JP5502406B2 - Cho細胞において組換えタンパク質を発現する方法 - Google Patents

Cho細胞において組換えタンパク質を発現する方法 Download PDF

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Description

本発明は、CHO株化細胞に組換え産物遺伝子を発現するための方法に、並びに組換えCHO宿主細胞および新規の発現ベクター構築物に関する。
[背景技術]
チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)哺乳類発現系は、組換えタンパク質の産生に広く使用されている。ハイブリドーマ株化細胞などのリンパ球系の株化細胞を除けば、これは、簡便かつ効果的な動物細胞の高密度懸濁液バッチ培養法が可能なわずかな細胞種のうちの1つである。さらに、これらは、非常に高い産物収率が可能であり、代謝ストレスに対して比較的強いが、リンパ球は、産業的な規模で培養することが困難である。かなりの費用が生じることを考慮すると、バイオリアクタの稼働あたりの組換えタンパク質の収率を最大にすることは、最も重要である。培地組成物の選択およびバイオリアクタ・デザインおよび操作は、収率に影響を与えるパラメータであり、最適化は非常に複雑となろう。さらに予測される通り、産物タンパク質の発現を制御するプロモーターの強度または転写活性の増加も、収率を増大させる。単一細胞レベルでの増分は、高密度のバッチまたは流加回分培養における産物収率のかなりの改善に換算されると考えられ、106〜107細胞/mlの範囲の細胞密度で定常期の遺伝子発現を示す。
米国特許第5,866,359号は、弱いプロモーターからアデノウイルスのE1Aタンパク質を同時発現することによって、CHOおよびNSO細胞において、もとから強いhCMVプロモーターからの発現を増強する方法を記載している。E1Aは、細胞周期調節に対して作用するであろう多機能性の転写制御因子であり、独立して転写を活性化および抑制する機能的なドメインを有する。E1A発現を適切な低レベルの発現に微調整することは、遺伝子トランス活性化の間に理想的なバランスを達成し、一方で細胞周期進行に対してのネガティブな影響を回避するための同時発現アプローチの成功のために重大である。不利な点として、E1A発現を推進するプロモーターの慎重な選択とは別に、この系では、関心対象の組換えタンパク質を発現する以外に、E1Aを発現する細胞のタンパク質合成能力の一部を遮断してしまう。
国際公開公報第95/17516号は、B-株化細胞統のリンパ球、たとえば広く使用されているNSO骨髄腫細胞の非常に活性な遺伝子座に対して発現ベクター構築物をターゲッティングするための、マウス免疫グロブリン・ガンマ2A遺伝子座の使用を記載している。NSO細胞は、本質的にマウスのプラズマ細胞またはB細胞の腫瘍株化細胞である。該免疫グロブリン座を収容するクロマチンは、B細胞のみにおいて、その完全に活性な開口状態(open state)にあり、これらの遺伝子座に組み込まれた天然の免疫グロブリン・プロモーターまたは組換え発現構築物を高い転写活性にすることができる。
不利な点として、相同的組換えの原理のために、ターゲッティング配列は、組換え誘導の(recombinatorial)ホットスポットを収容するガンマ2Aターゲッティング配列の配列に一致するマウスの株化細胞においてのみ効率的にターゲットすると考えられ;高レベルの発現のためには、ガンマ2A遺伝子座領域は、転写的に活性なゲノム領域でなければならず、B細胞タイプに対する相同的組換えについてはその有効性が制限される。
本発明の目的は、標準的なプロモーターから発現を増強することができる、バイオテクノロジーにおけるCHOタンパク質発現のためのもう一つの発現系を発明することである。本発明によれば、驚いたことに、この目的は、元来はマウスB細胞の相同的組換えのために発明された遺伝子ターゲッティング配列を有するCHO細胞のための遺伝子発現ベクターを備えることによって達成される。
[発明の開示]
[発明を実施するための最良の形態]
本発明によれば、哺乳類細胞における組換遺伝子の発現のためのDNA配列は、組換え産物遺伝子、および組換え産物遺伝子を発現させるためのプロモーター、好ましくはCMVプロモーターを含み、該プロモーターからの発現を増強することができるマウスの免疫グロブリン・ガンマ2A遺伝子座のDNA配列またはこれらの断片または配列変種をさらに含む。本発明によれば、このようなDNA配列は、CHO細胞における組換え産物遺伝子の発現のための有用な発現ベクター構築物である。
本発明によれば、組換えタンパク質を発現する方法は、
a.CHO細胞において活性であり、組換え産物タンパク質の発現を推進するプロモーターを含む発現ベクターをトランスフェクトし、かつプロモーターの活性を増強するマウスのIgG2A遺伝子座DNAまたはDNA配列変種またはそのDNA断片をさらに含むCHO細胞を培養する工程と、
b.産物タンパク質を収集する工程と、
を含む。
本発明に従った組換え産物遺伝子は、多量に発現されまたは収集されることが要求される産物タンパク質である。これは、関心対象の任意のタンパク質、たとえばインターロイキンもしくは酵素などの治療的なタンパク質、または抗体もしくはその断片などの多量体のタンパク質のサブユニットであってもよい。組換え産物遺伝子は、宿主産生株細胞から一旦発現されたポリペプチドを分泌することができるシグナル配列をコードする配列部分を含んでいてもよい。本発明のさらに好ましい態様において、産物タンパク質は、分泌されるタンパク質である。より好ましくは、第1のまたは産物タンパク質は、抗体もしくは操作された抗体、またはこれらの断片であり、最も好ましくは、免疫グロブリンG(IgG)抗体である。
マウス免疫グロブリン・ガンマ2A遺伝子座位(IgG2A)のDNA配列は、元来は組換え遺伝子産物の高発現を示す安定な組換えリンパ様B株化細胞を作製するためのゲノムのターゲッティング配列として使用するために、国際公開公報第95/17516号において発明された。Bリンパ球またはプラズマ細胞は、おそらく細胞タイプ特異的なエンハンサー/転写制御因子の活性および開放性のクロマチン構造のために、通常非常に高レベルの免疫グロブリンRNAをIg重鎖遺伝子座から発現する。本発明の好ましいマウス免疫グロブリン・ガンマ2A遺伝子配列は、国際公開公報第95/17516号において使用したターゲッティング配列と同じである。これは、CH1エキソンのほとんどの5’部分を除く、マウスのIgガンマ2Aのコード領域の全てを含む5.1kbのBamHIゲノム断片である(Yamawaki-Kataoka, Y.ら、Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A. (1982) 79: 2623-2627; Hall, B.ら、Molecular Immunology (1989) 26: 819-826; Yamawaki-Kataoka, Y.ら、Nucleic Acid Research (1981) 9: 1365-1381)。本発明によれば、部位特異的な相同遺伝子組換えの促進が免疫グロブリン・ガンマ2A遺伝子配列(IgG2A)に関連した性質ではない。従って、好ましくは、CHO細胞の一過性または安定発現の条件下の両方において、プロモーターから、好ましくは以下に記載したhCMVプロモーターからの組換え産物遺伝子の発現の増強において機能的であるか、または増強することができるIgG2A遺伝子配列の変種配列または配列断片または変種配列の断片のいずれもが本発明に含まれる。
