JP5502298B2 - フコイダン特異抗体及びそれを用いたフコイダンの免疫学的定量方法 - Google Patents

フコイダン特異抗体及びそれを用いたフコイダンの免疫学的定量方法 Download PDF

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Description

本発明はフコイダンに特異的に反応するモノクローナル抗体に関する。より詳細には、フコイダンに対して反応し、アルギン酸及びラミナリンに対して実質的に反応しない、フコイダン特異モノクローナル抗体及び該抗体を用いたフコイダンの免疫学的定量方法に関する。
フコイダンはコンブ、ワカメ、モズクなどの褐藻に含まれる硫酸多糖の一種で、免疫賦活活性やアレルギー軽減などの生理機能を有するので、機能性食品として多用されている。フコイダンは、分岐が多い高分子であり、構成糖の種類も海藻の種類によってフコースの他にガラクトースやキシロース、アラビノース、マンノース、グルクロン酸など様々であり、また、多くのフコイダンでエステル硫酸の結合が様々な位置に見られるなど、非常に複雑な構造を有するため未だ構造が確認されていないフコイダンがほとんどである。更に、フコイダンは海藻の種類だけでなく生育段階、産地などの環境によっても構成物質が異なると考えられている。
従って、フコイダンを食品や医薬品として用いるに際して、褐藻中のフコイダンの含有量を知ることは非常に有意義である。ところが、フコイダンの機能性の研究が始められてから20年余を経た現在でも、その定量法は未だ確立されていない。多糖類を定量するには抗体を用いる免疫学的方法しかないが、フコイダンを特異的に認識する抗体は知られていない。
また、コンブやワカメなどの褐藻にはフコイダン以外にアルギン酸やラミナリンといった他の酸性多糖が含まれていることが知られている。従って、フコイダンに対して反応性を有することに加えて、アルギン酸やラミナリンなどの他の多糖には反応性を示さない抗体が求められている。
本発明はフコイダンに対して反応し、アルギン酸及びラミナリンに対して実質的に反応しない、フコイダン特異モノクローナル抗体を提供することを目的とする。さらに本発明は、該フコイダン特異モノクローナル抗体を用いることを特徴とするフコイダンの免疫学的定量方法及びそのためのキットの提供を目的とする。
本発明者らは、上記課題に鑑み、鋭意検討を行った結果、精製したフコイダンを抗原として免疫した哺乳動物由来の脾臓細胞と、哺乳動物由来のミエローマ細胞との細胞融合により形成されるハイブリドーマであって、フコイダンに対して反応し、アルギン酸及びラミナリンに対して実質的に反応しない、フコイダン特異モノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを得ることに成功し本発明を完成するに至った。すなわち本発明は以下の通りである。
〔1〕フコイダンに対して反応し、アルギン酸及びラミナリンに対して実質的に反応しない、フコイダン特異モノクローナル抗体。
〔2〕フコイダンが、マコンブ又はガゴメコンブ由来のフコイダンである、上記〔1〕記載のモノクローナル抗体。
〔3〕フコイダンを抗原として免疫した哺乳動物由来の脾臓細胞と、哺乳動物由来のミエローマ細胞との細胞融合により形成されるハイブリドーマにより産生される、上記〔1〕又は〔2〕記載のモノクローナル抗体。
〔4〕マコンブ由来のフコイダンを抗原として用いることを特徴とする、上記〔3〕記載のモノクローナル抗体。
〔5〕抗原として用いるマコンブ由来のフコイダンが、以下の工程を含む精製方法によって調製されるものである、上記〔4〕記載のモノクローナル抗体:
(1)マコンブから酸性可溶性の多糖画分を得る工程、
(2)工程(1)で得られた多糖画分を陰イオン交換クロマトグラフィーに付す工程、及び
