以下、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお以下に説明する本実施形態は特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではなく、本実施形態で説明される構成の全てが本発明の解決手段として必須であるとは限らない。
1.電子回路
図1に本実施形態の電子回路の基本的な構成例を示す。本実施形態の電子回路は、複数の回路素子XA1、XA2、XB1、XB2及び電源出力回路100を含む。なお、本実施形態の電子回路は図1の構成に限定されず、その構成要素の一部を省略したり、他の構成要素に置き換えたり、他の構成要素を追加するなどの種々の変形実施が可能である。例えば、複数の回路素子は図1に示す4個の回路素子に限定されるものではなく、5個以上の回路素子であってもよい。
各回路素子XA1、XA2、XB1、XB2は、トランジスターで構成される。例えばCMOS回路の場合では、各回路素子は、P型トランジスターとN型トランジスターとで構成される。
電源出力回路100は、第1の高電位電源電圧VDDが供給され、第2の高電位電源電圧VINTを出力する。VINTは、VDDが所定の電圧レベルVAになるまでは、低電位電圧レベル(Lレベル、VSSレベル)に設定され、VDDが所定の電圧レベルVAを越えると、VDDに追従して電圧レベルが上昇する電源電圧である。
複数の回路素子のうち、第1のグループの回路素子XA1、XA2は、VDDの投入後の初期状態において、その出力ノードが高電位電圧レベル(Hレベル、VDDレベル)になる回路素子である。この第1のグループの回路素子には、第1の高電位電源電圧VDDが供給される。具体的には、第1のグループの回路素子XA1、XA2には電源電圧としてVDDが供給され、初期状態において出力ノードNA1、NA2はHレベルに設定される。
なお、第1の高電位電源電圧VDDが規定の電圧値に達するまでは、出力ノードNA1、NA2はHレベル(VDDレベル)より低い電圧レベルであるから、厳密には初期状態において直ちにHレベルに設定されるわけではない。しかし以下の説明では、電源投入直後からVDDに追従して電圧レベルが上昇し、最終的にはHレベル(VDDレベル)まで到達するノードについては、便宜的に、そのノードは初期状態においてHレベルに設定されると表現する。
複数の回路素子のうち、第2のグループの回路素子XB1、XB2は、VDDの投入後の初期状態において、その出力ノードが低電位電圧レベル(Lレベル、VSSレベル)になる回路素子である。この第2のグループの回路素子には、第2の高電位電源電圧VINTが供給される。具体的には、第2のグループの回路素子XB1、XB2には電源電圧としてVINTが供給され、初期状態において出力ノードNB1、NB2はLレベルに設定される。
電源出力回路100は、トランジスターを含む。具体的には、電源出力回路100は、第1のトランジスターTA1を含み、例えばTA1はP型トランジスターであって、そのゲートが低電位電源電圧VSSに設定され、そのドレインに第2の高電位電源電圧VINTを出力する。
所定の電圧レベルVAは、電源出力回路100に含まれる第1のトランジスターTA1のしきい値電圧に対応する電圧レベルである。例えば、TA1のしきい値電圧の絶対値をVTHとした場合に、VDDが立ち上がりを開始してから、VDDの電圧レベルがVTHになるまでは、TA1はオフ状態である。そしてVDDの電圧レベルがVTHを越えると、TA1はオン状態になる。従って、第2の高電位電源電圧VINTは、VDDが所定の電圧レベルVA(=VTH)になるまでは、Lレベル(VSSレベル)に設定され、VDDが所定の電圧レベルVAを越えると、VDDに追従して電圧レベルが上昇する。
電源出力回路100は、放電回路110を含んでもよい。放電回路110は、第2の高電位電源電圧VINTの出力ノードと低電位電源VSSのノードとの間に設けられて、第1のトランジスターTA1に流れるリーク電流を放電する。具体的には、放電回路110は、例えばゲートがVSSに接続されるN型トランジスターTA2で構成することができる。
