以下、図面を参照し、この発明の実施の形態を説明する。
図1は、この発明の一実施形態であるチャージポンプ1を含む電力増幅回路の構成を示す回路図である。この電力増幅回路は、電源回路としてのチャージポンプ1と、負荷駆動部2とを有している。ここで、チャージポンプ1は、負荷駆動部2に供給する正および負の各電源電圧を発生する電源回路である。負荷駆動部2は、チャージポンプ1から正および負の電源電圧の供給を受け、図示しない前段回路から与えられる入力信号AMPIを増幅し、出力信号AMPOとして負荷(図示略)に与えるアンプである。
図示のように、チャージポンプ1は、制御部10と、スイッチ回路20と、端子CPVDD、CP、GND、CNおよびCPVSSを有している。そして、端子CPVDDは負荷駆動部2の正電源端子に接続され、端子CPVSSは負荷駆動部2の負電源端子に接続される。また、端子GNDは接地され、端子CPVDDと接地線との間には出力用キャパシタC1が、端子CPVSSと接地線との間には出力用キャパシタC2が、端子CPおよびCN間にはフライングキャパシタC3が介挿される。出力用キャパシタC1、出力用キャパシタC2およびフライングキャパシタC3は、理想的には同じ容量値を有している。なお、以下では、説明の便宜のため、端子CPVDDに発生する電圧を電圧CPVDD、端子CPに発生する電圧を電圧CP、端子GNDに発生する電圧を電圧GND、端子CNに発生する電圧を電圧CN、端子CPVSSに発生する電圧を電圧CPVSSというように表記する場合がある。
スイッチ回路20は、Pチャネルの電界効果トランジスタ(以下、単にトランジスタという)P1〜P5と、NチャネルトランジスタN1〜N3とを有する。ここで、PチャネルトランジスタP1は電源HPVDDおよび端子CP間に、PチャネルトランジスタP2は電源HPVDDおよび端子CPVDD間に、PチャネルトランジスタP3は端子CPVDDおよび端子CP間に、PチャネルトランジスタP4は端子CPVDDおよびCN間に各々介挿され、PチャネルトランジスタP5は電源SPVDDおよび端子CP間に介挿されている。電源HPVDDの電圧値は例えば1.8Vである。また、電源SPVDDの電圧値は、電源HPVDDの電圧値よりも大きく、例えば3.6Vである。NチャネルトランジスタN1は端子CPおよび端子GND間に、NチャネルトランジスタN2は端子CNおよび端子GND間に、NチャネルトランジスタN3は端子CNおよび端子CPVSS間に各々介挿されている。
本実施形態におけるチャージポンプ1は、動作モードとして、高電圧出力モードと、低電圧出力モードと、ハイパワーモードとを有している。高電圧出力モードは、電源電圧HPVDDと同じ大きさの正の電圧CPVDD(=HPVDD)と負の電圧CPVSS(=−HPVDD)を端子CPVDDおよびCPVSSから出力する動作モードである。低電圧出力モードは、電源電圧HPVDDの1/2の大きさの正の電圧CPVDD(=HPVDD/2)と負の電圧CPVSS(=−HPVDD/2)を端子CPVDDおよびCPVSSから出力する動作モードである。高電圧出力モードおよび低電圧出力モードでは、電源HPVDDのみを使用し、電源SPVDDは使用しない。ハイパワーモードは、電源電圧HPVDDと同じ大きさの正の電圧CPVDD(=HPVDD)および電源電圧SPVDD以内の範囲内において設定された基準電圧VLMT(たとえば、VLMT=2.1V)と同じ大きさの負の電圧CPVSS(=−VLMT)を端子CPVDDおよびCPVSSから出力する動作モードである。このハイパワーモードでは、電源HPVDDおよびSPVDDを両方使用する。
制御部10は、以上の各動作モード間の遷移の制御および各動作モードでのスイッチ回路20の制御を行う回路である。制御部10には、図示しないクロック発生回路からクロックCLKが与えられる。このクロックCLKは、電源電圧SPVDDと同じレベルのHレベルと、電圧GNDと同じレベルのLレベルを交互に繰り返す。制御部10は、このクロックCLKに同期し、PチャネルトランジスタP1〜P5およびNチャネルトランジスタN1〜N3の各ゲートに与えるゲート電圧を動作モード毎に定められた手順に従って切り換えることにより、上述した各動作モードを実現する。
図2は高電圧出力モードにおけるチャージポンプ1の状態の遷移を示す図である。図2に示すように、高電圧出力モードにおいて、チャージポンプ1は、クロックCLKに同期して、チャージ動作(図2(a)参照)と、フライング動作(図2(c)参照)を交互に繰り返す。
