JP5546768B2 - 可視光応答型光触媒粉末とそれを用いた可視光応答型の光触媒材料、光触媒塗料、光触媒製品 - Google Patents

可視光応答型光触媒粉末とそれを用いた可視光応答型の光触媒材料、光触媒塗料、光触媒製品 Download PDF

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本発明は可視光応答型光触媒粉末とそれを用いた可視光応答型の光触媒材料、光触媒塗料、光触媒製品に関する。
防汚や消臭等の用途に用いられる光触媒材料としては酸化チタンが知られている。光触媒材料は屋外や屋内の建材、また照明装置、冷蔵庫、エアコン、トイレのような家電機器等、様々な分野で用いられている。しかし、酸化チタンは励起が紫外線領域で起きるため、紫外線の少ない屋内では十分な光触媒性能が得られない。そこで、可視光でも光触媒性能を示す可視光応答型光触媒の研究、開発が進められている。
紫外光応答型光触媒として使用されている酸化チタンについても、可視光応答型光触媒としての性能を向上させるために、窒素や硫黄をドープしたり、また金属等を担持させる方法が検討されている。これらの光触媒は、通常の屋内照明の照度(数lx〜3000lx程度)の光量ではその光触媒活性が光量に比例するため、光触媒の応用が期待されている実居住空間においては照明光源の近傍や直下以外では十分な性能が得られない。
光触媒作用は光を吸収して光子1個に対し一対の電子と正孔が励起され、励起された電子と正孔が表面にある水酸基や酸素を酸化還元により活性化し、活性化により発生した活性酸素種が有機ガス等を酸化分解する作用であると考えられている。そのため、光触媒は光量が少ない領域(低照度領域)では触媒作用も低下する。さらに、一般的には光触媒によるガス分解量は光の量(光子数)に比例する。照射される光の量が表面にある有機物に対して多い場合は飽和が起き、触媒作用量が光量に比例しなくなるが、既知の光触媒は光量が少ない領域(低照度領域)では触媒作用量が光量と線形の関係になる。
一般的に可視光応答型光触媒の性能評価の照度は6000lx以上である。このような高い照度の下で可視光に対して活性を示す酸化チタンも得られているが、照度の低下と共に光触媒活性は急激に低下してしまうため、実用環境では可視光応答型光触媒としての性能を十分に発揮させることはできない。室内の消臭やホルムアルデヒドのような有害ガスの除去には広い面積の触媒膜が有効であるが、面積の広い天井や壁、床は照度が低く、低照度で効果を持つ材料でなければ実用性は低い。
可視光応答型光触媒としては酸化タングステンが知られている。特許文献1には酸化タングステンを基材上にスパッタ成膜した光触媒材料が記載されており、主に三斜晶系の結晶構造を有する酸化タングステンが用いられている。スパッタ成膜は基材を高温に晒すため、基材の耐熱温度によっては適用できない場合がある。スパッタ成膜は工程管理等が複雑であり、基材の形状や大きさによってはコスト高になるだけでなく、建材等の広範囲への成膜は困難である。さらに、スパッタ成膜した酸化タングステンからなる可視光応答型光触媒層は親水性に優れるものの、アセトアルデヒド等の有害ガスの分解性能が十分ではないという問題を有している。可視光の照射下での親水性データも示されていないことから、可視光の下では十分な光触媒性能が得られていないと推定される。
酸化タングステン粉末を光触媒として用いることも検討されている。粉末であれば樹脂等のバインダと混合して基材に塗布することができるため、基材を高温に晒す必要がなく、また建材のように広い範囲にも塗膜を形成することができる。酸化タングステン粉末の製造方法としては、パラタングステン酸アンモニウム(APT)を空気中で加熱して三酸化タングステン粉末を得る方法が知られている(特許文献2参照)。APTを空気中で加熱する方法によって、粒径が0.01μm(BET比表面積=82m2/g)の三斜晶系の三酸化タングステン粉末が得られている。
APTを空気中で加熱して生成した三酸化タングステン(WO3)粉末は、光触媒性能を向上させるために微粒子とする必要がある。しかし、解砕処理を適用することである程度まで微細化できるものの、粒径を例えば100nm以下にすることは困難である。さらに、解砕処理を適用して微粉末化すると、三酸化タングステン(WO3)微粉末の結晶構造が解砕処理の応力で変化してしまう。解砕処理の応力で電子と正孔が再結合を起こす欠陥が生じるため、光触媒性能の低下を招くと考えられる。一方、特許文献2に記載された製造方法ではBET比表面積を安定させるために20時間以上の混錬が必要であり、三酸化タングステン粉末の製造効率が低いという問題がある。
微粉末を効率的に得る方法としては、例えば特許文献3に熱プラズマ処理が記載されている。熱プラズマ処理を適用することによって、粒径が1〜200nmの微粉末が得られている。熱プラズマ処理によれば微粉末を効率的に得ることができるものの、特許文献3に記載された方法を適用して作製した酸化タングステン微粉末をそのまま光触媒として用いても、必ずしも十分な光触媒特性を得ることはできない。これは熱プラズマ法では酸化タングステン微粉末の光学特性や結晶構造が最適ではない場合があるためと考えられる。
酸化タングステンには、WO3(三酸化タングステン)、WO2(二酸化タングステン)、WO、W23、W45、W411等の種類がある。これらのうち、三酸化タングステン(WO3)は光触媒性能に優れ、常温大気中で安定であるため、主に光触媒材料として用いられている。しかし、三酸化タングステン(WO3)は結晶構造が複雑で、少しの応力で変化しやすいことから、光触媒性能が安定しないという難点を有する。また、結晶構造が安定していても、表面積が小さいと十分な光触媒性能を得ることができない。
ところで、屋内は紫外線が少ない環境である。さらに、屋内の照度は高くても3000lx以下であり、机上や作業場所以外は数100lx以下である。例えば、屋内の照度はJIS−Z−9110(1979)の『照度基準』により、それぞれの場所や作業内容毎に基準が設けられている。これによると、商店や百貨店等の重点照明や工場等の極めて細かい作業を行う場所は、1500〜3000lxと若干高い照度となっている。
しかしながら、通常の事務所や工場の一般的な製造工程、住宅の細かい作業を行う場所の照度は1500lx以下であり、さらに住宅の居間の団らん時や食堂の食卓場所の照度は500〜150lxと低い。可視光応答型光触媒の応用が期待されている天井、壁、床、家具、家電製品等においては、それらが配置される場所の照度が50lx前後と著しく低い。従来の光触媒においては、そのような低い照度の可視光下で実用的な光触媒性能を示すものは得られていない。
特開2001−152130号公報 特開2002−293544号公報 特開2006−102737号公報
本発明の目的は、工場、商店、公共施設、住宅等の照度の低い環境下でも実用的な光触媒性能を示す可視光応答型光触媒粉末と、それを用いた可視光応答型の光触媒材料、光触媒塗料、光触媒製品を提供することにある。
本発明の態様に係る可視光応答型光触媒粉末は、酸化タングステン粉末または酸化タングステン複合材粉末を具備する可視光応答型光触媒粉末であって、前記酸化タングステン粉末または前記酸化タングステン複合材粉末を構成する酸化タングステンは、三酸化タングステンの単斜晶と三斜晶とが混在した結晶構造、あるいは前記単斜晶前記三斜晶三酸化タングステンの斜方晶とが混在した結晶構造を有し、前記可視光応答型光触媒粉末の有機ガス分解能力は、照度が200lx以上2500lx以下の範囲の可視光下で非線形な応答を示し、JIS−R−1701−1(2004)の窒素酸化物の除去性能(分解能力)評価に準じる流通式装置に0.2gの試料を入れた状態で、初期濃度10ppmのアセトアルデヒドガスを140mL/minで流して測定したガス濃度において、光照射前のガス濃度をA、光照射から15分以上経過し、かつ安定したときのガス濃度をBとし、前記ガス濃度Aと前記ガス濃度Bから[式:(A−B)/A×100]に基づいて算出した値をガス分解率(%)としたとき、白色蛍光灯を使用し、紫外線カットフィルタを用い、波長が380nm以上のみの光で照度が2500lxの可視光を照射した際の前記ガス分解率が20%以上、波長が380nm以上のみの光で照度が1000lxの可視光を照射した際の前記ガス分解率が15%以上、波長が380nm以上のみの光で照度が600lxの可視光を照射した際の前記ガス分解率が10%以上である、または、白色LEDランプを使用し、波長が410nm以上のみの光で照度が2500lxの可視光を照射した際の前記ガス分解率が20%以上、波長が410nm以上のみの光で照度が1000lxの可視光を照射した際の前記ガス分解率が15%以上、波長が410nm以上のみの光で照度が600lxの可視光を照射した際の前記ガス分解率が10%以上である、ことを特徴としている。
本発明の態様に係る可視光応答型光触媒材料は、本発明の態様に係る可視光応答型光触媒粉末を1質量%以上100質量%以下の範囲で含有することを特徴としている。本発明の態様に係る可視光応答型光触媒塗料は、本発明の態様に係る可視光応答型光触媒材料を0.1質量%以上90質量%以下の範囲で含有することを特徴としている。本発明の態様に係る可視光応答型光触媒製品は、本発明の態様に係る可視光応答型光触媒材料、または本発明の態様に係る可視光応答型光触媒塗料の塗布層を具備することを特徴としている。
本発明の態様に係る可視光応答型光触媒粉末は、有機ガス分解能力が照射光量に対して非線形な応答を示すことから、低照度の環境下でも実用的な光触媒性能を発揮する。従って、そのような可視光応答型光触媒粉末を適用することによって、照度が低い日常的な室内環境等において、可視光による実用的な光触媒性能を示す可視光応答型の光触媒材料、光触媒塗料、光触媒製品を提供することが可能となる。
本発明の実施例による可視光応答型光触媒粉末に可視光を照射したときの照射照度とガス分解率との関係を示す図である。
以下、本発明を実施するための形態について説明する。本発明の実施形態による可視光応答型光触媒粉末は、照度が200lx以上2500lx以下の範囲の可視光下において、有機ガス分解能力が照射光量に対して非線形な応答を示す。このような可視光応答型光触媒粉末は以下に示すガス分解試験において、第1に波長が380nm以上のみの光で照度が2500lxの可視光を照射したときに20%以上のガス分解率を示す。さらに、可視光応答型光触媒粉末は波長が380nm以上のみの光で照度が1000lxの可視光を照射したときのガス分解率が15%以上、波長が380nm以上のみの光で照度が600lxの可視光を照射したときのガス分解率が10%以上であることが好ましい。
この実施形態による可視光応答型光触媒粉末は、第2に波長が410nm以上のみの光で照度が2500lxの可視光を照射したときに20%以上のガス分解率を示す。可視光応答型光触媒粉末は波長が410nm以上のみの光で照度が1000lxの可視光を照射したときのガス分解率が15%以上、波長が410nm以上のみの光で照度が600lxの可視光を照射したときのガス分解率が10%以上であることが好ましい。
