JP5496194B2 - アミロース含有繊維、その製造法およびその利用 - Google Patents

アミロース含有繊維、その製造法およびその利用 Download PDF

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Description

本発明は、アミロースを含有する機能性レーヨン繊維及びその製造方法およびその利用に関する。
植物デンプンは、アミロースとアミロペクチンにより構成されており、たとえば通常のトウモロコシデンプンは約20%のアミロースと約80%のアミロペクチンからなる。植物デンプンに含まれる天然アミロースは、グルコースが主にα−1,4グルコシド結合により多数結合した多糖であるが、α−1,6グルコシド結合からなる分岐構造をわずかに有していることが知られている。一方のアミロペクチンは重合度20程度の短いアミロース鎖が、α−1,6グルコシド結合を介して多数房状に結合した巨大分子である。アミロースを構成する直鎖状のα−1,4グルカン鎖は、らせん構造を形成する特徴があり、そのらせん構造内部に様々な物質を取り込む機能(包接機能といわれる)を有することが古くから知られている。デンプンにヨウ素液を加えると青く呈色すること(ヨウ素:デンプン反応)は、アミロースらせん構造内部にヨウ素原子が包接されることにより起こることが明らかとなっている。アミロースが包接することができる物質はヨウ素以外にも、脂肪酸、界面活性剤など、多数の無機分子および有機化合物が知られている。
アミロースは包接機能というユニークな機能を有する多糖であるが、デンプン中のアミロペクチンと分離することが非常に困難であるため、産業規模での純粋なアミロースの製造は行われておらず、アミロースの産業利用は進んでいない。近年、酵素的に純粋なアミロースを合成することが可能となり(特許文献1)、アミロースの利用に関する研究が進みつつある(特許文献2)。たとえば、特許文献3には、酵素合成アミロースからなる繊維、フィルムなどの成型物が開示されている。これらアミロースからなる成型物は、微生物および動物体内のアミラーゼで容易に分解されるので生分解性および生体適合性に優れる。そのため、特許文献3には、このアミロースからなる成型物を生分解性が必要とされる用途へ利用することが開示されている。しかしながら、このようなアミロースのみからなる繊維は生分解性が良すぎるため、繰り返し使用および洗濯を繰り返すなどの用途には向かない。生分解性は化学修飾により制御可能と記載されているが、化学修飾はアミロースの包接機能を顕著に抑制するため、アミロースの包接機能を利用する用途に適さない。
現在、繊維としては、ポリエステル繊維などの化学繊維が主に使用されている。しかし、従来の化学繊維の材料の溶媒にはアミロースを溶解させることができないため、化学繊維中にアミロースを含有させることはできない。例え含有させることができたとしても、化学繊維とアミロースとは相溶性がないため、分子単位で混合することができず、相分離してしまう。
一方、セルロースは植物細胞壁の構成多糖であり、グルコースがβ−1,4グルコシド結合により多数連結した多糖である。セルロースはデンプンと比較してはるかに安定性に優れた多糖であり、たとえば衣類、不織布、紙などの主要な原料である。しかし、セルロースは包接機能がない。
アミロースの包接機能をセルロースに付与することが出来れば、両者の特徴を併せ持つ、新たな機能素材を開発できる可能性がある。特許文献4には、セルロース繊維製の不織布にアミロース水溶液を塗布して、セルロース繊維をアミロースでコーティングする方法が開示されている。この方法は操作が容易で実用性はあるものの、セルロース表面に付着したアミロースは、洗濯等の操作により容易に失われるため、やはり繰り返し使用に耐えないという問題がある。
セルロース繊維の一つにレーヨンがある。レーヨンは、二硫化炭素を用いて溶解したセルロースの溶液(ビスコース)からセルロースを再生させながら繊維化したものである。レーヨンは、その製造上の特徴から、ビスコースにさまざまな機能性物質を添加することによりレーヨン中に機能性物質を含有させることができ、その結果、レーヨンに機能を付与することが出来るという特徴を有している。これまでに、キトサンを含有するレーヨン繊維(特許文献5)、複合金属酸化物微粒子を含有するレーヨン繊維(特許文献6)、備長炭微粒子を含有するレーヨン(特許文献7)、陰イオン高分子を含有するレーヨン繊維(特許文献8)などが開示されている。しかし、ビスコースに機能性物質を添加してレーヨンを製造した場合、機能性物質がレーヨン繊維に被覆されてしまい、期待した機能性が十分利用できない場合があった。これに対し、レーヨン繊維表面に露出するように機能性成分の形状が工夫されている(特許文献7)。しかし、この方法はすべての機能性成分に使えるとは限らない。他に、レーヨン繊維表面のセルロースを酵素で分解して機能性成分を露出させる減量加工処理という工夫(特許文献6)もなされている。しかし、この方法も、レーヨン繊維の風合いの低下と機械的強度の低下などの問題があった。さらに、機能性成分が露出されることによる洗濯耐性の低下も問題となる。
特許文献8ではレーヨンに高分子物質を含有させる場合、レーヨンへの歩留まりの観点から高分子物質の分子量は1万〜50万が適しているとある。ところが、特許文献8に記載の技術は、イオン性官能基をレーヨン中に保持させるために高分子物質を利用しているに過ぎず、レーヨン中の高分子物質の構造は問題でなかった。アミロースのような高分g子物質が機能性を持つ場合、上記のような高分子物質がレーヨンに被覆されることにより機能性が発揮されないことに加え、高分子物質の構造変化などが原因となり、機能が十分発揮されない場合もある。この高分子物質の構造変化は、高分子物質の種類および製造方法により異なるため、結果を予測することは大変困難である。むしろ、高分子物質の構造は、物理化学的な刺激により容易に変化することが知られており、レーヨンに含有させることにより高分子物質の構造変化がおこり、高分子物質の機能が失われると考えられていた。さらに、特許文献8は、繰り返しの洗濯によって第4級アンモニウム塩化合物が脱落することによる抗菌性作用の低下を防ぐことを目的としており、本願発明とは課題が全く異なっている。特許文献8に記載の方法では抗菌剤をイオン結合で結合させているのに対し、本発明では、抗菌剤をアミロースに包接させている。そのため、抗菌剤の保持手法が全く異なる。さらに、イオン結合はイオンのある部分にしか抗菌剤を結合できないが、本発明においてはアミロース鎖の種々の部分で抗菌剤を包接できるので、繊維中の第4級アンモニウム塩と結合させる物質とアミロースの含有量が同じであれば、従来よりも多量の抗菌剤を結合することができる。
包接能を持つ化合物としてシクロデキストリンが知られている。しかし、シクロデキストリンは分子量が小さく、水に溶解するため、湿式紡糸法のビスコースレーヨンでは、繊維化する際にシクロデキストリンが紡糸浴中に溶出し繊維中の歩留まりが悪い。例え少量のシクロデキストリンをレーヨン繊維に含有させることができたとしても、繊維からシクロデキストリンが容易に溶出してしまうため、得られる繊維は安定性に劣る。
そのため、シクロデキストリンを化学結合により繊維表面に結合させる方法が開示されている(非特許文献1)。しかし、この方法では、繊維表面のみにしか包接能を付与できない。また、この繊維が酸やアルカリ溶液に晒されるなどすると、化学結合が切断され繊維表面のシクロデキストリンが溶出し、包接能が容易に失われるという問題がある。
シクロデキストリンを繊維に含有させる方法として、シクロデキストリンを化学結合によりポリエステル系ポリマーの末端に結合させて得た結合体を、熱可塑性樹脂と混合して繊維を得る方法が開示されている(特許文献10)。しかし、シクロデキストリンはポリマーの末端にしか結合していないため、シクロデキストリンの結合量が少ないことや、ポリマーに被覆されたシクロデキストリンは包接能を発揮できないなどのため、ゲスト物質の包接量が制限される問題がある。この方法でシクロデキストリンの結合量を上げようとすると、ポリマーの重合度を小さくせざるを得ず、その結果、繊維強度が不足してしまうという問題がある。これに対し、ポリマー分子に複数のシクロデキストリンを化学結合させる方法も開示されている(特許文献11)。しかしながらこの方法も、シクロデキストリン誘導体を合成し、更に重合反応をさせるという複雑な工程が必要であり、合成に手間がかかり効率が悪い。さらに、得られたポリマーが繊維化可能かどうかや、成型後に十分な包接能を有するかどうかは不明である。
以上のように、繊維全体に包接能を付与するためには、アミロースのような包接能力を持つ高分子物質を繊維全体に含有させることが必要となる。しかしながら、繊維に含有させることによるアミロースの包接能の喪失や、アミロースを含有させることによる繊維の物性の変化など、解決するべき課題が多くあった。
包接したゲスト物質の放出または徐放においても従来技術では問題のある場合がある。例えば、ゲスト物質が芳香成分や揮発性の抗菌成分の場合、外部環境の変化によってゲスト物質が放出されることによりゲスト物質の機能が発現する。従来の包接能を持つ化合物であるシクロデキストリンでも湿度などの変化によってゲスト物質が放出されるが、シクロデキストリンは包接力が強すぎるため、放出量が少なく、結果としてゲスト物質の機能が十分発現しない場合がある。
このように、ゲスト物質を包接しつつ、例えば湿度の上昇など想定される使用環境変化により、包接されたゲスト化合物が機能するに十分な量放出されるような、適切な物性を持った成形物が求められていた。
機能性成分にアミロースを用いる場合、天然のアミロースを特許文献5から8に記載されるのと同様の方法でレーヨン中に添加しようとしても、レーヨン製造時のアルカリ条件では天然アミロースが完全には溶解しない。その結果、レーヨン製造時にノズルの目詰まりなどが発生し、アミロース含有レーヨンを作ることができなかった。
特表2004−526463号公報 国際公開第2006/082968号パンフレット 国際公開第02/006507号パンフレット 特開2008−37833号公報 特開平8−92820号公報 特開2004−162245号公報 特開2001−98412号公報 特開平7−173711号公報 特開2005−503476号公報 特開平08−100027号公報
Journal of Inclusion Phenomena and Macrocyclic Chemistry、25巻、197〜202ページ、1996年
本発明は、上記問題点の解決を意図するものである。
本発明は、アミロースの包接機能が付与された繊維を開発することを目的とし、より詳細にはアミロースの包接機能が付与された機能性レーヨン繊維を開発することを目的とする。本発明の機能性レーヨン繊維は、アミロースの包接機能が付与されたこと以外には、レーヨン繊維の物性を大きく変えることなく、アミロースを安定に保持しており、洗濯などの操作においてもアミロースは実質的に溶出せず、繰り返し使用に耐えることができる。さらに本発明の機能性レーヨン繊維は、包接機能を発揮できる状態でアミロースを含有しているので、様々なゲスト物質と接触させてアミロースに包接させることにより、繊維に追加機能を付与することができる。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、アミロースの包接機能が付与された繊維を得るためには、レーヨンが最も適していることを見出した。レーヨン繊維の製造過程において、アルカリ溶解したアミロースをビスコースと混合し、混合物中に分散させてからこの混合物を繊維化することにより、アミロースが実質的に溶出せず、かつ包接作用を発揮できる状態でアミロースをレーヨン繊維中に分散したアミロース含有レーヨン繊維を製造できることを見出し、これに基づいて本発明を完成させた。得られた繊維は、アミロースの包接機能が付与されたこと以外には、もとのレーヨン繊維の物性をほとんど変えることがなかった。特に、平均分子量約3×10以上約2×10以下の完全直鎖状アミロースを使用することにより、アミロースを包接力を持った状態でレーヨン繊維に含有させることが可能である。さらに、本発明のアミロース含有レーヨン繊維においてはアミロースが安定して保持されるため、本発明のアミロース含有レーヨン繊維は、繰り返し使用に耐えうるという顕著な効果を有する。さらに本発明のレーヨン繊維を有機溶媒を含む水溶液中で加熱処理することにより、レーヨン中のアミロースの包接機能をさらに上昇させることが可能となる。このように、本発明者らは、従来になく優れた特性を有する機能性レーヨン繊維およびその製造方法を開発することにより本発明を完成させた。
本発明により、例えば以下が提供される:
(項目1) アミロース含有レーヨン繊維の製造方法であって、
アミロースのアルカリ水溶液とビスコースとを混合して混合液を得る工程;および
該混合液を紡糸してアミロース含有レーヨン繊維を得る工程
を包含し、
該アミロースは、重量平均分子量が約3×10以上約2×10以下の酵素合成アミロースである、方法。
(項目2) 前記アミロース含有レーヨン繊維が、加熱冷却処理される、項目1に記載の方法。
(項目3) 前記アミロース含有レーヨン繊維が、アルカリ処理される、項目1または2に記載の方法。
(項目4) 前記アミロース含有レーヨン繊維をゲスト物質と接触させて該ゲスト物質を該アミロース含有レーヨン繊維のアミロース中に包接させる工程を包含し、該ゲスト物質がヨウ素およびポリヨウ化物イオン以外の物質であり、該ゲスト物質が、殺菌剤、抗菌剤、防虫成分、におい成分、生理機能物質、紫外線吸収物質、化粧品成分、着色料、染料、消臭成分および防カビ成分からなる群より選択される、項目1〜3のいずれか1項に記載の方法。
(項目5) 前記アミロース含有レーヨン繊維をアミロースのゲスト物質と接触させない、項目1〜3のいずれか1項に記載の方法。
(項目6) 前記酵素合成アミロースが、α−1,6−グルコシド結合を含まないアミロースである、項目1〜5のいずれか1項に記載の方法。
(項目7) 前記酵素合成アミロースの分散度が約3.0以下である、項目1〜6のいずれか1項に記載の方法。
(項目8) 前記アミロース含有レーヨン繊維中の前記酵素合成アミロースの含有量が約0.01重量%以上約50重量%以下である、項目1〜7のいずれか1項に記載の方法。
(項目9) ゲスト物質を包接する能力を有するアミロース含有レーヨン繊維であって、該レーヨン繊維中のアミロースは、洗浄により実質的に溶出せず、かつ該レーヨン繊維中に分散しており、該アミロースは、重量平均分子量が約3×10以上約2×10以下の酵素合成アミロースであり、該アミロースはゲスト物質を包接していない、アミロース含有レーヨン繊維。
(項目10) アミロースの含有量が約0.01重量%以上約50重量%以下である、項目9に記載のアミロース含有レーヨン繊維。
(項目11) アミロース含有レーヨン繊維であって、該レーヨン繊維中のアミロースは、洗浄により実質的に溶出せず、かつ該レーヨン繊維中に分散しており、該アミロースは、重量平均分子量が約3×10以上約2×10以下の酵素合成アミロースであり、該アミロースはヨウ素およびポリヨウ化物イオン以外のゲスト物質を包接している、アミロース含有レーヨン繊維。
(項目12) アミロースの含有量が約0.01重量%以上約50重量%以下である、項目11に記載のアミロース含有レーヨン繊維。
(項目13) ゲスト物質として殺菌剤を包接している、項目11または12に記載のアミロース含有レーヨン繊維。
(項目14) ゲスト物質として香料を包接している、項目11または12に記載のアミロース含有レーヨン繊維。
(項目15) ゲスト物質として紫外線吸収物質を包接している、項目11または12に記載のアミロース含有レーヨン繊維。
(項目16) ゲスト物質として生理機能物質を包接している、項目11または12に記載のアミロース含有レーヨン繊維。
(項目17) ゲスト物質として防虫成分を包接している、項目11または12に記載のアミロース含有レーヨン繊維。
(項目18) ゲスト物質として消臭成分を包接している、項目11または12に記載のアミロース含有レーヨン繊維。
(項目19) 前記酵素合成アミロースが、α−1,6−グルコシド結合を含まないアミロースである、項目9〜18のいずれか1項に記載のアミロース含有レーヨン繊維。
(項目20) 前記酵素合成アミロースの分散度が約3.0以下である、項目9〜19のいずれか1項に記載のアミロース含有レーヨン繊維。
(項目21) 化学物質を濃縮、回収、除去または単離するために、該化学物質を繊維中に捕捉する方法であって、
該化学物質を含有する溶液または気体と、項目9または10に記載のアミロース含有レーヨン繊維とを接触させることにより、該化学物質を前記アミロースに包接させる工程
を包含し、該化学物質はアミロースにより包接可能な物質であり、該化学物質はヨウ素およびポリヨウ化物イオン以外の物質である、方法。
(項目22) 項目9または10に記載のアミロース含有レーヨン繊維を含む、前記ゲスト物質の濃縮、回収、除去または単離用の製品。
(項目23) 項目9〜20のいずれか1項に記載のアミロース含有レーヨン繊維を含む、織物、編物、不織布または紙より得られた製品。
(項目24) 項目9、10および18のいずれか1項に記載のアミロース含有レーヨン繊維を含む、消臭用製品。
(項目25) 項目15に記載のアミロース含有レーヨン繊維を含む、紫外線防止用製品。
本発明のアミロース含有レーヨン繊維は、アミロースを安定に保持しており、洗濯などの操作においてもアミロースは溶出せず、繰り返し使用に耐えることができる。さらにアミロース含有レーヨン繊維は、アミロースが包接機能を発揮できる状態で含有しており、様々なゲスト物質を添加することにより、繊維に追加機能を付与することができる。例えばノニルフェノールのような紫外線吸収剤を包接させたアミロース含有レーヨン繊維は、きわめて優れた紫外線防御効果を発揮する。
さらに、本発明のアミロース含有レーヨン繊維の包接能力は、レーヨン繊維に含まれない純粋なアミロースの包接能力と純粋なレーヨン繊維の包接能力との総和よりも顕著に増加し得る。
図1は、実施例11で得られた紫外線吸収スペクトルの結果を示すグラフである。縦軸は強度(Int.)を示し、横軸は波長(Wavelength)を示す。実線はノニルフェノール包接アミロース含有不織布を示し、波線はノニルフェノールで処理したコントロールの不織布を示す。 図2は、メントール包接アミロース含有レーヨン配合サーマルボンド不織布のメントール保持安定性を示すグラフである。 図3は、メントール包接アミロース含有レーヨン配合サーマルボンド不織布からのメントールの徐放を示すグラフである。
以下、本発明を詳細に説明する。
(1.材料)
(1.1)アミロース
「アミロース」とは、本明細書中で用いられる場合、D−グルコースを構成単位とする糖であって、主にα−1,4−グルコシド結合によって連結された糖単位を少なくとも2糖単位以上有する実質的に直鎖状の多糖をいう。本発明で使用されるアミロース分子においては、好ましくは、α−1,4−グルコシド結合によってのみ糖単位の間が連結されている。「直鎖状」とは、分岐がないことをいう。分岐は、例えば1つのグルコース残基の1位、4位および6位の3箇所にグルコース残基が連結した構造により形成される。「実質的に直鎖状」とは、完全に直鎖状のものと少数の分岐を含む直鎖状のものとを包含する。分岐の数は、グルコース残基10000個あたり約100個以下が好ましく、約50個以下がより好ましく、約10個以下がより好ましく、約1個以下が特に好ましく、0個であることが最も好ましい。アミロースは、直鎖状α−グルカンおよびα−1,4−グルカンと同義語である。直鎖状アミロースのうち、分岐が全くないアミロースを完全直鎖状アミロースという。
アミロースは比較的少ないα−1,6−グルコシド結合を含んでもよい。本発明で用いられるアミロースでは、α−1,6−グルコシド結合の数を1としたときのα−1,4−グルコシド結合の数が、好ましくは約100以上であり、より好ましくは約200以上であり、さらに好ましくは約300以上であり、特に好ましくは約400以上であり、最も好ましくは約500以上である。本発明で用いられるアミロースでは、好ましくは、α−1,6−グルコシド結合の数を1としたときのα−1,4−グルコシド結合の数に特に上限はなく、例えば、約15000以下、約10000以下、約5000以下、約4000以下、約3000以下、約2000以下、約1000以下、約500以下、約400以下、約300以下などであり得る。
