JP5504128B2 - 前処理器具 - Google Patents

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Description

本発明は、前処理器具、より詳しくは、各種試薬等の前処理材料が封止されて電気泳動等の試料の処理に用いられる前処理器具に関する。
ヒトゲノムプロジェクトが終了した後、プロテオーム研究が盛んに行われている。この「プロテオーム」とは、特定の細胞、器官、臓器の中で翻訳生産されているタンパク質の総体を意味し、該プロテオームの研究としてはタンパク質のプロファイリングなどが挙げられる。
タンパク質をプロファイリングする手法の1つとして、タンパク質の2次元電気泳動が知られている。この2次元電気泳動は、タンパク質を電荷に依存して分離する等電点電気泳動と分子量に依存して分離するスラブゲル電気泳動(特に、SDS−PAGE)との計2つの電気泳動ステップから構成されている(例えば、特許文献1参照)。
上記2次元電気泳動を行うサンプル分離装置の一例が、特許文献2に開示されている。このサンプル分離装置は、等電点電気泳動によって分離が行なわれる第1チップと、スラブゲル電気泳動を行う第2チップとを備えている。
第1チップは、支持板と該支持板に支持された第1ゲル(1次元目のゲル)とから構成されている。この第1チップにおいては、第1ゲルにサンプル(試料)が導入され、第1ゲルを膨潤させる工程を経た後、第1ゲルに電圧が印加されることでサンプルを第1方向に分離させる(1次元目分離)。そして、第1チップは、分離されたサンプルを染色する工程、第2チップの環境に平衡化する工程が施された後、第2チップに移送される。
第2チップは基板内に第2ゲル(2次元目のゲル)が収納されることで構成されており、該第2ゲルに第1チップの第1ゲルが接続される。この状態で第2ゲルに対して電圧を印加することでサンプルが上記第1方向とは異なる第2方向に分離される(2次元目分離)。
特許文献2には、2次元電気泳動の各プロセスを自動化することにより2次元電気泳動の利便性を高め、作業者依存度を低減し、さらには結果の再現性を高めることが記載されている。
特開平11−30605号公報 特開2007−64848号公報
ところで、1次元目分離を行う前に行われる試料の1次元目ゲルへの導入の工程や、1次元目分離の後、2次元目分離前に行われる必要な試薬との反応工程等は、通常、複数の溝構造を有する前処理器具を用いて行われる。複数の溝構造の各々には各種の試薬や洗浄剤等の前処理材料が単独あるいは調製されて配置され、第1チップが保持する第1ゲルが各溝内の前処理材料に順次接触されることにより各工程が進められる。
このような前処理器具においては、予め溝内に前処理材料を充填しておき、使用時まで封止材により封止しておくことで利便性を高める試みがある。
しかしながら、前処理材料の中には、例えば粉末としては安定であるが、溶液化すると不安定となる等により、実際に前処理に使用する状態で充填すると好ましくないものがある。このような前処理材料を前処理に使用する状態で充填してしまうと、他の前処理材料には問題がないにもかかわらず、前処理器具自体としての使用期限が短くなったり、変質したものを誤って使用してしまうことで実験の信頼性が低下したりする等の問題がある。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、前処理材料の特性に関係なく使用しやすい状態で予め充填することができる前処理器具を提供することを目的とする。
本発明は、試料の前処理を行う前処理器具であって、上面に開口する複数の溝を有する基材と、前記前処理に用いられる前処理材料と、一方の面に熱融着性材料からなる熱融着性層を有するフィルム材を含んで形成され、前記複数の溝のうち少なくとも1つを封止する封止材とを備え、前記封止材は、前記一方の面側に収容部を有し、前記収容部に少なくとも1つの前記前処理材料が収容されて封止されていることを特徴とする。
本発明の前処理器具においては、前記封止材が複数の折線部を有し、前記折線部によって前記収容部が形成されてもよい。
また、前記収容部が、前記封止材の前記一方の面側に剥離可能に接合された被覆部材を有してもよい。
さらに、前記被覆部材に前記前処理材料を収容する空間が形成されてもよい。
本発明の前処理器具によれば、前処理材料の特性に関係なく使用しやすい状態で予め充填することができる前処理器具とすることができる。
本発明の第1実施形態の前処理器具における基材を示す平面図である。 図1のa−a線における断面図である。 同前処理器具における封止材を示す断面図である。 完成した同前処理器具を示す断面図である。 同前処理器具の変形例を示す断面図である。 本発明の第2実施形態の前処理器具を示す断面図である。
