、組成物の粘度が経時変化することなく好適に構成でき、例えば、アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)等が好ましい熱重合開始剤として挙げられる。
アクリレートモノマー、メタクリレートモノマー、光硬化性バインダー樹脂に好適な光重合開始剤および/または熱重合開始剤の含有量としては、インクジェットインクの固形分質量に対して、0.01〜50質量%が好ましく、より好ましくは1〜30質量%である。これらの重合開始剤は、1種または2種以上を組み合わせて使用することもできる。
(2)オキセタニル基含有モノマーまたはバインダー樹脂に好適な重合開始剤
オキセタニル基含有モノマーまたはバインダー樹脂に好適な重合開始剤としては、酸を発生させる化合物を挙げることができる。酸を発生させる化合物とは、インクジェット用インクの吐出後に光または熱により酸を発生させうる化合物を意味し、吐出後のインクジェット用インクの液滴中で、光および/または熱の作用によりブレンステッド酸、ルイス酸を発生するものであれば、いかなる化合物も使用することができる。
発生させる酸としては、カルボン酸、スルホン酸、リン酸、リン酸モノエステル、リン酸ジエステル、硫酸、硫酸モノエステル、スルフィン酸、塩酸、硝酸、ホウ酸、トリフルオロホウ酸、ホウ素錯体、アンチモン誘導体、ヘキサフルオロリン酸などを挙げることができる。
その中でも、上述のオキセタニル基含有モノマー(オキセタン化合物)を光および/または熱により効果的に硬化させることのできる酸としては、塩酸、スルホン酸、または、ホウ素原子若しくはリン原子を有する酸を発生させることが好ましく、リン原子を有する酸を発生させることが最も好ましい。
このような酸を発生させる具体的な化合物(光重合開始剤)としては、例えば、有機ハロゲン化化合物、オキシジアゾール化合物、有機ホウ酸塩化合物、ジスルホン化合物、オキシムエステル化合物、オニウム塩化合物が挙げられる。中でも、ヨードニウム塩またはスルホニウム塩などのオニウム塩酸発生剤が好適に用いられる。
有機ハロゲン化化合物としては、具体的には、若林等、「Bull Chem.Soc Japan」42、2924(1969)、米国特許第3,905,815号明細書、特公昭46−4605号公報、特開昭48−36281号公報、特開昭55−32070号公報、特開昭60−239736号公報、特開昭61−169835号公報、特開昭61−169837号公報、特開昭62−58241号公報、特開昭62−212401号公報、特開昭63−70243号公報、特開昭63−298339号公報、M.P.Hutt“Jurnal of Heterocyclic Chemistry”1(No3),(1970)」などに記載の化合物が挙げられ、特に、トリハロメチル基を有するオキサゾール化合物、s−トリアジン化合物が挙げられる。
有機ホウ酸塩化合物としては、例えば、特開昭62−143044号、特開昭62−150242号、特開平9−188685号、特開平9−188686号、特開平9−188710号、特開2000−131837号、特開2002−107916号、特許第2764769号、特願2000−310808号、等の各公報、および、Kunz,Martin“Rad Tech’98.Proceeding April 19−22,1998,Chicago”などに記載された有機ホウ酸塩、特開平6−157623号公報、特開平6−175564号公報、特開平6−175561号公報に記載の有機ホウ素スルホニウム錯体あるいは有機ホウ素オキソスルホニウム錯体、特開平6−175554号公報、特開平6−175553号公報に記載の有機ホウ素ヨードニウム錯体、特開平9−188710号公報に記載の有機ホウ素ホスホニウム錯体、特開平6−348011号公報、特開平7−128785号公報、特開平7−140589号公報、特開平7−306527号公報、特開平7−292014号公報などの有機ホウ素遷移金属配位錯体等が具体例として挙げられる。
ジスルホン化合物としては、特開昭61−166544号公報、特開2002−328465号公報(特願2001−132318号明細書)などに記載された化合物が挙げられる。
オキシムエステル化合物としては、J.C.S. Perkin II (1979)1653−1660)、J.C.S. Perkin II (1979)156−162、Journal of Photopolymer Science and Technology(1995)202−232、特開2000−66385号公報、特開2000−80068号公報、特表2004−534797号公報などに記載の化合物が挙げられる。
オニウム塩化合物としては、例えば、S.I.Schlesinger,Photogr.Sci.Eng.,18,387(1974)、T.S.Bal et al,Polymer,21,423(1980)に記載のジアゾニウム塩、米国特許第4,069,055号明細書、特開平4−365049号公報等に記載のアンモニウム塩、米国特許第4,069,055号、同4,069,056号の各明細書に記載のホスホニウム塩、欧州特許第104、143号、米国特許第339,049号、同第410,201号の各明細書、特開平2−150848号、特開平2−296514号の各公報に記載のヨードニウム塩などが挙げられる。
本発明に好適に用いることのできるヨードニウム塩は、ジアリールヨードニウム塩であり、安定性の観点から、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基などの電子供与性基で2つ以上置換されていることが好ましい。より好ましくは、アルコキシ基が3置換以上、最も好ましくは、4置換以上置換されていることが好ましい。また、光による硬化性が良好なその他の好ましいジアリールヨードニウム塩の形態として、ジアリールの少なくとも1つが300nm以上に吸収を有するクロモフォアの一部を形成している。または置換基として、300nm以上に吸収を有する官能基を有するヨードニウム塩などが好ましい。
本発明に好適に用いることのできるスルホニウム塩としては、欧州特許第370,693号、同390,214号、同233,567号、同297,443号、同297,442号、米国特許第4,933,377号、同161,811号、同410,201号、同339,049号、同4,760,013号、同4,734,444号、同2,833,827号、独国特許第2,904,626号、同3,604,580号、同3,604,581号の各明細書に記載のスルホニウム塩が挙げられ、安定性の感度点から好ましくは電子吸引性基で置換されていることが好ましい。電子吸引性基としては、ハメット値が0より大きいことが好ましい。好ましい電子吸引性基としては、ハロゲン原子、カルボン酸などが挙げられる。また、その他の好ましいスルホニウム塩としては、熱分解性、安定性のバランス、また、増感剤などと併用した場合の光硬化性の観点から、トリアリールスルホニウム塩であり、ハロゲン原子、カルボキシ基などの電子吸引性基を少なくとも1つ有することが好ましく、更に好ましくは2置換以上、最も好ましくは3置換以上であることが好ましい。
また、その他の好ましいスルホニウム塩の形態として、トリアリールスルホニウム塩の1つの置換基がクマリン、アントアキノン構造を有し、300nm以上に吸収を有するスルホニウム塩が挙げられる。別の好ましいスルホニウム塩としては、トリアリールスルホニウム塩は、トリアリールの少なくとも1つが300nm以上に吸収を有するクロモフォアの一部を形成している。または置換基として、300nm以上に吸収を有する官能基を有するトリアリールスルホニウム塩などが好ましい。
また、オニウム塩化合物としては、J.V.Crivello et al,Macromolecules,10(6),1307(1977)、J.V.Crivello et al,J.Polymer Sci.,Polymer Chem.Ed.,17,1047(1979)に記載のセレノニウム塩、C.S.Wen et al,Teh,Proc.Conf.Rad.Curing ASIA,p478 Tokyo,Oct(1988)に記載のアルソニウム塩などのオニウム塩が挙げられる。
上述したオキセタニル基含有モノマーまたはバインダー樹脂に好適な重合開始剤の含有量は、インクジェット用インク中の全固形分に対して、0.01〜50質量%であることが好ましく、より好ましくは1〜30質量%である。含有量が上述の範囲内であると、より良好な感度と強固な硬化部を形成することができる。また、上記、酸を発生させる化合物は1種または2種以上を混合して使用することができる。
<硬化剤>
エポキシ系モノマー(エポキシ基含有モノマー)、熱硬化性バインダー樹脂には、通常、硬化剤を組み合わせて配合することができる。硬化剤としては、エポキシ樹脂技術協会発行の「総説エポキシ樹脂基礎編I」2003年11月19日発行、第3章に記載の硬化剤、促進剤を好適に用いることができ、例えば、多価カルボン酸無水物または多価カルボン酸を用いることができる。
多価カルボン酸無水物の具体例としては、無水フタル酸、無水イタコン酸、無水コハク酸、無水シトラコン酸、無水ドデセニルコハク酸、無水トリカルバリル酸、無水マレイン酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水ジメチルテトラヒドロフタル酸、無水ハイミック酸、無水ナジン酸などの脂肪族または脂環族ジカルボン酸無水物;1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸二無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物などの脂肪族多価カルボン酸二無水物;無水ピロメリット酸、無水トリメリット酸、無水ベンゾフェノンテトラカルボン酸などの芳香族多価カルボン酸無水物;エチレングリコールビストリメリテート、グリセリントリストリメリテートなどのエステル基含有酸無水物を挙げることができ、特に好ましくは、芳香族多価カルボン酸無水物を挙げることができる。また、市販のカルボン酸無水物からなるエポキシ樹脂硬化剤も好適に用いることができる。
また、本発明に用いられる多価カルボン酸の具体例としては、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ブタンテトラカルボン酸、マレイン酸、イタコン酸などの脂肪族多価カルボン酸;ヘキサヒドロフタル酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸、シクロペンタンテトラカルボン酸などの脂肪族多価カルボン酸、およびフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ピロメリット酸、トリメリット酸、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸などの芳香族多価カルボン酸を挙げることができ、好ましくは芳香族多価カルボン酸を挙げることができる。
また、本発明に用いることができる多価カルボン酸には、ビニルエーテルブロックカルボン酸を用いることが好ましい。具体的にはエポキシ樹脂技術協会発行の「総説エポキシ樹脂基礎編I」P193〜194、特開2003−66223号公報、特開2004−339332号公報、に記載のビニルエーテルブロックカルボン酸をあげることができる。カルボン酸をビニルエーテルでブロック化することで、カルボン酸とエポキシ化合物の付加反応(エステル化反応)が室温で徐々に進行し、着色組成物粘度が経時で上昇することを抑制することができる。また、各種溶剤やエポキシモノマー、エポキシ樹脂への溶解性が向上し均一な組成を作ることができる。このビニルエーテルブロックカルボン酸は後述の熱潜在性触媒と併用することが好ましい。熱潜在性触媒と併用することで加熱時に脱ブロック化反応が促進され、加熱時の膜ベリが少なく、より強度の高いカラーフィルタを形成することが出来る。
これら多価カルボン酸無水物および多価カルボン酸は、1種単独でも2種以上の混合でも用いることができる。本発明に用いられる硬化剤の配合量は、エポキシ基を含有する成分(モノマーと樹脂)100質量部当たり、通常は1〜100質量部の範囲であり、好ましくは5〜50質量部である。硬化剤の配合量を1質量部以上とすることで、硬化性が良好となり、強靭な画素を形成することができる。また、硬化剤の配合量を100質量部以下とすることで、形成された画素の基板に対する密着性を良好にすることができるうえに、均一で平滑な画素を形成することができる。
<熱潜在性触媒>
また、本発明において、エポキシ基含有モノマー、熱硬化性バインダー樹脂を用いる場合には、インクの硬度および耐熱性を向上させるために、酸−エポキシ間の熱硬化反応を促進できる触媒を添加してもよい。そのような触媒としては、加熱硬化時に活性を示す熱潜在性触媒を用いることができる。
熱潜在性触媒は、加熱されたとき、触媒活性を発揮し、硬化反応を促進し、硬化物に良好な物性を与えるものであり、必要により加えられるものである。この熱潜在性触媒は、60℃以上の温度で酸触媒活性を示すものが好ましく、このようなものとしてプロトン酸をルイス塩基で中和した化合物、ルイス酸をルイス塩基で中和した化合物、ルイス酸とトリアルキルホスフェートの混合物、スルホン酸エステル類、オニウム化合物類等が挙げられ、特開平4−218561号公報に記載されているような各種の化合物を使用することができる。
具体的には、
(イ)ハロゲノカルボン酸類、スルホン酸類、リン酸モノおよびジエステル類などを、アンモニア、モノメチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン、エタノールアミン類などの各種アミン若しくはトリアルキルホスフィン等で中和した化合物。
(ロ)BF3、FeCl3、SnCl4、AlCl3、ZnCl2などのルイス酸を前述のルイス塩基で中和した化合物。
(ハ)メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸などと第一級アルコール、第二級アルコールとのエステル化合物。
