JP5531248B2 - ナノインプリント用モールド及びその製造方法、並びにナノインプリント用モールドを用いた材料の加工方法 - Google Patents

ナノインプリント用モールド及びその製造方法、並びにナノインプリント用モールドを用いた材料の加工方法 Download PDF

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本発明はナノインプリント用モールド及びその製造方法、さらにはナノインプリント用モールドを用いた材料の加工方法に関する。
半導体集積回路の製造工程では、線幅100nm〜数10nmという極微細なパターンを形成することが必要とされる。最新の電界効果型トランジスタではゲート線幅45nmのものが量産されており、32nmもしくはそれ以下のゲート線幅の工業的な実現を目指し開発が進んでいる。
従来、このような極微細なパターンを形成するために光リソグラフィ法が多く用いられてきた。光リソグラフィ法では、光源としてKrFエキシマレーザ(フッ化クリプトン、248nm)やArFエキシマレーザ(フッ化アルゴン、193nm)が用いられている。より一層の微細化のためには光源の波長を短くする必要があるが、光源の更なる短波長化は困難な状況にある。
そこで、光リソグラフィ法の限界を越える技術としてナノインプリント法が注目されている。ナノインプリント法は、1995年に米国ミネソタ大Chou教授が提唱したナノインプリントリソグラフィ技術をもとにした近年発展が著しい微細加工技術である(非特許文献1)。
ナノインプリント法は、必要とされる線幅のパターンで形成された凹凸面を有するモールド(鋳型)を用意し、凹凸面のパターンを所望の材料表面に転写して、そのレプリカ(複製)を作製する加工方法である。レプリカの材料としてはガラス、プラスチックなどが用いられる。加熱及び加圧によりモールドの形状を転写する熱ナノインプリント法や、紫外線硬化樹脂をモールドの凹凸面に流し込み、光照射で硬化させた後にモールドから離型する紫外線ナノインプリント法(光ナノインプリント法)がある。さらに最近では、HSQ(Hydrogen Silsequioxane)等の材料を用いる室温ナノインプリント法も開発されている。
ナノインプリント用モールドは、例えば、Si、石英(SiO2)、SiC、Ta、グラッシーカーボン、及びNiなどの材料の表面に所定の凹凸パターンを形成する方法により作製される。パターン形成には、電子線リソグラフィ技術や放射光リソグラフィ技術、EUVリソグラフィ技術、さらには電鋳技術が用いられる。
平井義彦、「ナノインプリントの基礎と技術開発・応用展開」、(株)フロンティア出版、2006年7月7日、ISBN4-902410-09-5 C3054
従来のリソグラフィ技術によれば、10nm程度の非常に高い解像度を持つパターンを形成することも可能である。しかしながら、一般的なリソグラフィ装置で加工できる面積は8インチ角程度であり、一度の露光で形成できるパターンの面積は20cm角程度に限られるという問題がある。さらにはパターンが細密になるほど描画時間が著しく長時間化し、製造費用の上昇を招くという問題があった。
すなわち、リソグラフィ技術を利用したモールドの場合、20cm角を超える大きな面積の凹凸面を有するモールドを製造することは、技術的にも、また経済的な面でも現実的ではなかった。より大きな面積の加工が必要とされる場合、複数のモールドを接合して用いることも考えられるが、この場合つなぎ目に起因する不具合の発生が避けられない。
そこで、本発明は、転写用の凹凸面の面積が大きい場合であっても、つなぎ目を設けることなく容易に製造されることが可能なナノインプリント用モールドを提供すること目的とする。また、本発明は係るナノインプリント用モールドを製造する方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記問題点を解決すべく鋭意努力した結果、従来とは全く異なる方法、すなわち液晶物質が自己組織化する性質を応用したレリーフ構造の形成を利用した方法が有効であることを見出し、係る知見に基づいて本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、液晶物質を含有し、該液晶物質の配向によってレリーフ構造が形成された凹凸面を有する、ナノインプリント用モールドの製造方法に関する。
本発明に係るナノインプリント用モールドは、液晶物質の自己組織化する性質に基づいて表面にレリーフ構造が形成されていることから、リソグラフィ技術のように凹凸面の面積が制限されることがなく、転写用の凹凸面の面積が大きい場合であっても、つなぎ目を設けることなく容易に製造されることが可能である。
レリーフ構造を効率的かつ安定的に形成するために、上記液晶物質の重量平均分子量は1000以上であることが好ましい。
同様の観点から、液晶物質が、らせん構造が形成されるように配向していることが好ましい。また、液晶物質の配向によって形成されたキラルスメクチックC相又はキラルスメクチックCA相が固定されていることがより好ましい。
本発明に係るナノインプリント用モールドは、上記ナノインプリント用モールドのレリーフ構造から転写された凹凸面を有する金属成形品であってもよい。
本発明に係る製造方法は、液晶物質を含有する膜を形成する工程と、液晶物質をらせん構造が形成されるように配向させ、該液晶物質の配向を固定することにより、膜の表面にレリーフ構造を形成させて、凹凸面を有する膜をナノインプリント用モールドとして得る工程と、を備える。
本発明に係る製造方法は、液晶物質を含有する膜を形成する工程と、液晶物質をらせん構造が形成されるように配向させ、該液晶物質の配向を固定することにより、膜の表面にレリーフ構造を形成させて、凹凸面を有する膜を得る工程と、膜の凹凸面上に金属成形品を形成して、レリーフ構造からの転写により形成された凹凸面を有する金属成形品をナノインプリント用モールドとして得る工程とを備えていてもよい。
