JP5511304B2 - センサ付車輪用軸受 - Google Patents

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Description

この発明は、車輪の軸受部にかかる荷重を検出する荷重センサを内蔵したセンサ付車輪用軸受に関する。
自動車の各車輪にかかる荷重を検出する技術として、図21のように、車輪用軸受の外輪50に歪みゲージ51を貼り付け、歪みを検出するようにしたセンサ付車輪用軸受が提案されている(例えば特許文献1)。
特表2003−530565号公報
しかし、図21のように車輪用軸受の外輪50に歪みゲージ51を貼り付けた構成では、センサが外部環境から保護されない。そのため、車両走行中に跳ねた小石などがセンサにぶつかってセンサが破損したり、泥塩水を被ってセンサが腐食する恐れがある。
上記課題を解決するものとして、本発明者等は、図22や図24に示す構成のものを提案している。図22のセンサ付車輪用軸受は、円環状の保護カバー52の内側に、荷重検出用の複数のセンサユニット53と、これらセンサユニット53のセンサの出力信号を処理する信号処理用ICと、処理された前記出力信号を軸受外部へ取り出す信号ケーブルとを含む電子部品を配置して円環状のセンサ組立品54とし、このセンサ組立品54をシール部材55を介して車輪用軸受の固定側部材である例えば外輪56の外周面にこれと同心に取付けたものである。
また、図24のセンサ付車輪用軸受は、図22のセンサ付車輪用軸受における上記電子部品をリング状に接続してセンサ組立品64とし、このセンサ組立品64を車輪用軸受の固定側部材である例えば外輪65の外周面に外輪65と同心に取付けると共に、このセンサ組立品64をインボード側に向かって内径が拡大する筒状の保護カバー62で覆い、この保護カバー62のインボード側端を外輪65の外周面に嵌合させ、保護カバー62のアウトボード側端を弾性体のシーリング材66を介して外輪65の外周面に取付けたものである。
しかし、図22の構成のものでは、センサ組立品54の形状が複雑になり、しかも保護カバー52が図23のようにヒンジ57を介して半割れ形状とされているため、密封性や組立性、コストの点で問題がある。
また、図24の構成のものでは、保護カバー62と別体のシーリング材66を固定側部材である外輪65の外周面に形成した溝に装着する必要があり、組立性やコストの点で問題がある。
この発明の目的は、外部環境の影響によるセンサの故障を防止して、車輪用軸受やタイヤ接地面に作用する荷重を長期にわたり正確に検出でき、信号ケーブルの配線処理やセンサの組付けも容易でコスト低減が可能なセンサ付車輪用軸受を提供することである。
この発明のセンサ付車輪用軸受は、複列の転走面が内周に形成された外方部材と、前記転走面と対向する転走面が外周に形成された内方部材と、両部材の対向する転走面間に介在した複列の転動体とを備え、車体に対して車輪を回転自在に支持する車輪用軸受において、上記外方部材および内方部材のうちの固定側部材の外周にナックルに取付ける車体取付用のフランジを設けると共に、前記固定側部材の外周面に固定される荷重検出用の複数のセンサユニットを設け、前記車体取付用のフランジは、その正面形状が軸受軸心回りの円形とされ、前記複数のセンサユニットを、前記固定側部材の外周を囲む円筒状の保護カバーで覆い、この保護カバーのアウトボード側端を前記固定側部材の外周面に嵌合させ、保護カバーのインボード側端の開口縁に沿って設けた環状の弾性体からなるリップ部を、前記車体取付用のフランジのアウトボード側を向く側面もしくは前記固定側部材の外周面に当接させたことを特徴とする。
この構成によると、固定側部材の外周面に固定される荷重検出用の複数のセンサユニットを設け、これら複数のセンサユニットを、前記固定側部材の外周を囲む筒状の保護カバーで覆っている。この保護カバーのアウトボード側端を前記固定側部材の外周面に嵌合させ、保護カバーのインボード側端の開口縁に沿って設けた環状の弾性体からなるリップ部を前記フランジのアウトボード側を向く側面もしくは固定側部材の外周面に当接させているので、センサユニットを保護カバーで被覆できて、外部環境の影響によるセンサの故障を防止して、車輪用軸受やタイヤ接地面に作用する荷重を長期にわたり正確に検出できる。例えば、外部からの飛び石や泥水,塩水等から、センサユニットを確実に保護することができる。また、信号ケーブルの配線処理やセンサユニットの組付けも容易でコスト低減が可能となる。
前記固定側部材が前記外方部材である場合は、前記保護カバーは外方部材の外周面に取付けられるが、その場合、保護カバーを取付け易くて、保護カバーによるセンサユニットの保護が行い易い。
この発明において、前記センサユニットと、このセンサユニットの出力信号を処理する信号処理用ICと、処理された前記出力信号を軸受外部へ取り出す信号ケーブルとを含む電子部品をリング状に接続してなるセンサ組立品を、前記固定側部材の外周面に固定側部材と同心に取付けると共に、このセンサ組立品を前記保護カバーで覆っても良い。
この構成の場合、センサユニットを含む電子部品をリング状に接続してなるセンサ組立品を保護カバーで被覆できる。
この発明において、前記リップ部を構成する弾性体はゴム材料からなるものとしても良い。リップ部を構成する弾性体がゴム材料であると、保護カバーのインボード側端の密封性を確実なものとすることができる。このほか、リップ部を保護カバーに一体形成しても良い。
この発明において、前記リップ部は、インボード側に向かって拡径する形状であっても良い。この構成の場合、インボード側端から保護カバー内への泥水・塩水等の浸入をより確実に防止できる。
この発明において、前記保護カバーは、耐食性を有する鋼板をプレス加工して成形したものであっても良い。この構成の場合、保護カバーが外部環境により腐食するのを防止できる。
この発明において、前記保護カバーは、鋼板をプレス加工して成形し、その表面に金属メッキまたは塗装処理を施したものであっても良い。この構成の場合も、保護カバーが外部環境により腐食するのを防止できる。