(ニ)第一級アルコール類、第二級アルコール類のリン酸モノエステル化合物、リン酸ジエステル化合物などを挙げることができる。
また、オニウム化合物としては、アンモニウム化合物[R1NR2R3R4]+X−、スルホニウム化合物[R1SR2R3]+X−、オキソニウム化合物[R1OR2R3]+X−等を挙げることができる。なお、R1〜R4は、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アルコキシ基などを表す。
また、熱潜在性触媒は、液晶汚染性等の面から、ハロゲンフリーの酸性触媒であることが好ましい。ハロゲンフリーの酸性触媒として具体的には、ノフキュアーLC‐1およびノフキュアーLC‐2(いずれも商品名、日本油脂(株)製)を例示することができる。
<界面活性剤>
本発明のインクジェット用インクには、さらに界面活性剤を用いてもよい。界面活性剤の例として、特開平7−216276号公報の段落番号[0021]や、特開2003−337424号公報、特開平11−133600号公報に開示されている界面活性剤が、好適なものとして挙げられる。界面活性剤の含有量は、インク全量に対して5質量%以下が好ましい。
その他の添加剤としては、特開2000−310706号公報の段落番号[0058]〜[0071]に記載のその他の添加剤が挙げられる。
本発明のインクジェット用インクの色調を整えるために、ジピロメテン系ホウ素錯体化合物とともに、他の着色剤を併用してもよい。
本発明のインクジェット用インクの各成分の含有量としては、インク全量に対して、上記のジピロメテン系ホウ素錯体化合物の含有量は1〜20質量%が好ましく、5〜15質量%がより好ましく、溶媒の含有量は30〜90質量%が好ましく、50〜85質量%がより好ましく、重合性モノマーの含有量は5〜50質量%が好ましく、7〜30質量%がより好ましく、界面活性剤の含有量は5質量%以下が好ましく、0.1〜5質量%がより好ましい。
なお、インク全量中、固形分濃度が21質量%以下であると後述する実施例に記載の各吐出性(休止後吐出安定性など)がより良好となる。なお、固形分とは、溶剤を除く全ての成分を含み、液状の重合性モノマーなども固形分に含まれる。
<インクジェット用インクの製造方法>
本発明のインクジェット用インクの製造には、公知のインクジェット用インクの製造方法を適用することが可能である。例えば、溶剤中に一般式(I)で表されるジピロメテン系ホウ素錯体化合物を溶解した後、インクジェット用インクに必要な各成分(例えば重合性モノマーやバインダーなど)を溶解させてインクジェット用インクを調製することができる。
モノマー液を作製する際には、溶剤に対して使用する素材の溶解性が低い場合には、モノマー液が重合反応を起こさない範囲内で、加熱や超音波処理等の処理を適宜行うことが可能である。
一般式(I)で表されるジピロメテン系ホウ素錯体化合物を水性媒体に分散させる場合は、特開平11−286637号、特開2001−240763(特願2000−78491)号、特開2001−262039(特願2000−80259)号、特開2001−247788(特願2000−62370)号のように一般式(I)で表されるジピロメテン系ホウ素錯体化合物と油溶性ポリマーとを含有する着色微粒子を水性媒体に分散させたり、特開2001−262018(特願2000−78454)号、特開2001−240763(特願2000−78491)号、特開2001−335734(特願2000−203856)号のように高沸点有機溶媒に溶解した一般式(I)で表されるジピロメテン系ホウ素錯体化合物を水性媒体中に分散させてもよい。一般式(I)で表されるジピロメテン系ホウ素錯体化合物を水性媒体に分散させる場合の具体的な方法、使用する油溶性ポリマー、高沸点有機溶剤、添加剤及びそれらの使用量は、前記特許文献に記載されたものを好ましく使用することができる。あるいは、一般式(I)で表されるジピロメテン系ホウ素錯体化合物を固体のまま微粒子状態に分散してもよい。分散時には、分散剤や界面活性剤を使用することができる。
分散装置としては、簡単なスターラーやインペラー攪拌方式、インライン攪拌方式、ミル方式(例えば、コロイドミル、ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル、アジテーターミル等)、超音波方式、高圧乳化分散方式(高圧ホモジナイザー;具体的な市販装置としてはゴーリンホモジナイザー、マイクロフルイダイザー、DeBEE2000等)を使用することができる。上記のインクジェット用インクの調製方法については、先述の特許文献以外にも特開平5−148436号、同5−295312号、同7−97541号、同7−82515号、同7−118584号、特開平11−286637号、特開2001−271003(特願2000−87539)号の各公報に詳細が記載されていて、本発明のインクジェット用インクの調製にも利用できる。
<インクジェット用インクの物性値>
本発明のインクジェット用インクの物性値としては、インクジェットヘッドで吐出可能な範囲であれば特に限定されないが、吐出時における粘度は安定吐出観点から、2〜30mPa・sであることが好ましく、2〜20mPa・sがより好ましい。また、装置で吐出する際には、インクジェットインクの温度を20〜80℃の範囲でほぼ一定温度に保持することが好ましい。装置の温度を高温に設定すると、インクの粘度が低下し、より高粘度のインクを吐出可能となるが、温度が高くなることにより、熱によるインクの変性や熱重合反応がヘッド内で発生したり、インクを吐出するノズル表面で溶剤が蒸発しやすくなり、ノズル詰まりが起こりやすくなるため、装置の温度は20〜80℃の範囲が好ましい。
なお、粘度は、25℃にインクジェット用インクを保持した状態で、一般に用いられるE型粘度計(例えば、東機産業(株)製E型粘度計(RE−80L)を用いることにより測定される値である。
また、インクジェット用インクの25℃の表面張力(静的表面張力)としては、非浸透性の基板に対する濡れ性を向上、吐出安定性の点で、20〜40mN/mが好ましく、20〜35mN/mがより好ましい。また、装置で吐出する際には、インクジェット用インクの温度を20〜80℃の範囲で略一定温度に保持することが好ましく、そのときの表面張力を20〜40mN/mとすることが好ましい。インクジェット用インクの温度を所定精度で一定に保持するためには、インク温度検出手段と、インク加熱もしくは冷却手段と、検出されたインク温度に応じて加熱もしくは冷却を制御する制御手段とを備えていることが好ましい。あるいは、インク温度に応じてインクを吐出させる手段への印加エネルギーを制御することにより、インク物性変化に対する影響を軽減する手段を有することも好適である。
上述の表面張力は、一般的に用いられる表面張力計(例えば、協和界面科学(株)製、表面張力計FACE SURFACE TENSIOMETER CBVB−A3など)を用いて、ウィルヘルミー法で液温25℃、60%RHにて測定される値である。
また、インクジェットインクが基板着弾後に濡れ拡がる形状を適正に保つためには、基板に着弾後のインクジェットインクの液物性を所定に保持することが好ましい。このためには、基板および/または基板の近傍を所定温度範囲内に保持することが好ましい。あるいは、基板を支持する台の熱容量を大きくするなどにより、温度変化の影響を低減することも有効である。
<カラーフィルタおよびその製造方法>
次に、図面に示す好適実施形態を参照して、本発明のインクジェット用インクを用いたカラーフィルタおよびその製造方法について詳細に説明する。
本発明のカラーフィルタは、本発明のインクジェット用インクを用いてインクジェット法により形成された色画素を備えることを特徴とするものであり、すなわち、本発明のインクジェット用インクを用いてインクジェット法により製造されたことを特徴とするものである。また、本発明のカラーフィルタの製造方法は、基板上に形成された隔壁により囲まれた凹部に、本発明のインクジェット用インクをインクジェット法により付与して画素を形成する工程(以下、「画素形成工程」という)を有することを特徴とする。好ましくは、画素形成工程は、基板上の隔壁により区画された凹部にインクジェット法により液滴としてインクを付与する描画工程と、さらに、描画された少なくとも1色の画素(凹部内のインク)を活性エネルギー線の照射により硬化して色画素を形成する照射工程や、所望の色相の画素(凹部内のインク)の全てを形成した後に熱により硬化して色画素を形成する加熱工程を含む硬化工程を有し、必要に応じてベーク処理などの他の工程を設けて構成することができる。
図1は、本発明のカラーフィルタの製造方法の一実施形態における製造工程を示すフローチャートであり、図2(a)〜(f)は、本発明のカラーフィルタの製造方法における基板からカラーフィルタに至る製造工程順に示す基板およびカラーフィルタの模式的断面図である。
図1および図2(a)〜(f)に示すように、本発明のカラーフィルタ10の製造方法は、基板12にブラックマトリックス(BM)となる隔壁(バンク)14を形成する隔壁形成工程S102(図2(b)参照)と、隔壁14に撥液性(撥インク性)を付与する撥液処理工程S104と、隣接する隔壁14間の凹部16に、本発明のインクジェット用インク18をインクジェット法により付与して色画素20を形成する画素形成工程S106(図2(c)〜(e)参照)と、形成された色画素20を保護する保護膜22を形成してカラーフィルタ10を製造する保護膜形成工程S108(図2(f)参照)とを有する。
また、画素形成工程S106は、上述したように、隔壁14間の凹部16にインク18をインクジェット法により液滴として吐出して付与する描画工程S110(図2(c)参照)と、凹部16に付与されたインク18を乾燥させてインク18内の溶剤を除去してインク残部18aとする予備処理工程S112(図2(d)参照)と、基板12上の凹部16内のインク残部18aに活性エネルギー線を照射する照射工程および/またはインク残部18aを加熱する加熱工程によりインク残部18aを重合して硬化させ、色画素20を形成する硬化工程S114(図2(e)参照)とを有する。
なお、隔壁14は、画素形成工程S106の前の隔壁形成工程S102において、予め基板12上に形成されたものであり、隔壁14の隔壁形成工程S102およびその形成方法の詳細については後述し、まず始めに、画素形成工程S106について説明する。
<画素形成工程>
図2(c)〜(e)に示すように、画素形成工程S106では、描画工程S110において、隔壁(色離隔壁)14間の凹部16に、本発明のインクジェット用インク18の液滴をインクジェット法で付与して、硬化工程S114で付与されたインク18を硬化して画素20を形成する。この画素20は、カラーフィルタ10を構成する赤色(R)、緑色(G)、青色(B)などの色画素となるものである。本発明で使用されるインクジェット法および描画工程S110の詳細については後述する。本発明のインクジェット用インクを用いることにより、青色(B)の色画素を有するカラーフィルタ10を製造することができる。なお、カラーフィルタの基板12としては、特に限定されず、ガラス板や、ポリカーボネート、ポリメタクリル酸メチル、ポリエチレンテレフタレートなどの樹脂板を用いることができる。
本発明のインクジェット用インクを用いて製造するカラーフィルタとしては、単色のカラーフィルタのみならず、イエロー(Y)とマゼンタ(M)とでなる赤色(R)の色画素、イエロー(Y)とシアン(C)とでなる緑色(G)の色画素、マゼンタ(M)とシアン(C)とでなる青色(B)の色画素を有する3色のカラーフィルタや、さらに、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)の色画素を有する4〜6色の色画素を有するカラーフィルタなどが挙げられる。
青色(B)のインクジェット用インクとして、一般式(I)で表される化合物と、一般式(B)で表される化合物とを含むインクジェット用インクが好適に用いられる。赤色(R)のインクジェット用インク、イエロー(Y)のインクジェット用インク、緑色(G)のインクジェット用インクは、特に限定されない。例えば特願2007−303595号出願明細書に記載されるものを用いても良い。
上述のマゼンタ(M)とこれ以外の他色の色画素を有するカラーフィルタを形成するためのそれぞれの着色用インクとしては、公知のものを使用することができる。例えば、マゼンタ色調インクの場合は、カップリング成分(以降、カプラー成分と呼ぶ)として、フェノール類、ナフトール類、アニリン類、ピラジンのようなヘテロ環類、開鎖型活性メチレン化合物類などを有するアリールもしくはヘテリルアゾ染料;例えばカプラー成分として開鎖型活性メチレン化合物類などを有するアゾメチン染料;アントラピリドン染料(例えばUS2004/0239739A1明細書記載のTable 1中のNo.20の化合物や、国際公開第04/104108号パンフレット記載の化合物(13)など)などを含んだインクを挙げることができる。
イエロー色調用インクとしては、例えば、カプラー成分としてフェノール類、ナフトール類、アニリン類、ピラゾロンやピリドン等のような複素環類、開鎖型活性メチレン化合物類、などを有するアリールもしくはヘテリルアゾ染料;例えばカプラー成分として開鎖型活性メチレン化合物類などを有するアゾメチン染料;例えばベンジリデン染料やモノメチンオキソノール染料等のようなメチン染料;例えばナフトキノン染料、アントラキノン染料等のようなキノン系染料などがあり、これ以外の染料種としてはキノフタロン染料、ニトロ・ニトロソ染料、アクリジン染料、アクリジノン染料などを含んだインクを挙げることができる。
シアン色調用染料としては、例えば、カプラー成分としてフェノール類、ナフトール類、アニリン類などを有するアリールもしくはヘテリルアゾ染料;例えばカプラー成分としてフェノール類、ナフトール類、ピロロトリアゾールのような複素環類などを有するアゾメチン染料;シアニン染料、オキソノール染料、メロシアニン染料などのようなポリメチン染料;ジフェニルメタン染料、トリフェニルメタン染料、キサンテン染料などのようなカルボニウム染料;フタロシアニン染料;アントラキノン染料;インジゴ・チオインジゴ染料などを含んだインクを挙げることができる。
