JP5518912B2 - 高耐久性防食鋼材の製造装置 - Google Patents

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Description

本発明は、例えばコンクリート用鉄筋、マンホールの蓋などに使用される高耐久性防食鋼材の製造装置に関するものである。
従来、コンクリート用鉄筋の腐食を防止するために、鉄筋材の表面にエポキシ樹脂粉末を付着して第1のエポキシ樹脂被膜を形成し、その第1のエポキシ樹脂被膜の上に亜鉛粉末とエポキシ樹脂粉末と硬化剤粉末の混合粉末を付着して、亜鉛粉末による無数の突起(凹凸)を有する第2のエポキシ樹脂被膜を形成した鉄筋が提案されている。
しかし、熱硬化性であるエポキシ樹脂を鉄筋に塗装させるので、防食鉄筋を曲げ加工すると塗膜に亀裂などが発生し易い。
通常、鉄筋の表面に樹脂塗膜を形成すると、鉄筋に対するコンクリートの付着強度は85%程度に低下する。このコンクリート付着強度を上げるために前述のように亜鉛粉末が使用されているが、亜鉛は塩化物イオンによって劣化する可能性がある。前述のように鉄筋を曲げ加工すると塗膜に亀裂などが発生し易く、その亀裂などから塩化物イオンが侵入して、亜鉛粉末の更なる劣化を誘発することになるから、この防食鉄筋は特に港湾構造物には適さないという欠点がある。
また、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂粉末を用いて塗装鋼材を製造する工程において、粉体塗料の溶融から硬化完了までの間で、流れ指数が5以下、粒径が約100μm〜2mmの亜鉛などの無機粉末を前述の樹脂塗膜上に吹き付けて固着する際、経験により溶融温度を制御していたため、無機粉末による凹凸状態にバラツキが生じ、コンクリート付着強度もバラツキ、品質の安定した鉄筋が得られないという欠点がある。
図23は従来の防食鉄筋の製造工程図、図24は静電粉末スプレー法による粉体塗装を説明するための概略図である。
静電粉末スプレー法による防食鉄筋は、図23に示すようにプロセス(以下、Pと略記する)11からP20の工程を経ることになる。
P11:
この例では鋼材として鉄筋コンクリート用棒鋼が準備される。鉄筋コンクリート用棒鋼の詳細は、JIS G 3112に記述されている。
P12:
棒鋼の受け入れ検査では、変形等によって塗装用として不適当な表面形状をした鋼材を除く。
P13:
ブラスト処理により、ミルスケールの除去及び塗装下地としての表面調整を行なう。表面調整後の棒鋼の表面粗さは、Rmax30〜60μm程度である。
P14:
次の粉体塗装で粉体が溶融塗着するように、棒鋼を予熱する。予熱は高周波誘導加熱により200〜250℃程度に加熱される。
P15:
静電粉末スプレー法による粉体塗装が行なわれ、鉄筋の表面にエポキシ樹脂(熱硬化性樹脂)からなる樹脂被膜が形成される。静電粉末スプレー法については、後から図24を用いて説明する。
P16:
小径棒鋼などのように熱容量の小さいものに対しては、必要に応じて後加熱を行なう。
P17:
大径棒鋼などのように熱容量の大きいものに対しては、すでに硬化が終了した塗膜に余分な熱量が供給されるのを防ぐとともに、棒鋼を安全に取り扱える温度まで冷却する。冷却には、空冷法あるいは水冷法が用いられる。
P18:
塗膜を形成した棒鋼に対して外観、膜厚、ピンホールの有無、曲げ加工性、硬度、耐衝撃性などの検査を行なう。
P19:
棒鋼の束全体を緩衝材により梱包する。
P20:
梱包した製品を出荷する。
次に図24を用いて静電粉末スプレー法による粉体塗装を説明する。図中の91はパウダーガン、92はそのパウダーガン91の先端部に取り付けられたディフューザー、93はそのディフューザー92に高電圧を供給する高電圧発生器、94は粉体塗装される被塗装物で、この例では棒鋼が被塗装物となる。95は粉体塗料、96は前記パウダーガン91から被塗装物94に向けて噴射される粉体である。
エポキシ樹脂の粉体が空気輸送により粉体塗料95としてパウダーガン91に供給され、パウダーガン91の先端部から被塗装物94に向けて噴射される。パウダーガン91の先端部にはディフューザー92が取り付けられ、そのディフューザー92には高電圧発生器93から高電圧が印加され、一方、被塗装物94は接地されている。
そのためディフューザー92から被塗装物94に向ってコロナ放電が起こり、その内部に供給された粉体96がイオンの射突により荷電され(−e)、クーロン力の作用で被塗装物94の表面に付着される。被塗装物94は予め200〜250℃程度に加熱されて高温状態になっているから、付着した粉体96は直ちに溶融して樹脂塗膜となる。被塗装物94を回転しながら走行することにより、全周に樹脂塗膜を形成した被塗装物94が連続して製造できる。
特開2003−127282号公報 特開昭61−120671号公報 特公開6−16868号公報
土木学会:エポキシ樹脂塗装鉄筋を用いる鉄筋コンクリートの設計施工方針のエポキシ樹脂塗装鉄筋の付着強度試験(JSCE−E 516−2003)
前述のように従来は、熱硬化性樹脂であるエポキシ樹脂を鉄筋に塗装させるので、防食鉄筋を曲げ加工すると塗膜に亀裂などが発生し易く、そのために十分な防食効果が得られないという欠点を有している。
また、コンクリート付着強度を上げるために亜鉛粉末が使用されているが、亜鉛は塩化物イオンによって劣化する可能性がある。鉄筋を曲げ加工すると塗膜に亀裂などが発生し易く、その亀裂などから塩化物イオンが侵入して、亜鉛粉末の更なる劣化を誘発するという欠点がある。
さらに前記エポキシ樹脂の代わりに飽和ポリエステル樹脂からなる粉体塗装膜を形成することも行なわれているが、飽和ポリエステル樹脂からなる膜は耐アルカリ性が十分でなく、コンクリートのアルカリに侵される危険性がある。
