図1に本発明の実施の形態に係る通信システム1の模式図を示す。図1に示すように、通信システム1は、第1通信装置10と、複数の第2通信装置20とを含んでいる。第1通信装置10は通信システム1において中心的・基幹的な装置、いわゆる親局装置として機能する。これに対し、第2通信装置20は子局装置として、または第1通信装置10から送信された情報を他の第2通信装置20へ中継する中継局装置として機能する。
なお、ここでは6台の第2通信装置20を例示し、これらを区別する場合は符号21〜26を用いることにする。なお、第2通信装置20の台数は6台に限定されるものではない。
具体的な構成例は後に説明するが、第1通信装置10は電力線通信が可能に構成されており、他方、第2通信装置20は電力線通信と無線通信との両方が可能に構成されている。これにより、通信システム1では、第1通信装置10と第2通信装置20との間で電力線30を用いて情報の送受信を行う通信ネットワークが構築されるとともに、第2通信装置20どうしの間で電力線30と無線とを用いて情報の送受信を行う通信ネットワークが構築される。
図1に例示の構成では、第1通信装置10および第2通信装置21〜23は電力線31に接続され、第2通信装置24,25は電力線32に接続され、第2通信装置26は電力線33に接続されている。これら3つの電力線31〜33は、電力線30が一般住宅等の宅内電気設備構造に用いられる単相3線式配線である場合を模式的に表わしている。すなわち、当該3線式配線において、3本の配線のうちから任意に選ばれる第1の配線と第2の配線で電力線31が構成され、第2の配線と第3の配線で電力線32が構成され、第3の配線と第1の配線で電力線33が構成される。なお、通信システム1を適応可能な電力線30は単相3線式に限定されるものではない。
ここで、図2のブロック図に第1通信装置10の構成例を示す。なお、図2には、説明のために、電力線30等も併記している。図2に例示する構成では、第1通信装置10は、配線10aと、電力線通信部10bと、処理部10cと、記憶部10dと、ネットワーク通信部10eと、接続端子10fと、入力部10gとを含んでいる。
配線10aは、電力線30と第1通信装置10との間を電気的に接続するものであり、電力線通信部10bに接続されている。配線10aが電力線30(図1の例では電力線31)に接続されることにより、電力線30と第1通信装置10との間に電気的接続が確立される。配線10aと電力線30との接続は例えば差込接続器(差込プラグとプラグ受け)によって可能である。
電力線通信部10bは、電力線30を介した電力線通信を行うためのインターフェース(I/F)を含んでいる。また、電力線通信部10bは、電力線30から第1通信装置10内の各部へ電力を供給するためのインターフェースを含んで構成することも可能である。なお、上記の電力線通信インターフェースおよび電力供給インターフェースはそれぞれ例えば公知の各種インターフェース回路を適用することが可能である。
処理部10cは、第1通信装置10の動作等に関する種々の処理を行い、また必要に応じて電力線通信部10b等を制御する。処理部10cは、電力線通信部10bと、記憶部10dと、ネットワーク通信部10eと、入力部10gとに接続されている。なお、図2には処理部10cを中心にして、いわゆるスター型の接続形態で電力線通信部10b等が接続されている場合を例示しているが、例えばバス型、リング型の接続形態を適用してもよい。
ここでは、処理部10cによる各種処理がソフトウェアによって実現される場合を例示する。この場合、処理部10cは例えばマイクロコンピュータを含んで構成され、当該マイクロコンピュータがプログラムに記述された各処理ステップ(換言すれば手順)を実行する。これにより、マイクロコンピュータは処理ステップに対応する各種手段として機能し、または、マイクロコンピュータによって処理ステップに対応する各種機能が実現される。なお、処理部10cによって実現される各種手段または各種機能の一部または全部をハードウェアによって実現することも可能である。
記憶部10dは、例えばROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、書き換え可能な不揮発性メモリ(EPROM(Erasable Programmable ROM)等)、ハードディスク装置等の各種記憶装置の1つまたは複数で構成されている。記憶部10dは、処理部10cが実行するプログラムを格納し、また、プログラムを実行するための作業領域を提供する。
記憶部10dは、また、各種の情報やデータ等も格納可能である。記憶部10dが格納している情報等として例えば第1通信装置10を一意に識別するための情報がある。かかる装置識別情報は、例えば後述するようにパケットの送信先として利用される。装置識別情報は、例えばMACアドレス、IPアドレス等を使用可能であるし、また、例えば通信システム1において予め設定された番号、符号等を使用可能である。ここでは、説明を分かりやすくするために、識別情報を装置番号とも呼び、第1通信装置10の装置番号を”10”と表記することにする。
ネットワーク通信部10eは、第1通信装置10の外部に設けられているネットワーク40との通信を行うためのインターフェース、例えばイーサネット(登録商標)規格のインターフェースを含んでいる。ネットワーク通信部10eは、接続端子部10fに接続されており、当該端子部10fを介してネットワーク40に接続される。ネットワーク40は例えばいわゆるインターネット、LAN等であり、本通信システム1によって構築されるネットワークとは別個のものである。なお、図2にはネットワーク40には第1通信装置10と通信を行うセンター45を併記している。
入力部10gは、ユーザが第1通信装置10に対して指示等を入力するためのインターフェースである。入力部10gは、例えばボタン、スイッチ、タッチパネル、キーボード、マウス等の入力装置を含んで構成することが可能である。また、入力部10gは、接触型もしくは非接触型もしくは光学式の情報読み取り器(例えばカードリーダ、コードリーダ)を含んでいてもよいし、また、音声入力装置等を含んでいてもよい。
図3のブロック図に第2通信装置20の構成例を示す。なお、図3には、説明のために、電力線30等も併記している。図3に例示する構成では、第2通信装置20は、配線20aと、電力線通信部20bと、処理部20cと、記憶部20dと、無線通信部20eと、接続端子20fと、電力測定部20gと、デバイス通信部20hと、通知部20iとを含んでいる。
配線20aは、電力線30と第2通信装置20との間を電気的に接続するものであり、電力線通信部20bに接続されている。配線20aが電力線30(図1の例では電力線31〜33のいずれか)に接続されることにより、電力線30と第2通信装置20との間に電気的接続が確立される。配線20aと電力線30との接続は例えば差込接続器(差込プラグとプラグ受け)によって可能である。
また、配線20aは、電力線30と接続端子20fとの間を電気的に接続している。このため、接続端子20fに電気機器等のデバイス51を接続する場合には、第2通信装置20を介して、当該装置20の外部に設けられたデバイス51へ電力を供給することが可能である。接続端子20fは例えば差込接続器のプラグ受けによって構成可能である。
電力線通信部20bは、電力線30を介した電力線通信を行うためのインターフェースを含んでいる。また、電力線通信部20bは、電力線30から第2通信装置20内の各部へ電力を供給するためのインターフェースを含んで構成することも可能である。なお、上記各インターフェースは例えば電力線通信部10b(図2参照)のものと同様に構成可能である。