カラーフィルタパターンの形状については、特に限定はなく、ブラックマトリックス形状として一般的なストライプ状であっても、格子状であっても、さらにはデルタ配列状であってもよい。
本発明においては、図2(c)に示すように、描画工程S110において基板12上の凹部16にインク18の液滴を付与してインク18の層を形成した後、図2(d)に示すように、予備処理工程S112でインク18内に含まれる有機溶剤を乾燥して除去してインク残部18aとした後に、図2(e)に示すように、このインク残部18aに活性エネルギー線を照射する照射工程(以下、第1の硬化工程ともいう)および/またはインク残部を加熱する加熱工程(以下、第2の硬化工程ともいう)からなる硬化工程S114によりインク残部18aを重合して画素20を形成してもよい。また、インク残部の熱重合が開始する温度をT℃としたときに、予備処理工程S112において、T℃未満の温度で予備加熱(以下、予備加熱工程ともいう)を行ってインク18内に含まれる有機溶剤を強制的に乾燥させて除去してインク残部18aとした後に、インク残部18aに活性エネルギー線を照射する照射工程および/またはインク残部18aをT℃以上の温度で加熱する加熱工程によりインク残部18aを重合して硬化させて、画素20を形成してもよい。
<第1の硬化工程>
描画工程S110で形成された少なくとも1色の画素形成のための凹部16内のインク残部(以下、未硬化画素インクという)18aに活性エネルギー線を照射して硬化する工程(第1の硬化工程)を設けることができる。第1の硬化工程では、赤色(R)、緑色(G)、および青色(B)を含む各色のインクを硬化させることにより、硬化した画素20を形成することができる。硬化は、1色の未硬化画素インク18aを形成するごとに行ってもよいし、複数色または全色の未硬化画素インク18aを形成した後に行うようにしてもよい。
第1の硬化工程において、1色または複数色毎に凹部16内のインク、すなわち未硬化画素インク18aを硬化させる場合、硬化させる順序は、特に制限的ではなく、どのような順序でも良い。
また、R,G,Bなどのインクの硬化は、インクの持つ感光波長に対応する波長領域の活性エネルギー線を発するエネルギ源を用いて重合硬化を促進する露光処理を施すことにより行うことができる。
エネルギ源としては、例えば、400〜200nmの紫外線、遠紫外線、g線、h線、i線、KrFエキシマレーザ光、ArFエキシマレーザ光、電子線、X線、分子線、またはイオンビームなど、既述の重合開始剤が感応するものを適宜選択して用いることができる。具体的には、250〜450nm、好ましくは365±20nmの波長領域に属する活性光線を発する光源、例えば、LD、LED(発光ダイオード)、蛍光灯、低圧水銀灯、高圧水銀灯、メタルハライドランプ、カーボンアーク灯、キセノンランプ、ケミカルランプなどを用いて好適に行うことができる。好ましい光源には、LED、高圧水銀灯、メタルハライドランプが挙げられる。
活性エネルギー線の照射時間としては、モノマーと重合開始剤との組合せに応じて適宜設定することができるが、例えば、1〜30秒とすることができる。
<第2の硬化工程>
本発明のカラーフィルタの製造方法においては、赤色(R)、緑色(G)、および青色(B)など所望の色相の未硬化画素インク18aを、熱により硬化する工程(第2の硬化工程)を設けることができる。上記のように、第1の硬化工程を設けると共に第2の硬化工程を設けることによって、カラーフィルタ10の製造効率と表示特性とを両立させことができる。また、第2の硬化工程のみで硬化させてもよい。
本第2の硬化工程では、隔壁および所望の色相からなる未硬化画素インクを形成し、第1の硬化工程を行った後に、さらに加熱処理(いわゆるベーク処理)を行って、熱による硬化を施すことができる。すなわち、隔壁および光照射により光重合した画素が形成されている基板を、電気炉、乾燥器などに入れて加熱する、あるいは赤外線ランプを照射して加熱することができる。
このときの加熱温度および加熱時間は、インクジェット用インクの組成や画素の厚みに依存するが、一般に充分な耐溶剤性、耐アルカリ性、および紫外線吸光度を確保する観点から、約120℃〜約250℃で約10分〜約120分間加熱することが好ましい。
また、本発明のインクジェット用インクを用いたカラーフィルタの製造方法では、活性エネルギー線の露光および/または熱処理による画素形成用凹部(未硬化画素)内のインクの重合を行う前に、予備処理工程S112として、予備加熱工程を設けても良い。予備加熱工程における加熱温度は特に制限は無いが、未硬化画素インクの熱重合が開始する温度をT℃とした場合に、T℃未満であり、未硬化画素インクの重合が起きない温度が好ましく、50〜100℃がより好ましく、60〜90℃がさらに好ましい。本予備加熱工程を入れることで、インクジェット法により付与されたインク中の有機溶剤の蒸発が促進され、カラーフィルタを効率的に作製することができる上に、インク残部の粘度が熱により低下するため、より高い流動性が得られ、高い平坦性の画素を有するカラーフィルタを得ることが可能になる。
上記予備加熱工程は、本発明のごときインク残部が流動性を有するインクであれば、画素内が熱によって重合するインクのみならず、光によって重合するインクにおいても有効である。光によって重合するインクの場合、上述のインクが熱重合を開始する温度Tは、熱によって光重合開始剤などが分解して重合反応が開始する温度または、モノマー自体が熱によって分解し、重合反応が開始する温度を意味する。予備加熱工程の時間は特に制限が無いが、1〜5分間行うことが好ましい。
温度Tは、以下のようにして求めることができる。インクを加熱し、加熱によりインクの重合が開始し、インクのゲル化などが観察される温度をTとする。より具体的には、加熱前のインク粘度に対して、加熱後のインク粘度の上昇が5mPa・s以上の場合の加熱温度をTとする。
本発明のインクを用いたカラーフィルタの製造方法においては、描画工程S110から予備加熱工程(S112)および第1の硬化工程と第2の硬化工程とからなる硬化工程(S114)までの画素形成工程S106を、24時間以内で行う事が好ましく、12時間以内で行う事がより好ましく、6時間以内に行う事がさらに好ましい。描画工程S110から、最終の硬化工程(第2の硬化工程)S114までの画素の形成を24時間以内で行うことにより、画素の面状を向上させることができる。
なお、本発明のカラーフィルタの製造方法においては、画素形成工程S106、すなわち描画工程S110から予備加熱工程(S112)、第1の硬化工程および第2の硬化工程(S114)までを、1色毎に行っても良いし、複数色毎に行っても良いし、または描画工程S110で全色について描画を行い、予備加熱工程(S112)による予備加熱、硬化工程S114による硬化を全色について行っても良い。また、画素形成工程S106を1色または複数色毎に行う場合、形成する画素の色の順序は、特に制限的ではなく、どのような色の順序でも良い。
<隔壁形成工程>
本発明のカラーフィルタの製造方法では、上述した画素形成工程S106において、図2(c)〜(e)に示すように、基板12上に形成された隔壁14により囲まれた凹部16に、インクジェット法により本発明のインクジェット用インク18の液滴を付与して画素20が形成される。
この隔壁14は、特に制限的ではなく、公知の隔壁を用いることができ、どの様なものでもよいが、カラーフィルタを作製する場合は、ブラックマトリクスの機能を持った遮光性を有する隔壁であることが好ましい。
そのため、図1に示す例では、隔壁形成工程S102において、図2(b)に示すように、図2(a)に示す基板12上に、このようなブラックマトリクスの機能を持つ遮光性のある隔壁14を形成する。
なお、この隔壁14は、公知のカラーフィルタ用ブラックマトリクスと同様の素材を用い、同様の公知の方法により作製することができる。例えば、特開2007−193090号公報の段落番号[0108]〜[0126]や、特開2005−3861号公報の段落番号[0021]〜[0074]や、特開2004−240039号公報の段落番号[0012]〜[0021]に記載のブラックマトリクス(いわゆる樹脂ブラックマトリックス)や、特開2006−17980号公報の段落番号[0015]〜[0020]や、特開2006−10875号公報の段落番号[0009]〜[0044]に記載のインクジェット用ブラックマトリクスなどが挙げられる。また、隔壁14は、ブラックマトリクス機能と隔壁機能とを別々に持つ層からなる2層構造であっても良い。例えば、特開2004−361491号公報の段落番号[0054]〜[0057]や、特開2004−295039号公報の段落番号[0067]〜[0069]や、特開2006−86128号公報の段落番号[0068]〜[0069]、[0103]、[0109]〜[0110]に記載の金属遮光膜とその上に形成された樹脂製、好ましくは、撥液性の樹脂製の隔壁(バンク)層とからなる2層構造であっても良い。
本発明法では、上述した公知の作製方法の中でも、コスト削減の観点から感光性樹脂転写材料を用いることが好ましい。感光性樹脂転写材料は、仮支持体上に少なくとも遮光性を有する樹脂層を設けたものであり、基板に圧着して、遮光性を有する樹脂層を基板に転写することができる。
感光性樹脂転写材料は、特開平5−72724号公報に記載されている感光性樹脂転写材料、すなわち一体型となったフイルムを用いて形成することが好ましい。該一体型フイルムの構成の例としては、仮支持体/熱可塑性樹脂層/中間層/感光性樹脂層(本発明において「感光性樹脂層」とは光照射により硬化しうる樹脂をいい、それが遮光性を有するときには「遮光性を有する樹脂層」ともいい、目的の色に着色されているときには「着色樹脂層」ともいう。)/保護フイルムを、この順に積層した構成が挙げられる。感光性樹脂転写材料を構成する仮支持体、熱可塑性樹脂層、中間層、保護フィルムや、転写材料の作製方法については、特開2005−3861号公報の段落番号[0023]〜[0066]や特開2007−193090号公報の段落番号[0108]〜[0126]に記載のものが好適なものとして挙げられる。
また、このような隔壁14は、インクジェット用インクの混色を防ぐために、撥インク処理を施してもよい。
このため、図1に示す例では、隔壁形成工程S102の後、撥液処理工程S104において、図2(b)に示す基板12上の隔壁14に、撥液処理、すなわち撥インク処理を施す。
なお、このような撥インク処理としては、例えば、特開2007−187884号公報の段落番号[0086]〜[0087]に記載された撥インク処理方法、具体的には、(1)撥インク性物質を隔壁に練りこむ方法(例えば、特開2005−36160号公報参照)、(2)撥インク層を新たに設ける方法(例えば、特開平5−241011号公報参照)、(3)プラズマ処理により撥インク性を付与する方法(例えば、特開2002−62420号公報参照)、(4)隔壁の壁上面に撥インク材料を塗布する方法(例えば、特開平10−123500号公報参照)、などが挙げられ、特に(3)基板上に形成された隔壁にプラズマによる撥インク化処理を施す方法が好ましい。
これらの他、本発明法に適用可能な撥インク処理方法として、特開2004−361491号公報の段落番号[0058]に記載された撥インク処理方法(例えば、特開平9−203803号公報、特開平9−230129号公報および特開平9−230127号公報参照)や、特開2006−86128号公報の段落番号[0074]〜[0075]、[0111]〜[0118]、[0130]に記載された撥インク処理方法などを挙げることができる。
なお、上述した例では、基板12上の隔壁14に撥インク処理を施しているが、本発明はこれに限定されず、同時に基板12上の凹部16内に親インク処理を施しても良い。
なお、隔壁14が撥インク性を備えている場合には、撥液処理工程S104は不要であるが、その場合においても、基板12上の凹部16内に親インク処理を施しても良い。
図2(e)に示すように、基板12上に隔壁14および画素20を形成して、カラーフィルタ10を作製した後には、耐性向上の目的で、図2(f)に示すように、画素20および隔壁の14の全面を覆うように保護層としてオーバーコート層22を形成することができる。オーバーコート層22は、R,G,Bなどの画素20および隔壁14を保護すると共に表面を平坦にすることができる。但し、工程数が増える点からは設けないことが好ましい。オーバーコート層22は、樹脂(OC剤)を用いて構成することができ、樹脂(OC剤)としては、アクリル系樹脂組成物、エポキシ樹脂組成物、ポリイミド樹脂組成物などが挙げられる。中でも、可視光領域での透明性で優れており、インクジェット用インクの樹脂成分が通常アクリル系樹脂を主成分としており、密着性に優れることから、アクリル系樹脂組成物が望ましい。オーバーコート層の例として、特開2003−287618号公報の段落番号[0018]〜[0028]に記載のものや、オーバーコート剤の市販品として、JSR社製のオプトマーSS6699Gが挙げられる。
本発明のカラーフィルタは、さらに透明導電膜として、酸化インジウムスズ(ITO)層を有していてもよい。ITO層の形成方法としては、例えば、インライン低温スパッタ法や、インライン高温スパッタ法、バッチ式低温スパッタ法、バッチ式高温スパッタ法、真空蒸着法、およびプラズマCVD法などが挙げられ、特にカラーフィルタに対するダメージを少なくするため、低温スパッタ法が好ましく用いられる。
本発明のカラーフィルタは、例えば、液晶ディスプレイ、テレビ、パーソナルコンピュータ、液晶プロジェクタ、ゲーム機、携帯電話などの携帯端末、デジタルカメラ、カーナビなどの画像表示、特にカラー画像表示の用途に特に制限なく好適に適用できる。
また、本発明のカラーフィルタは、電子ペーパや有機EL素子デバイスなどの画像表示デバイス、特にカラー画像表示デバイスにも適用可能である。
次に、本発明のカラーフィルタの製造方法の描画工程、これに用いられるインクジェット描画方法、これを実施するインクジェット描画装置、およびこれに用いられるインクジェットヘッドについて説明する。
