JP5546155B2 - 色素化合物、該色素化合物を含有する顔料分散剤、顔料組成物、及び顔料分散体 - Google Patents

色素化合物、該色素化合物を含有する顔料分散剤、顔料組成物、及び顔料分散体 Download PDF

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Description

本発明は、新規な色素化合物、該化合物を含有してなる顔料分散剤、該顔料分散剤を含有する顔料組成物並びにその分散体に関する。
アゾ顔料の着色剤としての用途は多岐にわたり、塗料、インクジェットインク、電子写真トナー、カラーフィルター等の分野で広く用いられている。このような分野で用いられる場合、着色力、透明性などの分光特性を向上させるために、各種媒体中に顔料を微分散しなければならない。ところが、一般的にアゾ顔料は微細化すると分散工程やその後の製造工程において熱履歴や溶媒との接触により結晶の成長や転移などが起きやすくなり、着色力や透明性の低下などの問題を引き起こしてしまう。このような問題を改善するために様々な顔料組成物及びそれを構成する顔料分散剤が提案されている。例えば、アゾ顔料に対して、異種のアゾ色素を顔料分散剤として添加した顔料組成物が提案されている(特許文献1及び2参照)。
また、顔料分散剤として、Solsperse(登録商標)(Lubrizol社製)を用いた例が開示されている(特許文献3参照)。しかし、これらの顔料組成物や顔料分散剤は、有機溶媒、特に非極性溶媒、例えばスチレンモノマー等への分散においては十分な分散効果を得ることはできなかった。
一方、ピラゾロンアゾ化合物は古くから黄色乃至赤色着色剤として様々な化学構造のものが提案されている。例えば、染色、捺染用着色剤として水溶性ピラゾロンアゾ化合物が提案されている(特許文献4参照)。また、特許文献5には耐熱性及び耐光性に優れかつ水や有機溶剤への溶解性に優れたアゾ化合物が開示されている。しかし、これの化合物を顔料分散剤として用いた場合、顔料分散工程やその後の製造工程において水との接触により、容易に水に溶け出してしまい顔料分散剤としては機能しなかった。
また、カラーフィルター、銀塩写真向け感光材料として、ピラゾロンアゾ化合物が提案されている(特許文献6及び7参照)。しかしこれらは、当該用途としては満足するものであるが非極性溶媒中での顔料分散剤としては十分な効果を得られなかった。
特許第04069873号公報 特開2007−262382号公報 国際公開第99−42532号パンフレット 英国特許第1211804号明細書 特開2005−263925号公報 特開2006−3873号公報 特開平2−271353号公報
本発明は上記した課題を解決することを目的とする。即ち、本発明は、有機溶媒に対する高い溶解性を有し、アゾ顔料の有機溶媒に対する分散性を改善する機能を有する色素化合物及び顔料分散剤を提供することを目的とする。
また、本発明は、有機溶媒に対する良好な分散性を有するアゾ顔料組成物並びにその分散体を提供することを別の目的とする。
前記目的は、以下の本発明によって達成される。即ち本発明は、下記一般式(1)で表されることを特徴とする色素化合物を提供する。
Figure 0005546155
[一般式(1)中、R1水素原子、アルキル基、アリール基又はアラルキル基を表す。R2COOM基(Mは水素原子もしくはカウンターカチオンを表す)又はアミノ基を表す。R3乃至R7はそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、トリフルオロメチル基、ニトロ基、アセチルアミノ基、ヒドロキシ基、スルファモイル基、アルキル基、アルコキシ基、COOR8又はCONR910基(R8乃至R9はそれぞれ独立してアルキル基、アリール基又はアラルキル基を表す。R10水素原子、アルキル基、アリール基又はアラルキル基を表す。)を表す。R 3乃至R7の少なくとも一つはCOOR8又はCONR910基である。]
また、本発明は、少なくとも上記一般式(1)で示される構造を有する色素化合物を含有するアゾ顔料分散剤、該分散剤を含有するアゾ顔料組成物及びその分散体を提供する。
本発明により、水への溶解性が低く、有機溶媒、特に非極性溶媒への溶解性が高い色素化合物が提供される。本発明にかかる上記一般式(1)で表される色素化合物は、アゾ顔料に対する親和性が高いことから、顔料分散剤として用いることで、アゾ顔料の分散性を改善し、良好な色調を有する顔料組成物を提供することができる。更に該顔料組成物を用いることで、有機溶剤への分散性に優れる色調良好な顔料分散体、特にスチレンモノマーの顔料分散体が提供される。
本発明の色素化合物(D−1)のDMSO−d6中、室温、400MHzにおける1H NMRスペクトルを表す図である。
以下に好ましい実施の形態を挙げて、本発明について更に詳しく説明する。
本発明者らは、前記した従来技術の課題を解決すべく鋭意検討の結果、下記一般式(1)で表される色素化合物が、水への溶解性が低く、有機溶媒への溶解性が高く、アゾ顔料の有機溶媒への分散性を改善する効果を有することを見出した。更に、該色素化合物を用いることで色調が良好なアゾ顔料組成物が提供され、該顔料組成物を用いることで色調良好な顔料分散体を得ることができることを見出して、本発明に至った。
まず、本発明で提供される前記一般式(1)で表される構造を有する色素化合物について詳細に説明する。
Figure 0005546155
[一般式(1)中、R1は水素原子、アルキル基、アリール基、アラルキル基を表す。R2はCOOM基(Mは水素原子もしくはカウンターカチオンを表す)、アミノ基を表す。R3乃至R7はそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、トリフルオロメチル基、ニトロ基、アセチルアミノ基、ヒドロキシ基、スルファモイル基、アルキル基、アルコキシ基、COOR8基、CONR910基(R8乃至R9はそれぞれ独立してアルキル基、アリール基、アラルキル基を表す。R10は水素原子、アルキル基、アリール基、アラルキル基を表す。)を表す。更にR3乃至R7の少なくとも一つはCOOR8基、CONR910基である。]
