JP5518622B2 - 金属表面処理方法及び該方法で形成された金属表面処理皮膜 - Google Patents

金属表面処理方法及び該方法で形成された金属表面処理皮膜 Download PDF

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Description

本発明は金属基材、特に形状が複雑な金属構成体に対し、単一浸漬工程にて優れた耐食性及び付廻り性を付与し得る皮膜を形成せしめるための金属表面処理方法及びこれらを用いた金属表面処理皮膜に関する。
従来から、各種金属基材(金属材料)、特に形状が複雑な金属構成体に対して優れた耐食性を付与するための手法としては、高い付廻り性を有する電着塗装が一般的に用いられている。特に、鉄系金属基材の耐食性向上に対しては、電解処理中に素地金属が塗料中に溶出する心配のないカチオン電着塗装が有利であり、鉄系材料を主とする金属構成体である自動車車体、自動車部品、家電製品、建築材料等に対してはカチオン電着塗装が広く適用されている。ここで、カチオン電着塗装とは、カチオン樹脂エマルジョンを含有する水性塗料中で被塗物を陰極電解することによって皮膜を析出させる手法である。
ここで、カチオン電着塗装のみでは優れた耐食性を備えることが困難であるため、かつてはクロム化合物や鉛化合物を配合することによって防錆性を確保していた。
しかしながら、現在では環境規制、特に欧州におけるELV規制によりクロム化合物や鉛化合物が実質使用できなくなったため、代替成分が検討され、ビスマス化合物にその効果が見出されており、具体的には次に挙げる特許文献が開示されている。
特許文献1(特開平5−32919)には、ビスマス化合物をコーティングした顔料を少なくとも1種含有することを特徴とする電着塗料用樹脂組成物が開示されている。
特許文献2(国際公開99/31187)には、有機酸変性ビスマス化合物が非水溶性の形態で存在する水性分散液を配合した水性分散ペーストからなることを特徴とするカチオン電着塗料組成物が開示されている。
特許文献3(特開2004−137367)には、コロイド状ビスマス金属、及び、スルホニウム基とプロパルギル基とを持つ樹脂組成物からなることを特徴とするカチオン電着塗料が開示されている。
特許文献4(特開2007−197688)には、水酸化ビスマス、ジルコニウム化合物及びタングステン化合物から選ばれる少なくとも1種の金属化合物の粒子を含んでなる電着塗料であって、該金属化合物が1〜1000nmであることを特徴とする電着塗料が開示されている。
特許文献5(特開平11−80621)には、脂肪族アルコキシカルボン酸ビスマス塩水溶液を含有することを特徴とするカチオン電着塗料組成物が開示されている。
特許文献6(特開平11−80622)には、2種以上の有機酸によるビスマス塩の水溶液であって、該有機酸の少なくとも1種が脂肪族ヒドロキシカルボン酸である有機酸ビスマス塩水溶液を含有することを特徴とするカチオン電着塗料組成物が開示されている。
特許文献7(特開平11−100533)には、光学異性体のうちのL体が80%以上含まれる乳酸を用いてなる乳酸ビスマスを含有することを特徴とするカチオン電着塗料組成物が開示されている。
特許文献8(特開平11−106687)には、2種以上の有機酸によるビスマス塩の水溶液であって、該有機酸の少なくとも1種が脂肪族アルコキシカルボン酸である有機酸ビスマス塩水溶液を含有することを特徴とするカチオン電着塗料組成物が開示されている。
ここで、これらの特許文献におけるビスマス化合物は、あくまでクロム化合物や鉛化合物の代替として作用するものである。したがって、カチオン電着により形成される皮膜中にビスマス化合物を分散させることを前提とする技術であり、これら特許文献のいずれにおける処理液中でも、ビスマスは非水溶性形態で存在している。
このように、クロム化合物や鉛化合物の代替としてビスマス化合物を皮膜中に分散させる技術においては、従来のクロム化合物や鉛化合物を使用した場合と同様、リン酸亜鉛系化成処理等の下地処理なしには十分な耐食性は得られない。事実、これらの特許文献ではリン酸亜鉛系化成処理との組合せを前提とした実施例のみが開示されている。
更に、特許文献9(特開2010−24471)には、ビスマスの有機酸塩又は無機酸塩を含む水溶液に金属基材を浸漬し、該金属基材を陰極として電解することにより、ビスマス金属換算で、30〜1000mg/mの析出量でビスマス化合物皮膜を形成する第1工程、及び該皮膜の上に、カチオン電着塗料を電着塗装して電着皮膜を形成する第2工程を含む複層皮膜形成方法が開示されている。
しかしながら、特許文献9においてはビスマス浴によるビスマス皮膜形成工程とカチオン電着塗料による電着皮膜形成工程は別々独立したものであり、金属基材の表面処理及び電着皮膜のプロセスは依然として煩雑である。更には、これらのプロセスを簡略化することは開示も示唆もされていない。加えて、特許文献9で使用される有機酸は酢酸、ギ酸及び乳酸等であり、これらはビスマスを可溶化させる能力に乏しく、特許文献9におけるpHの詳細が記載されていないが、pH値によっては、この形態でのビスマスは水酸化物という非水溶性形態であると考えられる。
一方、昨今ビスマス化合物以外の手法により耐食性を更に向上させ、リン酸亜鉛系化成処理等の下地処理を施さなくても、1コートにて十分な耐食性を確保し得る技術が検討されてきている。
