JP5493745B2 - 化学物質の分離キット及び分離方法 - Google Patents

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Description

本発明は、試料中の化学物質を分離するキット及び方法に関する。
試料中に含有される化学物質を分離する方法としては、従来、(1)分離対象の化学物質を溶解させる溶媒を使用して液体試料から該化学物質を抽出する、いわゆる液−液抽出法、(2)同様の溶媒を使用して固体試料から分離対象の化学物質を抽出する、いわゆる固相抽出法等が適用されている(非特許文献1参照)。
一方、製品の品質管理、製品の製造過程における工程管理、環境試験、病理検査等、種々の分野では、上記の方法で化学物質を分離し、その試料中での含有量を定量する分析が汎用されている。通常、このような分析では、対象となる化学物質は微量である。そして、特に健康管理や安全管理の重要性が一層認識されるようになった近年では、ますますその実施の機会が増えてきている。例えば、日本においては、食品衛生法によってポジティブリスト制度が定められ、農薬、動物用医薬品及び飼料添加物が一定量以上残留する食品の販売等が禁止されている。厚生労働省では、これら農薬等についての試験法(一斉試験法、個別試験法)を公開しているが、対象となる農薬等は、上記のような従来法で分離及び定量が行われる。
このような中、産業界においては、処理が必要な試料数の増大に伴い、簡便且つ高精度に試料中の化学物質を分析できるように改善することが、強く望まれるようになってきている。
新版 続実験を安全に行うために、化学同人編集部編、1987年
しかし、従来適用されてきた化学物質の分離方法では、化学物質の抽出に揮発性の有機溶媒を使用することがほとんどであり、抽出した化学物質を含む溶液は、分離操作の過程で濃度変化が避けられない。したがって、化学物質の含有量を正確に分析するためには、抽出後の溶媒を一度完全に除去した後、再度溶媒を添加して溶液の濃度調整を行う必要があった。そのため、化学物質の抽出から分析を終了するまでの一連の工程が複雑になり、時間を要するだけでなく、誤操作を伴い易いので分析の精度が低下してしまうという問題点があった。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、微量な化学物質の定量に好適な、試料中の化学物質を簡便且つ高精度に分離できる手段を提供することを課題とする。
上記課題を解決するため、
本発明は、試料中に含有される化学物質を分離するためのキットであって、分離対象の前記化学物質を混和させる、下記式(1)〜(7)で表されるアミド化合物からなる群から選択される一種以上のアミド化合物と、前記アミド化合物及び化学物質のいずれにも該当しないその他の物質を除去するための担体と、を備え、前記担体が、シリカゲル、アルキル基で修飾されたシリカゲル、置換アルキル基で修飾されたシリカゲル、イオン交換樹脂及び活性炭のいずれか一種又は二種以上であることを特徴とする化学物質の分離キットを提供する。
Figure 0005493745
本発明の化学物質の分離キットは、前記化学物質が農薬であることが好ましい。
また、本発明は、試料中に含有される化学物質を分離する方法であって、分離対象の前記化学物質を混和させる、下記式(1)〜(7)で表されるアミド化合物からなる群から選択される一種以上のアミド化合物、及び水を含有する第一の混合物と、前記試料と、を混合して第二の混合物を調製する工程と、前記第二の混合物を複数層に分離させる工程と、前記複数層のうち、前記アミド化合物及び化学物質を含む層を、前記アミド化合物及び化学物質のいずれにも該当しないその他の物質を除去するための担体と接触させ、前記化学物質を回収する工程と、を有し、前記担体が、シリカゲル、アルキル基で修飾されたシリカゲル、置換アルキル基で修飾されたシリカゲル、イオン交換樹脂及び活性炭のいずれか一種又は二種以上であることを特徴とする化学物質の分離方法を提供する。
Figure 0005493745
本発明の化学物質の分離方法は、前記分離させる工程の前に、さらに、前記第二の混合物に塩類を添加する工程を有することが好ましい。
本発明の化学物質の分離方法は、前記第二の混合物を加熱して、前記分離させる工程を行うことが好ましい。
本発明によれば、試料中の化学物質を簡便且つ高精度に分離できる。そして、微量な化学物質も簡便且つ高精度に定量できる。
<化学物質の分離方法>
本発明の化学物質の分離方法は、試料中に含有される化学物質を分離する方法であって、分離対象の前記化学物質を混和させる、下記式(1)〜(7)で表されるアミド化合物(以下、それぞれアミド化合物(1)〜(7)と略記することがある)からなる群から選択される一種以上のアミド化合物、及び水を含有する第一の混合物と、前記試料と、を混合して第二の混合物を調製する工程(以下、混合工程と略記することがある)と、前記第二の混合物を複数層に分離させる工程(以下、分離工程と略記することがある)と、前記複数層のうち、前記アミド化合物及び化学物質を含む層を、前記アミド化合物及び化学物質のいずれにも該当しないその他の物質を除去するための担体と接触させ、前記化学物質を回収する工程(以下、回収工程と略記することがある)と、を有することを特徴とする。
Figure 0005493745