前記一般式(1)中のR1におけるアルキル基としては、特に限定されるものではないが、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基等の直鎖、分岐又は環状のアルキル基が挙げられる。
1におけるアリール基としては、特に限定されるものではないが、例えば、フェニル基、ナフチル基、フェナントリル基、アントラセニル基等の単環式又は多環式アリール基が挙げられる。
1におけるアラルキル基としては、特に限定されるものではないが、例えば、ベンジル基、フェネチル基等が挙げられる。
1はそれぞれ独立に、上記したような置換基を表すが、これらは更に置換されていてもよく、色素化合物の溶剤溶解性を著しく阻害するものでなければ特に制限されない。例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基等のアルキル基、フェニル基、ナフチル基等のアリール基、メトキシ基、エトキシ基、tert−ブトキシ基等のアルコキシ基、フェノキシ基、ナフチルオキシ基等のアリールオキシ基、N,N−ジメチルアミノ基、N−エチル−N−フェニルアミノ基、N,N−ジフェニルアミノ基等の二置換アミノ基、アセチル基、ベンゾイル基等のアシル基、スルホン酸基、カルバモイル基、スルファモイル基、ピリジル基、トリアジニル基、ベンゾチアゾリル基等のヘテロ環基、ニトロ基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子が挙げられる。
1は、上記に列挙した置換基及び水素原子から任意に選択できるが、有機溶媒への溶解性向上及び合成容易性の点からアリール基である場合が好ましい。その中でも特にフェニル基である場合が原料の入手容易性の点でより好ましい。
前記一般式(1)中のR2はCOOM基、アミノ基が挙げられる。ここでMは水素原子もしくは塩を形成するためのカウンターイオンを表し、カウンターイオンとしては、特に限定されるものではないが、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属イオン、アンモニウム、メチルアンモニウム、ジメチルアンモニウム、トリメチルアンモニウム、テトラメチルアンモニウム、エチルアンモニウム、ジエチルアンモニウム、トリエチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、n−プロピルアンモニウム、イソプロピルアンモニウム、ジイソプロピルアンモニウム、n−ブチルアンモニウム、テトラn−ブチルアンモニウム、イソブチルアンモニウム、モノエタノールアンモニウム、ジエタノールアンモニウム、トリエタノールアンモニウム等の第四級アンモニウムイオンが挙げられる。
2におけるアミノ基としては、特に限定されるものではないが、例えば、無置換アミノ基、N−メチルアミノ基、N−ブチルアミノ基、N−ヘキシルアミノ基、N−テトラデシルアミノ基、N−フェニルアミノ基、N−ナフチルアミノ基等のモノ置換アミノ基、N,N−ジメチルアミノ基、N,N−ジエチルアミノ基、N,N−ジフェニルアミノ基、N,N−メチルプロピルアミノ基等の二置換アミノ基、アセチルアミノ基、エチルカルボニルアミノ基、tert−ブチルカルボニルアミノ基、ベンゾイルアミノ基、ナフトイルアミノ基、メトキシカルボニルアミノ基等のカルボニルアミノ基、メチルスルホニルアミノ基、エチルスルホニルアミノ基、tert−ブチルスルホニルアミノ基、iso−プロポキシスルホニルアミノ基等のスルホニルアミノ基が挙げられる。
前記一般式(1)中のR2は前記に列挙した置換基から任意に選択できるが、好ましいのは、水への溶解性の低いCOOM基の場合である。また、無置換アミノ基である場合も合成容易性の点で好ましい。
前記一般式(1)中のR3乃至R7におけるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
前記一般式(1)中のR3乃至R7におけるアルキル基としては、特に限定されるものではないが、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基等の直鎖、分岐又は環状のアルキル基が挙げられる。
前記一般式(1)中のR3乃至R7におけるアルコキシ基としては、特に限定されるものではないが、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、n−ブチルオキシ基、イソブチルオキシ基、sec−ブチルオキシ基、tert−ブチルオキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、ヘプシルオキシ基、オクチルオキシ基、ノニルオキシ基、デシルオキシ基、ウンデシルオキシ基、ドデシルオキシ基、トリデシルオキシ基、テトラデシルオキシ基、ペンタデシルオキシ基、ヘキサデシルオキシ基、ヘプタデシルオキシ基、オクタデシルオキシ基、ノナデシルオキシ基、シクロプロピルオキシ基、シクロブチルオキシ基、シクロペンチルオキシ基等の直鎖、分岐又は環状のアルキルオキシ基が挙げられる。
前記一般式(1)中のR3乃至R7は少なくとも一つのCOOR8基、CONR910基を有する。R8乃至R10におけるアルキル基としては、特に限定されるものではないが、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基等の直鎖、分岐又は環状のアルキル基が挙げられる。
8乃至R10におけるアリール基としては、特に限定されるものではないが、例えば、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、チエニル基等が挙げられる。