図3は、本発明のカラーフィルタの製造方法の描画工程を実施するのに用いられるインクジェット描画装置の一実施形態の一部分を示す斜視図であり、図4は、図3に示すインクジェット描画装置の部分断面図であり、図5は、図3に示すインクジェット描画装置におけるインク循環系の一実施形態の概略構成を示す模式図である。
図3および図4に示すインクジェット描画装置(以下、単に、描画装置ともいう)30は、基板12を載置して支持するプラテン32と、基板12にカラーフィルタ製造用インクを吐出するインクジェットヘッド34を備えるキャリッジタイプのヘッドユニット36と、プラテン32上に支持された基板12上においてヘッドユニット36を主走査方向(図3中矢印Xで示す方向)に移動させるヘッド移動機構38と、プラテン32に載置された基板12を主走査方向(X方向)と略直交する副走査方向(図3および図4中矢印Yで示す方向)に搬送する基板搬送機構40と、ヘッドユニット36のインクジェットヘッド34にインクを供給するインク供給系50(図5参照)と、基板搬送機構40を介してプラテン32に基板12を供給する図示しない基板供給手段とを有する。なお、基板供給手段は、基板搬送機構40が基板12をプラテン32に搬送できるように、基板12を基板搬送機構40に供給できれば、どのような基板供給手段でも良く、例えば、公知の基板供給手段や、基板12を基板搬送機構40を介してプラテン32に自動的に供給する自動給版装置であっても良い。
ここで、プラテン32は、平板形状を有し、基板供給手段から供給された基板12をその表面上に載置して支持するものである。ここで、プラテン32の表面には、空気吸引孔を設けてヘッドユニット36による描画中、すなわちヘッドユニット36のインクジェットヘッド34による描画中に基板12を吸着するのが好ましい。これにより、基板12の平面性を適正に維持できる。また、基板搬送機構40によって基板12を副走査方向(Y方向)に搬送する際には、プラテン32の表面は、基板12の裏面との摩擦が小さいものであるのが好ましい。なお、プラテン32は、描画装置30の筐体(図示せず)に取り付けられる。
ヘッドユニット36は、インクジェットヘッド34を有し、プラテン32に対向して配置され、後述するヘッド移動機構38により、プラテン32の表面と平行に移動可能な状態で支持されている。また、ヘッドユニット36には、インク供給系50のインクタンク52(図5参照)内のインクをインクジェットヘッド34に供給するためのインク供給管54が接続される。
インクジェットヘッド34は、カラーフィルタ形成のための所定色のインク吐出信号に応じて、上述した本発明のカラーフィルタ製造のためのインクジェット用インク18を吐出し、基板12上に画素(未硬化画素18a)を描画し、硬化画素20(図2(e)および(f)参照)を形成するためのものである。ここで、吐出信号とは、画像信号に基づいて、カラーフィルタの画素となる部分に選択的にインクを塗布するように液滴を吐出させる吐出信号である。
インクジェットヘッドとしては、コンティニュアス型やオンデマンド型のピエゾ方式、サーマル方式、ソリッド方式、静電吸引方式等の種々の方式のインクジェットヘッド(吐出ヘッド)を用いることができ、オンデマンド型の種々の方式のインクジェットヘッドを用いることが好ましく、特に、オンデマンド型のピエゾ方式のインクジェットヘッドを用いることが好ましい。また、インクジェットヘッドの吐出部(ノズル)は、単列配置に限定されず、複数列としても千鳥格子状に配置としてもよい。なお、インクジェットヘッドのノズルの配置およびそれに応じた描画方法については後述する。
なお、図3および図4に示す描画装置30においては、1色、例えばマゼンタのインクを用いてカラーフィルタのR画素を形成するものであるが、カラーフィルタの2色以上、例えば3色のRGB画素を形成するために、1台の描画装置30によって色の異なるインクに取り替えて順次他の色の画素を形成してもよいし、それぞれ異なる色のインクを用いる3台の描画装置30によってそれぞれ異なる色の画素を形成してもよいし、もしくは図3および図4に示す描画装置30において、2次元方向に移動可能な2以上のヘッドユニットを備える構成としても良い。
また、図示例においては、ヘッドユニット36は、1色のインクを吐出する1種のインクジェットヘッド34を備えるものであるが、本発明はこれに限定されず、2色以上、例えば、3色または4色のフルカラーのインクをそれぞれ吐出する2種以上、例えば、3種または4種のインクジェットヘッド34を備えるものであっても良い。この場合には、3種または4種のインクジェットヘッド34のそれぞれに対して、それぞれのインク供給系50、すなわち3色または4色のフルカラーのインクをそれぞれ供給する3種または4種のインク供給系50が必要であり、それらの各々に応じて3つまたは4つのインク供給管54がヘッドユニット36には接続される。
ヘッド移動機構38は、ヘッドユニット36を、主走査方向(図3中矢印X方向)に走査移動するものであり、ドライブスクリュ42と、ガイドレール43と、駆動支持部44と、支持部45とを有する。ドライブスクリュ42およびガイドレール43は、互いに所定間隔離間して、共に基板12の搬送方向(図3中Y方向)と直交する主走査方向(図3中X方向)と平行に、また、使用可能な最大(主走査方向の長さが最長)の基板12をその左端から右端まで跨ぐように配置されている。
ドライブスクリュ42は、ヘッドユニット36に形成された雌ねじ部(図示せず)と螺合する雄ねじ部を持つボールねじ(図示せず)等からなり、回転することによりヘッドユニット36を移動させる。ガイドレール43は、ヘッドユニット36に形成された貫通孔に挿通され、ドライブスクリュ42の回転により移動するインクジェットヘッド34の姿勢が変わらないように案内するガイドである。
また、駆動支持部44は、ドライブスクリュ42およびガイドレール43の一方の端部に、支持部45は、それらの他方の端部に設けられ、ドライブスクリュ42を正逆回転可能な状態で支持し、ガイドレール43を移動しないように支持している。駆動支持部44は、ドライブスクリュ42を駆動するモータ等の駆動源(図示せず)を備える。なお、駆動支持部44および支持部45は、共に、上述した図示しない描画装置30の筐体に支持される。
ヘッドユニット36は、ドライブスクリュ42およびガイドレール43によって移動可能に支持されており、駆動支持部44により、ドライブスクリュ42を正逆回転させることで、ガイドレール43に案内されつつ、主走査方向(X方向)に往復移動(走査)される。なお、ヘッド移動機構38は、ヘッドユニット36の姿勢を保つために、複数のガイドレールを備えていても良いし、その他の姿勢保持手段を有していても良い。なお、ヘッドユニット36は、ガイドレール43により、インク液滴を吐出させる部分、つまり、インクジェットヘッド34のインク液滴吐出面がプラテン32と対向した所定の姿勢を維持して移動される。
ここで、ヘッドユニット36の移動機構としては、上記のヘッド移動機構38に限定されず、種々の公知のヘッド移動機構を用いることができる。例えば、ドライブスクリュをガイドレールなどの棒状部材とし、インクジェットヘッドのX方向の端部の両側にそれぞれガイドワイヤーをつけた構成として、移動方向のガイドワイヤを巻き取り、ガイドレールに沿って移動させる構成も用いることができる。また、ガイドワイヤの代りに、タイミングベルトで移動させても良い。この場合には、ワイヤーリールに代えてタイミングベルト用スプロケットを用いればよい。また、ラックアンドピニオン機構を用いても良い。また、自走式としても良い。さらに、リニアモータを用いてもよい。
基板搬送機構40は、ヘッドユニット36に対して、プラテン32に載置された基板12を副走査方向(Y方向)に搬送するものであり、副走査方向(Y方向)に所定間隔、例えば、使用可能な最小(副走査方向の長さが最短)の基板12の長さより少し短い間隔だけ離間して、主走査方向(X方向)延在して配置され、図示しない駆動源と接続する1対の送りローラ46と、各送りローラ46上に載置された基板12の主走査(X)方向の両端部をそれぞれ挟む位置に配置される、各送りローラ46に付き1組の小幅の抑えローラ48とを有し、送りローラ46と抑えローラ48との間に基板12を挟持して副走査(Y)方向に搬送する。1対の送りローラ46は、使用可能な最大(主走査方向に最長)の基板12の主走査方向の長さより長い2つの長尺の駆動ローラで構成され、この2つの駆動ローラの駆動軸は、駆動ベルトなど同期駆動手段により、互いに連結されて同期駆動される。一方、抑えローラ48は、各送りローラ46に対して2つ、合計4つ設けられる小幅の短尺の従動ローラで構成され、使用可能な主走査方向に最長の基板12の両端の位置から使用可能な主走査方向に最短の基板12の両端の位置の間で主走査方向に移動可能であり、使用される基板12の両端の位置に適切調整できるようになっているのが好ましい。
1つの送りローラ46と2つの抑えローラ48とは、基板12の搬送経路を上下に挟んで配置されている。自動給版装置から供給された基板12は、送りローラ46と抑えローラ48との間に所定のニップ圧で挟持され、送りローラ46を駆動源(図示せず)によって所定方向(図4において反時計回り)に回転させることで、副走査(Y)方向に搬送される。
ここで、ヘッドユニット36による描画中に、基板12をプラテン32の表面に吸着させる場合には、全ての送りローラ46および抑えローラ48の回転を停止させ、ヘッドユニット36による描画が行われていない間に、送りローラ48が図示しない駆動源によって回転駆動され、抑えローラ48との間に挟持している基板12を副走査(Y)方向に搬送するように構成するのが好ましい。すなわち、基板搬送機構40は、基板12を間欠的に副走査搬送するものであるのが好ましい。なお、送りローラ46および抑えローラ48は、共に、図示しない描画装置30の筐体に回転可能に支持される。なお、本発明に用いられる基板搬送機構40は、基板12を副走査方向に搬送できるものであればどのような形式のものでも良く、公知の全ての副走査搬送機構が適用可能である。
このようにして、基板搬送機構40は、基板12を副走査方向に搬送することにより、基板12に対してへッドユニット36を副走査方向に相対的に移動させることができる。
以上のようにして、ヘッド移動機構38および基板搬送機構40は、へッドユニット36を基板12に対して主走査方向および副走査方向に相対的に移動させることができ、へッドユニット36のインクジェットヘッド34による基板12の2次元走査(XY走査)を実現することができる。なお、本発明において、ヘッド移動機構38および基板搬送機構40の駆動源は、カラーフィルタなどの製造のための描画を正確にできれば、特に制限的ではないが、ステップモータであるのが好ましい。
なお、ヘッド移動機構38は、ヘッドユニット36を、インクジェットヘッド34の不使用時には所定のヘッド退避位置に、メンテナンス時には所定のメンテナンス位置に移動させる。また、所定のヘッド退避位置や、所定のメンテナンス位置は、プラテン32上の基板12から外れた位置、あるいはプラテン32から外れた位置であるのが好ましく、より好ましくは、所定のヘッド退避位置は、プラテン32上の基板12から外れた位置であるのが良く、所定のメンテナンス位置は、プラテン32から外れた位置であるのが良い。
なお、図示例では、ヘッド移動機構38によるへッドユニット36の主走査方向の移動および基板搬送機構40による基板12の副走査方向の搬送により、へッドユニット36のインクジェットヘッド34による基板12に対する2次元走査(XY走査)を実現しているが、本発明はこれに限定されず、基板12を支持台としてのプラテン32に載置して固定しておき、ヘッドユニット走査手段などにより、ヘッドユニット36を主走査(X)方向および副走査(Y)方向に移動走査させて、固定された基板12に対する2次元走査(XY走査)を行うようにしても良い。
ヘッドユニット36による基板の2次元走査については、本発明のカラーフィルタ製造のためのインクジェット描画方法とともに後に詳細に説明する。
図5に、インクジェット描画装置30におけるインク供給系50の概略構成を示す。
インク供給系50は、インクジェットヘッド34に供給するインクを貯留するインクタンク52と、インクジェットヘッド34とインクタンク52とを接続するインク供給管54と、インク供給管54の途中に設けられるフィルタ56と、インクジェットヘッド34のノズル領域を覆うキャップ58と、インクジェットヘッド34のノズル面34aのクリーニングを行うクリーニングブレード60と、キャップ58に接続され、インクジェットヘッド34のノズル吸引を行う吸引ポンプ62と、吸引ポンプ62で吸引したインクを回収する回収タンク64と、キャップ58と回収タンク64とを吸引ポンプ62を介して接続するインク回収管66と、インク供給管54に分岐して設けられ、インクジェットヘッド34のノズルの圧力室(図示せず)を加圧して強制吐出を行うためのヘッド加圧ポンプ68と、インクタンク52にインクを補充するインク補充系70とを有する。
なお、キャップ58、クリーニングブレード60、吸引ポンプ62およびヘッド加圧ポンプ68は、インクジェットヘッド34のメンテナンス系を構成し、キャップ58、回収タンク64、インク回収管66ならびに後述するインク補充系70の回収インク補充管82、フィルタ84および濃度検出部86は、インク回収系を構成する。
ここでは、インク供給系50は、インクタンク52からインクジェットヘッド34にインクを供給する狭義の供給系のみならず、インクジェットヘッド34のメンテナンス系、インク回収系およびインク補充系70をも含むものである。
インクタンク52は、インクジェットヘッド34にインクを供給するためのメインタンクであり、上述したカラーフィルタ製造のための本発明のインクジェット用インクを始めとして、種々のインクを貯留するためのものである。なお、図示例においては、インクタンク52の形態として、インク補充系70を備え、インクタンク52内のインク残量が少なくなった場合には、インク補充系70から補充口(図示せず)からインクを補充する方式を採用しているが、本発明はこれに限定されず、インクタンク52をインクカートリッジとしてインクタンクごと交換するカートリッジ方式を採用してもよい。
