JP5525330B2 - 捩れ配向モード液晶表示装置 - Google Patents

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Description

本発明は、画面上下左右の方向におけるコントラストが改善された捩れ配向モード液晶表示装置に関する。
従来、TNモード液晶表示装置のような捩れ配向モード液晶表示装置の視野角特性の改善に寄与する光学補償フィルムが種々提案されている。
一例として、棒状液晶分子をハイブリッド配向又は傾斜配向させ、その状態を固定することで形成される光学異方性層を有する光学補償フィルムが種々提案されている(例えば、特許文献1及び2)。
近年、液晶表示装置を、パーソナルコンピュータ(PC)等のディスプレイとしてのみならず、大型TV用のディスプレイとして応用することが試みられ、実用化もされている。上記構成の光学補償フィルムを利用することで、TNモード液晶表示装置の視野角特性は改善されたが、大型TV用ディスプレイとして利用するためには、さらに上下左右の視野角特性がバランスよく改善されることが望まれる。
特開2002−196139号公報 特開2006−195293号公報
本発明は、上下左右の視野角特性がバランスよく改善された捩れ配向モード液晶表示装置を提供することを課題とする。
上記特許文献などに記載された光学補償フィルムは、棒状液晶分子をハイブリッド配向又は傾斜配向させ、その状態を固定することで形成される光学異方性層を有するフィルムであり、該フィルムは、光学異方性層のラビング方向を、その近くに配置される液晶セル基板のラビング方向と直交にして配置されるものがほとんどである。
しかし、発明者が検討したところ、この直交配置を維持しながら光学補償フィルムの光学特性や層構成を調整して、液晶表示装置の上下左右のコントラスト視野角特性を改善してゆくことに限界があることが判ってきた。
さらに検討した結果、所定の特性の光学異方性層を、セル基板と所定の関係で配置することで、上記課題を解決しえることを見出し、この知見に基づきさらに検討して、本発明を完成するに至った。
前記課題を解決するための手段は、以下の通りである。
[1]互いの吸収軸を直交にして配置されている第1及び第2の偏光膜、
前記第1及び第2の偏光膜の間に配置される、第1及び第2のセル基板(但し、第1のセル基板が前記第1の偏光膜により近い位置に配置され、及び第2のセル基板が前記第2の偏光膜により近い位置に配置されるものとする)と、
その間に配置される液晶層とを少なくとも有する捩れ配向モードの液晶セル、並びに
前記第1の偏光膜と前記液晶セルとの間、及び前記第2の偏光膜と前記液晶セルとの間にそれぞれ、少なくとも2つの光学異方性層1及び光学異方性層2を有する第1及び第2の光学異方性積層体を有する液晶表示装置であって、
前記第1及び第2の光学異方性積層体のそれぞれの、前記第光学異方性層1、及び光学異方性層2の配置の順序が、液晶セルを中心として対称的であり、
前記光学異方性層1が、波長550nmにおける面内レターデーションが50〜300nm、厚み方向のレターデーションが50〜250nmであり、
前記光学異方性層2が、傾斜配向状態に固定された棒状液晶を含有し、及び波長550nmにおける面内レターデーションが0〜100nmであり、
前記第1の光学異方性積層体中の前記光学異方性層2の傾斜方位と第1のセル基板の近傍における前記液晶の傾斜方位が、互いに反平行であり、且つ前記第2の光学異方性積層体中の前記光学異方性層2の傾斜方位と前記液晶層の第2のセル基板の近傍における前記液晶の傾斜方位が、互いに反平行である捩れ配向モード液晶表示装置。
[2]前記光学異方性層2が、下記式(I)を満たす[1]の捩れ配向モード液晶表示装置:
式(I) 20nm ≦Re[+40]−Re[−40]≦125nm
式中、Re[θ]は、法線方向から角度θ(°)だけ傾いた方向から計測した面内レターデーション値である。
[3]液晶セル側から、光学異方性層2及び光学異方性層1の順序で配置される[1]又は[2]の捩れ配向モード液晶表示装置。
[4]前記光学異方性層1が、少なくとも一種のセルロースアシレートを含有するポリマー溶液を流延してウェブを形成する流延工程と、前記流延工程において形成された前記ウェブを残留溶媒量が100〜300質量%である間に、搬送方向に5〜100%延伸する延伸工程と、前記ウェブを膜面温度50〜150℃で乾燥する乾燥工程とを含み、前記乾燥工程の開始残留揮発分が10〜150質量%であり且つ終了残留揮発分が10〜50質量%である製造工程によって作製されたフィルムである[1]〜[3]のいずれかの捩れ配向モード液晶表示装置。
[5]光学異方性層1が、プロピオニル基またはブチリル基を含むセルロースアシレートの少なくとも1種を含むフィルムである[1]〜[4]のいずれかの捩れ配向モード液晶表示装置。
[6]光学異方性層1が、シクロオレフィン系ホモポリマー及びコポリマーから選択される少なくとも一種を含むポリマーフィルムである[1]〜[3]のいずれかの捩れ配向モード液晶表示装置。
本発明によれば、上下左右の視野角特性がバランスよく改善された捩れ配向モード液晶表示装置を提供することができる。
本発明のTNモード液晶表示装置の一例の分解斜視図である。 「反平行」の関係を説明するために用いた概念図である。
以下、本発明について、詳細に説明する。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
本明細書において、Reは、光学異方性層、フィルム、積層体等のフィルム状の測定対象物の、波長550nmにおける面内のレターデーション値(単位:nm)を表し、及びRthは、波長550nmにおける厚み方向のレターデーション値(単位:nm)を表す。
Reは、KOBRA 21ADH、又はWR(王子計測機器(株)製)において、波長550nmの光を、フィルム状の測定対象物の法線方向に入射させて測定される。
測定波長を変更する方法としては、波長選択フィルターをマニュアルで交換する方法、測定値をプログラム等で変換して測定する方法がある。
測定されるフィルム状の測定対象物が1軸、又は2軸の屈折率楕円体で表されるものである場合、以下の方法により、Rthが算出される。
Rthは、前記Reを、面内の進相軸(KOBRA 21ADH、又はWRにより判断される)を回転軸として(進相軸がない場合には、フィルム状の測定対象物の面内の任意の方向を回転軸とする)のフィルム状の測定対象物の法線方向に対して、法線方向から片側50°まで10°ステップで各々その傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて全部で6点測定し、その測定されたレターデーション値と、平均屈折率の仮定値、及び入力された膜厚値を基にKOBRA 21ADH、又はWRが算出する。
上記において、法線方向から面内の進相軸を回転軸として、ある傾斜角度にレターデーションの値がゼロとなる方向をもつフィルム状の測定対象物の場合には、その傾斜角度より大きい傾斜角度でのレターデーション値はその符号を負に変更した後、KOBRA 21ADH、又はWRが算出する。
なお、進相軸を回転軸として(進相軸がない場合にはフィルム状の測定対象物の面内の任意の方向を回転軸とする)、任意の傾斜した2方向からレターデーション値を測定し、その値と平均屈折率の仮定値、及び入力された膜厚値を基に、以下の式(A)、及び式(B)よりRthを算出することもできる。
Figure 0005525330
なお、上記のRe(θ)は法線方向から角度θ傾斜した方向におけるレターデーション値を表す。
また、式(A)におけるnxは、面内における遅相軸方向の屈折率を表し、nyは、面内においてnxに直行する方向の屈折率を表し、nzは、nx及びnyに直交する方向の屈折率を表す。dは膜厚を表す。
測定されるフィルム状の測定対象物が1軸、又は2軸の屈折率楕円体で表現できないもの、いわゆる光学軸(optical axis)がない測定対象物の場合には、以下の方法によりRthが算出される。
Rthは、前記Reを、面内の進相軸(KOBRA 21ADH、又はWRにより判断される)を回転軸としてフィルム法線方向に対して−50°から+50°まで10°ステップで各々その傾斜した方向から波長550nmの光を入射させて11点測定し、その測定されたレターデーション値と平均屈折率の仮定値、及び入力された膜厚値を基にKOBRA 21ADH、又はWRが算出する。
上記の測定において、平均屈折率の仮定値は、ポリマーハンドブック(JOHN WILEY&SONS,INC)、各種光学フィルムのカタログの値を使用できる。平均屈折率の値が既知でないものについてはアッベ屈折計で測定できる。主な光学フィルムの平均屈折率の値を以下に例示すると、セルロースアシレート(1.48)、シクロオレフィンポリマー(1.52)、ポリカーボネート(1.59)、ポリメチルメタクリレート(1.49)、ポリスチレン(1.59)である。これら平均屈折率の仮定値と膜厚を入力することで、KOBRA 21ADH、又はWRは、nx、ny、nzを算出する。この算出されたnx、ny、nzよりNz=(nx−nz)/(nx−ny)が更に算出される。
なお、本明細書において、Re、Rth及び屈折率について特に測定波長が付記されていない場合は、測定波長550nmであるものとする。
また、本明細書において、光学異方性層、フィルム、積層体等のフィルム状の測定対象物の「遅相軸」とは、屈折率が最大となる方向を、「進相軸」とは、屈折率が最小となる方向をそれぞれ表す。該測定対象物の遅相軸の測定は、例えば、KOBRA 21ADH(王子計測機器(株)製)を用いることができる。
また、本明細書において、「45°」等の角度、「直交」あるいは「平行」とは、厳密な角度±5°未満の範囲内であることを意味する。厳密な角度との誤差は、4°未満であることが好ましく、3°未満であることがより好ましい。
以下、図面を用いて、本発明の捩れ配向モードの液晶表示装置のいくつかの実施形態について説明する。なお、以下の説明では、図面上が表示面側、及び図面下がバックライト側として説明するが、上下が逆転していてもよい。
図1に、本発明の液晶表示装置の第1の実施形態の分解斜視図を示す。図1に示す液晶表示装置は、第1の偏光子4及び第2の偏光子5と、その間にTNモード液晶セル10を有する。液晶セル10と第1の偏光子4、及び液晶セル10と第2の偏光子5の間にはそれぞれ、光学異方性層2(6、6’)、光学異方性層1(7、7’)を含む第1及び第2の光学異方性積層体12、12’が配置されている。第1及び第2の光学異方性積層体12、12’中、各光学異方性層は、液晶セル10を中心にして、光学異方性層2(6、6’)、光学異方性層1(7、7’)の順番で配置されていて、即ち、液晶セル10を中心として対称的配置になっている。第1及び第2の偏光子4、5は、それぞれの吸収軸4a(又は4b)、5a(又は5b)を、互いに直交にして配置されている。
液晶セル10は、第1の基板2及び第2の基板3、その間に配置される液晶層1を備える。第1の基板2及び第2の基板3のそれぞれの内面に形成された配向膜(不図示)には、互いに直交する方向2b、3bに沿ってラビング処理が施され、駆動電圧無印加時には、液晶層1中の液晶分子1aは、約90°で捩れ配向している。よって、駆動電圧無印加時には、第2の偏光子5を通過した直線偏光は、液晶層1を通過することにより偏光軸が回転するので、第1の偏光子4を通過可能となり、液晶表示装置は白表示状態になる。一方、駆動電圧印加時は、液晶層1中の中心部の液晶分子1aの捩れ配向が解消されるので、第2の偏光子5を通過した直線偏光は、液晶層1を通過した後も、第1の偏光子4の吸収軸4a(又は4b)によりブロックされ、液晶表示装置は黒表示状態になる。ただし、液晶層1中の第1及び第2の基板2、3近傍の液晶分子2a及び3aは、黒表示時及び白表示時のいずれにおいても、基板面に対して所定のチルト角2c及び3cにて傾斜配向しているため、液晶層1には斜め方向において複屈折が生じ、斜め方向のコントラスト低下の原因になっている。第1及び第2の光学異方性積層体12、12’は、液晶層1中の第1及び第2の基板2、3近傍の液晶分子2a及び3aが傾斜配向していることによって生じる複屈折を光学補償する作用がある。
本実施の形態のLCD1では、上記光学補償に、光学異方性層2(6、6’)、光学異方性層1(7、7’)、の2つの光学異方性層を利用しているという特徴がある。光学異方性層2(6、6’)は、傾斜配向状態に固定された棒状液晶6a、6’aを含有する光学異方性層である。
光学異方性層2(6、6’)は、波長550nmにおける面内レターデーションが0〜100nm、好ましくは20〜90nmであり、Re[+40]−Re[−40]が20〜125nm、好ましくは60〜120nmである。ここでRe[θ]は、法線方向から進相軸を回転軸として角度θだけ傾いた方向から計測した面内レターデーション値であり、Re[+40]≧Re[−40]である。
光学異方性層1(7、7’)は、波長550nmにおける面内レターデーションが50〜300nm、好ましくは100〜250nmであり、厚み方向のレターデーションが50〜250nm、好ましくは100〜200nmであり、この条件を満足する限り、材料については特に制限はない。光学異方性層1(7、7’)は、それぞれが含む液晶分子又は高分子等の配向によって面内遅相軸(7a、7’a)を有し、その方向は、第1の偏光膜4の吸収軸4aと平行又は直交であり、及び第2の偏光膜5の吸収軸5aと平行又は直交である。
本実施形態のLCD1では、光学異方性層2(6、6’)の棒状液晶分子の傾斜方位と、それぞれとより近い位置に配置される液晶セル基板(2,3)における液晶層中の液晶分子(2a,3a)の傾斜方位とが反平行になっていることが特徴である。
ここで、傾斜方位と反平行について図2を用いて説明する。
光学異方性層1(7)と基板(2)を仮想平面P1、光学異方性層1(8)と基板(3)を仮想平面P2とする。
光学異方性層2の中の液晶分子(6a、6’a)および基板近傍の液晶分子(2a,3a)はそれぞれ仮想平面P1,P2に対してある傾斜角(6c、6’cおよび2c,3c)を持って傾斜している。傾斜している分子の長軸方向をここでは傾斜軸(6d,6’dおよび2d,3d)とし図2に示すように定義する。傾斜軸(6d,6’dおよび2d,3d)を仮想平面P1、P2に投影した方位を図2に示すように傾斜方位(6e,6’eおよび2e,3e)と定義する。ラビングにより光学異方性層2の液晶を配向させる場合、ラビング方向と傾斜方位は同等である。同様にラビングにより液晶セル内の液晶分子を配向させる場合も、ラビング方向と傾斜方位は同等である。
光学異方性層2の傾斜方位(6e、6’e)とセル基板の近傍における液晶の傾斜方位(2e、3e)は平行であるが互いに反対の方向を持つ。これらの関係を反平行と定義する。
光学異方性層2(6、6’)の棒状液晶分子を配向させる処置として、ラビングする他に光や磁場を与えて配向させる方法や、配向膜側から配向規制力を与える方法など様々であるが、ラビング以外の方法でも図2を基に傾斜方位を決定することができる。
ここで、光学異方性層2(6、6’)の傾斜方位(6e,6’e)は前述のKOBRA 21ADH(王子計測機器(株)製)では法線方向から角度θ傾斜した方向におけるレターデーション値を測定することにより検出することが可能である。
また、セル基板の近傍における液晶の傾斜方位は、OPTIPRO(シンテック社製)によって測定することが可能である。
以下、本発明の光学補償フィルムの作製に使用可能な種々の材料について説明する。
1.光学異方性層2
本発明において、光学異方性層2の作製には、棒状液晶化合物が利用される。
[棒状液晶化合物]
前記光学異方性層2の形成に利用可能な棒状液晶性化合物については、特に制限はない。棒状液晶性化合物の例には、アゾメチン類、アゾキシ類、シアノビフェニル類、シアノフェニルエステル類、安息香酸エステル類、シクロヘキサンカルボン酸フェニルエステル類、シアノフェニルシクロヘキサン類、シアノ置換フェニルピリミジン類、アルコキシ置換フェニルピリミジン類、フェニルジオキサン類、トラン類及びアルケニルシクロヘキシルベンゾニトリル類の種々の棒状液晶が含まれる。また、低分子液晶性化合物だけではなく、高分子液晶性化合物も用いることができる。棒状液晶性化合物を重合によって配向を固定することがより好ましい。液晶性化合物には活性光線や電子線、熱などによって重合や架橋反応を起こしうる部分構造を有するものが好適に用いられる。その部分構造の個数は好ましくは1〜6個、より好ましくは1〜3個である。重合性棒状液晶性化合物としては、Makromol.Chem.,190巻、2255頁(1989年)、Advanced Materials 5巻、107頁(1993年)、米国特許第4683327号明細書、同5622648号明細書、同5770107号明細書、国際公開WO95/22586号公報、同95/24455号公報、同97/00600号公報、同98/23580号公報、同98/52905号公報、特開平1−272551号公報、同6−16616号公報、同7−110469号公報、同11−80081号公報、特開2001−328973号公報、特開2004−240188号公報、特開2005−99236号公報、特開2005−99237号公報、特開2005−121827号公報、特開2002−30042号公報などに記載の化合物を用いることができる。
本発明で使用される棒状液晶化合物は、傾斜角が徐々に変化(ハイブリッド配向)するように配向制御されていてもよい。チルト角を制御するには、界面の表面エネルギーを制御することが重要であり、具体的には、表面エネルギーを低くすることでチルト角は上昇し、高くすることでチルト角は低下する傾向にある。水平配向と垂直配向の間の、傾斜した配向状態を精密に制御するには、チルト角制御剤によって表面エネルギーを制御するのが好ましい。
前記光学異方性層2の空気界面側のチルト角の制御には、後述する所定の空気界面配向剤を利用することができる。また、前記光学異方性層2の配向膜界面側のチルト角は、後述する、配向膜の材料(後述する所定の添加剤)によって制御可能である。
(空気界面側配向剤)
光学異方性層2の形成には、空気界面側近傍の液晶性分子を垂直配向状態にするのを促進する配向剤を使用してもよい。当該配向剤の例には、フルオロ脂肪族基と、カルボキシル基(−COOH)、スルホ基(−SO3H)、ホスホノキシ基{−OP(=O)(OH)2}及びそれらの塩からなる群より選ばれる1種以上の親水性基とを含有するフルオロ脂肪族基含有ポリマー(以下、「フッ素系ポリマー」という)、又は一般式(III)で表される含フッ素化合物が含まれる。
まず、フッ素系ポリマーについて説明する。
本発明に使用可能なフッ素系ポリマーは、フルオロ脂肪族基と、カルボキシル基(−COOH)、スルホ基(−SO3H)、ホスホノキシ基{−OP(=O)(OH)2}及びそれらの塩からなる群より選ばれる1種以上の親水性基とを含有することを特徴とする。ポリマーの種類としては、「改訂 高分子合成の化学」(大津隆行著、発行:株式会社化学同人、1968)1〜4ページに記載があり、例えば、ポリオレフィン類、ポリエステル類、ポリアミド類、ポリイミド類、ポリウレタン類、ポリカーボネート類、ポリスルホン類、ポリカーボナート類、ポリエーテル類、ポリアセタール類、ポリケトン類、ポリフェニレンオキシド類、ポリフェニレンスルフィド類、ポリアリレート類、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)類、ポリビニリデンフロライド類、セルロース誘導体などが挙げられる。前記フッ素系ポリマーは、ポリオレフィン類であることが好ましい。
前記フッ素系ポリマーは、フルオロ脂肪族基を側鎖に有するポリマーである。前記フルオロ脂肪族基は、炭素数1〜12であるのが好ましく、6〜10であるのがより好ましい。脂肪族基は、鎖状であっても環状であってもよく、鎖状である場合は直鎖状であっても分岐鎖状であってもよい。中でも、直鎖状の炭素数6〜10のフルオロ脂肪族基が好ましい。フッ素原子による置換の程度については特に制限はないが、脂肪族基中の50%以上の水素原子がフッ素原子に置換されているのが好ましく、60%以上が置換されているのがより好ましい。フルオロ脂肪族基は、エステル結合、アミド結合、イミド結合、ウレタン結合、ウレア結合、エーテル結合、チオエーテル結合、芳香族環などを介してポリマー主鎖と結合した側鎖に含まれる。フルオロ脂肪族基の一つは、テロメリゼーション法(テロマー法ともいわれる)又はオリゴメリゼーション法(オリゴマー法ともいわれる)により製造されたフルオロ脂肪族化合物から導かれるものである。これらのフルオロ脂肪族化合物の製造法に関しては、例えば、「フッ素化合物の合成と機能」(監修:石川延男、発行:株式会社シーエムシー、1987)の117〜118ページや、「Chemistry of Organic Fluorine Compounds II」(Monograph 187,Ed by Milos Hudlicky and Attila E.Pavlath,American Chemical Society 1995)の747〜752ページに記載されている。テロメリゼーション法とは、ヨウ化物等の連鎖移動常数の大きいアルキルハライドをテローゲンとして、テトラフルオロエチレン等のフッ素含有ビニル化合物のラジカル重合を行い、テロマーを合成する方法である(Scheme−1に例を示した)。
Figure 0005525330
得られた、末端ヨウ素化テロマーは通常、例えば[Scheme2]のごとき適切な末端化学修飾を施され、フルオロ脂肪族化合物へと導かれる。これらの化合物は必要に応じ、さらに所望のモノマー構造へと変換され、フッ素系ポリマーの製造に使用される。
Figure 0005525330
本発明に使用可能なフッ素系ポリマーの製造に利用可能なモノマーの具体例を以下に挙げるが、本発明は以下の具体例によってなんら制限されるものではない。
Figure 0005525330
Figure 0005525330
Figure 0005525330
Figure 0005525330
Figure 0005525330
Figure 0005525330
Figure 0005525330
本発明に使用可能なフッ素系ポリマーの一態様は、フルオロ脂肪族基含有モノマー(以下、「フッ素系モノマー」ということがある)より誘導される繰り返し単位と、下記式(II)で表される親水性基を含有する繰り返し単位とを有する共重合体である。
Figure 0005525330
上記式(II)において、R1、R2及びR33はそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。Qはカルボキシル基(−COOH)もしくはその塩、スルホ基(−SO3H)もしくはその塩、又は、ホスホノキシ基{−OP(=O)(OH)2}もしくはその塩を表す。Lは下記の連結基群から選ばれる任意の基、又はそれらの2つ以上を組み合わせて形成される2価の連結基を表す。