まず、チャージ動作(図2(a)参照)において、制御部10は、スイッチ回路20のPチャネルトランジスタP1、P2およびNチャネルトランジスタN2をONとし、それ以外のトランジスタをOFFとする。この結果、図示のように、電源HPVDD→PチャネルトランジスタP2→出力用キャパシタC1→接地線という経路を介して出力用キャパシタC1の充電が行われ、出力用キャパシタC1に電源電圧HPVDDが印加される。また、図示のように、電源HPVDD→PチャネルトランジスタP1→フライングキャパシタC3→NチャネルトランジスタN2→接地線という経路を介してフライングキャパシタC3の充電が行われ、フライングキャパシタC3に電源電圧HPVDDが印加される。この場合において、フライングキャパシタC3は、端子CP側の電極に正の電荷が、端子CN側の電極に負の電荷が充電された状態となっている。
チャージ動作(図2(a)参照)が一定期間行われると、その後、フライング動作(図2(c)参照)が一定期間行われる。このフライング動作(図2(c)参照)において、制御部10は、スイッチ回路20のPチャネルトランジスタP2、NチャネルトランジスタN1およびN3をONとし、それ以外のトランジスタをOFFとする。この結果、図示のように、電源HPVDD→PチャネルトランジスタP2→出力用キャパシタC1→接地線という経路を介して出力用キャパシタC1の充電が行われ、出力用キャパシタC1に電源電圧HVDDが印加される。また、図示のように、接地線→NチャネルトランジスタN1→フライングキャパシタC3→NチャネルトランジスタN3→出力用キャパシタC2→接地線という経路が形成される。そして、フライングキャパシタC3は、正の電荷が充電された端子CP側の電極をNチャネルトランジスタN1を介して接地させ、負の電荷が充電された端子CN側の電極をNチャネルトランジスタN3を介して端子CPVSSに接続させ、出力用キャパシタC2と並列接続される。このようにして、フライングキャパシタC3の充電電圧HPVDDが逆極性となって出力用キャパシタC2に印加され、出力用キャパシタC2の充電電圧CPVSSが−HPVDDとなる。
以後、同様に、チャージ動作とフライング動作が繰り返され、端子CPVDDから負荷駆動部2の正電源端子に電源電圧CPVDD=HPVDDが、端子CPVSSから負荷駆動部2の負電源端子に電源電圧CPVSS=−HPVDDが供給される。
図3は低電圧出力モードにおけるチャージポンプ1の状態の遷移を示す図である。低電圧出力モードにおいて、チャージポンプ1は、クロックCLKに同期して、チャージ動作(図3(a)参照)と、平滑化動作(図3(b)参照)と、フライング動作(図3(c)参照)を順次かつ巡回的に繰り返す。
まず、チャージ動作(図3(a)参照)において、制御部10は、スイッチ回路20のPチャネルトランジスタP1およびP4をONとし、それ以外のトランジスタをOFFとする。この結果、図示のように、電源HPVDD→PチャネルトランジスタP1→フライングキャパシタC3→PチャネルトランジスタP4→出力用キャパシタC1→接地線という経路が形成される。そして、このように電源HPVDDおよび接地線間にフライングキャパシタC3および出力用キャパシタC1を直列接続した状態で、フライングキャパシタC3および出力用キャパシタC1の充電が行われる。この場合、フライングキャパシタC3および出力用キャパシタC1は、電源HPVDDおよび接地線間にいわば縦積された状態であり、各々HPVDD/2ずつ電圧が印加される。この場合において、フライングキャパシタC3は、端子CP側の電極に正の電荷が、端子CN側の電極に負の電荷が充電された状態となっている。
チャージ動作(図3(a)参照)が一定期間行われると、その後、平滑化動作(図3(b)参照)が一定期間行われる。この平滑化動作(図3(b)参照)において、制御部10は、スイッチ回路20のPチャネルトランジスタP3、NチャネルトランジスタN2をONとし、それ以外のトランジスタをOFFとする。この結果、図示のように、接地線→NチャネルトランジスタN2→フライングキャパシタC3→PチャネルトランジスタP3→出力用キャパシタC1→接地線という経路が形成される。これにより、フライングキャパシタC3は、負の電荷が充電された端子CN側の電極をNチャネルトランジスタN2を介して接地させ、正の電荷が充電された端子CP側の電極をPチャネルトランジスタP3を介して端子CPVDDに接続させ、出力用キャパシタC1と並列接続される。この結果、出力用キャパシタC1の充電電圧とフライングキャパシタC3の充電電圧が同じになり、出力用キャパシタC1の充電電圧CPVDDがHPVDD/2となる。
