JP5527754B2 - 打ち重ね工法のための打設計画法及び打設計画支援プログラム - Google Patents
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Description
本発明の第2の目的は、管の種類や長さ、接続部の数などの具体的な作業の内容を反映して打ち重ね時間を適正化することが可能な打設計画法を支援するプログラムを提案することである。
上記打設計画法である第1の参考例は、
構造物のコンクリート打設場所の略全体を占める一連の打設地点に対して、コンクリート供給源から継ぎ延ばしたコンクリート供給ラインの先部を巡回させ、一巡の過程で上記構造物を高さ方向の各段に分けた一段分のコンクリートを各打設地点に打設する打ち重ね工法の打設時間を適正化するための打設計画法であって、
構造物のコンクリート打設場所のうち一つのコンクリート供給源で打設する部分を作業区画として選定する第1の段階と、
一つのコンクリート供給源から延びて適数の打設地点と通ずる複数のコンクリート供給ラインを想定し、これらコンクリート供給ラインをそれぞれ一度ずつ組み立てるように供給ラインの管路を組み替えるというシミュレーションを行う第2の段階と、
上記第1の段階で選定された作業区画のコンクリート打設時間と上記第2の管路の組み替え時間を計算する第3の段階と、
上記第3の段階で求めた管路の組立て時間が次式を満たすときには“適”と、次式を満たさないときには“不適”と評価する第4の段階と、
を具備する。
〔数式1〕〔コンクリート打設時間〕+〔管路の組み替え時間〕≦〔許容打ち重ね時間〕
コンクリート供給ラインは、2つ以上の剛性管を継いで形成する固定ラインと、この固定ラインの先端部に対して回転可能に接続したフレキシブルホースで形成する可動ラインとからなり、この固定ラインの長さを、コンクリート供給源から遠い側から剛性管を一本づつ着脱することで調整する工法を前提とする、第1の手段の打設計画法であって、
上記固定ラインを、フレキシブルホースの稼動長さを半径とする稼動円が次のA1からA2の関係を満たすように稼動円の中心である剛性管の先端を配置することを特徴としている。
A1.隣接する稼動円の相互は互いに重なり合うか或いは接すること。
A2.建物の外周部に隣接する稼動円は、その円弧内を外周部が通過すること。
具体的には、固定ラインの先端部を最初の固定点としてフレキシブルホースを用いて稼動円内の適当な打設点にコンクリートを打ち込み、所定量のコンクリートを打ち込んだ後にまずフレキシブルホースを、次に固定ラインの先端側の1本の剛性管を外し、新たに固定ラインの先部となった剛性管の先端部にフレキシブルホースを接続するという一連の工程を繰り返す。従って、固定ラインを構成する各剛性管の先端全てがフレキシブルホースを稼動する中心点をなす固定点となる可能性がある。そこで各固定点を中心とするフレキシブルホースの稼動円が相互に少し重なるか、接するように設計する。つまり各剛性管の長さをフレキシブルホースの稼動長さの2倍以下とすればよい。こうすることで各固定点の間の範囲にコンクリートを十分行き渡らせることができる。また建物の主要な壁部と形成する個所、特に外壁を形成する外周部の付近では、当該壁形成個所が稼動円の周辺部を通過するようにすることが望ましい。そうすることで壁形成個所に直接コンクリートを打ち込むことができる。
剛性の直管・ベンド管・フレキシブルホースなどの複数の管種について、管同士を接続し或いは分離するために予想される時間の情報をデータベースに蓄積し、
さらに一つのコンクリート供給源から延びる一本の幹線から相互に重ならないように枝線が延長して作業領域全体を覆う仮想の管路網を想定し、
この管路網の幹線から各枝線に沿ってコンクリート供給ラインの固定ラインを構築するものとして、上記管路網を網羅するようにコンクリート供給ラインを組み替えるために要する時間を、関係する管相互の予想接続時間及び予想分離時間を加算することで計算し、この時間を管路の組み替え時間とすることを内容とする。
一つのコンクリート供給源から延びて作業区画全体を覆う仮想の管路網に沿ってコンクリート供給ラインを構築して打ち重ねを行うための打設計画支援プログラムであって、
少なくとも構造物の設計情報及び建築用の資材・設備に関する情報を記録した記憶手段から、コンクリートを打ち込む作業区画情報及び配管パターン情報を取り出すステップと、
