ところで、上記の特性選別装置では、良否判定部がインピーダンス測定部による1回の測定によって得られた測定値に基づいてコンデンサの良否判定を行う構成が採用されている。このため、この特性選別装置には、ノイズなどの影響を受けてインピーダンス測定部が正しい測定値を測定できないときには、良否判定部がコンデンサの良否判定を正しく行えず、不良品を良品として判定するという問題が存在する。この問題を解決するために、コンデンサの良否判定を実行する構成を2系統(インピーダンス測定部および良否判定部を2系統)用意して、コンデンサの良否をダブルでチェック(二重チェック)することも考えられる。
しかしながら、インピーダンス測定部および良否判定部を2系統設ける構成には、次のような解決すべき課題が存在する。すなわち、測定値に基づいてコンデンサの良否を判定する場合には、通常、測定値と比較するためのしきい値を予め良否判定部に対して設定することになるが、上記の二重チェックを行う構成においては、各良否判定部に対するしきい値の設定作業を個別に手作業で実施する必要があるため、各良否判定部のうちの少なくとも一方に対して誤ったしきい値を設定する虞があり、この場合には、二重チェックが行えないという新たな解決すべき課題が発生する。
本発明は、かかる課題を解決すべくなされたものであり、検査対象体に対して確実に二重チェック以上のチェックを実行可能な良否判別装置を構成し得る検査装置、およびこの検査装置を複数備えた良否判別装置を提供することを主目的とする。
上記目的を達成すべく請求項1記載の検査装置は、検査対象体に対して予め決められた物理量を測定する測定処理、および当該測定した物理量を予め設定された判別用基準値と比較して当該検査対象体の良否を検査する検査処理を実行する検査装置であって、当該検査装置に設定されている前記判別用基準値と他の同種の検査装置に設定されている前記判別用基準値とを比較して当該両判別用基準値が一致していないときに、当該両判別用基準値が一致していないとの表示、および少なくとも当該両検査装置のいずれかにおいて当該判別用基準値の設定に誤りがあるとの表示のいずれかを比較の結果として表示部に表示させる比較処理を実行する。
また、請求項2記載の検査装置は、請求項1記載の検査装置において、前記判別用基準値が設定されたときに前記他の同種の検査装置に当該設定後の判別用基準値を送信し、当該他の同種の検査装置から前記判別用基準値を受信したときに前記比較処理を実行する。
また、請求項3記載の検査装置は、請求項1記載の検査装置において、前記判別用基準値が設定されたときに前記他の同種の検査装置に当該設定後の判別用基準値を送信すると共に、当該他の同種の検査装置から前記判別用基準値を受信したときに当該受信した判別用基準値を記憶し、外部装置から比較開始信号を入力したときに前記比較処理を実行する。
また、請求項4記載の検査装置は、請求項1記載の検査装置において、外部装置から比較開始信号を入力したときに、当該各検査装置の前記判別用基準値を前記他の同種の検査装置に送信すると共に、当該他の同種の検査装置から前記判別用基準値を受信して、前記比較処理を実行する。
上記目的を達成すべく請求項5記載の良否判別装置は、同一の検査対象体に対して同一の物理量を測定する測定処理、および当該測定した物理量を予め設定された共通の判別用基準値と比較して当該検査対象体の良否を検査する検査処理をそれぞれ実行する複数の検査装置と、当該複数の検査装置による前記検査処理での検査結果に基づいて前記検査対象体の最終的な良否を決定する良否決定処理を実行する処理装置とを備えた良否判別装置であって、前記複数の検査装置は、当該各検査装置に設定されている前記判別用基準値と他の前記検査装置に設定されている前記判別用基準値とを比較して当該両判別用基準値が一致していないときに、当該両判別用基準値が一致していないとの表示、および少なくとも当該両検査装置のいずれかにおいて当該判別用基準値の設定に誤りがあるとの表示のいずれかを比較の結果として表示部に表示させる比較処理をそれぞれ実行する。