平滑化動作(図3(b)参照)が一定期間行われると、その後、フライング動作(図3(c)参照)が一定期間行われる。このフライング動作(図3(c)参照)において、制御部10は、スイッチ回路20のNチャネルトランジスタN1およびN3をONとし、それ以外のトランジスタをOFFとする。この結果、図示のように、接地線→NチャネルトランジスタN1→フライングキャパシタC3→NチャネルトランジスタN3→出力用キャパシタC2→接地線という経路が形成される。これにより、フライングキャパシタC3は、正の電荷が充電された端子CP側の電極をNチャネルトランジスタN1を介して接地させ、負の電荷が充電された端子CN側の電極をNチャネルトランジスタN3を介して端子CPVSSに接続させ、出力用キャパシタC2と並列接続される。このようにして、フライングキャパシタC3の充電電圧HPVDD/2が逆極性となって出力用キャパシタC2に印加され、出力用キャパシタC2の充電電圧CPVSSが−HPVDD/2となる。
以後、同様に、チャージ動作、平滑化動作、フライング動作が順次かつ巡回的に繰り返され、端子CPVDDから負荷駆動部2の正電源端子に電源電圧CPVDD=HPVDD/2が、端子CPVSSから負荷駆動部2の負電源端子に電源電圧CPVSS=−HPVDD/2が供給される。
次にチャージポンプ1のハイパワーモードの詳細について説明する。図4は、チャージポンプ1のハイパワーモードでの状態遷移を示す図である。また、図5は、ハイパワーモードでの動作時におけるチャージポンプ1の各部の波形を示す波形図である。ハイパワーモードにおいて、チャージポンプ1は、クロックCLKに同期して、図4(a)および(b)に示すチャージ動作と、図4(c)に示すフライング動作を交互に繰り返す。さらに詳述すると、チャージポンプ1の制御部10は、図5に示すように、クロックCLKがLレベルである期間、チャージポンプ1にチャージ動作を行わせるためのスイッチ回路20の制御を行い、クロックCLKがHレベルである期間、チャージポンプ1にフライング動作を行わせるためのスイッチ回路20の制御を行う。
クロックCLKがLレベルになると、制御部10は、チャージ動作を開始させるべく、PチャネルトランジスタP2をONとする。この結果、図4(a)に示すように、電源HPVDD→PチャネルトランジスタP2→出力用キャパシタC1→接地線という経路を介して出力用キャパシタC1の充電が行われ、出力用キャパシタC1に電源電圧HPVDDが印加される。
また、クロックCLKがLレベルになると、制御部10は、PチャネルトランジスタP5およびNチャネルトランジスタN2をONとする。この結果、図4(a)に示すように、電源SPVDD→PチャネルトランジスタP5→フライングキャパシタC3→NチャネルトランジスタN2→接地線という経路(すなわち、フライングキャパシタの充電を行わせる第1の経路)が形成される。
ここで、制御部10は、クロックCLKの立ち下がりに同期してPチャネルトランジスタP5を完全にONさせるのではなく、クロックCLKの立ち下がり以後、PチャネルトランジスタP5のコンダクタンスまたは出力電流値を漸次増加させる。具体的には、図5に示すように、クロックCLKの立ち下がり以後、PチャネルトランジスタP5に対するゲート電圧VG5を電源電圧SPVDDのレベルから漸次低下させる。この結果、図5に示すように、フライングキャパシタC3の充電電圧CP(端子CPと端子GNDとの間の電圧)は緩やかな時間勾配で上昇する。そして、このチャージ動作において、充電電圧CPが基準電圧VLMTに達すると、制御部10は、図5に示すように、PチャネルトランジスタP5に対するゲート電圧VG5を電源電圧SPVDDのレベルに急激に立ち上げ、PチャネルトランジスタP5をONからOFFに切り換える。これにより、電源電圧SPVDDからフライングキャパシタC3への充電が止まり(図4(b)参照)、基準電圧VLMTとほぼ同じ大きさの正の電圧CP(=VLMT)がフライングキャパシタ3に保持される。この場合において、フライングキャパシタC3は、端子CP側の電極に正の電荷が、端子CN側の電極に負の電荷が充電された状態となっている。
次に、クロックCLKが立ち上がると、制御部10は、フライング動作を開始させるべく、PチャネルトランジスタP2、NチャネルトランジスタN1およびN3をONとし、他のトランジスタをOFFとする(図4(c)参照)。この結果、図示のように、接地線→NチャネルトランジスタN1→フライングキャパシタC3→NチャネルトランジスタN3→出力用キャパシタC2→接地線という経路(すなわち、フライングキャパシタと出力用キャパシタとを並列接続する第2の経路)が形成される。これにより、フライングキャパシタC3は、正の電荷が充電された端子CP側の電極をNチャネルトランジスタN1を介して接地させ、負の電荷が充電された端子CN側の電極をNチャネルトランジスタN3を介して端子CPVSSに接続させ、出力用キャパシタC2と並列接続される。このようにして、フライングキャパシタC3の充電電圧CP(=VLMT)が逆極性となって出力用キャパシタC2に印加され、基準電圧VLMTとほぼ同じ大きさの負の電圧CPVSS(=−VLMT)が出力用キャパシタC2に保持される。
