JP5502298B2 - フコイダン特異抗体及びそれを用いたフコイダンの免疫学的定量方法 - Google Patents
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Description
〔2〕フコイダンが、マコンブ又はガゴメコンブ由来のフコイダンである、上記〔1〕記載のモノクローナル抗体。
〔3〕フコイダンを抗原として免疫した哺乳動物由来の脾臓細胞と、哺乳動物由来のミエローマ細胞との細胞融合により形成されるハイブリドーマにより産生される、上記〔1〕又は〔2〕記載のモノクローナル抗体。
〔4〕マコンブ由来のフコイダンを抗原として用いることを特徴とする、上記〔3〕記載のモノクローナル抗体。
〔5〕抗原として用いるマコンブ由来のフコイダンが、以下の工程を含む精製方法によって調製されるものである、上記〔4〕記載のモノクローナル抗体:
(1)マコンブから酸性可溶性の多糖画分を得る工程、
(2)工程(1)で得られた多糖画分を陰イオン交換クロマトグラフィーに付す工程、及び
(3)工程(2)で得られたピーク画分から、フコイダンに相当する画分を選択して回収する工程。
〔6〕受領番号FERM AP−21625であるハイブリドーマにより産生される、上記〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載のモノクローナル抗体。
〔7〕受領番号FERM AP−21625であるハイブリドーマ。
〔8〕上記〔1〕〜〔6〕のいずれかに記載のモノクローナル抗体を用いることを特徴とする、フコイダンの免疫学的定量方法。
〔9〕フコイダンがマコンブ又はガゴメコンブ由来のフコイダンである、上記〔8〕記載の方法。
〔10〕上記〔1〕〜〔6〕のいずれかに記載のモノクローナル抗体を少なくとも含む、フコイダンの定量用キット。
〔11〕さらに、標品として精製フコイダンを含む、上記〔10〕記載のキット。
本発明のフコイダン特異モノクローナル抗体は、フコイダンに対して反応し、アルギン酸及びラミナリンに対して実質的に反応しない抗体である。
フコイダンは、コンブ、ワカメ、モズクなどの褐藻に含まれる硫酸多糖の一種で、L−フコース−4−硫酸のα−1,2−結合を主体として1,3−又は1,4−結合の分岐構造を有するフコース硫酸のポリマーである。フコイダンは海藻の種類によって構造が異なる。即ち、フコイダンとは、フコースを含有する硫酸化多糖を総称したものである。フコイダンは、例えば、マコンブを原料として、以下の精製方法によって得ることができる。(フコイダンの精製方法)
(1)マコンブから酸性可溶性の多糖画分を得る工程、
(2)工程(1)で得られた多糖画分を陰イオン交換クロマトグラフィーに付す工程、及び
(3)工程(2)で得られたピーク画分から、フコイダンに相当する画分を選択して回収する工程。
原料として用いるマコンブは、フコイダンを含有するものであれば、その産地や採取時期などは特に限定されない。好ましくはよりフコイダンが多く含まれるコンブ葉状体の先端部分を用いる。マコンブを適当な破砕機によって粉末とし、それを、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸などの無機酸、又は、酢酸、クエン酸、シュウ酸、コハク酸、ギ酸、プロピオン酸などの有機酸の水溶液をpH1〜5、酸濃度が0.05〜1.5N、好ましくは0.9〜1.2Nとなるように加え、室温(1〜30℃)、好ましくは常温(20〜25℃)で、0〜24時間、好ましくは0.5〜1.5時間、特に好ましくは1時間程度撹拌して抽出する。好ましくは、上記原料に、塩酸を、pH2〜3、0.05〜1.2Nとなるように加え、20〜30℃にて1時間程度抽出する。得られた抽出物を遠心分離してその上清を、抽出液として得る。かかる抽出液に酸性可溶性の多糖画分が含まれる。
上記(1)で得られた抽出液をアルカリ剤により中和後、さらに濾紙を用いた吸引濾過などにより濾過する。得られた濾液を用いて陰イオン交換クロマトグラフィーを行なう。
