JP5538263B2 - 導電パターン形成基板およびその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、タッチパネルの電極シート等に用いられる導電パターン形成基板およびその製造方法に関する。
タッチパネルにおいては、液晶ディスプレイ等の画像表示装置の前面に、指等の接触位置を検出する透明な電極シートが備えられている。電極シートとしては、透明絶縁基板および透明導電膜を有し、該透明導電膜に導電パターンが形成された導電パターン形成基板が用いられている。通常、導電パターンは、透明導電膜に絶縁パターンを形成することによって設けられている。
絶縁パターンの形成方法としては、例えば、特許文献1,2には、バインダ樹脂中に導電性繊維を含む透明導電膜にレーザ光を照射して絶縁部とする方法が開示されている。
特開2010−140859号公報 特開2010−044968号公報
通常、導電パターンによって形成された導電部には、インターフェース回路等に接続するための引き回し配線が設けられる。しかしながら、特許文献1,2に記載の方法により形成された導電部の引き回し配線は配線抵抗が大きく、信号の伝達が円滑でないという問題を有していた。その問題を解消するために、導電部の上に、金属ペーストを用いた印刷や金属蒸着によって高導電性の端子を設ける対策も考えられるが、印刷後の乾燥や蒸着の際の加熱によって透明絶縁基板が収縮するため、導電パターンの寸法精度が低下する問題が生じた。
本発明は、透明導電膜が導電性繊維を含むものであるにもかかわらず、引き回し配線の配線抵抗を小さくできる導電パターン形成基板を提供することを目的とする。
また、本発明は、透明導電膜が導電性繊維を含むものであるにもかかわらず、引き回し配線の配線抵抗を小さくでき、しかも導電パターンの寸法精度に優れる導電パターン形成基板を容易に製造できる導電パターン形成基板の製造方法を提供することを目的とする。
本発明は、以下の態様を有する。
[1]透明絶縁基板と、該透明絶縁基板の少なくとも片面に設けられ、透明絶縁材料と該透明絶縁材料内に2次元ネットワーク状に配置された導電性繊維とを含む透明導電膜と、該透明導電膜の表面の周縁の一部に積層された金属膜とを備え、金属膜が積層されていない領域の少なくとも一部の領域である第1の領域に第1の導電パターンが設けられ、前記第1の領域以外の領域である第2の領域に第2の導電パターンが設けられ、第1の導電パターンは、前記透明導電膜の、透明絶縁材料内の導電性繊維が除去され、導電性繊維が存在していた部分に空隙が形成された第1の絶縁ラインにより構成された第1の絶縁パターンによって設けられ、第2の導電パターンは、前記第2の領域にて、透明導電膜と金属膜が除去されて形成された第2の絶縁ラインにより構成された第2の絶縁パターンによって設けられていることを特徴とする導電パターン形成基板。
[2]透明絶縁基板と、該透明絶縁基板の少なくとも片面に設けられ、透明絶縁材料と該透明絶縁材料内に2次元ネットワーク状に配置された導電性繊維とを含む透明導電膜と、該透明導電膜の表面の周縁の一部に設けられた金属膜を備える導電性基板に導電パターンを設ける導電パターン形成基板の製造方法であって、前記導電性基板の、金属膜が積層されていない領域の少なくとも一部の領域である第1の領域に、レーザ光を照射することにより第1の絶縁パターンを形成して第1の導電パターンを設ける第1の導電パターン作製工程と、前記第1の領域以外の領域である第2の領域に、レーザ光を照射することにより第2の絶縁パターンを形成して第2の導電パターンを設ける第2の導電パターン作製工程とを有し、第1の導電パターン作製工程における第1の絶縁パターンの形成では、レーザの照射により、前記透明導電膜の、透明絶縁材料内の導電性繊維を除去することにより、導電性繊維が存在していた部分に空隙を形成して第1の絶縁ラインを形成し、第2の導電パターン作製工程における第2の絶縁パターンの形成では、レーザ光の照射により、レーザ光照射部分の透明導電膜と金属膜を除去して第2の絶縁ラインを形成することを特徴とする導電パターン形成基板の製造方法。
