JP5530093B2 - 熱応力を管理することができ、反応性の高い合金を融解するのに適した耐熱性るつぼ - Google Patents

熱応力を管理することができ、反応性の高い合金を融解するのに適した耐熱性るつぼ Download PDF

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Description

本明細書中に記載する実施形態は一般に、熱応力を管理することができるるつぼに関する。より特定的には、本明細書中の実施形態は一般に、熱応力を管理するための1以上の保持リングを有しており、アルミ化チタンのような反応性の高いチタン合金を融解するのに適した耐熱性るつぼについて記載する。
タービンエンジンの設計者は、エンジンの重量を低減し、かつより高いエンジンの作動温度を得るための改良された性質を有する新しい材料を絶え間なく探求している。チタン合金、特にアルミ化チタン(TiAl)を主体とする合金は、室温延性及び強靱性のような低温での機械的特性の有望な組合せ、並びに中間温度での高い強度及びクリープ耐性を有している。これらの理由からTiAl基合金は、多くのタービンエンジン部品を作成するのに現在使用されているニッケル基超合金に取って代わる可能性がある。
真空誘導融解は、エアフォイルのようなタービンエンジン部品を作成するのに使用することが多い1つの方法であり、一般に非導電性の耐熱性合金酸化物製のるつぼでるつぼ内の金属の装入材料が融解して液体形態になるまで金属を加熱する。チタン又はチタン合金のような反応性の高い金属を融解する場合、低温壁又はグラファイトるつぼを用いる真空誘導融解が通例使用される。これは、セラミック製るつぼでの融解と鋳造ではかなりの熱応力がるつぼにかかる可能性があり、その結果るつぼに亀裂が生成する可能性があるからである。かかる亀裂の生成の結果、るつぼの寿命が短くなる可能性があり、かつ鋳造される部品内に異物が封入される可能性がある。
また、TiAlのような反応性の高い合金を融解する場合、融解を起こすのに必要とされる温度における合金内の元素の反応性のために困難な問題が生じ得る。既に述べたように、殆どの真空誘導融解系は誘導炉内のるつぼとして耐熱性の合金酸化物を使用するが、TiAlのような合金は反応性が非常に高いので、るつぼ内に存在する耐熱性合金を攻撃し、チタン合金を汚染する可能性がある。例えば、セラミック製のるつぼについては、反応性の高いTiAl合金がそのるつぼを分解し、酸化物に由来する酸素と耐熱性合金の両者がそのチタン合金を汚染する可能性があるので、その使用は通例避けられる。同様に、グラファイト製のるつぼを使用する場合、アルミ化チタンは、そのるつぼから大量の炭素をチタン合金中に溶解させることにより汚染を引き起こす可能性がある。かかる汚染の結果、チタン合金の機械的性質が失われる。
その上、冷間るつぼ融解は既に記載した反応性の高い合金の加工処理に関して冶金学的利点を提供し得るが、一方ではスカル(なべ屑)の生成及び高い所要電力に起因して低い過熱、歩留まり損失を含めて幾つかの技術的及び経済的な制限もある。さらにまた、融解及び鋳造プロセス中るつぼ内に望ましくない熱応力が蓄積し得、これがるつぼを損傷する結果、亀裂が生成する可能性がある。より具体的には、融解及び鋳造プロセス中、るつぼの様々な領域が様々に異なる熱応力を受け得る。
例えば、るつぼの外側は、通例誘導カップリングのためにるつぼの内側より速く熱くなり、また注入後はるつぼの内側より速く冷たくなる。この温度差により、最大応力の点領域がるつぼの内側からるつぼの壁内にシフトされ、この壁を通り抜ける亀裂を促進し得る。もう一つ別の例として、通例融解中るつぼの頂部の回りには多くの熱応力がない。これは、一般に、この領域には融解した材料がないからである。しかし、注入中は、融解した金属がるつぼの頂部に接触することにより、るつぼのこの領域に存在する熱応力が増大する。既に記載したように、かかる熱応力及び熱応力の変化によって、るつぼに亀裂が生成し得、そのためるつぼの寿命が短くなると共にるつぼの性能に負の影響が出る可能性がある。