本発明で使用されるアミロースの分散度は、好ましくは3.0以下である。高分子化合物は、タンパク質のような特別の場合を除き、その由来が天然または非天然のいずれかであるかに関わらず、その分子量は単一ではなく、ある程度の幅を持っている。そのため、高分子化合物の分子量の分散程度を示すために、高分子化学の分野では通常、分散度Mw/Mnが用いられている。分散度Mw/Mnは、重量平均分子量Mwに対する数平均分子量Mnの比(すなわち、Mw÷Mn)で表わされる。分散度は、その高分子化合物の分子量分布の幅広さの指標である。分子量が完全に単一な高分子化合物であればMw/Mnは1であり、分子量分布が広がるにつれてMw/Mnは1よりも大きな値になる。
本発明で使用されるアミロースの分散度は、さらに好ましくは約2.8以下であり、より好ましくは約2.5以下であり、さらにより好ましくは約2.3以下であり、さらにより好ましくは約2.0以下であり、さらにより好ましくは約1.5以下であり、最も好ましくは約1.2以下である。
1分子のα−1,4−グルカンに含まれる糖単位の数を、重合度という。本明細書中で「重合度」という用語は、特に断りのない限り重量平均重合度を指す。α−1,4−グルカンの場合、重量平均重合度は、重量平均分子量を162で割ることによって算出される。本明細書中で「平均分子量」という場合、特に断りのない限り重量平均分子量を指す。
天然澱粉は通常、アミロース(グルコースが直鎖状に結合した構造のポリマー)とアミロペクチン(アミロースに枝別れが生じた房状のポリマー)の両方の混合体からなる。天然澱粉に含まれるアミロースは、通常、分子量分布(Mw/Mn)が3.0よりも広く、(i)結晶化しやすい低分子量アミロース、(ii)水に溶解しやすい高分子量体、(iii)その中間の分子量のゲル化し易いアミロースが混在するため、相互に他の分子量領域の優れたアミロース特性を阻害し合う。さらに、天然のアミロースはわずかに分岐を含むことが多い。これらが原因となり、天然澱粉から単離したアミロースを使用した場合、得られる製品の特性も劣ったものとなる。また、分子量の大きいアミロースを使用して高濃度のアルカリ溶液を調製するとアルカリ溶液の粘度が上昇することになるため、このアルカリ溶液は、繊維の作製などにおける加工特性が劣る。そのため、天然のアミロースは好ましくない。すなわち、天然のアミロース以外のアミロースが本発明に好ましく使用される。
本発明で使用されるアミロースは、好ましくは酵素合成アミロースである。酵素合成アミロースとは、プライマーに対して酵素を利用して糖単位を連結することによって得られるアミロースをいう。本発明で用いられる酵素合成アミロースは、当該分野で公知の任意の酵素合成方法によって作製され得る。このような酵素合成法の例としては、グルカンホスホリラーゼを用いる方法が挙げられる。ホスホリラーゼは、加リン酸分解反応を触媒する酵素である。本発明で使用され得るアミロースの酵素合成法の例としては、以下が挙げられる:
(1)α−グルカンホスホリラーゼ(Glucan phosphorylase:GP)(例えば、馬鈴薯由来)により、α−グルコース−1−リン酸(alpha−glucose−1−phosphate)のグルコシル基をプライマーであるマルトヘプタオースなどに転移することによりα−1,4−グルカン鎖を合成する方法;
(2)プライマー、スクロースおよび無機リン酸またはグルコース−1−リン酸を基質として、スクロースホスホリラーゼおよびグルカンホスホリラーゼを同時に作用させてα−1,4−グルカン鎖を合成する方法(以下、SP−GP法という)(Waldmann,H.ら,Carbohydrate Research,157(1986)c4−c7;WO2002/097107)。この方法は、他の方法よりも安価に直鎖状グルカンを合成し得るという利点を有する;
(3)プライマーおよびスクロースを基質として使用して、アミロスクラーゼを作用させることによりα−1,4−グルカン鎖を合成する方法。
酵素合成アミロースの製造において使用される「プライマー」とは、α−1,4グルカン鎖の合成において出発物質として作用する糖鎖分子をいう。プライマーの例としては、α−グルカンホスホリラーゼによって糖単位が付加され得る任意の糖が挙げられる。プライマーの例としては、マルトオリゴ糖が挙げられる。
酵素合成アミロースの製造方法は、例えば、特表2004−526463号公報に記載される。酵素合成アミロースは、分岐を含まず、分散度が小さい、すなわち、分子量が揃っているという利点がある。
本発明で使用されるアミロースの平均分子量(重量平均分子量)は、レーヨンに含有された状態で包接力を持つという性質を実現するため、好ましくは約3×10以上であり、さらに好ましくは約4×10以上であり、特に好ましくは約4.5×10以上であり、最も好ましくは約5×10以上である。本発明で使用されるアミロースの平均分子量は、好ましくは約2×10以下であり、より好ましくは約1.5×10以下であり、最も好ましくは約1.2×10以下である。
アミロースの平均分子量が小さすぎると、アミロースの包接力がレーヨン中で十分に発揮されないという問題がある。アミロースの平均分子量が大きすぎると、レーヨン中にうまく組み込まれなかったり、アミロースの包接力が損なわれたり、ビスコースの濾過性が悪くなってレーヨン繊維の製造を安定して行いにくくなったりする場合がある。
酵素合成アミロースの平均分子量は、酵素合成に用いるスクロースの濃度とプライマーの濃度との比率を変更することにより調整され得る。スクロースの濃度が一定の場合、プライマーの濃度が低いほど、得られるアミロースの平均分子量が大きくなる。当業者は、特許文献1および本願の合成例を読めば、目的の分子量のアミロースを容易に合成し得る。
(1.2)レーヨン繊維原料
レーヨン繊維原料としては、当該分野で公知の任意のビスコースが使用され得る。ビスコースは、当該分野で公知の方法によって製造され得る。例えば、亜硫酸パルプを17〜18%の苛性ソーダ液に浸漬する。パルプはアルカリ繊維素となって容積が4〜5倍に膨張する。これを圧搾して過剰のアルカリを搾り取り、粉砕機に入れて粉砕してかき混ぜる。これを老成させ、二硫化炭素と反応させてザンテートを形成する。ザンテートに希薄苛性ソーダ溶液を加え、液体状にしたものをビスコースという。
(1.3)包接される物質
本願発明ではアミロースに包接される物質(ゲスト物質ともいう)は、アミロースに包接され得る物質であれば、任意の物質であり得る。ゲスト物質は、分子、化合物、原子、イオンなどであり得る。特定の実施形態では、ゲスト物質は、ヨウ素およびポリヨウ化物イオン以外の物質である。
ゲスト物質の例としては、(a)殺菌剤および抗菌剤;(b)防虫成分;(c)におい成分;(d)安定化されるべき成分;(e)徐放成分;(f)紫外線吸収物質;(g)化粧品成分;(h)着色料または染料;(i)消臭成分;(j)防カビ成分などが挙げられる。
(a)殺菌剤および抗菌剤の例としては、例えば、ペニシリン、アンピシリン、アモキシシリン、セファロスポリン、テトラサイクリン、オキシテトラサイクリン、クロルテトラサイクリン、メチシリン、コリスチンメタンスルホン酸ナトリウム、カルベニシリンナトリウム、ゲンタマイシン、エリスロマイシン、アジスロマイシン、ロキシスロマイシン、クラリスロマイシン、テリスロマイシン、ジョサマイシン、スピラマイシン、ロイコマイシン、ミデカマイシン、ロキタマイシン、ミデカマイシン、トブラマイシン、カナマイシン、セフロキシムナトリウム、メロペネム、ネチルマイシン、シソマイシン、セフチブテン、トブラマイシン、ドキソルビシン、アストロマイシン、セフェタメトピボキシル、ナリジクス酸、ピロミド酸、ピペミド酸、シノキサン、ノルフロキサシン、オフロキサシン、エノキサシン、シプロフロキサシン、トシル酸トスフロキサシン、ロメフロキサシン、スパルフロキサシン、フレロキサシン、レボフロキサシン、ガチフロキサシン、プルリフロキサシン、バンコマイシン、クロラムフェニコールおよびそれらの塩等の抗微生物薬;メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン、ブチルパラベン、ベンジルパラベンなどのパラベン類;アルキルジメチルベンザルコニウム、アルキルジメチルベンゼトニウム、ジアルキルジメチルアンモニウム、ポリドロニウムなどの第4級アンモニウム及びその塩などのカチオン性殺菌剤;セチルピリジニウム等のアルキルピリジニウム及びその塩;クロルヘキシジン等のビグアナイド系化合物及びその塩;アルキルジアミノエチルグリシン、アルキルポリアミノエチルグリシンなどのアルキル側鎖を有する両性界面活性剤;トリクロサン、グルタールアルデヒド、ポリヘキサメチレングアニドなどの非イオン性の殺菌剤;4,5−ジクロロ−2−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン、2−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オンなどのイソチアゾリン系化合物;メチル2−ベンゾイミダゾールカーバメイト、2−(4−チアゾリル)−ベンゾイミダゾールなどのイミダゾール系化合物;例えば、3−ヨード−2−プロピニル−ブチル−カーバメイト、ジヨードメチル−p−トリル−スルホン、p−クロロフェニル−3−ヨードプロパギルホルマール、2,3,3−トリヨードアリルアルコールなどの有機ヨウ素系化合物;3,3,4,4−テトラクロロテトラヒドロチオフェン−1,1−ジオキシドなどのチオフェン系化合物;1−[[2−(2,4−ジクロロフェニル)−1,3−ジオキサン−2イル]メチル]−1H−1,2,4−トリアゾール、(±)−α[2−(4−クロロフェニル)エチル]−α−(1,1−ジメチルエチル)−1H−1,2,4−トリアゾール−(1)−エタノール、(±)−1−[2−(2,4−ジクロロフェニル)−4−プロピル−1,3−ジオキサン−2イルメチル]−1H−1,2,4−トリアゾールなどのトリアゾール系化合物;3−(3,4−ジクロロフェニル)−1,1−ジメチルウレアなどの尿素系化合物;2−メチルチオ−4−tert−ブチルアミノ−6−シクロプロピニルアミノ−s−トリアジンなどのトリアジン系化合物;3−ベンゾ[b]チエン−2−イル−5,6−ジヒドロ−1,4,2−オキサチアジン−4−オキサイドなどのオキサチアジン系化合物;2,2−ジブロモ−2−ニトロエタノール、2−ブロモ−2−ニトロプロパン−1,3−ジオールなどのアルコール系化合物などが挙げられる。
(b)防虫成分の例としては、例えば、ピレトリン、シネリン、ジャスモリン、エンペントリン、アレスリン、フェノトリン、テラレトリン、プラレトリン、フタルスリン、レスメトリン、フラメトリン、フェノトリン、ペルメトリン、シペルメトリン、シフェノトリン、ブラトリン、エトフェンプロックス、シフルトリン、テフルトリン、ビフェントリン、フェンバレレート、イミプロスリン、トランスフルスリン、フェンプロパトリン、フェンフルスリン等のピレスロイド系防虫剤、パラジクロルベンゼン、ナフタリン、樟脳、ディート、ハーブ抽出物、ワサビエキス、唐辛子エキス、シソエキス、茶エキスなどが挙げられる。
(c)におい成分の例としては、例えば、芳香成分および悪臭成分が挙げられる。
芳香成分の例としては、例えば、麝香、霊猫香、竜延香、アビエス油、アクジョン油、アルモンド油、アンゲリカルート油、ページル油、ベルガモット油、パーチ油、ボアバローズ油、カヤブチ油、ガナンガ油、カプシカム油、キャラウェー油、カルダモン油、カシア油、セロリー油、シナモン油、シトロネラ油、コニャック油、コリアンダー油、クミン油、樟脳油、ジル油、エストゴラン油、ユーカリ油、フェンネル油、ガーリック油、ジンジャー油、グレープフルーツ油、ホップ油、レモン油、レモングラス油、ナツメグ油、マンダリン油、ハッカ油、オレンジ油、セージ油、スターアニス油、テレピン油、樹脂等の天然香料;リナロール、ゲラニオール、ネロール、シトロネロール、ヒドロキシシトロネロール、メントール、ボルネオール、ベンジルアルコール、アニスアルコール、β−フェネチルアルコール、n−オクチルアルコール、n−オクチノール、n−ノニルアルコール、n−デシルアルコール、n−ウンデシルアルコール、n−ウンデシレンアルコール、ジュオデシルアルコール、テトラヒドロリナロール、テルピネオール、イソプレゴール、ボルネオール、イソボルネオール、ファルネソール、ネロリドール、カンタロール、γ−フェニルプロピルアルコール、シンナミックアルコール、メチルフェニルカルビノール、ジメチルフェニルカルビノール、ジメチルベンジルカルビノール、β−フェニルエチルジメチルカルビノール、β−フェニルエチルメチルエチルカルビノール、フェノキシエチルアルコール等のアルコール系香料;アニソール、ジフェニルオキシド、ジベンジルエーテル、グアヤコール、ジメチルヒドロキノン、p−クレゾールメチルエーテル、アネトール、オイゲノール、イソオイゲノール、メチルオイゲノール、メチルイソオイゲノール、ベンジルイソオイゲノール等のエーテル系香料;n−ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、ヘキシルアルデヒド、n−ヘプチルアルデヒド、n−オクチルアルデヒド、n−ノニルアルデヒド、n−デシルアルデヒド、n−ウンデシルアルデヒド、ウンデシレンアルデヒド、メチルノニルアセトアルデヒド、トリデシルアルデヒド、テトラデシルアルデヒド、ヘキサデシルアルデヒド、ウンデカラクトン、メチルフェニルグリシド酸エチル、γ−ノニルラクトン、シトラール、シトロネラール、ヒドロキシシトロネラール、ベンズアルデヒド、p−トリルアルデヒド、クミンアルデヒド、フェニルアセトアルデヒド、p−トリルアセトアルデヒド、フェニルプロピルアルデヒド、シンナミックアルデヒド、α−アミルシンナミックアルデヒド、p−イソプロピル−α−メチルヒドロシンナミックアルデヒド、サリチルアルデヒド、アニスアルデヒド、ヘリオトロピン、バニリン、エチルバニリン、ノナナール(ペラルゴンアルデヒド)等のアルデヒド系香料;メチル−n−アミルケトン、メチル−n−ヘキシルケトン、メチル−n−ノニルケトン、エチル−n−アミルケトン、メチルヘプテン、ジアセチル、カルボン、メントン、プレゴン、ピペリトン、樟脳、アセトフェノン、p−メチルアセトフェノン、ベンゾフェノン、ベンジリデンアセトン、メチルナフチルケトン、イオノン、メチルイオノン、イロン、ジャスモン、ムスコン、シベトン、エキザルトン、γ−ブチロラクトン、クマリン等のケトン系香料;蟻酸エステル、酢酸エステル(例えば、酢酸リナリル)、プロピオン酸エステル、酪酸エステル、吉草酸エステル、乳酸エステル、ヘプチル酸エステル、ヘプテンカルボン酸エステル、オクテンカルボン酸エステル、ラウリン酸エステル、ミリスチン酸エステル、安息香酸エステル、フェニル酢酸エステル、桂皮酸エステル、フタル酸エステル、サリチル酸エステル、アニス酸エステル、アンスラニル酸エステル、メチルアンスラニル酸エステル、菊酸エステル等のエステル系香料;エチレン、アセチレン、ピネン、リモネン、カンフェン、フェランドレン、テルピノレン、カジネン、カリオフィレン、p−シモール、シネオール、アンブレットリド、エキザルトリド、ジフェニルエタン、安息香酸、桂皮酸、フェニル酢酸などが挙げられる。
悪臭物質の例としては、例えば、ノナン酸(例えば、ペラルゴン酸)、乳酸、酢酸、プロピオン酸、n−酪酸、iso−酪酸、n−吉草酸、iso−吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ミオレイン酸、アクリル酸、メタアクリル酸等のカルボン酸;アンモニア、メチルアミン、エチルアミン、n−プロピルアミン、n−ブチルアミン、n−アリルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、エチレンジアミン、ピリジン、インドール、スカトール等の窒素化合物;エチルエーテル、iso−プロピルエーテル等のエーテル類;メチルメルカプタン、エチルメルカプタン、n−プロピルメルカプタン、iso−プロピルメルカプタン、n−ブチルメルカプタン、t−ブチルメルカプタン、2‐プロペン‐1‐チオール、ジメチルサルファイド、ジエチルサルファイド、ジ−n−プロピルサルファイド、ジ−iso−プロピルサルファイド、硫化アリル、ジメチルジサルファイド、ジエチルジサルファイド、エチルメチルサルファイド、テトラハイドロチオフェン等の硫黄化合物;アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、n−ブチルアルデヒド、iso−ブチルアルデヒド、フルフラール、ベンズアルデヒド、2−ノネナール等のアルデヒド類;iso−プロピルアルコール、n−ブチルアルコール、iso−ブチルアルコール、n−アミルアルコール、iso−アミルアルコール、n−ヘキシルアルコール、オクチルアルコール、ラウリルアルコール、アリルアルコール、ベンジルアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等のアルコール類;酢酸ブチル、酢酸iso−アミル、酢酸ベンジル、酢酸エチル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ジオクチル等のエーテル類;トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、パラジクロロベンゼン、トリクロロエタン等のハロゲン化合物;フェノール、トリクレゾール、グアヤコール等のフェノール類;アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、n−ジプロピルケトン、n−ジプロピルケトン、メチルn−ブチルケトン、メチルiso−ブチルケトン、ジアセチール等のケトン類、キシレン、トリメチルベンゼン、エチルベンゼン、iso−プロピルベンゼン、スチレン、ナフタレン、イソプレン、α−ピネン、イソホロン、などが挙げられる。
(d)安定化されるべき成分の例としては、例えば、着色料または染料;医薬品の有効成分;ポリフェノール;フラボノイド;アルカロイド;酸;ビタミン類などの生理機能物質等が挙げられる。
着色料または染料の例は、下記(1.3)の(h)に記載されているとおりである。
医薬品の有効成分の例としては例えば、コルチコイド、アンドロゲン、エストロゲン、プロゲストゲン、プロトンポンプ阻害剤、5−HT1アンタゴニスト、交感神経遮断薬、交感神経興奮薬、抗コリン作動薬、トランキライザー、抗不安薬、解毒薬、鎮痛薬、カルシウムアンタゴニスト、制吐薬、下垂体または視床下部ホルモン、抗パーキンソン薬、抗ヒスタミン薬、アンギオテンシンIIアンタゴニスト、リドカイン、ニトログリセリン、ニューロキノン拮抗剤、非ステロイド性抗リウマチ薬、ステロイド、強心配糖体、抗凝固薬、ベンゾジアゼピン誘導体、ベンズイミダゾール誘導体、ピペリジン誘導体、ピペラジン誘導体、イミダゾール誘導体、トリアゾール誘導体、有機硝酸塩、プロスタグランジン、オリゴヌクレオチドアンチセンス薬、アセチルサリチル酸、ジクロフェナックナトリウム、イブプロフェン、ナプロキセンナトリウム、ヘパリン、低分子量ヘパリン、アスピリン、クマジン、デキストラン、ペルサンチン、グリベンクラミド、抗ウイルス薬(例えば、3TC、AZT、ddC、ロビリド(loviride)、インジナビル(indinavir)、ネルフィナビル(nelfinavir)、チビラピン(tivirapine)、リトナビル(ritonavir)、スクイナビル(squinavir)、ddlおよびISIS14803)、ルベルゾール(lubeluzole)、アプチガネル(aptiganel)、レマセミド(remacemide)、三硝酸グリセリル、二硝酸イソソルビド、5−一硝酸イソソルビド、四硝酸ペンタエリトリトール、硝酸アミル、プロスタグランジン、抗癌薬(例えば、ISIS3521およびISIS5132)、アントリプチリンHCl、クロミプラミンHCl、フルオキセチン、アモキサピン、ブトリプチリンHCl、アムホテリシン、エコナゾール、フルシトシン、硝酸ミコナゾール、アモキシシリン、セファクロル、セファレキシン、フルクロキサシリンナトリウム、リンコマイシンHCl、クリンダマイシン等が挙げられる。ポリフェノールの例としては例えば、カテキン、タンニン、ウーロン茶ポリフェノール、クロロゲン酸、カカオマスポリフェノール等が挙げられる。フラボノイドの例としては、例えば、アントシアニン、ヘスペリジン、ネオヘスペリジン、ルチン、ナリンジン、ケルセチン、イソフラボンおよびナリンゲニン等が挙げられる。アルカロイドの例としては、例えば、カプサイシン等が挙げられる。酸の例としては、例えば、酢酸、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、フマル酸、酒石酸、アジピン酸等が挙げられる。ビタミン類の例としては、例えば、ビタミンA、ビタミンB、ビタミンB、ビタミンB、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンE、ニコチン酸、ニコチン酸アミド、パントテン酸等が挙げられる。
