JP5545021B2 - 温度分布検出装置、人体検出装置及び乗物用シート - Google Patents

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本発明は、温度分布検出装置、当該温度分布検出装置を備えた人体検出装置、当該人体検出装置を備えた乗物用シートに関する。
近年、着座している乗員の有無の検出が可能な乗物用シートの要求が高まっている。
例えば自動車では、助手席の乗員の有無を検出し、助手席に乗員が居る場合、助手席の乗員にシートベルトの着用を促す出力が行われるものがある。
また特許文献1に記載されている従来技術では、導電性繊維の周囲を非導電性材料で被覆した縦糸と横糸を含む織物にてセンサ本体を構成し、縦糸と横糸の交差部の静電容量の変化(間隔の変化)を検出可能であり、分解能良く荷重分布(圧力分布)を測定できるシート状センサ装置が開示されている。
特開2006−234716号公報
特許文献1に記載された従来技術では、荷重に応じて、交差部における縦糸の導電性繊維と横糸の導電性繊維との間隔が変化するので、この間隔の変化を静電容量の変化として検出している。しかし、このシート状センサ装置を、例えば車両用シートの座面に適用した場合、座面にはクッションパッド(緩衝材)があり、荷重に対して緩衝材が変形して荷重を吸収してしまい、シート状センサ装置に適切な荷重がかからず、期待する検出性能が得られない可能性がある。また、車両用シートの座面は、ホールド性を高める等の目的にて、部分的に緩衝材の硬度を変更している場合もあり、適切に荷重を検出できない可能性がある。
本発明は、このような点に鑑みて創案されたものであり、荷重(圧力)とは異なる物理量によって人体の有無を検出することが可能であり、且つよりシンプルな構成にて、より高い検出性能を得ることができる温度分布検出装置、及び当該温度分布検出装置を備えた人体検出装置、及び当該人体検出装置を備えた乗物用シートを提供することを課題とする。
上記課題を解決するため、本発明に係る温度分布検出装置は次の手段をとる。
まず、本発明の第1の発明は、縦糸と横糸を織り込むことが可能な基材に対して、熱電対を構成することが可能な異なる2種類の金属糸である第1金属糸と第2金属糸がそれぞれ複数本用いられ、複数本の前記第1金属糸のそれぞれが前記縦糸として第1所定間隔で前記基材に織り込まれ、複数本の前記第2金属糸のそれぞれが前記横糸として第2所定間隔で前記基材に織り込まれている熱電対モジュールと、複数本の前記第1金属糸である縦糸の中から指定された1本を選択可能な縦糸選択手段と、複数本の前記第2金属糸である横糸の中から指定された1本を選択可能な横糸選択手段と、温度検出手段と、を備え、
それぞれの前記第1金属糸とそれぞれの前記第2金属糸との交点となるそれぞれの格子点は、当該格子点を形成する前記第1金属糸と前記第2金属糸とが電気的に接することで、前記熱電対モジュールにおけるそれぞれの熱電対として構成されており、前記温度検出手段は、前記縦糸選択手段を用いて1本の前記第1金属糸を選択するとともに前記横糸選択手段を用いて1本の前記第2金属糸を選択することで、選択した前記第1金属糸と選択した前記第2金属糸との接点として特定した格子点である前記熱電対モジュールにおける1つの熱電対を特定し、当該特定した格子点である熱電対の位置の温度を検出する、温度分布検出装置である。
この第1の発明によれば、基材に対して第1金属糸である縦糸と第2金属糸である横糸を織り込むことで、複数の熱電対が形成された熱電対モジュールを容易に構成することができる。
そして温度の測定を所望する位置の格子点に対応する第1金属糸と第2金属糸とを選定することで、所望する位置の格子点の温度を容易に測定することができる。
また第1金属糸の間隔と本数、及び第2金属糸の間隔と本数を変更することで、容易に分布範囲の分解能を向上させることができる。
また、第1金属糸の材質と第2金属糸の材質を適切に選定することで、容易に検出温度の分解能を向上させることができる。
次に、本発明の第2の発明は、上記第1の発明に係る温度分布検出装置を備えた人体検出装置であって、前記熱電対モジュールが、人体が接触している状態と人体が接触していない状態とが存在する人体検出所望個所に取り付けられており、前記温度検出手段にて前記熱電対モジュールにおける予め設定された位置の前記格子点の温度を検出し、検出した前記格子点の位置と温度に基づいて、前記人体検出所望個所に接触している人体の有無を推定する人体検出装置である。
