JP5537671B2 - 耐久性コーテッドアブレーシブ物品 - Google Patents

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Description

本明細書の開示は、一般的には、コーテッドアブレーシブ物品およびそれを成形するための方法に関する。
アブレーシブ物品を使用する機械加工は、光学産業から、自動車ペイント補修産業まで、金属二次加工産業にまで広い産業に及んでいる。それらの例のいずれにおいても、製造工場では、研磨材を使用して塊状の材料を除去したり、あるいは製品の表面特性を変化させたりしている。
表面特性には、輝き、触感、均質性などが含まれる。たとえば、金属部品のメーカーは、アブレーシブ物品を使用して、表面を微細化し、磨きをかけ、そして多くの場合には、均質で滑らかな表面を望んでいる。同様にして、光学製品メーカーは、欠陥のない表面を作り出して、光の回折および散乱を防止するようなアブレーシブ物品を望んでいる。
ある種の用途においては、メーカーは、高い素材除去率(stock removal rate)を有するアブレーシブ物品を望んでいる。しかしながら、多くの場合、除去率と表面品質は、トレードオフの関係にある。より微細な粒子のアブレーシブ物品は、典型的には、より滑らかな表面を与えるが、素材除去率もより低い。素材除去率が低いと、製造に時間がかかり、コストが上昇する。
さらに、表面特性および材料除去率は、そのアブレーシブ物品の耐久性による影響を受ける可能性もある。容易に摩耗したり、粒子を失ったりするアブレーシブ物品は、低材料除去率を示し、表面欠陥をもたらす可能性がある。アブレーシブ物品が急速に摩耗すると、材料除去率の低下につながる可能性があり、その結果、そのアブレーシブ物品を頻繁に交換しなければならない。さらに、望ましくない表面欠陥のために、さらなるつや出し工程が必要となる可能性もある。アブレーシブ物品の頻繁な交換と、追加のつや出し工程のいずれもが、製造を遅らせ、アブレーシブ物品の廃棄に伴う廃棄物が増加する。
そのような次第で、改良されたアブレーシブ物品が望ましい。
添付の図面を参照することにより、本明細書の開示がよりよく理解され、その多くの特徴と利点が当業者に明確となるであろう。
例示的なコーテッドアブレーシブ物品の図面である。 例示的なストラクチャードアブレーシブ物品の図面である。 例示的なボンデッドアブレーシブ物品の図面である。
一つの特定な実施態様においては、そのアブレーシブ物品が、バインダーを用いて結合された研磨粒を含んでいる。そのバインダーには、マトリックスポリマーと、そのマトリックスポリマーの中に分散された両親媒性ブロックコポリマーとが含まれる。マトリックスポリマーは、その内部に他の物質を埋め込んだり、分散させたりしているマトリックス、すなわち連続相を形成するポリマーである。一つの例においては、マトリックスポリマーとしては、エポキシ、アクリル樹脂、フェノール樹脂、またはそれらの組合せが挙げられる。両親媒性ブロックコポリマーには、マトリックスポリマーと混和性のあるポリマーブロック(すなわち本明細書においては「フィリックブロック(philic block)」と呼ばれる)が含まれる。両親媒性ブロックコポリマーとしては、マトリックスポリマーと非混和性であるポリマーブロック(すなわち本明細書においては「フォビックブロック(phobic block)」と呼ばれる)が含まれる。両親媒性ブロックコポリマーの例としては、以下のものが挙げられる:ポリエチレンオキシド−ポリブチレンオキシドブロックコポリマー(PEO−PBO)、ポリメチルメタクリレート−ポリブタジエン−ポリメチルメタクリレートブロックコポリマー、またはそれらの組合せ。そのアブレーシブ物品を、その中で、研磨粒がバインダーを用いてバッキングに結合されているコーテッドアブレーシブ物品とすることができる。
一つの例示的な方法においては、硬化してマトリックスポリマーを形成することが可能なポリマー前駆体を含み、両親媒性ブロックコポリマーを含むバインダー配合物を、バッキングの上にコーティングすることができる。一つの例においては、そのバインダー配合物を研磨粒と共に混合してスラリーを形成させ、それをバッキングの上にコーティングする。また別な例においては、メイクコート(make coat)としてバインダー配合物を適用し、そのコーティングの中に研磨粒を付着させることもできる。さらなる例においては、バインダー配合物を、付着させた研磨粒の上にサイズコートとして適用することもできるし、あるいは、研磨粒に対してバッキングの反対側にバックコートとして適用することもできる。またさらなる例においては、バインダー配合物を、メイクコートとバッキングとの間に配したコンプライアント層(compliant layer)として適用することもできる。コーティングした後で、たとえば加熱硬化、放射線硬化、またはそれらの組合せによって、バインダー配合物を硬化させることができる。
一つの例においては、マトリックスポリマーおよび両親媒性ブロックコポリマーを含むバインダーを使用して、研磨粒をバッキングに結合させる。ある実施態様においては、研磨粒を結合させるバインダーが、硬化されたバインダー配合物から形成されている。そのバインダー配合物には、硬化してマトリックスポリマーを形成する前駆体が含まれる。さらに、そのバインダー配合物には両親媒性ブロックコポリマーも含まれる。
一つの例においては、そのマトリックスポリマーが以下のものからなる群から選択される樹脂である:フェノール樹脂、尿素−ホルムアルデヒド樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、エポキシ−アクリレート樹脂、アクリルアミド樹脂、シリコーン樹脂、イソシアヌレート樹脂、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂、ポリイミド樹脂、またはそれらの各種組合せ。特に、そのバインダー配合物には、カチオン的に硬化可能な成分、たとえばエポキシ成分を含むことができる。さらなる例においては、そのバインダー配合物には、フリーラジカル的に硬化可能な成分、たとえばエチレン性不飽和成分、たとえば、アクリレート成分またはアクリルアミド成分を含むことができる。
フェノール樹脂の例としては、レゾールおよびノボラックが挙げられる。レゾールフェノール樹脂では、アルカリ性触媒を使用することができ、ホルムアルデヒド対フェノールの比率が、1以上、たとえば(1:1)から(3:1)までである。ノボラックフェノール樹脂では、酸性触媒を使用することができ、ホルムアルデヒド対フェノールの比率が1未満、たとえば(0.5:1)から(0.8:1)までである。
エポキシ樹脂としては、芳香族エポキシまたは脂肪族エポキシを挙げることができる。芳香族エポキシ成分には、1個または複数のエポキシ基と1個または複数の芳香環が含まれる。芳香族エポキシの例としては以下のものが挙げられる:ポリフェノールから、たとえばビスフェノールから誘導されるエポキシ、たとえばビスフェノールA(4,4’−イソプロピリデンジフェノール)、ビスフェノールF(ビス[4−ヒドロキシフェニル]メタン)、ビスフェノールS(4,4’−スルホニルジフェノール)、4,4’−シクロヘキシリデンビスフェノール、4,4’−ビフェノール、4,4’−(9−フルオレニリデン)ジフェノール、またはそれらの各種組合せ。そのビスフェノールは、アルコキシル化(たとえば、エトキシル化もしくはプロポキシル化)またはハロゲン化(たとえば、臭素化)されていてもよい。ビスフェノールエポキシの例としては、ビスフェノールジグリシジルエーテル、たとえばビスフェノールAまたはビスフェノールFのジグリシジルエーテルが挙げられる。芳香族エポキシのさらなる例としては、以下のものが挙げられる:トリフェニロールメタントリグリシジルエーテル、1,1,1−トリス(p−ヒドロキシフェニル)エタントリグリシジルエーテル、または、モノフェノールから誘導される芳香族エポキシ、たとえば、レソルシノールからの、たとえば、レゾルシンジグリシジルエーテルもしくはヒドロキノンからの、たとえば、ヒドロキノンジグリシジルエーテル。また別な例は、ノニルフェニルグリシジルエーテルである。さらに、芳香族エポキシの例として、エポキシノボラック、たとえば、フェノールエポキシノボラックおよびクレゾールエポキシノボラックが挙げられる。脂肪族エポキシ成分には、1個または複数のエポキシ基を含むが、芳香環は含まない。マトリックスポリマーのためのポリマー前駆体には、1個または複数の脂肪族エポキシを含むことができる。脂肪族エポキシの例としては以下のものを挙げることができる:C2〜C30アルキルのグリシジルエーテル;C3〜C30アルキルの1,2エポキシ;脂肪族アルコールもしくはポリオール、たとえば1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノール、ジブロモネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ポリテトラメチレンオキシド、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、グリセロール、およびアルコキシル化脂肪族アルコール、またはポリオールの、モノもしくはマルチグリシジルエーテル。一つの実施態様においては、その脂肪族エポキシが1個または複数の脂環式環構造を含む。たとえば、その脂肪族エポキシが、1個または複数のシクロヘキセンオキシド構造、たとえば、2個のシクロヘキセンオキシド構造を有することができる。環構造を含む脂肪族エポキシの例としては、以下のものを挙げることができる:水素化ビスフェノールAジグリシジルエーテル、水素化ビスフェノールFジグリシジルエーテル、水素化ビスフェノールSジグリシジルエーテル、ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)メタンジグリシジルエーテル、2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパンジグリシジルエーテル、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、ジ(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)ヘキサンジオエート、ジ(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)ヘキサンジオエート、エチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)、エタンジオールジ(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)エーテル、または2−(3,4−エポキシシクロヘキシル−5,5−スピロ−3,4−エポキシ)シクロヘキサン−1,3−ジオキサン。
1種または複数のカチオン的に硬化可能な成分に加えるかまたはそれらに代えて、バインダー配合物には、1種または複数のフリーラジカル的に硬化可能な成分、たとえば、1種または複数の1個または複数のエチレン性不飽和基を含むフリーラジカル重合性成分、たとえば(メタ)アクリレート(すなわち、アクリレートまたはメタクリレート)官能基成分を含むことができる。