これらの情報を利用者に提示して利用者による管路網の設定を支援するステップと、
上記記憶手段からコンクリート供給管情報を取り出すステップと、
このコンクリート供給管情報から、上記管路網を網羅するようにコンクリート供給ラインを組み替えるために要する時間を、関係する管同士の予想接続時間及び予想分離時間を加算し、管路組み替え時間として出力するステップと、
上記記憶手段から、構造物の各区画毎の容積に関する情報と打設作業における標準的なコンクリートの注入速度情報とを取り出すステップと、
予め利用者又は機械が設定した作業区画に対して、上記構造物の容積及びコンクリート注入速度情報を適用して、コンクリート打設時間を計算するステップと、
上記記憶手段から、当該構造物に使用されるコンクリート規格に応じた許容打ち重ね時間情報を取り出すステップと、
上記管路組み替え時間とコンクリート打設時間とを加算して、両時間の合計が上記この許容打ち重ね時間よりも小さいときには上記シミュレーションの評価として「適」と、その合計時間が許容打ち重ね時間よりも大きいときには「不適」と出力するステップと、
をコンピュータに実行させることを特徴としている。
上記記憶手段は、工事現場の敷地情報及び資材情報を含むとともに、コンクリート供給源をコンクリート作業車とし、
さらに、上記記憶手段から構造物の平面図情報及び敷地情報を取り出すステップと、
これら情報から得られる平面図及び敷地の図形に、予めシミュレーションされたコンクリート供給用の配管の配置情報から得た配管の図を重ねて、コンピュータ画面に描出するステップと、
上記記憶手段から、工事現場の敷地の形状及び広さの情報、敷地の出入口の位置情報、及びコンクリート作業車の規格情報を取り出すステップと、
工事現場の敷地のうち資材置き場などに利用するデッドスペースを除いた部分を、コンクリート作業車を停めることが可能な駐車位置候補として選出させるステップと、
出入口を含む敷地の図形情報に上記駐車位置の候補を重ねてコンピュータ画面などの視覚表示手段上に表示させるステップと、
表示された候補のうちから駐車位置を決定することを利用者に促すステップと、
をコンピュータに実行させることを特徴としている。
なお、構造物のコンクリート打設場所が広い場合には、図示の通り複数(または複数組)のコンクリート作業車を使用することが可能である。この場合には、プログラムの機能として、コンクリートの打設量と、一つ(一組)のコンクリート作業車の打設能力とから必要とする台数を計算すること、及び、この台数に応じてコンクリート打設場所を複数の作業区画に分割すること(あるいは分割するように利用者に促すこと)を、コンピュータに実行させることが好適である。コンクリート打設場所を複数の作業区画に分割するステップにおいてときには分割した各部分の面積を計算し、各部分の面積がほぼ等しくなるように、自動的に分割し、或いは計算された面積を表示して、等分割することを利用者に促すようにしてもよい。
○構造物の平面図及び敷地の図形に、配管の図を重ねたから、視覚的にコンクリートの打設計画の内容を把握し易い。
○コンクリート作業車の設置場所に応じてコンクリート打設計画を立てるから、実用的な打設計画を立案することができる。
ここでは打設計画装置に固定条件を入力する。固定条件とは、建築物を設計通りに構築するために必要な条件である。第1に、現場配地図や建物の設計情報(平立断図面、各部材寸法、仮設図)などをCADなどの図面データとして入力する。第2に、コンクリート情報、特に凝結速度因子入力(生コンプラント選定、生コン仕様、打設日の天候など)を入力する。第3に打設速度因子入力(部材寸法など)を入力する。
次に敷地内で打設を予定する範囲、すなわちコンクリート打設場所2aと、コンクリートポンプ車6aやミキサー車6bを駐車できないデッドスペース2bとを入力する。この入力操作は図5に示すように画像表示部36上で位置を確認しながら行うことが可能とすることが望ましい。またコンクリート供給ライン14の配管パターンを入力する。すなわち、図1に示すコンクリート打設場所2aの左半部のように梁の通り芯に対して平行のみに配管するのか、あるいは右半部のように斜めに配管するラインを含むのかを選択する。また可動ライン14bであるフレキシブルホースの長さL及び設定余裕長さγを入力する。ここで設定余裕長さというものは、フレキシブルホースを剛性管に接続するためにホースの動きが制限される程度を長さに換算したものである。図2に示す如くL−γがフレキシブルホースの稼動長さγ0である。さらに打ち重ね高さ及び打ち重ね時間上限値を入力する。打ち重ね時間の上限値は一定の巾を持たせて基準となる管理値Tに対して[T−α,T+β]とすることが望ましい。α、βの意味については後の実施例で述べる。
