《第1の実施の形態》
次に、本発明の好適な一実施の形態である核医学診断装置について、適宜図面を参照しながら説明する。
以下において、本実施の形態の核医学診断装置,アナログASIC等といった各素子の基板上への配置(レイアウト),基板のユニット化等の本実施の形態に適用される要素の説明,ノイズの判定方法,不良と判定された放射線検出器に対する制御方法の説明を行う。
なお、アナログASICは、アナログ信号を処理する、特定用途向けICであるASIC(Application Specific Integrated Circuit)を意味し、LSI(Large Scale Integrated Circuit)の一種である。
(核医学診断装置)
まず、最初に、本実施の形態の核医学診断装置を説明する。
図1に示すように、核医学診断装置としてのPET装置1は、カメラ(撮像装置)11,データ処理装置12,操作コンソール13等を含んで構成されている。被検体P(図2参照)は、ベッド14に載せられてカメラ11で撮影されるようになっている。
操作コンソール13は、PET装置1の断層画像やPET装置1の状態チェック結果等を表示する表示装置13a,キーボードやマウス等の入力操作部(入力手段)13bを有している。
図2に示すように、カメラ11の内部には、被検体Pから放出されるγ線(放射線)を検出するため、半導体放射線検出器(放射線検出器、以下、単に検出器と称する)21(図4,図5参照)を多数備えた結合基板(ユニット基板)20(詳細は図6参照)を複数収納した検出器ユニット2が、円周方向に多数配置されており、被検体Pの体内から放出されるγ線を検出器21で検出する。
検出器ユニット2は、γ線の検出エネルギ、検出時刻を計測するための集積回路(ASIC)を前記結合基板20上に有しており、検出したγ線の検出エネルギや検出時刻を測定したり、γ線を検出した検出器21のアドレスを検知したり、検出したγ線の検出エネルギのデータ(検出エネルギ値情報)、検出時刻のデータ(検出時刻情報)および前記した検出器21のアドレスに対応する検出器ID(検出器アドレス情報)を含む情報をパケットデータ(検出放射線情報)としてデータ処理装置12に出力するようになっている。
図2に示すようにデータ処理装置12は、図示しない記憶装置、同時計測装置12Aおよび断層像情報作成装置12Bを有する。データ処理装置12は、パケットデータ(検出放射線情報)を取り込む。同時計測装置12Aは、前記パケットデータ、特に検出時刻のデータおよび検出器IDにもとづいて同時計測判定を行う。そして、511keVのγ線の検出位置を特定し記憶装置に記憶する。断層像情報作成装置12Bは、この特定した位置にもとづいて機能画像を作成して、表示装置13aに表示する。
ちなみに、被検体Pは、放射性薬剤、例えば、半減期が110分の18Fを含んだフルオロ・ディオキシ・グルコース(FDG)を投与され、被検体Pの体内からは、FDGから放出された陽電子の消滅時に511keVのγ線(消滅γ線)の対が、互いにほぼ180°の方向に放出される。
このとき、カメラ11の各検出器21はベッド14の周囲を取り囲んでいる。検出器ユニット2からデータ処理装置12へは、検出器21がγ線と相互作用を起こした際のγ線検出信号(放射線検出信号)にもとづいて得られた検出エネルギ値情報および検出時刻情報、および検出器IDが、検出器ユニット2に含まれる検出器21ごとに出力されるようになっている。
検出器ユニット2は、図3の(a)に示すようにカメラ11の開口部11bに周方向に60〜70個着脱自在に配置された構成をしており、保守点検が容易なようにされている。検出器ユニット2は、ユニット支持部材2Aを介して装着される。また、図3の(b)に示すように、検出器ユニット2は、ユニット支持部材2Aに片端支持されてカメラ11に装着されている。ユニット支持部材2Aは、中空の円盤状(ドーナツ状)をしており、検出器ユニット2を装着する開口部11bをカメラ11の周方向に多数(装着する検出器ユニット2の数だけ)備えている。このように、検出器ユニット2を片端支持するため、検出器ユニット2の筐体30の体軸方向手前側には、ストッパとなるフランジ部分が設けてある。
ちなみに、検出器ユニット2を周方向に極力密に並べようとすると、周方向内側のフランジ部分は邪魔になる。そこで、この邪魔になる部分のフランジ部分を筐体30からなくし、周方向外側のフランジ部分を残すようにしても良い。ユニット支持部材2Aを体軸方向にもう1つ設置し、検出器ユニット2の両端部を両方のユニット支持部材2Aで保持しても良い。
なお、カメラ11に検出器ユニット2を装着する場合は、蓋11aを取り外して、ユニット支持部材2Aを露出させ、開口部11bから検出器ユニット2をフランジ部分が突き当たるまで差し込んで装着するようになっている。差し込んで装着することにより、カメラ11の図示しない電源および信号配線のそれぞれのコネクタと検出器ユニット2の対応するコネクタとの接続が行われ、カメラ11と検出器ユニット2との信号および電源の接続がなされる。
検出器21,結合基板20および検出器ユニット2の構成は、後に詳しく説明する。
以下、本実施の形態の特徴部分の説明を行う。
(半導体放射線検出器)
まず、本実施の形態に適用される検出器21を図4,図5を参照しながら説明する。図4は、検出器21の積層構造を概念的に示した図であり、図5の(a)は検出器の構成部品である検出素子と電極を模式的に示した斜視図であり、図5の(b)はそれを積層して一体化した後の斜視図である。
図4に示すように、検出器21は、板状の半導体材料Sからなる半導体放射線検出素子(以下、検出素子という)211の両面を薄板状(膜状)の電極(アノードA,カソードC)で覆ったものを、例えば、5層に重ねた積層構造をしている。
このうち、半導体材料Sは、前記したCdTe(テルル化カドミウム),CdZnTe(テルル化亜鉛カドミウム),HgI2(ヨウ化水銀),TlBr(臭化タリウム),GaAs(ガリウム砒素)等のいずれかの単結晶で構成されている。
また、電極A(アノードA),電極C(カソードC)は、Pt(白金),Au(金),In(インジウム)等のいずれかの材料が用いられる。
なお、以下の説明では、半導体材料SはCdTeの単結晶をスライスしたものであるとする。また、検出する放射線は、PET装置1で用いる511keVのγ線であるとする。
図4に示す半導体材料S(検出素子211)の1層の厚さは、例えば、0.5〜1.5mmである。アノードAおよびカソードCの厚みはそれぞれ約20μmである。
この図4に示される積層構造の検出器21は、アノードA同士、カソードC同士が共通で接続されていることから、各層それぞれが他の層とは独立に放射線を検出する構成ではない。換言すると、γ線と半導体材料Sとが相互作用を起こした場合、最上層で起こしたのか、最下層で起こしたのか等を判別しない構成である。もちろん、各層ごとに検出するような構成とすることもできる。
ちなみに、このように5層構造としているのは、半導体材料Sの厚さを薄くした方が、γ線検出信号の立ち上がり速度も、波高値も高くなるので検出器として都合が良いが、厚さが薄いと半導体材料Sと相互作用をせずに素通りしてしまうγ線が多くなることから、電荷の収集効率を高めつつ、素通りをしてしまうγ線の量を少なくして、半導体材料Sとγ線との相互作用を増やすため、つまり、カウント数を増やすためである。
このような積層構造の検出器21の構成とすることで、より良好なγ線検出信号の立ち上がりとより正確な波高値が得られると共に、半導体材料Sと相互作用を起こすγ線のカウント数を増やすこと、つまり、感度を上昇させることを両立できる。
電極(アノードA,カソードC)の面積は、4〜120mm2が好ましい。面積の増加は検出器21の容量(浮遊容量)を増加させ、この浮遊容量の増加により、ノイズが増加するため、電極の面積は極力小さいほうが良い。また、γ線検出時に発生した電荷は、浮遊容量に一部蓄積されるので、浮遊容量が増加するとアナログASIC24(図7参照)の前置増幅器24aで蓄積される電荷量、ひいては出力電圧(波高値)が減少する問題が発生する。検出器21としてCdTeを使用する場合、その比誘電率は11であり、検出器21の面積を120mm2、厚さを1mmとするとその容量は12pFとなり回路のコネクタ等の浮遊容量が数pFであることを考えると無視できなくなる。従って、電極の面積は、120mm2以下が好ましい。
また、電極の面積の下限値は、PET装置1の位置分解能から決定される。
なお、以上の説明では、γ線と相互作用を起こす半導体材料SをCdTeとしたが、半導体材料SがCdZnTe,TlBrやGaAs等であっても良いのはいうまでもない。
(結合基板;検出器基板とASIC基板)
次に、検出器ユニット2内に設置される結合基板(ユニット基板)20の詳細構造を、図6を用いて説明する。図6の(a)は結合基板を示した正面図であり、(b)は同(a)の側面図である。
結合基板20は、両面に複数の検出器21が設置された検出器基板20Aと、両面にコンデンサ22,抵抗23,アナログASIC24,アナログ/デジタル変換器(以下、ADCという)25が設置され、片面にデジタルASIC26が設置されたASIC基板20Bと、をコネクタC1で接続したものである。
(検出器基板)
図6の(a)に示すように、検出器基板20Aには、基板本体20aの片面上に、被検体Pの体軸方向に対応する図6の(a)における横方向一列に、例えば、16個の検出器21が配列され、さらに、被検体Pの体軸に対して径方向に対応する図6の(a)における縦方向に4列配列され、つまり、横16個×縦4個の合計64個の検出器21が格子状に配設されている。また、図6の(b)に示すように、検出器基板20Aの他の面にも同様に検出器21が設置され、1つの検出器基板20Aには、両面合計で128個の検出器21が配設されている。
