JP5530231B2 - 芋焼酎の製造方法 - Google Patents

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Description

この発明は芋焼酎の製造方法に関し、更に詳しくは芋イタミ臭、霜イタミ臭といった欠点臭がない芋焼酎を、貯蔵容器に芋を貯蔵するといった無駄を無くして、貯蔵経費をかけることなく製造することのできる芋焼酎の製造方法に関する。
焼酎の製造方法に関する発明を記載した特許文献について、昭和45年(1970年)以後現在に至る時間的範囲で電子図書館を検索したところ、以下の特許文献1〜5がヒットした。
特許文献1には、焼酎蒸留粕を有効に利用し、天然由来の食物繊維分が豊富に含まれ、風味豊かで食しやすい焼酎粕発酵食品及びその製造方法が、開示されている。特許文献1には、焼酎の製造方法についての直接の開示がなく、焼酎の製造過程で産出する芋焼酎蒸留粕の有効利用方法として焼酎粕発酵食品の製造方法が開示されている。
特許文献2には、芋に含まれる水分を減ずるための焙炒や脱汁といった特別な前処理を必要としない簡易な方法で製造された芋麹を用いて純芋焼酎の大量生産に適した製造方法が、開示されている。
特許文献3には、原料となる芋を乾燥処理して、原料それ自体の含水量を低下させて、原料(芋)を休眠させることにより、原料をそれ自体の成長を抑止、低下させ、冷凍保存と異なり電力などのエネルギー消費を要することなく、原料を保存することができ、醸造のタイミングを芋の収穫の時期に関係なく任意に設定することができて、醸造タイミングの自由度拡大を図ることができる芋焼酎の製造方法が、開示されている。この製造方法における休眠工程は、「原料となる芋を乾燥処理して、原料の含水量を低下させて、原料を休眠させる」ことを内容とする。また、この特許文献3では、「芋は保存性に劣るので、芋が品質劣化しないように直ちに醸造する必要」があると、指摘されている(特許文献3の段落番号0005参照)。
特許文献4には、活性水の利用による歩留まり向上にて芋焼酎廃液の有機物負荷を低減するとともに、芋焼酎廃液を放流基準に適合した処理水質に低減させる方法が、開示されている。この特許文献4では、原料芋として冷凍芋を使用する場合が、ごく簡単に触れられている(特許文献4の段落番号0026参照)。
特許文献5には、モロミの粘性を低下させて芳香性が高く濃度の大きな焼酎を製造する方法が、開示されている。
特開2007−259742号公報 特開2007−74910号公報 特開2006−333712号公報 特開2006−231228号公報 特開2001−275649号公報
ところで、「芋焼酎は、原料の芋が少しでも傷んでいたり、鮮度が悪いと味にストレートに反映」するのが、芋焼酎の製造現場では一般的な知識である(http://store.shopping.yahoo.co.jp/bishugura/tune-072.html)。
したがって、芋焼酎の製造時期は芋が掘り取られる時期に限定されることが多い。例えばサツマイモの収穫時期は8月後半から12月初旬であり、事情を考慮して収穫時期を調整するとしても7月後半から12月20日くらいまでの期間が収穫時期となる。この収穫時期にサツマイモを収穫して芋焼酎を製造することが余儀なくされる。
芋焼酎の製造メーカでは、収穫時期に制限されずに焼酎の製造時期についての自由度を高めるために、製造時期までサツマイモを貯蔵することとしていることが多い。
サツマイモの古典的な貯蔵方法として、1)サツマイモ畑に掘られた穴の底に敷かれた藁の上にサツマイモを集積し、集積されたサツマイモの上を土壌で覆ってしまういわゆる「ツボ埋け」と称される貯蔵方法、2)地面を掘り下げて形成された地下室を形成し、土壁又は土床による湿度を保持することができるようにした地下室に貯蔵する方法、及び3)床は土間にするとともに断熱壁を備えることにより、湿度が一定に保持された倉庫内にサツマイモを貯蔵する方法等があり、近代的な貯蔵方法として、4)室温、湿度及び気流等が管理されたいわゆるフレッシュ庫に貯蔵する方法等がある。これらの貯蔵方法では、加工されることなく生の状態で芋が貯蔵される。
