JP5495000B2 - 抗原誘導体、当該抗原誘導体を用いて作成されたモノクローナル抗体、及び抗原誘導体の調製方法 - Google Patents
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池ヶ谷賢次郎他、チャの分析法、茶業研究報告 71、43(1989)
本実施形態における芳香族化合物に対するモノクローナル抗体の作成にあたって、抗原の調製を行う。本実施形態に好適に用いることができる芳香族化合物としては、フラバノン、フラボン、フラボノール、及びカテキン類を挙げることができる。このうち、フラボノール、及びカテキン類等のフラバン骨格を有する芳香族化合物が好ましい。カテキン類を抗原とした場合、抗カテキン抗体作成のための、抗原の調製にあたっては、まず、茶葉抽出液を得て、化学的分離精製方法により、カテキン類を単離、精製する。次いで、単離したカテキン類の6位に、マンニッヒ反応を用いてアミノ酸を結合させ、カテキン誘導体とする。このカテキン誘導体とキャリアータンパク質とを、化学的手法を用いて結合させ、カテキン誘導体−キャリアータンパク質縮合体として抗カテキン抗体作成用の抗原とする。
茶葉抽出液を得るにあたっては、アッサム雑種の茶葉を原料とする緑茶又は包種茶の茶葉を用いることができる。具体的には、あさつゆ、ふじかおり、ふくみどり、ふうしゅん、ほうりょく、かなやみどり、くりたわせ、くらさわ、まきのはらわせ、めいりょく、なつみどり、おおいわせ、おくひかり、おくみどり、おくむさし、おくゆたか、りょうふう、さえみどり、さやまかおり、さやまみどり、しゅんめいするがわせ、つゆひかり、とよか、やぶきた、やえほ、やまかい、やまとみどり、ゆたかみどり、いずみ、たかちほ、たまみどり、やまなみ、あさぎり、あさひ、ごこう、こまかげ、さみどり、うじみどり、べにふじ、べにふうき、べにひかり、べにほまれ、はつもみじ、からべに、ただにしき等を挙げることができる。抽出に用いる茶葉は、そのままの状態でもよいが、粉末であることが好ましい。また、この粉末は均一な大きさであることが好ましいため、ふるいにかけて用いてもよい。
上記方法により得られた茶葉抽出液から、化学分離精製方法として一般的に用いられる方法にて、所望のカテキン類を分離する。化学的分離精製方法としては、例えば、液−液分配、薄層クロマトグラフィー、吸着カラムクロマトグラフィー、分配カラムクロマトグラフィー、ゲルろ過カラムクロマトグラフィー、イオン交換カラムクロマトグラフィー、電気泳動、及び高速液体クロマトグラフィー等があげられる。実際の分離操作においては、これらの化学的分離精製方法を、必要に応じて組み合わせて用いることが好ましい。
芳香族化合物と、キャリアータンパク質を結合させるためには、キャリアータンパク質の有する官能基と反応し、かつ化学的に安定な結合を有する官能基を、芳香族化合物に導入する必要がある。キャリアータンパク質の有する官能基としては、具体的には、アミノ基、カルボキシル基、チオール基等を挙げることができる。芳香族化合物に導入する官能基としては、キャリアータンパク質の有する官能基と反応できる官能基であれば、特に限定されないが、例えば、カルボキシル基、アミノ基、アルコール性水酸基、及びチオール基を挙げることができる。なお、本実施形態においては、タンパク質のリジン残基に存在するε−アミノ基と抗原誘導体のカルボキシル基をカルボジイミド法を用いて結合させるため、カルボキシル基を導入することが好ましい。
抗原誘導体は以下のようにして調製する。即ち、本実施形態に係る芳香族化合物1当量に対して第1級アミン、及び第2級アミン1当量から2当量を水とメタノールとを3対2で混合した混合溶媒に溶解し、これにホルマリン1当量から2当量を添加する。これを10℃から50℃で1時間から30時間反応させる。反応液からの抗原誘導体の分離する際には、「Diaion HP−20」(三菱化成社製)、「Amberlite XAD−2」(Rohm and Hass社製)、及びオクタデシルシリカ(ODS)を利用する。分離した抗原誘導体の純度を確認するため、薄層クロマトグラフィー、及び高速液体クロマトグラフィーなどを行う。