(3)工程(2)で得られたピーク画分から、フコイダンに相当する画分を選択して回収する工程。
〔6〕受領番号FERM AP−21625であるハイブリドーマにより産生される、上記〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載のモノクローナル抗体。
〔7〕受領番号FERM AP−21625であるハイブリドーマ。
〔8〕上記〔1〕〜〔6〕のいずれかに記載のモノクローナル抗体を用いることを特徴とする、フコイダンの免疫学的定量方法。
〔9〕フコイダンがマコンブ又はガゴメコンブ由来のフコイダンである、上記〔8〕記載の方法。
〔10〕上記〔1〕〜〔6〕のいずれかに記載のモノクローナル抗体を少なくとも含む、フコイダンの定量用キット。
〔11〕さらに、標品として精製フコイダンを含む、上記〔10〕記載のキット。
本発明のモノクローナル抗体は、フコイダンに対して反応性を有するために、フコイダンの検出、定量に好適に用いることができる。また、本発明のハイブリドーマを用いることにより、本発明のモノクローナル抗体を効率的に産生させることができる。また、本発明のフコイダンの免疫学的定量方法及び定量用キットを用いることにより、試料中に存在するフコイダンを効率的に定量することができる。
文中で特に断らない限り、本明細書で用いるすべての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者に一般に理解されるのと同じ意味をもつ。本明細書に記載されたものと同様又は同等の任意の方法及び材料は、本発明の実施又は試験において使用することができるが、好ましい方法及び材料を以下に記載する。本明細書で言及したすべての刊行物及び特許は、例えば、記載された発明に関連して使用されうる刊行物に記載されている、構築物及び方法論を記載及び開示する目的で、参照として本明細書に組み入れられる。
1.フコイダン特異モノクローナル抗体
本発明のフコイダン特異モノクローナル抗体は、フコイダンに対して反応し、アルギン酸及びラミナリンに対して実質的に反応しない抗体である。
フコイダンは、コンブ、ワカメ、モズクなどの褐藻に含まれる硫酸多糖の一種で、L−フコース−4−硫酸のα−1,2−結合を主体として1,3−又は1,4−結合の分岐構造を有するフコース硫酸のポリマーである。フコイダンは海藻の種類によって構造が異なる。即ち、フコイダンとは、フコースを含有する硫酸化多糖を総称したものである。フコイダンは、例えば、マコンブを原料として、以下の精製方法によって得ることができる。(フコイダンの精製方法)
(1)マコンブから酸性可溶性の多糖画分を得る工程、
(2)工程(1)で得られた多糖画分を陰イオン交換クロマトグラフィーに付す工程、及び
(3)工程(2)で得られたピーク画分から、フコイダンに相当する画分を選択して回収する工程。
(1)マコンブから酸性可溶性の多糖画分を得る工程。
原料として用いるマコンブは、フコイダンを含有するものであれば、その産地や採取時期などは特に限定されない。好ましくはよりフコイダンが多く含まれるコンブ葉状体の先端部分を用いる。マコンブを適当な破砕機によって粉末とし、それを、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸などの無機酸、又は、酢酸、クエン酸、シュウ酸、コハク酸、ギ酸、プロピオン酸などの有機酸の水溶液をpH1〜5、酸濃度が0.05〜1.5N、好ましくは0.9〜1.2Nとなるように加え、室温(1〜30℃)、好ましくは常温(20〜25℃)で、0〜24時間、好ましくは0.5〜1.5時間、特に好ましくは1時間程度撹拌して抽出する。好ましくは、上記原料に、塩酸を、pH2〜3、0.05〜1.2Nとなるように加え、20〜30℃にて1時間程度抽出する。得られた抽出物を遠心分離してその上清を、抽出液として得る。かかる抽出液に酸性可溶性の多糖画分が含まれる。
