JP5517987B2 - 水銀酸化触媒の評価方法 - Google Patents

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Description

本発明は、排ガス処理システム等において使用する水銀酸化触媒の評価方法に関する。
石炭焚き等に伴って発生する排ガスには、NOx、SOx等と共に水銀(水銀化合物及び金属水銀)が含まれる。この水銀を除去するために、排ガス処理システムにおいて、還元脱硝装置の前流で、水銀を含む排ガスに水銀酸化剤(水銀塩素化剤)を添加することによって触媒上で金属水銀を水溶性の大きい塩素化合物に変換し、還元脱硝装置の後流に設けられた湿式脱硫装置において吸収液と気液接触させることで水銀を高効率で除去する方法及び装置が提案されている(特許文献1)。
このとき、金属水銀の酸化には水銀酸化触媒が用いられる。水銀酸化触媒は、製造工程でその水銀酸化性能にバラツキが生じる。そのため、水銀酸化触媒の使用にあたっては予めその水銀酸化性能を評価する必要がある。また、使用済み水銀酸化触媒の再利用のため、水銀酸化性能を評価したい場合等もある。
一般に、水銀酸化性能の評価には水銀が使用される。しかしながら、水銀を使用すると、水銀の取り扱いに注意を要し、水銀の分析装置や使用済み水銀の後処理が必要になるため、コスト高となる。また、触媒と水銀塩素化剤(塩化水素)との反応熱から触媒性能を評価する方法も提案されている(特許文献2)。反応熱は化学反応によって発生又は吸収される熱であり、この場合、触媒に担持される金属酸化物と塩化水素とが反応する際の熱エネルギーである。
特開平10−230137号公報 特開2008−73791号公報
本発明は、水銀酸化触媒の性能評価において水銀を使用することに伴う問題点を解消し、かつ触媒上での反応状態をより反映する水銀酸化触媒の性能評価方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、鋭意検討の結果、水銀酸化触媒の性能と、水銀酸化触媒に吸着した水銀塩素化剤を脱離させるときの水銀塩素化剤脱離の活性化エネルギーとの間に相関関係を見いだした。したがって、水銀を用いた実際の性能評価を行わずに、水銀塩素化剤の吸着量と脱離の活性化エネルギーから、触媒の水銀酸化性能を評価できることを見いだした。本発明は、かかる見地より完成されたものである。
すなわち本発明は、水銀酸化触媒の評価方法であって、水銀酸化触媒に吸着した水銀塩素化剤を脱離させるときの水銀塩素化剤脱離の活性化エネルギーと、前記水銀酸化触媒の存在下で水銀と前記水銀塩素化剤を反応させて塩化水銀を得る反応の速度定数との相関関係に基づき、測定された水銀塩素化剤脱離の活性化エネルギーに基づいて前記水銀酸化触媒の性能を評価するものである。
本発明によれば、水銀を用いずに性能評価を行うため、水銀を使用することに伴う問題点を解消でき、すなわち、水銀の取り扱いに注意する必要がなくなり、水銀の分析装置や使用済み水銀の後処理が不要となるため、コストの上昇も抑えることができる。また、性能評価に、水銀酸化触媒に吸着した水銀塩素化剤を脱離させるときの水銀塩素化剤脱離の活性化エネルギーを用いるため、触媒上での反応状態をより反映した評価を行うことができる。
酸化物触媒表面での水銀酸化モデルを示す図である。 一定条件で評価した各触媒の水銀酸化性能と脱離の活性化エネルギーとの相関関係を示す図である。 排ガス処理装置の構成の一例を示す図である。 TPDスペクトルの一例を示す図であり、TPDによる触媒(V(0.3wt%)−WO(14wt%))でのHCl評価例である。
水銀酸化触媒は、例えば、TiO、SiO、ZrO2、ゼオライト等の少なくとも1種類の担体に、例えば、V、W、Mo、Ni、Co、Fe、Cr、Cu、Mn等の金属酸化物若しくは硫酸塩又はPt、Ru、Rh、Pd、Ir等の貴金属、又はこれらの混合物、を担持した触媒を用いることができる。水銀酸化触媒は、好ましくは、TiOによる担体上に、V、W及びMoからなる群より選ばれる少なくとも1種類の金属の酸化物を担持した触媒であり、この触媒は、熱安定性に優れ、耐比毒性が向上し、また同時に脱硝機能を持たせることができるという点において好ましい。また、排ガス処理システムにおいて一般に用いられる脱硝触媒を水銀酸化触媒として用いることも可能である。