本発明の適用対象である試料は、目的に応じて任意に選択できる。好ましいものとして、食品由来成分を含有するものが例示でき、具体的には、農産物、畜産物、水産物等の未加工飲食品からの抽出物;前記未加工飲食品を加工して得られた加工飲食品;該加工飲食品からの抽出物等が例示できる。
前記未加工飲食品としては、野菜類、果物類、穀類、肉類、乳類、魚類、甲殻類、海藻類等が例示できる。
前記加工飲食品としては、前記未加工飲食品を加工して得られた搾汁液、磨砕物、破砕物、発酵物、加熱物、乾燥物、前記搾汁液の濃縮物又は希釈物等が例示できる。
飲食品からは、公知の方法で試料を抽出すれば良い。例えば、固形状の飲食品であれば、これを水や有機溶媒に浸漬してホモジナイズし、固形物をろ過して得られたろ液を試料とする方法が例示できる。また、液状の飲食品であれば、これを水や有機溶媒で希釈して撹拌した後、固形物をろ過して得られたろ液を試料とする方法が例示できる。また、前記希釈物をそのまま試料としても良い。ただし、これらの方法に限定されるものではない。
分離対象の前記化学物質は、分析対象の試料の種類に応じて任意に選択でき、無機化合物、有機化合物及びこれらの複合体のいずれでも良いが、低水溶性物質であることが好ましい。ここで「低水溶性物質」とは、例えば、常温において、水よりも水とは分離する溶媒の方に多く溶解する物質を指す。そして、前記化学物質は、有機化合物であることが好ましい。
例えば、試料が食品由来成分を含有するものである場合、好ましい前記化学物質はとしては、農薬、動物用医薬品、飼料添加物が例示できる。
農薬としては、殺菌剤、殺虫剤、除草剤、植物成長調節剤等が例示できる。
農薬のうち、前記殺菌剤としては、無機化合物系殺菌剤;SH基酵素阻害剤;電子伝達系阻害剤;タンパク質合成阻害剤、核酸生合成阻害剤、細胞膜成分生合成阻害剤、細胞壁成分合成阻害剤、メラニン生合成阻害剤、メチオニン合成系阻害剤、糖代謝系阻害剤等の菌体成分合成阻害剤;細胞膜機能阻害剤;細胞内容物の漏出剤;グルコース吸収阻害剤;細胞分裂阻害剤;酵素分泌阻害剤;作物の病害抵抗性誘導剤;トリアジン系、シアノアセトアミド系、酸アミド系、フェンヘキサミド等のその他の殺菌剤等が例示できる。
前記殺虫剤としては、天然物殺虫剤;その誘導体等の有機合成殺虫剤;無機化合物系殺虫剤;アセチルコリンエステラーゼ阻害剤、ニコチン性アセチルコリン受容体活性化剤、アセチルコリン受容体阻害剤、GABA(γ−アミノ酪酸)受容体拮抗剤、GABA受容体作用剤、神経軸索シグナル伝達阻害剤、セロトニン受容体作用剤等の神経機能阻害剤;脱共役剤;チオウレア系殺虫剤;キチン合成阻害剤、幼若ホルモン様活性剤、脱皮ホルモン様活性剤等の昆虫成長制御剤;昆虫性ホルモン剤等の誘引剤又は忌避剤;電子伝達系阻害剤、抗生物質系、ピレスロイド系、ピリミジフェン、ビフェナゼート、キノメチオネート、アミトラズ、クロフェンテジン等の殺ダニ剤;殺線虫剤;シロマジン、メタアルデヒド、安息香酸樹脂、ポリブテン、メトキシフェノジド、石油系粘着物質等のその他の殺虫剤等が例示できる。
前記除草剤としては、無機除草剤;光合成電子伝達系阻害剤(光合成阻害剤)、色素合成阻害剤、光要求型又は光白化型光誘導活性酵素発生剤等の光合成関連除草剤;脂肪酸生合成阻害剤;アセトラクテート合成酵素阻害剤、エノールピルビルシキミ酸リン酸合成酵素阻害剤、グルタミン合成酵素阻害剤等のアミノ酸生合成阻害剤;タンパク質合成阻害剤;細胞分裂阻害剤;ホルモン作用阻害又はかく乱剤;脂肪酸系除草剤;イソキサフルトール、ブタフェナシル等のその他の除草剤等が例示できる。
前記植物成長調節剤としては、植物ホルモン剤;植物ホルモン拮抗剤;矮化剤;蒸散抑制剤;オキシン硫酸塩、過酸化カルシウム、コリン、デシルアルコール、ピペロニルブトキサイド、塩化カルシウム、硫酸カルシウム等のその他の植物成長調節剤等が例示できる。
分離対象の前記化学物質としては、なかでも、食品衛生法に基づくポジティブリスト制度の対象となる農薬、動物用医薬品及び飼料添加物(以下、農薬等と略記する)、並びに検疫所のモニタリング対象物質が好適である。
ポジティブリスト制度の対象となる農薬等のうち、「GC/MSによる農薬等の一斉試験法(農産物)」、「(GC/MSによる農薬等の一斉試験法(畜水産物))」の対象である化学物質を以下に例示する。
α−BHC、β−BHC、γ−BHC(リンデン)、δ−BHC、op’−DDT、pp’−DDD、pp’−DDE、pp’−DDT、EPN、TCMTB、XMC、アクリナトリン、アザコナゾール、アザメチホス、アジンホスメチル、アセタミプリド、アセトクロール、アセフェート、アゾキシストロビン、アトラジン、アニロホス、アメトリン、アラクロール、アラマイト、アルジカルブ分解物、アルドキシカルブ分解物、アルドリン、アレスリン、イサゾホス、イソキサジフェンエチル、イソキサチオン、イソフェンホス、イソフェンホスオキソン、イソプロカルブ、イソプロチオラン、イプロジオン、イプロジオン代謝物、イプロベンホス、イマザメタベンズメチルエステル、イマザリル、イミベンコナゾール、イミベンコナゾール脱ベンジル体、ウニコナゾールP、エスプロカルブ、エスフェンバレレート、エタルフルラリン、エチオン、エディフェンホス、エトキサゾール、エトフェンプロックス、エトフメセート、エトプロホス、エトリジアゾール、エトリムホス、エポキシコナゾール、α−エンドスルファン、β−エンドスルファン、エンドスルファンスルファート、エンドリン、オキサジアゾン、オキサジキシル、オキサベトリニル、オキシフルオルフェン、オメトエート、オリザリン、カズサホス、カフェンストロール、カルバリル、カルフェントラゾンエチル、カルボキシン、カルボスルファン、カルボフラン、カルボフラン(分解物)、キナルホス、キノキシフェン、キノクラミン、キントゼン、クレソキシムメチル、クロゾリネート、クロマゾン、クロルエトキシホス、クロルタールジメチル、cis−クロルデン、trans−クロルデン、オキシクロルデン、クロルピリホス、クロルピリホスメチル、クロルフェナピル、クロルフェンソン、クロルフェンビンホス(E)α、クロルフェンビンホス(Z)β、クロルブファム、クロルプロファム、クロルベンシド、クロルベンジレート、クロロネブ、シアナジン、シアノホス、ジエトフェンカルブ、ジオキサチオン、ジクロシメット、ジクロトホス、ジクロフェンチオン、ジクロホップメチル、ジクロラン、1,1−ジクロロ−2,2−ビス(4−エチルフェニル)エタン、ジコホール、ジコホール分解物(4,4’−ジクロロベンゾフェノン)、ジスルホトン、ジスルホトンスルホン体、シニドンエチル、シハロトリン、シハロホップブチル、ジフェナミド、ジフェニルアミン、ジフェノコナゾール、シフルトリン、ジフルフェニカン、シプロコナゾール、シペルメトリン、シマジン、ジメタメトリン、ジメチルビンホス(E)、ジメチルビンホス(Z)、ジメテナミド、ジメトエート、ジメトモルフ、シメトリン、ジメピペレート、スピロキサミン、スピロジクロフェン、ゾキサミド、ゾキサミド(分解物)、ターバシル、ダイアジノン、ダイアレート、チアクロプリド、チアベンダゾール、チオベンカルブ、チオメトン、チフルザミド、ディルドリン、テクナゼン、テトラクロルビンホス、テトラコナゾール、テトラジホン、テニルクロール、テブコナゾール、テブチウロン分解物、テブフェンピラド、テフルトリン、デメトン−S−メチル、デルタメトリン、テルブトリン、テルブホス、トラロメトリン、トラロメトリン分解物1[=デルタメトリン(異性体1)]、トラロメトリン分解物2[=デルタメトリン(異性体2)]、トリアジメノール、トリアジメホン、トリアゾホス、トリアレート、トリシクラゾール、トリチコナゾール、トリデモルフ、トリブホス、トリフルミゾール、トリフルラリン、トリフロキシストロビン、トルクロホスメチル、トルフェンピラド、2−(1−ナフチル)アセタミド、ナプロパミド、ニトラピリン、ニトロタールイソプロピル、ノルフルラゾン、パクロブトラゾール、バーバン、パラチオン、パラチオンメチル、ハルフェンプロックス、ビオアレスリン、ビオレスメトリン、ピコリナフェン、ピテルタノール、ビフェノックス、ビフェントリン、ピペロニルブトキシド、ピペロホス、ピラクロストロビン分解物、ピラクロホス、ピラゾホス、ピラフルフェンエチル、ピリダフェンチオン、ピリダベン、ピリフェノックス(E)、ピリフェノックス(Z)、ピリブチカルブ、ピリプロキシフェン、ピリミカーブ、ピリミノバックメチル(E)、ピリミノバックメチル(Z)、ピリミホスメチル、ピリメタニル、ピレトリンI、ピレトリンII、ピロキロン、ビンクロゾリン、ファムフール、ファモキサドン、フィプロニル、フェナミホス、フェナリモル、フェニトロチオン、フェノキサニル、フェノキサプロップエチル、フェノチオカルブ、フェノトリン、フェノブカルブ、フェンアミドン、フェンクロルホス、フェンスルホチオン、フェンチオン、フェントエート、フェンバレレート、フェンブコナゾール、フェンプロパトリン、フェンプロピモルフ、フサライド、ブタクロール、ブタミホス、ブピリメート、ブプロフェジン、フラチオカルブ、フラムプロップメチル、フリラゾール、フルアクリピリム、フルキンコナゾール、フルジオキソニル、フルシトリネート、フルシラゾール、フルチアセットメチル、フルトラニル、フルトリアホール、フルバリネート、フルフェナセット、フルフェンピルエチル、フルミオキサジン、フルミクロラックペンチル、フルリドン、プレチラクロール、プロクロラズ、プロシミドン、プロチオホス、プロパキザホップ、プロパクロール、プロパジン、プロパニル、プロパホス、プロパルギット、プロピコナゾール、プロピザミド、プロヒドロジャスモン、プロフェノホス、プロペタンホス、プロポキスル、ブロマシル、プロメトリン、ブロモブチド、ブロモプロピレート、ブロモホス、ブロモホスエチル、ヘキサクロロベンゼン、ヘキサコナゾール、ヘキサジノン、ベナラキシル、ベノキサコル、ヘプタクロール、ヘプタクロールエポキシド、ペルメトリン、ペンコナゾール、ベンダイオカルブ、ペンディメタリン、ベンフラカルブ、ベンフルラリン、ベンフレセート、ホサロン、ボスカリド、ホスチアゼート、ホスファミドン、ホスメット、ホルモチオン、ホレート、マラチオン、ミクロブタニル、メカルバム、メタクリホス、メタミドホス、メタラキシル(異性体:メフェノキサム)、メチダチオン、メトキシクロル、メトプレン、メトミノストロビン、メトラクロール、メトリブジン、メビンホス、メフェナセット、メフェノキサム、メフェンピルジエチル、メプロニル、モノクロトホス、リンデン(γ−BHC)、レスメトリン、レナシル
ポジティブリスト制度の対象となる農薬等としては、上記以外にさらに、「LC/MSによる農薬等の一斉試験法I〜II(農産物)」、「(LC/MSによる農薬等の一斉試験法(畜水産物))」、「個別試験法」等の対象となる化学物質がある。
