JP2008232775A - 肝疾患における正確な血糖コントロール状態および肝機能を算出する方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】あらかじめ肝疾患のない群でグリコアルブミンとヘモグロビンA1cの換算式を求め、肝疾患群の測定値をグリコアルブミンもしくはヘモグロビンA1cの値に換算し、その平均を取ることにより肝予備能の影響を受けずに正確に血糖コントロール状態を把握でき、またその比をとることにより血糖コントロール状態の影響を受けずに肝予備能を簡便に推定できる。
【選択図】なし
Description
島等(Shima et. al.)「ハイパフォーマンス リキッド クロマトグラフィック アッセイ オブ セイラム グリケイティッド アルブミン(High-performance affinity chromatographic assay of serum glycated albumin)」、ダイアベートロジア(Diabetologia)1988年。第31巻、p.627−631 高妻等(Kouzuma et.al.)、「アン エンザイマティック メソッド フォー ザメジャーメント オブ グリケイティッド アルブミン イン バイオロジカル サンプル(An enzymatic method for the measurement of glycated albumin in biological sample.)」、クリニカ キミカ アクタ(Clinica Chimica Acta)、2002年、324、p.61−71 櫻林 郁之介等(Ikunosuke Sakurabayashiet.al.)、「ニュー エンザイマティック アッセイ フォー グリケイティッドヘモグロビン(New enzymatic assay for glycatedhemoglobin)、クリニカル ケミストリー(Clinical Chemistry)、2003年、第49巻、第2号、p.269−274 糖尿病治療ガイド 1糖尿病 日本糖尿病学会編 2006−2007 文光堂 2006年2/14 出版 p9 慢性肝炎の治療ガイド 第4章 非代償性肝硬変の管理 日本肝臓学会編 文光堂 2004年6/1 出版 p48−61
すなわち本発明は、以下の構成を有する。
(1)下記の1)〜3)の工程よりなる正確な血糖コントロール状態の測定方法。
1)測定対象試料中のグリコアルブミン及びヘモグロビンA1cを測定してグリコアルブミン値(実測値)及びヘモグロビンA1c値(実測値)を求める工程、
2)1)で求めたグリコアルブミン値(実測値)を肝疾患のない場合のグリコアルブミン値とヘモグロビンA1c値の関係に基づいてヘモグロビンA1c値(計算値)に換算する工程、
3)ヘモグロビンA1c値(計算値)とヘモグロビンA1c値(実測値)の平均値を算出することによりヘモグロビンA1c値(補正値)を算出する工程。
(2)工程2)の換算が、肝疾患のない群における試料中のグリコアルブミンとヘモグロビンA1cの測定値より求めたグリコアルブミン値をヘモグロビンA1c値(計算値)に換算するための計算式若しくは換算表を用いることにより行われる前記(1)に記載の血糖コントロール状態の測定方法。
(3)工程2)の換算が、以下のいずれかの計算式に基づく換算である、前記(1)に記載の血糖コントロール状態の測定方法。
ヘモグロビンA1c値(計算値)=グリコアルブミン値(実測値)/3 計算式1
ヘモグロビンA1c値(計算値)=(グリコアルブミン値(実測値)+1)/3 計算式2
(4)下記の1)〜3)の工程よりなる正確な血糖コントロール状態を反映するための血糖コントロール状態の測定方法。
1)測定対象試料中のグリコアルブミン及びヘモグロビンA1cを測定してグリコアルブミン値(実測値)及びヘモグロビンA1c値(実測値)を求める工程、
2)1)で求めたヘモグロビンA1c値(実測値)を肝疾患のない場合のグリコアルブミン値とヘモグロビンA1c値の関係に基づいてグリコアルブミン値(計算値)に換算する工程、