例えば特許文献10(特開2008−274392)には、金属基材に、皮膜形成剤を少なくとも2段階の多段通電方式で塗装することによって皮膜を形成する方法であって、(i)皮膜形成剤が、ジルコニウム化合物と、必要に応じて、チタン、コバルト、バナジウム、タングステン、モリブデン、銅、亜鉛、インジウム、アルミニウム、ビスマス、イットリウム、ランタノイド金属、アルカリ金属及びアルカリ土類金属から選ばれる少なくとも1種の金属(a)を含有する化合物とを合計金属量(質量換算)で30〜20,000ppmと、樹脂成分1〜40質量%とを含んでなり、(ii)金属基材を陰極として1段目の塗装を1〜50Vの電圧(V1)で10〜360秒間通電することにより行い、次いで、金属基材を陰極として2段目以降の塗装を50〜400Vの電圧(V2)で60〜600秒間通電することにより行い、そして(iii)電圧(V2)と電圧(V1)の差が少なくとも10Vであることを特徴とする表面処理皮膜の形成方法が開示されている。
また、特許文献11(特開2008−538383)には、(A)希土類金属化合物、(B)カチオン基を有する基体樹脂、及び(C)硬化剤を含む水性塗料組成物であって、該水性塗料組成物に含まれる(A)希土類金属化合物の量が、塗料固形分に対して、希土類金属に換算して、0.05〜10重量%である水性塗料組成物に、被塗物を浸漬する、浸漬工程、該水性塗料組成物中において、被塗物を陰極として50V未満の電圧を印加する、前処理工程、及び該水性塗料組成物中において、被塗物を陰極として50〜450Vの電圧を印加する、電着塗装工程、を包含する、複層皮膜形成方法が開示されている。
しかしながら、特許文献10及び11においては、金属基材に樹脂膜が直接接しているため、必ずしも十分な耐食性や付廻り性を得ることができなかった。以上の従来技術を整理すると、カチオン電着塗装とビスマスの使用とを組み合わせた先行技術は存在するものの、十分な耐食性や付廻り性を担保するためには、(1)金属に対して電着皮膜を直接形成させるのではなく、リン酸亜鉛化成処理等の表面処理を施した上で電着皮膜を形成させる必要があること(即ち、二段階処理が必要なこと)、(2)Biを耐食性付与剤として用いるため、電着皮膜中にBiを分散させることを前提とした液組成とする必要があること、である。このように、従来技術では、カチオン電着塗装により皮膜を形成させる際、十分な耐食性及び付廻り性を担保するためには、二段階処理を実行しなくてはならないという問題があった。
特開平5−32919号公報 国際公開99/31187号公報 特開2004−137367号公報 特開2007−197688号公報 特開平11−80621号公報 特開平11−80622号公報 特開平11−100533号公報 特開平11−106687号公報 特開2010−24471号公報 特開2008−274392号公報 特開2008−538383号公報
そこで、本発明は、金属基材に皮膜を形成させるカチオン電着塗装技術において、二段階処理という面倒な手法によらず、且つ、カチオン電着塗装により形成された皮膜の十分な耐食性及び付廻り性を担保する手段を提供することを目的とする。
本発明者らは上記の課題を解決することを目的に鋭意検討し、その解決手段を見出した。すなわち、本発明は次に示す[1]〜[4]である。
[1] 金属基材上に形成される複合皮膜であって、金属基材を
(A)Bi元素と、(B)Y及びCeからなる群より選択される希土類元素と、(C)カチオン性の有機樹脂と、(D)水性アミノポリカルボン酸とを含有する、pHが4〜6の水性処理液中に浸漬させた後、該金属基材を陰極とした電解工程(1)〜(3):
(1)最大0.01A/cmが得られる電解条件で最大100Cまで陰極電解し、次いで
(2)10V/秒未満の昇圧速度で150V〜260Vの電圧まで昇圧させ、その後
(3)150V〜260Vの一定電圧で陰極電解:
に付すことによって、金属基材上に形成されることを特徴とする複合皮膜。
[2] 表面に前項[1]記載の複合皮膜が形成された金属基材。
[3] 鉄系材料である前項[2]記載の金属基材。
[4] 金属基材上に形成される複合皮膜の形成方法であって、金属基材を、(A)Bi元素、(B)Y及びCeからなる群より選択される1種以上の希土類元素、(C)カチオン性の有機樹脂成分及び(D)水性アミノポリカルボン酸を含有する、pH4〜6の水性処理液中に浸漬させた後、該金属基材を陰極とした電解工程(1)〜(3):
(1)最大0.01A/cmが得られる電解条件で最大100Cまで陰極分解し、次いで
(2)10V/秒未満の昇圧速度で150V〜260Vの電圧まで昇圧させ、その後
(3)150V〜260Vの一定電圧で陰極電解:
に付すことを特徴とする形成方法。
本発明によれば、一つの処理液のみで連続的に、(1)Biを主成分として含有する金属Bi層、(2)(a)Bi元素と(b)Y及びCeからなる群より選択される1以上の希土類元素を含有する金属複合物層と、更に(3)(a)Bi元素、(b)Y及びCeからなる群より選択される1以上の希土類元素並びに(c)カチオン性の有機樹脂を含有する複合有機樹脂層を有する複合皮膜を形成することができる。その結果、カチオン性の有機樹脂に優先してBiやY又はCeを金属に近い側に付着させることで、樹脂が直接金属基材に付着することを防ぐ。その結果得られる樹脂は、高い付廻り性を達成する。