(e)徐放成分の例としては、例えば、エタノール、殺菌剤、抗菌剤、防虫成分、防カビ成分、におい成分、消臭成分、化粧品成分、生理機能物質(例えば、医薬品の有効成分;ポリフェノール;フラボノイド;アルカロイド;酸;ビタミン類)が挙げられる。殺菌剤、抗菌剤の例は、上記(1.3)の(a)に記載されているとおりである。防虫成分の例は、上記(1.3)の(b)に記載されているとおりである。防カビ成分の例は、下記(1.3)の(j)に記載されているとおりである。におい成分の例は、上記(1.3)の(c)に記載されているとおりである。消臭成分の例は、下記(1.3)の(i)に記載されているとおりである。化粧品成分の例は、下記(1.3)の(g)に記載されているとおりである。医薬品の有効成分;ポリフェノール;フラボノイド;アルカロイド;酸;ビタミン類の例は、上記(1.3)の(d)に記載されるとおりである。
(f)紫外線吸収物質の例としては、例えば、ノニルフェノール;ケイヒ酸、ケイヒ酸誘導体(例えば、オクチルシンナメート、エチル−4−イソプロピルシンナメート、メチル−2,5−ジイソプロピルシンナメート、エチル−2,4−ジイソプロピルシンナメート、メチル−2,4−ジイソプロピルシンナメート、プロピル−p−メトキシシンナメート、イソプロピル−p−メトキシシンナメート、イソアミル−p−メトキシシンナメート、2−エチルヘキシルp−メトキシシンナメート(パラメトキシケイヒ酸オクチル)、2−エトキシエチル−p−メトキシシンナメート(シノキサート)、シクロヘキシル−p−メトキシシンナメート、エチル−α−シアノ−β−フェニルシンナメート、2−エチルヘキシルα−シアノ−β−フェニルシンナメート(オクトクリン)、グリセリルモノ−2−エチルヘキサノイル−ジパラメトキシシンナメート、フェルラ酸及びその誘導体);安息香酸、安息香酸誘導体(例えば、パラアミノ安息香酸、パラアミノ安息香酸モノグリセリンエステル、N,N−ジプロポキシパラアミノ安息香酸エチルエステル、N,N−ジエトキシパラアミノ安息香酸エチルエステル、N,N−ジメチルパラアミノ安息香酸エチルエステル、N,N−ジメチルパラアミノ安息香酸ブチルエステル、およびN,N−ジメチルパラアミノ安息香酸エチルエステル);サリチル酸、サリチル酸誘導体(例えば、アミルサリシレート、メンチルサリシレート、ホモメンチルサリシレート、オクチルサリシレート、フェニルサリシレート、ベンジルサリシレート、およびp−イソプロパノールフェニルサリシレート);ベンゾフェノン、ベンゾフェノン誘導体;フラボノイド(例えば、アントシアニン、ヘスペリジン、ネオヘスペリジン、ルチン、ナリンジン、ケルセチン、イソフラボンおよびナリンゲニン);2−ヒドロキシベンゾトリアゾール誘導体、2−ヒドロキシベンゾフェノン誘導体(例えば、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン(オキシベンゾン−3)、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−4’−メチルベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン−5−スルホン酸塩、4−フェニルベンゾフェノン、2−エチルヘキシル−4’−フェニル−ベンゾフェノン−2−カルボキシレート、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン、4−ヒドロキシ−3−カルボキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−ドデシクロキシベンゾフェノン)、3−(4’−メチルベンジリデン)−d,l−カンファー、3−ベンジリデン−d,l−カンファー、2−フェニル−5−メチルベンゾキサゾール、2,2’−ヒドロキシ−5−メチルフェニルベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5−ジ−t−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−アミフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、ジベンザラジン、ジアニソイルメタン、5−(3,3−ジメチル−2−ノルボルニリデン)−3−ペンタン−2−オン、4−t−ブチルメトキシジベンゾイルメタン、オクチルトリアゾン、ウロカニン酸、1−(3,4−ジメトキシフェニル)−4,4−ジメチル−1,3−ペンタンジオン、ジメトキシベンジリデンジオキソイミダゾリジンプロピオン酸2−エチルヘキシル、フェニルベンズイミダソゾールスルホン酸、テレフタリリデンジカンフルスルホン酸、ドロメトリゾールトリシロキサン、アントラニル酸メチル、ウロカニン酸誘導体、ヒダントイン誘導体、ジベンゾイルメタン誘導体、2,4−ジ−t−ブチルフェニル−3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシベンゾエート、サリチル酸フェニル、2,4−ジ−t−ブチルフェニル−3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシベンゾエートおよびエチル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレートが挙げられる。
(g)化粧品成分の例としては、例えば、保湿成分、美白成分、抗炎症剤、細胞賦活化剤および酸化防止剤が挙げられる。
保湿成分の例としては、例えば、コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸、アデノシン(adenosin)、グリセリン、ブチレングリコール、ヘキシレングリコール、1,3−ブチレングリコール、プロピレングリコール、1,2−ヘキサンジオール、1,2−ペンタンジオール、ヘキサントリオール、ジプロピレングリコール、3−メチル−1,3−ブタンジオール、1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ヘキシレングリコール、ジグリセリン、ポリグリセリン、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコール・プロピレングリコール共重合体等のポリオール類及びその重合体;有機酸(例えば、クエン酸、酒石酸および乳酸);ジエチレングリコールモノエチルエーテル(エトキシジグリコール)、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル等のグリコールアルキルエーテル類;ソルビトール、キシリトール、エリスリトール、マンニトール、マルチトール等の糖アルコール類;エチルグルコシド;メタクリル酸グルコシルエチル重合物;ベタイン(トリメチルグリシン)、プロリン、ヒドロキシプロリン、アルギニン、リジン、セリン、グリシン、アラニン、フェニルアラニン、チロシン、β−アラニン、スレオニン、グルタミン酸、グルタミン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、シスチン、メチオニン、ロイシン、イソロイシン、バリン、トリプトファン、ヒスチジン、タウリン等のアミノ酸類;コラーゲン分解ペプチド、加水分解コラーゲン、塩化ヒドロキシプロピルアンモニウム加水分解コラーゲン、エラスチン分解ペプチド、ケラチン分解ペプチド、加水分解ケラチン、コンキオリン分解ペプチド、加水分解コンキオリン、シルク蛋白分解ペプチド、加水分解シルク、ラウロイル加水分解シルクナトリウム、大豆蛋白分解ペプチド、小麦蛋白分解ペプチド、加水分解小麦蛋白、カゼイン分解ペプチド、アシル化ペプチド、パルミトイルオリゴペプチド、パルミトイルペンタペプチド、パルミトイルテトラペプチド等の蛋白およびペプチド類;天然型セラミド(タイプ1、2、3、4、5、6)、ヒドロキシセラミド、疑似セラミド、スフィンゴ糖脂質、セラミド及び糖セラミド含有エキス等のセラミド類;胎盤抽出液、エアラスチン、コラーゲン、アロエ抽出物、ハマメリス水、ヘチマ水、カモミラエキス、カンゾウエキス、コンフリーエキス、シルクエキス、イザヨイバラエキス、セイヨウノコギリソウエキス、ユーカリエキス、メリロートエキス等の動物抽出物および植物抽出物などが挙げられる。
美白成分の例としては、例えば、アルブチン、α−アルブチン、トラネキサム酸、エラグ酸、アスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム、アスコルビン酸リン酸エステルマグネシウム、アスコルビン酸リン酸二ナトリウム、アスコルビン酸グルコシド、モノステアリン酸アスコルビル、モノパルミチン酸アスコルビル、ジパルミチン酸アスコルビル、テトラ2−ヘキシルデカン酸アスコルビル、アスコルビン酸硫酸エステル二ナトリウム、イオウ、コウジ酸、リノール酸、リノレン酸、乳酸、ルシノール、カミツレエキス、プラセンタエキス、油溶性甘草エキス、クワエキス、シャクヤクエキス、トウキエキス、ワレモコウエキス、マロニエ樹皮エキス、イブキトラノオエッキスなどが挙げられる。
抗炎症剤の例としては、例えば、ε−アミノカプロン酸、アラントイン、塩化リゾチーム、グアイアズレン、グリチルリチン酸とその塩、β−グリチルレチン酸、ヒドロコルチゾンなどが挙げられる。
細胞賦活化剤の例としては、例えば、デオキシリボ核酸及びその塩、アデノシン三リン酸、アデノシン一リン酸などのアデニル酸誘導体及びそれらの塩、リボ核酸及びその塩、サイクリックAMP、サイクリックGMP、フラビンアデニンヌクレオチド、グアニン、アデニン、シトシン、チミン、キサンチン、カフェイン、テオフェリンおよびそれらの塩等の核酸関連物質;幼牛血液抽出液、血清除蛋白抽出物、脾臓抽出物、トリ等の卵成分、鶏冠抽出物、貝殻抽出物、貝肉抽出物、ローヤルゼリー、シルクプロテイン及びその分解物又はそれらの誘導体、ヘモグロビン又はその分解物、ラクトフェリン又はその分解物、イカスミ等の軟体動物抽出物、魚肉抽出物等の哺乳類、鳥類、貝類、昆虫類、魚類、軟体動物類、甲殻類等の動物由来の抽出物;酵母抽出物、乳酸菌抽出物、ビフィズス菌抽出物等の発酵代謝産物等の微生物由来の抽出物;レチノール及びその誘導体(パルミチン酸レチノール、酢酸レチノール等)、レチナール及びその誘導体、デヒドロレチナール、トレチノイン、カロチン等のカロチノイド等、チアミン類(チアミン塩酸塩およびチアミン硫酸塩)、リボフラビン類(リボフラビン、酢酸リボフラビン等)、ピリドキシン類(塩酸ピリドキシン、ピリドキシンジオクタノエート等)、フラビンアデニンヌクレオチド、シアノコバラミン、葉酸類、ニコチン酸類(ニコチン酸アミド、ニコチン酸ベンジル等)、コリン類等のビタミン類;例えば、アカネ科植物(例えば、アカネ、Uncaria gambir Roxb.(例えば、アセンヤク(Uncaria gambir Roxb.の葉および若枝)))、アカブドウ、アカメガシワ、アケビ、アサ、アサガオ、アズキ、アスパラガス、アマチャ、アマチャヅル、アンズ、イタドリ、イチジク、イチョウ、イブキトラノオ、イランイラン、ウスバサイシンおよびその近縁種(例えば、ケイリンサイシン)(例えば、サイシン(ウスバサイシンまたはケイリンサイシンの根茎を付けた根))、ウツボグサ、ウメ、ウワウルシ、ウンシュウミカン、エゾウコギ(例えば、ゴカヒ(エゾウコギの樹皮または根))、エビスグサ、エンジュ、エンドウ、オオムギ、オオバコ、オクラ、オグルマおよびその同属植物(例えば、センプクカ(オグルマまたは同属植物の頭花))、オタネニンジン、オニグルミ、オノニス(例えば、Ononis spinosa)、オミナエシ、オランダイチゴ、オレンジ、カキ、カキドオシ、カシュー(例えば、Anacardium occidentale)、カノコソウ、カラスウリ、カリン、ガラナ、カワラケツメイ(例えば、サンペンズ(カワラケツメイの全草))、キイチゴ、キウイ、キキョウ、キク、キササゲ、ギシギシ、ギムネマ シルベスタ、キュウリ、キンミズヒキ、グアバ、クコ、クズ、クスノキ科の植物(例えば、クスノキ、Cinnamomum cassia Blume(例えば、ケイヒ(Cinnamomum cassia Blumeまたはその他同属植物の樹皮)))、クララ属植物(例えば、クララ(例えば、クジン(Sophora flavescens Aitonの根)、Sophora subprostrala CHUN et T. CHEN(例えば、サンズコン(Sophora subprostrala CHUN et T. CHENの根))))、クリ、クワ類(例えば、マグワ(Morus alba L.)またはその他同属植物(例えば、ソウハクヒ(マグワまたはその他同属植物の根皮)))、ケイケットウ(例えば、Millettia reticulata、Mucuna birdwoodianaなど)、ゲッケイジュ、コガネバナ(Scutellaria baicalensis Georgi)(例えば、オウゴン(scutellaria root))、ゴショイチゴ、コショウ、コーヒー、ゴマノハグサ、コロンボ(Jateorhiza columba、例えば、Jateorhiza columbaの根)、サトウキビ、サンザシ、サザンカ、サンショウ、サフラン、サクラ、ザクロ、シオン、シャクヤク、ショウブ、シラユリ、スギナ、スイカ、ステビア、スモモ、セイヨウキヅタ、セイヨウナシ、セイヨウノコギリソウ、セイヨウネズ、セイヨウワサビ、セキショウ、セリ、セネガ(およびその近縁種(例えば、ヒロハセネガ))、センナ、センブリ、ダイオウ属の植物(例えば、Rheum palmatum、R.tanguticum、R.officanale、R.coreanumおよびそれらの種間雑種(例えば、大黄(Rheum palmatum、R.tanguticum、R.officanale、R.coreanumまたはそれらの種間雑種の根茎)))、ダイダイ、タマリンド、タラノキ、タンポポ、チコリ、チョウジ、チョウセンゴミシ、ツキミソウ、ツボクサ、ツユクサ、ツルドクダミ(例えば、カシュウ(Polygonum multiflorum Thunb.の塊状根))、ツルナ、テウチグルミ、トウガラシ、トウガン、トウキおよびその近縁種(例えば、ホッカイトウキ)、トチュウ、トロロアオイ、ナズナ、ナツミカン、ナツメおよびその近縁種(例えば、タイソウ(ナツメまたはその近縁種の実))、ナンテン、ニガキ、ニンニク、ニンジン、ノコギリソウ、パイナップル、ハイビスカス、パパイヤ、バジル、ハス、ハダカムギ、ハトムギ(例えば、ヨクイニン(ハトムギの種皮を除いた種子))、ハマナス(例えば、マイカイカ(Rosa rugosa flower))、バラ属の植物(例えばノイバラ)(例えば、エイジツ(rose fruit))、ヒオウギ、ピーナツ、ヒキオコシ、ヒシ、ピスタチオ、ヒバ、ビャクレン、ビワ、フキタンポポ、フシノキ、フジバカマ、ブドウ(例えば、ブドウ種子)、ブナノキ、ブルーベリー、フローデマニータ、ボウフウ、ホオズキ、ホオノキ、ボケおよびその近縁種(例えば、ボケおよびクサボケ(例えば、モッカ(ボケまたはクサボケの果実)))、ホップ、マイカイ、マオウ属の植物(例えば、フタマタマオウ(Ephedra distachya)、シナマオウ(E.sinica)、E.intermedia、E.equisetina(例えば、麻黄(E.sinica、E.intermedia、E.equisetinaの地下茎)))、マンゴー、ミシマサイコ、ミソハギ、ミツバ、ミモザ、ムラサキナツフジおよびその近縁種(例えば、ケイケットウ(ムラサキナツフジなどのつる茎))、メハジキ(例えば、ヤクモソウ(メハジキの全草))、メリロート、メロン、モクレン、モモ、モロヘイヤ、ヤクチ(Alpinia oxyphylla)(例えば、益智(Alpinia oxyphyllaの果実))、ヤグルマソウ、ヤシ、ヤシャブシ、ヤドリギ、ヤナギタデ、ヤマゴボウ、ヤマモモ、ユキノシタ、ユズリハ、ヨモギ、ヨロイグサ(例えば、ビャクシン(ヨロイグサの根))、ライムギ、ラカンカ(例えば、羅漢果(Momordicae grosvenori Swingle fruit))、ラン、リュウガン、リョクトウ(例えば、リョクトウのモヤシ)、リンゴ、レタス、レモン、レンギョウ(Forsythia suspensa Vahl)およびその近縁種(例えば、Forsythia viridissima Lindley)(例えば、生薬レンギョウ(レンギョウまたはForsythia viridissima Lindleyの果実))、ローズマリー、海藻、大豆(例えば、豆または大豆モヤシ)、茶、等の植物(または植物材料)由来の抽出物;シイタケ、ヒメマツタケ、マンネンタケ(例えば、霊芝)、チョレイマイタケ(Polyporus umbellatus Fries)(例えば、チョレイ)、マツホド(例えば、ブクリョウ)等のきのこの抽出物;糖蜜由来の抽出物;ヒノキチオール、セファランチン等の植物由来成分;リノール酸、α−リノレン酸、γ−リノレン酸、エイコサペンタエン酸及びそれらの誘導体;エストラジオール及びその誘導体並びにそれらの塩;グリコール酸、コハク酸、乳酸、サリチル酸等の有機酸及びそれらの誘導体並びにそれらの塩などが挙げられる。
酸化防止剤の例としては、例えば、トコフェロール、ノルジヒドログアヤレチン酸、ブチルヒドロキシアニソール、ジブチルヒドロキシトルエン、没食子酸プロピル、没食子酸オクチル、亜硫酸水素ナトリウム、エリソルビン酸、エリソルビン酸ナトリウム、チオジプロピオン酸ジラウリル、トリルビグアナイド、p−ヒドロキシアニソール、パルミチン酸アスコルビル、ステアリン酸アスコルビルなどが挙げられる。
(h)着色料または染料の例としては、例えば、クチナシ色素、ベニバナ色素、ウコン色素、ベニコウジ色素、カロテン、アナトー色素、パプリカ色素、デュナリエラ色素、パーム油色素、シタン色素、ビートレッド、コチニール色素、ラック色素、シソ色素、アカキャベツ色素、アカダイコン色素、ムラサキイモ色素、ムラサキトウモロコシ色素、ブドウ果皮色素、ブドウ果汁色素、ブルーベリー色素、エルダーベリー色素、クロロフィル、スピルリナ色素、カカオ色素、タマリンド色素、カキ色素、コウリャン色素、炭末色素、アカネ色素、ボイセンベリー色素、ハイビスカス色素およびタマネギ色素等の食用天然色素;黄色4号、黄色5号、赤色2号、赤色3号、赤色40号、赤色102号、赤色104号、赤色105号、赤色106号、青色1号、青色2号等の食用合成色素;褐色201号、黒色401号、紫色201号、紫色401号、青色1号、青色201号、青色202号、青色203号、青色204号、青色205号、青色403号、青色404号、緑色201号、緑色202号、緑色204号、緑色205号、緑色3号、緑色401号、緑色402号、赤色3号、赤色104号、赤色106号、赤色201号、赤色202号、赤色203号、赤色204号、赤色205号、赤色206号、赤色207号、赤色208号、赤色213号、赤色214号、赤色215号、赤色218号、赤色219号、赤色220号、赤色221号、赤色223号、赤色225号、赤色226号、赤色227号、赤色228号、赤色230号、赤色231号、赤色232号、赤色401号、赤色404号、赤色405号、赤色501号、赤色502号、赤色503号、赤色504号、赤色505号、赤色506号、橙色201号、橙色203号、橙色204号、橙色205号、橙色206号、橙色207号、橙色401号、橙色402号、橙色403号、黄色4号、黄色5号、黄色201号、黄色202号、黄色203号、黄色204号、黄色205号、黄色401号、黄色402号、黄色403−1号、黄色404号、黄色405号、黄色406号、黄色407号等の非食用合成色素;Acid Red 14等の酸性染料;Arianor Sienna Brown、Arianor Madder Red、Arianor Steel Blue、Arianor Straw Yellow等の塩基染料;HC Yellow 2、HC Yellow 5、HC Red 3、4−ヒドロキシプロピルアミノ−3−ニトロフェノール、N,N’−ビス(2−ヒドロキシエチル)−2−ニトロ−p−フェニレンジアミン、HC Blue 2、Basic Blue 26等のニトロ染料;分散染料;表面処理有機顔料;アスタキサンチン、アリザリン等のアントラキノン類;アントシアニジン、β−カロチン、カテナール、カプサンチン、カルコン、カルサミン、クエルセチン、クロシン、クロロフィル、クルクミン、コチニール、シコニン、ビキシン、フラボン類、ベタシアニジン、ヘナ、ヘモグロビン、リコピン、リボフラビン、ルチン等の天然色素および天然染料;p−フェニレンジアミン、トルエン−2,5−ジアミン、o−,m−,若しくはp−アミノフェノール、m−フェニレンジアミン、5−アミノ−2−メチルフェノール、レゾルシン、1−ナフトール、2,6−ジアミノピリジン等及びその塩等の酸化染料中間体及びカップラー;インドリン等の自動酸化型染料;ジヒドロキシアセトンなどが挙げられる。