単官能エチレン性不飽和成分の例としては、以下のものが挙げられる:アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルホリン、7−アミノ−3,7−ジメチルオクチル(メタ)アクリレート、イソブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、イソボルニルオキシエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、エチルジエチレングリコール(メタ)アクリレート、t−オクチル(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタジエン(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミドテトラクロロフェニル(メタ)アクリレート、2−テトラクロロフェノキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、テトラブロモフェニル(メタ)アクリレート、2−テトラブロモフェノキシエチル(メタ)アクリレート、2−トリクロロフェノキシエチル(メタ)アクリレート、トリブロモフェニル(メタ)アクリレート、2−トリブロモフェノキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ビニルカプロラクタム、N−ビニルピロリドン、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、ペンタクロロフェニル(メタ)アクリレート、ペンタブロモフェニル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ボルニル(メタ)アクリレート、メチルトリエチレンジグリコール(メタ)アクリレート、またはそれらの各種組合せ。
多官能エチレン性不飽和成分の例としては、以下のものが挙げられる:エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジイルジメチレンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エトキシル化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロポキシル化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテルの両末端(メタ)アクリル酸アダクト、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリレート官能性ペンタエリスリトール誘導体(たとえば、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、もしくはジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート)、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、エトキシル化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、プロポキシル化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、エトキシル化水素化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、プロポキシル化−変性水素化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、エトキシル化ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、またはそれらの各種組合せ。
一つの実施態様においては、そのバインダー配合物に、少なくとも3個の(メタ)アクリレート基たとえば、3〜6個の(メタ)アクリレート基、または5〜6個の(メタ)アクリレート基を有する、1種または複数の成分が含まれる。
シリコーン樹脂としては、たとえば以下のものを挙げることができる:ポリアルキルシロキサン、たとえばジメチルシロキサン、ジエチルシロキサン、ジプロピルシロキサン、メチルエチルシロキサン、メチルプロピルシロキサン、またはそれらの各種組合せのような前駆体から形成される、シリコーンポリマー。一つの特定な実施態様においては、そのポリアルキルシロキサンには、ポリジアルキルシロキサン、たとえばポリジメチルシロキサン(PDMS)が含まれる。また別な例においては、そのシリコーンポリマーが、極性シリコーン、たとえばハライド官能基たとえば塩素およびフッ素を含むシリコーン、またはフェニル官能基を含むシリコーンを含んでいてよい。たとえば、そのシリコーンがトリフルオロプロピルメチルシロキサンポリマーを含んでいてよい。また別な例示的実施態様においては、そのシリコーンがポリフェニルメチルシロキサンを含んでいてよい。
触媒性反応剤およびポリマータイプに依存して、そのバインダー配合物は、熱的に硬化可能であるか、または化学線照射、たとえばUV照射によって硬化可能であって、その結果バインダーを形成する。
バインダー配合物には、触媒および重合開始剤をさらに含むことができる。たとえば、カチオン性重合開始剤は、カチオン的に重合可能な成分の間での反応に触媒作用を有することができる。ラジカル開始剤は、ラジカル重合性成分のフリーラジカル重合を活性化させることができる。重合開始剤は、熱的エネルギーまたは化学線照射によって活性化させることができる。たとえば、重合開始剤にはカチオン性光重合開始剤を含むことができるが、このものは、化学線照射に暴露させたときにカチオン性重合反応を触媒活性化させる。また別な例においては、その重合開始剤にラジカル光重合開始剤を含むことができるが、このものは、化学線照射に暴露させたときにフリーラジカル重合反応を開始させる。化学線照射には、微粒子照射または非微粒子照射が含まれ、電子ビーム照射および電磁線照射が含まれるものとする。一つの特定な実施態様においては、その電磁線照射には、約100nm〜約700nmの範囲内に少なくとも一つの波長を有する、特に電磁線スペクトルの紫外線領域に波長を有する照射線が含まれる。
カチオン性光重合開始剤は、化学線照射に暴露させたときに、少なくとも部分的に重合性のエポキシドまたはオキセタンを生ずることが可能な活性化学種を形成する物質である。たとえば、カチオン性光重合開始剤は、化学線照射に暴露させると、カチオンを生成し、それが、カチオン重合可能な成分、たとえばエポキシまたはオキセタンの反応を開始させることができる。
カチオン性光重合開始剤の例としてはたとえば、弱い求核性のアニオンを含むオニウム塩が挙げられる。例としては、ハロニウム塩、ヨードシル塩もしくはスルホニウム塩、スルホキソニウム塩、またはジアゾニウム塩、またはそれらの各種組合せが挙げられる。カチオン性光重合開始剤のその他の例としては、メタロセン塩が挙げられる。
具体例においては、そのバインダー配合物に、複合バインダー配合物の全重量に関して、約0.1重量%〜約15重量%、たとえば約1重量%〜約10重量%の1種または複数のカチオン性光重合開始剤が含まれる。
そのバインダー配合物は、場合によっては、フリーラジカル的に多官能なアクリレートを光硬化させるのに有用な光重合開始剤を含んでいてもよい。フリーラジカル光重合開始剤の例としては、以下のものが挙げられる:ベンゾフェノン(たとえば、ベンゾフェノン、アルキル−置換ベンゾフェノン、もしくはアルコキシ−置換ベンゾフェノン);ベンゾイン(たとえば、ベンゾイン、ベンゾインエーテル、たとえばベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、およびベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインフェニルエーテル、およびベンゾインアセテート);アセトフェノン、たとえばアセトフェノン、2,2−ジメトキシアセトフェノン、4−(フェニルチオ)アセトフェノン、および1,1−ジクロロアセトフェノン;ベンジルケタール、たとえばベンジルジメチルケタール、およびベンジルジエチルケタール;アントラキノン、たとえば2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−tertブチルアントラキノン、1−クロロアントラキノン、および2−アミルアントラキノン;トリフェニルホスフィン;ベンゾイルホスフィンオキシド、たとえば、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド;チオキサントンもしくはキサントン;アクリジン誘導体;フェナゼン誘導体;キノキサリン誘導体;1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−O−ベンゾイルオキシム;1−アミノフェニルケトンもしくは1−ヒドロキシフェニルケトン、たとえば1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、フェニル(1−ヒドロキシイソプロピル)ケトンおよび4−イソプロピルフェニル(1−ヒドロキシイソプロピル)ケトン;またはトリアジン化合物、たとえば、4’’’−メチルチオフェニル−1−ジ(トリクロロメチル)−3,5−S−トリアジン、S−トリアジン−2−(スチルベン)−4,6−ビストリクロロメチル、もしくはパラメトキシスチリルトリアジン;またはそれらの各種組合せ。
光重合開始剤の例としては、以下のものが挙げられる:ベンゾインもしくはその誘導体たとえば、α−メチルベンゾイン;α−フェニルベンゾイン;α−アリルベンゾイン;α−ベンジルベンゾイン;ベンゾインエーテルたとえばベンジルジメチルケタール(たとえば、Ciba Specialty Chemicalsから商品名「IRGACURE 651」として入手可能)、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインn−ブチルエーテル;アセトフェノンもしくはその誘導体、たとえば2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−1−プロパノン(たとえば、Ciba Specialty Chemicalsから商品名「DAROCUR 1173」として入手可能)および1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(たとえば、Ciba Specialty Chemicalsから商品名「IRGACURE 184」として入手可能);2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−(4−モルホリニル)−1−プロパノン(たとえば、Ciba Specialty Chemicalsから商品名「IRGACURE 907」として入手可能);2−ベンジル−2−(ジメチルアミノ)−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノン(たとえば、Ciba Specialty Chemicalsから商品名「IRGACURE 369」として入手可能);またはそれらのブレンド物。
その他の有用な光重合開始剤としては、以下のものが挙げられる:ピバロインエチルエーテル、アニソインエチルエーテル;アントラキノンたとえばアントラキノン、2−エチルアントラキノン、1−クロロアントラキノン、1,4−ジメチルアントラキノン、1−メトキシアントラキノン、ベンズアントラキノンハロメチルトリアジンなど;ベンゾフェノンもしくはその誘導体;本明細書で先に記述したヨードニウム塩もしくはスルホニウム塩;チタン錯化合物たとえばビス(η5−2,4−シクロペンタジエニル)ビス[2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロリル)フェニル)チタン(これまたCiba Specialty Chemicalsから商品名「CGI784DC」として市販);ハロメチルニトロベンゼンたとえば4−ブロモメチルニトロベンゼンなど;またはモノ−もしくはビス−アシルホスフィン(たとえばCiba Specialty Chemicalsから、商品名「IRGACURE 1700」、「IRGACURE 1800」、「IRGACURE 1850」、および「DAROCUR 4265」として入手可能)。適切な光重合開始剤としては、上述の化学種のブレンド物、たとえばα−ヒドロキシケトン/アクリルホスフィンオキシドブレンド物(たとえばCiba Specialty Chemicalsから商品名「IRGACURE 2022」として入手可能)を挙げることができる。
さらなる好適なフリーラジカル光重合開始剤としては、イオン性染料−対イオン化合物が挙げられるが、このものは、化学線を吸収してフリーラジカルを発生させ、それによって、アクリレートの重合を開始させることができる。
光重合開始剤は、バインダー配合物の全重量を基準にして、約20重量%以下、たとえば約10重量%以下、または約5重量%以下の量で存在させることができる。たとえば、光重合開始剤は、バインダー配合物の全重量を基準にして、0.1重量%〜20.0重量%、たとえば0.1重量%〜5.0重量%、または0.1重量%〜2.0重量%の量で存在させることができるが、ただし、この範囲外の量を使用しても有用となりうる。一つの例においては、光重合開始剤を、少なくとも約0.1重量%の量、たとえば少なくとも約1.0重量%、または1.0重量%〜10.0重量%の量で存在させる。
バインダー配合物にはさらに、他の成分たとえば溶媒、可塑剤、架橋剤、連鎖移動剤、安定剤、分散剤、硬化剤、反応媒体、および分散体の流動性に影響する薬剤などが含まれていてもよい。たとえば、バインダー配合物にはさらに、ポリオール、ポリアミン、直鎖状もしくは分岐状のポリグリコールエーテル、ポリエステル、およびポリラクトンからなる群から選択される1種または複数の連鎖移動剤が含まれていてもよい。
たとえば、バインダー配合物に、ポリエーテル主鎖を有する成分が含まれていてもよい。ポリエーテル主鎖を有する成分の例としては、以下のものが挙げられる:ポリテトラメチレンジオール、ポリテトラメチレンジオールのグリシジルエーテル、ポリテトラメチレンジオールのアクリレート、1個または複数のポリカーボネートを含むポリテトラメチレンジオール、またはそれらの組合せ。ある実施態様においては、分散媒相には、5重量%〜20重量%の間のポリエーテル主鎖を有する化合物が含まれている。
分散媒相には、1種または複数のヒドロキシ−官能性成分を含むことができる。ヒドロキシ−官能性成分としては、モノオール(1個のヒドロキシ基を含むヒドロキシ−官能性成分)またはポリオール(2個以上のヒドロキシ基を含むヒドロキシ−官能性成分)が挙げられる。
ヒドロキシ−官能性成分の代表例としては、以下のものが挙げられる:アルカノール、ポリオキシアルキレングリコールのモノアルキルエーテル、アルキレングリコールのモノアルキルエーテル、アルキレンおよびアリールアルキレングリコール、たとえば1,2,4−ブタントリオール、1,2,6−ヘキサントリオール、1,2,3−ヘプタントリオール、2,6−ジメチル−1,2,6−ヘキサントリオール、(2R,3R)−(−)−2−ベンジルオキシ−1,3,4−ブタントリオール、1,2,3−ヘキサントリオール、1,2,3−ブタントリオール、3−メチル−1,3,5−ペンタントリオール、1,2,3−シクロヘキサントリオール、1,3,5−シクロヘキサントリオール、3,7,11,15−テトラメチル−1,2,3−ヘキサデカントリオール、2−ヒドロキシメチルテトラヒドロピラン−3,4,5−トリオール、2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオール、1,3−シクロペンタンジオール、trans−1,2−シクロオクタンジオール、1,16−ヘキサデカンジオール、3,6−ジチア−1,8−オクタンジオール、2−ブチン−1,4−ジオール、1,2−もしくは1,3−プロパンジオール、1,2−もしくは1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1−フェニル−1,2−エタンジオール、1,2−シクロヘキサンジオール、1,5−デカリンジオール、2,5−ジメチル−3−ヘキシン−2,5−ジオール、2,2,4−トリメチルペンタン−1,3−ジオール、ネオペンチルグリコール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2,7−ジメチル−3,5−オクタジイン−2−7−ジオール、2,3−ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、分子量約200〜約10,000のポリオキシエチレンもしくはポリオキシプロピレングリコールもしくはトリオール、各種の分子量のポリテトラメチレングリコール、ポリ(オキシエチレン−オキシブチレン)ランダムもしくはブロックコポリマー、酢酸ビニルコポリマーの加水分解もしくは部分加水分解によって生成したペンダントヒドロキシ基を含むコポリマー、ペンダントヒドロキシル基を含むポリビニルアセタール樹脂、ヒドロキシ−官能性(たとえば、ヒドロキシ末端)ポリエステルまたはヒドロキシ−官能性(たとえば、ヒドロキシ末端)ポリラクトン、脂肪族ポリカーボネートポリオール(たとえば、脂肪族ポリカーボネートジオール)、ヒドロキシ−官能性(たとえば、ヒドロキシ末端)ポリエーテル(たとえば、150〜4000g/mol、150〜1500g/mol、もしくは150〜750g/molの範囲の数平均分子量を有するポリテトラヒドロフランポリオール)、またはそれらの組合せ。ポリオールの例としてはさらに、脂肪族ポリオール、たとえばグリセロール、トリメチロールプロパン、または糖アルコール、たとえばエリスリトール、キシリトール、マンニトールもしくはソルビトールが挙げられる。具体的な実施態様においては、バインダー配合物が、1種または複数の脂環式ポリオール、たとえば1,4−シクロヘキサン−ジメタノール、スクロース、または4,8−ビス(ヒドロキシメチル)トリシクロ(5,2,1,0)デカンを含んでいる。
好適なポリエーテルとしては、特に以下のものが挙げられる:ポリオール、たとえば上述のポリオールの存在下に環状エーテルを開環重合させることによって得られる、鎖状もしくは分岐状のポリグリコールエーテル;ポリグリコールエーテル、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールもしくはポリテトラメチレングリコール、またはそれらのコポリマー。
また別の、好適なポリエステルとしては以下のものが挙げられる:ポリオールと脂肪族、脂環族もしくは芳香族多官能カルボン酸(たとえば、ジカルボン酸)とをベースとするポリエステル、さらに詳しくは、18℃〜300℃、典型的には18℃〜150℃の温度で液状であるすべての相当する飽和ポリエステル:典型的にはコハク酸エステル、グルタル酸エステル、アジピン酸エステル、クエン酸エステル、フタル酸エステル、イソフタル酸エステル、テレフタル酸エステル、または相当する水素化反応生成物のエステルで、そのアルコール成分が、上述のタイプのものの、たとえばモノマー性もしくはポリマー性ポリオールからなっているもの。
さらなるポリエステルとしては、脂肪族ポリラクトンたとえばε−ポリカプロラクトン、または、たとえばジオールとホスゲンとの重縮合によって得ることが可能なポリカーボネートが挙げられる。バインダー配合物用としては、500〜100,000の平均分子量を有するビスフェノールAのポリカーボネートを使用することができる。
ある実施態様においては、その組成物には、バインダー配合物の全重量に対して、約15重量%以下、たとえば約10重量%以下、約6重量%以下、約4重量%以下、約2重量%以下、または約0重量%のヒドロキシ−官能性成分を含むことができる。一例においては、そのバインダー配合物が、実質的な量のヒドロキシ−官能性成分を含まない。
アルキレンオキシドと組み合わせて縮合反応生成物を得るためのヒドロキシもしくはアミン官能性の有機化合物の例としては、3〜20個の炭素原子を有するポリオール、(C8〜C18)脂肪酸、(C1〜C8)アルカノールアミドたとえば脂肪酸エタノールアミド、脂肪族アルコール、アルキルフェノール、または2〜5個の炭素原子を有するジアミンが挙げられる。そのような化合物を、アルキレンオキシド、たとえばエチレンオキシド、プロピレンオキシドまたはそれらの混合物と反応させる。その反応は、ヒドロキシもしくはアミン含有有機化合物のアルキレンオキシドに対するモル比をたとえば(1:2)から(1:65)までとして、起こさせることができる。その縮合反応生成物は、典型的には、約500〜約10,000の重量平均分子量を有し、分岐状、環状、直鎖状、さらにはホモポリマー、コポリマー、またはターポリマーのいずれとすることも可能である。
バインダー配合物にはさらに、粒子状の充填剤と相互作用をさせるため、および粒子状の充填剤の表面を変性するための分散剤が含まれていてもよい。たとえば、分散剤としては、オルガノシロキサン、官能化オルガニシロキサン、アルキル−置換ピロリドン、ポリオキシアルキレンエーテル、エチレンオキシドプロピレンオキシドコポリマー、またはそれらの組合せが挙げられる。各種の粒子状充填剤のため、特にシリカ充填剤のための好適な表面変性剤としては、シロキサンが挙げられる。
好適なアニオン性分散剤の例としては、以下のものが挙げられる:(C8〜C16)アルキルベンゼンスルホネート、(C8〜C16)アルカンスルホネート、(C8〜C18)α−オレフィンスルホネート、α−スルホ(C8〜C16)脂肪酸メチルエステル、(C8〜C16)脂肪族アルコールスルフェート、モノ−もしくはジ−アルキルスルホサクシネート(それぞれのアルキルは独立して、(C8〜C16)アルキル基である)、アルキルエーテルスルフェート、アルキルエーテルサルフェート、約8〜約18個の炭素の脂肪族鎖を有するカルボン酸もしくはイソチオネートの(C8〜C16)塩、たとえば、ジエチルヘキシルスルホコハク酸ナトリウム、メチルベンゼンスルホン酸ナトリウム、もしくはビス(2−エチルヘキシル)スルホコハク酸ナトリウム(たとえば、Aerosol OTまたはAOT)。
分散剤の量は、0重量%〜5重量%の範囲である。より典型的には、分散剤の量は、0.1重量%〜2重量%の間である。シランは、典型的には、ナノサイズの粒子状充填剤の表面上の表面活性部位の分子としての量に対して、40mol%〜200mol%、特には60mol%〜150mol%の濃度で使用する。一般的には、バインダー配合物には、バインダー配合物の全重量を基準にして、約5重量%以下の分散剤、たとえば約0.1重量%〜約5.0重量%の分散剤が含まれる。