[3]第2の導電パターン作製工程におけるレーザ光照射エネルギを、第1の導電パターン作製工程におけるレーザ光照射エネルギよりも大きくすることを特徴とする[2]に記載の導電パターン形成基板の製造方法。
[4]第1の絶縁ラインの端部と第2の絶縁ラインの端部とを交差させて接続することを特徴とする[2]または[3]に記載の導電パターン形成基板の製造方法。
[5]第1の導電パターン作製工程および第2の導電パターン作製工程では、同一のレーザ光照射装置を用いることを特徴とする[2]〜[4]のいずれか1項に記載の導電パターン形成基板の製造方法。
[6]前記導電性繊維が金属ナノワイヤであることを特徴とする[2]〜[5]のいずれか1項に記載の導電パターン形成基板の製造方法。
本発明の導電パターン形成基板は、透明導電膜が導電性繊維を含むものであるにもかかわらず、引き回し配線の配線抵抗を小さくできる。
本発明の導電パターン形成基板の製造方法によれば、透明導電膜が導電性繊維を含むものであるにもかかわらず、引き回し配線の配線抵抗を小さくでき、しかも導電パターンの寸法精度に優れる導電パターン形成基板を容易に製造できる。
本発明の導電パターン形成基板の一実施形態を示す上面図である。 図1のI−I’断面図である。 図1のII−II’断面図である。 第1の絶縁ラインの走査型電子顕微鏡写真である。 第1の絶縁ラインの端部と第2の絶縁ラインの端部とが交差する部分の拡大上面図である。 図5のIII−III’断面を模式的に示す図である。 導電パターン形成基板の製造で使用する導電性基板の一例を示す上面図である。 レーザ光照射装置の一例を示す側面図である。 透明導電膜の走査型電子顕微鏡写真である。
<導電パターン形成基板>
本発明の導電パターン形成基板の一実施形態について説明する。
本実施形態の導電パターン形成基板は、画像に重ねられて使用される矩形状の基板であって、図1,2,3に示すように、透明絶縁基板11と、透明絶縁基板11の片面に設けられた透明導電膜12と、透明導電膜12の表面の周縁の一部に積層された金属膜13とを備える。
なお、本発明において、「透明」とは、50%以上の光線透過率を有するものを指す。透明絶縁基板11と透明導電膜12とからなる導電パターン形成基板10は透明である。
本実施形態の導電パターン形成基板10は、例えば、透明アンテナ、透明電磁波シールド、静電容量方式或いはメンブレン式の透明タッチパネルなどの透明入力装置のように、透明部分に配線パターンを形成する製品に適用することができる。また、この導電パターン形成基板10は、自動車のハンドル等に付随する静電容量入力装置など、3次元成型品、或いは3次元の加飾成型品の表面に設けられる静電容量センサ等に必要な電極を形成する目的で用いることができる。
導電パターン形成基板10には、複数列の導電部C,C・・・を有する導電パターン(第1の導電パターンP、第2の導電パターンP)が設けられている。
第1の導電パターンPは、金属膜13が積層されていない領域の一部の領域である第1の領域10aに、第1の絶縁ラインBによって構成された第1の絶縁パターン14aによって設けられている。導電パターン形成基板10をタッチパネルに用いる場合には、第1の領域10aは、画像表示装置等の上に配置され、指等が接触する領域になる。
第2の導電パターンPは、第1の領域10a以外の領域である第2の領域10bに、第2の絶縁ラインBによって構成された第2の絶縁パターン14bによって設けられている。第2の領域10bには、第1の領域10aから離れるにつれて次第に幅が狭くなる中間領域10bと、中間領域10bに連続し、幅が一定の端子領域10bとが設けられている。このような第2の導電パターンPは、第1の導電パターンPからの信号引き出し回路となる。なお、第2の領域10bの中間領域10bおよび端子領域10b以外の領域は周縁領域10bとなっている。
本実施形態において、第1の領域10aと第2の領域10bとにおける透明導電膜12は、各々、絶縁ラインB,Bによって複数の導電部C,C・・・に分割されている。同一の列の導電部Cにおいては、第1の領域10aと第2の領域10bとで、電気的に導通している。