(i)消臭成分の例としては、例えば、ワサビ、カラシナ、レンギョウ、ヒイラギモクセイ、キリ、フキ、ツワブキ、ライラック、カキノキ、コナラ、ヤマナラシ、シダ、コバノトネリ、茶等の植物由来抽出物;マッシュルーム等のきのこ由来抽出物;クエン酸,リンゴ酸,アジピン酸,フマル酸,乳酸,グルコン酸,マレイン酸およびコハク酸等の有機酸;緑茶フラボノイド、ラウリルメタクリレート、ゲラニルクロトネート、ミリスチル酸アセトフェノン、パラメチルアセトフェノンベンズアルデヒド、酢酸ベンジル、プロピオン酸ベンジル、アミルシンナミックアルデヒド、アニシックアルデヒド、ジフェニルオキサイド、安息香酸メチル、安息香酸エチル、フェニル酢酸メチル、フェニル酢酸エチル、ネオリン、サフロール、セダウッド油、セダ菜油、シトロネラ油、ラバンテン油、ペテイグレイン油、レモングラス油、3,4−ヘキサンジオン、2,3−ヘプタンジオン、5−メチル−2,3−ヘキサンジオン、2,3−ペンタンジオン、3−メチルシクロペンタン−1,2−ジオン、3,4−ジメチルシクロペンタン−1,2−ジオン、3,5−ジメチルシクロペンタン−1,2−ジオン、シクロヘキサン−1,2−ジオン、マロン酸ジエチル、酒石酸ジエチル、マンデル酸ジエチル2−メチル−3−ブテン−2−オール、銅クロロフィルなどが挙げられる。
(j)防カビ成分の例としては、例えば、チモール、ヒノキチオール、d−リモネン、チアベンダゾール、ベンゾイミダゾリルカルバミン酸メチル、α−ブロムシンナミックアルデヒド、パラクロロメタキシレノール、オルトフェニルフェノール、N−(フルオロジクロロメチルチオ)−フタルイミド、N−ジクロロフルオロメチルチオ−N’,N’−ジメチル−N−フェニルスルファミド;3−ヨード−2−プロピニルブチルカーバメイト、3−ブロモ−2,3−ジヨード−2−プロペニルエチルカーボナート、2,3,3−トリヨードアリルアルコール、ヨードプロパルギルアルコール、3−ヨードプロパルギル−4−クロロフェニルオキシメチルエーテル、ジヨードメチル−p−トリルスルホン等の有機ヨウ素化合物などが挙げられる。
(2.アミロース含有レーヨン繊維の製造法)
(2.1)アミロースのアルカリ水溶液
本発明の製造法においては、アミロースのアルカリ水溶液が作製される。アルカリ溶液中のアミロースの量は、好ましくは約1重量%以上であり、より好ましくは約5重量%以上であり、さらに好ましくは約10重量%以上であり、最も好ましくは約15重量%以上である。アルカリ溶液中のアミロースの量は、好ましくは約60重量%以下であり、より好ましくは約50重量%以下であり、さらに好ましくは約40重量%以下であり、さらに好ましくは約30重量%以下であり、さらに好ましくは約25重量%以下であり、最も好ましくは約20重量%以下である。アミロース濃度が低すぎると、ビスコースに添加される水量が多くなり、紡糸性が悪くなる場合がある。アミロース濃度が高すぎると、ビスコース中に均一にアミロースを混合しにくくなる場合がある。
アルカリ基剤は、通常のビスコースの製造に使用される任意のアルカリ基剤が用いられ得る。アルカリ基剤は、水に溶解するとアルカリ性を呈する任意の物質である。アルカリ基剤の例としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、炭酸ナトリウムおよび炭酸カリウムが挙げられる。アルカリ基剤は、好ましくは、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムである。なお、実際には水溶液中ではアルカリ基剤は、イオンに解離した状態で存在するが、本明細書中ではこのようにイオンに解離した状態を含めてアルカリ基剤が水溶液中に存在すると記載する。例えば、水酸化ナトリウムは、水溶液中では水酸化物イオンとナトリウムイオンとに解離するが、この水溶液中に水酸化ナトリウムが存在すると記載する。
アルカリ基剤は、アルカリ液中で任意の濃度で用いられ得る。アルカリ基材の濃度は、約0.25規定以上約10規定以下の濃度が好ましく、約0.5規定以上約2規定以下の濃度がより好ましい。アルカリ基剤の濃度が低すぎると、アミロースが溶解しない場合がある。アルカリ基剤の濃度が高すぎると、アミロースの溶液が褐変するなどの化学変化をおこす場合がある。
アミロースのアルカリ水溶液は、アミロース粉末を水に分散後、アルカリを添加して攪拌することによって調製され得る。アミロースは非常に結晶化しやすい性質を有しており、アミロース粉末の状態では、アミロース分子間が強く結合している。そのため、アミロース粉末の状態でビスコースと混合してしまうと、アミロース含有レーヨンになったときにアミロースは包接作用を十分に発揮できない状態になりやすい。そのため、本発明においては、アミロースをあらかじめアルカリ水溶液に十分に溶かすことが重要である。アミロース粉末をアルカリ水溶液に溶かすことにより、アミロース分子間の結合がほぐれ、アミロース分子がランダムな構造を有するようになり、アミロース含有レーヨンとなったときにアミロースが包接作用を十分に発揮できる状態になることができる。
(2.2)ビスコース
本発明においては、当該分野で公知の従来のビスコースが用いられ得る。アミロースのアルカリ水溶液と混合することにより希釈されることを考えて濃度が適切に調節されることが好ましい。
(2.3)アミロースのアルカリ水溶液とビスコースとの混合
上記アミロースのアルカリ水溶液とビスコースとは、当該分野で公知の任意の方法によって混合され得る。混合方法は特に限定されない。ビスコース中にアミロースのアルカリ水溶液を添加および混合するための装置としては、インジェクション型またはホモミキサー型の装置を用いて行えばよい。添加および混合の時期についても任意でよく、たとえば、ビスコースを脱泡した後でも、脱泡する前に行い添加及び混合後に脱泡してもよい。
アミロースのアルカリ水溶液とビスコースとの混合比率は適切に設定され得る。例えば、得られる混合液中のセルロース成分とアミロースの重量の合計を100重量%としたときに、アミロースの量が約5重量%以上であることが好ましく、約10重量%以上であることがより好ましく、約15重量%以上であることがさらに好ましく、約20重量%以上であることが最も好ましい。例えば、得られる混合液中のセルロース成分とアミロースの重量の合計を100重量%としたときに、アミロースの量が約70重量%以下であることが好ましく、約60重量%以下であることがより好ましく、約50重量%以下であることがさらに好ましく、約40重量%以下であることが最も好ましい。セルロース成分に対するアミロースの量が多いほど包接作用が高くなるため好ましいが、アミロースの量が多すぎると濾過性が悪くなったり、紡糸性に悪影響を与えたり、繊維強度が低下したりする場合がある。
(2.4)紡糸
アミロースを含有するビスコース液は、従来公知の方法で紡糸されてアミロース含有レーヨントウが得られ得る。紡糸後はトウの形態となっているが、トウの形態のまま、あるいはトウを任意の繊維長となるように切断し、その後、従来公知の方法で精練すれば機能性レーヨン繊維が得られる。アミロース含有レーヨントウを後加工時に切断する場合もある。
(2.5)加熱冷却処理
得られたアミロース含有レーヨン繊維は、例えば、その繊維を製造した後に、溶媒中で加熱工程および冷却工程を行うことにより、アミロースの包接力が向上され得る。
使用される溶媒の例としては、水、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、イソプロパノール、アセトン、アセトニトリル、プロピオニトリル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン、γ−ブチルラクトン、プロピレンカーボネート、スルホラン、ニトロメタン、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ジメチルスルホン、N−メチルピロリドン、ベンゼン、トルエン、キシレン、塩化メチレン、クロロホルム、ジクロロエタンが挙げられる。
水に有機溶媒を混合した溶液が好ましい。有機溶媒の例としてはメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、イソプロパノール、アセトン、アセトニトリル、プロピオニトリル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン、γ−ブチルラクトン、プロピレンカーボネート、スルホラン、ニトロメタン、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ジメチルスルホン、N−メチルピロリドン、ベンゼン、トルエン、キシレン、塩化メチレン、クロロホルム、ジクロロエタンが挙げられる。
水に対する有機溶媒の添加量は水10容量部に対し約0.5容量部以上、約1容量部以上、約2容量部以上または約4容量部以上などであり得る。有機溶媒の添加量は、有機溶媒の水への溶解度の上限まで添加することができる。水に対する有機溶媒の添加量は、水10容量部に対し、例えば、約100容量部以下、約95容量部以下、約90容量部以下、約80容量部以下、約60容量部以下、約40容量部以下、約20容量部以下などであり得る。
加熱温度および加熱時間は特に限定されない。加熱温度は例えば、約80℃以上、約90℃以上、約100℃以上、約110℃以上、約120℃以上または約130℃以上などであり得る。加熱温度は、アミロースの状態が変化する以外は特に有害な影響がない温度であれば任意の温度であり得る。加熱温度は、例えば、約200℃以下、約180℃以下、約160℃以下、約140℃以下などであり得る。加熱時間は、例えば、約5分間以上、約10分間以上、約20分間以上、約30分間以上、約40分間以上、約50分間以上、約60分間(1時間)以上、約2時間以上、約3時間以上、約4時間以上、約5時間以上、約6時間以上、約8時間以上、約12時間以上、約24時間以上などであり得る。加熱時間は、例えば、約1ヶ月以下、約1週間以下、約3日間以下、約2日間以下、約1日(24時間)以下、約18時間以下、約16時間以下、約14時間以下、約12時間以下、約10時間以下、約8時間以下、約6時間以下、約5時間以下、約4時間以下、約3時間以下、約2時間以下、約1時間以下、約30分間以下、約20分間以下、約10分間以下などであり得る。
加熱後、アミロース含有レーヨンは、所定の温度(例えば、室温)まで冷却される。この所定の温度は、例えば、約10℃以上、約15℃以上、約20℃以上、約25℃以上などであり得る。この所定の温度は、例えば、約30℃以下、約25℃以下、約20℃以下などであり得る。特定の実施形態では、加熱温度から所定の温度まで冷却するのは、放冷によって行われてもよい。すなわち、アミロース含有レーヨンの周囲温度によって冷却に要する時間が異なる。別の特定の実施形態では、加熱温度から所定の温度まで冷却するのはなるべく短時間であることが好ましい。この実施形態では、冷却に要する時間は、例えば、約10秒間以上、約20秒間以上、約30秒間以上、約1分間以上、約5分間以上などであり得る。短時間に冷却するのが好適な実施形態では、冷却に要する時間は、例えば、約5時間以下、約4時間以下、約3時間以下、約2時間以下、約1時間以下などであり得る。
この加熱工程および冷却工程は、アミロース含有レーヨンの紡糸後、乾燥する前に行ってもよく、あるいは紡糸後乾燥した後に行ってもよい。この加熱冷却処理後、アミロース含有レーヨン繊維は、必要に応じて、常法に従って乾燥され得る。
(2.6)アルカリ処理
得られたアミロース含有レーヨン繊維は、例えば、アルカリで処理した後中和することにより、アミロースの包接力が向上され得る。
アルカリ処理に使用され得るアルカリ基剤は、任意のアルカリ基剤であり得る。アルカリ基剤の例としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムおよび炭酸カルシウムが挙げられる。アルカリ基剤は、好ましくは、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、リン酸ナトリウムまたは炭酸ナトリウムである。アルカリ基剤はまた、これらアルカリの混合物でもよい。
中和処理に使用され得る酸は、任意の酸であり得る。酸の例としては、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、炭酸、炭酸水素酸、過塩素酸などの無機酸;および酢酸、プロピオン酸、乳酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、リンゴ酸、クエン酸、アスコルビン酸などの有機酸が挙げられる。また、これら酸の混合物でもよい。
アルカリ処理および酸処理は、好ましくは、アルカリ水溶液または酸水溶液の浴にアミロース含有レーヨンを浸漬することによって行われるが、場合によっては、スプレー、スタンプなどの任意の他の方法によって行われ得る。
アルカリ水溶液の濃度は、アルカリ基剤の種類および濃度によって変動する。アルカリ水溶液の濃度は、好ましくは約1×10−5規定以上であり、より好ましくは約1×10−4規定以上であり、より好ましくは約1×10−3規定以上であり、より好ましくは約1×10−2規定以上であり、さらに好ましくは約1×10−1規定以上である。アルカリ水溶液の濃度は、好ましくは約20規定以下であり、より好ましくは約10規定以下であり、より好ましくは約5規定以下であり、さらに好ましくは約1規定以下である。
酸水溶液の濃度は、酸の種類および濃度によって変動する。酸水溶液の濃度は、好ましくは約1×10−5規定以上であり、より好ましくは約1×10−4規定以上であり、より好ましくは約1×10−3規定以上であり、より好ましくは約1×10−2規定以上であり、さらに好ましくは約1×10−1規定以上である。酸水溶液の濃度は、好ましくは約20規定以下であり、より好ましくは約10規定以下であり、より好ましくは約5規定以下であり、さらに好ましくは約1規定以下である。
アルカリ処理時および酸処理時のアルカリ水溶液または酸水溶液の温度は特に限定されない。アルカリ水溶液または酸水溶液の温度は、例えば、約120℃以下、約110℃以下、約100℃以下、約90℃以下、約80℃以下、約70℃以下、約60℃以下、約50℃以下、約40℃以下などであり得る。アルカリ水溶液または酸水溶液の温度は、例えば、約0℃以上、約5℃以上、約10℃以上、約15℃以上、約20℃以上、約25℃以上、約30℃以上、約35℃以上、約40℃以上、約50℃以上などであり得る。アルカリ処理および酸処理の加熱時間は、それぞれ、例えば、約10分間以上、約20分間以上、約30分間以上、約40分間以上、約50分間以上、約60分間(1時間)以上、約2時間以上、約3時間以上、約4時間以上、約5時間以上、約6時間以上、約8時間以上、約12時間以上、約24時間以上などであり得る。アルカリ処理および酸処理の加熱時間は、例えば、約1ヶ月以下、約1週間以下、約3日間以下、約2日間以下、約1日(24時間)以下、約18時間以下、約16時間以下、約14時間以下、約12時間以下、約10時間以下、約8時間以下、約6時間以下、約5時間以下、約4時間以下、約3時間以下、約2時間以下、約1時間以下、約30分間以下、約20分間以下、約10分間以下などであり得る。
このアルカリ処理は、アミロース含有レーヨンの紡糸後、乾燥する前に行ってもよく、あるいは紡糸後乾燥した後に行ってもよい。このアルカリ処理後、アミロース含有レーヨン繊維は、必要に応じて、常法に従って乾燥され得る。
以上のようにして、十分な包接機能を有する機能性レーヨン繊維を得ることができる。なお、本発明でいうレーヨン繊維とは、ビスコースレーヨン繊維だけではなく、強力レーヨン繊維、高強力レーヨン繊維、ポリノジック繊維、HWM(ハイウエットモジュラス)繊維、キュプラ繊維などの再生セルロース繊維をも含む意味で用いられている。
(3.アミロース含有レーヨン繊維)
本発明のアミロース含有レーヨン繊維は、レーヨン繊維中にアミロースが分散および保持されている。ここで、レーヨン繊維中でアミロースはほぼ均一に分散および保持されていると考えられる。
レーヨン繊維中に分散および保持されているアミロースの量は、アミロース含有レーヨン繊維の製造においてビスコース中のセルロースとアミロースとの混合比を変更することにより、任意に設定され得る。レーヨン繊維中に分散および保持されているアミロースの量は、レーヨン繊維中のセルロースとアミロースの量の合計を100重量%としたときに、好ましくは約1重量%以上であり、より好ましくは約5重量%以上であり、さらに好ましくは約10重量%以上である。レーヨン繊維中に分散および保持されているアミロースの量は、レーヨン繊維中のセルロースとアミロースの量の合計を100重量%としたときに、好ましくは約60重量%以下であり、より好ましくは約50重量%以下であり、より好ましくは約40重量%以下であり、より好ましくは約30重量%以下であり、さらに好ましくは約20重量%以下である。レーヨン繊維中に分散および保持されているアミロースの量が少なすぎると、目的の効果が十分得られない場合がある。レーヨン繊維中に分散および保持されているアミロースの量が多すぎるとビスコースの粘度が上昇し、レーヨン繊維の製造を安定して行いにくくなったり、レーヨン繊維の強度、伸度などの物性が低下したりする場合がある。
アミロース含有レーヨン繊維は、上記(2.5)に記載の通りの加熱冷却処理および(2.6)に記載の通りのアルカリ処理のうちの少なくとも1つが施されることが好ましい。加熱冷却処理またはアルカリ処理を施すことにより、アミロースの包接力が向上し得るからである。
特定の実施形態では、本発明のアミロース含有レーヨンは、第4級アンモニウム塩化合物を含まず、第4級アンモニウム塩化合物によって処理されていない。
本発明のアミロース含有レーヨンは、ゲスト物質を包接していない状態またはゲスト物質を包接した状態のいずれかの状態にある。ゲスト物質を包接していないアミロース含有レーヨンは、アミロースによって包接され得る物質と接触すると、その物質を包接する。ゲスト物質を包接した状態のアミロース含有レーヨンは、通常の包接化合物と同様に、熱、水分などの変化によってゲスト物質を放出し得る。
(3.1)洗浄によりアミロースが実質的に溶出しない
本発明のアミロース含有レーヨン繊維は、洗浄によりアミロースが実質的に溶出しない。本明細書中で使用される場合、用語「洗浄によりアミロースが実質的に溶出しない」とは、洗浄により溶出するアミロースの量がアミロース含有レーヨン繊維中に含まれるアミロースのうちの10重量%以下であることを意味する。アミロース含有レーヨン繊維からのアミロースの溶出しやすさは、以下の条件で決定されることが好ましい:アミロース含有レーヨン繊維を40倍量の洗濯液(0.75mg/mLの洗剤水溶液。洗剤として例えば、ライオン株式会社製トップ(24%界面活性剤(アルファスルホ脂肪酸エステルナトリウム、脂肪酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル)、その他成分としてアルカリ剤(炭酸塩)、溶解促進剤、酵素、蛍光増白剤、漂白剤含有)に3時間浸漬した後濾過フィルターで12,000×gにて4分間遠心濾過して得られた濾液中のアミロース量を測定し、溶出したアミロースの割合を計算する。