上述したガス分解率を求めるためのガス分解試験は、JIS−R−1701−1(2004)の窒素酸化物の除去性能(分解能力)評価に準じる流通式の装置を用いて実施する。流通式装置に0.2gの試料を入れた状態で、初期濃度10ppmのアセトアルデヒドガスを140mL/minで流してガス濃度を測定する。このようなガス濃度において、光照射前のガス濃度をA、光照射から15分以上経過し、かつ安定したときのガス濃度をBとする。そして、これらガス濃度Aとガス濃度Bから、[式:(A−B)/A×100]に基づいて算出した値をガス分解率(%)とする。
一般に可視光とは波長が380〜830nmの領域の光を示す。実使用環境と同様の可視光下でのより優れた性能を評価するため、この実施形態の第1の性能評価では波長が380nm以上のみの可視光を用いるものとする。具体的には、光源としてJIS−Z−9112に規定されている白色蛍光灯を使用し、波長が380nm未満の光をカットする紫外線カットフィルタを用いて、波長380nm以上のみの可視光を照射して評価を行うことが好ましい。白色蛍光灯としては、例えば東芝ライテック社製FL20SS・W/18もしくはそれと同等品が用いられる。紫外線カットフィルタとしては日東樹脂工業社製クラレックスN−169(商品名)もしくはそれと同等品が用いられる。
可視光応答型光触媒が主に使用される屋内において、励起光は照明ランプの光と窓からの自然光であるが、居住空間で低照度となる場所は照明用ランプによる光のみの場所であることが多い。最も一般的に使用されている屋内照明光源は白色蛍光灯である。この実施形態の可視光応答型光触媒粉末において、第1の性能評価は白色蛍光灯を使用して実施するものとする。これによって、最も実用性能に近い値を得ることができる。
白色LED(Light Emitting Diode)ランプは白色蛍光灯に変わる照明器具として期待されている。この実施形態の可視光応答型光触媒粉末は、白色LEDランプを用いた環境下においても良好な性能を示す。第2の性能評価においては、白色LEDランプによる照明下での性能を評価するため、波長が410nm以上のみの可視光が用いられる。具体的には、光源としてInGaN 系青色LEDと黄色発光蛍光体とを組合せた白色LEDランプを使用し、波長410nm以上のみの可視光を照射して評価を行うことが好ましい。白色LEDランプとしては、例えば日亜化学社製NSPW−510CS、もしくはそれと同等の発光スペクトルを有する白色LEDランプが用いられる。
白色LEDランプはLEDチップの光を利用して白色光を作り出す素子であり、白色光の作り方により3種類に大別できる。1つはInGaN 系青色LEDと黄色発光蛍光体とを組合せ、青色光を蛍光体に当てて黄色光を出力し、青色光と黄色光との混色で白色光を作り出すものであり、現在はこの種の白色LEDランプが主流とされている。他の1つは近紫外LEDチップから放出される光を複数の蛍光体に当て、これらからの光を混色して白色光とするものである。さらに他の1つはR(赤色)、G(青色)、B(青色)の各LEDチップを同時に光らせ、これらからの光を混色して白色光を得るものである。
この実施形態の可視光応答型光触媒粉末において、第2の性能評価で使用する白色LEDランプが発光する白色光は、JIS−Z−8110(1995)の参考付図1(系統色名の一般的な色度区分)で示される、黄みの白、緑みの白、青みの白、紫みの白、うすいピンク、および白を含むCIE色度範囲で示される白色であることが好ましい。
可視光応答型光触媒が主に使用される屋内において、励起光は照明ランプの光と窓からの自然光であるが、居住空間で低照度となる場所は照明用ランプによる光のみの場所であることが多く、照射される光の波長は可視光領域のみの光である場合が多い。第2の性能評価は照明用ランプとして白色LEDランプを使用した環境を想定し、波長410nm以上のみの可視光として、白色LEDランプからの光を使用して実施するものとする。白色LEDランプは白色蛍光灯に変わる次世代の照明器具として期待されている。白色LEDランプを用いて性能評価を行うことによって、そのような照明器具による環境下での実用性能(ガス分解性能)に近い値を得ることができる。
この実施形態の可視光応答型光触媒粉末において、第2の性能評価はInGaN 系青色LEDチップと黄色発光蛍光体とを組合せた白色LEDランプを使用して実施される。ただし、実使用時には近紫外LEDチップと複数の蛍光体とを組合せたLEDランプからの白色光、あるいはR(赤色)、G(青色)、B(青色)の各LEDチップからの光を混色させた白色光であっても、十分な光触媒性能が得られることは言うまでもない。
この実施形態の可視光応答型光触媒粉末は、380nm以上のみの光で照度が2500lxの可視光、または410nm以上のみの光で照度が2500lxの可視光の照射下でのガス分解率(20%以上)、さらには各波長による照度が1000lxの可視光の照射下でのガス分解率(15%以上)や、各波長による照度が照度600lxの可視光の照射下でのガス分解率(10%以上)に基づいて、照度が低い室内環境等においても、実用的なガス分解性能を発揮させることができる。
すなわち、照射光量に対して非線形な応答を示す有機ガス分解能力に基づいて、低照度下で実用的なガス分解性能を得ることが可能となる。例えば、住宅の居間の団らん時や洗面所等のような200lx程度の照度下で、5%以上のガス分解率を実現することができる。さらに、室内の壁、家具や家電製品等が置かれている場所のような50lx前後と著しく低い照度下においても、実用範囲内のガス分解率を得ることができる。
光触媒作用は光により励起された電子と正孔が表面にある水酸基や酸素を酸化還元により活性化し、その活性化により発生した活性酸素種が有機ガス等を酸化分解する作用である。そのため、一般的には光触媒によるガス分解量は光の量(光子数)に比例するとされ、照度が低下するとこれに比例してガス分解量も減少する。
一方、実施形態の可視光応答型光触媒粉末は、照度6000lxというような著しく高い照度の下で高い光触媒性能(ガス分解率=50%以上)を示すだけでなく、照度2500lxの可視光の照射下で20%以上のガス分解率を示す。従来の可視光応答型光触媒粉末とは性能が異なり、照度の低下に伴う光触媒活性の低下が抑制されている。このため、200lx程度の照度下、さらに50lx前後の著しく低い照度下においても、実用的なガス分解性能を得ることができる。従って、居間の団らん時、トイレ、洗面所等の低い照度の室内環境下、さらに室内の壁、天井、家具や家電製品等が置かれている場所等の著しく低い照度下においてもガス分解性能を得ることが可能となる。
上述したように、200lx以下、さらには50lx以下というような低い照度下で実用的なガス分解性能を得る上で、可視光応答型光触媒粉末は照度1000lxの可視光を照射したときのガス分解率が15%以上であること、さらに照度600lxの可視光の照射したときのガス分解率が10%以上であることが好ましい。このような照度下でのガス分解率を実現することで、照度の低下に伴う光触媒活性の低下がさらに抑制されるため、低い照度下での実用的なガス分解性能をより再現性よく得ることが可能となる。
可視光応答型光触媒粉末に照度2500lxの可視光を照射したときに20%以上のガス分解率を示すということは、照度6000lxというような著しく高い照度の環境下だけでなく、白色蛍光灯や白色LEDランプ等の照明の真下のような若干高い照度の環境下において、優れたガス分解性能が得られることを意味する。照度1000lxの可視光を照射したときのガス分解率が15%以上、さらに照度600lxの可視光の照射したときのガス分解率が10%以上であるということは、事務所や細かい作業を行う環境下、さらに読書時の環境等においても、良好なガス分解性能が得られることを意味する。第1の実施形態の可視光応答型光触媒粉末によれば、各種の可視光による様々な照度下でガス分解性能を発揮させることが可能となる。
可視光応答型光触媒粉末に照度2500lxの可視光を照射したときのガス分解率は45%以上であることが好ましい。照度1000lxの可視光を照射したときのガス分解率は35%以上、照度600lxの可視光を照射したときのガス分解率は25%以上であることがより好ましい。このような条件を満足する可視光応答型光触媒粉末によれば、例えば200lx程度の照度下で10%以上のガス分解率を実現することができる。さらに、室内の壁、家具や家電製品等が置かれている場所のような50lx前後と著しく低い照度下においても、5%以上のガス分解率を実現することができる。
上述したようなガス分解率を有する可視光応答型光触媒粉末は、例えば酸化タングステン粉末で構成される。可視光応答型光触媒粉末は酸化タングステンの単独粉末に限らず、酸化タングステン複合材粉末で構成することも可能である。酸化タングステン複合材粉末とは、主成分としての酸化タングステンに、例えばTi、Fe、Cu、Zr、Ag、Pt、Pd、Mn、AlおよびCeから選ばれる少なくとも1種の金属元素を50質量%以下の範囲で含有させたものである。金属元素の含有量が50質量%を超えると、酸化タングステンが有する顕著な効果を十分に発揮させることができないおそれがある。金属元素の含有量は10質量%以下であることがさらに好ましい。
可視光応答型光触媒粉末を構成する酸化タングステン複合材粉末において、金属元素は各種の形態で存在させることができる。酸化タングステン複合材粉末は、金属元素の単体、金属元素を含む化合物、酸化タングステンとの複合化合物等の形態として、金属元素を含有することができる。酸化タングステン複合材粉末に含有される金属元素はそれ自体が他の元素と化合物を形成していてもよい。金属元素の典型的な形態としては酸化物が挙げられる。金属元素は単体、化合物、複合化合物等の形態で酸化タングステン粉末と混合される。金属元素は酸化タングステンに担持されていてもよい。
酸化タングステン複合材粉末の具体例としては、酸化銅粉末を1質量%以上5質量%以下の範囲で含有する粉末が挙げられる。酸化銅粉末以外の金属酸化物粉末(酸化チタン粉末、酸化鉄粉末等)についても、酸化タングステン複合材粉末中に1質量%以上5質量%以下の範囲で含有させることが好ましい。酸化タングステン複合材は酸化物以外のタングステン化合物、例えば炭化タングステンを含有していてもよい。炭化タングステンはその粉末として1質量%以上5質量%以下の範囲で酸化タングステン粉末と混合される。
酸化タングステンと金属元素(具体的にはTi、Fe、Cu、Zr、Ag、Pt、Pd、Mn、AlおよびCeから選ばれる少なくとも1種の元素の単体、化合物、複合化合物)との複合方法は特に限定されるものではなく、粉末同士を混合する混合法、含浸法、担持法等の種々の複合法を適用することが可能である。代表的な複合法を以下に記載する。酸化タングステンに銅を複合させる方法としては、酸化タングステン粉末と酸化銅粉末、硝酸銅粉末、硫酸銅粉末等とを混合する方法が挙げられる。また、硝酸銅や硫酸銅の水溶液やエタノール溶液に酸化タングステン粉末を加えて混合した後、70〜80℃の温度で乾燥させてから500〜550℃の温度で焼成する方法も有効である。