このようにすれば、VDDの電圧レベルが所定の電圧レベルVAに達するまでの期間、すなわちTA1がオフ状態である期間に生じるTA1のリーク電流を、TA2のオフ状態でのリーク電流によりVSSノードに放電することができる。その結果、TA1のリーク電流によりVINTの電圧レベルが上昇することを抑制できる。
第1のグループの回路素子XA1、XA2を構成するトランジスターは、第1のウェルに形成される。一方、第2のグループの回路素子XB1、XB2を構成するトランジスターは、第1のウェルと物理的に分離された第2のウェルに形成される。具体的には、例えば図1に示すように、第1のグループの回路素子XA1、XA2を構成するP型トランジスターは、第1のNウェルNW1に形成される。また、第2のグループの回路素子XB1、XB2を構成するP型トランジスターは、第1のNウェルNW1と物理的に分離された第2のNウェルNW2に形成される。NW1はVDDに電気的に接続され、NW2はVINTに電気的に接続される。
なお、第1のNウェルNW1及び第2のNウェルNW2については、図5に示すトランジスターの断面構造を用いて詳細に説明する。
このようにすれば、第2のグループの回路素子XB1、XB2を構成するP型トランジスターのドレインと第2のNウェルNW2との間に形成されるダイオードの逆方向電流によって、VDDノードから出力ノードNB1、NB2へ電流が流れることを防止できる。その結果、出力ノードNB1、NB2の電圧レベルが上昇することを防止できる。
以上説明したように、本実施形態の電子回路によれば、第2の高電位電源電圧VINTは、第1の高電位電源電圧VDDが所定の電圧レベルになるまでは、低電位電圧レベル(Lレベル)に設定される。そしてVDDが所定の電圧レベルを越えると、VINTはVDDに追従して電圧レベルが上昇する。このようにすることで、電源投入後の初期状態において、VDDが供給される回路素子の出力ノードをHレベルに設定し、VINTが供給される回路素子の出力ノードをLレベルに設定することができる。その結果、初期状態における各回路素子の出力レベルをLレベル又はHレベルに確定することができるから、電源投入後の初期状態に依存する回路(例えばパワーオンリセット回路など)を確実に動作させることができる。
本実施形態の電源出力回路100を設けずに、第1のグループの回路素子XA1、XA2及び第2のグループの回路素子XB1、XB2に対して共通の高電位電源電圧VDDを供給する電子回路では、第1、第2のグループの回路素子の電源電圧が同時に立ち上がる。そのために電源投入後の初期状態において、各回路素子の出力ノードの電圧レベルを確定することが難しくなる。これについては、以下でパワーオンリセット回路を例に挙げて具体的に説明する。
2.パワーオンリセット回路
上述したように、本実施形態の電子回路によれば、パワーオンリセット回路などの電源投入後の初期状態に依存する回路を確実に動作させることができる。以下では、本実施形態の電子回路を含むパワーオンリセット回路について説明する。
図2に、比較例として本実施形態の電子回路を含まないパワーオンリセット回路を示す。比較例のパワーオンリセット回路は、抵抗素子R1とキャパシターC1とで構成される時定数回路、ノードクランプ用トランジスターT1、及びトランジスターT2、T3により構成されるインバーターを含む。リセット信号RSTは、リセット期間(リセットが有効な期間)ではHレベルに設定され、リセット解除後はLレベルに設定される。
電源が投入されると、高電位電源電圧VDDは急速に立ち上がるが、ノードN1の電圧レベルは時定数回路により緩やかに上昇する。従って、N1の電圧レベルがインバーターの論理しきい値に達するまでは、リセット信号RSTとしてHレベルが出力される。そしてN1の電圧レベルがインバーターの論理しきい値を越えると、インバーターは反転し、リセット信号RSTはLレベルに変化する。リセット期間の長さは、時定数(R1の抵抗値とC1の容量値との積)により決まる。リセット信号RSTがLレベルに変化することで、ノードクランプ用トランジスターT1がオン状態になるから、ノードN1はVDDレベルにクランプされる。
比較例のパワーオンリセット回路では、VDDの立ち上がりが急峻な場合には、上記のように正常にリセット信号を出力することができる。ところがVDDの立ち上がりが遅く、立ち上がり時間が時定数と同程度又はそれ以上である場合には、ノードN1とVDDとがほぼ同じ電圧レベルで上昇するから、リセット信号RSTが正常に出力されなくなる。