(混合工程)
混合工程においては、第一の混合物と前記試料とを混合して第二の混合物を調製する。
第一の混合物とは、前記アミド化合物(1)〜(7)からなる群から選択される一種以上のアミド化合物と、水とを含有するものである。
前記アミド化合物は、アミド化合物(1)〜(7)からなる群から選択される一種以上のものである。
前記アミド化合物は、分離対象の化学物質を混和させるものであり、前記化学物質との親和性が高く、前記化学物質と安定して共存するものである。
前記アミド化合物は、常温においてはもとより、100℃以上の温度でも気化することがないため、各工程における損失が抑制されると共に、取り扱い性に極めて優れる。
アミド化合物(1)〜(7)は、固体(粉体)及び液体のいずれの状態でも使用できる。
アミド化合物(1)〜(7)としては、市販品を使用しても良いし、合成したものを使用しても良い。アミド化合物(1)〜(7)は、例えば、カルボン酸の酸ハロゲン化物とアミンとを反応させて、アミド結合を形成する公知の方法で合成できる。
前記アミド化合物及び水の混合物は、下限臨界溶液温度(以下、LCSTと略記することがある)を有するものである。すなわち、前記混合物は、所定の温度未満の温度で均一な層であるが、所定温度以上の温度で複数層に分離するものである。
LCSTは塩類が共存することで低下するので、後述するように前記混合物に塩類を添加することで、LCSTを目的に応じて任意に調節できる。例えば、前記混合物のLCSTが高い場合には、塩類を添加して、分離させる時の加熱温度が低くても済むように、又は加熱が不要となるようにLCSTを調整でき、常温(例えば、15〜25℃程度)で分離させることも可能となる。このように、分離条件を穏和にすることで、分離対象の化学物質に対する熱の影響を軽減できる。
アミド化合物は、一種を単独で使用しても良いし、二種以上を併用しても良い。二種以上を併用する場合には、その組み合わせ及び比率は、目的に応じて任意に選択できる。
第一の混合物における水の量は、アミド化合物の種類及び量、この後に混合する試料の種類及び量等に応じて、任意に調節できる。ただし通常は、アミド化合物/水の質量比が2/1〜1/8であることが好ましく、1/1〜1/5であることがより好ましい。
第一の混合物は、アミド化合物と水とからなるものが好ましいが、これら以外の成分を含有していても良く、この場合当該成分は、水溶性が高いものほど好ましい。
第一の混合物は、前記試料との混合に際して、必ずしも不溶物が存在しない水溶液でなくても良いが、水溶液であることが好ましい。
第二の混合物を調製することにより、前記アミド化合物には、試料中の前記化学物質が混和する。
本発明においては、アミド化合物(1)〜(7)には、一種につき一種の前記化学物質を混和させても良いし、複数種の前記化学物質を混和させても良い。例えば、複数種の前記化学物質が、同時に別々に検出できるものである場合には、これら複数種のものを一種の前記化学物質に混和させて同時に分離することで、試料の分析時間を大幅に短縮できる。
第二の混合物を調製する条件は、試料中に含有される分離対象の化学物質が劣化しない限り特に限定されない。
例えば、温度は通常、15〜25℃程度であることが好ましい。
撹拌は、撹拌翼又は撹拌子を使用した撹拌、振とう撹拌、超音波を利用する撹拌等、公知の方法が適用できる。
(分離工程)
分離工程においては、第二の混合物を複数層に分離させる。複数層に分離するのは、アミド化合物及び水の混合物がLCSTを有するからである。
複数層に分離させるためには、第二の混合物をLCST以上の温度に温度調節する必要がある。そして、第二の混合物を十分に撹拌したり、遠心分離に供することが好ましい。
分離工程を行うことにより、第二の混合物は、アミド化合物を主成分とし、分離対象の前記化学物質を含むアミド層と、水層との少なくとも二層に分離する。通常、これら二層はいずれも溶液となり、アミド層は上層に、水層は下層にそれぞれ分配される。
さらに試料の種類によっては、試料由来の固形物等の不溶物をおもに含む不溶物層が形成され、第二の混合物は三層に分離することもある。この場合、不溶物層は、例えば、上層及び下層間で中間層を形成することがあるが、上記のように遠心分離した場合には、最下層に位置する。本発明においては、不溶物層を除去するためのろ過等の操作は不要である。
この段階で第二の混合物に含まれていた水は、水層に分配される。そして、第一の混合物調製時に使用したアミド化合物が個体及び液体のいずれであっても、アミド層はこの段階で液状である。これは、体積としては無視し得るほどの極微量の水がアミド化合物中に混在していることが理由であると推測される。
一方、アミド化合物は水層へは分配されない。そして、アミド化合物は、前記化学物質との親和性が高いので、前記化学物質は水層へは分配されず、アミド層でアミド化合物と共存する。したがって、本発明においては、分離工程でのアミド化合物及び前記化学物質の損失が抑制される。
