JP5503296B2 - 封入された粒状固体の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、液体媒質に分散された封入粒状固体の製造方法、単離された封入粒状固体、及びそのような固体のインク、特にインクジェット印刷用インクにおける使用に関する。
多くのインク、練り顔料、ペイント等は、粒状固体を液体ビヒクルに均一に分散させるために効果的な分散剤を必要とする。液体ビヒクルは、非常に極性の高い液体(例えば、水)から著しく非極性の液体(例えば、トルエン)まで変わり得る。公知の分散剤はある極性の範囲内で液体ビヒクルにのみ効果的に作用する傾向がある。そのような極性の範囲外では粒状固体は一般的には凝集する。従って、様々な極性を有する液体媒質として、多様な分散剤が開発されてきた。水及び相当量の有機溶媒を含む液体媒質中で粒状固体を首尾よく安定化させることができる分散剤の製造は特に困難である。
従来の分散剤は、物理的相互作用によって粒状固体表面に吸着される。多くの従来の分散剤は、より強力な吸着材料によって粒状固体表面から容易に排除され、その結果として分散液の不安定化及び凝集が起こり得るという欠点を有する。
従来の分散剤の問題点は、粒状固体を架橋された分散剤中に封入することによってある程度対処することが可能である。粒状固体を架橋された分散剤を用いて封入する方法は通常、液体媒質中で行われる。架橋可能な分散剤は液体媒質に分散された粒状固体と混合してよく、分散剤は粒状固体表面に吸着する。分散剤はその後、架橋剤を用いて該架橋剤の架橋可能な基により架橋されて、粒状固体上に固定されることが可能である。そのようなアプローチは、国際公報第2006/064193号として公開された本願出願人による国際特許出願に記載されている。
国際公報第2006/064193号
国際公報第2006064193号に記載のアプローチは非常に好ましい結果を提供するが、技術の改善は絶えず求められている。今般、本願発明者らは、架橋形成段階の間にホウ酸塩化合物が存在する場合に、そのような改善がもたらされることを見出した。
本発明の第1の側面は、粒状固体及び液体媒質の存在下で分散剤を架橋剤で架橋させ、それによって粒状固体を架橋された分散剤中に封入することを含む、液体媒質に分散された封入粒状固体の製造方法であって、
a)分散剤は少なくとも1つのカルボン酸基を有し;
b)架橋剤は少なくとも2つのエポキシ基を有し;且つ
c)架橋はホウ酸塩化合物の存在下で行われる
方法を提供することである。
これまでホウ酸塩化合物は、本発明に関係のない多くの目的に用いられてきた。例えば、ホウ酸は時にはアルコールに溶解され、火の曲芸師及び火回し芸人が鮮緑色の炎をみせるために用いられる。
ホウ酸はまた、イースト及び真菌感染症、例えばカンジダ症の治療、並びに水虫の予防にも用いられてきた。ホウ酸はまた、ゴキブリ、シロアリ、ヒアリ、ノミ及び他の昆虫を殺すための殺虫剤としても用いられてきた。
粒状固体は、液体媒質に不溶性の無機又は有機粒状固体材料あるいはこれらの混合物を含み、好ましくはそれらである。
好適な粒状固体の例は、無機又は有機顔料;ペイント及びプラスチック材料用の増量剤及び充填材;染料を溶解しない液体媒質中の分散染料及び水溶性染料;蛍光増白剤;溶媒染料浴、インク及び他の溶媒適用系用の織物用助剤;粒状セラミック材料;磁性粒子(例えば、磁気記録媒体に用いるためのもの);殺生物剤;農薬;及び医薬品である。
粒状固体は、好ましくは着色剤、より好ましくは顔料である。
好ましい粒状顔料は、有機顔料、例えばザ・カラー・インデクス 第三版(1971年)及びその後のその改訂版、及び補遺(「顔料」という標題の章)に記載されている部類の顔料である。有機顔料の例は、アゾ(ジアゾ及び縮合アゾを含む)、チオインジゴ、インダントロン、イソインダントロン、アンタントロン、アントラキノン、イソジベンズアントロン、トリフェンジオキサジン、キナクリドン及びフタロシアニン系、特に銅フタロシアニン及びその核ハロゲン化誘導体、並びに更に酸性、塩基性及び媒染染料のレーキである。カーボンブラックは、しばしば無機顔料とみなされることもあるが、分散性の点でむしろ有機顔料のように振る舞い、好適な粒状固体の更なる例に相当する。好ましい有機顔料はフタロシアニン、特に銅フタロシアニン顔料、アゾ顔料、インダントロン、アンタントロン、キナクリドン及びカーボンブラック顔料である。
好ましい無機粒状固体は、増量剤及び充填材、例えばタルク、カオリン、シリカ、バライト及びチョーク;粒状セラミック材料、例えばアルミナ、シリカ、ジルコニア、チタニア、窒化ケイ素、窒化ホウ素、炭化ケイ素、炭化ホウ素、混合ケイ素−アルミニウム窒化物及び金属チタン酸塩;粒状磁性材料、例えば遷移金属(特に鉄及びクロム)の磁性酸化物、例えばガンマ−Fe、Fe及びコバルトでドープされた酸化鉄、酸化カルシウム、フェライト、特にバリウムフェライト;並びに金属粒子(特に金属鉄、ニッケル、コバルト及びそれらの合金)である。
本発明の方法は、顔料が好ましくはシアン、マゼンタ、イエロー又はブラック顔料であるインク、例えばインクジェット印刷用インクに用いるための封入粒状固体分散液の製造に用いられる。粒状固体は単一の化学種でも、あるいは2種以上の化学種を含む混合物(例えば、2種以上の異なる顔料を含む混合物)でもよい。すなわち、2種以上の異なる粒状固体を発明の方法で用いてもよい。
液体媒質は非極性でもよいが、好ましくは極性である。「極性」液体媒質は、ジャーナル・オブ・ペイント・テクノロジー、第38巻、1966年、269頁のCrowley等による「溶解度に対する三次元的アプローチ」(“A Three Dimennsional Approach to Solubility”)と題する論文に記載されているように、中程度から強度の結合まで形成することが一般に可能である。極性液体媒質は、上記論文中に明記されるとおり5つ以上の数の水素結合を一般に有する。
好適な極性液体媒質の例は、エーテル、グリコール、アルコール、ポリオール、アミド、特に水である。
液体媒質は水であるか、あるいは水を含むことが好ましい。なせなら、これらの液体媒質は著しく安定且つ微細な封入粒状固体を生じる傾向があるからである。液体媒質は、重量に基づいて、好ましくは1〜100%、より好ましくは10〜100%、特に好ましくは20〜90%、とりわけ30〜80%の水を含む。残りは1種以上の極性有機液体であることが好ましい。
好ましい非極性液体媒質には、非ハロゲン化芳香族炭化水素(例えば、トルエン及びキシレン);ハロゲン化芳香族炭化水素(例えば、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン及びクロロトルエン);非ハロゲン化脂肪族炭化水素(例えば、完全飽和したもの及び部分飽和したものを含む、6つ以上の炭素原子を含む線状及び分枝状脂肪族炭化水素);ハロゲン化脂肪族炭化水素(例えば、ジクロロメタン、四塩化炭素、クロロホルム、トリクロロエタン);天然非極性液体(例えば、植物油、ヒマワリ油、亜麻仁油、テルペン及び脂肪グリセリド);並びにそれらの組み合わせが含まれる。
液体媒質は、液体の混合物を含んでいてよく、該液体は極性又は非極性液体であってよい。液体媒質の少なくとも1つの成分は極性液体であることが好ましく、液体媒質全ての成分は極性液体であることがより好ましい。
液体媒質が1種以上の液体を含むとき、該液体媒質は多相液体(例えば、液−液エマルジョン)の形であってよいが、好ましくは単一相(均質)液体の形である。
水以外の極性液体は水に対して混和性であることが好ましい。
好ましい態様では、液体媒質は水及び水に混和性の有機液体を含む。そのような液体媒質は、広範囲の架橋剤の溶解及び/又は分散を促進するので好ましい。