ここで、検出器21の数が多くなるほどγ線を検出し易くなり、かつ、γ線検出の際の位置精度を高めることができるので、検出器21は、極力密に検出器基板20A上に配設される。
ちなみに、図6の(a)において、ベッド14上の被検体Pから放出されたγ線が、図面の下方から上方(矢印32の方向、すなわち、カメラ11の半径方向)に進行する場合、検出器基板20Aにおける左右方向の検出器21の配置を密にした方が、素通りするγ線の数(検出器21同士の隙間を通過するγ線の数)を減らすことができるので好ましい。これにより、γ線の検出効率を高めることになり、得られる画像の体軸方向の空間分解能を高めることができる。
なお、本実施の形態の検出器基板20Aは、図6の(b)に示すように、検出器21を基板本体20aの両面に設置しているので、片面にしか設置しない場合よりも、基板本体20aを両面に搭載することにより共有化できる。このため、基板本体20aの数を半減することができ、被検体Pの体軸の周方向により密に検出器21を配置することができる。併せて、前記のように、検出器基板20A(結合基板20)の枚数を半分に減らせる。
前記説明では、横16個の検出器21は、カメラ11において、被検体Pの体軸方向に配置される構造としたが、それに限定されない。例えば、横16個の検出器21を、カメラ11において被検体Pの体軸に対して周方向に配置する構造としても良い。
また、検出器21は、図5の(b)に示す電極A,Cの面を基板本体20aの面に平行にして配設しても良いし、また、電極A,Cの面を基板本体20aの面に垂直にして配設しても良い。
各検出器21のアノードAとカソードCの間には、電荷収集のために、例えば、高圧電源27(図8参照)により500Vの電位差(電圧)が印加されている。この電圧は、ASIC基板20B側からコネクタC1(図6の(a)参照)を介して検出器基板20A側へ供給される。また、各検出器21がγ線を検出したときに出力するγ線検出信号は、コネクタC1を介してASIC基板20B側へ供給される。このため、検出器基板20Aの基板本体20a内には、コネクタC1と各検出器21を接続する図示しない基板内配線(検出器印加電圧用,信号授受用)が設けられている。この基板内配線は多層構造をしている。検出器基板20Aは、各検出器21にそれぞれ接続される基板内配線と接続しているコネクタC1を有し、後記するASIC基板20BのコネクタC1と接続する構造である。
(ASIC基板)
次に、図6を参照しながらASICを搭載したASIC基板20Bを説明する。図6の(a)に示すように、ASIC基板20Bは、基板本体20bの両面に2個ずつアナログASIC24が設置され、片面に1個のデジタルASIC26が設置されている。つまり、1つのASIC基板20Bは合計4個のアナログASIC24と1個のデジタルASIC26を有する。
また、ASIC基板20Bは、基板本体20bの片面に16個ずつ計32個のADC25を有する。また、1つの基板本体20bの両面には、コンデンサ22および抵抗23が検出器21の数に対応した数だけ設置されている。また、これらの、コンデンサ22,抵抗23,アナログASIC24,ADC25,デジタルASIC26を電気的に接続するため、ASIC基板20B(基板本体20b)内には、前記した検出器基板20Aと同様に図示しない基板内配線が設けられている。この基板内配線も積層構造をしている。
これらの各回路素子22,23,24,25,26の配列および基板内配線は、検出器基板20Aから供給された信号が、コンデンサ22,抵抗23,アナログASIC24,ADC25,デジタルASIC26の順に供給されるようになっている。
なお、ASIC基板20Bは、各コンデンサ22に接続される基板内配線にそれぞれ接続されて検出器基板20Aとの電気的接続を行うコネクタC1と、データ処理装置12側(後記するユニット統合FPGA側)との電気的接続を行う基板コネクタC2とを有している。
(検出器基板とASIC基板の接続構造)
検出器基板20AとASIC基板20Bとは、図6の(b)に示すように、端部近傍に重なり合うオーバラップ部分を設けて、これらのオーバラップ部分に存在する互いのコネクタC1同士を接続する。この接続は、締結用のネジ等により着脱自在(分離・接続自在)に行われる。
なお、このような接続を行うのは、検出器基板20AとASIC基板20Bとが接続(結合)された結合基板20を、水平方向に片端支持(片持ち支持)や両端支持すると、結合基板20の中央部(接続部分)には、該結合基板20を下方に撓ませたり曲げたりする力が作用するので、接続部分が端面同士を突き合わせたものである場合は、接続部分が撓み易かったり折れ曲がり易かったりするので、接続部分の強度を増すためである。
コネクタC1としては、電気的な接続を良好にするため、例えば、スパイラルコンタクト(登録商標)が使用される。スパイラルコンタクト(登録商標)は、螺旋状の接触子にボール状の接続端子が広い面積で接触して良好な電気的な接続が図られるという特性を有する。
なお、ボール状の接続端子がASIC基板20B側に設けられる場合は、螺旋状の接触子は検出器基板20A側に設けられ、ボール状の接続端子が検出器基板20A側に設けられる場合は、螺旋状の接触子はASIC基板20B側に設けられる。
このような、検出器基板20AとASIC基板20Bとの電気的な接続構造を用いることで、信号を検出器基板20AからASIC基板20Bへと、低損失で伝送することができる。損失が少なくなると、例えば、検出器21としてのエネルギ分解能が向上する。
前記の構成は、ASIC基板20Bに1つの検出器基板20Aを接続しているが、検出器基板を複数に分割しても良い。例えば、横方向に8個、縦方向に4個の検出器21を1つの基板実装とし、2枚の検出器基板をASIC基板に接続する構成でも良い。
また、検出器基盤20AとASIC基板20Bとを、1枚の通しの基板本体で構成しても良い。
次に、図7から図9を参照しながらASIC基板上の各回路素子の構成および機能について説明する。
図7はアナログASICおよびデジタルASICそれぞれの概略構成、およびアナログASICとデジタルASICの接続関係を示した検出器ユニットのブロック図である。(アナログASIC)
図8はアナログASICの機能構成を模式的に示したブロック図である。
図8に示すように、1個のアナログASIC24は、1つの電荷有感型前置増幅器(以下、前置増幅器と称する)24aと、それに接続する1つのファースト系24Aおよび2つのスロー系(第1のスロー系24B,第2のスロー系24C)と、を有するアナログ信号処理回路33を、例えば、32組備えている。1個のアナログASIC24は32組のアナログ信号処理回路33をLSI化したものである。
アナログ信号処理回路33は検出器21ごとに設けられ、1つのアナログ信号処理回路33は1つの検出器21に接続される。ここで、ファースト系24Aは、前置増幅器24aから出力されるγ線検出信号VBにもとづいてγ線の検出時刻を特定するためのタイミング信号VTを出力するコンパレータ24bと、コンパレータ24bに入力される閾電圧値VLDを設定する閾値制御回路24cとを有している。また、第1のスロー系24Bは、γ線検出信号VBにもとづいてγ線の検出エネルギ(波高値)VE1を求めることを目的として、所定の時定数を有する波形整形回路24d,ピークホールド回路24eがこの順序に接続されて設けられている。同様に、第2のスロー系24Cは、γ線検出信号VBにもとづいてγ線の検出エネルギ(波高値)VE1のうちの電子の寄与分の波高値VE2を求めることを目的として、波形整形回路24dのものより短い所定の時定数を有する波形整形回路24f,ピークホールド回路24gがこの順序に接続されて設けられている。
ちなみに、スロー系24B,24Cは、波高値を求めるためにはある程度の処理の時間を要することから「スロー」という名前が付いている。検出器21から出力されてコンデンサ22を通過した信号は、前置増幅器24aで増幅されγ線検出信号VBとして出力され、さらに波形整形回路24d,24fで増幅され、信号VS1,VS2としてそれぞれピークホールド回路24e,24gに入力される。ピークホールド回路24eは、後記するように波形整形されたγ線検出信号VS1の最大値、つまり検出したγ線のエネルギ値に比例した波高値VE1を保持する。ピークホールド回路24gは、後記するようにγ線検出信号VBのうちの電子の寄与分に相当する波形整形されたγ線検出信号VS2の波高値VE2を保持する。
なお、コンデンサ22および抵抗23をアナログASIC24の内部に設けることもできるが、適切なコンデンサ容量や適切な抵抗値を得るため、および、アナログASIC24の大きさを小さくする等の理由から、本実施の形態では、コンデンサ22および抵抗23は、アナログASIC24の外に配置されている。
ちなみに、コンデンサ22および抵抗23は、外部に設けた方が、個々のコンデンサ容量や抵抗値のバラツキが少ないとされている。
アナログASIC24の第1のスロー系24Bの出力は、ADC25Aに、第2のスロー系24Cの出力は、ADC25Bに供給されるようになっている(図8参照)。さらに、アナログASIC24のファースト系24Aの出力およびADC25A,25Bの出力は、デジタルASIC26に供給されるようになっている。
ここで、各アナログASIC24とデジタルASIC26は、32チャンネルのファースト系24Aの信号を1つ1つ送信する32本の配線で接続されている(図7参照)。また、アナログASIC24と各ADC25A,25Bとの間、および各ADC25A,25BとデジタルASIC26との間は、検出器21の8チャンネル分のスロー系24B,24Cの信号をそれぞれ纏めて送信する1本の配線でそれぞれ接続されている(図7参照)。