本発明の目的は、鋼材との接着強度が長期間に亘って維持できる信頼性に優れた高耐久性防食鋼材の製造装置を提供することにある。
前記目的を達成するため、本発明は、
長尺状鋼材の表面に形成された溶融状態にある樹脂被膜に対して高温状態の無機質の粗粒体を吹付ける無機質粗粒体吹付け装置を備え、
その無機質粗粒体吹付け装置は、前記溶融状態の樹脂被膜を担持した長尺状鋼材の全周を囲むように形成された粗粒体吹付け室を有し、その粗粒体吹付け室の前記長尺状鋼材と対向する内側に狭隘の絞込み部が形成され、
高温状態の粗粒体と空気の混合流が前記粗粒体吹付け室に供給されて、絞込み部を通って前記溶融状態の樹脂被膜を担持した鋼材の周面に噴射される構成になっていることを特徴とするものである。
本発明は前述のような構成になっており、鋼材との接着強度が長期間に亘って維持できる信頼性に優れた高耐久性防食鋼材の製造装置を提供することができる。
本発明の実施形態に係る高耐久性防食鋼材の製造工程を説明するための図である。 本発明の実施形態に係る高耐久性防食鋼材の製造装置全体の概略構成図である。 本発明の実施形態で用いられる静電流動浸漬装置の概略構成図である。 本発明の実施形態で用いられ粗粒体吹付け装置の正面図である。 その粗粒体吹付け装置の側面図である。 その粗粒体吹付け装置の上面図である。 その粗粒体吹付け装置の斜視図である。 その粗粒体吹付け装置内の粗粒体吹付け部の正面図である。 その粗粒体吹付け部の側面図である。 その粗粒体吹付け部の一部を断面にした上面図である。 その粗粒体吹付け部における加熱空気導入室付近の一部拡大斜視図である。 図8A−A線上の拡大断面図である。 本発明の第1実施例に係る高耐久性防食鋼材の要部拡大断面図である。 本発明の第2実施例に係る高耐久性防食鋼材の要部拡大断面図である。 本発明の第3実施例に係る高耐久性防食鋼材の要部拡大断面図である。 本発明の第4実施例に係る高耐久性防食鋼材の要部拡大断面図である。 コンクリート内に埋設される鋼材の一部拡大斜視図である。 エッジカバー率の測定に用いる試験片の斜視図である。 (a),(b)エッジカバー率を説明するための図である。 各種粉体塗料を使用した場合のエッジ部半径(エッジR)とエッジカバー率との関係を示す特性図である。 溶融流動抑制剤としてマイカを使用した粉体塗料の(PVB樹脂粉体+酸化防止剤)100重量部に対するマイカ添加重量部数とエッジカバー率との関係を示す特性図である。 本発明の第5実施例に係る高耐久性防食鋼材の要部拡大断面図である。 従来の防食鉄筋の製造工程図である。 静電粉末スプレー法による粉体塗装を説明するための概略図である。
次に本発明の実施形態を図面とともに説明する。
図13ないし図16は、本発明の実施例に係る高耐久性防食鋼材の要部拡大断面図である。
(第1実施例)
図13に示す第1実施例に係る高耐久性防食鋼材80は、鋼板などの鋼材81の表面を後述するポリビニールブチラール樹脂(以下、PVB樹脂と略記する)を主成分とする樹脂被膜82で覆った構成になっている。
(第2実施例)
図14に示す第2実施例に係る高耐久性防食鋼材80は、鋼板などの鋼材81の表面をPVB樹脂を主成分とする樹脂被膜82で覆うとともに、その樹脂被膜82に所定の粒径を有する無機質粗粒体83を吹き付けて固定した構成になっている。
(第3実施例)
図15に示す第3実施例に係る高耐久性防食鋼材80は、複数本の素線84を撚って構成した撚線からなる鋼材81の表面をPVB樹脂を主成分とする樹脂被膜82で覆うとともに、その樹脂被膜82に所定の粒径を有する無機質粗粒体83を吹き付けて固定した構成になっている。
(第4実施例)
図16に示す第2実施例に係る高耐久性防食鋼材80は、棒鋼や鋼線などの鋼材81の表面をPVB樹脂を主成分とする樹脂被膜82で覆うとともに、その樹脂被膜82に所定の粒径を有する無機質粗粒体83を吹き付けて固定した構成になっている。
前記第2実施例ないし第4実施例の場合、図に示すように吹き付けた無機質粗粒体83の一部は樹脂被膜82の表面から突出して、無数の突起(凹凸)を形成している。また、図15に示す第3実施例の場合、外周部の素線84と素線84の間に形成されている谷間部分にも樹脂被膜82が入り込んでおり、鋼材81に対して樹脂被膜82が良好に密着している。
なお図示していないが、用途に応じては、前記撚線からなる鋼材81の表面をPVB樹脂を主成分とする樹脂被膜82で覆った構成の高耐久性防食鋼材80をそのまま用いることもできる。
前記鋼材81としては、例えば棒鋼、異形棒鋼、螺子棒鋼、鋼線、複数本の素線を撚って構成した撚線、鋼板、鋼管、H鋼、アングルなどの各種鋼材が用いられる。
前記PVB樹脂は、ポリビニールアルコールとアルデヒドを例えば塩酸、硫酸、硝酸などの酸触媒を使用して縮合することによって得られる三次元構造の高分子化合物である。
前記アルデヒドとしては炭素数2〜6のアルデヒドが好適で、その中でも特にn−ブチルアルデヒドが好適である。
このPVB樹脂の被膜は金属及び無機質粗粒体との密着性が良好であり、屋外に長期間曝しても劣化がなく、耐候性に優れ、しかもコンクリートのアルカリ性に十分に耐え得るなどの特長を有している。
前記PVB樹脂のブチラール化度は40〜85モル%で、好ましくは50〜85モル%である。ブチラール化度が前述の範囲にあると、粉体塗料が流動性に優れ、膜厚が均一でピンホールのない樹脂被膜を形成することができる。ビニルエステル単位の含有率は0.1〜30モル%、ビニールアルコール単位の含有率は10〜50モル%、重合度は200〜1700、好ましくは250〜1000、酸価は0.7mgKOH/g以下である。