米国特許第5407001号明細書 米国特許第5464797号明細書 米国特許第6024163号明細書 米国特許第4787439号明細書 米国特許第4703806号明細書 米国特許第4966225号明細書 米国特許第5299619号明細書 米国特許第4740246号明細書 米国特許第4966175号明細書
従って、反応性の高いチタン合金の鋳造中に発生する熱応力を管理・制御することができる耐熱性るつぼに対するニーズが残されている。
本発明の実施形態は、一般に、熱応力を管理することができ、反応性の高い合金を融解するのに適した耐熱性るつぼに関し、このるつぼはフェイスコート、バッキング及びるつぼのバッキングの少なくとも一部の回りに設けられた1以上の保持リングを含んでなり、この保持リングは導電性物質、非導電性物質及びこれらの組合せからなる群から選択される組成物からなる。
本発明の実施形態はまた、一般に、熱応力を管理することができ、反応性の高い合金を融解するのに適した耐熱性るつぼであって、フェイスコート、バッキング及びるつぼのバッキングの回りに設けられた複数の保持リングを含んでなり、各保持リングが約1〜約50mmの厚さと約1〜約200mmの幅を含む幾何学的形状を有する、前記耐熱性るつぼに関する。
本発明の実施形態はまた、一般に、熱応力を管理することができ、反応性の高い合金を融解するのに適した耐熱性るつぼであって、基底領域、遷移領域、下部領域、上部領域及び注入口領域のいずれかと、るつぼの様々な領域に存在する特定の熱応力を管理するためにるつぼの2以上の領域の回りに設けられた複数の保持リングとを含む、前記耐熱性るつぼに関する。
上記その他の特徴、態様並びに利点は以下の開示から当業者には明らかとなるであろう。
本明細書に先行する特許請求の範囲には本発明を特に指摘し区別して記載しているが、本明細書に記載する実施形態は添付の図を参照した以下の説明からより良く理解されるであろう。添付の図面中、類似の参照番号は類似の要素を示す。
本明細書中に記載した実施形態は、一般に、反応性の高いチタン合金の鋳造中に発生する熱応力を管理することができる耐熱性るつぼに関する。より具体的には、本明細書中に記載した実施形態は一般に、フェイスコート(上塗り)、バッキング(裏打ち層)及びるつぼのバッキングの少なくとも一部の回りに設けられた1以上の保持リングを含んでなり、この保持リングが導電性物質、非導電性物質及びこれらの組合せからなる群から選択される組成物からなる、熱応力を管理することができ反応性の高い合金を融解するのに適した耐熱性るつぼに関する。
一般に本発明の実施形態はニアネットシェイプのエアフォイルを作成するのに使用するTiAlを融解するのに適したるつぼを中心とするが、以下の説明はかかるるつぼに限定されるものではない。当業者には了解されるように、本実施形態は、熱応力が問題となるあらゆるニアネットシェイプのガスタービン部品を作成するのに使用するいかなるチタン合金を融解するのにも適切であろう。
図1を参照して、本発明の実施形態は、反応性の高い合金、特にチタン合金を融解するのに適した耐熱性るつぼ8に関する。るつぼ8は内部9を有することができ、以下の記載に従って作成することができる。始めに、るつぼのモールドを作成することができる。本明細書で使用する場合、「モールド」とは、適切な条件下で焼成したときに図1のるつぼ8を形成する未焼成の部品を指す。るつぼのモールドを作成するには、図2に示すような原形10を用意することができる。原形10はるつぼモールドから除去することができるあらゆる材料からなることができるが、一実施形態では原形10はワックス、プラスチック又は木材からなることができ、中空であっても中実であってもよい。また、原形10はいかなる形状をとることもでき、るつぼの所望の内部を生成するのに必要な任意の寸法をとることができ、取扱いを容易にするためにハンドル12その他類似の機構を含んでいてもよい。