また、請求項6記載の良否判別装置は、請求項5記載の良否判別装置において、前記各検査装置は、当該各検査装置の前記判別用基準値が設定されたときに前記他の検査装置に当該設定後の判別用基準値を送信し、当該他の検査装置から前記判別用基準値を受信したときに前記比較処理を実行する。
また、請求項7記載の良否判別装置は、請求項5記載の良否判別装置において、前記各検査装置は、当該各検査装置の前記判別用基準値が設定されたときに前記他の検査装置に当該設定後の判別用基準値を送信すると共に、当該他の検査装置から前記判別用基準値を受信したときに当該受信した判別用基準値を記憶し、前記処理装置から比較開始信号を入力したときに前記比較処理を実行する。
また、請求項8記載の良否判別装置は、請求項5記載の良否判別装置において、前記各検査装置は、前記処理装置から比較開始信号を入力したときに、当該各検査装置の前記判別用基準値を前記他の検査装置に送信すると共に、当該他の検査装置から前記判別用基準値を受信して、前記比較処理を実行する。
請求項1記載の検査装置および請求項5記載の良否判別装置では、検査装置が、その検査装置自身に設定されている前記判別用基準値と他の同種の検査装置に設定されている判別用基準値とを比較して、その比較の結果を出力する比較処理を実行する。したがって、この検査装置およびこの良否判定装置によれば、複数個を使用して、検査対象体に対するマルチチェック(検査装置が2台の場合には二重チェック)を実行する際に、オペレータは、各検査装置が出力する比較処理の結果に基づいて、各検査装置に対して正しく判別用基準値を設定したか否かを認識することができ、各判別用基準値が相違しているときには各検査装置に対して判別用基準値を再設定することにより、各検査装置に対して同一の判別用基準値を確実に設定することができる。言い換えれば、各検査装置に異なる判別用基準値が設定される事態を確実に回避することができる。これにより、各検査装置による検査対象体に対するマルチチェック(検査装置が2台の場合には二重チェック)を確実に実行することができる。
また、請求項2記載の検査装置および請求項6記載の良否判別装置では、各検査装置が、各検査装置の判別用基準値が設定されたときに、他の検査装置に設定後の判別用基準値を送信し、他の検査装置から判別用基準値を受信したときに比較処理を実行する。したがって、この検査装置およびこの良否判別装置によれば、各検査装置のいずれか一方から、各検査装置の判別用基準値が一致しているか否かの最新の比較処理の結果が常に出力される。このため、オペレータは、この比較結果に基づいて、各検査装置の判別用基準値が相違しているときには、各検査装置に対して判別用基準値を確実に再設定することができ、この結果、各検査装置に対して同一の判別用基準値を確実に設定することができる。
また、請求項3記載の検査装置および請求項7記載の良否判別装置では、各検査装置の判別用基準値が設定されたときに他の検査装置に設定後の判別用基準値を送信すると共に、他の検査装置から判別用基準値を受信したときにこの受信した判別用基準値を記憶し、外部装置(処理装置)から比較開始信号を入力したときに比較処理を実行する。したがって、この検査装置およびこの良否判別装置によれば、各検査装置に対する判別用基準値の設定を待つことなく、比較開始信号を各検査装置に対して入力することで、各検査装置に現時点で設定されている判別用基準値が一致しているか否かを確認することができる。このため、一旦設定された各検査装置の判別用基準値のうちの一方が、オペレータの設定操作以外の何らかの要因(ノイズなどの影響)によって変更された場合においても、これを表示部に表示させることができ、オペレータに対して判別用基準値の再設定の必要性を認識させることができる。
また、請求項4記載の検査装置および請求項8記載の良否判別装置では、各検査装置は、外部装置(処理装置)から比較開始信号を入力したときに、各検査装置の判別用基準値を他の検査装置に送信すると共に、他の検査装置から判別用基準値を受信して、比較処理を実行する。したがって、この良否判別装置によれば、各検査装置間での判別用基準値の授受(送信・受信)の頻度を、外部装置(処理装置)において制御することができるため、各検査装置における判別用基準値の授受に要する負荷を最適な状態に設定することができる。