さらに、デジタルASIC26からは、8チャンネル分のアナログ信号処理回路33に対応して1対が対応付けられたADC25A,25Bを同時に制御する1本のADC制御信号線、および各アナログASIC24の1つのアナログ信号処理回路33のピークホールド回路24e,24gを同時に制御するための8チャンネル分を1本に纏めたピークホールド制御信号線が出ており、ADC25A,25Bおよびアナログ信号処理回路33に接続されている。
なお、前記したピークホールド制御信号線は8チャンネル分を1本に纏めることなく、デジタルASIC26から各アナログ信号処理回路33に対して1本ずつ配線するようにしても良い。
(デジタルASIC)
次に、図7,図9を参照しながらデジタルASIC26について説明する。
図9はデジタルASICの機能構成を模式的に示したブロック図である。デジタルASIC26は、図7に示すように、8個のタイミング検出部35および1個の検出器制御部36を含む検出信号処理部34を16組と、1個のデータ転送部37とを有しており、これらをLSI化したものである。
PET装置1に設けられた全てのデジタルASIC26は、図示されていない、例えば、500MHzのクロック発生回路(水晶発振器)からのクロック信号を受け、同期して動作している。各デジタルASIC26に入力されたクロック信号は、全ての検出信号処理部34内のそれぞれのタイミング検出部35に入力される。
タイミング検出部35は、検出器21ごとに設けられ、該当するアナログ信号処理回路33のコンパレータ24bからタイミング信号VTが入力される。タイミング検出部35はタイミング信号VTが入力された時のクロック信号にもとづいてγ線の検出時刻を決定する。タイミング信号VTは、アナログASIC24のファースト系24Aの信号にもとづくものであるので、真の検出時刻に近い時刻を検出時刻(検出時刻情報)とすることができる。
検出器制御部36は、アドレス演算部36a,検出時刻補正部36b,検出エネルギ補正部36c,パケットデータ生成部36d,ノイズ判定部36e,ノイズカウント部36f,検出器出力信号処理制御部(以下、制御部と称する)36gを有している。
アドレス演算部36aは、タイミング検出部35からγ線を検出したタイミング信号VTに対応する検出時刻情報を受け、その検出器IDを特定し、検出器IDを検出時刻補正部36b,検出エネルギ補正部36c,パケットデータ生成部36d,ノイズ判定部36eに出力する。すなわち、アドレス演算部36aは、アドレス演算部36aに接続される各タイミング検出部35に対する検出器IDを記憶しており、あるタイミング検出部35から検出時刻情報が入力されたとき、そのタイミング検出部35に対応する検出器IDを特定できる。これは、タイミング検出部35が検出器21ごとに設けられていることにより可能となる。
さらに、アドレス演算部36aは、時刻情報を入力された後、前記特定された検出器IDを含むアナログ信号処理回路33にピークホールド制御信号を出力し、また、検出器IDとADC制御信号をADC25A,25Bに出力する。
なお、アドレス演算部36aは、図示しない不揮発メモリを有し、後記する異常と判定された検出器IDを記憶し、タイミング信号VTにより特定した検出器IDが異常と判定された検出器IDと一致する場合は、ピークホールド制御信号およびADC制御信号を出力しない。
ピークホールド制御信号を受けたアナログ信号処理回路33のピークホールド回路24e,24gは、波形整形回路24d,24fから入力される信号に対してピークホールド処理をする。そして、所定時間後にアドレス演算部36aからリセット信号を受け、ピークホールド処理を解除する。ADC25A,25Bは、アドレス演算部36aから入力された検出器IDに対応するアナログ信号処理回路33のピークホールド回路24e,24gから出力された波高値(電圧値)VE1,VE2を、デジタル信号に変換してノイズ判定部36eに出力する。
ノイズ判定部36eは、図示しない不揮発メモリを有し、そこにノイズか否かを判定するために用いる2つの波高値VE1,VE2の相関関係データを記憶しており、入力された波高値VE1,VE2からノイズ信号かγ線検出信号かを判定する(詳細は後記する)。ノイズ判定部36eは、γ線検出信号と判定した場合は、ノイズカウント信号を出力せず、波高値VE1,VE2を検出エネルギ補正部36cに出力する。
検出エネルギ補正部36cは、図示しない不揮発メモリを有し、予め収集された校正データを基に各検出器21,アナログASIC24のゲインおよびオフセットの各補正値を前記不揮発メモリに記憶している。そして、検出エネルギ補正部36cは、アドレス演算部36aから入力された検出器IDに対応した前記補正値を用いて波高値VE1,VE2から補正された波高値VE1′,VE2′算出し、それを検出時刻補正部36bに出力する。また、検出エネルギ補正部36cは、補正された波高値VE1′,VE2にもとづき、検出γ線のエネルギに対応した検出エネルギ値情報を生成してパケットデータ生成部36dに出力する。
ノイズ判定部36eがノイズ信号と判定した場合は、ノイズカウント信号を検出器IDとともにノイズカウント部36fに出力し、リセット信号をパケットデータ生成部36dに出力し、波高値VE1,VE2は検出エネルギ補正部36cに出力しない。
ノイズカウント部36fは、図示しない不揮発メモリまたは揮発メモリを有し、検出器IDごとにノイズカウントを計数し記憶し、所定の基準値以上のとき当該の検出器21を異常と判定し、制御部36gに出力する。また、制御部36gは、図示しない不揮発メモリを有し、ノイズカウント部36gからの異常判定出力を記憶し、それにもとづいて異常と判定された検出器IDに対応する検出器21からの出力信号に対する検出器制御部36におけるデータ処理を制御する。
検出時刻補正部36bはアドレス演算部36aから入力された検出時刻情報を検出エネルギ補正部36cから入力され補正された波高値VE1′,VE2′にもとづいて補正し、パケットデータ生成部36dに出力する。
パケットデータ生成部36dは、検出エネルギ補正部36cからの検出エネルギ値情報に、補正された検出時刻情報および検出器IDを付加してデジタル情報であるパケットデータ(検出γ線情報,検出放射線情報)を生成し、データ転送部37に出力する。データ転送部37は、各検出信号処理部34のパケットデータ生成部36dから出力されたパケットデータを、例えば、定期的に12枚の結合基板20を収めている検出器ユニット2(図15,図16参照)の筐体30の外側に1個設けられているユニット統合FPGA(Field Programmable Gate Array、以下、FPGAと称する)31に送信する。FPGA31は、それらのデジタル情報をコネクタ38に接続された情報伝送用配線を介してデータ処理装置12に送信する。
なお、検出時刻補正部36bにおける検出時刻情報の補正方法、ノイズ判定部36eにおけるγ線検出信号かノイズかの判定方法、ノイズカウント部36fおよび制御部36gの詳細な動作は後記する。
(検出器ユニット;結合基板の収納によるユニット化)
次に、前記した結合基板20の筐体30への収納によるユニット化を説明する。
図10に示すように、検出器ユニット2は、12枚の結合基板20、この12枚の結合基板20に電荷収集用の電圧を供給する高圧電源装置PS,FPGA31、外部との信号の授受を行う信号用のコネクタ、外部から電源の供給を受けるための電源用のコネクタ等を収納したり保持したりする筐体30(図11参照)等を備える。
図10および図11に示すように、結合基板20は、奥行方向(被検体Pの体軸方向)には重なり合わないように3列、カメラ11の周方向には4枚並んで筐体30内に収められている。つまり、1個の筐体30には、結合基板20が12枚収納されている。このように収納するため、奥行方向に伸びる1条のガイド溝G1を周方向に適宜離間して4列備えるガイド部材39が、筺体30の上端部に取り付けられている。ガイド部材39は、各ガイド溝G1の部分に、天板30aの各コネクタC3と対向する位置にそれぞれ開口40を有する。
さらに、奥行方向に伸びる1条のガイド溝G2を有する4つのガイド部材41が、周方向に適宜離間して筐体30の底板30bの上面に取り付けられている(図11参照)。ガイド溝G1,G2は、結合基板20を3枚収納する分の奥行を持っている。結合基板20のASIC基板20B側端部がガイド溝G1に、結合基板20の検出器基板20A側端部がガイド溝G2に、それぞれ挿入される。3枚の結合基板20がガイド溝G1,G2の奥行方向に並んで保持されるようになっている。
ちなみに、結合基板20は、ASIC基板20B側端部と検出器基板20A側端部がガイド溝G1,G2内で摺動するようになっているので、指等で結合基板20を、ガイド溝G1,G2内を滑らして所定の箇所に容易に位置させることができる。このとき、各基板コネクタC2はそれぞれ開口40の部分に位置している。所定枚数の結合基板20が筺体30内に配置された後、天板30aが筺体30の上端にネジ等で着脱自在に取り付けられる。天板30aに設けられた各コネクタC3は、該当する開口40内に挿入されて該当する基板コネクタC2に接続される。
なお、筐体30の上部,下部とは、筐体30をカメラ11から取り出した場合のことであり、図2に示されるように、筐体30がカメラ11に備えられた場合には、上下が反転したり、上下が90°回転して左右になったり、斜めになったりする。