前記PVB樹脂の分子中の水酸基の含有率は11〜27重量%で、好ましくは18〜27重量%、さらに好ましくは18〜21重量%である。分子中の水酸基含有率が11重量%未満であると、もともと水酸基の含有量が少ないために鋼材に対する接着強度が不十分であり、一方、分子中の水酸基含有率が27重量%を超すと、吸水性となり、接着強度の低下を招来する。従って、分子中の水酸基含有率を11〜27重量%の範囲に規制することにより、鋼材との接着強度が強く、長期間にわたって高い防食効果を発揮する。
前記PVB樹脂は、1次粒子の集合粒子の形態であることが好ましい。この1次粒子の平均粒径は5μm以下で、かつ最大粒径は10μm以下である。また、前記集合粒子の平均粒径は150μm以下で、かつ最大粒径は250μm以下である。前記集合粒子の平均粒径は130μm以下が好ましく、100μm以下がさらに好ましい。なお、ここで1次粒子とは、ポリビニールアルコールのアセタール化反応において、最初に生成する粒子のことである。
このような粒子径を有する粉体塗料は、流動性に優れ、膜厚が均一でピンホールの無い樹脂被膜が形成でき、鋼材との接着強度が強く、高い防食効果を有する。
前記PVB樹脂に対して0.02〜5重量%の範囲で酸化防止剤が添加される。酸化防止剤の含有率が0.02重量%より少ないと、酸化防止剤の効果が十分に発揮されず、樹脂被膜の耐屈曲性が十分でない。一方、酸化防止剤の含有率が5重量%より多いと、樹脂被膜にピンホールが生じたり、鋼材に対する樹脂被膜の接着強度が低下する傾向にある。
酸化防止剤の分子量は380〜1000、好ましくは400〜800、更に好ましくは600〜800である。分子量が380以上の酸化防止剤を用いれば、樹脂被膜の耐屈曲性が更に向上し、鋼材に対する樹脂被膜の剥がれや割れが生じにくく、また、樹脂の溶融時の流動性が良好で、ピンホールの無い樹脂被膜を形成することができる。分子量が1000を超すと、PVB樹脂との相溶性が低下し、良好な樹脂被膜の形成が難しくなる。
酸化防止剤の融点は80〜230℃で、好ましくは90〜180℃である。このような融点を有するとPVB樹脂粉体とのドライブレンドが可能である。
酸化防止剤としては具体的には、下記の分子構造式を有する有機化合物が好適である。

Figure 0005518912


式中
R1〜R8:炭素数が1〜4の直鎖または分岐鎖状のアルキル基または水素、 l,m,n:それぞれ1〜10の整数、
X:NまたはOのヘテロ原子。
前記炭素数が1〜4の直鎖または分岐鎖状のアルキル基としては、例えばメチル、エチル、プロピル、i−プロピル、n−プロピル、i−ブチル、n−ブチル、t−ブチルなどがある。
酸化防止剤の具体例としては、例えば
○ヘキサメチレンビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、
○3,9−ビス{1,1−ジメチル−2−[β−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]エチル}2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]−ウンデカン、
○N,N´−ヘキサン−1,6−ジイルビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオンアミド)]、
○1,3,5−トリス(4−t−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−キシリルメチル)−1,3,5―トリジアミン―2,4,6−(1H,3H,5H)−トリオン、
○2,6−ジ−t−ブチル−4−[4,6−ビス(オクチルチオ)−1,3,5―トリアジニルアミノ]フェノール、
○1,3,5−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−1,3,5―トリジアミン―2,4,6−(1H,3H,5H)−トリオン、
○4,4´−ブチルデンビス(6−t−ブチル−3−メチルフェノール)
などを挙げることができる。
この酸化防止剤に加えて他の酸化防止剤あるいはリン系熱安定剤、ヒドロキシルアミン系熱安定剤、イオウ系熱安定剤などを併用することもできる。
前記無機質粗粒体83としては、例えばアルミナ、セラミック、珪砂、ガラス、鉄、ステンレスなどから選択された1種類または2種類以上の混合物が用いられる。使用される無機質粗粒体83の平均粒径は50μm〜1mm、好ましくは100μm〜1mmである。
(高耐久性防食鋼材の製造工程)
図1は、本発明の実施形態に係る高耐久性防食鋼材の製造工程を説明するための図である。
本発明の実施形態に係る高耐久性防食鋼材は、図1に示すP1からP10の工程を経ることによって得られる。
P1:
本実施形態では鋼材として鉄筋コンクリート用棒鋼が準備される。鉄筋コンクリート用棒鋼の詳細は、JIS G 3112に記述されている。
P2:
棒鋼の受け入れ検査では、変形等によって塗装用として不適当な表面形状をした鋼材を除く。
P3:
インペラー方式のブラスト処理により、ミルスケールの除去及び塗装下地としての表面調整を行なう。除錆度の規格は、ASTMA 775−81においてSSPC−SP10と定められている(SSPC:Steel Structures Painting Council Specification)。除錆度はNear White Metalまで実施する。除錆度の判定にはSSPC−Vis 1(SIS 055900)またはNACE TM−01−075 No.2を用いる。表面調整後の表面粗さは、Rmax30〜60μm程度である。
P4:
鋼材を静電流動浸漬装置に通過させて、鋼材の外周面にPVB樹脂を主成分とする粉体塗料を付着させる。静電流動浸漬装置については、後から図3を用いて説明する。
P5:
PVB樹脂の粉体塗料を付着した鋼材を高周波加熱装置に通過させて、PVB樹脂粉体塗料の溶融温度(約160℃)以上の200〜300℃に加熱することにより、PVB樹脂粉体塗料を溶融して溶融状態の樹脂被膜を形成する。