しかしながら、生の状態で芋を貯蔵すると、畑で掘り取る時点で芋にストレスが加わるので、芋における様々な生体反応のトリガーが引かれてしまう。生貯蔵中に生体反応が進行したサツマイモを原料にして焼酎を製造すると、その焼酎には、「芋イタミ臭」、「霜イタミ臭」と言った強度の欠点臭が発現してしまう。
生の状態で芋を貯蔵することによる問題点を解消するために、冷凍芋を貯蔵するという方法もある。この冷凍芋を貯蔵する方法では、収穫した芋を蒸し、得られる蒸し芋の粗熱を取るなどの処理後に、更に急速冷凍を行い、冷凍庫内で冷凍芋を貯蔵している。
しかしながら、蒸し芋にすると蒸し芋内で澱粉の糖化が進行してしまうので、芋を凍結するに到る時間が長いと微生物繁殖によって芋に異臭が発生しやすくなる。芋は直径6cmから12cmの卵形の物が多くまた、条溝を有することにより断面が凹凸形状をしている物も多いので、芋を簡単には冷却することができない。したがって、通常の場合、冷凍芋には異臭がある。異臭を有する冷凍芋を原料にして焼酎を製造すると、その焼酎には冷凍芋特有の異臭が発生する。
また、芋を蒸すことにより生成したαデンプンがゆっくりと冷却されると老化デンプンが形成され、再度加熱しても消化され難くなる。よって、冷凍芋を再加熱してからこれを原料にして焼酎を製造してもアルコール収得率の低い焼酎が得られるという問題点もある。
この発明が解決しようとする課題は、芋イタミ臭、霜イタミ臭といった強度の欠点臭が発現する可能性が小さくて芋らしい香、すなわち木質系の香を有する焼酎を、掘り出した芋を貯蔵する工程を経ることなく、製造することのできる焼酎の製造方法を提供することにある。
前記課題を解決するための手段は、
(1) マルチ栽培されたサツマイモが土中で生育した後においても、収穫時期に土中からサツマイモを掘り取らずにマルチでサツマイモ生育土壌を被覆するとともにマルチからサツマイモの茎部分を露出しておいた状態を継続し、収穫時期の経過後であって焼酎の製造時に土中のサツマイモを掘り出し、掘り出したサツマイモを原料にして焼酎を製造することを特徴とする焼酎の製造方法であり、
(2) 前記マルチから露出している茎部分から葉を除去することを特徴とする前記(1)に記載の焼酎の製造方法である。
この発明の方法では、土中で生育したサツマイモを生育後直ちに掘り取らずに、焼酎を製造する適宜の時期まで、マルチ栽培に使用されるマルチでサツマイモの植えられている土の表面を被覆した状態にしつつサツマイモを土中に埋設しておく。マルチ状態にされた土中に埋設されたサツマイモを一定期間放置してから、土中のサツマイモを掘り出し、収穫されたサツマイモを特に貯蔵することなく、掘り出したサツマイモを従来から公知の焼酎の製造工程に供すると、木質系の芳醇な香を有する焼酎を製造することができる。
この発明の方法では、マルチ状態のまま土中に埋設されていたサツマイモを直ちに焼酎の製造工程に投入するので、掘り出したサツマイモを焼酎の製造工程に投入するまでサツマイモを生で、又は蒸し芋にして貯蔵する必要がない。したがって、この発明の方法によると、ツボ埋け、土中内地下室、フレッシュ庫、又は冷凍装置といった貯蔵設備を必要とせず、したがって貯蔵作業要員を必要としない焼酎の製造方法を、提供することができる。
この発明に係る焼酎の製造方法では、生育期間中に土壌中で生育したサツマイモを収穫期間に土中から掘り出さずに、収穫期間が経過してから焼酎の製造時期に到るまでサツマイモを土中に維持する。
