次に、本発明を実施するための形態について図面と共に説明する。
(実施の形態)
図1を参照し、実施の形態に係るGM冷凍機について説明する。このGM冷凍機は、本発明に係る蓄冷器式冷凍機をGM冷凍機に適用した例であり、数K〜20K程度の極低温を得るのに適した2段構成を有する。
図1は、本実施の形態に係るGM冷凍機の構成を示す概略断面図である。
GM冷凍機は、圧縮機10、第1段目シリンダ11、第2段目シリンダ12、第1段目ディスプレーサ13、第2段目ディスプレーサ14、クランク機構15、冷媒ガス流路16、蓄冷材17、18、ヒートステーション19、20、膨張空間21、22、中空空間(冷媒ガス流路)23、24を有する。
なお、図1に示す配置において、第1段目シリンダ11、第2段目シリンダ12、第1段目ディスプレーサ13及び第2段目ディスプレーサ14の上端は高温端であり、下端は低温端である(図2から図5、図7及び図8においても同様)。
圧縮機10は、ヘリウムガス(冷媒ガス)を約20Kgf/cm2に圧縮し、高圧ヘリウムガスを生成する。生成された高圧ヘリウムガスは、吸気弁V1、冷媒ガス流路16を介して第1段目シリンダ11内に供給される。また、第1段目シリンダ11から排出された低圧ヘリウムガスは、冷媒ガス流路16、排気弁V2を介して圧縮機10に回収される。
第1段目シリンダ11には、第2段目シリンダ12が結合されている。第1段目シリンダ11、第2段目シリンダ12内には、相互に連結された第1段目ディスプレーサ13、第2段目ディスプレーサ14がそれぞれ収容されている。
第1段目シリンダ11からは、駆動軸Shが上方に延在し、駆動用モータMに結合したクランク機構15と結合している。
第1段目ディスプレーサ13は、第1段目シリンダ11内に、第1段目シリンダ11に沿って往復動可能に設けられている。第1段目ディスプレーサ13は、第1段目シリンダ11の一端に、膨張空間21を形成する。第1段目ディスプレーサ13は、回転体形状を有している。
また、第1段目ディスプレーサ13の内部には、膨張空間21に冷媒ガスを供給及び排出するための中空空間(冷媒ガス流路)23が形成されている。第1段目ディスプレーサ13が図1の最上点付近に達した際に排気バルブを開放させ、膨張空間21に供給した冷媒ガスを膨張させることによって冷熱を発生させる。
中空空間23内には、蓄冷材17が収容されている。蓄冷材17は、膨張空間21から冷媒ガスを排出する際に、排出した冷媒ガスと接触して冷熱を蓄冷する。すなわち、蓄冷材17は、膨張空間21に供給した冷媒ガスを膨張させることによって発生した冷熱を蓄冷する。
第2段目ディスプレーサ14は、第2段目シリンダ12内に、第2段目シリンダ12に沿って往復動可能に設けられている。第2段目ディスプレーサ14は、第2段目シリンダ12の一端に、膨張空間22を形成する。第2段目ディスプレーサ14は、回転体形状を有している。
また、第2段目ディスプレーサ14の内部には、膨張空間22に冷媒ガスを供給及び排出するための中空空間(冷媒ガス流路)24が形成されている。第2段目ディスプレーサ14が図1の最上点付近に達した際に、排気バルブを開放させ、膨張空間22に供給した冷媒ガスを膨張させることによって冷熱を発生させる。
中空空間24内には、蓄冷材18が収容されている。蓄冷材18は、膨張空間22から冷媒ガスを排出する際に、排出した冷媒ガスと接触して冷熱を蓄冷する。すなわち、蓄冷材18は、膨張空間22に供給した冷媒ガスを膨張させることによって発生した冷熱を蓄冷する。
第1段目シリンダ11の下端(低温端)を囲むように、第1段目のヒートステーション19が熱的に結合されており、第2段目シリンダ12の下端(低温端)を囲むように、第2段目のヒートステーション20が熱的に結合している。
第1段目シリンダ11、第2段目シリンダ12は、例えばステンレス綱(例えばSUS304)等によって形成されていることが好ましい。これにより、第1段目シリンダ11、第2段目シリンダ12に、高い強度、低い熱伝導率、及び高いヘリウムガス遮蔽能を持たせることができる。