筐体30の天板30aには、図11に示すように、前記した4列のガイド溝G1が備えられるほかに、FPGA31およびコネクタ38(図10参照)が備えられる。コネクタ38はFPGA31に接続される。FPGA31は、現場でプログラムを組むことができる。この点、プログラムを組むことができないASICとは異なる。従って、本実施の形態のように、FPGA31では、例えば、収納する結合基板20の数や種類が変わった場合でも、結合基板枚数の変化にも適切に対応することができる。
なお、本実施の形態で用いているCdTeを半導体材料Sとする検出器21は、光に反応して電荷を発生することから、筐体30はアルミニウムやアルミニウム合金といった遮光性を有する材料から構成されると共に、光が侵入する隙間をなくすようにしてある。即ち、筐体30は遮光性を有する構成をしている。ちなみに、遮光性が他の手段により確保される場合は、筐体30はそれ自体が遮光性を有する必要はなく、検出器21を着脱自在に保持する枠(枠体)で良い。例えば、筐体30を枠構造とし、遮光用の面材等は不用とすることができる。
また、検出ユニット2内の全結合基板20のデータ転送部37から出力されたパケットデータ(結合基板20の全検出器21に対する全パケットデータ)が、検出ユニット2に設けられたFPGA31からデータ処理装置12に送られる。
(電源)
次に、電荷収集用の電圧を供給する高圧電源装置PSについて説明をする。図10に示すように、検出器ユニット2は、FPGA31の裏面側で筺体30内に、導体金属材料で構成された隔壁30cによって形成される空間に、各検出器21に電荷収集用の電圧を供給する高圧電源装置PSを設置している。この高圧電源装置PSは、低圧の電源を供給され、図示しない電圧を昇圧するDC−DCコンバータにより電圧を500Vに昇圧して各検出器21に供給するようになっている。ちなみに、検出器21は、検出器基板20A1枚について、片面で64個、両面で128個備えられている。そして、この結合基板20が1つの筐体30には12枚収納される。よって、高圧電源装置PSからは、128×12=1536個の検出器21に電圧が供給される。
本実施の形態では、検出器ユニット2に内蔵する高圧電源装置PSが、天板30aに設けられた電源用のコネクタ42およびコネクタ38を介して電源配線により外部の低電圧(5〜15V)の直流電源に接続されている。高圧電源装置PSの高電圧側端子は、天板30aに設けられたコネクタ43を介して、天板30aに設けられた12個のコネクタC3に高圧電源配線44によりそれぞれ接続されている。図10では高圧電源配線44は1本のみが例示としてコネクタ43からコネクタC3に接続するように表示してあるが、実際にはコネクタ43から高圧電源配線44が各コネクタC3に配線されている。
高圧電源は、コネクタC3,各結合基板20のコネクタC2,基板本体20b内の図示しない高圧電源配線,コネクタC1および基板本体20a内の図示しない高圧電源配線を介して基板本体20aに設けられた各検出器21の電極Cにそれぞれ接続される。コネクタC1,C2は、検出器21の出力信号を伝えるコネクタ以外に、高圧電源配線用のコネクタを含んでいる。
ちなみに、コネクタ38から高圧電源装置PSに供給された電圧は、高圧電源装置PS内の図示しないDC−DCコンバータにより500Vに昇圧され、昇圧後、筐体30の天板30a内を通って、結合基板20ごと、ASIC基板20B→検出器基板20A→各検出器21へと供給される。即ち、筐体30(天板30a)は、高圧電源装置PSから各結合基板20へ電圧を供給する図示しない電圧供給用の配線を備える。また、各結合基板20は、基板コネクタC2を介して高圧電源装置PSから供給された電圧を、各検出器21に供給する電圧供給用の配線を備える。
なお、天板30aを介してではなく、高圧電源装置PSを、直接、基板本体20aに設けた高圧電源配線にコネクタを介して接続しても良い。また、高圧電源用のコネクタは、検出器21の出力信号用のコネクタから分離して配置しても良い。
《アナログASICおよびデジタルASICの動作説明》
次に、図12から図16を参照しながら本発明の特徴である検出器出力信号に対する処理について説明する。
(アナログASICの動作説明)
図12の(a)は検出器21を簡単な単層でモデル化し、検出器21からの出力電流パルスIAからコンパレータ24bが電圧信号であるタイミング信号VTを出力する部分を示す図である。
図12の(b)は、(a)における前置増幅器24aの入力側に発生する電流パルスIAの波形と、この電流パルスIAを前置増幅器24aで電圧信号に変換することにより出力として得られる電圧信号VB、すなわち、コンパレータ24bの入力側に現れる電圧信号VBの波形と、この電圧信号VBにもとづき、所定の電圧VLDを閾値としてコンパレータ24bから出力される、タイミング信号VTとの関係を示す図である。
検出器21は、カソードC,アノードAの両電極は、高圧電源27と、コンデンサ22を介して抵抗23とに接続され、抵抗23側のアノードAは前置増幅器24aの入力側に接続されている。前置増幅器24aの出力側はコンパレータ24bの入力側(+)に接続され、閾値制御回路24cからの出力電圧VLDがコンパレータ24bの基準側(−)に接続されており、出力電圧VBが所定の電圧閾値VLD以上となると、コンパレータ24の出力端子に現れるタイミング信号VTが反転する。
検出器21にγ線が入射して吸収されると、吸収されたγ線エネルギに応じた電子・正孔対が発生し、高圧電源27により印加した電界に引かれて、電子はアノードA側に、正孔はカソードC側に移動する。この電子と正孔の移動が、前置増幅器24aの入力側に発生する電流パルスIAとなる。検出器21は有限の大きさがあり、γ線が吸収された位置により、電流パルスIAの出力信号波形が変化する。これはγ線が、検出器21のカソードC近傍に入射した場合は、発生した電子が電流パルスIAに寄与する割合(以下、「電子寄与率」という)が大きく、反対にアノードA近傍で吸収された場合は、発生した電子が電流パルスIAに寄与する割合が小さいためである。電子と正孔との移動度(移動の速度)は一般的に10倍以上の差で電子のほうが高いため、検出器21で吸収される位置に依存して、検出器21の出力する電流パルスIAの波形(出力信号波形)が変化する。アノードAとカソードCとの距離をL0、アノードAと電子・正孔対発生場所との距離をLxとすると、Lx/L0=1のときには検出器21の検出したエネルギはほぼ電子の移動による電流となる。また、Lx/L0=0.5では、電子と正孔の寄与する電流が半分ずつになる。また、Lx/L0=0では発生した電流はほぼ正孔の移動に依存したものとなる。
検出器21のカソードC付近でγ線の吸収が起きた場合には、電圧信号VBは電子寄与率がほぼ1(100%)の信号波形となるため、最も早いタイミング検出となる。また、アノードAとカソードCの間でγ線の吸収が起きて電子寄与率が0.5(50%)の場合、前者に比べて遅いタイミングでの立ち上がりの電圧信号VBを出力する。また、アノードA付近でγ線の吸収が起きた場合には、電圧信号VBは電子寄与率がほぼ0(0%)の信号波形となるため、最も遅いタイミングでの立ち上がり信号を出力する。検出器21の構成や検出器21に印加される電圧の値にも依存するが、一般にPET装置1で用いる場合、検出器21内の電子の移動時間(te)は20nsec(ナノ秒)〜50nsecであり、検出器21内の正孔の移動時間(th)は200nsec〜500nsec程度となる。この場合、コンパレートする電圧閾値VLDにも依存するが、最も早いタイミング検出と、最も遅いタイミング検出の時間差は200nsec〜300nsec程度になり、半導体放射線検出器21を用いた場合の同時計測において大きな問題となる。
図13の(a)は、検出器21における放射線の散乱および吸収について説明した図であり、具体的には、散乱が起きたときのエネルギ吸収スペクトルを示す。横軸にγ線の検出エネルギを、縦軸に頻度を示す。検出器21は検出したγ線のすべてのエネルギを吸収するとは限らず、素子の材質と、形状と、γ線のエネルギとに統計的に依存し、確率的に吸収または散乱を起こすことが知られている。検出器21により出力された信号にもとづくピークホールド回路24eが出力する波高値(電圧値)VE1は、検出器21が吸収したγ線エネルギに比例する波高値VE1であるから、この波高値VE1を以って、ここではγ線の検出エネルギを表すこととする。検出エネルギVE1がある値を超えると、吸収の発生する頻度がある値(ここでは511keV)でピークに達する。このとき、散乱の発生する度合が最も小さくなっている。
図13の(b)は、検出器21においてγ線の散乱,吸収が起こったときの様子を示す図であり、図13の(c)は、図13の(b)における前置増幅器24aの入力側に発生する電流パルスIAの波形と、この電流パルスIAを前置増幅器24aで電圧信号に変換することにより出力として得られる電圧信号VBと、この電圧信号VBにもとづきコンパレータ24bから出力される、タイミング信号VTとの関係を示す図である。
検出器21にγ線が入射して吸収したエネルギに応じた電子・正孔対を発生し、印加された電圧により生じた電界に引っ張られて、電子はアノードA側に、正孔はカソードC側に移動する。この電子と正孔の移動が、前置増幅器24aの入力側に発生する電流パルスIAとなる。ここでは一例として入射する放射線のエネルギが511keVの場合を示しており、アノードAとカソードCの間の同じ位置において、すべてのエネルギが吸収された場合(図の左側)と、半分のエネルギが吸収され残りの半分のエネルギが散乱された場合(図の右側)とを示している。図13の(c)の電流パルスIAどちらの場合も発生した電子および正孔がそれぞれアノードAおよびカソードCに移動する時間teは変わらないが、前者と比較して、後者は検出器21から出力される電流値が半分となる。