本発明において用いられる陰イオン交換樹脂は特に限定されるものではない。陰イオン交換樹脂の活性基としては、例えばDEAE(ジエチルアミノエチル基)、QAE〔ジエチル(2−ヒドロキシプロピル)アミノエチル基〕、Q(又はTEAE)(トリエチルアミノエチル基)、ジメチル(2−ヒドロキシエチル)アミノメチル基、PAB(パラアミノベンジル基)、AE(アミノエチル基)、GE(グアニドエチル基)などが用いられており、これらを有する陰イオン交換樹脂を用いることができる。陰イオン交換樹脂の担体としては、例えばセルロース系の物質、デキストラン系の物質、アガロース系の物質、スチレンジビニルベンゼン重合体や、親水性ビニルポリマーなどの合成ポリマー系の物質などが用いられており、いかなる担体を用いた陰イオン交換樹脂でも用いることができる。これらの活性基と担体とを組合せた市販の陰イオン交換樹脂には、例えばDEAE−セファロース系、DEAE−セファセル系、DEAE−セファデックス系、QAE−セファデックス系、Q−セファロースファストフロー(以上ファルマシア社製)、DEAE−バイオゲル系、AG系(以上バイオラッド社製)、DEAE−トヨパール系、TSKゲルトヨパール系(以上東ソー社製)、DEAE−セルロファイン系(生化学工業社製)、ダウエックス系(ダウケミカル社製)、TEAE−セルロース(セルバ社製)、アンバーライト系(ローム アンド ハース社製)などがあり、いずれも本発明に用いることができる。
本発明においては、上記した陰イオン交換クロマトグラフィーによって、通過画分である画分I、アルギン酸含有画分である画分II、及びフコイダン含有画分であるピークIIIの、3つの画分がピークとして溶出される。各画分に含まれる成分は、赤外分光分析によって同定することができる。画分IIは、アルギン酸に特徴的なカルボキシル基の吸収を示し、画分IIIは、フコイダンに特徴的なカルボキシル基及び硫酸基の吸収を示す。
本発明のフコイダンの免疫学的定量方法は、本発明のモノクローナル抗体を試料に接触させる工程を少なくとも含むことを特徴とする、試料中に存在するフコイダンの検出方法である。本発明の免疫学的定量方法の測定対象となるフコイダンは、好ましくはマコンブ又はガゴメコンブ由来のフコイダンであり、特に好ましくはマコンブ由来のフコイダンである。
試料中に存在するフコイダンの濃度は、例えば予め既知濃度のフコイダン標準液を用いてフコイダン濃度と検出結果との関係について検量線を作成し、フコイダン濃度が未知の試料についての検出結果と前記検量線とを照らし合わせることにより行なうことができる。既知濃度のフコイダン標準液は、例えば、上記した精製フコイダンを用いて調製することができる。
函館市南茅部産のマコンブ尾札部から図1のようにして純度がほぼ100%のフコイダンを調製した。
コンブ粉末から酸性に可溶の多糖画分を得(抽出液)、それをろ過して粗精製物を得た(ろ液)。粗精製物をTOYOPEARL-DEAE650Mカラムクロマトグラフィーに供し、図2に示すように3つの画分を得た。画分Iは通過成分なので、画分IIと画分IIIを集め、それぞれをエタノールで精製し、赤外分光分析(堀場フーリエ変換赤外分光光度計FT−700)で同定した。図3に示すように、画分IIはアルギン酸に特徴的なカルボキシル基の吸収を示したので、アルギン酸と同定した。そして、図4に示すように画分IIIが硫酸基とカルボキシル基を有するフコイダンである(精製フコイダン)。この画分を再度TOYOPEARL-DEAE650Mカラムクロマトグラフィーに供すると、明確な一本のピークを示したので、純度はHPLC上ではほぼ100%と判定した。
参考例で得られた精製フコイダンを用いてモノクローナル抗体を作製した。作製の手順を図5に示す。
5週齢の雌性BALB/Cマウスに、市販のGERBU MMアジュバント溶液にフコイダンを溶解したものを、動物1匹あたり、初回はフコイダンの量で100mg、2回目からはフコイダンの量で50〜100μgの量で計7回ブーストした。免疫化したマウスから脾細胞を取り出し、ミエローマ細胞P3U1(X63−Ag8−653のサブクローン)と10:1の割合で混合し、PEG1500を用いて細胞融合を行なった。尚、上記の細胞融合に用いるミエローマ細胞には、細胞融合1週間前より、8−アザグアニンを含んだHAT培地で生育させたものを用いた。
細胞融合後、HAT培地中で細胞を生育させた細胞を、以下のクローンの選抜に用いた。
実施例1で得られた、ハイブリドーマ(FUCOX31G46F)を用いてその特異性を調べた。