処理部20cは、第2通信装置20の動作等に関する種々の処理を行い、また必要に応じて電力線通信部20b等を制御する。処理部20cは、電力線通信部20bと、記憶部20dと、無線通信部20eと、電力測定部20gと、デバイス通信部20hと、通知部20iとに接続されている。なお、各部間の接続は図3に例示の形態に限られるものではない。
ここでは、処理部20cによる各種処理がソフトウェアによって実現される場合を例示する。この場合、処理部20cは、上記の処理部10c(図2参照)と同様に構成可能である。なお、処理部20cによって実現される各種手段または各種機能の一部または全部をハードウェアによって実現することも可能である。
記憶部20dは、上記の記憶部10d(図2参照)と同様に構成可能であり、処理部20cが実行するプログラム等を格納し、また、プログラムを実行するための作業領域を提供する。
また、記憶部20dは上記の第1通信装置10の装置識別情報と同様な識別情報を格納しており、当該識別情報によってその第2通信装置20が一意に識別される。ここでは、説明を分かりやすくするために、図1に例示される6台の第2通信装置21〜26について、それぞれの装置識別情報(装置番号)を”21”〜”26”と表記し、また、これらの第2通信装置21〜26を区別しない場合は”20”と表記することにする。
無線通信部20eは、他の第2通信装置20との間で無線通信を行うためのインターフェース、例えばZigBee(登録商標)、Bluetooth(登録商標)等の規格に従ったインターフェースを含んでいる。
ここで、無線通信部20eによる無線通信が可能範囲(換言すれば無線電波の到達距離)は例えば第2通信装置20の設置場所等に影響される場合がある。かかる点について、図1には無線通信部20eによる無線通信可能範囲を破線円で模式的に例示している。例えば、第2通信装置22,23,25の無線通信可能範囲は、第2通信装置21,24,26の同範囲に比べて狭く例示されている。また、第2通信装置21,24,26の無線通信可能範囲は当該装置21,24,26を中心にした略円形範囲に例示されている。これに対し、第2通信装置22,23,25の無線通信可能範囲は図示下方側において狭く例示されている。
また、図1の例示では、第2通信装置21の無線通信可能範囲は第2通信装置22,24の同範囲と重なっており、また、第2通信装置26の無線通信可能範囲は第2通信装置24の同範囲と重なっている。このため、無線通信可能範囲が重なっている第2通信装置20どうしは直接に無線通信が可能である。また、無線通信可能範囲が重なっている第2通信装置20を中継局として利用することにより、その先の第2通信装置20と間接的に無線通信することも可能である。
一方、図1の例示では、第2通信装置23,25は、他の第2通信装置20と無線通信可能範囲が重なっていないので、他の通信装置20との間で無線通信は行われない。
図3に戻り、電力測定部20gは、配線20aに対して設置されており、配線20aを流れる電力(電力量)を測定する計器を含んでいる。当該計器としては例えば公知の各種方式を適用可能である。電力測定部20gによれば、接続端子20fに接続されたデバイス51の消費電力量を測定することが可能である。
デバイス通信部20hは、無線LAN機能を有する機器等のデバイス52との間で通信を行うためのインターフェースを含んでいる。ここでは、デバイス通信部20hが無線通信を行う場合を例示するが、有線通信を行うように構成することも可能である。なお、上記の無線通信用インターフェースとして、例えばZigBee(登録商標)、Bluetooth(登録商標)等の規格に従ったインターフェースを適用することが可能である。このため、デバイス通信部20hとの無線通信可能な範囲にデバイス52が設けられている場合には、当該デバイス通信部20hによって第2通信装置20とデバイス52とが無線通信で接続される。
なお、デバイス52は複数の第2通信装置20と無線接続される場合もある。また、デバイス52が、接続端子20fに接続されて電力供給を受ける場合もある。
デバイス通信部20hと上記無線通信部20eとは、混信を防止するために、互いに異なる規格で構成され、または同じ規格であっても異なるチャネルで無線通信を行うように構成されている。
図3には第2通信装置20との接続形態が異なる2種類のデバイス51,52が、第2通信装置20に接続される場合を例示している。これに対し、デバイス51,52のうちの一方のみが第2通信装置20に接続されていてもよいし、または、いずれのデバイス51,52も第2通信装置20に接続されていなくてもよい。
通知部20iは、第2通信装置20の動作状態等を当該装置20の外部に居るユーザに通知するためのインターフェースである。通知部20iは、例えば1つまたは複数の発光素子(LED等)、液晶ディスプレイ等のように視覚的に通知を行う装置を含んで構成可能である。また、視覚的に通知を行う装置に加えてもしくは代えて、警報音や音声等によって聴覚的に通知を行う装置を含めて通知部20iを構成することも可能である。
なお、通信システム1に用いられる第2通信装置20の全てが同じ構成を有している必要はない。例えば電力測定部20gと、デバイス通信部20hと、通知部20iとのうちの1つまたは複数を有さない第2通信装置20を用いることも可能である。また、上記例示の構成に対してさらに追加要素を有する第2通信装置20を用いてもよい。
通信装置10,20は送信すべき情報をパケットによって送信する。このとき、通信装置10,20は、送信情報に対応したパケットを生成し、当該パケットを例えば暗号鍵を用いて暗号化する(図4参照)。また、通信装置10,20は、受信したパケットを例えば暗号鍵を用いて復号化する。このため、通信装置10,20は同じ暗号鍵を保有している。暗号鍵は第1通信装置10に対して一意に、すなわち固有に設定されるものである。このため、第1通信装置10が異なる他の通信システム1との間でパケットの流入・流出が生じても、当該パケットが利用されることがない。このため、良好なセキュリティが得られる。
暗号鍵を用いる方式として例えばAESがある。なお、暗号化/復号化の方式は種々のものを採用可能である。パケットの生成および暗号化/復号化処理は処理部10c,20cによって行われる。なお、処理部10c,20cは暗号化処理において、暗号化すべきパケットのビット数を例えばゼロ・パディングによって適宜調整する。
図5および図6に通信システム1で用いるパケットを例示する。図5には、第1通信装置10が第2通信装置20に対して所定の要求を行う場合に用いる要求パケット100の一例を模式的に図示している。また、図6には、上記要求に対して第2通信装置20が応答を行う場合に用いる応答パケット200の一例を模式的に図示している。
図5に例示された要求パケットは情報102,104,106,110を含んでいる。なお、図5の図示は、要求パケット100内における情報102,104,106,110の記述位置およびデータ長を限定するものではない。
情報102は、送信先の第2通信装置20を指定するための情報であり、例えば各第2通信装置20を区別するための識別情報が記述される。なお、ここでは要求パケット100は全ての第2通信装置20へ送信されるものとし、全ての第2通信装置20を送信先とする旨の情報が送信先装置情報102に記述される。
情報104は、要求パケット100を識別するための情報であり、ここでは要求パケット100のシーケンス番号を例示する。この場合、シーケンス番号104は例えば0(ゼロ)から始まり要求パケットを生成する度にインクリメントされる数字が対応する。