カラーフィルタを大量生産する場合など、各色、各種類ごとにインクジェットヘッド34およびインク供給系50を備え、大量のインクを消費する場合には、インク交換やコストの点からも、インク補充方式が適しているが、少量のインク消費で、使用用途に応じてインク種類を替える場合には、カートリッジ方式が適している。このカートリッジ方式の場合、インクの種類情報をバーコード等で識別して、インク種類に応じて吐出制御を行うことが好ましい。
図5に示したように、インクタンク52とインクジェットヘッド34を繋ぐインク供給管54の途中には、異物や気泡を除去するためにフィルタ56が設けられている。フィルタ56のメッシュサイズは、インクジェットヘッド34のノズル径と同等、もしくはノズル径以下(一般的には、20μm程度)とするのが好ましい。なお、詳細は後述するが、さらに、インク供給管54の途中に分岐して設けられ、インクジェットヘッド34にインクの吐出不良が発生した場合に、インクジェットヘッド34のノズルの圧力室(図示せず)を強制的に加圧して強制吐出を行うためのヘッド加圧ポンプ68が設けられる。また、インク供給管54は、インクジェットヘッド34に接続されている部分、例えば、ヘッド加圧ポンプ68よりインクジェットヘッド34の側の部分は、ヘッドユニット36の二次元的(XY方向)移動の際にスムーズな移動を実現するために、フレキシブルチューブとするのが良い。
なお、図5には示さないが、インクジェットヘッド34の近傍またはインクジェットヘッド34と一体にサブタンクを設ける構成とするのもまた好ましい。サブタンクは、ヘッドの内圧変動を防止するダンパー効果およびリフィルを改善する機能を有する。
また、図示例のインクジェット描画装置30には、インクジェットヘッド34の各ノズルからインクを適切に吐出させるため、インクジェットヘッド34を適切な吐出状態を維持するための、キャップ58およびクリーニングブレード60などを含むメンテナンスユニットを備える。これらのメンテナンスユニットは、図示しない移動機構によってインクジェットヘッド34に対して相対移動可能であり、必要に応じて、その所定の退避位置からメンテナンス位置にあるインクジェットヘッド34の下方に移動される。図3に示すインクジェット描画装置30の場合、メンテナンスユニットの退避位置も、メンテナンス位置も、プラテン32上の基板12から外れた位置、好ましくは、プラテン32から外れた位置であるのが良い。
キャップ58は、インクジェットヘッド34のノズル面34aのノズル領域を覆うように被着され、インクジェットヘッド34の不使用時のノズルの乾燥防止またはノズル近傍のインク粘度上昇を防止するための手段として設けられる。また、キャップ58は、インクジェットヘッド34のノズル(図示せず)の吐出状態の検査および/または吐出不良の解消のための予備吐出(以下、ダミー吐出ともいう)や、ヘッド加圧ポンプ68によるノズルからの強制的な吐出や、吸引ポンプ62によるインクジェットヘッド34のノズル吸引の際にも、吐出されたインクを回収するために、また、吸引ポンプ62によるノズル吸引を可能とし、かつ吸引されたインクを回収するために、ノズル面34aを覆うようにインクジェットヘッド34に被着されて用いられる。
このキャップ58は、メンテナンス位置において、図示しない昇降機構によって、インクジェットヘッド34に対して相対的に昇降変位される。昇降機構は、電源オフ(OFF)時や描画待機時にキャップ58を所定の上昇位置まで上昇させ、インクジェットヘッド34に密着させることにより、ノズル面34aのノズル領域をキャップ58で覆うようになっている。
クリーニングブレード60は、インクジェットヘッド34のノズル面34aの清掃手段として設けられ、ゴムなどの弾性部材で構成されており、メンテナンス位置において、図示しないブレード移動機構によりインクジェットヘッド34のインク吐出面(ノズル面34a)に摺動可能である。ノズル面34aにインク液滴または異物が付着した場合、クリーニングブレード60をノズル面34aに摺動させることでノズル面34aを拭き取り、ノズル面34aを清浄するようになっている。
吸引ポンプ62は、インク回収管66によってキャップ58に接続される。この吸引ポンプ62は、初期のインクのインクジェットヘッド34の各ノズルへの装填時、あるいは長時間の停止後の使用開始時に、インクジェットヘッド34のノズル面34aにキャップ58を当接させて吸引動作(ノズル吸引動作)を行い、粘度が上昇して固化した劣化インクを吸い出して除去するために用いられるものである。なお、吸引ポンプ62は、吸い出して除去した劣化インクを回収タンク64へ送液して回収する。
また、印字中または待機中において、特定のノズルの使用頻度が低くなり、そのノズル近傍のインク粘度が上昇した場合、粘度が上昇して劣化したインクを排出すべく、キャップ58に向かって予備吐出が行われる。しかしながら、インクジェットヘッド34の各ノズルから予備吐出を行っても、各ノズルの吐出状態の検査の結果、吐出不良のノズルが存在する場合がある。
このように、予備吐出でも吐出不良ノズルが容易に吐出できるように回復しない場合、すなわち、容易に吐出不良が解消しない場合、例えば、インクジェットヘッド34内(圧力室内)のインクに気泡が混入した場合や、ノズル内でインクが高粘度となりあるいは固化して劣化インクとなった場合にも、インクジェットヘッド34にキャップ58を当接させて、吸引ポンプ62は、圧力室内の(気泡が混入した)インクや、高粘度のあるいは固化した劣化インクを吸引(ノズル吸引)により除去するために用いられる。もちろん、この場合も、吸引ポンプ62は、吸引除去した気泡混入インクや劣化インクを回収タンク64へ送液して回収する。
ヘッド加圧ポンプ68は、インクジェットヘッド34に接続されたインク供給管54に分岐して設けられる。このヘッド加圧ポンプ68は、上述した吸引ポンプ62と同様に、初期のインクの装填時、あるいは長時間の停止後の使用開始時に、予備吐出でも容易に吐出不良が解消しない場合などに、インクジェットヘッド34のノズルの圧力室を加圧して
圧力室内の気泡混入インクやノズル内の劣化インクを含むインクを各ノズルから強制的に吐出させる(強制吐出を行う)ためのものである。この場合にも、キャップ58は、インクジェットヘッド34に押し当てられ、ヘッド加圧ポンプ68によって強制吐出された気泡混入インクや劣化インクを含むインクを受け、吸引ポンプ62およびインク回収管66を介して回収タンク64に送液して回収する。
なお、吸引ポンプ62とヘッド加圧ポンプ68とは、同様の機能を有するので、いずれか一方のみを備えていれば良いが、図示例のように両方を有していても良い。
回収タンク64は、予備吐出されたインク、吸引ポンプ62によって吸引除去したインクや劣化インクや、ヘッド加圧ポンプ68によって強制的に吐出された気泡混入インクやノズル内の劣化インクを含むインクを回収し、回収インクとして保管するためのものである。
なお、この回収タンク64に回収され、保管され、所定量となった回収インクは、廃棄されても良いが、後述するように、インク補充系70に送られ、インク濃度や電気伝導度などのインク特性が検出されて評価された後、その評価結果に基づいて、カラーフィルタ製造のために、再使用可能なインクとして再調液された後に、インクタンク52に補充されるのが好ましい。
ところで、インクジェットヘッド34は、ある時間以上吐出しない状態が続くと、ノズル近傍のインク溶媒が蒸発してノズル近傍のインクの粘度が高くなってしまい、吐出駆動用の圧力発生手段(図示せず)が動作してもノズルからインクが吐出しなくなる。したがって、この様な状態になる手前で(圧力発生手段の動作によってインク吐出が可能な粘度の範囲内において)、インク受けとなるキャップ58に向かって圧力発生手段を動作させて、粘度が上昇したノズル近傍のインクを吐出させる「予備吐出」が行われる。また、ノズル面34aの清掃手段として設けられているクリーニングブレード60等のワイパーによってノズル面34aの汚れを清掃した後に、このワイパー摺擦動作によってノズル内に異物が混入するのを防止するためにも予備吐出が行われる。なお、予備吐出は、「ダミー吐出」、「空吐出」、「パージ」、「唾吐き」などと呼ばれる場合もある。
また、インクジェットヘッド34のノズルや圧力室内に気泡が混入したり、ノズル内のインクの粘度上昇があるレベルを超えたりすると、上記予備吐出ではインクを吐出できなくなるため、上述したような吸引ポンプ62による吸引動作やヘッド加圧ポンプ68によるヘッド加圧動作を行う。
すなわち、インクジェットヘッド34のノズルや圧力室のインク内に気泡が混入した場合、あるいはノズル内のインク粘度があるレベル以上に上昇した場合には、圧力発生手段を動作させてもノズルからインクを吐出できなくなる。このような場合、インクジェットヘッド34のノズル面34aに、キャップ58を当接させて圧力室内の気泡が混入したインクまたは増粘インクもしくは固化インクを吸引ポンプ62で吸引する動作、またはヘッド加圧ポンプ68で圧力室内を強制的に加圧してノズルから強制的に吐出させる動作が行われる。
ただし、上記の吸引動作やヘッド加圧による強制吐出動作は、圧力室内のインク全体に対して行われるためインク消費量が大きい。したがって、粘度上昇が少ない場合は、なるべく予備吐出を行うことが好ましい。なお、図5で説明したキャップ58は、吸引手段として機能するとともに、予備吐出のインク受けとしても機能し得るのはいうまでもない。
また、キャップ58の内側が仕切壁によってノズル列に対応した複数のエリアに分割されており、これら仕切られた各エリアをセレクタ等によって選択的に吸引できる構成とするのが好ましい。
次に、インク補充系70は、図5に示すように、コンクインクを貯留するコンクインク補充タンク72と、希釈液を貯留する希釈液補充タンク74と、インクタンク52のインクの濃度を検出する濃度検出部76と、インクタンク52のインクの貯留量を検出するレベル検出部78と、濃度検出部76からの検出濃度およびレベル検出部78からのインクの貯留量の情報を受け、コンクインク補充タンク72からのコンクインクの補充量および希釈液補充タンク74からの希釈液の補充量を制御する補充制御部80とを有する。
また、図5に示すインク補充系70においては、インクタンク52と回収タンク64とは、回収インク補充管82によって接続される。この回収インク補充管82に途中には、回収タンク64内に回収された回収インクに含まれる固化インクなどの劣化インクを除去するためのフィルタ84が設けられ、回収インク補充管82のインクタンク52に近い側には、濃度検出部86が設けられている。ここで、補充制御部80は、濃度検出部86からの回収インクの検出濃度の情報をも受け取り、コンクインクの補充量および希釈液の補充量に加え、回収タンク64からの回収インク補充量を制御する。
コンクインク補充タンク72は、コンクインク(高濃度インク)を充填するタンクであり、コンクインク補充タンク72内のコンクインクをインクタンク52に供給するポンプ(図示せず)などを備えるものであり、補充制御部80からの指示に従って、コンクインクをインクタンク52に補充する。
他方、希釈液補充タンク74は、インクを補充する際のインクの希釈液として用いる溶媒を充填するタンクであり、希釈液をインクタンク52に供給するポンプなどを有するものであり、補充制御部80からの指示に従って、希釈液をインクタンク52に補充する。
ここで、本発明においては、コンクインクの濃度には、特に限定的ではなく、インクの目標濃度より高濃度であれば良い。すなわち、補充用の所定濃度のインクとして、インクの目標濃度より高濃度のインクを用いればよい。また、希釈液も、特に限定的ではなく、インクの目標濃度より低濃度のインクを用いても良い。すなわち、本発明においては、コンクインクおよび希釈液として、インクの目標濃度より高濃度であるインクおよび低濃度であるインクを含む互いに濃度の異なる複数の所定濃度のインクを用いて補充を行ってもよい。
濃度検出部76は、光学的な検出手段を用いてインクの濃度を検出し、補充制御部80に供給するものである。
例えば、インクジェット描画装置30のインク供給系50において、インク供給管54は、一部、ガラス等の光透過性部材で形成される透過部を有し、濃度検出部76は、発光素子から出射した測定光を光透過部に入射し、光透過部を透過した透過光の光量を受光素子で測定する。濃度検出部76は、実験等で予め作成した、透過光の測定結果とインク濃度との関係を示すルックアップテーブル(LUT)を有しており、このLUTを用いて、透過光の測定結果からインクの濃度を求める。あるいは、LUTに変えて、透過光の測定結果をパラメータとする演算式でインクの濃度を求めてもよい。
なお、本発明において、濃度検出部76におけるインク濃度の検出方法や手段は、光学的な方法や手段には限定されず、各種の方法や手段が利用可能であり、例えば、インクタンク52内のインクの電気伝導度などのインク特性を検出して、インク濃度を求めるようにしても良い。なお、本発明においては、インクの濃度を直接的に、かつ高精度に検出できる等の点で、このような光学的な濃度検出方法や手段を好ましく用いることができる。
レベル検出部78は、インクタンク52内のインクレベル(インクの液面高さ、すなわちインクの量)を検出し、補充制御部80に供給するためのものである。すなわち、図示例においては、インクタンク52内のインクレベルを検出することによって、インク供給系50内のインク量を検出している。
本発明において、インクレベルの検出手段や方法には、特に限定はなく、電極棒等を用いる電気的なレベル検出手段、フロートを用いるレベル検出手段、超音波式のレベル検出手段、静電容量式のレベル検出手段やこれらの手段を用いる検出方法等、公知の各種の手段や方法が利用可能である。また、インクレベルの検出ではなく、インクタンク内のインク重量の測定等によって、インクタンク52内におけるインク量を直接的に検出するようにしてもよい。
補充制御部80は、インクタンク52にインク補充を行う際に、濃度検出部76および86からのインクおよび回収インクの濃度の情報ならびにレベル検出部78からのインクタンク52内におけるインク量の情報を受け、コンクインクおよび希釈液の補充量、または回収インク、コンクインクおよび希釈液の補充量を決定し、コンクインク補充タンク72に対しコンクインクの補充量、希釈液補充タンク74に対し希釈液の補充量を、回収タンク64に対し回収インクの補充量、それぞれ指示するためのものである。