(2)工程(1)で得られた多糖画分を陰イオン交換クロマトグラフィーに付す工程。
上記(1)で得られた抽出液をアルカリ剤により中和後、さらに濾紙を用いた吸引濾過などにより濾過する。得られた濾液を用いて陰イオン交換クロマトグラフィーを行なう。
本発明において用いられる陰イオン交換樹脂は特に限定されるものではない。陰イオン交換樹脂の活性基としては、例えばDEAE(ジエチルアミノエチル基)、QAE〔ジエチル(2−ヒドロキシプロピル)アミノエチル基〕、Q(又はTEAE)(トリエチルアミノエチル基)、ジメチル(2−ヒドロキシエチル)アミノメチル基、PAB(パラアミノベンジル基)、AE(アミノエチル基)、GE(グアニドエチル基)などが用いられており、これらを有する陰イオン交換樹脂を用いることができる。陰イオン交換樹脂の担体としては、例えばセルロース系の物質、デキストラン系の物質、アガロース系の物質、スチレンジビニルベンゼン重合体や、親水性ビニルポリマーなどの合成ポリマー系の物質などが用いられており、いかなる担体を用いた陰イオン交換樹脂でも用いることができる。これらの活性基と担体とを組合せた市販の陰イオン交換樹脂には、例えばDEAE−セファロース系、DEAE−セファセル系、DEAE−セファデックス系、QAE−セファデックス系、Q−セファロースファストフロー(以上ファルマシア社製)、DEAE−バイオゲル系、AG系(以上バイオラッド社製)、DEAE−トヨパール系、TSKゲルトヨパール系(以上東ソー社製)、DEAE−セルロファイン系(生化学工業社製)、ダウエックス系(ダウケミカル社製)、TEAE−セルロース(セルバ社製)、アンバーライト系(ローム アンド ハース社製)などがあり、いずれも本発明に用いることができる。
溶出工程に用いる溶離液は、陰イオン交換樹脂の種類に応じて適宜決定することができる。溶離液は、例えばリン酸緩衝剤、トリス塩酸緩衝剤、酢酸緩衝剤で緩衝化されていてもよい。好ましくは溶離液には濃度勾配をつける。濃度勾配には、主として、溶離液の溶媒組成を変化させる方法、イオン強度を経時的に変化させる方法があるが、溶媒により変性する可能性があることを考慮して、イオン強度を経時的に変化させる方法が好適である。イオン強度を調整するためには、通常、NaClや硫酸アンモニウムなどが用いられ、これらのうちでもイオン強度の調整しやすさからNaClが用いられる。具体的には0M〜2M、好ましくは0M〜1M程度のNaCl溶液の濃度勾配が用いられる。
(3)工程(2)で得られたピーク画分から、フコイダンに相当する画分を選択して回収する工程。
本発明においては、上記した陰イオン交換クロマトグラフィーによって、通過画分である画分I、アルギン酸含有画分である画分II、及びフコイダン含有画分であるピークIIIの、3つの画分がピークとして溶出される。各画分に含まれる成分は、赤外分光分析によって同定することができる。画分IIは、アルギン酸に特徴的なカルボキシル基の吸収を示し、画分IIIは、フコイダンに特徴的なカルボキシル基及び硫酸基の吸収を示す。
本発明において「反応する」とは、免疫学的反応又は抗原抗体反応を意味し、この反応性は例えばELISA法、RIA法、ウェスタンブロッティング法などによって調べることができる。例えば、一定濃度の抗体を用いてELISA法を行なったときに、抗原の濃度の増加に比例して反応シグナルが増強される場合に、該抗体は該抗原に反応するということができる。
本発明において「実質的に反応しない」とは、反応シグナルが認められないか、あるいは極めて弱い反応シグナルしか与えない程度であり、抗原の濃度の増加に比例して反応シグナルが増強されないような場合を意味する。
本発明のモノクローナル抗体のエピトープは特に限定されないが、フコイダン以外の酸性多糖であるアルギン酸やラミナリンには実質的に反応せず、またマコンブやガゴメコンブ(特にマコンブ)等のコンブ由来のフコイダンに特に強い反応性を示すことから、コンブ、特にマコンブに特徴的な、あるいは多く含まれるフコイダンの立体構造(例えば硫酸基とフコース残基との結合に基づく分岐構造)等であり得る。
