JP5497770B2 - 急性期脳梗塞におけるアテローム血栓性脳梗塞の病型鑑別方法および発症予測方法 - Google Patents

急性期脳梗塞におけるアテローム血栓性脳梗塞の病型鑑別方法および発症予測方法 Download PDF

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Description

本発明は、急性期脳梗塞患者の生体試料におけるグリコアルブミンおよびヘモグロビンA1cを測定し、グリコアルブミン/ヘモグロビンA1c比から、正確、簡便、迅速かつ安価に急性期脳梗塞の病型鑑別を行う方法、並びに被験者の生体試料におけるグリコアルブミンおよびヘモグロビンA1cを測定し、グリコアルブミン/ヘモグロビンA1c比および/またはその経時変化から、正確、簡便、迅速かつ安価にアテローム血栓性脳梗塞の発症を予測する方法に関する。更に本発明は、急性期脳梗塞患者におけるアテローム血栓性脳梗塞の病型鑑別、又は被験者のアテローム血栓性脳梗塞の発症予測を行うための装置、並びに急性期脳梗塞患者におけるアテローム血栓性脳梗塞の病型鑑別、又は被験者のアテローム血栓性脳梗塞の発症予測を行うためのアテローム血栓性脳梗塞診断用キットに関する。
脳梗塞は、臨床分類としてアテローム血栓性脳梗塞、心原性脳塞栓、ラクナ梗塞、その他の4つの臨床病型に分類されるが(NINDS「脳血管障害の分類第III版」)、急性期脳梗塞においてこれら病型鑑別をなるべく早期に行うことは、病型により適応薬剤、治療法も異なるため非常に重要である(非特許文献1)。例えば、急性期脳梗塞のうち、アテローム血栓性脳梗塞に適応される抗凝固薬剤のオザグレル、抗血小板薬剤のアルガトロバンは心原性脳梗塞には禁忌であるので、これらの病型を鑑別することは重要である。
従来、これら急性期脳梗塞の病型鑑別は病歴、身体所見、臨床症状やCT・CTA、MRI・MRAなどの画像診断、心電図、血小板機能、凝固・線溶系の血液検査、脳の局所血流量の検査等の結果を総合的に判定し行われている。現在、最も汎用されているCTによる判定では早期においては判定者により判定が異なり、熟練医以外の正診率が低いため、近年ではDWIによる診断等も普及している。しかし、いずれの方法も高価な装置を必要とするうえに高度に専門的で複雑であり、確定診断が困難な場合が多く、正確かつ、簡便、迅速、安価な病型鑑別の方法が求められていた。
非特許文献2によれば、アテローム血栓性脳梗塞の診断においては、病歴聴取、診察、画像診断によりアテローム血栓性脳梗塞に特徴的な所見(アテローム硬化の危険因子、他のアテローム硬化性疾患の合併、TIAの先行、発症後の段階状の症状進行、頚部血管雑音、意識障害、皮質症候、境界領域または皮質枝領域梗塞)が得られるかどうかが重要であるが、確定診断には脳梗塞の原因となるような主幹動脈の狭窄(血管径の50%以上)または閉塞の存在を証明することが必要であるとされている。しかしながら、CT、CTA、MR、MRAを用いても確定診断に必要な主幹動脈の狭窄や閉塞の存在を証明することは困難なケースも多く、これら高価な装置を有する施設以外では検査の実施すら不可能である。
また、心原性脳梗塞の診断において、最も頻度の高い非弁膜症性心房細動(NVAF)は心電図検査が必須であるとされているが、NVAFの1/3は発作性であり、長時間記録でなければ異常を見逃す可能性がある。また、突発性完成型の発症が「8〜9割の頻度」であり、発症時より意識障害を伴うことも「少なくなく」、経過中の意識障害も「しばしば高度」となり、失語や失認などの皮質障害も「呈しやすく」とあり、これらの身体症状からただちに病型を確定できるものではない。
上述のように、急性期脳梗塞においては、病型の鑑別は治療法も異なるため大変重要であるにもかかわらず、病型鑑別に統一したルールはなく、高価な装置と専門医の総合的な判断が必要なうえ、それらを満たした状況でも困難を伴う場合が多い。
ところで、糖尿病の診断および血糖管理を行う上で、ヘモグロビンA1c、グリコアルブミン等の糖化タンパク質は臨床において日常的に測定され、血糖管理指標として汎用されている。ヘモグロビンA1cは赤血球中のヘモグロビンにグルコースが結合した物質で、ヘモグロビンの寿命の期間、約4ヶ月、主として2ヶ月の血糖状態によりその多寡が決定される。一方、グリコアルブミンは、血清および血漿アルブミンにグルコースが結合した物質でアルブミンが血中に存在する期間、約1ヶ月、主として2週間の血糖状態によりその多寡が決定される。すなわち、グリコアルブミンは、ヘモグロビンA1cと比べて、より直近の血糖状態を表す指標である。
ヘモグロビンA1cとグリコアルブミンの値は、血糖が安定した状態でグリコアルブミン/ヘモグロビンA1cの比率が約3程度の特徴的な値になることが知られている(非特許文献3)が、血糖状態が変化した場合、グリコアルブミンが先行して変動するため、その比が3程度の特徴的な値から変化する。血糖状態が悪化している状態ではグリコアルブミンが先行して上昇するため、グリコアルブミン/ヘモグロビンA1c比は血糖安定時の3程度の特徴的な値よりも大きくなり、血糖状態が改善している状態においてはその比は3程度の特徴的な値よりも小さくなる。従って、グリコアルブミン/ヘモグロビンA1c比により、直近の血糖が上昇しているか、低下しているかを判定することが可能である。
血糖変動時のみならず血糖安定時においても、日々の血糖振れ幅が大きい場合などもグリコアルブミン/ヘモグロビンA1c比は3程度の特徴的な値から変化する。例えば、血糖変動の激しい1型糖尿病患者と比較的変動が少ない2型糖尿病患者でのグリコアルブミン/ヘモグロビンA1cは前者において高いことが報告されている(非特許文献4)。また、グリコアルブミンは食後の高血糖をより反映し、ヘモグロビンA1cは空腹時の血糖をより反映することから、両者の乖離から血糖振れ幅を予測できるとの報告もある(非特許文献5)。この報告から2型糖尿病患者においても血糖振れ幅が大きい場合もグリコアルブミン/ヘモグロビンA1c比は3程度の特徴的な値よりも大きくなることが推定される。糖尿病合併症との関連においては、グリコアルブミン/ヘモグロビンA1c比は網膜症の重症度と関係があるとの報告(非特許文献6)や、グリコアルブミンと冠動脈疾患の有無、重症度との関連も報告されている(非特許文献7)。肝硬変、腎不全、甲状腺疾患、貧血、他等、ヘモグロビンの寿命やアルブミンの半減期に影響を与える疾患においても、血糖の変動に関わらず、グリコアルブミン/ヘモグロビンA1c比が約3程度の特徴的な値と乖離することも報告されている(非特許文献8)。
上述のように、グリコアルブミン/ヘモグロビンA1c比が単なる血糖状態に関する指標としてではなく、種々の病態により約3程度の特徴的な値から乖離することが報告され、その乖離の度合いにより各種病態を判定できる場合があることが報告されているが(非特許文献9)、急性期脳梗塞における病型、あるいはアテローム血栓性脳梗塞とグリコアルブミン/ヘモグロビンA1c比の関係に関する報告は今までに無い。また、急性期脳梗塞の発症時の血糖状態と予後が関連することについては報告されているが(非特許文献10)、グリコアルブミン/ヘモグロビンA1c比に着目した研究、グリコアルブミン/ヘモグロビンA1c比を用いて病型鑑別、発症の有無の判定、発症予測を行うことに関する研究は皆無である。