さらに必要により、全体回し打ち・部分回し打ち・平流し打ちなどの打設方式、開始時刻、優先打設部材、現場内での生コン車待ち時間の許容時間、昼休み時間などの拘束時間、打設終了希望時刻TH)などを入力する。
上記(1)及び(2)によって入力された図面、打設量、打設方式、地域特性などにより、記憶手段38に蓄積された過去のデータベースから算出された打設標準時間(TF)を設定する。
入力(1)において入力したコンクリート打設場所2a内の各部材(柱・梁・スラブなど)の寸法からこれらを成形するために必要なコンクリート量を演算処理部32に自動計算させる。そしてコンクリート量に応じてコンクリートポンプ車の台数を仮設定する。例えば250m3で1台の如くである。
作業区画(大区画)8の決定は、下記の順序によって行う。まず図5に示すように工事現場である敷地2内の仮設材、資材の設置場所(デッドスペース2c)状況と、空きスペース(フリーエリア2b)との状況に応じて、他の工事の邪魔にならないようなコンクリートポンプ車6a及びミキサー車6bの設置に十分なスペース(例えば30m2以上の空きスペースが確保できる場所)を調べる。そのスペースは出入口4からミキサー車までの動線(搬入経路)が可能な空間でなければならない。調べ方としては、例えば(2)の段階でデッドスペース2cの面積、座標、形状を打設計画装置30に入力し、それら情報に応じて演算処理部32が、敷地2内の対応する場所にデッドスペース2cを表す図形を配置させた画像を構成し、画像表示部36に表示させるようにすることができる。デッドスペースと同様にコンクリートポンプ車6aやミキサー車6bの形状・大きさも予め入力し、これらコンクリートポンプ車及びミキサー車を表す図形を敷地などと同じ縮尺で画面に表示させれば、利用者が目視により駐車可能なスペースを配置することができる。こうした機能は既存のCADシステムの延長として実現することができる。或いは敷地を表す画像をグリット(格子点)で区切り、デッドスペースとして占有されていないスペースを機械的に表示、検索できるようにしてもよい。
そして(4)で求めた仮のコンクリートポンプ車の必要台数に対し、1台当りの打設量がほぼ均等に割り当てられるように上記候補の中からコンクリートポンプ車の配置位置を選択、決定する。
そしてコンクリートポンプ車6a配置可能場所を必ず一つは含むように、コンクリート打設場所2aをほぼ均等に分割するように分割線LPを引く。或いは一つのスラブが一度に回し打ちできない程度に広い場合に、そのスラブをほぼ均等に分割するように分割線LPを引く。この場合において、分割線LPは、図1に示す如く、壁の通り芯Lcやスラブ面積のn等分割線(n=2,3…)から所定の回避距離(1m以上とするとよい)だけ離すことが望ましい。1つの壁が2つの大区画に跨って存在すると、両区画でのコンクリートの打設作業が錯綜し、不適当だからである。このようにして大区画が決まる。
第1に、図1に示す如く1台のコンクリートポンプ車6aの大区画8の中で、打設終了部位の近傍に対応する配管投入口18を仮定する。この場合において、コンクリートポンプ車6aの配置位置、向き、垂直管の稼動半径、他の工事状況から配管投入口の位置を検索し、大区画8の中で最も端に位置する梁または柱部材を選択する。
(イ)上記(2)で入力した配管パターンに従ってコンクリート供給ライン14を設定する。この配管パターンは、一本の幹線から複数の枝線が分かれているものであるが、コンクリート送圧の計算のため、まずは配管投入口18から最も遠方の固定点aに至る一本の固定ライン(図1で実太線で描かれているもの)の経路を設置する。この固定ラインを形成する管路を主管路20というものとする。