本発明のモノクローナル抗体は、フコイダンを抗原として免疫した哺乳動物由来の脾臓細胞と、哺乳動物由来のミエローマ細胞との細胞融合により形成されるハイブリドーマにより産生させることができる。
抗原として用いるフコイダンは、上記したフコイダンの精製方法を用いて調製されたもの(以下、精製フコイダンとも称する)が好適に用いられる。用いる抗原の量は、免疫する回数(ブースト回数)や、免疫化する哺乳動物の状態、免疫化の程度に応じて適宜設定することができる。哺乳動物への免疫は、精製フコイダンを哺乳動物に投与(皮下投与、腹腔内投与、静脈内投与など)することによって行なう。通常、免疫は数回に分けて行なうが、免疫する回数は、免疫化する哺乳動物の状態、免疫化の程度に応じて適宜設定することができる。通常、動物の免疫化には1〜3回ブーストを行なうが、本発明ではより多めのブースト回数、好ましくは5〜15回ブーストを行なう。勿論、免疫化でき、且つ免疫化の対象となる動物に悪影響を及ぼさない範囲でブースト回数は適宜変更できる。1回のブーストに用いる抗原量は通常、1〜500μg、好ましくは30〜150μgである。また、免疫の際、アジュバントと共に投与することができる。アジュバントとしては、ミョウバン、結核死菌、完全フロインドアジュバント、不完全フロイントアジュバント、Gerbuアジュバントなど、アジュバント効果が期待できるものであればよい。好ましくはGERBU MMアジュバンドを用いる。
上記の脾臓細胞及びミエローマ細胞の由来は、特に限定されず、ブタ、ウシ、マウス、ラット等の哺乳動物が用いられるが、続いて実施するスクリーニングのやり易さといった観点からマウスを用いることが好ましい。ミエローマ細胞としては、マウスのBALB/c由来のP3−NS−1/1−Ag4−1、P3−X63−Ag8−U1(P3 U1)、P3−X63−Ag8−653、SP2/0−Agl4などが挙げられる。
精製フコイダンにより免疫感作された動物の脾臓細胞とミエローマ細胞は、一般的な方法、例えばポリエチレングリコール、センダイウイルス、電気パルス等によって細胞融合することが出来る〔Nature, Vol.256, 495〜497(1975)等参照〕。得られたハイブリドーマは、ELISA法等によってスクリーニングを行い、限界希釈法によってクローン化することができる。
このようにして得られたモノクローナル抗体を、例えば、in vitroで培養する方法、in vivoで培養(腹水化)する方法等により培養することにより、モノクローナル抗体を産生させることができる。また、得られた培養液から、例えば塩析、イオン交換、ゲル濾過、アフィニティークロマトグラフィー、電気泳動等、生化学的一般的手法を組み合わせることにより、上記抗体を分離・精製することができる。
本発明のモノクローナル抗体の具体例としては、例えば独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター(茨城県つくば市東1−1−1中央第6)に平成20年7月31日付で受領されている(受領番号FERM AP−21625)ハイブリドーマにより産生されるモノクローナル抗体が挙げられる。
2.フコイダンの免疫学的定量方法及びその為のキット
本発明のフコイダンの免疫学的定量方法は、本発明のモノクローナル抗体を試料に接触させる工程を少なくとも含むことを特徴とする、試料中に存在するフコイダンの検出方法である。本発明の免疫学的定量方法の測定対象となるフコイダンは、好ましくはマコンブ又はガゴメコンブ由来のフコイダンであり、特に好ましくはマコンブ由来のフコイダンである。