酸化タングステンに銅を複合させる方法には、例えば塩化銅水溶液や硫酸銅水溶液に酸化タングステン粉末を分散させ、この分散液を乾燥させる方法(含浸法)を適用することも可能である。含浸法は銅の複合方法に限らず、塩化鉄水溶液を用いた鉄の複合方法、塩化銀水溶液を用いた鉄の複合方法、塩化白金酸水溶液を用いた白金の複合方法、塩化パラジウム水溶液を用いたパラジウムの複合方法等にも応用することができる。さらに、酸化チタンゾルやアルミナゾル等の酸化物ゾルを用いて、酸化タングステンと金属元素(酸化物)とを複合させてもよい。これら以外にも各種の複合方法の適用が可能である。
可視光応答型光触媒粉末を構成する酸化タングステン粉末または酸化タングステン複合材粉末(以下ではこれらの粉末の総称として酸化タングステン系粉末と記す)は、その粒径(比表面積)、結晶構造、結晶性、粉末色等を制御することによって、上述したような特性を得ることができる。酸化タングステン系粉末は4.1〜820m2/gの範囲のBET比表面積を有することが好ましい。酸化タングステン系粉末は1〜200nmの範囲の平均粒径を有することが好ましい。平均粒径はSEMやTEM等の写真の画像解析から、n=50個以上の粒子の平均粒径(D50)に基づいて求めるものとする。平均粒径(D50)は比表面積から換算した平均粒径と一致していてもよい。
光触媒粉末の性能は、比表面積が大きく、粒径が小さい方が高くなる。従って、酸化タングステン系粉末のBET比表面積が4.1m2/g未満の場合や平均粒径が200nmを超える場合には、十分な光触媒性能を得ることはできない。一方、酸化タングステン系粉末のBET比表面積が820m2/gを超える場合や平均粒径が1nm未満の場合には粒子が小さくなりすぎて、粉末としての取扱い性が劣ることから実用性が低下する。酸化タングステン系粉末は8.2〜410m2/gの範囲のBET比表面積を有することがより好ましく、また2〜100nmの範囲の平均粒径を有することがより好ましい。
酸化タングステン系粉末のBET比表面積は11〜300m2/gの範囲であることが好ましく、さらに好ましくは16〜150m2/gの範囲である。平均粒径は2.7〜75nmの範囲であることが好ましく、さらに好ましくは5.5〜51nmの範囲である。酸化タングステン系粉末を可視光応答型光触媒塗料等に適用する場合、粒径が小さすぎると粒子の分散性が低下して塗料化が難しくなる。このような点を改善するためには、平均粒径が5.5nm以上の酸化タングステン系粉末を用いることが好ましい。
酸化タングステン粉末や酸化タングステン複合材粉末を構成する酸化タングステンは、三酸化タングステンの単斜晶および三斜晶から選ばれる少なくとも1種の結晶構造、あるいは前記単斜晶および三斜晶から選ばれる少なくとも1種に斜方晶が混入した結晶構造を有することが好ましい。このような結晶構造を有する酸化タングステンを用いた酸化タングステン粉末や酸化タングステン複合材粉末は、優れた光触媒性能を安定して発揮させることができる。三酸化タングステンの各結晶相の存在比率を同定することは困難であるものの、X線回折法で測定した際に下記の(1)〜(4)の条件を満足する場合に、上記した結晶構造を有するものと推定することができる。
(1)X線回折チャートにおいて、2θが22.5〜25°の範囲に第1ピーク(全ピークのうち強度が最大の回折ピーク)、第2ピーク(強度が2番目に大きい回折ピーク)、および第3ピーク(強度が3番目に大きい回折ピーク)を有する。
(2)X線回折チャートにおいて、2θが22.8〜23.4°の範囲に存在するピークをA、2θが23.4〜23.8°の範囲に存在するピークをB、2θが24.0〜24.25°の範囲に存在するピークをC、2θが24.25〜24.5°の範囲に存在するピークをDとしたとき、ピークDに対するピークAの強度比(A/D)およびピークDに対するピークBの強度比(B/D)がそれぞれ0.5〜2.0の範囲であり、かつピークDに対するピークCの強度比(C/D)が0.04〜2.5の範囲である。
(3)X線回折チャートにおいて、33.85〜34.05°の範囲に存在するピークをE、2θが34.05〜34.25°の範囲に存在するピークをFとしたとき、ピークFに対するピークEの強度比(E/F)が0.1〜2.0の範囲である。
(4)X線回折チャートにおいて、49.1〜49.7°の範囲に存在するピークをG、2θが49.7〜50.3°の範囲に存在するピークをHとしたとき、ピークHに対するピークGの強度比(G/H)が0.04〜2.0の範囲である。
X線回折の測定および解析について説明する。X線回折測定はCuターゲット、Niフィルタを使用して行い、解析が処理条件の違いの影響を受けないように、平滑化処理とバックグラウンド除去のみを行い、Kα2除去を行わずにピーク強度の測定を行うものとする。ここで、X線回折チャートのそれぞれの2θ範囲内でのピーク強度の読み取り方は、山が明確な場合にはその範囲内での山の高い位置をピークとし、その高さを読み取るものとする。山が明確でないが肩がある場合には、肩の部分をその範囲内のピークとし、肩の部分の高さを読み取るものとする。山や肩がない勾配の場合には、その範囲の中間での高さを読み取って、その範囲内のピーク強度と見なすものとする。
さらに、酸化タングステン系粉末の色をL*a*b*表色系(エルスター・エースター・ビースター表色系)で表したとき、酸化タングステン系粉末はa*が−5以下、b*が5以上、L*が70以上の色を有することが好ましい。L*a*b*表色系は物体色を表すのに用いられる方法であり、1976年に国際照明委員会(CIE)で規格化され、日本ではJIS Z−8729に規定がある。L*は明度を表し、a*とb*とで色相と彩度を表すものである。L*が大きいほど明るいことを示す。a*とb*は色の方向を示しており、a*は赤方向、−a*は緑方向を示し、b*は黄方向、−b*は青方向を示す。また、彩度(c*)=((a*)2+(b*)21/2で示される。
酸化タングステン系粉末はa*が−5以下、b*が5以上、L*が70以上の色を有することが好ましく、さらにa*が−25〜−8の範囲、b*が10〜45の範囲、L*が85以上の色を有することがより好ましい。このようなL*a*b*表色系の数値は酸化タングステン系粉末が黄色から緑色付近の色相を有し、かつ彩度や明度が高いことを示している。このような光学特性を酸化タングステン系粉末が持つ場合に、可視光励起による光触媒性能を向上させることができる。酸化タングステン粉末の色調は酸素欠損等による組成変動や光の照射等に基づいて変化するものと考えられ、上記した色相、彩度、明度を有する場合に良好な光触媒性能が得られる。青色付近の色相を有する場合には酸素欠損等が多いと考えられ、そのような色相では光触媒性能の低下が認められる。
上述したような粒径(比表面積)、結晶構造、粉末色等を有し、さらには結晶性を高めた酸化タングステン系粉末を用いることによって、照度2500lxの可視光を照射したときのガス分解率が20%以上、さらに照度1000lxの可視光を照射したときのガス分解率が15%以上、照度600lxの可視光を照射したときのガス分解率が10%以上の可視光応答型光触媒粉末を得ることができる。ここで、可視光応答型光触媒粉末の性能は比表面積や粒径のみで高めることができるものではない。
酸化チタンの場合、窒素や硫黄をドープして可視光の吸収性能を高めることによって、可視光応答性を向上させることができる。さらに、熱処理温度を制御して結晶性を向上させたり、あるいは金属を担持させることによって、電子や正孔の再結合を防いで光触媒活性を高めることが可能となる。しかし、現状では著しく高い照度の下では、高い性能を発揮する酸化チタンもあるが、照度の低下に伴って性能が低下し、日常的な150〜500lx程度の低い照度では実用的なガス分解性能を示すものは存在していない。
これに対して、可視光の吸収性能を有する酸化タングステン系粉末を可視光応答型光触媒粉末に適用すると共に、酸化タングステン系粉末のBET比表面積や平均粒径(D50)、結晶構造、粉末色等を上述したように制御し、さらに酸化タングステン系粉末の結晶性を高めることによって、2500lxの照度下で20%以上というガス分解率を実現することが可能となる。これは光触媒粉末の比表面積を大きくすることでガス吸着量が増加し、これにより活性サイトを増加させることができ、さらに結晶性の向上により再結合の確率が低下するという効果を併せ持つためである。
酸化タングステンのバンドギャップは2.5〜2.8eVであり、酸化チタンより小さいために可視光を吸収する。従って、優れた可視光応答性が実現できる。さらに、酸化タングステンの代表的な結晶構造はReO3構造であることから、表面最外層に酸素を持つ反応活性が高い結晶面が露出しやすい。このため、水を吸着することにより高い親水性を発揮する。あるいは、吸着した水を酸化することでOHラジカルを生成し、それにより分子や化合物を酸化することができるため、酸化チタンのアナターゼやルチル結晶より優れた光触媒性能を発揮させることが可能となる。加えて、この実施形態の酸化タングステン粉末はpH1〜7の水溶液中でのゼータ電位がマイナスであるために分散性に優れ、これにより基材等に薄くむらなく塗布することができる。
光触媒性能としては、例えばアセトアルデヒドやホルムアルデヒド等の有機ガスを分解する性能、親水性や抗菌・除菌性能等が挙げられる。この実施形態の可視光応答型光触媒粉末は430〜500nmの光を照射したときの光触媒性能に優れている。波長430〜500nmの光を発する励起源としては、太陽光、蛍光灯、青色発光ダイオード、青色レーザ等が挙げられる。特に、青色発光ダイオードや青色レーザは波長430〜500nmの光のみを放出することができるために好ましい。
可視光応答型光触媒粉末を構成する酸化タングステン系粉末は、微量の不純物として金属元素を含有していてもよい。不純物元素としての金属元素の含有量は2質量%以下であることが好ましい。不純物金属元素としては、タングステン鉱石中に一般的に含まれる元素や原料として使用するタングステン化合物等を製造する際に混入する汚染元素等があり、例えばFe、Mo、Mn、Cu、Ti、Al、Ca、Ni、Cr、Mg等が挙げられる。これらの元素を複合材の構成元素として用いる場合には、この限りではない。
本発明の実施形態による可視光応答型光触媒粉末を構成する酸化タングステン粉末は、例えば以下のようにして作製される。酸化タングステン粉末は昇華工程を適用して作製される。また、昇華工程に熱処理工程を組合せることも有効である。昇華工程もしくは昇華工程と熱処理工程との組合せを適用して作製した三酸化タングステン粉末によれば、上述した結晶構造やBET比表面積を安定して実現することができる。さらに、SEMやTEMで粉末を評価した際に、一次粒子の平均粒径がBET比表面積から換算した値に近似し、粒径ばらつきが小さい粉末を安定して提供することができる。