前記アミド層には、通常はさらに、前記アミド化合物及び化学物質のいずれにも該当しないその他の物質が共存する。その他の物質としては、代表的なものとして、試料中に含有されていた低水溶性物質やその分解物、あるいは組織等の固形物が例示できる。例えば、試料が飲食品である場合には、前記低水溶性物質として各種色素、タンパク質、糖、糖タンパク質が例示できる。色素は、ベンゼン環、ナフタレン環等の芳香族環や、該芳香族環を構成する一つ以上の炭素原子が、酸素原子、硫黄原子、窒素原子等のヘテロ原子で置換された芳香族複素環を有しているものが多く、水溶性が低いものが多い。また、タンパク質、糖、糖タンパク質では、分子量が大きく脂溶性が高い官能基を有するものは水溶性が低くなる。なお、ここで「低水溶性物質」とは、前記と同様である。また、前記組織としては、例えば野菜であれば、茎や葉等の構造を構成していたものが例示できる。
分離工程における温度や撹拌方法は、混合工程の場合と同様で良い。
本発明においては、前記分離工程の前に、さらに、前記第二の混合物に塩類を添加する工程(以下、塩類添加工程と略記することがある)を有することが好ましい。これにより、LCSTが低下するので、第二の混合物が容易に複数層に分離するようになる。この場合、塩類が添加された前記第二の混合物を加熱せずに又は加熱温度を低下させて前記分離工程を行うこともできる。このように塩類添加工程を有することで、例えば、加熱が不要になったり、軽度で済むなど、より穏和な条件で分離工程を行うことができる。その結果、工程を一層簡略化できると共に、分離対象の化学物質の劣化が一層抑制されるので、化学物質の分離精度が一層向上する。
(塩類添加工程)
塩類添加工程で使用する塩類は、有機塩類及び無機塩類のいずれでも良く、目的に応じて任意に選択できるが、水溶性が高いものが好ましく、無機塩類が好ましい。
無機塩類として、具体的には、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化リチウム、臭化ナトリウム、臭化カリウム、臭化リチウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム等のアルカリ金属のハロゲン化物;炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等の炭酸塩;炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等の炭酸水素塩;硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸マグネシウム等の硫酸塩;硫酸水素ナトリウム、硫酸水素カリウム等の硫酸水素塩;リン酸ナトリウム(NaPO)、リン酸水素ナトリウム(NaHPO)、リン酸二水素ナトリウム(NaHPO)、リン酸カリウム(KPO)、リン酸水素カリウム(KHPO)、リン酸二水素カリウム(KHPO)等のリン酸塩;塩化アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、硫酸アンモニウム、硫酸水素アンモニウム、リン酸アンモニウム((NHPO)、リン酸水素二アンモニウム((NHHPO))、リン酸二水素アンモニウム(NHPO)等のアンモニウム塩;塩化ニッケル(NiCl)、塩化鉄(II)(FeCl)、塩化鉄(III)(FeCl)、塩化銅(II)(CuCl)等の金属の塩化物;硫酸鉄(II)(FeSO)、硫酸鉄(III)(Fe(SO)、硫酸銅(II)(CuSO)等の金属の硫化物;ニクロム酸カリウム(KCr)、クロム酸カリウム(KCrO)、クロム酸ナトリウム(NaCrO)等のニクロム酸又はクロム酸の塩等が例示できる。
塩類の添加量は、塩類が析出しないように第二の混合物の組成に応じて適宜調節すれば良く、特に限定されない。
塩類は、一種を単独で使用しても良いし、二種以上を併用しても良い。二種以上を併用する場合には、その組み合わせ及び比率は、目的に応じて適宜選択すれば良い。
本発明においては、前記第二の混合物を加熱して前記分離工程を行っても良い。この場合、前記分離工程の前に、第二の混合物に塩類を添加しても良いし、添加しなくても良い。加熱することで、第二の混合物は容易に複数層に分離するようになるので、塩類を添加しなくても、分離工程を容易に行うことができるようになるが、塩類を添加することで、LCSTが低下するので、分離工程を行うことが一層容易となり、さらに、第二の混合物を加熱する時の温度を調節することもできる。
第二の混合物を加熱する時の温度は、LCSTよりも高く、かつ分離対象の化学物質が劣化しない範囲内で任意に選択できる。
(回収工程)
回収工程においては、前記複数層のうち、前記アミド化合物及び化学物質を含む層(アミド層)を、前記アミド化合物及び化学物質のいずれにも該当しないその他の物質を除去するための担体と接触させ、前記化学物質を回収する。
ここで、その他の物質とは、先に分離工程で説明したものである。
前記担体は、アミド層からその他の物質を分離するものであり、固形状物質又はゲル状物質である。
好ましい担体として具体的には、各種クロマトグラフィーにおいて担体として使用されるものが例示できる。すなわち、静電引力、ファンデルワールス力、疎水結合、分子ふるい作用等を利用して、相互作用の強さの違いに基づいて、移動相の存在下、物質を分離し得るものが例示できる。より具体的には、シリカゲル;オクタデシル基、オクチル基等のアルキル基で修飾されたシリカゲル;アミノプロピル基、シアノプロピル基等の置換アルキル基で修飾されたシリカゲル;ジエチルアミノエチル基、スルホプロピル基、カルボキシルメチル基、第4級アンモニウム基等の官能基を有するイオン交換樹脂;活性炭等が例示できるが、これらに限定されない。