この発明において、前記センサユニットを、タイヤ接地面に対して上下位置および左右位置となる前記固定側部材の外周面の上面部、下面部、右面部、および左面部に円周方向90度の位相差で4つ等配しても良い。この構成の場合、どのような荷重条件においても、荷重を精度良く推定することができる。すなわち、ある方向への荷重が大きくなると、転動体と転走面が接触している部分と接触していない部分が180度位相差で現れるため、その方向に合わせてセンサユニットを180度位相差で設置すれば、どちらかのセンサユニットには必ず転動体を介して固定側部材に印加される荷重が伝達され、その荷重をセンサにより検出可能となる。
この発明において、前記センサユニットは3つ以上の接触固定部と2つのセンサを有し、隣り合う第1および第2の接触固定部の間、および隣り合う第2および第3の接触固定部の間に各センサをそれぞれ取付け、隣り合う接触固定部もしくは隣り合うセンサの前記固定部材の円周方向についての間隔を、転動体の配列ピッチの{1/2+n(n:整数)}倍とし、前記2つのセンサの出力信号の和を平均値として用いて荷重推定するものとしても良い。この構成の場合、2つのセンサの出力信号は略180度の位相差を有することになり、その平均値は転動体通過による変動成分をキャンセルした値となる。これにより、前記平均値を用いた荷重推定がより正確なものとなる。
この発明において、前記センサユニットをフレキシブル基板に取付けても良い。このように,フレキシブル基板にセンサユニットを取付けることで、センサユニットの取付けが容易になる。
さらに、前記フレキシブル基板に、前記信号処理用ICおよび信号ケーブルを取付けても良い。このように、フレキシブル基板に、センサユニット、信号処理用ICおよび信号ケーブルを取付けることにより、フレキシブル基板に配線回路のパターンを形成することで、センサユニット、信号処理用IC、信号ケーブル間の接続を容易に行うことができる。
この発明において、前記フレキシブル基板のベース材質がポリイミドであっても良い。フレキシブル基板のベース材質をポリイミドとすると、フレキシブル基板に十分な屈曲性と耐熱性を持たせることができる。
この発明において、前記保護カバーのインボード側端部に、前記信号ケーブルの保護カバーからの引き出し部が引き出される孔部を設け、信号ケーブル引き出し部が前記孔部から引き出される部分にシール材を塗布するのが望ましい。
この発明において、前記固定側部材のフランジの正面形状を、軸受軸心に直交する線分に対して線対称となる形状、または軸受軸心に対して点対称となる形状としても良い。
この構成の場合、固定側部材の形状が単純化され、固定側部材の形状の複雑さに起因する温度分布や膨張・収縮量のばらつきを低減できる。これにより、固定側部材における温度分布や膨張・収縮量のばらつきによる影響を十分小さくして、荷重による歪み量をセンサユニットに検出させることができる。
この発明において、前記センサユニットが取付けられる前記固定側部材の外周面における少なくともセンサユニットとの接触部分に、耐食性また防食性を有する表面処理を施しても良い。表面処理は、例えば金属メッキ、または塗装、またはコーティング処理である。
このように、固定側部材の外周面に耐食性または防食性を有する表面処理を施した場合、固定側部材の外周面の錆によりセンサユニットの取付部が盛り上がったり、センサユニットにもらい錆が発生するのを防止でき、錆に起因するセンサの誤動作を解消でき、荷重検出をさらに長期にわたり正確に行うことができる。
この発明において、前記保護カバーのアウトボード側端を前記固定側部材よりもアウトボード側に突出させ、そのアウトボード側端と前記回転側部材との間に非接触シール隙間を形成しても良い。
この構成の場合、保護カバーと固定側部材との間のシールがアウトボード側でも確実なものとなるので、外部環境の影響によるセンサの故障をさらに確実に防止して、荷重検出を正確に行うことができる。
この発明において、前記保護カバーのアウトボード側端を前記回転側部材に沿う形状としても良い。この構成の場合、保護カバーのアウトボード側端と回転側部材との間に形成される非接触シール隙間がより密封性の高いものとなる。
この発明のセンサ付車輪用軸受の組立方法は、この発明の前記いずれか構成のセンサ付車輪用軸受の組立方法であって、前記固定側部材の単体の状態、または固定側部材に前記転動体を組み付けた状態で、前記固定側部材の外周面に前記センサユニットを取付け、前記保護カバーを固定側部材の外周面に圧入した後、軸受を組み立てることを特徴とする。
この組立方法によると、固定側部材に取付けたセンサユニットを保護カバーで覆ったセンサ付車輪用軸受を、容易に組み立てることができる。
この発明のセンサ付車輪用軸受は、複列の転走面が内周に形成された外方部材と、前記転走面と対向する転走面が外周に形成された内方部材と、両部材の対向する転走面間に介在した複列の転動体とを備え、車体に対して車輪を回転自在に支持する車輪用軸受において、上記外方部材および内方部材のうちの固定側部材の外周にナックルに取付ける車体取付用のフランジを設けると共に、前記固定側部材の外周面に固定される荷重検出用の複数のセンサユニットを設け、前記車体取付用のフランジは、その正面形状が軸受軸心回りの円形とされ、前記複数のセンサユニットを、前記固定側部材の外周を囲む円筒状の保護カバーで覆い、この保護カバーのアウトボード側端を前記固定側部材の外周面に嵌合させ、保護カバーのインボード側端の開口縁に沿って設けた環状の弾性体からなるリップ部を、前記車体取付用のフランジのアウトボード側を向く側面もしくは固定側部材の外周面に当接させたため、外部環境の影響によるセンサの故障を防止して、車輪用軸受やタイヤ接地面に作用する荷重を長期にわたり正確に検出でき、信号ケーブルの配線処理やセンサの組付けも容易でコスト低減が可能となる。
この発明のセンサ付車輪用軸受の組立方法は、この発明のセンサ付車輪用軸受の組立方法であって、前記固定側部材の単体の状態、または固定側部材に前記転動体を組み付けた状態で、前記固定側部材の外周面に前記センサユニットを取付け、前記保護カバーを固定側部材の外周面に圧入した後、軸受を組み立てることとしたため、固定側部材に取付けたセンサユニットを保護カバーで覆ったセンサ付車輪用軸受を、容易に組み立てることができる。
