(第1の実施形態)
以下、ドラム式洗濯機に適用した第1の実施形態につき、図1ないし図6を参照して説明する。
まず、図6に示すドラム式洗濯機(以下、単に洗濯機という)の全体構造につき説明する。外殻を形成する箱状の筐体1の前面部(図6で右側)のほぼ中央部には、洗濯物出入口2を形成し、該出入口2を開閉する扉3を設けている。また、筐体1の前面部の上部には、操作パネル4を設けており、その裏側に運転制御用の制御装置5を設けている。
筐体1の内部には、水槽6を配設している。この水槽6は、軸方向を前後(図6で右左)とする横軸円筒状をなし、筐体1の底板1a上に左右一対(一方のみ図示)のサスペンション7(詳細は後述する)によって前上がりの傾斜状にて弾性支持されている。
水槽6の背面部には、モータ8を取付けている。このモータ8は、この場合、例えば直流のブラシレスモータからなるもので、アウターロータ形であり、ロータ8aの中心部に取付けた図示しない回転軸を、軸受ブラケット9を介して水槽6の内部に挿通し、後述するドラム10の背面部の中央部に連結している。
前記ドラム10は、水槽6内部に配設され洗濯物を収容する洗濯槽として機能し、その軸方向を前後となす横軸円筒状をなすもので、前記した如くモータ8の回転軸と連結されて水槽6と同軸の前上がりの傾斜状に支持されている。その結果、ドラム10はモータ8によりダイレクトに駆動されて横軸周りに回転し、該モータ8はドラム10を回転させるドラム駆動装置として機能する。
また、ドラム10の周側部(胴部)には、通水、通風可能な小孔11を全域にわたって多数形成しており、これに対し水槽6はほぼ無孔状をなし貯水可能な構成としている。これら、ドラム10および水槽6は、共に前面部に開口部12,13を有しており、そのうちの水槽6の開口部13と前記洗濯物出入口2との間に、環状のベローズ14が装着されている。これにより、洗濯物出入口2は、ベローズ14、水槽6の開口部13、およびドラム10の開口部12を介して、ドラム10の内部に連なる形態としている。
貯水可能な水槽6の最低部位には、途中に排水弁15を介して排水管16を接続し、機外に排水可能としている。この水槽6の背面側から上方および前方にわたって、乾燥ユニット17を配設している。この乾燥ユニット17は、送風装置19、加熱装置20、および図示しない除湿手段を備えた循環ダクト18からなり、水槽6内から排出された空気中の水分を除湿し、次いで加熱して、所謂乾燥風を生成し、水槽6内に戻すことを繰り返す循環を行ない、洗濯物を乾燥させるようにしている。
ここで、前記したサスペンション7の具体構造につき述べる。図6に加えて図5のサスペンション7単体の縦断面図に示すように、サスペンション7は、前記筐体1の底板1aが有する取付板21側に取付けた円筒状のシリンダ22と、前記水槽6が有する取付板23側に取付けたシャフト24とを備えた構成としている。詳細には、シリンダ22の下端部にシリンダ連結部22aを被着しており、この連結部22aを底板1aの取付板21にゴムなどの弾性座板25等を介してナット26で締結することにより、該シリンダ22を底板1a側の取付板21に取付けている。
一方、シャフト24は、磁性部材からなるシャフト主部24aと、その上端部に一体的に連結された磁性部材からなるシャフト連結部24bとから構成されており、この連結部24bを水槽6の取付板23に同様の弾性座板27等を介してナット28で締結することにより、該シャフト24を水槽6の振動に追従して一体的に上下方向等に振動する連結構成としている。
そして、前記シリンダ22の内部には、図5に明示するように概略構成としては、前記シャフト24を直線的に往復動(上下動)可能に支持する軸受手段が、上,下部に離間して固定的に設けられ、その離間した中間部位には後述する機能性流体34および磁場発生装置35などを介在した構成としている。