この条件でのアミロースの溶出量は、アミロース含有レーヨン繊維中に含まれるアミロースのうちの約10重量%以下であることが好ましく、約8重量%以下であることがより好ましく、約5重量%以下であることがなおさらに好ましく、約3重量%以下であることが特に好ましく、約1重量%以下であることが最も好ましい。約0.5重量%以下、約0.4重量%以下、約0.3重量%以下、約0.2重量%以下、約0.1重量%以下、約0.05重量%以下、約0.01重量%以下などであることも非常に好ましい。
(3.2)ゲスト物質を包接する能力
本明細書中では、用語「ゲスト物質を包接する能力を有する」とは、アミロースがゲスト物質を包接できる状態にあることをいう。包接とは、分子内包接のほか分子間包接も含む。分子内包接とはアミロース1分子にゲスト物質が包接される現象をいう。分子間包接とは複数のアミロース分子間またはアミロース分子とセルロース分子の間にゲスト物質が包接される現象をいう。
天然および合成のアミロースには、A型、B型、V型と呼ばれる3種の結晶形が存在する。天然澱粉より抽出および精製される際の植物の種類、抽出溶媒、沈殿剤などの違いにより結晶形が異なる。A型アミロースは、小麦、トウモロコシなどの穀類澱粉から得られる。B型アミロースは、馬鈴薯、甘藷などの芋類澱粉から得られる。A型アミロースおよびB型アミロースはいずれも、α−1,4−グルカン鎖が平行に2重らせんをとる構造を示す。それに対し、V型アミロースは、天然澱粉にエタノール、ブタノールなどの沈殿剤を加えることによって得られる。V型アミロースは、α−1,4−グルカン鎖が1重らせんをとる構造を示す。粉末状態のアミロースは、A型アミロースおよびB型アミロースの場合、分子内包接力がないが、V型アミロースは分子内包接力を有する。一方、レーヨン繊維中に含有されたアミロースでは、A型アミロースおよびB型アミロースは分子間包接力を有すると考えられ、V型アミロースは分子内包接力および分子間包接力をともに有すると考えられる。
また、非晶質のアミロースも包接力を示し得る。このようなアミロースはゲスト物質が存在すると特定の構造をとり、包接作用を発揮できる状態に変化すると考えられる。
アミロースの結晶形は、当該分野で公知の方法によって決定され得る。例えば、国際公開第2006/082968号パンフレットの記載に従ってX線回折を用いて決定することができる。簡便には、アミロースがノニルフェノールを包接するかどうかを試験することによってアミロースが包接作用を発揮できる状態にあるか否かを決定することができる。包接作用を発揮できる状態にあるアミロースは、機能可能なアミロースとも呼ばれる。
(3.3)アミロースの包接力の測定
本発明のアミロース含有レーヨンの包接力は、ゲスト物質としてノニルフェノールを用いることで測定する。
アミロース含有レーヨン繊維50mgを、濃度100ppmのノニルフェノールを含む50%メタノール水溶液3mLに25℃で3時間浸漬させることにより、アミロース含有レーヨン繊維にノニルフェノールを含浸させる。このアミロース含有レーヨン繊維をカラムにつめ、10%メタノール水溶液5mLで2回洗浄する。包接されたノニルフェノールをメタノール5mLで2回溶出し、溶出液をまとめて回収する。溶出液中のノニルフェノール量をHPLCで定量し、包接されたノニルフェノール量を求める。アミロース含有レーヨンの包接力は以下の式で定義する。
液体クロマトグラフィーの条件は例えば以下のとおり:
カラムとしてTSKgel ODS−100Z(TOSOH製)を用い、検出器としてUV検出器SPD−6A(島津製作所製)を用い、送液ポンプとしてLC−6A(島津製作所製)を用いる。カラムを40℃に保ち、溶離液として80%メタノールを流速1.0mL/分で用いて分析する。
10%メタノール水溶液での洗浄において、アミロースを含まないこと以外はアミロース含有レーヨン繊維と同じであるコントロールのレーヨン繊維に吸着したノニルフェノールはすべて溶出される。そこで、コントロールのレーヨン繊維が準備できるときは、以下の方法で包接力を求めることもできる。
アミロース含有レーヨン繊維およびアミロースを含まないコントロールのレーヨン繊維50mgを、濃度100ppmのノニルフェノールを含む50%メタノール水溶液3mLに25℃で3時間浸漬させることにより、各レーヨン繊維にノニルフェノールを含浸させる。レーヨン繊維を浸漬させる前後のこの水溶液中のノニルフェノール濃度を液体クロマトグラフィーで測定する。浸漬前後のノニルフェノールの減少量から、ノニルフェノール吸着率(%)を以下の式で求める。
アミロース含有レーヨンの包接力は、以下の式で定義する。
アミロースはノニルフェノールを包接することはできるが吸着することはできないので、アミロースの包接力をこの式によって計算することができる。
(4.本発明のアミロース含有レーヨンの利用形態)
本発明のアミロース含有レーヨン繊維は、種々の形態で利用され得る。本発明のアミロース含有レーヨン繊維は、そのままの綿状で、または単独でもしくは他の繊維と混紡して糸として、または編織物、不織布(紙状の湿式不織布を含む)などの布帛として、衣料、カーテン、寝具、障子紙、壁紙、帽子、カーペット、ソファの表皮材、その他の消臭グッズなどとして好適に用いることができる。本発明のアミロース含有レーヨン繊維は、通常のレーヨン繊維と同じように様々な2次加工品に利用できる。このような2次加工品には、綿(わた)、糸、不織布、布、紙などがある。アミロース含有レーヨン繊維からこれらの二次加工品を製造する方法は当該分野で公知である。例えば、アミロース含有レーヨン繊維から紙を製造する場合には、短い繊維に切断したアミロース含有レーヨン繊維を通常の紙の原料と混合して、または短いアミロース含有レーヨン繊維を単独で抄紙することにより、アミロース含有レーヨン繊維から紙が製造され得る。さらにこれら2次加工品をさらに高度に加工した、衣類、ファブリック、フィルター、化粧品用加工品、医療用品、日用品、包装用品、生理用品などの衛生材料などの製品にも利用できる。ファブリックとは、生地、織物などを使用した製品のことであり、インテリア産業では、生地および織物の総称から少し広い意味で用いられることが多く、カーテン、テーブルクロス、椅子およびソファの張り布地、クッション、ベッドカバーなど、布を使ったものを全般にさし、布の壁装材をも包含する。
(5.本発明の利用目的)
本発明のアミロース含有レーヨン繊維の利用目的は、大きく以下の二つに分類することが出来る。(1)ゲスト物質を包接させずにそのまま利用する方法と、(2)ゲスト物質を包接させた状態で利用する方法である。
(5.1)ゲスト物質を包接させずにそのまま利用する方法
ゲスト物質を包接させずにそのまま利用する方法においては、アミロースが様々な物質を包接する機能を、(A)消臭、(B)濃縮(回収)、(C)除去、(D)精製、などの目的に利用することができる。以下、それぞれの利用目的について説明する。
(A)消臭目的:
「消臭」とは、におい成分を捕集する(とじこめる)ことを意味する。捕集できるにおい成分の例は、(1.3)の(c)に記載されるとおりである。消臭目的での具体的な製品例は、消臭機能付ペットシーツ、消臭機能付衣類、消臭機能付衛生用品、消臭機能付寝具、空気清浄機用フィルター、壁紙などが挙げられる。
(B)濃縮(回収)目的:
「濃縮」とは、希薄な状態に存在しているターゲット物質を捕集して濃度を上昇させることを意味している。濃縮されるターゲット物質は、アミロースに包接可能な物質であれば、どのような物質であってもよい。ターゲット物質の例は、(1.3)に記載されるとおりである。濃縮目的での具体的な製品例としては、これらのターゲット物質の回収用フィルターおよびカラム(例えば、界面活性剤回収用フィルターおよびカラム、脂肪酸回収用フィルターおよびカラム、生理機能物質(例えば、医薬品の有効成分;ポリフェノール;フラボノイド;アルカロイド;酸;ビタミン類)回収用フィルターおよびカラム、アルキル化合物回収用フィルターおよびカラムなど)が挙げられる。また、アミロース含有レーヨン繊維をそのまま、混合物を含む容器などに入れ、目的物質を吸着(包接)させた後アミロース含有レーヨン繊維を回収し、それから目的物質を溶出させて回収するというバッチ式の使用方法もある。
(C)除去目的:
「除去」とは、ターゲット物質または製品に混入している夾雑物質を捕集して除去することを意味している。除去されるターゲット物質および夾雑物質は、アミロースに包接可能な物質であれば、どのような物質であってもよい。除去されるターゲット物質および夾雑物質の例は、(1.3)に記載されるとおりである。除去目的での具体的な製品例としては、タールまたはニコチン除去フィルター、排気ガス成分(例えばピレン化合物)除去用フィルター、水浄化用フィルターおよびカラム、空気清浄用フィルター、マスク、クリーニング製品、パーソナル洗浄製品などが挙げられる。また、アミロース含有レーヨン繊維をそのまま、製品を含む容器などに入れ、夾雑物質を除去するという使用方法もある。
(D)精製目的:
「精製」とは、混合物から特定の物質を精製して純粋な物質にすることを意味している。精製される物質は、アミロースに包接可能な物質であれば、どのような物質であってもよい。精製される物質の例は、(1.3)に記載されるとおりである。精製目的での具体的な製品例としては、これらのターゲット物質の精製用フィルターおよびカラム(例えば、界面活性剤精製用フィルターおよびカラム、脂肪酸精製用フィルターおよびカラム、生理機能物質(例えば、医薬品の有効成分;ポリフェノール;フラボノイド;アルカロイド;酸;ビタミン類)精製用フィルターおよびカラム、アルキル化合物精製用フィルターおよびカラムなどが挙げられる。また、アミロース含有レーヨン繊維をそのまま、混合物を含む容器などに入れ、目的物質を吸着(包接)させた後アミロース含有レーヨン繊維を回収し、それから目的物質を溶出させて回収するというバッチ式の使用方法もある。
(5.2)ゲスト物質を包接させた状態で利用する方法
ゲスト物質を包接させた状態で利用する方法においては、様々なゲスト物質を工夫することにより(E)殺菌または抗菌、(F)防虫または防カビ、(G)付香または消臭、(H)安定化、(I)徐放、(J)紫外線防止、(K)化粧機能の付与、(L)医療用機能の付与、などの目的に利用することができる。以下、それぞれの利用目的について説明する。
(E)殺菌目的または抗菌目的:
「殺菌」とは、微生物を殺すことをいう。「抗菌」とは、微生物の増殖を抑制または阻止することをいう。微生物とは、顕微鏡的大きさの生物をいう。微生物の例としては、細菌、真菌(例えば、酵母)、原生動物、ウイルスなどが挙げられる。殺菌または抗菌目的の製品は、その製品表面または製品内部において、微生物を殺したり、増殖できなくしたりすることを目的とする製品である。
この目的のためにアミロース含有レーヨン繊維に包接させるゲスト物質の例は、上記(1.3)の(a)に記載されるとおりである。
殺菌/抗菌目的の具体的な製品例としては、衛生用品(マスク、手袋、エプロン、帽子、枕カバー、座席の頭部カバー、ウェットティッシュ、ふきん、靴の中敷、靴の脱臭、衣類カバーなど)、壁の中の建材、壁紙、ガーゼ、包帯、めん棒、寝具(枕カバー、シーツ、布団カバー、枕または布団の綿など)、インテリア用品(カーテン、障子、ソファカバー、玄関マット、クッションの中の綿など)、台所または風呂またはトイレ用品(ウェットティッシュ、便座カバー、便座マット、浴槽マット、台所マットなど)が挙げられる。
(F)防虫目的または防カビ目的:
「防虫」とは、虫を寄せ付けないことおよび虫がつくのを防ぐことである。「防カビ」とは、カビの繁殖を防ぐことである。この目的のためにアミロース含有レーヨン繊維に包接させるゲスト物質の例としては、防虫剤および防カビ剤が挙げられる。防虫剤の例は、上記(1.3)の(b)に記載されるとおりである。防カビ剤の例は、上記(1.3)の(j)に記載されるとおりである。
具体的な製品例としては、防虫シート、防虫マット、防虫カーテン、防虫服、防カビシート、防カビマット、防カビカーテン、防カビ服などが挙げられる。
(G)付香目的または消臭目的:
「付香」とは、香味成分(香料)を添加して着香することである。「消臭」とは、においを消すことである。
付香目的のためにアミロース含有レーヨン繊維に包接させるゲスト物質の例は、上記(1.3)の(c)に記載されるとおりである。
消臭目的のためにアミロース含有レーヨン繊維に包接させるゲスト物質の例としては、消臭薬剤が挙げられる。消臭薬剤の例は、上記(1.3)の(i)に記載されるとおりである。
付香目的および消臭目的の具体的な製品例としては、衣料品、衛生用品(例えば、マスク、手袋、エプロン、帽子、枕カバー、座席の頭部カバー、ウェットティッシュ、ふきん、靴の中敷、靴の脱臭、衣類カバーなど)、壁の中の建材、壁紙、ガーゼ、包帯、めん棒、寝具(例えば、枕カバー、シーツ、布団カバー、枕または布団の綿など)、インテリア用品(例えば、カーテン、障子、ソファカバー、玄関マット、クッションの中の綿など)、台所または風呂またはトイレ用品(例えば、ウェットティッシュ、便座カバー、便座マット、浴槽マット、台所マットなど)などが挙げられる。
(H)安定化目的:
「安定化」とは、単独では不安定で分解または変性する物質の分解または変性を防止することをいう。単独のままでは不安定な物質を包接することにより、その物質が安定化されて、単独の場合よりも長期に保存され得る。この目的のためにアミロース含有レーヨン繊維に包接させるゲスト物質の例としては、光、紫外線、熱、酸素などにより分解されやすく、アミロースに包接され得る物質が挙げられる。
このようなゲスト物質の例は、上記(1.3)の(d)に記載されるとおりである。
具体的な製品例としては、医療用パッチ、色落ちしにくい布製品などが挙げられる。
(I)徐放目的:
「徐放」とは、物質を徐々に放出することである。この目的のためにアミロース含有レーヨン繊維に包接させるゲスト物質の例は、上記(1.3)の(e)に記載されるとおりである。
具体的な製品例としては、衛生用品(マスク、手袋、エプロン、帽子、枕カバー、座席の頭部カバー、ウェットティッシュ、ふきん、靴の中敷、靴の脱臭、衣類カバーなど)、壁の中の建材、壁紙、ガーゼ、包帯、めん棒、寝具(枕カバー、シーツ、布団カバー、枕または布団の綿など)、インテリア用品(カーテン、障子、ソファカバー、玄関マット、クッションの中の綿など)、台所または風呂またはトイレ用品(ウェットティッシュ、便座カバー、便座マット、浴槽マット、台所マットなど)、防虫シート、防虫マット、防虫カーテン、防虫服、防カビシート、防カビマット、防カビカーテン、防カビ服などが挙げられる。
(J)紫外線防止目的:
「紫外線防止」とは、紫外線量を減少させるかなくすことである。この目的のためにアミロース含有レーヨン繊維に包接させるゲスト物質の例としては、紫外線吸収物質(紫外線吸収剤ともいう)が挙げられる。紫外線吸収物質の例は、上記(1.3)の(f)に記載されるとおりである。
具体的な製品例としては、紫外線防止機能付き帽子、紫外線防止機能付き衣類、紫外線防止機能付き傘、紫外線防止機能付き手袋、紫外線防止機能付きカーテンなどが挙げられる。
(K)化粧機能の付与目的:
「化粧機能の付与」とは、保湿作用、美白作用、抗炎症作用、血行促進作用、抗酸化作用、制汗作用、清涼作用、細胞腑活化作用など、化粧品において通常付与されることが期待される機能をいう。この目的のためにアミロース含有レーヨン繊維に包接させるゲスト物質の例としては、保湿成分、美白成分、抗炎症剤、細胞賦活化剤および酸化防止剤が挙げられる。保湿成分、美白成分、抗炎症剤、細胞賦活化剤および酸化防止剤の例は、上記(1.3)の(g)に記載されるとおりである。
具体的な製品例としては、フェイスマスク、湿布、包帯などが挙げられる。
(L)医療用機能の付与目的:
「医療用機能の付与」とは、医療目的の機能を付与することをいう。この目的のためにアミロース含有レーヨン繊維に包接させるゲスト物質の例としては、医薬品の有効成分、および育毛剤が挙げられる。医薬品の有効成分の例は、上記(1.3)の(d)に記載されるとおりである。
具体的な製品例としては、絆創膏、ガーゼ、衣料などが挙げられる。
なお、ここでは、便宜上、目的をいくつかに分けて記載したが、当然、これらのうちのいくつかの目的を兼ねる場合もある。
(6.化学物質含有溶液または気体からの化学物質の濃縮、回収、除去または単離)
本明細書中では、用語「化学物質含有溶液」は、化学物質を含む溶液をいう。化学物質は、アミロースによって包接される任意の化学物質であり得る。例えば、この化学物質は、上記(1.3)で説明した任意のゲスト物質であり得る。ただし、化学物質は、ヨウ素でもポリヨウ化物イオンでもない。なお、本明細書中で「ヨウ素」とは、ヨウ素分子およびヨウ化物イオンの両方を含む。ただし、「ヨウ素またはポリヨウ化物イオン」という場合の「ヨウ素」はヨウ素分子を意味する。化学物質含有溶液は、化学物質を含有する溶液であれば任意の溶液であり得る。
1つの実施形態では、本発明の方法は、化学物質を濃縮、回収、除去または単離するために、該化学物質を繊維中に捕捉する方法であって、アミロース含有レーヨン繊維を化学物質と接触させて該化学物質を該アミロース含有レーヨン繊維のアミロース中に包接させる工程を包含する。
この方法において、例えば、化学物質含有溶液にアミロース含有レーヨン繊維を接触させることにより、化学物質含有溶液中に含まれる化学物質がアミロース含有レーヨン繊維と接触し、その結果、化学物質がアミロース含有レーヨン繊維のアミロース中に包接される。
アミロース含有レーヨン繊維としては、ゲスト物質を何も包接していないアミロース含有レーヨン繊維を用いることが好ましい。アミロースレーヨン繊維は、任意の形状で用いられ得る。アミロースレーヨン繊維は、例えば、繊維状、フィルター状、カラムの形状、綿状などの任意の形状で用いられ得る。
アミロース含有レーヨン繊維と化学物質含有溶液との接触は、任意の方法によって行われ得る。例えば、アミロース含有レーヨン繊維を化学物質含有溶液に浸漬するか、化学物質含有溶液をアミロース含有レーヨン繊維にスプレーするか、またはアミロース含有レーヨン繊維をカラムの形状もしくはフィルター状に加工し、それに化学物質含有溶液を通過させることができる。
化学物質が気体状の物質である場合、アミロース含有レーヨン繊維を気体状の化学物質と接触させることによってアミロースに化学物質を包接させることもできる。
アミロース含有レーヨン繊維と化学物質とを接触させる時間および温度などは、任意に設定され得る。例えば、化学物質含有溶液にアミロース含有レーヨン繊維を浸漬する場合、化学物質含有溶液の温度は、例えば、約−20℃以上、約0℃以上、約10℃以上、約15℃以上、約20℃以上、約25℃以上などであり得る。化学物質含有溶液にアミロース含有レーヨン繊維を浸漬する場合、化学物質含有溶液の温度は、例えば、約120℃以下、約100℃以下、約90℃以下、約80℃以下、約60℃以下、約50℃以下、約40℃以下、約30℃以下、約25℃以下、約20℃以下などであり得る。化学物質含有溶液にアミロース含有レーヨン繊維を浸漬する場合、浸漬時間は、例えば、約5分間以上、約10分間以上、約20分間以上、約30分間以上、約40分間以上、約50分間以上、約60分間(1時間)以上、約2時間以上、約3時間以上、約4時間以上、約5時間以上、約6時間以上、約8時間以上、約12時間以上、約24時間以上などであり得る。浸漬時間は、例えば、約1ヶ月以下、約1週間以下、約3日間以下、約2日間以下、約1日(24時間)以下、約18時間以下、約16時間以下、約14時間以下、約12時間以下、約10時間以下、約8時間以下、約6時間以下、約5時間以下、約4時間以下、約3時間以下、約2時間以下、約1時間以下、約30分間以下、約20分間以下、約10分間以下などであり得る。
包接された化学物質は、例えば、化学物質を包接したアミロース含有レーヨン繊維を水に浸漬することにより、水中に溶出する。この水を部分的または完全に蒸発させることにより、化学物質が濃縮または精製される。目的の化学物質以外に多数の物質を含む溶液を使用した場合、目的の化学物質をアミロース含有レーヨン繊維に特異的に包接させてから水などに溶出させて濃縮することにより、目的の化学物質が特異的に濃縮される。
化学物質の濃度を高めることを、「化学物質の濃縮」という。例えば、化学物質含有溶液から化学物質を取り出し、化学物質含有溶液よりも高濃度の化学物質を含む溶液を得た場合、化学物質が濃縮されたといえる。
一度使用した化学物質を水などから取り出すことを「化学物質の回収」という。