8乃至R10におけるアラルキル基としては、特に限定されるものではないが、例えば、ベンジル基、フェネチル基等が挙げられる。
また、R9及びR10は窒素原子とともに複素環を形成していてもよい。R9及びR10が窒素原子とともに形成する複素環の具体例としては、ピペラジン環、ピペリジン環、ピロリジン環、モルホリン環等が挙げられる。
前記一般式(1)中のR3乃至R7における他の置換基として水素原子、トリフルオロメチル基、ニトロ基、アセチルアミノ基、ヒドロキシ基、スルファモイル基が挙げられる。
3乃至R10はそれぞれ独立に、上記したような置換基を表すが、これらは更に置換されていてもよく、色素化合物の溶剤溶解性を著しく阻害するものでなければ特に制限されない。例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基等のアルキル基、フェニル基、ナフチル基等のアリール基、メトキシ基、エトキシ基、tert−ブトキシ基等のアルコキシ基、フェノキシ基、ナフチルオキシ基等のアリールオキシ基、N,N−ジメチルアミノ基、N−エチル−N−フェニルアミノ基、N,N−ジフェニルアミノ基等のジ置換アミノ基、アセチル基、ベンゾイル基等のアシル基、スルホン酸基、カルバモイル基、スルファモイル基、ピリジル基、トリアジニル基、ベンゾチアゾリル基等のヘテロ環基、ニトロ基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子が挙げられる。
前記一般式(1)中のR3乃至R7の好ましい置換基の組み合わせとしては、水への溶解性が低く且つ合成容易であることから、いずれか1つがCOOR8基又はCONR910基であり、残りの4つが水素原子である場合である。
また、R8及びR9は前記に列挙した置換基から、R10は前記に列挙した置換基及び水素原子から任意に選択できるが、好ましいのは有機溶媒への溶解性が向上し、水への溶解性が低下するため、R8乃至R10がアルキル基、及びアラルキル基の場合であり、更にR8乃至R10の合計炭素原子数が8以上である場合がより好ましい。
前記一般式(1)で表される分子構造は、下記スキームに示されるように、一般式(3)等の構造の互変異性体が存在するが、これらの互変異性体についても本発明の権利範囲内である。
Figure 0005546155
[一般式(3)中のR1乃至R7は前記一般式(1)のR1乃至R7の場合と同意義を有する。]
本発明にかかる一般式(1)で表される色素化合物は、公知の方法に従って合成することができる。以下に合成スキームの一例を示す。
Figure 0005546155
[一般式(6)乃至(8)中のR1乃至R7は、前記一般式(1)中のR1乃至R7の場合と同意義を有する。R11及びR12は水素原子、アルキル基、アリール基、アラルキル基を表す。]
本発明で用いられる一般式(4)及び一般式(5)で表される活性メチレン化合物は多種市販されており容易に入手可能である。具体的には、特に限定されるものではないが、例えば、オキサル酢酸、オキサル酢酸ジメチル、オキサル酢酸ジエチル、オキサル酢酸ジn−プロピル、オキサル酢酸ジイソプロピル、オキサル酢酸ジn−ブチル、オキサル酢酸ジイソブチル、オキサル酢酸ジsec−ブチル、オキサル酢酸ジtert−ブチル、シアノ酢酸、シアノ酢酸メチル、シアノ酢酸エチル、シアノ酢酸n−プロピル基、シアノ酢酸イソプロピル、シアノ酢酸n−ブチル、シアノ酢酸イソブチル、シアノ酢酸sec−ブチル、シアノ酢酸tert−ブチルなどが挙げられる。
まず、式(4)又は(5)とヒドラジン誘導体(6)で表される化合物を反応させてピラゾロン誘導体(7)を製造する環化工程について説明する。製造方法は、以下に挙げる公知の製造方法により合成可能である(例えば、Journal of Medicinal Chemistry, Vol.44, No.22, pp.3730−3745 (2001).)。
本発明で用いられるヒドラジン誘導体(6)は多種市販されており容易に入手可能である。また、公知の方法(例えば、実験化学講座14.有機化合物の合成と反応[III]、1573−1584頁)によって容易に合成することができる。具体的には、特に限定されるものではないが、例えば、ヒドラジン、メチルヒドラジン、エチルヒドラジン、n−プロピルヒドラジン、イソプロピルヒドラジン、n−ブチルヒドラジン、イソブチルヒドラジン、sec−ブチルヒドラジン、tert−ブチルヒドラジン、シクロプロピルヒドラジン、シクロブチルヒドラジン、シクロペンチルヒドラジン、フェニルヒドラジン、フェネチルヒドラジン、ナフチルヒドラジン、ベンジルヒドラジン等が挙げられる。
本工程は無溶媒で行うことも可能であるが、溶媒の存在下で行うことが好ましい。溶媒としては、反応を阻害しないものであれば特に制限されるものではないが、例えば、水、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル等のエステル類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルイミダゾリジノン等のアミド類、アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル類、塩酸、ギ酸、酢酸、プロピオン酸等の酸類が挙げられる。また、2種以上の溶媒を混合して用いることができ、混合使用の際の混合比は任意に定めることができる。上記反応溶媒の使用量は、ヒドラジン誘導体(6)に対し、0.1乃至1000質量倍の範囲で用いられ、好ましくは0.5乃至500質量倍、より好ましくは1.0乃至150質量倍である。
本工程の反応温度は、−80乃至250℃の範囲で行われ、好ましくは−50乃至200℃、より好ましくは−20乃至150℃である。通常反応は24時間以内に完結する。