上記の「試料」とはフコイダンを含むか、又は含む可能性を有する試料であれば特に限定されず、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸などの無機酸、又は、酢酸、クエン酸、シュウ酸、コハク酸、ギ酸、プロピオン酸などの有機酸の水溶液で原料(例えばマコンブ)を抽出した粗抽出液や、該粗抽出液を陰イオン交換クロマトグラフィーで精製・分離したフコイダン含有画分など、その精製の程度は問わない。精製・分離されたフコイダン含有画分を試料として用いた場合には、より正確な定量が可能であるが、本発明では、フコイダンと共に含まれていることが多いアルギン酸やラミナリンの共存下において、フコイダンの定量が可能であることから、粗抽出液を試料として用いた場合の免疫学的定量に対しても非常に有用である。
本発明のフコイダンの免疫学的定量方法において、試料中に存在するフコイダンの検出における具体的な方法としては、例えばELISA法、ウェスタンブロッティング法、RIA法、サンドイッチ法、競合法などが挙げられる。
試料中に存在するフコイダンの濃度は、例えば予め既知濃度のフコイダン標準液を用いてフコイダン濃度と検出結果との関係について検量線を作成し、フコイダン濃度が未知の試料についての検出結果と前記検量線とを照らし合わせることにより行なうことができる。既知濃度のフコイダン標準液は、例えば、上記した精製フコイダンを用いて調製することができる。
本発明のフコイダンの免疫学的定量方法を実施するにあたり、必要な成分はキット化されて提供され得る。該キットには、少なくとも、本発明のフコイダン特異モノクローナル抗体が含まれる。さらに所望により、各反応に必要な各試薬や緩衝液等を含めておくこともできる。特に、検量線作成用の既知濃度のフコイダン標準液を調製するため、精製フコイダンを標品として含めておくことが好ましい。精製フコイダンは凍結乾燥品、リン酸緩衝溶液等の形態でキット中に含められる。
以下、実施例にそって本発明をさらに詳細に説明するが、これら実施例は本発明の範囲を何ら限定するものではない。また、本発明において使用する試薬や装置、材料は特に言及されない限り、商業的に入手可能である。
参考例:精製フコイダンの調製
函館市南茅部産のマコンブ尾札部から図1のようにして純度がほぼ100%のフコイダンを調製した。
コンブ粉末から酸性に可溶の多糖画分を得(抽出液)、それをろ過して粗精製物を得た(ろ液)。粗精製物をTOYOPEARL-DEAE650Mカラムクロマトグラフィーに供し、図2に示すように3つの画分を得た。画分Iは通過成分なので、画分IIと画分IIIを集め、それぞれをエタノールで精製し、赤外分光分析(堀場フーリエ変換赤外分光光度計FT−700)で同定した。図3に示すように、画分IIはアルギン酸に特徴的なカルボキシル基の吸収を示したので、アルギン酸と同定した。そして、図4に示すように画分IIIが硫酸基とカルボキシル基を有するフコイダンである(精製フコイダン)。この画分を再度TOYOPEARL-DEAE650Mカラムクロマトグラフィーに供すると、明確な一本のピークを示したので、純度はHPLC上ではほぼ100%と判定した。
実施例1:モノクローナル抗体の作製
参考例で得られた精製フコイダンを用いてモノクローナル抗体を作製した。作製の手順を図5に示す。
5週齢の雌性BALB/Cマウスに、市販のGERBU MMアジュバント溶液にフコイダンを溶解したものを、動物1匹あたり、初回はフコイダンの量で100mg、2回目からはフコイダンの量で50〜100μgの量で計7回ブーストした。免疫化したマウスから脾細胞を取り出し、ミエローマ細胞P3U1(X63−Ag8−653のサブクローン)と10:1の割合で混合し、PEG1500を用いて細胞融合を行なった。尚、上記の細胞融合に用いるミエローマ細胞には、細胞融合1週間前より、8−アザグアニンを含んだHAT培地で生育させたものを用いた。