まず、昇華工程について述べる。昇華工程は、金属タングステン粉末、タングステン化合物粉末、またはタングステン化合物溶液を、酸素雰囲気中で昇華させることによって、三酸化タングステン粉末を得る工程である。昇華とは固相から気相、あるいは気相から固相への状態変化が、液相を経ずに起こる現象である。原料としての金属タングステン粉末、タングステン化合物粉末、またはタングステン化合物溶液を、昇華させながら酸化させることによって、微粉末状態の酸化タングステン粉末を得ることができる。
昇華工程の原料(タングステン原料)には、金属タングステン粉末、タングステン化合物粉末、またはタングステン化合物溶液のいずれを使用してもよい。原料として使用するタングステン化合物としては、例えば三酸化タングステン(WO3)、二酸化タングステン(WO2)、低級酸化物等の酸化タングステン、炭化タングステン、タングステン酸アンモニウム、タングステン酸カルシウム、タングステン酸等が挙げられる。
上述したようなタングステン原料の昇華工程を酸素雰囲気中で行うことで、金属タングステン粉末やタングステン化合物粉末を瞬時に固相から気相とし、さらに気相となった金属タングステン蒸気を酸化することによって酸化タングステン粉末が得られる。溶液を使用した場合でも、タングステン酸化物あるいは化合物を経て気相となる。このように、気相での酸化反応を利用することによって、酸化タングステン微粉末を得ることができる。さらに、酸化タングステン微粉末の結晶構造を制御することができる。
昇華工程の原料としては、酸素雰囲気中で昇華して得られる酸化タングステン粉末に不純物が含まれにくいことから、金属タングステン粉末、酸化タングステン粉末、炭化タングステン粉末、およびタングステン酸アンモニウム粉末から選ばれる少なくとも1種を使用することが好ましい。金属タングステン粉末や酸化タングステン粉末は、昇華工程で形成される副生成物(酸化タングステン以外の物質)として有害なものが含まれないことから、特に昇華工程の原料として好ましい。
原料に用いるタングステン化合物としては、その構成元素としてタングステン(W)と酸素(O)を含む化合物が好ましい。構成成分としてWおよびOを含んでいると、昇華工程で後述する誘導結合型プラズマ処理等を適用した際に瞬時に昇華されやすくなる。このようなタングステン化合物としては、WO3、W2058、W1849、WO2等が挙げられる。また、タングステン酸、パラタングステン酸アンモニウム、メタタングステン酸アンモニウムの溶液あるいは塩等も有効である。
タングステン原料としての金属タングステン粉末やタングステン化合物粉末は0.1〜100μmの範囲の平均粒径を有することが好ましい。タングステン原料の平均粒径は0.3μm〜10μmの範囲がより好ましく、さらに好ましくは0.3μm〜3μmの範囲、望ましくは0.3μm〜1.5μmの範囲である。上記範囲内の平均粒径を有する金属タングステン粉末やタングステン化合物粉末を用いると、昇華が生じやすい。
タングステン原料の平均粒径が0.1μm未満の場合には原料粉が微細すぎるため、原料粉の事前調整が必要になったり、取扱い性が低下することに加えて、高価になるために工業的に好ましくない。タングステン原料の平均粒径が100μmを超えると均一な昇華反応が起きにくくなる。平均粒径が大きくても大きなエネルギー量で処理すれば均一な昇華反応を生じさせることができるが、工業的には好ましくない。
昇華工程でタングステン原料を酸素雰囲気中で昇華させる方法としては、誘導結合型プラズマ処理、アーク放電処理、レーザ処理、電子線処理、およびガスバーナー処理から選ばれる少なくとも1種の処理が挙げられる。これらのうち、レーザ処理や電子線処理ではレーザまたは電子線を照射して昇華工程を行う。レーザや電子線は照射スポット径が小さいため、一度に大量の原料を処理するためには時間がかかるものの、原料粉の粒径や供給量の安定性を厳しく制御する必要がないという長所がある。
誘導結合型プラズマ処理やアーク放電処理は、プラズマやアーク放電の発生領域の調整が必要であるものの、一度に大量の原料粉を酸素雰囲気中で酸化反応させることができる。また、一度に処理できる原料の量を制御することができる。ガスバーナー処理は動力費が比較的安いものの、原料粉や原料溶液を多量に処理することが難しい。このため、ガスバーナー処理は生産性の点で劣るものである。なお、ガスバーナー処理は昇華させるのに十分なエネルギーを有するものであればよく、特に限定されるものではない。プロパンガスバーナーやアセチレンガスバーナー等が用いられる。
昇華工程に誘導結合型プラズマ処理を適用する場合、通常アルゴンガスや酸素ガスを用いてプラズマを発生させ、このプラズマ中に金属タングステン粉末やタングステン化合物粉末を供給する方法が用いられる。プラズマ中にタングステン原料を供給する方法としては、例えば金属タングステン粉末やタングステン化合物粉末をキャリアガスと共に吹き込む方法、金属タングステン粉末やタングステン化合物粉末を所定の液状分散媒中に分散させた分散液を吹き込む方法等が挙げられる。
金属タングステン粉末やタングステン化合物粉末をプラズマ中に吹き込む場合に用いられるキャリアガスとしては、例えば空気、酸素、酸素を含有した不活性ガス等が挙げられる。これらのうち、空気は低コストであるために好ましく用いられる。キャリアガスの他に酸素を含む反応ガスを流入する場合や、タングステン化合物粉末が三酸化タングステンの場合等、反応場中に酸素が十分に含まれているときには、キャリアガスとしてアルゴンやヘリウム等の不活性ガスを用いてもよい。反応ガスには酸素や酸素を含む不活性ガス等を用いることが好ましい。酸素を含む不活性ガスを用いる場合、酸化反応に必要な酸素量を十分に供給することが可能なように、酸素量を設定することが好ましい。
金属タングステン粉末やタングステン化合物粉末をキャリアガスと共に吹き込む方法を適用すると共に、ガス流量や反応容器内の圧力等を調整することによって、三酸化タングステン粉末の結晶構造を制御しやすい。具体的には、単斜晶および三斜晶から選ばれる少なくとも1種(単斜晶、三斜晶、または単斜晶と三斜晶との混晶)、あるいはそれに斜方晶を混在させた結晶構造を有する三酸化タングステン粉末が得られやすい。三酸化タングステン粉末の結晶構造は、単斜晶と三斜晶との混晶、あるいは単斜晶と三斜晶と斜方晶の混晶であることがより好ましい。
金属タングステン粉末やタングステン化合物粉末の分散液の作製に用いられる分散媒としては、分子中に酸素原子を有する液状分散媒が挙げられる。分散液を用いると原料粉の取扱いが容易になる。分子中に酸素原子を有する液状分散媒としては、例えば水およびアルコールから選ばれる少なくとも1種を20容量%以上含むものが用いられる。液状分散媒として用いるアルコールとしては、例えばメタノール、エタノール、1−プロパノールおよび2−プロパノールから選ばれる少なくとも1種が好ましい。水やアルコールはプラズマの熱で容易に揮発しやすいため、原料粉の昇華反応や酸化反応を妨害することはなく、分子中に酸素を含有していることから酸化反応を促進しやすい。
金属タングステン粉末やタングステン化合物粉末を分散媒に分散させて分散液を作製する場合、金属タングステン粉末やタングステン化合物粉末は分散液中に10〜95質量%の範囲で含ませることが好ましく、さらに好ましくは40〜80質量%の範囲である。このような範囲で分散液中の分散させることで、金属タングステン粉末やタングステン化合物粉末を分散液中に均一に分散させることができる。均一に分散していると原料粉の昇華反応が均一に生じやすい。分散液中の含有量が10質量%未満では原料粉の量が少なすぎて効率よく製造ができない。95質量%を超えると分散液が少なく、原料粉の粘性が増大することで、容器にこびりつき易くなるために取扱い性が低下する。
金属タングステン粉末やタングステン化合物粉末を分散液にしてプラズマ中に吹き込む方法を適用することによって、三酸化タングステン粉末の結晶構造を制御しやすい。具体的には、単斜晶および三斜晶から選ばれる少なくとも1種、またはそれに斜方晶を混在させた結晶構造を有する三酸化タングステン粉末が得られやすい。さらに、タングステン化合物溶液を原料として用いることによっても、昇華反応を均一に行うことができ、さらに三酸化タングステン粉末の結晶構造の制御性が向上する。上記したような分散液を用いる方法は、アーク放電処理にも適用することが可能である。
レーザや電子線を照射して昇華工程を実施する場合は、金属タングステンやタングステン化合物をペレット状にしたものを原料として使用することが好ましい。レーザや電子線は照射スポット径が小さいため、金属タングステン粉末、タングステン化合物粉末を用いると供給が困難になるが、ペレット状にした金属タングステンやタングステン化合物を用いることで効率よく昇華させることができる。レーザは金属タングステンやタングステン化合物を昇華させるのに十分なエネルギーを有するものであればよく、特に限定されるものではないが、CO2レーザが高エネルギーであるために好ましい。
レーザや電子線をペレットに照射する際に、レーザ光や電子線の照射源またはペレットの少なくとも一方を移動させると、ある程度の大きさを有するペレットの全面を有効に昇華することができる。これによって、単斜晶および三斜晶から選ばれる少なくとも1種に斜方晶を混在させた結晶構造を有する三酸化タングステン粉末が得られやくなる。上記したようなペレットは誘導結合型プラズマ処理やアーク放電処理にも適用可能である。
実施形態の可視光応答型光触媒粉末を構成する酸化タングステン粉末は、上述したような昇華工程のみによっても得ることができるが、昇華工程で作製した酸化タングステン粉末に熱処理工程を実施することも有効である。熱処理工程は、昇華工程で得られた三酸化タングステン粉末を、酸化雰囲気中にて所定の温度と時間で熱処理するものである。昇華工程の条件制御等で三酸化タングステン微粉末を十分に形成することができない場合でも、熱処理を施すことで酸化タングステン粉末中の三酸化タングステン微粉末の割合を99%以上、実質的には100%にすることができる。さらに、熱処理工程で三酸化タングステン微粉末の結晶構造を所定の構造に調整することができる。
熱処理工程で用いられる酸化雰囲気としては、例えば空気や酸素含有ガスが挙げられる。酸素含有ガスとは酸素を含有した不活性ガスを意味する。熱処理温度は200〜1000℃の範囲とすることが好ましく、さらに好ましくは400〜700℃である。熱処理時間は10分〜5時間とすることが好ましく、さらに好ましくは30分〜2時間である。熱処理工程の温度および時間を上記範囲内にすることによって、三酸化タングステン以外の酸化タングステンから三酸化タングステンを形成しやすい。また、欠陥が少ない結晶性の良い粉末を得るためには、熱処理時の昇温や降温を緩やかに実施することが好ましい。熱処理時の急激な加熱や急冷は結晶性の低下を招くことになる。