これらの方法によれば、転写用の凹凸面の面積が大きいナノインプリント用モールドであっても、つなぎ目を設けることなく容易に製造することが可能である。
さらに、本発明は、上記本発明に係るナノインプリント用モールドの凹凸面からの転写により材料を加工する、加工方法に関する。本発明に係る加工方法によれば、微細かつ大きな加工面積であっても、つなぎ目に起因する不具合の発生を防止しながら容易に所定のパターンに加工することが可能である。
本発明によれば、転写用の凹凸面の面積が大きい場合であっても、つなぎ目を設けることなくナノインプリント用モールドを容易に製造できる。
実施例1において作製した液晶フィルム表面の原子間力顕微鏡写真である。 実施例1において作製した液晶フィルム表面の光学写真である。 実施例5において作製した液晶フィルム表面の原子間力顕微鏡写真である。
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
本実施形態に係るナノインプリント用モールドは、加工される材料の表面に転写するための凹凸面を有する。この凹凸面は、ナノインプリント用モールドを構成する液晶物質によって形成されたレリーフ構造を有する。
モールドの凹凸面を構成するレリーフ構造のピッチ(凹凸の1周期の長さ)は、液晶物質によって形成されるらせん構造等に応じて変化し得るが、通常は1000nm以下程度である。より具体的には、レリーフ構造のピッチは100〜800nmであることが好ましい。また、レリーフ構造を構成する凹凸の深さは3〜100nmであることが好ましい。本実施形態に係るモールドは、このような微細なパターンを有する場合であっても容易に製造されることが可能である。
モールドを構成する液晶物質は、加熱等により液晶状態を呈し得る物質である。液晶は、液体(liquid)と結晶(Crystal)の両方の性質を持つ中間的な相(Mesophase)を形成している。すなわち、液晶は液体としての流動性と結晶としての異方性を合わせ持つという特徴を有する。液晶相を呈する液晶物質としては、いわゆる低分子液晶物質及び高分子液晶物質のような様々なものが知られている。液晶物質の種類や温度等の環境によって特有の分子配向の秩序を有することから、その分子配向を利用し、あるいは制御することによって様々な用途に応用できる。そのため、液晶物質は工業的に大きな分野を形成している。
液晶は、分子形状や分子配列に基づいて、ネマチック(nematic)液晶、スメクチック(smectic)液晶、ディスコチック(discotic)液晶等に大別される。スメクチック液晶は、棒状メソゲンを有する液晶物質が、一次元結晶、または二次元液体とも言うべき層構造を形成している液晶である。
スメクチック液晶の相は、この層構造内における秩序等に応じて、スメクチックA相(SmA相)、スメクチックB相(SmB相)、スメクチックC相(SmC相)、スメクチックE相(SmE)、スメクチックF相(SmF相)、スメクチックG相(SmG相)、スメクチックH相(SmH相)、スメクチックI相(SmI相)、スメクチックJ相(SmJ相)、スメクチックK相(SmK相)、及びスメクチックL相(SmL相)等に分類できる。これらのスメクチック相の中には、相中の各層の棒状メソゲンの配向ベクトルが少しずつある角度でねじられていき、全体としてみると配向ベクトルがある一定のらせん構造を呈するものがある。このらせん構造は、液晶相を構成する分子の配列が、各層ごとに少しずつ変化し、全体として分子の配列が回転した構造を形成している構造である。らせん構造の例としては、スメクチック液晶相における層の法線方向に対する分子の長軸方向の傾き方向が、隣り合う層で少しずつ回転した構造が挙げられる。らせん構造におけるらせんの中心軸をらせん軸という。また、らせん一回転分のらせん軸方向の距離をらせんピッチという。
一般に、キラルスメクチック相において上記のようならせん構造が形成される場合が多い。キラルスメクチック相としては、キラルスメクチックC相(SmC*相)、キラルスメクチックI相(SmI*相)、及びキラルスメクチックF相(SmF*相)のように光学活性を示し強誘電性を示すもの、キラルスメクチックCA相(SmCA*相)、キラルスメクチックIA相(SmIA*相)、及びキラルスメクチックFA相(SmFA*相)のように光学活性を示し反強誘電性を示すもの、並びに、キラルスメクチックCγ相(SmCγ相)、キラルスメクチックIγ相(SmIγ相)、及びキラルスメクチックFγ相(SmFγ相)のように光学活性を示しフェリ誘電性を示すものがある。
もっとも、らせん構造が形成されるためにキラルであることは必須ではなく、例えばJ. Mater. Chem.、6巻、1231頁(1996年)やJ. Mater. Chem.、7巻、1307頁(1997年)に記載されるような、アキラルであってもらせん構造を有するスメクチック相が形成され得る。
ナノインプリント用モールドにおいては、液晶物質の配向によって形成された、上記のようならせん構造を有する液晶相が、実質的に流動性を有しない状態で固定されていることが好ましい。液晶物質の配向が固定される結果、モールド表面のレリーフ構造が固定される。らせん構造の安定性、らせんピッチの可変の容易さ、らせん構造を構成する液晶物質の合成の容易さ、さらには液晶状態での粘性が低いことによる配向の容易さ等の観点から、好ましくはキラルスメクチックC相又はキラルスメクチックCA相が固定されていることが好ましい。
本実施形態に係るナノインプリント用モールドは、液晶物質を1種又は2種以上含有する組成物である液晶材料によって形成された成形品である。大きな面積を有する長尺な成形品を得やすいことから、ナノインプリント用モールドは、好適にはフィルム(液晶フィルム)である。