以後、同様に、チャージ動作とフライング動作が繰り返され、端子CPVDDから負荷駆動部2の正電源端子に電源電圧CPVDD=HPVDDが供給され、端子CPVSSから負荷駆動部2の負電源端子に電源電圧CPVSS=−VLMTが供給される。
次に、以上のようにフライングキャパシタC3の充電電圧CPが基準電圧VLMTと精度良く一致するように、PチャネルトランジスタP5のゲート電圧VG5を制御する充電制御手段の具体的構成例を説明する。図6は、チャージポンプ1の制御部10の全回路のうちPチャネルトランジスタP5のゲート電圧VG5の制御を行う充電制御手段に当たる部分の構成を示す回路図である。図6において、NチャネルトランジスタN121〜N129は、低濃度のP型半導体基板に形成されたトランジスタである。ここで、P型半導体基板は、端子CPVSSに接続されており、端子CPVSSに発生する電圧CPVSSがPチャネル半導体基板の電位(すなわち、NチャネルトランジスタN121〜N129のバックゲート電位)となる。また、NチャネルトランジスタN121〜N129の各ソースは、端子GNDに接続されている。また、PチャネルトランジスタP101〜P112は、低濃度のP型半導体基板に各々形成された孤立領域である低濃度のN型不純物層(Nウェル)に形成されたトランジスタである。
インバータ141には、信号HIPOWERが入力される。この信号HIPOWERは、ハイパワーモード時にHレベル、それ以外の動作モードではLレベルとなる信号である。インバータ141は、この信号HIPOWERをレベル反転して信号HINを出力し、インバータ142は、この信号HINをレベル反転して信号HIPを出力する。ここで、信号HIPおよびHINのHレベルは、電源HPVDDと同じレベルであり、Lレベルは電圧GNDと同じレベルである。インバータ141が出力する信号HINは、PチャネルトランジスタP112とNチャネルトランジスタN121およびN127の各ゲートと基準電圧発生部150に入力される。インバータ142が出力する信号HIPは、PチャネルトランジスタP101およびP103の各ゲートに入力される。ハイパワーモードでは、信号HIPがHレベル、信号HINがLレベルとなるため、PチャネルトランジスタP101およびP103はOFF、PチャネルトランジスタP112はON、NチャネルトランジスタN121およびN127はOFFとなる。また、ハイパワーモードでは、信号HINがLレベルとなるため、基準電圧発生部150は、基準電圧VLMT(たとえば、VLMT=2.1V)を発生する。この基準電圧VLMTは、チャージポンプ1の外部からの操作により所望の電圧値に調整可能である。
PチャネルトランジスタP112は、ソースが定電流源139と接続されており、ドレインがNチャネルトランジスタN121およびN122の各ドレインの共通接続点に接続されている。また、NチャネルトランジスタN121およびN122並びにPチャネルトランジスタP112の各ドレインの共通接続点は、NチャネルトランジスタN122、N123およびN124の各ゲートに接続されている。従って、PチャネルトランジスタP112がONとなるハイパワーモードでは、定電流源139の出力電流がNチャネルトランジスタN122に流れ、NチャネルトランジスタN122とともにカレントミラーを構成するNチャネルトランジスタN123およびN124は、各々定電流源139の出力電流に比例した電流を流す定電流源となる。
基準電圧発生部150における基準電圧VLMTの出力端子と端子GNDの間に直列に介挿された抵抗R131、PチャネルトランジスタP104、P105およびNチャネルトランジスタN124と、端子CPと端子GNDとの間に直列に介挿された抵抗R132、PチャネルトランジスタP106、P107およびNチャネルトランジスタN125は、基準電圧VLMTと電圧CPとを比較するコンパレータを構成している。
ここで、抵抗R131およびR132は同じ抵抗値を有している。PチャネルトランジスタP104およびP105が属するNウェルは、PチャネルトランジスタP104のソースと抵抗R131との接続点に接続されており、PチャネルトランジスタP106およびP107が属するNウェルは、PチャネルトランジスタP106のソースと抵抗R132との接続点に接続されている。また、PチャネルトランジスタP105およびNチャネルトランジスタN124はドレイン同士が接続されており、このドレイン同士の接続点は、PチャネルトランジスタP104およびP106の各ゲートに接続されている。また、PチャネルトランジスタP107およびNチャネルトランジスタN125はドレイン同士が接続されており、このドレイン同士の接続点は、NチャネルトランジスタN125のゲートに接続されている。