そこで、先ず上部側に設けられた軸受手段につき説明すると、シリンダ22の開口上端部に中空筒状の上部軸受ケース29を圧入或はカシメ手段により取付け、その段差状をなす上半部を開口上端から突出した構成としている。該軸受ケース29の中空内部には、上端部にポリウレタンやゴムなどの弾性部材、例えばガラス繊維入りのポリウレタン製とする筒状の摩擦リング30が嵌合状態に装着され、その下部に接合するように例えば焼結含油メタルからなる軸受31が圧入状態に嵌合せられ、更に、この軸受31の下部に位置してシール部材32が、上部軸受ケース29と後述する上部ヨーク38との間で挟持されるように嵌合固定されていて、これら中空部の中心に挿通されるシャフト24と摺接する状態に組み込まれている。
これに対し、下部側に配置された軸受手段につき説明すると、これはシリンダ22のほぼ中間部に位置して、円盤状の下部軸受ケース33を圧入或はカシメ手段により固定的に取付けている。該軸受ケース33の中空内部には、前記したと同じ焼結含油メタルからなる軸受31が圧入状態に嵌合され、その上部に前記同様のシール部材32が下部軸受ケース33と後述する下部ヨーク40との間で挟持されるように嵌合固定されている。
この結果、シリンダ22の上端部および中間部(下部)に位置する軸受手段により、シリンダ22内に挿通されたシャフト24は直線的に上下動(往復動)可能に支持される。また、シリンダ22の下部軸受手段以下は、シャフト24の下端側が上方への抜け止め状態のもとに往復動可能な空洞43を形成するとともに、その側方に開口した小孔44(詳細は後述する)を有している。
ここで、まず前記磁場発生装置35の構成につき述べると、本実施形態では磁場を発生するコイル36を上下2段に配置し(個々には符号36a、36bで示す)、これを筒状のボビンケース37内に巻装した構成としている。このボビンケース37は、例えばボビンに巻装したコイル36を樹脂モールドした構成からなり、このボビンケース37の樹脂モールドした外周面側をシリンダ22の内周面に嵌合して固定され、その上部には前記シール部材32を下方から挟むようにして上部ヨーク38が同じく嵌合固定されている。
また、上下2段のコイル36a、36b間には、同様に中間ヨーク39が介在され、最下段にはシール部材32を挟むようにして下部ヨーク40が嵌合固定されている。なお、中間ヨーク38を利用して、直列に接続された両コイル36a、36bから夫々引出してなるリード線41を外部に導出可能としている。この導出部位には、短円筒状のブッシュ42がシリンダ22に被着され、該ブッシュ42を介して外部に導出した部分のリード線41の保護をなしている。また、ブッシュ42を有するリード線41の導出部位(出口)の真下である垂下部に、前記したシリンダ22の小孔44が配置されている。
次いで、シリンダ22内に収容された前記機能性流体34につき説明する。この機能性流体34は、前記磁場発生装置35とシャフト24との間に形成された間隙45に充填されている。すなわち、ボビンケース37および各ヨーク38、39、40と、これら内部に挿通されたシャフト24に対し、図示縦方向に連通する間隙45が形成される組込み構成としており、そのうち各ヨーク38、39、40とシャフト24との隙間は狭小に形成され、その上,下部は前記シール部材32により漏洩しないよう封鎖している。
ここで、機能性流体34の特性等につき述べると、これは外部から加える物理量を制御することで粘性等のレオロジー的性質が機能的に変化する流体であって、具体的には電気的エネルギーの印加により粘性が変化する流体で、例えば、磁界(磁場)の強度に応じて粘性特性が変化する磁気粘性流体(MR流体)、或は電界(電場)の強度に応じて粘性特性が変化する電気粘性流体(ER流体)などが採用可能である。
なお、前者の磁気粘性流体は、例えばオイルの中に鉄、カルボニル鉄などの強磁性粒子を分散させたものであり、磁界が印加されると強磁性粒子が鎖状のクラスタを形成することで見かけ上の粘度が上昇する特性を利用するもので、本実施形態では該磁気粘性流体を採用し、これを通電制御する前記磁場発生装置35を備えた構成としたもので、該磁場発生装置35は所謂フィールド発生装置として機能する。
従って、リード線41を通してコイル36に流される電流値に応じた磁界を発生し、上記機能性流体34たる磁気粘性流体の粘性を制御するもので、その発生する磁界は電流値により可変であることから、該磁気粘性流体の粘性を可変に制御できるものである。