この発明の方法における「サツマイモ」についてはその種類に特に制限がない。この発明の方法に用いられるサツマイモとしては、高系14号、ベニアズマ、ベニコマチ、紅赤(別名:金時)、ツクバコマチ、コガネセンガン、及びクリコガネ等を挙げることができ、これらは甘くて粉質のサツマイモである。また、この発明の方法に用いられる上記とは別のサツマイモとしては、ベニハヤト、隼人イモ、ベルベット、及び兼六等を挙げることができ、これらは栄養豊富なオレンジ肉食品種である。この発明の方法に用いられる上記とは更に別のサツマイモとしては、ナカムラサキ、山川紫、種子島在来品種、及びその他の紫品種等を挙げることができ、これらは紫肉色が鮮やかな品種である。以上のほかに、農林1号、タマユタカ、ダイチノユメ、及び七福等をもこの発明の方法により製造する焼酎の原料に採用することができる。
一般に、サツマイモの収穫時期は、サツマイモの品種及び栽培地域により微妙に相違するが、日本各地においては、サツマイモの収穫時期として、可能な時期は8月下旬から12月初旬までであり、本格的な収穫時期は10月初旬から11月中旬頃までである。
この発明の方法においては、サツマイモの収穫時期までは、従来から知られている方法、又は通常の方法により、サツマイモを栽培する。
他の作物を栽培する場合に利用する畝よりも高く形成した畝で栽培されたサツマイモが生育して収穫時期に差し掛かると、この発明の方法では、土中に生育しているサツマイモを掘り取らないでおく。
そうして、この発明においては、収穫時期における収穫時点を経過してからは、サツマイモが埋まっている地面、例えば畝の表面をマルチで被覆する。マルチは、一般にマルチ栽培と称される栽培法で採用されるシートである。マルチ栽培におけるマルチは、通常の場合、ポリエチレン、ポリプロピレン等の軟質合成樹脂で形成されたシートであり、黒色、透明、有色のシートである。有色のシートでは緑系が多い。なお、この発明の方法に使用されるサツマイモの栽培においては、種いもを埋めた段階、催芽の段階、種いも伏せ込みの段階、挿し苗用畝を作る段階、畝に挿し苗を行う段階のいずれかからマルチを施してもよい。
マルチシートの色は気候条件によって選べばよいが、特に透明マルチシートが低温環境下であっても太陽光を畝の土表面に通し、地表温度上昇が早くシートと畝の表土との隙間の空気が放熱を防止し、土中に熱が効率的に伝わるので好ましい。
この発明においては、サツマイモが埋まっている地面例えば畝の表面をマルチで被覆しておく期間は、それまで土中に埋まっていたサツマイモを掘り出す時までである。
サツマイモの収穫期間が経過すると、寒冷な時期となる。したがって、マルチをしていない土壌の温度も低下する。この発明の方法では、収穫期間後におけるサツマイモが埋まっている土壌の表面がマルチで被覆されているので、日中は日光が当たることにより土中の温度が10℃±2℃くらいに維持される。
掘り取り時のストレスを受けていないサツマイモでは、マルチで被覆されている土壌の温度が8〜10℃の温度範囲に維持されると、土中のサツマイモは、低温ストレスを受けても軽微である。これは、掘り取りをしていない為に生体反応のトリガーが引かれない状態で通常の低温障害発現域に入っても通常の低温障害が発現しないものと推測される。しかも茎葉を有しているので、従来、茎の切口の維管束を通じて雑菌が芋根塊内に侵入する事を予防できること、地上部の茎をマルチシートより上でカットした場合でも切口にサツマイモ特有の乳白色の樹液状物質が素早く分泌され樹脂状保護蓋を形成する為に雑菌の侵入を予防することから、不快臭、腐敗臭、イタミ臭を伴うような低温障害が発現しないものと推察される。
マルチで被覆された土壌に埋められているサツマイモの茎葉は、切り取らずに放置しておいてもよいが、葉を除去して茎だけにしておくのが好ましい。葉が茂ったままにしておくと、日光が葉で遮られてしまってマルチされている土壌の温度が外気温度の低下とともに低下してしまうことがある。