液体媒質に含有させるために好ましい水に混和性の有機液体は、例えば、C1−6アルカノール、好ましくはメタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、t−ブタノール、n−ペンタノール、シクロペンタノール及びシクロヘキサノール;線状アミド、好ましくはジメチルホルムアミド又はジメチルアセトアミド;水に混和性のエーテル、好ましくはテトラヒドロフラン及びジオキサン;ジオール、好ましくは2〜12個の炭素原子を有するジオール、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ペンチレングリコール、ヘキシレングリコール及びチオジグリコール、並びにオリゴ−及びポリ−アルキレングリコール、好ましくはジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール及びポリプロピレングリコール;トリオール、好ましくはグリセロール及び1,2,6−ヘキサントリオール;ジオールのモノ−C1−4アルキルエーテル、好ましくは2〜12個の炭素原子を有するジオールのモノ−C1−4アルキルエーテル、特に2−メトキシエタノール、2−(2−メトキシエトキシ)エタノール、2−(2−エトキシエトキシ)エタノール、2−[2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ]エタノール、2−[2−(2−エトキシエトキシ)エトキシ]エタノール及びエチレングリコールモノアリルエーテル;環状アミド、好ましくは2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン、カプロラクタム及び1,3−ジメチルイミダゾリドンである。
液体媒質は、水及び2種以上、特に2〜8種の水に混和性の有機液体を含むことが好ましい。
特に好ましい水に混和性の有機液体は、環状アミド、特に2−ピロリドン、N−メチル−ピロリドン及びN−エチル−ピロリドン;ジオール、特に1,5−ペンタンジオール、エチレングリコール、チオジグリコール、ジエチレングリコール及びトリエチレングリコール;並びにジオールのモノ−C1−4アルキル及びC1−4アルキルエーテル、より好ましくは2〜12個の炭素原子を有するジオールのモノ−C1−4アルキルエーテル、特に2−メトキシ−2−エトキシ−2−エトキシエタノール;並びにグリセロールである。
水及び水に混和性の有機液体の両方が液体媒質中に存在するとき、水対水混和性有機液体の重量比は、好ましくは99:1〜5:95、より好ましくは95:5〜50:50、特に95:5〜75:25である。
液体媒質は、架橋剤又は分散剤のいずれに対しても反応性でないことが好ましい。従って、液体媒質はアミン、イミン、チオール、カルボン酸又はエポキシ基を有する成分を実質的に含まないことが好ましい。
分散剤は1分子当たり、好ましくは2つ以上、特に10以上のカルボン酸基を含む。
架橋剤が2つのエポキシ基を有するとき、分散剤は10以上のカルボン酸基を含むことが好ましい。
カルボン酸基は、分散剤中に遊離酸(−COOH)の形又は塩の形で存在し得る。塩は、例えば、金属イオン、アンモニウム、置換アンモニウム、第4級アンモニウム又はピリジニウム塩である。
分散剤は、好ましくはポリマーを含み、より好ましくはポリマーである。分散剤は、好ましくはポリウレタンを含み、より好ましくはポリウレタン、ポリエステル又はより好ましくはポリビニル分散剤である。分散剤は、物理的にブレンドされた、又は化学的に結合された(例えば、グラフトされた)ポリマーの組み合わせであってよい。
カルボン酸基は、少なくとも1つのカルボン酸基を含むモノマーを共重合させることによってポリマー分散剤へ組み込むことが好ましい。好ましいポリビニル分散剤は、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、より好ましくはメタクリル酸、アクリル酸及びベータカルボキシエチルアクリレートからの少なくとも1つのモノマー残基を含んでいることが好ましい。
ポリウレタンの場合、カルボン酸基を組み込む好ましい方法は、ヒンダード(hindered)カルボン酸基を有するジオールを共重合させることによるものである。そのようなジオールの好ましい例は、ジメチロールプロパン酸である。
少なくとも1つのカルボン酸基を有するポリエステルは、ジオールモノマーを過剰のジカルボン酸モノマーと反応させることによって製造することができる。カルボン酸基は、ヒンダードカルボン酸基を有するジオール(上記のもの)をジカルボン酸モノマーと共重合させることによって組み込むこともできる。
分散剤中のカルボン酸基の機能は、主に架橋剤中のエポキシ基と架橋することである。さらに、未反応カルボン酸基は最終的な封入粒状固体の凝集及び凝結に対する安定化を促進する。カルボン酸基は、極性、特に水性媒質中で安定化基として効果的である。
カルボン酸基が液体媒質に分散された最終的な封入粒状固体を安定化するための唯一の基である場合、架橋反応が完了した後に未反応カルボン酸基が確実に残存するように、カルボン酸基がエポキシ基に対してモル過剰であることが好ましい。1つの態様では、カルボン酸基対エポキシ基のモル比は、好ましくは10:1〜1.1:1、より好ましくは5:1〜1.1:1、特に好ましくは3:1〜1.1:1である。
分散剤は、必要に応じて他の安定化基を有してよい。安定化基の選択及びそのような基の量は、液体媒質の種類によって大きく左右される。安定化基は親水性(例えば、極性媒質の場合)又は疎水性(例えば、非極性媒質の場合)のいずれかの傾向を有する。
好ましいポリマー分散剤は、親水性及び疎水性モノマーの両方から誘導される。
親水性モノマーは、イオン基又は非イオン基である親水性基を含むモノマーである。イオン基は陽イオン基でもよいが、好ましくは陰イオン基である。両性安定化を得るために、陽イオン及び陰イオン基の両方が分散剤中に存在してよい。好ましい陰イオン基は、前記のような遊離酸又は塩の形のフェノキシ、スルホン酸、硫酸、ホスホン酸、ポリホスホン酸及びリン酸基である。好ましい陽イオン基は、第4級アンモニウム、ベンズアルコニウム、グアニジン、ビグアニジン及びピリジニウムである。これらは水酸化物、硫酸塩、硝酸塩、塩化物、臭化物、ヨウ化物及びフッ化物のような塩の形でもよい。好ましい非イオン基は、グルコシド、サッカライド、ピロリドン、アクリルアミド、特にヒドロキシ基及びポリ(アルキレンオキシド)基、より好ましくはポリ(エチレンオキシド)又はポリ(プロピレンオキシド)基、特に式−(CHCHO)H又は−(CHCHO)1−4−アルキル(nは3〜200、好ましくは4〜20)の基である。分散剤は単一の非イオン基、分散剤全体にわたっていくつかの非イオン基又は非イオン基を含む1つ以上のポリマー鎖を含んでいてよい。ヒドロキシ基は、ポリビニルアルコール、ポリヒドロキシル官能性アクリル化合物及びセルロースなどのポリマー鎖を用いて組み込むことができる。エチレンオキシ基は、ポリエチレンオキシドのようなポリマー鎖を用いて組み込むことができる。
疎水性モノマーは、疎水性基を含むモノマーである。
好ましい疎水性基は主に、3個未満の親水基を含む(より好ましくは親水基を含まない)炭化水素、フルオロカーボン、ポリC3−4アルキレンオキシ及びアルキルシロキサンである。疎水基は、疎水性モノマーの側鎖でも、又は鎖の中にあってもよいC3−50鎖又はプロピレンオキシドであることが好ましい。
ポリマー分散剤の場合、ホモポリマーであってよいが、好ましくはコポリマーである。
ポリマー分散剤は、ランダムポリマー(統計学的に短いブロック又はセグメントを有する)を含むのが好ましいが、ブロックポリマー又はグラフトポリマー(より長いブロック又はセグメントを有する)を含んでいてよい。ポリマー分散剤はまた交互ポリマーを含んでいてもよい。ポリマー分散剤は、分枝状又は星型であってもよいが、好ましくは線状である。ポリマー分散剤は、2つ以上のセグメントを有していてよいが(例えば、ブロックコポリマー及びグラフトコポリマー)、好ましくはランダムである。
ポリマー分散剤が2つ以上のセグメントを有する態様では、セグメント同士は、互いに対して少なくとも1つのセグメントは疎水性であり、そして少なくとも1つのセグメントは親水性であることが好ましい。親水性及び疎水性セグメントをつくる好ましい方法は、親水性及び疎水性モノマーをそれぞれ共重合させることによるものである。分散剤が少なくとも1つの親水性セグメント及び少なくとも1つの疎水性セグメントを有する場合、カルボン酸基は疎水性セグメント、親水性セグメント、及びそれらの両者にあってよい。