PチャネルトランジスタP102は、ハイパワーモードにおいて、PチャネルトランジスタP105およびP107に与える共通のゲート電圧を生成する手段である。このPチャネルトランジスタP102のソースおよびこのPチャネルトランジスタが属するNウェルは、PチャネルトランジスタP104のソースに接続されている。そして、PチャネルトランジスタP102とNチャネルトランジスタN123はドレイン同士が接続されており、このドレイン同士の接続点にはPチャネルトランジスタP102、P105およびP107の各ゲートが接続されている。上述したように、NチャネルトランジスタN123は、定電流源139の電流値に比例したドレイン電流を流す定電流源となり、このNチャネルトランジスタN123に流れるドレイン電流は、PチャネルトランジスタP102に流れる。そして、PチャネルトランジスタP102と、PチャネルトランジスタP105およびP107の各々はカレントミラーを各々構成している。従って、ハイパワーモードにおいて、PチャネルトランジスタP105およびP107の各々は定電流源139の電流値に比例したドレイン電流を流す定電流源となる。
NチャネルトランジスタN126のゲートは、NチャネルトランジスタN125のゲートと同様、NチャネルトランジスタN125とPチャネルトランジスタP107のドレイン同士の接続点に接続されている。このNチャネルトランジスタN126のドレインには、PチャネルトランジスタP108のドレインおよびゲートが接続されており、このPチャネルトランジスタP108のソースとPチャネルトランジスタP108が属するNウェルは電源SPVDDに接続されている。PチャネルトランジスタP109のソースおよびPチャネルトランジスタP109の属するNウェルは電源SPVDDに接続されている。そして、PチャネルトランジスタP109のゲートには、PチャネルトランジスタP108と同じゲート電圧が与えられる。以上のように、NチャネルトランジスタN125およびN126がカレントミラーを構成し、NチャネルトランジスタN126のドレイン電流がPチャネルトランジスタP108に流れ、PチャネルトランジスタP108およびP109がカレントミラーを構成している。従って、ハイパワーモードにおいてPチャネルトランジスタP109は、NチャネルトランジスタN125に流れるドレイン電流に比例したドレイン電流を流す定電流源となる。
Pチャネルトランジスタ110およびNチャネルトランジスタ128は、クロックCLKをレベル反転して出力するインバータを構成している。ここで、Pチャネルトランジスタ110のソースおよびPチャネルトランジスタ110が属するNウェルは電源SPVDDに接続されている。また、Pチャネルトランジスタ110のドレインは、NチャネルトランジスタN128のドレインに接続されている。そして、PチャネルトランジスタP110およびNチャネルトランジスタN128の各ゲートにはクロックCLKが入力される。従って、Pチャネルトランジスタ110およびNチャネルトランジスタ128のドレイン同士の接続点(すなわち、インバータの出力端子)のレベルは、クロックCLKがLレベル(電圧GND)であるときに電圧SPVDDとなり、クロックCLKがHレベル(電圧SPVDD)であるときに電圧GNDとなる。
Pチャネルトランジスタ111のソースおよびPチャネルトランジスタ111が属するNウェルは電源SPVDDに接続されている。Pチャネルトランジスタ111のドレインは、抵抗R133およびR134を直列に介してNチャネルトランジスタN129のドレインに接続されている。ここで、抵抗R133は低い抵抗値を有し、抵抗R134は数10kΩ程度の高い抵抗値を有している。また、Pチャネルトランジスタ111およびNチャネルトランジスタN129の各ゲートは、Pチャネルトランジスタ110およびNチャネルトランジスタ128のドレイン同士の接続点に共通接続されている。そして、抵抗R133およびR134の接続点には、PチャネルトランジスタP109のドレインが接続されている。この抵抗R133およびR134並びにPチャネルトランジスタP109のドレインの共通接続点に発生する電圧がゲート電圧VG5としてスイッチ回路20のPチャネルトランジスタP5のゲートに供給される。
以上の構成において、端子CPの電圧CPが基準電圧VLMTよりも低い場合、PチャネルトランジスタP106のソース電位は、PチャネルトランジスタP104のソース電位よりも低くなる。このため、PチャネルトランジスタP106およびP107はOFFであるか、ONであったとしても非常に僅かなドレイン電流しか流れない。このため、NチャネルトランジスタN125に流れる電流も0または僅かな電流である。従って、定電流源としてのPチャネルトランジスタP109の電流値も0または僅かな電流値であり、ゲート電圧VG5の生成に殆ど関与しない。