このような「機能的な」変種は、たとえば塩基の挿入、欠失、または点突然変異を含み、当該技術分野において周知の方法によって、たとえば、プライマー定方向PCR(primer-directed PCR)、「エラー−プローン(error-prone)」PCR、「遺伝子-混合(gene-shuffling)」と呼ばれる重複するDNA断片のPCR-リアセンブリによって、またはインビトロでの細菌クローンのランダム突然変異誘発に続くライブラリー・トランスフェクション、およびCHO細胞中での機能的な選択によって作製される。たとえば、ランダム突然変異誘発は、 Miller, J. , Experiments in Molecular Genetics, Cold Spring Harbor Laboratory 1972)に記載されているように、アルキル化化学またはUV照射によって達成することができる。任意に、宿主菌の天然の変位誘発株を使用してもよい。
好ましくは、このような変種配列または配列断片は、天然のマウスの免疫グロブリン・ガンマ2A遺伝子座の対応する部分に対してDNA配列の少なくとも65%、より好ましくは75%、最も好ましくは90%相同的である。たとえば、免疫グロブリン・ガンマ2A配列内に直線化のための独特の部位を提供するために、膜エキソン2(M2)の39塩基対上流にある天然に存在するStuI部位にSalI制限部位を挿入することが可能であり;このような配列変種は、元来は部位特異的組換えターゲッティングのために発明されたが、本発明に関しても同様に使用することができる。
「プロモーター」は、RNAポリメラーゼをDNAに結合させて、RNA合成を開始させるようにするDNA配列として定義される。本発明によれば、これは、CHO細胞において活性であるプロモーターである。このようなプロモーターは、好ましくは強力なプロモーターである。強力なプロモーターは、CHO-KI細胞において、hCMVコア・プロモーター/エンハンサー断片(米国特許第5168062号に記載されたもの)と同等か、または高く、高頻度でmRNAの開始を生じさせるものである。このようなプロモーターは、米国特許第5589392合で引用されるように、細胞タイプ依存的な強力なプロモーターであってもよく、または好ましくは、遍在性に活性な強力なプロモーター、より好ましくは、たとえばSV40ウイルスの初期および後期プロモーター、ヒトサイトメガロウイルス(hCMV)のまたはマウスサイトメガロウイルス(mCMV)の前初期プロモーター、単純ヘルペスウイルスのチミジンキナーゼ・プロモーター(TK)、またはラウス肉腫ウイルスの末端反復配列プロモーター(RS-LTR)などの構成的に活性なウイルスのプロモーターであり、より好ましくは、米国特許第5,385,839号および/または欧州特許第-323997-A1号に記載されている2.1kbのPstI断片によって定義されるhCMV-MIEプロモーターまたはこれらのプロモーター活性を有する機能的部分である。欧州特許第323997-A1号に記載されているように、hCMVの主要前初期(major immediate early:MIE)遺伝子の完全な第1の機能的なイントロンを有するhCMVプロモーター構築物は、本発明の特に好ましい態様である。
好ましくは、本発明に使用されるhCMVプロモーターは、プロモーターの上流/エンハンサー部分の「モジュレーター」配列部分を欠失している。「モジュレーター」配列は、CHO細胞におけるhCMVプロモーター活性およびMIE転写開始点に関して位置-750〜位置-1150のひと配列に、特に一過性のトランスフェクションにおいて有害であることが見いだされた(Meierら、1996, Intervirology 39: 331-342, Regulation of hCMV immediate-early gene expression)。モジュレーター配列なしでは、(モジュレーター・ネガティブまたは短くmod-)hCMVプロモーターに対するIgG2A宿主のスポットの配列の存在の増強効果は、さらにはっきりする。
一過性のトランスフェクションは、ベクターが有する選択マーカーに対していずれの選択圧も適用しないことによって特徴づけられる。一過性のトランスフェクションから生じる細胞のプールまたはバッチは、外来DNAを取り込んで発現する細胞および取り込まなかった細胞を含むプールされた細胞群である。外来発現カセットを発現する細胞は、通常これらのゲノムにトランスフェクトされたDNAがいまだ組み込まれておらず、一過性にトランスフェクトされた細胞プールの培養により、外来DNAを失って、集団においてトランスフェクトした細胞を過成長させる傾向がある。したがって、発現は、トランスフェクション直後の期間において最も強く、時間とともに減少する。好ましくは、本発明に従った一過性のトランスフェクタントは、トランスフェクション後90時間まで選択圧の非存在下で細胞培養において維持されている細胞であることが理解される。
好ましくは、本発明に従ったトランスフェクトされたCHO宿主細胞は、特に、前述のようにhCMVプロモーターと組み合わせて、安定にトランスフェクトされた宿主細胞である。安定なトランスフェクションは、新たに導入された外来DNAが、通常ランダムな、非相同的な組換イベントによってゲノムDNAに組み込まれることを意味し;ベクター配列の場合には、本発明に従った安定トランスフェクションは、たとえばゲノムの組込みによって余分となる細菌コピー数制御領域などの、組換え産物遺伝子の発現に直接関与しないベクター配列部分の損失を生じてもよい。トランスフェクトされた宿主細胞は、ゲノム内に発現ベクターの少なくとも一部または異なる一部を組み込んでいる。同様に、少なくともインビボにおいて、本発明の発現ベクターの必須エレメント、すなわち適切なプロモーターの制御下の産物遺伝子およびホットスポットIgG2A配列の機能的相当物を生じる2つまたはいくつかのDNA断片によるCHO細胞のトランスフェクションも、このようなトランスフェクトされた宿主細胞の定義に含まれる。断片化されたDNAのトランスフェクション後の機能的なDNA配列のインビボでの構築は、たとえば国際公開公報第99/53046号に記載されている。このような安定組込みは、遺伝子増幅のためのさらなる選択圧に対する暴露により、CHO細胞中に二重微小染色体(double minute)を生じる可能性もある。これは、今の意味において「安定」に含まれる。CHOにおける本発明の発現ベクターのランダムなゲノムの組込みにより、ターゲッティング配列が存在すると、組換え産物タンパク質の発現のためのプロモーター活性を増強する。このような効果は、観察されていないし、プラズマ細胞腫/骨髄腫株化細胞を含む成熟マウスB株化細胞の相同遺伝子ターゲッティングによっても予測され得ず;そこでは、IgG2A遺伝子座が組換え誘導性の(recombinatorial)「ホットスポット」であることが判明したので、IgG2Aターゲッティング配列は、単に高収率の相同的成分の頻度を増大する役割を果たすだけであった。前に述べたとおり、免疫グロブリンのゲノム領域のクロマチンは、最適にターゲットされるB細胞株において、開口性の非常に活性な状態である。