NINDS(ナショナルインスティチュート オブ ニューロロジカルディスオーダー アンド ストローク)「クラシフィケーション オブ セレブロバスキュラーディシーズ III (Classification of cerebrovascular diseases III)」、ストローク(Stroke)1990年、第21巻、p637−676 高木誠、「アテローム血栓性脳梗塞」(脳卒中ナビゲーター 小林祥泰監修)メディカルレビュー社 2002年6/1出版 p126-127 田原保宏、「IV‐B.グリコアルブミン(GA)」(血糖値をみる・考える 島健二編集) 南光堂 2000年1/20出版 p62-69 吉内和富等(Yoshiuchi et. al )「グリケイティドアルブミン イズ ア ベターインディケーション フォア グルコース イクスカージョン ザン グリケイティドヘモグロビン イン タイプ1 アンド タイプ2 ダイアビーティズ(Glycated Albumin is a better Indication for Glucose Excursion than Glycated Hemoglobin in Type 1 and Type 2 Diabetes)」、エンドクリン ジャーナル(Endcrine Journal)、2008年、155、p503-507 佐久間伸子等「食後血糖や血糖変動の推定は?」、肥満と糖尿病、2008年、7巻、第2号、p818-820 今井孝俊等(Imai et al.)「インプルーブド モニタリング オブ ザ ハイパーグライセミック ステート イン タイプ1 ダイアビーティーズ ペイシェンツ バイ ユース オブ ザ グリコアルブミン/ヘモグロビンエイワンシー レイショ(Improved Monitoring of the Hyperglycemic State in Type1 Diabetes Patients by Use of the Glycoalbuminn/HbA1c Ratio)」、ザ レビュー オブ ダイアビティック スタディーズ(The Review of Diabetic Studies)、2007年、4巻、1号、p44-48 Li Jin Pu et.al.「インクリースド セイラム グリケイティドアルブミン レベル イズ アソシエイティド ウィズ ザ プレゼンス アンド シビアリティ オブ コロナリー アテリイ ディシーズ イン タイプ2 ディアベティック ペイシェンツ(Increased Serum Glycated Albumin Level is Associated with the Presence and Severity of Coronary Artery Disease in Type 2 diabetic Patients.)」、サーキュレーション ジャーナル(Circulation Journal)、2007年、第71巻、7号、p1067-1073 古賀正史「グリコアルブミン・フルクトサミン」、総合臨床、2008年第57巻7号、p1922-1927 古賀正史等(Koga et. al. )[グリコアルブミンをめぐる話題]、総合臨床、2006年、55巻、10号、p2513-2514 Stesd LG et.al.「ハイパーグライセミア アズ アン インディペンデント プレディクター オブ ワース アウトカム イン ノン‐ディアベティック ペイシェンツ プレゼンティング ウイズ アキュート イシェミック ストローク(Hyperglycemia as an independent predictor of worse outcome in non-diabetic patients presenting with acute ischemic stroke)」、ニューロクリット ケア(Neurocrit Care)、2009年、10、p181-186 第52回日本糖尿病学会年次学術集会ポスターセッション要旨I−P−130 函館医学誌第28巻第1号(2004)p12
本発明は、正確、簡便、迅速かつ安価に急性期脳梗塞におけるアテローム血栓性脳梗塞の病型鑑別を行うための方法、および病型鑑別を行うための装置、および病型鑑別のためのアテローム血栓性脳梗塞診断用キットを提供することを解決すべき課題とする。さらに、本発明は、正確、簡便、迅速かつ安価にアテローム血栓性脳梗塞の発症を予測するための方法、およびアテローム血栓性脳梗塞の発症を予測をするための測定装置、およびアテローム血栓性脳梗塞の発症の予測をするためのアテローム血栓性脳梗塞診断用キットを提供することを解決すべき課題とする。
本発明者らは偶然、当施設で数年に亘ってグリコアルブミンとヘモグロビンA1cを測定した患者がアテローム血栓性脳梗塞を発症した場に遭遇し、該患者のグリコアルブミン/ヘモグロビンA1c比がアテローム血栓性脳梗塞発症の約3ヶ月前より約3程度の特徴的な値から時系列的に乖離してきていることを見出した。この症例の経験を契機に、急性期脳梗塞患者99名に関して、病歴、身体所見、CT、MRI等の画像から神経内科医、救急医、放射線医、糖尿病医等の専門医により病型の診断を総合的に行い、病型分類し、グリコアルブミン/ヘモグロビンA1c比との関係を横断的に検討したところ、急性期脳梗塞のうちアテローム血栓性脳梗塞においては、グリコアルブミン/ヘモグロビンA1cが約3程度の特徴的な値よりも統計的に有意に高値を示すことを見出した。
即ち、本発明者らは、生体試料中のグリコアルブミンとヘモグロビンA1cを測定し、グリコアルブミン/ヘモグロビンA1c比および/またはその経時変化を求めることにより脳梗塞の病型鑑別を正確、簡便、迅速かつ安価に実施できること、更にアテローム血栓性脳梗塞の発症予測が可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。現在までに、急性期脳梗塞の病型鑑別または発症予測とグリコアルブミン/ヘモグロビンA1c比の相関を示す研究は報告されておらず、本発明において、グリコアルブミン/ヘモグロビンA1c比および/またはその経時変化により、アテローム血栓性脳梗塞の病型鑑別及びアテローム血栓性脳梗塞の発症予測が正確、簡便、迅速かつ安価に実施できることが初めて見出されたことは画期的である。本発明によれば、以下の発明が提供される。
[1] 急性期脳梗塞患者の生体試料におけるグリコアルブミン/ヘモグロビンA1c比を指標として、該グリコアルブミン/ヘモグロビンA1c比が、アテローム血栓性脳梗塞の病型鑑別用カットオフ値以上の場合にアテローム血栓性脳梗塞であると判定することを特徴とする、急性期脳梗塞患者におけるアテローム血栓性脳梗塞の病型を鑑別する方法。
[2] 下記の(1)〜(3)の工程を含む、急性期脳梗塞患者におけるアテローム血栓性脳梗塞の病型を鑑別する方法;
(1)急性期脳梗塞患者の生体試料におけるグリコアルブミンとヘモグロビンA1cを測定する工程;
(2)工程(1)で得た測定値よりグリコアルブミン/ヘモグロビンA1c比を算出する工程;及び
(3)工程(2)で算出されたグリコアルブミン/ヘモグロビンA1c比と、アテローム血栓性脳梗塞の病型鑑別用カットオフ値とを比較する工程。