図3(A)、図3(B)に、比較例のパワーオンリセット回路の動作波形の一例を示す。VDDの立ち上がりが急峻な場合(図3(A))では、インバーターの電源電圧が直ぐに立ち上がり、且つノードN1が初期状態でLレベルになるから、リセット信号RSTはHレベルに設定される。そしてN1の電圧レベルが徐々に上昇してインバーターの論理しきい値を越えると、インバーターは反転し、リセット信号RSTはLレベルに変化する。
ところが、VDDの立ち上がりが遅い場合(図3(B))では、ノードN1の電圧レベルはVDDと同レベルで上昇する。その結果、リセット信号RSTは、Hレベルに達する前にLレベルに下がってしまう。このように、VDDの立ち上がりが遅い場合では、リセット信号RSTがHレベルにならないから、比較例の回路(図2)では、パワーオンリセット回路としての正常な動作が得られない。
図4に、本実施形態のパワーオンリセット回路300の第1の構成例を示す。第1の構成例のパワーオンリセット回路300は、第1のトランジスターTB1、抵抗素子RB1、キャパシターCB1、出力回路200を含む。なお、本実施形態のパワーオンリセット回路は図4の構成に限定されず、その構成要素の一部を省略したり、他の構成要素に置き換えたり、他の構成要素を追加するなどの種々の変形実施が可能である。
図4のパワーオンリセット回路300は、図1の電子回路をパワーオンリセット回路に適用したものである。第1のトランジスターTB1は、電源出力回路100を構成する。出力回路200は、第1のグループの回路素子に対応し、第1の高電位電源電圧VDDが供給される。また、抵抗素子RB1、キャパシターCB1及び第2のトランジスターTB2は、第2のグループの回路素子に対応し、第2の高電位電源電圧VINT(N2の電圧レベル)が供給される。
第1のトランジスターTB1は、第1の高電位電源電圧VDDと第2のノードN2との間に設けられ、そのゲートが低電位電源電圧VSSに設定される。こうすることで、VDDが所定の電圧レベルになるまでは、第2のノードN2はLレベルに設定され、VDDが所定の電圧レベルを越えると、VDDに追従して電圧レベルが上昇する。この所定の電圧レベルは、TB1のしきい値電圧に対応する電圧レベルである。
具体的には、TB1のしきい値電圧の絶対値をVTHとした場合に、VDDが立ち上がりを開始してから、VDDの電圧レベルがVTHになるまでは、TB1はオフ状態である。そしてVDDの電圧レベルがVTHを越えると、TB1はオン状態になる。従って、第2のノードN2は、VDDがVTH(広義には所定の電圧レベル)になるまでは、Lレベル(VSSレベル)に設定され、VDDがVTH(広義には所定の電圧レベル)を越えると、VDDに追従して電圧レベルが上昇する。なお、第1のトランジスターTB1は、図1に示した電源出力回路100のTA1に対応する。また、第2のノードN2の電圧レベルは、電源出力回路100のVINTに対応する。
抵抗素子RB1は、第1のノードN1と第2のノードN2との間に設けられ、キャパシターCB1は、第1のノードN1と低電位電源VSSのノードとの間に設けられる。RB1及びCB1は、時定数回路を構成する。
またパワーオンリセット回路300は、第2のトランジスターTB2を含むことができる。第2のトランジスターTB2は、ノードクランプ用トランジスターであって、第2のノードN2と第1のノードN1との間に設けられ、リセット期間においてオフ状態になり、リセット解除後にオン状態になる。こうすることで、リセット解除後のN1の電圧レベルをHレベルに設定することができるから、リセット信号RSTを確実にLレベルに設定することができる。
図5に、第1〜第3のトランジスターTB1〜TB3の断面構造の一例を示す。半導体基板に、第1のNウェル(N型の不純物領域)NW1と第2のNウェルNW2が形成され、NW1とNW2とは物理的に分離されている。そしてTB1は、第1のNウェルNW1に形成され、TB2は第2のNウェルNW2に形成される。すなわち、TB1とTB2とは、異なるウェルに形成される。またTB1とTB3とは同じウェル(第1のNウェルNW1)に形成される。NW1は、NW1内に設けられたN+領域(N型の高濃度不純物領域)を介して、VDDに電気的に接続される。また、NW2は、NW2内に設けられたN+領域を介して、第2のノードN2に電気的に接続される。このように、NW1とNW2とを物理的に分離することで、TB2のドレインとNW2との間に形成されるダイオードの逆方向電流によって、第1のノードN1の電圧レベルが上昇することを防止できる。