図3及び図4に示すように、1以上のフェイスコート層18及び場合により1以上のスタッコ層20を含むフェイスコート16を原形10に設けることができる。本明細書を通じて使用する場合、「1以上」とは1つでも又は2以上てもよいことを意味し、特定の層は本明細書を通じて「第1のフェイスコート層」、「第2のフェイスコート層」などという。フェイスコート層18は融解プロセス中TiAlに暴露される可能性があるので、融解中に合金の質を低下させ汚染することがないようにフェイスコート層18は反応性のTiAlに対して不活性でなければならない。従って、一実施形態では、フェイスコート層18は酸化物からなり得る。本明細書を通じて使用する場合、「酸化物」とは、酸化スカンジウム、酸化イットリウム、酸化ハフニウム、ランタニド系列の酸化物及びこれらの組合せからなる群から選択される組成物を指す。さらにまた、ランタニド系列の酸化物(「希土類」組成物ともいう)は、酸化ランタン、酸化セリウム、酸化プラセオジム、酸化ネオジム、酸化プロメチウム、酸化サマリウム、酸化ユーロピウム、酸化ガドリニウム、酸化テルビウム、酸化ジスプロシウム、酸化ホルミウム、酸化エルビウム、酸化イッテルビウム、酸化ルテチウム及びこれらの組合せからなる群から選択される酸化物からなっていてもよい。
フェイスコート層18は、コロイド懸濁液中に混合された酸化物の粉末から作成されたフェイスコートスラリーからなり得る。一実施形態では、酸化物粉末は約70ミクロン未満、別の実施形態では約0.001〜約50ミクロン、さらに別の実施形態では約1〜約50ミクロンの大きさを有する小粒子粉末であり得る。コロイドは制御された様式でゲル化する任意のコロイドであることができ、TiAlに対して不活性であって、例えば、コロイド状シリカ、コロイド状イットリア、コロイド状アルミナ、コロイド状酸化カルシウム、コロイド状酸化マグネシウム、コロイド状二酸化ジルコニウム、コロイド状ランタニド系列酸化物及びこれらの混合物である。既に述べた酸化物のいずれを用いてもフェイスコート層18のフェイスコートスラリーを作成することができるが、一実施形態ではフェイスコートスラリーはコロイド状シリカ懸濁液中の酸化イットリウム粒子からなり得、もう一つ別の実施形態ではフェイスコートスラリーはコロイド状イットリア懸濁液中の酸化イットリウム粒子からなり得る。フェイスコートスラリーの組成は変化し得るが、一般にフェイスコートスラリーは重量で約40〜約100%の酸化物と約0〜約60%のコロイドを含み得る。
慣用法を用いてフェイスコート層18のフェイスコートスラリーを調製したら、浸漬、噴霧及びこれらの組合せからなる群から選択される方法を用いて原形10をフェイスコートスラリーに暴露することができる。一般に、こうして施されたフェイスコート層18は約50〜約500ミクロン、一実施形態では約150〜約300ミクロン、さらに別の実施形態では約200ミクロンの厚さを有することができる。
場合により、フェイスコート層18がまだ湿っているうちに、図3及び図4に示すようにスタッコ層20でコートしてもよい。本明細書で使用する場合、「スタッコ」とは、一般に約100ミクロンより大きく、一実施形態では約100〜約5000ミクロンの大きさを有する粗いセラミック粒子を指す。スタッコ20はるつぼの壁の厚さを増大すると共に追加の強度を与えるのに役立つように各フェイスコート層に対して施すことができる。様々な材料がスタッコ層20として使用するのに適しているであろうが、一実施形態ではスタッコは、限定されることはないが本明細書で定義した酸化物と組み合わせたアルミナ又はアルミノシリケートのような耐熱性材料からなり得る。スタッコ層20中のこの耐熱性材料と酸化物の比率は変化し得るが、一実施形態ではスタッコ層20は重量で約0〜約60%の耐熱性材料と約40〜約100%の酸化物とからなることができる。スタッコ層20は例えば散布のような許容できる方法でフェイスコート層18に施すことができる。一般に、スタッコ層20は約100〜約2000ミクロン、一実施形態では約150〜約300ミクロン、さらに別の実施形態では約200ミクロンの厚さを有することができる。
フェイスコート層18及び任意のスタッコ層20は風乾することができ、所望であれば、追加のフェイスコート層とスタッコ層を既に記載したようにして施してフェイスコート16を完成することができる。図3と4に示す実施形態では、第1及び第2のフェイスコート層18及び交互のスタッコ層20が存在するが、当業者には分かるようにフェイスコート16はいかなる数のフェイスコート層とスタッコ層を含んでいてもよい。各フェイスコート層18は様々な酸化物/コロイド混合物からなり得るが、一実施形態では各フェイスコート層18は同じ酸化物/コロイド混合物からなる。所望の数のフェイスコート層18とスタッコ層20が施されたら、次にバッキング22を施すことができる。
