JP5542221B1 - 軸受にかかる垂直荷重および/または軸荷重の検出装置および検出方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 中心軸に対して垂直な、2以上の対向する転動体3,4の軌道31,41を有する軸受において、1の超音波探触子Aからの超音波Uaが、軸受の中心軸方向に配された少なくとも2つの転動体3,4の内の1の転動体3に向けて発信され、1の転動体3とこれが接する軸受の外輪1との境界から1次反射された後、1次反射波R1として中心軸に平行して走波し、対向する軌道41にある他の転動体4とこれが接する軸受の外輪1との境界または該対向する軌道41にある軸受の外輪1の境界面からによって2次反射され、他の超音波探触子Bによって2次反射波R2を受信・測定することによって、主として軸受に対して中心軸の垂直方向にかかる垂直荷重Wvの検出を行うとともに、少なくとも超音波探触子Cを用いて軸荷重Waの検出を行う。
【選択図】 図1
Description
(i)従前の軸受にかかる負荷検出装置において中心軸方向の軸荷重あるいは中心軸に対して垂直方向の垂直荷重を測定するためには、上記のように、負荷検出装置を特定の位置に限定して配設する必要があった。また、こうした位置においても、他方向の荷重成分の影響を受けることがあり、こうした影響値を補正する必要があった。
(ii)負荷検出装置の検出特性の変化は、検出装置自体だけではなく、実動状態における軸受の劣化あるいは損傷によることが多いことから、校正が不可欠である。従前の負荷検出装置は、検出器出力と荷重との関係を校正する場合、静止状態において行う必要があった。また、こうした校正された検出器においても、長時間の実動状態においては、その間の検出機能の変動の有無は、次なる校正まで把握することができなかった。
軸受にかかる垂直荷重を検出する方法には、既述のような課題があった。本発明は、中心軸に対して垂直な、2以上の対向する転動体の軌道を有する軸受において、対向する2つの転動体による反射を利用し、その間を中心軸に平行して走波する超音波の有する構成によって、後述するメカニズムのように、垂直荷重の検出に対する軸方向等他方向の荷重の影響を測定系自身の補正機能を確保することができ、正確かつ連続的に軸受にかかる垂直荷重を検出することができる。つまり、1次反射波には、1の転動体とこれが接する軸受の外輪との境界における垂直荷重以外の荷重の影響成分を含み、2次反射波には、対向する他の転動体とこれが接する軸受の外輪との境界または該対向する軌道にある軸受の外輪の境界における垂直荷重以外の荷重の影響成分を含む。2つの転動体が中心軸に対して対向する位置にある場合には、これらの影響成分は、同じ大きさの方向を反対とする成分であることから、2次反射波には、他方向の荷重の影響が実質的に相殺された垂直荷重のみの成分が含まれる。また、2つの転動体が中心軸に対して対向する位置にない場合には、1の軌道にある転動体に送信された反射波を測定するとともに、対抗する軌道にある転動体に送信された反射波を測定し、これらを相殺することによって、実質的に他方向の荷重の影響がない垂直荷重のみを検出することができる。従って、こうして正確かつ迅速に検出された軸受にかかる垂直荷重を、該軸受を用いた回転機構を制動する制御信号に変換可能な指標として利用することが可能となった。また、軸受ハウジングに配けられた1の転動体とこれが接する軸受の外輪との境界からの反射波と、隣接する他の転動体とこれが接する軸受の外輪との境界または軸受の外輪の境界からの反射波を検出することができることから、その間を走波する超音波が中心軸に平行であることが確保できれば、2つの超音波探触子は中心軸の上下を問わず、また中心軸に対して周回する何れの位置にも配設することができる。
超音波探触子から発信された超音波は、所定の幅で放射状に分散するとともに、異なる素材の境界における屈折による角度のズレが生じることから、反射波を精度よく検出するためには、超音波が照射される部位まで短距離が好ましく、同一素材内を通過させることが好ましい。本発明は、上記の1次,2次反射波が90°に近い反射角度を有して高密度に反射し、超音波探触子まで最短距離となるように、超音波探触子を中心軸に対して垂直に配置した。また、こうした配置によって、特別な加工をせずに、発信された超音波の走路の殆どが、同一素材からなる軸受ハウジング内とすることができ、反射波を精度よく検出する。こうした構成によって、より高い検出感度を得ることができる。