バインダー配合物には、マトリックスポリマーに加えて、両親媒性ブロックコポリマーをさらに含む。両親媒性ブロックコポリマーには、そのマトリックスポリマーとは混和性の少なくとも一つのブロックと、そのマトリックスポリマーとは不混和性の少なくとも一つのブロックとが含まれる。「フィリックブロック(philic block)」とは、マトリックスポリマーとは混和性であるであり、「フォビックブロック(phobic block)」とは、マトリックスポリマーと不混和性のブロックである。フィリックブロックおよびフォビックブロックの性質は、マトリックスポリマーの性質と共に変化する。たとえば、マトリックスポリマーの性質に依存して、フィリックブロックには、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリ(エチレンオキシド−co−ポリプロピレンオキシド)、ポリ(エチレンオキシド−ran−ポリプロピレンオキシド)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリアクリルアミド、またはそれらの組合せを含むことができる。フォビックブロックの例としては、少なくとも4、たとえば少なくとも5、さらには少なくとも6のアルキル数(アルキル鎖中の炭素の個数)を有するポリアルキルオキシドを含むことができる。一つの例においては、そのアルキル数が、4〜20の間である。たとえば、フォビックブロックとしては、ポリブチレンオキシド、ポリヘキシレンオキシド、ポリドデシレンオキシド、またはそれらの各種組合せが挙げられる。さらなる例においては、フォビックブロックとしては、シリコーンポリマーたとえばポリジメチルシロキサン、直鎖もしくは分岐状鎖アルケンモノマーからのポリマーたとえばポリオレフィン、スチレン系ブロック、ポリエチルヘキシルメタクリレート、またはそれらの各種組合せが挙げられる。ポリオレフィンブロックの例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンプロピレンコポリマー、エチレンブテンコポリマー、エチレンオクテンコポリマー、ポリイソプレン、またはそれらの各種組合せが挙げられる。そのようなフィリックブロックおよびフォビックブロックは、エポキシ樹脂、アクリレート樹脂、またはそれらの組合せのマトリックスポリマーを含む系で使用するのに特に適している。
そのような次第で、両親媒性ブロックコポリマーの例としては、以下のものが挙げられる:ポリ(エチレンオキシド−b−ブチレンオキシド)ブロックコポリマー(PEO−PBO)、ポリ(エチレンオキシド−b−ヘキシレンオキシド)ブロックコポリマー(PEO−PHO)、ポリ(メチルメタクリレート−b−イソプレンブロックコポリマー(PMMA−PI)、ポリ(メチルメタアシレート−b−スチレン)ブロックコポリマー(PMMA−PS)、ポリアクリルアミド変性PMMA−ポリイソプレンブロックコポリマー、ポリ(エチレンプロピレン−b−エチレンオキシド)ブロックコポリマー(PEP−PEO)、ポリ(ブタジエン−b−エチレンオキシド)ブロックコポリマー(PB−PEO)、ポリ(イソプレン−b−エチレンオキシド)ブロックコポリマー(PI−PEO)、ポリ(ブタジエン−co−スチレン−b−PMMA)、ポリシロキサンとアクリルポリマーとのブロックコポリマー、ポリブチルアクリレートとPMMAとのブロックコポリマー、それらのブロックターポリマー、たとえばポリメチルメタクリレート−ポリブタジエン−ポリメチルメタクリレートブロックコポリマー(PMMA−PB−PMMA)、またはそれらの各種組合せ。
特に、フィリックブロックには、15〜85の範囲のモノマー単位の数を含むことができる。フォビックブロックには、15〜85の範囲のモノマー単位の数を含むことができる。一つの例においては、そのフィリックブロックが、フォビックブロックよりも大きいモノマー単位の数を含んでいる。たとえば、フィリックブロックは、750〜100,000の平均分子量を有していることができる。フォビックブロックは、1,000〜30,000の範囲の平均分子量を有することができる。
具体的には、両親媒性ブロックコポリマーをマトリックスポリマー前駆体と混合した後で、硬化させる。そのような次第で、その両親媒性ブロックコポリマーは、バインダー配合物の中に分散される。硬化させた後では、両親媒性ブロックコポリマーが、その中でフォビックブロックポリマーが、フィリックブロックによって取り囲まれている領域を形成し、フィリックブロックがマトリックスポリマーと直接接触している状態にある。そのような領域は、本来的に球状であってもよいし、あるいは、長い筒状の構造であってもよい。いずれの場合においても、両親媒性ブロックコポリマー領域の断面の直径として定義されるその特性直径(characteristics diameter)は、100ナノメートル以下とすることができる。たとえば、その領域の直径を、10ナノメートル〜50ナノメートルの範囲とすることができる。
さらに、両親媒性ブロックコポリマーは、バインダー配合物の中に、マトリックスポリマーの重量を基準にして0.5重量%〜10重量%の範囲の量で含まれていてよい。たとえば、バインダー配合物には、マトリックスポリマーの重量を基準にして1.0重量%〜8重量%の範囲、たとえば1.5重量%〜6.5重量%の範囲の量で、両親媒性ブロックコポリマーを含んでいてよい。
バインダー配合物にはさらに、粒子状充填剤、たとえばナノ粒子充填剤(すなわち、ナノサイズの粒子状充填剤)を含んでいてもよい。粒子状充填剤は、無機粒子、たとえば金属(たとえば、鋼、銀、もしくは金)または金属錯体、たとえば、金属酸化物、金属水酸化物、金属硫化物、金属ハロゲン錯体、金属炭化物、金属リン酸塩、無機塩(たとえば、CaCO)、セラミック、またはそれらの各種組合せなどの粒子からなっていてもよい。金属酸化物の例としては、以下のものが挙げられる:ZnO、CdO、SiO、TiO、ZrO、CeO、SnO、MoO、WO、Al、In、La、Fe、CuO、Ta、Sb、Sb、またはそれらの組合せ。複数の金属を含む混合酸化物が存在していてもよい。ナノ粒子としては、たとえば、ZnO、SiO、TiO、ZrO、SnO、Al、同時生成させたシリカアルミナ、およびそれらの混合物からなる群から選択される粒子が挙げられる。
溶液ベースのプロセスによって形成された粒子状充填剤、たとえばゾル法およびゾルゲル法で形成されたセラミックスは、複合バインダーにおいては特に好適である。水溶液の状態にあるコロイダルシリカは、「LUDOX」(E.I.DuPont de Nemours and Co.,Inc.,Wilmington,Del.)、「NYACOL」(Nyacol Co.,Ashland,Ma.)および「NALCO](Nalco Chemical Co.,Oak Brook,Ill.)のような商品名で市販されている。市販されているゾルの多くは塩基性であって、アルカリ、たとえば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、または水酸化アンモニウムによって安定化されている。特に好適なのは、ゾル形成シリカおよびゾル形成アルミナである。ゾルは、1種または複数の適切な表面処理剤を、ゾルの中の無機酸化物基材粒子と反応させることによって、官能化させることができる。
一つの特定な実施態様においては、その粒子状充填剤が、サブミクロンサイズである。たとえば、粒子状充填剤を、ナノサイズ粒子状充填剤、たとえば約3nm〜約500nmの平均粒径を有する粒子状充填剤とすることができる。ある例示的実施態様においては、その粒子状充填剤が、約3nm〜約200nm、たとえば約3nm〜約100nm、約3nm〜約50nm、約8nm〜約30nm、または約10nm〜約25nmの平均粒径を有している。具体的な実施態様においては、平均粒径が、約500nm以下、たとえば約200nm以下、約100nm未満、または約50nm以下である。粒子状充填剤の場合、その平均粒径は、小角中性子散乱(SANS)分布曲線におけるピーク容積分率に相当する粒径、またはSANS分布曲線の0.5累積容積分率に相当する粒径として定義することができる。
粒子状充填剤はさらに、平均粒径の約2.0倍以下の半値幅を有する、狭い分布曲線を特徴とすることもできる。たとえば、その半値幅を約1.5以下、または約1.0以下とすることができる。分布の半値幅は、分布曲線の最大高さの半分における幅、たとえば分布曲線ピークにおける粒子の分率の半分である。一つの特定な実施態様においては、その粒径分布曲線がモノモーダルである。別な実施態様においては、その粒径分布がバイモーダルであるか、またはその粒径分布の中に二つ以上のピークを有している。
ある例示的実施態様においては、そのバインダー配合物が、溶液法で形成されたナノコンポジットであり、それはポリマー成分と粒子状充填剤を含む配合物であって、その中では、粒子状充填剤が溶液の中で形成され、バインダー配合物の中に移されるまでは、溶液の中に留まっている。たとえば、粒子状充填剤を水溶液中で調製し、マトリックスポリマーと混合する。そのような懸濁液を調製するためのプロセスの例には以下の工程が含まれる:水溶液、たとえばシリカ水溶液を導入する工程;そのシリケートをたとえば重縮合させて、3nm〜50nmの粒径とする工程;そのようにして得られたシリカゾルをアルカリ性のpHに調節する工程;場合によっては、そのゾルを濃縮する工程;そのゾルをバインダー配合物の構成成分と混合する工程;および、場合によっては、その配合物から水またはその他の溶媒構成成分を除去する工程。たとえば、シリケート水溶液、たとえばアルカリ金属シリケート溶液(たとえば、ケイ酸ナトリウムまたはケイ酸カリウム溶液)は、溶液の重量を基準にして20重量%〜50重量%の間の濃度で導入する。そのシリケートを、たとえば、酸性イオン交換樹脂を用いてそのアルカリ金属シリケート溶液を処理することによって重縮合させて、3nm〜50nmの粒径とする。そのようにして得られたシリカゾルを、アルカリ性のpH(たとえば、pH>8)に調節して、存在している粒子がさらに重縮合または凝集することに対して安定化させる。場合によっては、そのゾルを、たとえば蒸留によって濃縮して、典型的には約30〜40重量%のSiO濃度とすることもできる。そのゾルを、バインダー配合物の構成成分と混合する。その後で、懸濁液から水またはその他の溶媒構成成分を除去する。一つの特定な実施態様においては、その懸濁液が、実質的に水を含まない。
一つの特定な実施態様においては、そのバインダー配合物が、バインダー配合物の全重量を基準にして約10重量%〜約90重量%のカチオン重合性化合物、約40重量%以下のラジカル重合性化合物、約0.5重量%〜10重量%の両親媒性ブロックコポリマー、および場合によっては約5重量%〜約80重量%の粒子状充填剤を含む。バインダー配合物成分の量を合計したものが100重量%となり、したがって、1種または複数の成分の量が決まると、その他の成分の量は、その量を合計したものが100重量%以下になるようにするということを理解されたい。