第1段目ディスプレーサ13、第2段目ディスプレーサ14は、例えば布入りフェノール(ベークライト)等によって形成されていることが好ましい。これにより、第1段目ディスプレーサ13、第2段目ディスプレーサ14について、軽量化するとともに、耐摩耗性及び強度を向上させ、高温側から低温側への侵入熱量を低減することができる。
このとき、第1段目ディスプレーサ13を構成する材料は、第1段目シリンダ11を構成する材料よりも、室温から使用温度まで冷却したときの熱収縮率が大きい。すなわち、室温から使用温度まで冷却したときの第1段目ディスプレーサ13の熱収縮量は、室温から使用温度まで冷却したときの第1段目シリンダ11の熱収縮量よりも大きい。
第1段目の蓄冷材17は、例えば金網等により構成されることが好ましく、第2段目の蓄冷材18は、例えば鉛球又は磁性蓄冷材等により構成されることが好ましい。これにより、低温領域において、十分高い熱容量を確保することができる。
このように構成されているGM冷凍機では、以下のようにして冷熱を発生する。
圧縮機10から吸気弁V1を介して供給された、冷媒ガスである高圧ヘリウムガスは、冷媒ガス流路16を介して第1段目シリンダ11内に供給される。そして、開口(冷媒ガス流路)23a、蓄冷材17が収容された中空空間(冷媒ガス流路)23、開口(冷媒ガス流路)23bを通って、第1段目の膨張空間21に供給される。
第1段目の膨張空間21に供給された高圧ヘリウムガスは、更に開口(冷媒ガス流路)24a、蓄冷材18が収容された中空空間(冷媒ガス流路)24、開口(冷媒ガス流路)24bを通って第2段目の膨張空間22に供給される。
なお、冷媒ガス流路23a、23b、24a、24bは、冷媒ガスの流れを説明するために機能的に記載したものであり、図2以降を用いて説明する実際の構造とは異なる。
吸気弁V1が閉じ、排気弁V2が開く際には、第2段目シリンダ12、第1段目シリンダ11内の高圧ヘリウムガスは、吸気の場合とは逆の経路をたどって冷媒ガス流路16、排気弁V2を介して圧縮機10に回収される。
GM冷凍機の作動時においては、クランク機構15によって駆動用モータMの回転駆動力が駆動軸Shの往復駆動力に変換される。そして、駆動軸Shによって、第1段目ディスプレーサ13、第2段目ディスプレーサ14が、図1中の矢印で示すように、上下に(それぞれ第1段目シリンダ11及び第2段目シリンダ12に沿って)往復駆動される。
駆動軸Shによって第1段目ディスプレーサ13、第2段目ディスプレーサ14が駆動軸Sh側(図1の上方)に駆動される際には、吸気弁V1が開き、排気弁V2が閉じる。そして、第1段目シリンダ11内の膨張空間21、及び第2段目シリンダ12内の膨張空間22に高圧ヘリウムガスが供給される(供給工程)。
また、駆動軸Shによって第1段目ディスプレーサ13、第2段目ディスプレーサ14が駆動軸Shと反対側(図1の下方)に駆動される際には、吸気弁V1が閉じ、排気弁V2が開く。そして、第1段目シリンダ11内の膨張空間21、及び第2段目シリンダ12内の膨張空間22が低圧になるとともに、膨張空間21及び膨張空間22からヘリウムガスは排出され、圧縮機10に回収される(排出工程)。
このとき、膨張空間21、22において、ヘリウムガスが膨張することによって、冷熱が発生する。冷熱を発生し、冷却されたヘリウムガスは、膨張空間21、22から排出される際に、蓄冷材17、18と接触し、熱交換することによって、蓄冷材17、18を冷却する。すなわち、蓄冷材17、18に、発生した冷熱が蓄冷される。
次の供給工程で供給される高圧ヘリウムガスは、蓄冷材17、18を通って供給されることにより冷却される。冷却されたヘリウムガスが膨張空間21、22で膨張することにより、さらに冷却が進む。
以上のようにして、供給工程と排出工程とを繰り返すことにより、第1段目シリンダ11内の膨張空間21が、例えば40K〜70K程度の温度に冷却され、第2段目シリンダ12内の膨張空間22が、例えば数K〜20K程度の温度に冷却される。
次に、図2を参照し、第1段目ディスプレーサ13の詳細な構成について説明する。
図2は、本実施の形態に係るGM冷凍機における第1段目ディスプレーサ13の構成を、第1段目シリンダ11とともに示す概略断面図である。なお、図2では、ヒートステーション19の図示を省略している。