電子寄与率が100%の場合の電圧信号VBの波形を例に説明すると、検出エネルギが変化した場合、例えば、一方が511keVで他方が255keVの場合、検出器21内のカソードC近傍で発生する電子の数が変化し、その電流パルスIAの時間幅(電子の移動時間)teは両者で差異はないが、電流値(パルスの高さ)で差異が生じるため、コンパレータ24bの入力側の電圧信号VBの波形は、511keVの場合よりも255keVの場合のほうが傾きは小さくなるという差異が生じる。従って、コンパレータ24bにて一定の電圧閾値VLDでコンパレートすると、511keVの場合に比べ、255keVの場合のほうに時間t2だけ遅れが発生する。
図8に戻ると、波形整形回路24dの時定数は、例えば、1000nsec、波形整形回路24fの時定数は、例えば、50nsecとする。検出器21で発生した電子・正孔対は前置増幅器24aにより電圧信号VBに変換された後、コンパレータ24から所定の電圧閾値VLDにより弁別されたタイミング信号VTを出力する。また、電圧信号VBは、波形整形回路24dを通じて雑音除去と波形整形とが施され、γ線検出エネルギE1に対応する電圧信号VS1に変換され、ピークホールド回路24eでその波高値VE1が出力される。電圧信号VBは、波形整形回路24fを通じて電子・正孔対のうち電子の移動度に応じた時定数、50nsecでフィルタされた電子の移動のみが寄与したγ線検出エネルギE2に対応する電圧信号VS2に変換され、ピークホールド回路24gでその波高値VE2が出力される。
図14は、図8における各出力信号VB,VT,VS1,VE1,VS2,VE2の過渡的な応答波形を示す図である。電圧信号VBが電圧閾値VLD以上となったところで、タイミング信号VTがLowレベルからHiレベルへと変化し、波形整形回路24dおよび波形整形回路24fそれぞれの出力VS1およびVS2のピーク値をピークホールド回路24eおよびピークホールド回路24gがホールドする。波形整形回路24dの前記した時定数1000nsecは、検出器21内の正孔の移動時間より長い時定数に設定して通過帯域を広くし、電子寄与分と正孔寄与分と両方の信号成分を合わせた全てのγ線検出信号VBが通過するようにしてある。一方、波形整形回路24fの前記したフィルタ時定数50nsecは、検出器21内の電子の移動時間と同等レベルの時定数に設定して通過帯域を狭くし、γ線検出信号VBのうちの電子寄与分以外の信号成分が極力通過しないようにしてある。このように設定することで、検出エネルギと電子寄与率に対する情報を得ることができる。
(ノイズ判定部の動作)
前記したように検出器21においてγ線を検出した場合の前置増幅器24aから出力される電圧信号VBは、カソードCとアノードAの位置に依存するが、γ線検出信号特有の時間変化分布を持つ。そのため、時定数1000nsecの波形整形回路24eと時定数50nsecの波形整形回路24gから出力される出力信号のそれぞれの波高値VE1と波高値VE2との間には、検出エネルギ、検出器21内での吸収されるアノードAとカソードC間の位置に応じて図15中の領域81〜83の1点に対応する相関関係がある。
図15は波高値VE1と波高値VE2の相関関係を示す図であり、横軸に電子寄与分の波高値VE2、縦軸に電子と正孔の両方の寄与を含む波高値VE1をプロットしたものである。図15において、領域81は電子寄与分が支配的な場合の領域であり、領域83は正孔の寄与分が高い場合の領域であり、領域82は電子の寄与に正孔の寄与が一部加わった場合である。
そして、領域80はノイズ信号の場合である。ノイズ信号は、必ずしもδ関数的なスパイク波形とは限らず、時間スケールで幅広の波形もある。
ノイズ判定部36eは、図示しない不揮発メモリを有し、その不揮発メモリにはあらかじめ図16に示すような波高値VE1,VE2をパラメータとした相関関係のテーブルデータを記憶させ、ノイズ判定部36eが前記不揮発メモリに記憶された相関関係のテーブルデータにもとづき、入力された波高値VE1,VE2が領域80に対応する場合ノイズ信号であると判定する処理をする。
なお、図16に示した相関関係を示すテーブルデータの代わりに、図15の領域の境界の傾きを示す数式を前記不揮発メモリに記憶させても良いが、領域81,82,83を合わせた領域と領域80との境界が直線ではないので、正確なノイズ判定をするにはテーブルルックアップ形式の方が良い。
ノイズ判定部36eは、入力された波高値(電圧値)VE1,VE2にもとづき、γ線検出信号VS1が本来のγ線検出に起因するγ線検出信号であると、つまり、ノイズ信号ではないと判定した場合は、ノイズカウント信号を出力せず、2つの波高値VE1,VE2を検出時刻補正部36bに出力し、波高値VE1をパケットデータ生成部36dに出力する。ノイズ判定部36eがノイズ信号と判定した場合は、ノイズカウント信号をノイズカウント部36fに出力し、リセット信号をパケットデータ生成部36dに出力し、波高値VE1,VE2は検出時刻補正部36bに出力せず、また波高値VE1はパケットデータ生成部36dに出力しない。
したがって、ノイズ信号と判定された場合、検出時刻補正部36bにおける後記する検出時刻情報の補正や、パケットデータ生成部36dから同時計測処理をするデータ処理装置12に不要なデータを出力しないので、デジタルASIC26の負荷が軽減され、下流側での信号処理の負荷も軽減される。
(ノイズカウント部)
また、ノイズカウント部36fは、8チャンネル分の検出器21に対するノイズ信号と判定された回数を記憶する不揮発メモリ機能を有している。ノイズ判定部36eからノイズカウント信号を入力されたとき、入力される検出器IDにもとづき、当該の検出器IDのノイズカウント数を1回分加算して記憶する。そして、ノイズカウント部36fは、1回分加算ごとに所定の基準値を超えているかどうかチェックし、あらかじめ設定された所定の基準値を超えている場合は、異常判定をして(不良と判定して)検出器IDと異常判定を制御部36gに出力する。異常判定をした検出器IDにたいするノイズカウント値を0にリセットし、新しく計数を始める。
ここで、ノイズカウント部36fは、一定時間ごとのノイズカウントをして、一定時間後に自動的に0カウントにリセットする方式でも良い。
(検出器出力信号処理制御部の動作)
制御部36gは、不揮発メモリ機能を備え、異常判定を受信した場合、システムクロックにもとづく異常判定時刻と検出器IDを記憶するとともに、アドレス演算部36aに当該の検出器IDを入力し、記憶させる。
アドレス演算部36aでは、記憶した検出器IDに該当する検出器21のチャンネルのタイミング信号VTが入力されてもアドレス演算を行なわず検出器IDを出力しないことにより、検出器制御部36におけるデータ処理を行わせない。つまり、異常な検出器21に対しては、アドレス演算部36aはADC制御信号を出力しないのでADC25A,25Bによってピーク値が読み出されず、VE1,VE2を用いた演算処理は行われない。
また、制御部36gは、パケットデータ生成部36dに、検出器ID、異常判定した時刻情報を含む不良情報を出力して、データ処理装置12に送信し、不良情報を経時的に並べた履歴としてデータ処理装置12の記憶装置に記憶させる。そうすることによって、定期的に操作者が異常な検出器21の分布,時系列的な変化を表示させて点検することができる。
また、制御部36gは、異常判定された検出器IDについて、自身の記憶している前回の異状判定時刻情報にもとづいて新たな異常判定が、PET装置1の作動時間における所定時間以上の経過時間入力されないか否かを判定する。所定時間以上の経過時間にわたってノイズ判定部36eから異常判定が入力されない場合は、アドレス演算部36aに以前記憶させた、当該の異常判定された検出器IDを記憶から消去させる。また、制御部36gは、パケットデータ生成部36dに、検出器ID、異常判定を解除した時刻情報を出力して、データ処理装置12に送信し、不良情報としてデータ処理装置12の記憶装置に記憶させる。
検出器21が埃の付着等によって一時的にノイズ信号を出力するようになり、その埃が検出器21から離れてノイズ信号を出さなくなり正常に戻る場合もあり、このように制御部36gが、アドレス演算部36aに記憶させた異常な検出器IDの情報をリセットすることにより、以後、当該の検出器21のチャンネルのγ線検出信号を検出器制御部36で処理を始めることになる。
なお、制御部36gがノイズカウント部36fから異常判定を受信する代わりに、制御部36gが所定の周期でノイズカウント部36fをチェックして、あらかじめ設定された所定の基準値を超えているかどうかチェックし、異常判定し、ノイズカウント部36fの計数のリセットを制御するものとしても良い。
また、検出器21に対する信号処理を停止する方法は前記した方法に限定されない。例えば、検出器21に個別に供給される高圧電源27をオフすることにしても良いし、アドレス演算部36aにアドレス演算を停止させる代わりに、当該の検出器IDのパケットデータに対して、パケットデータ生成部36dに不良信号であることを示す識別情報である異常フラッグを付加させるようにしても良い。その場合、後流のデータ処理部12では、パケットデータに含まれる異常フラッグを検出して信号処理から除外する。
なお、図9には信号配線を図示省略したが、ノイズ判定部36eで用いる図15に示した相関データ,ノイズカウント部36fで用いる異常判定する基準値等のデータは、操作コンソール13の入力操作部13bを用いてチェックしたり、入れ替えたりすることができる。
(検出時刻情報の補正)
次に、2つのスロー系24B,24Cを有することにより、検出器21でγ線を検出した時刻情報を補正する方法を説明する。