本工程では、必要に応じて酸又は塩基の添加を行うと反応が速やかに進行する。用いる酸は反応に関与しないものであれば制限されない。例えば、塩酸、硫酸、リン酸等の無機酸、p−トルエンスルホン酸、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、トリフルオロ酢酸等の有機酸、アンバーライト(ローム・アンド・ハース株式会社)、アンバーリスト(ローム・アンド・ハース株式会社)等の強酸性イオン交換樹脂、ギ酸アンモニウム、酢酸アンモニウム等の無機酸塩等が挙げられる。好ましくは塩酸、硫酸、酢酸の場合であり、より好ましくは酢酸の場合である。酸の使用量は、ヒドラジン誘導体(6)1モルに対し、0.1乃至50倍モル、好ましくは1乃至30倍モル、より好ましくは2乃至10モルである。
本工程で用いる塩基としては、具体的には、カリウムtert−ブトキシド、ナトリウムtert−ブトキシド、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド等の金属アルコキシド、ピペリジン、ピリジン、2−メチルピリジン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、イソプロピルエチルアミン、酢酸カリウム、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデカ−7−エン等の有機酸、n−ブチルリチウム、tert−マグネシウムクロリド等の有機塩基、水素化ホウ素ナトリウム、金属ナトリウム、水素化ナトリウム、炭酸ナトリウム等の無機塩基等が用いられる。好ましくは、カリウムtert−ブトキシド、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、ピペリジンであり、より好ましくはナトリウムメトキシド、ピペリジンが挙げられる。上記塩基の使用量は、ヒドラジン誘導体(6)1モルに対し、1乃至15倍モル、好ましくは1.1乃至8倍モル、より好ましくは1.2乃至4倍モルである。
反応終了後、水で希釈するかあるいは塩酸等による酸析を行うことによってピラゾロン誘導体(7)を得ることができる。本発明で用いるピラゾロン誘導体(7)の好ましい具体例を示すが、下記の例に限定されるものではない。
Figure 0005546155
本発明で用いられるピラゾロン誘導体(7)は多種市販されており、容易に入手可能で、その使用は限定されない。
次に、色素化工程について説明する。色素化工程は公知の方法により行うことができる。即ち、ピラゾロン誘導体(7)とアミン誘導体(8)から誘導されるジアゾ成分とをカップリングさせて、色素化合物(1)を得る。具体的なカップリング方法としては、例えば、下記に示す方法が挙げられる。まず、メタノール溶媒中、氷冷下、アミン誘導体(8)を塩酸又は硫酸等の無機酸の存在下、亜硝酸ナトリウム等の亜硝酸塩とを反応させて、対応するジアゾニウム塩に変換する。更に、このジアゾニウム塩をピラゾロン誘導体(7)とカップリングさせて色素化合物(1)を製造する。
得られたピラゾロン誘導体(7)及び色素化合物(1)は、通常の有機化合物の単離・精製方法を用いることができる。例えば、反応液を塩酸等で酸性にして、酸析することによって固体をろ過し、濾別した固体を溶剤で抽出した後、水酸化ナトリウム水溶液等で中和し、溶媒を濃縮すれば、粗成物が得られる。更に、粗成物をクロロホルム、ヘプタン等を用いた再結晶、シリカゲルを用いたカラム精製等により精製する。これらの方法は、単独又は2つ以上組み合わせて精製を行うことにより高純度で得ることが可能である。
上記の製造方法によって、前記一般式(1)で表される色素化合物を合成することができる。以下に、本発明の色素化合物の具体例(D−1)乃至(D−36)を表1及び表2に示すが、下記の例に限定されるものではない。
Figure 0005546155
Figure 0005546155
Figure 0005546155
なお、表1及び表2において「Ph」はフェニル基を「Bn」はベンジル基を「Me」はメチル基を「Ac」はアセチル基を意味する。また、「*」印は一般式(1)中のR1乃至R7との結合位置を意味する。
[顔料分散剤、組成物、分散体]
本発明の色素化合物は、有機溶剤、特に非極性溶媒への溶解性が高く、アゾ顔料に対する親和性が高いことから、顔料分散剤として用いることができる。本発明の顔料分散剤は塗料、インキ、電子写真トナー、樹脂成形品の製品の製造工程で好適に用いられ、顔料の分散性を向上させることができる。なお、本発明の色素化合物は顔料分散剤に使用されるだけでなく、インクジェットインクや感熱転写記録用シート用の着色剤に利用することもでき、光記録用色素やカラーフィルター用色素といった電子材料にも適用することができる。
本発明の色素化合物は顔料と組み合わせて顔料組成物として用いることができる。調製方法は顔料粉末と本発明の色素化合物を粉末のまま単に混合しても目的とする効果が得られる。また、ニーダー、2本ロールミル、3本ロールミル、アトライター、ビーズミル、各種粉砕機により機械的に混合するか、顔料の水又は有機溶剤によるスラリーに本発明の色素化合物を含む溶液を添加し、顔料表面に色素化合物を吸着させるか、酸・アルカリ等の高い溶解度をもつ溶媒に顔料と本発明の色素化合物を溶解させ貧溶媒により再沈殿等をさせる方法を用いることもできる。本発明の色素化合物は顔料製造の際に予め添加しておいてもよい。上記色素化合物は単独で用いても良く、2種以上を混合してもよい。
本発明に使用できる顔料としては、公知のモノアゾ系顔料、ジスアゾ系顔料あるいはポリアゾ系顔料を用いることができる。その中でも、好ましいものとしては、C.I.Pigment Yellow 74、C.I.Pigment Yellow 93、C.I.PigmentYellow 128、C.I.Pigment Yellow 155、C.I.Pigment Yellow 180が挙げられる。中でも下記式(2)で表されるC.I.Pigment Yellow 155は、本発明の一般式(1)で表される色素化合物による分散効果が高いことからより好ましい。上記顔料は単独で用いても良く、2種以上を混合してもよい。更にこれらは粗製顔料であっても良く、本発明の顔料分散剤の効果を著しく阻害するものでなければ調製された顔料であってもよい。