モールドとしての液晶フィルムにおいて、らせん構造のらせん軸方位がフィルムの主面に対して傾いていることが好ましい。らせん軸方位とフィルムの主面とがなす角(以下「傾き角度」という。)の絶対値は、通常、1度〜85度、好ましくは1度〜50度、さらに好ましくは1度〜30度である。傾き角度が1度未満の場合、らせん軸方位がフィルムの主面とほぼ平行にある配向状態とほぼ同等の効果しか得ることができず、また85度を越える場合にはフィルムの主面に対してほぼ垂直方向にある配向状態とほぼ同等の効果しか得られない可能性がある。
液晶フィルム中のらせん軸方位は、フィルム内において均一でも異なっていてもよい。具体的には、膜厚方向に一定の傾き角度を有するらせん軸方位をもったフィルムや、らせん軸方位が膜厚方向において変化したフィルムがモールドを構成し得る。即ち、フィルム内において、傾き角度が、フィルム表面からの距離に拘わらず一定であってもよく、フィルム表面からの距離に応じて傾き角度が異なっていてもよい。
膜厚方向においてらせん軸方位が変化した液晶フィルムにおける、変化の態様としては連続的増加、連続的減少、間欠的増加、間欠的減少、連続的増加と連続的減少を含む変化、若しくは増加及び減少を含む間欠的変化等を挙げることができる。ここで間欠的変化とは、厚さ方向の途中で傾き角度が変化しない領域を含んでおり、段階的な変化となっているものである。
らせん軸の向きが、微視的には配向性を持った配向領域(ドメイン)で構成され、巨視的にはらせん軸が様々な向きのマルチドメイン相でもよいし、全て同一方向にそろったモノドメイン相でもよい。更にはらせん構造を形成する部分はフィルムの全面であってもよいし、一部であってもよい。
モールドとしての液晶フィルム中のらせんピッチは、特に限定されないが、0.05〜2μmが好ましく、0.1〜1μmがより好ましい。また、らせんピッチはフィルム内で一定でもよいが、フィルム内の場所により異なっていてもよく、連続的に変化していてもよい。らせんピッチは、液晶フィルム(モールド)の製造にあたり、温度などの配向条件を調節したり、光学活性部位の光学純度、光学活性物質の配合割合等を調節すること等の方法により、容易に制御できる。
ナノインプリント用モールドとしての成形品を構成する液晶物質としては、その配向が固定されたときにモールド表面にレリーフ構造を形成し得るものが用いられる。液晶物質は、棒状メソゲン基を含んでおり、上述のようならせん構造を有するスメクチック液晶相を相系列中に有し、且つその配向が固定できるものが好ましい。
液晶物質は低分子液晶物質であっても高分子液晶物質であってもよいし、それらの両方を用いてもよい。ただし、液晶物質は、1000〜1000000の重量平均分子量を有する高分子液晶物質であることが好ましい。液晶物質の重量平均分子量が1000未満であると、モールド表面のレリーフ構造が十分に形成されにくくなる傾向があり、1000000を超えると溶解性が著しく低くなるためにモールドの薄膜化が困難になる傾向がある。
高分子液晶物質は、主鎖型高分子液晶物質、側鎖型高分子液晶物質又はこれらの組み合わせであり得る。
主鎖型高分子液晶物質としては、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリカーボネート系、ポリイミド系、ポリウレタン系、ポリベンズイミダゾール系、ポリベンズオキサゾール系、ポリベンズチアゾール系、ポリアゾメチン系、ポリエステルアミド系、ポリエステルカーボネート系及びポリエステルイミド系から選ばれる少なくとも1種の液晶ポリマーが好ましく用いられる。
主鎖型高分子液晶物質としては、棒状メソゲン基とポリメチレン、ポリエチレンオキサイド及びポリシロキサンから選ばれる屈曲鎖とを有しこれらが交互に結合した半芳香族ポリエステル系高分子液晶物質や、屈曲鎖を有しない全芳香族ポリエステル系高分子液晶物質が特に好ましい。
これらの中でもキラルスメクチックC相を形成する上で配向性が良好であり、合成も比較的容易であるポリエステル系(液晶性ポリエステル)が好ましい。液晶性ポリエステルの構成単位の好適な例としては、芳香族又は脂肪族ジオール単位、芳香族又は脂肪族ジカルボン酸単位、及び芳香族又は脂肪族ヒドロキシカルボン酸単位を挙げることができる。
側鎖型高分子液晶物質としては、ポリアクリレート系、ポリメタクリレート系、ポリビニル系、ポリシロキサン系、ポリエーテル系、ポリマロネート系及びポリエステル系等の直鎖状又は環状構造の主鎖を有する高分子に側鎖としてメソゲン基が結合したものが挙げられる。側鎖型高分子液晶物質としては、主鎖に屈曲鎖であるスペーサー基を介して液晶性を与える棒状メソゲン基が結合したものが好ましい。また、主鎖、側鎖両方に棒状メソゲン基を有するものも好ましい。
低分子液晶物質としては、例えば、シッフ塩基系化合物、ビフェニル系化合物、ターフェニル系化合物、エステル系化合物、チオエステル系化合物、スチルベン系化合物、トラン系化合物、アゾキシ系化合物、アゾ系化合物、フェニルシクロヘキサン系化合物、ピリミジン系化合物、シクロヘキシルシクロヘキサン系化合物、又はこれらの組み合わせを採用することができる。
高分子液晶物質は、光学活性単位を有することが好ましい。あるいは、液晶材料がキラル剤を含有していてもよい。光学活性単位及び/又はキラル剤を導入することにより、所望のらせん構造を有するスメクチック液晶相を形成し易くなる。例えば、スメクチックC相、スメクチックI相又はスメクチックF相を呈する液晶物質を用いる場合に光学活性単位又はキラル剤を導入することにより、キラルスメクチックC相、キラルスメクチックI相、又はキラルスメックチックF相のような、よりらせん構造を形成しやすいキラルスメクチック相が形成される。キラル剤の配合量、光学活性単位の導入量、光学純度、配向させる際の温度条件等を適宜調節することによって、らせんピッチを調節することができる。らせんピッチの調節により、レリーフ構造の凹凸パターンのピッチを制御することが可能である。