[3] 病型鑑別用カットオフ値が3から6の間で任意に設定された数値であり、生体試料が血液試料である、[1]又は[2]に記載の鑑別方法。
[4] 病型鑑別用カットオフ値が3.2から6の間で任意に設定された数値であり、生体試料が血液試料である、[1]又は[2]に記載の鑑別方法。
[5] 被験者の生体試料におけるグリコアルブミン/ヘモグロビンA1c比を指標として、該グリコアルブミン/ヘモグロビンA1c比が、アテローム血栓性脳梗塞の発症予測用カットオフ値以上の場合にアテローム血栓性脳梗塞を発症する可能性が高いと判定することを特徴とする、アテローム血栓性脳梗塞の発症を予測する方法。
[6] 下記の(1)〜(3)の工程を含む、アテローム血栓性脳梗塞の発症を予測する方法;
(1)被験者の生体試料の生体試料におけるグリコアルブミンとヘモグロビンA1cを測定する工程;
(2)工程(1)で得た測定値よりグリコアルブミン/ヘモグロビンA1c比を算出する工程;及び
(3)工程(2)で算出されたグリコアルブミン/ヘモグロビンA1c比とアテローム血栓性脳梗塞の発症予測用カットオフ値とを比較する工程。
[7] 発症予測用カットオフ値が3から6の間で任意に設定された数値であり、生体試料が血液試料である、[5]又は[6]に記載の予測方法。
[8] 発症予測用カットオフ値が3.2から6の間で任意に設定された数値であり、生体試料が血液試料である、[5]又は[6]に記載の予測方法。
[9] (a)グリコアルブミンの測定部、(b)ヘモグロビンA1cの測定部、(c)測定されたグリコアルブミン値及びヘモグロビンA1c値に基づいて、グリコアルブミン/ヘモグロビンA1cの比の算出を行う演算部、及び(d)算出されたグリコアルブミン/ヘモグロビンA1c比に基づいて、急性期脳梗塞患者におけるアテローム血栓性脳梗塞の病型鑑別、又は被験者においてアテローム血栓性脳梗塞の発症予測を行うための判定部を有する、急性期脳梗塞患者におけるアテローム血栓性脳梗塞の病型鑑別、又は被験者においてアテローム血栓性脳梗塞の発症予測を行うための装置。
[10] グリコアルブミン測定試薬及びヘモグロビンA1c測定試薬を含むアテローム血栓性脳梗塞診断用キットであって、グリコアルブミン測定用試薬による測定で得られたグリコアルブミン値とヘモグロビンA1c測定試薬による測定で得られたヘモグロビンA1c値により算出されたグリコアルブミン/ヘモグロビンA1c比を指標とし、急性期脳梗塞患者におけるアテローム血栓性脳梗塞の病型鑑別、又は被験者においてアテローム血栓性脳梗塞の発症予測を行うためのアテローム血栓性脳梗塞診断用キット。
[11] 被験者の生体試料におけるグリコアルブミン/ヘモグロビンA1c比及びその経時変化を指標とするアテローム血栓性脳梗塞の発症を予測する方法であって、下記の判定基準を満たす場合にアテローム血栓性脳梗塞を発症する可能性が高いと判定することを特徴とする予測方法;
1)グリコアルブミン/ヘモグロビンA1c比がアテローム血栓性脳梗塞の発症予測用カットオフ値以上の場合であること、かつ、
2)1)の比の一日あたりの変化量がアテローム血栓性脳梗塞の発症予測用経時変化カットオフ範囲であること。
[12] (a)グリコアルブミンの測定部、(b)ヘモグロビンA1cの測定部、(c)測定されたグリコアルブミン値及びヘモグロビンA1c値に基づいて、グリコアルブミン/ヘモグロビンA1cの比とその経時変化の算出を行う演算部、及び(d)算出されたグリコアルブミン/ヘモグロビンA1c比とその経時変化に基づいて、被験者においてアテローム血栓性脳梗塞の発症予測を行うための判定部を有する、被験者においてアテローム血栓性脳梗塞の発症予測を行うための装置。
[13] グリコアルブミン測定試薬及びヘモグロビンA1c測定試薬を含むアテローム血栓性脳梗塞診断用キットであって、グリコアルブミン測定用試薬による測定で得られたグリコアルブミン値とヘモグロビンA1c測定試薬による測定で得られたヘモグロビンA1c値により算出されたグリコアルブミン/ヘモグロビンA1c比およびその経時変化を指標とし、被験者においてアテローム血栓性脳梗塞の発症予測を行うためのアテローム血栓性脳梗塞診断用キット。
本発明による急性期脳梗塞患者におけるアテローム血栓性脳梗塞の病型鑑別方法、急性期脳梗塞患者におけるアテローム血栓性脳梗塞の病型鑑別を行うための装置、及びアテローム血栓性脳梗塞診断用キットによれば、従来、高価な装置と専門家による複雑な判定を必要としていた急性期脳梗塞の病型鑑別が正確、簡便、迅速かつ安価に実施可能となる。更に本発明によるアテローム血栓性脳梗塞の発症予測方法、アテローム血栓性脳梗塞の発症予測判定装置、及びアテローム血栓性脳梗塞診断用キットによれば、アテローム血栓性脳梗塞の発症予測が正確、簡便、迅速かつ安価に実施可能となる。
本発明の実施例に基づく99名の急性期脳梗塞の患者の病型分類と検査値である。 本発明の実施例に基づくアテローム血栓性脳梗塞を推定する因子についての単回帰分析結果である。 本発明の実施例に基づくアテローム血栓性脳梗塞を推定する因子についての二項ロジスティック解析結果である。 本発明の実施例に基づくアテローム血栓性脳梗塞を病型鑑別するためのグリコアルブミン/ヘモグロビンA1c比のカットオフ値を求めるROC曲線である。 本発明の実施例に基づく105名のヘモグロビンの寿命、およびアルブミンの半減期に関わる疾患、脳梗塞を有しない糖尿病患者におけるグリコアルブミンとヘモグロビンA1cの関係を示す図である。
以下、本発明についてさらに具体的に説明する。
(1)グリコアルブミン
本発明におけるグリコアルブミンとは、アルブミンとグルコースが非酵素的に結合したアルブミンであり、グリコアルブミン、あるいは糖化アルブミンと呼称されることもある。グリコアルブミンは、例えば、HPLC法、免疫法、酵素法で測定できる。現在、例えば、酵素法はグリコアルブミン測定法として汎用されている。本発明におけるグリコアルブミンの測定は、生体試料中のグリコアルブミン濃度の測定のみならず、生体試料中のグリコアルブミン濃度の全アルブミンに対する百分率を測定することも含まれる。
酵素法は、例えば、先ず、生体試料中のグリコアルブミンをプロテアーゼで分解し、糖化アミノ酸を生成させる。次いで糖化アミノ酸にケトアミンオキシダーゼを反応させ、生じた過酸化水素を水素供与体、色素存在下、ペルオキシダーゼを反応させ糖化アミノ酸を定量する。さらに、グリコアルブミン濃度が既知のキャリブレータ等を用い、定量された糖化アミノ酸から生体試料中のグリコアルブミン濃度を求めることができる。同一生体試料のアルブミン濃度をBCP改良法等のアルブミン定量法で求め、グリコアルブミン濃度を除することにより、グリコアルブミンの全アルブミンに対する百分率(%)を求めることもできる。日本においては日本臨床化学会がグリコアルブミン測定の標準法を勧告しているが(武井泉等(Takei et. al.)「グリコアルブミン測定のJSCC勧告法」、臨床化学、2008年、37巻、2号、p178-191)、グリコアルブミン測定の標準法に則った、十分な精度と正確度を有す測定法であることが好ましい。
(2)ヘモグロビンA1c