Figure 0005546155
本発明の上記色素化合物を顔料分散剤として少なくとも1種含有する顔料組成物における顔料と顔料分散剤との質量組成比は、100:0.5乃至100:10であることが好ましい。更に好ましくは100:1乃至100:5である場合である。顔料分散剤の量が少な過ぎると目的とする分散効果が小さく、多過ぎると分散効果は得られるが顔料分散剤の色の寄与が大きくなり鮮明性が低下するなどの問題が生じてくる。
本発明の顔料組成物は更に助剤を添加してもよい。具体的には、例えば、表面活性剤、顔料及び非顔料分散剤、充填剤、標準化剤(standardizers)、樹脂、ワックス、消泡剤、静電防止剤、防塵剤、増量剤、濃淡着色剤(shading colorants)、保存剤、乾燥抑制剤、レオロジー制御添加剤、湿潤剤、酸化防止剤、UV吸収剤、光安定化剤、もしくはこれらの組み合わせである。
本発明の色素化合物は顔料と分散媒として有機溶剤に分散させた顔料分散体の形態でも使用可能である。
本発明の顔料分散体の分散媒に使用し得る有機溶剤としては顔料組成物の目的用途に応じて決められるものであり、特に限定されない。具体的にはメチルアルコール、エチルアルコール、変成エチルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−アミルアルコール、3−ペンタノール、オクチルアルコール、ベンジルアルコール、シクロヘキサノール、メチルセロソルブ、セロソルブ、ジエチレングリコール、モノブチルエーテル、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピオン酸エチル、セロソルブアセテート、ヘキサン、オクタン、石油エーテル、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、四塩化炭素、トリクロロエチレン、テトラブロムエタン、エチルエーテル、ジメチルグリコール、トリオキサン、テトラヒドロフラン、メチラール、ジエチルアセタール、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、ニトロプロペン、ニトロベンゼン、ジメチルアミン、モノエタノールアミン、ピリジン、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミドが挙げられる。
また、本発明で用いる分散媒は、重合性単量体である有機溶剤が好ましい。重合性単量体は、付加重合系あるいは縮合重合系単量体である。好ましくは、付加重合系単量体である。具体的にはスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−メトキシスチレン、p−フェニルスチレン、p−クロルスチレン、3,4ジクロルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、臭化ビニル、ヨウ化ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ベンゾエ酸ビニル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸−n−オクチル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸−2−エチルヘキシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸‐n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸‐n−オクチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸‐2‐エチルヘキシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸−2−クロルエチル、アクリル酸フェニル、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル、ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、メチルイソプロペニルケトン、ビニルナフタリン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド等を挙げることができる。
顔料分散体には、更に樹脂を加えてもよい。具体的には、ポリスチレン、スチレン共重合体、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、アクリレート共重合体、メタクリレート共重合体、ポリエステル、ポリビニルエーテル、ポリビニルメチルエーテル、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール等が挙げられる。その他ポリウレタンやポリペプチド等が挙げられる。また、これらの分散媒を2種以上混合して用いることができる。
本発明の顔料分散体は例えば、以下のようにして得られる。分散媒中に顔料分散剤、及び必要に応じて樹脂を溶かし込み、攪拌しながら顔料粉末を除々に加え十分に分散媒になじませる。更にボールミル、ペイントシェーカー、ディゾルバー、アトライター、サンドミル、ハイスピードミル等の分散機により機械的せん断力を加えることで顔料の粒子表面に顔料分散剤を吸着させ、顔料を安定に均一な微粒子状に微分散することができる。