らせん構造は右らせんでも左らせんでもよい。使用するキラル剤や光学活性単位の掌性を選択することにより、右らせん、左らせんいずれかの構造を形成する液晶材料を得ることができる。
光学活性単位を有する主鎖型高分子液晶物質の好適な具体例として、下記化学式で表されるユニット1及びユニット2を有する液晶ポリマーがある。
ユニット1において、R1は酸素原子を含有していてもよいC1〜C24の直鎖又は分岐アルキル基であり、L1及びL2はそれぞれ独立に単結合、−OOC−、COO、−O−、−OCOO−、−C≡C−又は−C=C−である。
ユニット2において、C1は酸素原子を含有していてもよいキラリティーを有するC1〜C24の炭化水素基であり、L3及びL4はそれぞれ独立に単結合、−OOC−、COO、−O−、−OCOO−、−C≡C−又は−C=C−である。
x及びyは当該液晶ポリマーに含まれる、ユニット1及びユニット2の合計量に対する各ユニットの比率であり、xは0%以上、yは1%以上である。xは好ましくは0〜60%である。ユニット1とユニット2の結合の順序は任意であり、ランダムに結合していてもよいし、ブロックを形成していてもよい。また、液晶ポリマーを構成する複数のユニット1及びユニット2は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。この液晶ポリマーの重量平均分子量は1000以上であることが好ましい。
光学活性単位を有する側鎖型高分子液晶物質の好適な具体例として、下記化学式で表されるモノマーに由来するモノマー単位を含む液晶ポリマーがある。
上記式中、R2は水素原子又はメチル基であり、R3はC1〜C24のアルキル基であり、L5、L6、L7及びL8はそれぞれ独立に単結合、、−OOC−、COO、−O−、−OCOO−、−C≡C−又は−C=C−であり、C2は酸素原子を含有していてもよいキラリティーを有するC1〜C24の炭化水素基であり、X1、X2、X3及びX4はそれぞれ独立に水素原子、酸素原子を含有していてもよいC1〜C8の炭化水素基、ハロゲン原子、−NO2、−NH2、−CF3又は−CNであり、同一分子中の複数のX1、X2、X3及びX4はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。
モールドを構成する液晶材料は、液晶相の発現を著しく妨げない範囲で、液晶物質以外の成分を含有していてもよい。例えば、液晶材料は、界面活性剤、重合開始剤、重合禁止剤、増感剤、安定剤、触媒、二色性色素、染料、顔料、酸化防止剤、紫外線吸収剤、密着性向上剤、ハードコート剤等の各種添加剤を含有していてもよい。液晶材料中の液晶物質の含有割合は、通常30〜100質量%、好ましくは50〜100質量%、さらに好ましくは70〜100質量%である。
また、モールド中の液晶物質が架橋剤により架橋されていてもよい。液晶物質が架橋されることにより、その配向が固定されるとともに、モールドの耐熱性を向上させることができる。架橋剤としては、例えばビスアジド化合物及びグリシジルメタクリレートがある。
以上説明したような、液晶材料によって形成されたナノインプリント用モールドのレリーフ構造をさらに他の成形品に転写し、これをナノインプリント用モールドとして用いることもできる。例えば金属成形品に転写すれば、加圧や加熱に対する耐性が更に優れるモールドが得られる。係る金属成形品は、例えば、電鋳(エレクトロフォーミング)により液晶フィルムの凹凸面に金属層を形成する方法によって得ることができる。金属としては、数nmサイズの微細な凹凸形状への追従性の良さ、導電性の観点からニッケルや銅が好ましい。
ナノインプリント用モールドとしての液晶フィルムは、例えば、液晶物質を含有する液晶材料の膜を形成する工程と、液晶物質をらせん構造が形成されるように配向させ、該液晶物質の配向を固定することにより、膜の表面にレリーフ構造を形成させて、凹凸面を有する膜をナノインプリント用モールドとして得る工程とを備える方法によって製造することができる。
より詳細には、下記(A)又は(B)の方法によって液晶物質の配向が固定された膜(液晶フィルム)を得ることができる。
(A)液晶物質として高分子液晶物質を含有する液晶材料の膜を形成し、該高分子液晶物質のガラス転移温度以上の温度に膜を加熱することにより該高分子液晶物質をらせん構造が形成されるように配向させ、その後、ガラス状態となるまで膜を冷却することにより高分子液晶物質の配向を固定する方法
(B)液晶物質として重合性の液晶物質を含有する液晶材料の膜を形成し、該液晶物質が液晶相を呈する温度に加熱することにより該液晶物質をらせん構造が形成されるように配向させ、その状態で該液晶物質を必要により他の重合性非液晶物質とともに重合して高分子液晶物質を形成することにより液晶物質の配向を固定する方法
(A)の方法においては、上述の高分子液晶物質が好適に用いられる。(B)の方法において用いられる重合性の液晶物質としては、紫外光、可視光、電子線又は熱によって重合し得る重合性基を有する液晶物質を用いることができる。重合性基の例としては、ビニル基、アクリル基、メタクリル基、ビニルエーテル基、シンナモイル基、アリル基、アセチレニル基、クロトニル基、アジリジニル基、エポキシ基、イソシアネート基、チオイソシアネート基、アミノ基、水酸基、メルカプト基、カルボン酸基、アシル基、ハロカルボニル基、アルデヒド基、スルホン酸基、及びシラノール基がある。これらのうち多重結合を有する基、エポキシ基、及びアジリジニル基が好ましく、アクリル基、メタクリル基、ビニル基、ビニルエーテル基、エポキシ基及びシンナモイル基がより好ましい。
液晶材料の膜は、気相、液相及び固相から選ばれる第一の相と気相、液相及び固相から選ばれる第二の相との界面に液晶材料を展開する方法によって形成することができる。得られる製品の実用性、及び製造の容易さの観点から、第一の相及び第二の相が固相であるか、または、第一の相が固相、第二の相が気相であることが望ましい。