3)グリコアルブミン値(計算値)とグリコアルブミン値(実測値)の平均値を算出することによりグリコアルブミン値(補正値)を算出する工程。
(5)工程2)の換算が、肝疾患のない群における試料中のグリコアルブミンとヘモグロビンA1cの測定値より求めたヘモグロビンA1c値をグリコアルブミン値(計算値)に換算するための計算式若しくは換算表を用いることにより行われる前記(4)に記載の血糖コントロール状態の測定方法。
(6)工程2)の換算が、以下のいずれかの式に基づく換算である、前記(4)に記載の血糖コントロール状態の測定方法。
グリコアルブミン値(計算値)=ヘモグロビンA1c値(実測値)×3 計算式3
グリコアルブミン値(計算値)=ヘモグロビンA1c値(実測値)×3−1 計算式4
(7)測定対象試料が、肝疾患患者から採取した試料である前記(1)〜(6)のいずれかに記載の血糖コントロール状態の測定方法。
(8)下記の1)〜2)の工程よりなる肝予備能の測定方法。
1)測定対象試料中のグリコアルブミン値(実測値)及びヘモグロビンA1c値(実測値)を測定する工程、
2)グリコアルブミン値(実測値)をへモグロビンA1c値(実測値)で除し、肝予備能を反映する指標を算出する工程。
(9)下記の1)〜3)の工程よりなる肝予備能の測定方法。
1)測定対象試料中のグリコアルブミン及びヘモグロビンA1cを測定してグリコアルブミン値(実測値)及びヘモグロビンA1c値(実測値)を求める工程、
2)1)で求めたグリコアルブミン値(実測値)を肝疾患のない場合のグリコアルブミン値とヘモグロビンA1c値の関係に基づいてヘモグロビンA1c値(計算値)に換算する工程、
3)ヘモグロビンA1c値(計算値)をヘモグロビンA1c値(実測値)で除して肝予備能を反映する指標を算出する工程。
(10)工程2)の換算が、肝疾患のない群における試料中のグリコアルブミンとヘモグロビンA1cの測定値より求めたグリコアルブミン値をヘモグロビンA1c値(計算値)に換算するための計算式若しくは換算表を用いることにより行われる前記(9)に記載の肝予備能の測定方法。
(11)工程2)の換算が、以下のいずれかの式に基づく換算である、前記(9)に記載の肝予備能の測定方法。
ヘモグロビンA1c値(計算値)=グリコアルブミン値(実測値)/3 計算式1
ヘモグロビンA1c値(計算値)=(グリコアルブミン値(実測値)+1)/3 計算式2
(12)下記の1)〜3)の工程よりなる肝予備能の測定方法。
1)測定対象試料中のグリコアルブミン及びヘモグロビンA1cを測定してグリコアルブミン値(実測値)及びヘモグロビンA1c値(実測値)を求める工程、
2)1)で求めたヘモグロビンA1c値(実測値)を肝疾患のない場合のグリコアルブミン値とヘモグロビンA1c値の関係に基づいてグリコアルブミン値(計算値)に換算する工程、
3)グリコアルブミン値(計算値)をグリコアルブミン値(実測値)で除して肝予備能を反映する指標を算出する工程。
(13)工程2)の換算が、肝疾患のない群における試料中のグリコアルブミンとヘモグロビンA1cの測定値より求めたヘモグロビンA1値をグリコアルブミン値(計算値)に換算するための計算式若しくは換算表を用いることにより行われる前記(12)に記載の肝予備能の測定方法。
(14)工程2)の換算が、以下のいずれかの式に基づく換算である、前記(12)に記載の肝予備能の測定方法。
グリコアルブミン値(計算値)=ヘモグロビンA1c値(実測値)×3 計算式3
グリコアルブミン値(計算値)=ヘモグロビンA1c値(実測値)×3−1 計算式4
(15)測定対象試料が、肝疾患患者から採取した試料である前記(8)〜(14)のいずれかに記載の肝予備能の測定方法。
(16)グリコアルブミン測定部、ヘモグロビンA1c測定部及び演算部を備えた血糖コントロール状態の測定装置であって、
演算部が、前記(1)〜(7)のいずれかに示される換算及び算出を行うことを特徴とする血糖コントロール状態の測定装置。
(17)グリコアルブミン測定部、ヘモグロビンA1c測定部及び演算部を備えた血糖コントロール状態の測定装置であって、