(ロ)上記主管路20において、配管長さを可能な範囲で短くする。配管の盛替回数を最小限にするためである。配管長さを短くするためには、図1の様に主管路20が建物外周部Pに沿って曲って延びている場合では、建築物の外周部Pに対して、フレキシブルホースの先端部が届く範囲で外周部と主管路との間に距離をとるようにするとよい。
(ハ)主管路20のうちの直線部分では、剛性直管は可能な限り長いものを使用して接続する。例えば15m×2本、10m×3本のどちらでも接続可能な場合には、前者を優先する。接続箇所が少なくなれば管路の組替時間が短くなるからである。もっともフレキシブルホースとの稼動長さとの関係で、各固定点を中心とする稼動円同士が重なる(或いは接する)範囲に限るという前提条件がある。
(ニ)ベント管(曲管)は最小限の数だけ使用する。曲り箇所では圧力損失が大きく、エネルギー効率の上でベンド管を多用することは不利なのである。
(ホ)コンクリートポンプ車及び配管径の仕様を決定する。コンクリートポンプ車の圧送能力及び管径による流体抵抗により固定ラインの先端部での圧力が決まるからである。
(ヘ)最も遠い部位に配置した主配管ラインにおいて、管内の圧力負荷を計算する。この計算結果に応じて、配管ラインで圧送可能に十分なスペックを有するコンクリートポンプ車の機種を選択し、また安全値を見込んだ配管径及び厚さなどの配管スペックを自動決定する。
(イ)の配管の際には、側管路22、側々管路24の盛り替えポイントから全てのスラブ打設範囲をカバーできるように配置する。
(ロ)そして側管路22及び側々管路24の長さ合計が短くなるように配置する。
(ハ)隣り合う側管路22同士がフレキシブルホースの稼動長さ×2の距離を超えない範囲で当該距離に近くなるように配置する。
(ニ)ベント管(曲管)は最小限の数だけ使用する。主管路と同様の理由である。
(イ)この計算は、再遠方の固定点aから配管投入口18側へ向かってどの程度の範囲で許容打ち重ね時間T内での打ち回しが可能であるかを計算する方式とすることが望ましい。例えば図1の作業区画は(i)a−b−cという主管路部分と、(ii)d−e−fという部分(主管路から第1の側管路に分かれる部分)と、(iii)g−h−i−j−k−lという部分(主管路から第2の側管路に分かれる部分)とからなる。(i)の範囲での打設時間をt1、(i)→(ii)の範囲での打設時間をt2、(i)→(ii)→(iii)での打設時間をt3とし、t1<t2<T<t3であれば、図1に示す如く(i)及び(iii)を一つの小区画とする。仮にt1<T<t2であれば(i)が1つの小区画とし、a〜cの部分が1つの小区画となり、t3<Tであれば作業区画全体を一度に打ち回すことができる。このようにして小区画に区切る。
(ロ)小区画に区切るときには、打ち重ねの制限時間内で全ての部材の打ち回しが可能となるようにする。
(ハ)具体的には、小区画内の全ての部材に対して部材打設時間(部材量(m3)/部材の打設速度(m3/時)で計算し、配管盛り替え時間を考慮して、柱壁1段目→柱壁梁2段目→スラブの順で小区画内全てを打設するのに必要な時間を計算する。
(ニ)柱壁梁2段目を打ち終えた時点で全ての立上り部材の打ち重ね時間が設定されたうち重ね下限値と上限値の間に入っていればよい。可能な限りにおいて1度の打ち回し作業での小区画10内の打設量を最大にする。
(ホ)小分けされた小区画の中で連続した打設順序を決定する。隣り合った部材を打ち継ぐ連続した打設流れの中で、配管盛り替え回数が少ないように部材打設順序を決定する。基本は下記の表1の如く外回りを優先した順序で行う。右回りでも左回りでもよい。隣り合った部材に連続して打つ。
(ト)以上の作業を繰返し、大区画内に小区画を幾つか設定して打設順序を決定する。
第1に、決定した打設順序に従い、総打設時間Ttotalを計算する。総打設時間Ttotalは次の数式2として与えられる。但し、優先順位が高いものから低いものへ(ta)−(tb)−(tc)−(td)の順序とし、時間軸上でオーバーラップする2つの時間のうち優先頻度が低いは切り捨てるものとする。ここでtaは、1〜n番までの各部材の打設時間総和であり、Σ(部材nのコンクリート量(m3)/部材nの打設速度(m3/秒))である。tbはポンプ配管盛り替え時間総和であり、Σ(1回の盛替平均時間(秒)×回数)である。tcは配車ロス時間であり、Σ(1回の配車ロス時間(秒)×回数)で与えられる。tdは休息時間であり、Σ(1回の休息時間(秒)×回数)である。