(連結基群)
単結合、−O−、−CO−、−NRb−(Rbは水素原子、アルキル基、アリール基、又はアラルキル基を表す)、−S−、−SO2−、−P(=O)(ORf)−(Rfはアルキル基、アリール基、又はアラルキル基を表す)、アルキレン基及びアリーレン基。
式(II)中、R1、R2及びR33は、それぞれ独立に、水素原子又は下記に例示した置換基群から選ばれる置換基を表す。
(置換基群)
アルキル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜12、さらに好ましくは炭素数1〜8のアルキル基であり、例えば、メチル基、エチル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、n−オクチル基、n−デシル基、n−ヘキサデシル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などが挙げられる)、アルケニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜12、さらに好ましくは炭素数2〜8のアルケニル基であり、例えば、ビニル基、アリール基、2−ブテニル基、3−ペンテニル基などが挙げられる)、アルキニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜12、さらに好ましくは炭素数2〜8のアルキニル基であり、例えば、プロパルギル基、3−ペンチニル基などが挙げられる)、アリール基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、さらに好ましくは炭素数6〜12のアリール基であり、例えば、フェニル基、p−メチルフェニル基、ナフチル基などが挙げられる)、アラルキル基(好ましくは炭素数7〜30、より好ましくは炭素数7〜20、さらに好ましくは炭素数7〜12のアラルキル基であり、例えば、ベンジル基、フェネチル基、3−フェニルプロピル基などが挙げられる)、置換もしくは無置換のアミノ基(好ましくは炭素数0〜20、より好ましくは炭素数0〜10、さらに好ましくは炭素数0〜6のアミノ基であり、例えば、無置換アミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、アニリノ基などが挙げられる)、
アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、さらに好ましくは炭素数1〜10のアルコキシ基であり、例えば、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基などが挙げられる)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、さらに好ましくは2〜10のアルコキシカルボニル基であり、例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基などが挙げられる)、アシルオキシ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、さらに好ましくは2〜10のアシルオキシ基であり、例えば、アセトキシ基、ベンゾイルオキシ基などが挙げられる)、アシルアミノ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、さらに好ましくは炭素数2〜10のアシルアミノ基であり、例えばアセチルアミノ基、ベンゾイルアミノ基などが挙げられる)、アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、さらに好ましくは炭素数2〜12のアルコキシカルボニルアミノ基であり、例えば、メトキシカルボニルアミノ基などが挙げられる)、アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数7〜20、より好ましくは炭素数7〜16、さらに好ましくは炭素数7〜12のアリールオキシカルボニルアミノ基であり、例えば、フェニルオキシカルボニルアミノ基などが挙げられる)、スルホニルアミノ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、さらに好ましくは炭素数1〜12のスルホニルアミノ基であり、例えば、メタンスルホニルアミノ基、ベンゼンスルホニルアミノ基などが挙げられる)、スルファモイル基(好ましくは炭素数0〜20、より好ましくは炭素数0〜16、さらに好ましくは炭素数0〜12のスルファモイル基であり、例えば、スルファモイル基、メチルスルファモイル基、ジメチルスルファモイル基、フェニルスルファモイル基などが挙げられる)、カルバモイル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、さらに好ましくは炭素数1〜12のカルバモイル基であり、例えば、無置換のカルバモイル基、メチルカルバモイル基、ジエチルカルバモイル基、フェニルカルバモイル基などが挙げられる)、
アルキルチオ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、さらに好ましくは炭素数1〜12のアルキルチオ基であり、例えば、メチルチオ基、エチルチオ基などが挙げられる)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6〜20、より好ましくは炭素数6〜16、さらに好ましくは炭素数6〜12のアリールチオ基であり、例えば、フェニルチオ基などが挙げられる)、スルホニル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、さらに好ましくは炭素数1〜12のスルホニル基であり、例えば、メシル基、トシル基などが挙げられる)、スルフィニル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、さらに好ましくは炭素数1〜12のスルフィニル基であり、例えば、メタンスルフィニル基、ベンゼンスルフィニル基などが挙げられる)、ウレイド基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、さらに好ましくは炭素数1〜12のウレイド基であり、例えば、無置換のウレイド基、メチルウレイド基、フェニルウレイド基などが挙げられる)、リン酸アミド基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、さらに好ましくは炭素数1〜12のリン酸アミド基であり、例えば、ジエチルリン酸アミド基、フェニルリン酸アミド基などが挙げられる)、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、ヘテロ環基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは1〜12のヘテロ環基であり、例えば、窒素原子、酸素原子、硫黄原子等のヘテロ原子を有するヘテロ環基であり、例えば、イミダゾリル基、ピリジル基、キノリル基、フリル基、ピペリジル基、モルホリノ基、ベンゾオキサゾリル基、ベンズイミダゾリル基、ベンズチアゾリル基などが挙げられる)、シリル基(好ましくは、炭素数3〜40、より好ましくは炭素数3〜30、さらに好ましくは、炭素数3〜24のシリル基であり、例えば、トリメチルシリル基、トリフェニルシリル基などが挙げられる)が含まれる。これらの置換基はさらにこれらの置換基によって置換されていてもよい。又、置換基を二つ以上有する場合は、同じでも異なってもよい。又、可能な場合には互いに結合して環を形成していてもよい。
1、R2及びR33はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)、又は後述する−L−Qで表される基であることが好ましく、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、塩素原子、−L−Qで表される基であることがより好ましく、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基であることが特に好ましく、水素原子、炭素数1〜2のアルキル基であることが最も好ましい。該アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基等が挙げられる。該アルキル基は、適当な置換基を有していてもよい。該置換基としては、ハロゲン原子、アリール基、ヘテロ環基、アルコキシル基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アシル基、ヒドロキシル基、アシルオキシ基、アミノ基、アルコキシカルボニル基、アシルアミノ基、オキシカルボニル基、カルバモイル基、スルホニル基、スルファモイル基、スルホンアミド基、スルホリル基、カルボキシル基などが挙げられる。なお、アルキル基の炭素数は、置換基の炭素原子を含まない。以下、他の基の炭素数についても同様である。
Lは、上記連結基群から選ばれる2価の連結基、又はそれらの2つ以上を組み合わせて形成される2価の連結基を表す。上記連結基群中、−NRb−のRbは、水素原子、アルキル基、アリール基又はアラルキル基を表し、好ましくは水素原子又はアルキル基である。又、−PO(ORf)−のRfはアルキル基、アリール基又はアラルキル基を表し、好ましくはアルキル基である。Rb及びRfがアルキル基、アリール基又はアラルキル基を表す場合の炭素数は「置換基群」で説明したものと同じである。Lとしては、単結合、−O−、−CO−、−NRb−、−S−、−SO2−、アルキレン基又はアリーレン基を含むことが好ましく、−CO−、−O−、−NRb−、アルキレン基又はアリーレン基を含んでいる
ことが特に好ましい。Lがアルキレン基を含む場合、アルキレン基の炭素数は好ましくは1〜10、より好ましくは1〜8、さらに好ましくは1〜6である。特に好ましいアルキレン基の具体例として、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラブチレン基、ヘキサメチレン基等が挙げられる。Lが、アリーレン基を含む場合、アリーレン基の炭素数は、好ましくは6〜24、より好ましくは6〜18、さらに好ましくは6〜12である。特に好ましいアリーレン基の具体例として、フェニレン基、ナフタレン基等が挙げられる。Lが、アルキレン基とアリーレン基を組み合わせて得られる2価の連結基(即ちアラルキレン基)を含む場合、アラルキレン基の炭素数は、好ましくは7〜34、より好ましくは7〜26、さらに好ましくは7〜16である。特に好ましいアラルキレン基の具体例として、フェニレンメチレン基、フェニレンエチレン基、メチレンフェニレン基等が挙げられる。Lとして挙げられた基は、適当な置換基を有していてもよい。このような置換基としては先にR1、R2、R33における置換基として挙げた置換基と同様なものを挙げることができる。
以下にLの具体的構造を例示する。
Figure 0005525330
Figure 0005525330
前記式(II)中、Qはカルボキシル基、カルボキシル基の塩(例えば、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩(例えばアンモニウム、テトラメチルアンモニウム、トリメチル−2−ヒドロキシエチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、トリメチルベンジルアンモニウム、ジメチルフェニルアンモニウムなど)、ピリジニウム塩など)、スルホ基、スルホ基の塩(塩を形成するカチオンの例は上記カルボキシル基に記載のものと同じ)、ホスホノキシ基、ホスホノキシ基の塩(塩を形成するカチオンの例は上記カルボキシル基に記載のものと同じ)を表す。より好ましくはカルボキシル基、スルホ基、ホスホ基であり、特に好ましいのはカルボキシル基又はスルホ基である。
前記フッ素系ポリマーは、前記式(II)で表される繰り返し単位を1種含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。又、前記フッ素系ポリマーは、上記各繰り返し単位以外の他の繰り返し単位を1種又は2種以上有していてもよい。前記他の繰り返し単位については特に制限されず、通常のラジカル重合反応可能なモノマーから誘導される繰り返し単位が好ましい例として挙げられる。以下、他の繰り返し単位を誘導するモノマーの具体例を挙げる。前記フッ素系ポリマーは、下記モノマー群から選ばれる1種又は2種以上のモノマーから誘導される繰り返し単位を含有していてもよい。
モノマー群
(1)アルケン類
エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブテン、1−ヘキセン、1−ドデセン、1−オクタデセン、1−エイコセン、ヘキサフルオロプロペン、フッ化ビニリデン、クロロトリフルオロエチレン、3,3,3−トリフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレン、塩化ビニル、塩化ビニリデンなど;
(2)ジエン類
1,3−ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン、2−エチル−1,3−ブタジエン、2−n−プロピル−1,3−ブタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ペンタジエン、1−フェニル−1,3−ブタジエン、1−α−ナフチル−1,3−ブタジエン、1−β−ナフチル−1,3−ブタジエン、2−クロロ−1,3−ブタジエン、1−ブロモ−1,3−ブタジエン、1−クロロブタジエン、2−フルオロ−1,3−ブタジエン、2,3−ジクロロ−1,3−ブタジエン、1,1,2−トリクロロ−1,3−ブタジエン及び2−シアノ−1,3−ブタジエン、1,4−ジビニルシクロヘキサンなど;
(3)α,β−不飽和カルボン酸の誘導体
(3a)アルキルアクリレート類
メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、sec−ブチルアクリレート、tert−ブチルアクリレート、アミルアクリレート、n−ヘキシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、2−エチルへキシルアクリレート、n−オクチルアクリレート、tert−オクチルアクリレート、ドデシルアクリレート、フェニルアクリレート、ベンジルアクリレート、2−クロロエチルアクリレート、2−ブロモエチルアクリレート、4−クロロブチルアクリレート、2−シアノエチルアクリレート、2−アセトキシエチルアクリレート、メトキシベンジルアクリレート、2−クロロシクロヘキシルアクリレート、フルフリルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、2−メトキシエチルアクリレート、ω−メトキシポリエチレングリコールアクリレート(ポリオキシエチレンの付加モル数:n=2ないし100のもの)、3−メトキシブチルアクリレート、2−エトキシエチルアクリレート、2−ブトキシエチルアクリレート、2−(2−ブトキシエトキシ)エチルアクリレート、1−ブロモ−2−メトキシエチルアクリレート、1,1−ジクロロ−2−エトキシエチルアクリレート、グリシジルアクリレートなど);
(3b)アルキルメタクリレート類
メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、sec−ブチルメタクリレート、tert−ブチルメタクリレート、アミルメタクリレート、n−ヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、n−オクチルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、フェニルメタクリレート、アリルメタクリレート、フルフリルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、クレジルメタクリレート、ナフチルメタクリレート、2−メトキシエチルメタクリレート、3−メトキシブチルメタクリレート、ω−メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(ポリオキシエチレンの付加モル数:n=2ないし100のもの)、2−アセトキシエチルメタクリレート、2−エトキシエチルメタクリレート、2−ブトキシエチルメタクリレート、2−(2−ブトキシエトキシ)エチルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、3−トリメトキシシリルプロピルメタクリレート、アリルメタクリレート、2−イソシアナトエチルメタクリレートなど;
(3c)不飽和多価カルボン酸のジエステル類
マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジブチル、イタコン酸ジメチル、タコン酸ジブチル、クロトン酸ジブチル、クロトン酸ジヘキシル、フマル酸ジエチル、フマル酸ジメチルなど;
(3d)α、β−不飽和カルボン酸のアミド類
N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N−n−プロピルアクリルアミド、N−tertブチルアクリルアミド、N−tertオクチルメタクリルアミド、N−シクロヘキシルアクリルアミド、N−フェニルアクリルアミド、N−(2−アセトアセトキシエチル)アクリルアミド、N−ベンジルアクリルアミド、N−アクリロイルモルフォリン、ジアセトンアクリルアミド、N−メチルマレイミドなど;
(4)不飽和ニトリル類
アクリロニトリル、メタクリロニトリルなど;
(5)スチレン及びその誘導体
スチレン、ビニルトルエン、エチルスチレン、p−tertブチルスチレン、p−ビニル安息香酸メチル、α−メチルスチレン、p−クロロメチルスチレン、ビニルナフタレン、p−メトキシスチレン、p−ヒドロキシメチルスチレン、p−アセトキシスチレンなど;
(6)ビニルエステル類
酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、イソ酪酸ビニル、安息香酸ビニル、サリチル酸ビニル、クロロ酢酸ビニル、メトキシ酢酸ビニル、フェニル酢酸ビニルなど;
(7)ビニルエーテル類
メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、tert−ブチルビニルエーテル、n−ペンチルビニルエーテル、n−ヘキシルビニルエーテル、n−オクチルビニルエーテル、n−ドデシルビニルエーテル、n−エイコシルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、フルオロブチルビニルエーテル、フルオロブトキシエチルビニルエーテルなど;及び
(8)その他の重合性単量体
N−ビニルピロリドン、メチルビニルケトン、フェニルビニルケトン、メトキシエチルビニルケトン、2−ビニルオキサゾリン、2−イソプロペニルオキサゾリンなど。
前記フッ素系ポリマー中、フルオロ脂肪族基含有モノマーの量は、該ポリマーの構成モノマー総量の5質量%以上であるのが好ましく、10質量%以上であるのがより好ましく、30質量%以上であるのがさらに好ましい。前記フッ素系ポリマーにおいて、前記式(II)で表される繰り返し単位の量は、該フッ素ポリマーの構成モノマー総量の0.5質量%以上であるのが好ましく、1〜20質量%であるのがより好ましく、1〜10質量%であるのがさらに好ましい。上記の質量百分率は使用するモノマーの分子量により好ましい範囲の数値が変動し易いため、ポリマーの単位質量当たりの官能基モル数で表す方が、式(II)で表される繰り返し単位の含有量を正確に規定できる。該表記を用いた場合、前記フッ素系ポリマー中に含有される親水性基(式(II)中のQ)の好ましい量は、0.1mmol/g〜10mmol/gであり、より好ましい量は0.2mmol/g〜8mmol/gである。
前記フッ素系ポリマーの質量平均分子量は1,000,000以下が好ましく、500,000以下がより好ましく、100,000以下がさらに好ましい。質量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)を用いて、ポリスチレン(PS)換算の値として測定可能である。
前記フッ素系ポリマーの重合方法は、特に限定されるものではないが、例えば、ビニル基を利用したカチオン重合やラジカル重合、又は、アニオン重合等の重合方法を採ることができ、これらの中ではラジカル重合が汎用に利用できる点で特に好ましい。ラジカル重合の重合開始剤としては、ラジカル熱重合開始剤や、ラジカル光重合開始剤等の公知の化合物を使用することができるが、特に、ラジカル熱重合開始剤を使用することが好ましい。ここで、ラジカル熱重合開始剤は、分解温度以上に加熱することにより、ラジカルを発生させる化合物である。このようなラジカル熱重合開始剤としては、例えば、ジアシルパーオキサイド(アセチルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド等)、ケトンパーオキサイド(メチルエチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド等)、ハイドロパーオキサイド(過酸化水素、tert−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド等)、ジアルキルパーオキサイド(ジ−tert−ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ジラウロイルパーオキサイド等)、パーオキシエステル類(tert−ブチルパーオキシアセテート、tert−ブチルパーオキシピバレート等)、アゾ系化合物(アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスイソバレロニトリル等)、過硫酸塩類(過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム等)が挙げられる。このようなラジカル熱重合開始剤は、1種を単独で使用することもできるし、2種以上を組み合わせて使用することもできる。
ラジカル重合方法は、特に制限されるものでなく、乳化重合法、懸濁重合法、塊状重合法、溶液重合法等を採ることが可能である。典型的なラジカル重合方法である溶液重合についてさらに具体的に説明する。他の重合方法についても概要は同等であり、その詳細は例えば「高分子科学実験法」高分子学会編(東京化学同人、1981年)等に記載されている。