演算部が、前記(8)〜(15)のいずれかに示される換算及び算出を行うことを特徴とする肝予備能の測定装置。
本発明は、血中のグリコアルブミンおよびヘモグロビンA1cを、採取された患者血液の正確な血糖コントロール状態の測定もしくは肝予備能の測定に利用する。
グリコアルブミンとは、アルブミンと糖が非酵素的に結合した糖化アルブミンのことであり、HPLC法、免疫法、酵素法等で測定することができる。グリコアルブミンの測定値は測定方法によって統一されていないことから、HPLC法もしくは酵素法で測定することが好ましく、大量検体を迅速に正確に測定できる酵素法がもっとも好ましい。なお、日本において酵素法の測定値はHPLC法に一致させる計算式を導入しており測定値は一致している。HPLC法では、グルコースが結合したアルブミンをグリコアルブミンと定義し、全アルブミンに占めるグリコアルブミンの割合で示される。HPLC法においてグリコアルブミンはホウ酸カラムにより吸着分画(グリコアルブミン)として分離され、全アルブミン吸着分画の面積と非吸着分画(ノングリコアルブミン)の面積の和に占めるグリコアルブミンの面積の割合として計算される(非特許文献1)。なお、HPLCが簡便に実施できない場合は専用のキャリブレーターを用いて酵素法(非特許文献2)で測定するか、その他の方法を用いる場合には方法間の相関式より酵素法もしくはHPLC法に値を換算するとよい。
まず、1)測定対象試料中のグリコアルブミン及びヘモグロビンA1cを測定してグリコアルブミン値(実測値)及びヘモグロビンA1c値(実測値)を求め、
2)1)で求めたグリコアルブミン値(実測値)を肝疾患のない場合のグリコアルブミン値とヘモグロビンA1c値の関係に基づいてヘモグロビンA1c値(計算値)に換算し、
3)ヘモグロビンA1c値(計算値)とヘモグロビンA1c値(実測値)の平均値を算出することによりヘモグロビンA1c値(補正値)を算出することによって行われる。
なお、ヘモグロビンA1c値(補正値)は、適当な名称、例えばLC(liver cirrhosis)−HbA1cなどの名称で呼ぶことが出来る。
また、前記計算式の代わりにグリコアルブミン値(実測値)を肝疾患のない場合のグリコアルブミン値とヘモグロビンA1c値の関係に基づいてヘモグロビンA1c値(計算値)に換算するための換算表、又は、ヘモグロビンA1c値(実測値)をグリコアルブミン値(計算値)に換算するための換算表をあらかじめ作成しておき用いることもできる。
[数1]
ヘモグロビンA1c=グリコアルブミン/3 ・・相関式1
(文献1 血糖値をみる・考える 島健二編集 Bグリコアルブミン(GA) 南江堂 2000年1/20 発行 P62-69)
もしくは、
ヘモグロビンA1c=(グリコアルブミン+1)/3・・相関式2
(文献2 佐藤他 JCCLA 32(1): p74-77 2007)を用いてもよい。
たとえば相関式1を用いた場合の計算式は
ヘモグロビンA1c値(計算値)=グリコアルブミン値(実測値)/3・・計算式1
であり、
たとえば相関式2を用いた場合の計算式は
ヘモグロビンA1c値(計算値)=(グリコアルブミン値(実測値)+1)/3・・計算式2
である。
2)1)で求めたヘモグロビンA1c値(実測値)を肝疾患のない場合のグリコアルブミン値とヘモグロビンA1c値の関係に基づいてグリコアルブミン値(計算値)に換算し、
3)グリコアルブミン値(計算値)とグリコアルブミン値(実測値)の平均値を算出することによりグリコアルブミン値(補正値)を算出することによって行われる。
なお、グリコアルブミン値(補正値)は、適当な名称、例えばLC(liver cirrhosis)−GAなどの名称で呼ぶことが出来る。
ヘモグロビンA1c値をグリコアルブミン値に換算する計算式を求める方法としては前記計算式1を求める方法と同様な方法で求めることができ、たとえば相関式1を用いた場合の計算式は
グリコアルブミン値(計算値)=ヘモグロビンA1c値(実測値)×3・・計算式3
であり、
たとえば相関式2を用いた場合の計算式は
グリコアルブミン値(計算値)=ヘモグロビンA1c値(実測値)×3−1・・計算式4