前記した電子寄与率の情報から、図12の(b)に示した検出器21におけるカソードC,アノードA間の間隔のどの位置でγ線エネルギが吸収されたかによる関係を用いて、タイミング信号VTに対する補正値を求めることができる。
各電子寄与率に対応するVBの波形は予め知ることができるから、VTがHiレベルとなった時刻すなわちその電子寄与率に対応するVBの波形がVB=VLDの水平線と交差する時刻と、真のγ線検出のイベント発生時刻との間の時間を求めることがきる。この時間の値を用いてタイミング検出回路35の出力である時刻情報を補正すれば、正しい時刻情報を得ることができる。また、N個の電子寄与率を任意に選び、その各々に対応する補正値を予め算出して検出時刻補正部36bにテーブルとして格納しておけば、電圧信号VE1,VE2が入力される度に補正値を算出する必要がなくなり、信号処理の高速化に有効である。
次に前記したコンプトン散乱が検出器21において起こった場合を考える。その場合でも、図13の(c)に示した検出エネルギによるタイミング信号VTの変化の関係から、タイミング信号VTを正しく補正して時刻情報を得ることができる。
電圧信号VE1は電圧信号VBに比例するから、電圧信号VE1をモニタすることで電圧信号VBの値が求まる。γ線が本来持っているエネルギに相当する電圧値と電圧信号VBとの差分が、散乱によって失われたエネルギに相当する電圧値ということになる。また、電子の移動時間teは検出器21の素子サイズと検出器21にかかる印加電圧とによって一意に決まる値であるから、各電圧信号VBの波形が単調増加から一定に変化する時刻が決まり、2つの波形の単調増加部分の傾きが求まる。これらの波形がVB=VLDの水平線と交差する2つの点の間隔として時間t2を求めることができる。このt2を用いてタイミング信号VTを補正すれば、正しい時刻情報を得ることができる。この場合も同様に、N個の電圧信号VBの値を任意に選び、その各々に対応する補正値を予め算出してテーブルとして検出時刻補正部36bに格納しておけば、電圧信号VE1,VE2が入力される度に補正値を算出する必要がなくなり、PET装置1の高速化に有効である。
図16に電圧VE1と電圧VE2をパラメータにした補正データテーブルを示す。前記した電子寄与率の情報VE2にもとづく補正値と、散乱によってエネルギ量の値が減少した全エネルギ情報VE1にもとづく補正値とで構成された2次元データを要素とする2次元マトリクスとなっている。よって、この補正データテーブルを検出時刻補正部36bが有しておれば、放射線の検出器21におけるγ線エネルギ吸収位置に依存する電子寄与率の変動と、検出器21における放射線の散乱による検出エネルギの変動と、両者の変動によるタイミング信号の真値からのずれの補正を一度に実行することが可能となり、PET装置1の高速化に有効である。
(データ処理装置の作用)
こうして、デジタルASIC26から出力された、(1)検出エネルギ値情報、(2)検出時刻情報、および(3)検出器IDを含むパケットデータは、FPGA31や情報伝送用配線を介して後段のデータ処理装置12(図2参照)に送信される。データ処理装置12の同時計測装置12Aは、デジタルASIC26から送信されたパケットデータをもとに、同時計測処理(設定時間の時間窓で所定エネルギのγ線を2個検出したときは、これらのγ線を、1つの陽電子の消滅により発生した一対のγ線であるか否かを判定して、γ線対だけを画像生成用のデータとして残す処理)を行って、同時計測処理したその一対のγ線を一個として計数し、その一対のγ線を検出した2つの検出器21の位置をそれらの検出器IDより特定する。
データ処理装置12は、前記の時間窓内で検出されたγ線検出信号が3つ以上ある(γ線を検出した検出器21が3つ以上ある)場合に、それらのγ線検出信号の検出エネルギ値情報等を用いて3つ以上あるγ線検出信号のどれが1つの511keVのγ線の入射に伴うコンプトン散乱等による一連のγ線検出信号であるかの判定、そのときのγ線が最初に入射した検出器IDの特定、さらに、511keVの一対のγ線であるか否かを判定し、その後同時計測処理を行う。
特定された一対の検出器21が同時計測されて1つの計数値が生成される。また、データ処理装置12の断層像情報作成装置12Bは、同時計測で得た計数値および検出器21の位置情報を用いて、放射性薬剤の集積位置、すなわち悪性腫瘍位置での被検体Pの断層像情報を作成する。この断層像情報は表示装置13aに表示される。前記のデジタル情報、同時計測で得た計数値および検出器21の位置情報、および断層像情報等の情報は、データ処理装置12の記憶装置に記憶される。
(第1の実施の形態の効果)
図12を用いて説明した検出器21内でのγ線のエネルギを吸収する位置と電子寄与率が変化したときに、検出時刻に遅れが生じる現象は、γ線検出エネルギと電子寄与率とが決定すれば一意に決まるものである。このことは、図13を用いて説明した放射線の散乱が起こった場合でも同様である。
従って、本実施の形態によれば、検出タイミングVT,γ線検出エネルギ(波高値)VE1,γ線検出エネルギのうちの電子寄与分の波高値VE2の情報を、検出器制御部36に伝えることで、タイミング信号VTの補正が可能となる。タイミング検出時刻の分布について、補正前は電子移動度の寄与率の低いものは時刻が遅い側に対して大きくすそのを引いていたのに対して、補正後は真の検出時刻の近傍に観測データのサンプルが集まる結果となる。従って、真の同時刻発生イベントを同時刻とみなせる確率が高くなり、観測データ中の有効イベントが増加する。この結果、半導体放射線検出器21を用いたPET装置1の最大のデメリットである有効データの損失を抑制し、シンチレータを用いた従来のPET装置と同等の撮像時間において、高コントラスト,高分解能の画像を取得することが可能となる。
また、本実施の形態によれば、雑音に対するタイミングばらつきの影響を小さく抑えることができる。雑音は特に検出器21や前置増幅器24aから発生する。特開2002−243858号公報に開示された従来技術は、前置増幅器の出力を電流制御器に通してからコンパレータに通すので、γ線検出信号VBの波形の傾きを緩やかにすることになり、信号強度と雑音強度との比(S/N)が劣化する。本実施の形態では、タイミング信号VTを出力する経路、すなわちファースト系24Aに電流制御器のようなS/Nを劣化される原因となるフィルタに類する特性を持つブロックが存在しない。そのため、S/Nの良好な状態でコンパレートを実行することができ、雑音に対するタイミング信号VTのばらつきを抑制することができる。
ここで、γ線検出エネルギに相当する波高値VE1および電子寄与分の波高値VE2は、いずれもフィルタを介して出力される信号なので、プロセスばらつきの影響を受けることになる。しかし、この種のばらつきは雑音に起因するものではなく、単に、フィルタを構成する回路素子が持つ素子ばらつきに起因するものなので、キャリブレーションをかけることにより入力信号毎にプロセスばらつきの補正を実行することが可能である。
また、本実施の形態によれば、PET装置1における撮像時間の短縮が可能となる。前記特開2002−243858号公報に開示された従来技術は、高速のタイミング信号を常に強制的に低速のタイミング信号のスルーレートに合わせるため、電子寄与率の高いイベントが多く発生した場合でも、タイミング検出を行うコンパレータでの雑音や回路のオフセットに対する時間ばらつきが顕著になる傾向があると思われる。これに対して本実施の形態は、電子寄与率を観測するための波高値VE2を用いてタイミング信号VTに対する補正値を決定するので、電子寄与率が高いγ線検出信号に対してはより高速な立ち上がり波形でのタイミング検出が可能となる。よって、平均的に見れば前記従来技術よりも本実施の形態のほうがタイミング検出のばらつきを小さくすることで有効カウントが増加するため、PET装置1における撮像時間の短縮が可能となる。
さらに、本実施の形態によれば、診断画像のコントラストを向上させることが可能となる。時間ばらつきが多くなればなるほど、放射線入射というイベントの発生が同時刻でない2つの信号を同時刻と判定する誤りが増加するので、前記特開2002−243858号公報に開示された従来技術では誤検出による診断画像のコントラストの劣化があると思われる。これに対して本実施の形態は、前記のようにより有効カウントをより多く取得する撮像が可能であるから、断層画像のコントラストを向上させることも可能となる。
また、本実施の形態によれば、ノイズ判定部36eにおいて前置増幅器24aの出力信号ごとに波高値VE1と波高値VE2の値が相関関係のテーブルデータに照らし合わされて、本来のγ線検出信号かノイズかを判定されて、ノイズと判定した場合は、その信号に対する検出時刻補正処理やパケットデータを生成してデータ処理装置12へ送るということをさせないので、高計数率のPET装置1におけるデジタルASIC26,FPGA31の信号処理負荷を低減することができる。
特に、入射γ線が複数の検出器21間で複数のγ線検出信号を発生させる場合、つまり、散乱がある場合も、この複数のγ線検出信号を本来の511keVの入射γ線によるものと判定して、PET画像生成に使用するようなPET装置1においては、データ処理装置12における検出γ線エネルギ値に対する閾値を低く設定して、散乱を考慮した信号処理をする必要がある。その場合、ノイズをγ線検出信号として信号処理の対象とする確率が増加するが、本実施の形態によれば散乱による低エネルギのγ線検出信号とノイズを効率よく判定して選別でき、データ処理装置12の信号処理の負荷を低減でき、画質の劣化を防止できる。また、低エネルギのγ線検出信号に対してノイズと区別のつかない異常のある検出器21のアドレスを早期に発見して自動的に除外できる。