一方、シャフト24を構成するシャフト連結部24bの下部には、ばね受け座45を嵌合固定している。これと離間対向して、シリンダ22の上端部の前記軸受ケース29の段差部29aとの間に、圧縮コイルスプリングからなるコイルばね46を張設しており、つまりばね受け座45を介してシャフト24を常に軸方向の上方向に付勢するように装着されている。
上記構成にてサスペンション7が構成され、該サスペンション7は水槽6と筐体1の底板1aとの間に組込まれ、以って筐体1の底板1a上に水槽6を弾性的に支持することで防振支持するようにしている。
ところで、上記したようにコイル36a、36bから引出したリード線41はシリンダ22外に導出し、図示しない駆動回路等に配線接続される。このリード線41の配線処理につき、図1ないし図4を参照して説明する。まず、図1のサスペンション7の外観斜視図に示すように、シリンダ22の外面に配線固定部材47が被着され、これにシリンダ22外に導出された部分の前記リード線41を、複数箇所において固定保持することで不要な振動状態を抑えるようにしている。
以下、具体的に説明すると、図2は、配線固定部材47の単体構造を示す斜視図で、同図(a)は表面側から見た斜視図、同図(b)は裏面側から見た斜視図を示している。図示するように、配線固定部材47は絶縁性の樹脂材料にて一体成形され、前記シリンダ22の外面に被着するための縦方向に延びる主体部47aと、その上下部から夫々左右方向に延びる複数の腕部47bを有し、全体形状として横向きのH字状(以下、単に横H字状という)をなしている。
これら主体部47aおよび腕部47bは、共にその横断面形状がシリンダ22の円筒状に沿うように円弧状をなすとともに、各腕部47bは弾性を有し、本実施形態では対向する2つの腕部47bを一対としてシリンダ22の外面を径方向に、上下部の2箇所で弾性的に把持し、且つ円筒状外面にほぼ密着する状態で被着するようにしている。
しかして、シリンダ22に対し配線固定部材47を弾性変形を利用して被着するため、前記した一対の腕部47bが形成する自由状態における円弧状の内径寸法、および各腕部47b先端部間の開口幅S(図2参照)を、シリンダ22の外径寸法より径小に設定してある。また、この一対の腕部47bによる着脱を円滑で容易にするため、各腕部47bの延出端部には、円弧状に形成するとともに先端が外方に向けて折曲形成された摘み部48を設けている。
従って、上記開口幅Sは、詳細には一対の腕部47bの対向する摘み部48が形成する最小幅に相当するもので、この開口幅Sを利用して、シリンダ22の横方向から押圧すると、一対の腕部47bは、円弧状をなしていることから円滑に拡開変形されて挿入され、そして縮小することでシリンダ22を弾性的に把持し、主体部47aと共にシリンダ22外面にほぼ密着状態に被着される。逆に、取り外す場合には、一対の腕部47bの摘み部48を、反把持方向である拡開する方向に弾性変形させることで容易に外すことができ、所謂弾性的に着脱容易な被着形態としている。
この場合、シリンダ22と配線固定部材47は共に円弧形状であることから、弾性力を利用した被着形態のみでは、該配線固定部材47が振動や衝撃等を受けて回動したり上下方向に移動するなどの滑り移動するおそれがある。そこで、本実施形態では配線固定部材47の主体部47a下部の裏面側に突出する凸部49を設けている。この凸部49は、前記したシリンダ22の空洞43部位に形成した小孔44(図5参照)と嵌合する形状としている。この凸部49と小孔44との所謂凹凸嵌合により、弾性的に被着された配線固定部材47が回動および上下動するのを阻止され、所謂滑り止め手段として有効に機能する。なお、上記小孔44に代えて貫通しない凹部形状でもよいし、或は凹凸配置を逆配置とする構成にしてもよい。
更に、本実施形態ではリード線41のシリンダ22からの導出部位に円形状のブッシュ42を装着しているが、このブッシュ42の周囲たる外形形状に係合する切欠溝50を配線固定部材47の中央上端部に形成している。従って、係合状態では配線固定部材47の回動方向の移動を阻止できるとともに、その真下に位置する凸部49とシリンダ22の小孔44との凹凸嵌合とを加えて、配線固定部材47の如何なる方向への滑り移動に対しても確実に阻止する。