本発明の顔料分散体は、例えば電子写真トナーの製造に用いることができる。トナー粒子の製造方法としては、従来使用されている方法は全て使用することができる。具体的には、粉砕法、懸濁重合法、乳化重合法などが挙げられる。
以上説明したようにして、本発明の色素化合物はアゾ顔料の分散剤としてとりわけ好適に用いられる。また、本発明の色素化合物は、顔料分散剤に使用されるだけでなく、インクジェットインクや感熱転写記録用シート用の着色剤、光記録用色素やカラーフィルター用色素といった電子材料にも適用することができる。
以下、実施例及び比較例を挙げて、本発明について更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。なお、文中「部」及び「%」とあるのは特に断りのない限り質量基準である。
[実施例1]
<色素化合物(D−1)の合成>
下記のようにして、前記一般式(1)において下記式(D−1)で表される色素化合物を得た。
Figure 0005546155
o−ニトロ安息香酸10部にクロロホルム100部を加え、窒素雰囲気下、塩化チオニル29部を滴下し、滴下終了後、60℃で1時間反応させた。得られた反応混合物を10℃以下に氷冷し、トリエチルアミン9部及びジ(2−エチルヘキシル)アミン15部を滴下し、滴下終了後、80℃で2時間反応させた。反応終了後、クロロホルムで抽出し、溶液を濃縮することにより中間体である下記式(C−1)で表される化合物18部を得た。
Figure 0005546155
上記式(C−1)で表される化合物10部にエタノール50部を加え、更に20%水硫化ナトリウム水溶液18部を加え75℃で1時間反応させた。反応終了後、クロロホルムで抽出し、溶液を濃縮することにより中間体である下記式(C−2)で表される化合物7.4部を得た。
Figure 0005546155
上記式(C−2)で表される化合物5.0部に、濃塩酸3.96部、メタノール50部を加えて10℃以下に氷冷した。この溶液に、亜硝酸ソーダ0.977部を水10.0部に溶解させたもの添加して同温度で1時間反応させた。次いでスルファミン酸0.186部を加えて更に30分間撹拌した(ジアゾニウム塩溶液)。
Figure 0005546155
次に、上記式(C−3)で表される化合物2.37部(アルドリッチ社製)に、メタノール100部を加えて溶解させた後、飽和炭酸ソーダを6.75部加えて氷冷下10℃以下に保持した前記ジアゾニウム塩溶液に加えた。その後、10℃以下で2時間反応させた。反応終了後、メタノールを留去してクロロホルム抽出、水及び飽和食塩水で洗浄し濃縮する。クロロホルム−n−ヘプタンで再沈殿することで上記式(D−1)で表される色素化合物5.65部を得た。
得られた上記式(D−1)の色素化合物に対して、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)(LC−20A、(株)島津製作所製)を用いて純度検定を行った。更に、飛行時間型質量分析計(TOF−MS)(LC/MSD TOF、Agilent Technologies社製)及び核磁気共鳴分光分析装置(NMR)(ECA−400、日本電子(株)製)を用いて構造決定を行った。色素化合物(D−1)のNMR分析によるNMRスペクトルについては図1に示した。なお、上記式(D−1)の色素化合物の質量分析を行う際、色素化合物をイオン化させる方法としては、エレクトロスプレーイオン化法(ESI)を用いた。
[色素化合物D−1についての分析結果]
HPLCの結果:純度=99.6面積%、保持時間28.5分(0.1mM TFA溶液−MeOH)
ESI−TOF−MSの結果
m/z=598.338[M+H]+
1H NMR(400MHz、DMSO、室温)の結果
δ[ppm]=18.25(1H,s),8.03(2H,d),7.74(1H,d),7.51−7.43(3H,m),7.26−7.18(3H,m),4.09(1H,dd),3.17(1H,dd),2.86(2H,dd),1.81(1H,s),1.39−0.40(29H,m)
<色素化合物(D−15)の合成>
下記のようにして、前記一般式(1)において下記式(D−15)で表される色素化合物を得た。
Figure 0005546155
前記式(C−2)で表される化合物9.9部に、濃塩酸7.81部、メタノール50部を加えて10℃以下に氷冷した。この溶液に、亜硝酸ソーダ1.93部を水15.0部に溶解させたもの添加して同温度で1時間反応させた。次いでスルファミン酸4.51部を加えて更に30分間撹拌した(ジアゾニウム塩溶液)。
Figure 0005546155
次に、上記式(C−4)で表される化合物(東京化成工業(株)製)4.51部に、メタノール150部を加えて溶解させた後、飽和炭酸ソーダを13.31部加えて氷冷下10℃以下に保持した前記ジアゾニウム塩溶液に加えた。その後、10℃以下で2時間反応させた。反応終了後、メタノールを留去してクロロホルム抽出、水及び飽和食塩水で洗浄し濃縮する。カラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:n−ヘプタン=1:4)で精製することで上記式(D−15)で表される色素化合物5.5部を得た。
[色素化合物D−15についての分析結果]
HPLCの結果:純度=99.4面積%、保持時間30.4分(0.1mM TFA溶液−MeOH)
ESI−TOF−MSの結果
m/z=545.357[M+H]+
1H NMR(400MHz、DMSO、室温)の結果
δ[ppm]=13.19(1H,s),8.01(1H,d),7.89(2H,d),7.54(1H,t),7.41(2H,t),7.31(1H,d),7.23(1H,t),7.14(1H,t),6.50(2H,s),3.80−2.80(4H,m),1.80(1H,s),1.55−0.40(29H,m)
<色素化合物(D−30)の合成>