目的の化学物質を含有する溶液にアミロース含有レーヨン繊維を接触させると、この化学物質がアミロースに包接されるため、この化学物質含有溶液からはこの化学物質が除去される。そのため、本発明の方法は、目的物からこの化学物質を除去するために使用することができる。
目的の化学物質を含有する溶液が目的の化学物質以外に複数種類の物質を含み、それらの物質がアミロースに包接されない物質である場合、化学物質含有溶液とアミロース含有レーヨン繊維を接触させることにより、目的の化学物質のみがアミロースに包接される。そのため、本発明の方法は、この化学物質を単離するために使用することができる。
(7.アミロース含有レーヨン繊維へのゲスト物質の包接方法)
アミロース含有レーヨン繊維とゲスト物質を接触させることにより、ゲスト物質をアミロース含有レーヨン繊維に包接させることができる。接触させる方法には、例えば、ゲスト物質を含む溶液にアミロース含有レーヨン繊維を浸すような液相で接触させる方法;アミロース含有レーヨン繊維にゲスト物質を含む溶液を噴霧する、ゲスト化合物の蒸気を接触させるなどの気相で接触させる方法がある。ゲスト物質が約130℃〜約150℃の水溶液中に溶存し得る物質である場合、アミロース含有レーヨン繊維とゲスト物質とを接触させる工程で、「(2.5)加熱冷却処理」または「(2.6)アルカリ処理」を同時に行うことで、ゲスト物質の包接量を上げることができる。このようなゲスト物質の場合、接触工程と「(2.5)加熱冷却処理」または「(2.6)アルカリ処理」を同時に行うことが好ましい。
以下、本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明は、実施例に限定されるものではない。
実施例及び比較例中で用いた評価試験の方法は、以下のとおりである。
<合成例1:アミロースの合成>
20mMリン酸緩衝液(pH7.0)、20g/Lスクロース、および種々の濃度のマルトオリゴ糖混合物(3880、232、77、44または8.8mg/リットル)を含有する反応液(1リットル)に、国際公開第2004/113525号パンフレットの実施例2−1Aに記載の方法に従って調製し、精製した馬鈴薯塊茎由来の耐熱化グルカンホスホリラーゼ(国際公開第2004/113525号パンフレットの配列番号34のアミノ酸配列を有するもの;1単位/ml)と、国際公開第2005/24008号パンフレットの実施例2Aに記載の方法に従って調製した耐熱化Streptococcus mutans由来スクロースホスホリラーゼ(国際公開第2005/24008号パンフレットの配列番号22のアミノ酸配列を有するもの;1単位/ml)を加えて37℃で16時間保温し、反応終了後、生成したα−1,4−グルカンの収率(%)、重量平均分子量(Mw)、重合度および分散度(Mw/Mn)を決定した。各結果を下記の表1に示す。
表1によれば、スクロースとプライマー(すなわちマルトオリゴ糖混合物)との濃度比を変化させることにより、重合度32〜4818(Mw5.2〜780.5kDa)までのアミロースが得られた。これらの試料におけるアミロースの分散度(Mw/Mn)はいずれも1.2以下であった。
<1.アミロースの重量平均分子量測定>
合成例1で合成し、本発明で使用したグルカンの分子量を以下の方法により測定した。
合成例1で合成したグルカンを1N水酸化ナトリウムで完全に溶解し、適当量の塩酸で中和した後、約300μgのグルカンを、示差屈折計と多角度光散乱検出器を併用したゲル濾過クロマトグラフィーに供することにより平均分子量を求めた。
詳しくは、カラムとしてShodex SB806M−HQ(昭和電工製)を用い、検出器としては多角度光散乱検出器(DAWN−DSP、Wyatt Technology社製)および示差屈折計(Shodex RI−71、昭和電工製)をこの順序で連結して用いた。カラムを40℃に保ち、溶離液としては0.1M硝酸ナトリウム溶液を流速1mL/分で用いた。得られたシグナルを、データ解析ソフトウェア(商品名ASTRA、Wyatt Technology社製)を用いて収集し、同ソフトを用いて解析することにより、重量平均分子量を求めた。
<実施例1−1から1−4および比較例1−1から1−4:アミロース含有レーヨン繊維の製造>
原料パルプ(LDPT:日本製紙ケミカル製)から常法に従ってビスコースを調製した。このビスコースは、セルロース含有率9重量%、アルカリ含有率5重量%で、落球粘度60秒であった。
合成例1で合成した平均分子量5.2×10、4.62×10または1.174×10の酵素合成アミロース(分岐構造を含まない)それぞれを、5重量%NaOH水溶液に溶解してアミロースのアルカリ水溶液を調製した。これらのうちのいずれかのアルカリ水溶液とビスコースとを常法に従って混合した後紡糸し、アミロース含有レーヨン繊維を得た。アルカリ水溶液と混合せずにビスコースだけで紡糸することによってコントロールのレーヨン繊維を得た(比較例1−1)。アルカリ水溶液とビスコースとの混合割合を変化させることにより、アミロースとセルロースとの量比(重量比)を、以下の表2のように変化させて仕込んだ。
一方、合成例1で合成した平均分子量2.810×10または7.805×10のアミロースを使用した場合は、5%のアミロース濃度でも均一に溶解することが困難であったこと、例え溶解できても得られるアミロースのアルカリ溶液の粘度が高くビスコース液と均一に混合することが困難であったことなど、目的のレーヨン製造に適したアミロースのアルカリ水溶液を得ることができず、レーヨン繊維を合成することができなかった。特に、50万以下の分子量の酵素合成アミロースである、平均分子量2.810×10のアミロースを使用した場合にレーヨンを製造できなかったことは、酵素合成アミロースに特徴的であり、予想外であった。
アミロース含有レーヨン繊維およびコントロールのレーヨン繊維中のアミロース含量を以下の方法で定量した。アミロース含有レーヨン繊維またはコントロールのレーヨン繊維20mgを銅アンモニア溶液に溶解させた後、酢酸溶液で中和と同時に希釈(全2mL)することで、セルロースのみ再沈殿させた。13,200×g、10分間遠心し、上清中のアミロース量をフェノール硫酸法によって定量した。結果を表2に示す。
表2の結果から示されるように、レーヨン中の平均分子量5.2×10のアミロースの含有量は極めて少なかった。これらのことから、平均分子量5.2×10のアミロースは、添加量のほとんどがレーヨン中に残存しないものの、分子量4.62×10以上のアミロースはレーヨン内部に含有させることが可能であることが明らかとなった。
<実施例2:アミロース含有レーヨン繊維の包接力の評価>
実施例1−1から1−4および比較例1−2から1−3で製造したアミロース含有レーヨン繊維および比較例1−1で製造したコントロールのレーヨン繊維の包接力をゲスト物質としてノニルフェノールを用いて測定した。
実施例1−1から1−4および比較例1−2から1−3で製造したアミロース含有レーヨン繊維および比較例1−1で製造したコントロールのレーヨン繊維50mgを、濃度100ppmのノニルフェノールを含む50%メタノール水溶液3mLに25℃で3時間浸漬させることにより、各レーヨン繊維にノニルフェノールを含浸させた。レーヨン繊維を浸漬させる前後のこの水溶液中のノニルフェノール濃度を液体クロマトグラフィーで測定した。
液体クロマトグラフィーの条件は次の通りである。
カラムとしてTSKgel ODS−100Z(TOSOH製)を用い、検出器としてUV検出器SPD−6A(島津製作所製)を用い、送液ポンプとしてLC−6A(島津製作所製)を用いた。カラムを40℃に保ち、溶離液として80%メタノールを流速1.0mL/分で用いた。
包接力の評価には以下の式で求められる、レーヨンへのノニルフェノールの吸着率で示した。
アミロース含有レーヨン繊維の包接力(%)を、上記数3の式に基づいて計算した。すなわち、アミロース含有レーヨン繊維のノニルフェノール吸着率からコントロールのレーヨン繊維のノニルフェノール吸着率を差し引くことにより計算した。結果を表3に示す。
比較例1−2および1−3の平均分子量5.2×10のアミロース含有レーヨン繊維のノニルフェノールに対する吸着率は、比較例1−1のコントロールレーヨンとほぼ同程度であり、包接力も1.3%以下と低く、平均分子量5.2×10のアミロース含有レーヨン繊維は包接力をほとんど有さないことが分かった。それに対して、実施例1−1から1−4のアミロース含有レーヨンは比較例1−1に対し1.8倍から4.3倍の吸着率を示し、4.1%から16.7%の高い包接力を有することが分かった。この包接力はアミロースの配合量の増加およびアミロースの分子量の増加にしたがって増加した。
表2に示すとおり、実施例1−2と1−4のアミロースの含有量は、ほぼ同じである。しかし、ノニルフェノールの包接力は1.174×10のアミロースを含有するレーヨンのほうが4.62×10のアミロースを含有するレーヨンより、約2.1倍も高かった。このように、レーヨン中のアミロースの包接力は、含有量のほかにアミロースの分子量が大きく影響することが明らかとなった。
平均分子量2.810×10以上のアミロースはレーヨン繊維に含有させることができなかった事実と合わせ、ノニルフェノールに対する包接力を発揮できる状態のアミロースを含有するレーヨン繊維を作製するには、アミロースの平均分子量が5.2×10より大きくかつ2.810×10より小さいことが必要であることが明らかとなった。
<実施例3:アミロース含有レーヨン繊維の洗濯試験>
実施例1−2、1−4および比較例1−3で製造したアミロース含有レーヨン繊維または比較例1−1で製造したコントロールのレーヨン繊維を洗濯試験に供し、アミロース含有レーヨン繊維中のアミロースの安定性を確認した。
詳細には、各レーヨン繊維50mgを、水または0.75mg/mLに調製した市販の酵素入り洗剤(ライオン製トップ)溶液に3時間つけ置きした。次に、2mL用遠心ろ過フィルター(5μm)に移し、12,000×gで4分間遠心ろ過して、溶液を回収した。回収したろ液中のアミロースの溶出量を調べるために、次の操作を行なった。水洗したレーヨン繊維のろ液を水で3倍希釈し、グルコアミラーゼ(18U/mL)とα−アミラーゼ(2.6U/mL)を作用させた。洗剤で洗浄したレーヨンのろ液は1%酢酸水溶液で3倍希釈して中和を行なった後、グルコアミラーゼ(18U/mL)とα−アミラーゼ(2.6U/mL)を作用させた。グルコアミラーゼとα−アミラーゼの作用により、アミロースをグルコースに変換させた。グルコース量をグルコース定量キット(和光純薬)で定量し、定量値に希釈倍率を乗じてアミロース濃度とした。結果を表4に示す。
平均分子量5.2×10のアミロース含有レーヨン繊維は、わずかながらアミロースの溶出が確認された。それに対して、4.62×10のアミロース含有レーヨン繊維および1.174×10のアミロース含有レーヨン繊維は、洗濯によりアミロースの溶出は全く認められなかった。
<実施例4:アミロース含有レーヨン不織布フィルターの作製>
実施例1−4で製造した平均分子量1.174×10のアミロース含有レーヨン繊維(20%仕込み)をニードルパンチ法で厚さ約3mmの不織布に加工しアミロース含有レーヨン不織布を得た。この不織布を直径7cmの円板状に切り取って、アミロース含有レーヨン不織布フィルター(実施例4)を得た。
<実施例5−1から5−3:アミロース含有レーヨン繊維のアルコール類−水混合溶液中での加熱処理による包接力の上昇>
耐圧ガラス試験管(10mL)に実施例1−4で作製したアミロース含有レーヨン繊維50mgと水系溶媒(50容量%メタノール水溶液、50容量%エタノール水溶液または50容量%1−プロパノール水溶液)3mLを入れて密栓し、130℃にて30分間ヒートブロックで加熱した。レーヨン繊維を取り出して吸引ろ過し、オーブン中で50℃にて2時間加熱して乾燥させ、その後室温で放冷することにより、加熱処理されたアミロース含有レーヨン繊維(50%メタノール水溶液:実施例5−1;50%エタノール水溶液:実施例5−2;50%1−プロパノール水溶液:実施例5−3)を得た。以下の実施例8で確認されたように、この加熱処理によってアミロース含有レーヨン繊維の包接力が向上した。
<実施例6−1から6−3:アミロース含有レーヨン繊維にアルコールを噴霧後、加熱処理することによる包接力の上昇>
実施例1−4で作製したアミロース含有レーヨン繊維50mgにメタノール、エタノール、または1−プロパノールを約1mL噴霧してガラス容器に密封し、オーブン中で130℃にて30分間加熱後、室温に放冷することにより冷却した。これをオーブン中で50℃にて2時間加熱して乾燥し、その後室温で放冷することにより、アルコール処理されたアミロース含有レーヨン繊維(メタノール噴霧:実施例6−1、エタノール噴霧:実施例6−2、1−プロパノール噴霧:実施例6−3)を得た。以下の実施例8と同様の方法で、このアルコール処理によってアミロース含有レーヨン繊維の包接力が向上したことが確認される。
<実施例7:アミロース含有レーヨン繊維のアルカリ処理による包接力の上昇>
実施例1−4で作製したアミロース含有レーヨン繊維50mgを、3mLの1N NaOH水溶液に室温で1時間浸漬後、取り出し、1N塩酸水溶液を加えて中和した。これを取り出して水で洗浄後、オーブン中で50℃にて2時間加熱して乾燥し、その後室温で放冷することにより、アルカリ処理されたアミロース含有レーヨン繊維を得た。以下の実施例8と同様の方法で、このアルカリ処理によってアミロース含有レーヨン繊維の包接力が向上したことが確認される。
<実施例8:実施例5−1から5−3で得たアミロース含有レーヨン繊維の包接力の評価>
包接力の評価にあたり、ゲスト分子としてノニルフェノールを用いた。
実施例1−4で作製したアミロース含有レーヨン繊維または実施例5−1から5−3で処理したアミロース含有レーヨン繊維、または比較例1−1のコントロールレーヨン繊維それぞれ50mgを、濃度100ppmのノニルフェノールを含む50%メタノール水溶液3mLに25℃で15時間浸漬することにより、各レーヨン繊維にノニルフェノールを含浸させた。レーヨン繊維を浸漬させる前後のこの水溶液中のノニルフェノール濃度を液体クロマトグラフィーで測定した。浸漬前後のノニルフェノール量の差から、レーヨン繊維へのノニルフェノールの吸着率およびレーヨン繊維の包接力を求めた。
液体クロマトグラフィーの条件は次の通りである:
カラムとしてTSKgel ODS−100Z(TОSОH製)を用い、検出器としてUV検出器SPD−6A(島津製作所製)を用い、送液ポンプとしてLC−6A(島津製作所製)を用いた。カラムを40℃に保ち、溶離液としては80%メタノールを流速1.0mL/分で用いた。結果を表5に示す。
アミロース含有レーヨン繊維の包接力(%)を、上記数3の式に基づいて計算した。すなわち、アミロース含有レーヨン繊維のノニルフェノール吸着率からコントロールのレーヨン繊維のノニルフェノール吸着率を差し引くことにより計算した。
アミロース含有レーヨン繊維をアルキル鎖の長いアルコール水溶液を用いて加熱処理することで、アミロース含有レーヨン繊維の包接力が顕著に上昇することがわかった。
<実施例9:アミロース含有レーヨン繊維のノニルフェノールに対する包接力の評価>
環境汚染物質のゲスト分子の例として、ノニルフェノールを用いた。
実施例1−4で製造した平均分子量1.174×10のアミロース含有レーヨン繊維(20%仕込み)または比較例1−1で製造したコントロールレーヨン繊維(アミロース不含)50mgを、濃度100ppmのノニルフェノールを含む50%メタノール水溶液3mLに25℃で15時間浸漬することにより、これらのレーヨン繊維にノニルフェノールを含浸させた。レーヨン繊維を浸漬する前後のこの水溶液中のノニルフェノール濃度を液体クロマトグラフィーで測定した。浸漬前後のノニルフェノール量の差を、レーヨン繊維に吸着(包接)されたノニルフェノール量とした。実施例の結果をコントロールレーヨン繊維の結果と比較し、包接力を評価した。包接力の評価にはノニルフェノールのレーヨンへの吸着率(%)を用いた。
液体クロマトグラフィーの条件は次の通りであった:
カラムとしてTSKgel ODS−100Z(TОSОH製)を用い、検出器としてUV検出器SPD−6A(島津製作所製)を用い、送液ポンプとしてLC−6A(島津製作所製)を用いた。カラムを40℃に保ち、溶離液としては80%メタノールを流速1.0mL/分で用いた。結果を表6に示す。
アミロース含有レーヨン繊維はノニルフェノールを吸着することができ、その吸着量はコントロールレーヨン繊維よりもはるかに高く、約4倍であることがわかった。この結果から、実施例1−4のアミロース含有レーヨン繊維は、16.0%の包接力を持つことが分かった。
<実施例10:アミロース含有レーヨン繊維のノニルフェノールに対する包接方法の検討>
耐圧ガラス試験管(10mL)に実施例1−4で作製したアミロース含有レーヨン繊維50mgと濃度100ppmのノニルフェノールを含む50%メタノール水溶液3mLを入れて密栓し、130℃にて30分間ヒートブロックで加熱し、室温に15時間放冷することにより冷却した。レーヨン繊維を浸漬・加熱する前後のこの水溶液中のノニルフェノール濃度を液体クロマトグラフィーで測定した。浸漬前後のノニルフェノール量の差から、レーヨン繊維へのノニルフェノールの吸着を求めた。
液体クロマトグラフィーの条件は次の通りであった:
カラムとしてTSKgel ODS−100Z(TОSОH製)を用い、検出器としてUV検出器SPD−6A(島津製作所製)を用い、送液ポンプとしてLC−6A(島津製作所製)を用いた。カラムを40℃に保ち、溶離液としては80%メタノールを流速1.0mL/分で用いた。結果を表7に示す。
このように、アミロース含有レーヨン繊維を、ゲスト分子を含むアルコール水溶液と接触させると同時に加熱処理すると、加熱処理したアミロース含有レーヨン繊維(実施例5−1)よりも、より多くのノニルフェノールを包接させることができた。
<実施例11:ノニルフェノール包接アミロース含有レーヨン繊維不織布の試作>
紫外線吸収剤のゲスト分子の例として、ノニルフェノールを用いた。
実施例4で製造した平均分子量1.174×10のアミロース含有レーヨン不織布を用いた。対照として、比較例1−1で製造したコントロールレーヨン(アミロース不含)をニードルパンチ法で厚さ約3mmの不織布に加工し、アミロース不含のコントロールレーヨン不織布を得た。これら不織布を1.5cm角(重量34mg)に切断し、濃度100ppmのノニルフェノールを含む50%メタノール水溶液5mLに1時間浸漬することにより、ノニルフェノールを含浸させた。その後、不織布を取り出して吸引ろ過した。続いて、30%メタノール水溶液4mLに漬けて洗浄し、吸引ろ過した。室温で2日間風乾することにより、ノニルフェノール包接アミロース含有不織布(実施例11)またはノニルフェノール処理コントロール不織布(比較例11−1)を得た。また、ノニルフェノールを含まない水溶液で同様に処理した不織布も作製した(平均分子量1.174×10のアミロース含有レーヨン不織布:比較例11−2;コントロールレーヨン(アミロース不含):比較例11−3)も作製した。
<実施例12:ノニルフェノール包接アミロース含有レーヨン不織布の紫外線防御>
実施例11で製造されたノニルフェノール包接アミロース含有レーヨン不織布に200nm−450nmの紫外光および可視光を照射して反射スペクトルを測定することにより、このレーヨン不織布の紫外線防御効果を試験した。
結果を図1に示す。図1の実線で示したスペクトルは、ノニルフェノール包接アミロース含有レーヨン不織布により吸収された紫外光および可視光のスペクトルである。この実線のスペクトルは、実施例11で作製したノニルフェノール包接アミロース含有不織布の吸収スペクトルから、比較例11−2のノニルフェノールを含まない水溶液で処理したアミロース含有レーヨン不織布の吸収スペクトルを差し引いて求めた。図1の点線で示したスペクトルは、ノニルフェノール処理コントロールレーヨン不織布により吸収された紫外光および可視光のスペクトルである。この点線のスペクトルは、比較例11−1の不織布の吸収スペクトルから、比較例11−3のノニルフェノールを含まない水溶液で処理したコントロールレーヨン不織布の吸収スペクトルを差し引いて求めた。
図1に示すように、ノニルフェノールで処理したコントロールレーヨン不織布は紫外光を吸収しておらず、一方、ノニルフェノール包接アミロース含有レーヨン不織布は280nmの紫外光を吸収することが分かった。これらの結果、実施例11で製造されたノニルフェノール包接アミロース含有レーヨン不織布は紫外線防御効果を有していることが分かった。