そして、このノイズ判定には、特別の追加のアナログASIC24の回路を必要とせず、γ線検出時刻をより精度良くするためのスロー系24B,24Cの出力信号を利用することで済むので、信号処理装置のコスト上好都合である。
特に、特許文献1に記載された従来技術では、径方向に多層に配置された検出器間での計数率の比から異常の判定をするのに対し、本実施の形態における異常の判定は、1個の検出器21からの出力信号で判定できるので、後記するように径方向に多層に放射線検出器が配置されていない場合、例えば、シンチレータと光電子増倍管を用いたPET装置にも適用できる。
また、高い頻度でノイズを出力する検出器21のチャンネルが存在した場合も、ノイズカウント部36fで所定の基準値よりもノイズカウント信号を多く出力する検出器21のチャンネルを検出して、制御部36gに異常判定を出力し、制御部36gがアドレス演算部36aに当該の検出器21からの出力信号に対するアドレス演算や、ADC25A,25Bの制御をさせないので、デジタルASIC26,FPGA31の信号処理負荷を低減することができる。
このようにノイズ信号を画像生成のためにデジタルASIC26からパケットデータとしてデータ処理装置12に出力することを抑制できるので、画質のよいPET画像を生成できる。
また、制御部36gは、異常判定された検出器21に対して、所定の周期でノイズカウントの状態をチェックし、ノイズカウントの発生頻度が所定の基準値を満たしている場合は、PET画像生成のために復帰させるので、一時的な検出器異常に対しても自動復帰できる。
さらに、制御部36gは、異常判定された検出器21に対して、異常判定された日時時刻情報と、検出器IDを操作コンソール13に出力するので、メンテナンス時に操作コンソール13側でその情報を見て、検出器ユニット2や、ユニット基板の点検の必要の有無の判断、検出器21全体の異常分布のモニタができる。
なお、ノイズ判定部36eに記憶させる相関データや、ノイズカウント部36fが用いる異常判定に対する基準値データは、操作コンソール13から変更可能なので、検出器21の出力信号の経時変化、PET装置1の設置環境の変化などによる出力信号の波形の変化にも柔軟に対応した再設定が可能となる。
なお、本実施の形態においては、ノイズカウント部36fで異常な検出器と判定した場合、制御部36gはその信号を検出器制御部36において以後処理させないようにする制御としていたが、それに限定するものではない。例えば、当該の検出器21に対しての検出γ線エネルギ値に対する処理において、ノイズと判定されなかった検出γ線信号に対して、入射γ線エネルギの511keVに対して所定のエネルギ幅を設けたエネルギウインドに対応したものだけを処理するように制限しても良い。
《第2の実施の形態》
次に、本発明に係る他の実施の形態である核医学診断装置を図17から図20を参照しながら説明する。本実施の形態の核医学診断装置は、SPECT装置である。
第1の実施形態と同じ構成については同じ符号を付し、重複する説明を省略する。
図17はSPECT装置の構成を示す斜視図であり、図18はSPECT装置におけるアナログASICとデジタルASICの接続関係を示したブロック図である。図19は、アナログASICの機能ブロック図であり、図20はデジタルASICの機能ブロック図である。
SPECT装置51は、一対の放射線カメラ部52,回転支持台57,データ処理装置58、および操作コンソール13Aを備える。放射線カメラ部52は、回転支持台57に周方向に180°ずれた位置に対向配置されている。具体的には、それぞれの放射線カメラ部52の各ユニット支持部材56が周方向に180°隔てた位置で回転支持台57に取り付けられている。12枚の結合基板120を含む複数の検出器ユニット102がそれぞれのユニット支持部材56に着脱可能に取り付けられている。
検出器21は検出器ユニット102に保持される。それぞれの検出器ユニット102の構成は、結合基板120の構成を除いて第1の実施の形態における検出器ユニット2の構成と同じである。
結合基板120は、第1の実施の形態の結合基板20と同様に検出器基板120AおよびASIC基板120Bを有する(図19参照)。各検出器基板120Aの先端部に位置する検出器21はベッド14側に位置する。放射線遮蔽材、例えば、鉛,タングステン等で作られたコリメータ55がそれぞれの放射線カメラ部52の被検体P側に設けられている。各コリメータ55は、γ線が通過する多数の放射線通路を形成している。これらの放射線通路は、1つの放射線カメラ部52の各検出器基板120Aの先端部に位置する各検出器21と一対一に対応して設けられている。結合基板120およびコリメータ55は回転支持台57に設置された遮光・電磁シールド54内に配置されている。コリメータ55は遮光・電磁シールド54に取り付けられる。遮光・電磁シールド54はγ線以外の電磁波の検出器21等への影響を遮断している。
放射性薬剤が投与された被検体Pが載っているベッド14が移動され、被検体Pは、一対の放射線カメラ部52の間に移動される。回転支持台56が回転されることによって、各放射線カメラ部52が被検体Pの周囲を旋回する。放射性薬剤が集積した被検体P内の集積部、例えば、患部から放出されたγ線がコリメータ55の放射線通路を通って対応する検出器21に入射する。γ線が検出器21と相互作用をすると検出器21はγ線検出信号を出力する。このγ線検出信号は、後記するアナログASIC124およびデジタルASIC126で処理される。
本実施の形態に用いられる検出器基板120Aの構成は第1の実施の形態におけるその構成と同じであるので、本実施の形態での説明は省略する。結合基板120を構成するASIC基板120Bを、図18から図20を参照しながら説明する。
第1の実施の形態における結合基板20と同様にASIC基板120Bは検出器基板120AにコネクタC1により接続されている。ASIC基板120Bは、検出器21ごとに設けられたコンデンサ22および抵抗23、4個のアナログASIC124、および1個のデジタルASIC126を有する。
アナログASIC124は、前置増幅器24a,第1のスロー系24Bと第2のスロー系24Cと、トリガ出力回路24hを有するアナログ信号処理回路133を32組備えている。アナログ信号処理回路133は検出器21ごとに設けられている。
ここで、SPECT装置51ではγ線対の同時計測をしないので、高速のγ線検出トリガ信号を必要としないので、第1のスロー系24Bの波形整形回路24dの出力信号VS1を用い、出力信号VS1がトリガ出力回路24hに入力されている。トリガ出力回路24hは、ノイズの影響を除去するため、設定レベル以上のγ線検出信号VS1を入力したときにトリガ信号VT′を出力する。
デジタルASIC126は、16組の検出信号処理部134および1個のデータ転送部37Aを有しており、各検出信号処理部134は8個のタイミング検出部135と1個の検出器制御部136を有している。デジタルASIC126はこれらをLSI化したものである。SPECT装置51に設けられた全てのデジタルASIC126は、図示されていない64MHzのクロック発生装置(水晶発振器)からのクロック信号を受け、同期して動作している。各デジタルASIC126に入力されたクロック信号は、全検出信号処理部134内のそれぞれのタイミング検出部135,検出器制御部136に入力される。
タイミング検出部135は、検出器21ごとに設けられ、該当するアナログ信号処理回路133のトリガ出力回路24hからタイミング信号VT′が入力される。タイミング検出部135はタイミング信号VT′が入力された時のクロック信号にもとづいてγ線の検出時刻を決定し、検出時刻情報を生成する。
検出器制御部136は、アドレス演算部36a,検出エネルギ補正部36c,パケットデータ生成部136d,ノイズ判定部36e,ノイズカウント部36f,制御部36gを有している。
アドレス演算部36aは、タイミング検出部135からγ線を検出したタイミング信号VT′に対応する検出時刻情報を受け、その検出器IDを特定し、検出器IDと検出時刻情報を検出エネルギ補正部36c,パケットデータ生成部136d,ノイズ判定部36eに出力する。すなわち、アドレス演算部36aは、アドレス演算部36aに接続される各タイミング検出部135に対する検出器IDを記憶しており、あるタイミング検出部135から検出時刻情報が入力されたとき、そのタイミング検出部135に対応する検出器IDを特定できる。これは、タイミング検出部135が検出器21ごとに設けられていることにより可能となる。
さらに、アドレス演算部36aは、トリガ信号を入力された後、前記特定された検出器IDを含むアナログ信号処理回路133にピークホールド制御信号を出力し、また、検出器IDとADC制御信号をADC25A,25Bに出力する。ピークホールド制御信号を受けたアナログ信号処理回路133のピークホールド回路24e,24gは、波形整形回路24d,24fから入力される信号に対してピークホールド処理をする。そして、所定時間後にアドレス演算部36aからリセット信号を受け、ピークホールド処理を解除する。ADC25A,25Bは、アドレス演算部36aから入力された検出器IDに対応するアナログ信号処理回路133のピークホールド回路24e,24gから出力された波高値(電圧値)VE1,VE2を、デジタル信号に変換してノイズ判定部36eに出力する。この波高値VE1,VE2は、ノイズ判定部36eに入力される。
ノイズ判定部36eは2つの波高値VE1,VE2の相関からノイズ信号かγ線検出信号かを判定する。ノイズ判定部36eがγ線検出信号と判定した場合は、波高値VE1,VE2を検出エネルギ補正部36cに出力し、ノイズカウント信号をノイズカウント部36fに出力しない。