バッキング22は完成したるつぼ8に追加の強度及び耐久性を付与するのに役立つことができる。従って、バッキング22は図4に示す1以上のバッキング層24からなり得、これは酸化アルミニウム、ケイ酸ジルコニウム、二酸化ケイ素及びこれらの組合せからなる群から選択される耐熱性材料をコロイド状シリカ懸濁液中に含むバッキングスラリーからなることができる。特定の層は本明細書を通じて「第1のバッキング層」、「第2のバッキング層」などと指称し得る。一例として、一実施形態では、バッキング層24はコロイド状シリカ懸濁液中に酸化アルミニウム粒子を含むバッキングスラリーからなり得る。バッキングスラリーの組成は変化し得るが、一般にバッキングスラリーは重量で約10〜約40%の耐熱性材料と約60〜約90%のコロイドからなり得る。フェイスコート層と同様に、各バッキング層24は場合により図4に示されるようにこれに接着したスタッコ層20を含み得、これはフェイスコートを作成するのに既に使用したスタッコと同じでもよいし、又は異なっていてもよい。スタッコを含めて各バッキング層24は、約150〜約4000ミクロン、一実施形態では約150〜約1500ミクロン、さらに別の実施形態では約700ミクロンの厚さを有することができる。
フェイスコート層と同様に、各バッキング層24は、浸漬、噴霧及びこれらの組合せからなる群から選択される方法を使用して設けることができる。任意の数のバッキング層24を設けることができるが、一実施形態では2〜40のバッキング層があり得る。各バッキング層24は同じ組成の耐熱性材料とコロイドからなり得、各々が異なっていてもよいし、又はそれらのある種の組合せからなっていてもよい。所望の数のバッキング層及び任意のスタッコ層を設けた後、得られたるつぼモールド26はさらに加工処理することができる。
場合によって、設けられるスタッコ層を、その粒子の大きさ、層の厚さ及び/又は組成を変化させることによって傾斜させるのが望ましいことがあり得ることに留意されたい。本明細書で使用する場合、用語「傾斜させる」及びその全ての変形は、例えば、スタッコ材料の粒子の大きさを増大することにより、スタッコ層の厚さを増大することにより及び/又はスタッコ層として次第に強くなる耐熱性材料/コロイド組成を利用することにより、以後に施されるスタッコ層の強度を徐々に増大することを指す。かかる傾斜により、スタッコ層を調整して、これらが設けられる様々なフェイスコート層及びバッキング層の熱膨張及び化学的特性の差を相殺することが可能になる。より具体的には、スタッコ層を傾斜させることにより、異なる気孔率が得られ、またるつぼのモジュラスを調節することができ、これらが相俟って既に述べたような熱膨張の差を相殺するのに役立ち得る。
次いで、慣用法を用いてるつぼモールド26を乾燥することができ、原形10を除去することができる。様々な方法を用いてるつぼモールド26から原形10を除去することができる。既に述べたように、原形10はワックスからなり得、従ってこれを除去するには、るつぼモールド26を炉、蒸気オートクレーブ、電子レンジその他類似の装置内に入れ、原形10を融解させて、図5に示すようつぼモールド26内に開放内部9を残すとよい。るつぼモールド26から原形10を融解するのに必要とされる温度は一般に低くすることができ、一実施形態では約40〜約120℃の範囲とすることができる。
場合によっては、次いでるつぼモールド26の内部9をコロイド状スラリーで洗浄して、図5に示すようにトップコート28を形成してもよい。洗浄は一般に、るつぼを焼成する前に、噴霧のような当業者に公知の任意の方法を用いてるつぼの内部にコーティングを施すことを含むことができる。トップコート28はあらゆる所望の厚さを有することができるが、一実施形態ではトップコート28は約500ミクロンまで、もう一つ別の実施形態では約20〜約400ミクロンの厚さを有する。トップコート28は、コロイド状イットリア懸濁液中のイットリア、コロイド状シリカ懸濁液中のイットリア及びこれらの組合せからなる群から選択されるコロイド状スラリーからなることができる。このトップコートは、融解中るつぼがチタン合金に対して不活性のままであることをさらに確実にするのに役立つことができる。