である。
A.グリコアルブミン値(実測値)及びヘモグロビンA1c値(実測値)を測定し、グリコアルブミン値(実測値)をへモグロビンA1c値(実測値)で除した値(以下、グリコアルブミン値(実測値)/ヘモグロビンA1c値(実測値)と略する場合がある)を計算し、肝予備能を反映する指標を算出することにより肝予備能を測定する方法。
B.前記正確な血糖コントロール状態を反映するヘモグロビンA1c補正値の算出法と同様に、
1)測定対象試料中のグリコアルブミン及びヘモグロビンA1cを測定してグリコアルブミン値(実測値)及びヘモグロビンA1c値(実測値)を求め、
2)1)で求めたグリコアルブミン値(実測値)を肝疾患のない場合のグリコアルブミン値とヘモグロビンA1c値の関係に基づいてヘモグロビンA1c値(計算値)に換算し、
3)ヘモグロビンA1c値(計算値)をヘモグロビンA1c値(実測値)で除した値(以下ヘモグロビンA1c値(計算値)/ヘモグロビンA1c値(実測値)と略する場合がある)を計算し、肝予備能を反映する指標を算出することにより肝予備能を測定する方法。
C.1)測定対象試料中のグリコアルブミン及びヘモグロビンA1cを測定してグリコアルブミン値(実測値)及びヘモグロビンA1c値(実測値)を求め、
2)1)で求めたヘモグロビンA1c値(実測値)を肝疾患のない場合のグリコアルブミン値とヘモグロビンA1c値の関係に基づいてグリコアルブミン値(計算値)に換算し、
3)グリコアルブミン値(計算値)をグリコアルブミン値(実測値)で除した値(以下グリコアルブミン値(計算値)/グリコアルブミン値(実測値)と略する場合がある)を計算し、肝予備能を反映する指標を算出することにより肝予備能を測定する方法。
グリコアルブミン測定部及びヘモグロビンA1c測定部を備えた装置とは、グリコアルブミンとヘモグロビンA1cを同時に測定し、かつ前記演算計算できる装置であればいかなる装置を用いても良いが、ポイントオブケアのように診療の現場で簡便に測定できる装置であるとより好ましい。測定方法としては、前記HPLC法、免疫法、酵素法に加えて電極法等を用いても良く、それ以外の方法を用いてもよい。
前記演算部では、あらかじめ肝疾患のない場合のグリコアルブミン値とヘモグロビンA1c値の関係を計算式や換算表として求めて設定しておき、対象試料のグリコアルブミンとヘモグロビンA1c測定した後、呼び出し、自動計算させるなどの処理が行われる。
例えば、前記〔非特許文献4〕(糖尿病治療ガイド 日本糖尿病学会編 2006−2007 文光堂)によれば、HbA1c5.8%未満:優、5.8%以上6.5%未満:良、6.5%以上7.0%未満:不十分、7.0%以上8.0%未満:不良、8.0%以上不可と評価判定すれば良い。
また、グリコアルブミン補正値の使用方法としては、ヘモグロビンA1c補正値を参考にその約3倍の値を考えれば良く、GA17%未満:優、17%以上20%未満:良、20%以上21%未満:不十分、21%以上24%未満:不良、24%以上不可と評価判定すれば良い。
また、この他の判定方法を用いても良い。
[実施例1]
肝疾患を有する被験者82名(うち24名は糖尿病合併)の血液を通常の採血管で採取し、血糖(1日7回測定;朝食、昼食、夕食の前後及び就寝前)、グリコアルブミン(以下GAと略する場合がある)、ヘモグロビンA1c(以下HbA1cと略する場合がある)、ヘパプラスチンテスト(%)、コリンエステラーゼ(U/L)を測定した。グリコアルブミン、ヘモグロビンA1cの測定はHPLC法を用いた。
正確な血糖コントロール状態を示すヘモグロビンA1c値(推定値)は、1日の平均血糖値から以下に示すDCCTの換算式(Goldstein,1994)(相関式3及び4)により算出した。ここでいう、推定値は血糖から推定した理論上正確な値であり、本発明により求める補正値が推定値と同等の値を示すかどうか調べた。
ヘモグロビンA1c値(推定値)=1日の平均血糖値(mg/dl)/30+1.7
・・・相関式3