一方、端子CPの電圧CPが基準電圧VLMT以上である場合、PチャネルトランジスタP106のソース電位は、PチャネルトランジスタP104のソース電位以上となる。このため、PチャネルトランジスタP106およびP107には、定電流源139の電流値に比例したドレイン電流が流れ、このドレイン電流がNチャネルトランジスタN125に流れる。従って、PチャネルトランジスタP109は、定電流源139の電流値に比例したドレイン電流を流す定電流源となり、このPチャネルトランジスタP109のドレイン電流がゲート電圧VG5の生成に大きく関与する。
PチャネルトランジスタP103、P101、NチャネルトランジスタN121、N127は、ハイパワーモード以外の動作モードにおいてチャージポンプ1の動作を安定化するために設けられたトランジスタである。まず、PチャネルトランジスタP103は、PチャネルトランジスタP105とNチャネルトランジスタN124のドレイン同士の接続点と電源HPVDDとの間に介挿されている。このPチャネルトランジスタP103が形成されたNウェルは電源SPVDDに接続されている。このPチャネルトランジスタP103は、ハイパワーモード以外の動作モードにおいてONとなり、PチャネルトランジスタP105のドレインとNチャネルトランジスタN124のドレイン同士の接続点の電位を電源HPVDDのレベルに固定する役割を果たす。
PチャネルトランジスタP101は、PチャネルトランジスタP102に対して並列接続されている。このPチャネルトランジスタP101は、ハイパワーモード以外の動作モードにおいてONとなり、PチャネルトランジスタP102のドレイン、ゲートおよびソースを短絡し、PチャネルトランジスタP105およびP107をOFFにする役割を果たす。
NチャネルトランジスタN121は、NチャネルトランジスタN122に対して並列接続されている。このNチャネルトランジスタN121は、ハイパワーモード以外の動作モードにおいてONとなり、NチャネルトランジスタN122のドレイン、ゲートおよびソースを短絡し、NチャネルトランジスタN123およびN124をOFFにする役割を果たす。NチャネルトランジスタN127は、NチャネルトランジスタN125およびN126のゲート同士の接続点と端子GNDとの間に介挿されている。このNチャネルトランジスタN127は、ハイパワーモード以外の動作モードにおいて、NチャネルトランジスタN125およびN126のゲートを端子GNDに接続し、NチャネルトランジスタN125およびN126をOFFにする役割を果たす。
次に、ハイパワーモードにおける図6に示す回路の動作を説明する。まず、クロックCLKがHレベルになると、PチャネルトランジスタP111はON、NチャネルトランジスタN129はOFFになる。この場合、抵抗R133の抵抗値が十分に小さいので、ゲート電圧VG5は、電源電圧SPVDDとほぼ同じレベルとなり、PチャネルトランジスタP5はOFFとなる。そして、チャージポンプ1では、フライング動作が行われる(図4(c)参照)。
次にクロックCLKがLレベルになると、PチャネルトランジスタP111はOFF、NチャネルトランジスタN129はONになる。これによりゲート電圧VG5は低下を開始する。ここで、抵抗R134は高い抵抗値を有しているため、抵抗R133およびR134の接続点に介在している容量(主にPチャネルトランジスタP5のゲート容量)と抵抗R134およびNチャネルトランジスタN129のON抵抗からなる直列抵抗とを乗算した時定数τは大きな値となる。このため、ゲート電圧VG5は図5に例示するように電圧SPVDDから緩やかな時間勾配で漸次低下する。この結果、PチャネルトランジスタP5のコンダクタンスまたは出力電流値が漸次増加し、フライングキャパシタC3の充電電圧CPは、図5に例示するように緩やかな時間勾配で漸次上昇する。
ここで、電圧CPが基準電圧VLMTよりも低い期間は、上述したように、PチャネルトランジスタP109の電流値は0または僅かな電流値であり、ゲート電圧VG5の生成に殆ど関与しない。従って、ゲート電圧VG5は、上記時定数τに対応した緩やかな時間勾配で漸次低下する。
そして、電圧CPが基準電圧VLMTに到達すると、上述したように、定電流源139の電流値に比例したドレイン電流がPチャネルトランジスタP109に流れる。このPチャネルトランジスタP109のドレイン電流は、高い抵抗値を有する抵抗R134を介してNチャネルトランジスタN129に流れ込む。この結果、抵抗R134の電圧降下が急激に増加し、図5に示すように、ゲート電圧VG5が電源電圧SPVDDに近いレベルに急激に上昇する。この結果、PチャネルトランジスタP5がOFFになり、フライングキャパシタC3の充電が停止する(図4(b)および図5参照)。
以上が図6に示す回路の動作である。