P6:
溶融状態の樹脂被膜を担持した鋼材を吹付け装置に通すことにより、予め加熱されている無機質粗粒体を鋼材に対して吹付ける。吹付け装置については、後から図4ないし図7を用いて説明する。
P7:
無機質粗粒体を吹付けた後に鋼材を冷却することにより、前述の溶融状態にあった樹脂被膜が固化して、吹付けた無機質粗粒体を樹脂被膜で固定する。無機質粗粒体は樹脂被膜から一部が突出し、無数の凹凸を有する鋼材となる。冷却方法としては、空冷あるいは水冷が用いられる。
P8:
無機質粗粒体を担持した鋼材に対して外観、膜厚、ピンホールの有無、曲げ加工性、硬度、耐衝撃性などの検査を行なう。
P9:
鋼材の束全体を緩衝材により梱包する。
P10:
梱包した製品を出荷する。
(高耐久性防食鋼材の製造装置の概略構成)
図2は、本発明の実施形態に係る高耐久性防食鋼材の製造装置全体の概略構成図である。
同図に示すように高耐久性防食鋼材の製造装置100は、主にコンベアーからなる鋼材搬入装置1と、静電流動浸漬装置2と、高周波加熱装置3と、無機質粗粒体吹付け装置4と、コンベアーからなる鋼材搬出装置5とから構成され、図に示すように長尺状の鋼材6の搬送方向Xに沿って前述の順に設置されて、1つの製造ラインを構成している。
本実施形態では鋼材の搬送装置としてコンベアーを使用しているが、鋼材を挟持して搬送するローラなど他の構成の搬送装置を使用することもできる。
前記静電流動浸漬装置2は内部に粉体塗料の流動槽7を有し、前述したP4(PVB樹脂を主成分とする粉体塗料の付着)を実施する。
前記高周波加熱装置3は内部に高周波加熱コイル8を有し、前述したP5(PVB樹脂粉体塗料の溶融)を実施する。
前記無機質粗粒体吹付け装置4は内部に無機質粗粒体吹付けガン9と冷却室10を有し、前述したP6(無機質粗粒体の吹付け)とP7(冷却)を実施する。
そして鋼材搬出装置5からは樹脂被膜が固化して、吹付けた無機質粗粒体を樹脂被膜で固定した高耐久性防食処理済みの鋼材6が連続的に搬出される。
このようにして鋼材6の一連の高耐久性防食処理が行なわれるが、図2に示すうに鋼材6は流動槽7の中、高周波加熱コイル8の中ならびに吹付けガン9の中を通過することにより、鋼材6を回転しないで高耐久性防食処理が行なわれる。また、前記鋼材搬入装置1から鋼材搬出装置5の間、長尺状の鋼材6は弛むことなく、緊張した状態で搬送される。
図24に示す従来の製造装置(製造方法)では被塗装物94を回転しながら搬送させる必要があるため、製造装置の機構が複雑になったり、長尺状の被塗装物94が曲がって高耐久性防食処理が不均一であるという欠点がある。これに対して本発明の製造装置(製造方法)では被塗装物である鋼材6を回転する必要が無いため、装置が簡略化され、製造効率が良好で、しかも鋼材6に対して均一で高品質な高耐久性防食処理が行なわれるという特長を有している。この実施例に係る製造装置は、他の合成樹脂にも適用可能である。
(静電流動浸漬装置の概略構成)
図3は、本発明の実施形態で用いられる静電流動浸漬装置2の概略構成図である。
図に示すように、前記流動槽7が粉体回収カバー11内に配置されている。流動槽7の下部に空間部12が形成され、その下部空間部12に乾燥空気送風管13が接続され、乾燥空気送風管13の基部に送風機14が設けられている。
前記空間部12の上部に多孔性電極15が配置され、多孔性電極15は高電圧発生器16のマイナス極に接続されている。多孔性電極15の上には多孔板17が配置され、多孔板17の上部が粉体18の流動層を形成する流動空間部19となっている。この流動空間部19に粉体塗料供給管20が接続され、粉体塗料供給管20の基部に送風機21が設けられている。
流動空間部19の中を長尺状の鋼材(鉄筋)6が挿通するようになっており、鋼材(鉄筋)6は搬送されながら接地されている。また流動空間部19の中にサンプリング管22が挿入され、サンプリング管22の基部に粉体量検出器23が設けられている。
粉体回収カバー11の上部に粉体回収管24が接続され、粉体回収管24に誘引機25が設けられている。
前記送風機14から乾燥空気送風管13を通って乾燥空気26が流動槽7の下部空間部12に供給され、一方、前記送風機21から粉体塗料供給管20を通って粉体18が流動空間部19中に供給・充填される。
下部空間部12に供給された乾燥空気26は、多孔性電極15ならびに多孔板17を通って上昇し、流動空間部19内にある無数の粉体18を流動化して流動層を形成し、その流動層の上に形成された雲状に形成された粉体18の浮遊層の中に前記鋼材(鉄筋)6が浸漬された状態になる。なお、前記粉体18の流動層と雲状の浮遊層の境界は明確なものではないが、流動層と雲状の浮遊層とでは粉体18の濃度分布に差がある。
高電圧発生器16によって多孔性電極15に高電圧(例えば30〜120KV)を印加することにより、その多孔性電極15を通過する乾燥空気26がイオナイズされ、それによって粉体18はマイナスの電荷を有する。一方、鋼材(鉄筋)6は、高電圧発生器16によってプラスの電荷に保持されている。このプラスの電荷を有する鋼材(鉄筋)6をマイナスの電荷を有する粉体18の浮遊層の中を通すことにより、鋼材(鉄筋)6の周面に粉体18が静電的に付着して電荷が安定する。
前述のように鋼材(鉄筋)6は浮遊層の中を通ることにより、粉体18は鋼材(鉄筋)6の上側の方にも良好に回り込み、鋼材(鉄筋)6の全周に粉体18がほぼ均一に付着する。
鋼材(鉄筋)6に付着されなかった粉体18は、粉体回収カバー11の上部から粉体回収管24を通して回収され、図示していないが再度鋼材(鉄筋)6への付着に回される。