熱処理温度が200℃未満の場合には、昇華工程で三酸化タングステンにならなかった粉末を三酸化タングステンにするための酸化効果を十分に得ることができないおそれがある。熱処理温度が1000℃を超えると酸化タングステン微粒子が急激に粒成長するため、得られる酸化タングステン微粉末の比表面積が低下しやすい。さらに、上記したような温度と時間で熱処理工程を行うことによって、三酸化タングステン微粉末の結晶構造や結晶性を調整することが可能となる。
酸化タングステン粉末は光触媒性能や製品特性、例えばガス分解性能あるいは抗菌性の向上のために、遷移金属元素を含んでいてもよい。遷移金属元素の含有量は50質量%以下とすることが好ましい。遷移金属元素の含有量が50質量%を超えると、可視光応答型光触媒粉末としての特性が低下するおそれがある。遷移金属元素の含有量は10質量%以下とすることがより好ましく、さらに好ましくは2質量%以下である。遷移金属元素とは原子番号21〜29、39〜47、57〜79、89〜109の元素であり、これらのうちでもTi、Fe、Cu、Zr、AgおよびPtから選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましい。遷移金属元素の含有形態は金属、酸化物、複合酸化物、化合物等であり、混合あるいは担持させてもよい。また、タングステンと化合物を形成していてもよい。
本発明の実施形態による可視光応答型光触媒粉末は、そのままで可視光応答型光触媒として用いてもよいし、あるいは可視光応答型光触媒粉末を他の材料と混合、担持、含浸させる等して得られる粉末(もしくは粉末以外の形態の物質)を可視光応答型光触媒として用いることも可能である。この実施形態の可視光応答型光触媒材料は、可視光応答型光触媒粉末を1〜100質量%の範囲で含有する。可視光応答型光触媒粉末の含有量は所望の特性に応じて適宜に選択されるが、1質量%未満では光触媒性能を十分に得ることができない。可視光応答型光触媒粉末は、例えばSiO2、ZrO2、Al23、TiO2等の粒子と混合したり、あるいはそれらの粒子に担持させてもよい。また、ゼオライト等に酸化タングステンや酸化タングステン複合材を含浸させてもよい。
本発明の実施形態による可視光応答型光触媒粉末は溶媒や添加物等と混合することによって、可視光応答型光触媒塗料として用いられる。可視光応答型光触媒塗料の主成分は可視光応答型光触媒粉末に代えて、上記した可視光応答型光触媒材料を使用してもよい。可視光応答型光触媒塗料中における光触媒粉末や光触媒材料の含有量は0.1〜90質量%の範囲とする。光触媒粉末や光触媒材料の含有量が0.1質量%未満であると光触媒性能を十分に得ることができず、90質量%を超えると塗料としての特性が低下する。
可視光応答型光触媒塗料に配合する溶媒や添加物としては、水、アルコール、分散剤、バインダ等が挙げられる。バインダは無機バインダ、有機バインダ、有機無機複合バインダのいずれであってもよい。無機バインダとしては、例えばコロイダルシリカ、アルミナゾル、ジルコニアゾル等が挙げられる。有機無機複合バインダとはSi等の金属元素を構成成分として含んだ有機物を示すものである。有機バインダもしくは有機無機複合バインダの有機成分としては、シリコーン樹脂等が用いられる。
本発明の実施形態による可視光応答型光触媒製品は、上述した可視光応答型の光触媒粉末や光触媒材料を具備する、もしくは光触媒塗料の塗布層を具備するものである。光触媒製品は、例えば基材に光触媒粉末や光触媒材料を付着もしくは含浸させた製品、基材に光触媒塗料を塗布した製品等である。光触媒粉末を含浸させたゼオライト、活性炭、多孔質セラミックス等を内臓した製品も含まれる。
可視光応答型光触媒製品の具体例としては、エアコン、空気清浄機、扇風機、冷蔵庫、電子レンジ、食器洗浄乾燥機、炊飯器、ポット、IHヒータ、洗濯機、掃除機、照明器具(ランプ、器具本体、シェード等)、衛生用品、便器、洗面台、鏡、浴室(壁、天井、床等)、建材(室内壁、天井材、床、外壁)、インテリア用品(カーテン、絨毯、テーブル、椅子、ソファー、棚、ベッド、寝具等)、ガラス、サッシ、手すり、ドア、ノブ、衣服、家電製品等に使用されるフィルタ等が挙げられる。また、可視光応答型光触媒製品の基材としては、ガラス、プラスチック、アクリル等の樹脂、紙、繊維、金属、木材等が挙げられる。特に、ガラスに光触媒塗料を塗布した場合、透明性の高いガラスが得られる。
本発明の実施形態による可視光応答型光触媒製品は、居住空間や自動車の室内空間で使用される部品に適用することができる。高感度な光触媒であるため、室内でも光が当たりにくい場所、あるいは低照度の場所においても、光触媒性能を発揮することができる。また、自動車は紫外線をほとんど通さないガラスが使用されているため、可視光応答型光触媒製品を使用することによって、紫外線がほとんどない空間の有機ガスの分解や親水性、防汚等に効果を発揮する。自動車の室内空間のインテリアとして使用される発光ダイオードや豆電球等のように、照度が低い光源を使用した場合においても、光触媒性能を発揮させることができる。このため、これまで光源の問題等で使用が懸念されていた場所や用途においても、可視光応答型光触媒製品を使用することができ、その応用範囲が広がる。
次に、本発明の具体的な実施例およびその評価結果について述べる。なお、以下の実施例では昇華工程に誘導結合型プラズマ処理を適用しているが、本発明はこれに限定されるものではない。
(実施例1)
まず、原料粉末として平均粒径が0.5μmの三酸化タングステン粉末を用意した。この原料粉末をキャリアガス(Ar)と共にRFプラズマに噴霧し、さらに反応ガスとして酸素を80L/minの流量で流した。このようにして、原料粉末を昇華させながら酸化反応させる昇華工程を経て、酸化タングステン粉末を作製した。酸化タングステン粉末の製造条件を表1に示す。
得られた酸化タングステン粉末のBET比表面積と平均粒径(TEM写真の画像解析による)を測定した。BET比表面積の測定は、マウンテック社製比表面積測定装置Macsorb1201を用いて行った。前処理は窒素中にて200℃×20分の条件で実施した。TEM観察は日立社製H−7100FAを使用し、拡大写真を画像解析にかけて粒子50個以上を抽出し、体積基準の積算径を求めてD50を算出した。BET比表面積と平均粒径の測定結果を表2に示す。
また、酸化タングステン粉末のX線回折を実施した。X線回折はリガク社製X線回折装置RINT−2000を用いて、Cuターゲット、Niフィルタ、グラファイト(002)モノクロメータを使用して行った。測定条件は、管球電圧:40kV、管球電流:40mA、発散スリット:1/2°、散乱スリット:自動、受光スリット:0.15mm、2θ測定範囲:20〜70°、走査速度:0.5°/min、サンプリング幅:0.004°である。ピーク強度の測定にあたり、Kα2除去は行わず、平滑化とバックグラウンド除去の処理のみを行った。平滑化はSavizky−Golay(最小二乗法)を用い、フィルタポイント11とした。バックグラウンド除去は、測定範囲内で直線フィット、閾値σ3.0として行った。X線回折結果に基づく酸化タングステン粉末の結晶構造の同定結果を表2に示す。
さらに、酸化タングステン粉末の色をL*a*b*表色系に基づいて測定した。L*a*b*表色系に基づく色測定は、コニカミノルタ社製分光測色計CM−2500dを用いて行った。L*a*b*の測定結果を表2に示す。
次に、得られた酸化タングステン粉末の特性として、アセトアルデヒドの分解率を測定した。アセトアルデヒドガスの分解率は、JIS−R−1701−1(2004)の窒素酸化物の除去性能(分解能力)評価と同様の流通式の装置を用いて、以下に示す条件で行った。照度6000lx、2500lx、1000lx、600lxの可視光を照射したときのガス分解率を表3および図1に示す。実施例1の酸化タングステン粉末の照度2500lxでのガス分解率は86%、1000lxでのガス分解率は66%、600lxでのガス分解率は48%であった。
さらに、上述した2500lx、1000lx、600lxの照度下でのガス分解率に基づく低照度下でのガス分解性能を評価するために、照度200lx、50lxの可視光を照射したときのガス分解率を測定した。それらの結果を表3および図1に併せて示す。実施例1の酸化タングステン粉末は、200lxという低い照度下においても20%のガス分解率を示し、さらに50lxという極めて照度が低い条件下においても7%のガス分解率を示した。これらの結果から、実施例1の酸化タングステン粉末は照度200〜2500lxの範囲で、照度とガス分解率が非線形な関係を示し、低照度下でも実用的なガス分解性能を示すことが確認された。
アセトアルデヒドガスの分解試験において、アセトアルデヒドの初期濃度は10ppm、ガス流量は140mL/min、試料量は0.2gとした。試料の調整は5×10cmのガラス板に塗布して乾燥させた。粉末試料の場合、水で広げて乾燥させた。前処理はブラックライトで12時間照射した。光源に白色蛍光灯(東芝ライテック社製、FL20SS・W/18)を使用し、紫外線カットフィルタ(日東樹脂工業社製、クラレックスN−169)を用いて、380nm未満の波長の光をカットした。照度はそれぞれ所定の値に調整した。初めに光を照射せずに、ガス吸着がなくなり安定するまで待つ。安定した後に光照射を開始する。このような条件下で光を照射し、15分後のガス濃度を測定してガス分解率を求める。ただし、15分経過後もガス濃度が安定しない場合には、安定するまで継続して濃度を測定する。ガス分析装置としてはINOVA社製マルチガスモニタ1412を使用した。
(実施例2)
反応ガスとしてアルゴンを80L/min、酸素を5L/minの流量で流し、反応容器内の圧力を35kPaと減圧側に調整する以外は、実施例1と同様の昇華工程を経て酸化タングステン粉末を作製した。さらに、酸化タングステン粉末を大気中にて400℃×1.5hの条件下で熱処理した。この際、熱処理温度まで0.5hで昇温し、熱処理後は2hかけて室温まで冷却した。このようにして得た酸化タングステン粉末について、実施例1と同様の測定、評価を行った。酸化タングステン粉末の作製条件を表1に、粉末特性の測定結果を表2に、ガス分解率の測定結果を表3および図1に示す。実施例2による酸化タングステン粉末は照度200〜2500lxの範囲で、照度とガス分解率が非線形な関係を示し、低照度下でも良好なガス分解性能を示すことが確認された。
(実施例3〜5)
実施例3〜5では実施例1と同様の昇華工程を実施した。実施例3は反応ガスとしてアルゴンを40L/min、空気を40L/minの流量で流して昇華工程を実施し、昇華工程後に500℃×1hの条件で熱処理工程を実施した。この際、熱処理温度まで0.5hで昇温し、熱処理後は2hかけて室温まで冷却した。実施例4は反応ガスとしてアルゴンを40L/min、酸素を100L/minの流量で流して昇華工程を実施し、昇華工程後に650℃×0.5hの条件で熱処理工程を実施した。この際、熱処理温度まで0.5hで昇温し、熱処理後は2hかけて室温まで冷却した。実施例5は反応ガスとしてアルゴンを40L/min、酸素を40L/minの流量で流して昇華工程を実施し、昇華工程後に850℃×0.25hの条件で熱処理工程を実施した。この際、熱処理温度まで0.5hで昇温し、熱処理後は2hかけて室温まで冷却した。