更に、本処理液は、第1工程、第2工程及び第3工程を通して用いられ、各工程間の処理液の交換や、第1及び第2工程後の金属基材の引き上げ作業や乾燥作業は必ずしも必要とされず、一つの処理液浴の中で連続的に行うことができ、製造プロセスを大幅に簡略化することができる。さらには、陰極電解によって微量の金属基材が溶け出したものも処理液として用いることもできる。ここで、例えば、鉄や亜鉛については、それぞれ20ppm以下及び100ppm以下であることが、液安定性及び/又は膜性能の観点からも好適である。
本発明に係る複合皮膜は、(A)Bi元素、(B)Y及びCeからなる群より選択される1以上の希土類元素、(C)カチオン性の有機樹脂並びに(D)水性アミノポリカルボン酸を含有する、pH4〜6の水性処理液に金属基材を浸漬し、該金属基材を陰極として、該金属基材の表面にBi元素を主成分とする皮膜を形成する第1工程、その皮膜の上に、Bi元素とY元素及び/又はCe元素とを含有する金属複合物の皮膜を形成する第2工程、更にその上にカチオン性の有機樹脂を主成分として含有する複合有機樹脂の皮膜を形成する第3工程を含む方法により金属基板上に形成される。
以下、当該方法で使用される原料等から順に説明する。
金属基材
本発明の金属表面処理方法及び金属表面処理皮膜は、各種金属を腐食から防止する目的で使用される。金属基材は、特に限定されるものではないが、鉄、アルミニウム又は亜鉛、これらの組み合わせ、これら金属(二以上の組み合わせも含む)と他の金属又は他成分との合金、或いはこれら金属のそれぞれ(二以上の組み合わせも含む)又は他の金属との合金上にめっきが施された複合材等が挙げられる。これらのうち、本方法は鉄系材料に対して特に有効である。例えば、鉄系材料としては、冷延鋼板、熱延鋼板、鋳物材、鋼管、高張力鋼(ハイテン)等の鉄鋼材料、それらの鉄鋼材料の上に亜鉛系めっき処理及び/又はアルミニウム系めっきが施された材料等が挙げられる。また、アルミニウム系材料としては、アルミニウム合金板、アルミニウム系鋳物材等が挙げられる。特に形状が複雑な金属構成体、例えば、鉄系材料やアルミニウム系材料を主とする金属構成体である自動車車体、自動車部品、家電製品、建築材料等への使用に適している。
金属基材は皮膜を均一に形成するために、金属表面処理の前処理として、金属基材表面を中性洗剤又はアルカリ洗剤等で脱脂を行い、清浄にする工程に付されていることが好ましい。
浸漬液(処理液):
ビスマス
本発明の金属表面処理のための水性処理液は、錯化されたビスマス(Bi)を含有する。ここでいう錯化されたBiとは、処理液中で固形化や析出をせず、完全に溶解状態になっているBi成分のことを指し、本最良態様では特定の水性アミノポリカルボン酸によってキレートを構成し、安定的に水溶化された状態であることを意味している。「水溶化された状態」とは、例えば、後述するウルトラフィルター(通称UF:ユーエフ)でろ過した際にろ液中に存在する状態を指す。
ここで、Bi元素としては、水性アミノポリカルボン酸にて錯化されたBi、即ちBi錯体が100〜3600ppm含有されていることが好ましい。150〜2400ppmが更に好ましく、200〜1800ppmが最も好ましい。水性処理液を製造する際の原料であるBi源としては、水性アミノポリカルボン酸により最終的に可溶化されるものであれば特に限定されないが、カウンターイオン(対イオン、例えば塩化物イオン、硝酸イオン等)を除く観点から酸化ビスマス及び/又は水酸化ビスマスが有用である。しかしながら、酸化ビスマス及び/又は水酸化ビスマスは水に対する溶解度が非常に低いことから、前述の水性アミノポリカルボン酸で溶解させ、かつ、同時に錯化することが最も好ましい。Bi濃度が低過ぎる場合、耐食性向上に必要かつ十分なBi付着量が得られず、Bi錯体濃度が高すぎると処理液の粘度が増加し使用に耐えられない液性状となってしまう恐れがある。
水性アミノポリカルボン酸
処理液中におけるBiを錯化して溶存状態で安定化させるために、前記処理液は更にアミノポリカルボン酸を含有する。アミノポリカルボン酸とは、分子中にアミノ基と複数のカルボキシル基を有するキレート剤の総称であり、水性アミノポリカルボン酸であることが好ましい。具体的にはEDTA(エチレンジアミン四酢酸)、HEDTA(ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸)、DTPA(ジエチレントリアミン五酢酸)、CyDTA(trans−1,2−シクロヘキサンジアミン四酢酸)、EGTA(エチレングリコールビス(2−アミノエチルエーテル)四酢酸)、NTA(ニトリロ三酢酸)、TTHA(トリエチレンテトラミン六酢酸)等が該当するが、Biとの錯形成能の観点からEDTA、HEDTA、DTPA、CyDTA、EGTA、NTAがより好ましい。例えば、Biの安定度定数(β)が20以上である水性アミノポリカルボン酸が好ましい。例えば、前述した好適例のβに関しては、EDTA=28.2、HEDTA=24.11、DTPA=29.7、CyDTA=27.2、EGTA=23.8である(分析化学データブック改定5版、社団法人日本分析学会、丸善株式会社、平成16年9月10日発行、P31〜40)。更に、生分解性の観点から、HEDTAが特に好ましい。
Y又はCeイオン