溶液重合を行うためには有機溶媒を使用する。これらの有機溶媒は本発明の目的、効果を損なわない範囲で任意に選択可能である。これらの有機溶媒は通常、大気圧下での沸点が50〜200℃の範囲内の値を有する有機化合物であり、各構成成分を均一に溶解させる有機化合物が好ましい。好ましい有機溶媒の例を示すと、イソプロパノール、ブタノール等のアルコール類;ジブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミル、γ−ブチロラクトン等のエステル類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;が挙げられる。なお、これらの有機溶媒は、1種単独又は2種以上を組み合わせて用いることが可能である。さらに、モノマーや生成するポリマーの溶解性の観点から上記有機溶媒に水を併用した水混合有機溶媒も適用可能である。
又、溶液重合条件も特に制限されるものではないが、例えば、50〜200℃の温度範囲内で、10分〜30時間加熱することが好ましい。さらに、発生したラジカルが失活しないように、溶液重合中はもちろんのこと、溶液重合開始前にも、不活性ガスパージを行うことが好ましい。不活性ガスとしては通常窒素ガスが好適に用いられる。
前記フッ素系ポリマーを好ましい分子量範囲で得るためには、連鎖移動剤を用いたラジカル重合法が特に有効である。連鎖移動剤としてはメルカプタン類(例えば、オクチルメルカプタン、デシルメルカプタン、ドデシルメルカプタン、tert−ドデシルメルカプタン、オクタデシルメルカプタン、チオフェノール、p−ノニルチオフェノール等)、ポリハロゲン化アルキル類(例えば、四塩化炭素、クロロホルム、1,1,1−トリクロロエタン、1,1,1−トリブロモオクタンなど)、低活性モノマー類(α−メチルスチレン、α−メチルスチレンダイマー等)のいずれも用いることができるが、好ましくは炭素数4〜16のメルカプタン類である。これらの連鎖移動剤の使用量は、連鎖移動剤の活性やモノマーの組み合わせ、重合条件などにより著しく影響され精密な制御が必要であるが、使用するモノマーの全モル数に対して好ましくは0.01モル%〜50モル%程度であり、より好ましくは0.05モル%〜30モル%、さらに好ましくは0.08モル%〜25モル%である。これらの連鎖移動剤は、重合過程において重合度を制御するべき対象のモノマーと同時に系内に存在させればよく、その添加方法については特に問わない。モノマーに溶解して添加してもよいし、モノマーと別途に添加することも可能である。
なお、前記フッ素系ポリマーは、液晶性化合物の配向状態を固定化するために置換基として重合性基を有するものも好ましい。
以下に、フッ素系ポリマーとして本発明に好ましく用いられる具体例を示すが、これらの具体例に限定されるものではない。ここで式中の数値(a、b、c、d等の数値)は、それぞれ各モノマーの組成比を示す質量百分率であり、MwはGPCにより測定されたPEO換算の質量平均分子量である。
Figure 0005525330
Figure 0005525330
Figure 0005525330
Figure 0005525330
Figure 0005525330
前記フッ素系ポリマーは、公知慣用の方法で製造することができる。例えば先にあげたフッ素系モノマー、水素結合性基を有するモノマー等を含む有機溶媒中に、汎用のラジカル重合開始剤を添加し、重合させることにより製造できる。又、場合によりその他の付加重合性不飽和化合物を、さらに添加して上記と同じ方法にて製造することができる。各モノマーの重合性に応じ、反応容器にモノマーと開始剤を滴下しながら重合する滴下重合法なども、均一な組成のポリマーを得るために有効である。
前記液晶性組成物(塗布液として調製した場合は、溶媒を除いた液晶性組成物)中における前記フッ素系ポリマーの含有量の好ましい範囲は、その用途によって異なるが、液晶性組成物(塗布液である場合は溶媒を除いた組成物)中、0.005〜8質量%であるのが好ましく、0.01〜5質量%であるのがより好ましく、0.05〜1質量%であるのがさらに好ましい。前記フッ素系ポリマーの添加量が0.005質量%未満では効果が不十分であり、又8質量%より多くなると、塗膜の乾燥が十分に行われなくなったり、光学フィルムとしての性能(例えばレタデーションの均一性等)に悪影響を及ぼす。
次に、同様に空気界面側配向剤として使用可能な、式(III)で表される含フッ素化合物について説明する。
式(III)
(R0mo−L0−(W)no
式中、R0はアルキル基、末端にCF3基を有するアルキル基、又は末端にCF2H基を有するアルキル基を表し、moは1以上の整数を表す。複数個のR0は同一でも異なっていてもよいが、少なくとも一つは末端にCF3基又はCF2H基を有するアルキル基を表す。L0は(mo+no)価の連結基を表し、Wはカルボキシル基(−COOH)もしくはその塩、スルホ基(−SO3H)もしくはその塩、又はホスホノキシ{−OP(=O)(OH)2}もしくはその塩を表し、noは1以上の整数を表す。
式(III)中、R0は含フッ素化合物の疎水性基として機能する。R0で表されるアルキル基は置換もしくは無置換のアルキル基であり、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよく、好ましくは炭素数1〜20のアルキル基であり、更に好ましくは4〜16のアルキル基であり、特に好ましくは6〜16のアルキル基である。該置換基としては後述の置換基群Dとして例示する置換基のいずれかを適用できる。
0で表される末端にCF3基を有するアルキル基は、好ましくは炭素数1〜20であり、より好ましくは4〜16であり、さらに好ましくは4〜8である。前記末端にCF3基を有するアルキル基は、アルキル基に含まれる水素原子の一部又は全部がフッ素原子で置換されたアルキル基である。アルキル基中の水素原子の50%以上がフッ素原子で置換されているのが好ましく、60%以上が置換されているのがより好ましく、70%以上を置換されているのが特に好ましい。残りの水素原子は、さらに後述の置換基群Dとして例示された置換基によって置換されていてもよい。R0で表される末端にCF2H基を有するアルキル基は、好ましくは炭素数1〜20であり、より好ましくは4〜16であり、さらに好ましくは4〜8である。前記末端にCF2H基を有するアルキル基は、アルキル基に含まれる水素原子の一部又は全部がフッ素原子で置換されたアルキル基である。アルキル基中の水素原子の50%以上がフッ素原子で置換されていることが好ましく、60%以上が置換されていることがより好ましく、70%以上を置換されていることがさらに好ましい。残りの水素原子は、さらに後述の置換基群Dとして例示する置換基によって置換されていてもよい。R0で表される末端にCF3基を有するアルキル基、又は末端にCF2H基を有するアルキル基の例を以下に示す。
R1:n−C817
R2:n−C613
R3:n−C49
R4:n−C817−(CH22
R5:n−C613−(CH22
R6:n−C49−(CH22
R7:H−(CF28
R8:H−(CF26
R9:H−(CF24
R10:H−(CF28−(CH2)−
R11:H−(CF26−(CH2)−
R12:H−(CF24−(CH2)−
式(III)において、L0で表される(mo+no)価の連結基は、アルキレン基、アルケニレン基、芳香族基、ヘテロ環基、−CO−、−NRd−(Rdは炭素原子数が1〜5のアルキル基又は水素原子)、−O−、−S−、−SO−、−SO2−からなる群より選ばれる基を少なくとも2つ組み合わせた連結基であることが好ましい。
式(III)において、Wはカルボキシル基(−COOH)もしくはその塩、スルホ基(−SO3H)もしくはその塩、又はホスホノキシ基{−OP(=O)(OH)2}もしくはその塩を表す。Wの好ましい範囲は、式(II)におけるQと同一である。
前記式 (III)で表される含フッ素化合物の中でも、下記式(III)−a又は式(III)−bで表される化合物が好ましい。
Figure 0005525330
式(III)−a中、R4及びR5は各々アルキル基、末端にCF3基を有するアルキル基、又は末端にCF2H基を有するアルキル基を表すが、R4及びR5が同時にアルキル基であることはない。W1及びW2は各々水素原子、カルボキシル基(−COOH)もしくはその塩、スルホ基(−SO3H)もしくはその塩、ホスホノキシ{−OP(=O)(OH)2}もしくはその塩、又は置換基としてカルボキシル基、スルホ基もしくはホスホノキシ基を有する、アルキル基、アルコキシ基もしくはアルキルアミノ基を表すが、W1及びW2が同時に水素原子であることはない。
式(III)−b
(R6−L2−)m2(Ar1)−W3
式(III)−b中、R6はアルキル基、末端にCF3基を有するアルキル基、又は末端にCF2H基を有するアルキル基を表し、m2は1以上の整数を表し、複数個のR6は同一でも異なっていてもよいが、少なくとも一つは末端にCF3基又はCF2H基を有するアルキル基を表す。L2は、アルキレン基、芳香族基、−CO−、−NR’−(R’は炭素原子数が1〜5のアルキル基又は水素原子)、−O−、−S−、−SO−、−SO2−及びそれらの組み合わせからなる群より選ばれる2価の連結基を表し、複数個のL2は同一でも異なっていてもよい。Ar1は芳香族炭化水素環又は芳香族ヘテロ環を表し、W3はカルボキシル基(−COOH)もしくはその塩、スルホ基(−SO3H)もしくはその塩、ホスホノキシ基{−OP(=O)(OH)2}もしくはその塩、又は置換基としてカルボキシル基、スルホ基もしくはホスホノキシ基を有する、アルキル基、アルコキシ基もしくはアルキルアミノ基を表す。
まず、前記式(III)−aについて説明する。
4及びR5は前記式(III)におけるR0と同義であり、その好ましい範囲も同一である。W1及びW2で表されるカルボキシル基(−COOH)もしくはその塩、スルホ基(−SO3H)もしくはその塩、ホスホノキシ基{−OP(=O)(OH)2}もしくはその塩は前記式(III)におけるWと同義でありその好ましい範囲も同一である。W1及びW2で表される置換基としてカルボキシル基、スルホ基、ホスホノキシ基を有するアルキル基は、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよく、好ましくは炭素数1〜20のアルキル基であり、更に好ましくは1〜8のアルキル基であり、特に好ましくは1〜3のアルキル基である。前記置換基としてカルボキシル基、スルホ基、ホスホノキシ基を有するアルキル基は、少なくとも一つのカルボキシル基、スルホ基、又はホスホノキシ基を有していればよく、カルボキシル基、スルホ基、ホスホノキシ基としては、前記式(III)中のWが表すカルボキシル基、スルホ基、ホスホノキシ基と同義であり好ましい範囲も同一である。前記置換基としてカルボキシル基、スルホ基、ホスホノキシ基を有するアルキル基は、これ以外の置換基によって置換されていてもよく、該置換基としては後述の置換基群Dとして例示する置換基のいずれかを適用できる。W1及びW2で表される置換基としてカルボキシル基、スルホ基、ホスホノキシ基を有するアルコキシ基は、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよく、好ましくは炭素数1〜20のアルコキシ基であり、更に好ましくは1〜8のアルコキシ基であり、特に好ましくは1〜4のアルコキシ基である。前記置換基としてカルボキシル基、スルホ基、ホスホノキシ基を有するアルコキシ基は、少なくとも一つのカルボキシル基、スルホ基、又はホスホノキシ基を有していればよく、カルボキシル基、スルホ基、ホスホノキシ基としては、前記式(III)中のWが表すカルボキシル基、スルホ基、ホスホノキシ基と同義であり好ましい範囲も同一である。前記カルボキシル基、スルホ基、ホスホノキシ基を有するアルコキシ基は、これ以外の置換基によって置換されていてもよく、該置換基としては後述の置換基群Dとして例示する置換基のいずれかを適用できる。W1及びW2で表される置換基としてカルボキシル基、スルホ基、ホスホノキシ基を有するアルキルアミノ基は、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよく、好ましくは炭素数1〜20のアルキルアミノ基であり、より好ましくは1〜8のアルキルアミノ基であり、さらに好ましくは1〜4のアルキルアミノ基である。前記カルボキシル基、スルホ基、ホスホノキシ基を有するアルキルアミノ基は、少なくとも一つのカルボキシル基、スルホ基、又はホスホノキシ基を有していればよく、カルボキシル基、スルホ基、ホスホノキシ基としては、前記式(III)中のWが表すカルボキシル基、スルホ基、ホスホノキシ基と同義であり好ましい範囲も同一である。前記カルボキシル基、スルホ基、ホスホノキシ基を有するアルキルアミノ基は、これ以外の置換基によって置換されていてもよく、該置換基としては後述の置換基群Dとして例示する置換基のいずれかを適用できる。
1及びW2は、特に好ましくはそれぞれ水素原子又は(CH2nSO3M(nは0又は1を表す。)である。Mはカチオンを表すが、分子内で荷電が0になる場合は、Mはなくてもよい。Mで表されるカチオンとしては、例えばプロトニウムイオン、アルカリ金属イオン(リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオンなど)、アルカリ土類金属イオン(バリウムイオン、カルシウムイオンなど)、アンモニウムイオンなどが好ましく適用される。このうち、特に好ましくはプロトニウムイオン、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、アンモニウムイオンである。
次に、前記式(III)−bについて説明する。
6は前記式(III)−bにおけるR0と同義であり、その好ましい範囲も同一である。L2は、好ましくは炭素数1〜12のアルキレン基、炭素数6〜12の芳香族基、−CO−、−NR−、−O−、−S−、−SO−、−SO2−及びそれらの組み合わせからなる総炭素数0〜40の連結基を表し、より好ましくは炭素数1〜8のアルキレン基、フェニル基、−CO−、−NR−、−O−、−S−、−SO2−及びそれらの組み合わせからなる総炭素数0〜20の連結基を表す。Ar1は、好ましくは炭素数6〜12の芳香族炭化水素環を表し、より好ましくはベンゼン環又はナフタレン環を表す。W3で表されるカルボキシル基(−COOH)もしくはその塩、スルホ基(−SO3H)もしくはその塩、ホスホノキシ基{−OP(=O)(OH)2}もしくはその塩、又は置換基としてカルボキシル基、スルホ基もしくはホスホノキシ基を有するアルキル基、アルコキシ基、又はアルキルアミノ基は、前記式(III)−aにおけるW1及びW2で表されるカルボキシル基(−COOH)もしくはその塩、スルホ基(−SO3H)もしくはその塩、ホスホノキシ{−OP(=O)(OH)2}もしくはその塩、又は置換基としてカルボキシル基、スルホ基もしくはホスホノキシ基を有するアルキル基、アルコキシ基、又はアルキルアミノ基と同義でありその好ましい範囲も同一である。
3は、好ましくはカルボキシル基(−COOH)もしくはその塩、スルホ基(−SO3H)もしくはその塩、又は置換基としてカルボキシル基(−COOH)もしくはその塩又はスルホ基(−SO3H)もしくはその塩を有するアルキルアミノ基であり、特に好ましくはSO3M又はCO2Mである。Mはカチオンを表すが、分子内で荷電が0になる場合は、Mはなくてもよい。Mで表されるカチオンとしては、例えばプロトニウムイオン、アルカリ金属イオン(リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオンなど)、アルカリ土類金属イオン(バリウムイオン、カルシウムイオンなど)、アンモニウムイオンなどが好ましく適用される。このうち、特に好ましくはプロトニウムイオン、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、アンモニウムイオンである。
本明細書において、置換基群Dには、アルキル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜12、特に好ましくは炭素数1〜8のアルキル基であり、例えば、メチル基、エチル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、n−オクチル基、n−デシル基、n−ヘキサデシル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などが挙げられる)、アルケニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜12、さらに好ましくは炭素数2〜8のアルケニル基であり、例えば、ビニル基、アリル基、2−ブテニル基、3−ペンテニル基などが挙げられる)、アルキニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜12、さらに好ましくは炭素数2〜8のアルキニル基であり、例えば、プロパルギル基、3−ペンチニル基などが挙げられる)、アリール基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、さらに好ましくは炭素数6〜12のアリール基であり、例えば、フェニル基、p−メチルフェニル基、ナフチル基などが挙げられる)、置換もしくは無置換のアミノ基(好ましくは炭素数0〜20、より好ましくは炭素数0〜10、さらに好ましくは炭素数0〜6のアミノ基であり、例えば、無置換アミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジベンジルアミノ基などが挙げられる)、
アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜12、さらに好ましくは炭素数1〜8のアルコキシ基であり、例えば、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基などが挙げられる)、アリールオキシ基(好ましくは炭素数6〜20、より好ましくは炭素数6〜16、さらに好ましくは炭素数6〜12のアリールオキシ基であり、例えば、フェニルオキシ基、2−ナフチルオキシ基などが挙げられる)、アシル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、さらに好ましくは炭素数1〜12のアシル基であり、例えば、アセチル基、ベンゾイル基、ホルミル基、ピバロイル基などが挙げられる)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、さらに好ましくは炭素数2〜12のアルコキシカルボニル基であり、例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基などが挙げられる)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは炭素数7〜20、より好ましくは炭素数7〜16、さらに好ましくは炭素数7〜10のアリールオキシカルボニル基であり、例えば、フェニルオキシカルボニル基などが挙げられる)、アシルオキシ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、さらに好ましくは炭素数2〜10のアシルオキシ基であり、例えば、アセトキシ基、ベンゾイルオキシ基などが挙げられる)。
アシルアミノ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、さらに好ましくは炭素数2〜10のアシルアミノ基であり、例えばアセチルアミノ基、ベンゾイルアミノ基などが挙げられる)、アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、さらに好ましくは炭素数2〜12のアルコキシカルボニルアミノ基であり、例えば、メトキシカルボニルアミノ基などが挙げられる)、アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数7〜20、より好ましくは炭素数7〜16、さらに好ましくは炭素数7〜12のアリールオキシカルボニルアミノ基であり、例えば、フェニルオキシカルボニルアミノ基などが挙げられる)、スルホニルアミノ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、さらに好ましくは炭素数1〜12のスルホニルアミノ基であり、例えば、メタンスルホニルアミノ基、ベンゼンスルホニルアミノ基などが挙げられる)、スルファモイル基(好ましくは炭素数0〜20、より好ましくは炭素数0〜16、さらに好ましくは炭素数0〜12のスルファモイル基であり、例えば、スルファモイル基、メチルスルファモイル基、ジメチルスルファモイル基、フェニルスルファモイル基などが挙げられる)、カルバモイル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、さらに好ましくは炭素数1〜12のカルバモイル基であり、例えば、無置換のカルバモイル基、メチルカルバモイル基、ジエチルカルバモイル基、フェニルカルバモイル基などが挙げられる)、
アルキルチオ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、さらに好ましくは炭素数1〜12のアルキルチオ基であり、例えば、メチルチオ基、エチルチオ基などが挙げられる)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6〜20、より好ましくは炭素数6〜16、さらに好ましくは炭素数6〜12のアリールチオ基であり、例えば、フェニルチオ基などが挙げられる)、スルホニル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、さらに好ましくは炭素数1〜12のスルホニル基であり、例えば、メシル基、トシル基などが挙げられる)、スルフィニル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、さらに好ましくは炭素数1〜12のスルフィニル基であり、例えば、メタンスルフィニル基、ベンゼンスルフィニル基などが挙げられる)、ウレイド基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、さらに好ましくは炭素数1〜12のウレイド基であり、例えば、無置換のウレイド基、メチルウレイド基、フェニルウレイド基などが挙げられる)、リン酸アミド基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、さらに好ましくは炭素数1〜12のリン酸アミド基であり、例えば、ジエチルリン酸アミド基、フェニルリン酸アミド基などが挙げられる)、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、ヘテロ環基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは1〜12のヘテロ環基であり、例えば、窒素原子、酸素原子、硫黄原子等のヘテロ原子を有するヘテロ環基であり、例えば、イミダゾリル基、ピリジル基、キノリル基、フリル基、ピペリジル基、モルホリノ基、ベンゾオキサゾリル基、ベンズイミダゾリル基、ベンズチアゾリル基などが挙げられる)、シリル基(好ましくは、炭素数3〜40、より好ましくは炭素数3〜30、さらに好ましくは、炭素数3〜24のシリル基であり、例えば、トリメチルシリル基、トリフェニルシリル基などが挙げられる)が含まれる。これらの置換基はさらにこれらの置換基によって置換されていてもよい。又、置換基が二つ以上有する場合は、同じでも異なってもよい。又、可能な場合には互いに結合して環を形成していてもよい。