ポリビニル分散剤は任意の好適な手段で製造することができる。ポリビニル分散剤の好ましい製造法は、ビニルモノマー、特に芳香族基を含む(メタ)アクリレート及びビニルモノマー、例えばビニルナフタレン、特にスチレン系モノマーのフリーラジカル重合である。好適なフリーラジカル重合法としては、以下に限定するわけではないが、懸濁重合、溶液重合、分散重合、好ましくはエマルジョン重合がある。ビニル重合は、水を含む液体組成物中で行うことが好ましい。
好ましいポリビニル分散剤は、1種以上の(メタ)アクリレートモノマーからの残基を含む。
ポリビニル分散剤はコポリマーであることが好ましい。
親水性及び疎水性モノマー両方の残基を含むコポリビニル分散剤は、実質的にセグメントを含まないことが好ましい。コポリビニル分散剤は、例えば、セグメントの長さがしばしば統計的に非常に短いか又は効果的には存在しないフリーラジカル共重合法によって製造することができる。それはしばしば「ランダム」重合と呼ばれる。セグメントを有するコポリビニル分散剤は、リビング重合、特に連鎖移動重合、原子連鎖移動重合、マクロモノマー重合、グラフト重合及び陰イオン又は陽イオン重合のような重合法によって製造することができる。
好適な親水性ビニルモノマーには非イオンビニルモノマー及びイオンビニルモノマーがある。
好ましい非イオンビニルモノマーは、サッカライド、グルコシド、アミド、ピロリドン、特にヒドロキシ及びエトキシ基を含むものである。
非イオンビニルモノマーの好ましい例は、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ビニルピロリドン、エトキシル化(メタ)アクリレート及び(メタ)アクリルアミドである。
好適なイオンビニルモノマーは陽イオン性でもよいが、好ましくは陰イオン性である。
好ましい陰イオンビニルモノマーは、遊離酸の形又はその塩の形であってよいリン酸基及び/又はスルホン酸基を含むものである。塩の種類は前記のとおりである。好ましい例は、スチレンスルホン酸、ビニルベンジルスルホン酸、ビニルスルホン酸、アクリロイルオキシアルキルスルホン酸(例えば、アクリロイルオキシメチルスルホン酸、アクリロイルオキシエチルスルホン酸、アクリロイルオキシプロピオン酸及びアクリロイルオキシブチルスルホン酸)、メタクリロイルオキシメチルスルホン酸、メタクリロイルオキシエチルスルホン酸、メタクリロイルオキシプロピルスルホン酸及びメタクリロイルオキシブチルスルホン酸)、2−アクリルアミド−2−アルキルアルカンスルホン酸(例えば、2−アクリルアミド−2−メチルエタンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸及び2−アクリルアミド−2−メチルブタンスルホン酸)、2−メタクリルアミド−2−アルキルアルカンスルホン酸(例えば、2−メタクリルアミド−2−メチルエタンスルホン酸、2−メタクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸及び2−メタクリルアミド−2−メチルブタンスルホン酸)、モノ−(アクリロイルオキシアルキル)ホスフェート(例えば、モノ(アクリロイルオキシエチル)ホスフェート及びモノ(3−アクリロイルオキシプロピル)ホスフェート)並びにモノ(メタクリロイルアルキル)ホスフェート(例えば、モノ(メタクリロイルオキシエチル)ホスフェート及びモノ(3−メタクリロイルオキシプロピル)ホスフェート)である。
好ましい陽イオン性ビニルモノマーは、第4級アミン、ピリジン、グアニジン及びビグアニジン基を含むものである。
好ましい疎水性ビニルモノマーは親水性基をもたない。好ましい疎水性ビニルモノマーには、C1−20ヒドロカルビル(メタ)アクリレート、ブタジエン、スチレン及びビニルナフタレンがある。特に好ましいのは、C4−20ヒドロカルビル(メタ)アクリレート、例えばブチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニルアクリレート、ラウリルアクリレート及びステアリルアクリレートである。特に好ましい疎水性ビニルモノマーは、2−エチルヘキシルメタクリレートである。これらの疎水性ビニルモノマー中のヒドロカルビル基は分枝状であってもよいが、線状であることが好ましい。
ポリエステルは通常、ジカルボン酸のジオールでのエステル化によって製造される。カルボン酸の代わりに、酸の酸塩化物、無水物又はアルキル(典型的にはメチル又はエチル)エステルを用いることができる。少量のモノ官能性及び/又はトリ官能性もしくはそれ多官能性モノマーを用いてよい。カルボン酸及び/又はアルコールの混合物を用いてよい。ポリエステル製造の別のルートとしては、カプロラクトンのような環状ラクトンの開環がよく知られている。カプロラクトンを重合すると、ポリエステル又はポリウレタン合成に使用可能なジオールを得ることができる。
ポリエステルの製造用の好ましい疎水性モノマーは、C1−50ヒドロカルビレン、より好ましくはC4−50ヒドロカルビレン、特に好ましくはC6−20ヒドロカルビレン残基を含むエステル、酸、酸塩化物、無水物、環状ラクトン及びアルコールである。これらのヒドロカルビレン残基は、アルキレン、シクロアルキレン、アリーレン、アラルキレン及び/又はアルカリーレン残基を含むことが好ましい。疎水性モノマーは、ポリエステル重合に必要なもの以外の親水性基を含まないことが好ましい。他の好ましい疎水性モノマーには、C3−4アルキレンオキシ(特にプロピレンオキシ)、フルオロカーボン及びシロキサンを含むものがある。疎水性ウレタン、ポリカーボネート及びポリビニルは、カルボン酸基又はヒドロキシ基がポリエステルに組み込まれるように、カルボン酸基又はヒドロキシ基を用いて製造することができる。
ポリエステルの製造に好ましい親水性モノマーは、非反応性であるヒドロキシ基及び/又は酸基、あるいはエチレンオキシ基を含む。特に好ましいのはポリエチレンオキシジオールである。
ポリエステルの製造に適した親水性モノマーは、ヒドロキシ及び/又はカルボン酸基を有するスルホン酸、例えばイオン化スルホネート基を有する芳香族ジカルボン酸を含んでいてよい。特に好ましいのは、ソジオ(sodio)‐5−スルホイソフタル酸(SSIPA)である。エステル縮合反応を容易に受ける2つ以上の基を有し、そして1つ以上のスルホン酸基を有する他の有用なモノマーは、少なくとも1つのスルホン酸基を有するジヒドロキシアリールモノマーである。
親水性残基を導入する更なる方法は、重合後に脱保護される保護親水基(例えば、シリル化ヒドロキシル基)を含むポリエステルモノマーを組み込むことである。保護/脱保護の利点は、分子量及び残留酸/ヒドロキシ官能基を別々に制御することができることである。
ポリウレタンは、ジイソシアネートとジオールとの縮合によって製造することが好ましい。少量の一官能性及び/又は三若しくはそれ以上の多官能性モノマーを用いてもよい。イソシアネート及び/又はアルコールの混合物を用いてもよい。
ポリウレタンを製造するための疎水性モノマーは、好ましくはC1−50ヒドロカルビレン、より好ましくはC4−50ヒドロカルビレン、特にC6−20ヒドロカルビレン残基を含むイソシアネート及びアルコールである。ヒドロカルビレン残基は、アルキレン、シクロアルキレン、アリーレン、アラルキレン及び/又はアルカリーレン残基を含んでいてもよい。疎水性モノマーは、ウレタン重合に必要なもの以外の親水性基を含まないことが好ましい。ポリウレタン製造用の他の好ましい疎水性モノマーは、シロキサン及びフルオロカーボン基を含む。疎水性ポリカーボネート、ポリエステル及びポリビニルは、ポリウレタンに組み込みうるイソシアネート又はヒドロキシ基で製造してもよい。