この第2の発明によれば、任意の格子点の位置と温度に基づいて、熱電対モジュールの範囲内において温度分布を知ることができるので、適切に人体の有無を検出することができる。
次に、本発明の第3の発明は、上記第第2の発明の人体検出装置を備えた乗物用シートであって、前記人体検出所望個所は、前記乗物用シートにおいて乗員が腰を下ろす座面と、当該乗員が背中を凭せ掛ける背面と、の少なくとも一方であり、前記温度検出手段にて前記熱電対モジュールにおける予め設定された位置の前記格子点の温度を検出し、検出した前記格子点の位置と温度に基づいて、前記乗物用シートに着座している乗員の有無を推定する乗物用シートである。
この第3の発明によれば、乗物用シート上の適切な領域(この場合、座面または背面の少なくとも一方)において、温度分布を知ることができるので、適切に乗員の有無を検出することができる。
本発明の温度分布検出装置Sの熱電対モジュール50をシートクッション部40に適用した乗物用シート10の一実施の形態を説明する斜視図である。 温度分布検出装置Sの構成を説明する図である。 温度分布検出装置Sを用いて乗員の有無を推定する処理手順の例を説明するフローチャートである。
以下に本発明を実施するための形態を図面を用いて説明する。図1は、本発明の温度分布検出装置Sを適用した、乗物用シート10の一実施の形態を説明する斜視図の例を示している。
なお、本発明の温度分布検出装置Sは、種々の用途に適用することが可能であるが、本実施の形態の説明では、自動車に備えられた乗物用シート10に適用して当該乗物用シート10への乗員の有無を推定する例を説明する。
●[乗物用シート10への温度分布検出装置の取り付け位置(図1)]
図1に示すように、乗物用シート10は、自動車のフロア面に固定されて、乗員が腰を下ろすシートクッション部40、乗員が背中を凭せ掛けるシートバック部30、乗員が頭を凭せ掛けるヘッドレスト部20等を有している。
本発明の温度分布検出装置Sは、所定領域内(熱電対モジュール50上)において任意の個所の温度を検出することが可能であるので、乗員を適切に検出するために、シートクッション部40における座面に温度分布検出装置Sの熱電対モジュール50を配置した。なお、乗員を検知するためには、座面、背面(シートバック部30における乗員が触れる部分)の少なくとも一方に熱電対モジュール50を配置すればよい(この場合、座面、背面が人体検出所望個所に相当する)。
●[温度分布検出装置Sの全体構成(図2)]
次に図2を用いて温度分布検出装置Sの全体構成について説明する。
本発明の温度分布検出装置Sは、熱電対モジュール50、縦糸選択手段70、横糸選択手段60、温度検出手段80等にて構成されている。なお、図2において出力装置90は、乗員有りと推定した際のシートベルトの着用を促すランプ等である。
熱電対モジュール50は、縦糸0〜7と横糸a〜hを織り込むことが可能な基材(例えば布や皮等の表皮であり、座面の表面に利用可能な材質のシート状部材)に対して、縦糸に設定した第1金属糸が第1所定間隔で織り込まれており、横糸に設定した第2金属糸が第2所定間隔で織り込まれている。なお、縦糸、横糸は、それぞれ一定間隔で織り込んでもよいし、所望する格子点の位置に応じて任意の間隔で織り込んでもよい。また図2の例では、8本の縦糸と8本の横糸を備えた熱電対モジュール50の例を示しているが、縦糸、横糸の本数は、これらに限定されるものではない。
第1金属糸と第2金属糸は、熱電対を構成することが可能な異なる2種類の金属糸であり、例えばクロメル、アルメル、コンスタンタン等、一般的な熱電対に用いる金属を利用することができる。
なお図2に示すように、縦糸0〜7(第1金属糸)及び横糸a〜h(第2金属糸)は、1本ずつ織り込まれており(縦糸0〜7のそれぞれ、横糸a〜hのそれぞれは1本ずつに分離されている)、隣り合う縦糸、隣り合う横糸は連続していない。
各縦糸と各横糸との交点である格子点T(m、n)のそれぞれは、第1金属糸と第2金属糸との交点(接点)であり、熱電対として構成される。すなわち、m行の横糸と、n列の縦糸にて、m×n個の各格子点T(m、n)が熱電対として構成された熱電対モジュールを形成することができる。
縦糸選択手段70は、スイッチS0〜S7を制御して、第1金属糸である複数本の縦糸0〜7の中から指定された1本の縦糸を選択して温度検出手段80に接続する。