以下、本発明の第1実施形態の前処理器具について、図1から図5を参照して説明する。
本実施形態の前処理器具は、2次元電気泳動に用いる第1チップに対して、試料導入前後の各種前処理工程を行う機能を有する器具であり、複数の溝が形成された基材と、当該基材の溝を封止する封止材とを備えている。
図1は、本実施形態の前処理器具1の基材10を示す平面図であり、図2は、図1のa−a線における断面図である。
図1および図2に示すように、基材10は、一定の厚みを有して形成されており、上面10Aに開口して同一方向に延びる複数の溝11を有する。基材10の材質としては、後述する封止材の熱融着が可能であれば特に制限はなく、耐薬性等を考慮して各種樹脂等を適宜選択すればよい。
溝11の本数や、幅、長さ、設置間隔等には特に制限はなく、挿入される第1チップの寸法や、行われる前処理の数や内容、前処理材料の必要量等に応じて適宜設定されてよい。したがって、例えば図1に示す溝11Aのように、一部の溝が他の溝と異なる幅に形成されても構わない。
図2に示すように、溝11内には、各種前処理に使用される薬剤、試薬、溶媒等の前処理材料が複数種類配置されている。
本実施形態における前処理としては、サンプルの導入、第1ゲルの膨潤、第1ゲルの接地、洗浄、バッファによる置換、中間染色、タンパク質のSDS化処理、電極の洗浄などが挙げられ、これら各処理に必要な薬剤が適宜選択されて配置されている。前処理材料の形態等にも制限はなく、液体のほかにゲル状、粉末状等の固体等各種形態で配置されてよいし、必要に応じて複数種類の前処理材料が混合されて1本の溝11内に配置されてもよい。
図2には、一例として、溝11Aを含む8つの溝11にそれぞれ異なる前処理材料12Aないし12Hが配置されている例を示しているが、すべての溝に前処理材料が配置される必要はなく、前処理材料を配置する溝の位置も各処理の順番等を考慮して適宜設定してよい。
例えば、前処理材料12Aを用いた処理と前処理材料12Bとを用いた処理との間に、用時調製した別の試薬等を用いた処理が行われる場合は、前処理材料12Aを配置した溝と前処理材料12Bを配置した溝との間に、前処理材料が配置されない空の溝を確保してもよい。
図3は、溝11を封止する封止材20を示す断面図である。封止材20は、フィルム材22と、フィルム材21の下面(一方の面)に形成された熱融着性層24とを備えている。
フィルム材22としては、熱融着可能な程度の耐熱性を有する樹脂等の材料からなるものを、ガスバリア性等を考慮して適宜選択して使用することができる。
熱融着性層24の材料は、常温において粘着性を示さず、所定の温度に加熱することにより粘着性を発揮して基材10の上面10Aに融着される。融着後、常温まで冷却されると、熱融着性層24は、再び粘着性を失い、溝11内に配置された前処理材料に影響を与えない。
熱融着性層24は、共押し出し法などの手法によってフィルム材22の下面にまんべんなく積層されてもよいし、下面の一部、たとえば基材10の上面10Aに融着される部位のみに印刷等の手法により設けられてもよい。
このような形成方法に適した熱融着性材料としては、ポリオレフィン系、ポリプロピレン系バリヤー共押出系、ビニルポリマーで改質されたポリオレフィン系ポリマーアロイ系等の各種樹脂を挙げることができる。
熱融着性層24は、上述の方法のほか、塗工法によって設けられてもよい。この場合は、ヒートシールラッカー組成物を好適に用いることができる。ヒートシールラッカー組成物の材料は特に限定されないが、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリ塩化ビニリデン、塩素化ポリオレフィン、ポリアミド、アクリル樹脂、飽和ポリエステル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリオレフィン等の熱可塑性樹脂を単独又は混合したものをベース樹脂として用いることができる。
これらの材料を、さらにワックス、粘着付与剤、可塑剤、ブロッキング防止剤、スリップ剤、安定剤、硬化剤等の添加剤類と適宜配合することによりヒートシールラッカー組成物が構成されてもよい。
フィルム材22には、互いに略平行に延びる複数の折線で折り曲げられることにより、複数の折線部25が形成されている。そして、複数の折線部25により、フィルム材22の下面側に前処理材料が収容される略直方体状の空間である収容部26が形成されている。収容部26には、試薬(前処理材料)12Iが収容されている。収容部26は、内面を形成する熱融着性層24が互いに融着されることにより封止されており、密封された空間となっている。