なお、本発明を用いる記録装置10において、インク補充のタイミングには、特に限定的ではなく、例えば、所定時間や期間毎や所定枚数の基板への描画毎等に自動的に行ってもよく、レベル検出部78で検出されたインクタンク52内のインクの量に応じて自動的に行ってもよく、描画した画素を観察したオペレータ等の判断による入力指示に応じて行ってもよく、複数のタイミング決定手段を有し、選択的に行ってもよい。
図3〜図5に示すインクジェット描画装置は、基本的に以上のように構成されるものであるが、以下に、このインクジェット描画装置の作用およびインクジェット描画装置によるカラーフィルタ製造のためのインクジェット描画方法を説明する。
図6は、図3〜図5に示すインクジェット描画装置においてカラーフィルタ製造のための描画工程として実施されるインクジェット描画方法の描画開始前の一実施形態のフローを示すフローチャートである。
まず、図6に示すように、ステップS120において、図3に示すインクジェット描画装置30で、図示しない基板供給手段により、基板搬送機構40を介してプラテン32上に隔壁14が形成されている基板12を供給する。次に、ステップS122において、供給された基板12を基板搬送機構40の送りローラ46および抑えローラ48によってプラテン32上に搬送してその所定の位置に位置決めして停止させ、基板12をプラテン32上に、例えば吸着等により、装着し、固定する。次いで、ステップS124において、基板12上のアラインメントマークを用いて基板アラインメントが採られ、描画開始位置が設定される。
一方、ステップS130において、図3に示すように、ヘッド移動機構38によりドライブスクリュ42を駆動してヘッドユニット36をガイドレール43に沿って移動させ、ヘッドユニット36を基板12の領域またはプラテン32の領域から外れた、インクジェットヘッド34の吐出状態の検査を行うためのメンテナンス位置(吐出検査位置;図示せず)に移動させ、図5に示すように、インクジェットヘッド34のノズル面34aをキャップ58と対向させる。このとき、ヘッドユニット36は、キャップ58と対向する所定位置に移動されている。
次に、ステップS132において、キャップ58を上昇させてインクジェットヘッド34のノズル面34aに当接させ、各ノズルからインクを吐出させてインクの吐出検出を行う。このインクの吐出検出、すなわち吐出状態の検査は、キャップ58内にインクジェットヘッド34の各ノズル毎に設けられた光センサ、例えば発光受光素子に吐出インク液滴の有無を検出することによって行えばよい。あるいは、インクジェットヘッド34の各ノズル毎に吐出インク液滴の量を計測し、その量が予め設定された仕様、すなわち所定範囲内にあるか否によって各ノズルの吐出状態を検査するようにしても良い。なお、吐出検出の際の吐出インクは、インク回収管66を通って回収タンク64に回収される。
次いで、ステップS134において、インクジェットヘッド34の全ノズルが、予め設定された仕様内にある、すなわち、適正な吐出状態にあるか否かの判断がなされる。
このステップS134の判断において、インクジェットヘッド34の全ノズルが、上記設定仕様内(適正な吐出状態)にある場合(Y)には、ステップS126に移り、キャップ58をインクジェットヘッド34のノズル面34aから外し、図3に示すように、ヘッド移動機構38によりドライブスクリュ42を駆動してヘッドユニット36をガイドレール43に沿って移動させ、ヘッドユニット36を基板アラインメントによる基板12上の所定の描画開始位置に移動させる。
次いで、ステップS128において、基板12上に描画を行う。
一方、上記ステップS134の判断において、インクジェットヘッド34の1つのノズルでも、上記設定仕様(適正な吐出状態)から外れている場合(N)には、ステップS136に移り、インクジェットヘッド34の各ノズルからダミー吐出(予備吐出)を行う。
次に、ステップS138において、ステップS132と同様に、インクジェットヘッド34の各ノズルでのインクの吐出検出を行い、各ノズルの吐出状態を検査する。なお、ダミー吐出および吐出検出の際の吐出インクは、インク回収管66を通って回収タンク64に回収される(図5参照)。
次いで、ステップS140において、ステップS134と同様に、インクジェットヘッド34の全ノズルが上記設定仕様内にあるか否かの判断がなされ、上記設定仕様内にある場合(Y)には、ステップS126に移り、上述のように、キャップ58をインクジェットヘッド34のノズル面34aから外し、ヘッド移動機構38によりドライブスクリュ42を駆動してヘッドユニット36をガイドレール43に沿って移動させ(図3参照)、ヘッドユニット36を基板アラインメントによる基板12上の所定の描画開始位置に移動させる。
次いで、ステップS128において、基板12上に描画を行う。
一方、上記ステップS140の判断において、インクジェットヘッド34の1つのノズルでも、上記設定仕様から外れている場合(N)には、ステップS142に移り、インクジェットヘッド34の各ノズルを、吸引ポンプ62によって各ノズル内のインクを吸引するか、または、ヘッド加圧ポンプ68によって各ノズルにヘッド加圧を行って各ノズル内のインクを強制的に吐出させる(図5参照)。なお、吸引ポンプ62によるノズル吸引動作およびヘッド加圧ポンプ68による強制吐出動作の両方を行っても良い。
次に、ステップS144において、キャップ58をインクジェットヘッド34のノズル面34aから外し、クリーニングブレード60によってノズル面34aのワイピングを行い、ノズル面34aに付着している固化インクや高粘度インクなどの劣化インクを擦り取り、ノズル面34aをクリーニングする(図5参照)。
その後、ステップS146において、ステップS136と同様に、インクジェットヘッド34の各ノズルからダミー吐出を行う。
次に、ステップS148において、ステップS138と同様に、インクジェットヘッド34の各ノズルでのインクの吐出検出を行い、各ノズルの吐出状態を検査する。なお、ノズル吸引動作および/または強制吐出動作、ダミー吐出および吐出検出の際の吐出インクは、インク回収管66を通って回収タンク64に回収される(図5参照)。
次いで、ステップS150において、ステップS140と同様に、インクジェットヘッド34の全ノズルが上記設定仕様内にあるか否かの判断がなされ、上記設定仕様内にある場合(Y)には、ステップS126に移り、上述のように、キャップ58をインクジェットヘッド34のノズル面34aから外し、ヘッド移動機構38によりドライブスクリュ42を駆動してヘッドユニット36をガイドレール43に沿って移動させ、ヘッドユニット36を基板アラインメントによる基板12上の描画開始位置に移動させる(図3参照)。
次いで、ステップS128において、基板12上に描画を行う。
一方、上記ステップS150の判断において、インクジェットヘッド34の1つのノズルでも、上記設定仕様から外れている場合(N)には、再びステップS142に戻り、上述した吸引ポンプ62によるノズル吸引動作および/またはヘッド加圧ポンプ68による強制吐出動作を行い、ステップS144におけるクリーニングブレード60によるノズルワイピング、ステップS146におけるダミー吐出、ステップS148における吐出検出、およびステップS150における全ノズルが上記設定仕様内にあるか否かの判断が順次行われる。
ステップS150において、全ノズルが上記設定仕様内にある場合(Y)には、ステップS126に移り、同様にして、ヘッドユニット36を基板アラインメントによる基板12上の描画開始位置に移動させ(図3参照)、ステップS128において、基板12上に描画が行われるが、インクジェットヘッド34の1つのノズルでも、上記設定仕様から外れている場合(N)には、再び、上述したステップS142に戻り、ステップS142、S144、S146、S148およびS150の各動作が、全ノズルが上記設定仕様内(Y)となるまで、繰り返される。なお、この繰り返し回数が、予め設定された所定回数を超えた場合には、エラーとして、この描画方法の実施を停止するのが良い。
なお、ステップS128の描画ステップにおいては、図3に示すインクジェット描画装置30において、ヘッド移動機構38によりヘッドユニット36を主走査(X)方向に移動(走査)させつつ、基板12の所定位置、すなわち基板12上の隔壁14間の所定の凹部16にインクジェットヘッド34からインク18の液滴を吐出させて描画し、カラーフィルタの画素(未硬化画素インク18a)を形成する。
こうして、ヘッドユニット36を基板12の描画領域(隔壁14が形成されている領域)主走査(X)方向の始端から終端および/または終端から始端に移動走査させて、主走査方向の画素形成を終了する。
この後、プラテン32への基板12の吸着固定を解除し、基板移動機構40により送りローラ46を回転させて、基板12を副走査方向に所定距離(例えば、描画領域分の長さΔY(カラーフィルタのセルの1ピッチ(片道)または2ピッチ(往復)))だけ搬送し移動させて、プラテン32上に停止させ、再び、プラテン32に基板12を吸着固定させる。これにより、基板12の主走査方向の始端または終端に到達したヘッドユニット36は、副走査方向に一定量(描画領域分の長さΔY)移動された状態となる。
続いて、こうしてプラテン32上に吸着固定された基板12に、主走査方向の描画開始位置から、上述したように、再び、ヘッド移動機構38によりヘッドユニット36を主走査(X)方向に移動させて、インクジェットヘッド34による描画を行い、基板12の主走査方向の描画を終了する。
その後、再び、プラテン32への基板12の吸着解除、基板12の副走査方向に所定距離ΔYだけの搬送、プラテン32への基板12の吸着固定、インクジェットヘッド34による基板12の主走査方向の描画を繰り返して、基板12を副走査方向の始端から終端まで描画領域分の長さΔYずつ移動させながら、ヘッドユニット36を主走査(X)方向に移動させて、インクジェットヘッドのノズルから吐出信号に応じてインクを吐出させて基板12の全面に1色について描画し、カラーフィルタの画素(未硬化画素インク18a)を形成する。
このようにして、カラーフィルタの他の色についても、基板12上でヘッドユニット36を主走査方向に移動させながらインクの吐出を行い、その後、基板12を副走査方向に一定距離移動させることを繰り返し、基板12上に順次他の色について描画し、カラーフィルタの画素(未硬化画素インク18a)を形成し、カラーフィルタの全色について全画素(未硬化画素インク18a)を形成することができる。
なお、本発明においては、ヘッドユニット36のインクジェットヘッド34のノズル配列は特に制限的ではなく、単列であっても、複数列であっても良いし、各ノズル列のノズル数も特に制限的ではなく、1個であっても、複数であっても良い。また、このようなノズル配列を持つインクジェットヘッド34によるカラーフィルタのセルや画素への描画形式は特に制限的ではなくどのようなものであっても良い。
例えば、図9(a)に示すように、ノズル部に4列のノズル列を持ちRインクを吐出するインクジェットヘッド34Rと、ノズル部に4列のノズル列を持ちGインクを吐出するインクジェットヘッド34Gと、ノズル部に4列のノズル列を持ちGインクを吐出するインクジェットヘッド34Bを用い、その各インクジェットヘッド34R、34G、34Bの各ノズル列のノズル間隔に対して、図9(b)に示すように、カラーフィルタの各色の1つのセル(画素)20R、20G、20B内に描画すべきドット間隔が小さい場合、インクジェットヘッド34R、34G、34Bをその主走査(X)方向とカラーフィルタのセルの長手方向とが直交するように走査して、1つのインクジェットヘッドからカラーフィルタの1つのセルに対して4列の各列の2個のノズルを用い、合計8個のノズルからインク液滴を吐出してカラーフィルタの1つのセルに8個のドットを形成して、各色毎のセル(つまり、セル20R、20G、20B)を形成しても良い。また、図9(c)に示すように、ノズル部にRインクを吐出するノズルを配置したノズル列35R、Gインクを吐出するノズルを配置したノズル列35G、Bインクを吐出するノズルを配置したノズル列35Bの3列のノズル列を持つインクジェットヘッド34’を用い、インクジェットヘッド34’をその主走査(X)方向とカラーフィルタのセルの長手方向とが一致するように走査して、カラーフィルタの1つのセルに対して1つのノズル列(つまり、ノズル列35R、35G、35Bのいずれか1つのノズル列)の1つのノズルを用い、1つのノズルから合計8個のインク液滴を吐出して、図9(d)に示すカラーフィルタの1つのセル、つまり、図9(d)中ではセル20R、20G、20B、20R’のうちの対応する1つのセルに8個のドットを形成しても良い。図9(d)に示す例では、カラーフィルタの4つのセルの内、3つのセル(具体的には、セル20R、20G、20B)には、それぞれ異なる3種のインクによる8個ずつのドットが形成されていることを示し、図9(d)の最上と最下の2つのセル(具体的には、セル20Rとセル20R’)は、図9(c)に示すインクジェットヘッド34’のノズル列35Rの異なるノズルによって形成され、それぞれ同種のインクによる8個ずつのドットが形成されていることを示す。
ここで、図3〜図5に示すインクジェット描画装置30を用い、図6に示すインクジェット描画方法によって形成されるカラーフィルタの画素配列(画素パターン)の形状を、ブラックマトリックス形状として、図7(a)に示すストライプ状、図7(b)に示す格子状、あるいは図7(c)に示すデルタ配列状とすることができるが、本発明は、特に制限的ではない。
また、図7(a)〜図7(c)に示すカラーフィルタの色画素配列(色画素パターン)を描画し、硬化して形成する場合、1色、例えば、まず、Rの色画素パターンを描画・硬化して色画素20を形成し、順次他の色を1色ずつ、例えば、G、次にBの順で、色画素パターンを描画・硬化して形成して、全色の色画素20の色画素パターンを形成しても良いし、始めに、2色以上、例えば、RGBの3色の色画素パターンを順次もしくは同時にまたは複数色ずつ描画した後に、描画された2色以上、例えば、RGBの3色の色画素パターンの未硬化画素18aを硬化させて、複数色または全色の色画素パターンの硬化色画素20のを形成しても良い。