好適な疎水性イソシアネートの例は、エチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、2,4−トルエンジイソシアネート、2,6−トルエンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート及びその水素添加誘導体、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート及びその水素添加誘導体、及び1,5−ナフチレンジイソシアネートである。ポリイソシアネートの混合物、特にトルエンジイソシアネートの異性体混合物又はジフェニルメタンジイソシアネート(又はその水素添加誘導体)の異性体混合物、及びウレタン、アロファネート、尿素、ビューレット、カルボジイミド、ウレトンイミン(uretonimine)又はイソシアヌレート残基の導入によって改質された有機ポリイソシアネートを用いることができる。
好ましい疎水性アルコールは、C3−4アルキレンオキシ(特に、プロピレンオキシ)、フルオロカーボン、シロキサン、ポリカーボネート及びC1−20ヒドロカルビルポリ(メタ)アクリレート残基を含む。
ポリウレタンを製造するための疎水性ジオールの好ましい例は、ヘキサンジオール、シクロヘキサンジオール、プロピレンオキシジオール、ポリカプロラクトンからのジオール、ポリバレロラクトンからのジオール、ポリC1−20−アルキル(メタ)アクリレートジオール、シロキサンジオール、フルオロカーボンジオール及びアルコキシル化ビスフェノールAジオールである。
ポリウレタンの製造に好ましい親水性モノマーは、エチレンオキシ、スルホン酸、リン酸又は第4級アンモニウム基を含む。スルホン酸基を含むモノマーの好ましい例は、ビス(2−ヒドロキシエチル)−5−ソジオスルホイソフタレートである。第4級アンモニウム基を含むそのようなモノマーの好ましい例は、第4級アンモニウム塩ジオール、例えば臭化ジメタノールジエチルアンモニウムである。酸及び/又は第4級アンモニウム基は上記のような塩の形でもよい。エチレンオキシ基を含む好ましいポリウレタンモノマーはポリエチレンオキシドジオール、及び特に欧州特許第317,258号明細書(その開示内容は本明細書中に援用されるものとする)に記載のポリアルキレンアミンである。
親水性残基は、得られる親水性ポリウレタンが重合後に未反応ヒドロキシ基を有するように、イソシアネート基よりも過剰のヒドロキシ基を用いることによってポリウレタンへ導入することができる。また、シリル化ヒドロキシ基のような保護親水性基を含むモノマーを用いてもよい。そのような保護基は重合後に脱保護することができる。
分散剤は、封入された粒状固体の製造プロセスで用いられる液体媒質、そしてまた封入された粒状固体が用いられる最終的な目的組成物(例えばインク)に用いられる液体ビヒクルに適するように選択されることが好ましい。従って、例えば、封入された粒状固体が水性インクジェット印刷用インクに用いられるとき、分散剤は親水性が優勢であることが好ましい。同様に、封入された粒状固体が油性(非水性)ペイント又はインクに用いられる場合、分散剤は疎水性が優勢であることが好ましい。
1つの態様では、カルボン酸基とエポキシ基との間の架橋反応は100℃未満の温度及び少なくとも6のpHで行われる。
架橋剤が1つ以上のオリゴマー分散性基を有する1つの態様では、分散剤は、分散剤の特性を維持し、そして架橋剤と効果的に架橋するのに十分なカルボン酸基を有するのならば、どのような酸価を有してもよい。
架橋剤が1つ以上のオリゴマー分散性基を有する1つの態様では、分散剤の酸価は少なくとも125mgKOH/gであることが好ましい。
全ての態様において、分散剤の酸価(AV)は、好ましくは130〜320mgKOH/g、より好ましくは135〜250mgKOH/gである。本願発明者らは、そのような酸価を有する分散剤が、改善された安定性を示す封入粒状固体をもたらすことを見出した。この改善された安定性は、粒状固体の分散がより難しく、架橋剤がオリゴマー分散性基をほとんど含まない(特に全く含まない)、要求の厳しいインクジェット印刷に用いられる液体ビヒクルに特に有用である。
分散剤の数平均分子量は、好ましくは500〜100,000、より好ましくは1,000〜50,000、特に1,000〜35,000である。分子量はゲル透過クロマトグラフィー(「GPC」)で測定するのが好ましい。
分散剤は液体媒質に完全に可溶性である必要はない。すなわち、完全に透明で非散乱溶液であることは必須ではない。分散剤は界面活性剤状ミセルに凝集して、液体媒質中で少し曇った溶液となる。分散剤のある割合がコロイド又はミセル相を形成する傾向があるような分散剤でもよい。分散剤は液体媒質中で均一かつ安定な分散液を形成し、これらは放置したとき沈降又は分離しないことが好ましい。
分散剤は液体媒質に実質的に可溶性であり、透明な又は曇った溶液を生じることが好ましい。
好ましいランダムポリマー分散剤は透明な組成物を生じる傾向があるが、2つ以上のセグメントを有するあまり好ましくないポリマー分散剤は液体媒質中で前記の曇った組成物を生じる傾向がある。
本発明の好ましい態様では、分散剤は架橋前に粒状固体上に吸着され、そのため比較的安定な分散液を形成する。次に、ホウ酸塩化合物の存在下で架橋剤を用いて、該分散液において架橋形成を実施する。この予備吸着及び予備安定化は、本発明が、ポリマー又はプレポリマー(これは分散剤ではない)を粒状固体、液体媒質及び架橋剤と混合し、架橋の間又は架橋後にのみ得られた架橋ポリマーが粒状固体上に沈殿するコアセルベーション法と特に異なる点である。
分散剤が少なくとも125mgKOH/gの酸価を有する態様では、架橋剤はオリゴマー分散性基をもたなくてもよいが、好ましくは架橋剤は1つ以上のオリゴマー分散性基を有する。
本明細書中に用いるオリゴマーという用語は、分子量の上限又は繰り返し単位数の上限に限定を設けない。
1つ以上のオリゴマー分散性基を有する架橋剤は、得られた封入粒状固体の安定性を高める。この高められた安定性は、粒状固体の分散がより難しく及び/又は分散剤の酸価が125mgKOH/g未満であるインクジェット印刷に用いられる液体ビヒクルにおいて特に有用である。
オリゴマー分散性基は、好ましくはポリアルキレンオキシド、より好ましくはポリC2−4−アルキレンオキシド、特にポリエチレンオキシドであるか、又はこれを含む。ポリアルキレンオキシド基は、得られる封入粒状固体の安定性を改善するステアリン酸安定化をもたらす。
ポリアルキレンオキシドは、好ましくは3〜200、より好ましくは5〜50、特に5〜20のアルキレンオキシド繰り返し単位を含む。
全ての態様において、少なくとも2つのエポキシ基を有する好ましい架橋剤はエピクロロヒドリン誘導体である。
好ましい架橋剤は2つのエポキシ基を有する。
2つのエポキシ基を有し、オリゴマー分散性基をもたない好ましい架橋剤は、エチレングリコールジグリシジルエーテル、レゾルシノールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、水素添加ビスフェノールAジグリシジルエーテル、及びポリブタジエンジグリシジルエーテルである。
2つのエポキシ基及び1つ以上のオリゴマー分散性基を有する好ましい架橋剤は、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ジプロピレングリコールジグリシジルエーテル及びポリプロピレングリコールジグリシジルエーテルである。
3つ以上のエポキシ基を有し、オリゴマー分散性基をもたない好ましい架橋剤は、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリトリトールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル及びトリメチロールプロパンポリグリシジルエーテルである。
分散剤がただ1つのカルボン酸基を含むとき、架橋剤は少なくとも10個のエポキシ基及び任意に1つ以上のオリゴマー分散性基を含むポリマーが好ましい。ポリマー架橋剤の好ましい例は、グリシジル(メタ)アクリレートを含むポリビニルコポリマーである。
特に液体媒質が水性である場合、架橋剤は液体媒質に可溶性であることが好ましい。架橋剤は水に可溶性であり、1重量%の架橋剤を含む水と架橋剤の混合物が25℃で溶液の状態であることがより好ましい。