また、ヘモグロビンA1c値(推定値)は、以下に示す2002年にDiabetes Care 25: 275-278 に掲載されたRohlfingの式(相関式4)を用いて算出するとより好ましい。本発明の実施例では以下相関式4を用いた。
ヘモグロビンA1c値(推定値)=1日の平均血糖値(mg/dl)/35.6+1.87・・・相関式4
ヘモグロビンA1c値(計算値)=グリコアルブミン値(実測値)/3・・計算式1
ヘモグロビンA1c値(計算値)は、前述の計算式1を用いてグリコアルブミン値(実測値)から求めた。また、ヘモグロビンA1c値(補正値)はヘモグロビンA1c値(計算値)とヘモグロビンA1c値(実測値)の平均値である。
図1に平均血糖値に対するヘモグロビンA1c値(推定値)、ヘモグロビンA1c値(実測値)、及びヘモグロビンA1c値(計算値)の関係を、図2に平均血糖値に対するヘモグロビンA1c値(推定値)、ヘモグロビンA1c値(補正値)の関係を示す。
図1より、ヘモグロビンA1c値(実測値)は、正確な血糖コントロール状態を示すと考えられるヘモグロビンA1c値(推定値)に比べて明らかに低値であり、ヘモグロビンA1c値(計算値)は明らかに高値を示した。
これは肝疾患において肝予備能低下に伴い脾機能が亢進し赤血球寿命が短くなることからヘモグロビンA1c値(実測値)は低値になると考えられ、一方肝臓で合成、分解されるアルブミンは肝予備能が低下することによりアルブミンの血中半減期が長くなりグリコアルブミン値およびそれから計算したヘモグロビンA1c値(計算値)は高値を示すと考えられた。よってヘモグロビンA1c値(実測値)もグリコアルブミン値(実測値)も正確に血糖コントロール状態を反映していない。
これに対して、図2に示すようにヘモグロビンA1c値(補正値)はヘモグロビンA1c値(推定値)と良く一致していることが明らかであり、正確な血糖コントロール状態を示すと考えられた。
これはグリコアルブミン値(実測値)の値の上昇とヘモグロビンA1c値(実測値)の低下の割合が意外にも一致していることを示しており、本試験により得られた新しい知見である。
図3から分かるように、ヘモグロビンA1c値(推定値)に対してヘモグロビンA1c値(実測値)は明らかに低値であり、また、ヘモグロビンA1c値(計算値)は明らかに高値であるが、一方で、ヘモグロビンA1c値(補正値)はヘモグロビンA1c値(推定値)に良く一致していた。これらのことから、肝疾患においてヘモグロビンA1c値(実測値)及びヘモグロビンA1c値(計算値)は正確な血糖コントロール状態は示さないが、ヘモグロビンA1c値(補正値)は正確な血糖コントロール状態を示すことが明白であった。
図4から分かるように、肝予備能を示すヘパプラスチンテストに対してヘモグロビンA1c値(実測値)は正の相関(y=0.0319x+2.89,r=0.30,P<0.05)、ヘモグロビンA1c値(計算値)は負の相関(y=−0,021x+8.58, r=0.17,P<0.05)を示し、両者共に肝予備能の影響を受けることが明白である。一方、ヘモグロビンA1c値(補正値)はヘパプラスチンテストと相関性を示さない(y=0.006x+5.74,r=0.05,P>0.05)ことから、肝予備能とは関係のない血糖指標であると言える。
加えて、ヘモグロビンA1c値(実測値)、ヘモグロビンA1c値(計算値)、ヘモグロビンA1c値(補正値)は血糖指標であることから、それぞれのヘモグロビンA1c値をヘモグロビンA1c値(推定値)で除して、血糖の影響を排除し、ヘパプラスチンテスト及びコリンエステラーゼと相関性を確認した。結果は、図4及び図5と同様の結果が得られ、ヘモグロビンA1c値(補正値)は肝予備能とは関係のない血糖指標であることが確認された。
以上のことから、肝疾患においてヘモグロビンA1c値(実測値)及びヘモグロビンA1c値(計算値)は正確なコントロール状態を示さないが、ヘモグロビンA1c値(補正値)は肝予備能に関係なく正確な血糖コントロール状態を示すことが明確であった。
このように本発明によれば、ヘモグロビンA1c値(補正値)を用いて、肝疾患における正確な血糖コントロール状態の測定方法を提供できることが明らかとなった。