また、水銀塩素化剤は、排ガス中の水銀が上記触媒の存在下に水銀塩素化剤と反応してHgCl及び/又はHgClを生成するものをいい、例えば、塩化水素(HCl)、塩化アンモニウム、塩素、次亜塩素酸、次亜塩素酸アンモニウム、亜塩素酸、亜塩素酸アンモニウム、塩素酸、塩素酸アンモニウム、過塩素酸、過塩素酸アンモニウム、又は上記酸のアミン塩類、その他の塩類等を用いることができる。水銀塩素化剤は、好ましくはHCl又は塩化アンモニウムであり、より好ましくはHClである。
本発明による水銀酸化触媒の評価方法は、水銀塩素化剤の吸着量がほぼ同程度である水銀酸化触媒について、水銀酸化触媒に吸着した水銀塩素化剤を脱離させるときの水銀塩素化剤脱離の活性化エネルギー(以下、「脱離の活性化エネルギー」という。)を測定し、該脱離の活性化エネルギーと水銀酸化触媒の存在下で水銀と水銀塩素化剤を反応させて塩化水銀を得る反応の速度定数とについて予め得られた相関関係に基づいて当該水銀酸化触媒の性能を評価するものである。
吸着量は、昇温脱離法(TPD:Temperature Programmed Desorption)で求めることができる。より詳細には、水銀酸化触媒に水銀塩素化剤を接触させて、水銀酸化触媒に水銀塩素化剤を吸着させる。その後、これを所定昇温速度で加熱して、吸着した水銀塩素化剤を脱離させる。脱離した水銀塩素化剤の量を測定して、これを吸着量とする。所定昇温速度は、試料全体の均一な温度上昇や時間的効率を考慮して、好ましくは1〜30℃/minの範囲とするとよい。吸着量の測定には質量分析計を用いることができるが、これに限定されるものではなく、水銀塩素化剤の測定が可能であればいかなる装置及び手法を用いてもよい。また、吸着量は水銀酸化反応の生じる温度範囲において求めることが好ましく、例えば、200〜500℃、より好ましくは200〜450℃の範囲である。これは、200℃未満の温度では、例えば、触媒に水を介して吸着した水銀酸化反応に寄与しない水銀塩素化剤が脱離し、これが検出されると考えられ、500℃を超える温度では、熱分解が起こる場合や測定時間が長くなる場合があるためである。なお、この温度範囲は、本明細書に記載の、触媒に担持可能な金属のいずれについても適用可能である。また、触媒単位重量あたりの吸着量は、水銀酸化触媒における水銀塩素化剤の一般的な吸着量とすることができる。さらに、触媒単位重量あたりの吸着量がほぼ同程度とは、好ましくは±20モル%、より好ましくは±15モル%の範囲をさす。なお、吸着量は、主に水銀酸化触媒の比表面積に依存し、触媒の平均細孔径とその数が同じであれば吸着量もほぼ同程度である。
脱離の活性化エネルギーは、水銀酸化触媒に吸着した水銀塩素化剤を脱離させるときの水銀塩素化剤脱離の活性化エネルギーであり、TPDで求めることができる。より詳細には、水銀酸化触媒に水銀塩素化剤を接触させて、水銀酸化触媒に水銀塩素化剤を吸着させる。その後、これを所定昇温速度で加熱して、吸着した水銀塩素化剤を脱離させる。脱離反応速度が最大になる温度(ピーク温度)を計測する。なお、所定昇温速度は、試料全体の均一な温度上昇や時間的効率を考慮して、好ましくは1〜30℃/minの範囲とするとよい。ピーク温度は水銀酸化反応の生じる温度範囲において求めることが好ましく、例えば、好ましくは200〜500℃、より好ましくは200〜450℃の範囲である。これは、200℃未満の温度では、例えば、触媒に水を介して吸着した水銀酸化反応に寄与しない水銀塩素化剤が脱離し、これが検出されると考えられ、500℃を超える温度では、熱分解が起こる場合や測定時間が長くなる場合があるためである。なお、この温度範囲は、本発明において用いられる触媒に担持可能な金属のいずれについても適用可能である。ピーク温度は、例えば、脱離した水銀塩素化剤を質量分析計等の検出器でモニタして、得られたスペクトル(TPDスペクトル)のピーク位置からピーク温度を求めることで計測可能である。2以上の昇温速度で求めた2以上のピーク温度と、同温度における反応速度定数とからアレニウスプロットで活性化エネルギーを得て、これを脱離の活性化エネルギーとする。以下、TPDで脱離の活性化エネルギーを求める原理の概要をTPDスペクトルの解析という点から説明する。
脱離の反応速度論は次式で表すことができる。
Figure 0005517987