第1段目ディスプレーサ13は、回転体形状部材30を有する。
回転体形状部材30は、回転体形状を有する上蓋を有し、その下端は開放されている。回転体形状部材30の上蓋上面には、回転体形状部材30の高温端の外径と略等しい外径を有するフランジ31が取り付けられている。フランジ31と回転体形状部材30の上蓋には、開口32(図1に示す23a)が設けられている。開口32には、中空空間(冷媒ガス流路)23の高温端が連通している。フランジ31の上面には、回転体形状部材30を図2中矢印の方向に上下駆動するための駆動軸Shが取り付けられている。
回転体形状部材30内には、上面に密着するように図示しない金網が配置されている。金網の下には、銅金網等の蓄冷材17が充填されている。蓄冷材17の下には図示しない他の金網が配置されている。
さらに、回転体形状部材30の下側開放端には、回転体形状部材30の低温端の外径と略等しい外径を有する蓋部材33が挿入され、回転体形状部材30と接着されている。蓋部材33は盲蓋であり、回転体形状部材30の下端の開口を気密に閉じる。また、蓋部材33の下面には、第2段目ディスプレーサ14と連結するための、連結機構50が取り付けられている。
回転体形状部材30の外周面には、蓄冷材17の下側の金網が配置されている高さに、開口34(図1に示す23b)が設けられている。開口34には、中空空間(冷媒ガス流路)23の低温端が連通している。
回転体形状部材30及び蓋部材33は、例えば布入りフェノールで形成されることが好ましい。これにより、回転体形状部材30及び蓋部材33について、軽量化するとともに、耐摩耗性及び強度を向上させ、高温側から低温側への侵入熱量を低減することができる。
回転体形状部材30の外周面と第1段目シリンダ11の内周面との間には、隙間Gが形成される。隙間Gは、後述するように、第1段目シリンダ11における損失、すなわち、第1段目ディスプレーサ13の高温側から低温側へ侵入する熱量が最小となるような所定の間隔であることが好ましい。
第1段目ディスプレーサ13の外周面と第1段目シリンダ11の内周面との間には、高温端側に例えばピストンリング等のシール部材35が設けられていることが好ましい。シール部材35は、第1段目ディスプレーサ13の低温側に形成される膨張空間21の第1段目ディスプレーサ13の高温側に対する気密を確保するためのものである。これにより、第1段目ディスプレーサ13と第1段目シリンダ11との隙間を通って冷媒ガスが膨張空間21から高温側に漏れることを防止することができ、GM冷凍機の冷凍能力を増大させることができる。
なお、シール部材35に代え、回転体形状部材30の外周面には、上端(高温端)から開口34が形成されている高さまで、らせん溝が形成されていてもよい。
本実施の形態では、室温において、第1段目ディスプレーサ13の高温端、すなわち図2の上端における外径をDO1とし、第1段目ディスプレーサ13の低温端、すなわち図2の下端における外径をDO2とする。また、室温において、第1段目シリンダ11の第1段目ディスプレーサ13の高温端と対向する部分における内径をDI1とし、第1段目シリンダ11の第1段目ディスプレーサ13の低温端と対向する部分における内径をDI2とする。また、室温において、第1段目ディスプレーサ13の高温端の外周面と、対向する第1段目シリンダ11の内周面との隙間をG1とし、第1段目ディスプレーサ13の低温端の外周面と、対向する第1段目シリンダ11の内周面との隙間をG2とする。
前述したように、室温から使用温度まで冷却したときの第1段目ディスプレーサ13の熱収縮率が、室温から使用温度まで冷却したときの第1段目シリンダ11の熱収縮率よりも大きいものとする。そして、室温において、第1段目ディスプレーサ13の低温端の外径DO2が高温端の外径DO1よりも大きいものとする。すなわち、DO2>DO1とする。
第1段目シリンダ11の内径DI1を例えば90mmとする。そして、回転体形状部材30の高温端における隙間G1を例えば500μmとした場合、回転体形状部材30の高温端における外径DO1を、例えば89mmとすることができる。また、回転体形状部材30の低温端における隙間G2を例えば200μmとした場合、回転体形状部材30の低温端における外径DO2を例えば89.6mmとすることができる。また、回転体形状部材30の軸方向の長さを例えば150mmとすることができる。