実施例1と同じ患者群に対して同じ測定を行った。正確な血糖コントロール状態を示すグリコアルブミン値(推定値)は、1日の平均血糖値から以下に示すDCCTの換算式(相関式4)を用いてヘモグロビンA1c値(推定値)算出し、次いでこのヘモグロビンA1c値(推定値)を3倍して算出した。
グリコアルブミン(推定値)=ヘモグロビンA1c値(推定値)×3=(1日の平均血糖値(mg/dl)/35.6+1.87)×3・・・相関式5
グリコアルブミン値(計算値)=ヘモグロビンA1c値(実測値)×3・・計算式3
グリコアルブミン値(計算値)は、前述の計算式3を用いてヘモグロビンA1c値(実測値)より算出した。また、グリコアルブミン値(補正値)は、グリコアルブミン値(計算値)とグリコアルブミン値(実測値)の平均値である。
図8から分かるようにグリコアルブミン値(推定値)に対してグリコアルブミン値(実測値)は明らかに高値であり、一方グリコアルブミン値(計算値)は明らかに低値であるが、一方で、グリコアルブミン値(補正値)はグリコアルブミン値(推定値)に良く一致していた。これらのことから、肝疾患においてグリコアルブミン値(補正値)は正確な血糖コントロール状態を示すことが明白であった。
図9から分かるように、肝予備能を示すヘパプラスチンテストに対してグリコアルブミン値(実測値)は負の相関(y=−0.063x+25.7,r=0.17,P<0.05)、グリコアルブミン値(計算値)は正の相関(y=0.0958x+8.68,r=0.30,P<0.05)を示し、両者共に肝予備能の影響を受けることが明白である。一方、グリコアルブミン値(補正値)はヘパプラスチンテストと相関性を示さない(y=0.0164x+17.2,r=0.05,P>0.05)ことから、肝予備能とは関係のない血糖指標であると言える。
加えて、グリコアルブミン値(実測値)、グリコアルブミン値(計算値)、グリコアルブミン値(補正値)は血糖指標であることから、それぞれのグリコアルブミン値をグリコアルブミン値(推定値)で除して、血糖の影響を排除し、ヘパプラスチンテスト及びコリンエステラーゼと相関性を確認した。結果は、図9及び図10と同様の結果が得られ、グリコアルブミン値(補正値)は肝予備能とは関係のない血糖指標であることが確認された。 以上のことから、グリコアルブミン値(補正値)は肝予備能に関係なく、血糖コントロール状態を示す有用な指標であることが明確であった。
実施例1と同じ患者群に対して同じ測定を行い、実施例1及び2に記載の計算を行い、肝予備能を示す指標であるグリコアルブミン値(実測値)/ヘモグロビンA1c値(実測値)、グリコアルブミン値(実測値)/グリコアルブミン値(計算値)、ヘモグロビンA1c値(計算値)/ヘモグロビンA1c値(実測値)を計算した。それぞれの指標と、正確な血糖の指標である平均血糖値との相関を図11に、肝予備能マーカーであるヘパプラスチンテストとの相関を図12に、コリンエステラーゼとの相関を図13に示す。
このことから、グリコアルブミン値(実測値)/ヘモグロビンA1c値(実測値)、グリコアルブミン値(実測値)/グリコアルブミン値(計算値)、ヘモグロビンA1c値(計算値)/ヘモグロビンA1c値(実測値)は血糖コントロールとは関係のない指標であることが明白である。
このことからグリコアルブミン値(実測値)/ヘモグロビンA1c値(実測値)、グリコアルブミン値(実測値)/グリコアルブミン値(計算値)、ヘモグロビンA1c値(計算値)/ヘモグロビンA1c値(実測値)は血糖コントロールとは関係のない肝予備能の指標であることが明白であった。
このことからグリコアルブミン値(実測値)/ヘモグロビンA1c値(実測値)、グリコアルブミン値(実測値)/グリコアルブミン値(計算値)、ヘモグロビンA1c値(計算値)/ヘモグロビンA1c値(実測値)は血糖コントロールとは関係のない肝予備能の指標であることが、さらに明白になった。加えてこれらの指標の分子と分母を入れ替える、もしくは分子及び/または分母に定数を加減乗除や、一定の関数で変換してもこの関係は変化しないことから本発明に含まれることは明白である。