マコンブには、フコイダン以外にも多糖類が含まれている。主な多糖類はラミナリンとアルギン酸である。上記ハイブリドーマの培養上清を用いて、得られた抗体とこれらの多糖類との交差性を、ELISA阻害法によって測定した。フコイダンとしては参考例で調製した精製フコイダンを、ラミナリン(SIGMA社)及びアルギン酸(和光純薬工業)はそれぞれ市販のものを用いた。フコイダン濃度の上昇に伴って、抗原抗体反応により複合体を形成することによって濃度依存的に遊離の抗体が減少し、それによってOD450nm値が低下する。すなわち、OD450nm値が下がる程、抗原抗体反応が生じていることを示している。図6に示すように、本抗体はフコイダンのみに特異的に反応した。
さらに、別の褐藻のワカメの根、通称メカブとして食されている部分についてもその交差性を調べた。図7中、「メカブ」は、別の褐藻のワカメの根、通称メカブとして食されている部分の粉末を抽出しただけのものである。
本抗体は、ガゴメコンブの通過画分とは交差反応を示さず、メカブの粉末からの抽出液とは弱いが定量的反応を示し、ガゴメコンブの粉末からの抽出液とはメカブよりも明確な交差性を定量的に示した。そして、ガゴメコンブから調製したフコイダンとは強い交差性を示したが、その反応性は図6のマコンブのフコイダンに対する反応性と比較すると、濃度40μg/mLで比較して、約3分の1であった。これらの結果が示していることは、本発明で作成した抗体は、マコンブのフコイダンをより特異的に認識する抗体であり、その反応性はガゴメコンブ、メカブと、近縁性が遠ざかるほど弱くなった。つまり、褐藻のフコイダンを定量することが可能な抗体であり、さらにマコンブからの近縁性の程度によって反応性が異なる抗体である。特異的にマコンブのフコイダンを定量することが可能な抗体である。
作成した抗体が、他の多糖類が混在する系でも、その不純物に精度を阻害されることなく、フコイダンを定量できるか否かを検討した。各種濃度(0〜40μg/mL)のアルギン酸混在下でも、本抗体はアルギン酸に阻害されることなくフコイダンを定量することができた(図8)。
参考例で調製したマコンブ由来の精製フコイダン(画分III)を被検体として用いて、本発明のモノクローナル抗体の定量性を測定した(図9)。測定はELISA阻害法で行なった。
検量線は、y=−0.15Ln(x)+0.685で、R2=0.992(式中、yは吸光度を、xはフコイダンの濃度を、R2は相関係数をそれぞれ示す)であった。本発明のモノクローナル抗体は、一定の濃度範囲のフコイダンを定量的に検出し得ることがわかった。
被検体として、マコンブから水で抽出しただけのマコンブ水抽出物を被検体として用いて、フコイダンの含量を、本発明のモノクローナル抗体を用いて測定した。マコンブ水抽出物には、フコイダンを含め多様な多糖類が含まれている。測定は実施例4同様にELISA阻害法により行なった。結果を図10に示す。
検量線は、y=−0.12Ln(x)+0.642で、R2=0.99(式中、yは吸光度を、xは粗多糖の濃度を、R2は相関係数をそれぞれ示す)であった。本発明のモノクローナル抗体は、多糖類の混合物中においても、一定の濃度範囲のフコイダンを定量的に検出し得ることがわかった。
Claims (6)
- マコンブ由来のフコイダンを抗原として免疫した哺乳動物由来の脾臓細胞と、哺乳動物由来のミエローマ細胞との細胞融合により形成されるハイブリドーマにより産生される、マコンブ由来のフコイダンに対して反応し、アルギン酸及びラミナリンに対して実質的に反応しない、マコンブ由来のフコイダン特異モノクローナル抗体であって、該ハイブリドーマが受領番号FERM AP−21625であるモノクローナル抗体。
- 抗原として用いるマコンブ由来のフコイダンが、以下の工程を含む精製方法によって調製されるものである、請求項1記載のモノクローナル抗体:
(1)マコンブから酸性可溶性の多糖画分を得る工程、
(2)工程(1)で得られた多糖画分を陰イオン交換クロマトグラフィーに付す工程、及び
(3)工程(2)で得られたピーク画分から、フコイダンに相当する画分を選択して回収する工程。 - 受領番号FERM AP−21625であるハイブリドーマ。
- 請求項1又は2に記載のモノクローナル抗体を用いることを特徴とする、マコンブ由来のフコイダンの免疫学的定量方法。
- 請求項1又は2に記載のモノクローナル抗体を少なくとも含む、マコンブ由来のフコイダンの定量用キット。
- さらに、標品として精製フコイダンを含む、請求項5記載のキット。
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