次に、図3を参照し、第2段目ディスプレーサ14の詳細な構成について説明する。
図3は、本実施の形態に係るGM冷凍機における第2段目ディスプレーサ14の構成を、第2段目シリンダ12とともに示す概略断面図である。なお、図3では、ヒートステーション20の図示を省略している。
第2段目ディスプレーサ14は、回転体形状部材40を有する。
回転体形状部材40は、上下端が開放された回転体形状を有する。回転体形状部材40の上端は、第1段目ディスプレーサ13に、連結機構50を介して連結されている。回転体形状部材40の下端には、蓋部材41が挿入接着されている。蓋部材41の上には、金網42が配置され、その上にフェルト栓43が配置されている。
回転体形状部材40及び蓋部材41は、例えば布入りフェノールや金属と樹脂の複合材料等で形成されることが好ましい。これにより、回転体形状部材40及び蓋部材41について、軽量化するとともに、耐摩耗性及び強度を向上させ、高温側から低温側への侵入熱量を低減することができる。
フェルト栓43の上には、前述したように、例えば鉛球や磁性材料で形成された蓄冷材18が充填される。蓄冷材18の上にはフェルト栓44が配置され、フェルト栓44の上にはパンチングメタル45が配置される。
回転体形状部材40の上端(高温端)には、第1段目ディスプレーサ13と連結するための連結機構50が取り付けられている。また、回転体形状部材40の上端(高温端)には、連結機構50の周囲に開口46a(図1に示す24a)が設けられている。そして、開口46aには、中空空間(冷媒ガス流路)24の高温端が連通している。
回転体形状部材40の外周面には、金網42の高さの位置に冷媒ガス流路を形成する開口46bが設けられている。開口46bには、中空空間(冷媒ガス流路)24の低温端が連通している。
第2段目ディスプレーサ14の外周面と第2段目シリンダ12の内周面との間には、高温端に例えばピストンリング等のシール部材47が設けられていることが好ましい。シール部材47は、第2段目ディスプレーサ14の低温側に形成される膨張空間22の第2段目ディスプレーサ14の高温側に対する気密を確保するためのものである。これにより、第2段目ディスプレーサ14と第2段目シリンダ12との隙間を通って冷媒ガスが膨張空間22から高温側に漏れることを防止することができ、GM冷凍機の冷凍能力を増大させることができる。
なお、シール部材47に代え、回転体形状部材40の外周面にらせん溝が形成されていてもよい。
次に、図4から図8を参照し、本実施の形態に係るGM冷凍機が、ディスプレーサ外周面とシリンダ内周面の間の隙間に存在するガスの移動に伴いもたらされる熱的損失と、ディスプレーサがシリンダ内を往復動することによりもたらされる熱的損失の総和を低減し、冷凍能力の低下を抑制できる作用効果について、比較例と対比しながら説明する。
最初に、図4及び図5を参照し、本実施の形態に係るGM冷凍機によれば、冷却時の低温端の隙間を小さくできることを説明する。
図4は、本実施の形態に係るGM冷凍機を室温から使用温度まで冷却するときの、第1段目ディスプレーサ13と第1段目シリンダ11との隙間の変化を示す一部断面を含む図である。図4(a)は室温の状態を示し、図4(b)は冷却時の状態を示す。なお、図4では、図示を容易にするため、第1段目シリンダ11、回転体形状部材30、及びシール部材35以外の部分の図示を省略している。
一方、比較例に係るGM冷凍機は、室温において、第1段目ディスプレーサ13の低温端の外径が高温端の外径と等しい点を除き、実施の形態に係るGM冷凍機と同様である。
図5は、比較例に係るGM冷凍機を室温から使用温度まで冷却するときの、第1段目ディスプレーサ13と第1段目シリンダ11との隙間の変化を示す一部断面を含む図である。図5(a)は室温の状態を示し、図5(b)は冷却時の状態を示す。なお、図5でも、図示を容易にするため、第1段目シリンダ11、回転体形状部材30a、及びシール部材35以外の部分の図示を省略している。