透明絶縁基板11としては、透明で絶縁性を有するとともに、後述するレーザ光の照射に対して外観変化の生じにくいものを用いることが好ましい。具体的には、例えば、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート(PET)を代表とするポリエステル、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合樹脂(ABS樹脂)などの高分子素材やガラスなどの絶縁性材料が挙げられる。特に、タッチパネル用途で広く利用されているポリエチレンテレフタレート(PET)に代表される、厚み20〜250μmの高分子素材からなるフィルムを透明絶縁基板11として使用した場合、後述するレーザ照射による絶縁ラインの形成方法を適用することで、端子領域βなどに導電パターンを金属ペーストの印刷により形成するよりも寸法精度を容易に向上させることができる。なお、本発明において、「絶縁性」とは、電気抵抗値が1MΩ、好ましくは10MΩ以上のことである。
透明絶縁基板11の形状としては、板状のもの、可撓性を有するフィルム状のもの、立体的(3次元)に成形された成形品等を用いることができる。
透明導電膜12は、透明絶縁材料と、該透明絶縁材料内に2次元ネットワーク状に配置された導電性繊維とを含んでいる。
透明絶縁材料としては、透明な熱可塑性樹脂(ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリメチルメタクリレート、ニトロセルロース、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン、ポリフッ化ビニリデン)、熱や活性エネルギ線(紫外線、電子線)で硬化した透明な硬化性樹脂(メラミンアクリレート、ウレタンアクリレート、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、アクリル変性シリケートなどのシリコーン樹脂)の硬化物が挙げられる。
透明絶縁材料は、透明絶縁基板11と互いに同一材料又は同一系統の樹脂材料からなることが好ましい。例えば、透明絶縁基板11がポリエチレンテレフタレートフィルムの場合、透明絶縁材料にはポリエステル系樹脂を使用することが好ましい。
各導電性繊維は、透明絶縁基板11の面方向に沿って2次元状に互いに異なる向きに不規則に配置されているとともに、その少なくとも一部以上が互いに重なり合う(接触し合う)程度に密集して、互いに電気的に接続されている。これにより、導電ネットワークを構成している。
導電性繊維としては、銅、白金、金、銀、ニッケル等からなる金属ナノワイヤや金属ナノチューブが挙げられる。導電性繊維は、例えばその直径が0.3〜100nm、長さが1〜100μmに形成されている。
また、導電性繊維として、シリコンナノワイヤやシリコンナノチューブ、金属酸化物ナノチューブ、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、グラファイトフィブリル等を用いることもできる。
上記導電性繊維の中でも、透明導電膜12を容易に形成できると共に、後述するレーザ光の照射によって容易に絶縁部を形成できる点で、金属ナノワイヤが好ましく、銀を主成分とする金属ナノワイヤ(銀ナノワイヤ)がより好ましい。
金属膜13は、金属ペーストの印刷または金属の蒸着によって形成された膜である。本実施形態においては、金属膜13は、導電パターン形成基板10の一辺10c側に矩形状に設けられている。
金属膜13を構成する金属としては、銀、銅、アルミニウム、鉄、ニッケルなどが挙げられる。
金属膜13のうち、端子領域における金属膜13の導電部Cは、外部引き回し配線との接続部になる。この接続部は、詳細には、第1の領域12aの周囲に設けられた低抵抗の部分である。金属膜13に接続される外部引き回し配線としては、公知の金属ワイヤやケーブル、基板上に印刷や蒸着等により設けられた金属層などが挙げられる。