本願発明者らは、液体媒質に実質的に不溶性の架橋剤が粒状固体の凝集又は凝結を引き起こす傾向があることを見出した。
架橋剤は、架橋剤の可溶化を促進する1つ以上のエチレングリコール基を有することが好ましい。
1種以上の架橋剤を分散剤中のカルボン酸基の架橋に用いることができる。
2種以上の架橋剤を用いる場合、これらは同じ又は異なる数のエポキシ基を有してよい。
架橋剤に存在する架橋基はもっぱらエポキシ基であることが好ましい。
従って、1つの態様では、本発明は、粒状固体及び液体媒質の存在下で分散剤を架橋剤で架橋し、それによって架橋された分散剤中に粒状固体を封入することを含む、液体媒質に分散された封入粒状固体の製造方法であって、
a)分散剤は少なくとも1つのカルボン酸基を有し;
b)架橋剤は少なくとも2つのエポキシ基及び1つ以上のエチレングリコール基を有し;且つ
c)カルボン酸基とエポキシ基との間の架橋反応はホウ酸塩化合物の存在下、100℃未満の温度及び少なくとも6のpHで行われる方法を提供する。
別の態様では、架橋剤は1つ以上のオリゴマー分散性基を有し、分散剤は少なくとも125mgKOH/gの酸価を有する。本願発明者らは、架橋剤中のオリゴマー分散性基と少なくとも125mgKOH/gの酸価を有する分散剤との組み合わせ効果が、液体ビヒクル中ですぐれた安定性を有する封入粒状固体をもたらすことを見出した。
カルボン酸基とエポキシ基との間の反応は、架橋手段として使用できることが知られている。しかしながら、そのような反応はルイス酸及び/又は低いpH(5未満)及び約150℃の温度で行われる傾向がある。本願発明者らは意外にも、エポキシ/カルボン酸架橋反応がホウ酸塩化合物を用いて少なくとも6のpHで行われると、その反応が特に順調に進行することを見出した。
架橋のための温度が低いことが、結果として液体媒質中の粒状固体の凝集及び粒子サイズ成長のレベルをより低くするので好ましい。架橋反応は、好ましくは10〜90℃、より好ましくは30〜70℃で行われる。
架橋反応のpHは、好ましくは7〜14、より好ましくは7〜12、特に8〜11である。
ホウ酸塩化合物は、ホウ酸、メタホウ酸、テトラホウ酸もしくはピロホウ酸、又はそれらの混合物、又はそれらの塩を含むのが好ましい。
ホウ酸塩化合物の好ましい塩は、アンモニウム、置換アンモニウム及びアルカリ金属塩、特にアンモニア、ナトリウム、リチウム、カリウムとの塩、又はそれらの混合塩である。しかしながら、ホウ酸塩化合物は遊離酸の形又は実質的に遊離酸の形であることが好ましい。ホウ酸が特に好ましい。
一般にホウ酸塩は結晶水を含み、これらは本発明の範囲内に含まれる。例えば、ピロホウ酸二ナトリウムは10の結晶水を一般に有し、Na・10HOとして商業的に入手することができる。
架橋反応が始まる前に、分散剤中のカルボン酸基は上記のような塩及び/又は遊離酸の形でもよい。しかしながら、100℃未満の温度でのカルボン酸基とエポキシ基との間の反応をより効果的に行うためには、カルボン酸基の少なくともいくつかが塩の形で存在することが重要であることを本願発明者らは見出した。塩の形は、(本発明の第1の側面による方法において存在する全ての成分の)pHを架橋前に少なくとも6に調整することによって得られる。
pH調整は好適な塩基を添加することによって行うことができる。好ましい塩基には、金属水酸化物、酸化物、炭酸塩並びにアミン、置換アミン及びアルカノールアミンがある。特に好ましい塩基は、アルカリ金属水酸化物、アンモニア、トリエチルアミン及びトリエタノールアミンである。特に好ましいアルカリ金属水酸化物は水酸化カリウムである。
架橋反応時間は、ある程度は温度及びpHによる。しかしながら、好ましい時間は1〜24時間、より好ましくは1〜8時間である。
架橋は、粒状固体、分散剤、架橋剤及び液体媒質を混合することを含む方法によって実施されることが好ましい。
成分は適当な方法、例えば振とう、攪拌等によって混合することができる。
好ましくは、架橋は、特定割合の以下の成分:
a)30〜99.7部、好ましくは50〜97部の液体媒質;
b)0.1〜50部、好ましくは1〜30部の粒状固体;
c)0.1〜30部、好ましくは1〜30部の分散剤;
d)0.001〜30部、好ましくは0.01〜10部の架橋剤;
e)架橋剤中のエポキシ基1モル当たり0.5〜5モル当量のホウ酸塩化合物、
(ここで、部は重量に基づき、部の合計a)+b)+c)+d)+e)=100である。)
を含む組成物を混合することを含む方法によって行われる。
組成物は、架橋剤中のエポキシ基1モル当たり、好ましくは0.75〜4、より好ましくは0.9〜3モル当量のホウ酸塩化合物を含む。例えば、組成物が1モルのジエポキシドを含むなら、これは架橋剤中のエポキシ基1モル当たり0.5〜5モル当量のホウ酸塩化合物という要件を満たすために、1〜10モルのホウ酸塩化合物を必要とする。同様に、組成物が0.2モルのトリエポキシドを含むなら、これは架橋剤中のエポキシ基1モル当たり0.75〜4モル当量のホウ酸塩化合物という要件を満たすために、0.45〜2.4モルのホウ酸塩化合物を必要とする。
粒状固体、液体媒質及び分散剤はどのような順序で混合してもあるいは同時に混合してもよい。混合物は、分散液が形成されるまで、例えばボールミル粉砕、ビーズミル粉砕、礫ミル粉砕によって、又はより念入りな技術、例えば超音波、マイクロ流動化(Microfluidics(登録商標)マシーンを使用する)によって、又は流体力学的キャビテーション(例えば、CaviPro(登録商標)デバイスを使用する)を用いて粒状固体の粒子サイズを望ましい大きさに減少させるために機械的処理を行う。独立に又は液体媒質及び/又は分散剤との混合物の形で粒状固体の粒子サイズを減少させるように、該粒状固体を処理することができる。その後、残りの成分が加えられて、本発明に適した混合物が得られる。
必要に応じて、混合物は架橋前に濾過又は遠心分離して、分散性に乏しい又は大きすぎる粒状物質を除去してもよい。特に、本方法は、分散剤、粒状固体及び液体媒質を含む混合物を架橋前に、細孔サイズが好ましくは10ミクロン未満、より好ましくは5ミクロン未満、特に1ミクロン未満のフィルターを通して濾過することを含むことが好ましい。
粒状固体の機械的処理の間に架橋剤が存在するならば、固体の粒子サイズが十分に小さくなる前に、分散液の望ましくない予備架橋が結果として生じるかもしれない。粒状固体を分散剤及び液体媒質の存在下で粉砕するとき、温度は、40℃を超えないことが好ましく、30℃を越えないことが特に好ましい。
架橋剤は、粒状固体の粒子サイズを減少させる機械的処理の後で、粒状固体、分散剤及び液体媒質を含む混合物に加えることが好ましい。架橋は架橋剤が添加されている間に形成され得るが、架橋剤の完全な添加後に少なくとも大部分の架橋が形成されることがより好ましい。これは組成物全体にわたって架橋剤がより均一に分散されることを容易にし、その結果、より均一な架橋が生じる。
架橋剤が粒状固体、分散剤及び液体媒質を含む混合物に添加されている間、架橋を抑制するために、架橋剤を該混合物へ好ましくは40℃未満、特に30℃未満の温度で加える。
本方法では、架橋剤を添加する前の粒状固体のZ−平均粒子サイズよりも最大で50%上回るZ−平均粒子サイズを有する封入粒状固体が生じることが好ましい。
封入された粒状固体は、好ましくは500nm未満、より好ましくは10〜500nm、特に10〜300nmのZ−平均粒子サイズを有する。一般に、Z−平均粒子サイズが500nm未満の粒状固体は効果的に安定化するのが難しい。このサイズの粒状固体は、ペイント及びインク、とりわけインクジェット印刷用インクにおいて特に有用である。
Z−平均粒子サイズはどのような公知の手段で測定してもよいが、好ましい方法はMalvern(登録商標)又はCoulter(登録商標)から入手しうる光子相関分光分析装置によるものである。