なお、前記含フッ素化合物は、液晶性化合物の配向状態を固定化するために置換基として重合性基を有するものも好ましい。
本発明に使用可能な式(III)にて表される含フッ素化合物の具体例を以下に示すが、本発明に用いられる含フッ素化合物はこれらに限定されるものではない。
Figure 0005525330
Figure 0005525330
Figure 0005525330
Figure 0005525330
Figure 0005525330
前記液晶性組成物中における前記含フッ素化合物の含有量の好ましい範囲は、その用途によって異なるが、前記液晶性組成物(塗布液である場合は溶媒を除いた組成物)中、0.005〜8質量%であるのが好ましく、0.01〜5質量%であるのがより好ましく、0.05〜1質量%であるのがさらに好ましい。
前記光学異方性層2は、配向膜を利用して形成するのが好ましい。前記光学異方性層中の液晶化合物の配向膜界面側のチルト角は、光学異方性層を形成する際に利用される配向膜の材料によって制御することができる。
[配向膜]
前記光学異方性層2の形成に利用可能な配向膜の好ましい例は、ポリビニルアルコール系ポリマーの少なくとも1種と、オニウム塩、無機酸を中和して得られる塩、有機酸を中和して得られる塩、又はピリジニウム化合物の少なくとも1種と、を含有する配向膜である。
(オニウム塩)
前記配向膜の材料として使用可能なオニウム塩には、アンモニウム塩(但しNH4+は除く)、ホスホニウム塩等の4級オニウム塩が含まれる。より好ましくは、下記一般式I又はIIで表される化合物である。
まず、一般式Iで表される化合物について説明する。
Figure 0005525330
Maは窒素原子又はリン原子を表し、R11、R12、R13、R14はそれぞれ、脂肪族基、芳香族基又は複素環基を表し、Xa n-はn価のアニオンを表し、nは1〜3の整数を表す。
11、R12、R13及びR14はそれぞれ、脂肪族基、芳香族基又は複素環基を表し、脂肪族基としてはアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アラルキル基が挙げられ、芳香族基としてはアリール基又は複素環基が挙げられる。
(無機酸の塩又は有機酸の塩)
前記配向膜の形成には、無機酸を中和して得られる塩(「無機酸の塩」という場合がある)又は有機酸を中和して得られる塩(「有機酸の塩」という場合がある)を使用することができる。なお、本明細書において、「有機酸」の用語は、酸性をもつ有機化合物全ての総称として用い、カルボン酸のみならず、有機スルホン酸等全ての酸性有機化合物が含まれる。無機酸の塩及び有機酸の塩のカウンターカチオンは、金属イオン等の無機系のものであっても、アルキルアンモニウム塩等の有機系のものであってもよい。
上記無機塩、無機酸の塩又は有機酸の塩としては、好ましくは、MXで表される化合物である。Mは1族〜15族に属する金属のイオン、又は下記式IIIで表されるイオンを表し、Xはアニオンを表す。
Figure 0005525330
上記式III中、R31、R32、R33及びR34はそれぞれ、水素原子、脂肪族基、芳香族基又はへテロ環基を表し、R31、R32、R33及びR34のうち少なくとも1つは水素原子である。
(ピリジニウム化合物)
前記配向膜の形成には、下記式IVで表されるピリジニウム化合物を用いてもよい。
Figure 0005525330
式IVにおいて、L1は、アルキレン基と−O−、−S−、−CO−、−SO2−、−NRa−(但し、Raは炭素原子数が1〜5のアルキル基又は水素原子である)、アルケニレン基、アルキニレン基又はアリーレン基との組み合わせからなる炭素原子数が1〜20の2価の連結基であることが好ましい。
式IVにおいて、R1は、水素原子、無置換のアミノ基又は炭素原子数が1〜20の置換アミノ基である。R1が置換アミノ基である場合、脂肪族基によって置換されていることが好ましい。脂肪族基は、アルキル基、置換アルキル基、アルケニル基、置換アルケニル基、アルキニル基及び置換アルキニル基を含む。また、R1が2置換アミノ基である場合、2つの脂肪族基が互いに結合して含窒素複素環を形成してもよい。このとき形成される含窒素複素環は、5員環又は6員環であることが好ましい。R1は水素原子、無置換のアミノ基又は炭素原子数が1〜20の置換アミノ基である事が好ましく、水素原子、無置換のアミノ基又は炭素原子数が2〜12の置換アミノ基である事が特に好ましく、水素原子、無置換のアミノ基又は炭素原子数が2〜8の置換アミノ基である事が最も好ましい。R1がアミノ基である場合、ピリジニウム環の4位に置換されていることが好ましい。
式IVにおいて、Xはアニオンである。アニオンの例には、ハロゲン陰イオン(例え、フッ素イオン、塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオンなど)、スルホネートイオン(例えば、メタンスルホン酸イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン、メチル硫酸イオン、p−トルエンスルホン酸イオン、p−クロロベンゼンスルホン酸イオン、1,3−ベンゼンジスルホン酸イオン、1,5−ナフタレンジスルホン酸イオン、2,6−ナフタレンジスルホン酸イオンなど)、硫酸イオン、炭酸イオン、硝酸イオン、チオシアン酸イオン、過塩素酸イオン、テトラフルオロほう酸イオン、ピクリン酸イオン、酢酸イオン、ギ酸イオン、トリフルオロ酢酸イオン、リン酸イオン(例えば、ヘキサフルオロリン酸イオン)、水酸イオンなどが挙げられる。Xは、好ましくは、ハロゲン陰イオン、スルホネートイオン、水酸イオンである。
式IVにおいて、Y1は5又は6員環を部分構造として有する炭素数1〜30の2価の連結基である。Y1に含まれる環状部分構造はシクロヘキシル環、芳香族環又は複素環であることが特に好ましい。芳香族環としては、ベンゼン環、インデン環、ナフタレン環、フルオレン環、フェナントレン環、アントラセン環、ビフェニル環、及びピレン環を挙げることが出来る。ベンゼン環、ビフェニル環、及びナフタレン環が特に好ましい。複素環を構成する複素原子としては、窒素原子、酸素原子及び硫黄原子が好ましく、例えば、フラン環、チオフェン環、ピロール環、ピロリン環、ピロリジン環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、チアゾール環、イソチアゾール環、イミダゾール環、イミダゾリン環、イミダゾリジン環、ピラゾール環、ピラゾリン環、ピラゾリジン環、トリアゾール環、フラザン環、テトラゾール環、ピラン環、ジオキサン環、ジチアン環、チイン環、ピリジン環、ピペリジン環、オキサジン環、モルホリン環、チアジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、ピペラジン環及びトリアジン環などを挙げることが出来る。複素環は6員環であることが好ましい。Yで表される5又は6員環を部分構造として有する2価の連結基は置換基を有していてもよい。
式IVにおいて、Zは、ハロゲン置換フェニル、ニトロ置換フェニル、シアノ置換フェニル、炭素原子数が1〜10のアルキル基で置換されたフェニル、炭素原子数が2〜10のアルコキシ基で置換されたフェニル、炭素原子数が1〜12のアルキル基、炭素原子数が2〜20のアルキニル基、炭素原子数が1〜12のアルコキシ基、炭素原子数が2〜13のアルコキシカルボニル基、炭素原子数が7〜26のアリールオキシカルボニル基、炭素原子数が7〜26のアリールカルボニルオキシ基であり、シアノ置換フェニル、ハロゲン置換フェニル、炭素原子数が1〜10のアルキル基で置換されたフェニル、炭素原子数が2〜10のアルコキシ基で置換されたフェニル、炭素原子数が7〜26のアリールオキシカルボニル基又は炭素原子数が7〜26のアリールカルボニルオキシ基が好ましい。
Zは、さらに置換基を有していてもよく、置換基の例には、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、シアノ基、ニトロ基、炭素原子数が1〜16のアルキル基、炭素原子数が1〜16のアルケニル基、炭素原子数が1〜16のアルキニル基、炭素原子数が1〜16のハロゲン置換アルキル基、炭素原子数が1〜16のアルコキシ基、炭素原子数が2〜16のアシル基、炭素原子数が1〜16のアルキルチオ基、炭素原子数が2〜16のアシルオキシ基、炭素原子数が2〜16のアルコキシカルボニル基、カルバモイル基、炭素原子数が2〜16のアルキル置換カルバモイル基及び炭素原子数が2〜16のアシルアミノ基が含まれる。
2.光学異方性層1
光学異方性層1は、波長550nmにおける面内レターデーションが50〜300nm、厚み方向のレターデーションが50〜250nmの光学異方性層である。上記特性を満足する限り、光学異方性層の材料については特に制限はない。光学異方性層1がポリマーフィルムからなると、光学異方性層2の支持体として利用することができ、また偏光子の保護フィルムとしても利用できる。光学異方性層1として利用可能なポリマーフィルムとしては、例えば、セルロースエステル、ポリエステル、ポリカーボネート、シクロオレフィンポリマー、ビニルポリマー、ポリアミドおよびポリイミド等のフィルムを挙げることができる。
これらのポリマーは単独で用いてもよいし、2種類以上のポリマーを併用してもよい。
[セルロースアシレート]
前記光学異方性層1として利用可能なポリマーフィルムの一例は、セルロースアシレートフィルムである。
前記光学異方性層1にセルロースアシレートフィルムを利用する場合、その材料として用いられるセルロースアシレートのアシル置換基は、例えばアセチル基単独からなるセルロースアシレートであっても、複数のアシル置換基を有するセルロースアシレートを含む組成物を用いてもよい。セルロースアシレートは、負の固有複屈折性を付与するために全置換度が2.7〜3.0であるものが好ましい。ここでいう負の固有複屈折とは、ポリマーフィルムを延伸した際に、延伸方向と直交方向に屈折率の最大値を持つ方向を持つ性質をいう。本発明では上記アシル置換度および下記で説明する延伸または結晶化処理工程を経ることにより必要な負の固有複屈折性を達成することが好ましい。
セルロースエステルは、セルロースと酸とのエステルである。前記エステルを構成する酸としては、有機酸が好ましく、カルボン酸がより好ましく、炭素原子数が2〜22の脂肪酸がさらに好ましく、炭素原子数が2〜4の低級脂肪酸が最も好ましい。
前記セルロースアシレートは、セルロースとカルボン酸とのエステルである。前記セルロースアシレートは、セルロースを構成するグルコース単位の2位、3位および6位に存在するヒドロキシル基の水素原子の全部または一部が、アシル基で置換されている。前記アシル基の例としては、例えば、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、ピバロイル基、ヘプタノイル基、ヘキサノイル基、オクタノイル基、デカノイル基、ドデカノイル基、トリデカノイル基、テトラデカノイル基、ヘキサデカノイル基、オクタデカノイル基、シクロヘキサンカルボニル基、オレオイル基、ベンゾイル基、ナフチルカルボニル基、および、シンナモイル基が挙げられる。前記アシル基としては、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、ドデカノイル基、オクタデカノイル基、ピバロイル基、オレオイル基、ベンゾイル基、ナフチルカルボニル基、シンナモイル基が好ましく、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基が最も好ましい。
セルロースエステルは、セルロースと複数の酸とのエステルであってもよい。また、セルロースアシレートは、複数のアシル基で置換されていてもよい。
セルロースアシレートのセルロースの水酸基に置換されているアセチル基(炭素数2)の置換度をSAとし、セルロースの水酸基に置換されている炭素数3以上のアシル基の置換度をSBとしたとき、SAおよびSBを調整することにより、セルロースアシレートフィルムのReの発現性、レターデーションの湿度依存性の調整を行うことができる。また、Tcも調整することができ、これにより、高揮発結晶化処理温度を調整することができる。なお、レターデーションの湿度依存性とは、湿度による可逆的なレターデーションの変化である。
セルロースアシレートフィルムに求める光学特性により、適宜、SA+SBを調整することとなるが、好ましくは2.70≦SA+SB≦3.00、より好ましくは2.88≦SA+SB≦3.00であり、さらに好ましくは2.89≦SA+SB≦2.99であり、さらにより好ましくは2.90≦SA+SB≦2.98であり、特に好ましくは2.92≦SA+SB≦2.97である。SA+SBを大きくすることにより、高揮発結晶化処理後に得られるReを大きく、Tcをより低くすることができ、レターデーションの湿度依存性も改善することができる。Tcを低く設定することにより、高揮発結晶化処理温度を比較的低く設定することが可能となる。
また、SBを調整することにより、セルロースアシレートフィルムのレターデーションの湿度依存性を調整することができる。SBを大きくすることにより、レターデーションの湿度依存性を低減させることができ、融点が下がる。レターデーションの湿度依存性および融点の低下のバランスを考慮すると、SBの範囲は、好ましくは0<SB≦3.0、より好ましくは0<SB≦1.0であり、特に好ましくは、SB=0である。なお、セルロースの水酸基がすべて置換されているとき、上記の置換度は3となる。
セルロースアシレートは公知の方法により合成することができる。
例えば、セルロースアシレートの合成方法について、基本的な原理は、右田伸彦他、木材化学180〜190頁(共立出版、1968年)に記載されている。セルロースアシレートの代表的な合成方法としては、カルボン酸無水物−カルボン酸−硫酸触媒による液相アシル化法が挙げられる。具体的には、まず、綿花リンタや木材パルプ等のセルロース原料を適当量の酢酸などのカルボン酸で前処理した後、予め冷却したアシル化混液に投入してエステル化し、完全セルロースアシレート(2位、3位および6位のアシル置換度の合計が、ほぼ3.00)を合成する。前記アシル化混液は、一般に溶媒としてのカルボン酸、エステル化剤としてのカルボン酸無水物および触媒としての硫酸を含む。また、前記カルボン酸無水物は、これと反応するセルロースおよび系内に存在する水分の合計よりも、化学量論的に過剰量で使用することが普通である。
前記光学異方性層1として利用するポリマーフィルムは、ポリマーや各種添加剤を含有するポリマー溶液から溶液流延製膜方法によって作製することができる。
また、ポリマーの融点、もしくはポリマーと各種添加剤との混合物の融点が、これらの分解温度よりも低くかつ後述の延伸温度よりも高い場合には、溶融製膜法によって製膜することで作製することもできる。溶融製膜法については、特開2000−352620号公報などに記載がある。
セルロースアシレートフィルムを用いる場合に好適に用いることのできる溶媒や可塑剤については、特開2001−151901号公報に記載がある。また、赤外吸収剤については、特開2001−194522号公報に記載がある。添加剤を添加する時期は、添加剤の種類に応じて適宜決定することができる。
前記ポリマー溶液の調製は、例えば、特開昭58−127737号公報、同61−106628号公報、特開平2−276830号公報、同4−259511号公報、同5−163301号公報、同9−95544号公報、同10−45950号公報、同10−95854号公報、同11−71463号公報、同11−302388号公報、同11−322946号公報、同11−322947号公報、同11−323017号公報、特開2000−53784号公報、同2000−273184号公報、同2000−273239号公報に記載されている調製方法に準じて行うことができる。具体的には、ポリマーと溶媒とを混合攪拌し膨潤させ、場合により冷却や加熱等を実施して溶解させた後、これをろ過してポリマー溶液を得る。
前記ポリマーフィルムは、種々の溶液流延製膜方法に従い、種々の溶液流延製膜装置を用いて製造できる。乾燥処理を経て得られるフィルム中の残留溶剤量は0〜2質量%が好ましく、より好ましくは0〜1質量%である。得られたフィルムは、そのまま延伸ゾーンや熱処理ゾーンへ搬送してもよいし、フィルムを巻き取ってからオフラインで延伸や熱処理を実施してもよい。
(延伸)
前記光学異方性層1に要求される特性を満足するポリマーフィルムを得るために、製膜後に延伸処理を施してもよい。
延伸処理は、例えば、出口側の周速を速くしたフィルムを搬送方向に保持する2つ以上の装置(例えば、ニップロールやサクションドラム)間で搬送方向に実施する縦延伸でもよいが、好ましくは延伸方向は搬送方向と直交方向に広げて実施する横延伸であり、例えば、フィルムの両端をテンタークリップで把持して加熱ゾーンを有する装置内で実施されるテンター延伸であることがより好ましい。延伸倍率はフィルムに要求するレターデーションに応じて適宜設定することができ、1〜500%が好ましく、3〜400%がより好ましく、5〜300%がさらに好ましく、10〜100%が特に好ましい。これらの延伸は1段で実施しても、多段で実施してもよい。なお、ここでいう「延伸倍率(%)」とは、以下の式を用いて求めたものを意味する。
延伸倍率(%)=100×{(延伸後の長さ)−(延伸前の長さ)}/延伸前の長さ
前記延伸における延伸速度は10〜10000%/分が好ましく、より好ましくは20〜1000%/分であり、さらに好ましくは30〜800%/分である。
(熱処理)
前記光学異方性層1に要求される特性を満足するポリマーフィルムを製造するために、前記延伸処理に加え、製膜されたポリマーフィルムを熱処理することが好ましい。熱処理は、延伸処理の前に実施されることが好ましく、また熱処理時に同時に延伸処理を実施することもできる。熱処理後に一旦フィルムを冷却し、さらに延伸処理を行うのが好ましい。
熱処理温度は、好ましくは(Tg+60)℃以上であり、より好ましくは(Tg+60)〜(Tg+180)℃であり、さらにより好ましくは(Tg+65)〜(Tg+150)℃であり、特に好ましくは(Tg+70)〜(Tg+100)℃である。より具体的には、セルロースアシレートフィルムでは、熱処理温度は、好ましくは200℃以上であり、より好ましくは200〜280℃であり、さらに好ましくは210〜270℃であり、特に好ましくは220〜250℃である。
冷却温度は、前記熱処理温度よりも50℃以上低いことが好ましく、100〜300℃低いことがより好ましく、150〜250℃低いことがさらに好ましい。
また、前記熱処理温度と延伸温度との差は1℃以上であることが好ましく、10〜200℃がより好ましく、30〜150℃がさらに好ましく、50〜100℃が特に好ましく、延伸温度は熱処理温度より低いことが好ましい。
なお、ここで、上記Tgは、溶液製膜された当該膜のガラス転移温度であり、DSCの測定パンに熱処理前のサンプルを20mg入れ、これを窒素気流中で10℃/分で30℃から120℃まで昇温し、15分間保持した後、30℃まで−20℃/分で冷却した。この後、再度30℃から250℃まで昇温し、ベースラインが低温側から偏奇し始める温度をフィルムのTgとする。
前記熱処理は、前記温度に保持された加熱ゾーン中にフィルムを搬送させながら実施することが好ましい。この場合、搬送方向に保持する2つ以上の装置(例えば、ニップロールやサクションドラム)間で加熱しながら行うことが好ましく、例えば、ニップロール間に加熱ゾーンを有する装置内にて実施してもよい。
また、入口側と出口側の周速に差を持たせずに実施しても持たせながら実施してもよく、周速に差を持たせる場合、フィルムの伸びは3〜500%に制御することが好ましく、5〜100%がより好ましく、10〜80%がさらに好ましく、20〜60%が特に好ましい。なお、ここでいう「フィルムの伸び(%)」とは、以下の式を用いて求めたものを意味する。
フィルムの伸び(%)=100×{(熱処理後の長さ)−(熱処理前の長さ)}/熱処理前の長さ
本発明において光学異方性層1として利用可能なセルロースアシレートフィルムの作製方法の一例は、少なくとも一種のセルロースアシレートを含有するポリマー溶液を流延してウェブを形成する流延工程と、前記流延工程において形成された前記ウェブを残留溶媒量が100〜300質量%である間に、搬送方向に5〜100%延伸する延伸工程と、前記ウェブを膜面温度50〜150℃で乾燥する乾燥工程とを含み、前記乾燥工程の開始残留揮発分が10〜150質量%であり且つ終了残留揮発分が10〜50質量%である製造工程とを含む。
この方法によれば、光学異方性層1に要求される特性を満足するセルロースアシレートフィルムを安定的に製造することができる。
前記光学異方性層1として利用するポリマーフィルムは、単層構造であることが好ましい。ここで、「単層構造」のフィルムとは、複数のフィルム材が貼り合わされているものではなく、一枚のポリマーフィルムを意味する。そして、複数のポリマー溶液から、逐次流延方式や共流延方式を用いて一枚のポリマーフィルムを製造する場合も含む。この場合、添加剤の種類や配合量、ポリマーの分子量分布やポリマーの種類等を適宜調整することによって厚み方向に分布を有するようなポリマーフィルムを得ることができる。また、それらの一枚のフィルム中に光学異方性部、防眩部、ガスバリア部、耐湿性部などの各種機能性部を有するものも含む。
ウェブの製膜:
まず、ウェブを製膜する。ポリマー溶液を用いて溶液流延製膜方法により形成することができる。溶液流延製膜方法の実施に際しては、従来の方法に従って、公知の装置を用いることができる。具体的には、溶解機(釜)で調製されたドープ(ポリマー溶液ともいう)を、ろ過後、貯蔵釜で一旦貯蔵し、ドープに含まれている泡を脱泡して最終調製する。ドープは30℃に保温し、ドープ排出口から、例えば回転数によって高精度に定量送液できる加圧型定量ギアポンプを通して加圧型ダイに送り、ドープを加圧型ダイの口金(スリット)からエンドレスに走行している流延部の金属支持体の上に均一に流延する(ドープ流延工程)。次いで、金属支持体がほぼ一周した剥離点で、生乾きのドープ膜(ウェブ)を金属支持体から剥離し、続いて乾燥ゾーンへ搬送し、ロール群で搬送しながら乾燥を終了する。溶液流延製膜方法の流延工程、乾燥工程の詳細については、特開2005−104148号公報の120〜146頁にも記載があり、適宜本発明にも適用することができる。