本実施形態の導電パターン形成基板において、第1の絶縁パターン14aは、第1の領域10aの第1の絶縁ラインBによって構成されている。第1の絶縁ラインBは、導電性繊維が除去されて透明絶縁材料からなる部分である。具体的には、第1の絶縁ラインBにおいては、図4に示すように、透明絶縁材料12c内の、導電性繊維が存在していた部分が空隙12dになっているため、導電性繊維による導電ネットワークが断絶しており、電気的に絶縁状態になっている。また、第1の絶縁ラインBは、導電性繊維を含む導電部Cと外観(色、透明性)がほぼ同一であるため、視認不能である。
第2の絶縁パターン14bは、第2の領域10bの第2の絶縁ラインBによって構成されている。図3に示すように、第2の絶縁ラインBは、透明導電膜12と金属膜13が溝状に除去されて形成されている。第2の絶縁ラインBにおいても、電気的に絶縁状態になっているが、導電性繊維を含む導電部Cと外観(色、透明性)が異なるため、視認可能である。
本実施形態では、図5に示すように、第1の絶縁ラインBと第2の絶縁ラインBとは、それらの端部同士が交差して接続されている。図6に、第1の絶縁ラインBと第2の絶縁ラインBとが交差する部分およびその近傍の断面を模式的に示す。透明導電膜12には導電性繊維12eが含まれて導電性を有しているが、第1の絶縁ラインBには空隙12dが形成され、第2の絶縁ラインBは透明導電膜12が除去されて溝になっているため、絶縁性を有している。
上記導電パターン形成基板10は、透明導電膜12の上に高導電性である金属膜13を備え、透明導電膜12と金属膜13に導電パターンが設けられるため、透明導電膜12が導電性繊維を含むものであるにもかかわらず、引き回し配線の配線抵抗を小さくできる。
<導電パターン形成基板の製造方法>
本実施形態の導電パターン形成基板10の製造方法は、透明絶縁基板11と透明絶縁基板11の片面に設けられた透明導電膜aと透明導電膜aの表面の周縁の一部に設けられた金属膜bを備える導電性基板A(図7参照)に、レーザ光を走査しながら照射して、絶縁ラインから構成された絶縁パターンを形成することにより導電パターンを設ける方法である。
導電性基板Aは、透明絶縁基板11の片面に透明導電膜aを形成し、透明導電膜aの表面の周縁の一部に金属膜bを形成する。
透明導電膜aの形成方法としては、透明絶縁基板11に、透明絶縁材料および導電性繊維を含む塗料を塗布し、乾燥させる方法が挙げられる。
金属膜13の形成方法としては、金属ペーストを透明導電膜aに印刷し、乾燥させる方法、透明導電膜aに金属を蒸着させる方法などが挙げられる。
銀ペースト等の金属ペーストを印刷する場合には、金属の他にバインダ樹脂(例えば、ポリエステル、エポキシ樹脂、アクリル樹脂等)が含まれる。また、印刷方法としては、容易に厚くできることから、スクリーン印刷法が好ましい。
アルミニウム等の金属を蒸着させる方法では、透明導電膜aの金属膜bを形成しない部分にマスクを重ねた状態で金属を蒸着させることにより、透明導電膜aの表面の一部のみに金属膜bを形成することができる。
絶縁パターンを形成する際のレーザ光の照射では、図8に示すようなレーザ光照射装置40を使用する。
レーザ光照射装置40は、レーザ光Lを発生させるレーザ光発生手段41と、レーザ光Lを集光する集光手段である凸レンズ等の集光レンズ42と、透明絶縁基板11および透明導電膜aからなる導電性基板Aが載置されるステージ43とを備えている。
このレーザ光照射装置40では、レーザ光発生手段41から集光レンズ42を介して透明導電膜aにレーザ光Lを照射する。
レーザ光Lの照射による導電パターンの形成では、露光、現像、エッチング等が不要であるため、簡便である。
レーザ光発生手段41が発生するレーザ光Lは、YAGやYVO等のパルス状レーザ光、炭酸ガスレーザ等の連続発振レーザ光が挙げられる。中でも、簡便であることから、YAGやYVO等の波長1064nmもしくはその2次高調波を使用した532nmのパルス状レーザ光が好ましい。