本発明の方法は、穏やかな温度でかつ毒性プロファイルが良好な架橋剤を用いて行うことが可能である。本方法では、凝集及び/又は凝結の程度が少なく、粒状固体の粒子サイズの成長がごくわずかである。従って、この方法は、小さい粒子サイズが重要である用途に特に有用である。例えば、インクジェット印刷では、大きな粒子はプリントヘッドで用いられる小さなノズルを塞ぐことがあるので望ましくない。本発明の方法は、プリントの光学濃度が良好であることが望ましいインクジェット印刷に用いられる封入粒状固体を提供するのに特に有用である。理由は今のところ説明できないが、現行方法により製造される分散剤を様々な基体へのインクに用いて濃い着色プリントを得ることができる。さらに、低温での使用適性は、温度に敏感な粒状固体(例えば、医薬及び農薬)の封入及び分散を可能にする。
封入プロセスの間に形成され得る少量の凝集及び凝結物質は、濾過し、フィルター上に残された乾燥凝集及び凝結物質の重量測定を行うことによって測定されることが好ましい。これには細孔サイズが1ミクロンのフィルターを用いることが好ましい。加熱及び架橋反応の開始前に本発明の第1側面による方法で用いられる成分を予備濾過することも好ましい。さらにまた、このフィルターは1ミクロンの細孔サイズを有するのが好ましい。この方法では、例えば粒状固体の不十分な機械的分散に由来する物質も測定されるのではなく、架橋反応から生じる凝集及び凝結物質のみが測定される。
目視による質的評価又は量的デジタルイメージ捕捉及び分析のいずれかによる光学顕微鏡検査を用いて、封入反応中の凝集及び/又は凝結の程度を測定することも可能である。
本発明の第2の側面では、本発明の第1側面の方法によって得られる又は得られた液体媒質に分散された封入粒状固体を提供する。
得られた封入粒状固体はそれ自体が粒状物質である。つまり、本発明は、乾燥時に生じる又は成分を不動性固体もしくは半固体にゲル化する架橋の形に関するものではない。
実質的に全ての封入粒状固体粒子は、架橋された分散剤中に封入された単一の固体粒子を含むことが好ましい。
必要に応じて、本方法は封入粒状固体を液体媒質から単離する工程をさらに含んでよい。これは、例えば、好ましくは液体媒質を蒸発させることによって、あるいはそれほど好ましくないが、封入粒状固体を沈殿又は凝集させ、その後、濾過することによって行われる。
蒸発の好ましい方法には、凍結乾燥、噴霧乾燥及び攪拌乾燥がある。沈殿及び凝集の好ましい方法には、金属塩の添加及び遠心分離がある。
本発明の第3の側面は、本発明の第2側面による液体媒質に分散された封入粒状固体から封入粒状固体を単離する方法によって得られる又は得られた封入粒状固体を提供することである。
本発明の第1側面による方法によって製造された封入粒状固体は、液体ビヒクル及び封入粒状固体を含む組成物を提供するのに有用である。「液体ビヒクル」という用語は、最終的な配合物、例えば、インク、ペイント等の中に存在する液体(1種又はそれ以上)を意味する。
好ましくは、封入粒状固体は液体ビヒクルに分散されている。より好ましくは、該分散液は実質的に均質である。
従って、本発明の第4の側面は、本発明の第1側面による方法によって得られる又は得られた液体ビヒクル及び封入粒状固体を含む組成物を提供することである。
組成物は、1種以上の液体を本方法の生成物に加えることによって及び/又は本方法の生成物を濃縮することによって及び/又は本方法の生成物を単離しそして単離された封入粒状固体を液体ビヒクルと混合することによって製造することができる。該組成物は、1種以上の望ましい液体ビヒクル成分を、本発明の第1側面による方法から生じる液体媒質に分散された封入粒状固体に添加することによって製造することが好ましい。(「乾燥」状態の)封入粒状固体を単離しないこの後者の方法は、液体ビヒクルと共により小さい封入粒状固体を生じる傾向がある。
好ましくは、上記の組成物は、粒状固体が着色剤、より好ましくは顔料であるインクである。
液体ビヒクルは、封入粒状固体の製造プロセスで用いられる液体媒質と同一でも、異なっていてよい。すなわち、場合によっては、本発明の方法の生成物は、液体成分を変える必要なしに、インクのような最終用途に直接役立つものであるかもしれない。
液体ビヒクルが水を高い比率で含有すること、及び望ましい組成物(例えばインク)の製造に必要な更なる液体が本発明の第1側面によるプロセスの後に加えられることが多くの場合望ましい。
インクジェット印刷用組成物の場合、液体ビヒクルは水及び有機液体(好ましくは、水に混和性の有機液体)の両方を含むことが好ましい。好ましい水に混和性の有機液体は前記の通りである。水対水混和性有機液体の好ましい比率は上記の通りである。
好ましい組成物は、
a)0.1〜50部、より好ましくは1〜25部の本発明の第1側面による方法で得られる又は得られた封入粒状固体;
b)50〜99.9部、より好ましくは99〜75部の水及び/又は水に混和性の有機液体を含む液体ビヒクル
を含み、ここで、全ての部は重量に基づき、成分a)及びb)の合計は100部となる。
本発明の組成物は、特に粒状固体が顔料である、インクジェット印刷用インク用に又はインクジェット印刷用インクとして用いるのにとりわけ適している。
インクジェット印刷の場合、本発明の第4側面による組成物の粘度は、25℃で測定したとき、好ましくは30Pa.s未満、より好ましくは20Pa.s未満、特に10Pa.s未満である。
インクジェット印刷の場合、本発明の第4側面による組成物の表面張力は、25℃で測定したとき、好ましくは20〜65ダイン/cm、より好ましくは25〜50ダイン/cmである。
本発明のインクジェット印刷用組成物は、インクジェット印刷用インクに用いるのに適した追加的成分、例えば粘度調節剤、pHバッファー(例えば、1:9クエン酸/クエン酸ナトリウム)、腐蝕防止剤、殺生物剤、染料及び/又は焦げ付き減少剤を含んでいてもよい。
本発明の第5の側面では、本発明の第4側面による組成物を基体へ、好ましくはインクジェットプリンターによって塗布することを含む、イメージを基体へ印刷する方法を提供する。
本発明の第6の側面では、好ましくはインクジェットプリンターによって、本発明の第4の側面による組成物で印刷された紙、プラスチックフィルム又は織物を提供する。好ましい紙は普通紙又は酸性、アルカリ性又は中性の処理紙である。商業的に入手可能な紙の例は、Photo Paper Pro(PR101)、Photo Paper Plus(PP101)、Glossy Photo Paper(GP401)、Semi Gloss Paper(SG101)、Matte Photo Paper(MP101)(いずれもキャノン社から入手可能);Premium Glossy Photo Paper、Premium Semi Gloss Paper、ColorLife(登録商標)、Photo Paper、Photo Quality Glossy Paper、Double−sided Matte Paper、Matte Paper Heavy Weight、Photo Quality Inkjet Paper、Bright White Inkjet Paper、Premium Plain Paper(いずれもセイコー・エプソン社から入手可能);HP All−In−One Printing Paper、HP Everyday Inkjet Paper、HP Everyday Photo Paper Semi−Glossy、HP Office Paper、HP Photo Paper、HP Premium High−Gloss Film、HP Premium Paper、HP Premium Photo Paper、HP Premium Plus Photo Paper、HP Printing Paper、HP Superior Inkjet Paper(いずれもヒューレット・パッカード社から入手可能);Everyday Glossy Photo Paper、Premium Glossy Photo Paper(両者ともレックスマーク社から入手可能);Matte Paper、Ultima Picture Paper、Premium Picture Paper、Picture Paper、Everyday Picture Paper(コダック社から入手可能)である。プラスチックフィルムは透明でも不透明でもよい。オーバーヘッドプロジェクター用スライドとして用いるのに適している透明プラスチックフィルムは、例えば、ポリステル(特に、ポリエチレンテレフタレート)、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリスチレン、ポリエーテルスルホン、セルロースジアセテート及びセルローストリアセテートフィルムである。