この発明の一実施形態にかかるセンサ付車輪用軸受の断面図である。 同センサ付車輪用軸受の外方部材をアウトボード側から見た正面図である。 図1の部分拡大断面図である。 図2におけるIV−IV矢視断面図である。 同センサ付車輪用軸受におけるセンサユニットの拡大平面図である。 図5におけるVI−VI矢視断面図である。 (A)はセンサ組立品に設置される電子部品の配置の一例の展開平面図、(B)は(A)のVIIb−VIIb矢視断面図である。 (A)はセンサ組立品に設置される電子部品の配置の他の例の展開平面図、(B)は同断面図である。 (A)はセンサ組立品に設置される電子部品の配置のさらに他の例の展開平面図、(B)は同断面図である。 (A)はセンサ組立品に設置される電子部品の配置のさらに他の例の展開平面図、(B)は同断面図である。 センサユニットの出力信号に対する転動体位置の影響の説明図である。 この発明の他の実施形態における軸受の断面図である。 この発明のさらに他の実施形態にかかるセンサ付車輪用軸受の断面図である。 同センサ付車輪用軸受の部分拡大断面図である。 この発明のさらに他の実施形態にかかるセンサ付車輪用軸受の断面図である。 同センサ付車輪用軸受の部分拡大断面図である。 この発明のさらに他の実施形態にかかるセンサ付車輪用軸受の断面図である。 同センサ付車輪用軸受の部分拡大断面図である。 この発明のさらに他の実施形態にかかるセンサ付車輪用軸受の断面図である。 同センサ付車輪用軸受の部分拡大断面図である。 従来例の斜視図である。 提案例の断面図である。 同提案例に用いられる保護カバーの説明図である。 他の提案例の断面図である。
この発明の第1の実施形態を図1ないし図11と共に説明する。この実施形態は、第3世代型の内輪回転タイプで、駆動輪支持用の車輪用軸受に適用したものである。なお、この明細書において、車両に取付けた状態で車両の車幅方向の外側寄りとなる側をアウトボード側と呼び、車両の中央寄りとなる側をインボード側と呼ぶ。
このセンサ付車輪用軸受における軸受は、図1に断面図で示すように、内周に複列の転走面3を形成した外方部材1と、これら各転走面3に対向する転走面4を外周に形成した内方部材2と、これら外方部材1および内方部材2の転走面3,4間に介在した複列の転動体5とで構成される。この車輪用軸受は、複列のアンギュラ玉軸受型とされていて、転動体5はボールからなり、各列毎に保持器6で保持されている。上記転走面3,4は断面円弧状であり、ボール接触角が背面合わせとなるように形成されている。外方部材1と内方部材2との間の軸受空間の両端は、一対のシール7,8によってそれぞれ密封されている。
外方部材1は固定側部材となるものであって、車体の懸架装置におけるナックル(図示せず)に取付ける車体取付用フランジ1aを外周に有し、全体が一体の部品とされている。車体取付用フランジ1aには周方向複数箇所にナックル取付用のねじ孔14が設けられ、インボード側よりナックルのボルト挿通孔に挿通したナックルボルト(図示せず)を前記ねじ孔14に螺合することにより、フランジ1aがナックルに取付けられる。
内方部材2は回転側部材となるものであって、車輪取付用のハブフランジ9aを有するハブ輪9と、このハブ輪9の軸部9bのインボード側端の外周に嵌合した内輪10とでなる。これらハブ輪9および内輪10に、前記各列の転走面4が形成されている。ハブ輪9のインボード側端の外周には段差を持って小径となる内輪嵌合面12が設けられ、この内輪嵌合面12に内輪10が嵌合している。ハブ輪9の中心には貫通孔11が設けられている。ハブフランジ9aには、周方向複数箇所にハブボルト15の圧入孔16が設けられている。ハブ輪9のハブフランジ9aの根元部付近には、車輪および制動部品(図示せず)を案内する円筒状のパイロット部13がアウトボード側に突出している。
図2は、この車輪用軸受の外方部材1をアウトボード側から見た正面図を示す。前記車体取付用フランジ1aは、その正面形状が、軸受軸心Oに直交する線分(例えば図2における縦線分LVあるいは横線分LH)に対し線対称となる形状、または軸受軸心Oに対して点対称となる形状とされている。具体的には、この例ではその正面形状が前記縦線分LVに対して線対称となる円形とされている。
固定側部材である外方部材1の外周面には、4つのセンサユニット20が設けられている。ここでは、これらのセンサユニット20が、タイヤ接地面に対して上下位置および前後位置となる外方部材1の外周面における上面部、下面部、右面部、および左面部に周方向90度の位相差で等配して設けられている。
これらのセンサユニット20は、図5および図6に拡大平面図および拡大断面図で示すように、歪み発生部材21と、この歪み発生部材21に取付けられて歪み発生部材21の歪みを検出する2つの歪みセンサ22A,22Bとでなる。歪み発生部材21は、鋼材等の弾性変形可能な金属製で2mm以下の薄板材からなり、平面概形が全長にわたり均一幅の帯状で両側辺部に切欠き部21bを有する。切欠き部21bの隅部は断面円弧状とされている。また、歪み発生部材21は、外方部材1の外周面にスペーサ23を介して接触固定される3つの接触固定部21aを有する。3つの接触固定部21aは、歪み発生部材21の長手方向に向けて1列に並べて配置される。つまり、図6において、左端の接触固定部21aと中央の接触固定部21aとの間に1つの歪みセンサ22Aが配置され、中央の接触固定部21aと右端の接触固定部21aとの間に他の1つの歪みセンサ22Bが配置される。切欠き部21bは、図5のように、歪み発生部材21の両側辺部における前記歪みセンサ22A,22Bの配置部に対応する2箇所の位置にそれぞれ形成されている。これにより、歪みセンサ22A,22Bは歪み発生部材21の切欠き部21b周辺における長手方向の歪みを検出する。なお、歪み発生部材21は、固定側部材である外方部材1に作用する外力、またはタイヤと路面間に作用する作用力として、想定される最大の力が印加された状態においても、塑性変形しないものとするのが望ましい。塑性変形が生じると、外方部材1の変形がセンサユニット20に伝わらず、歪みの測定に影響を及ぼすからである。