サツマイモの茎は蔓となって土壌表面上に長く延在する場合には、土の表面から露出する茎を適宜の長さになるように剪定しておくのも好ましい。剪定により短くされたサツマイモの土壌の表面から露出している茎の長さとしては、1〜50cm程度であり、残しておく茎部分は短ければ短いほど好ましい。茎葉が残されたままであると、茎葉が枯れることによるストレスが土中のサツマイモに伝わって、香の芳醇なサツマイモが形成されないことがある。
サツマイモが埋まっている土壌の表面をマルチで被覆しておくと、外気温度が8℃よりも低い低温度時期になっていても、土中のサツマイモは組織が堅くなることがあっても、蒸しイモの場合のように甘味が増強されることがなく、自己消化及び腐敗菌による汚染が進行しないので、異臭発現のサツマイモとはならない。
マルチで被覆されていない土中にサツマイモを埋めた状態にしておくと、土中温度が低下してしまうことにより、土中のサツマイモの細胞壁が堅くなったり、細胞壁が溶けたりして味の良くないサツマイモとなるだけでなく霜イタミ臭等の低温障害が発現する。霜イタミ臭等の低温障害が発現したサツマイモを原料にして製造された焼酎は、焼酎という商品価値がなく、この発明の課題を解決することができない。また、マルチで被覆していない土壌中にサツマイモを埋めたままにしておくと、場合によっては細胞壁が軟化して細胞の壊死を起こし、土中のサツマイモはクリーム状の腐敗物になってしまって、この発明の目的が達成されない。
サツマイモが埋まっている土壌の表面をマルチで被覆しておく期間が、外気温度が15℃を越える時期、たとえば春先になると土壌中の温度も上昇する。土中の温度が16℃を越えてもサツマイモを土中に埋めたままにしておくと、時期的な発芽領域に入り不味くなる。また、土中であっても微生物の繁殖により腐敗する場合もある。
したがって、マルチで被覆した土壌に埋められているサツマイモを取り出す時期は、マルチで被覆した土壌の温度よりも外気温度が高くなる時期を越えないよう時期的な範囲であって、焼酎を製造する時が好ましくなる。もっとも、時期的に発芽領域に達する前であれば外気温度が高くなってもサツマイモを土中から取り出してそれをこの発明の焼酎の製造方法における原料に使用することはできる。
マルチで被覆した土壌中からサツマイモを掘り出す時期は、四季のある日本について言えば、サツマイモの通常の収穫時期である10月初旬から11月中旬頃を越えてから翌年の1月から3月末頃までに至る期間における任意の時である。
マルチで被覆した土壌中に一定期間の間埋められていたサツマイモは、土中から掘り出されると焼酎の製造工程に供される。
この場合、掘り出されたサツマイモは、長時間に亙る貯蔵がなされることなく、焼酎製造工程における「洗浄工程」に供されることが、好ましい。
この発明に係る焼酎の製造方法は、サツマイモを原料とする焼酎の製造方法である限り種々の製造方法を適用することができる。
焼酎の一般的な製造方法の基本的工程は、たとえば、
(1)米又は麦に麹菌を生やして麹を作る工程、
(2)麹を発酵槽の中で発酵させてモロミを作る工程(一次発酵工程)、
(3)一次発酵させたモロミの中に、洗浄工程で洗浄されたサツマイモを投入し、発酵させる工程(二次発酵工程)、
(4)二次発酵により生成したアルコールが含まれる発酵液を蒸留する蒸留工程、
からなる。
この発明に係る焼酎の製造方法は、マルチで被覆された土壌中に一定期間埋められていたサツマイモを原料として使用することが重要である。したがって、従来公知の、又は今後開発される新たな焼酎の製造方法において、マルチで被覆された土壌中に一定期間埋められていたサツマイモを原料として使用する焼酎の製造方法は、この発明に係る焼酎の製造方法である。また、この発明に係る焼酎の製造方法によると、マルチで被覆された土壌中に一定期間埋められていたサツマイモを原料として単式蒸留焼酎(焼酎乙類)及び連続蒸留焼酎(焼酎甲類)を製造することもできる。