<実施例13:殺菌剤含有アミロースレーヨン繊維の作製>
殺菌剤のゲスト分子の例として、抗生物質を用いる。
実施例1−4で製造した平均分子量1.174×10のアミロース含有レーヨン繊維(20%仕込み)または比較例1−1で製造したコントロールレーヨン繊維(アミロース不含)を殺菌剤含有溶液に1時間浸漬することにより、殺菌剤をレーヨン繊維に含浸させる。その後、レーヨン繊維を取り出し、室温で一晩風乾することにより、殺菌剤含有アミロースレーヨンを得る。
レーヨンを浸漬する前後の殺菌剤溶液中の殺菌剤濃度をHPLCで測定する。レーヨンの浸漬前後の殺菌剤量の差を、レーヨンに吸着(包接)された量とする。実施例の結果をコントロールの結果と比較し、包接力を評価する。
<実施例14:消臭剤含有アミロースレーヨン繊維の作製>
消臭剤のゲスト分子の例として、ラウリルメタクリレートを用いる。
実施例1−4で製造した平均分子量1.174×10のアミロース含有レーヨン繊維(20%仕込み)または比較例1−1で製造したコントロールレーヨン繊維(アミロース不含)を消臭剤溶液に1時間浸漬することにより、消臭剤をレーヨン繊維に含浸させる。その後、レーヨン繊維を取り出し、室温で一晩風乾することにより、消臭剤含有アミロースレーヨンを得る。
レーヨンを浸漬する前後の消臭剤溶液中の消臭剤濃度をガスクロマトグラフィーで測定する。含浸前後の消臭剤量の差を、レーヨンに吸着(包接)された消臭剤量とする。実施例の結果をコントロールの結果と比較し、包接力を評価する。
<実施例15:アミロースレーヨン繊維の消臭機能>
実施例4で作製したアミロースレーヨン不織布フィルターまたは実施例10で作製したコントロールレーヨン不織布フィルター(アミロース不含)を、悪臭物質(ノネナール、酪酸、吉草酸、イソ吉草酸)を含む密閉容器中に入れて2時間および24時間放置する。その後、不織布フィルターを入れる前後の容器中の空気に含まれる悪臭物質の量をガスクロマトグラフィーで測定し、比較する。
<実施例16:防虫剤含有アミロースレーヨン繊維の作製>
防虫剤のゲスト分子の例として、ピレスロイドを用いる。
実施例1−4で製造した平均分子量1.174×10のアミロース含有レーヨン(20%仕込み)繊維または比較例1−1で製造したコントロールレーヨン(アミロース不含)を防虫剤含有溶液に1時間浸漬することにより、防虫剤を含浸させる。その後、レーヨン繊維を取り出し、室温で一晩風乾することにより、防虫剤含有アミロースレーヨンを得る。
レーヨンを浸漬する前後の防虫剤溶液中の防虫剤濃度をガスクロマトグラフィーまたはHPLCで測定する。浸漬前後の防虫剤量の差を、レーヨンに吸着(包接)された防虫剤量とする。実施例の結果をコントロールの結果と比較し、包接力を評価する。
<実施例17:アミロースレーヨン繊維を用いた化学物質の濃縮、回収、除去、および精製>
実施例1−4で作製したアミロースレーヨンまたは比較例1−1で作製したレーヨン(コントロール)を、ノニルフェノールを含む浴中に入れて一晩放置する。その後、レーヨンを取り出し、水で洗浄後、少量のメタノールで溶出することにより、この目的の化学物質を濃縮し回収する。
<実施例18:アミロースレーヨン繊維に含有させた色素の安定化>
安定化されることを目的とする物質(ゲスト分子)の例として、色素を用いる。
実施例1−4で製造した平均分子量1.174×10のアミロース含有レーヨン(20%仕込み)繊維または比較例1−1で製造したコントロールレーヨン(アミロース不含)をゲスト物質溶液に1時間浸漬することにより、色素を含浸させる。その後、レーヨン繊維を取り出し、室温で一晩風乾することにより、ゲスト物質含有アミロースレーヨンを得る。
レーヨンを浸漬する前後の色素溶液中のゲスト物質濃度を吸光度で測定する。浸漬前後の色素の量の差を、レーヨンに吸着(包接)された色素の量とする。実施例の結果をコントロールの結果と比較し、包接力を評価する。
このようにして得られたゲスト物質含有アミロースレーヨンに紫外線を6時間照射し、その後、ゲスト物質がどれだけ残存したかを調べる。対照として、包接していないゲスト物質にも同じ量の紫外線を照射する。実施例と対照でゲスト物質の残存量を比較することにより、ゲスト物質の安定化を評価する。
<合成例2:アミロースの合成>
20mMリン酸緩衝液(pH7.0)、20g/Lスクロース、およびマルトオリゴ糖混合物(245mg/リットル)を含有する反応液(1リットル)に、国際公開第2004/113525号パンフレットの実施例2−1Aに記載の方法に従って調製し、精製した馬鈴薯塊茎由来の耐熱化グルカンホスホリラーゼ(国際公開第2004/113525号パンフレットの配列番号34のアミノ酸配列を有するもの;1単位/ml)と、国際公開第2005/24008号パンフレットの実施例2Aに記載の方法に従って調製した耐熱化Streptococcus mutans由来スクロースホスホリラーゼ(国際公開第2005/24008号パンフレットの配列番号22のアミノ酸配列を有するもの;1単位/ml)を加えて37℃で16時間保温し、反応終了後、生成したα−1,4−グルカンの重量平均分子量(Mw)、重合度および分散度(Mw/Mn)を決定した。結果を下記の表8に示す。
<実施例19−1および19−2:平均分子量3.00×10のアミロース含有レーヨン繊維の製造>
原料パルプ(LDPT:日本製紙ケミカル製)から常法に従ってビスコースを調製した。このビスコースは、セルロース含有率9重量%、アルカリ含有率5重量%で、落球粘度60秒であった。
合成例2で合成した平均分子量3.00×10の酵素合成アミロース(分岐構造を含まない)を、5重量%NaOH水溶液に溶解してアミロースのアルカリ水溶液を調製した。このアルカリ水溶液とビスコースとを常法に従って混合した後紡糸し、アミロース含有レーヨン繊維を得た。アルカリ水溶液とビスコースとの混合割合を変化させることにより、アミロースとセルロースとの量比(重量比)を、以下の表9のように変化させて仕込んだ。
アミロース含有レーヨン繊維中のアミロース含量を以下の方法で定量した。アミロース含有レーヨン繊維20mgを銅アンモニア溶液に溶解させた後、酢酸溶液で中和と同時に希釈(全2mL)することで、セルロースのみ再沈殿させた。13,200×g、10分間遠心し、上清中のアミロース量をフェノール硫酸法によって定量した。結果を表9に示す。
表9の結果より、平均分子量3.00×10以上のアミロースをレーヨン内部に含有できることが明らかとなった。
<実施例20:実施例19−1および19−2で製造したアミロース含有レーヨン繊維によるノニルフェノールの包接>
実施例19−1および19−2で製造した平均分子量3.00×10のアミロースを含有するレーヨン繊維の包接力を、ゲスト物質としてノニルフェノールを用いて調べた。コントロールとして、比較例1−1で製造したレーヨン繊維の包接力も測定した。ノニルフェノールの包接操作方法および包接力の評価方法は実施例2と同様であった。結果を表10に示す。
表10に示すように、実施例19−1、19−2の平均分子量3.00×10のアミロース含有レーヨン繊維も包接力を持つことが確認できた。その包接力は、表3の実施例1−1から1−4の結果よりも低かった。アミロースの分子量が包接力に影響し、分子量が大きいほど包接力が高くなることが確認できた。
実施例15では不織布の状態で消臭試験を実施したが、以下の実施例21および24においては綿状で、実施例23においては生地の状態で消臭試験を実施した。
<実施例21:アミロース含有レーヨン繊維の消臭力の評価>
実施例1−4のアミロース含有レーヨン繊維およびコントロールの比較例1−1のレーヨン繊維の消臭力をゲスト物質としてペラルゴン酸およびノネナールを用いて測定した。これらのレーヨン繊維は、綿の状態で使用した。ペラルゴン酸およびノネナールは代表的な悪臭物質である。ペラルゴン酸は腐敗臭のような不快な臭いを持つ物質であり、可塑剤、ラッカー、接着剤、アルキド樹脂および柔軟剤の製造に使用される。さらに、ペラルゴン酸は30代男性の発する悪臭の原因物質として知られている。ノネナールは中高年特有の体臭である加齢臭の原因物質として知られている。
アミロース含有レーヨン繊維100mgおよびコントロールのレーヨン繊維100mgそれぞれに濃度0.1%のペラルゴン酸または濃度0.02%のノネナールを含む10%エタノール水溶液100μLを加え、密閉した後、25℃で24時間静置した。ヘッドスペース中の気相部分を200μL分取して、ガスクロマトグラフィーで測定した。レーヨン繊維を加えない試験区をブランクとした。
ガスクロマトグラフィーの条件は次の通りである:
カラムとしてDB−WAX(J&W)を用い、測定機として質量分析計GC−MS5050A(島津製作所)を用いた。カラムを200℃に保ち、キャリアガスとしてヘリウムを用いた。
消臭力の評価を、以下の式で求められるレーヨンへのペラルゴン酸およびノネナールの消臭率で計算した。

結果を表11および表12に示す。
実施例1−4のアミロース含有レーヨン繊維のペラルゴン酸に対する消臭率は66.5%であり、アミロース含有レーヨン繊維はペラルゴン酸に対する極めて優れた消臭力を有することがわかった。
実施例1−4のアミロース含有レーヨン繊維のノネナールに対する消臭率は41.2%であり、アミロース含有レーヨン繊維はノネナールに対する優れた消臭力を有することがわかった。
<実施例22:アミロース含有レーヨン生地の作製>
実施例1−1および1−2のアミロース含有レーヨン繊維30重量%と、比較例1−1のレーヨン繊維70重量%とを混紡し、60番手の混紡糸を作製した。これを用いて、筒編み生地を作製した(実施例22のアミロース含有レーヨン生地)。比較として、アミロース含有レーヨン繊維を配合しないこと以外は同じ方法で筒編み生地(比較例22)を作製した。
<実施例23:アミロース含有レーヨン生地の消臭力の評価>
実施例22で作製したアミロース含有レーヨン生地およびコントロールのレーヨン生地の消臭力をゲスト物質としてペラルゴン酸およびノネナールを用いて測定した。
アミロース含有レーヨン生地およびコントロールのレーヨン生地のそれぞれ400mgに濃度0.1%のペラルゴン酸または0.05%のノネナールを含む10%エタノール水溶液100μLを加え、密閉した後、25℃で24時間静置した。ヘッドスペース中の気相部分を200μL分取して、ガスクロマトグラフィーで測定した。レーヨン生地を加えない試験区をブランクとした。
ガスクロマトグラフィーの条件は次の通りである:
カラムとしてDB−WAX(J&W)を用い、測定機として質量分析計GC−MS5050A(島津製作所製)を用いた。カラムを200℃に保ち、キャリアガスとしてヘリウムを用いた。
消臭力の評価を、以下の式で求められる生地へのペラルゴン酸およびノネナールの消臭率で計算した。

結果を表13および表14に示す。
実施例22−1および22−2のアミロース含有レーヨン生地のペラルゴン酸に対する消臭率はそれぞれ、83.2%、92.1%であり、コントロールのレーヨン生地(比較例22)と比較して高い消臭力を有することがわかった。この消臭力はアミロースの含有量の増加にしたがって増加した。
実施例22−1および22−2のアミロース含有レーヨン生地のノネナールに対する消臭率はそれぞれ、73.0%、76.1%であり、コントロールのレーヨン生地(比較例22)と比較して高い消臭力を有することがわかった。この消臭力はアミロースの含有量の増加にしたがって増加した。
<実施例24:アミロース含有レーヨン繊維による芳香成分メントールの包接>
実施例1−2、実施例1−4、実施例19−1および実施例19−2で作製したアミロース含有レーヨン繊維および比較例1−1で作製したコントロールのレーヨン繊維の包接力をゲスト物質としてメントールを用いて評価した。これらのレーヨン繊維は、綿の状態で使用した
実施例1−2、実施例1−4、実施例19−1および実施例19−2で作製したアミロース含有レーヨン繊維および比較例1−1で作製したコントロールのレーヨン繊維のそれぞれ100mgに2%メントールのメタノール溶液800μL添加し、100℃のオーブン中で乾燥させて、溶媒および余分なメントールを揮発させた。15時間後、オーブンから取り出し、メントールを包接したアミロース含有レーヨンおよびコントロールレーヨン繊維を得た。
メントールを包接した各レーヨン繊維中のメントール量を測定するために、メタノール2mLを添加して、レーヨン繊維からメントールを抽出した。抽出液をアセトンで5倍希釈し、ガスクロマトグラフィーでメントールを測定した。
ガスクロマトグラフィーの条件は次の通りである:
ガスクロマトグラフ装置にはGC−2014(島津製作所製)、カラムにULBONHR−Thermon−600T(0.25mmφ×25m、信和化工製)、キャリアガスにヘリウムガス、検出器に水素炎イオン化検出器(島津製作所製)を用いた。気化室温度は280℃、カラム温度は150℃、検出器温度は250℃で行ない、キャリアガスの圧力は150kPaに保った。結果を表15に示す。
実施例19−1、19−2、1−2、および1−4で作製したアミロース含有レーヨン繊維のメントールに対する含有率は、それぞれ5.0%、8.0%、5.5%、4.2%であり、コントロールのレーヨン繊維(比較例1−1)よりも4〜8倍高い含有率を示した。このように、アミロース含有レーヨン繊維はメントールを包接できることが分かった。
<実施例25:アミロース含有レーヨン繊維のサーマルボンド不織布の作製>
実施例1−4で作製した平均分子量1.174×10のアミロース含有レーヨン繊維を40重量%、ポリプロピレン・ポリエチレン芯鞘繊維(チッソ製 ES繊維)を60重量%を、空気流で開繊、混合し、カード機によりウェブを作製後、ヒートロールで加熱することによりサーマルボンド不織布(約20g/m)(実施例25)を作製した。比較として、アミロース含有レーヨン繊維を配合しないポリプロピレン・ポリエチレン芯鞘繊維のサーマルボンド不織布(約20g/m)(比較例25)を作製した。
<実施例26:実施例25で作製したサーマルボンド不織布への芳香成分メントールの包接>
実施例25で作製したアミロース含有レーヨン繊維40%配合のサーマルボンド不織布および比較例25で作製したコントロールのサーマルボンド不織布それぞれ1.3gに2%メントールのメタノール溶液6.5mL添加し、100℃のオーブン中で乾燥させて、溶媒および余分なメントールを揮発させた。15時間後、オーブンから取り出し、メントール包接したアミロース含有レーヨン繊維40%配合のサーマルボンド不織布およびコントロールのサーマルボンド不織布を得た。
メントールを包接した各不織布中のメントール量を測定するために、不織布100mgを秤り取り、メタノール2mLを添加して、メントールを抽出した。抽出液をアセトンで5倍希釈し、メントールをガスクロマトグラフィーで測定した。ガスクロマトグラフィーの条件は実施例24と同様であった。結果を表16に示す。
コントロールのサーマルボンド不織布(比較例25)ではメントールを全く保持できなかったのに対し、実施例25のアミロース含有レーヨン繊維40%配合のサーマルボンド不織布ではメントールを2.5%含有することが可能であった。このように、アミロース含有レーヨン繊維を含むサーマルボンド不織布はメントールを包接できることが分かった。
<実施例27:実施例26で作製したメントール包接アミロース含有レーヨン繊維40%配合サーマルボンド不織布のメントール保持安定性>
実施例26で作製したメントール包接アミロース含有レーヨン繊維40%配合サーマルボンド不織布の安定性を調べるために、100℃(湿度測定不能、乾燥状態)および25℃(湿度30%)環境下に10日間静置した。5日目、10日目にサンプリングして、不織布100mg中のメントール量を測定した。メントールの抽出法および分析法は実施例24と同様であった。メントール残存率(%)は以下の式で求めた。
結果を図2に示す。図2に示すように、実施例26で作製したメントール包接アミロース含有レーヨン繊維40%配合サーマルボンド不織布は、湿度30%以下の条件において、温度25℃から100℃で、メントールを安定に保持できることがわかった。
<実施例28:実施例26で作製したメントール包接アミロース含有レーヨン繊維40%配合サーマルボンド不織布のメントール徐放性>
実施例26で作製したメントール包接アミロース含有レーヨン繊維40%配合サーマルボンド不織布の加湿条件下における徐放性を調べた。
メントール包接アミロース含有レーヨン配合不織布を恒温恒湿器内に広げて静置し、不織布中のメントール量の経時変化を調べた。温度および湿度は25℃にて50%、25℃にて80%または37℃にて80%に設定した。
メントールの抽出法および分析法は実施例24と同様であった。メントール放出率(%)は以下の式で求めた。
結果を図3に示す。図3に示すように、実施例26で作製したメントール包接アミロース含有レーヨン繊維40%配合サーマルボンド不織布は、温度25℃、湿度50%の環境下では5時間経ってもメントールを放出しなかったが、湿度を80%に上げると経時的にメントールが徐々に放出された。湿度80%のままで温度を37℃に上げるとメントールの放出速度が上がり、5時間後には包接されたメントールの約35%が放出された。
このように、アミロース含有レーヨン配合サーマルボンド不織布に包接させたゲスト物質のメントールは、湿度条件を変化させることにより、徐々に放出する徐放性を示すことが分かった。
<実施例29:アミロース含有レーヨン繊維による芳香成分リナロールの包接>
実施例1−4で作製したアミロース含有レーヨン繊維および比較例1−1で製造したコントロールのレーヨン繊維の包接力をゲスト物質としてリナロールを用いて評価した。これらのレーヨン繊維は、綿の状態で使用した。
実施例1−4で作製したアミロース含有レーヨン繊維および比較例1−1で製造したコントロールのレーヨン繊維100mgに2%リナロールのメタノール溶液800μL添加し、100℃のオーブン中で乾燥させて、溶媒および余分なリナロールを揮発させた。15時間後、オーブンから取り出し、リナロールを包接したアミロース含有レーヨンおよびコントロールレーヨン繊維を得た。
リナロールを包接した各レーヨン繊維中のリナロール量を測定するために、メタノール2mLを添加して、レーヨン繊維からリナロールを抽出した。抽出液をアセトンで5倍希釈し、リナロールをガスクロマトグラフィーで測定した。ガスクロマトグラフィーの条件は実施例24と同様であった。結果を表17に示す。
実施例1−4で作製したアミロース含有レーヨン繊維中のリナロールの保持量は8.2%であり、コントロールのレーヨン繊維の2.4倍の包接力を示すことがわかった。このように、アミロース含有レーヨン繊維はリナロールを包接できることが分かった。
<実施例30:アミロース含有レーヨン繊維による芳香成分メントンの包接>
実施例1−2で作製したアミロース含有レーヨン繊維および比較例1−1で製造したコントロールのレーヨン繊維の包接力をゲスト物質としてケトン系香料メントンを用いて評価した。これらのレーヨン繊維は、綿の状態で使用した。
実施例1−2で作製したアミロース含有レーヨン繊維および比較例1−1で製造したコントロールのレーヨン繊維100mgにそれぞれ2%メントンのメタノール溶液800μLを添加し、100℃のオーブン中で乾燥させて、溶媒および余分なメントンを揮発させた。14時間後、オーブンから取り出し、メントンを包接したアミロース含有レーヨンおよびコントロールレーヨン繊維を得た。
メントンを包接した各レーヨン繊維中のメントン量を測定するために、各レーヨン繊維に75%メタノール水溶液2mLを添加して、レーヨン繊維からメントンを抽出した。抽出液をアセトンで5倍希釈し、メントンをガスクロマトグラフィーで測定した。ガスクロマトグラフィーの条件は実施例24と同様であった。結果を表18に示す。
実施例1−2で作製したアミロース含有レーヨン繊維中のメントンの含有率は4.1%であり、コントロールのレーヨン繊維の1.8倍の包接力を示すことがわかった。このように、アミロース含有レーヨン繊維はメントンを包接できることが分かった。
<実施例31:アミロース含有レーヨン繊維による芳香成分シトロネラールの包接>
実施例1−2で作製したアミロース含有レーヨン繊維および比較例1−1で製造したコントロールのレーヨン繊維の包接力をゲスト物質としてアルデヒド系香料シトロネラールを用いて評価した。これらのレーヨン繊維は、綿の状態で使用した。