しかも、切欠溝50をブッシュ42に係合することで、垂下部に位置する裏面側の見えない凸部49と小孔44の位置合わせも容易にできるなど、シリンダ22に対し配線固定部材47を被着する際の位置決め手段として有効に機能する。なお、切欠溝50は上方を開放した溝形状とし、導出されたリード線41に妨げられることなく、ブッシュ42の周囲に容易に係合することができる点で有利であるが、この形状に限らず少なくともブッシュ42の周囲の一部に係合する形状の溝部であればよい。
上記のようにシリンダ22に着脱可能に配線固定部材47を被着する構成につき述べたが、この配線固定部材47に、シリンダ22外に導出されたリード線41を固定保持する構成につき説明する。特に図2(a)に示すように、主体部47aの中間部の右寄りに矩形容器状に隆起した形態の第1の台部51を形成し、また主体部47aの下部の左寄りに同形態の第2の台部52を形成している。これらの隆起した平坦な上面の中心には、例えば円形の取付孔51a、52aを夫々設けるとともに、各上面の右端および左端に突出したリブ51b、52bを設けている。但し、これら第1、第2の台部51、52は、そのリブ51b、52bが右,左逆の配置であるなどの差異は有するが、実質的に同じ形状で同じ大きさに形成されている。
そして、特に図3の分解斜視図、図4の平面図には、上記第2の台部52に取付けられ、リード線41をクランプした配線保持具53の構成および取付け構造を示している。この配線保持具53は、大略リード線41を巻き締め状態にクランプする平帯状のベルト部54と、該ベルト部54を巻き締め状態にロックするロック部55と、配線保持具53を取付けるための矢尻形状のスナップ部56とを備えた構成からなる。
上記ベルト部54は、リード線41を保持する一側面に鋸歯状部57(破線で示す)を有し、前記ロック部55の挿通口58に挿通すると、図示しないロック片が上記鋸歯状部57と係合してベルト部54の抜け止めがなされ、リード線41をクランプした状態に保持される。なお、本実施形態のリード線41は、コイル36a、36bから引き出された2本の細線からなること、および絶縁被覆を傷つけないように、例えば絶縁性のチューブ59を被嵌した形態のもとにクランプし安全確実に巻き締め保持されるようにしている(以下、チューブ59を被嵌したものでも単にリード線41ともいう)。
しかして、リード線41を保持した配線保持具53を、そのスナップ56の矢尻形状部分の弾性変形を利用して取付孔52aに圧挿することで、抜け止め状態に係合保持される。この場合、ベルト部54の先端部である角形端部が前記リブ52bの側面に近接状態(当接状態でも可)に相対するように配置される(図4参照)。このため、リード線41を保持した配線保持具53が回動する方向に移動しようとした場合、ベルト部54の先端部がリブ52bの側面に衝止され、その回動を阻止される。
これに対し、他の第1の台部51においても実質的に上記同様に共通の配線保持具53のもとに、リード線41を保持した状態に取付固定され、この複数箇所(2箇所)で固定保持されることで、リード線41の移動は確実に拘束される。また、上記リブ51b、52bとベルト54の先端部が衝止し、配線保持具53の回動を規制するようにしているが、これに限らず、例えば配線保持具53の外形形状の一部をリブ51b、52bと近接して対峙する構成として、回動を阻止するようにすることも可能である。
次に、上記構成の洗濯機の作用を述べる。
本実施形態の横軸周りのドラム10を備えた洗濯機では、洗い、すすぎ、脱水、および乾燥の各行程において、制御装置5がドラム10を夫々適正な回転速度にて駆動制御することで実行される。そして、ドラム10内に収容された洗濯物の偏荷重などに起因して、弾性的に支持された水槽6は上下方向を主体に振動する。この水槽6の上下振動に応動して、サスペンション7では、水槽6に一体的に連結されたシャフト24が、コイルばね46を伸縮させながらシリンダ22内を上下方向に振動(往復動)する。上記コイルばね46は、その伸縮作用により振動を吸収して筐体1(底板1a)側への振動伝達を効果的に阻止する。