本発明の金属表面処理のための水性処理液は、更に、イットリウム(Y)イオン及び/又はセリウム(Ce)イオンを含有する。ここで、Yイオン及び/又はCeイオンとしては、3価のYイオン(Y3+)及び/又はCeイオン(Ce3+)を示し、本処理液の使用pH領域ではイオン化している。Y及びCeはいかなる物質を利用することも可能であるが、カウンターイオンの含有を考慮すると酸化物や水酸化物が好ましい。ここでいうYイオン及び/又はCeイオンとは、処理液中で固形化や析出をせず、完全に溶解状態になっているY及び/又はCe成分のことを指し、安定的に水溶化された状態であることを意味している。具体的には、「水溶化された状態」とは、後述するウルトラフィルターでろ過した際のろ液中に存在する状態を指す。
Yは5〜1500ppmが好ましく、より好ましくは10〜1300ppm、更に好ましくは15〜1000ppmである。Ceは5〜200ppmが好ましく、より好ましくは10〜150ppmであり、更に好ましくは15〜120ppmである。
Yイオン及び/又はCeイオン濃度が低過ぎる場合、付廻り性の向上に対する作用効果が小さく、高過ぎると処理液中のBiの安定性を著しく低下させ、その結果処理液の安定性を低下させてしまう。
Ce化合物及びY化合物として、具体的には、酸化セリウム、シュウ酸セリウム、酢酸セリウムCe(CHCO、硝酸セリウム(III)又は(IV)、硝酸セリウムアンモニウム、硫酸セリウム、塩化セリウム、酸化イットリウム等が挙げられる。
処理液中のBi、Y及び/又はCe濃度は、例えば、処理液をウルトラフィルター(UF)でろ過したろ液を高周波誘導結合プラズマ発光分光分析(ICP)若しくは原子吸光分光分析(AA)を用いて定量することができる。
カチオン性の有機樹脂
本発明の金属表面処理において用いられる処理液は、カチオン性の有機樹脂を含有する。ここで、当該処理液の全重量を基準として、カチオン性の有機樹脂を5〜30重量%含有することが好ましく、7〜25重量%が更に好ましく、10〜20重量%が最も好ましい。樹脂含有量が低過ぎると皮膜析出量が不足し、含有量が高過ぎると経済的に不利である。ここで、カチオン性の有機樹脂は特に限定されるものではないが、水溶性又は水分散性であることが好ましい。
前記カチオン性の有機樹脂はより好ましくは、比較的低分子量の有機酸(例えば、蟻酸、酢酸、乳酸など)により中和されることでカチオン化したエポキシ骨格を主としたものである。エポキシ系の樹脂としては、アミン付加エポキシ樹脂が好適に用いられる。例えば、ポリグリシジルエーテルと、1級モノ若しくはポリアミン、2級モノ若しくはポリアミン、又は1級及び2級混合モノ若しくはポリアミンとの付加物;ポリグリシジルエーテルと、ケチミン化された1級アミノ基を有する2級モノ又はポリアミンとの付加物等が挙げられる。尚、上記エポキシ系樹脂としては、平均で1分子あたり1個よりも多いグリシジル基を有する限り、全ての低分子及び高分子化合物を用いることができる。前記カチオン性の有機樹脂は好ましくは、錫触媒(例えば、ジブチル錫ラウレート、ジブチル錫オキシド、ジオクチル錫などの有機錫化合物)及び/又は溶剤が含有されたエマルジョンである。前記カチオン性の有機樹脂は内部架橋型であってもよく、外部架橋型であってもよい。
ここで、カチオン性の有機樹脂エマルジョンについては基体樹脂にアミン基のようなカチオン性官能基を導入させる方法、すなわち自己乳化法、及びカチオン界面活性剤を用いて乳化させる方法、すなわち強制乳化法のいずれか又は双方を同時に用いて作製することができる。
更に、カチオン性官能基を導入後、ノニオン界面活性剤を乳化助剤として用いることもできる。また、自己乳化エマルジョンの分子量が小さい場合は、もはや粒子状のエマルジョンではなく水溶性樹脂となるが、水溶性樹脂であっても本発明の効果が損なわれるものではない。本発明における水系樹脂とは、水分散するエマルジョンと水溶性樹脂の総称である。
また、水性の有機樹脂には、ブロック化ポリイソシアネートをはじめとする硬化剤を任意に配合することもできる。
他の任意成分
本発明に用いられる処理液には、更に必要に応じて顔料、触媒、有機溶剤、顔料分散剤、界面活性剤等、塗料分野で通常使用されている添加剤を適用することもできる。顔料としては、例えば、チタン白、カーボンブラック等の着色顔料、クレー、タルク、カオリン等の体質顔料、トリポリリン酸アルミニウム、リン酸亜鉛等の防錆顔料等が挙げられ、触媒としては、例えば、ジブチル錫オキサイド、ジオクチル錫オキサイド等の有機錫化合物、ジブチル錫ラウレート、ジブチル錫ジベンゾエートなどのジアルキル錫の脂肪酸若しくは芳香族カルボン酸塩などの錫化合物等を塗膜硬化触媒として用いることができる。
溶媒:水系溶媒
本発明に係る金属表面処理液に用いられる液体媒体としては、水性媒体が好適であり、水がより好適である。尚、液体媒体が水である場合、液体媒体として水以外の他の水系溶媒(例えば、水溶性のアルコール類)を含有していてもよい。他の水系溶媒としては例えば、液体媒体の全重量を基準として10重量%以下が好ましい。
処理液の物性