このように、カラーフィルタの製造においては、例えば、RGBなどの3原色の画素配列、すなわち画素パターンが規則的であるので、ランダムな色画素パターンからなる通常の画像をインクジェットヘッドで描画する場合よりも、またはこれらと異なり、インクジェットヘッドにおいて使用されるノズルが決まってしまい、インクジェットヘッドの全ノズルの中で長期間使用されないノズルが発生する。このため、本発明のカラーフィルタの製造方法におけるインクジェット描画方法においては、図6に示すように、インクジェットヘッドの各ノズルの吐出状態の検査し、吐出を確認しながらインクジェット描画を実施するのが好ましい。
なお、上述した実施形態では、ヘッドユニットを主走査方向および副走査方向に移動させて画素を形成したが、これに限定されず、例えば、ヘッドユニットは、主走査方向のみに移動させ、基板を副走査方向に一定距離ずつ移動させるようにしてもよい。
また、インクジェットヘッドをフルラインヘッドとして、ヘッドユニットの一回の走査で、印刷版原版の全面に画素を形成するようにしてもよい。ここで、インクジェットヘッドをフルラインヘッドとする場合は、インクジェットヘッドを走査させても、基板を走査させてもよい。
図5に示す例では、インクタンク52をインク供給管54によって直接インクジェットヘッド34に接続する構成としているが、本発明はこれに限定されず、ヘッドの内圧変動を防止するダンパー効果およびリフィルを改善する機能を与えるために、インクタンク52とインクジェットヘッド34との間に供給サブタンクを設ける構成としても良い。
図8に、図5に示すインク供給系に代えて、図3および図4に示すインクジェット描画装置に適用されるインク供給系の他の実施形態の概略構成を模式的に示す。
図8に示すように、インクジェット描画装置31およびこれに用いられるインク供給系90は、基本的に、インクジェットヘッド(吐出ヘッド)34と、キャップ58と、インクタンク52と、供給サブタンク92と、回収タンク64と、補充タンク94と、を有する。
図8に示すインクジェット描画装置31およびインク供給系90は、図3〜図5に示すインクジェット描画装置30およびインク供給系50と、供給サブタンク92を有し、回収タンク64とインクタンク52とをオーバーフロー管98で接続している点で異なっている以外は、同様の構成を有するものであるので、同一の構成要素には、同一の参照符号を付し、その詳細な説明は省略する。なお、図8に示されていないインクジェット描画装置31の走査系は、図3および図4に示すインクジェット描画装置30の走査系が適用されるものであっても良いし、従来公知の走査系が適用されるものであっても良い。
インク供給系90は、主に、インクタンク52のインクをインクジェットヘッド34に供給する狭義のインク供給系と、キャップ58にパージされたインクを回収し、再利用するためのインク回収系とから構成される。インク供給系は、インクポンプ96、供給サブタンク92、インクポンプ96と供給サブタンク92とを接続する第1インク供給管54a、供給サブタンク92とインクジェットヘッド34とを接続する第2インク供給管54b、および供給サブタンク92内のインクをオーバーフローさせてインクタンク52に送液回収する第3インク回収管(流路)98としても機能する供給サブタンク92の内部において開口するオーバーフロー管98aから主に構成される。また、インク回収系は、回収タンク64、キャップ58と回収タンク64とを接続する第1インク回収管66、回収タンク64内のインクをオーバーフローさせてインクタンク52に送液回収する第2インク回収管100としても機能する回収タンク64の内部において開口するオーバーフロー管100aから主に構成される。なお、第2インク回収管100(オーバーフロー管100a)には、内部を流れる回収インクの濃度を検出するために回収インクの透過率を計測する濃度検出部86が取り付けられている。また、供給サブタンク92には、大気開放弁102と圧力調整弁104とが取り付けられている。インク供給流路となるインク供給管やインク回収流路となるインク回収管は、例えば、パイプや可撓性を有するチューブなどから構成することができる。
なお、図8は、本発明の特徴的な部位を主に示しているが、インクジェット描画装置31およびインク供給系90は、図に示した以外にも、例えば、インクジェットヘッド34を駆動してインク液滴を吐出させるドライバ、インクジェットヘッド34の走査手段やインクジェットヘッド34と対面する所定の経路で、後述するノズル列方向(行方向)と直交する方向に記録媒体Pを搬送(走査搬送)する走査搬送手段など公知のインクジェット描画装置が有する各種の構成要素を有しているのは、もちろんのことである。
キャップ58は、インクの循環停止時や長時間描画を行わない間に、インクジェットヘッド34のノズル側に装着されて、インクジェットヘッド34の全てのノズルを外気との連通を断った状態にし、ノズルに残存するインクの蒸発による乾燥固着を防止するものである。 このようなキャップ58は、各種のインクジェット記録装置で通常に使用されているものが各種利用可能である。
インクタンク52は、補充タンク94からの溶媒、コンクインク、回収タンク64からの回収されたインクを混合して、液物性、光学特性を一定にする機能およびインクを保管する機能を有する。インクタンク52は、染料の析出を防止するための撹拌手段や、インク吐出の安定性を向上するための温度調節手段を有するのが好ましい。
第1インク供給管54a上には、インクタンク52から供給サブタンク92にインクを送液するためのインクポンプ96が配置される。インクポンプ96による送液量は、供給サブタンク92からインクジェットヘッド34へのインク供給量よりも多く設定される。
供給サブタンク92は、第1インク供給管54aおよび第2インク供給管54bが接続される密閉型のインクタンクであり、鉛直方向においてインクジェットヘッド34よりも下方に配置される。供給サブタンク92に接続された第2インク供給管54bの他端は、インクジェットヘッド34に接続されている。
供給サブタンク92には、第1インク供給管54aによってインクタンク52から供給されたインクが貯留され、貯留されたインクは第2インク供給管54bを介してインクジェットヘッド34に供給される。
また、供給サブタンク92内には、第3インク回収管98となるオーバーフロー管98aが配置され、かつ、第2インク供給管54bは、オーバーフロー管98aの上端よりも下方に接続される。図示例では、第2インク供給管54bとの接続部を供給サブタンク92の底面に設けた構成としている。
供給サブタンク92に貯留されたインクは、ノズルメニスカスに表面張力や供給サブタンク圧力調整機構により供給サブタンク92を加圧することで第2インク供給管54bからインクジェットヘッド34に供給される。
また、供給サブタンク92では、インクポンプ96により供給されたインクがオーバーフロー管98aの高さを超えても、オーバーフロー管98aからオーバーフローして排出されるので、タンク内の液面の高さは一定に保たれる。その結果、供給サブタンク92を大気開放にすれば、供給サブタンク92の圧力は一定に保たれる。
なお、オーバーフロー管98からオーバーフローして排出されたインクは、第3インク回収管98を経て、インクタンク52に戻され、再度、循環に供される。
回収タンク64は、キャップ58に接続される密閉型のインクタンクであり、インクジェットヘッド34よりも鉛直方向において下方に配置される。前述のように、第1インク回収管66の他端は、キャップ58に、第2インク回収管100の他端は、インクタンク52に、それぞれ接続される。
回収タンク64には、パージ、ダミー吐出によりキャップ58に排出されたインクが貯留される。回収タンク64に貯留されたインクは、第2インク回収管100からインクタンク52に戻される。
インクの補充タンク94は、消費したインクをインクタンク52に補充する密閉型のタンクであり、インク補充管106によって、インクタンク52と接続される。
補充タンク94は、インクタンク52内のインクが、所定濃度で、かつ所定量となるように、インクタンク52にインクを補充する。補充タンク94の構成は特に限定されず、例えば、図5に示すインク補充系70のように、コンクインク(高濃度インク)を貯留するコンクタンクと、インクの希釈液を貯留する希釈液タンクとを有し、所定濃度で、かつ所定量となるように、決定された量のコンクインクおよび希釈液をインクタンクに補充するようにしてもよい。なお、希釈液としては、溶媒を用いればよい。
インクジェット描画装置31およびインク供給系90において、インクの補充タイミングには、特に限定はない。例えば、所定枚数の描画毎等に自動的に行ってもよく、インクタンク52内のインクの量を検出して自動的に行ってもよく、描画した画素を観察したオペレータ等の判断による入力指示に応じて行ってもよく、複数のタイミング決定手段を有し、選択的に行ってもよい。
また、コンクインクおよび希釈液の補充量の決定方法にも、特に限定はない。例えば、インク予想蒸発量に加え、画素データ等から検出した総インク吐出回数、循環しているインクの濃度測定結果、インクタンク52内のインク量などを用いて、インクの消費量を予測し、インクタンク52内のインクが所定濃度で所定量となるように、インクの補充量を決定すればよい。
希釈液、コンクインク、回収インクの混合方法は、以下の方法で行うこともできる。回収タンク64からインクタンク52への流路となる第3インク回収管100の途中にインク濃度測定エリアとして透明な部分を設け、その部分に濃度検出部86を配置する。濃度検出部86においては、測定エリア内のインクの光透過率を測定することで、インクタンクに回収されるインクの溶媒蒸発量を計算する。光透過率と溶媒蒸発量との関係は、事前に染料濃度の異なるインクと光透過率との関係を測定しておくことや光透過率exp(−α・t)(α:吸収係数(染料濃度に比例)、t:厚み)であることから算出できる。透過率測定のため、インク濃度測定エリアには、光源、受光センサーおよびガラス等の透明部材の流路を具備する。流路は、測定光が透過する部分については、平面であることが望ましく、表面はARコートされていること、光軸に対して垂直から数度傾いていることが望ましい。反射光による測定精度悪化防止のためである。
回収されたインクの濃度から希釈液、コンクインク、回収インクの混合比を決定する。
図8に示すインクジェット描画装置31およびインク供給系90は、基本的に以上のように構成される。
以上のようにして製造されたカラーフィルタは、液晶ディスプレイ、電子ペーパや有機ELなどのカラー画像表示デバイスのカラーフィルタとして好適に用いることができる。
以上、本発明のインクジェット用インク、カラーフィルタおよびその製造方法、ならびにそれを用いる液晶ディスプレイおよび画像表示デバイスついて、種々の実施形態や実施例を挙げて詳細に説明したが、本発明は、上記実施例や実施形態には限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や変更を行ってもよいのは、もちろんのことである。
以下に実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、試薬、割合、機器、操作等は本発明の範囲から逸脱しない限り適宜変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。なお、以下の実施例において、特に断りのない限り「%」および「部」は、「質量%」および「質量部」を表し、分子量とは重量平均分子量のことを示す。
(隔壁形成用の濃色組成物の調製)
濃色組成物K1は、まず表1に記載の量のK顔料分散物1、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートをはかり取り、温度24℃(±2℃)で混合して150rpmで10分間攪拌し、さらに攪拌しながら、表1に記載の量のメチルエチルケトン、バインダー2、ハイドロキノンモノメチルエーテル、DPHA液、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−[4’−(N,N−ビスジエトキシカルボニルメチル)アミノ−3’−ブロモフェニル]−s−トリアジン、界面活性剤1をはかり取り、温度25℃(±2℃)でこの順に添加して、温度40℃(±2℃)で150rpmで30分間攪拌することによって得られる。なお、表1に記載の量は質量部であり、詳しくは以下の組成となっている。
<K顔料分散物1>
・カーボンブラック(デグッサ社製 Nipex35) 13.1%
・分散剤(下記化合物1) 0.65%
・ポリマー(ベンジルメタクリレート/メタクリル酸=72/28モル比
のランダム共重合物、分子量3.7万) 6.72%
・プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 79.53%
<バインダー2>
・ポリマー(ベンジルメタクリレート/メタクリル酸=78/22モル比
のランダム共重合物、分子量3.8万) 27%
・プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 73%
<DPHA液>
・ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート
(重合禁止剤MEHQ 500ppm含有、日本化薬(株)製、商品名:KAYARAD
DPHA) 76%
・プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 24%
<界面活性剤1>
・下記構造物1 30%
・メチルエチルケトン 70%
(隔壁の形成)
無アルカリガラス基板を、UV洗浄装置で洗浄後、洗浄剤を用いてブラシ洗浄し、更に超純水で超音波洗浄した。基板を120℃3分熱処理して表面状態を安定化させた。