出力回路200は、第1のノードN1の電圧レベルが入力され、パワーオンリセット信号RSTを出力する。出力回路200は、ソースに第1の高電位電源電圧VDDが供給される第3のトランジスターTB3を含む。具体的には、例えば図4に示すように、出力回路200は、第3、第4のトランジスターTB3、TB4で構成されるインバーターを含む。TB1とTB3とは同じウェル(第1のNウェルNW1)に形成される。
図6(A)、図6(B)に、パワーオンリセット回路300の第1の構成例の動作波形の一例を示す。VDDの立ち上がりが急峻な場合(図6(A))では、TB1が直ぐにオン状態になり、N2の電圧レベルはVDDに追従して急速に上昇するが、N1の電圧レベルは時定数回路により緩やかに上昇する。従って、N1の電圧レベルがインバーター(出力回路200)の論理しきい値に達するまでは、リセット信号RSTとしてHレベルが出力される。そしてN1の電圧レベルがインバーターの論理しきい値を越えると、リセット信号RSTはLレベルに変化する。
VDDの立ち上がりが遅い場合(図6(B))では、VDDが所定の電圧レベルになるまでは、TB1がオフ状態であり、N2はLレベルに設定される。従って、N1もLレベルに設定されるから、インバーター(出力回路200)に供給されるVDDの上昇と共に、リセット信号RSTは上昇する。そしてVDDが所定の電圧レベルを越えると、TB1がオン状態になるから、N2の電圧レベルが上昇し、それに追従してN1の電圧レベルも上昇する。N1の電圧レベルがインバーターの論理しきい値を越えると、リセット信号RSTはLレベルに変化する。上述したように、この所定の電圧レベルは、TB1のしきい値電圧に対応する電圧レベルである。
以上説明したように、本実施形態のパワーオンリセット回路によれば、第1の高電位電源電圧VDDが所定の電圧レベルになるまでは、第2の高電位電源電圧VINT(第2のノードN2の電圧レベル)がLレベルに設定されるから、VDDの立ち上がりが緩やかな場合であっても、リセット信号RSTをHレベル(VDDレベル)に設定することができる。こうすることで、VDDの立ち上がりが急峻な場合であっても、緩やかな場合であっても、リセット信号RSTを確実にHレベルに設定することが可能になる。その結果、集積回路装置(電子機器)において、パワーオンリセット処理を確実に実行することができるから、電源投入時の様々なトラブルを回避することなどが可能になる。
図7(A)、図7(B)に、本実施形態のパワーオンリセット回路の変形例を示す。図7(A)の変形例は、上述した第1の構成例(図4)の第1のトランジスターTB1をN型トランジスターTB1Nに置き換えたものである。TB1Nのしきい値電圧をVTHとした場合に、VDDがVTHになるまではTB1Nはオフ状態であり、VDDがVTHを越えるとTB1Nはオン状態になる。その結果、VDDがVTHになるまでは第2のノードN2はLレベルに設定され、VDDがVTHを越えるとN2はVDDに追従して電圧レベルが上昇する。このように、図7(A)の変形例によれば、上述した第1の構成例(図4)と同様の動作が得られる。
図7(B)の変形例は、上述した第1の構成例(図4)において、第2のノードN2とVSSノードとの間にキャパシターCA1を設けたものである。こうすることで、TB1がオン状態になってから、N2の電圧レベルが上昇する際に、上昇を緩やかにすることができる。その結果、第1のノードN1の電圧レベルの上昇をさらに遅らせることができるから、リセット期間(リセット信号RSTがHレベルである期間)をさらに長くすることができる。
図8に、本実施形態のパワーオンリセット回路300の第2の構成例を示す。第2の構成例は、第1のトランジスターTB1、抵抗素子TR1〜TR4、キャパシターCB1、第2のトランジスターTB2、出力回路200を含む。なお、本実施形態のパワーオンリセット回路は図8の構成に限定されず、その構成要素の一部を省略したり、他の構成要素に置き換えたり、他の構成要素を追加するなどの種々の変形実施が可能である。