上記のように、超音波探触子AとBの配設によって、軸荷重の影響を受けない垂直荷重の測定が可能となった。一方、軸荷重の測定においては、既述のように、いずれにしても垂直荷重の補正が必要である。本発明においては、軸荷重の測定用の少なくとも1つの他の超音波探触子Cを設け、その出力を、軸荷重の影響を受けない超音波探触子Bの出力を用いて補正することによって、垂直荷重とともに、簡便に正確な軸荷重の測定が可能となった。
本検出装置の基本的な構成を、図1(A)および(B)に例示する(第1構成例)。超音波探触子AおよびBを用いて軸受にかかる垂直荷重の検出装置において、中心軸に対して垂直な、2以上の対向する転動体の外輪側の軌道31,41および内輪側の軌道32,42を有する軸受において、1の超音波探触子Aからの超音波Uaが、軸受の中心軸方向に配された2つの転動体3,4の内の1の転動体3に向けて発信され、1の転動体3とこれが接する軸受の外輪1との境界から1次反射された後、1次反射波R1として中心軸に平行して走波し、対向する軌道31にある他の転動体4とこれが接する軸受の外輪1との境界または該対向する軌道41にある軸受の外輪1の境界面からから2次反射され、他の超音波探触子Bによって2次反射波R2を受信・測定することによって、主として軸受に対して中心軸の垂直方向にかかる垂直荷重Wvの検出を行う。これら超音波探触子AおよびBの発信および受信信号は、制御部5において制御されるとともに、荷重の演算処理が行われる。こうした構成によって、軸受にかかる垂直荷重Wvおよび/または軸荷重Waを正確かつ迅速に検出することができるとともに、該検出出力を制御信号に変換し、該軸受を用いた回転機構を制動する制御指標として利用することができる。ただし、超音波探触子AおよびBは、後述するように、必ずしも中心軸に対して垂直方向に超音波を発信するように配設される構造に限定されるものではなく、1次反射波R1が中心軸に平行して走波して超音波探触子Bによって2次反射波R2を受信・測定することができる構造を要件とするものである。
本検出装置においては、荷重と超音波探触子の出力(透過率)の関係を校正する必要がある。また、超音波探触子の出力に対応する反射波の大きさを定量的に表すために、透過率Hと呼ばれる物理量を用いる。透過率(H)は、下式1により定義される。
H=(1−h/ho) ・・式1
ここで、hは軸受に外的な荷重が作用している時の超音波探触子の最大出力すなわち反射波のピーク値であり、hoは荷重が作用していない時(無負荷時)の最大出力である。具体的には、所定の校正用装置に軸受を設置された状態で、軸受に対して設定された軸荷重Waおよび垂直荷重Wvをかけ、そのときの超音波探触子の出力を求めて、予めその特性を求める。超音波探触子や軸受の経時変化あるいは取付け状態の変更等、必要に応じて校正されることがある。
2つの転動体3,4が中心軸に対して対向する位置にない場合について、図2(A)〜(G)に例示する構成に基づき説明する。ここでは、説明の都合上、超音波探触子C,Dは省略する。
(1−1)超音波発信子と超音波受信子としての機能を切換え可能な超音波探触子A,Bを用いた構成
図2(A),(B)に例示するように、超音波振動子Aから転動体3に向けて超音波Uaが発信された状態において、転動体3とこれが接する外輪1との境界から1次反射された後、1次反射波R1として中心軸に平行して走波し、対向する軌道41にある外輪1の境界面1a近傍から2次反射され、超音波探触子Bによって2次反射波R2を受信・測定することができる。
一方、図2(C),(D)に例示するように、超音波探触子Bを超音波発信子,超音波探触子Aを超音波受信子として機能させ、超音波振動子Bから転動体4に向けて超音波Ua’が発信された状態において、転動体4とこれが接する外輪1との境界から1次反射された後、1次反射波R1’として中心軸に平行して走波し、対向する軌道31にある外輪1の境界面1b近傍から2次反射され、超音波探触子Aによって2次反射波R2を受信・測定することができる。こうした構成によって、近接した時間内において、中心軸に平行した双方向の1次反射波R1およびR1’を走波させることができる。
図2(E)〜(G)に例示するように、超音波発信子として超音波探触子A,A’を設け、超音波受信子として超音波探触子B,B’を設けることによって、超音波振動子Aから転動体3に向けて超音波Uaが発信された状態において、転動体3とこれが接する外輪1との境界から1次反射された後、1次反射波R1として中心軸に平行して走波し、対向する軌道41にある外輪1の境界面1a近傍から2次反射され、超音波探触子Bによって2次反射波R2を受信・測定することができる。また、超音波振動子A’から転動体4に向けて超音波Ua’が発信された状態において、転動体4とこれが接する外輪1との境界から1次反射された後、1次反射波R1’として中心軸に平行して走波し、対向する軌道31にある外輪1の境界面1b近傍から2次反射され、超音波探触子B’によって2次反射波R2を受信・測定することができる。こうした構成によって、同時にあるいはさらに近接した時間内において、中心軸に平行した双方向の1次反射波R1およびR1’を走波させることができる。