一方、シリンダ22内では、シャフト24が上部軸受手段を構成する上部軸受ケース29内の摩擦リング30、軸受31、シール部材32、また下部軸受手段を構成するが下部軸受ケース33内の軸受31、シール部材32の中空の内周面を摺動しながら上下方向に振動する。この場合、摩擦リング30との摩擦作用は所定の摩擦抵抗を有するように設定してあり、該シャフト24の上下方向の振動、つまり水槽6の振動振幅を減衰する作用として補助的に機能する。
そして、上,下部軸受手段の中間に配置されたフィールド発生装置たる磁場発生装置35とシャフト24との間には機能性流体34(ここでは、磁気粘性流体)が充填されている。すなわち、上、中、下に配置された各ヨーク38、39、40と、ボビンケース37とシャフト24との間の間隙45に機能性流体34が充填されているため、その粘性によりシャフト24の上下動に対する摩擦抵抗として作用し、水槽6の振動振幅を減衰する。
しかも、ドラム10を回転駆動する運転時には、磁場発生装置35のコイル36に通電するようにしており、磁場が発生する。これにより、上下の2段に配置した各コイル36a、36bの周りに磁路が形成され、そのうちの特に磁束密度の高い各ヨーク38、39、40とシャフト24との間にあって、狭小の間隙45内の機能性流体34に磁界が与えられると、この部位における磁気粘性流体の粘度が高まり、シャフト24の上下動(往復動)に対する摩擦抵抗が増大し、結果として水槽6の振動振幅を速やかに減衰する。なお、例えば故障等により通電されず磁場発生装置35が機能しない場合にあっても、前記したように少なくとも上部軸受手段に設けられた摩擦リング30による減衰作用が得られるようにしている。
ところで、上記コイル36に通電するためのリード線41は、シリンダ22の中腹部から引き出され外部に導出されている。シリンダ22は、筐体1の底板1a側にゴム等の弾性座板25を介して取付固定されているため、水槽6の大きな振動が直接伝達されることはない。すなわち、水槽6の振動は該水槽6に直結されたシャフト24に直接伝達される。この、シャフト24の上下方向の振動は、コイルばね46の伸縮作用により吸収され、該コイルばね46の下端部を支持するシリンダ22側(具体的には、軸受ケース29を介して)には大きな振動振幅が生じ難いので、リード線41を大きな振動を生じないシリンダ22側から引き出すことはリード線41を保護する上で有効である。
しかしながら、シリンダ22には上方からコイルばね46を通して脈動的に振動による押圧力が加わり、また下端部は弾性座板25などで弾性支持されていることから、該シリンダ22は振幅は比較的小さいが横振れも含めて多くの振動が発生する。これらの振動は、ブッシュ42を介して外部に導出されたリード線41の出口部分に、集中的に屈伸作用等が継続して発生するストレスを与えることになり、延いては断線等を招き本来の減衰機能を得られなくなる。
そこで本実施形態では、シリンダ22の外面に配線固定部材47を被着し、これにシリンダ22外に導出されチューブ59を被嵌した部分の前記リード線41を複数箇所において固定保持し、リード線41の不要な振動状態を抑えるようにしている。具体的には、シリンダ22に腕部47bにて弾性的に把持するようにして被着した配線固定部材47において、その2箇所の第1、第2の台部51、52に、リード線41をクランプした配線保持具53を、そのスナップ部56を取付孔51a、52aに夫々圧挿することで取付固定している。
これにより、ブッシュ42からシリンダ22外に導出され2箇所で保持されたリード線41は、シリンダ22に生じた振動と一体的に振動し、リード線41がシリンダ22と異なる振動を生じる場合のように、特にリード線41の出口部分(ブッシュ42の部分)に振動による屈伸作用等のストレスが集中するのを回避できる。また、リード線41は上記2箇所で固定保持されているに加えて、図3、4に示すようにリード線41をクランプした配線保持具53自体の回動を、ベルト部54の先端部がリブ52b(51b)に衝止されることで阻止することができ、リード線41を安定保持するに有効である。