「発現ベクター」は、本明細書において、ベクターをトランスフェクション後に、適切な哺乳類宿主株化細胞においてこれらのmRNAの転写および翻訳のために必要とされるDNA配列として定義される。適切に構築された発現ベクターは、通常以下を含むべきである:動物細胞において選択可能な少なくとも1つの発現可能なマーカー、上流のプロモーター領域の制御下に、組換え産物遺伝子のための発現カセットを挿入するための限定された数の有用な制限部位。特に、一過性の/エピソームの発現だけのために使用される場合、これは、真核生物の宿主細胞中で自己複製/エピソーム維持のための、エプスタイン・バー・ウイルス(EBV)またはSV40ウイルス起源などの複製開始点をさらに含んでもよいが、選択可能なマーカーを欠いていてもよい。発現ベクターは、たとえば直線的なDNA断片、核ターゲッティング配列を含むかまたはトランスフェクション試薬との相互作用のために特別に最適化されているDNA断片、動物ウイルス、または細菌において往復および産生することができる適切なプラスミドである(しかし、これらに限定されない)。チミジンキナーゼ(tk)、ジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)、またはグルタミンシンテターゼ(GS)などの一般に使用される任意の選択マーカーを使用してもよい。好ましい態様において、発現可能なGS選択マーカーが使用される(Bebbingtonら、1992, High-level expression of a recombinant antibody from myeloma cells using a glutamine synthetase gene as an amplifiable selectable marker, Bio/Technology 10: 169-175; Cockettら、1990, High level expression of tissue inhibitor of metalloproteinases in Chinese Hamster Ovary (CHO) cells using Glutamine synthetase gene amplification, Bio/Technology 8: 662-667)。GS系は、治療的なタンパク質の産生のために特に重要な2つだけしかない系のうちの1つである。ジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)と比較して、GS系では、初期のトランスフェクタント(tranfectant)から非常に生産的な株化細胞を作製できることが多く、したがって遺伝子増幅を達成するために、選択剤の濃度を増大して存在させ、多回の選択の必要が回避され、開発の間に何倍もの利点を供与する(Brownら、1992, Process development for the production of recombinant antibodies using the glutamine synthetase (GS) system, Cytotechnology 9: 231-236)。マーカー遺伝子の発現のための第2の転写ユニットと同様に、発現ユニットは、たとえば、当該技術分野において通常使用されている内部リボソーム導入部位(internal ribosome entory sites)の使用により、産物遺伝子およびマーカー遺伝子の両方のためにモノシストロンの(monocistronic)発現カセットを使用することができることは言うまでもない。その逆も同様に、本発明のホットスポットIgG2A配列並びにプロモーターおよび/またはマーカー・カセットを含む産物タンパク質のための発現カセットは、単一の発現ベクターにおいてシスに作用する必要がないこと;エレメントは、別々の同時トランスフェクトされたベクターでもうまく行われ、または次いでDNA断片が、単一の、鎖状の組込み部位で染色体性に、組み込まれてもよいであろうことは、言うまでもない。
本発明のさらなる目的は、本発明のDNA配列をトランスフェクトされたCHO宿主細胞である。更なる目的は、このような宿主細胞のトランスフェクションのための方法およびこのような宿主細胞における組換え産物遺伝子の発現のための方法である。本発明の本願明細書中の好ましい態様でなされる説明および参照は、同様に全てのこれらの本発明のさらなる目的にも関する。本発明のDNA配列またはベクターをトランスフェクトした宿主細胞は、一過性または安定にトランスフェクトされた株化細胞であると解釈されるべきであることに留意する必要がある。所与の宿主細胞タイプに適しているならば、当業者に周知なもの、たとえばエレクトロポレーション、リン酸Ca沈澱、DEAE-デキストラントランスフェクション、リポフェクションなどの任意のトランスフェクション技術を本発明に従って使用することができる。
適切な宿主株化細胞は、任意のチャイニーズ・ハムスター卵巣(CHO)株化細胞であることができる(Puckら、1958, J. Exp. Med. 108: 945-955)。「宿主細胞」の用語は、培養中に増殖ができ、所望のタンパク質組換え産物タンパク質を発現する細胞をいう。適切な株化細胞は、たとえばCHOK1(ATCC CCL-61)、CHO pro3-、CHO DG44、CHOP12、またはdhfr-CHO株化細胞DUK-BII(Chassinら、PNAS 77,1980, 4216-4220)、またはDUXB11(Simonsenら、PNAS 80,1983, 2495-249)であることができる。CHO細胞では、免疫グロブリン遺伝子座が不活性であり、したがって、クロマチンは高密度にパックされたか、または閉じた状態にある。したがって、免疫グロブリン座に組み込まれたいずれの遺伝子構築物も、それ自体が発現カセットの両側のクロマチンの開口を促進するフランキング遺伝子座制御領域を含まない限り、クロマチンの特異的な状態のために、組換えタンパク質の高レベルの発現を生じることができない。さらに、免疫グロブリン遺伝子配列および特にそのイントロン部分は、種の間、たとえばマウスからハムスターの間でかなりの相違を示す。