上記気相は、例えば空気又は窒素から構成される。
上記液相を構成する液体としては、例えば、水、有機溶剤、液体状の金属、他の液晶、及び溶融状態の高分子化合物がある。
上記固相を構成する固体としては、プラスチックフィルム基板、金属基板、ガラス基板セラミック基板及び半導体基板から選ばれる基板を用いることができる。プラスチック基板は、例えば、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリアミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトン、ポリケトンサルファイド、ポリエーテルスルフォン、ポリスルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリフェニレンオキサイド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリアリレート、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリビニルアルコール、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ−4−メチルペンテン−1樹脂、セルロース系プラスチックス(トリアセチルセルロース等)、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、又は高分子液晶から構成される。金属基板は、例えば、アルミ、鉄又は銅から構成される。ガラス基板は、例えば、青板ガラス、アルカリガラス、無アルカリガラス、ホウ珪酸ガラス、フリントガラス又は石英ガラスから構成される。半導体基板の例としては、シリコンウエハーがある。
これら基板上に他の被膜、例えばポリイミド膜、ポリアミド膜、ポリビニルアルコール膜等有機膜、酸化珪素等の斜め蒸着膜、ITO(インジウム−錫酸化物)等の透明電極、蒸着又はスパッタにより形成される金、アルミニウム又は銅等の金属薄膜が設けられていてもよい。また、基板上に各種半導体素子、例えばアモルファスシリコンの薄膜トランジスタ(TFT)が設けられていてもよい。
上記基板の表面は、必要に応じて配向処理が施されていてもよい。配向処理を施した基板を用いた場合、得られる液晶フィルム中のらせん軸の向きを基板の配向処理の方向に規定された一定の方向とすることができる。ただし、らせん軸の向きは必ずしも基板の配向処理の方向と一致するとは限らず、若干ずれる場合がある。なお、配向処理を施さない基板を用いた場合、得られる液晶フィルムは、各ドメインのらせん軸の向きがランダムであるマルチドメイン相となる場合もあるが、その場合でも所望の効果を得ることができる。
基板の配向処理としては、特に限定されないが、ラビング法、斜方蒸着法、マイクログルーブ法、延伸高分子膜法、LB(ラングミュア・ブロジェット)膜法、転写法、光照射法(光異性化、光重合、光分解等)、剥離法が挙げられる。特に、製造工程の容易さの観点から、ラビング法、光照射法が好ましい。らせん軸をフィルム面に対し傾斜させるためには、上記配向処理を行い、基板にプレチルトを発現させることができるようにすることが好ましい。
また、配向処理を行った基板を用いなくても、界面間に展開した液晶材料に磁場や電場、ずり応力、流動、延伸、温度勾配等を作用させることによっても得られる液晶フィルム中のらせん軸の向きを一定の方向とすることができる。
液晶材料の膜を界面に展開する方法としては、特に限定されず、公知の各種方法を用いることができる。
2枚の基板間の界面に液晶材料を展開する場合、対向配置された2枚の基板を有するセルに液晶材料を注入してもよいし、液晶材料の膜の両面に基板をラミネートしてもよい。
1枚の基板と気相との界面に液晶材料を展開する場合、基板上に、液晶材料を直接塗布してもよいし、液晶材料及びこれを溶解する溶媒を含有する溶液を基板上に塗布してもよい。特に、製造工程の容易さの観点から、溶液の塗布により展開することが望ましい。
上記溶媒としては、液晶材料の種類、組成等に応じて適宜適切なものを選択することができる。通常はクロロホルム、ジクロロメタン、四塩化炭素、ジクロロエタン、テトラクロロエタン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、クロロベンゼン、オルソジクロロベンゼンなどのハロゲン化炭化水素類、フェノール、パラクロロフェノールなどのフェノール類、ベンゼン、トルエン、キシレン、メトキシベンゼン、1、2−ジメトキベンゼンなどの芳香族炭化水素類、イソプロピルアルコール、tert−ブチルアルコール等のアルコール類、グリセリン、エチレングリコール、トリエチレングリコール等のグリコール類、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、エチルセルソルブ、ブチルセルソルブ等のグリコールエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、ピリジン、トリエチルアミン、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル、ブチロニトリル、二硫化炭素、及びこれらの混合溶媒が液晶材料を溶解する溶媒として用いられる。溶液には、表面張力を調整し、塗工性を向上させるなどために、必要に応じて界面活性剤を添加してもよい。
上記溶液中の液晶材料の濃度は、用いる液晶材料の種類や溶解性、製造する液晶フィルムの膜厚等に応じて適宜調節することができるが、通常3〜50重量%、好ましくは5〜30重量%の範囲である。
塗布の方法は、特に限定されないが、スピンコート法、ロールコート法、プリント法、浸漬引き上げ法、カーテンコート法、マイヤーバーコート法、ドクターブレード法、ナイフコート法、ダイコート法、グラビアコート法、マイクログラビアコート法、オフセットグラビアコート法、リップコート法、スプレーコート法等を用いることができる。塗布後、必要に応じて溶媒を除去し、液晶材料を、基板上の均一な層として展開することができる。