本実施形態によるチャージポンプ1は、電源HPVDDからの給電を受けて動作する回路と、電源SPVDD(>HPVDD)からの給電を受けて動作する回路が混在している。ここで、前者の回路は、電源HPVDDに接続されたNウェルに属するPチャネルトランジスタを含み、後者の回路は、電源SPVDDに接続されたNウェルに属するPチャネルトランジスタを含む。また、本実施形態におけるチャージポンプ1は、前者の回路の一部のPチャネルトランジスタのドレインと、後者の回路の一部のPチャネルトランジスタのドレインとが共通のノードに接続されている。このような構成では、何ら策を講じないと、共通ノードの電位が電圧HPVDDを越えたときに、その共通ノードから電源HPVDDに接続されたNウェルに電流が流れ込むという動作異常が発生する。本実施形態によるチャージポンプ1には、このような動作異常の発生を回避するための手段が設けられている。
図7は、チャージポンプ1の全回路のうち端子CPに接続された部分の構成を示す回路図である。図7において、NチャネルトランジスタN1は、電源CPVSSに接続されたP型半導体基板に形成されており、ソースは端子GNDに接続され、ドレインは抵抗R173を介して端子CPに接続されている。この端子CPを共有ノードとするPチャネルトランジスタとして、電源SPVDDからの給電を受けるPチャネルトランジスタP5と、電源HPVDDからの給電を受けるPチャネルトランジスタP1およびP3がある。
PチャネルトランジスタP1は、他のPチャネルトランジスタが形成されたNウエルから独立したNウエル(すなわち、孤立したNウエル)に形成されており、そのソースが抵抗R171を介して電源HPVDDに接続され、そのドレインが抵抗R172を介して端子CPに接続されている。PチャネルトランジスタP161は、このPチャネルトランジスタP1の形成されたNウエルの電位を制御するためのトランジスタである。さらに詳述すると、PチャネルトランジスタP161は、電源SPVDDに接続されたNウエルに形成されており、そのソースはPチャネルトランジスタP1のソースに接続され、そのドレインがPチャネルトランジスタP1の形成されたNウエルに接続され、そのゲートには信号HIPOWERが与えられる。
PチャネルトランジスタP3も、PチャネルトランジスタP1と同様、他のPチャネルトランジスタが形成されたNウエルから独立したNウエル(すなわち、孤立したNウエル)に形成されている。そして、PチャネルトランジスタP3は、そのソースが抵抗R176を介して端子CPVDDに接続され、そのドレインが抵抗R177を介して端子CPに接続されている。なお、PチャネルトランジスタP2は、電源HPVDDに接続されたNウエルに形成されており、そのドレインが抵抗R175を介して端子CPVDDに接続され、そのソースが抵抗R174を介して電源HPVDDに接続されている。電源HPVDDおよび端子CPVDD間には、PチャネルトランジスタP162、PチャネルトランジスタP163、NチャネルトランジスタN164および抵抗R178が直列に介挿されている。ここで、PチャネルトランジスタP162は、電源SPVDDに接続されたNウエルに、Pチャネルトランジスタ163は、電源HPVDDに接続されたNウエルに形成されている。また、NチャネルトランジスタN164は、P型の半導体基板に形成されており、このP型の半導体基板は端子CPVSSと接続されている。他のNチャネルトランジスタも同様である。PチャネルトランジスタP163のドレインとNチャネルトランジスタN164のドレインとの共通接続点と端子CPVSSとの間にはP型半導体基板とNウエルとのPN接合を利用した大容量のキャパシタC180が介挿されている。そして、このPチャネルトランジスタP163のドレインとNチャネルトランジスタN164のドレインとの共通接続点がPチャネルトランジスタP3の形成されたNウエルに接続されている。
以上の構成において、動作モードがハイパワーモード以外の動作モードであり、信号HIPOWERがLレベルである場合、PチャネルトランジスタP161はONとなり、PチャネルトランジスタP1の形成されたNウエルには、抵抗R171およびPチャネルトランジスタP161を介して電源電圧HPVDDが与えられる。また、PチャネルトランジスタP163は、Lレベル(具体的には電圧CPVSS)がゲートに与えられてONとなっており、NチャネルトランジスタP164は、Lレベル(具体的には電圧CPVSS)がゲートに与えられてOFFとなっている。そして、PチャネルトランジスタP162は、Lレベル(具体的には電圧CPVSS)の信号HIPOWERがゲートに与えられてONとなっている。このため、電源電圧HPVDDがPチャネルトランジスタP162およびP163を介して、PチャネルトランジスタP3の形成されたNウエルに与えられる。この状態において、PチャネルトランジスタP1、P2およびP3は、制御部10(図1参照)から与えられるゲート電圧により各々のON/OFFが切り換えられる。