本発明におけるヘモグロビンA1cとはヘモグロビンβ鎖のN末端バリンにグルコースが非酵素的に結合したヘモグロビンであり、ヘモグロビンA1c、HbA1c、グリコヘモグロビン、グリコヘモグロビンA1c等と呼称されることもある。ヘモグロビンA1cは、例えば、HPLC法、免疫的方法、酵素法等で測定することができる。現在、HPLC法、免疫法、酵素法はいずれも汎用されているヘモグロビンA1c測定方法である。本発明におけるグリコアルブミンの測定は、生体試料中のヘモグロビンA1c濃度の測定のみならず、生体試料中のヘモグロビンA1c濃度の全ヘモグロビンに対する百分率を測定することも含まれる。
HPLC法は例えば、陽イオン交換カラムを用いて、β鎖N末バリンが糖化されたヘモグロビンA1cを生体試料中から分離・測定し、生体試料中の全ヘモグロビンに対するヘモグロビンA1cの百分率(%)で求めることができる。免疫的方法は、β鎖N末バリンにブドウ糖を結合したペプチドを抗原とし、得られた抗体を用い、測定する方法である。また、酵素法はβ鎖N末端のペプチドを切り出すプロテアーゼを用い、切り出した糖化ペプチドをフロクトシペプチドオキシダーゼにより発色系に導き、定量する方法であることができる。ヘモグロビンA1cの測定値は日本糖尿病学会、日本臨床化学会等により標準化されており、標準化に則った、十分な精度と正確度を有す測定法であることが好ましい。グリコアルブミン/ヘモグロビンA1c比とは、グリコアルブミン測定値をヘモグロビンA1c測定値で除算して得られる数値を意味する。
(3)急性期脳梗塞におけるアテローム血栓性脳梗塞の病型鑑別、及びアテローム血栓性脳梗塞の発症予測
急性期脳梗塞は、アテローム血栓性脳梗塞、心原性脳塞栓、ラクナ梗塞、その他の4つの臨床病型に分類される(NINDS「脳血管障害の分類第III版」)。従って、本発明において、急性期脳梗塞におけるアテローム血栓性脳梗塞の病型鑑別とは、急性期脳梗塞患者がアテローム血栓性脳梗塞に分類されるか否かまたはその蓋然性の程度を判定する行為を意味し、アテローム血栓性脳梗塞の発症予測とは、ある者が将来アテローム血栓性脳梗塞を発症するか否かまたはその可能性の程度を判定する行為を意味する。
本発明において、急性期脳梗塞患者由来の生体試料におけるグリコアルブミン/ヘモグロビンA1c比を指標として簡易かつ正確に急性期脳梗塞におけるアテローム血栓性脳梗塞の病型鑑別方法を提供するが、本方法と慣用の鑑別方法を併用して鑑別を行うことは、鑑別精度をさらに高める意味などの観点から、より好ましい。
慣用の鑑別方法として、神経内科医、救急医、放射線医、糖尿病医等、複数の専門医による、病歴、身体所見、CT、MRI画像等を用いた総合的な方法を例示することができる。病歴としては高血圧、糖尿病、高脂血症、喫煙、飲酒習慣、心疾患の有無等が慣用の鑑別に重要である。例えば、高血圧、糖尿病、高脂血症、喫煙等、アテローム硬化の危険因子を有し、他のアテローム硬化性疾患の合併、TIAの先行、頚部血管雑音等がある場合はアテローム血栓性脳梗塞が疑われるとされている。アテローム血栓性脳梗塞は動脈硬化が除々に進行するため発症当初は軽い麻痺など軽症例が多い。一方、塞栓原の心疾患、突発完成型発症、発症時の高度な意識障害等があれば、心原性脳梗塞が疑われるとされている。CTやMRIで出血の有無を調べ、出血と梗塞の鑑別や梗塞巣の範囲を調べる。心原性脳梗塞では広範梗塞や出血梗塞を呈することがある。ラクナ梗塞は神経症候を説明しうる部位に長径1.5cm未満の小梗塞を認めることと定義されている。近年はDWIにより診断される。
(4)アテローム血栓性脳梗塞の病型鑑別用カットオフ値、アテローム血栓性脳梗塞の発症予測用カットオフ値、およびアテローム血栓性脳梗塞の発症予測用経時変化カットオフ範囲
アテローム血栓性脳梗塞の病型鑑別用カットオフ値およびアテローム血栓性脳梗塞の発症予測用カットオフ値について以下に詳述する。
一般的に、血糖が安定した状態で、糖尿病患者血液中のグリコアルブミン/ヘモグロビンA1cの量比は約3程度の特徴的な値になることが知られている(非特許文献3)。本発明においては、肝疾患、腎疾患、甲状腺疾患、貧血、タンパクの合成に影響を与える、ステロイドまたはエリスロポエチン等の薬剤の投与の無い、少なくとも3ヶ月間は血糖が安定した105名の糖尿病患者(3ヶ月のヘモグロビンA1cの変動が0.5%以下の患者)の血糖安定期(上記安定した期間の中間月)のグリコアルブミンとヘモグロビンA1cの測定値より血糖が安定した状態での特徴的なグリコアルブミン/ヘモグロビンA1c比、2.90を求めた。従って、血糖が安定した状態でのグリコアルブミン/ヘモグロビンA1cの比を2.90としてもよい。なお、血糖の安定した状態の糖尿病患者のグリコアルブミン/ヘモグロビンA1cの約3程度の特徴的な値は人種、性別、年齢、症例の母集団、更に将来、国際的な標準化によって測定の単位等が変更されること等によって変わることもあり得る。
アテローム血栓性脳梗塞の病型鑑別用カットオフ値とは、アテローム血栓性脳梗塞に罹患しているか否かまたはその蓋然性の程度を得るための、グリコアルブミン/ヘモグロビンA1c比の基準値を意味する。アテローム血栓性脳梗塞の発症予測用カットオフ値とは、将来アテローム血栓性脳梗塞に罹患するか否かまたは可能性の程度を得るための、グリコアルブミン/ヘモグロビンA1c比の基準値を意味する。いずれのカットオフ値も単一または複数の数値であることができる。
いずれのカットオフ値も、2.9〜6、3〜6、好ましくは3.2〜6、より好ましくは3.2〜4の間の任意の数値であることができる。血糖が安定した状態の糖尿病患者のグリコアルブミン/ヘモグロビンA1c比は特徴的に約3.0(本願実施例では2.9)を示し、アテローム血栓性脳梗塞完成過程においてこの特徴的な値から乖離していくことから、例えば、2.9、3.0、3.2、3.22から選ばれる1以上の数値であることができる。あるいは、例えば、20名以上(好ましくは30名、さらに好ましくは50名以上、最も好ましくは70名以上)の急性期脳梗塞患者を、アテローム血栓性脳梗塞患者、心原性脳梗塞又はラクナ梗塞患者等に慣用方法(例えば、病歴、身体所見、CT、MRI画像等)にて鑑別し、さらに、アテローム血栓性脳梗塞、心原性脳梗塞、ラクナ梗塞等の各分類の患者について、グリコアルブミンとヘモグロビンA1cを測定し、病型毎にグリコアルブミン/ヘモグロビンA1c比を求め、カットオフ値を得てもよい。さらに、公知の統計手法(ROC曲線など)によりカットオフ値を得てもよい(実施例)。本願実施例では、このような手法で、アテローム血栓性脳梗塞の病型鑑別用カットオフ値として、3.2および3.22が得られたことから、アテローム血栓性脳梗塞の病型鑑別用カットオフ値またはアテローム血栓性脳梗塞の発症予測用カットオフ値として3.2または3.22とすることが好ましい。
測定により得られたグリコアルブミン/ヘモグロビンA1c比と血栓性脳梗塞の病型鑑別用カットオフ値またはアテローム血栓性脳梗塞の発症予測用カットオフ値とを比較すること、さらにその比較に基づいて鑑別または発症予測を行うことについて、以下に詳述する。
アテローム血栓性脳梗塞の病型鑑別用カットオフ値が1つの数値である場合、ある急性期脳梗塞患者の生体試料におけるグリコアルブミンとヘモグロビンA1cの測定値の比が、当該カットオフ値以上の場合にその急性期脳梗塞患者はアテローム血栓性脳梗塞に罹患しているまたはその可能性が高いと鑑別することができ、逆に当該カットオフ値未満の場合には罹患していない又はその可能性が低いと鑑別することができる。