図24に示した静電スプレー方式による粉体塗装方式では、予め加熱して高温状態になった被塗装物94にエポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂からなる粉末56を静電スプレーするため、付着しない粉末56も被塗装物94から発する熱によって若干硬化反応が起こる。そのために回収された粉末56の再利用は樹脂被膜の品質低下を招来するため避けることになり、そのため粉末56の歩留まりは高々70%程度である。
これに対して本発明では静電流動浸漬装置2を使用しているために粉体18に対する熱的影響がないから、粉体18の変質がなく、回収した粉体18の100%を再利用することができ、しかも再利用の粉体18でも樹脂被膜の品質は安定している。またこの静電流動浸漬装置2によれば、大気中に多くの粉体を飛散させることなく、流動槽7内で粉体塗装ができるため、作業環境の改善が図れる。
流動槽7内の粉体18の充填状態は粉体量検出器23で監視されており、その粉体量検出器23の検出結果に基づいて、鋼材(鉄筋)6の搬送速度、乾燥空気の送風量、粉体18の供給量ならびに粉体18の回収量を相互に調整することにより、鋼材(鉄筋)6に対する粉体18の付着量を制御することができる。本実施形態では、鋼材(鉄筋)6に対する粉体18の付着量は、粉体18を加熱溶融して形成される樹脂被膜の厚さが220±40μmとなるように制御されており、厚膜塗布が可能である。
(無機質粗粒体吹付け装置の構成)
図4ないし図7は無機質粗粒体吹付け装置4を説明するための図で、図4は吹付け装置4の正面図、図5は吹付け装置4の側面図、図6は吹付け装置4の上面図、図7は吹付け装置4の斜視図である。
枠型をした基台30の内側に加熱空気発生部31が設置され、加熱空気発生部31の入口側には途中にフィルター部32を設けた給気管33が接続されている。図示していないが、加熱空気発生部31の内側にはブロアーと加熱用のヒータが設置されている。
基台30の上部にはパンタグラフ型の昇降手段34を介して上下移動枠体35が設けられ、その上下移動枠体35の上には図5の紙面に向って垂直方向に延びた2本のガイドレール36が所定の間隔をおいて敷設されている。この2本のガイドレール36の上に、粗粒体吹付け部37が搭載されている。この粗粒体吹付け部37の近くに、粗粒体供給部39が設けられている。
前記加熱空気発生部31から粗粒体吹付け部37に向けて加熱空気供給管38が延びている。また前記粗粒体供給部39から粗粒体吹付け部37に向けて粗粒体輸送管40が延びており、反対に粗粒体吹付け部37から粗粒体供給部39に向けて加熱空気リサイクル管41と粗粒体リサイクル管42がそれぞれ延びている。
粗粒体供給部39には、粗粒体47を粗粒体供給部39に供給する粗粒体供給管48(図7参照)と、粗粒体輸送用空気43を供給する輸送用空気供給管44とが接続されている。
前記加熱空気発生部31内に設置されているブロアー(図示せず)によって吸引された常温の空気45はフィルター部32を通過することにより空気45中の塵埃などが除去されて、加熱空気発生部31内に搬送され、内部の加熱用ヒータ(図示せず)で加熱されて100〜200℃の加熱空気46となり、加熱空気供給管38を通って粗粒体吹付け部37に供給される。
一方、図7に示すように粗粒体47が、粗粒体供給管48を通して粗粒体供給部39に供給・貯留されている。粗粒体47の吹付けで使用した加熱空気46を回収し、加熱空気リサイクル管41を通して粗粒体供給部39に供給することにより、粗粒体供給部39内にある粗粒体47を100℃以上に加熱しておく。
粗粒体輸送用空気43が所定の速度で供給管44を通して粗粒体供給部39に供給され、粗粒体供給部39内の粗粒体47を粗粒体輸送管40を通して粗粒体吹付け部37に輸送し、粗粒体47の吹付けに関与する。鋼材(鉄筋)6に付着しなかった粗粒体47は回収され、粗粒体リサイクル管42を通して粗粒体供給部39に戻され、再度利用されるシステムになっている。
図4や図7に示すように粗粒体吹付け部37に鋼材挿通孔49が水平方向に形成されており、周面に溶融状態の樹脂被膜を担持した鋼材(鉄筋)6が、この鋼材挿通孔49を通過する間に前記樹脂被膜上に粗粒体47が吹付けられる。鋼材挿通孔49の内径は、樹脂被膜上に吹き付けられた粗粒体47が削り取られない大きさに設計されている。
前記昇降手段34ならびにガイドレール36の働きにより、粗粒体吹付け部37の上下方向ならびに左右方向の位置調整がなされて、粗粒体吹付け部37に設けられた鋼材挿通孔49の中心部を鋼材(鉄筋)6が通るようになっている。前述のように鋼材(鉄筋)6は緊張した状態で搬送されるから、鋼材挿通孔49内での鋼材(鉄筋)6の位置は殆ど変動しない。
(粗粒体吹付け部の構成)
図8ないし図12は粗粒体吹付け部37の詳細を説明するための図で、図8は粗粒体吹付け部37の正面図、図9は粗粒体吹付け部37の側面図、図10は粗粒体吹付け部37の一部を断面にした上面図、図11は粗粒体吹付け部37における加熱空気導入室付近の一部拡大斜視図、図12は図8A−A線上の拡大断面図である。
粗粒体吹付け部37における一方の側板50aの所定位置には、ボックス状の加熱空気導入室51が付設され、前記加熱空気供給管38の先端部が加熱空気導入室51に接続されている。図8、図10ならびに図11に示すように粗粒体輸送管40の先端部が加熱空気導入室51の略中央部を貫通して側板50aの内側まで延びている。
側板50aの粗粒体輸送管40が貫通した部分の周囲には、複数個(本実施形態では8個)の加熱空気導入孔52が等間隔に形成されている。
粗粒体吹付け部37における一方の側板50aと、それと対向する他方の側板50bとの間に粗粒体吹付け室53が形成され、その粗粒体吹付け室53の中央部を鋼材6が挿通するようになっている(図8、図10ならびに図12参照)。すなわち、鋼材6の周囲を取り囲むように粗粒体吹付け室53が形成されている。