[数式2]Ttotal=ta+tb+tc+td
第2に、決定した打設順序に従い打設終了予想時刻(Tend)を計算する。
第3に、生コンプラントへの出荷指示時刻を計算する。
(イ)生コンプラントへの出荷指示時刻は、次の数式3による。但し、TdはN台目の生コン車の出荷指示時刻であり、TpはN台目の生コン車の積載コンクリート量(m3)が打設される時刻)であり、twaitは現場内での待ち時間(上記(2)の段階で入力にする)であり、ttransportはプラントから現場までの運搬時間(データベースより得る)である。
[数式3]Td=Tp−twait−ttransport
部材nの打ち重ね時間(tn)を計算する。
[数式4]tn=(上の部材の打ち始め時刻−下の部材の打ち終わり時刻)
決定された打設順序に従って、ポンプ配管のルート毎の圧送距離(m)−圧力損失(kg/cm2/m)の関係グラフ、時刻(時分)−コンクリートポンプ車にかかる圧送負荷(kgf/cm2)の関係グラフを作成する。
この判定は、以下のI.IIに従う。どちらか一方でも閾値以内でない場合は(6)(5)の処理に戻って処理を繰り返す。それでも判定がNGである場合は上記(2)の設定入力に戻って処理を繰り返す。
I.(7)の総打設時間(Ttotal)が(3)で計算された工事標準時間(TF)内であるかを自動判定する。
II.(7)の打設終了予想時刻(Tend)が(2)で入力した打設終了希望時刻(TH)以内であるかを自動判定する。
図8は部材Nについての打ち重ね時間の管理の概念図を表している。ある一つの部材、例えば壁や梁を高さ方向に複数段に分け、一段目の打設を完了した後には、コンクリート型枠がふくらまないようにしばらく時間をおいて2段目の打ち込みを行う。打ち重ねの間隔の下限値、すなわち次段の打ち込みを開始する時刻は、生コンクリートの凝結因子(生コンクリート使用材料・地域特性・気候・型枠の質・湿り具合・当日の生コンクリートのスランプ・スランプフローなど)を考慮して決定する。打ち重ね間隔の下限値を下回ってはならない。次段の打ち込みを開始してから打ち込みを完了するまでの時間は、コールドジョイントを生じない範囲で設定するものとする。この時間はJASS5で設定された管理目標時間を標準とするが、例えば外気温が高く凝結時間が短いと予測される場合には、[管理時間−α]という厳しい条件で打ち込みを行うことが必要となる。他方、コンクリート温度を低下させるなどして凝結を遅らせる措置をとった場合には、[管理時間+β]という緩めの条件で打ち込みを行うことが可能である。
作業区画(あるいはコンクリート打設場所)の情報は、敷地全体に対する作業区画8の位置、形状、大きさなどをCADとして描図できる程度に取り込む(図10(a)参照)。このステップでは、必須ではないが、建物の外周部Pと隣接するコンクリート供給口の位置の境界線として補助線Laを画像表示部に引くことが望ましい。この補助線は、フレキシブルホースの稼動長さγ0を入力すること(あるいは所定の稼動長さのフレキシブルホースを選択すること)で自動的に、作業区画の外縁からγ0内側の地点に自動的に描画されるように演算処理部を設計することができる。
図10(c)の如く、管路網のシミュレーションを行う作業区画8を指定する。演算処理部32は、その作業区画のx方向の辺長lx、ly方向の辺長lyを画面に表示する。ここで利用者がフレキシブルホースの稼動長さγoを演算処理部32に与えると、演算処理部は、x方向及びy方向のそれぞれに対して次式を満たすnx,nyを計算する。作業区画をx方向にnxで、y方向にnyでそれぞれ分割すると、nx×ny個の同じ大きさの図形(単位図形)ができる。これらの図形中心を通るように図10(b)で選択した配管パターンを適用すると、作業区画8に適合した仮想の管路網42が決定される。同図中では管路網を実線で、上記図形中心を、実線上の点で表している。
〔数式5〕(nx−1)×r<lx≦nx×r
〔数式6〕(ny−1)×r<ly≦ny×r
このステップでは、入手可能なコンクリート供給管情報から、上記(ロ)で設定した管路網を構築するのに適当な長さのもの選択する。図10(c)での管路網の実線上の点と点の間の距離が凡そ剛性直管の長さに相当する。その距離と丁度合う長さの管が用意できなくても、上記及びの条件に適合する範囲であれば、上記(ロ)で想定した仮想管路網と、実在のコンクリート供給ラインとの間にずれがあっても構わない。