以上説明したように、第1の実施形態に示す洗濯機によれば、内部に回転ドラム10を有する水槽6を、防振支持するサスペンション7にあって、該サスペンション7は筒状のシリンダ22内に電気的エネルギーの印加により粘性が変化する磁気粘性流体からなる機能性流体36を収容し、該流体36と、前記水槽6の振動に伴い上下方向に往復動するシャフト24との間に生じる摩擦力により振動振幅を効果的に減衰する。上記電気的エネルギーを印加するリード線41は、前記シリンダ22外に導出した部分を、前記シリンダ22外面に被着した配線固定部材47に固定保持して配線するようにした。
シリンダ22から外部に導出されたリード線41は、シリンダ22の振動とほぼ同調するように一体的に振動するため、所謂振動のずれなどによるストレスの集中が回避できる。例えば、シリンダ22の引出し口であるブッシュ42から導出されたリード線41が自由状態の配線では、該ブッシュ42近傍のリード線41がシリンダ22自体と振動現象(周期、振幅、横揺れ等)が異なる傾向にあるため、特にブッシュ42の出口部分にストレスが集中し易い構成であった。しかして、本実施形態では振動によるストレスが回避できて断線するなどの不具合を解消でき、機能性流体36を採用した防振機能を長期安定して発揮できる。
この場合、リード線41を配線固定部材47に対し複数箇所で固定保持することで、リード線41の所定長さの固定保持が確実となり一層安定する。また、シリンダ22に対し、配線固定部材47に設けた複数の腕部47bで弾性的に把持するようにしたので、組立やメンテナンス時における着脱作業が簡単にでき、且つ該配線固定部材47は再利用を含め使い勝手が良い。因みに、腕部47bの先端に該腕部47bを反把持方向たる拡開方向に変形操作するに有効な摘み部48を設けたので、弾性的に把持された配線固定部材47を容易に簡単操作にて取り外すことができる。
また、配線固定部材47の裏面と該シリンダ22の外面との間で凹凸嵌合する凸部49と小孔44を設けたので、シリンダ22に被着した配線固定部材47の滑り止めとして有効で、つまり不用意な上下動や回動を抑え、延いてはリード線41の不用意な動きを規制し、安定した配線が可能である。
加えて、配線固定部材47には、シリンダ22のリード線41の出口に設けたブッシュ42の周囲に係合する溝部たる切欠溝50を設けたので、配線固定部材47の回動方向の移動を阻止できるとともに、その下方の凸部49とシリンダ22の小孔44との凹凸嵌合による滑り止め手段を加えて、配線固定部材47の如何なる方向への滑り移動に対しても確実に阻止する。しかも、切欠溝50をブッシュ42に係合することで、その真下に位置する裏面側の凸部49と小孔44の位置合わせも容易にできるなど、シリンダ22に対し配線固定部材47を被着する際の位置決め手段としても有効に機能する。
また本実施形態では、配線固定部材47にリード線41を固定保持する手段として、リード線41を巻き締め状態にクランプした配線保持具53を、配線固定部材47の第1、第2の台部51、52に取付ける構成とし、且つこの配線保持具53の回動方向の動きを衝止するリブ51b、52bを各台部51、52である配線固定部材47側に設けたので、結果としてリード線41の回動方向の動きを規制することができ、長期安定した配線が提供できる。なお、リード線41はコイル36a、36bからの2本の引出し線からなる細い線材であるが、該リード線41には絶縁性のチューブ59を被嵌して、つまり径大化した如き形態にあるので、上記巻き締め状態に弛みなくクランプすることが容易で、且つリード線41自体(絶縁被覆)を傷つけることがなく安全確実に保持できる点で有利である。
更に配線固定部材47は、全体形状が横H字状とする樹脂製で、中央の主体部47aにリード線41を固定保持する上記第1、第2の台部51、52を有し、該主体部47aの上下部から夫々左右方向に延びる側端部に、シリンダ22を把持する複数の腕部48を有する構成としたので、各台部51、52は堅固に形成でき、主体部47aから延出した腕部48は弾力性に富んだ構成とすることが容易で、全体形状としてシリンダ22を弾性的に把持するに有効な形状であるといえる。