粗粒体吹付け室53の鋼材6と対向する内側周辺部分には、図10ならびに図12に示すように、断面形状が凸状など先細り状をした狭隘形成部材54と、その狭隘形成部材54の先端部に取り付けられたさらに先細りのテーパー状絞込み部材55とが設けられている。この絞込み部材55の中央部を鋼材6が挿通するようになっており、前記狭隘形成部材54と絞込み部材55とで、鋼材6の全周を取り囲む粗粒体吹付けガン9(図2参照)を構成している。
図8ならびに図9に示すように、粗粒体吹付け室53の下部にボックス状の回収室56が設けられ、粗粒体吹付け室53と回収室56は回収通路57で繋がっている。図10ならびに図12に示すように絞込み部材55の中央部には、鋼材6への粗粒体47の吹付けと、鋼材6に付着しなかった粗粒体47ならびに加熱空気46の回収のために開口部58が設けられており、この開口部58は前記回収通路57に繋がっている。
粗粒体輸送管40を通って送られてきた粗粒体47は、粗粒体吹付け室53に噴出される。一方、加熱空気供給管38を通って送られてきた加熱空気46は、加熱空気導入室51に導入され後、複数個の加熱空気導入孔52を通り、粗粒体吹付け室53内に分散される。ここで加熱空気46と粗粒体47が混合されて均一な混合流59となり、粗粒体吹付け室53の全体に行き渡る。
そして混合流59は狭隘形成部材54の先端部にある狭隘部を通過することにより流速を増し、さらにテーパー状に徐々に狭くなっている絞込み部材55を通過することにより混合流59は更に流速を増して、ジェット噴流となる。
絞込み部材55の中央を通過する鋼材6の全周面には、高周波加熱装置3(図2参照)によって溶融状態になった樹脂被膜が形成されているから、絞込み部材55から噴射された粗粒体47は鋼材6の樹脂被膜に食い込むように付着する。この粗粒体47の吹き付けは、鋼材6の周面全体に亘って同時に行なわれるから、粗粒体47の付着状態は略均一である。
溶融状態の樹脂被膜に対して常温の粗粒体47を吹き付けると、樹脂被膜の表面が直ちに冷えて固化するため、樹脂被膜に対する粗粒体47の食い込みが不十分で、樹脂被膜によって粗粒体47を確実に固定することが難しい。これに対して本実施形態は、予め100℃以上に加熱された粗粒体47と100〜200℃の加熱空気46の混合流59を、溶融状態の樹脂被膜に吹き付けるため、前述のような弊害がなく、粗粒体47の固定状態が安定している。
鋼材6に付着されなかった粗粒体47と加熱空気46は回収通路57を通って回収室56に送られ、ここで加熱空気46と粗粒体47に分離され、図4などに示すように、加熱空気46は加熱空気リサイクル管41を通って粗粒体供給部39に送られ、粗粒体47は粗粒体リサイクル管42を通って粗粒体供給部39に送られて、再度利用される。
次に本発明の具体例について説明する。
(具体例)
鉄筋コンクリート用の鋼材としてD19棒鋼を用い、ブラスト処理により表面調整を行なった。表面調整後の表面粗さは、Rmax30〜60μm程度であった。
この鋼材を図3に示す静電流動浸漬装置2に通過させて、鋼材6の外周面にPVB樹脂を主成分とする粉体塗料を付着させる。
PVB樹脂のブチラール化度は68モル%、分子中の水酸基の含有率は20重量%、1次粒子の平均粒径は4μm、集合粒子の平均粒径は83μmであった。
このPVB樹脂の粉体100重量部に対して、酸化防止剤としてN,N´−ヘキサン−1,6−ジイルビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオンアミド)]を0.5重量部ドライブレンドし、この混合粉体を静電流動浸漬装置2に供給した。
この静電流動浸漬装置2の中を通過した鋼材6の外周面は、PVB樹脂とN,N´−ヘキサン−1,6−ジイルビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオンアミド)](酸化防止剤)との粉体塗料が220±40μmの膜厚で付着される。
次にこの鋼材6を高周波加熱装置3の中を通過させて約200〜300℃に加熱することにより、PVB樹脂粉体塗料を溶融して、ピンホールのないほぼ均一の膜厚を有する樹脂被膜を形成する。引き続きこの溶融状態の樹脂被膜を担持した鋼材6を無機質粗粒体吹付け装置4に供給する。
この粗粒体吹付け装置4内では、約150℃に加熱した無機質粗粒体であるアルミナ#80(平均粒径210μm)を、100〜200℃の加熱空気とともに前記鋼材6の周面にほぼ均一に吹き付け、直ちに冷却室10で冷却することにより、前述の溶融状態にあった樹脂被膜82が固化して、吹付けた無機質粗粒体83をこの樹脂被膜82で固定する。図14に示すように無機質粗粒体83は樹脂被膜82から一部が突出し、無数の凹凸を有する高耐久性防食鋼材80となる。
この具体例によって得られた高耐久性防食鋼材と他の構成の鋼材について、土木学会における「エポキシ樹脂鉄筋を用いる鉄筋コンクリートの設計施工指針」の中で定められている「エポキシ樹脂塗装鉄筋の付着強度試験」(JSCF−E 516−2003)を行なった結果を次の表1に示す。
表中の塗装無棒鋼は、前記PVB被膜を形成しないで、D19棒鋼をそのまま使用したものを示す。塗装有棒鋼は、前記無機質粗粒体を吹き付けないでPVB樹脂とN,N´−ヘキサン−1,6−ジイルビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオンアミド)](酸化防止剤)との混合物からなる樹脂被膜を形成したD19棒鋼を使用したものを示す。本発明棒鋼は、前記具体例で得られた棒鋼を示す。
各棒鋼とも3本作成して試験を行い、各棒鋼の最大付着応力度Tmaxと、3本の鋼材の最大付着応力度の平均値Tmax(Ave)と、塗装無棒鋼の最大付着応力度平均値Tmax(Ave)を100とした場合の塗装有棒鋼ならびに本発明棒鋼の強度比を表中に示している。