この発明に係る焼酎の製造方法は、土中に埋められていたサツマイモを直ぐに焼酎の製造工程に供されるのであるから、従来の製造方法におけるように、サツマイモを貯蔵する設備を不要にし、サツマイモを貯蔵する期間を設ける必要がないので迅速な焼酎製造を実現することができ、従来のサツマイモ貯蔵のような土中に貯蔵穴を掘り出す等の重労働をなくし、貯蔵庫を建設し、又は建設した貯蔵庫を維持するといった無駄を省略して、しかも木質系の芳醇な香を有する焼酎を製造することができる。
(実施例1)
鹿児島県枕崎市あけぼの町417番地の畑を始めとする多数個所の畑で、平成20年5月頃からサツマイモのマルチ栽培を行った。なお、マルチ栽培を行った多数個所の畑は、関係者以外の者が無断で侵入することができないように、厳重に管理されていた。その年の平成20年10月頃がサツマイモの通常の収穫時期であったが、サツマイモの収穫作業をしなかった。平成20年11月頃に、マルチで被覆されている土壌から露出しているサツマイモの茎葉を切除した。畑では、サツマイモの埋まっている畝の表面に透明のマルチが施され、そのマルチに設けられた穴からサツマイモの切り取られた茎が立ち並んだ状態になっていた。
年が明けて平成21年1月中旬頃に、畝を崩して畝の中に埋まっていたサツマイモを掘り出した。その日に収穫されたサツマイモは全部で約90トンであった。
収穫されたサツマイモを、薩摩酒造(株)の頴娃蒸留所に、掘り出した日の内に運送した。掘り出した日の内に、運ばれたサツマイモは定法に従って洗浄してドロや土を落とし、洗浄後のサツマイモの両端をカットすることにより、トリミング済みサツマイモを得た。トリミング済みサツマイモ85トンを連続蒸し器で1時間蒸し、その後に冷却し、冷却されたサツマイモを粉砕した。
一方、米17トンを定法により麹にした。焼酎酵母菌を添加した水11.1トン中に前記麹18.5トンと、前記粉砕されたサツマイモ85トン及び水49.3トンとを混合した。得られた混合物をアルコール発酵させて、二次モロミを製造した。この二次モロミを焼酎製造の定法に従って蒸留して、芋焼酎の原酒を製造した。
この原酒につき、10人のパネラーによる利き酒のテストをした。すなわち、原酒をアルコール分25度に割り水してアルコール濃度を調整し、透明グラスにその7分目ほど割り水した原酒を注いだ。各パネラーは、グラスの中の液体の色や照りを観察し、濁りの有無を確かめた。次に、グラスを手のひらの中で揺り動かしてから、グラスに鼻を近づけて「上立香(うわだちか)」を嗅ぎ、ガス臭の有無及び芳香を確かめた。次に、グラス内の割り水した原酒を口に含んでその瞬間の「引き込み香」を確かめた。さらに、舌の全面に原酒を広げて味をみるとともに、同時に、吸気を鼻に通して香を吟味した。その後に、口に含んだ原酒を吐き出し、口に残った「後味」と「残り香り」とを吟味した。
以上を総合して香味について以下の基準で判定した。
1点:非常によい。
2点:良い。
3点:普通。
4点:悪い。
5点:非常に悪い。
10人のパネラーは、上記方法により製造された焼酎原酒につき皆1点の評価を与えた。また、10人のパネラーは、香について、「芋焼酎の欠点臭が感じられず、芳醇で、芋らしい特徴香があった。」と認定した。
(実施例2)
鹿児島県枕崎市別府12863番地に位置する畑であって、本願発明者の一人である山崎春則が耕作する周囲を農業用防風ネットで囲うとともに浸入禁止の看板を設置する等して関係者以外の者が無断で侵入することができないように厳重に管理された畑で、平成20年5月20日に苗の植付を行ったサツマイモのマルチ栽培において、その年の平成20年10月中旬がサツマイモの通常の収穫時期であったが、サツマイモの収穫作業をしなかった。平成20年11月10日に、マルチで被覆されている土壌から露出しているサツマイモの茎葉を切除した。畑では、サツマイモの埋まっている畝の表面に透明のマルチが施され、そのマルチに設けられた穴からサツマイモの切り取られた茎が立ち並んだ状態になっていた。