抗原類誘導体は、化学的手法を用いて、キャリアータンパク質に結合させることができる。ここで、用いることができるキャリアータンパク質としては、それ自身は免疫源性に乏しく、かつ高分子量のタンパク質を好ましく用いることができる。具体的には、ウシ血清アルブミン(BSA)、卵白アルブミン(OVA)及びカブトガニヘモシアニン(KLH)等を挙げることができる。中でも、KLHが、それ自身免疫源性に乏しいため、キャリアータンパク質として好ましい。
モノクローナル抗体の作成は、芳香族化合物としてカテキン類を用い、常法に従って行うことができ、マウスを免疫したあと、このマウスからリンパ球を採取し、培養したミエローマ細胞と細胞融合させる。細胞融合させた細胞について、抗カテキン抗体を産生している細胞をスクリーニングし、クローニングして抗カテキンモノクローナル抗体産生ハイブリドーマを得る。抗カテキンモノクローナル抗体産生ハイブリドーマを培養することにより、その培養液からモノクローナル抗体を得ることができる。
モノクローナル抗体の作成に先立って、マウスを用いて免疫を行う。免疫は常法に従って行うことができる。1回の免疫においては、0.5μgから200μgの抗原を用いる。抗原を実験動物に注射する際には、アジュバントと共に用いることが好ましい。用いることのできるアジュバントとしては、フロイントアジュバント、フロイント完全アジュバント、及びミョウバンアジュバント等を挙げることができる。アジュバントを用いる際には、抗原溶液と、等量のアジュバントとを均一に混合し、実験動物に皮下若しくはフットパットに注射する。免疫は2週間から3週間おきに、2回から3回行う。各回の免疫後、約2週間後に、採血を行い、抗体価を測定し、抗体価に応じて、適宜免疫の回数を調整する。更に、後述する細胞融合の3から7日前に、1μgから100μgの抗原溶液をフットパット、又は腹腔に注射し、細胞融合に用いる。
(ミエローマ細胞の調製)
凍結保存されたミエローマ細胞の親細胞を37℃の湯せんで解凍し、適当な血清培地に移して37℃、5%二酸化炭素、湿度100%で、2、3日おきに数回の継代培養を行う。継代培養した細胞を、新しい血清培地に移し、対数増殖期のものを細胞融合に用いる。細胞融合に用いることのできるミエローマ細胞としては、ヒポキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HGPRT)欠損株、又はチミジンキナーゼ(TK)欠損株であれば、特に限定されないが、例えばP3U1細胞株を用いることができる。
免疫したマウスに麻酔、消毒を施し、切開して、リンパ節及び脾臓を摘出する。これらの組織は、数箇所をはさみで切断し、セルスクレーバー等を用いてリンパ球を押し出す。押し出したリンパ球は適当な血清培地に懸濁し、細胞融合に用いる。
細胞融合は常法に従って用いて行うことができる。ミエローマ細胞とリンパ球を1:5の割合で混合し、ペレットにしたものに50%ポリエチレングリコール溶液1mlを1分かけてゆっくりと加え、緩やかに攪拌させながら更に2分間細胞融合を行う。細胞を洗浄して、HAT(ヒポキサンチン、アミノプテリン、チミジン)培地に懸濁して、細胞を96ウェルマイクロプレート10枚に蒔き、8日から9日培養する。