処理液のpHは、反応開始時はpH4〜6が好ましく、より好ましくはpH4.5〜5.5である。このpH計測に関しては、市販のpHメーターを用いることができる。ここで、上記pH範囲は、鉄鋼等の金属基材が溶け出し難い処理液条件である。一方、前記特許文献9において、酢酸、蟻酸、乳酸といった有機酸のBi塩を使用することが記載されているが、この塩を溶解させた際、液のpHは弱酸性となる一方、Biに対するこれら有機酸のキレート能が低い結果、Biは水酸化物を形成して沈殿物を形成すると考えられる。一方、本発明では、pH4〜6という弱酸性条件下においても水性アミノポリカルボン酸をBiと共存させることによって安定にBiを溶解状態に保つことができ、その結果Bi金属皮膜を効果的に鉄鋼材料等の金属基材上に付すことができると考えられる。
処理液の温度についても特に制約はないが、陰極電解処理によって皮膜を析出させる際は、通常15〜40℃、好ましくは20〜35℃の範囲内で使用することができる。
水性アミノポリカルボン酸の濃度はBiに対して0.5〜10.0倍モル濃度が好ましく、0.7〜5.0倍モル濃度が更に好ましく、1.0〜3.0倍モル濃度が最も好ましい。Biに対する水性アミノポリカルボン酸の濃度比率が0.5倍モル濃度を下回るとBiが処理液中で水酸化物となり沈澱するため、有効なBi濃度が低下し、結果として十分なBi付着量が得られなくなる。10.0倍モル濃度を上回ると過剰の水性アミノポリカルボン酸がカチオン化した樹脂エマルジョンの安定性を低下させ、処理液の安定性を損なうこともある。
金属表面処理法
続いて、本発明の金属基材を陰極とした電解工程を第1工程〜第3工程の順に説明する。
第1工程
本発明にかかる金属表面処理(複合皮膜の形成方法)の第1工程は、(A)Bi元素、(B)Y及びCeからなる群より選択される希土類、(C)カチオン性の有機樹脂並びに(D)水性アミノポリカルボン酸を含有する、pH4〜6の水性処理液中に前記金属基材を浸漬し、金属基材を陰極とした電解、即ち電解めっき法による金属Biの金属素地への析出工程である。具体的には、例えば、0.0001以上、最大0.01A/cmの電流密度が得られる電解条件で、例えば、0.1C以上、100Cまで陰極電解を行う。尚、出力電流は一定とすることが好ましい。
第1工程の電圧は上記の電流密度が得られる電圧の範囲で行われることが好ましい。0を超え、例えば、0.001以上50V以下であり、10〜240秒間陰極電解することが更に好ましい。電圧が下限を下回る場合、すなわち金属基材を陽極として電解した場合は、金属基材が組成物中に溶出してしまい、組成物の安定性を低下させるばかりか、耐食性の向上に必要な界面Biが十分付着しなくなる。上限を超える場合も、Biが金属表面に優先的に析出する前に樹脂析出が始まるおそれがあるため、やはり十分な耐食性が得られなくなる。
処理時間が下限を下回る場合も十分な界面Biが析出せず、上限を上回る場合は界面Biの付着量過多となり、皮膜の密着性が損なわれる場合がある。
第1工程において、pH4〜6という弱酸性処理液を開始として、かつ弱い電流条件下で、当該金属基材上において錯化されたBiが還元され、金属Biが析出する。この際、錯化されたBiから金属Biへの還元反応は、水中の水素イオンから水素ガスへの還元反応よりも優先的におこる。
尚、Biは、特にこのpH4〜6においては、単独だと系中に生じるOHイオンと反応してBi(OH)となって沈殿しやすいため、水性アミノポリカルボン酸を共存させることによって、Bi錯体を形成させる。
次いで、Bi錯体の濃度律速状態となったときに、水素イオンが水素ガスに還元される。第1工程が低pHで行われた場合、金属基材が水素イオンにより溶解され、処理液中に溶出する。材料を構成する金属イオンは、処理液にとっては不要物であり混入することは好ましくないため、第1工程に付すための処理液はpH4〜6が好ましく、より好ましくはpH4.5〜5.5である。例えば、金属基材が鉄系材料の場合、溶出した鉄イオンが樹脂エマルジョンを凝集させたり、皮膜に水酸化物として混入し、肌の劣化や耐食性の低下と判断されたりすることから、かかるpH範囲が好ましい。また、pHが低すぎると、被処理物近傍のpHが樹脂の析出するpHに到達するまでに多くの電気量や時間を有するので生産性が低下する。更に、pHが低すぎると、処理液の電気伝導度も高く、水素ガスが多く発生し、皮膜に水素ガスによる貫通穴(ピンホール)が生成しやすくなり、肌の劣化や耐食低下を引き起こすこととなる。
第2工程
本発明にかかる金属表面処理方法(複合皮膜の形成方法)の第2工程は、前記第1工程で得られたビスマスを主成分とする層を有する金属基材を、前記第1工程の浸漬液から取り出さずそのまま、電圧を上げてBi元素とY元素及び/又はCe元素の金属複合物を含有する金属複合物層の皮膜を更にその上に施す工程である。
具体的には、第1工程に引き続き、同じ処理液内で0.0001〜10V/秒の昇圧速度で150V〜260Vの電圧まで昇圧させる工程である。第2工程の電圧は150〜260Vであり、120〜180秒間陰極電解することが好ましい。電圧が下限を下回る場合は、樹脂皮膜の析出量が不十分となり、上限を上回る場合は、樹脂皮膜の析出過多により経済的に不利であるうえに、過剰な樹脂の凝集が行われる場合もあるし、めっき材については一般的にガスピンと称される塗膜欠陥が生じるので好ましいとは言えない。