情報106は、第2通信装置20に要求する処理に関する情報である。例えば、要求する処理に対応してコマンドが予め設定され、その要求コマンドが情報106として与えられる。
情報110は、要求パケット100が通信システム1において辿る経路に関する情報である。具体的には当該経路は、各通信装置10,21〜26が、要求パケット100の送信(第2通信装置20が中継局として行う再送信も含む)の際に、通信装置10,21〜26の区別と通信方式の区別と組を1単位(経路単位)として、経路情報110に追記していくことにより記録される。
なお、説明を分かりやすくするために、通信装置10,21〜26の区別を上記の装置番号”10”,”21”〜”26”で表記し、電力線通信による送信を”P”と表記し、無線通信による送信を”R”と表記し、上記2つの区別項目を”:”で繋ぐことにする。例えば第1通信装置10による電力線通信を用いた送信を示す経路単位は”10:P”と表記され、例えば第2通信装置21による無線通信を用いた送信を示す経路単位は”21:R”と表記される(図1参照)。
また、経路単位を”/”で区切って末尾に続けることにより、経路単位の追記を表記することにする。例えば、図1の例において、要求パケット100が、第1通信装置10から電力線通信で送信され、その後、第2通信装置21から無線通信で再送信(中継)された場合、経路情報110の内容は”10:P/21:R”と表記される。また、当該要求パケット100がさらに第2通信装置24によって電力線通信で中継された場合、経路情報110の内容は”10:P/21:R/24:P”と表記される。
なお、図1ではさらに説明を分かりやすくするために、”10:P”等の表記を囲む四角形の図示を工夫している。すなわち、実線の四角形は電力線通信による送受信を表し、破線の四角形は無線通信による送受信を表している。また、太い実線および破線の四角形はパケットの送信を表し、細い実線および破線の四角形はパケットの受信を表している。
図6に例示された応答パケット200は情報202,204,206,208,210を含んでいる。なお、図6は、応答パケット200内における情報202,204,206,208,210の記述位置およびデータ長を示すものではない。
情報202は、上記情報102(図5参照)と同様に、送信先装置情報が記述される。但し、応答パケット200では次に受信するべき第2通信装置20が特定され、その通信装置20の識別情報(装置番号)が送信先装置情報202に記述される。
後述のように応答パケット200は、対応する要求パケット100の送信経路すなわち往路を遡って第1通信装置10へ送信される。このとき、応答パケット200が辿る経路すなわち復路において次の送信先となる第2通信装置20が、情報204によって指定される。情報204は、例えば、下記の経路情報210に記述された経路単位を路順に順次指し示すポインタによって実現される。
情報206は、上記情報106(図5参照)と同様の要求コマンドに関する情報であり、要求パケット100の要求コマンド106と同じ情報が記述される。
情報208は、応答内容に関する情報であり、後に例示する。
情報210は、応答パケット200が辿る復路に関する情報である。当該情報210は、応答パケット200の送信起源となる第2通信装置20が、対応する要求パケット100の経路情報110に基づいて生成する。例えば要求パケット100の経路情報110をそのままコピーすることにより、または、例えば経路情報110に記述された上記経路単位を逆順にコピーすることにより、経路情報210が生成される。いずれのコピー方式によっても両経路情報110,210は同じ内容を含むことになる。
なお、経路情報210は復路上の第2通信装置20によって情報が追記されるものではない。復路の経路情報210も、往路の経路情報110と同様の表記方法を用いることにする。
ここで、例えば復路ポインタ204の値”0”を経路情報210中の先頭の経路単位に対応付け、復路ポインタ204の値”1”,”2”,・・・を経路情報210中の先頭から2番目、3番目、・・・の経路単位に順次対応付ける場合、復路ポインタ204の値をインクリメントまたはデクリメントすることによって、経路情報210中の経路単位を順番に辿ることが可能である。
なお、パケット100,200を他の情報(誤り検出符号等)をさらに含めて構成してもよい。例えば誤り検出符号を含む場合には、データ誤りが生じたパケット100,200は利用しない等の措置を、処理部10c,20cによって、講じることが可能である。
図7に、要求パケット100を受信した第2通信装置20の動作、より具体的には要求パケット100を中継する場合の処理(往路中継処理)S2のフローチャートを例示する。
まず、第2通信装置20が要求パケット100を受信すると(ステップS20)、当該パケット100は処理部20cによって復号化される(ステップS22)。
この受信した要求パケット100の直前の送信元は、第1通信装置10である場合もあるし、他の第2通信装置20である場合もある。また、当該要求パケット100は電力線通信部20bが受信する場合もあるし、無線通信部20eが受信する場合もある。例えば図1の例示において第2通信装置22は、第1通信装置10から電力線通信によって直接(すなわち他の第2通信装置20による中継が介在することなく)要求パケット100を受信することが可能であるし、また、第2通信装置21による中継を経て無線通信によって要求パケット100を受信することも可能である。
そして、処理部20cは、当該要求パケット100の中継、換言すれば転送が必要であるか否かを判定する(ステップS24)。この中継要否判定ステップS24の一例を図8のフローチャートに示す。
図8に例示される中継要否判定ステップS24では、処理部20cは、まず、中継しようとしている要求パケット100が、当該第2通信装置20によって既に中継済みであるか否かを判定する(ステップS24a)。そして、既に中継済みであると判定した場合、処理部20cは、受信した要求パケット100の中継処理を行うことなく、往路中継処理S2(図7参照)を終了する。他方、中継済みでないと判定した場合、処理部20cは下記のステップS24bを実行する。
判定ステップS24aは、例えば要求パケット100に含まれるシーケンス番号104(図5参照)を利用することによって実行可能である。具体的には、処理部20cは、中継を行った要求パケット100のシーケンス番号104を記憶部20dに記録しておき、当該記録との照合によって、中継しようとしている要求パケット100が既に中継済みであるか否かを判定することが可能である。
このように判定ステップS24aによれば、第2通信装置20は、シーケンス番号104が同じ要求パケット100、すなわち送信内容が同じ(ここでは要求内容が同じ)パケット100を複数回受信した場合には、2回目以降に受信した要求パケット100を中継しない。このため、送信内容が同じパケット100が通信システム1上を無限に中継・転送され続けるのを防止することができる。これにより、通信システム1の伝送負荷を低減することができる。
ステップS24bでは、処理部20cは、受信した要求パケット100のこれまでの中継回数(中継段数)が、予め設定された最大中継回数よりも少ないか否かを判定する。換言すれば、今回中継を行うことによって最大中継回数を超えるか否かを判定する。そして、これまでの中継回数が最大中継回数よりも少ないと判定した場合、処理部20cは中継要否判定ステップS24を終えて次のステップS26を実行する。他方、これまでの中継回数が最大中継回数に達していると判定した場合、処理部20cは、受信した要求パケット100の中継処理を行うことなく、往路中継処理S2(図7参照)を終了する。