Figure 0005518912

この表から明らかなように、塗装有棒鋼は表面にポリビニールブチラール樹脂被膜を形成しているため、コンクリートとの付着応力度は塗装無棒鋼とは殆ど変わらないが、本発明棒鋼は塗装無棒鋼ならびに塗装有棒鋼に比較して最大付着応力度を6倍以上にすることができ、特に鉄筋コンクリート用として賞用できる。
なお、この試験は鉄筋コンクリート用としての試験であり、前記本発明棒鋼はコンクリートに対して優れた付着応力強度を有しているが、PVB樹脂とN,N´−ヘキサン−1,6−ジイルビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオンアミド)](酸化防止剤)との混合物からなる樹脂被膜を形成した塗装有棒鋼も、鋼材と樹脂被膜との接着強度が高く、しかも樹脂被膜自体も長期間化学的に安定している。
PVB樹脂の分子中における水酸基の含有率を種々変えて、鋼材に対する接着強度を測定した結果を次に表2に示している。
Figure 0005518912

この表から明らかなように、PVB樹脂の分子中における水酸基の含有率が11〜27重量%のもの(試料1〜3)、好ましくは18〜27重量%のもの(試料2、3)、さらに好ましくは18〜21重量%のもの(試料3)は、鋼材との接着強度が強く、長期間にわたって高い防食効果を発揮することができる。記載していないが、分子中の水酸基含有率が11重量%未満であったり、あるいは27重量%を超すと、同じ試験条件であっても鋼材に対する接着強度は6Kg/cm2より小さく、十分な接着強度は得られない。
なお、前記実施例では図3に示す静電流動浸漬装置を用いて鋼材の表面にPVB樹脂を主成分とする粉末塗装を行なったが、静電塗装法で鋼材の表面にPVB樹脂を主成分とする粉末塗装を行なうことも可能である。
図17は、コンクリート内に埋設される線状あるいは棒状鋼材81の一部拡大斜視図である。この種の鋼材81は同図に示すように、鋼材81の外周面に、鋼材81の長手方向に沿って連続して延びた複数本の縦リブ85と、鋼材81の長手方向に沿って所定の間隔をおいて周方向の延びた横リブ86とが設けられている。
前述の鋼材81の長手方向に延びた複数本の縦リブ85は鋼材81の曲げ強度を高めるために、また横リブ86はコンクリートからの引き抜き強度を高めるために、それぞれ設けられている。このようにリブ85、86を設けると、そのリブ85、86の稜線にそれぞれエッジ87が形成される。
前述のように本発明では、鋼材の表面にPVB樹脂を主成分とする粉末塗装を行ない、その後に加熱して前記樹脂粉末を溶融して溶融状態の樹脂被膜を形成する訳であるが、本発明者の諸種の実験結果より、その樹脂被膜を形成する際に前述のようなエッジ87の部分(尖端部分)で樹脂被膜の膜厚が所望よりも薄くなったり、あるいはピンホールが発生することが分かった。
次にエッジ部での樹脂被膜の被覆性(エッジカバー性)について検討した結果を説明する。
使用した粉体塗料は下記の通りである。
○粉体塗料A
ブチラール化度が68モル%、分子中の水酸基の含有率が20重量%、1次粒子の平均粒径が4μm、集合粒子の平均粒径が83μmのPVB樹脂粉体100重量部に対して、酸化防止剤としてN,N´−ヘキサン−1,6−ジイルビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオンアミド)]を0.5重量部ドライブレンドしたもの。
○粉体塗料B
前記粉体塗料A100重量部に対して、溶融流動抑制剤として平均粒径が0.5μmの酸化鉄の微粉末を3重量部混合したもの。
○粉体塗料C
前記粉体塗料A100重量部に対して、溶融流動抑制剤として平均粒径が21μmのマイカの微粉末を5重量部混合したもの。
○粉体塗料D
前記粉体塗料A100重量部に対して、溶融流動抑制剤として平均粒径が21μmのマイカの微粉末を10重量部混合したもの。
○粉体塗料E
前記粉体塗料A100重量部に対して、溶融流動抑制剤として平均粒径が41μmのマイカの微粉末を5重量部混合したもの。
○粉体塗料F
前記粉体塗料A100重量部に対して、溶融流動抑制剤として平均粒径が41μmのマイカの微粉末を10重量部混合したもの。
図18はエッジカバー率の測定に用いる試験片101の斜視図であり、一辺が10mmの正方形で、長さが100mmの立方形の鋼製の試験片101を用いた。この試験片101は、図17に示す縦リブ85を模擬したものである。なお、試験片101として、エッジ部の半径R(図18参照)がR=0.1mm、R=0.5mm、R=1.0mmの3種類を準備した。
前記静電流動浸漬装置を用いて前記粉体塗料A〜Fを個別に試験片101の表面に付着して、280℃で3秒間加熱した後、空冷で冷却して、図19(b)に示すように試験片101の表面に樹脂被膜102を形成した。
図19(a),(b)はエッジカバー率を説明するための図である。先ず、図19(a)に示すように樹脂被膜102を形成する前の試験片101のaの部分と、bの部分の寸法を測定する。その後、図19(b)に示すように試験片101の全体に樹脂被膜102を形成し、試験片101のa´の部分と、b´の部分の寸法を測定する。これら寸法の測定には、マイクロメータを使用した。エッジカバー率は、下式によって求めた。
エッジカバー率=[(b´−b)/2]/[(a´−a)/2]×100
従ってこの式中の分子が試験片101のエッジ部分での樹脂膜厚、分母が試験片101の平坦部分での樹脂膜厚となる。
図20は、各種粉体塗料を使用した場合のエッジ部半径(エッジR)とエッジカバー率との関係を示す特性図である。図中の曲線A,B,C,D,E,Fは各種粉体塗料A,B,C,D,E,Fを使用したものの特性曲線で、符号が対応している。