実施の形態及び比較例のいずれにおいても、室温から使用温度まで冷却したときの第1段目ディスプレーサ13の熱収縮率が、室温から使用温度まで冷却したときの第1段目シリンダ11の熱収縮率よりも大きいものとする。従って、図4及び図5では、図示を容易にするために、室温から使用温度まで冷却したときに、第1段目ディスプレーサ13が径方向に収縮するのに対し、第1段目シリンダ11が径方向にほとんど収縮していないように図示している。
室温においては、図4及び図5のいずれにおいても、第1段目ディスプレーサ13の高温端、すなわち図4(a)及び図5(a)の上端における外径をDO1とする。また、実施の形態では、第1段目ディスプレーサ13の低温端、すなわち図4(a)の下端における外径をDO2とし、比較例では、第1段目ディスプレーサ13の低温端、すなわち図5(a)の下端における外径をDO2Aとする。また、実施の形態では、DO2>DO1であり、比較例では、DO2A=DO1である。
また、室温においては、第1段目シリンダ11の第1段目ディスプレーサ13の高温端と対向する部分における内径をDI1とし、第1段目シリンダ11の第1段目ディスプレーサ13の低温端と対向する部分における内径をDI2とする。
また、室温においては、第1段目ディスプレーサ13の高温端の外周面と、対向する第1段目シリンダ11の内周面との隙間をG1とする。また、実施の形態では、第1段目ディスプレーサ13の低温端の外周面と、対向する第1段目シリンダ11の内周面との隙間をG2とし、比較例では、第1段目ディスプレーサ13の低温端の外周面と、対向する第1段目シリンダ11の内周面との隙間をG2Aとする。
冷却時においては、図4及び図5のいずれにおいても、第1段目ディスプレーサ13の高温端、すなわち図4(b)及び図5(b)の上端における外径をDO1´とする。また、実施の形態では、第1段目ディスプレーサ13の低温端、すなわち図4(b)の下端における外径をDO2´とし、比較例では、第1段目ディスプレーサ13の低温端、すなわち図5(b)の下端における外径をDO2A´とする。
また、冷却時においては、第1段目シリンダ11の第1段目ディスプレーサ13の高温端と対向する部分における内径をDI1´とし、第1段目シリンダ11の第1段目ディスプレーサ13の低温端と対向する部分における内径をDI2´とする。
また、冷却時においては、第1段目ディスプレーサ13の高温端の外周面と、対向する第1段目シリンダ11の内周面との隙間をG1´とする。また、実施の形態では、第1段目ディスプレーサ13の低温端の外周面と、対向する第1段目シリンダ11の内周面との隙間をG2´とし、比較例では、第1段目ディスプレーサ13の低温端の外周面と、対向する第1段目シリンダ11の内周面との隙間をG2A´とする。
このとき、実施の形態では、
G1´=(DI1´−DO1´)/2 (1)
G2´=(DI2´−DO2´)/2 (2)
となる。また、比較例では、G1´は、式(1)で表されるものの、G2A´は、
G2A´=(DI2´−DO2A´)/2 (3)
となる。
実施の形態及び比較例のいずれにおいても、第1段目ディスプレーサ及び第1段目シリンダ11は、ともに室温から使用温度に冷却される際に収縮する。ここで、室温から使用温度に冷却されたときの第1段目ディスプレーサの熱収縮率が、室温から使用温度に冷却されたときの第1段目シリンダ11の熱収縮率よりも大きい。そのため、比較例では、
DO1´−DO2A´>DI1´−DI2´ (4)
とし、G1´<<DO1´(DI1´≒DO1´)とする。このとき、式(1)、式(3)及び式(4)により、
G2A´>G1´ (5)
となる。すなわち、比較例に係るGM冷凍機によれば、冷却時の低温端の隙間G2A´は高温端の隙間G1´よりも大きい。
一方、実施の形態では、DO2>DO2Aのため、DO2´>DO2A´である。従って、式(2)及び式(3)により、
G2´<G2A´ (6)
となる。すなわち、G2´をG2A´よりも小さくすることができる。従って、実施の形態に係るGM冷凍機によれば、冷却時の低温端の隙間G2´を小さくすることができる。