第2工程では、pHが上昇していくことでBi元素と、Y元素及び/又はCe元素とを含有する水不溶性複合物及び中和反応で生成したカチオン樹脂の形成が進行する。そして、pH上昇に伴い、水不溶性複合物及びカチオン樹脂のいずれもがゼータ電位が低下し、液中に存在する水不溶性複合物や中和されたカチオン樹脂の安定性が徐々に損なわれていく。このとき、好ましくはpH5〜7、より好ましくはpH5.5〜6.5において、水不溶性複合物のゼータ電位が0となる。前述の水不溶性物質は一般的に市販されているゼータ電位測定装置により容易に計測することが可能であり、この物質を様々なpHの水溶液に分散させ、ゼータ電位に及ぼすpHの影響についても考察できる。このとき金属基材表層(又は近傍)のみで生成された水不溶性複合物は等電点に達しており、不安定な状態にある。そして、この物質はカチオン樹脂を積極的に凝集させ金属基材上に積層し、抵抗膜として機能するようになる。この結果、処理液における、水不溶性複合物のゼータ電位に起因した電気的反発力がなくなるため、水不溶性複合物は「表面積を下げようとする凝集力」のみをもたらす凝集剤として機能すると考えられる。これにより、液の安定性が損なわれ、ゼータ電位が0になっていないカチオン樹脂をも取り込んだ形で、即ち、水不溶性複合物とカチオン樹脂とが混合した形態での沈殿複合物(共沈物)が起こるものと考えられる。
第2工程では、Bi元素と、Y元素及び/又はCe元素とが金属複合物を形成し、第1工程で形成した層の上に、別の層を形成する。本工程では、第1工程に比して比較的pHが上昇しており、液中に存在するYイオンやCeイオンのゼータ電位を失うpH値(好ましくはpH5〜7、より好ましくはpH5.5〜6.5)付近で還元され、金属となり、付着する。Y元素やCe元素は、Bi元素よりも還元され難く、その結果金属化し難い種である。従って、第1工程では液中のY元素やCe元素は殆どイオン状態(例えば、Y3+やCe3+)で存在していると考えられる。徐々に電圧が上がることによって、YやCeはBiとともに凝集しやすくなると考えられる。
第2工程では、第1工程に比して徐々に電圧を上げていくことで、正電荷に帯電したカチオン樹脂は金属素地板(マイナス極)に引き寄せられる。同時に、第1工程よりも大量の電流が流れているために、マイナス極では、第1工程と比較して水素ガスが多量に発生する。その結果、マイナス極付近でOHイオンが増加し、pHが上昇する。その結果、マイナス極付近でカチオン樹脂とOHイオンとが中和反応を起こし、エマルジョンが等電点に達した際には、カチオン樹脂の電荷が失われると共に水溶化も失われ、凝集すると考えられる。
尚、第1工程に次いで第2工程に移行する際、電圧を瞬時に増加させる必要はなく、緩やかに増加させても本発明の効果を損なうものではない。
第3工程
第3工程は、第1工程及び第2工程で得られた皮膜を有する金属基材を引き続き同じ処理液内でカチオン電着塗装する工程である。具体的には、第2工程で設定された上限である150V〜260Vの一定電圧で陰極電解を行う。
第3工程では、第2工程の高電圧を維持することで、更にpHが上昇し、Bi元素やY元素又はCe元素よりも凝集しにくいカチオン樹脂イオンの中和反応やゼータ電位の低下が進行し、金属素地板(マイナス極)に引き寄せられる。pHの上昇に伴い、カチオン樹脂が処理液に残るBi元素やY元素又はCe元素と複合有機物を形成して、皮膜を形成する。
第3工程において「一定の電圧」というのは、必ずしも最初から最後まで同じ高さの電圧にしなければならないものではなく、電着速度や電着の厚さの必要などに応じて適宜調整してもよい。例えば、ある電圧を基にして上下10%以内で任意に変化をつけてもよい。
本発明における一連の陰極電解工程において、第1工程は主としてBi元素(特に金属単体である金属Bi)を優勢的に析出させる工程である。第2工程は主として(a)Bi元素と(b)Y及びCeからなる群より選択される1以上の希土類元素とを含有する金属複合物を優勢的に析出させる工程である。
更に第3工程は主として(a)Bi元素と、(b)Y及びCeからなる群より選択される1以上の希土類元素と、(c)カチオン性の有機樹脂とを含有する複合有機樹脂を優先的に析出させる工程である。十分な耐食性を得るためには、金属基材に直接接触しているBi元素、つまり金属基材と樹脂の間に存在する界面Bi元素やY元素及び/又はCe元素の存在が必要であり、そのためには陰極電解の第1工程、第2工程及び第3工程の順番と条件が重要である。
傾斜複合皮膜
本発明では、第1工程、第2工程及び第3工程を経て段階的に得られた皮膜を傾斜複合皮膜と呼ぶ。例えば、金属Biの析出は第1工程が最も大きく寄与し、それに続いて第2工程が寄与する。第3工程においては金属Biは殆ど含まれないと考えられる。また、カチオン性の有機樹脂の析出は第3工程が最も大きく寄与し、第2工程では第3工程に比較すると寄与が小さく、第1工程では析出しないか、あってもごく僅かである。尚、自動車の塗装の場合、傾斜複合皮膜の上には、必要に応じて、中塗り皮膜を経て着色ベース皮膜を形成し、更に最上層にはクリア皮膜を形成してもよい。もちろん、中塗り皮膜のないものや、クリア皮膜のないものなども存在する。
傾斜構造
本発明の複合皮膜は、金属基材に隣接する第一の部位、金属基材から最も離膈した第二の部位、及び第一の部位と第二の部位の間にある第三の部位を有する。
第一の部位は、第1工程において金属基材上に形成される、Bi元素を主成分として含有するBi層(特に金属Bi)である。ここで、Bi元素を主成分として含有するとは、当該部位の全重量を基準として、全体の層においてBi元素が50重量%以上、より好ましくは60重量%以上、更に好ましくは70重量%以上含まれることをいう。かかる第一の部位は、実質的にカチオン性の有機樹脂を含まないので、塗装がはがれにくく、耐食性に優れると考えられる。