集光レンズ42の焦点Fは、通常、透明導電層aの表面毎に設定されるが、導電性基板Aに凹凸などが形成されている場合や広い面積にレーザ光を照射する場合には、透明導電層aから離れた位置に設定されていることが好ましい。詳しくは、集光レンズ42は、透明導電層aと集光レンズ42との間にレーザ光Lの焦点Fが位置するように配置される。すなわち、集光レンズ42(レーザ光L)の焦点Fを、透明導電層aと集光レンズ42との間に形成している。これにより、透明絶縁基板11に当たるレーザ光Lのスポット径は、透明導電層aに当たるレーザ光Lのスポット径より大きくなる。これにより、透明導電層aにおいてはレーザ光Lのエネルギ密度を確保して絶縁ラインBを確実に形成しつつ、透明絶縁基板11においてはレーザ光Lのエネルギ密度を低減させ、さらに焦点Fと透明導電層aの距離が変化しても集光スポットSのエネルギ密度の変動を抑制することで、透明絶縁基板11の損傷を防止できる。
集光レンズ42としては、低い開口数(NA<0.1)のものが好ましい。すなわち、集光レンズ42の開口数がNA<0.1とされることにより、レーザ光Lの照射条件設定が容易となり、特にレーザ光Lの焦点Fが透明導電膜aと集光レンズ42との間に位置することによる、該焦点Fにおける空気のプラズマ化に伴うエネルギ損失とレーザ光Lの拡散を防止することができる。
絶縁パターンの形成では、まず、絶縁パターンを形成していない導電性基板Aをステージ43の上面に固定する。その際、透明導電膜aを透明絶縁基板11より上に位置させる。
次いで、レーザ光照射装置40のレーザ光発生手段41よりレーザ光Lを出射させ、レーザ光Lを集光レンズ42により集光すると共に、ガルバノミラーを用いることによって走査させながら、透明導電膜aに照射する。
レーザ光の照射によって、レーザ光照射前には透明導電膜aに含まれていた導電性繊維が除去され、導電性繊維の存在した部分が空隙となる。そのため、レーザ光を走査しながら照射した部分を絶縁ラインB,Bとすることができる。
また、これらの値は、加工エリアにおけるレーザ光の出力値を、加工エリアの集光スポット面積で除することにより定義されており、簡便には、出力はレーザ発振機からの出力値に光学系の損失係数を掛けることで求められる。
また、スポット径面積Sは、下記式により定義される。
S=S×D/FL
:レンズで集光されるレーザのビーム面積
FL:レンズの焦点距離
D:透明導電膜aの表面(上面)と焦点との距離
なお、前述した焦点Fは、レンズ等の集光手段42で、収差が十分に小さい場合を例に説明したが、例えば、焦点距離の短い球面レンズや、保護ガラスなどの収差が大きくなる要素が存在する場合には、前記焦点Fは、集光点のエネルギ密度が最も高くなる位置と定義される。
ここで、距離Dは、通常のレーザ加工機では、焦点距離FLの0.2〜3%の範囲内に設定される。好ましくは、距離Dは、焦点距離FLの0.5〜2%の範囲内に設定される。さらに望ましくは、距離Dは、焦点距離FLの0.7〜1.5%の範囲内に設定される。距離Dが上記数値範囲に設定されることにより、絶縁ラインにおける導電性繊維の除去(空隙の形成)が確実に行えるとともに電気的に高い信頼性を有する絶縁パターンを形成でき、かつ、透明絶縁基板11の損傷に起因する加工痕を確実に防止できる。
本実施形態の製造方法は、第1の領域10aに第1の導電パターンPを設ける第1の導電パターン作製工程と、第2の領域10bに第2の導電パターンPを設ける第2の導電パターン作製工程とを有する。
上記第1の導電パターン作製工程では、上記レーザ光照射装置40を使用して第1の領域10aにレーザ光を走査しながら照射することにより、透明導電膜12の透明絶縁材料内の導電性繊維を蒸発、除去させ、導電性繊維が存在していた部分に空隙を形成して、第1の絶縁ラインBにより構成された第1の絶縁パターン14aを形成する。導電性繊維は2次元状のネットワークを形成しているため、少数の導電性繊維を除去することで確実に電気的絶縁状態を得ることができ、また、照射するレーザ光のエネルギを小さくすることができる。第1の絶縁ラインBでは、導電性繊維による導電ネットワークを断絶できるため、絶縁性が確保されている。