得られた酸化タングステン粉末について、実施例1と同様の測定、評価を行った。酸化タングステン粉末の作製条件を表1に、粉末特性の測定結果を表2に、ガス分解率の測定結果を表3および図1に示す。実施例3〜5による酸化タングステン粉末はいずれも照度200〜2500lxの範囲で、照度とガス分解率が非線形な関係を示し、低照度下でも良好なガス分解性能を示すことが確認された。
(実施例6)
反応ガスとしてアルゴンを40L/min、酸素を40L/minの流量で流す以外は、実施例1と同様にして昇華工程を実施した後、大気中にて950℃×1hの条件下で熱処理工程を実施した。得られた酸化タングステン粉末について、実施例1と同様の測定、評価を行った。酸化タングステン粉末の作製条件を表1に、粉末特性の測定結果を表2に、ガス分解率の測定結果を表3および図1に示す。実施例6による酸化タングステン粉末は照度200〜2500lxの範囲で、照度とガス分解率が非線形な関係を示し、
200lxの照度下では5%のガス分解性率を示した。また、600〜2500lxの照度下では良好なガス分解性能を示したもの、実施例1〜5より劣る結果となったため、50lxまで照度を下げるとガス分解性能が得られなかった。
(比較例1)
実施例5と同様の昇華工程を経て作製した酸化タングステン粉末に、大気中にて1050℃×0.25hの条件で熱処理を施した。得られた酸化タングステン粉末について、実施例1と同様の測定、評価を行った。酸化タングステン粉末の作製条件を表1に、粉末特性の測定結果を表2に、ガス分解率の測定結果を表3および図1に示す。酸化タングステン粉末のBET比表面積が4m2/gとやや小さく、平均粒径が215nmとやや大きいため、照度600〜2500lxでのガス分解率が低くかった。さらに、200〜2500lxの範囲で照度とガス分解率が線形の関係を示したため、50lxではガス分解性能を示さなかった。これは高温での熱処理で粒成長が生じたためと考えられる。
(比較例2)
試薬等として市販されている酸化タングステン粉末(レアメタリック社製)を用いて、実施例1と同様の測定、評価を行った。粉末特性を表2に、ガス分解率の測定結果を表3および図1に示す。X線回折結果より結晶系は単斜晶と三斜晶の混晶と推定され、BET比表面積は0.7m2/gで、平均粒径は1210nmであった。比較例2の酸化タングステン粉末は比表面積が小さく、粒径が著しく大きいため、6000lxで僅かなガス分解性能が認められたものの、2500lx、1000lx、600lx、200lxのいずれにおいてもガス分解性能はほとんど示さなかった。
(比較例3)
酸化チタンにおいて、可視光活性を向上させるためにPtを担持した酸化チタンを作製し、実施例1と同様の測定、評価を行った。結晶系以外の粉末特性を表2に、ガス分解率の測定結果を表3および図1に示す。BET比表面積は210m2/gと大きく、平均粒径は7.2nmと小さかった。6000lxおよび2500lxにおけるガス分解率は比較的高かったが、1000lx、600lx、200lxにおけるガス分解率は29%、18%、5%と、実施例に比べて小さい値しか得られなかった。照度200〜2500lxの範囲で照度とガス分解率が線形の関係を示したため、50lxではガス分解性能をほとんど示さず、低照度では活性が低いことが確認された。
(比較例4)
酸化チタンにおいて、可視光活性を向上させるためにFeを担持した酸化チタンを作製し、実施例1と同様の測定、評価を行った。結晶系以外の粉末特性を表2に、ガス分解率の測定結果を表3および図1に示す。BET比表面積は170m2/gと大きく、平均粒径は8nmと小さかった。6000lxにおけるガス分解率は非常に高く、2500lxにおけるガス分解率も比較的高かったが、1000lx、600lx、200lxにおけるガス分解率は26%、16%、4%と、実施例に比べて小さい値しか得られなかった。照度200〜2500lxの範囲で照度とガス分解率が線形の関係を示したため、50lxではガス分解性能をほとんど示さず、低照度では活性が低いことが確認された。
Figure 0005546768
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以上のように、照度200〜2500lxの範囲で照度とガス分解率が非線形な関係を示し、照度2500lx、1000lx、600lxの可視光の照射下で高いガス分解率を示す材料は、居間の団らん時や洗面所のような200lx程度の低照度下でも高い光触媒性能を発揮することが分かる。さらに、室内の壁、家具や家電製品等が置かれている場所のように、50lx前後と著しく低い照度下においても、ガス分解性能を示す高感度な可視光応答型光触媒粉末を提供することができる。当然のことながら、このような材料は6000lxという高照度下においても優れた光触媒性能を発揮する。
(実施例7)
実施例3で得られた酸化タングステン粉末に酸化銅(CuO)粉末を1質量%混合した。このようにして得た酸化タングステン粉末について、実施例1と同様にしてガス分解率を測定した。照度6000lx、2500lx、1000lx、600lxの照射下でのガス分解率は、それぞれ96%、90%、75%、61%と高く、その結果として照度200lx、50lxの照射下でのガス分解率もそれぞれ36%、16%と良好な値を示した。この測定結果から低照度下で良好なガス分解性能を示すことが確認された。
(実施例8)
実施例3で作製した酸化タングステン粉末を5質量%、コロイダルシリカを0.05質量%添加して水系塗料を作製した。これをガラスに塗布して乾燥させることによって、光触媒被覆層を有するガラスを作製した。このようなガラスについて、粉末と同様にしてガス分解率を測定した。その結果、照度200lxの照射下でのガス分解率は10%と良好な値を示すことが確認された。
さらに、上記した塗料を自動車の室内空間のガラスに塗布したところ、タバコの臭いが低減し、またガラスが汚れにくくなった。ちなみに、この塗料を塗布したガラスについて、親水性を評価したところ接触角が1°以下であり、超親水性を発現した。また、黄色ブドウ球菌、大腸菌やカビを用いて抗菌性の評価を行ったところ、いずれも優れた抗菌性を示すことが確認された。実施例の可視光応答型光触媒粉末はアセトアルデヒド等の有機ガスの分解性能に優れ、また光触媒被覆層は透過率が高く、視覚的に色ムラ等の問題が生じにくい。そのため、自動車の室内空間で使用される部材や工場、商店、公共施設、住宅等で使用される建材、内装材、家電等に好適に用いられる。
(実施例9、10)
実施例3および実施例5で得られた酸化タングステン粉末に、それぞれPd粉末を15質量%混合した。このようにして得られた酸化タングステン複合材粉末について、実施例1と同様にしてガス分解率を測定した。照度200lxの照射下でのガス分解率はそれぞれ40%、17%の値を示し、粒径にかかわらずPd混合前よりと高い値を示した。しかし、粉末の色が黒いため、塗料を作製した場合には透明性がなくなった。
(実施例11)
実施例3で得られた酸化タングステン粉末を塩化鉄水溶液に分散させた。この分散液を遠心分離し、上澄みの除去と水の追加による洗浄を2回行った。この後、上澄み除去後の粉末を110℃で12時間乾燥することによって、Feを1質量%含有する酸化タングステン複合材粉末を作製した。酸化タングステン複合材粉末のガス分解率を実施例1と同様にして測定した。その結果、照度200lxの可視光の照射下において、ガス分解率は35%と高い値を示した。
(実施例12)
実施例11と同様の方法で、塩化銅水溶液を用いてCuを0.3質量%含有する酸化タングステン複合材粉末を作製した。酸化タングステン複合材粉末のガス分解率を実施例1と同様にして測定した。その結果、照度200lxの可視光の照射下において、ガス分解率は37%と高い値を示した。
(実施例13)
実施例11と同様の方法で、硝酸銀水溶液を用いてAgを0.5質量%含有する酸化タングステン複合材粉末を作製した。酸化タングステン複合材粉末のガス分解率を実施例1と同様にして測定した。その結果、照度200lxの可視光の照射下において、ガス分解率は32%と高い値を示した。
(実施例14〜17)
実施例11と同様の方法で、塩化パラジウム水溶液を用いてPdを2質量%、0.5質量%含有する酸化タングステン複合材粉末をそれぞれ作製し、実施例14および実施例15の粉末を得た。さらに、実施例1および実施例5で得られた酸化タングステン粉末を使用する以外は実施例15と同様に酸化タングステン複合材粉末を作製し、実施例16および実施例17の粉末を得た。これら粉末のガス分解率を実施例1と同様にして測定した。その結果、照度200lxの可視光の照射下において、ガス分解率はそれぞれ35%、45%、34%、29%の値を示し、粒径にかかわらずPdを添加する前より高い値を示した。しかし、Pdの含有率が2質量%のものはPdが酸化タングステン粒子の回りに多すぎるためか、Pdを0.5質量%含有するものよりガス分解性能が低くなった。
(実施例18)
実施例3で得られた酸化タングステン粉末を塩化白金酸水溶液に分散させ、可視光照射とメタノール投入を行い、光析出法による担持を行った。遠心分離を行い、上澄みの除去と水の追加による洗浄を2回行った後、上澄み除去後の粉末を110℃で12時間乾燥し、Ptを0.1質量%含有する酸化タングステン複合材粉末を作製した。この粉末のガス分解率を実施例1と同様にして測定した。その結果、照度200lxの可視光の照射下において、ガス分解率は47%と高い値を示した。
(実施例19〜21)
実施例3で得られた酸化タングステン粉末に、酸化チタン粉末ST−01(商品名、石原産業社製)を70質量%、40質量%、10質量%の割合で混合し、実施例19、実施例20および実施例21の酸化タングステン複合材粉末を作製した。混合は乳鉢を用いて行った。これら粉末のガス分解率を実施例1と同様にして測定した。その結果、照度200lxの可視光の照射下において、ガス分解率はそれぞれ18%、34%、37%の値を示した。実施例19の酸化タングステン複合材粉末は酸化タングステンが少なすぎるために若干性能が落ちたが、それ以外は混合前より高い値を示した。
(実施例22、23)
実施例1および実施例5で得られた酸化タングステン粉末を用いる以外は、実施例21と同様の方法で酸化チタン粉末を10質量%混合し、実施例22および実施例23の粉末を作製した。これら粉末のガス分解率を実施例1と同様にして測定した。その結果、照度200lxの可視光の照射下において、ガス分解率はそれぞれ30%、24%の値を示し、酸化チタン粉末の混合前よりガス分解率が向上することが確認された。
(実施例24)