例えば、アテローム血栓性脳梗塞の病型鑑別用カットオフ値が3.2または3.22の場合、生体試料を用いて測定されたグリコアルブミン/ヘモグロビンA1c比が、3.2または3.22以上の場合に生体試料を提供した急性期脳梗塞患者はアテローム血栓性脳梗塞患者であるまたはその蓋然性が高く、3.2または3.22未満の場合には該患者はアテローム血栓性脳梗塞患者でないまたはその蓋然性が低いと鑑別することができる。
アテローム血栓性脳梗塞の発症予測用カットオフ値が1つの数値である場合、ある者の生体試料におけるグリコアルブミンとヘモグロビンA1cの測定値の比が、当該カットオフ値以上の場合将来その者がアテローム血栓性脳梗塞に罹患するまたはその可能性が高いと予測することができ、逆に当該カットオフ値未満の場合に将来その者がアテローム血栓性脳梗塞に罹患しないまたはその可能性が低いと予測することができる。例えば、アテローム血栓性脳梗塞の発症予測用カットオフ値が2.9または3.0の場合、生体試料を用いて測定されたグリコアルブミン/ヘモグロビンA1c比が2.9または3.0以上の場合に生体試料を提供した者は将来アテローム血栓性脳梗塞患者に罹患するまたはその可能性が高く、2.9または3.0未満の場合には将来アテローム血栓性脳梗塞患者に罹患しないまたはその可能性が低いと予想することができる。
アテローム血栓性脳梗塞の病型鑑別用カットオフ値が複数の数値である場合、多段階的にアテローム血栓性脳梗塞罹患の有無またはその蓋然性の程度を鑑別することができる。例えば、カットオフ値を、A1、A2、A3、・・・・・、Anと設定した場合、A1未満、A1〜A2、A2〜A3、・・・、An-1〜An、Anより大きいと多段階にグリコアルブミン/ヘモグロビンA1c比の範囲を設定し、その数値範囲が大きければ大きいほど発症蓋然性が高いと予測することも可能である。例えば、アテローム血栓性脳梗塞の病型鑑別用カットオフ値を3.00、3.22とし、生体試料を用いて測定されたグリコアルブミン/ヘモグロビンA1c比が3.22以上は発症しているまたはその蓋然性が高い、3.00〜3.22は発症の蓋然性がある、3.00以下は発症の蓋然性が低いと鑑別することができる。
アテローム血栓性脳梗塞の発症予測用カットオフ値が複数の数値である場合、多段階的にアテローム血栓性脳梗塞の発症可能性を予測することができる。例えば、カットオフ値を、A1、A2、A3、・・・・・、Anと設定した場合、A1未満、A1〜A2、A2〜A3、・・・、An-1〜An、Anより大きいと多段階にグリコアルブミン/ヘモグロビンA1c比の範囲を設定し、その数値範囲が大きければ大きいほど将来の発症可能性が高いと予測することも可能である。例えば、アテローム血栓性脳梗塞の発症予測用カットオフ値を3.00、3.22とし、生体試料を用いて測定されたグリコアルブミン/ヘモグロビンA1c比が3.22以上は将来発症するまたはその可能性が高い、3.00〜3.22は将来発症可能性がある、3.00以下は将来発症可能性が低いと予測することができる。
なお、生体試料を用いて測定されたグリコアルブミン/ヘモグロビンA1c比とアテローム血栓性脳梗塞の病型鑑別用カットオフを比較して、その結果、アテローム血栓性脳梗塞の罹患の有無またはその可能性の程度を鑑別する方法は上記の方法に限定されず、生体試料を用いて測定されたグリコアルブミン/ヘモグロビンA1c比とアテローム血栓性脳梗塞の発症予測用カットオフ値を比較して、その結果、将来のアテローム血栓性脳梗塞の発症を予測する方法も上記の方法に限定されるものではない。
さらに、本発明に係る「急性期脳梗塞患者におけるアテローム血栓性脳梗塞の病型を鑑別する方法」を利用して、急性期脳梗塞患者の鑑別を実施することもできる。すなわち、アテローム血栓性脳梗塞の病型を鑑別する方法を実施して、ある急性期脳梗塞患者がアテローム血栓性脳梗塞でないまたはその可能性が低いと鑑別された場合、さらに、その急性期脳梗塞患者が、心原性脳梗塞、ラクナ梗塞、またはその他の急性期脳梗塞のいずれに相当するかを、自体公知の方法(CT等の画像診断等)を用いて鑑別することができる。また、糖尿病患者血液中のグリコアルブミン/ヘモグロビンA1cの量比は約3程度の特徴的な値になることから、アテローム血栓性脳梗塞の発症を予測する方法において、生体試料を提供する被験者は動脈硬化を有した患者、ならびに糖尿病患者などアテローム血栓性脳梗塞の危険因子を有する患者であることが予測精度等の観点から好ましい。
アテローム血栓性脳梗塞の発症予測用経時変化カットオフ範囲について以下に詳述する。
上記の通り、測定されたグリコアルブミン/ヘモグロビンA1c比とアテローム血栓性脳梗塞の発症予測用カットオフ値の対比に基づいて、アテローム血栓性脳梗塞の発症を予測することもできるが、別の態様として、測定されたグリコアルブミン/ヘモグロビンA1c比の経時変化とアテローム血栓性脳梗塞の発症予測用経時変化カットオフ範囲の対比に基づいてアテローム血栓性脳梗塞の発症を予測することもできる。
アテローム血栓性脳梗塞の発症予測用経時変化カットオフ範囲とは、将来アテローム血栓性脳梗塞に罹患するか否かまたは可能性の程度を得るための、グリコアルブミン/ヘモグロビンA1c比の経時変化の基準値を意味する。グリコアルブミン/ヘモグロビンA1c比の経時変化とは、同一被験者由来の同一生体組織の試料におけるグリコアルブミン/ヘモグロビンA1c比の時間的変化を意味する。時間的変化は、例えば、1時間、1日、または1ヶ月あたりの、グリコアルブミン/ヘモグロビンA1c比の増減値とすることができる。
アテローム血栓性脳梗塞の発症予測用経時変化カットオフ範囲は、例えば、0.005〜0.03/日、好ましくは0.008〜0.02/日、さらに好ましくは0.01〜0.015/日とすることができる。
ある者に対して同一生体組織(例えば血液試料)の試料を定期的または不定期的に連続して採取し、その試料におけるグリコアルブミン/ヘモグロビンA1c比の経時変化を観察することができ、その変化がアテローム血栓性脳梗塞の発症予測用経時変化カットオフ範囲に含まれる場合には、将来その者がアテローム血栓性脳梗塞に罹患するまたはその可能性が高いと予測することができ、逆に当該カットオフ範囲に含まれない場合に将来その者がアテローム血栓性脳梗塞に罹患しないまたはその可能性が低いと予測することができる。その者から連続して3回以上試料を採取する場合には、理論的には経時変化値が複数認められることになるがその場合にはそのうちの最大値をグリコアルブミン/ヘモグロビンA1c比の経時変化とすることができる。
具体的には、例えば、ある者の血液試料を30日毎に定期的に採取し、血液試料中のグリコアルブミン/ヘモグロビンA1c比が、A、B、C、D、・・・と変化したとすると、(A−B)/30日、(B−C)/30日、(C−D)/30日・・のうち最大となる値(経時変化)とアテローム血栓性脳梗塞の発症予測用経時変化カットオフ範囲を対比させ、当該経時変化が0.005〜0.03/日の場合には、将来その者がアテローム血栓性脳梗塞に罹患するまたはその可能性が高いと予測することができる。