上記第2の導電パターン作製工程では、上記レーザ光照射装置40を使用してレーザ光を走査しながら照射することにより、レーザ光照射部分の透明導電膜aと金属膜13を除去して第2の絶縁ラインBにより第2の絶縁パターン14bを形成する。本実施形態では、第2の導電パターン作製工程においては、第1の導電パターン作製工程におけるレーザ光照射エネルギよりも大きくすることによって、透明導電膜aと金属膜13を蒸発させ、溝状に除去する。レーザ光照射装置40は、第1の導電パターン作製工程と同じものを使用し、照射条件のみ変更すればよい。
通常は、第1の導電パターン作製工程後に第2の導電パターン作製工程をおこなうが、第2の導電パターン作製工程後に第1の導電パターン作製工程をおこなってもよい。
第1の導電パターン作製工程において、パルス幅が1〜100n秒のレーザ(YAGレーザ又はYVOレーザ)を用いる場合、透明導電膜aに照射するレーザ光Lのエネルギ密度は1×1011〜1×1013W/m、単位面積あたりの照射エネルギは1×10〜1×10J/mが好ましい。単位面積あたりの照射エネルギは、より好ましくは1×10〜3×10J/mである。
エネルギ密度・照射エネルギが上記数値範囲よりも小さな値に設定された場合、第1の絶縁ラインBの絶縁が不十分になるおそれがある。また、上記数値範囲よりも大きな値に設定された場合、加工痕が目立つようになり、タッチパネルや電磁波シールドなどの用途では不適当となる。
第2の導電パターン作製工程において、パルス幅が1〜100n秒のレーザ(YAGレーザ又はYVOレーザ)を用いる場合、透明導電膜aに照射するレーザ光Lのエネルギ密度は1×1010〜1×1012W/m、単位面積あたりの照射エネルギは1×10〜1×10J/mが好ましい。
エネルギ密度・照射エネルギが上記数値範囲よりも小さな値に設定された場合、第2の絶縁ラインBの絶縁が不十分になるおそれがある。また、上記数値範囲よりも大きな値は実用的でない。
本実施形態では、図5に示すように、第1の絶縁ラインBの端部と第2の絶縁ラインBの端部とを交差させて接続する。第1の絶縁ラインBの端部と第2の絶縁ラインBの端部とを交差させれば、第1の絶縁ラインBと第2の絶縁ラインBとを、連続する絶縁ラインとなるように接続するのが容易になる。
以上説明した製造方法では、透明導電膜aの上に金属膜bを形成した後に、レーザ光の照射によって導電パターン(第1の導電パターンP、第2の導電パターンP)を設けて導電パターン形成基板10とするため、導電パターン形成後に熱が付与される工程を有さない。そのため、熱による導電パターン形成基板10の寸法変化を防止でき、導電パターンの寸法精度を高くすることができる。
また、得られた導電パターン形成基板10においては、導電性繊維を含む透明導電膜aの上に高導電性の金属膜13を設けるため、引き回し配線の配線抵抗を小さくできる。
さらに、導電性繊維を含む塗料の塗布・乾燥およびレーザ光の照射は簡便な工程であるため、上記製造方法によれば、導電パターン形成基板10を容易に製造できる。
上記第1の導電パターン作製工程と第2の導電パターン作製工程では、同一のレーザ光照射装置を用いるため、導電パターン形成基板をより簡便に製造できる。
なお、本発明は、上記実施形態に限定されない。
例えば、上記実施形態の導電パターン形成基板の製造方法では、ガルバノミラーを用いてレーザ光を走査させたが、これに代えて、ステージをXY方向に移動させることによって、レーザ光を走査させてもよい。
また、金属膜は、透明導電膜の表面の全周縁に設けられていてもよい。
また、透明導電膜は、透明絶縁基板11の両面に設けられていてもよい。
また、導電パターン形成基板の透明導電膜は、透明絶縁材料に導電性繊維を含むものでなくても、導電性高分子の膜であってもよいし、ワイヤグリッドを含むものであってもよい。
<入力装置>
上記導電パターン形成基板は入力装置に使用することができる。入力装置は、導電パターン形成基板と、該導電パターン形成基板に電気的に接続された検出手段とを備える。検出手段としては、例えば、インターフェース回路を備えるものが挙げられる。
入力装置において、導電パターン形成基板は、タッチパネル等の入力装置の電極シートとして使用することができる。
