JP5493570B2 - 医薬用カプセルの製造方法 - Google Patents

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本発明は、医薬用カプセルの製造方法に関し、特に、ホログラム機能を損ねることなく目視で真贋判定が可能であり、かつ偽造が困難な医薬用カプセルの製造方法に関する。
近時、ITの進展や物流技術の拡大に伴い、情報や物の物流グローバル化が一層進展している。物流グローバル化は、医薬業界についても例外ではなく未承認の医薬品等を海外からインターネット等を利用して取り寄せ、又は外国の旅行先で購入して持ち帰る等(いわゆる個人輸入)の取引が活発に行われている。
個人輸入による取引は簡単に医薬品等を取得することができる利便性があるものの、個人輸入によって取引される医薬品には日本国内で薬事法を遵守して販売等されている医薬品(真正品)と外観(カプセル形状等)の見分けが困難な「偽薬」も多く取引されているのも現状である。取得した医薬品が「偽薬」であっても、その成分が真正品とほぼ同一である場合や、あらゆる疾患に対して無害な成分(例えば、小麦粉や澱粉などの食品粉末)である場合には保健衛生上の危険性(リスク)はないか、または少ないと考えられる。一方で、「偽薬」に人体に影響がある成分や特定の疾患に対する禁忌成分が含まれている場合には、最悪の場合死亡に至るケースにつながってしまうことも考えられ、真正品を取り扱う製薬メーカーにとって大きな脅威となっている。このとき、服用した薬が薬を収容するパッケージ(ブリスターパック等)に残っている場合には、残った薬を分析調査することでその原因を特定することが可能となるが、「真正品」と「偽物」との比較が分析調査を行わなければ見分けがつかない場合には個人輸入により医薬品を購入した購入者は自ら「真正品」か「偽物」かの見分けをつけることができず、服用した結果重大な健康被害を引き起こす場合も生ずる。
このような状況下、製薬メーカーは分析を行うことなく「真正品」と「偽薬」との見分けをつけることができるように、医薬用カプセルの外表面にホログラム画像情報を有する微起状を設けることによる偽造防止対策を施し(例えば、特許文献1)、その識別方法を公開し注意喚起をしたり、薬を収容するパッケージ等を不定期にモデルチェンジしたりすることで、「偽薬」の取引を防止する試みを行っている。
特表2003−506415号公報
しかしながら「偽薬」を製造する製造業者は、モデルチェンジ後の容器に変更し、また公開された識別方法によって見分けがつかないように製薬メーカーが施した偽造防止対策と同様の修正を行うことで「偽薬」を容易に製造し市場に再度流通させてしまうことから、「真正品」の偽造を防止できるほどの決定的な解決には至っていない。また、医薬用カプセルの外表面にホログラム画像情報を有する微起状を設けることによる偽造防止対策を施したとしても、医薬用カプセルの外面を手で触れた場合には、微起状に油分が付着してホログラム機能を損ねてしまいホログラム画像情報を見ることができなくなるという問題が生ずることとなる。
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり、ホログラム機能を損ねることなく目視での真贋判定が可能であり、かつ偽造が困難な医薬用カプセルの製造方法を提供することを主たる課題とする。
一実施形態に係る発明は、薬剤を充填するための医薬用カプセルであって、前記医薬用カプセルの内面にホログラムパターンが形成されていることを特徴とする。
また、前記ホログラムパターンが医薬用カプセルに充填される薬剤の情報を示すホログラムパターンであってもよく、前記医薬用カプセルがゼラチン又は寒天を主成分とし、透明性を有するカプセルであってもよい。
また、前記ホログラムパターンが医薬用カプセルの外面側から認識可能なホログラムパターンであってもよく、前記ホログラムパターンが、検査機器により認識可能なホログラムパターンであってもよい。
上記課題を解決するための本発明は、医薬用カプセルの製造方法であって、医薬用カプセルの材料となる溶液中に、その表面にレリーフホログラムパターンを備えるカプセル成形ピンを浸漬する浸漬工程と、前記溶液中から前記カプセル成形ピンを引き上げる引き上げ工程と、前記カプセル成形ピンに付着した溶液を冷却して硬化させる硬化工程と、得られた硬化物を前記カプセル成形ピンから取り外す取り外し工程とを有することを特徴とする。