細胞融合後、HAT培地中で細胞を生育させた細胞を、以下のクローンの選抜に用いた。
クローニングには限界希釈法を採用した。すなわち、細胞数がウェル当たり1以下になるようにHAT培地で細胞を希釈し、それを96ウェルプレートに播種した。これを常法に従って培養し、培養上清を得た。培養上清の抗体価を常法に従いELISA法により行い、陽性のウェルを選抜した。1回目のクローニングで、400ウェル中5個の陽性ウェルが観察された。そのうちの1つのウェルの細胞を用いて、再びクローニングを行なった結果、16ウェル中5個の陽性クローンが得られた。5つのクローンはいずれもほぼ同じ性質を有していた。1種類のハイブリドーマ(FUCOX31G46F)を樹立した。このハイブリドーマは、平成20年7月31日に、独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センターに受領され、受領番号として、FERM AP−21625が付与されている。
実施例2:モノクローナル抗体の特異性
実施例1で得られた、ハイブリドーマ(FUCOX31G46F)を用いてその特異性を調べた。
マコンブには、フコイダン以外にも多糖類が含まれている。主な多糖類はラミナリンとアルギン酸である。上記ハイブリドーマの培養上清を用いて、得られた抗体とこれらの多糖類との交差性を、ELISA阻害法によって測定した。フコイダンとしては参考例で調製した精製フコイダンを、ラミナリン(SIGMA社)及びアルギン酸(和光純薬工業)はそれぞれ市販のものを用いた。フコイダン濃度の上昇に伴って、抗原抗体反応により複合体を形成することによって濃度依存的に遊離の抗体が減少し、それによってOD450nm値が低下する。すなわち、OD450nm値が下がる程、抗原抗体反応が生じていることを示している。図6に示すように、本抗体はフコイダンのみに特異的に反応した。
また、マコンブの類縁褐藻との交差性を測定した。結果を図7に示す。ガゴメコンブは通称でトロロコンブとも呼ばれる、マコンブにごく近縁のコンブである。このガゴメコンブから、参考例に準じた方法でフコイダンを調製した。図7中の「ガゴメ(精製)」は、図2に示されるマコンブの画分IIIに相当する画分であり、純度がHPLC上でほぼ100%のガゴメコンブのフコイダンである。図7中の「ガゴメ(通常)」は、ガゴメコンブの粉末を抽出しただけのものである。「ガゴメ(PAS)」は、図2に示されるマコンブの画分Iに相当する通過画分である。
さらに、別の褐藻のワカメの根、通称メカブとして食されている部分についてもその交差性を調べた。図7中、「メカブ」は、別の褐藻のワカメの根、通称メカブとして食されている部分の粉末を抽出しただけのものである。
本抗体は、ガゴメコンブの通過画分とは交差反応を示さず、メカブの粉末からの抽出液とは弱いが定量的反応を示し、ガゴメコンブの粉末からの抽出液とはメカブよりも明確な交差性を定量的に示した。そして、ガゴメコンブから調製したフコイダンとは強い交差性を示したが、その反応性は図6のマコンブのフコイダンに対する反応性と比較すると、濃度40μg/mLで比較して、約3分の1であった。これらの結果が示していることは、本発明で作成した抗体は、マコンブのフコイダンをより特異的に認識する抗体であり、その反応性はガゴメコンブ、メカブと、近縁性が遠ざかるほど弱くなった。つまり、褐藻のフコイダンを定量することが可能な抗体であり、さらにマコンブからの近縁性の程度によって反応性が異なる抗体である。特異的にマコンブのフコイダンを定量することが可能な抗体である。
実施例3:モノクローナル抗体の精度
作成した抗体が、他の多糖類が混在する系でも、その不純物に精度を阻害されることなく、フコイダンを定量できるか否かを検討した。各種濃度(0〜40μg/mL)のアルギン酸混在下でも、本抗体はアルギン酸に阻害されることなくフコイダンを定量することができた(図8)。
実施例4:フコイダンの検量線の作成(1)