第二の部位は、前記Bi層から最も離膈した反対の面に形成される、(a)Bi元素と、(b)Y及びCeからなる群より選択される1以上の希土類元素と、(c)カチオン性の有機樹脂とを含有する複合有機樹脂層である。これは前記第2工程の後期〜第3工程で形成されると考えられ、カチオン性の有機樹脂を主成分として含有する。ここで、カチオン性の有機樹脂を主成分として含有するとは、当該部位の全重量を基準として、全体の層においてカチオン性の有機樹脂が50重量%以上、より好ましくは60重量%以上、更に好ましくは70重量%以上含まれることをいう。
第三の部位は、第一の部位と第二の部位の間であって、前記金属Bi層上に形成される、(a)Bi元素及び(b)Y及びCeからなる群より選択される1以上の希土類元素を含有する金属複合物層である。第三の部位は、前記第2工程の前期〜中期ないし後期において形成されると考えられる。第三の部位においては、第一の部位よりもBi元素の含有密度が低く、第二の部位よりもY及びCeからなる群より選択される1以上の希土類元素の含有密度が高く、且つカチオン性の有機樹脂の含有密度が低い。
複合皮膜における各成分の分布
かかる複合皮膜における各成分の分布については、理論に束縛されないが、以下のように考えられる。
まず、Bi元素(特にBi金属)は金属基材表面からあるところ(すなわち、第1工程及び第2工程の前期)までは圧倒的優勢に存在し、その後金属基材表面から離れるにつれて徐々に減少していく(第2工程の中期でY又はCeとの水不溶性複合物の形成反応時に多くが消費され、第2工程の後期〜第3工程では相対的に少量となる)。
次に、Y及びCeから選択される1以上の希土類元素は、金属表面からあるところ(第1工程及び第2工程前期)までは殆ど存在せず、その後第2工程中期でBi元素とY元素又はCe元素との水不溶性複合物が形成される時に急激に上昇し、更に反応が進むと相対的に少量となる。
最後に、カチオン性の有機樹脂は第1工程及び第2工程の前期までは殆ど存在せず、その後徐々に増加し、第2工程中期でBi元素と、Y及びCeからなる群より選択される希土類元素との水不溶性複合物が形成されるときに徐々に増加し、第2工程後期で電圧が高くなると、その割合が増大していくと考えられる。
皮膜中のBi元素は、皮膜表面よりも素地金属側により多く存在する必要がある。具体的には、皮膜厚の中心から金属基材側のBi元素付着量:Bが、全Bi元素付着量:Aに対して55%以上(B/A≧55%)となるBi元素付着分布であることが好ましい。58%以上が更に好ましく、60%以上が最も好ましい。低過ぎると十分な耐食性が得られない。尚、上限としては特に限定されないが、90%を超えると皮膜表面側のBi濃度が極端に低下し、Biの持つ硬化触媒としての機能を失うので好ましくない。
皮膜中のBi付着分布については、EPMAを用いて皮膜断面を線分析することにより測定可能である。同時に撮影した反射電子像によって素地金属と皮膜の界面及び皮膜表面の位置を特定し、EPMA線分析による皮膜中のBi強度の積分値:A及び皮膜厚の中心から素地金属側のみの積分値:Bを求め、B/Aを算出することができる。
本発明の組成物を用い、本発明の処理方法によって得られる皮膜中に存在するBi元素は金属単体又はその酸化物の形態で存在する。陰極電解によって析出するBi元素は、基本的に還元析出した金属Biであるが、その一部は特に皮膜の焼付け工程で酸化されて酸化Biとなる。また、第2工程ないし第3工程において高電圧がかかった場合、皮膜表面のpH上昇により、水性アミノポリカルボン酸によるBiの安定化が不十分となるため、特に皮膜表面側では酸化Biとしても析出することがある。
成分量
Bi元素の付着量は20〜250mg/mが好ましく、30〜200mg/mが更に好ましく、50〜150mg/mが最も好ましい。Bi元素の付着量が低過ぎると十分な耐食性が得られず、またその一方で高過ぎるともはや耐食性の向上が望めないばかりか皮膜密着性を損なう場合もある。尚、Bi付着量は蛍光X線分光分析により定量可能である。尚、本発明における「金属Bi付着量」及び「酸化Bi付着量」は、当該蛍光X線分光分析で定量された値とする。尚、その他の形態として水酸化物の存在も考えられるが、当該測定方法で「金属Bi」又は「酸化Bi」として定量された場合には、その数値は「金属Bi付着量」又は「酸化Bi付着量」とすることとする。
Y及び又はCeの付着量は、10〜100mg/mが好ましく、より好ましくは15〜50mg/mである。
カチオン性の有機樹脂の付着量は、厚みとして10〜20μmが好ましく、より好ましくは10〜15μmである。
尚、Y及びCeの付着分布も前記のBiと同様に測定することができる。
膜厚
本発明で得られる皮膜の全皮膜厚は3〜40μmが好ましく、5〜30μmが更に好ましく、7〜25μmが最も好ましい。薄過ぎると十分な耐食性が得られず、厚過ぎると経済的に不利であるうえに付廻り性が低下する場合がある。皮膜厚は、素地金属が磁性金属であれば電磁誘導式膜厚計、素地金属が非磁性金属であれば渦電流式膜厚計により、測定可能である。
以下に参考例、実施例及び比較例を挙げて本発明の内容を具体的に説明する。