また、ある時点のある者の生体試料におけるグリコアルブミン/ヘモグロビンA1c比とその時点までの比の経時変化をそれぞれアテローム血栓性脳梗塞の発症予測用カットオフ値およびアテローム血栓性脳梗塞の発症予測用経時変化カットオフ範囲と対比させ、1)当該比がアテローム血栓性脳梗塞の発症予測用カットオフ値以上であり、かつ、当該経時変化がアテローム血栓性脳梗塞の発症予測用経時変化カットオフ範囲に含まれる場合には、将来その者がアテローム血栓性脳梗塞に罹患するまたはその可能性が高いと予測でき、2)当該比がアテローム血栓性脳梗塞の発症予測用カットオフ値未満、または、当該経時変化がアテローム血栓性脳梗塞の発症予測用経時変化カットオフ範囲外である場合には、将来その者がアテローム血栓性脳梗塞に罹患しないまたはその可能性が低いと予測することができる。
具体的には、例えば、ある者の血液試料を30日毎に定期的に採取し、血液試料中のグリコアルブミン/ヘモグロビンA1c比が、A、B、C、Dと変化したとすると、(A−B)/30日、(B−C)/30日、(C−D)/30日の最大値を経時変化とすれば、Dがアテローム血栓性梗塞の発症予測用カットオフ値以上であり、かつ、当該経時変化がアテローム血栓性脳梗塞の発症予測用経時変化カットオフ範囲に含まれる場合には、将来その者がアテローム血栓性脳梗塞に罹患するまたはその可能性が高いと予測できる。
(5)本発明の装置
本発明によるアテローム血栓性脳梗塞の病型鑑別のための装置またはアテローム血栓性脳梗塞の発症の予測をするための装置は、グリコアルブミンの測定部、ヘモグロビンA1cの測定部、測定されたグリコアルブミン/ヘモグロビンA1c比(および/またはその比の経時変化)の算出を行う演算部、及びグリコアルブミン/ヘモグロビンA1c比(および/またはその比の経時変化)に基づき鑑別または予測を行うための判定部を備えた装置であれば、任意の装置を用いることができる。
グリコアルブミンの測定部は、装置に導入された生体試料中のグリコアルブミンを測定する部位である。ヘモグロビンA1cの測定部は、装置に導入された生体試料中のヘモグロビンA1cを測定する部位である。これらの部位の大きさや構成等は特に限定されず、これらの測定についても生体試料におけるそれぞれの蛋白質が測定される限りにおいて特に限定されず、例えば、先に述べたグリコアルブミンまたはヘモグロビンA1cの慣用の測定方法でされ得る。
グリコアルブミンの測定方法としては、HPLC法、免疫法、酵素法等に加えて、電気泳動法、電極法等を用いてもよく、それ以外の方法を用いてもよい。例えば、グリコアルブミンの測定は広く普及している、酵素法を用いてもよい。酵素法は、例えば、対象試料のグリコアルブミンをプロテアーゼで分解した後、ケトアミンオキシダーゼを糖化リジンに反応させて生成する過酸化水素を色素で反応させて定量しグリコアルブミン濃度を求め、同じ対象試料のアルブミン濃度を測定し、アルブミン濃度で除することにより、グリコアルブミン(%)を測定する方法であることができる。その他の市販試薬、公知の方法、試薬を用いてもよい。また、ヘモグロビンA1cの測定は広く普及している、HPLC法、免疫法を用いてもよい。HPLC法は、例えば、イオン交換カラムにより、ヘモグロビンA1cを分離・分画し、その濃度(%)を算出することができる。
演算部はグリコアルブミン測定部で測定されて得られたグリコアルブミン値をヘモグロビンA1c測定部で測定されて得られたヘモグロビンA1c値で除算する部位であって、例えば、装置に備えられた中央処理装置(CPU)で行われる。なお、両測定後で演算前に、グリコアルブミン値とヘモグロビンA1c値はメモリやハードディスクなど装置に備えられた記憶装置に記憶されていてもよいし、演算部での除算値がかかる記憶装置に一時的に記憶されてもよい。
判定部は、演算部で得られたグリコアルブミン/ヘモグロビンA1c比(および/またはその比の経時変化)に基づき、急性期脳梗塞患者におけるアテローム血栓性脳梗塞の病型鑑別またはアテローム血栓性脳梗塞の発症予測を行う部位である。
本装置において、アテローム血栓性脳梗塞の病型鑑別は、演算部で得られたグリコアルブミン/ヘモグロビンA1c比とアテローム血栓性脳梗塞の病型鑑別用カットオフ値を比較することにより実施され得る。アテローム血栓性脳梗塞の病型鑑別用カットオフ値は装置に予め記憶されていてもよいし、鑑別の際に、装置の入力部位から入力されてもよい。比較の結果、例えば、演算部で得られたグリコアルブミン/ヘモグロビンA1c比がアテローム血栓性脳梗塞の病型鑑別用カットオフ値以上の場合に、生体試料を提供した者がアテローム血栓性脳梗塞に罹患しているまたはその可能性が高いと鑑別でき、逆にアテローム血栓性脳梗塞の病型鑑別用カットオフ値未満の場合に、生体試料を提供した者がアテローム血栓性脳梗塞に罹患していないまたはその蓋然性が低いと鑑別することができる。アテローム血栓性脳梗塞の病型鑑別用カットオフ値は、単一にまたは複数に装置に設定することができ、複数のカットオフ値を設定した際の鑑別は、先に述べたように多段階に行うようにすることもできる。
本装置において、アテローム血栓性脳梗塞の発症予測は、演算部で得られたグリコアルブミン/ヘモグロビンA1c比とアテローム血栓性脳梗塞の発症予測用カットオフ値を比較することにより実施され得る。アテローム血栓性脳梗塞の発症予測用カットオフ値は装置に予め記憶されていてもよいし、予測の際に、装置の入力部位から入力されてもよい。比較の結果、例えば、演算部で得られたグリコアルブミン/ヘモグロビンA1c比がアテローム血栓性脳梗塞の発症予測用カットオフ値以上の場合に、生体試料を提供した者が将来アテローム血栓性脳梗塞を発症するまたはその可能性が高いと予測でき、逆にアテローム血栓性脳梗塞の発症予測用カットオフ値未満の場合に、生体試料を提供した者が将来アテローム血栓性脳梗塞を発症しないまたは発症可能性が低いと予測することができる。アテローム血栓性脳梗塞の発症予測用カットオフ値は、単一にまたは複数に装置に設定することができ、複数のカットオフ値を設定した際の予測は、先に述べたように多段階に行うようにすることもできる。
あるいは、本装置において、アテローム血栓性脳梗塞の発症予測は、演算部で得られたグリコアルブミン/ヘモグロビンA1c比の経時変化をアテローム血栓性脳梗塞の発症予測用経時変化カットオフ範囲と対比することにより実施され得る。アテローム血栓性脳梗塞の発症予測用経時変化カットオフ範囲は装置に予め記憶されていてもよいし、予測の際に、装置の入力部位から入力されてもよい。比較の結果、例えば、演算部で得られたグリコアルブミン/ヘモグロビンA1c比の経時変化が、アテローム血栓性脳梗塞の発症予測用経時変化カットオフ範囲に含まれる場合には、生体試料を提供した者が将来アテローム血栓性脳梗塞を発症するまたはその可能性が高いと予測でき、逆にアテローム血栓性脳梗塞の発症予測用経時変化カットオフ範囲に含まれない場合には、生体試料を提供した者が将来アテローム血栓性脳梗塞を発症しないまたは発症可能性が低いと予測することができる。