その後、中空のるつぼモールド26をより高い温度に焼成することができる。るつぼモールド26を焼成することにより、この加熱プロセスの間にフェイスコート層、スタッコ及びバッキング層を構成する材料が互いに相互拡散し一緒に焼結することができるので、完成したるつぼに追加の強度を付与するのに役立つことができる。最初に、るつぼモールドを約800〜約1400℃、一実施形態では約900〜約1100℃、一実施形態では約1000℃の温度に焼成することができる。この第1の焼成は残っている原形材料を全て焼き尽くすと共に、るつぼのセラミック成分間の限られた程度の相互拡散を提供するのに役立つように必要な時間生起させることができ、これは一実施形態では約0.5〜約50時間、もう一つ別の実施形態では約1〜約30時間、さらに別の実施形態では約2時間であり得る。次に、るつぼモールドを約1400〜約1800℃、一実施形態では約1500〜約1800℃、さらに別の実施形態では約1600〜約1700℃の温度に焼成することができる。この第2の焼成は、セラミック成分の相互拡散を実質的に完了させると共に、フェイスコート酸化物中に存在するコロイドの反応を引き起こすのに必要な任意の時間生起させることができ、これは一実施形態では約0.5〜約50時間、もう一つ別の実施形態では約1〜約30時間、さらに別の実施形態では約2時間であり得る。例えば、コロイド状シリカはケイ酸塩を形成することができ、一方コロイド状イットリアはフェイスコートのスラリー中に存在するイットリア粒子と共に焼結することができる。
るつぼ8の特定の特性を所望の用途に応じて変化させたり改変したりすることができるが、一実施形態ではるつぼ8は、全てのフェイスコート層、スタッコ層及びバッキング層を含めて、少なくとも約3mm、もう一つ別の実施形態では少なくとも約6mm、さらに別の実施形態では約6.5〜約40mmの全壁厚を有することができる。壁厚が約40mmより大きいと、望ましくないほど長い高温の加熱時間が必要となり得る。同様に、バッキングとフェイスコートの厚さの比は一実施形態では約6.5:1〜約20:1であることができる。上記と同様に、厚さの比が約20:1より大きいと、アルミナバッキング層の厚さのため、望ましくないほど長い高温の加熱時間が必要になり得る。
その後、るつぼ8に、それぞれ図6及び図7に示すように、1以上の保持リング30、一実施形態では複数の保持リングを取り付けることができる。リング30はるつぼ8の1又は複数の領域に圧縮応力をかけることができ、これは鋳造プロセスの加熱、融解、注入及び冷却段階を通じてるつぼ8が熱応力に耐えるのを助けることができる。1以上のリング30の数、位置、組成及び幾何学的形状を調整して、るつぼの基底領域32、遷移領域34(すなわち基底領域32を下部領域36につなぐ部分)、下部領域36(すなわち鋳造中融解したチタンを収容する部分)、上部領域38(すなわち鋳造中融解したチタンの上方の部分)及び注入口領域40のような様々な領域に存在する特定の熱応力を管理することができる。
より具体的にいうと、場合によって、るつぼの様々な領域に存在する応力を相殺するために、図7に示すように2以上のリング30を使用するのが有益なことがある。例えば、リング30の存在により上部領域38にたが応力が生じ得る。2以上のリング30を使用する場合、以下に説明するように各リング30が異なる組成、位置及び幾何学的形状を有し得ることが当業者には了解されよう。
また、リング30の組成としては、様々な導電性物質、非導電性物質及びこれらの組合せを挙げることができ、これは所望の特性に基づいて選択することができる。一実施形態では、リング30は、グラファイト、炭化ケイ素、セラミック酸化物、窒化物(例えば窒化ハフニウム及び窒化チタン)及びこれらの組合せからなる群から選択される耐熱性組成からなり得る。というのは、かかる組成はリング30が目的通りに機能するのに必要とされる適正な熱膨張率を有するからである。