免疫グロブリン座のプロモーターまたはエンハンサーエレメントは、種および組織に特異的であり、B細胞のみにおいて活性であるはずである。また、本発明のマウスのIgG2A配列は、完全なIgG重鎖をコードする全長転写産物を引き起こす任意の天然の免疫グロブリン・プロモーターの非存在下において、CHO細胞の遺伝子発現を増強する。好ましくは、本発明のIgG2A配列は、このようなプロモーターを欠いている。驚いたことに、マウスのIgG2Aターゲッティング配列は、本発明に従った発現ベクターでのCHO細胞の一過性のトランスフェクションにより、CHO細胞の遺伝子発現をさらに改善し(図1);このような一過性の発現は、本発明に従った方法のさらなる好ましい態様である。一般にトランスフェクション後の約20〜50時間に生じる一過性の発現アッセイ法では、トランスフェクトされたベクターは、エピソームのエレメントとして維持されて、ゲノムにはまだ組み込まれていない。
たとえば、米国特許第5633162に記載したように、哺乳類株化細胞のための適切な培地および培養方法は、当該技術分野において周知である。研究室フラスコまたは低密度細胞培養のための、および特定の細胞種の要求に適した標準的な細胞培養培地の例は:たとえばRoswell Park Memorial Institute (RPMI) 1640 medium (Morre, G., The Journal of the American Medical Association, 199, p. 519 f. 1967)、L-15培地(Leibovitz, A.ら、Amer. J. of Hygiene, 78, lp. 173 ff, 1963)、ダルベッコイーグル修飾培地(DMEM)、イーグル最小必須培地(MEM)、Ham's F12培地(Ham, R.ら、Proc. Natl. Acad. Sc. 53, p288 ff. 1965)、またはアルブミン、トランスフェリン、およびレシチンを欠いているIscovesの修飾DMEM(Iscovesら、J. Exp. med. 1, p. 923 ff., 1978)である。たとえば、Ham's F10またはF12培地は、CHO細胞培養のために特にデザインされた。CHO細胞培養に特に適応されたその他の培地は、EP-481791に記載されている。このような培地には、ウシ胎児血清(FBS、ウシ胎児血清FCSとも呼ばれている)を補うことができ、後者により、あり余る程のホルモンおよび成長因子の天然の供与源を提供することができることが既知である。哺乳類細胞の細胞培養は、今日では、科学の教科書およびマニュアルに十分に記載されたルーチンの操作であり、これは、たとえばR. Ian Fresney, Culture of Animal cells, a manual, 4th edition, Wiley-Liss/N. Y. , 2000.に細部においてカバーされている。
好ましくは、本発明に従った細胞培養培地は、ウシ胎児血清(FCSまたはFBS)を欠いており、「無血清」とよばれる。無血清培地中の細胞は、最適の増殖のために、一般に無血清培地中にインスリンおよびトランスフェリンを必要とする。トランスフェリンは、国際公開公報第94/02592号に記載されているように、トロポロンなどの非ペプチド・キレート薬またはシデロホアによって少なくとも部分的に置換されていても、またはビタミンCなどの抗酸化物と組み合わせて有利に無機鉄の供与源のレベルを増大してもよい。大部分の株化細胞は、たとえば、上皮細胞成長因子(EGF)、線維芽細胞成長因子(FGF)、インスリン様の成長因子IおよびII(IGFI、IGFII)、その他を含む一つ以上の合成の成長因子(組換えポリペプチドを含む)が必要である。必要であろうその他のクラスの因子は:プロスタグランジン、輸送および結合タンパク質(たとえば、セルロプラスミン、高および低密度リポタンパク質、ウシ血清アルブミン(BSA))、ステロイドホルモンを含むホルモン、および脂肪酸を含む。ポリペプチド因子の試験は、増殖刺激性であることが見いだされているものの存在下において、段階的な様式で新たなポリペプチド因子を試験すると最適に行われる。これらの成長因子は、合成物または組換えである。動物細胞培養において周知のいくつかの方法論的なアプローチが存在し、典型例を以下に記載してある。最初の工程は、血清を補った培地から細胞を移して3〜6日後に生存し、および/またはゆっくり増殖する条件を得ることである。大部分の細胞種では、これは少なくともある程度が接種密度の働きによる。一旦、最適なホルモン/増殖因子/ポリペプチドの補充が見いだされれば、生存のための接種密度は、減少すると考えられる。より好ましい態様において、細胞培養培地は、胎児血清、および個々タンパク質成長因子の補充または組換えトランスフェリンなどのその他のタンパク質の両方ともがない無タンパク質である。
本発明の1つの方法の可能な態様、すなわち組換え産物タンパク質の発現および回収は、たとえば流加培養バイオリアクタにおける動物宿主細胞の高密度培養である。次いで、従来の下流のプロセシングを適用してもよい。その結果、高密度培養培地を使用されなければならない。このような高密度培養培地は、通常全てのアミノ酸、上で与えられた範囲のグルコースなどのエネルギー源、無機塩、ビタミン、微量元素(ミクロモルの範囲の終濃度で通常存在する無機化合物として定義される)、緩衝液、4つのヌクレオシドまたはこれらの準ずるヌクレオチド、グルタチオン(還元型)などの抗酸化物、ビタミンC、および重大な膜脂質、たとえばコレステロールまたはホスファチジルコリン、または脂質前駆体、たとえばコリンもしくはイノシトールなどのその他の成分などの栄養性を補うことができる。高密度培地は、これらの化合物のほとんどまたは全てが濃縮されていると考えられ、本質的に等張性の培地のモル浸透圧濃度が調節されている無機塩を除いて、RPMI1640と比較するとGB2251249から受けることができる前術の標準的な培地よりも多量に(強化され)これらを含む。好ましくは、本発明に従った高密度培地は、トリプトファン以外の全てのアミノ酸が、75mg/l培地を上回るという点で、バランスが強化されている。好ましくは、一般的なアミノ酸要求性と連動して、グルタミンおよび/またはアスパラギンは、高密度培地中で1g/l、より好ましくは2g/lを上回る。本発明の状況において、高密度細胞培養は、少なくとも105細胞/mlもしくは以上、または好ましくは少なくとも106細胞/mlもしくは以上の生細胞の一時的な密度を有する動物細胞の集団として定義され、この集団は、一定のまたは増大した培養体積での細胞培養培地中において、単細胞またはより低い生存可能な細胞密度から連続して増殖された。