また、前記レリーフホログラムパターンがホログラム原版であってもよく、また、前記カプセルの材料となる溶液がゼラチン又は寒天を主成分とする溶液であってもよい。
一実施形態の医薬用カプセルによれば、目視により真贋判定が可能であるとともに偽造が困難であることから「偽薬」の流通を抑えることが可能となる。また、一実施形態の医薬用カプセルによれば、該医薬用カプセルの外面を手で触れた場合であってもホログラム機能を損ねることもないことから長期にわたってホログラム機能を維持することができる。
一実施形態の医薬用カプセルの一例を示す側面図である。 図1に示す医薬用カプセルのA−A断面図である。 本発明の医薬用カプセルの製造方法の一例を示す概略工程図である。
以下に、一実施形態の医薬用カプセルについて図1を用いて具体的に説明する。図1に示すように一実施形態の医薬用カプセル10は、キャップ部11とボディ部12とからなるとともにその内面(薬剤と接する側の面)にホログラムパターン20が形成されていることを特徴とする。一実施形態の医薬用カプセル10はこの要件を具備するものであれば図示する形態に限定されるものではない。なお、「医薬用カプセル」とは、本明細書中で用いられる場合、キャップ部11とボディ部12を別々に成形し、薬剤を充填した後にはめ込まれるカプセル被膜を指し、キャップ部11、ボディ部12単体も医薬用カプセルに含まれる。また、一実施形態の医薬用カプセル10は、薬剤を充填する機能を有するものであればその形状についていかなる限定もされない。また、充填される薬剤は、液状であっても顆粒状であってもよい。
医薬用カプセル10の材料は、人体に有害な成分や特定の疾患に対する禁忌成分が含まれない材料からなれば特に限定はなく医薬用カプセルの分野で用いられるあらゆる材料を好適に用いることができる。しかしながら、医薬用カプセル10が透明性を有しない材料からなる場合には医薬用カプセル10の内面に形成されたホログラムパターン20を医薬用カプセル10の外面から認識することが困難となってしまう。このような点を考慮すると、医薬用カプセル10の材料は透明性を有する材料からなることが好ましく、例えば、ゼラチンや寒天を主成分とする材料等からなることが好ましい。
なお、一実施形態の医薬用カプセル10でいう透明性とは、無色透明、着色透明、半透明等のいずれも含む。また、医薬用カプセル10全体が透明性を有している必要はなく、少なくともホログラムパターン20が形成されている位置において透明性を有していればよい。例えば、キャップ部11の内面にホログラムパターン20を形成する場合には、該キャップ部11が透明性を有していればよく、この場合ボディ部12は透明性を有していなくともよい。
このように、医薬用カプセル10の外面側から、内面に形成されたホログラムパターン20が認識可能となるように透明性を有する医薬用カプセル10とすることで、目視により容易に真贋判定が可能となる。
(ホログラムパターン)
ホログラムパターン20は、2次元画像または3次元画像を再生可能なホログラムパターンであり医薬用カプセル10の内面(薬剤と接する面)の少なくとも一部の領域を凹凸構造とすることにより形成される。なお、一実施形態の医薬用カプセル10のホログラムパターン20にはホログラム及び回折格子が含まれ、物体光と参照光との光の干渉による干渉縞で表現された3次元画像のレリーフホログラムや、2次元画像による回折格子、白色光再生ホログラムであるレインボーホログラム,カラーホログラム,電子線等を用いて機械的に画像を描写する計算機ホログラム、さらに、これらのホログラムに文字、図形、記号等を結合させて作製される合成ホログラム等を好適に使用することができる。このように、医薬用カプセル10の内面にホログラムパターン20を形成することで、該医薬用カプセル10の外面を手で触れることで油分が接触した場合であってもホログラム機能を損ねることなく、真贋判定を行うことが可能となる。さらには、医薬用カプセル10の外面側からホログラムパターンを改ざんすることができないことから、偽造を効果的に防止することが可能となる。
また、ホログラムパターン20が、カプセルに充填される薬剤の情報を示すホログラムパターン20であることが好ましい。薬剤の情報を示すホログラムパターン20とすることで、「真正品」と「偽薬」との識別をより迅速に行うことが可能となる。薬剤の情報について特に限定はなく、例えば、製造番号、製造年月日、薬剤の成分、薬の種類等の情報が挙げられる。また、ホログラムパターン20中に上記の薬剤の情報を示す隠し情報を組み込ますこととしてもよい。