液晶材料の膜において、らせん軸方位が界面に対し傾いているらせん構造を有するスメクチック液晶相が形成されるように液晶物質を配向させる方法は、特に限定されない。例えば、液晶材料がらせん構造を有するスメクチック液晶相を形成し得る温度において液晶材料の展開を行った場合、展開と同時に所望の液晶相が形成される場合がある。また、展開された液晶材料を一度、らせん構造を有するスメクチック液晶相よりも高い温度に過熱して、例えばスメクチックA相、キラルネマチック相、等方相等を発現させ、その後らせん構造を有するスメクチック液晶相が発現する温度まで冷却することにより液晶物質を配向させることもできる。但し、いずれの場合であっても、続く固定化の工程を上述の(A)の方法により行うときは、液晶材料のガラス転移点以上の温度において配向させる。
液晶物質を配向させる際、必要に応じて、らせん軸方位を特定の方向に制御することができる。この制御は、例えば、配向処理を施した1枚以上の基板を使用することにより行うことができる。2枚の基板を用いる場合は、そのうち1枚のみに配向処理が施されていてもよく、2枚とも配向処理が施されていてもよい。
具体的に例えば、前述の前記液晶材料を注入するためのセルとしてラビングポリイミドガラス等を2枚用いて液晶材料のらせんのほどけない厚膜セルとしたものを用いることにより、らせん軸方位を特定方向とすることができる。また、2枚の配向処理をしたプラスチックフィルム等で前記液晶材料をラミネートすることでも、らせん軸方位を特定方向とすることができる。これらの場合、2枚の基板の配向処理の方向を反平行(配向処理方向が逆。例えばラビング処理の場合、ラビング方向が逆。)にするとらせん軸が基板に対し一様に傾いた構造が得られ、平行(配向処理方向が同一)にすると液晶フィルムの膜厚方向の途中でらせん軸の傾きが変わったもの等も得ることができる。
また、配向処理を行った基板を用いなくても、界面上に展開した液晶材料はらせん軸の向きが一定となる場合もあるし、磁場や電場、ずり応力、流動、延伸、温度勾配等を作用させることによっても得られる液晶フィルム中のらせん軸の向きを一定の方向とすることができる。
液晶物質の配向の固定化は、上述の(A)又は(B)の方法により行うことができる。
(A)の方法では、ガラス転移温度以上の温度において、らせん軸方位がフィルム平面に対し傾いているらせん構造を有するスメクチック液晶相が形成されるように液晶物質を配向させた液晶材料を、液晶材料がガラス状態となる温度まで冷却することにより、液晶材料が結晶状態とならないようにガラス状態として、液晶物質の配向を固定することができる。冷却の手段は、特に制限はなく、展開又は配向の工程における加熱雰囲気中からガラス転移点以下の雰囲気中、例えば室温中に出すだけで固定に十分な所望の冷却を行うことができる。また、生産の効率等を高めるために、空冷、水冷等の強制冷却を行ってもよい。
(B)の方法では、らせん軸方位がフィルム平面に対し傾いているらせん構造を有するスメクチック液晶相が形成されるように液晶物質を配向させた液晶材料を、該配向を保持したまま重合させる。重合法としては特に制限はないが、熱重合や光重合、γ線等の放射線重合、電子線重合、重縮合、重付加等の反応を用いることができる。中でも反応制御が容易で、製造上有利な可視光や紫外光を利用した光重合あるいは電子線重合を利用することが好ましい。
得られた液晶フィルムの凹凸面上に金属成形品を形成して、液晶フィルムのレリーフ構造からの転写により形成された凹凸面を有する金属成形品を得てもよい。この金属成形品を液晶フィルムから剥離して、ナノインプリント用モールドとして好適に用いることができる。金属成形品は、例えば電鋳(エレクトロフォーミング)によって金属層を形成させる方法によって得ることができる。
以上説明したナノインプリント用モールドの凹凸面からの転写を利用したいわゆるナノインプリント法によって、各種材料の表面を加工することができる。本実施形態に係るモールドは、熱ナノインプリント法、光ナノインプリント法及び室温ナノインプリント法のいずれにも用いることができる。例えば、ロールと、該ロールの外周面に巻き付けられた本実施形態に係るフィルム状のナノインプリント用モールドとを有する転写用の部材を準備し、これを長尺の非加工品の表面に連続的に押し当てる方法によって、長尺の非加工品の表面をナノインプリント用によって連続的に加工することができる。
本実施形態に係る液晶フィルムを用いて光学素子を構成することも可能である。具体的には、液晶フィルムを、そのまま、又は必要に応じて適宜加工することにより本発明の光学素子を得ることができる。例えば、基板上に液晶フィルムを形成した場合、この液晶フィルムを剥離して光学素子として用いることもできるし、基板上に形成したそのままの状態で光学素子として用いることもできるし、別の基板に液晶フィルムを積層して光学素子を得ることもできる。また、光学素子は同じ又は異なる性質を有するフィルムを複数層有していてもよい。
光学素子を構成する別の基板は特に限定されず、例えばポリイミド、ポリアミドイミド、ポリアミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトン、ポリケトンサルファイド、ポリエーテルスルフォン、ポリスルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリフェニレンオキサイド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリアリレート、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリビニルアルコール、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ−4−メチルペンテン−1樹脂、トリアセチルセルロース等のセルロース系プラスチックス、エポキシ樹脂、フェノール樹脂等のプラスチック基板や前記ガラス基板、セラミック基板、紙、金属板、また、偏光板、位相差板、反射板、拡散板等の他の光学素子が使用できる。本発明の液晶フィルムは、配向処理が施された基板を用いてらせん軸の向きを一定方向に規定した液晶フィルムを得た後に配向処理が施された基板を除去しても、配向乱れなどを起こさずに、らせん軸の向きが規定されたままの素子として使用することができる。