バインダー配合物を硬化させることによって、アブレーシブ物品の中に研磨粒を結合させることができる。研磨粒は、各種の研磨粒のいずれか1種または組合せから形成させることができるが、そのような研磨粒としては、以下のものが挙げられる:シリカ、アルミナ(溶融または焼結)、ジルコニア、ジルコニア/アルミナ酸化物、炭化ケイ素、ガーネット、ダイヤモンド、立方晶窒化ホウ素、窒化ケイ素、セリア、二酸化チタン、二ホウ化チタン、炭化ホウ素、酸化スズ、炭化タングステン、炭化チタン、酸化鉄、クロミア、フリント、エメリー、それらの凝集物、またはそれらの各種組合せ。たとえば、研磨粒は、下記のものからなる群から選択することができる:シリカ、アルミナ、ジルコニア、炭化ケイ素、窒化ケイ素、窒化ホウ素、ガーネット、ダイヤモンド、共溶融アルミナジルコニア、セリア、二ホウ化チタン、炭化ホウ素、フリント、エメリー、アルミナ窒化物、またはそれらのブレンド物。特別な実施態様が、主としてアルファ−アルミナからなる高密度の研磨粒を使用することによって作られてきた。さらに、研磨粒には、1種または複数の上述の研磨材物質の粒子の凝集物が含まれていてもよい。
それらの研磨粒が、特定の形状を有していてもよい。そのような形状の例を挙げれば、棒状、三角形状、ピラミッド状、円錐状、中実球状、中空球状などである。別な方法として、研磨粒がランダムな形状をしていてもよい。
研磨粒は一般的には、2000ミクロン以下、たとえば約1500ミクロン以下の平均粒度を有している。また別な例においては、研磨粒のサイズが、約750ミクロン以下、たとえば約350ミクロン以下である。たとえば、研磨粒のサイズは、少なくとも0.1ミクロン、たとえば約0.1ミクロン〜約1500ミクロン、より典型的には約0.1ミクロン〜約200ミクロンまたは約1ミクロン〜約100ミクロンとすることができる。研磨粒の粒度は典型的には、研磨粒の最大の寸法と規定される。一般的には、粒度の範囲分布が存在する。場合によっては、粒度分布が厳密に調節される。
研磨粒とバインダー配合物と含む、ブレンドされた研磨材スラリーにおいては、研磨粒が、研磨材スラリーの約10%〜約90%、たとえば約30%〜約80%を占める。別な方法においては、バインダー配合物を表面の上にコーティングし、研磨粒を付着させることもできる。
両親媒性ブロックコポリマーを含むバインダー配合物を、スラリーベースのプロセスで使用することもできるし、あるいは、コーティングとして使用することもできる。たとえば、研磨粒を両親媒性ブロックコポリマーを含むバインダー配合物と共に混合して、スラリーを形成させることもできる。そのようなスラリーは、バッキング、たとえばフィルムバッキングまたは織布の上に付着させることができる。次いでそのバインダー配合物を、マトリックスポリマーの性質、その重合開始剤、または触媒に応じて、たとえば加熱硬化によるか、または化学線照射に暴露させることによって、硬化させることができる。
また別な例示的実施態様においては、両親媒性ブロックコポリマーを含むバインダー配合物をバッキングの上にコーティングし、次いで、研磨粒を付着させるか、またはコーティングの中に突き出させる。たとえば、バッキングの上にバインダー配合物をコーティングし、その後でバインダー配合物を硬化させることが可能で、その研磨粒は、静電的に付着させることができる。バインダー配合物は、マトリックスポリマーの性質、随伴している触媒、および随伴している重合開始剤に応じて、たとえば加熱硬化または化学線照射によって硬化させることができる。化学線照射には、電磁線照射、たとえば紫外線照射、または粒子照射、たとえば電子ビーム照射が含まれる。特に、化学線照射には紫外線照射が含まれる。
さらなる例示的実施態様においては、そのバインダー配合物を、コーティング、たとえばバックサイズコート、コンプライアント層、サイズコーティング、または含浸剤(saturant)として使用することができる。たとえば、バインダー配合物を、バッキングの裏側に適用することができる。また別な例においては、バインダー配合物を、表側の表面上、またはメイクコートとバッキングとの間のバッキングの研磨材側のコンプライアント層として適用することもできる。さらなる例においては、バインダー配合物を、付着させた研磨粒の上にコーティングして、サイズコートを形成させることも可能である。特定の例においては、バインダー配合物を、布を含むバッキングのための含浸剤として使用することもできる。次いで、コーティングを、そのブロックポリマー性質、およびバインダー配合物に随伴する触媒または重合開始剤に応じて、加熱硬化を使用するか、または化学線照射に暴露させて硬化させることができる。
図1に、コーテッドアブレーシブ物品100の例示的実施態様を示しているが、それには、バッキングまたは支持要素102に対して固定された研磨粒106が含まれている。一般的には、メイクコート104によって研磨粒106が、バッキング102に固定されている。メイクコート104にはバインダーが含まれていて、それは、硬化されたバインダー配合物から形成されている。
コーテッドアブレーシブ物品100にはさらに、メイクコート104および研磨粒106に重ね合わせたサイズコート108が含まれていてよい。サイズコート108は、研磨粒106をバッキング102にさらに結合する機能を果たすことが可能であり、研削助剤となることもできる。サイズコート108は一般的には、硬化されたバインダー配合物から形成されているが、それは、メイクコートのバインダー配合物と同一であっても、あるいは異なっていてもよい。
コーティングされた研磨材100にはさらに、場合によっては、バックコート112が含まれていてもよい。バックコート112は、帯電防止層として機能していて、研磨粒がバッキング102の裏側に付着することを防止し、またサンディングの際に削り屑が蓄積するのを防止する。また別な例においては、バックコート112によって、バッキング102に強度を加えることができるし、またバッキング102が周囲条件に暴露されることを防止する機能も果たすことができる。また別な例においては、バインダー配合物がメイクコート104とバッキング102との間に配されたコンプライアント層(図示せず)として機能することも可能である。コンプライアント層は、メイクコート104とバッキング102との間の応力を逃がす機能を果たすことができる。
バッキング102は、軟質であっても、硬質であってもよい。バッキング102は、コーテッド研磨材の製造においてバッキングとして慣用的に使用されていたものを含めて、各種の材料をいくつでも使用して作成することができる。軟質のバッキングの例としては、以下のものが挙げられる:ポリマーフィルム(プライマー処理済みフィルムを含む)、たとえばポリオレフィンフィルム(たとえば、ポリプロピレン、二軸配向ポリプロピレンを含む)、ポリエステルフィルム(たとえば、ポリエチレンテレフタレート)、またはポリアミドフィルム;セルロースエステルフィルム;金属フォイル;メッシュ;フォーム(たとえば、天然スポンジ材料またはポリウレタンフォーム);布地(たとえば、ポリエステル、ナイロン、絹、綿、ポリ−綿、またはレーヨンを含む繊維または糸から作成した布地);紙;加硫紙;加硫ゴム;加硫繊維;不織布;またはそれらの各種組合せ;またはそれらを処理したもの。布地のバッキングは、織布であっても、ステッチボンド不織布であってもよい。具体例においては、バッキング102は、紙、ポリマーフィルム、布地、綿、ポリ−綿、レーヨン、ポリエステル、ポリ−ナイロン、加硫ゴム、加硫繊維、金属フォイル、またはそれらの各種組合せからなる群から選択される。他の例においては、バッキング102には、ポリプロピレンフィルムまたはポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを含む。
バッキング102には、場合によっては、含浸剤、プレサイズ層またはバックサイズ層の少なくとも一つを含んでいてもよい。それらの層の目的は、典型的には、バッキング102をシールすること、あるいはバッキング102の中のヤーンまたは繊維を保護することである。バッキング102が布地材料であるならば、それらの層の少なくとも一つが典型的に使用される。場合によっては、バインダー配合物を、含浸剤またはプレサイズコーティングとして使用することもできる。
バッキング102を、繊維状の強化熱可塑性プラスチック、または無限継ぎ目なし(endless spliceless)ベルトとすることもできる。同様にして、バッキング102を、それから突出したフッキングステム(hooking stem)を有するポリマー基材とすることも可能である。同様にして、バッキング102を、ループファブリック(loop fabric)とすることもできる。
また別な例においては、コーテッドアブレーシブ物品の裏側に感圧粘着剤を組み入れて、そのようにして得られたコーテッドアブレーシブ物品がパッドに固定できるようにする。感圧粘着剤の例としては、以下のものが挙げられる:ラテックスクレープ、ロジン、ポリアクリレートエステル(たとえば、ポリ(ブチルアクリレート))も含めたアクリル系ポリマーもしくはコポリマー、ビニルエーテル(たとえば、ポリ(ビニルn−ブチルエーテル))、アルキド粘着剤、ゴム粘着剤(たとえば、天然ゴム、合成ゴム、および塩素化ゴム)、またはそれらの混合物。
コーテッドアブレーシブ物品、たとえば図1のコーテッドアブレーシブ物品100は、バインダー配合物または研磨材スラリーを用いてバッキングをコーティングすることによって形成させることができる。場合によっては、バッキングを、コンプライアントコートまたはバックコートを用いてコーティングしてから、メイクコートを用いてコーティングすることも可能である。典型的には、バインダー配合物をバッキングに適用して、メイクコートを形成させる。一つの実施態様においては、研磨粒をバインダー配合物と共に適用するが、この場合研磨粒をバインダー配合物とブレンドして、研磨材スラリーを形成させてから、バッキングに対して適用する。別な方法においては、そのバインダー配合物をバッキングに適用してメイクコートを形成させ、そのメイクコートに研磨粒を、たとえば静電法や空気輸送法によって適用する。バインダー配合物は、たとえば加熱法または化学線照射暴露法によって硬化させる。
場合によっては、メイクコートおよび研磨粒の上にサイズコートを適用する。メイクコートを硬化させる前にサイズコートを適用して、メイクコートとサイズコートを同時に硬化させることも可能である。別な方法においては、メイクコートを硬化させた後にサイズコートを適用し、サイズコートは別途に硬化させる。
さらなる例においては、コーテッドアブレーシブ物品が、サイズコートの上に適用したスーパーサイズコートを有するようにすることもできる。スーパーサイズコートに、バインダー配合物が含まれていてもよい。それに加えて、またはその代わりに、スーパーサイズコートに研削助剤または目詰まり防止材(anti−loading material)が含まれていてもよい。目詰まり防止材の例としては、金属シリケート、シリカ、金属炭酸塩、金属硫酸塩、またはそれらの各種組合せが挙げられる。金属シリケートは、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウムカリウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸カルシウム、またはそれらの各種組合せからなるものが含まれていてよい。一つの実施態様においては、ケイ酸マグネシウムにはタルクが含まれ、ケイ酸アルミニウムカリウムにはマイカが含まれ、ケイ酸アルミニウムにはクレーが含まれ、そしてケイ酸カルシウムにはウォラストナイトが含まれる。シリカは、溶融シリカ、ヒュームドシリカ、および沈降無定形シリカからなる群から選択することができる。金属炭酸塩としては、炭酸カルシウムが挙げられる。金属硫酸塩としては、水和硫酸カルシウムまたは無水硫酸カルシウムが挙げられる。さらなる例においては、目詰まり防止材としては、長鎖脂肪酸の金属塩、たとえば金属ステアレート、たとえば、ステアリン酸のナトリウム、カルシウム、亜鉛またはマグネシウム塩が挙げられる。