ホログラムパターン20が形成される領域についても特に限定はなく、医薬用カプセル10の内面であればいずれの位置であってもよい。例えば、上述したように医薬用カプセル10を構成するキャップ部11、ボディ部12のいずれかの内面にホログラムパターン20を形成してもよく、キャップ部11及びボディ部12の双方の内面にそれぞれホログラムパターン20を形成することとしてもよい。
また、ホログラムパターン20は、必ずしも目視により認識可能である必要はなく検査機器により認識可能なホログラムパターン20であってもよい。検査機器によって認識可能なホログラムパターン20とすることで、該パターンの偽造を困難にすることが可能となる。このようなホログラムパターン20としては、MRH(Machine Readable Hologram)が挙げられる。MRHは、医薬用カプセルの内面側に形成されたレリーフホログラムパターン上に、反射層が設けられたホログラムパターン20であり、レリーフホログラムパターン側、(すなわち、医薬用カプセルの外面側)から、半導体レーザーを照射し、レリーフホログラムパターンで回折し、更に反射層で反射したレーザー光を、検査機器であるフォトダイオードで検出することで、ホログラムパターン情報(薬剤情報)を認識することが可能なホログラムパターン20である。反射層は、金属をレリーフホログラムパターン上に蒸着することにより形成可能であり、従来公知の蒸着方法を適宜選択して形成することができる。また、反射層の金属は、人体に影響のない金属であればよく、例えば、金等を好適に用いることができる。
また、目視により認識可能なホログラムパターン20と検査機器により視認可能なホログラムパターン20とを組み合わせることとしてもよい。このように視認方法が異なるホログラムパターンを組み合わせることにより偽造防止効果を更に向上させることが可能となる。
(医薬用カプセルの製造方法)
次に、本発明の医薬用カプセルの製造方法について図3を用いて具体的に説明する。本発明の医薬用カプセルの製造方法は、カプセルの材料となる溶液中にカプセル成形ピンを浸漬する浸漬工程と、前記溶液中から前記カプセル成形ピンを引き上げる引き上げ工程と、前記カプセル成形ピンに付着した溶液を冷却して硬化させる硬化工程と、得られた硬化物をカプセル前記カプセル成形ピンから取り外す取り外し工程とを有することを特徴とする。特に本発明の医薬用カプセルの製造方法は、上記カプセル成形ピンがレリーフホログラムパターンを有する成形ピンである点に特徴を有する。本発明の医薬用カプセルの製造方法はこの要件を具備するものであればカプセルの材料となる溶液の材料、成形ピンの材質、形状等について限定はされず、従来公知の製造方法を適宜選択して用いることが可能である。
まず初めに、本発明の医薬用カプセルの製造方法に用いられるレリーフホログラムパターン50を有するカプセル成形ピン40について具体的に説明する。
図3に示すようにカプセル成形ピン40は、その表面にレリーフホログラムパターン50を備える。レリーフホログラムパターン50は、上記で説明した医薬用カプセルの内面に形成されるホログラムパターン20に対応する干渉縞が凹凸の形で記録されたレリーフホログラムパターン50であり、従来公知のレリーフホログラムパターンを適宜選択して用いることができる。また、カプセル成形ピン40の表面にレリーフホログラムパターン50を設ける方法についても特に限定はなく、図2に示すようにカプセル成形ピン40の表面に、レリーフホログラムパターン50が記憶されたホログラム原版21を付着又は埋設させることとしてもよい。
なお、本願発明におけるレリーフホログラムパターン50が記憶されたホログラム原版21には、該ホログラム原版から複製されるホログラム複製版も含まれる。ホログラム複製版は、従来公知の複製方法を適宜選択して作成可能であり、例えば、基材上に熱可塑性樹脂(例えば、アクリル樹脂)を塗布し、これに、干渉縞が凹凸の形で記録されたホログラム原版を重ね合わせて加熱、加圧した後、該ホログラム原版を剥がすことで、熱可塑性樹脂の表面に凹凸形状が形成されたホログラム複製版を作成することができる。