実施例1−2で作製したアミロース含有レーヨン繊維および比較例1−1で製造したコントロールのレーヨン繊維100mgにそれぞれ2%シトロネラールのメタノール溶液800μLを添加し、100℃のオーブン中で乾燥させて、溶媒および余分なシトロネラールを揮発させた。14時間後、オーブンから取り出し、シトロネラールを包接したアミロース含有レーヨンおよびコントロールレーヨン繊維を得た。
シトロネラールを包接した各レーヨン繊維中のシトロネラール量を測定するために、各レーヨン繊維に75%メタノール水溶液2mLを添加して、レーヨン繊維からシトロネラールを抽出した。抽出液をアセトンで5倍希釈し、シトロネラールをガスクロマトグラフィーで測定した。ガスクロマトグラフィーの条件は実施例24と同様であった。結果を表19に示す。
実施例1−2で作製したアミロース含有レーヨン繊維中のシトロネラールの含有率は2.2%であり、コントロールのレーヨン繊維の1.7倍の包接力を示すことがわかった。このように、アミロース含有レーヨン繊維はシトロネラールを包接できることが分かった。
<実施例32:アミロース含有レーヨン繊維による芳香成分ノナナールの包接>
実施例1−2で作製したアミロース含有レーヨン繊維および比較例1−1で製造したコントロールのレーヨン繊維の包接力をゲスト物質としてアルデヒド系香料ノナナールを用いて評価した。これらのレーヨン繊維は、綿の状態で使用した。
実施例1−2で作製したアミロース含有レーヨン繊維および比較例1−1で製造したコントロールのレーヨン繊維100mgにそれぞれ2%ノナナールのメタノール溶液800μLを添加し、100℃のオーブン中で乾燥させて、溶媒および余分なノナナールを揮発させた。14時間後、オーブンから取り出し、ノナナールを包接したアミロース含有レーヨンおよびコントロールレーヨン繊維を得た。
ノナナールを包接した各レーヨン繊維中のノナナール量を測定するために、各レーヨン繊維に75%メタノール水溶液2mLを添加して、レーヨン繊維からノナナールを抽出した。抽出液をアセトンで5倍希釈し、ノナナールをガスクロマトグラフィーで測定した。ガスクロマトグラフィーの条件は実施例24と同様であった。結果を表20に示す。
実施例1−2で作製したアミロース含有レーヨン繊維中のノナナールの含有率は2.8%であり、コントロールのレーヨン繊維の2.0倍の包接力を示すことがわかった。このように、アミロース含有レーヨン繊維はノナナールを包接できることが分かった。
<実施例33:アミロース含有レーヨン繊維による芳香成分ゲラニオールの包接>
実施例1−2で作製したアミロース含有レーヨン繊維および比較例1−1で製造したコントロールのレーヨン繊維の包接力をゲスト物質としてアルコール系香料ゲラニオールを用いて評価した。これらのレーヨン繊維は、綿の状態で使用した。
実施例1−2で作製したアミロース含有レーヨン繊維および比較例1−1で製造したコントロールのレーヨン繊維100mgにそれぞれ2%ゲラニオールのメタノール溶液800μLを添加し、100℃のオーブン中で乾燥させて、溶媒および余分なゲラニオールを揮発させた。14時間後、オーブンから取り出し、ゲラニオールを包接したアミロース含有レーヨンおよびコントロールレーヨン繊維を得た。
ゲラニオールを包接した各レーヨン繊維中のゲラニオール量を測定するために、各レーヨン繊維に75%メタノール水溶液2mLを添加して、レーヨン繊維からゲラニオールを抽出した。抽出液をアセトンで5倍希釈し、ゲラニオールをガスクロマトグラフィーで測定した。ガスクロマトグラフィーの条件は実施例24と同様であった。結果を表21に示す。
実施例1−2で作製したアミロース含有レーヨン繊維中のゲラニオールの含有率は4.5%であり、コントロールのレーヨン繊維よりも1.8倍の包接力を示すことがわかった。このように、アミロース含有レーヨン繊維はゲラニオールを包接できることが分かった。
<実施例34:アミロース含有レーヨン繊維による芳香成分シトロネロールの包接>
実施例1−2で作製したアミロース含有レーヨン繊維および比較例1−1で製造したコントロールのレーヨン繊維の包接力をゲスト物質としてアルコール系香料シトロネロールを用いて評価した。これらのレーヨン繊維は、綿の状態で使用した。
実施例1−2で作製したアミロース含有レーヨン繊維および比較例1−1で製造したコントロールのレーヨン繊維100mgにそれぞれ2%シトロネロールのメタノール溶液800μLを添加し、100℃のオーブン中で乾燥させて、溶媒および余分なシトロネロールを揮発させた。14時間後、オーブンから取り出し、シトロネロールを包接したアミロース含有レーヨンおよびコントロールレーヨン繊維を得た。
シトロネロールを包接した各レーヨン繊維中のシトロネロール量を測定するために、各レーヨン繊維に75%メタノール水溶液2mLを添加して、レーヨン繊維からシトロネロールを抽出した。抽出液をアセトンで5倍希釈し、シトロネロールをガスクロマトグラフィーで測定した。ガスクロマトグラフィーの条件は実施例24と同様であった。結果を表22に示す。
実施例1−2で作製したアミロース含有レーヨン繊維中のシトロネロールの保持量は5.4%であり、コントロールのレーヨン繊維の2.3倍の包接力を示すことがわかった。このように、アミロース含有レーヨン繊維はシトロネロールを包接できることが分かった。
<実施例35:アミロース含有レーヨン繊維による芳香成分酢酸リナリルの包接>
実施例1−2で作製したアミロース含有レーヨン繊維および比較例1−1で製造したコントロールのレーヨン繊維の包接力をゲスト物質としてエステル系香料の酢酸リナリルを用いて評価した。これらのレーヨン繊維は、綿の状態で使用した。
実施例1−2で作製したアミロース含有レーヨン繊維および比較例1−1で製造したコントロールのレーヨン繊維100mgにそれぞれ2%酢酸リナリルのメタノール溶液800μLを添加し、50℃のオーブン中で乾燥させて、溶媒および余分な酢酸リナリルを揮発させた。15時間後、オーブンから取り出し、酢酸リナリルを包接したアミロース含有レーヨンおよびコントロールレーヨン繊維を得た。
酢酸リナリルを包接した各レーヨン繊維中の酢酸リナリル量を測定するために、各レーヨン繊維に75%メタノール水溶液2mLを添加して、レーヨン繊維から酢酸リナリルを抽出した。抽出液をアセトンで5倍希釈し、酢酸リナリルをガスクロマトグラフィーで測定した。ガスクロマトグラフィーの条件は実施例24と同様であった。結果を表23に示す。
実施例1−2で作製したアミロース含有レーヨン繊維中の酢酸リナリルの保持量は1.0%であり、コントロールのレーヨン繊維の2.4倍の包接力を示すことがわかった。このように、アミロース含有レーヨン繊維は酢酸リナリルを包接できることが分かった。
<実施例36:メントールを包接したアミロース含有レーヨン繊維からのメントールの徐放>
メントールを包接させたアミロース含有レーヨンからのメントールの徐放性における、アミロースの重合度の影響を調べた。
実施例1−2、実施例1−4、および実施例19−2で作製したアミロース含有レーヨン繊維のそれぞれ100mgに2%メントールのメタノール溶液800μL添加し、100℃のオーブン中で乾燥させて、溶媒および余分なメントールを揮発させた。15時間後、オーブンから取り出し、メントールを包接したアミロース含有レーヨン繊維を得た。
これらのメントール包接アミロース含有レーヨン繊維の加湿条件下における徐放性を調べた。メントール包接アミロース含有レーヨン繊維をそれぞれ恒温恒湿器内に広げて静置し、4時間後、繊維のメントールの量を調べた。温度および湿度は37℃にて50%または37℃にて80%に設定した。メントールの抽出法および分析法は、それぞれ実施例24と同様であった。結果を表24に示す。
表24に示すように、メントール包接アミロース含有レーヨン繊維は、温度37℃、湿度50%の環境下では4時間経ってもメントールを0〜0.11mgしか放出しなかったが、湿度を80%に上げると1.2〜1.6mgのメントールを放出した。メントールの放出量に関して、アミロース重合度との関係は特に見られなかった。このように、アミロース含有レーヨン繊維に包接させたゲスト物質のメントールは、試験した範囲において、含有するアミロースの重合度に関わらず、湿度をあげることにより徐放されることが分かった。
<実施例37:芳香成分を包接したアミロース含有レーヨン繊維からの芳香成分の徐放>
実施例29(リナロール)、実施例30(メントン)、実施例31(シトロネラール)、実施例32(ノナナール)、実施例33(ゲラニオール)、実施例34(シトロネロール)および実施例35(酢酸リナリル)で作製した各芳香成分包接アミロース含有レーヨン繊維の加湿条件下における徐放性を調べた。実施例36で確認されたように、平均分子量3.00×10〜1.174×10の範囲ではアミロースの分子量による徐放性の差は、ほとんどなかったので、実施例1―2のアミロース含有レーヨン繊維で代表させて徐放性を調べた。
各芳香成分包接アミロース含有レーヨン繊維をそれぞれ恒温恒湿器内に広げて静置し、4時間後、それぞれの繊維の各芳香成分の量を調べた。温度および湿度は37℃にて50%または37℃にて80%に設定した。
各芳香成分の抽出法および分析法は、それぞれ実施例29(リナロール)、実施例30(メントン)、実施例31(シトロネラール)、実施例32(ノナナール)、実施例33(ゲラニオール)、実施例34(シトロネロール)および実施例35(酢酸リナリル)と同様であった。各芳香成分の放出率(%)は以下の式で求めた。結果を表25に示す。
表24に示すように、実施例29(リナロール)、実施例30(メントン)、実施例31(シトロネラール)、実施例32(ノナナール)、実施例33(ゲラニオール)、実施例34(シトロネロール)および実施例35(酢酸リナリル)で作製した各芳香成分包接アミロース含有レーヨン繊維は、温度37℃、湿度50%の環境下では4時間経っても各芳香成分を放出しなかったが、温度37℃、湿度を80%に上げると芳香成分の19.0〜37.9%が放出された。
このように放出率に差は見られるものの、アミロース含有レーヨン繊維に包接させたゲスト物質の各芳香成分はどれも、湿度条件を変化させることにより徐放性を示すことが分かった。
<実施例38:アミロース含有レーヨン繊維と、アミロース粉末とでのメントール包接能の比較>
アミロース含有レーヨン繊維のメントールの包接量を、アミロース粉末の包接量と比較した。
実施例1−2、実施例1−4、および実施例19−2で作製したアミロース含有レーヨン繊維、比較例1−1で作製したコントロールのレーヨン繊維および合成例1で合成した平均分子量4.62×10または1.174×10の酵素合成アミロース、および合成例2で合成した平均分子量3.00×10の酵素合成アミロースのそれぞれ100mgに2%メントールのメタノール溶液800μL添加し、100℃のオーブン中で乾燥させて、溶媒および余分なメントールを揮発させた。15時間後、オーブンから取り出し、メントールを包接したアミロース含有レーヨン繊維、コントロールレーヨン繊維および酵素合成アミロース粉末を得た。それぞれのレーヨン繊維のメントール含有量を調べた。メントールの抽出法および分析法は、それぞれ実施例24と同様であった。結果を表26に示す。
アミロース含有レーヨン繊維の実際のメントール含有量からコントロール繊維のメントール含有量を差し引いた量は、レーヨン繊維中に含まれるアミロースによるメントール含有量を示す。アミロースをレーヨン繊維に含有させてもアミロースの包接能力に変化がなければ(すなわち、アミロースとレーヨン繊維との間に相乗作用がなければ)、アミロース1gあたりのメントール含有量は、アミロース単独でのメントール含有量と同じはずである。しかし、表26に示されるように、アミロースの重量あたりのメントール含有量を比較すると、アミロースをレーヨン繊維に含有させた場合の方がメントール含有量が顕著に増加している。表26に示されるように、アミロースの重量あたりのメントールの包接量は、平均分子量4.62×10、1.174×10、3.00×10の酵素合成アミロースで、それぞれ約15倍、約7.4倍、約31倍と、酵素合成アミロースをレーヨン繊維に含有させることにより、顕著に増加することが分かる。従って、アミロースをレーヨン繊維に含有させることにより、アミロースの包接能力が向上し、その効果は相乗的であることがわかった。
<実施例39:アミロース含有レーヨン繊維と、アミロース粉末との芳香成分の包接能の比較>
アミロース含有レーヨン繊維のメントールの包接量を、アミロース粉末の包接量と比較した。実施例38で確認されたように、平均分子量3.00×10〜1.174×10の範囲では、アミロースはどの分子量でも、レーヨンに練り込むことにより、アミロースの重量当たりの包接量が大きく上昇したので、ここでは実施例1―2のアミロース含有レーヨン繊維および試料2の平均分子量4.62×10の酵素合成アミロース粉末で代表させて調べた。すなわち、いずれの試料においてもアミロースの平均分子量は4.62×10であった。
実施例1−2、合成例1で合成した平均分子量4.62×10の酵素合成アミロース(試料2)、および比較例1−1で作製したコントロールのレーヨン繊維それぞれ100mgに2%の表27に示す各芳香成分を含むメタノール溶液800μLを添加し、50℃(酢酸リナリル)または100℃(酢酸リナリル以外)のオーブン中で乾燥させて、溶媒および余分な芳香成分を揮発させた。15時間後、オーブンから取り出し、芳香成分を包接したアミロース含有レーヨン繊維、コントロールレーヨン繊維および酵素合成アミロース粉末を得た。各レーヨン繊維の芳香成分含有量を調べた。各芳香成分の抽出法および分析法は、それぞれ実施例29(リナロール)、実施例30(メントン)、実施例31(シトロネラール)、実施例32(ノナナール)、実施例33(ゲラニオール)、実施例34(シトロネロール)および実施例35(酢酸リナリル)と同様であった。結果を表27に示す。
アミロース含有レーヨン繊維の実際の芳香成分含有量からコントロール繊維の芳香成分含有量を差し引いた量は、レーヨン繊維中に含まれるアミロースによる芳香成分含有量を示す。アミロースをレーヨン繊維に含有させてもアミロースの包接能力に変化がなければ(すなわち、アミロースとレーヨン繊維との間に相乗作用がなければ)、アミロース1gあたりの芳香成分含有量は、アミロース単独での芳香成分含有量と同じはずである。しかし、表27に示されるように、同じ芳香成分を包接させた場合のアミロースの重量あたりの芳香成分含有量を比較すると、アミロースをレーヨン繊維に含有させた場合の方が芳香成分含有量が顕著に増加している。表27に示されるように、アミロースの重量あたりの各芳香成分の包接量は、レーヨン繊維に含有させることにより、アミロース重量あたり約5.1倍(ゲラニオール)〜約15.9倍(ノナナール)と顕著に増加することが分かる。従って、アミロースをレーヨン繊維に含有させることにより、アミロースの包接能力が向上し、その効果は相乗的であることがわった。
以上のように、本発明の好ましい実施形態を用いて本発明を例示してきたが、本発明は、この実施形態に限定して解釈されるべきものではない。本発明は、特許請求の範囲によってのみその範囲が解釈されるべきであることが理解される。当業者は、本発明の具体的な好ましい実施形態の記載から、本発明の記載および技術常識に基づいて等価な範囲を実施することができることが理解される。本明細書において引用した特許、特許出願および文献は、その内容自体が具体的に本明細書に記載されているのと同様にその内容が本明細書に対する参考として援用されるべきであることが理解される。
本レーヨン繊維は、アミロースを安定に保持しており、洗濯などの操作においてもアミロースは溶出せず、繰り返し使用に耐えることができる。さらに本レーヨン繊維は、アミロースが包接機能を発揮できる状態で含有しており、様々なゲスト物質を添加することにより、繊維に追加機能を付与することができる。

Claims (25)

  1. アミロース含有レーヨン繊維の製造方法であって、
    アミロースのアルカリ水溶液とビスコースとを混合して混合液を得る工程;および
    該混合液を紡糸してアミロース含有レーヨン繊維を得る工程
    を包含し、
    該アミロースは、重量平均分子量が3×10以上2×10以下の酵素合成アミロースである、方法。
  2. 前記アミロース含有レーヨン繊維が、加熱冷却処理される、請求項1に記載の方法。
  3. 前記アミロース含有レーヨン繊維が、アルカリ処理される、請求項1に記載の方法。
  4. 前記アミロース含有レーヨン繊維をヨウ素およびポリヨウ化物イオン以外のゲスト物質と接触させて該ゲスト物質を該アミロース含有レーヨン繊維のアミロース中に包接させる工程を包含し、該ゲスト物質が、殺菌剤、抗菌剤、防虫成分、におい成分、生理機能物質、紫外線吸収物質、化粧品成分、着色料、染料、消臭成分および防カビ成分からなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
  5. 前記アミロース含有レーヨン繊維をアミロースのゲスト物質と接触させない、請求項1に記載の方法。
  6. 前記酵素合成アミロースが、α−1,6−グルコシド結合を含まないアミロースである、請求項1に記載の方法。
  7. 前記酵素合成アミロースの分散度が3.0以下である、請求項1に記載の方法。
  8. 前記アミロース含有レーヨン繊維中の前記酵素合成アミロースの含有量が0.01重量%以上50重量%以下である、請求項1に記載の方法。
  9. ゲスト物質を包接する能力を有するアミロース含有レーヨン繊維であって、該レーヨン繊維中のアミロースは、洗浄により実質的に溶出せず、かつ該レーヨン繊維中に分散しており、該アミロースは、重量平均分子量が3×10以上2×10以下の酵素合成アミロースであり、該アミロースはゲスト物質を包接していない、アミロース含有レーヨン繊維。
  10. アミロースの含有量が0.01重量%以上50重量%以下である、請求項9に記載のアミロース含有レーヨン繊維。
  11. アミロース含有レーヨン繊維であって、該レーヨン繊維中のアミロースは、洗浄により実質的に溶出せず、かつ該レーヨン繊維中に分散しており、該アミロースは、重量平均分子量が3×10以上2×10以下の酵素合成アミロースであり、該アミロースはヨウ素およびポリヨウ化物イオン以外のゲスト物質を包接している、アミロース含有レーヨン繊維。
  12. アミロースの含有量が0.01重量%以上50重量%以下である、請求項11に記載のアミロース含有レーヨン繊維。
  13. ゲスト物質として殺菌剤を包接している、請求項11に記載のアミロース含有レーヨン繊維。
  14. ゲスト物質として香料を包接している、請求項11に記載のアミロース含有レーヨン繊維。
  15. ゲスト物質として紫外線吸収物質を包接している、請求項11に記載のアミロース含有レーヨン繊維。
  16. ゲスト物質として生理機能物質を包接している、請求項11に記載のアミロース含有レーヨン繊維。
  17. ゲスト物質として防虫成分を包接している、請求項11に記載のアミロース含有レーヨン繊維。
  18. ゲスト物質として消臭成分を包接している、請求項11に記載のアミロース含有レーヨン繊維。
  19. 前記酵素合成アミロースが、α−1,6−グルコシド結合を含まないアミロースである、請求項9または11に記載のアミロース含有レーヨン繊維。
  20. 前記酵素合成アミロースの分散度が3.0以下である、請求項9または11に記載のアミロース含有レーヨン繊維。
  21. 化学物質を濃縮、回収、除去または単離するために、該化学物質を繊維中に捕捉する方法であって、
    該化学物質を含有する溶液または気体と、請求項9に記載のアミロース含有レーヨン繊維とを接触させることにより、該化学物質を前記アミロースに包接させる工程を包含し、該化学物質はアミロースにより包接可能な物質であり、該化学物質はヨウ素およびポリヨウ化物イオン以外の物質である、方法。
  22. 請求項9に記載のアミロース含有レーヨン繊維を含む、前記ゲスト物質の濃縮、回収、除去または単離用の製品。
  23. 請求項9または11に記載のアミロース含有レーヨン繊維を含む、織物、編物、不織布または紙より得られた製品。
  24. 請求項9に記載のアミロース含有レーヨン繊維を含む、消臭用製品。
  25. 請求項15に記載のアミロース含有レーヨン繊維を含む、紫外線防止用製品。
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