さらに、リング30は図7に示すように様々な幾何学的形状をとることができ、これは所望の程度の圧縮応力が得られるように調整することができる。本明細書で使用する場合、「幾何学的形状」とは、保持リング30の厚さと幅をいう。一般に、リング30の厚さと幅が増大するにつれて、リング30にかかる圧縮応力の程度も増大する。リング30は任意の所望の厚さTと幅Wを有し得るが、一実施形態ではリング30は約1〜約50mm、一実施形態では約1〜約20mm、さらに別の実施形態では約5〜約20mm厚さTと、約1〜約200mm、一実施形態では約1〜約100mm、さらに別の実施形態では約2〜約50mm、さらに別の実施形態では約3〜約15mmの幅Wを有することができる。るつぼの特定の領域に対してリング30の数、位置、組成及び幾何学的形状を特別に調整することによって、熱応力耐性を最適化して加熱、融解、注入及び冷却段階を通じてるつぼの完全性を確実に維持する補助とすることができる。
保持リング30の数、位置、組成又は幾何学的形状に関係なく、リングの設置は一般に同じ手順に従う。リング30を加熱してその内径を広げ、所望の領域でるつぼの回りにリング30を嵌めることができる。リング30を加熱する正確な温度は組成及び幾何学的形状に応じて変わり得るが、一般にリングは約23℃(73°F)〜約1400℃(2550°F)、一実施形態では約100℃(212°F)〜約1400℃の温度に加熱することができる。加熱は、限定されることはないが、炉、ガスバーナー、誘導系、などのような当業者に公知の任意の適切な方法又は装置を用いて達成することができる。加熱したら、そのリングをるつぼの所望の領域の回りに設置することができる。加熱されたリングが室温に冷えるにつれて、リングは縮んでるつぼの回りに嵌ることにより、るつぼの選択された領域の回りに圧縮応力の状態を課する。2以上のリングを使用する場合、同じ手順を使用して各リングをるつぼに設置することができる。また、2以上の保持リングを使用する場合、当業者には理解されるように、全ての保持リングが同じであっても(すなわち、同じ組成と幾何学的形状を有する)、各保持リングが異なっても(すなわち、各保持リングが異なる組成と幾何学的形状を有し得る)、又はこれらの組合せであってもよい(すなわち、保持リングが同じ組成を有するが異なる幾何学的形状を有し得るか、又は同じ幾何学的形状を有するが異なる組成を有し得る)。
適切に配置された1以上のリングを有するるつぼを用いると、当業者に公知の慣用の融解及び鋳造技術を用いてチタン合金、特にTiAlを融解することができる。本明細書中に記載したるつぼは、鋳造プロセスの加熱、融解、注入及び冷却段階のいずれにおいても亀裂を生成することなく急速に加熱することができる。
この改良されたるつぼの性能の原因は、るつぼの回りに設けた1以上の抵抗リングにあると考えることができる。既に記載したように、これらのリングはるつぼに残留圧縮応力の状態を作りだし、これが他の場合にはるつぼの亀裂生成を生じ得る熱応力の蓄積を低減させることができる。その結果、るつぼの性能、並びにるつぼの寿命を改善することができる。また、るつぼの亀裂を殆どなくすことができるので、慣用のグラファイト又はセラミック製のるつぼで融解したTiAlと比較して、融解プロセス中のTiAlの汚染の可能性が低減する。合金の汚染が低減する結果、この合金から作成される部品は、現行の方法を用いてTiAlから作成されるものと比較して、亀裂の生成がより少なく、また欠陥がより少なくなり得る。
以上記載した説明は最良の形態を含めて本発明を開示するための例示であり、当業者が本発明を実施できるようにするためのものである。本発明の特許性のある範囲は特許請求の範囲に規定されており、当業者には自明の他の例を包含し得る。かかるその他の例は、特許請求の範囲の文言と異なる構造要素を有していても、又は特許請求の範囲の文言と実質的でない差を有する等価な構造要素を含んでいても、特許請求の範囲の範囲内に入るものである。
図1は、本明細書の記載に従うるつぼの一実施形態の概略透視図である。 図2は、本明細書の記載に従う原形の一実施形態の概略透視図である。 図3は、本明細書の記載に従うるつぼモールドの一実施形態の概略断面図である。 図4は、図3のるつぼモールドの実施形態の断面の一部分の概略近景図である。 図5は、本明細書の記載に従って原形が取り出されトップコートが施された後のるつぼモールドの一実施形態の概略断面図である。 図6は、本明細書の記載に従う保持リングを有するるつぼの一実施形態の概略透視図である。 図7は、本明細書の記載に従う、2以上の保持リングを有し、各リングが異なる幾何学的形状を有するるつぼの一実施形態の概略断面図である。