なお、本実施形態ではドラム式洗濯機に適用して述べたが、これに限らず、例えば縦軸周りに回転可能な脱水槽を兼用した洗濯槽を有し、その縦軸状に有底筒状の水槽を備えた、所謂縦型の洗濯機でも適用可能である。また、サスペンション7はシャフト24側を水槽6に取付け、シリンダ22側を筐体1側に配設したので、リード線41側に生じる振動を抑制できる点で有利であるが、シリンダ22側を水槽6に取付ける逆配置とすることも可能であるとともに、シリンダ22とシャフト24とは相対的に往復動する関係にあればよい。
(第2の実施の形態)
上記に対し、図7は第2の実施形態を示す図2相当図で、上記第1の実施形態とは、図7に示す配線固定部材60の構成において一部異なる以外は、共通の構成としている。
すなわち、配線固定部材60は、全体形状が横H字状をなし横断面が円弧状をなす樹脂製にあって、中央の主体部60a、左右側方に延びる複数の腕部60b、摘み部61を有する構成は、第1の実施形態(図2参照)にいう主体部47a、腕部47b、摘み部48に夫々相当する共通の構成にあり、それ以外の異なる構成につき具体的に述べる。
まず、主体部60aの中央の下部領域にリード線41を固定保持する手段として、配線保持具62を一体に形成している。この配線保持具62は、縦方向に中空部を形成するように横断面形状がほぼ半円弧状にあって、その側方の一端が主体部60aと連続し、他端が主体部60aの外面と離間した自由端とし、弾力性を有する構成としている。
また、主体部60aの上端部には第1の実施形態でいう切欠溝50に対応する環状の切欠溝63を形成している。つまり、上端部の切欠した開放部の幅を狭くして、例えばリード線41(チューブ59を被嵌していない部分)を挿通可能とする幅寸法とし、全体に環状をなすように切欠溝63を形成したものである。その環状形状は、リード線41の出口部の前記ブッシュ42の外形部位に嵌め込まれ、つまりブッシュ42の周囲に係合する切欠溝63として形成されている。
斯くして、上記構成の配線固定部材60をシリンダ22(図1,5参照)に被着するには、上記実施形態のものと同様に対向する2個の腕部60b、60bを一対として、その開口幅Sを介してシリンダ22に圧挿することで、該シリンダ22の筒状外面に弾性的に把持される。この圧挿作業とほぼ同時に、溝部たる切欠溝63をブッシュ42(図1,5参照)の周囲に上方から嵌め込むようにして係合させる。この場合、チューブ59を被嵌していない部分のリード線41は、切欠溝63の狭い幅の開放部から挿通可能なので、結果として配線固定部材60の着脱に際して該リード線41が妨げとなることはない。
このようにして被着された配線固定部材60の配線保持具62には、ここではチューブ59を被嵌した部分のリード線41を圧挿することで弾性的に保持する。この配線保持具62は、リード線41が挿通する縦方向(上下方向)に長い形状として、1箇所の配線保持具60にて十分な長さにわたり固定保持できるようにしているが、複数に分割した構成とすることも可能である。いずれにしても、配線保持具62は配線固定部材60と一体形成され、別部材を要しない点でメンテナンスや作業性などにおける利便性が高い。
一方、本実施形態における環状の切欠溝63は、一部の狭い開放部を除きブッシュ42のほぼ全周囲に係合する構成なので、配線固定部材60が上下左右の如何なる方向への滑り移動も阻止可能である。そのため、上記実施形態で述べた凹凸嵌合(凸部49と小孔44との嵌合)による滑り止め手段は省略可能であるが、或は同様の凹凸嵌合手段を設けて、配線固定部材60の全体にわたり一層滑り止め機能を確実にすることも可能である。
なお、サスペンション7としては、シャフト24と機能性流体34との摩擦力を利用した実施形態につき例示したが、これに限らず、例えばシリンダ内に充填した機能性流体に対し、複数のオリフィス孔を有するピストンバルブを振動に応じて往復動させ、該オリフィス孔を通過する機能性流体の粘性を制御する構成としたものでもよく、つまり電気的エネルギーの印加により粘性が変化する機能性流体を、水槽の振動に抵抗する摩擦力として機能させ、水槽の振動を減衰するようにしたサスペンション機構であればよい。
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略,置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。