下記のようにして、前記一般式(1)において下記式(D−30)で表される色素化合物を得た。
Figure 0005546155
ナトリウムエトキシド128.7部にエタノール160部を加え、窒素雰囲気下、シアノ酢酸エチル14部を加え、次いでヒドラジン1水和物10.21部滴下し、100℃で5時間反応させた。反応終了後、反応液を濃縮し、再結晶法により析出した固体を濾別して下記式(C−5)で表される化合物13部を得た。
Figure 0005546155
前記式(C−2)で表される化合物5.0部に、濃塩酸4.12部、メタノール50部を加えて10℃以下に氷冷した。この溶液に、亜硝酸ソーダ0.99部を水10.0部に溶解させたもの添加して同温度で1時間反応させた。次いでスルファミン酸0.19部を加えて更に30分間撹拌した(ジアゾニウム塩溶液)。
次に、先に得た式(C−5)で表される化合物1.33部に、メタノール100部を加えて溶解させた後、飽和炭酸ソーダを6.99部加えて氷冷下10℃以下に保持した前記ジアゾニウム塩溶液に加えた。その後、10℃以下で2時間反応させた。反応終了後、メタノールを留去してクロロホルム抽出、水及び飽和食塩水で洗浄し濃縮する。n−ヘプタンで再結晶することで上記式(D−30)で表される色素化合物3.56部を得た。
[色素化合物D−30についての分析結果]
HPLCの結果:純度=97.1面積%、保持時間27.8分(0.1mM TFA溶液−MeOH)
ESI−TOF−MSの結果
m/z=469.331[M−H]-
1H NMR(400MHz、DMSO、室温)の結果
δ[ppm]=10.49(1H,s),7.89(1H,d),7.43(1H,t),7.23(1H,d),7.15(1H,dd),5.85(2H,s),3.35(2H,s),3.15(2H,s),1.76(1H,s),1.60−0.40(29H,m)
<その他の合成例>
前記合成例に記載した方法に準じて、前記表1及び2に記載した色素化合物(D−2)乃至(D−14)、(D−16)乃至(D−29)、(D−31)乃至(D−36)を得た。これらの色素化合物の構造は、前記した色素化合物(D−1)、(D−15)及び(D−30)と同様にして、HPLC分析、質量分析及びNMR分析で確認した。
[実施例2]
本発明で用いた色素化合物(D−1)乃至(D−36)を以下の方法で評価した。尚、色素化合物(D−2)、(D−3)、(D−7)、(D−9)、(D−11)、(D−12)、(D−16)、(D−30)〜(D−36)は、参考例として記載するものである。
<色素化合物の溶解性評価>
温度25℃での色素化合物のスチレンモノマーへの溶解度を測定した。溶解性の評価を以下のように行った。
A:スチレンモノマーへの溶解度が1質量%以上
B:スチレンモノマーへの溶解度が0.1質量%以上、1質量%未満
C:スチレンモノマーへの溶解度が0.1質量%未満
スチレンモノマーへの溶解度が0.1質量%以上なら十分な溶解性であると判断した。
<色素化合物の水移行性>
温度25℃での色素化合物のスチレン溶液を水に接触させたときの水層の着色を目視にて評価した。水移行性の評価を以下のように行った。
A:水層が無色
B:水層が僅かに着色
C:水層が明らかに着色
水層の明らかな着色が見られなければ水移行性は問題ないと判断した。
色素化合物の種類、色素化合物の溶解性及び水移行性の評価結果を表3に示した。
[比較例1]
実施例2で使用した色素化合物を、上記特許文献2に開示されている下記比較用色素化合物(E−1)に変更した以外は同様の評価を行った。溶解性及び水移行性の評価結果を表3に示した。
Figure 0005546155
[比較例2]
実施例2で使用した色素化合物(D−1)を、比較用顔料分散剤(E−2)「Solsperse24000SC(登録商標)(Lubrizol社製)」に変更した以外は同様の評価を行った。溶解性及び水移行性の評価結果を表3に示した。
Figure 0005546155
[実施例3]
<顔料分散体の調製例1>
下記材料をガラス瓶中で混合し、空冷しながらペイントシェーカーで3時間振とうした。その後、ナイロンメッシュによりガラスビーズを除去し顔料分散体(P−1)を得た。
・下記式(2)アゾ顔料 18.0部
Figure 0005546155
・スチレンモノマー 180部
・色素化合物(D−1) 0.18部
・ガラスビーズ(直径1mm) 130部
<顔料分散体の調製例2>
顔料分散体の調製例1で使用した色素化合物(D−1)を、前記色素化合物(D−2)乃至(D−36)に変更した以外は同様の操作を行って、それぞれ顔料分散体(P−2)乃至(P−36)を得た。
<顔料分散体の調製例3>
顔料分散体の調製例1で使用した色素化合物(D−1)を0.08部に変更した以外は同様の操作を行って、顔料分散体(P−37)を得た。
<顔料分散体の調製例4>
顔料分散体の調製例1で使用した色素化合物(D−1)を2.0部に変更した以外は同様の操作を行って、顔料分散体(P−38)を得た。
<顔料分散体の調製例5>
顔料分散体の調製例1で使用した色素化合物(D−1)を加えないこと以外は同様の操作を行って、比較用顔料分散体(Q−1)を得た。
<顔料分散体の調製例6>
顔料分散体の調製例1で使用した色素化合物(D−1)を、特開2007−262382号公報に開示されている上記比較化合物(E−1)に変更した以外は同様の操作を行って比較用顔料分散体(Q−2)を得た。
<顔料分散体の調製例7>
顔料分散体の調製例1で使用した色素化合物(D−1)を、Solsperse24000SC(登録商標)(Lubrizol社製)に変更した以外は同様の操作を行って比較用顔料分散体(Q−3)を得た。
[実施例4]
本発明で用いた顔料分散体(P−1)乃至(P−38)を以下の方法で評価した。
<顔料分散体の色調評価>
顔料分散体をバーコート法(Bar No.10)によりアート紙に塗布し一昼夜風乾してSpectroLino(Gretag Machbeth社製)にて測色した。色調の評価を以下のように行った。