以下、良否判別装置1の実施の形態について、添付図面を参照して説明する。
最初に、良否判別装置1の構成について、図面を参照して説明する。なお、本例では一例として、検査対象体としてコンデンサを例に挙げて説明する。
良否判別装置1は、一例として、図1に示すように、コンデンサ(検査対象体)2を搬送する搬送装置3、複数(一例として2つ)の検査装置4,5、処理装置6、選別装置7、不良品回収箱8および良品回収箱9を備えている。搬送装置3は、一例としてベルトコンベアを含んで構成されて、処理装置6によって制御されることで、投入されたコンデンサ2を間欠的に搬送する。具体的には、搬送装置3は、処理装置6から制御信号S1を入力する都度、コンデンサ2を予め決められた距離ずつ搬送することで、第1測定ステージST1、第2測定ステージST2および選別ステージST3を経由して良品回収箱9までコンデンサ2を搬送する。
検査装置4,5は、コンデンサ2に対して予め決められた(同一)の物理量(本例では電気的パラメータ(一例として静電容量値C))をそれぞれ測定する測定処理と、測定した物理量とそれぞれに予め設定された(同一、言い換えれば共通)の判別用基準値Cr(本例では上限容量値Cmaxおよび下限容量値Cmin)とを比較して、コンデンサ2の良否(測定された静電容量値Cが上限容量値Cmaxから下限容量値Cminまでの範囲内にあるときには良品であり、この範囲外のときには不良品)を検査する検査処理とをそれぞれ実行する。検査装置4,5は、異なる構成であってもよいが、本例では一例として図2に示すように、同一の構成要素を備えて同一に構成されている。したがって、検査装置4を例に挙げて、その構成について説明する。
検査装置4は、図2に示すように、測定部11、操作部12、通信部13、制御部14、記憶部15および表示部16を備えている。測定部11は、搬送装置3によって第1測定ステージST1に搬送されたコンデンサ2に対して一対のプローブP1,P2を介して電気的に接続される。また、測定部11は、一対のプローブP1,P2を介して第1測定ステージST1のコンデンサ2に測定用の電圧信号(交流信号)を印加すると共に、このときにコンデンサ2に流れる電流信号を一対のプローブP1,P2を介して測定することにより、印加した電圧信号と測定した電流信号とに基づいてコンデンサ2の静電容量値Cを算出して制御部14に出力する。操作部12は、テンキーおよびエンターキーなどの各種キーを備えて構成されて、各種キーがオペレータによって操作されて設定された判別用基準値Cr(上限容量値Cmaxおよび下限容量値Cminで構成される)を制御部14に出力する機能を備えている。この操作部12から入力された判別用基準値Crは、自らが使用する基準値であり、以下では「判別用基準値Cra」ともいう。また、後述するように通信部13を介して他の検査装置から入力した判別用基準値Crについては、以下では「判別用基準値Crb」ともいう。
通信部13は、処理装置6と接続されて、処理装置6から開始信号S2を入力(受信)して制御部14に出力すると共に、制御部14から入力した検査結果Ddを処理装置6に出力(送信)する。また、通信部13は、他の検査装置(この例では検査装置5)の通信部13にも接続されて、他の検査装置にオペレータによって設定された判別用基準値Cr(判別用基準値Crb)を入力(受信)して制御部14に出力すると共に、制御部14から入力した自らの判別用基準値Cr(判別用基準値Cra)を他の検査装置(検査装置5)に出力(送信)する。