前記センサユニット20は、その歪み発生部材21の3つの接触固定部21aが、外方部材1の軸方向について同じ位置で、かつ各接触固定部21aが互いに円周方向に離れた位置に来るように配置され、これら接触固定部21aがそれぞれフレキシブル基板30およびスペーサ23を介してボルト24により外方部材1の外周面に固定される。フレキシブル基板30は、外方部材1の外周面に沿ってリング状に配置される帯状の一枚基板である。つまり、4つのセンサユニット20は1つのフレキシブル基板30の上に取付けられ、さらにフレキシブル基板30と共に外方部材1の外周面に固定される。前記各ボルト24は、それぞれ接触固定部21aに設けられた径方向に貫通するボルト挿通孔25から、フレキシブル基板30のボルト挿通孔30a、スペーサ23のボルト挿通孔26に挿通し、外方部材1の外周部に設けられたねじ孔27に螺合させる。ボルト24の頭部と歪み発生部材21との間にはワッシャ28を介在させる。このように、スペーサ23を介して外方部材1の外周面に接触固定部21aを固定することにより、薄板状である歪み発生部材21における切欠き部21bを有する各部位が外方部材1の外周面から離れた状態となり、切欠き部21bの周辺の歪み変形が容易となる。外方部材1の外周面へセンサユニット20を安定良く固定する上で、外方部材1の外周面における前記スペーサ23が接触固定される箇所には平坦部1bが形成される。
前記4つのセンサユニット20は、これらの歪みセンサ22A,22Bの出力信号を処理する集積回路チップである信号処理用IC31、処理された前記出力信号を軸受外部へ取り出す信号ケーブル32(図7)などの電子部品と共にリング状に接続してセンサ組立品33とされ、このリング状とされたセンサ組立品33が外方部材1の外周面に外方部材1と同心に取付けられる。このとき、フレキシブル基板30は外方部材1の外周面に沿ってリング状に配置されるため、そのベース材質としてはポリイミドが望ましい。フレキシブル基板30のベース材質をポリイミドとすると、フレキシブル基板30に十分な屈曲性と耐熱性を持たせることができ、外方部材1の周方向に容易に沿わせることができる。
図7(A),(B)は、前記センサ組立品33での電子部品の一配置例の平面展開図およびその断面図を示す。この配置例では、4つのセンサユニット20と共に、信号処理用IC31、信号ケーブル32の配線部32Aがフレキシブル基板30上に直接に取付けられている。センサユニット20はフレキシブル基板30の裏面(外方部材1の外周面と対向する面)側に取付けられ、信号処理用IC31はフレキシブル基板30の表面側に取付けられる。
また、フレキシブル基板30上には、各センサユニット20、信号処理用IC31、信号ケーブル配線部32Aの間を配線する配線回路34が回路パターンとして印刷されている。センサユニット20および信号処理用IC31は前記配線回路34に、また信号ケーブル32の車体側への引き出し部32Bは前記信号ケーブル配線部32Aに半田付けなどにより接続される。センサユニット20は、その歪み発生部材21の外方部材1との接触面とは反対側の表面が回路印刷面とされ、この回路印刷面がフレキシブル基板30の配線回路34の印刷面と向かい合わせとなるようにフレキシブル基板30に取付けられる。この例では、フレキシブル基板30のセンサユニット20の配置部におけるセンサユニット20の両側部に相当する部分に、フレキシブル基板30の長手方向に延びる帯状の開口30bが形成されている。これにより、センサユニット20の外方部材1との密着面は、回路印刷面や半田部がない平坦面となり、外方部材1にセンサユニット20を密着させて取付けることができる。
信号処理用IC31は、歪みセンサ22A,22Bの出力信号により、車輪用軸受や車輪と路面間(タイヤ接地面)に作用する力(垂直方向荷重Fz ,駆動力や制動力となる荷重Fx ,軸方向荷重Fy )を推定する推定手段となるものであって、歪み信号の処理を行う信号処理回路や補正回路などが含まれる。この信号処理用IC31は、前記作用力と歪みセンサ22A,22Bの出力信号との関係を演算式またはテーブル等により設定した関係設定手段(図示せず)を有し、センサユニット20の出力信号から前記関係設定手段を用いて作用力の値を出力する。前記関係設定手段の内容は、予め試験やシミュレーショで求めておいて設定する。
信号処理用IC31での荷重推定の一例を以下に説明する。信号処理用IC31では、先ず前段の処理として、センサユニット20の2つの歪みセンサ22A,22Bの出力信号の和を演算して、その和を平均値Aとして取り出す。また、2つの歪みセンサ22A,22Bの出力信号の差分を演算して変動成分を取り出し、振幅値Bを求める。
後段の処理として、信号処理用IC31は、前記平均値Aと振幅値Bを用いて以下のように車輪用軸受に作用する荷重Fを演算・推定する。
一般に、車輪用軸受に作用する荷重ベクトルFと複数の歪みセンサの出力信号ベクトルSとの関係は、線形な範囲内でオフセット分を除外すれば、
F=M1×S ……(1)
という関係で表すことができ、この関係式(1)から荷重Fを推定することができる。ここで、M1は所定の補正係数行列である。
後段の第1の荷重推定処理として、信号処理用IC31は、4つのセンサユニット20からの平均値信号からオフセット分を除外した平均値ベクトルAを用いて、この変数に所定の補正係数M1を乗算した一次式、つまり
F=M1×A ……(2)
から荷重Fを演算・推定する。
後段の第2の荷重推定処理として、信号処理用IC31は、前記平均値ベクトルAおよび振幅値ベクトルBを入力変数として用い、これらの変数に所定の補正係数M2,M3を乗算した一次式、つまり
F=M2×A+M3×B ……(3)
から荷重Fを演算・推定する。このように2種類の変数を用いることで、荷重推定精度を向上させることができる。
上記各演算式における各補正係数の値は、予め試験やシミユレーションで求めておいて設定する。前記第1の荷重推定処理および第2の荷重推定処理は並行して行われる。なお、式(3)において、変数である平均値Aを省略しても良い。つまり、第2の荷重推定処理では、振幅値Bのみを変数として用いて荷重Fを演算・推定することもできる。