年が明けて平成21年1月13日に、畝を崩して畝の中に埋まっていたサツマイモを掘り出した。その畑で産出したサツマイモは全部で約26.8トンであった。
収穫されたサツマイモを、薩摩酒造(株)の頴娃蒸留所に、掘り出した日の内に運送した。薩摩酒造(株)の集荷業者である別府商店の搬入したサツマイモと合わせて計90トンのサツマイモを定法に従って洗浄してドロや土を落とし、洗浄後のサツマイモの両端をカットすることにより、トリミング済みサツマイモを得た。トリミング済みサツマイモ85トンを連続蒸し器で1時間蒸し、その後に冷却し、冷却されたサツマイモを粉砕した。
一方、米17トンを定法により麹にした。焼酎酵母菌を添加した水11.1トン中に前記麹18.5トンと、前記粉砕されたサツマイモ85トン及び水49.3トンとを混合した。得られた混合物をアルコール発酵させて、二次モロミを製造した。この二次モロミを焼酎製造の定法に従って蒸留して、芋焼酎の原酒を製造した。
実施例2で製造した原酒につき、実施例1と同様の基準で香味について判定した。蒸留後2ヶ月経過した時期に行った原酒段階の評価では、13人のパネラーの内、上記方法により製造された焼酎原酒につき9名が1.5点の評価を与え、4名が2.0点の評価を与えた。
なお、実施例2で行った評価において、1.0点の評価とはプラス評価に加え貯蔵熟成後に香味バランスが整う場合にのみ得られる評点であって、蒸留後2ヶ月経過段階の原酒に1.0点が与えられることは無い。13名のパネラーの香り評価は「甘い香りがある」「芋らしい香」「柑橘系」「芋香」等の原料特性に関るプラス評価をしており、その中で評点2.0のパネラーは「やや荒い」「もやっとしたガス」「ややガス」「ガス」と蒸留後の貯蔵熟成期間が短いために原酒からガス成分が放散しきっていない為に生じるマイナス評価があるために1ランク低い2.0点を与えていた。13人のパネラーは、香について、「芋焼酎の欠点臭が感じられず、芳醇で、芋らしい特徴香を感じた。」と認定した。
(実施例3)
畝の中で貯蔵されていたサツマイモ(以下、「畝貯蔵芋」と称することがある。)で仕込んだ芋焼酎に含まれるテルペン類について、従来ある方法で通常通り仕込んだ芋焼酎に含まれるテルペン類と比較することとした。
詳述すると、先ず畝貯蔵芋で仕込んだ芋焼酎と、通常通り仕込んだ芋焼酎とを、25%に割水した。次いで、割水した上で、50mLずつをそれぞれ同量のジエチルエーテルで抽出した後に、無水硫酸ナトリウムで脱水し、更に1mLになるまで濃縮した。各試料をガスクロマトグラフィ質量分析法(GC−MS)で測定し、検出されるピークの面積を比較することとした。畝貯蔵芋で仕込んだ芋焼酎に含まれる各テルペン類のピーク面積と、通常通り仕込んだ芋焼酎に含まれる各テルペン類のピーク面積との比を表1に示す。
Figure 0005530231
芋焼酎における「芋らしい香り」にはモノテルペンアルコールが関与し、このモノテルペンアルコールはサツマイモ中に配糖体として存在することが知られている。マスカットワインの特徴香であり、爽やかな柑橘系の香りを呈する成分であるとされるリナロールが、通常の芋を使用した芋焼酎に比べて、畝貯蔵芋を使用した芋焼酎には1.67倍含まれていることが分かった。更に、通常の芋を使用した芋焼酎に比べて、畝貯蔵芋を使用した芋焼酎には、約1.5〜2.7倍の他のモノテルペンアルコールも含まれていた。
したがって、畝貯蔵芋で仕込んだ芋焼酎は、芋の特徴香である「芋らしい香り」を強調した焼酎になっていることが明らかになった。
(実施例4)