制御部14は、CPUなどで構成されて、操作部12から判別用基準値Craを入力したときには、基準値送信処理を実行する。この基準値送信処理では、制御部14は、入力した判別用基準値Craを記憶部15に記憶させる(既に判別用基準値Craが記憶されているときには変更(更新)する)と共に、通信部13に出力して他の検査装置4に出力(送信)させる。また、制御部14は、通信部13から他の検査装置の判別用基準値Crbを入力したときには、比較処理を実行する。この比較処理では、制御部14は、入力した判別用基準値Crbと記憶部15に記憶されている判別用基準値Craとを比較して、比較の結果を表示部16に表示させる。一例として、制御部14は、両判別用基準値Cra,Crbが一致しているときには判別用基準値が正常に設定されている旨を、また両判別用基準値Cra,Crbが相違しているときには少なくともいずれかの良否判別装置1における判別用基準値の設定に誤りがある旨を表示部16に表示させる。また、制御部14は、通信部13から開始信号S2を入力したときには、検査処理を実行する。この検査処理では、制御部14は、測定部11に対してコンデンサ2の静電容量値Cを測定させて、この静電容量値Cを取得すると共に、この静電容量値Cを記憶部15に記憶されている(設定されている)判別用基準値Cr(判別用基準値Cra)と比較してコンデンサ2の良否を検査し、その検査の結果(検査結果Dd)を通信部13に出力して処理装置6に出力(送信)させる。記憶部15は、RAMなどを備えて構成されて、判別用基準値Craを記憶する。表示部16は、一例としてLCD(液晶ディスプレイ)を備えて構成されて、制御部14から入力した比較処理の結果を表示する。
検査装置5は、図2に示すように、測定部11、操作部12、通信部13、制御部14、記憶部15および表示部16を備えて、検査装置4と同一に構成されている。なお、検査装置5の測定部11が、搬送装置3によって第2測定ステージST2(一例として第1測定ステージST1の下流側)に搬送されたコンデンサ2に対して一対のプローブP1,P2を介して電気的に接続されて、第2測定ステージST2においてコンデンサ2の静電容量値Cを算出する点において、検査装置5は検査装置4と相違する。
処理装置6は、コンピュータを備えて構成されて、搬送装置3、各検査装置4,5および選別装置7に対する制御を実行する。具体的には、処理装置6は、搬送装置3に対して制御信号S1を周期的に出力することにより、搬送装置3によってコンデンサ2を間欠的に搬送させる。また、処理装置6は、各検査装置4,5に対して開始信号(スタート信号)S2を出力することにより、検査処理を実行させる。また、処理装置6は、各検査装置4,5からそれぞれの検査結果Ddを入力する都度、この検査結果Ddを内部記憶部(図示せず)に記憶する。また、処理装置6は、制御信号S1を出力する都度、選別ステージST3に位置しているコンデンサ2を特定すると共に、この特定したコンデンサ2についての各検査装置4,5による検査結果Ddを内部記憶部から読み出して、良否決定処理を実行する。この良否決定処理では、処理装置6は、検査装置4,5による各検査結果Ddが共に良品である旨の結果であるときには、コンデンサ2は最終的に良品であると決定し、各検査結果Ddの少なくとも一方が不良品である旨の結果であるときには、コンデンサ2は最終的に不良品であると決定する。また、処理装置6は、コンデンサ2が不良品であると決定したときには、選別装置7に制御信号S3を出力して制御することにより、コンデンサ2を不良品回収箱8内に搬出させる。したがって、処理装置6により、良品であると決定されたコンデンサ2については、搬送装置3によって選別ステージST3を経由して良品回収箱9まで搬送されて、良品回収箱9内に搬出される。
選別装置7は、処理装置6から制御信号S3を入力したときには、選別ステージST3に位置しているコンデンサ2を搬送装置3のコンベア上から不良品回収箱8内に搬出する。この場合、選別ステージST3は、コンデンサ2の搬送経路における第2測定ステージST2よりも下流側で、かつ良品回収箱9の手前側の任意の位置に配設されている。
次に、良否判別装置1の動作について説明する。