さらに好ましい態様において、流加培養法は、GB2251249に記載されたように、少なくともグルタミンを、任意に1またはいくつかのその他のアミノ酸、好ましくはグリシンと共に、別々のフィードによってグルコース濃度を制御するのとは別に、これらの濃度を維持するために培地中の細胞培養に供給する培養システムである。好ましくは、より多く、グルタミンおよび任意に1つまたはいくつかのその他のアミノ酸のフィードは、EP-229,809-Aに記載されているように、細胞培養に対してグルコースなどの1つまたは複数のエネルギー源をフィードすることと組み合わせる。フィードは、通常、培養の開始後25〜60時間に開始され;たとえば、細胞が約106細胞/mlの密度に達したときに、フィードを始めることが有用である。培養された動物細胞では、「グルタミン分解(glutaminolysis)」(McKeehanら、1984, Glutaminolysis in animal cells, in: Carbohydrate Metabolism in Cultured Cells, ed. M. J. Morgan, Plenum Press, New York, pp. 11-150)が、増殖期の間の重要なエネルギー源になるであろうことが当該技術分野において周知である。総グルタミンおよび/またはアスパラギン・フィード(アスパラギンによるグルタミンの置換については、Kurano, N.ら、1990, J. Biotechnology 15,113-128を参照されたい)は、通常、1培養体積あたり0.5〜10gの、好ましくは1培養体積あたり1〜2gの範囲あり;フィードに存在することができるその他のアミノ酸は、培養1リットルにつき10〜300mgの総フィードであり、特にグリシン、リジン、アルギニン、バリン、イソロイシン、およびロイシンは、通常少なくとも150〜200mgのその他のアミノ酸と比較して多量である。フィードは、ショット添加(shot-addition)として、または連続的にポンプによるフィードとして添加することができ、好ましくは、フィードは、ほぼ連続的にバイオリアクタにポンプで送りこまれる。pHは、バイオリアクタ中での流加培養の間に、塩基または緩衝液を添加することにより、所与の株化細胞にとって最適なほぼ生理学的なpHに慎重に制御されることは言うまでもない。グルコースがエネルギー源として使用されるときに、総グルコース・フィードは、培養1リットルにつき通常1〜10、好ましくは3〜6グラムである。アミノ酸の含有とは別に、フィードは、好ましくは培養1リットルにつき5〜20mgの範囲の低量のコリンを含む。より好ましくは、このようなコリンのフィードは、本質的に米国特許第6048728号に記載したように、特にグルタミンのフィーディングと組み合わせて、エタノールアミンの補充と組み合わされる。GS-マーカーシステムの使用により、内因的に産生されるものに加えて過剰のグルタミンの蓄積により、アンモニア産生および随伴する毒性を生じるので、非GS発現系と比較して少量のグルタミンが必要とされるであろうことは言うまでもない。GSについては、培地またはフィード中のグルタミンは、大部分はその相当物および/または前駆体(すなわち、アスパラギンおよび/またはグルタミン酸)によって置換される。
宿主細胞における発現によって産物タンパク質を生じる産物遺伝子のために少なくとも(第1の)転写ユニットを含む発現ベクターであって、この転写ユニットが、マウス・サイトメガロウイルス・プロモーター(mCMVプロモーター)の制御下にあり、かつグルタミンシンテターゼ(GS)マーカー遺伝子を含む第2の転写ユニットをさらに含む発現ベクターを発明することは、本発明のさらなる独立した目的である。このような産物遺伝子または関心対象の遺伝子(GOI)(これは、名付けられてもよい)は、たとえば免疫グロブリン・コード配列であることができる。グルタミンシンテターゼ・マーカー遺伝子は、任意の酵素的に活性なGSコード配列であり、これは天然の遺伝子配列またはこれらの変種である。上記のとおりの上記「機能的な変種」の定義は、同様にここでも適用され、配列相同性の好ましい範囲を含む。好ましくは、GSマーカー遺伝子は、哺乳類GSマーカー遺伝子またはこれらの誘導体である。驚くべきことに、このような発現ベクターは、たとえば関心対象の遺伝子を収容する第1の転写ユニットがhCMVプロモーターの制御下にある発現ベクターよりも、CHO細胞でのトランスフェクションに対して非常により高いトランスフェクション率にすることができる。CHO細胞では、mCMVプロモーターの転写活性が、hCMVプロモーターのものより非常に高いという事実にもかかわらず;通常、トランスフェクションにより、より高い代謝負荷では、トランスフェクションによるクローンの生存を減少し、より少ない数のトランスフェクタントを生じると考えられている。したがって、本効果が、発現される産物タンパク質の量または予想外の毒性に明白な様式で相関する可能性はなく、後者は、おそらくトランスフェクタントの増殖に悪影響を与える。実際に、本知見は当業者のいずれの予測とも正反対のものである。
本発明に記載の更なる目的は、このような発現ベクターであって、エピソームに維持することができるか、またはゲノムに安定に組み込むことができるベクターがトランスフェクトされた動物宿主細胞、特にCHO細胞、およびトランスフェクション方法である。同様に、インビボで本発明の目的の転写ユニットの機能的な相当物を生じる2つ以上の遺伝子断片を動物細胞、特にCHO細胞にトランスフェクションすることは、このようなトランスフェクトされた宿主細胞の定義の範囲内である。好ましくは、前記宿主細胞は、第1および第2の転写ユニットが染色体性に組み込まれることを意味する安定にトランスフェクトされた細胞である。
更なる目的は、好ましくは、少なくとも産物遺伝子のための第1の転写ユニットであって、該第1のユニットは、宿主細胞において発現することによって産物タンパク質生じ、かつ該第1の転写ユニットは、さらにマウス・サイトメガロウイルス・プロモーター(mCMVプロモーター)の制御下にある第1の転写ユニットを含み、さらにグルタミンシンテターゼ(GS)マーカー遺伝子を含む第2の転写ユニットを含む発現ベクターを使用するときに、CHO細胞のトランスフェクション率を高めるmCMVプロモーターの使用である。異なるベクターに有する第1および第2の発現か、または個々の発現ユニットを収容する単離した遺伝子断片として、トランスフェクトすることもできるであろう。さらに、GSを予め組換えて、mCMVを収容する第1の転写ユニットと共に発現するCHO細胞をトランスフェクトすることもできるであろう。本発明によれば、「トランスフェクション率を高めること」は、本発明に従ったmCMVプロモーターおよび発現ベクターの存在下におけるトランスフェクション率を、発現ベクターのmCMVプロモーターが、米国特許第5658759号において定義され、およびたとえば、本発明の配列番号3に記載したようにhCMV-第1のイントロン・エンハンサー/プロモーター構築物に置換されていることを除いて同一のトランスフェクションおよび細胞培養条件下で、同じトランスフェクション率の発現ベクターおよび宿主細胞と比較することによって定義される。所与の同一の産物遺伝子について、このhCMV-イントロンMIE-プロモーター構築物は、トランスフェクション率の増強の要求される効果を決定するための標準として役立つ。好ましくは、mCMVプロモーターの使用により、少なくとも10倍のトランスフェクション率の増強を生じる。