ウェブの製膜の際に用いる金属支持体として金属バンドまたは金属ドラムを使用することができる。
WET延伸工程:
上記セルロースアシレートフィルムの製造方法においては、延伸工程において、前記流延工程において形成された前記ウェブを搬送しながら搬送方向に延伸する。この際、ウェブの延伸開始時の残留溶媒量は150〜300質量%である。
残留溶媒量:
この延伸開始時におけるセルロースアシレートウェブの残留溶媒量は、下記式に基づいて算出することができる。
残留溶媒量(質量%)={(M−N)/N}×100
[式中、Mは、延伸ゾーンに挿入される直前のセルロースアシレートフィルムの質量、Nは、延伸ゾーンに挿入される直前のセルロースアシレートフィルムを120℃で2時間乾燥させたときの質量を表す]
前記延伸工程において、ウェブの延伸開始時における残留溶媒量は、150〜300質量%であり、剥ぎ取り、ウェブの判断、延伸温度、延伸倍率等のバランスを考慮すると、200〜300質量%がさらに好ましい。前記残留溶媒量が150質量%未満であると、延伸温度を低くすると延伸の際にウェブの破断が生じやすい。このため、延伸温度を高く設定する必要があり、エネルギー効率が低下してしまう。また、延伸温度を高くしても、高倍率で延伸しようとするとやはりウェブに破断が生じてしまう。更に、前記残留溶媒量が150質量%未満であると延伸倍率が低くなるため、目的の光学特性が得られない。また、残留溶媒量が300質量%を越えると、ウェブの剥ぎ取り性や延伸適正(シワ、ハンドリングなど)、回収性が著しく低下してしまう。特に前記残留溶媒量が、200〜300質量%の範囲内にあると、延伸倍率を上げやすく、更に、ウェブの破断をより効果的に抑制することができる。
セルロースアシレートウェブの残留溶媒量は、前記ポリマー溶液の濃度、金属支持体の温度や速度、乾燥風の温度や風量、乾燥雰囲気中の溶媒ガス濃度等を変更することにより、適宜調整することができる。
前記延伸工程において、ウェブは搬送されながら、搬送方向に延伸される。この際、ウェブの延伸倍率としては、高い延伸倍率を達成しつつウェブの破断を防止する観点から、5〜100%が好ましく、15〜50%がさらに好ましい。前記延伸の際のセルロースアシレートウェブの延伸倍率(伸び)は、金属支持体速度と剥ぎ取り速度(剥ぎ取りロールドロー)との周速差により達成することができる。例えば、2つのニップロールを有する装置を用いた場合、入口側のニップロールの回転速度よりも、出口側のニップロールの回転速度を速くすることにより、搬送方向(縦方向)にセルロースアシレートフィルムを好ましく延伸することができる。このような延伸を行うことによって、レターデーションの発現性を調整することができる。
なお、ここでいう「延伸倍率(%)」とは、以下の式により求められるものを意味する。
延伸倍率(%)=100×{(延伸後の長さ)−(延伸前の長さ)}/延伸前の長さ
前記延伸工程において、延伸時におけるウェブの膜面温度(延伸温度)は特に限定されないが、延伸効率およぶ揮発分変化を小さくする観点から、30℃以下であることが好ましい。また、延伸工程におけるウェブの延伸速度は、特に限定されるものではないが、延伸適正(シワ、ハンドリングなど)の観点から、1〜1000%/minが好ましく、1〜100%/minがさらに好ましい。延伸は1段で実施しても、多段で実施してもよい。また、さらに、搬送方向に対して直行する方向(横方向)に延伸を加えてもよい。
延伸工程を経たウェブは、続いて乾燥(結晶化)処理工程へ搬送する。乾燥工程においてウェブは、テンターで両端をクリップやピンで固定されたりしながら乾燥される。
乾燥(結晶化)処理工程:
延伸処理が完了したウェブは乾燥工程の開始残留揮発分が10〜150質量%好ましくは10〜100質量%の範囲で平均膜面温度30〜150℃でフィルムを乾燥する工程で処理する(結晶化処理)。
結晶化処理工程は、セルロースアシレートフィルム(ウェブ)を搬送しながら行うことが好ましい。セルロースアシレートフィルムの搬送手段は特に制限されないが、典型的な例としてニップロールやサクションドラムにより搬送する手段、テンタークリップで把持しながら搬送する手段(空気圧で浮上搬送する手段)などを挙げることができる。好ましいのは、ピン状テンターで固定しながら搬送する手段、隙間が狭い複数の搬送ローラにより搬送する手段であり、より好ましいのは、ピン状テンターで固定しながら搬送する手段、隙間が狭い複数の搬送ローラにより搬送する手段である。
ピン状テンターで固定しながら搬送する手段は、具体的には、搬送方向に直交する線上にあるセルロースアシレートフィルム両端部をそれぞれピン状テンターで固定し、一方の端部を固定したテンターと他方の端部を固定したテンターとの間の距離を制御しながら搬送することにより行うことができる。テンター間の距離は、テンターレールパターンを適宜設定することにより制御することが可能である。このようにして、テンター間の距離を制御することにより、幅方向の寸法変化率を所望の値に抑制しながらセルロースアシレートフィルムを乾燥処理することができる。
ウェブの破断、シワ、搬送不良を防止するために、ピンテンターのピンにおいて、内側のピン密度を大きく、外側のピン密度を小さくすると好ましい。
隙間が狭い複数の搬送ローラにより搬送する手段は、具体的には、隣り合う搬送ロール間の隙間が0.1cm〜50cmとなるように結晶化処理ゾーン内に設置された複数の搬送ロールにセルロースアシレートフィルムを通して搬送することにより行うことができる。隣り合う搬送ロール間の隙間とは、搬送されるフィルムが1つの搬送ロールから離れてから次の搬送ロールにラップされるまでの間の距離を指す。このような搬送ロール間の隙間の狭い一群の搬送ロール(いわゆる密ロール)の間を通すことにより、フィルム幅方向に搬送ロールによる保持力が作用し、フィルムの幅方向への寸法変化率を抑制することができる。この方法では、テンタークリップ法のような幅方向の拡幅は不可能だが、収縮を最小限に抑制することができる。
搬送の速度は、通常は1〜500m/分であり、5〜300m/分が好ましく、10〜200m/分がより好ましく、20〜100m/分がさらに好ましい。搬送速度が、前記の下限値である1m/分以上であれば産業上、十分な生産性を確保することができるという点で好ましくなる傾向があり、前記の上限値である500m/分以下であれば実用的な結晶化処理ゾーン長で十分に結晶成長を進行させることができるという点で好ましくなる傾向がある。搬送速度を速くすればフィルムの着色を抑制することができる傾向があり、搬送速度を遅くすれば結晶化処理ゾーン長を短くすることができる傾向がある。結晶化処理中の搬送速度(搬送速度を決定するニップロールやサクションドラム等の装置の速度)は一定にしておくことが好ましい。
テンター内においてウェブ自体の発泡やウェブが保持手段に付着するのを防止するために、テンター乾燥装置において、ウェブの両側縁部保持ピンを吹出型冷却器でウェブの発泡温度未満に冷却すると共に、ウェブを喰い込ます直前のピンをダクト型冷却器でのドープの0℃以下に冷却する事が好ましい。
結晶化処理方法として、例えば、セルロースアシレートフィルムを搬送しながら温度Tのゾーン内を通過させる方法、搬送されているセルロースアシレートフィルムに熱風をあてる方法、搬送されているセルロースアシレートフィルムに熱線を照射する方法、セルロースアシレートフィルムを昇温されたロールに接触させる方法などを挙げることができる。
好ましくは、セルロースアシレートフィルムを搬送しながら温度Tのゾーン内を、熱風をあてながら通過させる方法である。この方法によれば、セルロースアシレートフィルムを均一に加熱することができるという利点がある。ゾーン内の温度は、例えば温度センサでモニターしつつ、ヒータで一定温度に制御することにより温度Tに維持することができる。温度Tのゾーン内のセルロースアシレートフィルムの搬送長は、製造しようとするセルロースアシレートフィルムの性質や搬送速度によって異なるが、通常は(搬送長)/(搬送するセルロースアシレートフィルムの幅)の比が0.1〜100となるように設定することが好ましく、より好ましくは0.5〜50であり、さらに好ましくは1〜20である。この比は、本明細書において縦横比と略すこともある。温度Tのゾーンの通過時間(結晶化処理の時間)は、通常0.01〜60分であり、好ましくは0.03〜10分であり、さらに好ましくは0.05〜5分である。前記範囲とすることにより、レターデーションの発現に優れ、フィルムの着色を抑制することができる。
また、溶液流延法により速度を上げたり、テンターにてウェブの幅を広げたりする時の平面性等の品質低下を防止するために、テンター内でウェブを乾燥する際には、風速を0.5〜20(40)m/s、横手方向温度分布を10%以下、ウェブ上下風量比を0.2〜1とする発明が記載されている。
乾燥ガスの吹き出し延長方向に位置するフィルム表面上での風速分布を風速の上限値を基準にした時、上限値と下限値との差を上限値の20%以内にして、乾燥ガスを吹き出し、ウェブを乾燥させることことガ好ましい。
前記製造方法では、Re,Rthの調整のため、揮発分が300〜10%の間に搬送方向に対し垂直方向に延伸または収縮してもよい。延伸することによりReの低減&Rthの上昇が行え、収縮によりReの上昇&Rthの低減を行える。
また、セルロースアシレートフィルムを結晶化処理中に搬送方向と直交する方向に延伸することによって、遅相軸方向の調整(均一化)および面状を改良することができる。
例えば、セルロースアシレートフィルムの両端をピン状テンターで固定し、これを搬送方向と直交する方向(横方向)に延伸または収縮しながら加熱ゾーンを通過させることにより実施することができる。
搬送方向に直交する方向の延伸倍率は、通常0.8〜10倍、好ましくは1.0〜5倍、より好ましくは1.1〜3倍である。また、前記延伸における延伸速度は20〜10000%/分が好ましく、より好ましくは40〜1000%/分であり、さらに好ましくは50〜500%/分である。
収縮させる場合の収縮率は5〜80%であることが好ましく、10〜70%であることがより好ましく、20〜60%であることがさらに好ましく、25〜50%であることが最も好ましい。幅方向の収縮率は、フィルムが収縮する直前と直後の全幅を計測し、下記式から求めることができる。
幅方向の収縮率(%)=100×(収縮直前の全幅−収縮直後の全幅)/収縮直前の全幅
結晶化処理工程は、1回のみ行ってもよいし、複数回行ってもよい。複数回行うとは、前の結晶化処理が終了した後に再び温度をTcを越えTm0未満に設定して搬送しながら結晶化処理を行うことを意味する。複数回結晶化処理を行う場合は、すべての結晶化処理が完了した段階で前記の延伸倍率の範囲を満たすことが好ましい。前記製造方法における結晶化処理は、3回以下が好ましく、2回以下がより好ましく、1回が最も好ましい。
重層流延:
セルロースアシレート溶液を、金属支持体としての平滑なバンド上或いはドラム上に単層液として流延してもよいし、2層以上の複数のセルロースアシレート液を流延してもよい。複数のセルロースアシレート溶液を流延する場合、金属支持体の進行方向に間隔を置いて設けた複数の流延口からセルロースアシレートを含む溶液をそれぞれ流延させて積層させながらフィルムを作製してもよく、例えば特開昭61−158414号、特開平1−122419号、および特開平11−198285号の各公報などに記載の方法が適応できる。
また、2つの流延口からセルロースアシレート溶液を流延することによってもフィルム化することでもよく、例えば特公昭60−27562号、特開昭61−94724号、特開昭61−947245号、特開昭61−104813号、特開昭61−158413号、および特開平6−134933号の各公報に記載の方法で実施できる。また、特開昭56−162617号公報に記載の高粘度セルロースアシレート溶液の流れを低粘度のセルロースアシレート溶液で包み込み、その高,低粘度のセルロースアシレート溶液を同時に押出すセルロースアシレートフィルム流延方法でもよい。更にまた、特開昭61−94724号および特開昭61−94725号の各公報に記載の外側の溶液が内側の溶液よりも貧溶媒であるアルコール成分を多く含有させることも好ましい態様である。或いはまた2個の流延口を用いて、第一の流延口により金属支持体に成型したフィルムを剥離し、金属支持体面に接していた側に第二の流延を行なうことにより、フィルムを作製することでもよく、例えば特公昭44−20235号公報に記載されている方法である。流延するセルロースアシレート溶液は同一の溶液でもよいし、異なるセルロースアシレート溶液でもよく特に限定されない。複数のセルロースアシレート層に機能を持たせるために、その機能に応じたセルロースアシレート溶液を、それぞれの流延口から押出せばよい。さらにセルロースアシレート溶液は、他の機能層(例えば、接着層、染料層、帯電防止層、アンチハレーション層、UV吸収層、偏光層など)を同時に流延することも実施しうる。
従来の単層液では、必要なフィルム厚さにするためには高濃度で高粘度のセルロースアシレート溶液を押出すことが必要であり、その場合セルロースアシレート溶液の安定性が悪くて固形物が発生し、ブツ故障となったり、平面性が不良であったりして問題となることが多かった。この解決として、複数のセルロースアシレート溶液を流延口から流延することにより、高粘度の溶液を同時に金属支持体上に押出すことができ、平面性も良化し優れた面状のフィルムが作製できるばかりでなく、濃厚なセルロースアシレート溶液を用いることで乾燥負荷の低減化が達成でき、フィルムの生産スピードを高めることができた。
共流延の場合、内側と外側の厚さは特に限定されないが、好ましくは外側が全膜厚の1〜50%であることが好ましく、より好ましくは2〜30%の厚さである。ここで、3層以上の共流延の場合は金属支持体に接した層と空気側に接した層のトータル膜厚を外側の厚さと定義する。共流延の場合、前述の可塑剤、紫外線吸収剤、マット剤等の添加物濃度が異なるセルロースアシレート溶液を共流延して、積層構造のセルロースアシレートフィルムを作製することもできる。例えば、スキン層/コア層/スキン層といった構成のセルロースアシレートフィルムを作ることができる。例えば、マット剤は、スキン層に多く、またはスキン層のみに入れることができる。可塑剤、紫外線吸収剤はスキン層よりもコア層に多くいれることができ、コア層のみにいれてもよい。また、コア層とスキン層で可塑剤、紫外線吸収剤の種類を変更することもでき、例えばスキン層に低揮発性の可塑剤及び/または紫外線吸収剤を含ませ、コア層に可塑性に優れた可塑剤、或いは紫外線吸収性に優れた紫外線吸収剤を添加することもできる。また、剥離促進剤を金属支持体側のスキン層のみ含有させることも好ましい態様である。また、冷却ドラム法で金属支持体を冷却して溶液をゲル化させるために、スキン層に貧溶媒であるアルコールをコア層より多く添加することも好ましい。スキン層とコア層のTgが異なっていても良く、スキン層のTgよりコア層のTgが低いことが好ましい。また、流延時のセルロースアシレートを含む溶液の粘度もスキン層とコア層で異なっていても良く、スキン層の粘度がコア層の粘度よりも小さいことが好ましいが、コア層の粘度がスキン層の粘度より小さくてもよい。
揮発分が30〜1%の間の延伸(再延伸):
前記製造方法では、セルロースアシレートフィルムの結晶化処理後に延伸を行ってもよい(他の延伸と区別するために「再延伸」という)。このとき、再延伸することにより、最終的に得られる透明フィルムのレタデーション(特にRe)の湿度依存性を効果的に低減することができる。再延伸温度は、60〜200℃であることがより好ましく、80〜150℃であることがさらに好ましい。
再延伸の実施により、結晶部分を大きく動かすことなく、配向した非晶部分を減少させることができると考えられる。したがって、Reを大きく動かすことなく、Reの湿度依存性を低減させることが可能となる、また、波長分散をコントロールできる。このような再延伸は、配向した非晶部分を効率的に減少させる観点から、搬送方向に対し垂直方向への延伸を行う事が好ましい。
ここで、熱処理後に延伸を行うことにより、得られるフィルムの波長分散を調整することができる。フィルムの波長分散は、主に、非晶部と添加剤(波長分散調整剤)の配向によって決定する。一方、フィルムの遅相軸の向き、およびReとRthの絶対値は、主に、結晶部の配向によって決定する。ここで、前記フィルムの(再)延伸前の配向方向を検討すると、熱処理のみを行った(予備延伸を行わなかった)フィルムでは、結晶部、非晶部および添加剤が熱処理工程時のフィルム搬送方向に配向しており、予備延伸および熱処理を行ったフィルムでは、結晶部、非晶部および添加剤が予備延伸方向に配向している。これらの熱処理工程後のフィルムに対し、前記特定の範囲で延伸を行うことが好ましく、これは、熱処理後の延伸では結晶部の配向よりも非晶部と添加剤の配向の変化速度が速いことに基づく。すなわち、結晶部分を大きく動かすことなく、非晶部分等の配向を支配的に変化させることができる。前記製造方法によれば熱処理工程後の延伸により、非晶部と添加剤の配向が結晶部の配向と直交した状態にすることができ、遅相軸の向きを変えずに波長分散を自由に制御することが可能となる。
セルロースアシレートフィルムの熱処理後に延伸を行う(他の延伸と区別するために「再延伸」という)。このとき、(Tg−20)〜(Tg+50)℃で再延伸することにより、最終的に得られる光学補償フィルムの波長分散を効果的に制御することができる。再延伸温度は、(Tg−10)〜(Tg+40)℃であることがより好ましく、Tg〜(Tg+30)℃であることがさらに好ましい。ここで、Tgは熱処理前のセルロースアシレートフィルムのガラス転移温度(単位;℃)を表す。
再延伸は、結晶化処理後にセルロースアシレートフィルムがTg0以下の温度まで冷却された後に行われてもよく、結晶化処理温度を保ったまま冷却されることなく行われてもよい。一旦ポリマーフィルムが冷却される場合、冷却は自然放冷してTg0以下の温度になった状態でもよいし、強制的に冷却してTg0以下の温度になった状態でもよい。また、いったん冷却した後に再度Tg0以下に加熱した状態でもよい。一旦フィルムを冷却する場合の冷却温度は、前記結晶化処理温度よりも50℃以上低いことが好ましく、100〜300℃低いことがより好ましく、150〜250℃低いことがさらに好ましい。結晶化処理温度よりも冷却温度を50℃以上低くすることによって結晶化処理後のフィルムのRth/Re値を容易に制御できる傾向がある。また、一旦フィルムを冷却温度まで冷却した後に再度Tc未満の温度に加熱してから再延伸することが好ましい。前記結晶化処理温度と再延伸温度との差は1℃以上であることが好ましく、10〜200℃がより好ましく、30〜150℃がさらに好ましく、50〜100℃が特に好ましい。この温度差を適切に設定することによって、Rth/Re値を制御することができる。具体的には、結晶化処理温度と再延伸温度との差を大きくすればRth/Re値が上昇する傾向があり、差を小さくすればRth/Re値の変化が小さくなる傾向がある。
再延伸の方法としては、前記の結晶化処理中の延伸の説明にて記載した方法等を採用することができる。再延伸は1段で実施しても、多段で実施してもよい。好ましくは、前記のニップロールの回転速度を変えることにより搬送方向に延伸する方法とポリマーフィルムの両端をテンタークリップで把持してこれを搬送方向と直交する方向に広げることより延伸する方法である。特に好ましくは、高揮発結晶化処理の際に延伸を行わないか、あるいは、ニップロールの回転速度を変えることにより搬送方向に延伸しておき、結晶化処理後にポリマーフィルムの両端をテンタークリップで把持してこれを搬送方向と直交する方向に広げることより再延伸する態様である。
再延伸の延伸倍率はセルロースアシレートフィルムに要求するレターデーションに応じて適宜設定することができ、1〜500%が好ましく、3〜400%がより好ましく、5〜300%がさらに好ましく、10〜100%が特に好ましい。再延伸の延伸速度は10〜10000%/分が好ましく、より好ましくは20〜1000%/分であり、さらに好ましくは30〜800%/分である。
結晶化処理後に再延伸を行うことにより、得られる透明フィルムのReとRthを調整することができる。例えば、再延伸の延伸温度を高くすることによって、Reをあまり変化させずにRthを低下させることができる。また、再延伸の延伸倍率を高くすることによって、Reを低下させRthを上昇させることもできる。これらは、ほぼ線形的な相関関係を示すことから、再延伸の延伸条件を適当に選択することによって、目的とするReやRthを達成しやすくなる。
結晶化処理が終わった後、再延伸を行う前の状態のセルロースアシレートフィルムのReやRthは特に制限されない。
後乾燥・ハンドリング:
前記フィルムを支持体から剥離された後、もしくはテンターから後の、乾燥工程における乾燥温度は40〜250℃、特に70〜180℃が好ましい。さらに残留溶媒を除去するために、50〜160℃で乾燥され、その場合逐次温度を変えた高温風で乾燥して残留溶剤を蒸発させることが好ましく用いられている。以上の方法は、特公平5−17844号公報に記載がある。使用する溶媒によって乾燥温度、乾燥風量及び乾燥時間が異なり、使用溶媒の種類、組合せに応じて適宜選べばよい。最終仕上がりフィルムの残留溶媒量は2質量%以下、更に0.4質量%以下であることが、寸度安定性が良好なフィルムを得る上で好ましい。
また、乾燥後のフィルムの残留溶媒量に関しては、特開2002−241511号公報に、20〜60μmの薄手フィルムであっても経時的の変形をなくし、光学的に等方性で、且つ擦り傷が起こらず、気泡や未溶解物をなくすことを目的として、巻き取り時の残留溶媒量を0.05質量%以下とする発明が記載されている。さらに好ましい態様として、・幅手方向で残留溶媒量の最大値と最小値との差が0.02質量%以下あること、・残留溶媒量は好ましくは0.04質量%以下、特に好ましくは0.02質量%以下であること、・そのために乾燥温度としては、100〜200℃、乾燥時間としては5〜30分とすること、等が開示されている。
また、安定搬送、面状良化、必要な光学特性、熱収縮を下げるために、特開2003−053751号公報には、乾燥時におけるベース中の残留揮発分(乾量基準)を3〜7質量%の時、残留揮発分における貧溶媒比率が0.01〜95質量%とする発明が記載されている。
また、曇りの発生しないフィルムを得るための発明である特開2003−071863号公報には、フィルムの乾燥工程においては、ベルトより剥離したフィルムを更に乾燥し、残留溶媒量を0.5質量%以下にすることが好ましく、更に好ましくは0.1質量%以下であり、最も好ましいのは0〜0.01質量%以下であることが記載されている。