実施例3で得られた酸化タングステン粉末を、酸化チタンゾルSTS−01(商品名、石原産業社製)に分散させた後、110℃で12時間乾燥させることによって、TiO2を5質量%含有する酸化タングステン複合材粉末を作製した。この粉末のガス分解率を実施例1と同様にして測定した。その結果、照度200lxの可視光の照射下において、ガス分解率は39%と高い値を示した。TiO2粉末で混合した場合よりTiO2が均一に分散したため、高い性能が得られたと考えられる。
(実施例25)
実施例7と同様の方法で、実施例3で得られた酸化タングステン粉末にCuO粉末を20質量%混合した粉末を作製した。この粉末のガス分解率を実施例1と同様にして測定した。その結果、照度200lxの可視光の照射下において、ガス分解率は26%を示した。しかし、CuOの含有量が多すぎるためか、1質量%の割合で混合した粉末より特性が低く、また粉末の色が黒いために、塗料を作製した場合に透明性がなくなった。
(実施例26)
実施例3で得られた酸化タングステン粉末に酸化ジルコニウム(ZrO2)粉末を0.5質量%混合した。この粉末のガス分解率を実施例1と同様にして測定した。その結果、照度200lxの可視光の照射下において、ガス分解率は32%と高い値を示した。
(実施例27)
実施例3で得られた酸化タングステン粉末をアルミナゾルに分散させ、この分散液を110℃で12時間乾燥させて、Al23を2質量%含有する粉末を作製した。この粉末のガス分解率を実施例1と同様にして測定した。その結果、照度200lxの可視光の照射下において、ガス分解率は32%であり、混合前と同等以上の特性を示した。
(実施例28〜30)
実施例3で得られた酸化タングステン粉末に炭化タングステン(WC)粉末を10質量%、2質量%、0.5質量%の割合で混合して、実施例28、実施例29および実施例30の粉末を作製した。これらの粉末のガス分解率を実施例1と同様にして測定した。その結果、照度200lxの可視光の照射下において、ガス分解率はそれぞれ21%、31%、35%の値を示した。実施例28はWCが多すぎたためか混合前より低い値となったが、実施例29および実施例30は混合前と同等以上の値を示した。しかし、WCの含有率が高いほど粉末の色が黒くなるため、塗料を作製した場合に透明性がなくなった。
(実施例31)
実施例3で得られた酸化タングステン粉末と水を用いて、ビーズミルにて分散処理を行って、濃度が10%質量の水系分散液を作製した。これに塩化セリウム水溶液を混合し、CeとWO3との質量比が1:999の溶液を作製した。この溶液をガラス板に塗布した後、110℃で0.5時間乾燥させて、実施例31の試料を得た。比較のため、塩化セリウムを混合する前の水分散液のみでも同様の試料を作製した。これら試料のガス分解率を実施例1と同様にして測定した。その結果、照度200lxの可視光の照射下において、ガス分解率は20%の値を示し、Ce添加前と同等の値であった。
(実施例32)
実施例31で作製した試料を、さらに大気中にて350℃で1時間加熱処理を行った。この試料のガス分解率を実施例1と同様にして測定した。その結果、照度200lxの可視光の照射下において、ガス分解率は28%の値を示し、110℃で乾燥したのみの試料(実施例31)より高い値を示した。加熱温度を高くすることによって、余分な水分や塩化物等が減少したため、特性が向上したと考えられる。
(実施例33)
実施例31と同様に、実施例3の粉末を用いた酸化タングステン10質量%の水系分散液を作製し、これに硝酸ニッケル水溶液を混合して、NiとWO3との質量比が1:999の溶液を作製した。この溶液をガラス板に塗布した後、110℃で0.5時間乾燥し、さらに大気中にて350℃で1時間加熱して、実施例33の試料を得た。この試料のガス分解率を実施例1と同様にして測定した。その結果、照度200lxの可視光の照射下において、ガス分解率は25%の値を示し、Ni添加前より高い値を示した。
(実施例34)
実施例33と同様に、実施例3の粉末を用いた酸化タングステン10質量%の水系分散液を作製し、これに塩化マンガン水溶液を混合して、MnとWO3との質量比が1:999の溶液を作製した。この溶液をガラス板に塗布した後、110℃で0.5時間乾燥し、さらに大気中にて350℃で1時間加熱して、実施例33の試料を得た。この試料のガス分解率を実施例1と同様にして測定した。その結果、照度200lxの可視光の照射下において、ガス分解率は27%であり、Mn添加前より高い値を示した。上記した各実施例の試料はいずれも高い親水性を示し、抗菌、抗カビ性を有していることが確認された。
(実施例35)
原料粉末として平均粒径が0.5μmの三酸化タングステン粉末を用意した。この原料粉末をキャリアガス(Ar)と共にRFプラズマに噴霧し、さらに反応ガスとして酸素を80L/minの流量で流した。このようにして、原料粉末を昇華させながら酸化反応させる昇華工程を経て、酸化タングステン粉末を作製した。酸化タングステン粉末の製造条件を表4に示す。
得られた酸化タングステン粉末のBET比表面積と平均粒径(TEM写真の画像解析による)を実施例1と同様にして測定した。BET比表面積と平均粒径の測定結果を表5に示す。また、酸化タングステン粉末のX線回折を実施例1と同様にして実施した。X線回折結果に基づく酸化タングステン粉末の結晶構造の同定結果を表5に示す。さらに、酸化タングステン粉末の色を実施例1と同様にL*a*b*表色系に基づいて測定した。L*a*b*の測定結果を表5に示す。
次に、得られた酸化タングステン粉末の特性として、アセトアルデヒドの分解率を測定した。アセトアルデヒドガスの分解率は、JIS−R−1701−1(2004)の窒素酸化物の除去性能(分解能力)評価と同様の流通式の装置を用いて、以下に示す条件で行った。照度6000lx、2500lx、1000lx、600lxの可視光を照射したときのガス分解率を表6に示す。実施例35の酸化タングステン粉末の照度2500lxでのガス分解率は86%、1000lxでのガス分解率は66%、600lxでのガス分解率は48%であった。
さらに、上述した2500lx、1000lx、600lxの照度下でのガス分解率に基づく低照度下でのガス分解性能を評価するために、照度200lx、50lxの可視光を照射したときのガス分解率を測定した。それらの結果を表6に併せて示す。実施例35の酸化タングステン粉末は、200lxという低い照度下においても20%のガス分解率を示し、さらに50lxという極めて照度が低い条件下においても7%のガス分解率を示した。これらの結果から、実施例35の酸化タングステン粉末は照度200〜2500lxの範囲で、照度とガス分解率が非線形な関係を示し、低照度下でも実用的なガス分解性能を示すことが確認された。
アセトアルデヒドガスの分解試験において、アセトアルデヒドの初期濃度は10ppm、ガス流量は140mL/min、試料量は0.2gとした。試料の調整は5×10cmのガラス板に塗布して乾燥させた。粉末試料の場合、水で広げて乾燥させた。前処理はブラックライトで12時間照射した。光源に白色LEDとして日亜化学社製のNSPW−510CSを使用し、照度はそれぞれ所定の値に調整した。初めに光を照射せずに、ガス吸着がなくなり安定するまで待つ。安定した後に光照射を開始する。このような条件下で光を照射し、15分後のガス濃度を測定してガス分解率を求める。ただし、15分経過後もガス濃度が安定しない場合には、安定するまで継続して濃度を測定する。ガス分析装置としてはINOVA社製マルチガスモニタ1412を使用した。
(実施例36)
反応ガスとしてアルゴンを80L/min、酸素を5L/minの流量で流し、反応容器内の圧力を35kPaと減圧側に調整する以外は、実施例35と同様の昇華工程を経て酸化タングステン粉末を作製した。さらに、酸化タングステン粉末を大気中にて400℃×1.5hの条件下で熱処理した。この際、熱処理温度まで0.5時間で昇温し、熱処理後は2時間かけて室温まで冷却した。このようにして得た酸化タングステン粉末について、実施例35と同様の測定、評価を行った。酸化タングステン粉末の作製条件を表4に、粉末特性の測定結果を表5に、ガス分解率の測定結果を表6に示す。実施例36による酸化タングステン粉末は照度200〜2500lxの範囲で、照度とガス分解率が非線形な関係を示し、低照度下でも良好なガス分解性能を示すことが確認された。
(実施例37〜39)
実施例37〜39では実施例35と同様の昇華工程を実施した。実施例37は反応ガスとしてアルゴンを40L/min、空気を40L/minの流量で流して昇華工程を実施し、昇華工程後に500℃×1hの条件で熱処理工程を実施した。熱処理温度まで0.5時間で昇温し、熱処理後は2時間かけて室温まで冷却した。実施例38は反応ガスとしてアルゴンを40L/min、酸素を100L/minの流量で流して昇華工程を実施し、昇華工程後に650℃×0.5hの条件で熱処理工程を実施した。熱処理温度まで0.5時間で昇温し、熱処理後は2時間かけて室温まで冷却した。実施例39は反応ガスとしてアルゴンを40L/min、酸素を40L/minの流量で流して昇華工程を実施し、昇華工程後に850℃×0.25hの条件で熱処理工程を実施した。熱処理温度まで0.5時間で昇温し、熱処理後は2時間かけて室温まで冷却した。
得られた酸化タングステン粉末について、実施例35と同様の測定、評価を行った。酸化タングステン粉末の作製条件を表4に、粉末特性の測定結果を表5に、ガス分解率の測定結果を表6に示す。実施例37〜39による酸化タングステン粉末はいずれも照度200〜2500lxの範囲で、照度とガス分解率が非線形な関係を示し、低照度下でも良好なガス分解性能を示すことが確認された。
(実施例40)
反応ガスとしてアルゴンを40L/min、酸素を40L/minの流量で流す以外は、実施例35と同様にして昇華工程を実施した後、大気中にて950℃×1hの条件下で熱処理工程を実施した。得られた酸化タングステン粉末について、実施例35と同様の測定、評価を行った。酸化タングステン粉末の作製条件を表4に、粉末特性の測定結果を表5に、ガス分解率の測定結果を表6に示す。実施例40による酸化タングステン粉末は照度200〜2500lxの範囲で、照度とガス分解率が非線形な関係を示し、200lxの照度下では5%のガス分解性率を示した。また、600〜2500lxの照度下では良好なガス分解性能を示したもの、実施例35〜39より劣る結果となったため、50lxまで照度を下げるとガス分解性能が得られなかった。
(比較例5)
実施例39と同様の昇華工程を経て作製した酸化タングステン粉末に、大気中にて1050℃×0.25hの条件で熱処理を施した。得られた酸化タングステン粉末について、実施例35と同様の測定、評価を行った。酸化タングステン粉末の作製条件を表4に、粉末特性の測定結果を表5に、ガス分解率の測定結果を表6に示す。酸化タングステン粉末のBET比表面積が4m2/gとやや小さく、平均粒径が215nmとやや大きいため、照度600〜2500lxでのガス分解率が低くかった。さらに、200〜2500lxの範囲で照度とガス分解率が線形の関係を示したため、50lxではガス分解性能を示さなかった。これは高温での熱処理で粒成長が生じたためと考えられる。