外方部材1の外周面に設けられるセンサユニット20における歪みセンサ22A,22Bの出力信号a,bは、図11のようにセンサユニット20の設置部の近傍を通過する転動体5の影響を受ける。つまり、この転動体5の影響が上記したオフセット分として作用する。また、軸受の停止時においても、歪みセンサ22A,22Bの出力信号a,bは、転動体5の影響を受ける。すなわち、転動体5がセンサユニット20における歪みセンサ22A,22Bに最も近い位置を通過するとき(または、その位置に転動体5があるとき)、歪みセンサ22A,22Bの出力信号a,bは最大値となり、図11(A),(B)のように転動体5がその位置から遠ざかるにつれて(または、その位置から離れた位置に転動体5があるとき)低下する。軸受回転時には、転動体5は所定の配列ピッチPで前記センサユニット20の設置部の近傍を順次通過するので、歪みセンサ22A,22Bの出力信号a,bは、その振幅が転動体5の配列ピッチPを周期として図11(C)に実線で示すように周期的に変化する正弦波に近い波形となる。この実施形態では、前記2つの歪みセンサ22A,22Bの出力信号a,bの和を上記した平均値Aとし、振幅の差分(絶対値)から振幅を求めて上記した振幅値Bとする。これにより、平均値Aは転動体5の通過による変動成分をキャンセルした値となる。また、振幅値Bは温度の影響を受けにくいため安定しており、さらに2つの信号を使用するため検出精度が高められる。したがって、この平均値Aと振幅値Bを用いることにより、車輪用軸受やタイヤ接地面に作用する荷重を正確に検出することができる。
センサユニット20では、外方部材1の外周面の円周方向に並ぶ3つの接触固定部21aのうち、その配列の両端に位置する2つの接触固定部21aの間隔を、転動体5の配列ピッチPと同一に設定している。この場合、隣り合う接触固定部21aの中間位置にそれぞれ配置される2つの歪みセンサ22A,22Bの間での前記円周方向の間隔は、転動体5の配列ピッチPの略1/2となる。その結果、2つの歪みセンサ22A,22Bの出力信号a,bは略180度の位相差を有することになり、その和として求められる平均値Aは転動体5の通過による変動成分をキャンセルしたものとなる。また、その差分として求められる振幅値Bは温度の影響を受けにくいため安定しており、さらに2つの信号を使用するため検出精度が高められる。
なお、図11では、接触固定部21aの間隔を、転動体5の配列ピッチPと同一に設定し、隣り合う接触固定部21aの中間位置に各1つの歪みセンサ22A,22Bをそれぞれ配置することで、2つの歪みセンサ22A,22Bの間での前記円周方向の間隔を、転動体5の配列ピッチPの略1/2となるようにした。これとは別に、直接、2つの歪みセンサ22A,22Bの間での前記円周方向の間隔を、転動体5の配列ピッチPの1/2に設定しても良い。
この場合に、2つの歪みセンサ22A,22Bの前記円周方向の間隔を、転動体5の配列ピッチPの{1/2+n(n:整数)}倍、またはこれらの値に近似した値としても良い。この場合にも、両歪みセンサ22A,22Bの出力信号a,bの和として求められる平気値Aは転動体5の通過による変動成分をキャンセルした値となり、差分から求められる振幅値Bは温度の影響を受けにくいため安定しており、さらに2つの信号を使用するため検出精度が高められる。
信号処理用IC31で求められた第1および第2の荷重推定処理による荷重推定値は、車輪回転速度に応じて切り替え選択して出力される。具体的には、車輪回転速度が所定の下限速度より低い場合に、第1の荷重推定処理による推定荷重値が選択して出力される。前記所定の下限速度は,任意に設定した値で良いが、例えば、人が歩く程度の速度(時速4Km)か、それよりも遅い速度とされる。
車輪の低速回転時には、センサ出力信号の振幅を検出するための処理時間が長くなり、さらに静止時には振幅の検出そのものが不可能になる。そこで、このように、車輪回転速度が所定の下限速度よりも低い場合に、平均値Aだけを用いた第1の荷重推定処理による荷重推定値を選択して出力することにより、検出した荷重信号を遅延なく出力することができる。
この実施形態では、図2のように、タイヤ接地面に対して上下位置および左右位置となる、外方部材1の外周面の上面部、下面部、右面部、および左面部に、円周方向90度の位相差で4つのセンサユニット20を等配しているので、車輪用軸受に作用する垂直方向荷重Fz 、駆動力や制動力となる荷重Fx 、軸方向荷重Fy を推定することができる。
外方部材1の外周面に取付けられた前記センサ組立品33は、図1のように保護カバー29で覆われる。保護カバー29は、外方部材1の外周を囲む筒状の部材であり、そのアウトボード側端が外方部材1の外周面に嵌合させられる。保護カバー29のインボード側端には、その開口縁に沿って環状の弾性体からなるリップ部35が設けられ、このリップ部35が外方部材1の車体取付用フランジ1aのアウトボード側を向く側面に当接させられる。これにより、保護カバー29のアウトボード側端およびインボード側端と外方部材1の外周面との間が密封される。リップ部35は、前記フランジ1aの外周面に当接させても良い。
前記リップ部35を構成する弾性体としてはゴム材料が望ましい。これにより、リップ部35による保護カバー29のインボード側端の密封性を確実なものとすることができる。このほか、リップ部35を保護カバー29に一体形成しても良い。ここでは、図3に拡大断面図で示すように、リップ部35を、インボード側に向かって拡径する形状としている。これにより、インボード側端から保護カバー29内への泥水・塩水等の浸入をより確実に防止できる。
保護カバー29は、例えば耐食性を有する鋼板をプレス加工して成形される。これにより、保護カバー29が外部環境により腐食するのを防止できる。このほか、鋼板をプレス加工して保護カバー29を成形し、その表面に金属メッキまたは塗装処理を施しても良い。この場合も、保護カバー29が外部環境により腐食するのを防止できる。保護カバー29の材質は、このほかプラスチックやゴムであっても良い。
図2のIV−IV矢視断面図を示す図4のように、保護カバー29のインボード側端部には、前記センサ組立品33における信号ケーブル32の引き出し部32Bを外側に引き出す孔部36が設けられ、この孔部36から信号ケーブル引き出し部32Bが引き出される部分にシール材37が塗布される。これにより、保護カバー29から信号ケーブル引き出し部32Bが引き出される部分の密封性を確実なものとすることができる。