外輪1と内輪2の中央部に、転動体3,4を含む多数の転動体が配置された状態で軸受が固定されることにより、所定の荷重が生じる。このときの透過率をHoとし、垂直荷重Wvのみがかかった場合に変化する透過率はHvとする。ここで、さらに軸荷重Waがかかった場合には、転動体3と外輪1との境界において透過率が減少し(−Ha)、転動体4と外輪1との境界において透過率が増加する(+Ha)。このとき、図2(B),(F)のように、超音波探触子Aから発信された超音波Uaが転動体3とこれが接する外輪1との境界で1次反射された1次反射波R1の透過率の減少から、2次反射波R2の透過率は[Hv−Ha]となる。一方、図2(D),(G)のように、超音波探触子B,A’から発信された超音波Ua’が転動体4とこれが接する外輪1との境界で1次反射された1次反射波R1’の透過率の増加から、2次反射波R2’の透過率は[Hv+Ha]となる。従って、上記図2(A)〜(G)のいずれの構成においても、2次反射波R2の透過率[Hv−Ha]と2次反射波R2’の透過率[Hv+Ha]を相殺すれば、軸荷重Wa等他の荷重の影響を受けずに,垂直荷重Wvのみに依存して透過率Hが変化し、垂直荷重Wvの変化のみを測定することができる。
図1(A)において、超音波探触子Aから発信された超音波Uaは、外輪1と転動体3との間で1次反射し、1次反射波R1として中心軸に平行して走波し、隣接する転動体4に照射されて外輪1と転動体4との間で2次反射され、超音波探触子Bによって、その2次反射波R2を受信することができるように構成されている。超音波探触子AおよびBが一体として、1つの反射式の超音波探触子としての機能を有するとともに補完機能を有する点に特徴がある。超音波探触子Aは、取り付け面に対して垂直な方向に超音波Uaを発信し、超音波探触子Bは、取り付け面に対して垂直な方向に照射される2次反射波R2を受信する。1次反射波R1および2次反射波R2が90°に近い反射角度を有して高密度に反射し、それぞれ超音波探触子A,Bまでの最短距離となることから、高い検出感度を確保することができる。また、超音波の走路中に素材の違いや境界面が殆どできないことから、反射波を精度よく検出することができる。
上記(1)および(2)の場合における超音波探触子の出力(透過率)を検証する。ここでは、転動体3,4と外輪1との境界での音圧反射率をr3,r4とし、転動体との接触のない位置での音圧反射率をroとし、まず、「2つの転動体3,4が中心軸に対して対向する位置にある場合」に基づき検証し、次に「2つの転動体3,4が中心軸に対して対向する位置にない場合」を検証した。
図3(A)のように、2つの転動体3,4が中心軸に対して対向する位置にある場合、超音波探触子Aから送信された超音波が,転動体3とこれが接する軸受の外輪1との境界および転動体4とこれが接する軸受の外輪1との境界を介して超音波探触子Bに受信される場合の2次反射波R2の透過率H1は、下式2のようになる。
H1=1−h1/ho=1−(r3/ro)×(r4/ro) ・・式2
一方、逆に、超音波探触子Bから送信された超音波が、転動体4とこれが接する軸受の外輪1との境界および転動体3とこれが接する軸受の外輪1との境界を介して超音波探触子Aに受信されることを想定した場合の2次反射波R2の透過率H2は、下式3のようになる。
H2=1−h2/ho=1−(r4/ro)×(r3/ro) ・・式3
つまり、両者は全く同一となるため、一方向からの超音波の発信・受信によって、その透過率を検出することができるとともに、軸荷重の影響がキャンセルされた垂直荷重だけの影響を把握することができる。
2つの転動体3,4が中心軸に対して対向する位置にない場合、図2(B),(F)のように、超音波探触子Aから送信された超音波が,超音波探触子Bで受信された場合のエコー高さ比H3は、下式4のようになる。
H3=h3/ho=(r3/ro)×(ro/ro)=r3/ro ・・式4
一方、図2(D),(G)のように、超音波探触子B,A’から送信された超音波が、超音波探触子A,B’で受信された場合のエコー高さ比H4は、下式5のようになる。
H4=h4/ho=(r4/ro)×(ro/ro)=r4/ro ・・式5
したがって,超音波探触子AとBが,伝播する超音波の音軸上にあると仮定した場合の透過率Hは,下式6として求めることができる。
H=1−(H3×H4)=1−(r3/ro×r4/ro) ・・式6