メイクコート、サイズコート、コンプライアントコート、またはバックコートを形成するバインダー配合物には、マトリックスポリマーおよび両親媒性ブロックコポリマーを含むことができる。バインダー配合物には、狭い粒径分布を有するサブミクロンサイズの粒子状充填剤、たとえばナノサイズの粒子状充填剤を含むことができる。一つの特定な実施態様においては、そのバインダー配合物を硬化させて、サイズコートを形成させる。また別な実施態様においては、そのバインダー配合物を硬化させて、メイクコートを形成させる。別な方法においては、そのバインダー配合物を硬化させて、任意層であるコンプライアントコートまたは任意層であるバックコートを形成させることができる。
さらなる実施態様においては、両親媒性ブロックコポリマーを含むバインダー配合物が、バッキングの上に形成されたバインダー配合物を使用した表面模様のパターンを有する、形状設計(engineered)研磨材における特定の用法を見出すこともできる。形状設計研磨材もしくはストラクチャード研磨材の例を、図2に示す。形状設計研磨材もしくはストラクチャード研磨材200は、バッキングの上に配された形状構造を有するコーテッド研磨材である。ストラクチャード研磨材には、バッキング202と、研磨粒を含む層204とが含まれる。バッキング202は、図1のバッキング102に関連して先に記載された材料によって形成することができる。
層204がパターン化されて、表面構造206を有している。たとえば、バインダー配合物の一部を、半球状、ピラミッド状、列状、プリズム状、それらの切頭状、またはそれらの各種組合せの形状とすることができる。具体的な例においては、たとえばスラリーの形態のバインダー配合物と研磨粒とをバッキングに適用して、そのスラリーの中に、パターンを捺印(imprint)、押印(stamp)または圧印(press)することができる。
層204は、1層または複数のコートとして形成させることができる。たとえば、層204には、メイクコート、場合によってはサイズコート、さらに場合によってはスーパーサイズコートを含むことができる。層204には、一般的には、研磨粒およびバインダーが含まれる。一つの例示的実施態様においては、その研磨粒をバインダー配合物と共にブレンドして、研磨材スラリーを形成させる。別な方法においては、バインダーをバッキング202の上にコーティングした後に、そのバインダーに研磨粒を適用する。場合によっては、機能性の粉体を層204の上に適用して、層204がパターン化用ツールに粘着することを防止することもできる。バインダーは、マトリックスポリマーおよび両親媒性ポリマーを含む硬化させたバインダー配合物から形成させることができる。ストラクチャードアブレーシブ物品200には、場合によってはコンプライアントコートおよびバックコート(図示せず)が含まれていてもよい。それらのコートは、先に説明したような機能を果たすことができる。
さらなる例においては、バインダー配合物を使用して、ボンデッドアブレーシブ物品、たとえば図3に示したアブレーシブ物品300を形成させることができる。一つの特定な実施態様においては、そのバインダー配合物および研磨粒をブレンドして、研磨材スラリーを形成させる。研磨材スラリーを型に適用して、コロイド状のバインダー配合物を硬化させる。そのようにして得られたアブレーシブ物品、たとえば物品300には、所望の形状の中にバインダーによって結合された研磨粒が含まれる。
一つの特定な実施態様においては、そのアブレーシブ物品が、両親媒性ブロックコポリマーをポリマー前駆体およびその他の構成成分とブレンドすることによって形成される。たとえば、エポキシ前駆体を両親媒性ブロックコポリマーと混合して、バインダー配合物を形成させる。そのバインダー配合物を、基材たとえばバッキングまたは型に適用する。研磨粒もまた、バインダー配合物を含むスラリーの一部としてかまたはバインダー配合物とは別途にかのいずれかで、基材に適用する。そのバインダー配合物を硬化させる。たとえば、バインダー配合物を加熱硬化させることもできる。また別な例においては、照射、たとえば化学線照射に暴露させることによって、バインダー配合物を硬化させることも可能である。
ナノコンポジットバインダーを用いてコーテッドアブレーシブ物品のためのメイクコートを形成させる場合には、そのナノコンポジットバインダー配合物をバッキングに適用し、その配合物の上に研磨粒を適用することもできる。別な方法として、研磨粒の上にバインダー配合物を適用して、サイズコートを形成させることもできる。また別な例においては、バインダー配合物と研磨粒とをブレンドし、同時に適用することによって、基材の上にコーティングを形成させたり、型に充填させたりすることもできる。一般的には、熱エネルギー、または化学線照射、たとえば紫外線照射を使用して、バインダー配合物を硬化させることができる。
上述のバインダー配合物、バインダー、アブレーシブ物品、およびそれらを形成させるための方法の実施態様は、特に有利である。たとえば、上述のバインダー配合物から形成されるアブレーシブ物品は、低い研磨粒ロスを示し、改良された表面品質を与えることができる。たとえば、微細な研磨粒、たとえば200ミクロン以下の研磨粒を使用する場合、レンズの光学的品質および金属製品の光沢仕上げが改良される。さらには、ある種の実施態様が、アブレーシブ物品の寿命を改良することによって、研削および研磨工程のコストを削減し、したがって、製品コストを低減させる。
一つの例においては、上述のアブレーシブ物品が、望ましい表面特性を有する研磨表面を与える。たとえば、上述のアブレーシブ物品が望ましいRz性能を与えるが、これについては以下の実施例において定義する。一つの具体的な例においては、そのバインダーが、以下の実施例セクションにおいて説明するRz指数試験によって求めて、約100マイクロインチ以下のRz指数を示す。たとえば、バインダーのRz指数を、約75マイクロインチ以下、たとえば約50マイクロインチ以下、または約45マイクロインチ以下とすることができる。具体的には、Rz指数が、10マイクロインチ以下、たとえば5マイクロインチ以下であってよい。
さらなる例示的実施態様においては、上述のバインダー配合物から形成されたコーテッドアブレーシブ物品がさらに、望ましい素材除去率を示すこともできる。たとえば、素材除去性能(Stock Removal Performance)を、以下の実施例の記述に従って求めることができる。たとえば、その素材除去性能は、以下の実施例セクションに説明する素材除去性能試験によって求めて、少なくとも約0.7グラム(g)である。たとえば、その素材除去性能が、少なくとも約0.9g、たとえば少なくとも約1.0g、または少なくとも約1.1gとすることができる。
さらに、上述の両親媒性ブロックコポリマーを含むバインダー配合物から形成されたコーテッドアブレーシブ物品は、望ましい研磨粒の保持率(retention)を示す。一つの可能な説明は、衝撃または亀裂に対する抵抗性である。バインダー配合物の内部で亀裂が生長すると、研磨粒のロスにつながり、その結果、摩耗速度が低下し、研磨した物品において表面欠陥が生じうる。上述のバインダー配合物から形成されたコーテッドアブレーシブ物品は、望ましい耐衝撃性を示し、たとえば、以下において説明するような衝撃圧痕指数(Impact Imprint Index)が低い。たとえば、バインダー配合物の衝撃圧痕指数を、15mm以下、たとえば13mm以下、さらには12.5mm以下とすることができる。
実施例1
バインダー性能は、衝撃によって生ずる損傷に対する抵抗性を基準として、求めることができる。たとえば、衝撃試験を使用してバインダーの試験をすることができる。バインダー配合物を調製し、冷間圧延スチールパネルの上に、ドローダウンバーを用いて15ミルの厚みでコーティングする。基材であるスチールパネルは、P320グリットNORTON A275ディスクを使用し、DAサンダーによってサンドペーパー仕上げを行い、次いでイソプロピルアルコールを用いて3回洗浄してから、バインダー配合物を用いたコーティングをする。そのコーティングしたパネルについて、ASTM D2794−93に記載の装置と同様の、Gardner Drop Test装置を使用して、4in−lbの荷重で試験する。パネルのコーティングが無い側に、金属ボールで衝撃を与える。衝撃を与えた後で、その衝撃によって生じたコーティングにおける圧痕の直径を、肉眼で観察し、測定する。少なくとも3回の繰り返し実験を行い、平均直径を求める。
さらに、標準化されたアブレーシブ物品構成にあるバインダー配合物を試験することによって、バインダー性能を求める。具体的な試験においては、研磨粒およびメイクコートの上のサイズコートとしてバインダー配合物を使用する。その研磨粒は、Treibacher製の80ミクロンの加熱処理した半破砕性(semi−friable)酸化アルミニウム(BFRPL)P180グリットであり、メイクコートは、UV−硬化性アクリレートから形成させる。研磨粒およびメイクコートは、ポリエステルバッキングの上に載っている。
1インチ×30インチの寸法を有する研磨材テープを、微細仕上げ器(microfinisher)試験装置の中にセットする。ノジュラー鉄製の、直径2インチのワークピースリング(workpiece ring)を、その装置の中に挿入する。試験の際には、そのワークピースがその中心軸の周りを両方向に回転し、また、中心軸に沿って前後に振動する。冷却剤として、ワークピースに鉱物質のシールオイルを適用する。セグメント化インディアストーン製のシューが、研磨材テープに対する裏側支持を与える。微細仕上げ器の設定は、リング速度設定2.25、振動速度4.5、圧力設定95psiである。
ワークピースの試験をする前に、100ミクロンのフィルム(Q151)を使用してリングを前処理してから、非研磨性のクリーナーを使用して洗浄し、風乾させる。リングおよびリング表面の初期測定を実施する。Mettler Toledo XP404S天秤を使用して、リングの重量を測定する。Mahr M2 Perthometerを使用して、表面品質を測定する。リングを装置に搭載し、研磨材テープを挿入する。リングをそれぞれの方向に5秒ずつ回転させてから、洗浄、測定をする。
バインダーのRz性能および素材除去性能は、リング表面のRzおよびリングから除去された素材から求める。Rzは、表面の最大高さの平均値である。Rz性能は、ワークピースRz測定についてのバインダー配合物の効果の尺度である。素材除去性能は、研磨効率についてのバインダー配合物の効果の尺度である。
サンプル(コーティング2)は、アクリレート樹脂およびNanostrength(登録商標)M52N(Archema製、ポリメチルメタクリレートブロックおよびポリブタジエンブロックを含む両親媒性ブロックコポリマー)から調製する。両親媒性ブロックコポリマーを含まない比較例の配合物(コーティング1)も調製する。表1に、コーティングの配合、ならびに、関連の衝撃圧痕指数、素材除去性能、およびRz指数を示す。
Figure 0005537671