参考例1 試験板の作製
対象金属基材をアルカリ脱脂剤(日本パーカライジング株式会社製ファインクリーナーE2001)にて、2分間、43℃でスプレーし、表面の油分やごみを除いた。速やかに市水でスプレー洗浄を行い、金属基材に付着した前記脱脂剤成分を除いた。尚、金属基材としては、実施例1〜12及び比較例1〜3においては冷延鋼板:SPCC SD(JIS G 3141)、実施例13においては合金化溶融亜鉛めっき鋼板、実施例14においてはアルミニウム合金であるJIS−A−6063材料を用いた。また、比較例3については、周知手法に則りリン酸亜鉛皮膜を鋼板上に施した。
参考例2 処理液の作製
脱イオン水中に、HEDTA(ヒドロキシエチレンジアミン三酢酸)、酸化イットリウム又は酸化セリウム及び水酸化ビスマスを添加してイットリウム又はセリウム及びビスマスを可溶化させた。次に、当該可溶化液に、固形分として16重量%となるように、酢酸でカチオン化されたビスフェノールA骨格を有するアミン変性エポキシ樹脂/ブロック化イソシアネートの錫触媒含有エマルジョン{電気伝導度300、着色顔料(カーボンブラック、二酸化チタン)・体質材料・防錆顔料を4重量%含有}を配合し、水酸化ナトリウムでpHを調整して本処理液(実施例1〜14)を得た。また、イットリウム及びセリウムを含有しない液を比較例品として調製した。ここで、処理液の組成(可溶化金属種、可溶化金属の濃度)及びpHを表1に示す。尚、実施例10〜12については、実操業シミュレート水準として鋼材の混入を想定し、Fe3+及びZn2+を更に添加した。
実施例1〜14及び比較例1〜3 陰極電解
参考例2で作製した各々の処理液に金属基材を浸漬して、陰極電解に付した。
第1工程:まず、電着塗料の温度は28℃、最初は0.05A/cmの電流密度となるよう最大20Cまで陰極電解した。
第2工程:次に、電圧の印加条件は30秒かけて4Vから200Vまで直線的に昇圧した。
第3工程:更にその後200Vを150秒間維持した。陰極電解終了時の電流値を表2に示す。塗装後の試験板は水洗後、電気オーブンを用いて170℃にて20分間塗膜を焼き付けて、塗装板を得た。
Figure 0005518622
Bi、Y又はCe付着量の測定
処理後の試験板に析出したBi、Y又はCeの付着量を蛍光X線分光分析(XRF)にて測定した。Bi付着量、Y又はCe付着量、20Cでの最終電流及び20Cでの電着膜厚、付廻り評価及び耐食性評価の結果を表2に示す。尚、付廻り性は20℃での表裏電着膜厚によって評価し、また、塗板の耐食性は以下の方法によって評価した。
(1)得られた塗板にカッターナイフで片側10cmの切れ目を形成し、クロスカットした。
(2)耐食性の評価環境は、塩化ナトリウム(和光純薬、試薬特級)を用い、その濃度を5重量%とした水溶液を作製し、55℃に昇温したものとした。
(3)クロスカットした塗板(1)を、5重量%、(2)で調製した55℃の塩化ナトリウム水溶液に10日間浸漬した。
(4)10日間の浸漬後、脱イオン水にて洗浄した後、水滴を拭取り、カット部にニチバン製セロテープ(登録商標)を貼り付け、これを引き剥がした。このとき、塗膜がセロテープに密着し、塗板からはがれた幅(カット部からの両側最大剥離幅とする)を計測した。
(5)評価基準は、両側最大剥離幅として、6mm以内であれば○、6mmを超えた場合は×とした。
Figure 0005518622
以上のように、実施例では、1ステップで皮膜を形成したにも拘わらず、従来の2ステップ法と同様の耐食性を担保しつつ、従来より格段に優れた付廻り性が確認された(比較例1〜3では、従来通りの電着膜厚が31〜33μmであるのに対し、実施例では22〜24μm)。

Claims (4)

  1. 金属基材上に形成される複合皮膜であって、金属基材を
    (A)Bi元素と、(B)Y及びCeからなる群より選択される希土類元素と、(C)カチオン性の有機樹脂と、(D)水性アミノポリカルボン酸とを含有する、pHが4〜6の水性処理液中に浸漬させた後、該金属基材を陰極とした電解工程(1)〜(3):
    (1)最大0.01A/cmが得られる電解条件で最大100Cまで陰極電解し、次いで
    (2)10V/秒未満の昇圧速度で150V〜260Vの電圧まで昇圧させ、その後
    (3)150V〜260Vの一定電圧で陰極電解:
    に付すことによって、金属基材上に形成されることを特徴とする複合皮膜。
  2. 表面に請求項1記載の複合皮膜が形成された金属基材。
  3. 鉄系材料である請求項2記載の金属基材。
  4. 金属基材上に形成される複合皮膜の形成方法であって、金属基材を、(A)Bi元素、(B)Y及びCeからなる群より選択される1種以上の希土類元素、(C)カチオン性の有機樹脂成分及び(D)水性アミノポリカルボン酸を含有する、pH4〜6の水性処理液中に浸漬させた後、該金属基材を陰極とした電解工程(1)〜(3):
    (1)最大0.01A/cmが得られる電解条件で最大100Cまで陰極分解し、次いで
    (2)10V/秒未満の昇圧速度で150V〜260Vの電圧まで昇圧させ、その後
    (3)150V〜260Vの一定電圧で陰極電解:
    に付すことを特徴とする形成方法。
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