このような封止材20は、熱融着性層24が形成されたフィルム材22に折線部25を形成し、下面側であって折線部25間の領域に前処理材料12Iを配置してから、熱融着性層24を加熱して互いに融着させることにより製造することができる。
上記のように構成された封止材20を、基材10に合わせて適当な大きさにカットし、熱融着性層24を基材10の上面10Aに接触させた状態で公知の加熱圧着手段により熱融着性層24を加熱すると、熱融着性層24と基材10の上面10Aとが一体に融着されて、図4に示す前処理器具1が完成する。
本実施形態では、収容部26が溝11と概ね平行となり、かつ前処理材料12Cが封止された溝11の上方に位置するように封止材20が基材10に融着されている。収容部26に収容された試薬12Iは、前処理時には溶液として用いられるが、溶液の状態では安定性に劣るため、固形の状態で収容部26に封止されている。そして、前処理材料12Cは、前処理材料12Iの用時調製に用いられる、例えば蒸留水等の溶媒である。
このように、本発明においては、用時調製されて前処理材料となる、前処理材料の前段階の物質も「前処理材料」に含まれる。
前処理器具1に熱融着された封止材20は、使用者が使用時に手で容易に剥離することができるイージーピール性を有する。したがって、使用前の流通段階等においては、前処理材料が配置された溝11を封止して外部からの異物の侵入や前処理材料の蒸発、飛散、漏れ出し、変質等を好適に防ぎ、使用時においては、容易に剥離されて好適に第1チップの前処理に使用することができる。
封止材20の剥離態様は、熱融着性層24の材料等によって、凝集剥離、層間剥離、界面剥離等の複数種類に分かれるが、いずれの態様であっても大きな問題はなく、好適に使用可能である。このうち、界面剥離の場合は、封止材20の剥離後、基材10側に熱融着性層24が残存しないため、熱融着性層24の微細な破片等が溝11内に混入する等の事態の発生をより低減することができ、好ましい。
前処理材料12Iを用いた前処理を行う際は、使用者は前処理材料12Cが封止された溝11を開封してから、封止材20を引っ張る等の動作により、収容部26を封止している熱融着性層24の融着を解除する。この際も、熱融着性層24がイージーピール性を有するため、使用者は、容易に収容部26を開封することができる。収容部26を開封したら、前処理材料12Iを前処理材料12Cに溶解して用時調製をおこない、前処理材料12Iの溶液を作製する。その後、当該溶液を用いて第1チップの前処理を行う。
以上説明したように、本実施形態の前処理器具1によれば、基材10に形成された溝11を封止する封止材20に、前処理材料を封止する収容部26が設けられている。このため、安定性等の観点から用時調製が必要な前処理材料であっても、調製時に混合される他の前処理材料と接触させずに当該他の前処理材料が封止された溝11上に配置することができる。したがって、前処理器具1の使用前においては、両者の接触を防いで前処理材料の品質を保持し、使用時においては用時調製を容易にすることで効率よく前処理を行うことができる。その結果、前処理材料の特性に関係なく、使用しやすい状態で予め充填しておくことができる前処理器具とすることができる。
また、収容部26は、封止材20のフィルム材22に設けられた複数の折線部25によって形成されているため、収容部を容易に形成することができ、保管中の収容部の形状を安定させることができる。
さらに、封止材20は一方の面に熱融着性層24を備え、熱融着性層24が加熱されることにより封止材20が溝11を封止するため、常時粘着性を発揮する接着剤等を使用せずに溝11を封止することができる。その結果、予め溝11内に封入された前処理材料が当該接着剤等に付着することによる変質等を好適に防止することができる。さらに封止材20はイージーピール性を有し、剥離した際に基材の貼付部位に粘着性物質が残存することもないため、前処理時に希少な試薬等の前処理材料が当該粘着性物質に付着する等のリスクも大きく軽減できる。
本実施形態では、収容部が複数の折線部によって形成される例を説明したが、これは、本発明の前処理器具において必須ではない。例えば、図5に示す変形例のように、断面形状が略円形であり、折線部によって空間形状が規定されていない収容部28が形成されてもよい。
次に本発明の第2実施形態について、図6を参照して説明する。本実施形態の前処理器具31と、第1実施形態の前処理器具1との異なるところは、収容部の態様である。なお、以降の説明において、既に説明したものと同様の構成については、同一の符号を付して重複する説明を省略する。
図6は、前処理器具31の断面図である。前処理器具31の外形は、前処理器具1と同様であり、図6は、図1のa−a線に対応する位置における断面図となっている。