符号の説明
8 るつぼ
9 (るつぼの)内部
10 原形
12 ハンドル
16 フェイスコート
18 フェイスコート層
20 スタッコ層
22 バッキング
24 バッキング層
26 るつぼモールド
28 トップコート
30 保持リング
32 基底領域
34 遷移領域
36 下部領域
38 上部領域
40 注入口領域
T 厚さ
W 幅

Claims (10)

  1. 熱応力を管理することができ、反応性の高い合金を融解するのに適した耐熱性るつぼ(8)であって、
    酸化スカンジウム、酸化イットリウム、酸化ハフニウム、ランタニド系列の酸化物及びこれらの組合せからなる群から選択される酸化物を含む少なくとも1つのフェイスコート層(18)を含むフェイスコート(16)、
    バッキング(22)、及び
    るつぼ(8)のバッキング(22)の少なくとも一部の回りに設けられた1以上の保持リング(30)
    を含んでなり、該保持リング(30)が導電性物質からなる
    ことを特徴とする、耐熱性るつぼ。
  2. 熱応力を管理することができ、反応性の高い合金を融解するのに適した耐熱性るつぼ(8)であって、
    酸化スカンジウム、酸化イットリウム、酸化ハフニウム、ランタニド系列の酸化物及びこれらの組合せからなる群から選択される酸化物を含む少なくとも1つのフェイスコート層(18)を含むフェイスコート(16)、
    バッキング(22)、及び
    るつぼ(8)のバッキング(22)の少なくとも一部の回りに設けられた1以上の保持リング(30)
    を含んでなり、該保持リング(30)が、非導電性物質、又は、導電性物質及び非導電性物質の組合せからな
    ことを特徴とする、耐熱性るつぼ。
  3. 熱応力を管理することができ、反応性の高い合金を融解するのに適した耐熱性るつぼ(8)であって、
    酸化スカンジウム、酸化イットリウム、酸化ハフニウム、ランタニド系列の酸化物及びこれらの組合せからなる群から選択される酸化物を含む少なくとも1つのフェイスコート層(18)を含むフェイスコート(16)、
    バッキング(22)、
    基底領域(32)、遷移領域(34)、下部領域(36)、上部領域(38)及び注入口領域(40)のいずれか、及び
    るつぼ(8)の様々な領域に存在する特定の熱応力を管理するためにるつぼ(8)の2以上の領域(32、34、36、38、40)の回りに設けられた複数の保持リング(30)
    を含んでなる
    ことを特徴とする、耐熱性るつぼ。
  4. 各保持リング(30)が、グラファイト、炭化ケイ素、セラミック酸化物、窒化物及びこれらの組合せからなる群から選択される組成からなる、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の耐熱性るつぼ(8)。
  5. 各保持リング(30)が、1〜50mmの厚さ(T)を含む幾何学的形状からなる、請求項1、2又は4に記載の耐熱性るつぼ(8)。
  6. 幾何学的形状がさらに1〜200mmの幅(W)を含む、請求項記載の耐熱性るつぼ(8)。
  7. 複数の保持リング(30)がるつぼ(8)の回りに設けられている、請求項1記載の耐熱性るつぼ(8)。
  8. るつぼの様々な領域に存在する特定の熱応力を管理するために保持リング(30)が設けられている、請求項記載の耐熱性るつぼ(8)。
  9. 全ての保持リング(30)が同じ組成及び幾何学的形状からなる、請求項2、3、7又はに記載の耐熱性るつぼ(8)。
  10. 請求項1乃至9のいずれか1項に記載の耐熱性るつぼ(8)を製造する方法であって、
    前記フェイスコート(16)及び前記バッキング(22)を備えるるつぼを用意し、
    前記保持リング(30)を加熱し、
    前記保持リング(30)を前記バッキング(22)の少なくとも一部の周りに適用し、
    前記保持リングを冷却し収縮させて前記るつぼの周りに嵌めて、前記バッキング(22)の前記少なくとも一部の周りに所望程度の圧縮残留応力を課する
    ことを特徴とする、方法。
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