さらに上記の全ての関連した定義は、独立した本発明の目的に同様に適用する。本発明の目的は、先行条件としてマウスのIgG2Aターゲッティング配列の存在を必要としないことが強調されなければならない。
マウスのサイトメガロウイルス(mCMV)は、ヘルペスウイルス(herpesviridae)の非常に多様な群のメンバーである。異なる宿主種のサイトメガロウイルスの間にさえ、広い変異があることもある。たとえば、mCMVは、生物学的性質、前初期(IE)遺伝子組織、および全体のヌクレオチド配列に関して、ヒトサイトメガロウイルス(hCMV)とはかなり異なる。また、mCMVの235kbpゲノムは、hCMVの大部分の内部および末端の反復の特徴を欠いている。従って、MCMVゲノムのアイソマー形態は、現存しない(Ebeling, A.ら、(1983), J. Virol. 47,421-433 ; Mercer, J. A.ら、(1983), Virology 129,94-106)。本発明によれば、本質的に米国特許第4968615号に記載されている大きな約2.1kbのPstI断片またはこれらの任意の機能的な断片と一致するプロモーター領域を使用することが可能である。より好ましい態様において、使用されるmCMVプロモーター断片は、転写開始点(+0)を含み、上流域〜約位置500に伸びる。驚くべきことに、このような断片は、位置500を越えてさらに上流に800塩基対伸びているプロモーター・カセットよりも強力に発現を促進することを見いだした。最も好ましい態様において、コア・プロモーター領域には、転写開始点上流域から、しかし天然の転写開始点から約位置-150のXhoI制限部位まで伸びているか、またはしかし天然の転写開始部位から位置-100の上流域まで伸び得ているものが使用される。転写開始点は、組換え産物遺伝子の挿入のための適切な制限部位を含むように設計してもよいことは言うまでもない。
本発明によれば、mCMVプロモーターの制御下にある第1の転写ユニットは、少なくとも1つのイントロン配列を収容することも可能である。このような処置は、RNA転写物を安定させるために、および対応するmRNAからの効果的なタンパク質合成を促進するために、当該技術分野において周知である。しかし、トランスフェクション率に対して要求される効果を考慮することなく効果的にタンパク質合成をするために、mCMVプロモーター構築物中にmCMVの第1の、天然のイントロンを含むことは望ましくない。hCMVプロモーター(米国特許第5591639号を参照されたい)における状況とは対照的に、mCMVのこのような天然の第1のイントロンは、mCMVプロモーターからの組換遺伝子の発現を減少することが見いだされており、したがってさらに好ましい態様において除外される。
GSマーカー遺伝子カセットの好ましい可能な態様の例は、配列表に挙げられている。配列番号1(pEE15.1hCMV/GFP+ホットスポット)+2(pEE14.4hCMV/GFP)は、SV40(初期および後期、それぞれ)プロモーター、弱いから中程度のプロモーターから発現される適切なGS遺伝子カセットの例を与え、かつhCMVプロモーターの制御下にGFP(緑色蛍光タンパク質)のための発現カセットをさらに含む。配列番号1は、SV40初期プロモーターの制御下で、図3に更に詳細に記載されているGS cDNA配列を記載する。配列番号2は、後期SV40プロモーターの制御下にあるイントロンを含む人工GS-ミニ遺伝子カセットを特定する。CHO細胞は、天然にグルタミン栄養要求体ではなく、したがって、たとえば、Cockettら、1990, High level expression of tissue inhibitor of metalloproteinases in Chinese Hamster Ovary (CHO) cells using Glutamine synthetase gene amplification, Bio/Technology 8: 662-667に記載されている選択スキームを適用することができる。CHO細胞のための適切なトランスフェクション方法の例は、その中に同様に挙げられており;たとえば、古典的なリン酸カルシウム沈殿またはより現代的なリポフェクション技術を使用することができる。トランスフェクション率は、通常、トランスフェクションに供された細胞のプールから得られる、ポジティブにトランスフェクトされた細胞(一過性のトランスフェクション)またはクローン(選択期間後の安定なトランスフェクション)の数として定義される。本発明の目的の意味される効果は、たとえば配列番号3(pEE12.4 hCMV- GFP + SV40初期プロモーター/GS cDNA)または配列番号4(pEE12.4 mCMV-GFP + SV40初期プロモーター/GS cDNA)のいずれかのプラスミドで、リポフェクション(任意の商業的な試薬および製造業者プロトコル)によってCHO-K1細胞にトランスフェクトすることによって見ることができる。トランスフェクション細胞は、任意の従来の培地において培養してもよい。培地は、上記定義された胎児血清を補ったか、または無血清の培地であってもよい。好ましくは、細胞培養培地は、血清を補った培地、より好ましくは、ウシ胎児血清またはウシ胎児血清などの少なくとも1%(v/v)の胎児血清を、最も好ましくは少なくとも5%(v/v)胎児血清を補った細胞培地である。他の好ましい例として、トランスフェクション方法は、電気穿孔法で行われる。
実験1
CHO-K1細胞中にホットスポット配列を含むGFPベクターの一過性および安定な発現
10%のFCSを補った通常の細胞培地GMEM-S(Gibco、UK)中でCHO-K1細胞(ATCCCCL-61)を順応させて、培養した。GS選択のためには、培地は、以下の表1に記載したように完全にグルタミンフリーでなければならず;これには、透析されたFCSの使用を必要とする。全ての培養は、36.5℃において、125rpmで回転振盪フラスコで行った。リポフェクチン(Superfectin(商標)、Gibco、UK)をトランスフェクションのために使用し、トランスフェクタント・プールの緑の蛍光を488nmの励起によりFACSで測定した。あらゆるGS/GFPベクター構築物について、トランスフェクションを5回独立して行い、全てのデータは、5回の独立して解析されたプールからの平均値であった。トランスフェクションの48時間後の一過性のトランスフェクタントで開始して、蛍光ダイアグラムに対する細胞数において、生細胞プールのうちの高度に発現する細胞の上位スコアリングの10%を選択して平均蛍光を決定した(図1)。生存細胞群は、横向き散乱に対するフォワードの図のゲートのゲーティングによってあらかじめ選択した。