また、本装置において、アテローム血栓性脳梗塞の発症予測は、演算部で得られたグリコアルブミン/ヘモグロビンA1c比およびその比の経時変化をそれぞれアテローム血栓性脳梗塞の発症予測用カットオフ値およびアテローム血栓性脳梗塞の発症予測用経時変化カットオフ範囲と対比することにより実施され得る。アテローム血栓性脳梗塞の発症予測用カットオフ値およびアテローム血栓性脳梗塞の発症予測用経時変化カットオフ範囲は装置に予め記憶されていてもよいし、予測の際に、装置の入力部位から入力されてもよい。比較の結果、例えば、演算部で得られたグリコアルブミン/ヘモグロビンA1c比およびその比の経時変化が、それぞれアテローム血栓性脳梗塞の発症予測用カットオフ値以上でありかつアテローム血栓性脳梗塞の発症予測用経時変化カットオフ範囲に含まれる場合には、生体試料を提供した者が将来アテローム血栓性脳梗塞を発症するまたはその可能性が高いと予測でき、逆に当該比がアテローム血栓性脳梗塞の発症予測用カットオフ値未満であるか、または、当該比の経時変化がアテローム血栓性脳梗塞の発症予測用経時変化カットオフ範囲に含まれない場合には、生体試料を提供した者が将来アテローム血栓性脳梗塞を発症しないまたは発症可能性が低いと予測することができる。
本装置は、出力部を備えていてもよい。出力部では、病型鑑別または発症予測結果をディスプレイなどの表示装置やプリンターなどの印刷装置に表示または出力させるなどの処理が行われる。
本装置は、POC検査装置(一般的には、臨床の現場において患者のすぐそば(例えばベッドサイド)で検査するための装置)であることが、利便性等の観点から好ましい。
(6)本発明のアテローム血栓性脳梗塞診断用キット
本発明のアテローム血栓性脳梗塞診断用キットに含まれるグリコアルブミン測定試薬は、生体試料中のグリコアルブミンを測定可能な試薬である限り、測定方法(HPLC法、免疫法、酵素法など)や試薬の構成等は特に限定されるものでない。測定方法としては酵素法を好ましく例示できる。例えば、酵素法を採用したルシカGAまたはルシカGA−L(いずれも旭化成社製)をグリコアルブミン測定試薬として好ましく例示できる。
本発明のアテローム血栓性脳梗塞診断用キットに含まれるヘモグロビンA1c測定試薬は、生体試料中のヘモグロビンA1cを測定可能な試薬である限り、測定方法(HPLC法、免疫法、酵素法など)や試薬の構成等は特に限定されるものでない。ヘモグロビンA1cの測定は、日本糖尿病学会または関連学会により標準化されており、この標準化に適合した測定であることが好ましい。例えば、酵素法を採用したサンクHbA1c(アークレイ社製)を挙げることができる。
本発明のアテローム血栓性脳梗塞診断用キットは、本キットに含まれるグリコアルブミン測定試薬を用いて測定された生体試料中のグリコアルブミンと、本キットに含まれるヘモグロビンA1c測定試薬を用いて測定された生体試料中のヘモグロビンA1cの比(グリコアルブミン/ヘモグロビンA1c比)(および/またはその比の経時変化)を指標として、アテローム血栓性脳梗塞の病型鑑別またはその発症の予測の用途として使用される。病型鑑別またはその発症の予測は、上述の通り、アテローム血栓性脳梗塞の病型鑑別用カットオフ値またはアテローム血栓性脳梗塞の発症予測用カットオフ値との比較あるいはアテローム血栓性脳梗塞の発症予測用経時変化カットオフ範囲との比較により実施され得る。
本発明の測定対象となる生体試料は少なくともヘモグロビン、糖化タンパク質を含有する被検液であればいかなるものを用いてもよい。好ましい被検液の種類としては血液成分、例えば血清、血漿、血球、全血、もしくは分離された赤血球等が挙げられる。また、血清、血漿は通常の方法で分離されたものを用いてよい。生体試料は、自体公知の方法等により容易に入手可能であり、生体試料は慣用の方法により前処理されたものであってもよい。
本発明を以下の実施例により更に具体的に説明するが、本発明は実施例によって限定されるものではない。
[実施例1]
99名の急性期脳梗塞の患者に関して神経内科医、救急医、放射線医、糖尿病医により、病歴、身体所見、CT、MRI画像等により総合的に判定を行った。99例を鑑別した結果、アテローム血栓性脳梗塞患者は38例、心原性脳梗塞は37例、ラクナ梗塞は24例であった。図1にそれらの年齢、性別、BMI、喫煙の有無、その他のデータを示す。アテローム血栓性脳梗塞患者のグリコアルブミン/ヘモグロビンA1c比は3.2と心原性脳梗塞患者、ラクナ梗塞患者と比較して有意に高かった(P<0.001)。
図2に示す各種測定結果からアテローム血栓性脳梗塞を推定する因子を単回帰分析により求めたところ、グリコアルブミン/ヘモグロビンA1c比がP<0.001を示し、アテローム血栓性脳梗塞の説明変数であることが判明した。さらに、P値<0.2を示した説明変数につき、二項ロジスティック解析を行った結果、グリコアルブミン/ヘモグロビンA1c比が独立の説明変数であることが判明した(図3)。以上の結果より、グリコアルブミン/ヘモグロビンA1c比により、アテローム血栓性脳梗塞を鑑別できることを見出した。
99名の急性期脳梗塞患者のグリコアルブミン/ヘモグロビンA1c比のデータを用いて、アテローム血栓性脳梗塞を鑑別するためのグリコアルブミン/ヘモグロビンA1c比をROC曲線より求めた。ROC曲線の結果を図4に示す。図4より、アテローム血栓性脳梗塞を鑑別するための判定値(アテローム血栓性脳梗塞の病型鑑別用カットオフ値)として3.22が得られた。グリコアルブミン/ヘモグロビンA1c比3.22を判別値として急性期脳梗塞患者の病型判別をした場合、感度91.7%と高感度であり、また特異度95.0%と擬陽性の少ない効率の良い判定が可能であった。
以上のことから、急性期脳梗塞患者においてグリコアルブミン及びヘモグロビンA1cを測定し、グリコアルブミン/ヘモグロビンA1c比を求めることにより、アテローム血栓性脳梗塞の鑑別が感度、特異度、ともに良好に行うことが可能で、従来、高度に専門的、複雑かつ高価な装置を必要とした急性期脳梗塞の病型鑑別が簡便、迅速かつ安価に行うことができた。
ヘモグロビンの寿命およびアルブミンの半減期に関わる疾患を有しない糖尿病患者105名の血液を通常の採血管で採血し、グリコアルブミン及びヘモグロビンA1cを測定した。グリコアルブミンの測定は酵素法、ヘモグロビンA1cの測定はHPLC法を用いた。 図5に、ヘモグロビンの寿命およびアルブミンの半減期に関わる疾患及び脳梗塞を有しない糖尿病患者105名におけるグリコアルブミンとヘモグロビンA1cの関係を示す。これらの患者のグリコアルブミン/ヘモグロビンA1c比は2.90であった。
血糖状態が安定している状態ではグリコアルブミン/ヘモグロビンA1c比は2.90であり、アテローム血栓性脳梗塞の完成過程においては2.90より高値になることが考えられる。対象患者において、グリコアルブミン/ヘモグロビンA1c比によりアテローム血栓性脳梗塞発症の予測を行なうことが可能である。
例えば、あるアテローム血栓性脳梗塞発症患者の発症時点のグリコアルブミン/ヘモグロビンA1c比は4.30と約3程度の特徴的な値と比較して著しく高値であり、発症1ヶ月前のグリコアルブミン/ヘモグロビンA1c比は4.15、発症3ヶ月前のグリコアルブミン/ヘモグロビンA1c比は3.39であり、アテローム血栓性脳梗塞発症時に近づくにつれ上昇していた。
グリコアルブミン/ヘモグロビンA1c比を定期的にモニターすることにより、アテローム血栓性脳梗塞の発症の予測が可能である。
例えば、グリコアルブミン/ヘモグロビンA1c比を指標として発症予測することができる。具体的には、グリコアルブミン/ヘモグロビンA1c比3.22以上は発症の可能性が高い、3.00〜3.22は発症の可能性がある、3.00以下は発症の可能性が低い等、評価判定すればよい。