この図から明らかなように、粉体塗料Aのように溶融流動抑制剤を全く含有しない場合、エッジカバー率が低く、平坦部分に比較してエッジ部での膜厚が薄くなり、特にエッジ部の半径Rが0.5mm以下の場合エッジカバー率が50%を下回る傾向にある。
これに対して前記粉体塗料B〜Fのように溶融流動抑制剤を含有したものは、全体的にエッジカバー率が高く、特にエッジ部の半径Rが0.1mmのシャープなエッジ部でもエッジカバー率を50%以上に確保することができる。
図21は、溶融流動抑制剤としてマイカを使用した粉体塗料の(PVB樹脂粉体+酸化防止剤)100重量部に対するマイカ添加重量部数とエッジカバー率との関係を示す特性図である。
図中の曲線Gはエッジ部の半径Rが0.1mmの試験片101の上に平均粒径が21μmのマイカの微粉末を混合したもの、曲線Hはエッジ部の半径Rが1.0mmの試験片101の上に平均粒径が21μmのマイカの微粉末を混合したもの、曲線Iはエッジ部の半径Rが0.1mmの試験片101の上に平均粒径が41μmのマイカの微粉末を混合したもの、曲線Jはエッジ部の半径Rが1.0mmの試験片101の上に平均粒径が41μmのマイカの微粉末を混合したものの特性曲線である。
また、図中のマイカ添加重量部数0の線上の下側と下側の×印の値は、溶融流動抑制剤(マイカ)を含有しない前記粉体塗料Aを使用して、エッジ部の半径Rが0.1mmの試験片と半径Rが1.0mmの試験片の上に樹脂被膜を形成した場合のエッジカバー率を示す。
この図から明らかなように、溶融流動抑制剤としてマイカを使用する場合、(PVB樹脂粉体+酸化防止剤)100重量部に対してマイカを5〜10重量部添加すれば高いエッジカバー率が確保できる。
溶融流動抑制剤としては、例えば酸化鉄、マイカ(雲母)、アルミナ、セラミック、炭酸カルシウム、酸化チタン、ボンブラックなどの無機化合物の微粉末が使用される。
図22は、本発明の第5実施例に係る高耐久性防食鋼材の要部拡大断面図である。コンクリート内に埋設される線状あるいは棒状の鋼材81の外周面に、鋼材81の長手方向に沿って連続して延びた複数本(本実施例では2本)の縦リブ85と、鋼材81の長手方向に沿って所定の間隔をおいて周方向の延びた横リブ(図示せず)とが設けられている。
前述の鋼材81の長手方向に延びた複数本の縦リブ85は鋼材81の曲げ強度を高めるために、また横リブはコンクリートからの引き抜き強度を高めるために、それぞれ設けられている。このようにリブを設けると、そのリブの稜線にそれぞれエッジ87が形成される。
このようにリブを有する鋼材81の表面には、例えば酸化鉄やマイカ(雲母)などの無機化合物の微粉末からなる溶融流動抑制剤88が分散保持された樹脂被膜82が形成されている。
なお、本実施例の場合は樹脂被膜82に無機質粗粒体83が保持されていないが、必要に応じて無機質粗粒体83を吹き付けて保持することも可能である。
エッジ部を有する鋼材の例として、線状あるいは棒状の鋼材の外周面にリブを形成した例を示したが、その他に例えば角柱の鋼材など他のエッジ部を有する鋼材にも本発明は適用可能である。
前記実施形態では鉄筋コンクリート用の鋼材、すなわち鉄筋について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えばマンホール蓋、グレーチング、階段の踏み板や梯子などのステップ、手摺、港湾構造物、フェンス、落石防護柵、防風柵、落石防護網、落球防護網、ケーブル保護管、あるいは受圧板や砂防用堰堤、集水井の如き土木用、コンクリート電柱用の鋼材など各種技術分野で適用可能である。
1:鋼材搬入装置、2:静電流動浸漬装置、3:高周波加熱装置、4:無機質粗粒体吹付け装置、5:鋼材搬出装置、6:鋼材、7:流動槽、8:高周波加熱コイル、9:無機質粗粒体吹付けガン、10:冷却室、11:粉体回収カバー、12:下部空間部、13:乾燥空気送風管、14:送風機、15:多孔性電極、16:高電圧発生器、17:多孔性板、18:粉体、19:流動空間部、20:粉体塗料供給管、21:送風機、22:サンプリング管、23:粉体量検出器、24:粉体回収管、25:誘引機、26:乾燥空気、30:基台、31:加熱空気発生部、32:フィルター部、33:給気管、34:昇降手段、35:上下移動枠体、36:ガイドレール、37:粗粒体吹付け部、38:加熱空気供給管、39:粗粒体供給部、40:粗粒体輸送管、41:加熱空気リサイクル管、42:粗粒体リサイクル管、43:粗粒体輸送用空気、44:輸送用空気供給管、45:通常の空気、46:加熱空気、47:粗粒体、48:粗粒体供給管、49:鋼材挿入孔、50:側板、51:加熱空気導入室、52:加熱空気導入孔、53:粗粒体吹付け室、54:狭隘形成部材、55:絞込み部材、56:回収室、57:回収通路、58:開港部、59:混合流、80:高耐久性防食鋼材、81:鋼材、82:樹脂被膜、83:無機質粗粒体、84:素線、85:縦リブ、86:横リブ、87:エッジ、88:溶融流動抑制剤、100:高耐久性防食鋼材の製造装置、X:鋼材の搬送方向。

Claims (1)

  1. 長尺状鋼材の表面に形成された溶融状態にある樹脂被膜に対して高温状態の無機質の粗粒体を吹付ける無機質粗粒体吹付け装置を備え、
    その無機質粗粒体吹付け装置は、前記溶融状態の樹脂被膜を担持した長尺状鋼材の全周を囲むように形成された粗粒体吹付け室を有し、その粗粒体吹付け室の前記長尺状鋼材と対向する内側に狭隘の絞込み部が形成され、
    高温状態の粗粒体と空気の混合流が前記粗粒体吹付け室に供給されて、絞込み部を通って前記溶融状態の樹脂被膜を担持した鋼材の周面に噴射される構成になっていることを特徴とする高耐久性防食鋼材の製造装置。
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