一方、動作モードがハイパワーモードであり、信号HIPOWERがHレベル(より具体的には電源電圧HPVDDと同一レベル)である場合、PチャネルトランジスタP161およびP162がOFFとなり、PチャネルトランジスタP1の形成されたNウエルおよびPチャネルトランジスタP3の形成されたNウエルは、各々フローティング状態となる。ここで、ハイパワーモードでは、端子CPの電圧CPが上限電圧VLMTまで上昇するが、この上限電圧VLMTが電源電圧HPVDD以上である場合には、端子CPの電圧CPも電源電圧HPVDD以上となる。しかしながら、ハイパワーモードでは、PチャネルトランジスタP1の形成されたNウエルがフローティング状態となり、端子CPと電源SPVDDとの間に、PチャネルトランジスタP1のドレインとPチャネルトランジスタP1の属するNウエルとの間に介在する寄生ダイオードと、PチャネルトランジスタP161のドレインとPチャネルトランジスタP161の属するNウエルとの間に介在する寄生ダイオードとが直列に介挿された状態となる。従って、電圧CPが電圧SPVDDを越えない限り、PチャネルトランジスタP1のドレインとPチャネルトランジスタP1の属するNウエルとの間に介在する寄生ダイオードに電流が流れることはない。
また、ハイパワーモードでは、PチャネルトランジスタP3の形成されたNウエルがフローティング状態となり、端子CPと電源HPVDDとの間に、PチャネルトランジスタP3のドレインとPチャネルトランジスタP3の属するNウエルとの間に介在する寄生ダイオードと、PチャネルトランジスタP163のドレインとPチャネルトランジスタP163の属するNウエルとの間に介在する寄生ダイオードとが直列に介挿された状態となる。従って、電圧CPが電圧HPVDDに対して寄生ダイオード2個分の順方向電圧を加えた電圧を越えない限り、PチャネルトランジスタP3のドレインとPチャネルトランジスタP3の属するNウエルとの間に介在する寄生ダイオードを電流が流れることはない。
従って、本実施形態によれば、ハイパワーモードにおいて、電圧CPが電源電圧HPVDDを越えるような状況であっても、PチャネルトランジスタのドレインとNウエルとの間に介在する寄生ダイオードに電流が流れるのを防止し、動作異常の発生を回避することができる。
以上説明したように、本実施形態によれば、フライングキャパシタC3の充電時における充電電圧CPの時間勾配が緩やかになるので、フライングキャパシタC3の充電電圧が基準電圧VLMTを越えて、フライングキャパシタC3の充電経路を形成するPチャネルトランジスタP5がOFFになるまでの遅延時間がある程度長くても、PチャネルトランジスタP5がOFFになったときのフライングキャパシタC3の充電電圧CPの基準電圧VLMTに対する誤差を少なくすることができる。従って、所望の電圧値の電圧を精度良く出力することができる。
また、本実施形態によれば、ハイパワーモードにおいて、基準電圧VLMTの電圧値如何によっては端子CPの電圧CPが電源電圧HPVDDを越えることがあるが、電源HPVDDからの給電を受け、ハイパワーモードではONにならないPチャネルトランジスタ(具体的にはPチャネルトランジスタP1およびP3)の属するNウェルをハイパワーモードではフローティング状態とするので、端子CPからPチャネルトランジスタのドレインを介して電源HPVDDに接続されたNウェルへ電流が流れ込む異常の発生を回避することができる。
<他の実施形態>
以上、この発明の実施形態を説明したが、この発明には、他にも各種の実施形態が考えられる。例えば次の通りである。
(1)上記実施形態において、電源回路であるチャージポンプ1は、接地レベル(端子GNDのレベル)を中心に正の電源電圧CPVDDおよび負の電源電圧CPVSSを発生したが、接地レベルでない他の基準レベルを中心に正の電源電圧CPVDDおよび負の電源電圧CPVSSを発生させる構成としてもよい。
(2)上記実施形態において、電源回路であるチャージポンプ1は、正の入力電源HPVDD、SPVDDを利用して、正の電源電圧CPVDDおよび負の電源電圧CPVSSを発生したが、負の入力電源を利用して、正の電源電圧CPVDDおよび負の電源電圧CPVSSを発生する構成としてもよい。
(3)上記実施形態では、スイッチ回路20を構成するスイッチング素子として、電界効果トランジスタを利用したが、バイポーラトランジスタ等の他の種類のスイッチング素子を利用してもよい。
(4)上記実施形態では、チャージポンプ1を電力増幅回路の電源回路として利用したが、本発明によるチャージポンプは、電力増幅回路以外の用途にも適用可能である。
(5)上記実施形態では、ハイパワーモードの他に、高電圧出力モードおよび低電圧出力モードを有するチャージポンプを構成したが、ハイパワーモードのみを有するチャージポンプを構成してもよい。