図8(A),(B)は、保護カバー29で覆われるセンサ組立品33での前記電子部品の他の配置例の平面展開図および断面図を示す。この電子部品の配置例でも、センサユニット20、信号処理用IC31、および信号ケーブル配線部32Aをすべてフレキシブル基板30上に取付けている。この配置例では、フレキシブル基板30のセンサユニット20の配置部に、センサユニット20の略全体が露出する方形の開口30cが形成されている。
このように、フレキシブル基板30におけるセンサユニット20の配置部に、センサユニット20の略全体が露出する方形の開口30cを形成することにより、センサユニット20における歪み発生部材21の変形がフレキシブル基板30で規制されるのを確実に防ぐことができ、荷重の検出精度をそれだけ向上させることができる。その他の構成は、図7に示した配置例の場合と同様である。
図9(A),(B)は、保護カバー29で覆われるセンサ組立品33での前記電子部品のさらに他の配置例の平面展開図および断面図を示す。この電子部品の配置例では、各センサユニット20を、フレキシブル基板30の配線回路34との接続部を除いて、フレキシブル基板30から切り離している。
また、フレキシブル基板30は信号処理用IC31の取付部を広幅部とし、それ以外の部分を狭幅部とし、フレキシブル基板30の狭幅部の側部に各センサユニット20を配置することで、全体の配置構成が幅広くならないようにしている。これにより、センサ組立品33をコンパクトに構成できる。その他の構成は、図7に示した配置例の場合と同様である。
図10(A),(B)は、保護カバー29で覆われるセンサ組立品33での前記電子部品のさらに他の配置例の平面展開図および断面図を示す。この電子部品の配置例でも、図9の場合と同様に各センサユニット20を、フレキシブル基板30の配線回路34との接続部を除いて、フレキシブル基板30から切り離している。ただし、この配置例では、フレキシブル基板30を同一幅の帯状とし、そのフレキシブル基板30の一側部にフレキシブル基板30に沿って各センサユニット20を配置している。その他の構成は、図7に示した配置例の場合と同様である。
このセンサ付車輪用軸受の組立は、以下の手順で行われる。先ず、外方部材1の単体の状態、または外方部材1に転動体5を組み付けた状態で、外方部材1の外周面にセンサユニット20を含む電子部品からなるセンサ組立品33を取付ける。つぎに、筒状の保護カバー29を、外方部材1のアウトボード側からその外周面に圧入してそのアウトボード側端を外方部材1の外周面に嵌合させると共に、保護カバー29のインボード側端のリップ部35を外方部材1の車体取付用フランジ1aのアウトボード側を向く側面または外周面に当接させることで、センサユニット20を含む電子部品からなるセンサ組立品33を保護カバー29で覆う。この後で軸受の全体を組み立てる。この手順で組み立てることにより、外方部材1に取付けたセンサユニット20、もしくはセンサユニット20を含むセンサ組立品33を保護カバー29で覆ってなるセンサ付車輪用軸受を、容易に組み立てることができる。
上記センサ付車輪用軸受による荷重検出動作を以下に説明する。車輪のタイヤと路面間に荷重が作用すると、車輪用軸受の固定側部材である外方部材1にも荷重が印加されて変形が生じる。ここではセンサユニット20における歪み発生部材21の3つの接触固定部21aが、外方部材1に接触固定されているので、外方部材1の歪みが歪み発生部材21に拡大して伝達され易く、その歪みが歪みセンサ22A,22Bで感度良く検出される。とくに、複数のセンサユニット20を、固定側部材である外方部材1の外周を囲む筒状の保護カバー29で覆い、この保護カバー29のアウトボード側端を外方部材1の外周面に嵌合させ、保護カバー29のインボード側端の開口縁に沿って設けた環状の弾性体からなるリップ部35を外方部材1の車体取付用フランジ1aのアウトボード側を向く側面もしくは外周面に当接させているので、外部環境によりセンサユニット20が故障する(飛び石による破損や、泥水・塩水などによる腐食)のを防止でき、長期にわたって荷重を正確に検出することができ、信号ケーブル32の配線処理やセンサユニット20の組付けも容易でコスト低減が可能となる。
上記説明では車輪のタイヤと路面間の作用力を検出する場合を示したが、車輪のタイヤと路面間の作用力だけでなく、車輪用軸受に作用する力(例えば予圧量)を検出するものでも良い。
このセンサ付車輪用軸受から得られた検出荷重を車両制御に使用することにより、自動車の安定走行に寄与できる。また、このセンサ付車輪用軸受を用いると、車両にコンパクトに荷重センサを設置でき、量産性に優れたものとでき、コスト低減を図ることができる。
また、この実施形態では、センサユニット20と、このセンサユニット20の出力信号を処理する信号処理用IC31と、処理された前記出力信号を軸受外部へ取り出す信号ケーブル32とを含む電子部品をリング状に接続してセンサ組立品33とし、このセンサ組立品33を、固定側部材である外方部材1の外周面に外方部材1と同心に取付け、このセンサ組立品33を前記保護カバー29で覆っているので、センサユニット20だけでなく、センサ組立品33を構成する信号処理用IC31、信号ケーブル32などの他の電子部品をも、外部環境による故障から保護することができる。
図12は、この発明の他の実施形態を示す。このセンサ付車輪用軸受では、図1〜図11に示した実施形態において、前記センサユニット20が取付けられる外方部材1の外周面における少なくともセンサユニット20との接触部分に、耐食性または防食性を有する表面処理層38が形成されている。ここでは、外方部材1の外周面の全域にわたって表面処理層38を形成した場合を示したが、車体取付用フランジ1aよりもアウトボード側の外周面に限定して表面処理層38を形成しても良い。