日立自動分析装置7170S型にグリコアルブミン測定試薬、ヘモグロビンA1c試薬を搭載して同一者の血清および溶血液を測定した。
<試薬>
グリコアルブミン試薬:ルシカGA−L(旭化成ファーマ社製)および専用キャリブレーターを使用した。
ヘモグロビンA1c試薬:
免疫法:デターミナーHbA1c(協和メデックス社製)及び専用キャリブレーターを使用した。
酵素法:ノルディアHbA1c(第一化学薬品社製)及び専用キャリブレーターを使用した。
<項目間演算式>
ヘモグロビンA1c値(補正値)として以下の式を用いた。以下計算式5〜9中ではヘモグロビンA1c値(実測値)をHbA1cと略し、グリコアルブミン値(実測値)をGAと略する。
ヘモグロビンA1c値(補正値)=(HbA1c+GA/3)/2 ・・・計算式5
グリコアルブミン値(補正値)としては以下の式を用いた。
グリコアルブミン値(補正値)=(HbA1c×3+GA)/2 ・・・計算式6
グリコアルブミン値(実測値)/ヘモグロビンA1c値(実測値)は以下の式で計算した。
グリコアルブミン値(実測値)/ヘモグロビンA1c値(実測値)=GA/HbA1c・・・計算式7
グリコアルブミン値(実測値)/グリコアルブミン値(計算値)は以下の式で計算した。
グリコアルブミン値(実測値)/グリコアルブミン値(計算値)=GA/HbA1c/3・・・計算式8
ヘモグロビンA1c(計算式)/ヘモグロビンA1c値(実測値)は以下の式で計算した。
ヘモグロビンA1c(計算式)/ヘモグロビンA1c値(実測値)=GA/3/HbA1c・・・計算式9
グリコアルブミン試薬の試料には血清を用いた。ヘモグロビンA1cの測定の試料は各試薬の操作法に基づき溶血液を作成した。
<操作>
以上を設定して試料を測定した結果、項目間演算式を設定した計算は問題なく行われていた。これらのことから、ヘモグロビンA1c及びグリコアルブミンを測定できる装置において、かつ前記計算が可能な装置において、自動的に計算させることにより簡便に目的とする指標を計算することが可能であった。なおここでは全自動分析装置を用いているが、全自動でなくとも問題なく、ポイントオブケアのような装置を用いても良いことも明白である。
Claims (17)
- 下記の1)〜3)の工程よりなる正確な血糖コントロール状態の測定方法。
1)測定対象試料中のグリコアルブミン及びヘモグロビンA1cを測定してグリコアルブミン値(実測値)及びヘモグロビンA1c値(実測値)を求める工程、
2)1)で求めたグリコアルブミン値(実測値)を肝疾患のない場合のグリコアルブミン値とヘモグロビンA1c値の関係に基づいてヘモグロビンA1c値(計算値)に換算する工程、
3)ヘモグロビンA1c値(計算値)とヘモグロビンA1c値(実測値)の平均値を算出することによりヘモグロビンA1c値(補正値)を算出する工程。 - 工程2)の換算が、肝疾患のない群における試料中のグリコアルブミンとヘモグロビンA1cの測定値より求めたグリコアルブミン値をヘモグロビンA1c値(計算値)に換算するための計算式若しくは換算表を用いることにより行われる請求項1に記載の血糖コントロール状態の測定方法。
- 工程2)の換算が、以下のいずれかの計算式に基づく換算である、請求項1に記載の血糖コントロール状態の測定方法。
ヘモグロビンA1c値(計算値)=グリコアルブミン値(実測値)/3 計算式1
ヘモグロビンA1c値(計算値)=(グリコアルブミン値(実測値)+1)/3 計算式2 - 下記の1)〜3)の工程よりなる正確な血糖コントロール状態を反映するための血糖コントロール状態の測定方法。
1)測定対象試料中のグリコアルブミン及びヘモグロビンA1cを測定してグリコアルブミン値(実測値)及びヘモグロビンA1c値(実測値)を求める工程、
2)1)で求めたヘモグロビンA1c値(実測値)を肝疾患のない場合のグリコアルブミン値とヘモグロビンA1c値の関係に基づいてグリコアルブミン値(計算値)に換算する工程、