抗体スクリーニングは常法に従い、酵素免疫測定法(ELISA法)を用いて行う。即ち、抗原の調製に用いたカテキン類をELISA用マイクロプレートに結合させ、ブロッキングを行い、細胞融合後の各ウェルの培養液の上清を添加して、上清中の抗体を5℃から40℃で0.5時間から24時間反応させる。これに2次抗体を反応させ、5℃から40℃で、0.5時間から24時間反応させる。ここで、スクリーニングに用いる2次抗体としては、特に限定されないが、ウシ小腸アルカリホスファターゼ(CIAP)標識抗マウスIgG抗体、又はセイヨウワサビペルオキシダーゼ標識抗マウスIgG抗体等を用いることができる。ELISA用マイクロプレートに2次抗体を反応させた後は、2次抗体の検出反応により、陽性のウェルを検出する。陽性のウェルの細胞は、増殖させた後、凍結保存する。
抗体スクリーニングで陽性を示したウェルの細胞を解凍し、限界希釈によって、単一のコロニーが得られるように培養することにより、クローニングを行う。各コロニーの培養液の上清について、ELISA法で抗体価を測定し、抗体価が高く、安定したコロニーをスクリーニングし、抗カテキンモノクローナル抗体産生ハイブリドーマとする。
抗カテキンモノクローナル抗体産生ハイブリドーマを培養することにより、その培養液からモノクローナル抗体を得ることができる。ハイブリドーマの培養には、RPMI培地、DMEM培地、及びERDF培地等の非血清培地を用い、フィーダー細胞としてマウス胸腺細胞を用いる。
本実施形態の抗カテキンモノクローナル抗体は、カテキン類の定性的、定量的分析に用いることができる。抗カテキンモノクローナル抗体を用いた定性的分析としては、免疫組織染色法、蛍光抗体法、吸着法、及び中和法を挙げることができる。抗カテキンモノクローナル抗体を用いた定量的分析としては、ELISA法、ラジオイムノアッセイ、及びウエスタンブロッティング等を挙げることができる。定量的分析としては、簡便に行うことができるという点からELISA法が好ましい。
本実施形態において行うことができるELISA法としては、競合ELISA法、サンドウィッチELISA法等を行うことができる。
競合ELISA法を行うにあたっては、抗カテキンモノクローナル抗体をELISA用プレートに結合させ、これに、CIAP及びセイヨウワサビペルオキシダーゼ等の酵素等で標識した一定濃度のカテキン類と共に、試料を添加する。試料中のカテキン類と、酵素等で標識したカテキン類は、抗カテキンモノクローナル抗体への結合をめぐって競合し、試料中のカテキン類の濃度に応じて、酵素等で標識した抗原が抗カテキンモノクローナル抗体に結合する。酵素等で標識したカテキン類の抗カテキンモノクローナル抗体への結合量は、標識した酵素等による酵素反応の強度を元に推定することができ、これにより、試料中のカテキン類の濃度を推定することができる。
サンドウィッチELISA法を行うにあたっては、カテキン分子中の異なる抗原決定部位を認識する2種類のモノクローナル抗体を用いる。即ち、ELISA用プレートに第1のモノクローナル抗体を結合させ、これに、カテキン類を含有する試料を添加する。ELISA用プレートに結合したモノクローナル抗体の抗原結合部位には、試料中のカテキン類の濃度に応じて、カテキン類が結合する。次に、ELISA用プレートから試料を取り除き、洗浄した後、CIAP及びセイヨウワサビペルオキシダーゼ等の酵素で標識した第2のモノクローナル抗体を添加する。第2のモノクローナル抗体は、第1のモノクローナル抗体に結合したカテキン類の結合量に応じた結合量で結合する。ELISA用プレートに結合した第2のモノクローナル抗体の結合量を、標識した酵素による酵素反応の強度を元に推定することにより、試料中のカテキン類の濃度を推定することができる。
[抗原の調製]