担体は、一種を単独で使用しても良いし、二種以上を併用しても良い。二種以上を併用する場合には、その組み合わせ及び比率は、目的に応じて適宜選択すれば良い。
すなわち、本発明においては、一種の担体で除去するその他の物質は一種でも良いし複数種でも良い。そして、複数種の担体で一種のその他の物質を除去しても良いし、複数種のその他の物質を除去しても良い。
例えば、前記化学物質やその他の物質との相互作用の形態が異なる複数種の担体を組み合わせて使用することで、一種又は複数種のその他の物質の除去効果を一層向上させることができる。これは、複数種のその他の物質を除去する場合に特に有効であり、試料の分析時間を一層短縮できる。
二種以上の担体を併用する場合には、これら複数種の担体は、混合して使用しても良いが、混合せずに、一種の担体からなる担体層を複数積層させて使用することが好ましい。
アミド層を担体と接触させ、前記化学物質を回収する方法としては、カラムクロマトグラフィーと同様の方法が好ましい。すなわち、カラム内に充填した前記担体上にアミド層を載せ、担体のアミド層を載せた側から反対側へ向けて移動相を流し、溶出した前記化学物質を回収する。このような方法によれば、その他の物質が担体に固定化されないものであっても、担体との間の相互作用の程度が、前記化学物質の場合と僅かでも異なれば、その他の物質の混入なく前記化学物質を全量回収できる。
担体と接触させるアミド層は、前記化学物質及びその他の物質を含むものの、主成分はアミド化合物である。このような、溶媒成分をほぼ又は全く含まない組成物は、たとえ液状であっても粘性が高かったり、固形物が析出し易かったりするため、通常であれば、担体との接触に供することはない。特に、カラムクロマトグラフィーと同様の方法を適用する場合には、組成物が担体に引っ掛かったり、担体中で析出したりするために溶出が困難であり、移動相を流すことも困難となる。
しかし、本発明においては、前記アミド化合物を使用することにより、全く意外にも、溶媒成分をほぼ又は全く含まない前記アミド層は、上記のような問題点を生じないだけでなく、担体中を極めて容易に移動する。このような、前記アミド化合物に特有の性質を見出したことにより、担体を使用してその他の物質を容易に除去できる。
回収工程では、アミド層に含まれていたその他の物質が除去され、前記化学物質がアミド化合物及び移動相と共に溶出される。
アミド化合物は、前記化学物質との親和性が高いので、前記化学物質がアミド化合物と別々に溶出することは無く、通常、前記化学物質はアミド化合物との混合物として溶出される。そして、アミド化合物は、上記のように担体中を極めて容易に移動するので、全量を溶出させることができ、前記化学物質もたとえ微量であっても、容易に全量を回収できる。このように、本発明においては、回収工程でのアミド化合物及び前記化学物質の損失が抑制される。
移動相は、アミド化合物と反応しないものの中から、担体の種類やその使用法等に応じて、適宜選択すれば良い。例えば、担体をカラム内に充填して使用する場合には、通常のカラムクロマトグラフィーで使用する移動相をそのまま使用できる。具体的には、アセトニトリル、メタノール、n−ヘキサン、トルエン、ジクロロメタン、クロロホルム等の有機溶媒が例示できる。
移動相として使用する溶媒は、一種を単独で使用しても良いし、二種以上を併用しても良い。二種以上を併用する場合には、その組み合わせ及び比率は、目的に応じて適宜選択すれば良い。
また、移動相は、前記化学物質の劣化を防止したり、その他の物質の除去を容易にするために、必要に応じて酸及び/又は塩基を含んでいても良い。これら酸及び塩基は、無機化合物及び有機化合物のいずれでも良い。
回収した溶液から移動相等の溶媒や、水等の微量成分(以下、溶媒等と略記する)を除去することで、前記化学物質を含むアミド化合物が得られる。
溶媒等は、減圧条件下又は気流存在下で留去することが好ましい。この時、水溶性有機溶媒を共存させることで、共沸により水等を容易に除去できることがある。ここで好ましい水溶性有機溶媒としては、アセトニトリル、アセトン等が例示できる。
また、気流存在下で溶媒等を留去する場合には、窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガス等、不活性ガスを使用することが好ましい。
回収された前記化学物質は、アミド化合物と共に安定して存在するので、溶媒等の除去時に溶媒等と共に除去されることは無い。
また、アミド化合物は、上記のように常温においては気化することがないので、アミド化合物中の化学物質の濃度が変動しない。
アミド化合物中における前記化学物質の有無や、その同定は、公知の方法で行えば良い。好ましい方法としては、質量分析法(Mass Spectrometry)を利用する方法が例示でき、より具体的には、液体クロマトグラフィー(LC)と組み合わせたLC/MS、LC/MS/MS、ガスクロマトグラフィーと組み合わせたGC/MS、GC/MS/MS、キャピラリー電気泳動と組み合わせたCE−MS等が例示できる。
本発明の化学物質の分離方法によれば、各工程が簡略化されているので、誤操作を伴う危険性が低く、しかも短時間で行うことができる。そして、前記化学物質の損失が抑制されるので、化学物質を高精度に分離できる。さらに、アミド化合物の損失も抑制されるので、化学物質の濃度が変動することが無く、化学物質が微量でも高精度に定量できる。また、濃度調整のための溶媒の除去が不要である。さらに、必要な原材料が格段に少ない。したがって、短時間で大量の試料を低コストで高精度に分析できる。