例えば、2枚の上記導電パターン形成基板を所定形状に切り出したものを電極シートとし、これらを、スペーサを介して導電パターンが互いに対向するように積層することで、抵抗膜式タッチパネルの入力部材とすることができる。
また、2枚の上記導電パターン形成基板を所定形状に切り出したものを電極シートとし、これらを導電パターン同士が接触しないように積層することで、静電容量式タッチパネルの入力部材とすることができる。
[製造例1]
厚さ75μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(ルミラーS10 #75、東レ株式会社製)に、Cambrios社のOhm(商品名)インク(線径50nm程度、長さ15μm程度の銀繊維(銀ナノワイヤ)を含む混合液)を塗布し、乾燥した後、紫外線硬化性のポリエステル樹脂インクを上塗りして、乾燥・紫外線処理を施した。これにより、PETフィルム上に銀繊維からなる導電性の2次元ネットワークを有する透明導電膜aを形成した。透明導電膜aの表面を走査型電子顕微鏡で観察したところ、ポリエステル樹脂(透明絶縁材料12c)内に銀繊維(導電性繊維12e)からなる導電性の2次元ネットワークを有していることを確認した(図9参照)。
次いで、透明導電膜aの表面の、金属膜を形成させる一辺側以外の部分にマスクを重ねた後、アルミニウムを蒸着させて金属膜を形成した。これにより、導電性基板A(図8参照)を得た。
[実施例1]
レーザ光照射装置として、ガルバノミラーを備えたYVO基本波のレーザ加工機(キーエンス社製、MD−V9920)を使用した。
上記レーザ光照射装置には、照射パターンのデータをあらかじめ入力した。具体的には、図1に示すような、第1の絶縁ラインBにより構成された第1の絶縁パターン14aおよび第2の絶縁ラインBにより構成された第2の絶縁パターン14bを形成するように、照射パターンを入力した。
なお、各絶縁パターンの絶縁ラインの端部同士が接続する部分は、各絶縁ラインが交差するようにデータを作成した。これにより、レーザ加工機のレーザ照射タイミングによらず、確実に各絶縁パターン同士を連続的に接続させることができる。
製造例1の導電性基板Aを厚さ5mmのポリアセタール製ステージの上に載置し、第1の領域に下記照射条件でパルス状レーザ光を照射した。
焦点から導電性基板Aまでの距離:0mm
出力:30%
移動速度:600mm/秒
発振周波数:100kHz
これにより、第1の領域10aの透明導電膜aに、第1の絶縁ラインBにより構成された第1の絶縁パターン14aを形成した。
次いで、第2の領域に下記照射条件でパルス状レーザ光を照射した。
焦点から導電性基板Aまでの距離:0mm
出力:100%
移動速度:300mm/秒
発振周波数:100kHz
これにより、第2の領域10bの透明導電膜aおよび金属膜bに、第2の絶縁ラインBにより構成された第2の絶縁パターン14bを形成して、導電パターン形成基板を得た。形成された導電パターンにおいて、隣接する導電部C,C同士の電気抵抗は10Ω以上であり、絶縁状態になっていた。また、第1の絶縁ラインBは視認不能であった。
上記の導電パターン形成基板は2枚作製した。
次いで、得られた導電パターン形成基板の一方に対し、スクリーン印刷とインキの乾燥により、室温硬化型エポキシ樹脂からなる直径60μmのドットスペーサを設けた。
上記のようにして得た導電パターン形成基板を切り出して、導電パターン形成基板を得た。次いで、ドットスペーサを設けた導電パターン形成基板と、ドットスペーサを設けなかった導電パターン形成基板とを、導電パターンが互いに対向するように配置し、その状態で両面粘着テープにより固定した。また、端子領域10bの金属膜13に外部引き回し配線を直接接続し、さらに外部引き回し配線を市販のインターフェース回路(検出手段)に接続して、タッチパネルを得た。得られたタッチパネルは動作不良を生じなかった。これは、本実施例の導電パターン形成基板の製造では、金属膜を予め形成した後に、レーザ光を照射して導電パターンを形成したので、熱による導電パターンの寸法変化が抑制され、位置精度が向上したため、と思われる。
[比較例1]