まず、コンデンサ2の良否を判別する前処理として、オペレータは、各検査装置4,5に対して判別用基準値Crをそれぞれ設定する。具体的には、オペレータは、各検査装置4,5の操作部12を操作することにより、判別用基準値Cra(上限容量値Cmaxおよび下限容量値Cmin)を制御部14に入力する。この場合、検査装置4,5の各制御部14は、基準値送信処理を実行して、入力した判別用基準値Craを記憶部15に記憶させると共に、通信部13に出力して他の検査装置4に出力(送信)させる。これにより、各検査装置4,5は、互いに、他の検査装置から、この他の検査装置に設定された判別用基準値Crbをそれぞれ入力する。
一例として、オペレータが検査装置4,5の順に判別用基準値Crを設定したときには、最初に検査装置4が基準値送信処理を実行して、検査装置4側の判別用基準値Cra(以下では、検査装置4に設定された判別用基準値Crを「判別用基準値Cr4」ともいう)を検査装置5に出力する。このため、検査装置5がこの判別用基準値Craを判別用基準値Crbとして入力して、最初に比較処理を実行する。この比較処理においては、検査装置5に対して未だ正しい判別用基準値Cra(以下では、検査装置5に設定された判別用基準値Crを「判別用基準値Cr5」ともいう)が設定されておらず、判別用基準値Craが記憶されるべき記憶領域には初期値(または以前に設定された判別用基準値Cra)が記憶されているため、検査装置5の制御部14は、自らの判別用基準値Cra(判別用基準値Cr5)と判別用基準値Crb(判別用基準値Cr4)とが一致していない旨の比較結果を表示部16に表示させる。
次いで、オペレータが検査装置5に判別用基準値Crを設定したときには、検査装置5が基準値送信処理を実行して、検査装置5側の判別用基準値Cra(判別用基準値Cr5)を検査装置4に出力する。このため、検査装置4がこの判別用基準値Craを判別用基準値Crbとして入力して、比較処理を実行する。この比較処理においては、検査装置4に対して既に正しい判別用基準値Cra(判別用基準値Cr4)が設定されているため、検査装置4の制御部14は、自らの判別用基準値Cra(判別用基準値Cr4)と検査装置5側の判別用基準値Crb(判別用基準値Cr5)とを比較して、両判別用基準値Crが一致する旨の比較結果を表示部16に表示させる。したがって、オペレータは、両検査装置4,5に対して同じ判別用基準値Crの設定を完了した時点で、最初に判別用基準値Crを設定した検査装置4側の表示部16に表示されている比較処理の結果を確認することで、両判別用基準値Crが一致する旨の比較結果が表示されているときには、各検査装置4,5に対して正しく判別用基準値Crを設定したことを認識することができる。一方、検査装置4側の表示部16に、両判別用基準値Crが一致していない旨の比較結果が表示されているときには、オペレータは、各検査装置4,5のいずれかに対して、誤った判別用基準値Crを設定したことを認識することができ、各検査装置4,5に対して判別用基準値Crを再設定することにより、各検査装置4,5に対して同一の判別用基準値Crを確実に設定することが可能となる。
このようにして、各検査装置4,5に同一の判別用基準値Crが設定された状態において、良否判別装置1はコンデンサ2の検査を実行する。具体的には、良否判別装置1では、処理装置6が、搬送装置3に対する制御信号S1の周期的な出力を開始する。これにより、搬送装置3が、投入されたコンデンサ2の搬送を開始させる。また、処理装置6は、搬送装置3によってコンデンサ2が予め決められた距離だけ搬送された後、処理装置6が次の制御信号S1を出力するまでの規定時間内(コンデンサ2の搬送が停止されている時間内)において、各検査装置4,5に開始信号S2を出力することにより、各検査装置4,5に対して検査処理を実行させる。これにより、検査装置4は、第1測定ステージST1に位置しているコンデンサ2の静電容量値Cを測定し、かつこの静電容量値Cと記憶部15に記憶されている判別用基準値Cra(判別用基準値Cr4)と比較してコンデンサ2の良否を検査して、その検査の結果(検査結果Dd)を処理装置6に出力(送信)する。また、検査装置5は、第2測定ステージST2に位置しているコンデンサ2の静電容量値Cを測定し、かつこの静電容量値Cと記憶部15に記憶されている判別用基準値Cra(判別用基準値Cr5)と比較してコンデンサ2の良否を検査して、その検査の結果(検査結果Dd)を処理装置6に出力(送信)する。また、処理装置6は、このようにして検査処理を実行させた各検査装置4,5から出力される各検査結果Ddを入力して、内部記憶部(図示せず)に記憶する。