図8のパワーオンリセット回路300は、図1の電子回路をパワーオンリセット回路に適用したものである。第1のトランジスターTB1は、図1の電源出力回路100を構成する。トランジスターTB3、TB4、TB6、TB7、TB12、TB13で構成される3個のインバーターは第1のグループの回路素子に対応し、第1の高電位電源電圧VDDが供給される。また、抵抗素子TR1〜TR4、キャパシターCB1、第2のトランジスターTB2、第5のトランジスターTB5及びTB8、TB9、TB10、TB11で構成される2個のインバーターは、第2のグループの回路素子に対応し、第2の高電位電源電圧VINT(N2の電圧レベル)が供給される。
第1のトランジスターTB1は、第1の高電位電源電圧VDDと第2のノードN2との間に設けられ、そのゲートが低電位電源電圧VSSに設定される。TB1の動作は、第1の構成例(図4)に示したものと同じであるから、ここでは説明を省略する。
抵抗素子TR1〜TR4は、直列に接続された4個のトランジスターTR1〜TR4で構成され、第1のノードN1と第2のノードN2との間に設けられる。例えば図8では、P型トランジスターTR1〜TR4で構成され、各ゲートはVSSに接続される。
キャパシターCB1は、例えば図8に示すように、ドレインとソースを共通接続したトランジスターにより構成され、第1のノードN1と低電位電源VSSのノードとの間に設けられる。抵抗素子TR1〜TR4及びCB1は、時定数回路を構成する。この時定数回路の動作は、第1の構成例(図4)と同様である。
第2のトランジスターTB2は、ノードクランプ用トランジスターであって、第2のノードN2と第1のノードN1との間に設けられ、第3のノードN3の電圧レベルによりゲートが制御される。第1の構成例(図4)で説明したように、リセット期間においてオフ状態になり、リセット解除後にオン状態になる。
出力回路200は、バッファー回路と第1のラッチ回路とを含み、第1のノードN1の電圧レベルが入力され、パワーオンリセット信号RSTを出力する。バッファー回路は、N1の電圧レベルが入力され、第1のラッチ回路に出力信号を出力する。第1のラッチ回路は、バッファー回路の出力信号をラッチする。第1のラッチ回路は、第1のインバーター及び第2のインバーターで構成され、第1のインバーターにはVDDが供給され、第2のインバーターにはN2の電圧レベル(第2の高電位電源電圧VINT)が供給される。
具体的には、例えば図8に示すように、バッファー回路は、トランジスターTB3、TB4で構成されるインバーター及びプルアップ用トランジスターTB5を含む。プルアップ用トランジスターTB5は、リセット期間が終了する際に、ノードN3がLレベルになることでオン状態になり、ノードN4をHレベルに設定する。N4がLレベルからHレベルに変化することで第1のラッチ回路が反転し、その結果リセット信号がHレベルからLレベルに変化する
第1のラッチ回路は、トランジスターTB6、TB7で構成される第1のインバーターと、トランジスターTB8、TB9で構成される第2のインバーターとで構成される。第1のラッチ回路は帰還ループを有する。すなわち、第1のインバーターの出力は第2のインバーターに入力され、第2のインバーターの出力は再び第1のインバーターに入力される。こうすることで、第1のラッチ回路はバッファー回路からの入力信号を保持することができる。
第1のインバーターには第1の高電位電源電圧VDDが供給され、第2のインバーターには第2のノードN2の電圧(第2の高電位電源電圧VINT)が供給される。このようにすることで、電源投入後の初期状態において、第1のインバーターの出力ノードN5をHレベルに設定し、第2のインバーターの出力ノードN4をLレベルに設定することができる。
このようにラッチ回路を設けることで、電源投入後の初期状態における各ノードの電圧レベルをLレベル又はHレベルに保持することができるから、ノイズ等の影響を受けずに確実にリセット信号を出力することができる。