本発明の第7の側面では、チャンバーと本発明の第4の側面による組成物とを含み、組成物はチャンバー内に存在する、インクジェットプリンターカートリッジを提供する。
本発明の方法によって得られる又は得られた封入粒状固体はまた、封入粒状固体、液体ビヒクル及び結合剤を含む表面コーティング及びペイントに用いることができる。粒状固体は、着色剤、増量剤又は充填材であることが好ましい。インクと同様、ペイントは単離された封入粒状固体を用いて製造することができるが、本発明の第1の側面による方法から得られる液体媒質に分散された封入粒状固体を用いることがより好ましい。
従って、本発明の第8の側面では、本発明の第1の側面による方法によって得られる又は得られた封入粒状着色剤、増量剤又は充填材、結合剤及び液体ビヒクルを含む組成物を提供する。結合剤は、液体媒質が蒸発された及び/又は基体に吸収された後に組成物を結合させることができるポリマー材料である。
好適な結合剤には天然及び合成ポリマーがある。好ましい結合剤は、ポリ(メタ)アクリレート、ポリスチレン、ポリエステル、ポリウレタン、アルキド、多糖類(例えば、セルロース)及びたんぱく質(例えば、カゼイン)である。結合剤は、封入粒状固体の重量に基づいて組成物中に、好ましくは100%以上、より好ましくは200%以上、さらに好ましくは300%以上、最も好ましくは400%以上存在する。
以下の実施例で本発明を更に説明する。実施例中の全ての部及び%は、断りがない限り重量に基づく。
分散剤(1)の製造
モノマー供給組成物は、メタクリル酸(172部)、メチルメタクリル酸(478部)、2−エチルヘキシルメタクリレート(350部)及びイソプロパノール(375部)を混合することによって製造した。開始剤供給組成物は、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)(22.05部)及びイソプロパノール(187.5部)を混合することによって製造した。
イソプロパノール(187.5部)を反応容器中で80℃に加熱し、連続攪拌し、窒素ガス雰囲気でパージした。内容物を攪拌し、温度を80℃に維持しかつ窒素雰囲気を維持しながら、モノマー供給及び開始剤供給組成物を反応容器へゆっくり供給した。モノマー供給及び開始剤供給組成物はいずれも2時間にわたって反応器へ供給した。反応容器内容物はさらに4時間、80℃に維持し、その後、25℃に冷却した。次に、得られた分散剤を減圧下の回転蒸発によって反応容器内容物から単離した。これを分散剤(1)と称する。分散剤(1)は、GPCによる測定で、数平均分子量が11,865、酸価が112mgKOH/g、重量平均分子量が29,225及び多分散度が2.5のアクリルコポリマーであった。
分散剤(2)〜(4)の製造
工程(i)
モノマー供給組成物(2)〜(4)は、表1の各列の成分を混合することによって製造した。
Figure 0005503296
工程(ii)
開始剤供給組成物(2)〜(4)は、表2の各列の成分を混合することによって製造した。
Figure 0005503296
工程(iii)
分散剤(2)〜(4)を製造する重合
分散剤(2)〜(4)は、分散剤(1)の製造で用いられたものの代わりに工程(i)で製造されたモノマー供給組成物(2)〜(4)及び工程(ii)で製造された開始剤供給組成物(2)〜(4)を用いた以外は分散剤(1)と全く同じ方法で製造し、単離した。
GPCによる測定で確定された分散剤(2)〜(4)の分子量は表3に示した。
Figure 0005503296
分散剤溶液(1)〜(4)
分散剤(1)〜(4)(150部)を水(470部)にそれぞれ溶解し、水酸化カリウム水溶液で中和してpH約9の水溶液を得た。これによって、約24重量%の分散剤を含む分散剤溶液(1)〜(4)が得られた。
練り顔料(1)
粒状固体(C.I.ピグメントブルー15:3、60部、クラリアント社製)を分散剤溶液(1)(340部)と混合した。混合物をブラックリーミルで3時間粉砕した。これによって、Z−平均粒子サイズが170nmの粒状固体を含み、pH8.7及び顔料含有率15重量%の練り顔料が得られた。これを練り顔料(1)と称する。
練り顔料(2)〜(8)
粒状固体(C.I.ピグメントブルー15:3又はカーボンブラック)を表4に記載のように分散剤溶液(2)〜(4)の1つと混合した。次に、該混合物を水で400部にした。混合物は垂直ブラックリービーズミルで数時間粉砕した。
Figure 0005503296
C.I.ピグメントブルー15:3は銅フタロシアニン系顔料である。
M700はキャボット社から入手しうるMonarch(登録商標)700aカーボンブラックである。
N1601Qはデグサ社から入手しうるNipex(登録商標)1601Qカーボンブラックである。
表4に示す分散剤の量は、分散剤溶液ではなくニートの分散剤の量である。従って、例えば、ニートの分散剤1部は、20重量%の分散剤を含む分散剤溶液5部に相当する。
粉砕後、最終的なZ−平均粒子サイズを測定した。結果は表4の最後の欄に示す。
実施例1−封入粒状固体分散液(1)
ホウ酸(0.06部)、次いで数平均分子量が約526のポリエチレングリコールジグリシジルエーテル(すなわち、架橋剤)(アルドリッチ社カタログ番号47,569−6、0.229部)を約25℃で練り顔料(1)(50部)にゆっくり加え、次に、混合物を40〜50℃で6時間、加熱、攪拌する。架橋反応中の混合物のpHは9.5である。
実施例2〜8−封入粒状固体分散液(2)〜(8)
封入粒状固体分散液(2)〜(8)は、練り顔料(1)の代わりに表5に示す練り顔料を用い、使用されるポリエチレングリコールジグリシジルエーテルの量及び架橋反応中のpHが表5に記載のとおりである以外は、封入粒状固体分散液(1)と全く同じ方法で製造しうる:
Figure 0005503296
実施例9〜15−インクジェット印刷用インクの製造
封入粒状固体分散液(2)〜(8)(そのままの粒状固体3部を含む)は、Butyl Cellusolve(登録商標)(10部)、Butyl Carbitol(登録商標)(16部)ピロリドン(5部)、界面活性剤(1部)及び十分な量の水を混合し、合計で100部とすることによって、表6に示すインクジェット印刷用インク(2)〜(8)に転化することができる。
Figure 0005503296
実施例16及び17
AVがそれぞれ154及び112である分散液(9)及び(10)の製造
モノマー供給組成物は、メタクリル酸(MAA)、メチルメタクリレート(MMA)、2−エチルヘキシルメタクリレート(2EHMA)及びイソプロパノールを混合することによって製造した。開始剤供給組成物は、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)(AZBN)及びイソプロパノール(187.5部)を混合することによって製造した。モノマー及び開始剤の重量部は表7に示す。
Figure 0005503296
イソプロパノール(187.5部)を反応容器中で80℃に加熱し、連続的に攪拌し、そして窒素ガス雰囲気でパージした。内容物を攪拌し、温度を80℃に維持し、かつ窒素雰囲気を維持しながら、モノマー供給及び開始剤供給組成物を反応容器へゆっくり供給した。モノマー供給及び開始剤供給組成物を共に反応器へ2時間かけて供給した。反応容器の内容物をさらに4時間80℃に維持し、その後25℃に冷却した。次に、分散剤を反応容器内容物から減圧下の回転蒸発によって単離した。得られた分散剤のMw、Mn及び酸価は表7に示す。
分散剤溶液(9)(AV154)
分散剤(9)(150部)を水に溶解し、水酸化カリウム溶液で中和してpH10.1の水溶液を得た。これを分散剤溶液(9)と称する。ポリマー含有率は30.6%であった。
分散剤溶液(10)(AV112)