更に、実施の形態では、冷却時に低温端の隙間G2A´が高温端の隙間G1´よりも大きくなることを見越した上で、冷却時に低温端の隙間G2´が所定の間隔になるように、室温における第1段目ディスプレーサ13の低温端の外径DO2を決定することができる。例えば、室温から使用温度まで冷却したときに、第1段目ディスプレーサ13の外周面と第1段目シリンダ11の内周面との隙間Gが第1段目シリンダ11に沿って一定になるように、第1段目ディスプレーサ13を、室温において、高温端から低温端に向かって外径が連続的に増加するものとしてもよい。
次に、図6から図8を参照し、実施の形態では、隙間Gを所定の間隔にすることによって、第1段目シリンダ11における熱的な損失、すなわち、第1段目ディスプレーサ13の高温側から低温側へ侵入する熱量を低減できることを説明する。
図6は、第1段目シリンダ11における隙間Gと熱的な損失との関係を説明するためのグラフである。図7は、第1段目シリンダ11におけるシャトル損失を説明するための一部断面を含む図である。図7(a)は、往復動する第1段目ディスプレーサ13が上端位置にある状態を示し、図7(b)は、往復動する第1段目ディスプレーサ13が下端位置にある状態を示す。図8は、第1段目シリンダ11におけるポンピング損失を説明するための断面図である。図8(a)は、冷媒ガスの供給時の状態を示し、図8(b)は、冷媒ガスの排出時の状態を示す。
図6に示すように、熱的な損失は、シャトル損失LSとポンピング損失LPとの和で表すことができる。
第1段目ディスプレーサ13が往復動するときは、図7(a)に示すように、第1段目ディスプレーサ13が上端位置すなわち高温側の位置にあるときに、第1段目ディスプレーサ13は第1段目シリンダ11から熱Hを受け取る。そして、第1段目ディスプレーサ13が下端位置すなわち低温側の位置にあるときに、第1段目ディスプレーサ13が第1段目シリンダ11に熱Hを受け渡す。従って、第1段目シリンダ11では、第1段目ディスプレーサ13の往復動に伴って、高温側から低温側へ熱量が侵入し、熱的な損失が発生する。これを、シャトル損失という。
また、第1段目ディスプレーサ13の外周面と第1段目シリンダ11の内周面との隙間Gが小さいほど、第1段目ディスプレーサ13の外周面と第1段目シリンダ11の内周面との熱交換が容易となるため、シャトル損失LSが大きくなる。従って、図6に示すように、シャトル損失LSは、隙間Gの減少に伴って単調に増加する。
第1段目シリンダ11内に冷媒ガスが供給されるときは、第1段目ディスプレーサ13内の冷媒ガス流路23を通って第1段目ディスプレーサ13の低温側に形成された膨張空間21に流れ込んだ冷媒ガスが、第1段目ディスプレーサ13の外周面と第1段目シリンダ11の内周面との隙間に流れ込む。このとき、第1段目ディスプレーサ13の外周面と第1段目シリンダ11の内周面との隙間に流れ込んだ冷媒ガスが第1段目シリンダ11及び第1段目ディスプレーサ13から熱Hを受け取る。そして、第1段目シリンダ11内から冷媒ガスが排出されるときは、第1段目ディスプレーサ13の外周面と第1段目シリンダ11の内周面との隙間にある冷媒ガスが、第1段目ディスプレーサ13の低温側に形成された膨張空間21及び第1段目ディスプレーサ13内の冷媒ガス流路23を通って排出される。このとき、第1段目ディスプレーサ13の下端を回り込んで流れる冷媒ガスが、第1段目ディスプレーサ13の下端側に熱Hを受け渡す。従って、第1段目シリンダ11では、冷媒ガスの供給と排出の繰り返しに伴って、高温側から低温側へ熱量が侵入し、熱的な損失が発生する。これを、ポンピング損失という。
また、第1段目ディスプレーサ13の外周面と第1段目シリンダ11の内周面との隙間Gが大きいほど、第1段目ディスプレーサ13の外周面と第1段目シリンダ11の内周面との隙間に流れ込む冷媒ガスの量が増加するため、ポンピング損失LPが大きくなる。従って、図6に示すように、ポンピング損失LPは、隙間Gの増加に伴って単調に増加する。
このように、シャトル損失LSは、隙間Gの減少に伴って単調に増加し、ポンピング損失LPは、隙間Gの増加に伴って単調に増加する。従って、シャトル損失LSとポンピング損失LPの和は、隙間Gが図6のGminで示される所定の長さであるときに、最小となる。すなわち、隙間Gを所定の長さGminにすることによって、第1段目シリンダ11における熱的な損失を最小限に低減することができる。