ラッチ回路の出力は、2つのインバーターを介して、リセット信号RSTとして出力される。具体的には、ラッチ回路の出力ノードN5から出力された信号は、トランジスターTB10、TB11で構成されるインバーターに入力される。そのインバーターの出力は、トランジスターTB12、TB13で構成されるインバーターに入力され、その出力がリセット信号RSTとして出力される。
初期状態において、出力ノードがHレベルに設定される回路素子(第1のグループの回路素子)には、第1の高電位電源電圧VDDが供給される。一方、出力ノードがLレベルに設定される回路素子(第2のグループの回路素子)には、第2の高電位電源電圧VINTが供給される。具体的には、トランジスターTB3、TB6、TB12には、VDDが供給され、これらの回路素子の出力ノードN3、N5、RSTは、初期状態においてHレベルに設定される。抵抗素子TR1〜TR4、トランジスターTB2、TB5、TB8、TB10には、VINTが供給され、これらの回路素子の出力ノードN1、N4、N6は、初期状態においてLレベルに設定される。
第1のグループの回路素子を構成するトランジスターは、第1のウェルに形成され、第2のグループの回路素子を構成するトランジスターは、第1のウェルと物理的に分離された第2のウェルに形成される。具体的には、第1のグループの回路素子を構成するP型トランジスターTB3、TB6、TB12は、第1のNウェルNW1に形成される。第2のグループの回路素子を構成するP型トランジスターTR1〜TR4、TB2、TB5、TB8、TB10は、第1のNウェルNW1と物理的に分離された第2のNウェルNW2に形成される。
出力回路200は、カップリングキャパシターCB2〜CB5を含む。これらのカップリングキャパシターは、初期状態における各ノードの電圧レベルをLレベル又はHレベルに設定するためのものである。具体的には、CB2、CB4はN3、N5とVDDとの間にそれぞれ設けられ、初期状態においてN3、N5をHレベルに設定する。またCB3、CB5はN4、N6とVSSとの間にそれぞれ設けられ、初期状態においてN4、N6をLレベルに設定する。カップリングキャパシターCB2〜CB5は、ドレインとソースを共通接続したトランジスターで構成することができる。
図9に、本実施形態のパワーオンリセット回路300の第3の構成例を示す。第3の構成例は、電源出力回路100、抵抗素子RB1、キャパシターCB1、第2のトランジスターTB2、出力回路200を含む。なお、本実施形態のパワーオンリセット回路は図9の構成に限定されず、その構成要素の一部を省略したり、他の構成要素に置き換えたり、他の構成要素を追加するなどの種々の変形実施が可能である。
電源出力回路100は、図1に示したものと同様である。すなわち電源出力回路100は、第1の高電位電源電圧VDDが供給され、第2の高電位電源電圧VINTを出力する。VINTは、VDDが所定の電圧レベルVAになるまでは、低電位電圧レベル(Lレベル、VSSレベル)に設定され、VDDが所定の電圧レベルVAを越えると、VDDに追従して電圧レベルが上昇する電源電圧である。所定の電圧レベルVAは、第1のトランジスターTA1のしきい値電圧に対応する電圧レベルである。トランジスターTA2は、TA1のオフ状態でのリーク電流を放電するためのものである。キャパシターCA1は、N2の電圧レベル(第2の高電位電源電圧VINT)が上昇する際に、上昇を緩やかにするためのものである。
抵抗素子RB1及びキャパシターCB1は、第1の構成例(図4)と同様に、時定数回路を構成する。抵抗素子RB1は、第2の構成例(図8)と同様に、直列接続した複数のトランジスターで構成することができる。また、キャパシターCB1は、第2の構成例(図8)と同様に、ドレインとソースを共通接続したトランジスターで構成することができる。
第2のトランジスターTB2は、第1の構成例(図4)と同様に、ノードクランプ用トランジスターであって、リセット期間においてオフ状態になり、リセット解除後にオン状態になる。こうすることで、リセット解除後にN1の電圧レベルをHレベルに設定することができるから、リセット信号RSTを確実にLレベルに設定することができる。