このように、レリーフホログラムパターン50を備えたカプセル成形ピン40を用いることで、医薬用カプセル30を成形した後にホログラムパターン20を別途設けることなく、通常のカプセル成形工程により医薬用カプセルの内面にホログラムパターン20を形成することできる。特に、本発明の医薬用カプセルの製造方法によれば、医薬用カプセル30の外面側を手で触れることにより該医薬用カプセルの外面に油分が付着した場合であってもホログラム機能を低下させることのない(ホログラムが消失(不可視化)することのない)医薬用カプセルを製造することが可能となる。また、ホログラム原版21は非常に高価であるとともに複製が困難であることから、ホログラム原版21を備えたカプセル成形ピン40を用いて医薬用カプセルの内面にホログラムパターン20を生成することで偽造を大幅に防止することができる。
(浸漬工程)
図2(A)に示すように浸漬工程は、医薬用カプセル30の材料となる溶液31中にレリーフホログラムパターン50を有するカプセル成形ピン40を浸漬する工程である。
医薬用カプセル30の製造に用いられる溶液31について特に限定はなく、人体に有害な成分や特定の疾患に対する禁忌成分が含まれていなければ医薬用カプセルの分野で用いられる溶液を好適に用いることができる。このような溶液としては、溶媒としての水にゼラチン又は寒天が主成分となるように溶解させた溶液31が挙げられる。ゼラチン又は寒天を主成分とする溶液は透明性を有することから医薬用カプセルの内面に形成されるホログラムパターンを医薬用カプセルの外面から目視で認識することができる。また、必要に応じてゲル化剤、ゲル化補助剤、賦形剤、液剤、吸収促進剤、その他の各種目的のための添加剤が配合してもよい。
溶液31の温度及び浸漬時間について限定はされず、溶液31の成分等に応じて適宜設定することができる。
(引き上げ工程)
図2(B)に示す引き上げ工程は、溶液31中に浸漬されたレリーフホログラムパターン50を有する成形ピン40を所定の浸漬時間が経過したことに基づいて引き上げる工程である。引き上げ速度について特に限定はなく、溶液31の成分等に応じて適宜設定することができる。
(硬化工程)
図2(C)に示す硬化工程は、成形ピン40に付着した溶液を成形ピン40の形状にしたがって硬化させる工程である。硬化(乾燥)時間及び硬化温度についても特に限定はなく、溶液の成分や成形ピン40の形状等に応じて適宜設定することができる。
(取り外し工程)
図2(D)に示す取り外し工程は、成形ピン40に付着した溶液が硬化されることで得られる硬化物をカプセル成形ピン40から取り外す工程である。硬化物を成形ピン40から取り外すことで、その内面にホログラムパターンが形成された医薬用カプセル30(キャップ部11又はボディ部12)が形成される。
以上説明した本発明の医薬用カプセルの製造方法によれば、医薬用カプセル(キャップ部11又はボディ部12)を形成するための型である成形ピン40が、その表面にレリーフホログラムパターン50を備えることから、医薬用カプセルを製造した後に別途ホログラムパターン20を設ける工程を行うことなく、通常の医薬用カプセルの成形工程によりその内面にホログラムパターン20が形成された医薬用カプセル30を製造することができる。
10、30…医薬用カプセル
11…キャップ部
12…ボディ部
20…ホログラムパターン
21…ホログラム原版
31…溶液
40…成形ピン
50…レリーフホログラムパターン

Claims (3)

  1. 医薬用カプセルの製造方法であって、
    カプセルの材料となる溶液中に、その表面にレリーフホログラムパターンを有するカプセル成形ピンを浸漬する浸漬工程と、
    前記溶液中から前記カプセル成形ピンを引き上げる引き上げ工程と、
    前記カプセル成形ピンに付着した溶液を冷却して硬化させる硬化工程と、
    得られた硬化物を前記カプセル成形ピンから取り外す取り外し工程と、
    を有することを特徴とする医薬用カプセルの製造方法。
  2. 前記レリーフホログラムパターンが、ホログラム原版であることを特徴とする請求項1に記載の医薬用カプセルの製造方法。
  3. 前記カプセルの材料となる溶液がゼラチン又は寒天を主成分とする溶液であることを特徴とする請求項1又は2に記載の医薬用カプセルの製造方法。
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