ここで、ν(t)は脱離速度(時間当たりの脱離量)、θ(分子数/m)で表面温度(被覆率)であり、νは頻度因子、Eaは脱離の活性化エネルギーである。Nは反応次数、R、Tはそれぞれ気体定数と絶対温度である。この式をベースに一定昇温条件での脱離反応速度を求める。温度Tについて昇温速度βとすると(Tは初期温度)、温度は次のように書ける。
Figure 0005517987
両辺を時間で微分し(dT=βdt)、これを式(1)のdtに代入する。
Figure 0005517987
反応開始時から温度上昇に伴い、脱離反応が生じる。その速度はある温度(T)で最大になり、その後、脱離が進むため、表面から脱離する物質が減少していき、最終的に0(もしくは脱離しないもの)となる。温度Tでは次式が成り立つ。
Figure 0005517987
式(1)、式(3)及び式(4)から次式が得られる。
Figure 0005517987
式(5)はそのまま変形すると、次式が得られる。
Figure 0005517987
式(3)に式(6)を代入すると式(7)が得られる。
Figure 0005517987
式(7)の対数を取って整理すると式(8)が得られる。
Figure 0005517987
この式(8)、及び式(3)、式(7)がTPD解析のベースになる。1次反応の場合のTPDスペクトルは、式(1)及び式(8)にn=1を代入する。
Figure 0005517987
Figure 0005517987
Ea/(RTp)=kとすると、次式が得られる。
Figure 0005517987
いずれの場合もβ(昇温速度)を2点以上で指定し、ピーク温度(Tp)がそれぞれ計測によって決まると、式(11)より変数νと脱離の活性化エネルギーEaを連立方程式、あるいは最小二乗法などで決定することができる。
一般に、脱離の活性化エネルギー(脱着エネルギー、吸着エネルギー、吸着エンタルピーともいう。)は、表面に吸着した分子が、その表面から離れるために必要なエネルギーのことである。本発明では、吸脱着する分子は水銀塩素化剤にあたり、その対象は水銀酸化触媒に担持される金属酸化物等の表面にあたる。したがって、脱離の活性化エネルギーは、金属酸化物等の表面に限定される事象について、水銀塩素化剤がどのくらいの強さで表面についているかを表すものである。また、脱離の活性化エネルギーは吸脱着する表面の性状に依存するため、同じ物質であっても必ずしも同じ脱離の活性化エネルギーを示すわけではない。
ここで、水銀酸化触媒の触媒反応について説明する。説明のため水銀塩素化剤として塩化水素(HCl)を用いる。
水銀酸化触媒の存在下において、水銀は反応式(1)に示すように、塩素水素(HCl)と反応し酸化(塩素化)される。生成物がHgClの場合について示す。
Hg+2HCl+1/2O→HgCl+HO (1)
この酸化反応は、触媒表面における反応であることが知られている。これは、反応モデルにより説明すると図1のようなものであると考えられている。図1は、酸化物を担持した触媒表面における水銀の酸化を説明する図である。なお、同図中Sは触媒表面を、Mは遷移金属を示している。図1において、(1)HClが触媒表面Sに吸着し、(2)吸着したHClに気相中のHgが近接し、(3)HgClが生成して脱離し、(4)残った水酸基(−OH)と酸素が反応する。したがって、水銀の酸化反応は、触媒表面(金属酸化物表面)に限定された事象であると考えられる。更に、反応モデルを検討すると、第一に、従来の脱硝触媒と同様の酸化反応プロセスであり、従って、反応物の吸着段階とHClによる水銀酸化反応段階が、触媒反応の鍵となること、第二に、HgはHClの非存在下では触媒表面に付着せず、また、酸化反応は生じないこと、従って、HCl吸着における吸着力・吸着量が重要であることから、水銀酸化にはHClが触媒表面に吸着し、かつ容易に脱離しないことが反応性を高める鍵であると考えられる。