出力回路200は、バッファー回路と第1、第2のラッチ回路LAT1、LAT2とを含み、第1のノードN1の電圧レベルが入力され、パワーオンリセット信号RSTを出力する。第1のラッチ回路LAT1は、第1のインバーターIV1及び第2のインバーターIV2で構成される。IV1にはVDDが供給され、IV2にはN2の電圧レベル(第2の高電位電源電圧VINT)が供給される。第2のラッチ回路LAT2は、第3のインバーターIV3及び第4のインバーターIV4で構成される。IV3にはVINTが供給され、IV4にはVDDが供給される。
第1、第2のラッチ回路LAT1、LAT2は帰還ループを有する。すなわち、IV1の出力はIV2に入力され、IV2の出力は再びIV1に入力される。また、IV3の出力はIV4に入力され、IV4の出力は再びIV3に入力される。こうすることで、第1、第2のラッチ回路LAT1、LAT2はバッファー回路からの入力信号を保持することができる。
具体的には、バッファー回路は、インバーターIV5、IV6、IV8、IV9で構成される。IV5はN1の電圧レベルを受けてN3に出力し、IV6はN3の電圧レベルを受けて第1のラッチ回路LAT1の入力ノードN4に出力する。IV8はN3の電圧レベルを受けてN7に出力し、IV9はN7の電圧レベルを受けて第2のラッチ回路LAT2の入力ノードN8に出力する。
第1のラッチ回路LAT1は保持した電圧レベルを出力ノードN5に出力し、IV7はN5の電圧レベルを受けてNANDゲートND1の一方の入力ノードN6に出力する。第2のラッチ回路LAT2は保持した電圧レベルをNANDゲートND1の他方の入力ノードN9に出力する。そしてND1は、2つの入力ノードN6、N9の電圧レベルが共にHレベルの場合にLレベルをRST信号として出力し、それ以外の場合にはHレベルをRST信号として出力する。こうすることで、電源投入後の初期状態においてN6、N9が共にLレベルに設定されてリセット信号RSTとしてHレベルを出力し、その後N6、N9が共にHレベルに設定されるタイミングでリセットを解除することができる。
リセットが解除される際には、第1のラッチ回路LAT1の出力レベルはHレベルからLレベルに変化し、逆に第2のラッチ回路LAT2の出力レベルはLレベルからHレベルに変化する。このように、リセット解除時に互いに逆の動作をする2つのラッチ回路を組み合わせることで、N型トランジスター及びP型トランジスターの特性のばらつき(例えばしきい値電圧等のばらつき)によるリセット期間の長さのばらつき(リセット解除のタイミングのばらつき)を低減することが可能になる。
初期状態において、出力ノードがHレベルに設定される回路素子(第1のグループの回路素子)には、第1の高電位電源電圧VDDが供給される。一方、出力ノードがLレベルに設定される回路素子(第2のグループの回路素子)には、第2の高電位電源電圧VINTが供給される。具体的には、図8において、VINTが供給されることを明示したインバーターIV2、IV3、IV6、IV7、IV8は第2のグループの回路素子であって、VINTが供給される。それ以外のインバーターIV1、IV4、IV5、IV9及びNANDゲートND1は第1のグループの回路素子であって、特に図示していないが、VDDが供給される。
第1のグループの回路素子を構成するトランジスターは、第1のウェルに形成され、第2のグループの回路素子を構成するトランジスターは、第1のウェルと物理的に分離された第2のウェルに形成される。具体的には、第1のグループの回路素子IV1、IV4、IV5、IV9、ND1を構成するP型トランジスターは、第1のNウェルNW1(図示せず)に形成される。第2のグループの回路素子IV2、IV3、IV6、IV7、IV8を構成するP型トランジスターは、第1のNウェルNW1と物理的に分離された第2のNウェルNW2(図示せず)に形成される。
カップリングキャパシターCB2〜CB7は、初期状態における各ノードの電圧レベルをLレベル又はHレベルに設定するためのものである。具体的には、CB2、CB4、CB6は、初期状態においてN3、N5、N8をHレベルに設定する。またCB3、CB5、CB7は、初期状態においてN4、N7、N9をLレベルに設定する。これらのカップリングキャパシターは、ドレインとソースを共通接続したトランジスターで構成することができる。