上記の最大中継回数は、例えばプログラム中に予め記述しておくことにより、または、例えば記憶部20dに予め格納しておくことにより、ステップS24bで利用可能である。
当該ステップS24bでの判定処理によれば、送信内容が同じ(ここでは要求内容が同じ)パケット100が通信システム1上を無限に中継・転送され続けるのを防止することができる。これにより、通信システム1の伝送負荷を低減することができる。
なお、ステップS24a,S24bの実行順序は上記の逆であってもよい。
ステップS24の終了後、処理部20cは、要求パケット100が無線通信によって受信されたか否かを分別する(ステップS26。図7参照)。かかる分別の結果、無線通信による受信の場合、処理部20cは電力線通信処理S28と無線通信処理S30との両方を行う。他方、無線通信による受信ではない場合、すなわち電力線通信による受信の場合、処理部20cは無線通信処理S30だけを行う。
図7に例示の電力線通信処理S28では、処理部20cは、今回の中継を行う第2通信装置20の装置番号と、今回の中継で用いる通信方式(ここでは電力線通信)とを要求パケット100の経路情報110に追記する(ステップS28a)。そして、処理部20cは、要求パケット100を暗号化し(ステップS28b)、電力線通信部20b(図3参照)を制御して要求パケット100を送信する(ステップS28c)。
図7に例示の無線通信処理S30では、処理部20cは、今回の中継を行う第2通信装置20の装置番号と、今回の中継で用いる通信方式(ここでは無線通信)とを要求パケット100の経路情報110に追記する(ステップS30a)。そして、処理部20cは、要求パケット100を暗号化し(ステップS30b)、無線通信部20e(図3参照)を制御して要求パケット100を送信する(ステップS30c)。
ここで、図1に例示した範囲では、上記往路中継処理S2により、要求パケット100は次のように伝送されるものとする。なお、ここでは、異相の電力線31〜33の間では電力線通信は行われないものとする。
第1通信装置10から送信された要求パケット100は、電力線31を介して第2通信装置21〜23によって受信され、各第2通信装置21〜23の無線通信によって再送信される(ステップS26,S30参照)。
第2通信装置21から再送信された要求パケット100は、無線通信可能範囲が重なっている第2通信装置22,24に受信される。しかし、第2通信装置22は上記のように当該受信パケット100を既に中継しているので、第2通信装置21が中継したパケット100は再送信しない(ステップS24a参照)。他方、第2通信装置24は、無線通信で受信した当該受信パケット100を、電力線通信と無線通信とによって再送信する(ステップS26,S28,S30参照)。
また、第2通信装置22から再送信された要求パケット100は、無線通信可能範囲が重なっている第2通信装置21に受信されるが、第2通信装置21は上記のように既に中継を行っているので、第2通信装置22が中継したパケット100の再送信は行わない(ステップS24a参照)。
また、第2通信装置23から再送信された要求パケット100は、無線通信可能範囲が重なっている第2通信装置20が無いので、他の第2通信装置20には伝達されない。
上記のように第2通信装置24から電力線通信によって再送信された要求パケット100は、第2通信装置25によって受信され無線通信を用いて再送信される(ステップS26,S30参照)。しかし、第2通信装置25と無線通信可能範囲が重なっている第2通信装置20が無いので、要求パケット100は第2通信装置25から先には伝達されない。
また、第2通信装置24から無線通信によって再送信された要求パケット100は、第2通信装置26によって受信され、当該第2通信装置26から電力線通信と無線通信とによって再送信される(ステップS26,S28,S30参照)。
次に、図9に、応答パケット200を受信した第2通信装置20の動作、より具体的には応答パケット200を中継する場合の処理(復路中継処理)S6のフローチャートを例示する。
なお、ここでは、応答パケット200の送信起点となる第2通信装置20が、応答パケット200の生成ステップ(後述のステップS4参照)において、要求パケット100の経路情報110(図5参照)を上記のように逆順にコピーして経路情報210を初期設定し、また、復路ポインタ204(図6参照)を”0”に初期設定する場合を例示する。
まず、第2通信装置20が他の第2通信装置20から応答パケット200を受信すると(ステップS50)、当該パケット200は処理部20cによって復号化される(ステップS52)。なお、応答パケット200の送信起点となる第2通信装置20ではステップS50,S52は行われない。
そして、処理部20cは、復路ポインタ204をインクリメントし(ステップS54)、送信先装置情報202をセットする(ステップS56)。具体的には、処理部20cは、インクリメントされた復路ポインタ204が指し示す経路単位を分析し、当該経路単位に記述された第2通信装置20の装置番号を送信先装置情報202にセットする。そして、処理部20cは応答パケット200を暗号化する(ステップS58)。
次に、処理部20cは、次の送信先に指定した第2通信装置20が往路において使用した通信方式を分別する(ステップS60)。具体的には、上記ステップS54でインクリメントした復路ポインタ204が指し示す経路単位を分析し、当該経路単位に記述された通信方式を分別する。
上記ステップS60で往路は無線通信であると分別された場合、処理部20cは無線通信によって応答パケット200を送信する(ステップS62)。逆に往路は電力線通信であると分別された場合、処理部20cは電力線通信によって応答パケット200を送信する(ステップS64)。
ここで、図10に応答パケット200の伝送例を図示する。なお、図10は、要求パケット100の上記伝送例(図1参照)に基づいて第2通信装置25から第1通信装置10へ応答パケット200が伝送される場合を説明するものであり、通信システム1の一部を抜き出して図示している。
まず、図1の伝送例によれば、第2通信装置25が受信した要求パケット100の経路情報110には”10:P/21:R/24:P”という情報が記録されている。このため、第2通信装置25は、当該経路情報110の経路単位の並びを反転させた”24:P/21:R/10:P”という情報を応答パケット200の経路情報210に記録する(図10参照)。また、第2通信装置52は、復路ポインタ204を”0”に初期設定する(ステップS54参照)。これにより、復路ポインタ204は先頭の経路単位”24:P”を指すことになる。なお、図10では、説明を分かりやすくするために、復路ポインタ204を矢印で模式的に図示している。
復路ポインタ204が指し示す経路単位”24:P”に基づき、第2通信装置25は、送信先に第2通信装置24をセットし(ステップS56参照)、電力線通信によって応答パケット200を送信する(ステップS60,S64参照)。
第2通信装置24は、受信した応答パケット200の復路ポインタ204をインクリメントする(ステップS54参照)。そして、復路ポインタ204が指し示す経路単位”21:R”に基づき、第2通信装置24は、第2通信装置21へ無線通信によって応答パケット200を送信する(ステップS54,S56,S60,S62参照)。