横糸選択手段60は、スイッチSa〜Shを制御して、第2金属糸である複数本の横糸a〜hの中から指定された1本の横糸を選択して温度検出手段80に接続する。
なお、縦糸(または横糸)からスイッチを介して温度検出手段80までの経路には、別金属による熱起電力の発生を抑制するために、使用する金属と同じ金属のスイッチ及び延長線、または使用する金属とほぼ同じ熱起電力特性を持つ補償導線やスイッチ等を利用することが好ましい。
温度検出手段80は、信号処理回路81と制御手段82(CPU等)にて構成されている。
信号処理回路81には、縦糸選択手段70にて選択された1本の縦糸(第1金属糸)と、横糸選択手段60にて選択された1本の横糸(第2金属糸)が電気的に接続され、熱電対用の既存の信号処理回路を利用することができる。
制御手段82は、縦糸選択手段70及び横糸選択手段60に対して、接続する縦糸、及び接続する横糸を指定する信号を出力し、信号処理回路81からの信号に基づいて、温度を測定する。
例えば図2において格子点T(c、3)の位置の温度を測定する場合、制御手段82は、縦糸選択手段70に対してスイッチS3のみを短絡させる信号を出力し、横糸選択手段60に対してスイッチScのみを短絡させる信号を出力する。そして制御手段82は、信号処理回路81から入力された信号に基づいて温度を算出し、格子点T(c、3)の温度を測定することができる。
●[乗物用シート10の乗員の有無を推定する処理手順(図3)]
次に図3を用いて制御手段82にて格子点T(m、n)の温度を測定し、乗物用シート10の乗員の有無を推定する処理手順の例について説明する。
例えば一定時間毎に制御手段82は、図3に示す処理を開始する。
ステップS10では、制御手段82は、温度を測定するべき格子点T(m、n)である測定ポイントT(m、n)を決めて、当該T(m、n)に対応する縦糸を指定する信号を縦糸選択手段70に出力し、当該T(m、n)に対応する横糸を指定する信号を横糸選択手段60に出力する。そして、スイッチS0〜S7のいずれか1個とスイッチSa〜Shのいずれか1個をONにしてステップS20に進む。
ステップS20では、制御手段82は、信号処理回路81からの信号に基づいて、測定ポイントT(m、n)の温度を算出し、T(m、n)に対応させた記憶領域Temp(m、n)に、算出した温度データを記憶し、ステップS30に進む。
ステップS30では、温度を測定するべき測定ポイントを全て測定したか否かを判定する。なお、T(m、n)の全格子点を測定する必要はなく、測定するべきT(m、n)は予め設定されており、この設定された測定ポイントを全て測定したか否かを判定する。測定するべき測定ポイントを全て測定した場合(Yes)はステップS40に進み、まだ測定するべきポイントが残っている場合(No)はステップS10に戻り、次の測定ポイントの温度を測定し、対応する記憶領域Temp(m、n)に温度データを記憶する。
ステップS40に進んだ場合、制御手段82は、Temp(m、n)に記憶した温度データに基づいて、温度分布状態を求め、求めた温度分布状態に基づいて乗員の有無を推定し、ステップS50に進む。例えばTemp(m、n)に記憶されている温度データから、35℃以上の格子点が10個以上存在する場合に乗員有り、と推定し、そうでない場合は乗員無し、と推定する。
ステップS50では、乗員有りと推定した場合(Yes)はステップS60Aに進み、乗員無しと推定した場合(No)はステップS60Bに進む。
ステップS60Aに進んだ場合、出力装置90に対して乗員有りに対応する出力信号を出力する。またステップS60Bに進んだ場合は出力装置90に対して乗員無しに対応する出力信号を出力する。例えば乗員有りの場合は出力装置90にてシートベルトの着用を促すランプ等が点灯され、乗員無しの場合は当該ランプが消灯される。
以上、本実施の形態にて説明した乗物用シート10では、シート表面の各格子点の位置の温度(すなわち、温度分布)を、シンプルな構成の温度分布検出装置Sを用いて測定することができ、容易に構成、及び容易に測定することができる。
また、荷重(圧力)とは異なる物理量である温度を検出することで、シートの緩衝材の弾性変形にかかわらず、適切に乗員の有無を検出することができる。
また、温度分布の状態(分布の範囲や分布の位置等)から、乗員の体格や姿勢を推定することも可能であり、シートポジションの最適化等に利用することもできる。