更に、上述の通り本発明は、水銀酸化触媒の評価に、脱離の活性化エネルギーと、水銀酸化触媒の存在下で水銀と水銀塩素化剤を反応させて塩化水銀を得る反応の速度定数(以下、反応速度定数という。)と、について予め得られた相関関係を利用している。この反応速度定数は、水銀酸化触媒の水銀酸化性能を示しており、塩化水銀を得る反応の前後での水銀濃度の変化と、空間速度(触媒体積に対する流通ガス量の比)と、から求めることができる。詳細は後述するが、吸着量が同程度で、TiO担体にV、W及び/又はMoの酸化物を担持する水銀酸化触媒から得られた相関関係を図2に示す。水銀酸化触媒としては、上述したように他の担体に他の遷移金属の酸化物若しくは硫化物、若しくは貴金属、又はそれらの混合物を担持する触媒も採用可能であるが、これらの触媒についても吸着量(比表面積)が同程度であれば図2に示したものと同じ相関関係が得られる。したがって、比表面積が同じで性能が未知の触媒の脱離の活性化エネルギーを測定すると、図2のプロットに基づき、水銀酸化性能を予測することができる。
上述のように、本発明は水銀酸化触媒の評価に脱離の活性化エネルギーを採用している。したがって、本発明によれば触媒上での反応状態をより反映した評価を行うことができる。なお、これまでに提案されている評価方法として反応熱を用いた特許文献2の評価方法がある。しかしながら、反応熱は、塩化水素が完全に金属酸化物の塩化物となるバルクの合成反応について塩化水素と金属酸化物との反応のしやすさを示している点で、本発明に係る方法とは異なっている。バルクの合成反応の場合は、金属酸化物の表面性状に依存せず、同じ物質であれば反応熱の値は一定となる。脱離の活性化エネルギーは吸脱着する表面性状に依存するため、同じ物質であっても必ずしも同じ脱離の活性化エネルギーを示すわけではない。よって、本発明によればより正確に水銀酸化性能を予測することができる。
以下、図を用いて排ガス処理システムを説明する。
図3は排ガス処理システムの構成の一例を示す図である。図3において、ボイラ1から還元脱硝装置5までの流路にはアンモニアタンク3から供給されるNHを排ガスに注入するアンモニア注入部2と水銀塩素化剤としてHClを排ガスに注入するHCl注入部4とが設置されている。ボイラ1からの排ガスは還元脱硝装置5へ導入される。NHとHClが注入された排ガスは還元脱硝装置においてNHとNOxとの反応が行われると同時にHCl存在下で金属Hgが酸化されてHgCl及び/又はHgClとなる。空気予熱器6、熱交換器7を経て、電気集塵器8にてばいじんを除去した後、湿式脱硫装置9で排ガス中のSOの除去と同時にHgCl等の除去が行われる。その後、排ガスは熱交換器10を経て煙突11から排出される。還元脱硝装置を出た排ガスには過剰のHClが含まれるが、脱硫装置で石灰乳等のアルカリ水溶液に吸収されるので、煙突11から排出することはない。
以下、実施例を用いて本発明をさらに詳細に説明する。但し、本発明は以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
1.昇温脱離法(TPD)による物性評価
水銀酸化触媒について、水銀塩素化剤であるHClの吸着量及び脱離の活性化エネルギーを求めた。使用した水銀酸化触媒は、TiO担体に、V、WO、MoOを下記の表1に示す割合で担持した触媒である。
物性評価には、昇温脱離法(TPD)を用いた。上記した水銀酸化触媒0.5gに、HClを2750ppmで含有するHCl含有N(2750ppm−HCl/N)を100cc/minで120分間室温で流通して接触させた後、He(100cc/min)流通下で所定昇温速度で昇温した。所定昇温速度には、10℃/min及び15℃/minを用いた。質量分析計の信号(m/z=36、HCl)をモニタし、図4に示すようなTPDスペクトルを得た。ここで、縦軸はMASS信号強度(HCl濃度)であり、横軸は温度(℃)である。得られたTPDスペクトルは、水銀酸化反応の生じる温度範囲である200〜450℃の範囲について次に記載する解析を行った。
1−1.水銀塩素化剤の吸着量の算出
得られたFPDスペクトルより、水銀塩素化剤の吸着量を算出した。すなわち、各FPDスペクトルについて、上記温度範囲における質量分析計の信号の積分値(HCl濃度と温度及び所定昇温速度の関係から変換した時間とで積分)を算出して吸着量とした。ここでは、2750ppm−HCl/Nの検出信号を基準とし、信号強度とガス濃度が比例関係にあるものとして算出した。得られた吸着量は下表1に示す。水銀塩素化剤の吸着量は、ほぼ同程度(3.4×10−10molHCl/g−cat±15モル%程度)であった。なお、「/g−cat」は、水銀酸化触媒1gにつきの意味であり、「wt%」は質量%の意味であり、「e−10」は10−10の意味である。