となり,上式3によって求められた透過率と同じになり,上記(3−1)同様、軸荷重の影響がキャンセルされた垂直荷重だけの影響を把握することができる。
軸荷重Waは、図1(A)において、超音波探触子C,Dからの超音波Uc,Udが、転動体3,4に向けて発信され、反射された反射波Rc,Rdを、超音波探触子C,Dにより受信・測定することによって測定することができる。このとき、超音波探触子C,Dは、軸荷重Waと垂直荷重Wvに対して図4(A)に例示するように透過率Hc,Hdを示すが、超音波探触子C,Dを、超音波Uc,Udが自重方向かつ中心軸に対してほぼ45°の傾斜角をもって転動体3,4に向けて発信されるように設置することによって、図4(B)に例示するように、等価な軸荷重Waと垂直荷重Wvに対して、ほぼ等価な透過率Hca(=Hcv),Hda(=Hdv)を得ることができ、超音波探触子C,Dの出力校正によって、両者をほぼ同じ出力特性とすることができる。
本検出装置の他の構成例を、図5に示す(第2構成例)。超音波探触子AおよびBを、中心軸に対して垂直な方向に限定して配置されるのではなく、中心軸と所定の交差角αを有する方向に配置される。基本的に、2つの転動体3,4の間を走波する超音波(1次反射波R1)が中心軸に平行であることが確保できれば、超音波探触子AおよびBは、中心軸の上下を問わず、また中心軸に対して周回する何れの位置にも配設することによって、軸負荷の影響を相殺することができる。検出すべき最適な転動体の表面の部位が特定された場合や、超音波探触子A,Bと超音波探触子C,Dとの相互干渉を回避するための配置を重要とする場合等にフレキシブルな配置を設定することができる。
2 内輪
3,4 転動体
31,41 外輪側の軌道
32,42 内輪側の軌道
5 制御部
A〜D 超音波探触子
Ua,Uc,Ud 超音波
R1 1次反射波
R2 2次反射波
Rc,Rd 反射波
Wa 軸荷重
Wv 垂直荷重
Claims (4)
- 中心軸に対して垂直な、2以上の対向する転動体の軌道を有する軸受において、該軸受の外輪に取り付けられた超音波探触子からの超音波が、該軸受に向けて発信され、該軸受の外輪と転動体との境界からの反射波を受信・測定することにより、該軸受にかかる荷重を検出する装置であって、
2つの転動体が中心軸に対して対向する位置にある場合において、1の超音波探触子Aからの超音波が、前記軸受に配された1の転動体に向けて発信され、該1の転動体とこれが接する軸受の外輪との境界から1次反射された後、1次反射波として前記軸受の中心軸に平行して走波し、対向する軌道にある他の転動体とこれが接する軸受の外輪との境界から2次反射され、他の超音波探触子Bによって該2次反射波を受信・測定することによって、前記中心軸方向にかかる軸荷重の影響を受けずに、前記中心軸の垂直方向にかかる垂直荷重の検出を行うことを特徴とする軸受にかかる荷重の検出装置。 - 前記超音波探触子A,Bが、前記中心軸に対して垂直に配置され、前記超音波探触子Aからの超音波が前記1の転動体に向けて前記中心軸に対して垂直方向に発信され、前記超音波探触子Bによって前記中心軸に対して垂直方向に反射された前記2次反射波を受信・測定することを特徴とする請求項1記載の軸受にかかる荷重の検出装置。
- 少なくとも1つの他の超音波探触子Cからの超音波が、前記転動体の1つに向けて発信され、反射された反射波を、同一発信元とする該超音波探触子Cにより受信・測定することによって、前記垂直荷重とともに、前記軸受に対して前記中心軸方向にかかる軸荷重の検出を行うことを特徴とする請求項1または2記載の軸受にかかる荷重の検出装置。
- 中心軸に対して垂直な、2以上の対向する転動体の軌道を有する軸受において、該軸受の外輪に取り付けられた超音波探触子からの超音波が、該軸受に向けて発信され、該軸受の外輪と転動体との境界からの反射波を受信・測定することにより、該軸受にかかる荷重を検出する方法であって、
2つの転動体が中心軸に対して対向する位置にある場合において、1の超音波探触子Aからの超音波が、前記軸受に配された1の転動体に向けて発信され、該1の転動体とこれが接する軸受の外輪との境界から1次反射された後、1次反射波として前記軸受の中心軸に平行して走波し、対向する軌道にある他の転動体とこれが接する軸受の外輪との境界から2次反射され、他の超音波探触子Bによって該2次反射波を受信・測定することによって、前記中心軸方向にかかる軸荷重の影響を受けずに、前記中心軸の垂直方向にかかる垂直荷重の検出を行うことを特徴とする軸受にかかる荷重の検出方法。
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