また第1金属糸の間隔と本数、及び第2金属糸の間隔と本数を変更することで、容易に分布範囲の分解能(測定ポイントの数と間隔)を向上させることができる。
また、第1金属糸の材質と第2金属糸の材質を適切に選定することで、容易に検出温度の分解能(精度)を向上させることができる。
本発明の温度分布検出装置、人体検出装置、及び乗物用シートは、本実施の形態で説明した外観、構成、構造、処理手順等に限定されず、本発明の要旨を変更しない範囲で種々の変更、追加、削除が可能である。
本実施の形態にて説明した温度分布検出装置は、乗物用シートの乗員の有無の判定に限定されず、種々の用途に利用することが可能である。
例えばカーペットの表面に熱電対モジュールを配置し、当該カーペット上の「どの領域に人が座っているか(または寝ているか)」や、病院のベッドの表面に熱電対モジュールを配置し、当該ベッド上に患者が居るか否か、等の人体検出装置として適用することが可能である。この場合、カーペット表面、ベッド表面が、人体が接触している状態と人体が接触していない状態とが存在する人体検出所望個所に相当する。
更に、人体に限定されず、熱電対モジュール上に発熱体を接触させ、時間とともに温度分布を測定する必要がある測定等(例えば発火の可能性がある物体の監視等)にも利用することが可能であり、種々の用途に利用することができる。
また、以上(≧)、以下(≦)、より大きい(>)、未満(<)等は、等号を含んでも含まなくてもよい。
また、本実施の形態の説明に用いた数値は一例であり、この数値に限定されるものではない。
10 乗物用シート
50 熱電対モジュール
60 横糸選択手段
70 縦糸選択手段
80 温度検出手段
81 信号処理回路
82 制御手段
90 出力手段
0〜7 縦糸(第1金属糸)
a〜h 横糸(第2金属糸)
S 温度分布検出装置
S0〜S7、Sa〜Sh スイッチ
T(m、n) 格子点

Claims (3)

  1. 縦糸と横糸を織り込むことが可能な基材に対して、熱電対を構成することが可能な異なる2種類の金属糸である第1金属糸と第2金属糸がそれぞれ複数本用いられ、複数本の前記第1金属糸のそれぞれが前記縦糸として第1所定間隔で前記基材に織り込まれ、複数本の前記第2金属糸のそれぞれが前記横糸として第2所定間隔で前記基材に織り込まれている熱電対モジュールと、
    複数本の前記第1金属糸である縦糸の中から指定された1本を選択可能な縦糸選択手段と、
    複数本の前記第2金属糸である横糸の中から指定された1本を選択可能な横糸選択手段と、
    温度検出手段と、を備え、
    それぞれの前記第1金属糸とそれぞれの前記第2金属糸との交点となるそれぞれの格子点は、当該格子点を形成する前記第1金属糸と前記第2金属糸とが電気的に接することで、前記熱電対モジュールにおけるそれぞれの熱電対として構成されており、
    前記温度検出手段は、前記縦糸選択手段を用いて1本の前記第1金属糸を選択するとともに前記横糸選択手段を用いて1本の前記第2金属糸を選択することで、選択した前記第1金属糸と選択した前記第2金属糸との接点として特定した格子点である前記熱電対モジュールにおける1つの熱電対を特定し、当該特定した格子点である熱電対の位置の温度を検出する、
    温度分布検出装置。
  2. 請求項1に記載の温度分布検出装置を備えた人体検出装置であって、
    前記熱電対モジュールが、人体が接触している状態と人体が接触していない状態とが存在する人体検出所望個所に取り付けられており、
    前記温度検出手段にて前記熱電対モジュールにおける予め設定された位置の前記格子点の温度を検出し、検出した前記格子点の位置と温度に基づいて、前記人体検出所望個所に接触している人体の有無を推定する、
    人体検出装置。
  3. 請求項2に記載の人体検出装置を備えた乗物用シートであって、
    前記人体検出所望個所は、前記乗物用シートにおいて乗員が腰を下ろす座面と、当該乗員が背中を凭せ掛ける背面と、の少なくとも一方であり、
    前記温度検出手段にて前記熱電対モジュールにおける予め設定された位置の前記格子点の温度を検出し、検出した前記格子点の位置と温度に基づいて、前記乗物用シートに着座している乗員の有無を推定する、
    乗物用シート。
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