コンクリートの注入速度は、コンクリートを注入する箇所の型枠内部の流体抵抗に左右されるため、各部材ごとに計算する。
前述の如く、各部材ごとに部材nのコンクリート量(m3)/部材nの打設速度(m3/秒)を計算し、その計算結果を合計すればよい。
前述の如くJISで定められた時間を基準として、+β、−αの調整を行う。
結果が不適であるときには、一度に回し打つ範囲(小区画)を狭めて再度シミュレーションを行うとよい。
4…出入口 6…コンクリート供給源 6a…コンクリートポンプ車 6b…ミキサー車
8…大区画(作業区画) 10…小区画
12…コンクリート型枠 12a…壁形成部分 12b…スラブ形成部分
14…コンクリート供給ライン 14a…固定ライン 14b…可動ライン
15…フレキシブルホース
16…剛性管 16A…直管 16B…ベンド管 18…配管投入口
20…主管路 22…側管路 24…側々管路 26…打設地点
30…打設計画装置 32…演算処理部 34…入力手段 36…画像表示部
38…記憶手段
40…配管パターン 42…管路網 a〜l…固定点
Sp…コンクリート供給ライン先端 γO…稼動長さ CO…稼動円 P…外周部
LP…分割線 Lc…通り芯 La…補助線
Claims (2)
- 一つのコンクリート供給源から延びて作業区画全体を覆う仮想の管路網に沿ってコンクリート供給ラインを構築して打ち重ねを行うための打設計画支援プログラムであって、
少なくとも構造物の設計情報及び建築用の資材・設備に関する情報を記録した記憶手段から、コンクリートを打ち込む作業区画情報及び配管パターン情報を取り出すステップと、
これらの情報を利用者に提示して利用者による管路網の設定を支援するステップと、
上記記憶手段からコンクリート供給管情報を取り出すステップと、
このコンクリート供給管情報から、上記管路網を網羅するようにコンクリート供給ラインを組み替えるために要する時間を、関係する管同士の予想接続時間及び予想分離時間を加算し、管路組み替え時間として出力するステップと、
上記記憶手段から、構造物の各区画毎の容積に関する情報と打設作業における標準的なコンクリートの注入速度情報とを取り出すステップと、
予め利用者又は機械が設定した作業区画に対して、上記構造物の容積及びコンクリート注入速度情報を適用して、コンクリート打設時間を計算するステップと、
上記記憶手段から、当該構造物に使用されるコンクリート規格に応じた許容打ち重ね時間の情報を取り出すステップと、
上記管路組み替え時間とコンクリート打設時間とを加算して、両時間の合計が上記の予め設定されたコンクリート規格に基づいて計算した許容打ち重ね時間よりも小さいときには上記シミュレーションの評価として「適」と、その合計時間が許容打ち重ね時間よりも大きいときには「不適」と出力するステップと、
をコンピュータに実行させることを特徴とする、打ち重ね工法のための打設計画支援用のプログラム。 - 上記記憶手段は、工事現場の敷地情報及び資材情報を含むとともに、コンクリート供給源をコンクリート作業車とし、
さらに、上記記憶手段から構造物の平面図情報及び敷地情報を取り出すステップと、
これら情報から得られる平面図及び敷地の図形に、予めシミュレーションされたコンクリート供給用の配管の配置情報から得た配管の図を重ねて、コンピュータ画面に描出するステップと、
上記記憶手段から、工事現場の敷地の形状及び広さの情報、敷地の出入口の位置情報、及びコンクリート作業車の規格情報を取り出すステップと、
工事現場の敷地のうち資材置き場などに利用するデッドスペースを除いた部分を、コンクリート作業車を停めることが可能な駐車位置候補として選出させるステップと、
出入口を含む敷地の図形情報に上記駐車位置の候補を重ねてコンピュータ画面などの視覚表示手段上に表示させるステップと、
表示された候補のうちから駐車位置を決定することを利用者に促すステップと、
をコンピュータに実行させることを特徴とする、請求項1記載の打設計画支援プログラム。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
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