A:OD(Y)が1.6以上
B:OD(Y)が1.5以上、1.6未満
C:OD(Y)が1.5未満
OD(Y)の値が1.5以上であれば良好な色調であると判断した。
顔料分散体の色調の評価結果を表4に示した。
Figure 0005546155
表3及び4より、本発明の色素化合物は非極性有機溶媒への溶解性が高く、水移行性が低く、良好な色調のアゾ顔料分散体を与える。このことから、アゾ顔料分散剤用色素化合物として有用であることが確認された。
[実施例5]
<イエロートナー粒子の製造>
高速撹拌装置TK−ホモミキサー(特殊機化工業社製)を備えた2l用四つ口フラスコ中にイオン交換水710部と0.1mol/l−Na3PO4水溶液450部を添加し回転数を12000rpmに調整し、60℃に加温した。ここに1.0mol/l−CaCl2水溶液68部を徐々に添加し、微小な難水溶性分散安定剤としてCa3(PO42を含む水系分散媒体を調製した。
・顔料分散液(D−1) 132部
・スチレン単量体 46部
・n−ブチルアクリレート単量体 34部
・極性樹脂 10部
[プロピレンオキサイド変性ビスフェノールAとイソフタル酸との重縮合物(Tg=65℃、Mw=10000、Mn=6000)]
・エステルワックス 25部
(DSC測定における最大吸熱ピークのピーク温度=70℃、Mn=704)
・サリチル酸アルミニウム化合物 2部
(オリエント化学工業社製 ボントロンE−88)
・ジビニルベンゼン単量体 0.1部
上記処方を60℃に加温し、TK−ホモミキサーを用いて5000rpmにて均一に溶解・分散した。これに重合開始剤である2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)10部を溶解し、重合性単量体組成物を調製した。前記水系分散媒体中にこの重合性単量体組成物を投入し、回転数12000rpmを維持しつつ15分間造粒した。その後高速撹拌器からプロペラ撹拌羽根に撹拌器を変え、内温を60℃で重合を5時間継続させた後、内温を80℃に昇温させ8時間重合を継続させた。重合反応終了後、80℃、減圧下で残存単量体を留去した後、30℃まで冷却し、重合体微粒子分散液を得た。
次に、重合体微粒子分散液を洗浄容器に移し、撹拌しながら、希塩酸を添加し、pH1.5で2時間撹拌し、Ca3(PO42を含むリン酸とカルシウムの化合物を溶解させた後に、ろ過器で固液分離し、重合体微粒子を得た。これを水中に投入して撹拌し、再び分散液とした後に、ろ過器で固液分離した。重合体微粒子の水への再分散と固液分離とをCa3(PO42を含むリン酸とカルシウムの化合物が十分に除去されるまで繰り返し行った。その後に、最終的に固液分離した重合体微粒子を、乾燥機で十分に乾燥してイエロートナー粒子を得た。このとき洗浄溶液に着色は見られなかった。
上記結果より、本発明の顔料分散体はトナー用着色剤として好適であることが示唆された。
本発明の活用例としては、本発明の色素化合物は種々の用途に適用可能である。即ち、顔料分散剤に使用されるだけでなく、インクジェットインクや感熱転写記録用シート用の着色剤に利用することもでき、光記録用色素やカラーフィルター用色素といった電子材料にも適用することができる。

Claims (7)

  1. 下記一般式(1)で表されることを特徴とする色素化合物。
    Figure 0005546155
    [一般式(1)中、
    1は、フェニル基を表す。
    2は、COOM基(Mは水素原子もしくはカウンターカチオンを表す)又はアミノ基を表す。
    3乃至R7はそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、トリフルオロメチル基、ニトロ基、アセチルアミノ基、ヒドロキシ基、スルファモイル基、アルキル基、アルコキシ基、COOR8基又はCONR910基(R8乃至R 10 はそれぞれ独立して、アルキル基又はアラルキル基を表し、合計炭素原子数が8以上である。)を表す。R3乃至R7の少なくとも一つはCOOR8基又はCONR910基である。]
  2. 下記一般式(1)で表わされる色素化合物を少なくとも1種含有することを特徴とする顔料分散剤。
    Figure 0005546155
    [一般式(1)中、
    1 は、水素原子、アルキル基、アリール基又はアラルキル基を表す。
    2 は、COOM基(Mは水素原子もしくはカウンターカチオンを表す)又はアミノ基を表す。
    3 乃至R 7 はそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、トリフルオロメチル基、ニトロ基、アセチルアミノ基、ヒドロキシ基、スルファモイル基、アルキル基、アルコキシ基、COOR 8 基又はCONR 9 10 基(R 8 乃至R 9 はそれぞれ独立して、アルキル基、アリール基又はアラルキル基を表す。R 10 は、水素原子、アルキル基、アリール基又はアラルキル基を表す。)を表す。R 3 乃至R 7 の少なくとも一つはCOOR 8 基又はCONR 9 10 基である。]
  3. 請求項に記載の顔料分散剤と、該顔料分散剤により分散されたアゾ顔料を含有することを特徴とする顔料組成物。
  4. 該アゾ顔料と該顔料分散剤との質量組成比が100:0.5乃至100:10であることを特徴とする請求項に記載の顔料組成物。
  5. 該アゾ顔料が、下記式(2)で表されることを特徴とする請求項又はに記載の顔料組成物。
    Figure 0005546155
  6. 請求項乃至のいずれか1項に記載の顔料組成物と有機溶媒を含むことを特徴とする顔料分散体。
  7. 該有機溶媒がスチレンモノマーであることを特徴とする請求項に記載の顔料分散体。
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