また、特開平5−278051号公報に、生産性に優れた、溶質の表裏差の少ない物性を目的として、溶質とポリマーとの相互作用パラメータχが0.9以下になるように溶質を選択し、かつ流延した膜中の溶媒のポリマーに対する重量比23%以下になるまでの乾燥を、溶媒のポリマーに対する膜の表面の重量比を12%以上に維持しつつ行う溶液製膜法の発明が記載されている。
以上記載したこれらの各公報に記載の事項は、本発明においても適用できるものである。
これら流延から後乾燥までの工程は、空気雰囲気下でもよいし窒素ガスなどの不活性ガス雰囲気下でもよい。乾燥のために遠赤外線や特開平8−134336号、特開平8−259706号、特開平8−325388号の各公報に記載されているように、マイクロ波を用いて乾燥することもできる。
また、特開2002−283370号には、乾燥装置、或いは熱矯正装置への導入前及び/又は搬出後にフィルムクリーン化装置を配置して、ウェブに付着している粉塵などを除去しすることが記載されている。クリーン化手段としては、振動・高圧風供給・吸引方法以外の方法として、火炎処理(コロナ処理、プラズマ処理)を行なう方式、粘着ロールを設置する方式など用いることが開示されている。また、さらなる異物の混入を阻止するための、好ましい態様として、・巻取元巻接線内に巻き込む位置に除電器を設置すること、除電器は、元巻を再繰り出しした際の帯電電位が<±2KVとなるように巻取時に除電装置或いは強制帯電装置により逆電位を与える構成で行なうこと・強制帯電電位が、1〜150Hzで正負交互に変換される除電器により除電する構成とすることもこと、・イオン風を発生させるイオナイザーや除電バーを利用することが開示されている。
[低置換度セルロースアシレート]
前記光学異方性層1として利用可能なポリマーフィルムの一例は、下記式(I)を満たすセルロースアシレートを主成分として含む低置換度層を有する低置換度セルロースアシレート系フィルムである。
(1) 2.0<Z1<2.7
(式(1)中、Z1は低置換度層のセルロースアシレートの総アシル置換度を表す。)
なお、本明細書で「主成分として含有する」とは、原料となる成分が1種である態様ではその成分を、2種以上である態様では、最も質量分率の高い成分をいうものとする。
前記低置換度層は、その少なくとも一方の面に下記式(2)を満たすセルロースアシレートを主成分として含む高置換度層を有していてもよい。
(2) 2.7<Z2
(式(2)中、Z2は高置換度層のセルロースアシレートの総アシル置換度を表す。)
前記低置換度セルロースアシレート系フィルムの作製に用いられるセルロースアシレートとしては、綿花リンタや木材パルプ(広葉樹パルプ,針葉樹パルプ)などがあり、何れの原料セルロースから得られるセルロースアシレートも使用でき、場合により混合して使用してもよい。これらの原料セルロースについての詳細な記載は、例えば、丸澤、宇田著、「プラスチック材料講座(17)繊維素系樹脂」日刊工業新聞社(1970年発行)や発明協会公開技報公技番号2001−1745号(7頁〜8頁)に記載のセルロースを用いることができる。
前記低置換度セルロースアシレート系フィルムの作製に用いられる原料セルロースアシレートは、1種のアシル基によってアシル化されたものであっても、2種類以上のアシル基によってアシル化されたものであってもよい。炭素数2〜4のアシル基を置換基として有することが好ましい。2種類以上のアシル基を用いるときは、そのひとつがアセチル基であることが好ましく、炭素数2〜4のアシル基としてはプロピオニル基またはブチリル基が好ましい。これらのフィルムにより溶解性の好ましい溶液が作製でき、特に非塩素系有機溶媒において、良好な溶液の作製が可能となる。さらに粘度が低く、ろ過性のよい溶液の調製が可能となる。
セルロースを構成するβ−1,4結合しているグルコース単位は、2位、3位および6位に遊離の水酸基を有している。セルロースアシレートは、これらの水酸基の一部または全部をアシル基によりアシル化した重合体(ポリマー)である。アシル置換度は、2位、3位および6位に位置するセルロースの水酸基がアシル化している割合(各位における100%のアシル化は置換度1)の合計を意味する。
炭素数2以上のアシル基としては、脂肪族基でもアリル基でもよく特に限定されない。それらは、例えばセルロースのアルキルカルボニルエステル、アルケニルカルボニルエステルあるいは芳香族カルボニルエステル、芳香族アルキルカルボニルエステルなどであり、それぞれさらに置換された基を有していてもよい。これらの好ましい例としては、アセチル基、プロピオニル基、ブタノイル基、ヘプタノイル基、ヘキサノイル基、オクタノイル基、デカノイル基、ドデカノイル基、トリデカノイル基、テトラデカノイル基、ヘキサデカノイル基、オクタデカノイル基、イソブタノイル基、tert−ブタノイル基、シクロヘキサンカルボニル基、オレオイル基、ベンゾイル基、ナフチルカルボニル基、シンナモイル基などを挙げることができる。これらの中でも、アセチル基、プロピオニル基、ブタノイル基、ドデカノイル基、オクタデカノイル基、tert−ブタノイル基、オレオイル基、ベンゾイル基、ナフチルカルボニル基、シンナモイル基などがより好ましく、特に好ましくはアセチル基、プロピオニル基、ブタノイル基(アシル基が炭素原子数2〜4である場合)であり、より特に好ましくはアセチル基(セルロースアシレートが、セルロースアセテートである場合)である。
セルロ−スのアシル化において、アシル化剤としては、酸無水物や酸クロライドを用いた場合、反応溶媒である有機溶媒としては、有機酸、例えば、酢酸、メチレンクロライド等が使用される。
触媒としては、アシル化剤が酸無水物である場合には、硫酸のようなプロトン性触媒が好ましく用いられ、アシル化剤が酸クロライド(例えば、CH3CH2COCl)である場合には、塩基性化合物が用いられる。
最も一般的なセルロ−スの混合脂肪酸エステルの工業的合成方法は、セルロ−スをアセチル基および他のアシル基に対応する脂肪酸(酢酸、プロピオン酸、吉草酸等)またはそれらの酸無水物を含む混合有機酸成分でアシル化する方法である。
本発明では、前記低置換度セルロースアシレート系フィルムの前記低置換度層に用いるアセロースアシレートが、下記式(3)及び(4)を満たすことが、レターデーションの波長分散性の観点から好ましい。
式(3) 1.0<X1<2.7
(式(3)中、X1は低置換度層のセルロースアシレートのアセチル基の置換度を表す。)
式(4) 0≦Y1<1.5
(式(4)中、Y1は低置換度層のセルロースアシレートの炭素数3以上のアシル基の置換度の合計を表す。)
なおX1とY1は前記式(1)の前記Z1との間にX1+Y1=Z1の関係が成り立つ。
前記低置換度セルロースアシレート系フィルムの前記高置換度層に用いるセルロースアシレートは、下記式(5)及び(6)を満たすことが、レターデーションの波長分散性の観点から好ましい。
式(5) 1.2<X2<3.0
(式(5)中、X2は高置換度層のセルロースアシレートのアセチル基の置換度を表す。)
式(6) 0≦Y2<1.5
(式(6)中、Y2は高置換度層のセルロースアシレートの炭素数3以上のアシル基の置換度の合計を表す。)
なおX2とY2は前記式(2)の前記Z2との間にX2+Y2=Z2の関係が成り立つ。
本発明に用いるセルロースアシレートは、例えば、特開平10−45804号公報に記載されている方法により合成できる。
必要に応じ、非リン酸エステル系の化合物、可塑剤、レターデーション発現剤、劣化防止剤、紫外線吸収剤、剥離促進剤、マット剤等を加えてよい。
なお、低置換度セルロースアシレート系フィルムは、上記セルロースアシレートフィルムと同様、溶液製膜法により製造するのが好ましく、溶液製膜後に延伸処理して、光学特性を所望の範囲とするのが好ましい。
また、前記ポリマーフィルムは、種々の溶融製膜方法に従い、種々の溶融製膜装置を用いて製造できる。
溶融製膜
(i) 乾燥
ペレット化したものを用いるのが好ましく、溶融製膜に先立ちペレット中の水分を減少させることが好ましい。
本発明においてセルロースアシレートの含水率を好ましい量に調整するためには、セルロースアシレートを乾燥することが好ましい。乾燥の方法については、除湿風乾燥機を用いて乾燥する事が多いが、目的とする含水率が得られるのであれば特に限定されない(加熱、送風、減圧、攪拌などの手段を単独または組み合わせで用いることで効率的に行うことが好ましい、更に好ましくは、乾燥ホッパーを断熱構造にする事が好ましい)。乾燥温度として好ましくは0〜200℃であり、さらに好ましくは40〜180℃Cであり、特に好ましくは60〜150℃である。乾燥温度が低過ぎると乾燥に時間がかかるだけでなく、含有水分率が目標値以下にならず好ましくない。一方、乾燥温度が高過ぎると樹脂が粘着してブロッキングして好ましくない。乾燥風量として好ましくは20〜400m3/時間で有り、更に好ましくは50〜300m3/時間、特に好ましくは100〜250m3/時間である。乾燥風量が少ないと乾燥効率が悪く好ましくない。一方、風量を多くしても一定量以上あれば乾燥効果の更なる向上は小さく経済的でない。エアーの露点として、好ましくは0〜−60℃であり、更に好ましくは−10〜−50℃、特に好ましくは−20〜−40℃である。乾燥時間は少なくとも15分以上必要で有り、さらに好ましくは、1時間以上、特に好ましくは2時間以上である。一方、50時間を超えて乾燥させても更なる水分率の低減効果は少なく、樹脂の熱劣化の懸念が発生するため乾燥時間を不必要に長くすることは好ましくない。前記フィルムの製造に用いるセルロースアシレートは、その含水率が1.0質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以下であることが更に好ましく、0.01質量%以下であることが特に好ましい。
(ii)溶融押出し
上述したセルロースアシレート樹脂は押出機(上記ペレット化の押出機とは別)の供給口を介してシリンダー内に供給される。シリンダー内は供給口側から順に、供給口から供給したセルロースアシレート樹脂を定量輸送する供給部(領域A)とセルロースアシレート樹脂を溶融混練・圧縮する圧縮部(領域B)と溶融混練・圧縮されたセルロースアシレート樹脂を計量する計量部(領域C)とで構成される。樹脂は上述の方法により水分量を低減させるために、乾燥することが好ましいが、残存する酸素による溶融樹脂の酸化を防止するために、押出機内を不活性(窒素等)気流中、あるいはベント付き押出し機を用い真空排気しながら実施するのがより好ましい。押出機のスクリュー圧縮比は2.5〜4.5に設定され、L/Dは20〜70に設定されている。ここでスクリュー圧縮比とは供給部Aと計量部Cとの容積比、即ち供給部Aの単位長さあたりの容積÷計量部Cの単位長さあたりの容積で表され、供給部Aのスクリュー軸の外径d1、計量部Cのスクリュー軸の外径d2、供給部Aの溝部径a1、及び計量部Cの溝部径a2とを使用して算出される。また、L/Dとはシリンダー内径に対するシリンダー長さの比である。また、押出温度は190〜240℃に設定される。押出機内での温度が240℃を超える場合には、押出機とダイとの間に冷却機を設ける様にすると良い。
スクリュー圧縮比が2.5を下回って小さ過ぎると、十分に溶融混練されず、未溶解部分が発生したり、せん断発熱が小さ過ぎて結晶の融解が不十分となり、製造後のセルロースアシレート樹脂フィルムに微細な結晶が残存し易くなり、さらに、気泡が混入し易くなる。これにより、セルロースアシレート樹脂フィルムの強度が低下したり、あるいはフィルムを延伸する場合に、残存した結晶が延伸性を阻害し、配向を十分に上げることが出来なくなる。逆に、スクリュー圧縮比が4.5を上回って大き過ぎると、せん断応力がかかり過ぎて発熱により樹脂が劣化し易くなるので、製造後のセルロースアシレート樹脂フィルムに黄色味が出易くなる。また、せん断応力がかかり過ぎると分子の切断が起こり分子量が低下してフィルムの機械的強度が低下する。したがって、製造後のセルロースアシレート樹脂フィルムに黄色味が出にくく且つフィルム強度が強く更に延伸破断しにくくするためには、スクリュー圧縮比は2.5〜4.5の範囲がよく、より好ましくは2.8〜4.2、特に好ましいのは3.0〜4.0の範囲である。
又、L/Dが20を下回って小さ過ぎると、溶融不足や混練不足となり、圧縮比が小さい場合と同様に製造後のセルロースアシレート樹脂フィルムに微細な結晶が残存し易くなる。逆に、L/Dが70を上回って大き過ぎると、押出機内でのセルロースアシレート樹脂の滞留時間が長くなり過ぎ、樹脂の劣化を引き起こし易くなる。又、滞留時間が長くなると分子の切断が起こったり分子量が低下してセルロースアシレート樹脂フィルムの機械的強度が低下する。したがって、製造後のセルロースアシレート樹脂フィルムに黄色味が出にくく且つフィルム強度が強く更に延伸破断し難くするためには、L/Dは20〜70の範囲が好ましく、より好ましくは22〜65の範囲、特に好ましくは24〜50の範囲である。
又、押出温度は上述の温度範囲にすることが好ましい。このようにして得たセルロースアシレート樹脂フィルムは、ヘイズが2.0%以下、イエローインデックス(YI値)が10以下である特性値を有している。
ここで、ヘイズは押出温度が低過ぎないかの指標、換言すると製造後のセルロースアシレート樹脂フィルムに残存する結晶の多少を知る指標になり、ヘイズが2.0%を超えると、製造後のセルロースアシレート樹脂フィルムの強度低下と延伸時の破断が発生し易くなる。また、イエローインデックス(YI値)は押出温度が高過ぎないかを知る指標となり、イエローインデックス(YI値)が10以下であれば、黄色味の点で問題無い。
押し出し機の種類として、一般的には設備コストの比較的安い単軸押し出し機が用いられることが多く、フルフライト、マドック、ダルメージ等のスクリュータイプがあるが、熱安定性の比較的悪いセルロースアシレート樹脂には、フルフライトタイプが好ましい。
また、設備コストは効果であるが、スクリューセグメントを変更することにより、途中でベント口を設けて不要な揮発成分を脱揮させながら押出が出来る二軸押出機を用いることが可能である、二軸押し出し機には大きく分類して同方向と異方向のタイプがありどちらも用いることが可能であるが、滞留部分が発生し難くセルフクリーニング性能の高い同方向回転のタイプが好ましい。二軸押出機は設備が効果であるが、混練性が高く、樹脂の供給性能が高いため、低温での押出が可能となるため、セルロースアセテート樹脂の製膜に適している。ベント口を適正に配置することにより、未乾燥状態でのセルロールアシレートペレットやパウダーをそのまま使用することも可能である。又、製膜途中で出たフィルムのミミ等も乾燥させることなしにそのまま再利用することも出来る。
なお、好ましいスクリューの直径は目標とする単位時間あたりの押出量によってことなるが、10mm以上300mm以下、より好ましくは20mm以上250mm以下、更に好ましくは30mm以上150mm以下である。
(iii) 濾過
樹脂中の異物濾過のためや異物によるギアポンプ損傷を避けるため押出機出口にフィルター濾材を設けるいわゆるブレーカープレート式の濾過を行うことが好ましい。またさらに精度高く異物濾過をするために、ギアポンプ通過後にいわゆるリーフ型ディスクフィルターを組み込んだ濾過装置を設けることが好ましい。濾過は、濾過部を1カ所設けて行うことができ、また複数カ所設けて行う多段濾過でも良い。フィルター濾材の濾過精度は高い方が好ましいが、濾材の耐圧や濾材の目詰まりによる濾圧上昇から、濾過精度は15μm〜3μmが好ましく更に好ましくは10μm〜3μmである。特に最終的に異物濾過を行うリーフ型ディスクフィルター装置を使用する場合では品質の上で濾過精度の高い濾材を使用することが好ましく、耐圧,フィルターライフの適性を確保するために装填枚数にて調整することが可能である。濾材の種類は、高温高圧下で使用される点から鉄鋼材料を用いることが好ましく、鉄鋼材料の中でも特にステンレス鋼,スチールなどを用いることが好ましく、腐食の点から特にステンレス鋼を用いることが望ましい。濾材の構成としては、線材を編んだものの他に、例えば金属長繊維あるいは金属粉末を焼結し形成する焼結濾材が使用でき、濾過精度,フィルターライフの点から焼結濾材が好ましい。
(iv) ギアポンプ
厚み精度を向上させるためには、吐出量の変動を減少させることが重要であり、押出機とダイスの間にギアポンプを設けて、ギアポンプから一定量のセルロースアシレート樹脂を供給することは効果がある。ギアポンプとは、ドライブギアとドリブンギアとからなる一対のギアが互いに噛み合った状態で収容され、ドライブギアを駆動して両ギアを噛み合い回転させることにより、ハウジングに形成された吸引口から溶融状態の樹脂をキャビティ内に吸引し、同じくハウジングに形成された吐出口からその樹脂を一定量吐出するものである。押出機先端部分の樹脂圧力が若干の変動があっても、ギアポンプを用いることにより変動を吸収し、製膜装置下流の樹脂圧力の変動は非常に小さなものとなり、厚み変動が改善される。ギアポンプを用いることにより、ダイ部分の樹脂圧力の変動巾を±1%以内にすることが可能である。
ギアポンプによる定量供給性能を向上させるために、スクリューの回転数を変化させて、ギアポンプ前の圧力を一定に制御する方法も用いることが出来る。又、ギアポンプのギアの変動を解消した3 枚以上のギアを用いた高精度ギアポンプも有効である。
ギアポンプを用いるその他のメリットとしては、スクリュー先端部の圧力を下げて製膜できることから、エネルギー消費の軽減・樹脂温上昇の防止・輸送効率の向上・押出機内での滞留時間の短縮・押出機のL/Dを短縮が期待できる。又、異物除去のために、フィルターを用いる場合には、ギアポンプが無いと、ろ圧の上昇と共に、スクリューから供給される樹脂量が変動したりすることがあるが、ギアポンプを組み合わせて用いることにより解消が可能である。一方、ギアポンプのデメリットとしては、設備の選定方法によっては、設備の長さが長くなり、樹脂の滞留時間が長くなることと、ギアポンプ部のせん断応力によって分子鎖の切断を引き起こすことがあり、注意が必要である。
樹脂が供給口から押出機に入ってからダイスから出るまでの樹脂の好ましい滞留時間は2分以上60分以下であり、より好ましくは3分以上40分以下であり、さらに好ましくは4分以上30分以下である。
ギアポンプの軸受循環用ポリマーの流れが悪くなることにより、駆動部と軸受部におけるポリマーによるシールが悪くなり、計量及び送液押し出し圧力の変動が大きくなったりする問題が発生するため、セルロースアシレート樹脂の溶融粘度に合わせたギアポンプの設計(特にクリアランス)が必要である。また、場合によっては、ギアポンプの滞留部分がセルロースアシレート樹脂の劣化の原因となるため、滞留の出来るだけ少ない構造が好ましい。押出機とギアポンプあるいはギアポンプとダイ等をつなぐポリマー管やアダプタについても、出来るだけ滞留の少ない設計が必要であり、且つ溶融粘度の温度依存性の高いセルロースアシレート樹脂の押出圧力安定化のためには、温度の変動を出来るだけ小さくすることが好ましい。一般的には、ポリマー管の加熱には設備コストの安価なバンドヒーターが用いられることが多いが、温度変動のより少ないアルミ鋳込みヒーターを用いることがより好ましい。さらに上述のように押出機の吐出圧力を安定化させるために、押出機のバレルを3以上20以下に分割したヒーターで加熱し溶融することが好ましい。
(v) ダイ
上記の如く構成された押出機によってセルロースアシレート樹脂が溶融され、必要に応じ濾過機、ギアポンプを経由して溶融樹脂がダイに連続的に送られる。ダイはダイス内の溶融樹脂の滞留が少ない設計であれば、一般的に用いられるTダイ、フィッシュテールダイ、ハンガーコートダイの何れのタイプでも構わない。又、Tダイの直前に樹脂温度の均一性アップのためのスタティックミキサーを入れることも問題ない。Tダイ出口部分のクリアランスは一般的にフィルム厚みの1.0〜5.0倍が良く、好ましくは1.2〜3倍、更に好ましくは1.3〜2倍である。リップクリアランスがフィルム厚みの1.0倍未満の場合には製膜により面状の良好なシートを得ることが困難である。また、リップクリアランスがフィルム厚みの5.0倍を超えて大きい場合にはシートの厚み精度が低下するため好ましくない。ダイはフィルムの厚み精度を決定する非常に重要な設備であり、厚み調整がシビアにコントロール出来るものが好ましい。通常厚み調整は40〜50mm間隔で調整可能であるが、好ましくは35mm間隔以下、更に好ましくは25mm間隔以下でフィルム厚み調整が可能なタイプが好ましい。また、セルロールアシレート樹脂は、溶融粘度の温度依存性、せん断速度依存性が高いことから、ダイの温度ムラや巾方向の流速ムラの出来るだけ少ない設計が重要である。また、下流のフィルム厚みを計測して、厚み偏差を計算し、その結果をダイの厚み調整にフィードバックさせる自動厚み調整ダイも長期連続生産における厚み変動の低減に有効である。
フィルムの製造は設備コストの安い単層製膜装置が一般的に用いられるが、場合によっては機能層を外層に設けために多層製膜装置を用いて2種以上の構造を有するフィルムの製造も可能である。一般的には機能層を表層に薄く積層することが好ましいが、特に層比を限定するものではない。
(vi) キャスト
上記方法にて、ダイよりシート上に押し出された溶融樹脂を冷却ドラム上で冷却固化し、フィルムを得る。この時、静電印加法、エアナイフ法、エアーチャンバー法、バキュームノズル法、タッチロール法等の方法を用い、冷却ドラムと溶融押出ししたシートの密着を上げることが好ましい。このような密着向上法は、溶融押出しシートの全面に実施してもよく、一部に実施しても良い。特にエッジピニングと呼ばれる、フイルムの両端部にのみを密着させる方法が取られることも多いが、これに限定される物ではない。
冷却ドラムは複数本用い、徐冷する方法がより好ましい、特に一般的には3本の冷却ドラムを用いることが比較的よく行われているが、この限りではない。冷却ドラムの直径は100mm以上1000mm以下が好ましく、よりに好ましくは150mm以上1000mm以下である。複数本ある冷却ドラムの間隔は、面間で1mm以上50mm以下が好ましく、より好ましくは1mm以上30mm以下である。
冷却ドラムは60℃以上160℃以下が好ましく、より好ましくは70℃以上150℃以下、さらに好ましくは80℃以上140℃以下である。この後、冷却ドラムから剥ぎ取り、引取ローラ(ニップロール)を経た後巻き取る。巻き取り速度は10m/分以上100m/分以下が好ましく、より好ましくは15m/分以上80m/分以下、さらに好ましくは20m/分以上70m/分以下である。製膜幅は0.7m以上5m以下、さらに好ましくは1m以上4m以下、さらに好ましくは1.3m以上3m以下が好ましい。このようにして得られた未延伸フィルムの厚みは30μm以上400μm以下が好ましく、より好ましくは40μm以上300μm 以下、さらに好ましくは50μm以上200μm以下である。