第2通信装置21は、受信した応答パケット200の復路ポインタ204をインクリメントする(ステップS54参照)。そして、復路ポインタ204が指し示す経路単位”10:P”に基づき、第2通信装置21は、第1通信装置10へ電力線通信によって応答パケット200を送信する(ステップS54,S58,S60,S64参照)。
図10に例示した応答パケット200の伝送を、対応する要求パケット100の伝送とともに、図11のシーケンス図にまとめて図示する。なお、図11において、ステップS0は、第1通信装置10による要求パケット100の送信処理であり、当該パケット100の初期生成処理も含む。また、ステップS4は、第2通信装置10による応答パケット200の初期生成およびその送信処理である。
上記のように、第2通信装置20は、第1通信装置10から送信されたパケット100を、第1通信装置10から直接に、または、他の第2通信装置20を介して、電力線通信によって受信した場合には、無線通信によって当該受信したパケット100を中継する。他方、第1通信装置10から送信されたパケット100を、他の第2通信装置20を介して、無線通信によって受信した場合には、無線通信と電力線通信との両方によってパケット100を中継する。
このため、第1通信装置10から送信されたパケットは、複数の第2通信装置20によって次々に中継されて、各第2通信装置20へ配信される。このため、パケット配信時の通信システム1の全体構成や通信状態に応じて、動的で柔軟にネットワークが構築される。しかも、各第2通信装置20は通信システム1上のネットワーク構成やその変化を例えばデータベース等によって把握しておく必要がないので、第2通信装置20を簡易な構成とすることができ、これにより通信システム1を安価にすることができる。
また、上記のように、要求パケット100が辿る経路(往路)を記録しておき、応答パケット200は当該記録に基づいて通信システム上を進行する。このため、応答パケット00を効率的に第1通信装置10へ送信することができる。
さて、上記の例では、第2通信装置20は、同じシーケンス番号104を有する要求パケット100を複数回受信した場合、最先に受信した要求パケット100を中継し、2回目以降に受信した要求パケット100は中継しない(図7および図8のステップS24を参照)。つまり、最先に到着した要求パケット100が採用され、2番目以降に到着した要求パケット100は破棄される。
例えば、図1を参照すると、第2通信装置22は第2通信装置21から送出された要求パケット100を電力線通信と無線通信の両方で受信可能である。そして、上記では、電力線通信による要求パケット100が最先に到着し、採用される場合を例示した。
かかる点に関し、電力線通信と無線通信の両方で受信可能であっても、電力線通信の方が通信速度が速い仕様によれば、電力線通信による要求パケット100が先着することになる。
また、電力線通信は電力線を利用しているため、当該電力線に接続された機器が電力線通信の通信品質を低下させる場合がある。
また、既述のように、要求パケット100が辿る経路は、対応する応答パケット200の伝送経路として利用される。
これらに鑑みると、第2通信装置20は、要求パケット100を電力線通信によって受信可能である限り、当該電力線通信の通信品質が低下している状態であっても、当該電力線通信を応答パケット200の伝送に採用することになる。その結果、応答パケット200がロストしてしまう可能性がある。このようなパケットロストは、通信システム1の信頼性低下を招き、好ましくない。
そこで、以下では、通信システム1の信頼性を向上させうる往路中継処理を例示する。図12にその一例に係る往路中継処理S2Bを説明するフローチャートを示す。当該往路中継処理S2Bは、上記の往路中継処理S2に代えて、第2通信装置20に採用可能である。
往路中継処理2Bによれば、電力線通信によって要求パケット100が受信されると(ステップS300)、処理部20cは、復号化の後(図7のステップS22を参照)、当該要求パケット100の中継、換言すれば転送が必要であるか否かを判定する(ステップS302)。中継要否判定ステップS302は、例えば、既述の中継済み判定処理S24aおよび中継回数判定処理S24b(図8参照)を含んで構成可能である。
当該ステップS302において、中継不要と判定された場合、処理部20cは、受信した要求パケット100の中継を行うことなく、往路中継処理S2Bを終了する。
他方、当該ステップS302において中継が必要であると判定された場合、処理部20cは、その後に無線通信によって、シーケンス番号104が同じ要求パケット100を受信する可能性があるか否かを判別する(ステップS304)。かかる判別は次のようにして行うことが可能である。
例えば、処理部20cは、まず、先に受信した要求パケット100中の経路情報110を参照することによって、当該パケット100の直前の送信元を特定する。そして、処理部20cは、特定された直前の送信元からのこれまでの受信履歴を参照することによって、当該直前の送信元が同じ要求パケット100をさらに無線通信によって送信してくるか否かを判別する。なお、直前の送信元は、第1通信装置10である場合もあるし、他の第2通信装置20である場合もある。
上記の受信履歴は、例えば、処理部20cが、要求パケット100を受信した際に、直前の送信元と、受信方式が電力線によるのか無線によるのかに関する情報とを関連付けて、記憶部20cに蓄積することにより、形成可能である。
かかる受信履歴のデータは、特許文献2の通信システムのように各通信装置が通信システム上のネットワーク構成やその変化をデータベース化する構成に比べれば、小さくて済む。このため、第2通信装置20および通信システム1は、特許文献2の通信システムに比べて、簡易で安価な構成とすることができる。
上記判別ステップS304において、シーケンス番号104が同じ要求パケット100をその後に無線で受信する可能性が無いと判別された場合、処理部20cは、中継ステップS312を実行する。中継ステップS312は、例えば、既述のステップS26,S28,S30(図7参照)によって構成される。ここでは要求パケット100は電力線通信によって受信されているため、既述の無線通信処理S30が実行されて要求パケット100は無線通信によって中継送信される(図7参照)。
他方、上記判別ステップS304において、シーケンス番号104が同じ要求パケット100をその後に無線で受信する可能性があると判別された場合、処理部20cは、上記の直前の送信元との間における電力線通信の通信品質、換言すれば上記の直前の送信元と電力線通信を行うことについての信頼性を評価する(ステップS306)。
かかる評価は、上記の直前の送信元から受信した要求パケット100の受信品質を評価することによって、行うことが可能である。
パケットの受信品質の評価は、例えば、電力線通信用マイクロコンピュータに搭載されている機能を利用することによって、行うことが可能である。例えば、株式会社ルネサステクノロジ社製の電力線通信用マイクロコンピュータ(M16C/6Sグループ)は、受信パケットの信号状態を表す情報を提供する機能を有している。かかる受信品質情報は、例えば、受信パケットの信号品質が所定段階の評価レベルのうちでどのレベルであるかによって示される。
なお、かかる製品によれば、OSI(Open System Interconnection)参照モデルの物理層(第1層)およびデータリンク層(第2層)が提供される。また、上記製品によれば、また、図3に例示した第2通信装置20において、電力線通信部20bと、処理部20cおよび記憶部20dのうちで電力線通信部20bの制御に関する部分と、かかる制御のための基本的なソフトウェア部分(いわゆるライブラリ等)とを構成可能である。