本発明は、分離対象の化学物質が微量である場合に特に好適である。
<化学物質の分離キット>
本発明の化学物質の分離キットは、試料中に含有される化学物質を分離するためのキットであって、分離対象の前記化学物質を混和させる、下記アミド化合物(1)〜(7)からなる群から選択される一種以上のアミド化合物と、前記アミド化合物及び化学物質のいずれにも該当しないその他の物質を除去するための担体と、を備えたことを特徴とする。
Figure 0005493745
本発明の分離キットは、分析対象の試料中に含有される化学物質を分離するためのものであり、上記本発明の化学物質の分離方法で使用するのに特に好適なものである。
本発明の分離キットにおけるアミド化合物、担体、分析対象である試料、分離対象である化学物質等は、いずれも、上記本発明の化学物質の分離方法で説明したものと同じである。
分離キットにおけるアミド化合物は、固体及び液体のいずれでも良い。
アミド化合物及び担体は、密封されていることが好ましく、不活性ガス雰囲気下で密封されていることがより好ましい。ここで、不活性ガスとは、上記と同様のものである。アミド化合物及び担体を、使用前の段階で水分との接触を防止しておくことで、一層高精度に化学物質を分離できる。
アミド化合物及び担体は、それぞれ一種でも良いし、複数種でも良い。本発明の分離キットは、前記化学物質として一種を分離するためのものでも良いし、複数種を分離するためのものでも良い。
分離キットには、アミド化合物及び担体以外に、前記化学物質の分離に好適なその他のものを必要に応じて備えても良い。
このようなものとしては、上記本発明の分離方法の各工程で使用するものが例示でき、具体的には、前記第一又は第二の混合物の調製に使用する容器、分離工程〜回収工程で使用する容器、水、塩類等が例示できる。
例えば、前記第一又は第二の混合物の調製に使用する容器を、アミド化合物が内壁面上に塗布されたものとすれば、第一の混合物を容易に調製できる。また、耐圧性又は耐衝撃性を有する材質で作製されたものとすれば、混合工程から分離工程までを一貫して行うことができる。また、内容物をカラム等に直接移液できる接続部が設けられたものとすれば、混合工程から回収工程までを一貫して行うことができる。
以下、具体的実施例により、本発明についてより詳細に説明する。ただし、本発明は、以下に示す実施例に、何ら限定されるものではない。なお、以下において、単位「mM」は、「mmol/L」を表す。
[実施例1]
<トマトジュース中の残留農薬の分析(1)>
(残留農薬の分離)
N−イソプロピルプロピオンアミド(アミド化合物(1))2g及び水6gを混合した溶液を、遠沈管(NALGENE社製、オークリッジ10mlチューブ)に加え、さらに農薬としてシメコナゾールを100ppbとなるように添加したトマトジュース2gを遠沈管に加えて、得られた溶液を十分に撹拌した。
次いで、前記溶液に塩化ナトリウム3gを加えた。
次いで、微量高速冷却遠心機MX−301(トミー工業社製)を使用して、この溶液を10000rpmで5分間遠心分離し、二層に分離させた。
アミノプロピル修飾シリカゲル500mgからなる下層と、カーボングラファイト500mgからなる上層とが積層された固相担体を備えたカラム「ENVI Carb/NH」(スペルコ社製)の前記固相担体を、アセトニトリル/トルエン(3/1、体積比)の混合溶媒5mlで洗浄し、ここへ分離したアミド層1gを載せた。そして、移動相として、アセトニトリル/トルエン(3/1、体積比)の混合溶媒20mlを使用し、農薬を含むアミド化合物(1)をカラムから溶出させ、回収した。そして、回収した溶液から、エバポレーター及び窒素気流下で溶媒を除去したところ、固形物(農薬を含むアミド化合物(1))が析出した。
(残留農薬の分析)
次いで、得られた前記固形物にメタノール1gを加え、LC/MS/MSのサンプルとし、下記条件でLC/MS/MS分析を行った。
ここでは、ろ過操作が不要で、濃縮操作も一回要したのみであり、残留農薬の分離及び分析に要した時間は、試料一つあたり僅か18分程度であった。
(LC/MS/MS分析条件)
装置:LC部位−Prominence(島津製作所製)、MS/MS部位−3200Q TRAP(アプライドバイオシステムズ社製)
LCカラム:TOSOH TSKgel ODS−100V(2.0mmI.D.×15cm)(東ソー社製)
移動相:5mM酢酸アンモニウム水溶液(移動相A)、5mMメタノール水溶液(移動相B)
移動相のグラジェント:表1に示す。
流速:0.2ml/分
カラム温度:40℃
サンプル注入量:5μl
分析時間:30分
Figure 0005493745
分析結果を表2に示す。表2に示すように、農薬の添加量が100ppbであるのに対して、99.1ppbの農薬を検出し、極めて高い精度で残留農薬を定量できた。
[実施例2〜12]
<トマトジュース中の残留農薬の分析(2)〜(12)>
シメコナゾールの代わりに、表2に示す農薬を使用したこと以外は、実施例1と同様に残留農薬を分析した。分析結果を表2に示す。なお、表2中、「所要時間」とは、残留農薬の分離及び分析に要した時間を指す。
Figure 0005493745
各実施例で使用した農薬は、それぞれ以下の通りである。