以上、本実施の形態によれば、室温において、第1段目ディスプレーサ13の低温端の径を高温端の径よりも大きくする。これにより、冷却時の低温端の隙間を小さくすることができ、ディスプレーサ外周面とシリンダ内周面の間の隙間に存在するガスの移動に伴いもたらされる熱的損失と、ディスプレーサがシリンダ内を往復動することによりもたらされる熱的損失の総和を低減し、冷凍能力の低下を抑制できる。
また、本実施の形態では、冷却したときに、第1段目ディスプレーサ13の外周面と第1段目シリンダ11の内周面との隙間Gが第1段目シリンダ11に沿って一定になるように、高温端から低温端に向かって外径が連続的に増加する形状としてもよい。これにより、第1段目ディスプレーサ13の外周面と第1段目シリンダ11の内周面との隙間Gに流れ込む冷媒ガスの量を低減できる。
更に、本実施の形態では、第1段目ディスプレーサ13の外周面と第1段目シリンダ11の内周面との隙間Gをシャトル損失LSとポンピング損失LPの和が最小となるような所定の間隔にしてもよい。これにより、ディスプレーサ外周面とシリンダ内周面の間の隙間に存在するガスの移動に伴いもたらされる熱的損失と、ディスプレーサがシリンダ内を往復動することによりもたらされる熱的損失の総和を低減し、冷凍能力の低下を更に抑制できる。
なお、第1段目ディスプレーサ13に代え、第2段目ディスプレーサ14の低温端の径を高温端の径よりも大きくしてもよい。このときは、第2段目シリンダ12において、同様の効果が得られる。
(実施の形態の変形例)
次に、図9及び図10を参照し、実施の形態の変形例に係るGM冷凍機について説明する。本変形例に係るGM冷凍機では、第1段目ディスプレーサ13bの高温端から低温端に向かって外径が段階的に増加する複数の段部を有する。
本変形例に係るGM冷凍機も、第1段目ディスプレーサ13bの回転体形状部材30b以外の部分は、実施の形態に係るGM冷凍機と同様である。従って、本変形例では、回転体形状部材30b以外の部分についての説明を省略する。
図9は、本変形例に係るGM冷凍機における第1段目ディスプレーサ13bの構成を、第1段目シリンダ11とともに示す概略断面図である。
なお、図9に示す配置において、第1段目シリンダ11及び第1段目ディスプレーサ13bの上端は高温端であり、下端は低温端である(図10においても同様)。
本変形例では、回転体形状部材30b、すなわち、第1段目ディスプレーサ13bは、高温端から低温端に向かって外径が段階的に増加する複数の段部を有する。図9に示すように、例えば外径が3段階で増加するように構成できる。すなわち、第1段目ディスプレーサ13bは、3段よりなる段部30b−1〜30b−3を有していてもよい。また、段部は、第1段目ディスプレーサ13bの高温端側から低温端側へ向かって、順に1段目30b−1、2段目30b−2、3段目30b−3と呼ぶ。
本変形例でも、回転体形状部材30bは、例えば布入りフェノールで形成されることが好ましい。これにより、回転体形状部材30bについて、軽量化するとともに、耐摩耗性及び強度を向上させ、高温側から低温側への侵入熱量を低減することができる。
また、外径が段階的に増加する回転体形状部材30bは、例えば円筒形状の部材を、段階的に旋盤加工等を施すことによって、容易に加工することができる。そのため、製造コストを低減することができる。
図9及び後述する図10に示すように、本変形例では、室温において、第1段目ディスプレーサ13b(回転体形状部材30b)の1段目30b−1、2段目30b−2、3段目30b−3における外径を、それぞれDO11、DO12、DO13とする。また、室温において、第1段目シリンダ11の第1段目ディスプレーサ13bの1段目30b−1、2段目30b−2、3段目30b−3と対向する部分における内径を、それぞれDI11、DI12、DI13とする。また、室温において、第1段目ディスプレーサ13bの1段目30b−1、2段目30b−2、3段目30b−3の外周面と、対向する第1段目シリンダ11の内周面との隙間を、それぞれG11、G12、G13とする。