コーティング1が脆いために、衝撃試験が満足のいくレベルで達成されたのは、わずかに3測定だけである。他の繰り返し試験では、直径の測定中または移動中の接触で、衝撃で発生した亀裂が速やかに生長した。コーティング2は、取扱いが容易で、6個の測定値が得られた。ブロックコポリマーM52Nを添加することによってコーティングの靱性が向上したことを、試験員が目撃している。
この表は、衝撃試験の結果および研磨性能から、バインダーに及ぼすM52Nの効果を表している。M52Nを3%担持させると、素材除去が17%向上し、表面仕上げは、同等であるかまたはやや改良される。
実施例2
エポキシおよびアクリレートバインダー配合物を、研磨粒およびメイクコートを使用したベースロール(base roll)の上のサイズコートとして使用する。研磨粒は、Fujimi製のJIS 1000白色酸化アルミニウムであり、メイクコートは、UV硬化性の樹脂バインダーから形成させる。研磨粒およびメイクコートは、3ミルのポリエステルバッキングの上に載っている。本発明サンプル(サイズ2)には、サイズ樹脂の中に3%のブロックコポリマー、Fortegra 100を含んでいる。比較のためのサンプル(サイズ1)は、ナノサイズ粒子充填剤を含むサイズコートを用いてコーティングしている。それらの配合は以下の表2に示す。
Nanopox A610には、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレートおよび40重量%のナノサイズコロイダルシリカ粒子状充填剤が含まれている。したがって、サイズ1のナノ充填剤担持量は約6重量%である。Fortegra 100は、Dow Chemical製のブロックコポリマーである。
サンプルについて、素材除去および表面仕上げから試験する。それぞれのコーテッドアブレーシブ物品を、二次加工して、5インチの直径のディスクとし、背面を、Velcro(登録商標)のフープアップパッド(hoop−up pad)を用いて積層する。研磨材のディスクを、支持体の5個の孔を有するNorton(登録商標)ソフト−サイドバックアップパッドの上に引っ掛ける。研磨のためにかける重量は、8.5ポンドである。ワークピースは、6インチ×24インチ×(3/16)インチの注型アクリルパネルである。アブレーシブ物品/バックアップパッドを、ワークピースに対して30秒サイクルで30ストローク移動させて、アクリルパネルをサンディングする。ストロークは、オペレーターの手で、直線上を前後運動で移動させたものである。切削量(cut)、すなわち、除去されたアクリルパネルワークピースの重量の大きさを、30ストローク(30秒)ごとに、6サイクル、合計3分間かけて測定する。Mettler Toledo Model #P61003−S Scaleによって、それぞれの研磨サイクルの前および後にアクリルパネルの重量を測定して、切削量を計算する。表面仕上げRz、すなわち、研磨したアクリルパネルの表面仕上げは、第1サイクルおよび第6サイクルの後に測定する。Mahr M2 Perthometerを使用して、表面仕上げを測定する。Rzは、5個連続の個別の粗さ測定の平均値である。それぞれの例について5回の試験を繰り返し、それの平均データを報告する。
Figure 0005537671
図2に示したように、サイズ2はサイズ1よりも高い素材除去性能を示し、またサイズ1に比較して改良されたRz指数を示している。
第一の態様においては、そのアブレーシブ物品が、マトリックスポリマーと、そのマトリックスポリマーの中に分散された両親媒性ブロックコポリマーとを含むバインダーを用いて結合された研磨粒を含んでいる。
その第一の態様の例においては、そのバインダーが、マトリックスポリマーの重量を基準にして0.5重量%〜10重量%の範囲、たとえばマトリックスポリマーの重量を基準にして1.0重量%〜8重量%の範囲、またはマトリックスポリマーの重量を基準にして1.5重量%〜6.5重量%の範囲の量で、両親媒性ブロックコポリマーを含んでいる。
また別な例においては、そのマトリックスポリマーが以下のものからなる群から選択される樹脂である:フェノール樹脂、尿素−ホルムアルデヒド樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、エポキシ−アクリレート樹脂、アクリルアミド樹脂、シリコーン樹脂、イソシアヌレート樹脂、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂、ポリイミド樹脂、またはそれらの各種組合せ。たとえば、マトリックスポリマーが、エポキシ樹脂を含んでいることができる。さらなる例においては、そのマトリックスポリマーが、アクリル樹脂を含んでいることができる。またさらなる例においては、そのマトリックスポリマーが、フェノール樹脂を含んでいる。また別な例においては、そのマトリックスポリマーが、熱硬化性樹脂から形成されている。さらなる例においては、そのマトリックスポリマーが、放射線硬化性樹脂から形成されている。
またさらなる例においては、その両親媒性ブロックコポリマーが、マトリックスポリマーと混和性である少なくとも1種のフィリックブロックセグメントと、マトリックスポリマーと不混和性である少なくとも1種のフォビックブロックセグメントとを含んでいる。たとえば、そのフィリックブロックセグメントは、以下のものからなる群から選択される:ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリ(エチレンオキシド−co−ポリプロピレンオキシド)、ポリ(エチレンオキシド−ran−ポリプロピレンオキシド)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリアクリルアミド、またはそれらの各種組合せ。また別な例においては、そのフォビックブロックセグメントが、4〜20の間のアルキル数を有するポリアルキルオキシドを含んでいる。たとえば、そのアルキル数が少なくとも4である。さらなる例においては、そのフォビックブロックセグメントが、以下のものからなる群から選択される:ポリシロキサン、直鎖もしくは分岐鎖のアルケンモノマーから形成されるポリマー、スチレン系ブロック、ポリエチルヘキシルメタクリレート、またはそれらの各種組合せ。
またさらなる例においては、その両親媒性ブロックコポリマーが、100nm以下、たとえば10nm〜50nmの範囲の直径を有するマトリックスポリマーの内部に分散された領域を形成している。
さらなる例においては、その研磨粒が、以下のものからなる群から選択される:シリカ、アルミナ(溶融または焼結)、ジルコニア、ジルコニア/アルミナ酸化物、炭化ケイ素、ガーネット、ダイヤモンド、立方晶窒化ホウ素、窒化ケイ素、セリア、二酸化チタン、二ホウ化チタン、炭化ホウ素、酸化スズ、炭化タングステン、炭化チタン、酸化鉄、クロミア、フリント、エメリー、それらの凝集物、およびそれらの各種組合せ。
また別な例においては、そのアブレーシブ物品が、少なくとも1.0グラムの素材除去性能を示す。またさらなる例においては、そのアブレーシブ物品が、15mm以下の衝撃圧痕指数を示す。さらなる例においては、そのアブレーシブ物品が、100マイクロインチ以下のRz指数を示す。
第二の態様においては、そのコーテッドアブレーシブ物品が、バッキング、ならびに、マトリックスポリマーと、そのマトリックスポリマーの中に分散された両親媒性ブロックコポリマーとを含むバインダーによってそのバッキングに結合された研磨粒を含む。
その第二の態様の例においては、そのバインダーが、マトリックスポリマーの重量を基準にして0.5重量%〜10重量%の範囲、たとえばマトリックスポリマーの重量を基準にして1.0重量%〜8重量%の範囲の量で、両親媒性ブロックコポリマーを含んでいる。
さらなる例においては、そのマトリックスポリマーが以下のものからなる群から選択される樹脂である:フェノール樹脂、尿素−ホルムアルデヒド樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、エポキシ−アクリレート樹脂、アクリルアミド樹脂、シリコーン樹脂、イソシアヌレート樹脂、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂、ポリイミド樹脂、またはそれらの各種組合せ。たとえば、そのマトリックスポリマーが、熱硬化性樹脂から形成されている。また別な例においては、そのマトリックスポリマーが、放射線硬化性樹脂から形成されている。
またさらなる例においては、その両親媒性ブロックコポリマーが、マトリックスポリマーと混和性である少なくとも1種のフィリックブロックセグメントと、マトリックスポリマーと不混和性である少なくとも1種のフォビックブロックセグメントとを含んでいる。たとえば、そのフィリックブロックセグメントは、以下のものからなる群から選択される:ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリ(エチレンオキシド−co−ポリプロピレンオキシド)、ポリ(エチレンオキシド−ran−ポリプロピレンオキシド)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリアクリルアミド、またはそれらの各種組合せ。さらなる例においては、そのフォビックブロックセグメントが、4〜20の間のアルキル数を有するポリアルキルオキシドを含んでいる。また別な例においては、そのフォビックブロックセグメントが、以下のものからなる群から選択される:ポリシロキサン、直鎖もしくは分岐鎖のアルケンモノマーから形成されるポリマー、スチレン系ブロック、ポリエチルヘキシルメタクリレート、またはそれらの各種組合せ。
また別な例においては、その両親媒性ブロックコポリマーが、100nm以下の直径を有するマトリックスポリマーの内部に分散された領域を形成している。さらなる例においては、そのコーティングされたアブレーシブ物品が、少なくとも1.0グラムの素材除去性能を示す。またさらなる例においては、そのコーティングされたアブレーシブ物品が、15mm以下の衝撃圧痕指数を示す。また別な例においては、そのコーティングされたアブレーシブ物品が、100マイクロインチ以下のRz指数を示す。
またさらなる例においては、そのコーテッドアブレーシブ物品が、スーパーサイズコートをさらに含む。たとえば、そのスーパーサイズコートには、目詰まり防止材を含んでいる。具体的な例においては、その目詰まり防止材が金属ステアレートを含んでいる。
第三の態様においては、アブレーシブ物品を形成させる方法が、バッキングを取り分ける(dispensing a backing)工程、およびそのバッキングの上にスラリーをコーティングする工程を含むが、そのスラリーには研磨粒およびバインダー配合物が含まれる。そのバインダー配合物には、マトリックスポリマー前駆体および両親媒性ブロックコポリマーが含まれる。その方法には、マトリックスポリマー前駆体を硬化させる工程がさらに含まれる。
第三の態様の例においては、その方法に、研磨粒とバインダー配合物とを混合してスラリーを形成させる工程がさらに含まれる。
また別な例においては、マトリックスポリマー前駆体を硬化させる工程には、マトリックスポリマー前駆体を熱的に硬化させることが含まれる。またさらなる例においては、マトリックスポリマー前駆体を硬化させる工程には、化学線照射を用いてマトリックスポリマー前駆体を硬化させることが含まれる。