シメコナゾール、シアゾファミド:平成21年度検疫所モニタリング対象物質である。
アザメチフォス、アジンフォスメチル:アセチルコリンエステラーゼ阻害剤に該当する神経機能阻害剤であり、有機リン系殺虫剤である。また、ポジティブリスト収載農薬である。
フェノキシカルブ:アセチルコリンエステラーゼ阻害剤に該当する神経機能阻害剤であり、カーバネート系殺虫剤である。また、平成21年度検疫所モニタリング対象物質である。
フラチオカルブ:アセチルコリンエステラーゼ阻害剤に該当する神経機能阻害剤であり、カーバネート系殺虫剤である。また、ポジティブリスト収載農薬である。
ピラゾレート、ベンゾフェナップ:色素合成阻害剤に該当する光合成関連除草剤であり、ピラゾール系除草剤である。
ピリフタリド:アセトラクテート合成酵素阻害剤に該当するアミノ酸生合成阻害剤であり、スルホニルウレア系除草剤である。また、平成21年度検疫所モニタリング対象物質である。
アニロフォス:細胞分裂阻害剤であり、有機リン系除草剤である。また、ポジティブリスト収載農薬である。
イソキサフルトール、ブタフェナシル:除草剤であり、また、平成21年度検疫所モニタリング対象物質である。
表2に示すように、いずれの実施例においても、極めて高い精度で残留農薬を定量できた。また、残留農薬の分離から分析までに要した時間も短時間であった。このように、本発明により、残留農薬を短時間で且つ高精度に定量できることが確認できた。
[比較例1]
<トマトジュース中の残留農薬の分析>
(残留農薬の分離)
以下に示す従来法に従って、残留農薬を分離した。
すなわち、農薬としてシメコナゾールを100ppbとなるように添加したトマトジュース20gにアセトニトリル70mlを加え、農薬を抽出した。
次いで、抽出液をろ過してトマトの繊維質を除去した後、得られたろ液にアセトニトリルを加え、全量を正確に100mlに定容した。
次いで、定容した前記ろ液20mlに、塩化ナトリウム10g、リン酸緩衝液20mlを加えて塩析し、二層に分離させた。
二層のうちアセトニトリル層を取り出し、無水硫酸マグネシウムで脱水した後、溶媒を減圧留去して除去(濃縮乾固)した。得られた濃縮物にアセトニトリル/トルエン(3/1、体積比)の混合溶媒20mlを加えて溶解させた後、得られた溶液を、実施例1と同様のカラム「ENVI Carb/NH」(スペルコ社製)の固相担体に載せ、実施例1と同様の方法で農薬をカラムから溶出させ、回収した。そして、回収した溶液から、エバポレーターで溶媒を除去し、これにアセトン/n−ヘキサン(1/1、体積比)の混合溶媒2mlを加え、LC/MS/MSのサンプルとし、実施例1と同様の条件でLC−MS/MS分析を行った。
その結果、農薬の添加量が100ppbであるのに対して、90ppbの農薬を検出した。また、ろ過操作を一回、濃縮操作を二回要したため、残留農薬の分離及び分析に要した時間は、試料一つあたり60分程度であった。すなわち、従来法では、分析に際立って長時間を要した。また、長時間を要している割には、定量精度が格段に高くはなかった。
本発明は、試料中の化学物質の分析が必要な全ての分野で利用可能であり、化学物質の微量分析に特に好適である。なかでも、飲食品中の残留農薬等の分析に特に有効である。

Claims (5)

  1. 試料中に含有される化学物質を分離するためのキットであって、
    分離対象の前記化学物質を混和させる、下記式(1)〜(7)で表されるアミド化合物からなる群から選択される一種以上のアミド化合物と、
    前記アミド化合物及び化学物質のいずれにも該当しないその他の物質を除去するための担体と、
    を備え
    前記担体が、シリカゲル、アルキル基で修飾されたシリカゲル、置換アルキル基で修飾されたシリカゲル、イオン交換樹脂及び活性炭のいずれか一種又は二種以上であることを特徴とする化学物質の分離キット。
    Figure 0005493745
  2. 前記化学物質が農薬であることを特徴とする請求項1に記載の化学物質の分離キット。
  3. 試料中に含有される化学物質を分離する方法であって、
    分離対象の前記化学物質を混和させる、下記式(1)〜(7)で表されるアミド化合物からなる群から選択される一種以上のアミド化合物、及び水を含有する第一の混合物と、前記試料と、を混合して第二の混合物を調製する工程と、
    前記第二の混合物を複数層に分離させる工程と、
    前記複数層のうち、前記アミド化合物及び化学物質を含む層を、前記アミド化合物及び化学物質のいずれにも該当しないその他の物質を除去するための担体と接触させ、前記化学物質を回収する工程と、
    を有し、
    前記担体が、シリカゲル、アルキル基で修飾されたシリカゲル、置換アルキル基で修飾されたシリカゲル、イオン交換樹脂及び活性炭のいずれか一種又は二種以上であることを特徴とする化学物質の分離方法。
    Figure 0005493745
  4. 前記分離させる工程の前に、さらに、前記第二の混合物に塩類を添加する工程を有することを特徴とする請求項3に記載の化学物質の分離方法。
  5. 前記第二の混合物を加熱して、前記分離させる工程を行うことを特徴とする請求項3又は4に記載の化学物質の分離方法。
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