封止材32のフィルム材22は平坦に形成されており、熱融着性層24が形成された下面側に被覆部材34が剥離可能に取り付けられることによって収容部33が設けられている。
被覆部材34の材料としては、収容部33に封止された前処理材料を好適に保護できるものであればよく、例えば、ポリメチルメタクリレート(PMMA)フィルムやポリスチレン(PS)フィルムなどの樹脂製の硬質のフィルム材や、プレパラートガラス材等を用いることができる。
被覆部材34は、プレス加工や成形加工等により、平面視矩形の凹部(空間)を有する形状に成形され、当該凹部の開口を熱融着性層24に対向させた状態で、粘着材や接着剤等によりフィルム材22に貼りあわされている。被覆部材34とフィルム材22との接着強度は、保管時に要求される強度や、開封のしやすさ等を考慮して適宜決定されてよい。
上記のように構成された本実施形態の前処理器具31では、封止材32を基材10から剥離し、被覆部材34をフィルム材22から剥離して前処理材料12Iを取り出してから用時調製を行う。上述の接着強度を適切に設定すれば、封止材32を基材10から剥離する前に、封止材32の上面のうち収容部33上方の部位を押圧する等により、被覆部材34をフィルム材22から剥離させて用時調製を行うことも可能である。
本実施形態の前処理器具31においても、第1実施形態の前処理器具1と同様に、前処理材料の特性に関係なく、使用しやすい状態で予め充填しておくことができる前処理器具とすることができる。
また、収容部33が被覆部材34を有して形成されているため、フィルム材22の複雑な加工が必要なく、より容易に製造することができる。
以上、本発明の各実施形態について説明してきたが、本発明の技術範囲は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において各構成要素に種々の変更を加えたり、削除したり、各構成要素を組み合わせたりすることが可能である。
例えば、上述の各実施形態においては、基材の上面全体を覆う大きさの1枚の封止材を用いてすべての溝が封止される例を説明したが、これに代えて、任意の1本以上の溝を覆う大きさにカットされた封止材を基材の上面に融着し、一部の溝のみが封止された構成としてもよい。また、このような封止材を複数枚用いて基材のすべての溝を封止してもよいし、収容部を備えないフィルム材を組み合わせて溝が封止されてもよい。
また、上述の各実施形態では、収容部に固形の試薬が、対応する溝に当該試薬の溶媒が配置された例を説明したが、収容部および対応する溝に充填される前処理材料の種類はこれには限られない。例えば、収容部に溶媒が、対応する溝に固形の試薬が充填されてもよいし、混合することで前処理材料となる2種類の液体が、それぞれ収容部および対応する溝に充填されてもよい。さらには、対応する溝に前処理材料が配置されていなくても構わない。
さらに、基材の上面全面を覆う封止材に、溝の延在方向に延びるミシン目を設け、一部の溝のみを開封できるように構成してもよい。
加えて、第1実施形態のように収容空間が形成されたフィルム材の当該収容空間を、平坦な被覆部材で封止することにより収容部を備える封止材が形成されてもよい。
1、31 前処理器具
10 基材
11 溝
12A、12B、12C、12D、12E、12F、12G、12H 前処理材料
12I 試薬(前処理材料)
20、32 封止材
22 フィルム材
24 熱融着性層
25 折線部
26、33 収容部
34 被覆部材

Claims (4)

  1. 試料の前処理を行う前処理器具であって、
    上面に開口する複数の溝を有する基材と、
    前記前処理に用いられる前処理材料と、
    一方の面に熱融着性材料からなる熱融着性層を有するフィルム材を含んで形成され、前記複数の溝のうち少なくとも1つを封止する封止材と、
    を備え、
    前記封止材は、前記一方の面側に収容部を有し、前記収容部に少なくとも1つの前記前処理材料が収容されて封止されていることを特徴とする前処理器具。
  2. 前記封止材は、複数の折線部を有し、前記折線部によって前記収容部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の前処理器具。
  3. 前記収容部は、前記封止材の前記一方の面側に剥離可能に接合された被覆部材を有することを特徴とする請求項1に記載の前処理器具。
  4. 前記被覆部材に前記前処理材料を収容する空間が形成されていることを特徴とする請求項3に記載の前処理器具。
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