分散剤(10)(150部)を水に溶解し、水酸化カリウム溶液で中和してpH10.9の水溶液を得た。これを分散剤溶液(10)と称する。ポリマー含有率は21.2%であった。
顔料分散液(9)
ピグメントブルー15:4水性ペースト(サン・ケミカルズ社製、260部)を分散剤溶液(9)(147部)及び水(192部)と混合した。混合物をミニ−ゼータビーズミルで3時間粉砕した。分散液の粒子サイズ(d90)は100nmであった。分散液の顔料含有率は15重量%であった。
顔料分散液(10)
ピグメントブルー15:4水性ペースト(サン・ケミカルズ社製、260部)を分散剤溶液(10)(212部)及び水(127部)と混合した。混合物をミニ−ゼータビーズミルで3時間粉砕した。分散液の粒子サイズ(d90)は115nmであった。分散液の顔料含有率は15重量%であった。
封入粒状固体分散液(9)及び(10)
ホウ酸(0.9部)、次いでポリエチレングリコールジグリシジルエーテル(架橋剤、0.35部)を約25℃で顔料分散液(9)及び(10)(70部)へゆっくり加えた。次に、混合物を50℃で6時間、加熱、攪拌して、封入粒状固体分散液(9)及び(10)をそれぞれ得た。
インクジェット印刷用インク(9)及び(10)
封入粒状固体分散液(9)及び(10)を表8に記載のようなインク(9)及び(10)に転化させることができる。
Figure 0005503296
実施例18及び比較実施例1(ホウ酸塩化合物非含有)
分散剤(11)の製造
モノマー供給組成物は、メタクリル酸(236.5部)、メチルメタクリレート(413.5部)、2−エチルヘキシルメタクリレート(350部)及びジプロピレングリコール(318.2部)を混合することによって製造した。開始剤供給組成物は、t−ブチル−ペルオキシ−2−エチルヘキサノエート(22部)及びジプロピレングリコール(220部)を混合することによって製造した。連鎖移動剤供給組成物は、ブチル−3−メルカプトプロピオネート(8.01部)及びジプロピレングリコール(50部)を混合することによって製造した。
ジプロピレングリコール(959.7部)を反応容器中で85℃に加熱し、連続的に攪拌し、そして窒素ガス雰囲気でパージした。内容物を攪拌し、温度を85℃に維持し、かつ窒素雰囲気を維持しながら、モノマー供給組成物、開始剤供給組成物及び連鎖移動剤供給組成物を反応容器へゆっくり供給した。モノマー供給組成物を反応器へ4時間かけて加えた。開始剤供給組成物及び連鎖移動剤供給組成物を反応器へ5時間かけて共に供給した。反応容器内容物をさらに1時間85℃に維持し、その後、約70℃に冷却した。
水酸化カリウム水溶液(45%w/w)(274部)を脱イオン水(329.9部)に加えた。これを反応器へ20分かけて加えた。得られた混合物のpHを測定し、pH値を9にするのに必要ならば水酸化カリウム水溶液(45%w/w)を加えた。
次に、得られた分散剤を反応容器から単離した。これを分散剤(11)と称する。
分散剤(11)は、GPCによって測定した数平均分子量が45000、酸価が154mgKOH/g、重量平均分子量が80000、そして多分散度が1.8のアクリルコポリマーであった。
練り顔料(11)及び(12)
ピグメントレッド122(3.3部、大日精化工業社製)、分散剤(11)(2.86部)及び脱イオン水(5.5部)を「K−バー」ヘッドを有するケンウッド・シェフ・メジャー・チタンミキサーを用いて混合して粘性混合物を得た。次に、シルバーソンL4R回転子−固定子ミキサーを使用して混合物をさらに均質化し、その後、Netzsch Labstar Bead Millに通して処理して、Malvern Mastersizer M2000粒子サイズ分析器で測定して、192nmの平均d(0.9)粒子サイズにした。
得られた混合物をミルから回収し、脱イオン水を加えることによって9.2%の顔料濃度に希釈した。分散液を二等分した。一方の半分を練り顔料(11)、他方の半分を練り顔料(12)と称する。
ホウ酸塩化合物を使用した架橋及びホウ酸塩化合物を使用しない架橋
(A)ホウ酸塩化合物の存在下での架橋
練り顔料(11)(2000部)に、水(57.4部)中のホウ酸(2.4部、シグマ−アルドリッチ社製)及び水酸化カリウム(1.8部、2.2部の水の中)を加えた。得られた混合物をサーモスタット調節されたGrant W28水浴内の5リットルガラス容器中で70℃に加熱し、PTFE被覆された4枚ブレードのパドルを有するIKA Labortechnik RW20オーバーヘッド攪拌機を用いて攪拌した。水(30.6部)中のPEGDGE架橋剤(10.2部、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ナガセ・ケムテックス社製)を加え、混合物を12時間70℃で攪拌した。冷却後、顔料濃度を、脱イオン水を加えることによって9.1%に調整した。得られた生成物を封入粒状固体分散液(11)と称する。
(B)ホウ酸塩化合物の不存在下での架橋
ホウ酸を省略した以外は、練り顔料(12)を用いて上記(A)の方法を繰り返した。得られた生成物を比較用封入粒状固体分散液と称する。
インクは表9に示すように製造した。
Figure 0005503296
(SurfynolTMはエアー・プロダクツ社の登録商標である)
インク(11)及び比較インクの印刷試験
空のインクジェットプリンターカートリッジを表9に記載のインクで満たし、EPSON D88インクジェットプリンターから表10に示す基体へ発射した。各プリントの光学濃度(ROD)はGretag Macbeth Spectrolino光濃度計を用いて測定した。結果は表10に示す。RODが高いほど、より深く、より濃い色彩であることを示す。
Figure 0005503296
表10は、ホウ酸塩化合物を用いる方法から誘導されたインク(11)がホウ酸塩化合物を用いずに製造された比較インクよりも高いODを有するプリントを提供することを示している。

Claims (10)

  1. 粒状固体及び液体媒質の存在下、分散剤を架橋剤で架橋し、それによって粒状固体を架橋された分散剤中に封入することを含む、液体媒質に分散された封入粒状固体の製造方法であって、
    a)分散剤は少なくとも1つのカルボン酸基を有し;
    b)架橋剤は少なくとも2つのエポキシ基を有し;
    c)架橋はホウ酸塩化合物の存在下で行われ
    d)前記粒状固体が着色剤である
    ことを特徴とする、前記方法。
  2. ホウ酸塩化合物がホウ酸である、請求項1に記載の方法。
  3. 分散剤の酸価が少なくとも125mgKOH/gである、請求項1又は2に記載の方法。
  4. カルボン酸基とエポキシ基との間の架橋反応が100℃未満の温度及び少なくとも6のpHで行われる、請求項1に記載の方法。
  5. 架橋剤が2つのエポキシ基を有する、請求項1に記載の方法。
  6. 架橋反応がpH7〜12で行われる、請求項1に記載の方法。
  7. 架橋が、以下の成分:
    a)30〜99.7部の液体媒質;
    b)0.1〜50部の粒状固体;
    c)0.1〜30部の分散剤;
    d)0.001〜30部の架橋剤;
    e)架橋剤中のエポキシ基1モル当たり0.5〜5モル当量のホウ酸塩化合物;
    (ここで、部は重量に基づき、部の合計a)+b)+c)+d)+e)=100である。)
    を含む組成物を混合することを含む方法によって行われる、請求項1に記載の方法。
  8. 得られた封入粒状固体を液体媒質から単離する更なる工程を含む、請求項1に記載の方法。
  9. イメージを基体へ印刷する方法であって、液体ビヒクル、及び、請求項1に記載の方法により得られた又は得られる封入粒状固体を含む組成物を塗布することを含み、ここで、前記組成物は25℃で30mPa.s未満の粘度を有し、且つ、水及び水に対し混和性を有する有機液体を99:1〜5:95の重量比で含むことを特徴とする、前記方法。
  10. 印刷がインクジェットプリンターによって行われる、請求項9に記載の方法。
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