また、表面保護、強度増加、環境信頼性向上等の目的のために上述した透明プラスチックフィルム等の保護層やハードコート層等を必要に応じて配向が固定された液晶フィルム上等に設けることもできる。
以下、実施例を挙げて本発明についてより具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
ジメル4−4’−ビフェニルカルボキシレートと2−メトキシ−1、4−ブタンジオールおよび1、6−ヘキサンジオールとを、イソプロピルチタネートを触媒として用いて溶融重合した。溶融重合により、ビベンゾネート(bibenzonate)骨格を含む、下記化学式(1)で表されるユニット(BB−6)および下記化学式(2)で表されるユニット(BB−4(2−MeO))を有するコポリマーである液晶性ポリマーを合成した。コポリマーであることにより、液晶性ポリマーの結晶化が効果的に防止される。
溶融重合の原料として用いた、不斉炭素を有する2−メトキシ−1、4−ブタンジオールのキラル量C%を下記定義:
C%=(S体モル比―R体モル比)/(S体モル比+R体モル比)×100%
に従って求めたところ、100%であった。
X=40、Y=60として得られた重量平均分子量5.5×10のコポリマーの相系列を調べたところ、以下のようになった。
ガラス状態 → キラルスメクチックC相:30℃
キラルスメクチックC相 → スメクチックA相:155℃
スメクチックA相 → 等方相:220℃
X線回折装置((株)リガク社製RU200BH、CuのKα線)を用いてスメクチックA相とキラルスメクチックC相における層間距離を比較する方法により液晶性ポリマーのチルト角を計算したところ、およそ20度であることが分かった。
液晶性ポリマーの塊を180℃に加熱し、その後毎分−1℃の速度で室温まで徐冷したところ、キラルスメクチックC相を固定することができた。キラルスメクチックC相が固定された液晶性ポリマーの塊を液体窒素に浸漬し、ナイフで切り込みを入れて割り、破断面にPt/Pdの薄膜(約2nm)を真空スパッタ(日立社製E1030イオンスパッタ)により蒸着した。薄膜が蒸着された破断面を、フィールドエミッション走査型電子顕微鏡(FE−SEM、日本分光社製JSM−7500F)で観察したところ、155nm〜170nmの周期で複数の溝が配列している格子形状が観察された。さらに詳細に表面形状を調べるために、原子間力顕微鏡(Agilent社製5500)のタッピングモード(シリコンカンチレバー、75kHz)で破断面を観察した結果、格子周期は172nm〜180nm、溝の深さは19nm〜21nmであることが分かった。
ラビング処理された20cm角のイミドガラスに、上記液晶性ポリマーをクロロホルムに溶解した溶液をスピンコート法で塗布し、塗膜を乾燥して、液晶性ポリマーの薄膜(厚さ約5μm)を得た。この薄膜を180℃に加熱したところ、均一配向したスメクチックA相が形成された。その後薄膜を120℃まで徐冷し、120℃に5分間保持した後に急冷することにより、キラルスメクチックC相が固定された薄膜を得ることが出来た。得られた薄膜の空気側界面の表面形状を原子間力顕微鏡で観察したところ、195nm〜215nmの周期で深さが4nm〜5.5nmの複数の溝が配列した格子形状を有する凹凸面が形成されていることが分かった(図1)。ポリマー塊を割ったときの破断面に比べ深さが浅いのは、ポリマーと空気の間の表面張力の差に起因するものと推測された。
得られた薄膜は、肉眼でも確認できる鮮やかな虹色を呈しており、回折格子として機能していることが分かった(図2)。得られた薄膜は、周期およそ200nmの格子形状の凹凸面を有するナノインプリント用モールドとして利用できる。
(実施例2)
キラル量が80%である2−メトキシ−1、4−ブタンジオールを用いたこと以外は実施例1と同様の手順で、液晶性ポリマーを得た。得られた液晶性ポリマーの重量平均分子量は6.0×10であった。この液晶性ポリマー塊の破断面を実施例1と同様に原子間力顕微鏡で観察したところ、周期が210nm〜230nm、溝の深さが23nm〜28nmの格子形状を有する凹凸面が形成されていることが分かった。
さらに、実施例1と同様の手順で得た薄膜の空気側界面の表面形状を原子間力顕微鏡で観察したところ、周期が235nm〜255nm、溝の深さが4.5nm〜6.5nmの格子形状を有する凹凸面が形成されていることが分かった。
(実施例3)
キラル量が50%である2−メトキシ−1、4−ブタンジオールを用いたこと以外は実施例1と同様の手順で、液晶性ポリマーを得た。得られた液晶性ポリマーの重量平均分子量は4.4×10であった。この液晶性ポリマー塊の破断面を実施例1と同様に原子間力顕微鏡で観察したところ、周期が280nm〜300nm、溝の深さが35nm〜45nmの格子形状を有する凹凸面が形成されていることが分かった。
さらに、実施例1と同様の手順で得た薄膜の空気側界面の表面形状を原子間力顕微鏡で観察したところ、周期が315nm〜340nm、溝の深さが7.5nm〜9.5nmの格子形状を有する凹凸面が形成されていることが分かった。
(実施例4)