また、いわゆるタッチロール法を用いる場合、タッチロール表面は、ゴム、テフロン(登録商標)等の樹脂でもよく、金属ロールでも良い。さらに、金属ロールの厚みを薄くすることでタッチしたときの圧力によりロール表面が若干くぼみ、圧着面積が広くなりフレキシブルロールと呼ばれる様なロールを用いることも可能である。
タッチロール温度は60℃以上160℃以下が好ましく、より好ましくは70℃以上150℃以下、さらに好ましくは80℃以上140℃以下である。
(vii) 巻き取り
このようにして得たシートは両端をトリミングし、巻き取ることが好ましい。トリミングされた部分は、粉砕処理された後、或いは必要に応じて造粒処理や解重合・再重合等の処理を行った後、同じ品種のフィルム用原料として又は異なる品種のフィルム用原料として再利用してもよい。トリミングカッターはロータリーカッター、シャー刃、ナイフ等の何れのタイプの物を用いても構わない。材質についても、炭素鋼、ステンレス鋼何れを用いても構わない。一般的には、超硬刃、セラミック刃を用いると刃物の寿命が長く、また切り粉の発生が抑えられて好ましい。
また、巻き取り前に、少なくとも片面にラミフィルムを付けることも、傷防止の観点から好ましい。好ましい巻き取り張力は1kg/m幅以上50kg/m幅以下、より好ましくは2kg/m幅以上40kg/m幅以下、更に好ましくは3kg/m幅以上20kg/m幅以下である。巻き取り張力が1kg/m幅より小さい場合には、フィルムを均一に巻き取ることが困難である。逆に、巻き取り張力が50kg/m幅を超える場合には、フィルムが堅巻きになってしまい、巻き外観が悪化するのみでなく、フィルムのコブの部分がクリープ現象により延びてフィルムの波うちの原因になったり、あるいはフィルムの伸びによる残留複屈折が生じるため好ましくない。巻き取り張力は、ラインの途中のテンションコントロールにより検知し、一定の巻き取り張力になるようにコントロールされながら巻き取ることが好ましい。製膜ラインの場所により、フィルム温度に差がある場合には熱膨張により、フィルムの長さが僅かに異なる場合があるため、ニップロール間のドロー比率を調整し、ライン途中でフィルムに規定以上の張力がかからない様にすることが必要である。
巻き取り張力はテンションコントロールの制御により、一定張力で巻き取ることもできるが、巻き取った直径に応じてテーパーをつけ、適正な巻取り張力にすることがより好ましい。一般的には巻き径が大きくなるにつれて張力を少しずつ小さくするが、場合によっては、巻き径が大きくなるにしたがって張力を大きくする方が好ましい場合もある。
尚、上記巻き取り方法については一般的なものであり、前記熱処理をオフラインで行う場合である。オンラインで本発明の熱処理を行なう場合には、前述の通り制御しなければならない。
(シクロオレフィン)
前記光学異方性層1として利用するポリマーフィルムは、シクロオレフィン系ホモポリマー及びコポリマーから選択される少なくとも一種を含む、好ましくは主成分(全成分の50質量%以上)として含むものを利用することができる。
前記光学異方性層1の製造に使用可能なシクロオレフィン系ホモポリマー及びコポリマーの例には、多環式単量体の開環重合体等が含まれる。多環式単量体の具体例としては、次のような化合物が挙げられるが、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。
ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
トリシクロ[4.3.0.12,5]−8−デセン、
トリシクロ[4.4.0.12,5]−3−ウンデセン、
テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]−4−ペンタデセン、
5−メチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−エチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−メトキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−メチル−5−メトキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−シアノビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
8−メトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8−エトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8−n−プロポキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデ
セン、
8−イソプロポキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデ
セン、
8−n−ブトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセ
ン、
8−メチル−8−メトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3
−ドデセン、
8−メチル−8−エトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3
−ドデセン、
8−メチル−8−n−プロポキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10
]−3−ドデセン、
8−メチル−8−イソプロポキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10
]−3−ドデセン、
8−メチル−8−n−ブトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10
−3−ドデセン、
5−エチリデンビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
8−エチリデンテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
5−フェニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
8−フェニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
5−フルオロビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−フルオロメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−トリフルオロメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−ペンタフルオロエチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,5−ジフルオロビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,6−ジフルオロビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,5−ビス(トリフルオロメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,6−ビス(トリフルオロメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−メチル−5−トリフルオロメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,5,6−トリフルオロビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,5,6−トリス(フルオロメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,5,6,6−テトラフルオロビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,5,6,6−テトラキス(トリフルオロメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,5−ジフルオロ−6,6−ビス(トリフルオロメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,6−ジフルオロ−5,6−ビス(トリフルオロメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,5,6−トリフルオロ−5−トリフルオロメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−フルオロ−5−ペンタフルオロエチル−6,6−ビス(トリフルオロメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,6−ジフルオロ−5−ヘプタフルオロ−iso−プロピル−6−トリフルオロメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−クロロ−5,6,6−トリフルオロビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,6−ジクロロ−5,6−ビス(トリフルオロメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,5,6−トリフルオロ−6−トリフルオロメトキシビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,5,6−トリフルオロ−6−ヘプタフルオロプロポキシビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
8−フルオロテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8−フルオロメチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8−ジフルオロメチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8−トリフルオロメチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8−ペンタフルオロエチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン

8,8−ジフルオロテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8,9−ジフルオロテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8,8−ビス(トリフルオロメチル)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3
−ドデセン、
8,9−ビス(トリフルオロメチル)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3
−ドデセン、
8−メチル−8−トリフルオロメチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3
−ドデセン、
8,8,9−トリフルオロテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン

8,8,9−トリス(トリフルオロメチル)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10
]−3−ドデセン、8,8,9,9−テトラフルオロテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ド
デセン、
8,8,9,9−テトラキス(トリフルオロメチル)テトラシクロ[4.4.0.12,5
.17,10]−3−ドデセン、
8,8−ジフルオロ−9,9−ビス(トリフルオロメチル)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8,9−ジフルオロ−8,9−ビス(トリフルオロメチル)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8,8,9−トリフルオロ−9−トリフルオロメチルテトラシクロ[4.4.0.12,5
.17,10]−3−ドデセン、
8,8,9−トリフルオロ−9−トリフルオロメトキシテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8,8,9−トリフルオロ−9−ペンタフルオロプロポキシテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8−フルオロ−8−ペンタフルオロエチル−9,9−ビス(トリフルオロメチル)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8,9−ジフルオロ−8−ヘプタフルオロiso−プロピル−9−トリフルオロメチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8−クロロ−8,9,9−トリフルオロテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−
3−ドデセン、
8,9−ジクロロ−8,9−ビス(トリフルオロメチル)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8−(2,2,2−トリフルオロエトキシカルボニル)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8−メチル−8−(2,2,2−トリフルオロエトキシカルボニル)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン
などを挙げることができる。これらは、1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
これらの分子量については特に制限はないが、一般的には、5000〜500000程度であるのが好ましく、10000〜100000程度であるのがより好ましい。
光学異方性層1は自己支持性のあるシクロオレフィン系ホモポリマー及びコポリマーを含むポリマーフィルムであるのが好ましい。勿論、ポリマーフィルム等の支持体上に塗布により形成されたポリマー層であってもよいが、自己支持性のあるポリマーフィルムであるのがより好ましい。
光学異方性層1として用いるポリマーフィルムの製造方法については特に制限されず、種々の方法で製造されたポリマーフィルムを用いることができる。例えば、前記ポリマーフィルムは、溶融流延法、及び溶液流延法等いずれの方法により製造されたポリマーフィルムを用いてもよい。製膜条件については、特開2004−198952号公報等に詳細な記載があり、それらの記載を参考にして製造することができる。
前記光学異方性層1として用いるポリマーフィルム中には、シクロオレフィン系ホモポリマー又はコポリマーの他に、種々の添加剤を含有させてもよい。
前記ポリマーフィルムは、マット剤として微粒子を含有していてもよい。マット剤として使用可能な微粒子としては、二酸化珪素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成珪酸カルシウム、水和珪酸カルシウム、珪酸アルミニウム、珪酸マグネシウム及びリン酸カルシウムを挙げることができる。微粒子は、珪素を含むものが濁度が低くなる点で好ましく、特に二酸化珪素が好ましい。二酸化珪素の微粒子は、例えば、「アエロジル」R972、R972V、R974、R812、200、200V、300、R202、OX50、TT600{以上、日本アエロジル(株)製}などの市販品を使用することができる。酸化ジルコニウムの微粒子は、例えば、「アエロジル」R976及びR811{以上、日本アエロジル(株)製}の商品名で市販されており、いずれもマット剤として使用することができる。
マット剤の使用量は、シクロオレフィン系ホモポリマー及びコポリマーを含むポリマー成分100質量部に対して0.01〜0.3質量部とするのが好ましい。
また、上市されているシクロオレフィン系ポリマーとしては、ARTONシリーズ(JSR(株)製)、ZEONORシリーズ(日本ゼオン(株)製)、ZEONEXシリーズ(日本ゼオン(株)製)、エスシーナ(積水化学工業(株)製)を使用することができる。市販のポリマーフィルムを用いる場合は、延伸処理を施して、上記数式を満足するように、光学特性を調整してもよい。例えば、ZEONORシリーズのポリマーフィルムを用いる場合は、縦延伸(フィルム長手方向に対する延伸)及び/又は横延伸(フィルム幅方向に対する延伸)を施すことによって、光学異方性層1に要求される光学特性を満足するポリマーフィルムとすることができる。縦延伸倍率は1〜150%程度であるのが好ましく、1〜50%程度であるのがより好ましい。横延伸倍率は2〜200%程度であるのが好ましく、5〜100%程度であるのがより好ましい。
光学異方性層1として用いられるポリマーフィルムには、前記光学異方性層2又は偏光膜との密着性を良化するために、表面処理を施すのが好ましい。具体的方法としては、コロナ放電処理、グロー放電処理、火炎処理、酸処理、アルカリ処理または紫外線照射処理が挙げられる。また、下塗り層を設けることも好ましい。
3.偏光板
前記光学異方性層1と光学異方性層2とを有する、第1及び第2の光学異方性積層体は光学補償フィルムとして作製され、そのまま液晶表示装置に組み込むこともできるし、偏光膜と貼合して、偏光板として液晶表示装置に用いることもできる前記光学異方性積層体を、偏光膜の液晶セル側にして配置するのが好ましい。また、偏光膜の他方の面にも、セルロースアシレートフィルム等の保護フィルムが貼り合せられているのが好ましい。
偏光膜には、ヨウ素系偏光膜、二色性染料を用いる染料系偏光膜やポリエン系偏光膜があり、本発明にはいずれを使用してもよい。ヨウ素系偏光膜及び染料系偏光膜は、一般にポリビニルアルコール系フィルムを用いて製造する。
偏光膜の他方の表面に貼合される保護フィルムは、透明なポリマーフィルムが用いることが好ましい。透明であるとは、光透過率が80%以上であることを意味する。保護フィルムとしては、セルロースアシレートフィルム、及びポリオレフィンを含むポリオレフィンフィルムが好ましい。セルロースアシレートフィルムの中でも、セルローストリアセテートフィルムが好ましい。また、ポリオレフィンフィルムの中でも、環状ポリオレフィンを含むポリノルボルネンフィルムが好ましい。
保護フィルムの厚さは、20〜500μmであることが好ましく、50〜200μmであることがさらに好ましい。
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。
[光学補償フィルム1の作製]
(1)光学異方性層1−Aの作製
(1)−1 ドープの調製と流涎
負の固有複屈折を有さない可塑剤AA−2(エタンジオール/フタル酸(1/1モル比)との縮合物(数平均分子量1000))を酢酸封止したもの、および波長分散調整剤AB−1を含む下記の組成のポリマー溶液Aを30℃に加温し、流延ギーサーを通して直径3mのドラム上に流延した。支持体の表面温度は−5℃に設定し、塗布幅は200cmとした。流延部全体の空間温度は、15℃に設定した。流すドープの量、ダイのスリット幅などの上記以外の製造条件は、予備実験のデータにより最適な値となるよう適宜調整しておいた。
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ポリマー溶液Aの組成
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・平均置換度2.94のセルロースアセテート 100.0質量部
・メチレンクロライド(第1溶媒) 475.9質量部
・メタノール(第2溶媒) 113.0質量部
・ブタノール (第3溶媒) 5.9質量部
・平均粒子サイズ16nmのシリカ粒子 0.13質量部
(AEROSIL R972、日本アエロジル(株)製)
・負の固有複屈折を有さない可塑剤(前記AA−2) 12.0質量部
・波長分散調整剤(下記化合物AB−1) 2.0質量部
・クエン酸エステル 0.01質量部
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
Figure 0005525330
(1)−2 第一延伸工程
そして、流延部の終点部から50cm手前で、流延して回転してきたセルロースアシレートフィルム(ウェブ)を残留溶媒量270%でフィルム(ウェブ)をドラムから剥離し、ピンテンターによって搬送し、フィルム搬送方向に40%延伸した。ウェブをドラムから剥離したときの残留溶媒量を第一延伸工程開始時の残留溶媒量とした。なお、このときの残留溶媒量は、ドラムから剥離したウェブの一部をサンプリングして、120℃で2時間乾燥させる前後の質量変化から求めた。
なお、第一延伸工程におけるフィルムの延伸倍率(%)は、ドラム速度とテンター搬送
速度の比より求めた。また、延伸温度(ウェブの膜面温度)が−7℃となるようにドラムの温度を冷媒によって制御することで調節した。延伸速度は1000%/分で行った。
(1)−3 乾燥工程、第二延伸工程
第一延伸工程終了後、乾燥前におけるウェブの一部をサンプリングして、120℃で2時間乾燥させる前後の質量変化から残留溶媒量を求めた。
その後、乾燥(結晶化処理)工程として乾燥温度(フィルム膜面温度)が80℃となるように乾燥を行った。乾燥工程開始時の残留揮発分は、30%であった。残留溶媒量が5%となった時に、第二延伸工程を行うためにピンテンターによって搬送した。なお、前記乾燥温度は延伸ゾーンの温度を乾燥風によって制御することで調節した。
その後、第二延伸工程開始前の残留溶媒量を乾燥ゾーンにおけるウェブの一部をサンプリングして、上述の方法によって120℃で2時間乾燥させる前後の質量変化から求めた。その後、ピンテンターを用いてフィルム搬送方向と直交する方向に135℃で1%延伸した。延伸温度(フィルムの膜面温度)は乾燥風によって制御することで調節した。延伸速度は60%/分で行った。
なお、第二延伸工程におけるフィルムの延伸倍率(%)は、第二延伸工程開始前のピン
テンター間の距離と延伸後のピンテンター間の距離の差により求めた。
(1)−4 後乾燥工程、巻き取り
さらに第二延伸工程後のフィルムを140℃で20分乾燥した。
こうして、幅1400mm、および膜厚150μmのセルロースアシレートフィルムを得て、巻取り機により巻き取った。