安定トランスフェクタントを作製するためには、GSマーカーは、25μMのMSX(メチオニンスルホキシミン(methionine sulphoximine)、Crockettら、ibd.)を有するグルタミンのない培地を補って、26日間規則的に培養を分割しながら細胞培養を続けることによって、トランスフェクションの24時間後に選択した。選択のためのMSXの能力に対するその他のアミノ酸の培地レベルの影響に留意されたい。Bebbingtonら、米国特許第5827739号を参照されたい。次いで、蛍光(Flurorescence)解析を上記概説したとおりに再び行った(図2)。
トランスフェクトされなかった細胞は、ネガティブ対照として役立った。CMVの第1の完全なイントロンを含むhCMVプロモーターの制御下でGFPの発現を推進するホットスポットベクター(pEE15.1「hCMV+ホットスポット」)は、配列番号1に与えられており、本質的に、pEE15.1ベクターは、図3に示してあり、その中のGFP配列は、ポリリンカーのEcoRI制限部位に挿入されている。配列番号3に対応するpEE12.4「hCMV」は、これがIgG2A配列を収容する5.1kbのBamH1断片を含まないことを除いては、pEE15.1hCMV+ホットスポット」と同じである。pEE12.4は、ベクター対照として役立てた。さらなるベクター対照pEE12.4「hCMV(Kozak-)」は、翻訳開始部位(GCCGCCACCATGG)を含む(coninciding)クローンニング部位のコザック配列を、プライマー定方向突然変異(Sambrookら、Molecular cloning, Cold Spring Harbor 1983)によって(ACCATGGTCCATGG)のフレームシフトされた機能的なコザック配列に突然変異させることによって作製して、本来のコザック配列および翻訳開始部位を弱めた。配列番号1のベクターは、さらにhCMVエンハンサー部分の400塩基対のモジュレーター領域を欠失させ、転写開始点から〜750上流のエンハンサーエレメントを欠失させ、pEE15.1「hCMV(mod-)/GS cDNA」を生じるように設計した。配列番号2に対応する、pEE14.4「hCMV(mod-)」/GFPのGSミニ遺伝子とpEE15.1(s.図3)のGS cDNAカセットの交換によって、ベクターpEE15.1「hCMV(mod-)」/GSミニ遺伝子」を作製した。したがって、全てのトランスフェクトされた細胞は、GFPコード配列を含むプラスミドベクトルを収容していた。GSミニ遺伝子は、後期SV40プロモーターの制御下に、単一の、GS遺伝子の第1イントロンおよび約1kbの3’フランキングDNAを含み;ゲノムのGS DNAの3’部分は、トランスフェクトされた細胞に高コピー数のベクターDNA、したがってGSを生じると考えられている(米国特許第4770359号、Bebbingtonらを参照されたい)。本研究に
使用した全てのhCMVベクターは、そのcDNA配列からGSマーカー遺伝子を発現するが、GSミニ遺伝子の使用は、GSのコピー数および発現レベルの強力な効果を除くために、さらなる対照として含められる。
安定にトランスフェクトされたCHO細胞の作製および発現解析のために、直線化されたホットスポット・ベクターpEE15.1「hCMV+ホットスポット」ベクターでトランスフェクションを行った。SalIで直線化したプラスミドを、フランキングDNA部分と一定程度の相同性を共有するゲノム領域との組換えを潜在的に刺激するフリーのDNA末端の配列部分を含むIgG2Aで切断し、ハムスターCHO細胞において、マウスIgG2Aの潜在的なターゲッティング効果を試験した。PvuIは、細菌ラクタマーゼ・マーカー遺伝子で切断し、したがって異種のランダムな組換えを促進することができる。実際に、PvuIで直線化されたトランスフェクタントにおいて平均蛍光は高かったことから、ベクター直線化がいくらか影響すること、並びにCHO細胞の免疫グロブリン座に対するターゲッティングが本発明の効果の原因ではないであろうことの両方を示す。加えて、増強されたプロモーター活性の効果は、活性が一過性にトランスフェクトした細胞群で一貫して(consistingly)観察され、個々のベクター構築物の相対的な強度とよく相関していた。明らかであるが、ゲノムの組込みは、このトランスフェクションの初期段階には関与していない。
図3は、約12830BPのpEE15.1ベクターを示す。GSマーカーおよびhCMV-p/イントロン発現カセットの詳細な説明は、米国特許第5827739号および米国特許第5591639号において見つかる。pEE15.1は、組換え産物タンパク質をコードするDNA配列が、ポリリンカー部位にまだ挿入されていれなかったことを除いては、本発明に従った発現ベクターの可能な態様である。GFPを収容するpEE15.1構築物の完全な13535塩基対の配列は、配列番号1に与えられており:そこにおいて、GFPコード配列は、塩基位置12814で中央に位置するEcoRI制限部位にインフレームで挿入されており;ATG開始コドンを収容し、開始コドンのコザック配列環境を最適化する独特の制限部位の導入が米国特許第5591639号に詳述されている。したがって、GFPタンパク質の発現は、hCMV-主要前初期遺伝子プロモーター(hCMV-MIEまたは略してhCMV)、すぐ続いてhCMV-MIE遺伝子の第1イントロン、続くNeoI部位の制御下にある(米国特許第5591639号)。ポリアデニル化は、ポリリンカー挿入部位のさらに下流のSV40ポリA部位によって確保される。pEE15.1は、SV40初期プロモーターの制御下にあり、かつSV40イントロン+polyAに続くハムスター由来のグルタミンシンテターゼ(GS)をコードするcDNA配列をさらに収容する。IgG2A遺伝子座または「ホットスポット」配列(重鎖定常領域、ヒンジ、膜アンカーを表す陰影をつけた箱CH1、Hi、CH2、CH3、M1、M2)は、すでに国際公開公報第9517516号およびその中で引用された文献に記載されているマウスIgG2A遺伝子座の5.1kbのBamHI断片である。独特の制限部位PvuIおよびSalIを示してある。
実験2
mCMVp12.4-GFP構築物(配列番号4)でのCHO細胞のエレクトロポレーション