基板を冷却し23℃に温調後、スリット状ノズルを有すガラス基板用コーター(エフ・エー・エス・アジア社製、商品名:MH−1600)にて、上述のように調製した濃色組成物K1を塗布した。引き続きVCD(真空乾燥装置、東京応化工業社製)で30秒間、溶媒の一部を乾燥して塗布層の流動性を無くした後、120℃3分間プリベークして膜厚2.3μmの濃色組成物層K1を得た。
超高圧水銀灯を有すプロキシミティー型露光機(日立ハイテク電子エンジニアリング株式会社製)で、基板とマスク(画像パターンを有す石英露光マスク)を垂直に立てた状態で、露光マスク面と濃色感光層K1の間の距離を200μmに設定し、窒素雰囲気下、露光量300mJ/cm2で隔壁幅20μm、スペース幅100μmにパターン露光した。
次に、純水をシャワーノズルにて噴霧して、濃色組成物層K1の表面を均一に湿らせた後、KOH系現像液(ノニオン界面活性剤含有、商品名:CDK−1、富士フイルムエレクトロニクスマテリアルズ(株)製を100倍希釈したもの)を23℃80秒、フラットノズル圧力0.04MPaでシャワー現像しパターニング画像を得た。引き続き、超純水を、超高圧洗浄ノズルにて9.8MPaの圧力で噴射して残渣除去を行い、大気下にて露光量2500mJ/cm2にて基板の濃色組成物層K1が形成された面側からポスト露光を行って、オーブンにて240℃50分加熱し、膜厚2.0μm、光学濃度4.0、100μm幅の開口部を有するストライプ状の隔壁を得た。
(撥インク化プラズマ処理)
隔壁を形成した基板に、カソードカップリング方式平行平板型プラズマ処理装置を用いて、以下の条件にて撥インク化プラズマ処理を行った。
使用ガス :CF4
ガス流量 :80sccm
圧力 :40Pa
RFパワー:50W
処理時間 :30sec
<青色(B)用インク>の調製法(その1)
下記の成分を混合し、1時間撹拌した。その後、平均孔径0.25μmのミクロフィルターで減圧濾過して青色用インク液(インクB−1、およびインクB−2)を調製した。
用いた素材の詳細を以下に示す。
・染料:一般式(I)で表される化合物の例示化合物III−4
・染料:一般式(B)で表される化合物の例示化合物CI−29
・DPCA−60(日本化薬社製(KAYARAD DPCA−60)):カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート
・KF−353(信越シリコーン社製):ポリエーテル変性シリコーンオイル
(粘度、表面張力の測定)
得られたインクを25℃に調温したまま、東機産業(株)製E型粘度計(RE−80L)を用いて以下の条件で測定した。
(測定条件)
・使用ロータ:1° 34’×R24
・測定時間 :2分間
・測定温度 :25℃
得られたインクを25℃に調温したまま、協和界面科学(株)製表面張力計(FACE SURFACE TENSIOMETER CBVB−A3)を用いて測定した。
<コントラスト測定方法>
バックライトユニットとして冷陰極管光源(図10に示す波長スペクトル分布の光を射出する光源)に拡散板を設置したものを用い、2枚の偏光板(ルケオ製 POLAX−15N)の間に単色基板を設置し、偏光板をパラレルニコルに設置したときに通過する光の色度のY値を、クロスニコルに設置したときに通過する光の色度のY値で割ることでコントラストを求めた。色度の測定には色彩輝度計((株)トプコン製BM−5A)を用いた。単色基板は以下の方法で作製した。カラーフィルタを構成するBインク(インクB―1、インクB−2)のうち一色のインクを用いて、ガラス基板上にインクジェット法あるいはスピンコート法によってベタ膜を形成して、後述するカラーフィルタ形成と同じようにプリベーク(予備加熱)(温度100℃、2分)、ポストベーク(後加熱)(温度220℃、30分)を行い、膜厚2um(μm)を形成した。
色彩輝度計の測定角は1°に設定し、サンプル上の視野φ5mmで測定した。バックライトの光量は、サンプルを設置しない状態で、2枚の偏光板をパラレルニコルに設置したときの輝度が400cd/m2になるように設定した。
上記で得た単色基板(2種類)のコントラストを測定したところ、いずれの単色基板でも50000以上の値を得た。
<ITO層作製>
次に、上記で得た単色基板上にスパッタ装置を用い、膜面温度200℃にて15分間、ITO(酸化インジウムスズ)をスパッタして、膜厚1500ÅのITO膜を形成し、ITO付きのカラーフィルタ基板を作製した。
<ITOスパッタ前後における分光特性変化>
ITOスパッタ前後において、紫外可視吸収分光装置(日本分光製V−570)を用いて、400nm〜700nmの波長範囲における分光透過率曲線を得た。スパッタ前後での、最大ピークにおける分光透過率変化量が小さい場合、耐熱性がよいことを意味する。
作製した単色基板(インクB―1)のITOスパッタ前後における紫外可視吸収スペクトルより、ITOスパッタ前後においてスペクトル形状はほとんど変化しておらず、高い耐熱性を有することがわかった。Bインク(インクB−2)の単色基板においても同様に、ITOスパッタ前後においてスペクトル形状はほとんど変化しなかった。
<青色(B)用インク>の調製法(その2)
下記の成分を表5に記載の配合割合で混合し、1時間撹拌した。その後、平均孔径0.25μmのミクロフィルターで減圧濾過して青色用インク液(B実施例1〜10)を調製した。なお、表中の数値は質量%を表す。
青色(B)用インクの調製に用いた各材料の詳細を以下に示す。
(有機溶媒)
・シクロヘキサノン(和光純薬社製)
・N−メチルピロリドン(和光純薬社製)
・ベンジルアルコール(和光純薬社製)
・MMPGAC(ダイセル工業社製):プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
・1,3−BGDA(ダイセル工業社製):1,3−ブチレングリコールジアセテート
(重合性モノマー)
・DPCA−60(日本化薬社製(KAYARAD DPCA−60)):カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート
・DPHA(日本化薬社製(KAYARAD DPHA)):ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート
・AD−TMP(新中村化学工業社製(NKエステルAD−TMP)):ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート
(界面活性剤)
・KF−353(信越シリコーン社製):ポリエーテル変性シリコーンオイル
・BYK−377(ビックケミー社製):ポリエーテル変性ジメチルシロキサン混合物
・Solsperse20000(Lubrizol社製)
・F781−F(大日本インキ化学工業製(メガファックF781F))
(染料)
・染料C−1 (上述した一般式(A)で表されるテトラアザポルフィリン系色素の例示化合物CI−29を使用)
・染料C−2 VALIFAST BLUE2620(オリエント化学工業社製)
・染料C−3 (上述した一般式(A)で表されるテトラアザポルフィリン系色素の例示化合物CA−19を使用)
・染料C−4 (上述した一般式(A)で表されるテトラアザポルフィリン系色素の例示化合物CC−5を使用)
・染料M−1 (上述した一般式(I)で表されるジピロメテン系ホウ素錯体化合物の例示化合物III−4を使用)
・染料M−2 (上述した一般式(I)で表されるジピロメテン系ホウ素錯体化合物の例示化合物II−3を使用)
・染料M−3 (上述した一般式(I)で表されるジピロメテン系ホウ素錯体化合物の例示化合物IIIa−20を使用)
・染料M−4 (上述した一般式(I)で表されるジピロメテン系ホウ素錯体化合物の例示化合物IIIa−40を使用)
<顔料分散液の調製>
C.I.P.B.15:6(商品名:Rionol Blue ES、東洋インキ製造(株)製)に分散剤及び溶剤(1,3−ブタンジオールジアセテート)(以下1,3−BGDAと略す)を下記の表4に示す如く配合し、プレミキシングの後、モーターミルM−50(アイガー・ジャパン社製)で、直径0.65mmのジルコニアビーズを充填率80%で用い、周速9m/sで25時間分散し、B用顔料分散液(B1)を調製した。B用顔料分散液(B2)において、顔料及びその他の成分を表4に示す如く配合した以外はB用顔料分散液(B1)と同様にして、B用顔料分散液(B2)を調製した。尚、日機装社製ナノトラックUPA−EX150を用いて、この顔料分散液の数平均粒径を測定した。
なお、顔料分散液の作製に使用した着色剤は、以下の通りである。
・C.I.P.B.15:6(東洋インキ製造社製):Rionol Blue ES
・C.I.P.V.23(クラリアントジャパン社製):Hostaperm Violet RL−NF
<比較例用インク>
比較例として、上記の顔料分散液を用いて、下記の表5の分量で作製した顔料インクを調製した。なお、使用した材料は、以下の通りである。
・DPS100(日本化薬社製):KAYARAD DPS100
・TMPTA(日本化薬社製):KAYARAD TMPTA
・界面活性剤:界面活性剤1(化合物2に記載の構造物)
・V−40(和光純薬社製):アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)
<評価用カラーフィルタの作製方法>
上記で調製した各インクを用いて、上記で得られた基板上の隔壁で区分された領域内(凸部で囲まれた凹部)に、富士フイルムDimatix社製インクジェットプリンターDMP−2831を用い、吐出を行い、その後、100℃オーブン中で2分間加熱を行った。
次に、220℃のオーブン中で30分間静置することにより、単色のカラーフィルタを作製した。なお、得られた色画素の膜厚は2.0μmであった。
<インク保存安定性評価>
上記で調製された各インクを50℃の恒温室に保管し、30日後の粘度を測定し、インク調製直後の値との差(%)[(30日後の粘度−調製直後の粘度)/調製直後の粘度]により評価を行った。評価基準は以下の様に分類した。
◎:インク調製直後の粘度との差が10%未満
○:インク調製直後の粘度との差が10%以上20%未満
△:インク調製直後の粘度との差が20%以上30%未満
×:インク調製直後の粘度との差が30%以上
<連続吐出安定性評価>
上記で調製された各インクを用いて、連続吐出安定性の評価を行った。評価方法は、富士フイルムDimatix社製インクジェットプリンターDMP−2831、打滴量10plのヘッドカートリッジ、打滴周波数10kHzで行い、30分間連続吐出をした際の状態を観察した。評価基準は以下の様に分類した。
◎:問題なく連続吐出が可能
○:吐出中に、少々不吐出、吐出乱れなど観察されるが、吐出中に復帰し、概ね問題の無い状態
△:吐出中に不吐出、吐出乱れが生じ、吐出中に復帰しないが、メンテナンスによって正常な状態に復帰する状態
×:吐出中に不吐出、吐出乱れが生じ、正常に吐出ができず、メンテナンスによっても吐出が復帰しない状態
メンテナンスは、DMP−2831によるパージ(ヘッド内インクを加圧してノズルからインクを強制的に吐き出す)、ブロット(ヘッドノズル面をクリーニングパッドに僅かに接触させて、ノズル面のインクを吸い取る)を実施した。
<休止後吐出安定性評価>
上記で調製された各インクを用いて、休止後吐出安定性の評価を行った。評価方法は連続吐出安定性評価同様に、富士フイルム製インクジェットプリンターDMP−2831、打滴量10plのヘッドカートリッジを用い、打滴周波数10kHzで一度5分間の吐出を行い、24時間の休止後、再び同条件で吐出を開始した際の状態を観察した。評価基準は以下の様に分類した。
◎:打滴指示と同時に問題なく吐出が可能
○:打滴指示直後は少々不吐出、吐出乱れなど観察されるが、吐出中に復帰し、概ね問題の無い状態
△:不吐出、吐出乱れが生じ、吐出中に復帰しないが、メンテナンスによって正常な状態に復帰する状態
×:不吐出、吐出乱れが生じ、正常に吐出ができず、メンテナンスによっても吐出が正常なレベルまで復帰しない状態
メンテナンスは、DMP−2831によるパージ(ヘッド内インクを加圧してノズルからインクを強制的に吐き出す)、ブロット(ヘッドノズル面をクリーニングパッドに僅かに接触させて、ノズル面のインクを吸い取る)を実施した。
<耐熱性評価>
上記で作製した各カラーフィルタを、230℃に加熱したオーブン内に入れ、1時間放置した後、色相を測定した。色相の測定は、UV−560(日本分光社製)を用い、評価前後のΔEabが5未満を○とした。ΔEabが5以上15未満を△と、ΔEabが15以上を×とした。なお、ΔEabは、CIE1976(L*,a*,b*)空間表色系による以下の色差公式から求められる値である(日本色彩学会編 新編色彩科学ハンドブック(昭和60年)p.266)。
ΔEab={(ΔL)2+(Δa)2+(Δb)2}1/2
<耐薬品性評価>
上記で作製した各カラーフィルタを、評価を行う薬品(N−メチルピロリドン、2−プロパノール、5%硫酸水溶液、5%水酸化ナトリウム水溶液)中に20分間浸し、その前後の色相を測定した。色相の測定は、UV−560(日本分光社製)を用い、ΔEabが5未満を○とした。ΔEabが5以上15未満を△と、ΔEabが15以上を×とした。ΔEabの評価方法は、上記と同様である。
以下の表6〜7に、各インクジェット用インクおよびカラーフィルタの評価結果をまとめて示す。
なお、表7中、「B実施例1〜10」は、それぞれB実施例1〜10に記載のインクを使用して作製されたカラーフィルタの評価結果をさす。
以下の評価結果において、実用上の使用の観点から、×が含まれていないことが必要である。
表6〜表7に示すように、本発明に記載のインクジェット用インクは、保存性に優れるとともに、吐出安定性の点からも優れていた。より具体的には、インク中の固形分が21質量%以下のB実施例2、B実施例7において優れた吐出特性(連続吐出安定性、休止後吐出安定性)を示した。また、本発明に記載のインクジェット用インクを用いて製造されたカラーフィルタは、顔料インクを使用した場合と同等程度の優れた耐薬品性、耐熱性を有していた。特に、6官能アクリレートの使用量がおおいB実施例1などでは優れた耐熱性、耐薬品性を示した。
一方、顔料インクを使用した比較例においては、吐出安定性が悪く、実用性に欠いていた。