したがって、処理部20cは、上記機能によって受信パケット100の信号品質評価レベルを取得し、当該評価レベルと予め設定された評価閾値とを比較することによって、上記の直前の送信元と電力線通信を行うことの信頼性を評価する。例えば、取得した受信信号評価レベルが上記評価閾値よりも高ければ直前の送信元との電力線通信は利用可能である(換言すれば許容可能な通信品質である)と判定し、逆に上記評価閾値以下であれば直前の送信元との間では電力線通信を避けるのが好ましいと判定する。
上記評価閾値は、例えば事前の実験によって決定可能である。具体的には、上記受信品質レベルが低ければ、上記の直前の送信元へ電力線通信によって応答パケット200を伝送しても、パケットロストの発生確率が高くなる。したがって、各評価レベルについてパケットロストの発生状況を実験によって確認し、その実験結果に基づいて電力線通信の採否判断に係る上記閾値を決定すればよい。
かかる通信品質評価ステップS306において、直前の送信元との電力線通信は利用可能であると判定された場合、処理部20cは、中継ステップS312を実行する。ここでは電力線通信によって受信された要求パケット100が中継対象であるため、既述の無線通信処理S30が実行されて要求パケット100は無線通信によって中継送信される(図7参照)。
他方、通信品質評価ステップS306において、直前の送信元との電力線通信は避けるのが好ましいと判定された場合、処理部20cは、電力線通信で先に受信した要求パケット100を破棄する(ステップS308)。換言すれば、処理部20cは、当該要求パケット100を中継しない。
その代わりに、処理部20cは、無線通信で受信した、シーケンス番号104が同じ要求パケット100を中継する(ステップS310,S312)。ここでは無線通信で受信された要求パケット100が中継対象であるため、既述の電力線通信処理S30と無線通信処理S30との両方が実行される(図7参照)。これにより、要求パケット100は電力線通信と無線通信との両方によって中継送信される。
なお、上記の無線受信ステップS310は、図12のフローチャート中に例示したタイミング以外で起こる場合もある。すなわち、無線受信ステップS310は、電力線受信ステップS300と中継ステップS312との間のいずれかのタイミングで生じる。
往路中継処理S2Bによれば、電力線通信方式で受信した要求パケット100の信号品質が予め設定された閾値以下である場合、当該要求パケット100は中継されず、無線方式で受信した要求パケット100(電力線通信方式で受信した上記要求パケット100と同じシーケンス番号104を有する)が中継される。
ここで、既述のように、応答パケット200は、対応する要求パケット100が辿った経路(往路)を逆順に辿る。このため、上記要求パケット100に対応する応答パケット200を、受信信号品質が良好でなかった電力線通信方式の経路を避けて、換言すれば通信品質が低かった経路を避けて、第1通信装置10へ伝送することができる。
このため、往路中継処理S2Bによれば、応答パケット200のロストを防止することができる。したがって、通信システム1の信頼性を向上させることができる。
上記の往路中継処理S2Bでは、電力線通信による受信の後に無線通信による受信があるか否かを、それまでの受信履歴から判別する例を説明した(ステップS304参照)。以下では、受信履歴を利用しない例を説明する。図13に、そのような例に係る往路中継処理S2Cを説明するフローチャートを示す。当該往路中継処理S2Cは、上記の往路中継処理S2,S2Bに代えて、第2通信装置20に採用可能である。
図13に例示の往路中継処理S2Cは、上記ステップS300,S302,S306を含んでいるが、上記ステップS304を含んでいない。より具体的には、ステップS302において中継が必要であると判定された場合、無線受信の可能性を判別するステップS304を実行せずに、通信品質評価ステップS306が実行される。
そして、通信品質評価ステップS306において、受信した要求パケット100の信号評価レベルが上記評価閾値以下であると判定された場合、すなわち直前の送信元との電力線通信は避けた方が好ましいと判定された場合、処理部20cは、同じシーケンス番号104を有した要求パケット100が無線通信で送られてくるのを待つ(ステップS330)。
例えば、処理部20cは、予め設定された待ち時間の間、無線受信を受付可能な状態で待機する。当該待ち時間は、電力線と無線との受信時間差以上の長さに設定されるのが好ましい。なお、受信時間差は予め実験等によって取得可能である。処理部20cは、所望の要求パケット100を無線で受信した場合、または、無線受信待ち時間を経過した場合、無線受信待ちステップS330を終了する。
処理部20cは、待ち時間中に無線で所望の要求パケット100を受信できた場合には(ステップS332)、電力線通信で先に受信した要求パケット100を破棄し(ステップS334)、無線受信した要求パケット100を中継する(ステップS312)。他方、待ち時間中に無線で所望の要求パケット100を受信できなかった場合には(ステップS332)、電力線通信で先に受信した要求パケット100を中継する(ステップS312)。
なお、往路中継処理S2Cの他のフローは、上記の往路中継処理S2Bと同様である。
往路中継処理S2Cによれば、上記の往路中継処理S2Bと同様の効果が得られる。
また、往路中継処理S2Cによれば、受信履歴のデータ形成が不要であるため、上記の往路中継処理S2Bに比べて、簡易な構成とすることができる。
図14に、更なる一例として、往路中継処理S2Dを説明するフローチャートを示す。当該往路中継処理S2Dは、上記の往路中継処理S2,S2B,S2Cに代えて、第2通信装置20に採用可能である。
往路中継処理S2Dによれば、まず、要求パケット100が受信される(ステップS350)。なお、当該受信ステップS350は、電力線通信と無線通信のいずれの通信方式にも適用される。処理部20cは、受信パケット100を復号化した後(図7のステップS22を参照)、既述の中継要否判定ステップS302を実行する。当該ステップS302において、中継不要と判定された場合、処理部20cは、受信した要求パケット100の中継を行うことなく、往路中継処理S2Dを終了する。
他方、ステップS302において中継が必要であると判定された場合、処理部20cは、受信した要求パケット100がこれまでに辿った通信経路について通信品質を評価する(ステップS352)。かかる通信品質評価は、例えば、要求パケット100の受信品質と、当該要求パケット100が経た中継段数とに基づいて行うことが可能である。
まずパケットの受信品質に関し、電力線通信によって受信した要求パケット100については、既述の評価ステップS306と同様にして、受信品質を取得可能である。
他方、無線で受信した要求パケット100の受信品質は、例えば、受信信号の強度を測定するRSSI(Received Signal Strength Indication)技術を利用することによって評価可能である。より具体的には、無線通信部20e(図3参照)にRSSI回路を設けて受信信号強度を測定し、その測定結果を処理部20cが評価すればよい。例えば、処理部20cは、取得した受信信号強度が予め設定された評価閾値よりも高ければ直前の送信元との無線通信は利用可能であると判定し、逆に当該評価閾値以下であれば直前の送信元との間では無線通信を避けるのが好ましいと判定する。