本変形例でも、室温から使用温度まで冷却したときの第1段目ディスプレーサ13bの熱収縮率が、室温から使用温度まで冷却したときの第1段目シリンダ11の熱収縮率よりも大きいものとする。そして、室温において、回転体形状部材30bの3段目30b−3の外径DO13が2段目の外径DO12よりも大きく、2段目の外径DO12が1段目の外径DO11よりも大きいものとする。すなわち、DO11<DO12<DO13とする。
図10は、本変形例に係るGM冷凍機を室温から使用温度まで冷却するときの、第1段目ディスプレーサ13bと第1段目シリンダ11との隙間の変化を示す一部断面を含む図である。図10(a)は室温の状態を示し、図10(b)は冷却時の状態を示す。なお、図10では、図示を容易にするため、第1段目シリンダ11、回転体形状部材30b、及びシール部材35以外の部分の図示を省略している。
前述したように、第1段目ディスプレーサ13bの熱収縮率は、第1段目シリンダ11の熱収縮率よりも大きい。従って、図10では、図示を容易にするために、室温から使用温度まで冷却したときに、第1段目ディスプレーサ13bが径方向に収縮するのに対し、第1段目シリンダ11が径方向にほとんど収縮していないように図示している。
冷却時においては、図10(b)に示すように、第1段目ディスプレーサ13bの1段目30b−1、2段目30b−2、3段目30b−3における、第1段目シリンダ11に沿った平均外径を、それぞれDO11´、DO12´、DO13´とする。また、冷却時において、第1段目ディスプレーサ13bの1段目30b−1、2段目30b−2、3段目30b−3と対向する部分における、第1段目シリンダ11の平均内径を、それぞれDI11´、DI12´、DI13´とする。また、冷却時において、1段目30b−1、2段目30b−2、3段目30b−3における、第1段目ディスプレーサ13bの外周面と第1段目シリンダ11の内周面との間の第1段目シリンダ11に沿った平均隙間を、それぞれG11´、G12´、G13´とする。
このとき、
G11´=(DI11´−DO11´)/2 (7)
G12´=(DI12´−DO12´)/2 (8)
G13´=(DI13´−DO13´)/2 (9)
となる。
ここで、DO11=DO12=DO13であるときは、G11´<G12´<G13´である。ところが、本変形例では、DO11<DO12<DO13であるため、G11´とG12´との差、G12´とG13´との差を小さくすることができる。これにより、低温端側の隙間を小さくすることができる。これにより、冷却時の低温端の隙間を小さくすることができ、ディスプレーサ外周面とシリンダ内周面の間の隙間に存在するガスの移動に伴いもたらされる熱的損失と、ディスプレーサがシリンダ内を往復動することによりもたらされる熱的損失の総和を低減し、冷凍能力の低下を抑制できる。
また、本変形例では、室温から使用温度まで冷却したときに、それぞれの段部の外周面と第1段目シリンダ11の内周面との間の、第1段目シリンダ11に沿った平均隙間が、互いに等しくなるような形状としてもよい。これにより、第1段目ディスプレーサ13bの外周面と第1段目シリンダ11の内周面との隙間に流れ込む冷媒ガスの量を低減できる。
更に、本変形例では、第1段目ディスプレーサ13bの外周面と第1段目シリンダ11の内周面との隙間をシャトル損失LSとポンピング損失LPの和が最小となるような所定の間隔にしてもよい。これにより、ディスプレーサ外周面とシリンダ内周面の間の隙間に存在するガスの移動に伴いもたらされる熱的損失と、ディスプレーサがシリンダ内を往復動することによりもたらされる熱的損失の総和を低減し、冷凍能力の低下を更に抑制できる。
なお、第1段目ディスプレーサ13bに代え、第2段目ディスプレーサ14を、高温端から低温端に向かって外径が段階的に増加する複数の段部を有するようにしてもよい。このときは、第2段目シリンダ12において、同様の効果が得られる。
以上、本発明の好ましい実施の形態について記述したが、本発明はかかる特定の実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。