以上説明したように、本実施形態のパワーオンリセット回路によれば、電源投入後の初期状態において、各ノードの電圧レベルをLレベル又はHレベルに確実に設定することができるから、VDDがゆっくりと立ち上がる場合であっても、リセット信号RSTを確実に出力することが可能になる。さらに2つのラッチ回路を設けることで、トランジスター特性のばらつきによるリセット期間の長さのばらつき(リセット解除のタイミングのばらつき)等を低減することが可能になる。その結果、集積回路装置(電子機器)において、パワーオンリセット処理を確実に実行することができるから、電源投入時の様々なトラブルを回避することなどが可能になる。
3.集積回路装置及び電子機器
図10(A)、図10(B)に、本実施形態の電子回路及びパワーオンリセット回路を含む集積回路装置及び電子機器の構成例を示す。なお本実施形態の集積回路装置、電子機器は図10(A)、図10(B)の構成には限定されず、その構成要素の一部を省略したり、他の構成要素を追加するなどの種々の変形実施が可能である。
図10(A)の電子機器は、集積回路装置600、センサー700、アンテナ710を含む。また集積回路装置600(マイクロコンピューター等)は、パワーオンリセット回路(POR)300、処理部610、記憶部620、不揮発性記憶装置630、検出回路640、無線回路650を含む。
パワーオンリセット回路(POR)300は、電源投入時にリセット信号を集積回路装置600の各回路に対して出力する。そして一定時間後にリセットを解除することで、集積回路装置600の各回路が正常に動作することができる。なお、パワーオンリセット回路(POR)300は、集積回路装置600の外部に設けてもよい。
センサー700は、例えば煙センサー、光センサー、人感センサー、圧力センサー、生体センサー、ジャイロセンサーなどである。
集積回路装置600の検出回路は、センサー700(物理量トランスデューサ)からのセンサー信号に基づいて種々の検出処理(物理量の検出処理)を行う。例えばセンサー信号から所望信号を検出する処理を行う。集積回路装置600の処理部610は、各種の演算処理や集積回路装置600の全体的な制御を行う。この処理部610は、CPU等のプロセッサーやASICの制御回路により実現される。記憶部620は、各種のデータを記憶するものであり、RAM等により実現される。不揮発性記憶装置630は、本実施形態の記憶装置であって、電気的にデータの書き込み等が可能な記憶装置である。無線回路650は、アンテナ710への信号の無線送信処理を行ったり、アンテナ710からの信号の無線受信処理を行う。
図10(B)の電子機器は、パワーオンリセット回路(POR)300、集積回路装置600、外部デバイス720、電気光学パネル730を含む。また集積回路装置600は、処理部610、記憶部620、不揮発性記憶装置630、外部I/F部660、ドライバー670を含む。
外部デバイス720は、電子機器に設けられる種々のデバイスであり、例えば操作部等である。電気光学パネル730は、例えば液晶パネル、有機EL(Electro Luminescence)パネル、無機ELパネル、或いは電気泳動パネル(Electrophoretic Display)などである。
集積回路装置600の外部I/F(インターフェース)部660は、例えばSPI、USBなどの各種のインターフェースのための制御を行う。ドライバー670は、電気光学パネル730を駆動して画像を表示する制御を行う。
なお本実施形態の電子機器としては、携帯型情報端末、携帯電話機、PDA、携帯型オーディオ機器、時計、リモコン、各種家電装置等の種々の機器を想定できる。
なお、以上のように本実施形態について詳細に説明したが、本発明の新規事項及び効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは当業者には容易に理解できるであろう。従って、このような変形例はすべて本発明の範囲に含まれるものとする。例えば、明細書又は図面において、少なくとも一度、より広義又は同義な異なる用語と共に記載された用語は、明細書又は図面のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えることができる。また電子回路、パワーオンリセット回路、集積回路装置及び電子機器の構成、動作も本実施形態で説明したものに限定されず、種々の変形実施が可能である。