耐食性または防食性を有する表面処理層38としては、例えば金属メッキ処理によるメッキ層や、塗装処理による塗装膜、コーティング処理によるコーティング層等が挙げられる。金属メッキ処理としては、亜鉛メッキ、ユニクロメッキ、クロメートメッキ、ニッケルメッキ、クロムメッキ、無電解ニッケルメッキ、カニゼンメッキ、四三酸化鉄皮膜(黒染め)、レイデントなどの処理が適用可能である。塗装処理としては、カチオン電着塗装、アニオン電着塗装、フッ素系電着塗装等の電着塗装が適用できる。コーティング処理としては、窒化珪素等のセラミックコーティングなどが適用可能である。
このように、固定側部材である外方部材1の外周面の少なくともセンサユニット20との接触部分に耐食性または防食性を有する表面処理層38を形成することにより、外方部材1の外周面の錆によりセンサユニット20の取付部が盛り上がったり、センサユニット20にもらい錆が発生するのを防止でき、錆に起因する歪みセンサ22A,22Bの誤動作を解消でき、荷重検出をさらに長期にわたり正確に行うことができる。また、センサユニット20を含む前記センサ組立品33が取付けられる外方部材1の外周面に前記表面処理層38を形成した場合、センサ組立品33の取付部が錆で盛り上がったりするのを防止でき、錆に起因する歪みセンサ22A,22Bの誤動作をさらに解消できる。
また、外方部材1の外周面の車体取付用フランジ1aよりもアウトボード側だけに限定して表面処理層38を形成した場合には、外方部材1の転走面3を研削加工する際に、外方部材1の外周面のインボード側端の表面未処理部を保持することができ、高精度に転走面3を研削加工することができる。
図13および図14は、この発明のさらに他の実施形態を示す。このセンサ付車輪用軸受では、図1〜図11に示す実施形態において、保護カバー29のアウトボード側端を外方部材1よりもアウトボード側に突出させ、そのアウトボード側端と、回転側部材である内方部材2との間に非接触シール隙間39、すなわちラビリンスシールを形成している。ここでは、図14に拡大断面図で示すように、保護カバー29のアウトボード側端に、外方部材1のアウトボード側端に沿って内径側に折り曲げられる内側折り曲げ部29aを形成し、つぎにその内側折り曲げ部29aの先端から外径側に折り返されて内側折り曲げ部29aと重なる外側折り曲げ部29bを形成し、さらに外側折り曲げ部29bの先端から内方部材2のハブフランジ9aの基部の曲面部分9aaに向けて延びる筒部29cを形成している。これにより、前記外側折り曲げ部29bから筒部29cにわたる部分とハブフランジ9aの基部曲面部分9aaとの間に狭幅の非接触シール隙間39が形成される。その他の構成は図1〜図11の実施形態の場合と同様である。
このように、保護カバー29のアウトボード側端と内方部材2との間に非接触シール隙間39を形成することにより、保護カバー29のアウトボード側端でのシール性が向上し、外部環境の影響によるセンサの故障をさらに確実に防止して、荷重検出を正確に行うことができる。
図15および図16は、この発明のさらに他の実施形態を示す。このセンサ付車輪用軸受では、図13および図14に示す実施形態において、保護カバー29のアウトボード側端の外側折り曲げ部29bの先端の筒部29cを、図16に拡大断面図で示すようにハブフランジ9aの側面に沿う断面L字状に形成している。その他の構成は図13および図14に示す実施形態の場合と同様である。
このように、保護カバー29のアウトボード側端の外側折り曲げ部29bの先端の筒部29cをハブフランジ9aの側面に沿う断面L字状に形成することにより、前記外側折り曲げ部29bから筒部29cにわたる部分とハブフランジ9aの基部曲面部分9aaとの間に形成される非接触シール隙間39が、ハブフランジ9aの側面に沿った形状となる。これにより、保護カバー29のアウトボード側において、浸入してくる泥水などがハブフランジ9aの側面に沿った前記非接触シール隙間39から外側に向けて流れ易くなり、保護カバー29のアウトボード側端でのシール性がさらに向上する。
図17および図18は、この発明のさらに他の実施形態を示す。このセンサ付車輪用軸受では、図13および図14に示す実施形態において、保護カバー29のアウトボード側端の外側折り曲げ部29bを、図18に拡大断面図で示すように内側折り曲げ部29aの外径側基端よりもさらに外径側まで延ばしている。その他の構成は図13および図14に示す実施形態の場合と同様である。
このように、保護カバー29のアウトボード側端の外側折り曲げ部29bを内側折り曲げ部29aの外径側基端よりもさらに外径側まで延ばすことにより、前記外側折り曲げ部29bから筒部29cにわたる部分とハブフランジ9aの基部曲面部分9aaとの間に形成される非接触シール隙間39の径方向距離がより長くなる。これにより、保護カバー29のアウトボード側端でのシール性がさらに向上する。
図19および図20は、この発明のさらに他の実施形態を示す。このセンサ付車輪用軸受では、図20に拡大断面図で示すように、保護カバー29のアウトボード側端を外方部材1よりもアウトボード側に突出させ、そのアウトボード側端から外径側に折り曲げられる外側折り曲げ部29dを形成し、つぎにその外側折り曲げ部29dの先端から内径側に折り返されて外側折り曲げ部29dと重なる内側折り曲げ部29eを形成し、さらに内側折り曲げ部29eの先端から内方部材2のハブフランジ9aの基部の曲面部分9aaに向けて延びる筒部29fを形成している。これにより、前記内側折り曲げ部29eから筒部29fにわたる部分とハブフランジ9aの基部曲面部分9aaとの間に狭幅で径方向に長い非接触シール隙間39が形成される。その他の構成は図1〜図11の実施形態の場合と同様である。
この場合も、保護カバー29のアウトボード側端において、その内側折り曲げ部29eから筒部29fにわたる部分とハブフランジ9aの基部曲面部分9aaとの間に狭幅で径方向に長い非接触シール隙間39が形成されるので、保護カバー29のアウトボード側端でのシール性が向上し、外部環境の影響によるセンサの故障をさらに確実に防止して、荷重検出を正確に行うことができる。
この実施形態では第3世代型の車輪用軸受に適用した場合につき説明したが、この発明は、軸受部分とハブとが互いに独立した部品となる第1または第2世代型の車輪用軸受や、内方部材の一部が等速ジョイントの外輪で構成される第4世代型の車輪用軸受にも適用でき、さらに各世代形式のテーパころタイプの車輪用軸受にも適用することができる。また、外方部材が回転側部材となる車輪用軸受にも適用することができる。その場合、内方部材の外周にセンサユニットを設ける。