透明絶縁基板の上に製造例1と同様に透明導電膜を形成した後に、透明導電膜に実施例1と同様の形状の導電パターンをパルス状レーザの照射により形成した。その後、導電パターン内の導電部上に、銀ペーストをスクリーン印刷し、乾燥させて金属端子を設けて、導電パターン形成基板を得た。その導電パターン形成基板を用いて、実施例1と同様にタッチパネルを作製したが、そのタッチパネルは動作不良を生じた。
これは銀ペースト印刷後の乾燥によって導電パターンの寸法が変化したためと推測される。
10 導電パターン形成基板
10a 第1の領域
10b 第2の領域
11 透明絶縁基板
12,a 透明導電膜
12c 透明絶縁材料
12d 空隙
12e 導電性繊維
13,b 金属膜
14a 第1の絶縁パターン
14b 第2の絶縁パターン
40 レーザ光照射装置
41 レーザ光発生手段
43 ステージ
A 導電性基板
第1の絶縁ライン
第2の絶縁ライン
C 導電部
第1の導電パターン
第2の導電パターン

Claims (6)

  1. 透明絶縁基板と、該透明絶縁基板の少なくとも片面に設けられ、透明絶縁材料と該透明絶縁材料内に2次元ネットワーク状に配置された導電性繊維とを含む透明導電膜と、該透明導電膜の表面の周縁の一部に積層された金属膜とを備え、
    金属膜が積層されていない領域の少なくとも一部の領域である第1の領域に第1の導電パターンが設けられ、前記第1の領域以外の領域である第2の領域に第2の導電パターンが設けられ、
    第1の導電パターンは、前記透明導電膜の、透明絶縁材料内の導電性繊維が除去され、導電性繊維が存在していた部分に空隙が形成された第1の絶縁ラインにより構成された第1の絶縁パターンによって設けられ、
    第2の導電パターンは、前記第2の領域にて、透明導電膜と金属膜が除去されて形成された第2の絶縁ラインにより構成された第2の絶縁パターンによって設けられていることを特徴とする導電パターン形成基板。
  2. 透明絶縁基板と、該透明絶縁基板の少なくとも片面に設けられ、透明絶縁材料と該透明絶縁材料内に2次元ネットワーク状に配置された導電性繊維とを含む透明導電膜と、該透明導電膜の表面の周縁の一部に設けられた金属膜を備える導電性基板に導電パターンを設ける導電パターン形成基板の製造方法であって、
    前記導電性基板の、金属膜が積層されていない領域の少なくとも一部の領域である第1の領域に、レーザ光を照射することにより第1の絶縁パターンを形成して第1の導電パターンを設ける第1の導電パターン作製工程と、前記第1の領域以外の領域である第2の領域に、レーザ光を照射することにより第2の絶縁パターンを形成して第2の導電パターンを設ける第2の導電パターン作製工程とを有し、
    第1の導電パターン作製工程における第1の絶縁パターンの形成では、レーザの照射により、前記透明導電膜の、透明絶縁材料内の導電性繊維を除去することにより、導電性繊維が存在していた部分に空隙を形成して第1の絶縁ラインを形成し、
    第2の導電パターン作製工程における第2の絶縁パターンの形成では、レーザ光の照射により、レーザ光照射部分の透明導電膜と金属膜を除去して第2の絶縁ラインを形成することを特徴とする導電パターン形成基板の製造方法。
  3. 第2の導電パターン作製工程におけるレーザ光照射エネルギを、第1の導電パターン作製工程におけるレーザ光照射エネルギよりも大きくすることを特徴とする請求項2に記載の導電パターン形成基板の製造方法。
  4. 第1の絶縁ラインの端部と第2の絶縁ラインの端部とを交差させて接続することを特徴とする請求項2または3に記載の導電パターン形成基板の製造方法。
  5. 第1の導電パターン作製工程および第2の導電パターン作製工程では、同一のレーザ光照射装置を用いることを特徴とする請求項2〜4のいずれか1項に記載の導電パターン形成基板の製造方法。
  6. 前記導電性繊維が金属ナノワイヤであることを特徴とする請求項2〜5のいずれか1項に記載の導電パターン形成基板の製造方法。
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