得られたセルロースアシレートフィルムは、Re=75nm、Rth=70nm、Nz=1.4であり、光学異方性層1に要求される特性を満足していた。このフィルムを光学異方性層1−Aとして用いた。
(2)光学異方性層2−Aの形成
(2)−1 鹸化処理
温度60℃の誘電式加熱ロールを通過させ、上記で作製したフィルムの表面温度を40℃に昇温した後に、下記に示す組成のアルカリ溶液をバーコータを用いて14mL/m2で塗布し、110℃に加熱したスチーム式遠赤外線ヒーター((株)ノリタケカンパニー製)の下に10秒滞留させた後に、同じくバーコータを用いて純水を3mL/m2塗布した。この時のフィルム温度は40℃であった。次いで、ファウンテンコーターによる水洗とエアナイフによる水切りを3回繰り返した後に70℃の乾燥ゾーンに2秒滞留させて乾燥した。
────────────────────────────────────
鹸化処理用のアルカリ溶液の組成
────────────────────────────────────
・水酸化カリウム 4.7質量部
・水 15.7質量部
・イソプロパノール 64.8質量部
・プロピレングリコール 14.9質量部
・界面活性剤(C16H33O(CH2CH20)10H) 1.0質量部
────────────────────────────────────
(2)−2 配向膜の形成
上記作製したセルロースアセテートフィルムの片面に鹸化処理を施した。
その鹸化処理面に、下記の組成の配向膜塗布液を塗布、乾燥し、配向膜を形成した。その後、配向膜表面にラビング処理を施した。
配向膜塗布液の組成
――――――――――――――――――――――――――
下記の変性ポリビニルアルコール 10質量部
水 371質量部
メタノール 119質量部
グルタルアルデヒド 0.5質量部
――――――――――――――――――――――――――
Figure 0005525330
(2)−3光学異方性層の形成
下記組成の塗布液を調整した。棒状液晶化合物を含む塗布液(S1)の組成
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
下記の棒状液晶性化合物(I) 100質量部
光重合開始剤(イルガキュアー907、チバガイギー社製) 3質量部
増感剤(カヤキュアーDETX、日本化薬(株)製) 1質量部
下記のフッ素系ポリマー 0.1質量部
メチルエチルケトン 172質量部
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
Figure 0005525330
Figure 0005525330
この塗布液を、配向膜のラビング処理面に、バーコータを用いて連続的に塗布、乾燥、及び加熱(配向熟成)し、さらに紫外線を照射して、厚さ0.7μmの光学異方性層を形成した。この層は、後述する表中に示す通り、Re[+40]及びRe[−40]が等しくなく、傾斜配向状態に固定された棒状液晶を含有していること、また、光学異方性層2に要求されるReを満足する層であることがわかった。この層を、光学異方性層2−Aとする。この様にして、光学異方性層1−A及び光学異方性層2−Aを有する、光学補償フィルム1を作製した。
[光学補償フィルム2の作製]
光学補償フィルム1の光学異方性層1−A(セルロースアシレートフィルム)の作製に用いたポリマー溶液の組成を、以下の通り変更して、ポリマー溶液Bを調製した。
まず、可塑剤AA−2の12.0質量部を、可塑剤AA−1(エタンジオール/アジピン酸(1/1モル比)との縮合物(数平均分子量1000))の10.0質量部に代え、下記レターデーション調整剤BB−1を1.5質量部追加し、及び波長分散調整剤AB−1を除いた。この様にして、ポリマー溶液Bを調製した。
Figure 0005525330
このポリマー溶液Bを用いて、同様にしてセルロースアシレートフィルムを作製したが、但し、第一延伸工程の延伸倍率を30%に変更した。この様にして、セルロースアシレートフィルムを作製した。このフィルムは、Re=200nm、Rth=150nm、膜厚185μmであり、光学異方性層1としての特性を満足していた。このフィルムを光学異方性層1−Bとして用いた。
(2) 光学補償フィルム2の作製
この光学異方性層1−B上に、光学補償フィルム1と同様にして、光学異方性層2−Aを形成し、光学異方性層1−2及び光学異方性層2−1を有する光学補償フィルム2を作製した。
[光学補償フィルム3の作製]
(1)光学異方性層1−Cの作製
セルロースアセテートプロピオネート(CAP)の合成
セルロース(広葉樹パルプ)150質量部、酢酸75質量部を、還流装置を付けた反応容器に取り、60°Cに加熱しながら2時間激しく攪拌した。このような前処理を行ったセルロースは膨潤、解砕されてフラッフ状を呈した。反応容器を2°Cの氷水浴に30分間置き冷却した。別途、アシル化剤としてプロピオン酸無水物1545質量部、硫酸10.5質量部の混合物を作製し、−30°Cに冷却した後に、上記の前処理を行ったセルロースを収容する反応容器に一度に加えた。30分経過後、外設温度を徐々に上昇させ、アシル化剤の添加から2時間経過後に内温が25°Cになるように調節した。反応容器を5°Cの氷水浴にて冷却し、アシル化剤の添加から0.5時間後に内温が10°C、2時間後に内温が23°Cになるように調節し、内温を23°Cに保ってさらに3時間攪拌した。反応容器を5°Cの氷水浴にて冷却し、5°Cに冷却した25質量%含水酢酸120質量部を1時間かけて添加した。内温を40°Cに上昇させ、1.5時間攪拌した(熟成)。次いで反応容器に、50質量%含水酢酸に酢酸マグネシウム4水和物を硫酸の2倍モル溶解した溶液を添加し、30分間攪拌した。25質量%含水酢酸1000質量部、33質量%含水酢酸500質量部、50質量%含水酢酸1000質量部、水1000質量部をこの順に加え、セルロースアセテートプロピオネートを沈殿させた。得られたセルロースアセテートプロピオネートの沈殿は温水にて洗浄を行った。洗浄後、20°Cの0.005質量%水酸化カルシウム水溶液中で0.5時間攪拌し、洗浄液のpHが7になるまで、さらに水で洗浄を行った後、70°Cで真空乾燥させた。
NMR及び、GPC測定によれば、得られたセルロースアシレートは、アセチル(Ac)化度0.30、プロピオニル(Pr)化度2.63、重合度320のセルロースアセテートプロピオネートであった。
溶融製膜
(i)ペレット化
上記CAP 100質量部、可塑剤(ポリエチレングリコール(分子量600)5質量部、グリセリンジアセテートオレート4質量部)安定剤ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル0.1質量部、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト0.1質量部)、二酸化珪素部粒子(アエロジルR972V)0.05質量部、紫外線吸収剤(2−(2'−ヒドロキシ−3'、5−ジ−t−ブチルフェニル)−ベンゾトリアゾール0.05質量部、2,4−ヒドロキシ−4−メトキシ−ベンゾフェノン0.1質量部)を混合した。
これに下記構造の光学調整剤(レターデーション調整剤)を添加した。
Figure 0005525330
これらを100°Cで3時間乾燥し、含水率を0.1質量%以下にした後、2軸混練機を用い180°Cで溶融した後、60°Cの温水中に押し出しストランドとした後裁断し、直径3mm長さ5mmの円柱状のペレットに成形した。
(ii)溶融製膜
上記方法で調製したCAPのペレットを、露点温度−40°Cの脱湿風を用いて100°Cで5時間乾燥し含水率を0.01wt%以下にした。これを80°Cのホッパーに投入し、180°C(入口温度)から220°C(出口温度)に調整した溶融押出し機で溶融した。
これをTg−10°Cのキャスティングドラムで固化した。この時、各水準静電印加法(10kVのワイヤーをメルトのキャスティングドラムへの着地点から10cmのところに設置)を用い両端10cmずつ静電印加を行った。固化したメルトをキャスティングドラムから剥ぎ取り、巻き取り直前に両端(全幅の各5%)をトリミングした後、両端に幅10mm、高さ50μmの厚みだし加工(ナーリング)をつけた後、未延伸フィルムを得た。
(iii).延伸
縦(MD)延伸
上記溶融製膜、溶液製膜で得たCAPフィルム(残留溶剤は0.1重量%以下)を、2対のニップロールを用い、Tg+15°Cで20%の縦延伸を行った。
横(TD)延伸
縦延伸後にテンターを用いてTg+10°Cで80%の倍率で横方向に延伸した。
(iv).熱処理
その後、熱処理温度130℃、熱処理時搬送張力10.8N/cm2、及び熱処理時間50秒で熱処理工程を行なった。得られたCAPフィルムのRe=170nm、Rth=180nmであり、光学異方性層1としての光学特性を満足していた。このCAPフィルムを光学異方性層1−Cとして利用した。
(2) 光学補償フィルム3の作製
この光学異方性層1−C上に、光学補償フィルム1と同様にして、光学異方性層2−Aを形成することにより、光学異方性層1−C及び光学異方性層2−Aを有する光学補償フィルム3を作製した。
[光学補償フィルム4の作製]
(1)光学異方性層1−Dの作製
光学異方性層1−3用のCAPフィルムの作製において、縦延伸をせず、横延伸を50%とした以外は、光学異方性層1−A用CAPフィルムと同様にして、CAPフィルムを作製した。このCAPフィルムを光学異方性層1−Dとして利用した。
(2)光学補償フィルム4の作製
この光学異方性層1−D上に、光学補償フィルム1と同様にして、光学異方性層2−Aを形成し、光学補償フィルム4を作製した。
[光学補償フィルム5の作製]
(1)光学異方性層1−Eの作製
下記組成物をミキシングタンクに投入し、攪拌して各成分を溶解した後、平均孔径34μmのろ紙及び平均孔径10μmの焼結金属フィルターでろ過した。
――――――――――――――――――――――――――――――
環状ポリオレフィン溶液
――――――――――――――――――――――――――――――
アートンG(JSR株式会社製) 150質量部
メチレンクロライド 550質量部
エタノール 50質量部
――――――――――――――――――――――――――――――
次に上記方法で調製した開環重合環状ポリオレフィン溶液を含む下記組成物を、分散機に投入し、マット剤分散液を調製した。
――――――――――――――――――――――――――――――――――
マット剤分散液
――――――――――――――――――――――――――――――――――
平均粒径16nmのシリカ粒子
(aerosil R972 日本アエロジル(株)製) 2質量部
メチレンクロライド 75質量部
エタノール 5質量部
環状ポリオレフィン溶液 10質量部
――――――――――――――――――――――――――――――――――
上記環状ポリオレフィン溶液を100質量部と、マット剤分散液を1.1質量とを混合し、製膜用ドープを調製した。
(環状ポリオレフィンフィルムの作製)
上述のドープをバンド流延機を用いて流延した。残留溶剤量が約22質量%でバンドから剥ぎ取ったフィルムを、ロール搬送しながら140℃で乾燥し巻き取った。作製された環状ポリオレフィンフィルムの厚さは100μmであった。
続いてこのフィルムを縦一軸延伸機において、フィルム膜面温度170℃、延伸倍率2%で縦延伸した。その後、テンター延伸機において、フィルム膜面温度170℃、延伸倍率60%で横延伸し、ロールフィルムとして巻き取ることで、二軸延伸したシクロオレフィン系ポリマーフィルムを作製した。このフィルムの厚みは75μm、Re=90nm、及びRth=95nmであり、光学異方性層1としての特性を満足していた。このフィルムを光学異方性層1−Eとして使用した。
(2)光学補償フィルム5の作製
この光学異方性層1−E上に、光学補償フィルム1と同様にして、光学異方性層2−Aを形成し、光学補償フィルム5を作製した。
[光学補償フィルム6の作製]
(1)光学異方性層1−Fの作製
上記光学異方性層1−E用として作製したフィルムの作製工程中、ドープ量を代えて、それ以外は同様にしてフィルムを作製した。得られたフィルムのRe=200nm、及びRth=200nmであり、光学異方性層1としての特性を満足していた。このフィルムを、光学異方性層1−Fとして用いた。
(2)光学補償フィルム6の作製
光学異方性層1−F上に、光学補償フィルム1と同様にして、光学異方性層2−Aを形成し、光学補償フィルム6を作製した。
[光学補償フィルム7の作製]
光学補償フィルム1の作製において作製した光学異方性層1−A(セルロースアシレートフィルム)上に、用いたバーコータの種類を代えた以外は、光学異方性層2−Aと同様にし、光学異方性層2−Bを形成した。得られた光学異方性層2−Bは、膜厚0.55μmであった。この層は、後述する表中に示す通り、Re[+40]及びRe[−40]が等しくなく、傾斜配向状態に固定された棒状液晶を含有していること、また、光学異方性層2に要求されるReを満足する層であることがわかった。この様にして、光学異方性層1−A及び光学異方性層2−Bを有する、光学補償フィルム7を作製した。
[光学補償フィルム8の作製]
光学補償フィルム1の作製において作製した光学異方性層1−A(セルロースアシレートフィルム)上に、用いたバーコータの種類を代えた以外は、光学異方性層2−Aと同様にし、光学異方性層2−Cを形成した。得られた光学異方性層2−Cは、膜厚0.35μmであった。この層は、後述する表中に示す通り、Re[+40]及びRe[−40]が等しくなく、傾斜配向状態に固定された棒状液晶を含有していること、また、光学異方性層2に要求されるReを満足する層であることがわかった。この様にして、光学異方性層1−A及び光学異方性層2−Cを有する、光学補償フィルム8を作製した。
[光学補償フィルム9の作製]
(1)光学異方性層1−Gの作製
光学補償フィルム1の光学異方性層1−Aの作製に用いたポリマー溶液の組成から、を以下の成分をのぞいて、ポリマー溶液を調製した。
・負の固有複屈折を有さない可塑剤(前記AA−2) 12.0質量部
・波長分散調整剤(前記化合物AB−1) 2.0質量部
・クエン酸エステル 0.01質量部
このポリマー溶液を用い、さらに第一延伸工程、乾燥工程、第二乾燥工程を行わずに、セルロースアシレートフィルムを作製した。このフィルムは、Re=5nm、及びRth=80nmであり、光学異方性層1に要求される特性を満足していなかった。このフィルムを光学異方性層1−Gとして用いた。
(2)光学補償フィルム9の作製
この光学異方性層1−G上に、光学補償フィルム1と同様にして、光学異方性層2−Aを形成することにより、光学補償フィルム9を作製した。
[光学補償フィルム10の作製]
光学異方性層1−A用として作製したセルロースアシレートフィルムを、光学補償フィルム10として用いた。
[光学補償フィルム11の作製]
(1)光学異方性層1−Hの作製
(セルロースアシレートの調製)
特開平10−45804号公報、同08−231761号公報に記載の方法で、セルロースアシレートを合成し、その置換度を測定した。具体的には、触媒として硫酸(セルロース100質量部に対し7.8質量部)を添加し、アシル置換基の原料となるカルボン酸を添加し40℃でアシル化反応を行った。この時、カルボン酸の種類、量を調整することでアシル基の種類、置換度を調整した。またアシル化後に40℃で熟成を行った。さらにこのセルロースアシレートの低分子量成分をアセトンで洗浄し除去した。
(低置換度層用セルロースアシレート溶液の調製)
下記の組成物をミキシングタンクに投入し、撹拌して、各成分を溶解し、セルロースアシレート溶液を調製した。
・セルロースアセテート(置換度2.45) 100.0質量部
・テレフタル酸/コハク酸/プロピレンクリコール/エチレングリコール共重合体
(共重合比[モル%]=27.5/22.5/25/25) 19質量部
・メチレンクロライド 365.5質量部
・メタノール 54.6質量部
(高置換度層用セルロースアシレート溶液の調製)
下記の組成物をミキシングタンクに投入し、撹拌して、各成分を溶解し、セルロースアシレート溶液を調製した。
・セルロースアセテート(置換度2.79) 100.0質量部
・トリフェニルホスフェート 6.0質量部
・ジフェニルビフェニルホスフェート 5.0質量部
・シリカ微粒子 R972(日本エアロジル製) 0.15質量部
・メチレンクロライド 395.0質量部
・メタノール 59.0質量部
(セルロースアシレート系フィルムの作製)
前記低置換度層用セルロースアシレート溶液を膜厚56μmのコア層になるように、前記高置換度層用セルロースアシレート溶液を膜厚2μmのスキンA層及びスキンB層になるように、それぞれ流延した。得られたウェブ(フィルム)をバンドから剥離し、乾燥させた後に巻き取った。
続いてこのフィルムを縦一軸延伸機において、フィルム膜面温度180℃、延伸倍率40%で縦延伸した。その後、テンター延伸機において、フィルム膜面温度150℃、延伸倍率5%で横延伸し、ロールフィルムとして巻き取ることで、二軸延伸したセルロースアシレート系フィルムを作製した。
このフィルムの厚みは75μm、Re=180nm、及びRth=140nmであり、光学異方性層1としての特性を満足していた。このフィルムを光学異方性層1−Hとして使用した。
(2)光学補償フィルム11の作製
この光学異方性層1−H上に、光学補償フィルム1と同様にして、光学異方性層2−Aを形成し、光学補償フィルム11を作製した。
[光学補償フィルム12の作製]
(1)光学異方性層1−Iの作製
上記光学異方性層1−H用フィルムの作製工程中、フィルム膜面温度180℃で延伸倍率40%の縦延伸を行ったのを、フィルム膜面温度190℃で延伸倍率60%の縦延伸を行い、及び延伸倍率5%の横延伸を、横延伸を行わなかった、なしに変えた以外は同様にしてフィルムを作製した。
このフィルムの厚みは75μm、Re=250nm、及びRth=150nmであり、光学異方性層1としての特性を満足していた。このフィルムを光学異方性層1−Iとして使用した。
(2)光学補償フィルム12の作製
この光学異方性層1−I上に、光学補償フィルム1と同様にして、光学異方性層2−Aを形成し、光学補償フィルム12を作製した。
[偏光板の作製]
以上のように作製した光学補償フィルム1〜12を、以下の表に記載の配置で、偏光膜と貼り合せることにより、偏光板をそれぞれ作製した。
偏光膜は、延伸したポリビニルアルコールフィルムにヨウ素を吸着させて作製したものを用いた。偏光膜の、光学補償フィルム1〜12との貼着面と反対側の面には、市販のセルロースアセテートフィルム(商品名「フジタック」、富士フイルム(株)製)を鹸化処理した後、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて貼り付けた。
[TNモード液晶表示装置]
TNモード液晶セルの上下に貼り合せることで、実施例1〜実施例10、比較例1〜比較例3に対応する液晶表示装置1〜13をそれぞれ作製した。
なお、使用したTNモード液晶セルは、液晶表示装置(AL2216W、日本エイサー(株)製)から一対の偏光板を剥がしたものである。剥離した偏光板の代わりに、上記にて作製した各偏光板を、光学補償フィルムが液晶セル側となるように粘着剤を介して、観察者側及びバックライト側に一枚ずつ貼り付けた。この様にして、TNモード液晶表示装置を作製した。
[視野角コントラストの評価]
白表示及び黒表示時の、上下左右の斜め方向(極角80度)の輝度を測定し、コントラストを算出した。結果を下記表に示す。
Figure 0005525330
1 液晶層
2、3 セル基板
4、5 偏光子
6、6’ 光学異方性層2
7、7’ 光学異方性層1
10 液晶セル
12、12’ 光学異方性積層体
6a、6’a 液晶分子
6b、6’b ラビング方向
6c、6’c 傾斜角
6d、6’d 傾斜軸
6e、6’e 傾斜方位

Claims (5)

  1. 互いの吸収軸を直交にして配置されている第1及び第2の偏光膜、
    前記第1及び第2の偏光膜の間に配置される、第1及び第2のセル基板(但し、第1のセル基板が前記第1の偏光膜により近い位置に配置され、及び第2のセル基板が前記第2の偏光膜により近い位置に配置されるものとする)と、
    その間に配置される液晶層とを少なくとも有する捩れ配向モードの液晶セル、並びに
    前記第1の偏光膜と前記液晶セルとの間、及び前記第2の偏光膜と前記液晶セルとの間にそれぞれ、少なくとも2つの光学異方性層1及び光学異方性層2を有する第1及び第2の光学異方性積層体を有し、液晶セル側から、光学異方性層2及び光学異方性層1の順序で配置される液晶表示装置であって、
    前記第1及び第2の光学異方性積層体のそれぞれの、前記光学異方性層1、及び光学異方性層2の配置の順序が、液晶セルを中心として対称的であり、
    前記光学異方性層1が、波長550nmにおける面内レターデーションが50〜300nm、厚み方向のレターデーションが50〜250nmであり、
    前記光学異方性層2が、傾斜配向状態に固定された棒状液晶を含有し、及び波長550nmにおける面内レターデーションが0〜100nmであり、
    前記第1の光学異方性積層体中の前記光学異方性層2の傾斜方位と第1のセル基板の近傍における前記液晶の傾斜方位が、互いに反平行であり、且つ前記第2の光学異方性積層体中の前記光学異方性層2の傾斜方位と前記液晶層の第2のセル基板の近傍における前記液晶の傾斜方位が、互いに反平行である捩れ配向モード液晶表示装置。
  2. 前記光学異方性層2が、下記式(I)を満たす請求項1に記載の捩れ配向モード液晶表示装置:
    式(I) 20nm ≦Re[+40]−Re[−40]≦125nm
    式中、Re[θ]は、法線方向から角度θ(°)だけ傾いた方向から計測した面内レターデーション値である。
  3. 前記光学異方性層1が、少なくとも一種のセルロースアシレートを含有するポリマー溶液を流延してウェブを形成する流延工程と、前記流延工程において形成された前記ウェブを残留溶媒量が100〜300質量%である間に、搬送方向に5〜100%延伸する延伸工程と、前記ウェブを膜面温度50〜150℃で乾燥する乾燥工程とを含み、前記乾燥工程の開始残留揮発分が10〜150質量%であり且つ終了残留揮発分が10〜50質量%である製造工程によって作製されたフィルムである請求項1または2に記載の捩れ配向モード液晶表示装置。
  4. 光学異方性層1が、プロピオニル基またはブチリル基を含むセルロースアシレートの少なくとも1種を含むフィルムである請求項1〜のいずれか1項に記載の捩れ配向モード液晶表示装置。
  5. 光学異方性層1が、シクロオレフィン系ホモポリマー及びコポリマーから選択される少なくとも一種を含むポリマーフィルムである請求項1〜3のいずれか1項に記載の捩れ配向モード液晶表示装置。
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