ここで、電力線通信については、上記のように、多段階レベルで評価された受信品質情報を取得可能である。このため、電力線通信用の上記閾値との比較による評価に加えて、多段階レベルによる評価値を採用してもよい。これによれば、より詳細な評価を行うことができる。
また、無線通信の品質評価も、電力線通信についての上記多段階レベル評価に倣ってもよい。例えば、受信信号強度を予め多段階のレベルに分類しておき、処理部20cが、取得した受信信号強度を当該分類に照合することによって評価レベルを決定すればよい。なお、かかる分類は、例えばテーブル形式のデータとして記憶部20dに格納しておくことにより、処理部20cが利用可能である。あるいは、当該分類を、処理部20cが実行するプログラム中に組み込んでもよい。
ここで、無線通信についての多段階評価レベルは、電力線通信についての多段階評価レベルと相関させておく。すなわち、同じ評価レベルについては、無線通信と電力線通信とのいずれであっても、同等レベルの通信品質、換言すれば同等レベルの信頼性が得られるように規定しておく。これにより、無線通信と電力線通信との相互評価が可能になる。
また、中継段数の評価に関し、中継段数が少ないほど、受信パケット100の品質低下は少ないと考えられる。このため、中継段数が少ないほど高い評価レベルが与えられるという評価規則を予め規定しておき、当該評価規則に従って処理部20cが中継段数に関する評価を行えばよい。なお、中継段数は、受信した要求パケット100中の経路情報110を参照することによって、取得可能である。
そして、処理部20cは、上記の通信経路評価ステップS352で得られた評価結果を、シーケンス番号104が同じ要求パケット100について暫定的に選定されている最良の通信経路の評価情報と比較する(ステップS354)。
ここで、上記の暫定的に選定されている最良の経路(以下「暫定的な最良経路」のようにも表現する)とは、同じシーケンス番号104を有した受信済みの要求パケット100に関して通信品質が最も高く評価された通信経路である。
また、新しいシーケンス番号104を有した要求パケット100を受信した場合、上記の暫定的な最良経路に関する情報はリセットされる。なお、暫定的な最良経路に関する情報は、例えば、直前の送信元を特定する装置番号と、当該直前の送信元が使った通信方式の区別、品質評価結果等の情報を含む。この場合、例えば、処理部20cが直前の送信元の装置番号および通信方式の区別を”NULL”に書き換え、評価結果を最低レベルに設定することによって、暫定的な最良経路がリセットされる。
当該ステップS354において、新たに受信した要求パケット100の通信経路の方が、暫定的な最良経路よりも通信品質が高いと判定された場合、処理部20cは、暫定的な最良経路を更新する(ステップS356)。すなわち、今回新たに受信した要求パケット100の通信経路を、その時点における暫定的な最良経路として選定する。その後、後続のステップS358が実行される。
他方、当該ステップS354において、新たに受信した要求パケット100の通信経路よりも、暫定的な最良経路の方が、通信品質が高いと判定された場合、暫定的な最良経路はそのまま保持される。その後、後続のステップS358が実行される。
なお、新たに受信した要求パケット100の通信経路と、暫定的な最良経路とが同等の評価である場合は、暫定的な最良経路を更新しても良いし、あるいは、そのまま保持しても良い。
上記ステップS356の後、または、上記ステップS354の後、処理部20cは、予め設定された所定時間が経過したか否かを判定する(ステップS358)。そして、所定時間が経過していなければ、処理部20cは上記ステップS350へ戻って、次の要求パケット100の到来を待つ。
上記の所定時間は、同じシーケンス番号104を有する要求パケット100のうちで、最も速く到来する要求パケット100と、最も遅く到来する要求パケット100との受信時間差以上の長さに設定されるのが好ましい。なお、かかる受信時間差は予め実験等によって取得可能である。
他方、上記ステップS358において所定時間が経過していれば、処理部20cは後続のステップS360を実行する。なお、ステップS350へ戻って要求パケット100の受信待ち状態にある途中で当該所定時間が経過した場合にも、処理部20cはステップS350を中止してステップS360を実行する。
ステップS360では、処理部20cは、その時点で保持している暫定的な最良経路を往路、すなわち対応する応答パケット200の伝送経路として採用する。より具体的には、暫定的な最良経路を辿って到来した要求パケット100を中継する(ステップS312)。
かかる往路中継処理S2Dによれば、通信品質が最も高いと評価された通信経路を辿って到来した要求パケット100が中継され、同じシーケンス番号を有しているが残余の通信経路を辿って到来した要求パケット100は中継されない。
ここで、既述のように、応答パケット200は、対応する要求パケット100が辿った経路(往路)を逆順に辿る。このため、上記要求パケット100に対応する応答パケット200を、通信品質が最も高いと評価された通信経路で、第1通信装置10へ伝送することができる。
このため、往路中継処理S2Dによれば、応答パケット200のロストを防止することができる。したがって、通信システム1の信頼性を向上させることができる。
また、上記の例では2つの評価手法を用いて、通信経路の品質を評価する。すなわち、要求パケット100の受信品質が予め設定された閾値よりも高い場合には、当該要求パケット100の通信経路は利用可能な通信品質を有していると判定する評価手法と、要求パケット100が経た中継段数が少ないほど、通信品質を高く評価するという評価手法とが採用されている。
このため、通信品質を2つの観点で以て子細に評価することができる。これにより、応答パケット200のロストをより確実に防止して、通信システム1の信頼性をさらに向上させることができる。なお、3つ以上の評価手法を組み合わせても構わない。
なお、上記では第2通信装置20が、要求パケット100を電力線通信によって受信した場合には無線通信によって中継し、要求パケット100を無線通信によって受信した場合には無線通信と電力線通信との両方によって中継する構成(図7のステップS26,S28,S30を参照)を例示した。
これに対し、例えば、要求パケット100を電力線通信で受信したか、無線通信で受信したかに関わらず、電力線通信と無線通信の両方で要求パケット100を中継するように、上記の往路中継処理S2,S2B,S2C,S2Dを変形しても構わない。
つまり、要求パケット100の中継は、要求パケット100の受信に用いた通信方式に関連付けて、あるいは当該受信通信方式とは無関係に、電力線通信と無線通信の少なくとも一方によって行うことが可能である。
また、上記では要求パケット100が中継される場合を例示したが、中継対象のパケットは要求パケット100に限定されるものではない。
次に、要求パケット100によって第1通信装置10が第2通信装置20に要求する処理の一例として、電力量取得処理を説明する。なお、電力量取得処理は、第2通信装置20の電力測定部20gによって測定される電力量を第1通信装置10へ報告させる処理である。当該電力量は、第2通信装置20の接続端子20fに接続されたデバイス51(図3参照)の動作状態に応じて変化するので、デバイスの動作に関する情報に含まれる。