あるいは、グリコアルブミン/ヘモグロビンA1c比の経時変化自体を指標として発症を予測することもできる。すなわち、経時変化がアテローム血栓性脳梗塞の発症予測用経時変化カットオフ範囲に存在する場合には発症の可能性が高いと判定することができる。例えば、比の時間変化が、0.005〜0.03/日、好ましくは0.008〜0.02/日、さらに好ましくは0.01〜0.015/日に含まれる場合には発症の可能性が高いと判定できる。上記の例で説明すれば、発症3ヶ月前〜発症1ヶ月前において、(4.15−3.39)/約60日=約0.013/日のペースで比の増大がみられることから、発症3ヶ月前から発症1ヶ月前まで間で比をモニターすることで発症可能性が高いと判定することができる。
また、グリコアルブミン/ヘモグロビンA1c比とその経時変化の組合せを指標として発症を予測することもできる。例えば、比3.22以上であって、かつ、その時間変化が0.1〜0.15/日に含まれる場合には、発症の可能性が高いと判定できる。上記の例で説明すれば、発症3ヶ月前のグリコアルブミン/ヘモグロビンA1c比は3.39であり高値であることから、医師等はこの時点あるいはそれ以前からこの患者への定期的なモニタリングを開始することが好ましく、その後、1日あたりの比の増加が0.1〜0.15/日に達するとそこでこの患者はアテローム血栓性脳梗塞発症の可能性が高いと判定することができる。
あるいは、その他の評価判定方法を用いてもよい。
本発明においては、グリコアルブミン及びヘモグロビンA1cを測定し、そのグリコアルブミン/ヘモグロビンA1c比を求めることにより、急性期脳梗塞の病型鑑別を良好な感度及び特異度で、かつ簡便、迅速、安価に行うことができる。また、本発明においては、アテローム血栓性梗塞の発症予測を、良好な感度及び特異度で、かつ簡便、迅速、安価に行うことができる。本発明の方法、装置及び試薬は、臨床検査において有用である。

Claims (13)

  1. 急性期脳梗塞患者の生体試料におけるグリコアルブミン/ヘモグロビンA1c比を指標として、該グリコアルブミン/ヘモグロビンA1c比が、アテローム血栓性脳梗塞の病型鑑別用カットオフ値以上の場合にアテローム血栓性脳梗塞であると判定することを特徴とする、急性期脳梗塞患者におけるアテローム血栓性脳梗塞の病型の鑑別を補助する方法。
  2. 下記の(1)〜(3)の工程を含む、急性期脳梗塞患者におけるアテローム血栓性脳梗塞の病型の鑑別を補助する方法;
    (1)急性期脳梗塞患者の生体試料におけるグリコアルブミンとヘモグロビンA1cを測定する工程;
    (2)工程(1)で得た測定値よりグリコアルブミン/ヘモグロビンA1c比を算出する工程;及び
    (3)工程(2)で算出されたグリコアルブミン/ヘモグロビンA1c比と、アテローム血栓性脳梗塞の病型鑑別用カットオフ値とを比較する工程。
  3. 病型鑑別用カットオフ値が3から6の間で任意に設定された数値であり、生体試料が血液試料である、請求項1又は2に記載の鑑別補助方法。
  4. 病型鑑別用カットオフ値が3.2から6の間で任意に設定された数値であり、生体試料が血液試料である、請求項1又は2に記載の鑑別補助方法。
  5. 被験者の生体試料におけるグリコアルブミン/ヘモグロビンA1c比を指標として、該グリコアルブミン/ヘモグロビンA1c比が、アテローム血栓性脳梗塞の発症予測用カットオフ値以上の場合にアテローム血栓性脳梗塞を発症する可能性が高いと判定することを特徴とする、アテローム血栓性脳梗塞の発症を予測する方法。
  6. 下記の(1)〜(3)の工程を含む、アテローム血栓性脳梗塞の発症を予測する方法;
    (1)被験者の生体試料の生体試料におけるグリコアルブミンとヘモグロビンA1cを測定する工程;
    (2)工程(1)で得た測定値よりグリコアルブミン/ヘモグロビンA1c比を算出する工程;及び
    (3)工程(2)で算出されたグリコアルブミン/ヘモグロビンA1c比とアテローム血栓性脳梗塞の発症予測用カットオフ値とを比較する工程。
  7. 発症予測用カットオフ値が3から6の間で任意に設定された数値であり、生体試料が血液試料である、請求項5又は6に記載の予測方法。
  8. 発症予測用カットオフ値が3.2から6の間で任意に設定された数値であり、生体試料が血液試料である、請求項5又は6に記載の予測方法。
  9. (a)グリコアルブミンの測定部、(b)ヘモグロビンA1cの測定部、(c)測定されたグリコアルブミン値及びヘモグロビンA1c値に基づいて、グリコアルブミン/ヘモグロビンA1cの比の算出を行う演算部、及び(d)算出されたグリコアルブミン/ヘモグロビンA1c比に基づいて、急性期脳梗塞患者におけるアテローム血栓性脳梗塞の病型鑑別、又は被験者においてアテローム血栓性脳梗塞の発症予測を行う判定部を有する、急性期脳梗塞患者におけるアテローム血栓性脳梗塞の病型鑑別、又は被験者においてアテローム血栓性脳梗塞の発症予測を行うための装置。
  10. グリコアルブミン測定試薬及びヘモグロビンA1c測定試薬を含むアテローム血栓性脳梗塞診断用キットであって、グリコアルブミン測定用試薬による測定で得られたグリコアルブミン値とヘモグロビンA1c測定試薬による測定で得られたヘモグロビンA1c値により算出されたグリコアルブミン/ヘモグロビンA1c比を指標とし、急性期脳梗塞患者におけるアテローム血栓性脳梗塞の病型鑑別、又は被験者においてアテローム血栓性脳梗塞の発症予測を行うためのアテローム血栓性脳梗塞診断用キット。
  11. 被験者の生体試料におけるグリコアルブミン/ヘモグロビンA1c比及びその経時変化を指標とするアテローム血栓性脳梗塞の発症を予測する方法であって、下記の判定基準を満たす場合にアテローム血栓性脳梗塞を発症する可能性が高いと判定することを特徴とする予測方法;
    1)グリコアルブミン/ヘモグロビンA1c比がアテローム血栓性脳梗塞の発症予測用カットオフ値以上の場合であること、かつ、
    2)1)の比の一日あたりの増加量がアテローム血栓性脳梗塞の発症予測用経時変化カットオフ範囲であること。
  12. (a)グリコアルブミンの測定部、(b)ヘモグロビンA1cの測定部、(c)測定されたグリコアルブミン値及びヘモグロビンA1c値に基づいて、グリコアルブミン/ヘモグロビンA1cの比とその経時変化の算出を行う演算部、及び(d)算出されたグリコアルブミン/ヘモグロビンA1c比とその経時変化に基づいて、被験者においてアテローム血栓性脳梗塞の発症予測を行う判定部を有する、被験者においてアテローム血栓性脳梗塞の発症予測を行うための装置。
  13. グリコアルブミン測定試薬及びヘモグロビンA1c測定試薬を含むアテローム血栓性脳梗塞診断用キットであって、グリコアルブミン測定用試薬による測定で得られたグリコアルブミン値とヘモグロビンA1c測定試薬による測定で得られたヘモグロビンA1c値により算出されたグリコアルブミン/ヘモグロビンA1c比およびその経時変化を指標とし、被験者においてアテローム血栓性脳梗塞の発症予測を行うためのアテローム血栓性脳梗塞診断用キット。
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