第四の態様においては、アブレーシブ物品を形成させる方法には、バッキングを取り分ける工程、およびそのバッキングの上にバインダー配合物をコーティングする工程を含む。そのバインダー配合物には、マトリックスポリマー前駆体および両親媒性ブロックコポリマーが含まれる。その方法には、そのバインダー配合物の上に研磨粒を付着させる工程、およびそのマトリックスポリマー前駆体を硬化させる工程がさらに含まれる。
第四の態様の例においては、マトリックスポリマー前駆体を硬化させる工程には、マトリックスポリマー前駆体を熱的に硬化させることが含まれる。また別な例においては、マトリックスポリマー前駆体を硬化させる工程には、化学線照射を用いてマトリックスポリマー前駆体を硬化させることが含まれる。またさらなる例においては、研磨粒を付着させる工程には、研磨粒を静電的に付着させることが含まれる。
上述の一般的な記述または実施例における動作のすべてが必要とされるのではなく、また特定の動作の一部が必要とされない可能性もあり、また記述された動作に加えて一つまたは複数のさらなる動作が実施されてもよいということに注意されたい。さらに、列記されている動作の順序が、必ずしもそれらを実施する順序である必要もない。
上述の明細書において、特定の実施態様に関連してコンセプトを記述してきた。しかしながら、当業熟練者の理解するところであるが、添付の特許請求項において記述される本発明の範囲から外れることなく、各種の修正および変更を加えることができる。したがって、本明細書および図面は、限定的な意味ではなく、例示的な意味とみなされるべきであって、そのような修正はすべて、本発明の範囲の中に含まれると考えるべきである。
本明細書で使用するとき、「含む(comprises、comprising、includes、including)」、「有する(has、having)」、またはそれらのその他の変化形は、非排他的な包含をカバーするものと考えるべきである。たとえば、一連の特徴を含むプロセス、方法、物品または装置は、必ずしもそれらの特徴だけに限定される訳ではなく、そのようなプロセス、方法、物品または装置に対して明示的にリストされたり固有であったりするのではない、他の特徴を含んでいてもよい。さらに、そうではないと明確に記述されていない限りにおいては、「または(or)」という用語は、「包括的なor(inclusive−or)」を指しているのであって、「排他的なor(exclusive−or)」を指しているのではない。たとえば、「条件AまたはB」ということは、以下のいずれかが満足されている:「Aが真(または、存在する)で、かつBが偽(または、存在しない)」、「Aが偽(または、存在しない)で、かつBが真(または、存在する)」、ならびに、「AおよびBが共に真(または、存在する)」。
さらに、不定冠詞の「a」または「an」の使用は、本明細書に記述された、要素(element)および構成要素(component)を記述するためである。これは、単に利便性のためだけであって、本発明の範囲の一般的な感覚を与えるためである。この記述は、一つまたは少なくとも一つを含むと読むべきであって、そういう意味ではないことが明白でない限りにおいて、単数が複数も包含している。
利益(benefit)、その他の利点(advantage)および問題の解決法を、特定の実施態様に関連させて、ここまで記述してきた。しかしながら、それらの利益、利点、問題の解決法、ならびに将来起きるかまたはより顕著となるような各種の利益、利点、解決法の原因となりうる各種の特徴が、特許請求項のいずれかまたは全部の、決定的であるか必要とされるかまたは必須である、特徴であると受け取ってはならない。
本明細書を読めば、明確を期する目的である種の個別の実施態様の文脈において本明細書に記載されたある種の特徴が、単一の実施態様の中に組み合わせた形で提供されてもよいということは、当業者ならば理解するである。逆に、簡略化のために、単一の実施態様の文脈において記載された各種の特徴が、個別にか、または各種の二次的な組合せで提供されてもよい。さらに、範囲の形で表現された数値を参照する場合には、その範囲内の個別またはすべての数値が含まれる。

Claims (12)

  1. アブレーシブ物品であって、マトリックスポリマーと前記マトリックスポリマーの中に分散された両親媒性ブロックコポリマーとを含むバインダーを用いて結合された研磨粒を含み、前記両親媒性ブロックコポリマーが、前記マトリックスポリマーと混和性である少なくとも1種のフィリックブロックセグメントと、前記マトリックスポリマーと不混和性である少なくとも1種のフォビックブロックセグメントとを含み、
    前記マトリックスポリマーが、フェノール樹脂、尿素−ホルムアルデヒド樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、エポキシ−アクリレート樹脂、アクリルアミド樹脂、シリコーン樹脂、イソシアヌレート樹脂、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂、ポリイミド樹脂、またはそれらの各種組合せからなる群より選択され、
    前記フィリックブロックセグメントが、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリ(エチレンオキシド−co−ポリプロピレンオキシド)、ポリ(エチレンオキシド−ran−ポリプロピレンオキシド)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリアクリルアミド、またはそれらの各種組合せからなる群より選択され、
    前記フォビックブロックセグメントが、4〜20の間のアルキル数を有するポリアルキルオキシドを含む、アブレーシブ物品。
  2. アブレーシブ物品であって、バッキング;およびマトリックスポリマーと前記マトリックスポリマーの中に分散された両親媒性ブロックコポリマーとを含むバインダーによって前記バッキングに結合された研磨粒を含み、前記両親媒性ブロックコポリマーが、前記マトリックスポリマーと混和性である少なくとも1種のフィリックブロックセグメントと、前記マトリックスポリマーと不混和性である少なくとも1種のフォビックブロックセグメントとを含み、
    前記マトリックスポリマーが、フェノール樹脂、尿素−ホルムアルデヒド樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、エポキシ−アクリレート樹脂、アクリルアミド樹脂、シリコーン樹脂、イソシアヌレート樹脂、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂、ポリイミド樹脂、またはそれらの各種組合せからなる群より選択され、
    前記フィリックブロックセグメントが、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリ(エチレンオキシド−co−ポリプロピレンオキシド)、ポリ(エチレンオキシド−ran−ポリプロピレンオキシド)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリアクリルアミド、またはそれらの各種組合せからなる群より選択され、
    前記フォビックブロックセグメントが、4〜20の間のアルキル数を有するポリアルキルオキシドを含む、アブレーシブ物品。
  3. 前記バインダーが、前記両親媒性ブロックコポリマーを、前記マトリックスポリマーの重量を基準にして0.5重量%〜10重量%の範囲の量で含む、請求項1または2に記載のアブレーシブ物品。
  4. 前記両親媒性ブロックコポリマーが、100nm以下の直径を有する前記マトリックスポリマーの内部に分散された領域を形成している、請求項1に記載のアブレーシブ物品。
  5. 前記アブレーシブ物品が、少なくとも1.0グラムの下記の素材除去性能を示す、請求項1に記載のアブレーシブ物品。
    素材除去性能:前記アブレーシブ物品を5インチ(12.7cm)の直径のディスクとし、6インチ×24インチ×(3/16)インチ(15.24cm×60.96cm×0.48cm)のアクリルパネルに対して、研磨のためにかける重量を8.5ポンド(3.8556kg)として30秒サイクルで30ストローク移動させて研磨した場合の除去量。
  6. 前記アブレーシブ物品が、15mm以下の下記の衝撃圧痕指数を示す、請求項1に記載のアブレーシブ物品。
    衝撃圧痕指数:前記バインダーをスチールパネルの上に15ミル(0.381mm)の厚みでコーティングし、前記スチールパネルの前記コーティングが無い側に、4in−lb(0.452Nm)の荷重で金属ボールで衝撃を与えた後、その衝撃によって生じた前記コーティングにおける圧痕の直径。
  7. 前記アブレーシブ物品が、100マイクロインチ(2.54μm)以下のRz指数を示す、請求項1に記載のアブレーシブ物品。
  8. 前記両親媒性ブロックコポリマーが、ポリブチルアクリレートとポリメチルメタクリレート(PMMA)とのブロックコポリマー、それらのブロックターポリマーを含む、請求項1に記載のアブレーシブ物品。
  9. アブレーシブ物品を形成させる方法であって、前記方法が、バッキングを取り分ける工程;前記バッキングの上にバインダー配合物をコーティングする工程であって、前記バインダー配合物が、マトリックスポリマー前駆体および両親媒性ブロックコポリマーを含む、工程;前記バインダー配合物の上に研磨粒を付着させる工程;および前記マトリックスポリマー前駆体を硬化させる工程;を含み、
    前記両親媒性ブロックコポリマーが、マトリックスポリマーと混和性である少なくとも1種のフィリックブロックセグメントと、前記マトリックスポリマーと不混和性である少なくとも1種のフォビックブロックセグメントとを含み、
    前記マトリックスポリマーが、フェノール樹脂、尿素−ホルムアルデヒド樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、エポキシ−アクリレート樹脂、アクリルアミド樹脂、シリコーン樹脂、イソシアヌレート樹脂、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂、ポリイミド樹脂、またはそれらの各種組合せからなる群より選択され、
    前記フィリックブロックセグメントが、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリ(エチレンオキシド−co−ポリプロピレンオキシド)、ポリ(エチレンオキシド−ran−ポリプロピレンオキシド)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリアクリルアミド、またはそれらの各種組合せからなる群より選択され、
    前記フォビックブロックセグメントが、4〜20の間のアルキル数を有するポリアルキルオキシドを含む、方法。
  10. 前記マトリックスポリマー前駆体を硬化させる工程が、前記マトリックスポリマー前駆体を熱的に硬化させることを含む、請求項に記載の方法。
  11. 前記マトリックスポリマー前駆体を硬化させる工程が、化学線照射を用いて前記マトリックスポリマー前駆体を硬化させることを含む、請求項に記載の方法。
  12. 前記研磨粒を付着させる工程が、前記研磨粒を静電的に付着させることを含む、請求項に記載の方法。
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