(比較例6)
試薬等として市販されている酸化タングステン粉末(レアメタリック社製)を用いて、実施例35と同様の測定、評価を行った。粉末特性を表5に、ガス分解率の測定結果を表6に示す。X線回折結果より結晶系は単斜晶と三斜晶の混晶と推定され、BET比表面積は0.7m2/gで、平均粒径は1210nmであった。比較例6の酸化タングステン粉末は比表面積が小さく、粒径が著しく大きいため、6000lxで僅かなガス分解性能が認められたものの、2500lx、1000lx、600lx、200lxのいずれにおいてもガス分解性能はほとんど示さなかった。
(比較例7)
酸化チタンにおいて、可視光活性を向上させるためにPtを担持した酸化チタンを作製し、実施例35と同様の測定、評価を行った。結晶系以外の粉末特性を表5に、ガス分解率の測定結果を表6に示す。BET比表面積は210m2/gと大きく、平均粒径は7.2nmと小さかった。6000lxおよび2500lxにおけるガス分解率は比較的高かったが、1000lx、600lx、200lxにおけるガス分解率は20%、13%、3%と、実施例に比べて小さい値しか得られなかった。照度200〜2500lxの範囲で照度とガス分解率が線形の関係を示したため、50lxではガス分解性能をほとんど示さず、低照度では活性が低いことが確認された。
(比較例8)
酸化チタンにおいて、可視光活性を向上させるためにFeを担持した酸化チタンを作製し、実施例35と同様の測定、評価を行った。結晶系以外の粉末特性を表5に、ガス分解率の測定結果を表6に示す。BET比表面積は170m2/gと大きく、平均粒径は8nmと小さかった。6000lxにおけるガス分解率は非常に高く、2500lxにおけるガス分解率も比較的高かったが、1000lx、600lx、200lxにおけるガス分解率は20%、11%、3%と、実施例に比べて小さい値しか得られなかった。照度200〜2500lxの範囲で照度とガス分解率が線形の関係を示したため、50lxではガス分解性能をほとんど示さず、低照度では活性が低いことが確認された。
Figure 0005546768
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以上のように、照度200〜2500lxの範囲で照度とガス分解率が非線形な関係を示し、照度2500lx、1000lx、600lxの可視光の照射下で高いガス分解率を示す材料は、居間の団らん時や洗面所のような200lx程度の低照度下でも高い光触媒性能を発揮することが分かる。さらに、室内の壁、家具や家電製品等が置かれている場所のように、50lx前後と著しく低い照度下においても、ガス分解性能を示す高感度な可視光応答型光触媒粉末を提供することができる。当然のことながら、このような材料は6000lxという高照度下においても優れた光触媒性能を発揮する。
(実施例41)
実施例37で得られた酸化タングステン粉末に酸化銅(CuO)粉末を1質量%混合した。このようにして得た酸化タングステン粉末について、実施例1と同様にしてガス分解率を測定した。照度6000lx、2500lx、1000lx、600lxの照射下でのガス分解率は、それぞれ96%、90%、75%、61%と高く、その結果として照度200lx、50lxの照射下でのガス分解率もそれぞれ36%、16%と良好な値を示した。この測定結果から低照度下で良好なガス分解性能を示すことが確認された。
(実施例42)
実施例37で作製した酸化タングステン粉末を5質量%、コロイダルシリカを0.05質量%添加して水系塗料を作製した。これをガラスに塗布して乾燥させることによって、光触媒被覆層を有するガラスを作製した。このようなガラスについて、粉末と同様にしてガス分解率を測定した。その結果、照度200lxの照射下でのガス分解率は10%と良好な値を示すことが確認された。
さらに、上記した塗料を自動車の室内空間のガラスに塗布したところ、タバコの臭いが低減し、またガラスが汚れにくくなった。ちなみに、この塗料を塗布したガラスについて、親水性を評価したところ接触角が1°以下であり、超親水性を発現した。また、黄色ブドウ球菌、大腸菌やカビを用いて抗菌性の評価を行ったところ、いずれも優れた抗菌性を示すことが確認された。実施例の可視光応答型光触媒粉末はアセトアルデヒド等の有機ガスの分解性能に優れ、また光触媒被覆層は透過率が高く、視覚的に色ムラ等の問題が生じにくい。そのため、自動車の室内空間で使用される部材や工場、商店、学校、公共施設、病院、福祉施設、宿泊施設、住宅等で使用される建材、内装材、家電等に好適に用いられる。実施例の可視光応答型光触媒材料と白色LEDとを組合みこんだ空気清浄機をつくり、脱臭効果を得た。また筐体に半透明の樹脂を用いて、白色LEDの光を適度に外部に照射する構成とすると、空気清浄機の稼動状態を確認でき、また装飾性が向上した。
(実施例43)
実施例35、37、39の酸化タングステン粉末を用いて、実施例9〜34と同様に酸化タングステン複合材粉末を作製した。これらの粉末の特性を実施例35と同様にして評価したところ、実施例9〜34と同様に特性の向上が認められた。

Claims (17)

  1. 酸化タングステン粉末または酸化タングステン複合材粉末を具備する可視光応答型光触媒粉末であって、
    前記酸化タングステン粉末または前記酸化タングステン複合材粉末を構成する酸化タングステンは、三酸化タングステンの単斜晶と三斜晶とが混在した結晶構造、あるいは前記単斜晶前記三斜晶三酸化タングステンの斜方晶とが混在した結晶構造を有し、
    前記可視光応答型光触媒粉末の有機ガス分解能力は、照度が200lx以上2500lx以下の範囲の可視光下で非線形な応答を示し、
    JIS−R−1701−1(2004)の窒素酸化物の除去性能(分解能力)評価に準じる流通式装置に0.2gの試料を入れた状態で、初期濃度10ppmのアセトアルデヒドガスを140mL/minで流して測定したガス濃度において、光照射前のガス濃度をA、光照射から15分以上経過し、かつ安定したときのガス濃度をBとし、前記ガス濃度Aと前記ガス濃度Bから[式:(A−B)/A×100]に基づいて算出した値をガス分解率(%)としたとき、白色蛍光灯を使用し、紫外線カットフィルタを用い、波長が380nm以上のみの光で照度が2500lxの可視光を照射した際の前記ガス分解率が20%以上、波長が380nm以上のみの光で照度が1000lxの可視光を照射した際の前記ガス分解率が15%以上、波長が380nm以上のみの光で照度が600lxの可視光を照射した際の前記ガス分解率が10%以上である、
    または、白色LEDランプを使用し、波長が410nm以上のみの光で照度が2500lxの可視光を照射した際の前記ガス分解率が20%以上、波長が410nm以上のみの光で照度が1000lxの可視光を照射した際の前記ガス分解率が15%以上、波長が410nm以上のみの光で照度が600lxの可視光を照射した際の前記ガス分解率が10%以上である、ことを特徴とする可視光応答型光触媒粉末。
  2. 請求項1記載の可視光応答型光触媒粉末において、
    前記酸化タングステン粉末または前記酸化タングステン複合材粉末は4.1m2/g以上820m2/g以下の範囲のBET比表面積を有することを特徴とする可視光応答型光触媒粉末。
  3. 請求項1記載の可視光応答型光触媒粉末において、
    前記酸化タングステン粉末または前記酸化タングステン複合材粉末は8.2m2/g以上410m2/g以下の範囲のBET比表面積を有することを特徴とする可視光応答型光触媒粉末。
  4. 請求項1または請求項2記載の可視光応答型光触媒粉末において、
    前記酸化タングステン粉末または前記酸化タングステン複合材粉末は1nm以上200nm以下の範囲の平均粒径(D50)を有することを特徴とする可視光応答型光触媒粉末。
  5. 請求項1ないし請求項3のいずれか1項記載の可視光応答型光触媒粉末において、
    前記酸化タングステン粉末または前記酸化タングステン複合材粉末は2nm以上100nm以下の範囲の平均粒径(D50)を有することを特徴とする可視光応答型光触媒粉末。
  6. 請求項1ないし請求項のいずれか1項記載の可視光応答型光触媒粉末において、
    前記酸化タングステン粉末または前記酸化タングステン複合材粉末の色をL*a*b*表色系で表したとき、前記酸化タングステン粉末または前記酸化タングステン複合材粉末はa*が−5以下、b*が5以上、L*が70以上の色を有することを特徴とする可視光応答型光触媒粉末。
  7. 請求項1ないし請求項のいずれか1項記載の可視光応答型光触媒粉末において、
    前記酸化タングステン複合材粉末はTi、Fe、Cu、Zr、Ag、Pt、Pd、Mn、AlおよびCeから選ばれる少なくとも1種の金属元素を50質量%以下の範囲で含有することを特徴とする可視光応答型光触媒粉末。
  8. 請求項記載の可視光応答型光触媒粉末において、
    前記酸化タングステン複合材粉末は前記金属元素を10質量%以下の範囲で含有することを特徴とする可視光応答型光触媒粉末。
  9. 請求項または請求項記載の可視光応答型光触媒粉末において、
    前記金属元素は、単体、化合物、および酸化タングステンとの複合化合物から選ばれる少なくとも1種の形態で、前記酸化タングステン複合材粉末中に存在することを特徴とする可視光応答型光触媒粉末。
  10. 請求項または請求項記載の可視光応答型光触媒粉末において、
    前記金属元素は酸化物として前記酸化タングステン複合材粉末中に存在することを特徴とする可視光応答型光触媒粉末。
  11. 請求項記載の可視光応答型光触媒粉末において、
    前記金属元素は前記形態で酸化タングステンに混合または担持されていることを特徴とする可視光応答型光触媒粉末。
  12. 請求項1ないし請求項のいずれか1項記載の可視光応答型光触媒粉末において、
    前記酸化タングステン複合材粉末は酸化銅粉末を1質量%以上5質量%以下の範囲で含有することを特徴とする可視光応答型光触媒粉末。
  13. 請求項1ないし請求項のいずれか1項記載の可視光応答型光触媒粉末において、
    前記酸化タングステン複合材粉末は炭化タングステン粉末を1質量%以上5質量%以下の範囲で含有することを特徴とする可視光応答型光触媒粉末。
  14. 請求項1ないし請求項13のいずれか1項記載の可視光応答型光触媒粉末を1質量%以上100質量%以下の範囲で含有することを特徴とする可視光応答型光触媒材料。
  15. 請求項14記載の可視光応答型光触媒材料を0.1質量%以上90質量%以下の範囲で含有することを特徴とする可視光応答型光触媒塗料。
  16. 請求項14記載の可視光応答型光触媒材料を具備することを特徴とする可視光応答型光触媒製品。
  17. 請求項15記載の可視光応答型光触媒塗料の塗布層を具備することを特徴とする可視光応答型光触媒製品。
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