図15に電力量取得処理S10のシーケンス図を例示する。ここでは図15に例示した通信装置10,21,26について説明する。
図15の例において、第1通信装置10の処理部10cはまず初期設定を行う(ステップS100)。この初期設定には、電力量取得処理S10に対応した要求コマンド106(図5参照)を有する要求パケット100の生成、取得結果を記述するデータテーブルのクリア等を含む。
要求パケット100は、第1通信装置10から送信されると(ステップS0)、第2通信装置21へ到達する。
第2通信装置21は、要求パケット100中の要求コマンド106の内容に従って電力測定部20gから消費電力量を取得し、当該取得した電力量を応答内容情報208に記録した応答パケット200を生成して第1通信装置10へ返信する(ステップS4)。第1通信装置10は、当該応答パケット200を受信すると、応答内容情報208に基づいて第1通信装置21による測定電力量を電力量データテーブルを記録する(ステップS102)。
また、第2通信装置21は、受信した要求パケット100を中継する(ステップS2)。なお、かかる中継を、往路中継処理S2に代えて、往路中継処理S2B,S2C,S2D(図12〜図14参照)のいずれかによって行ってもよい(図15参照)。
中継された要求パケット100が第2通信装置26へ到達すると、第2通信装置26は、第2通信装置21と同様に、応答パケット200を生成して送信する(ステップS4)。送信された応答パケット200は上記復路中継処理S6によって第1通信装置10へ到達する。第1通信装置10は、応答パケット200を受信すると、上記と同様に、電力量データテーブルの記録を行う(ステップS104)。
通信システム1では、要求パケット100の生成・送信から、第2通信装置21,26によって報告された電力量の記録までの処理を1つの処理単位Tとして、当該処理単位Tを予め設定した複数回、繰り返す。なお、処理単位Tは周期的に実行してもよいし、非周期的に実行してもよい。
そして、第1通信装置10は、得られた電力量情報を情報管理センター45(図2参照)へ送信する(ステップS110)。
センター45へ送信するデータは、例えば各処理単位Tごとの全データ(図16参照)であってもよい。このとき、例えば、パケットロスト等の通信障害が発生して第2通信装置21から2回目の報告を受信できなかった場合(図16では”−1”で表記している)、当該データを未取得状態のままにしてもよいし、または、未取得回のデータを他の取得回のデータで補間してもよい。
ここで、往路中継処理S2に代えて、往路中継処理S2B,S2C,S2D(図12〜図14参照)のいずれかを利用すれば、パケットロストを防止することができる。
また、センター45へ送信するデータを、例えば全データを整理して各第2通信装置20について代表的なデータだけにすることも可能である。例えば、図16に例示するように同じ第2通信装置22から異なる電力量データが報告された場合、最新のデータや平均データを代表的なデータとして選定すればよい。
このように処理単位Tを複数回実行することにより、換言すれば同じ要求コマンド106を含んだ要求パケット100をシーケンス番号104を変えて複数回送信することにより、通信障害等が発生した場合であっても、要求パケット100の配信を確実にすることができる。また、複数回の応答パケット200によれば、豊富な情報を収集することができるし、また、通信障害等が発生した場合であっても情報を確実に取得することができる。
また、要求パケット100によって第1通信装置10が第2通信装置20に要求する処理の他の一例として、センサ状態取得処理を説明する。なお、センサ状態取得処理は、デバイス52の一例としての各種センサの状態、すなわち当該センサの動作に関する情報を第1通信装置10へ報告させる処理である。なお、上記各種センサは、例えば光学的センサ、機械的センサ等であり、また、例えば防犯センサ、各種機器の動作状態を検出するためのセンサ等である。
図17にセンサ状態取得処理S12のフローチャートを例示する。図17の例において、第1通信装置10の処理部10cはまず初期設定を行う(ステップS120)。この初期設定には、センサ状態取得処理S12に対応した要求コマンド106(図5参照)を有する要求パケット100の生成、取得結果を記述するデータテーブルのクリア等を含む。
要求パケット100は、第1通信装置10から各第2通信装置20へ送信されると、各第2通信装置20は通信可能に接続されているセンサの状態を検出する。そして、各第2通信装置20は、検出結果を応答内容情報208に記録した応答パケット200を第1通信装置10へ送信する。これにより、通信システム1に繋がるセンサがスキャンされる(ステップS122)。
そして、第1通信装置10は、各第2通信装置20からの応答パケット200を受信し、各応答内容情報208に基づいてスキャン結果を例えばデータテーブルに集約し(図18参照)、オン状態のセンサが存在するか否かを判別する(ステップS124)。判別の結果、オン状態のセンサが存在する場合、第1通信装置10はセンター(例えば防犯センター)45へ報告し(ステップS126)、その後、上記ステップS120へ戻る。他方、オン状態のセンサが無い場合、第1通信装置10は、センター報告ステップS126を行うことなく、第1通信装置10の処理は上記ステップS120へ戻る。
なお、上記とは逆にオフ状態のセンサが存在する場合にセンター45へ通報するように構成することも可能である。
ここで、1台の第2通信装置20に対して複数のセンサがデバイス52として接続される場合がある(例えば無線接続の場合)。この場合、各センサごとに応答内容情報208を生成してもよいし、または、当該複数のセンサの一部もしくは全部をまとめて1つの応答内容情報208を生成することも可能である。
また、1つのセンサがデバイス52として複数の第2通信装置20に接続される場合もある(例えば無線接続の場合)。この場合、第1通信装置10は、取得したデータのうちの最新のものを採用するのが好ましい。
なお、上記ではデバイス52が各種センサである場合を例示したが、デバイス52が例えば各種の情報端末機であってもよい。この場合、当該情報端末機が取得・保有する情報を、第2通信装置20を介して第1通信装置10が収集することが可能である。情報端末機として、例えば、体重計や血圧計等の健康管理機器が挙げられる。
上記では電力線通信を例示したが、電力線通信に代えてその他の有線通信を通信システム1に適用することも可能である。これに対し、電力線通信は一般的に電力線に接続される機器が発生するノイズによって通信性能が低下しやすい(換言すれば通信品質の安定性が低い)ので、電力線通信と無線通信とを併用した上記通信システム1によればシステム全体として良好な通信(換言すれば信頼性の高い通信)が得られる。
また、上記例示の通信システム1を、複数種類の無線方式を利用する構成に変形することも可能である。その場合、複数種類の無線方式を、例えば、複数の規格の無線方式を含んで構成してもよいし、あるいは、同じ規格であるが複数のチャネルを有する無線方式を含んで構成してもよい。
同様に、上記例示の通信システム1を、複数種類の有線方式を利用する構成に変形することも可能である。その場合、複数種類の有線方式を、例えば、複数の規格の有線方式を含んで構成してもよいし、あるいは、同じ規格であるが複数のチャネルを有する有線方式を含んで構成してもよい。
なお、無線方式および有線方式のいずれも規格に応じて種々の特長があるので(例えば、通信品質の安定性に優れる、消費電力が少ない等)、各特長が生かされるように状況に応じて通信方式を切り替える構成を採用してもよい。