Figure 0005517987
1−2.水銀塩素化剤の脱離の活性化エネルギーの算出
得られたFPDスペクトルより、水銀塩素化剤の脱離の活性化エネルギーを算出した。すなわち、2つの昇温条件より得られた各FPDスペクトルについて、上記温度範囲におけるピーク位置からピーク温度をそれぞれ得て、次式(12)より活性化エネルギーを算出し、これを水銀塩素化剤の脱離の活性化エネルギーとした。
Figure 0005517987
(ここで、Eaは活性化エネルギー(kJ/mol)、Rは気体定数、Tpは脱離温度すなわちピーク温度(K)、βは昇温速度(℃/min)、θは表面濃度すなわち被覆率(分子数/m)である。ただし、θについては飽和状態としてθ=θとする。)
得られた脱離の活性化エネルギーは上記の表1に示す。
2.水銀酸化触媒の性能評価試験と反応速度定数の算出
水銀酸化触媒の性能を評価する指標として、水銀酸化触媒の存在下で水銀と水銀塩素化剤であるHClを反応させて塩化水銀を得る反応の速度定数を求めた。使用した水銀酸化触媒は、上記したTPDによる物性評価に用いた上記触媒と同様、TiO担体に、V、WO、MoOを上記表1に示す割合で担持した触媒である。
水銀酸化触媒の性能評価試験は、下表2に示す試験条件で行った。
Figure 0005517987
すなわち、水銀酸化触媒を備えた還元脱硝装置に、石炭を燃焼させた際の排ガスを模したHg、NO、O、SO及びHOの混合ガス(組成は表2参照)にHClを加えて流通させ、還元脱硝装置の前後でそれぞれ金属水銀(Hg)濃度(すなわち、入口のHg濃度及び出口のHg濃度)を測定し、次式(13)で表される反応速度式より反応速度定数を算出した。
k=−SV×ln(CHg0−out/CHg0−in) (13)
(ここで、kは反応速度定数である。SVは空間速度であり触媒体積に対する流通ガス量である。CHg0−out及びCHg0−inはそれぞれ出口のHg濃度及び入口のHg濃度であり、CHg0−inに対するCHg0−outはHgの反応率を表す。)
3.相関関係
このようにして得られた水銀塩素化剤の脱離の活性化エネルギーと水銀酸化性能(反応速度定数)との関係を図2に示す。両者の間には相関が見られた。また、脱離の活性化エネルギーが約−40〜約−50kJ/molであると、水銀酸化性能が高いことがわかった。
1 ボイラ
2 アンモニア注入部
3 アンモニアタンク
4 HCl注入部
5 還元脱硝装置
6 空気予熱器
7 熱交換器
8 電気集塵器
9 湿式脱硫装置
10 熱交換器
11 煙突

Claims (6)

  1. 水銀酸化触媒に吸着した水銀塩素化剤を脱離させるときの水銀塩素化剤脱離の活性化エネルギーと、前記水銀酸化触媒の存在下で水銀と前記水銀塩素化剤を反応させて塩化水銀を得る反応の速度定数との相関関係に基づき、測定された水銀塩素剤脱離の活性化エネルギーに基づいて前記水銀酸化触媒の性能を評価する水銀酸化触媒の評価方法。
  2. 前記水銀酸化触媒に前記水銀塩素化剤を接触させ吸着させる工程と、
    吸着した前記水銀塩素化剤を加熱して脱離させ、前記水銀塩素化剤脱離の活性化エネルギーを測定する工程と
    を少なくとも含んでなる請求項1に記載の水銀酸化触媒の性能評価方法。
  3. 前記水銀塩素化剤の加熱が、200〜500℃で行われる請求項2に記載の水銀酸化触媒の性能評価方法。
  4. 前記水銀塩素化剤が、塩化水素又は塩化アンモニウムである請求項1〜3のいずれかに記載の水銀酸化触媒の性能評価方法。
  5. 前記水銀酸化触媒が、TiO、SiO、ZrO及びゼオライトからなる群から選ばれる少なくとも1種類の担体に、V、W、Mo、Ni、Co、Fe、Cr、Cu及びMnからなる群から選ばれる少なくとも1種類の金属の酸化物若しくは硫酸塩、又はPt、Ru、Rh、Pd及びIrからなる群から選ばれる少なくとも1種類の金属、又はこれらの混合物を担持した触媒である請求項1〜4のいずれかに記載の水銀酸化触媒の性能評価方法。
  6. 前記水銀塩素化剤脱離の活性化エネルギーが、−40〜−50kJ/molである前記水銀酸化触媒を高性能の水銀酸化触媒であると評価する請求項1〜5のいずれかに記載の水銀酸化触媒の性能評価方法。
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