周囲を農業用防風ネットで囲うとともに浸入禁止の看板を設置する等して関係者以外の者が無断で侵入することができないように厳重に管理された畑において、同時期にかつ動区域に植え付けたサツマイモを、従来通りに貯蔵したサツマイモと、この発明に係る焼酎の製造方法において使用されるサツマイモとに分けた。
更に詳述すると、従来通りに貯蔵したサツマイモは、通常の掘り取り時期に掘り取り、従来技術であるキュアリング法を経て、室温14℃、湿度95〜98%に保持された貯蔵庫内に傷等のストレスを与えないようにして保管することとした。また、この発明に係る焼酎の製造方法において使用されるサツマイモは、掘り取り時期が到来しても掘り取らずにマルチで被覆した畝の中に貯蔵しておき、積雪して、雪が溶解した後に掘り取った畝貯蔵芋である。
実施例4においては、畝貯蔵芋に含まれる糖類組成と、従来通りに貯蔵したサツマイモに含まれる糖類組成とを比較した。
本願発明者の一人である山崎が、上記管理された畑において分散した掘り取り位置を任意に6箇所定め、それぞれの掘り取り位置から一個あたりの重量が400〜500gであるLサイズの畝貯蔵芋と、一個あたりの重量が150〜200gであるSサイズの畝貯蔵芋とを、一個ずつ選抜して試料とした。また、キュアリング法を経て従来通りに貯蔵していたサツマイモは、LサイズとSサイズとを任意に6個ずつ選択して試料とした。なお、畝貯蔵芋、及び貯蔵庫内で保管されていたサツマイモの品種はいずれもコガネセンガンであり、以下の表に示す分析値は、試料としたサツマイモ6個分のデータの平均値である。
分析する項目は、水分量、糖類の含有量、及び真の澱粉価、並びに、水分を0%にしたときの乾物に占める糖類の含有量、及び真の澱粉価である。
水分量は自動Kett水分計を用いて測定した。また、糖類の含有量は、細断した試料8gを85%エタノール水溶液と共に煮沸し、内部酵素を失活させ、7000rpmで1分間ホモジナイズして濾別し、濾過粕を85%エタノール水溶液で洗浄し、炉駅を100mLに定容後、50倍希釈液を作成して液体クロマトグラフィー(ダイオネクスDX500システム)により定量した。なお、糖類の種類は、スクロース、グルコース、及びフラクトースである。更に、真の澱粉価は、細断した試料4gを2.5%塩酸で2.5時間加水分解し、糖化濾液についてソモギ変法により全糖をグルコースとして定量後、0.9を乗じて澱粉価とし、算出した澱粉価から糖類の値を減じた値を採用した。水分量、糖類の含有量、及び真の澱粉価を表2に示し、水分を0%にしたときの乾物に占める糖類の含有量、及び真の澱粉価を表3に示す。
Figure 0005530231
Figure 0005530231
従来のサツマイモの貯蔵方法である、キュアリング法を経て空調で管理された貯蔵庫で保管された芋は、水分が少なくなっているにもかかわらず澱粉から糖類への変化が比較的小さい。これに対して、本来であれば、積雪するような環境に貯蔵されていたサツマイモは痛みが生じ、結果として焼酎に適さないサツマイモとなってしまうことが多いにもかかわらず、この発明に係る焼酎の製造方法で使用される畝貯蔵芋は、水分が保たれたままで、澱粉から甘みの強いスクロース、及びフラクトースへの変化が大きいことが分かる。

Claims (2)

  1. マルチ栽培されたサツマイモが土中で生育した後においても、収穫時期に土中からサツマイモを掘り取らずにマルチでサツマイモ生育土壌を被覆するとともにマルチからサツマイモの茎部分を露出しておいた状態を継続し、収穫時期の経過後であって焼酎の製造時に土中のサツマイモを掘り出し、掘り出したサツマイモを原料にして焼酎を製造することを特徴とする焼酎の製造方法。
  2. 前記マルチから露出している茎部分から葉を除去することを特徴とする前記請求項1に記載の焼酎の製造方法。
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