また、処理装置6は、制御信号S1を出力する都度(開始信号S2を出力する都度でもある)、選別ステージST3に位置しているコンデンサ2を特定すると共に、このコンデンサ2についての各検査装置4,5による検査結果Ddを内部記憶部から読み出して、良否決定処理を実行する。処理装置6は、この良否決定処理により、検査装置4,5による各検査結果Ddが共に良品であり、このコンデンサ2を最終的に良品であると決定したときには、選別装置7に対する制御信号S3の出力を実行しない。一方、処理装置6は、検査装置4,5による各検査結果Ddの少なくとも一方が不良品であり、このコンデンサ2を最終的に不良品であると決定したときには、選別装置7に対する制御信号S3の出力を実行する。これにより、選別ステージST3に位置しているコンデンサ2が不良品である場合にのみ、コンデンサ2が不良品回収箱8に搬出される。したがって、選別ステージST3に位置している良品のコンデンサ2は、引き続き搬送装置3によって搬送されて、良品回収箱9内に搬出される。このようにして、良否判別装置1は、搬送装置3に投入されたコンデンサ2についての良否を決定して、不良品回収箱8と良品回収箱9とに分別して収容する。
このように、この良否判別装置1では、同一のコンデンサ2に対して同一の物理量(本例では静電容量値C)を測定すると共に予め設定された共通の判別用基準値Craと比較してコンデンサ2の良否を検査する2つの検査装置4,5が、自ら(その各検査装置4,5)に設定されている判別用基準値Craと他の検査装置に設定されている判別用基準値Crbとを比較して、その比較の結果を出力する(本例では表示部16に表示させる)比較処理をそれぞれ実行する。したがって、この検査装置4,5、およびこの良否判別装置1によれば、オペレータは、各検査装置4,5の表示部16に表示される比較処理の結果に基づいて、各検査装置4,5に対して正しく判別用基準値Crを設定したか否かを認識することができ、両判別用基準値Cra,Crbが相違しているときには各検査装置4,5に対して判別用基準値Crを再設定することにより、各検査装置4,5に対して同一の判別用基準値Crを確実に設定することができる。言い換えれば、各検査装置4,5に異なる判別用基準値Crが設定される事態を確実に回避することができる。これにより、この良否判別装置1によれば、各検査装置4,5によるコンデンサ2に対する二重チェック(ダブルチェック)を確実に実行することができる。
また、この良否判別装置1では、各検査装置4,5が、自らの判別用基準値Craが設定されたとき(既に設定されているときには変更(更新)されたとき)に、他の検査装置に設定後の判別用基準値Craを送信し、他の検査装置から判別用基準値Crbを受信したときに上記の比較処理を実行する。このため、各検査装置4,5のうちの一方の検査装置に判別用基準値Craが設定されたときには、他方の検査装置が、この判別用基準値Craを判別用基準値Crbとして受信して、既に設定されている自らの判別用基準値Craとの比較処理を実行して、その比較処理の結果をその表示部16に表示させる。したがって、この検査装置4,5、およびこの良否判別装置1によれば、各検査装置4,5のいずれか一方の表示部16に、各検査装置4,5の判別用基準値Craが一致しているか否かの最新の比較処理の結果が常に表示される。このため、オペレータは、各検査装置4,5に対して判別用基準値Crを確実に再設定することができ、この結果、各検査装置4,5に対して同一の判別用基準値Crを確実に設定することができる。