接着CHO-K1細胞(ATCCCCL-61)は、2mMのグルタミンを含み、さらに10%のFCSを補った、本質的にEP-481791に記載されたイサコフDMEM培地で培養した。任意に、実験1に記載のGSマーカー選択の前に、表1に述べたG-MEM培地およびさらに2mMのグルタミンを含むものを使用することができる。細胞を分離して、ペレットにし、最後に5.3×106細胞/mlの密度で無血清培地に2回再懸濁した。750μlの電気穿孔法バッチにつき、合計4×106細胞を電気穿孔した。エレクトロポレーションは、Methods in Molecular Biology, ed. JA Nickoloff ed, Humana Press 1995, Vol. 48/Chap. 8: Animal cell electroporation and electrofusion protocolsに記載されているとおりに行った。p12.4 mCMV-GFPベクターDNA(配列番号4)を直線化した。50μl(20μg)DNAを電気穿孔キュベットの750μL細胞に添加し、-300 Volts/750μFd-予想される約12-14ミリ秒の電気穿孔時間で電気穿孔した。電気穿孔後、T75フラスコ中で(10%の胎児血清を含むが、グルタミンを含まず、細部については表1を参照されたい)GS選択するために、800μlの体積の細胞を25mlの修正Glasgow-MEM(GMEM、Gibco)培地に移した。第2のフラスコに12.9mlを移すことによって、2×T75フラスコに分けて、37℃で10%のCO2中で一晩インキュベートする。
翌日、37.5mlのGS-選択GMEMには、10%のFBS+33.3μMのMSX(メチオニンスルホキシミン)を補った培地を添加した。したがって、MSXは、最終的に〜25μMであった。さらに26日間インキュベーション後に、フラスコあたりのコロニー数によって、トランスフェクタントを計数した。培養フラスコの目視検査のための標準的な倒立顕微鏡での顕微鏡学的な目視検査により、陽性のコロニーは、明るく光った緑色に明るくなり、容易に計数することができる。
配列番号4のmCMV構築物は、配列番号3のhCMV構築物と並行してトランスフェクトされた細胞よりも、20倍多くの病巣を生じた。ベクター構築物は、GFP発現を推進するCMVプロモーターエレメントが異なるだけであり、ベクターの残りのベクター部分は、同じであった(GS-マーカー;p12.4のcDNAGS-マーカー・カセットを含む)。細胞をトランスフェクション直後に96穴のプレートに希釈した場合、hCMVトランスフェクション細胞(約45コロニー)からよりも多くのコロニーが、mCMVトランスフェクション細胞(>400コロニー)から生じた。
表1:GS選択のための培地
A.保存液
1.再蒸留水を400mlの一定分量でオートクレーブした
2.グルタミンを含まない10×グラスゴーMEM(GMEM)((GIBCO: 042-2541 in UK)。4℃で貯臓。
3.7.5%の炭酸水素ナトリウム(GIBCO: 043-05080 in UK; 670-5080 in US)。4℃で貯臓。
4.100×非必須アミノ酸(NEAA)(GIBCO: 043-01140 in UK; 320-1140 in US)。4℃で貯臓。
5.100×グルタミン酸+アスパラギン(G+A):600mgのグルタミン酸および600mgのアスパラギン(Sigma)を添加。100mlの蒸留水中に作製し、2μmの滅菌フィルター(Nalgene)を通すことによって殺菌する。4℃で貯臓。
6.1OOmMナトリウム・ピルベート(GIBCO: 043-01360 in UK; 320-1360 in US)
7.50×ヌクレオシド:
35mgのアデノシン
35mgグアノシン
35mgシチジン
35mgウリジン
12mgチミジン
(それぞれSigmaから)。水で100mlに作製し、フィルター殺菌して、10mlの一定分量に-20℃で貯蔵する。
8.透析されたFCS(GIBCO: 014-06300)。56℃で30分間、熱不活性化し、-20℃で貯蔵。GS選択を使用するときは、透析されたFCSを使用することが重要である。
9.5000ユニット/mlで、ペニシリン-ストレプトマイシン(P/S: GIBCO: 043-05070 in UK; 600-5070 in US)。
10.100mmのL.MSX(Sigma):18mg/mlのPBS溶液を調製する。フィルター殺菌し、-20℃で貯蔵。
B.培地標品
GMEM-S培地1を作製するために、無菌技術を使用して以下を与えられた順に添加する。
1.水 400ml
2.10×GMEM 50ml
3.炭酸水素ナトリウム 18.1ml
4.NEAA 5ml
5.G+A 5ml
6.ピルビン酸ナトリウム 5ml
7.ヌクレオシド 10ml
8.透析されたFCS 50ml
9.ペニシリン-ストレプトマイシン 5ml
GMEM-Sは、含む非必須アミノ酸、アラニン、アスパラギン酸、グリシン、プロリン、およびセリン(100μM)、グルタミン酸およびアスパラギン(500μM)、並びにアデノシン、グアノシン、シチジン、およびウリジン(30μM)およびチミジン(10μM)。
本発明の可能な態様を図に示してある。示したものは、以下の通りである。
CHO-K1細胞の一過性のトランスフェクションにおいて、hCMVプロモーターおよびIgG2Aホットスポット配列の存在下におけるhCMVプロモーターからの緑色蛍光タンパク質(GFP)の相対的な発現レベル。 安定にトランスフェクトしたCHO-K1細胞において、hCMVプロモーターおよびIgG2Aホットスポット配列の存在下におけるhCMVプロモーターからのGFPの相対的な発現レベル。 IgG2Aターゲッティング配列を有するhCMV-MIE発現ベクターのプラスミドマップ。

Claims (7)

  1. CHO細胞における哺乳類発現ベクターのトランスフェクション率を増強するためのmCMV プロモーターの使用。
  2. 請求項1に記載の使用であって、前記mCMV プロモーターは、少なくとも産物遺伝子のための第一の転写ユニットであって該転写ユニットは前記mCMVプロモーターの制御下にある第一の転写ユニット、およびグルタミンシンテターゼ(GS)マーカー遺伝子を含んでいる第二の転写ユニットを含む哺乳類発現ベクターに含まれる使用
  3. 請求項1または2に記載の使用であって、前記mCMVプロモーターは、天然の転写開始部位(+0)を含み、位置-500までの上流まで伸びていることを特徴とする使用
  4. 請求項3に記載の使用であって、前記mCMVプロモーターは、天然のXho I 制限部位まで伸びていることを特徴とする使用
  5. 請求項3に記載の使用であって、前記転写開始部位は、組換え産物遺伝子の挿入のための適切な制限部位を含むことを特徴とする使用
  6. 請求項2〜5の何れか一項に記載の使用であって、前記第一の転写ユニットにおけるmCMVプロモーターは、mCMVプロモーターの第一の、天然のイントロンが除外されたことを特徴とする使用
  7. 請求項1〜6の何れか一項に記載の使用であって、前記ベクターは、マウスのIgG 2A遺伝子座由来の部分を含み、該部分がmCMV プロモーターの活性を増強することを特徴とする使用
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