参考例で調製したマコンブ由来の精製フコイダン(画分III)を被検体として用いて、本発明のモノクローナル抗体の定量性を測定した(図9)。測定はELISA阻害法で行なった。
検量線は、y=−0.15Ln(x)+0.685で、R=0.992(式中、yは吸光度を、xはフコイダンの濃度を、Rは相関係数をそれぞれ示す)であった。本発明のモノクローナル抗体は、一定の濃度範囲のフコイダンを定量的に検出し得ることがわかった。
実施例5:フコイダンの検量線の作成(2)
被検体として、マコンブから水で抽出しただけのマコンブ水抽出物を被検体として用いて、フコイダンの含量を、本発明のモノクローナル抗体を用いて測定した。マコンブ水抽出物には、フコイダンを含め多様な多糖類が含まれている。測定は実施例4同様にELISA阻害法により行なった。結果を図10に示す。
検量線は、y=−0.12Ln(x)+0.642で、R=0.99(式中、yは吸光度を、xは粗多糖の濃度を、Rは相関係数をそれぞれ示す)であった。本発明のモノクローナル抗体は、多糖類の混合物中においても、一定の濃度範囲のフコイダンを定量的に検出し得ることがわかった。
図1は、マコンブ由来のフコイダンの精製の手順を示した模式図である。 図2は、マコンブ抽出液を陰イオン交換クロマトグラフィーで分離した結果を示すチャート図である。 図3は、分画IIの赤外分光スペクトル図である。 図4は、分画IIIの赤外分光スペクトル図である。 図5は、フコイダン特異モノクローナル抗体の作成手順を示した模式図である。 図6は、本発明のモノクローナル抗体のフコイダン以外の多糖類への反応性を示した図である。 図7は、本発明のモノクローナル抗体のマコンブ以外の藻類のフコイダンに対する反応性を示した図である。 図8は、本発明のフコイダンの免疫学的定量方法の精度を示した図である。アルギン酸の共存下でもフコイダンを定量的に測定することができた。 図9は、精製フコイダンをフコイダン被検体として用いた場合の、フコイダン定量用の検量線である。 図10は、マコンブ水抽出物をフコイダン被検体として用いた場合の、フコイダン定量用の検量線である。

Claims (6)

  1. マコンブ由来のフコイダンを抗原として免疫した哺乳動物由来の脾臓細胞と、哺乳動物由来のミエローマ細胞との細胞融合により形成されるハイブリドーマにより産生される、マコンブ由来のフコイダンに対して反応し、アルギン酸及びラミナリンに対して実質的に反応しない、マコンブ由来のフコイダン特異モノクローナル抗体であって、該ハイブリドーマが受領番号FERM AP−21625であるモノクローナル抗体
  2. 抗原として用いるマコンブ由来のフコイダンが、以下の工程を含む精製方法によって調製されるものである、請求項1記載のモノクローナル抗体:
    (1)マコンブから酸性可溶性の多糖画分を得る工程、
    (2)工程(1)で得られた多糖画分を陰イオン交換クロマトグラフィーに付す工程、及び
    (3)工程(2)で得られたピーク画分から、フコイダンに相当する画分を選択して回収する工程。
  3. 受領番号FERM AP−21625であるハイブリドーマ。
  4. 請求項1又は2に記載のモノクローナル抗体を用いることを特徴とする、マコンブ由来のフコイダンの免疫学的定量方法。
  5. 請求項1又は2に記載のモノクローナル抗体を少なくとも含む、マコンブ由来のフコイダンの定量用キット。
  6. さらに、標品として精製フコイダンを含む、請求項記載のキット。
JP2008228418A 2008-08-25 2008-09-05 フコイダン特異抗体及びそれを用いたフコイダンの免疫学的定量方法 Expired - Fee Related JP5502298B2 (ja)

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