なお、上記の良否判別装置1では、各検査装置4,5が、他の検査装置から判別用基準値Crbを受信したときに比較処理を実行する構成を採用しているが、自らの判別用基準値Craが設定されたときに、他の検査装置に設定後の判別用基準値Craを送信すると共に、他の検査装置からの新たな判別用基準値Crbの受信を待たずに、既に受信している判別用基準値Crbとの比較処理を実行する構成を採用することもできる。この構成によれば、他の検査装置から判別用基準値Crbを受信した検査装置だけでなく、自らの判別用基準値Craが設定された検査装置の表示部16にも比較処理の結果が表示されるため、各検査装置4,5に対してより確実に同一の判別用基準値Crを設定することができ、コンデンサ2に対する二重チェック(ダブルチェック)をより確実に実行することができる。
また、上記の例では、検査装置4,5に対して判別用基準値Craが設定されるタイミングで、判別用基準値Cra,Crbの比較処理を実行しているが、他のタイミングで各検査装置4,5が比較処理を実行する構成を採用することもできる。一例として、各検査装置4,5は、自らの判別用基準値Craが設定されたときに他の検査装置に設定後の判別用基準値Craを送信すると共に、他の検査装置から判別用基準値Crbを受信したときにこの受信した判別用基準値Crbを記憶しておき、処理装置6から開始信号S2を入力したときに検査処理と共に、比較処理を実行する構成(開始信号S2を比較処理を実行するための比較開始信号として使用する構成)を採用することもできる。この構成によれば、各検査装置4,5に対する判別用基準値Crの設定を待つことなく、各検査装置4,5における開始信号S2の入力の度に比較処理が実行されるため、この比較処理の実行頻度が高められる。この結果、オペレータの設定操作以外の何らかの要因により、各検査装置4,5に設定されている判別用基準値Crが変更されて、互いの判別用基準値Crが相違した場合にも、相違している旨を検査装置4,5の少なくとも一方の表示部16に表示させることができる。したがって、オペレータによる誤操作以外の要因によって検査装置4,5の各判別用基準値Crが相違している場合であっても、これをオペレータが認識して判別用基準値Crの再設定を実行することができる結果、コンデンサ2に対する二重チェック(ダブルチェック)の実行の確実性を向上させることができる。なお、開始信号S2を比較開始信号(比較処理を開始させるための信号)として利用する構成について説明したが、開始信号S2とは異なるタイミング(独立したタイミング)で、処理装置6から各検査装置4,5に対して比較処理を開始させる専用の比較開始信号を出力させる構成を採用してもよいのは勿論である。この構成によれば、オペレータの設定操作以外の何らかの要因によって判別用基準値Crが不一致の状態になっていることを検出可能としつつ、開始信号S2の頻度よりも少ない頻度で比較処理を実行させることで、各検査装置4,5での比較処理の実行に伴う負荷を低減させることができる。
また、上記の例では、検査装置4,5が自らの判別用基準値Craの設定時に他の検査装置に対して直ちにこの判別用基準値Craを出力する構成を採用しているが、各検査装置4,5が、処理装置6から比較開始信号(開始信号S2をこの比較開始信号として使用することもできる)を入力したときに、自らの判別用基準値Craを他の検査装置に送信すると共に、他の検査装置から判別用基準値Crbを受信して比較処理を実行する構成を採用することもできる。この構成によれば、検査装置4と検査装置5との間での判別用基準値Crの授受(送信・受信)の頻度を、処理装置6において制御することができるため、検査装置4,5における判別用基準値Crの授受に要する負荷を最適な状態に設定することができる。
なお、検査対象体の一例として、コンデンサ2を例に挙げて説明したが、抵抗、インダクタ、半導体素子など種々の電子部品や、電子部品が実装された電子機器の良否判別に良否判別装置1を適用できるのは勿論である。また、上記の例では、各検査装置4,5において、比較処理の結果を装置内の表示部16に表示させる構成を採用したが、通信部13を介して外部に出力する構成を採用して、装置外部に設置された表示装置、印刷装置および記憶装置に出力する構成を採用することもできる。また、2台の検査装置4,5を用いて良否判別装置1を構成した例を挙げて説明したが、検査装置を3台以上に増やして、トリプルチェック以上のマルチチェックで良否を判別する良否判別装置を構成することもできる。