キラル量が35%である2−メトキシ−1、4−ブタンジオールを用いたこと以外は実施例1と同様の手順で、液晶性ポリマーを得た。得られた液晶性ポリマーの重量平均分子量は4.1×10であった。この液晶性ポリマー塊の破断面を実施例1と同様に原子間力顕微鏡で観察したところ、周期が580nm〜600nm、溝の深さが70nm〜80nmの格子形状を有する凹凸面が形成されていることが分かった。
さらに、実施例1と同様の手順で得た薄膜の空気側界面の表面形状を原子間力顕微鏡で観察したところ、周期が550nm〜605nm、溝の深さが8.0nm〜11.5nmの格子形状を有する凹凸面が形成されていることが分かった。
(比較例1)
キラル量が0%である2−メトキシ−1、4−ブタンジオールを用いたこと以外は実施例1と同様の手順で、液晶性ポリマーを得た。得られた液晶性ポリマーの重量平均分子量は6.1×10であった。この液晶性ポリマー塊の破断面を実施例1と同様に原子間力顕微鏡で観察したところ、平滑であり、実施例1〜4で見られたような格子形状は観察されなかった。これよりキラルスメクチックC相が有するねじれ構造が、表面レリーフ構造を誘起していることが確認された。
(実施例5)
4、4’−ビフェニルジカルボン酸ジメチル200mmol、2−メチル−1、4−ブタンジオール(enantiomeric excess、e.e.=90%)120mmol、及び1、6−ヘキサンジオール80mmolを、オルトチタン酸テトラ−n−ブチルを触媒として用い、220℃で2時間、溶融重合することにより、液晶性ポリエステルを合成した(固有粘度0.18dL/g)。
この液晶性ポリエステルの6wt%のテトラクロロエタン溶液を調製した。この溶液をラビング処理を施したポリイミド膜を有するガラス基板上にスピンコート法により塗布し、ホットプレート上で60℃に加熱して溶媒を除去して、液晶性ポリエステルの薄膜を得た。次いで、恒温槽中180℃で10分間熱処理して液晶性ポリエステルをスメクチックA相で配向させた後、液晶性ポリエステルがキラルスメクチックC相に配向する温度である120℃まで4℃/分で降温した。その後、液晶性ポリエステルの薄膜を恒温槽から取り出してガラス状態となる室温まで冷却し、その配向を固定させた。
得られた液晶性ポリマーのフィルムは、らせん構造を有するキラルスメクチックC相がガラス状態で固定されており、均一な膜厚(0.5μm)を有していた。膜断面の透過型電子顕微鏡観察より、フィルムに形成されたらせん構造のらせんピッチは約0.5μmであることがわかった。らせん軸は基板面に対し膜厚方向に約12度傾いており、その角度は膜厚方向で一定であった。また膜面内におけるらせん軸の方向は、ラビング方向と一致せず反時計回りに約10度ずれていた。このフィルムの全光線透過率を測定したところ、95%であった。
さらに、実施例1と同様の手順でフィルムの空気側界面の表面形状を走査型プローブ顕微鏡で観察したところ、周期が445nm〜455nm、溝の深さが4nm〜5nmの格子形状を有する凹凸面が形成されていることが分かった(図3)。

Claims (13)

  1. 液晶物質を含有する膜を形成する工程と、
    前記液晶物質をらせん構造が形成されるように配向させ、該液晶物質の配向によって形成されたキラルスメクチックC相又はキラルスメクチックCA相を固定することにより、前記膜の表面にレリーフ構造を形成させて、凹凸面を有する前記膜を得る工程と、
    前記膜の凹凸面上に金属成形品を形成して、前記レリーフ構造からの転写により形成された凹凸面を有する前記金属成形品をナノインプリント用モールドとして得る工程と、
    を備える、ナノインプリント用モールドの製造方法。
  2. 前記液晶物質の自己組織化によって前記レリーフ構造を形成させる、請求項1記載のナノインプリント用モールドの製造方法。
  3. 前記レリーフ構造はピッチが100〜800nmである、請求項1又は2記載のナノインプリント用モールドの製造方法。
  4. 前記レリーフ構造を構成する凹凸の深さが3〜100nmである、請求項1〜3のいずれか一項記載のナノインプリント用モールドの製造方法。
  5. 前記液晶物質は重量平均分子量が1000〜1000000である、請求項1〜4のいずれか一項記載のナノインプリント用モールドの製造方法。
  6. 液晶物質を含有し、該液晶物質の配向によってレリーフ構造が形成された凹凸面を有するナノインプリント用モールドの該凹凸面からの転写により材料を加工する方法において、
    らせん構造が形成されるように前記液晶物質を配向させ、該液晶物質の配向によって形成されたキラルスメクチックC相又はキラルスメクチックCA相を固定することにより前記ナノインプリント用モールドの前記レリーフ構造を形成する、加工方法。
  7. 前記液晶物質の自己組織化によって前記レリーフ構造を形成させる、請求項6記載の加工方法。
  8. 前記レリーフ構造はピッチが100〜800nmである、請求項6又は7記載の加工方法。
  9. 前記レリーフ構造を構成する凹凸の深さが3〜100nmである、請求項6〜8のいずれか一項記載の加工方法。
  10. 前記液晶物質は重量平均分子量が1000〜1000000である、請求項6〜9のいずれか一項記載の加工方法。
  11. 液晶物質を含有し、該液晶物質をらせん構造が形成されるように配向させ、該液晶物質の配向によって形成されたキラルスメクチックC相又はキラルスメクチックCA相を固定することによってレリーフ構造が形成された凹凸面を有するナノインプリント用モールドの前記レリーフ構造から転写された凹凸面を有する金属成形品である、ナノインプリント用モールド。
  12. 前記レリーフ構造はピッチが100〜800nmである、請求項11記載のナノインプリント用モールド。
  13. 前記レリーフ構造を構成する凹凸の深さが3〜100nmである、請求項11又は12記載のナノインプリント用モールド。
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