1…外方部材
1a…車体取付用フランジ
2…内方部材
3,4…転走面
5…転動体
20…センサユニット
21…歪み発生部材
21a…接触固定部
22A,22B…歪みセンサ
29…保護カバー
30…フレキシブル基板
31…信号処理用IC
32…信号ケーブル
33…センサ組立品
35…リップ部
36…孔部
37…シール材
38…表面処理層
39…非接触シール隙間

Claims (19)

  1. 複列の転走面が内周に形成された外方部材と、前記転走面と対向する転走面が外周に形成された内方部材と、両部材の対向する転走面間に介在した複列の転動体とを備え、車体に対して車輪を回転自在に支持する車輪用軸受において、
    上記外方部材および内方部材のうちの固定側部材の外周にナックルに取付ける車体取付用のフランジを設けると共に、前記固定側部材の外周面に固定される荷重検出用の複数のセンサユニットを設け、前記車体取付用のフランジは、その正面形状が軸受軸心回りの円形とされ、前記複数のセンサユニットを、前記固定側部材の外周を囲む円筒状の保護カバーで覆い、この保護カバーのアウトボード側端を前記固定側部材の外周面に嵌合させ、保護カバーのインボード側端の開口縁に沿って設けた環状の弾性体からなるリップ部を、前記車体取付用のフランジのアウトボード側を向く側面もしくは前記固定側部材の外周面に当接させたことを特徴とするセンサ付車輪用軸受。
  2. 請求項1において、前記センサユニットと、このセンサユニットの出力信号を処理する信号処理用ICと、処理された前記出力信号を軸受外部へ取り出す信号ケーブルとを含む電子部品をリング状に接続してなるセンサ組立品を、前記固定側部材の外周面に固定側部材と同心に取付けると共に、このセンサ組立品を前記保護カバーで覆ったセンサ付車輪用軸受。
  3. 請求項1または請求項2において、前記リップ部を前記保護カバーに一体形成したセンサ付車輪用軸受。
  4. 請求項1ないし請求項3のいずれか1項において、前記リップ部を構成する弾性体がゴム材料からなるセンサ付車輪用軸受。
  5. 請求項1ないし請求項4のいずれか1項において、前記リップ部は、インボード側に向かって拡径する形状であるセンサ付車輪用軸受。
  6. 請求項1ないし請求項5のいずれか1項において、前記保護カバーは、耐食性を有する鋼板をプレス加工して成形したものであるセンサ付車輪用軸受。
  7. 請求項1ないし請求項5のいずれか1項において、前記保護カバーは、鋼板をプレス加工して成形し、その表面に金属メッキまたは塗装処理を施したものであるセンサ付車輪用軸受。
  8. 請求項1ないし請求項7のいずれか1項において、前記センサユニットを、タイヤ接地面に対して上下位置および左右位置となる前記固定側部材の外周面の上面部、下面部、右面部、および左面部に円周方向90度の位相差で4つ等配したセンサ付車輪用軸受。
  9. 請求項1ないし請求項8のいずれか1項において、前記センサユニットは3つ以上の接触固定部と2つのセンサを有し、隣り合う第1および第2の接触固定部の間、および隣り合う第2および第3の接触固定部の間に各センサをそれぞれ取付け、隣り合う接触固定部もしくは隣り合うセンサの前記固定部材の円周方向についての間隔を、転動体の配列ピッチの{1/2+n(n:整数)}倍とし、前記2つのセンサの出力信号の和を平均値として用いて荷重推定するものとしたセンサ付車輪用軸受。
  10. 請求項1ないし請求項9のいずれか1項において、前記センサユニットをフレキシブル基板に取付けたセンサ付車輪用軸受。
  11. 請求項10において、前記センサユニットと、このセンサユニットの出力信号を処理する信号処理用ICと、処理された前記出力信号を軸受外部へ取り出す信号ケーブルとを含む電子部品をリング状に接続してなるセンサ組立品を、前記固定側部材の外周面に固定側部材と同心に取付けると共に、このセンサ組立品を前記保護カバーで覆い、前記フレキシブル基板に、前記信号処理用ICおよび信号ケーブルを取付けたセンサ付車輪用軸受。
  12. 請求項10または請求項11において、前記フレキシブル基板のベース材質がポリイミドであるセンサ付車輪用軸受。
  13. 請求項2ないし請求項12のいずれか1項において、前記保護カバーのインボード側端部に、前記信号ケーブルの保護カバーからの引き出し部が引き出される孔部を設け、信号ケーブル引き出し部が前記孔部から引き出される部分にシール材を塗布したセンサ付車輪用軸受。
  14. 請求項1ないし請求項13のいずれか1項において、前記固定側部材のフランジの正面形状を、軸受軸心に直交する線分に対して線対称となる形状、または軸受軸心に対して点対称となる形状としたセンサ付車輪用軸受。
  15. 請求項1ないし請求項14のいずれか1項において、前記センサユニットが取付けられる前記固定側部材の外周面における少なくとも前記センサユニットとの接触部分に、耐食性また防食性を有する表面処理を施したセンサ付車輪用軸受。
  16. 請求項15において、前記表面処理が金属メッキ、または塗装、またはコーティング処理であるセンサ付車輪用軸受。
  17. 請求項1ないし請求項16のいずれか1項において、前記保護カバーのアウトボード側端を前記固定側部材よりもアウトボード側に突出させ、そのアウトボード側端と前記回転側部材との間に非接触シール隙間を形成したセンサ付車輪用軸受。
  18. 請求項17において、前記保護カバーのアウトボード側端を前記回転側部材に沿う形状としたセンサ付車輪用軸受。
  19. 請求項1ないし請求項18のいずれか1項に記載のセンサ付車輪用軸受の組立方法であって、前記固定側部材の単体の状態、または固定側部材に前記転動体を組み付けた状態で、前記固定側部材の外周面に前記センサユニットを取付け、前記保護カバーを固定側部材の外周面に圧入した後、軸受を組み立てることを特徴とするセンサ付車輪用軸受の組立方法。
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