また、各検査装置4,5に設定する判別用基準値Cr(上限容量値Cmaxおよび下限容量値Cmin)を同一とした例について上記したが、例えば、各検査装置4,5において測定処理で測定される物理量のばらつきを考慮して、検査装置4,5に設定する各判別用基準値Cr(上限容量値Cmaxおよび下限容量値Cmin)に差を持たせる場合がある。この場合には、この各判別用基準値Crの差(各上限容量値Cmaxの差および各下限容量値Cminの差)に対する許容範囲を予め規定しておき、各検査装置4,5が上記の比較処理において各判別用基準値Crの差とこの許容範囲とを比較して、この差が許容範囲内であれば、各検査装置4,5に設定された判別用基準値Crは一致し、許容範囲外であれば、一致しないと判別して、その比較結果を表示部16に表示させる構成を採用することもできる。
また、物理量(上記の例では静電容量値C)に対する判別用基準値として、静電容量値Cに対する上限容量値Cmaxおよび下限容量値Cminそのものを判別用基準値Crとして規定した例について上記したが、例えば、判別用基準値として、予め測定処理で測定しておいた物理量(静電容量値C)の標準値、この標準値に対する上限相対値(例えば、1.0%)、およびその標準値に対する下限相対値(例えば、−1.0%)を規定する構成を採用することもできる。この構成においては、各検査装置4,5は、標準値に上限相対値を乗算して得られた値を標準値に加算したものを上記した上限容量値Cmaxとして使用し、標準値に下限相対値を乗算して得られた値を標準値に加算した値を上記した下限容量値Cminとして使用して、上記の検査処理を実行する。
この場合、各検査装置4,5に対して同一の標準値、同一の上限相対値および同一の下限相対値を設定する構成を採用したり、標準値、上限相対値および下限相対値のうちのいずれか1つ以上の電気的パラメータについて、予め規定された許容範囲内で異なる値を設定可能とする構成を採用することもできる。この各構成のうちの前者を採用したときには、各検査装置4,5は、上記の比較処理において、標準値、上限相対値および下限相対値がそれぞれ一致するか否かを判別して、各比較結果を表示部16に表示させる。一方、この各構成のうちの後者を採用したときには、各検査装置4,5は、比較処理において、標準値、上限相対値および下限相対値のうちの許容範囲内で異なる値を設定可能とされた電気的パラメータについては、予め規定された許容範囲内であるか否かを判別し、他の電気的パラメータについては他の検査装置に設定されたものと一致するか否かを判別する。
また、各検査装置4,5が処理装置6から比較開始信号としての開始信号S2を入力したときに自らの判別用基準値Craを他の検査装置に送信すると共に他の検査装置から判別用基準値Crbを受信して比較処理を実行する上記の構成や、上記では説明していないが、各検査装置4,5が比較処理に際して他の検査装置(相手の検査装置)に対して判別用基準値の送信を要求する構成においては、各検査装置4,5が正常であり、かつ、各検査装置4,5間の伝送路(例えば、各検査装置4,5間の接続ケーブル)が正常(接続ケーブル自体が正常で、かつ接続ケーブルの各検査装置4,5への接続が正常)である場合には、前者の構成では、比較開始信号としての開始信号S2の入力(または、自らの判別用基準値Craの他の検査装置への送信)後、後者の構成では、送信要求後、ある程度短時間の間に、他の検査装置から判別用基準値Crbを受信することになる。このため、各検査装置4,5が予め決められた設定時間内に他の検査装置から判別用基準値Crbを受信しないときには、他の検査装置に異常が発生しているか、または相互間の伝送路に異常が発生している可能性があることから、このような場合に各検査装置4,5がその旨を表示部16に表示させる構成を採用することもできる。この構成を採用することにより、他の検査装置の異常、接続ケーブル自体の異常、および接続ケーブルと各検査装置との接続状態の異常のいずれかの発生を確認することもできる。