べにふじからエピガロカテキン−3−O−(3−O−メチル)ガレート(EGCG3”Me)を調製し、236mgを水3mlとメタノール2mlの混合液に溶かし、N−メチル−4−アミノ酪酸108mg、ホルマリン(37%水溶液)40μg、水0.25mlの混合液を混ぜ、室温で29時間攪拌した。反応液は多孔質樹脂を充填した「Mitsubishi Diaion HP−20カラム」(2×20cm、三菱化学社製)に通し水洗後メタノール200mlで溶出した。溶出液は減圧下に濃縮し分取用液体クロマトグラフィーにて精製した。分取用液体クロマトグラフィーにおいては、「Capcellpak ODS カラム」(20×250mm、資生堂社製)を用い、溶出用溶媒は水、アセトニトリル、トリフルオロ酢酸を87.5:12.5:0.05の容量比で混合させた溶媒を用いた。この結果、無色の粉末が58mg得られた。
6週齢の「BALB/Cマウス雌」(日本チャールズリバー社製)の皮下及びフットパットへ「フロイントコンプリートアジュバント」(ディフコ社製)又は「タイターマックスゴールド」(シグマ社製)と1mg/ml抗原液とを等量ずつ混合し、1匹あたり抗原0.1mgを2週間おきに2回から3回に分けて投与した。細胞融合の3日前に抗原溶液(抗原30μg)をフットパット又は腹腔へ投与し細胞融合に用いた。
10%ウシ胎児血清を含む「PRIMI1640培地」(コージンバイオ社製)にピルビン酸、グルタミン、抗生物質を添加しミエローマ細胞用培地とした。凍結保存されたミエローマ細胞(P3U1細胞)を37℃の湯にて解凍し、遠心洗浄後プラスチックシャーレにて培養を行った。2、3日おきに数回の継代培養を行い、対数増殖期の細胞を用意した。このミエローマ細胞と、免疫したマウスから取得した免疫リンパ球とを定法に従い、細胞融合した。
8日目に増殖したウェルの培養上清を用い、ELISA法により抗体産生細胞のスクリーニングを行った。ELISA法により陽性を示したウェルの細胞は、更に培養を行って、凍結保存した。凍結した細胞の一部は、更に解凍して培養を行い、限界希釈によるクローニングを行った。即ち、1ウェルに1個の細胞が入るよう希釈した細胞液を96ウェルマイクロプレートへ蒔きおよそ9日間培養した。培養にはフィーダー細胞としてマウス胸腺細胞を用いた。2回のクローニングにより単一なコロニーとなったウェルの抗体をスクリーニングし抗体産生が強く、安定したコロニーを選択した。選択された細胞を24ウェルプレートからシャーレ培養へと拡大培養を行い、およそ5×106個にて凍結保存を行い、抗体産生ハイブリドーマとした。
選択されたモノクローナル抗体の特異性試験は抗原を用いた吸収試験により行った。即ち、メチル化カテキンを固相化した抗原プレートへ、前もってメチル化カテキン又は対照としてリン酸緩衝生理食塩水(PBS)を反応させたモノクローナル抗体培養上清を反応させ、抗原プレートに結合した抗体の量を、酵素標識2次抗体を用いて推定した。PBSに反応させたモノクローナル抗体の結合量と比較して減少した、メチル化カテキンと反応させたモノクローナル抗体が結合した結合量を以って、抗体の特異性の度合いとした。
Claims (4)
- 請求項1に記載の抗原誘導体と、キャリアータンパク質と、を結合させて得られる抗原誘導体−キャリアータンパク質縮合体。
- 前記キャリアータンパク質はカブトガニヘモシアニンである請求項2に記載の抗原誘導体−キャリアータンパク質縮合体。
- キャリアータンパク質と結合させて、低分子物質に対する抗体作成に用いるための抗原誘導体の調製方法であって、
前記低分子物質は、相対的位置が互いにメタ位となるように結合された二つのフェノール性水酸基を有し、且つこれら二つのフェノール性水酸基の双方に対してオルト位に水素原子を有する芳香族化合物であって、一般式(2)で示されるカテキンであり、
前記低分子物質と、一般式(1)で示される化合物と、をホルムアルデヒドによるマンニッヒ反応を用いて、一般式(2)で示されるカテキンのフェノール性水酸基の双方に対してオルト位に位置する水素と、一般式(1)で示される化合物のアミンとを縮合させることにより、一般式(4)で示される抗原誘導体を調製する抗原誘導体の調製方法。
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