3)グリコアルブミン値(計算値)とグリコアルブミン値(実測値)の平均値を算出することによりグリコアルブミン値(補正値)を算出する工程。 - 工程2)の換算が、肝疾患のない群における試料中のグリコアルブミンとヘモグロビンA1cの測定値より求めたヘモグロビンA1c値をグリコアルブミン値(計算値)に換算するための計算式若しくは換算表を用いることにより行われる請求項4に記載の血糖コントロール状態の測定方法。
- 工程2)の換算が、以下のいずれかの計算式に基づく換算である、請求項4に記載の血糖コントロール状態の測定方法。
グリコアルブミン値(計算値)=ヘモグロビンA1c値(実測値)×3 計算式3
グリコアルブミン値(計算値)=ヘモグロビンA1c値(実測値)×3−1 計算式4 - 測定対象試料が、肝疾患患者から採取した試料である請求項1〜6のいずれかに記載の血糖コントロール状態の測定方法。
- 下記の1)〜2)の工程よりなる肝予備能の測定方法。
1)測定対象試料中のグリコアルブミン値(実測値)及びヘモグロビンA1c値(実測値)を測定する工程、
2)グリコアルブミン値(実測値)をへモグロビンA1c値(実測値)で除し、肝予備能を反映する指標を算出する工程。 - 下記の1)〜3)の工程よりなる肝予備能の測定方法。
1)測定対象試料中のグリコアルブミン及びヘモグロビンA1cを測定してグリコアルブミン値(実測値)及びヘモグロビンA1c値(実測値)を求める工程、
2)1)で求めたグリコアルブミン値(実測値)を肝疾患のない場合のグリコアルブミン値とヘモグロビンA1c値の関係に基づいてヘモグロビンA1c値(計算値)に換算する工程、
3)ヘモグロビンA1c値(計算値)をヘモグロビンA1c値(実測値)で除して肝予備能を反映する指標を算出する工程。 - 工程2)の換算が、肝疾患のない群における試料中のグリコアルブミンとヘモグロビンA1cの測定値より求めたグリコアルブミン値をヘモグロビンA1c値(計算値)に換算するための計算式若しくは換算表を用いることにより行われる請求項9に記載の肝予備能の測定方法。
- 工程2)の換算が、以下のいずれかの計算式に基づく換算である、請求項9に記載の肝予備能の測定方法。
ヘモグロビンA1c値(計算値)=グリコアルブミン値(実測値)/3 計算式1
ヘモグロビンA1c値(計算値)=(グリコアルブミン値(実測値)+1)/3 計算式2 - 下記の1)〜3)の工程よりなる肝予備能の測定方法。
1)測定対象試料中のグリコアルブミン及びヘモグロビンA1cを測定してグリコアルブミン値(実測値)及びヘモグロビンA1c値(実測値)を求める工程、
2)1)で求めたヘモグロビンA1c値(実測値)を肝疾患のない場合のグリコアルブミン値とヘモグロビンA1c値の関係に基づいてグリコアルブミン値(計算値)に換算する工程、
3)グリコアルブミン値(計算値)をグリコアルブミン値(実測値)で除して肝予備能を反映する指標を算出する工程。 - 工程2)の換算が、肝疾患のない群における試料中のグリコアルブミンとヘモグロビンA1cの測定値より求めたヘモグロビンA1値をグリコアルブミン値(計算値)に換算するための計算式若しくは換算表を用いることにより行われる請求項12に記載の肝予備能の測定方法。
- 工程2)の換算が、以下のいずれかの式に基づく換算である、請求項12に記載の肝予備能の測定方法。
グリコアルブミン値(計算値)=ヘモグロビンA1c値(実測値)×3 計算式3
グリコアルブミン値(計算値)=ヘモグロビンA1c値(実測値)×3−1 計算式4 - 測定対象試料が、肝疾患患者から採取した試料である請求項8〜14のいずれかに記載の肝予備能の測定方法。
- グリコアルブミン測定部、ヘモグロビンA1c測定部及び演算部を備えた血糖コントロール状態の測定装置であって、
演算部が、請求項1〜7のいずれかに示される換算及び算出を行うことを特徴とする血糖コントロール状態の測定装置。 - グリコアルブミン測定部、ヘモグロビンA1c測定部及び演算部を備えた血糖コントロール状態の測定装置であって、
演算部が、請求項8〜15のいずれかに示される換算及び算出を行うことを特徴とする肝予備能の測定装置。
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