検出エネルギ補正部36cは、アドレス演算部36aから入力された検出器IDに対応した検出器21,アナログASIC124のゲインおよびオフセットに対する補正値を用いて、波高値VE1,VE2から補正された波高値VE1′,VE2′算出し、検出γ線のエネルギに対応した検出エネルギ値情報を生成してパケットデータ生成部136dに出力する。
ノイズ判定部36eがノイズ信号と判定した場合は、ノイズカウント信号を検出器IDとともにノイズカウント部36fに出力し、リセット信号をパケットデータ生成部36dに出力する。
(検出器出力信号処理制御部の動作)
ノイズカウント部36fと制御部36gは、第1の実施の形態と同じ機能を有し、同様に動作する。
パケットデータ生成部136dは、検出エネルギ値情報に、検出器IDと検出時刻情報を付加してパケットデータ(検出γ線情報,検出放射線情報)として生成し、データ転送部37Aに出力する。データ転送部37Aは、各検出信号処理部134のパケットデータ生成部36dから出力されたデジタル情報であるパケットデータを、例えば、定期的に12枚の結合基板120を収めている検出器ユニット102(図17参照)の筐体の外側に1個設けられているFPGA31Aに送信する。FPGA31Aは、それらのデジタル情報をコネクタ38Aに接続された情報伝送用配線を介してデータ処理装置58に送信する。
データ処理装置58は、回転支持台57を回転させるモータ(図示せず)の回転軸に連結された角度計(図示せず)で検出された回転角度が入力される。この回転角度は、それぞれの放射線カメラ部52の回転角度を示し、具体的にはそれぞれの検出器21の回転角度を示している。データ処理装置58は、この回転角度をもとに、旋回している各検出器21の旋回軌道上での位置(位置座標)を求める。このため、γ線を検出した時点での検出器21の位置(位置座標)が求められる。データ処理装置58は、γ線を検出した検出器IDをもとに、検出エネルギ値が設定値以上になるγ線を計数する。ここでの検出エネルギ値は、コリメータ55の放射線通路の延長線上に位置する複数の検出器21(図6(a)では直線に並んだ4個の検出器21)で、同時計数があった場合は、各γ線検出信号の検出エネルギ値を加算した値である。この計数は、回転支持台57の回転中心を基準に0.5°ごとに区切って得られる各領域に対してなされる。
なお、データ処理装置58は、γ線を検出した時点での検出器21の位置情報およびγ線の計数値(計数情報)を用いて、放射性薬剤の集積位置、すなわち悪性腫瘍位置での被検体Pの断層像情報を作成する。この断層像情報は表示装置13aに表示される。前記のパケットデータ、同時計測で得た計数値および検出器21の位置情報、および断層像情報等の情報は、データ処理装置58の記憶装置に記憶される。
また、本実施の形態によれば、ノイズ判定部36eにおいてノイズと判定した場合は、その信号に対してパケットデータを生成してデータ処理装置58へ送るということをさせないので、デジタルASIC126,FPGA31Aの信号処理負荷を低減することができる。
特に、特許文献1に記載された従来技術では、多層に配置された検出器間での計数率の比から異常の判定をするのに対し、本実施の形態における異常の判定は、1個の検出器21からの出力信号で判定できるので、後記するように径方向に多層に放射線検出器が配置されていない場合、例えば、シンチレータと光電子増倍管を用いたPET装置にも適用できる。
また、高い頻度でノイズを出力する検出器21のチャンネルが存在した場合も、ノイズカウント部36fで所定の基準値よりもノイズカウント信号を多く出力する検出器21のチャンネルを検出して、制御部36gに異常判定を出力し、制御部36gがアドレス演算部36aに当該の検出器21からの出力信号に対するアドレス演算や、ADC25A,25Bの制御をさせないので、デジタルASIC126,FPGA31Aの信号処理負荷を低減することができる。
このようにノイズ信号を画像生成のためにデジタルASIC126からパケットデータとしてデータ処理装置58に出力することを抑制できるので、画質のよいSPECT画像を生成できる。
また、制御部36gは、異常判定された検出器21に対して、所定の周期でノイズカウントの状態をチェックし、ノイズカウントの発生頻度が所定の基準値を満たしている場合は、SPECT画像生成のために復帰させるので、一時的な検出器異常に対しても自動復帰できる。
さらに、制御部36gは、異常判定された検出器21に対して、異常判定された日時時刻情報と、検出器IDを操作コンソール13Aに出力するので、メンテナンス時に操作コンソール13A側でその情報を見て、検出器ユニット102や、ユニット基板の点検の必要の有無の判断,異常な検出器21の分布のモニタができる。
なお、ノイズ判定部36eに記憶させる相関データや、ノイズカウント部36fが用いる異常判定に対する基準値データは、操作コンソール13Aから変更可能なので、検出器21の出力信号の経時変化,SPECT装置51の設置環境の変化などによる出力信号の波形の変化にも柔軟に対応した再設定が可能となる。
なお、第1の実施の形態および第2の実施の形態において、ピークホールド回路から出力されるピーク値を用いたが、その代わりにタイミング信号にもとづくサンプルピーク値を用いるものとしても良い。
ちなみに、第1の実施の形態および第2の実施の形態において、ノイズ判定に用いる第1と第2のスロー系24B,24Cは、第1のスロー系24Bを本来のγ線検出エネルギ測定用とし、それをノイズ判定にも兼用する構成としたが、それは回路構成を少なくするためである。本来のγ線検出エネルギ測定用のスロー系と全く別個にノイズ判定用の時定数の異なるスロー系を2つ、つまり、1個の検出器21に対してスロー系を3つ用意する構成でも良い。
なお、以上の第1の実施の形態および第2の実施の形態では、放射線検出器として半導体放射線検出器21を用いたPET装置1,SPECT装置51について説明したが、本発明はそれに限定されるものではない。
前記したNaI等のシンチレータと、光電子増倍管またはフォトダイオードとを組み合わせたγ線検出器を用いたPET装置,SPECT装置にも本発明は適用できる。
その場合は、被検体Pの体軸に対して径方向にシンチレータを用いたγ線検出器を多層に配置することは無く、1層の構成であり、周方向および体軸方向に複数配置するのが普通である。
この場合、シンチレータから出力されるシンチレーション光を光電子増倍管またはフォトダイオードが受けて、光量に応じた電気信号に変換するので、半導体放射線検出器の場合のように、正孔と電子の移動度の差による検出信号波形における差は生じない。したがって時定数の異なる第1のスロー系と第2のスロー系それぞれから出力される波高値VE1,VE2に対して、ノイズ判定部36eは、図21に示す領域84に含まれる場合は、本来のγ線検出信号であるとし、領域80に含まれる場合はノイズと判定する。そして、その判定結果にもとづいて、ノイズカウント部36f,制御部36gは、第1の実施の形態,第2の実施の形態に示した様に機能できる。
また、γ線検出器からの出力信号が本来のγ線検出信号かノイズかの判定方法は、第1の実施の形態および第2の実施の形態において説明したような時定数の異なる波形整形回路からの出力信号の波高値の比較に限定されるものではない。例えば、公開文献“ASTRONOMY & ASTROPHYSICS SUPPLEMENT SERIES”(122、357−369(1997))のFig.5に示されているように、γ線検出器からの出力信号の波高値と波形選別(例えば、波形の立ち上がり特性)との相関から判別するようにしても良い。
なお、以上の各実施の形態ではPET装置1およびSPECT装置51について述べたが、ガンマカメラ装置にも本発明を適用することができる。ガンマカメラは、得られる機能画像が2次元的なものであり、かつ、γ線の入射角度を規制するコリメータを備える。
なお、PET装置1やSPECT装置51と、X線CTを組み合わせた核医学診断装置の構成としても良い。
核医学診断装置においては、被験者からのガンマ線がある放射線検出器内で散乱され、別の放射線検出器にて吸収されることによって、複数の放射線検出器にエネルギを附与する場合がある。このような場合に対し、特開2003−255048号公報に開示されているように、二つ、あるいはそれ以上の放射線検出器での放射線検出情報を元に、散乱される前のガンマ線が被検体Pに投与した放射性薬剤からのガンマ線かどうかを判定し、そうであった場合は有効な信号として処理することが考えられる。以下、このような手法を散乱線処理と呼ぶ。核医学診断装置は、ノイズ判定手段から出力された出力信号に基づいて、放射線検出器で散乱した放射線による複数の放射線信号を一つの放射線信号として特定する散乱線処理手段を有する。ここで散乱線処理手段は、パケットデータ生成部36d,FPGA31,データ処理装置12のいずれでも良い。パケットデータ生成部36dよりもFPGA31の方が多くの放射線信号を有するので散乱線処理の対象範囲が広く、FPGA31よりデータ処理装置12の方が多くの放射線信号を有するので散乱線処理の対象範囲が広い。散乱線処理手段よりも上流側のノイズ判定手段でノイズではないと判定して、判定後の出力信号に基づいて散乱線処理手段が散乱線処理を行うことで、散乱線処理の負荷を低減できる。また、散乱線処理により有効な信号が増えるため、精度の良い診断画像が期待できる。
散乱線処理において、散乱される前のガンマ線が被検体Pに投与した放射性薬剤からのガンマ線かどうかを判定する上で、エネルギ情報が一つの有力な情報となる。そのため、放射線検出器としてエネルギ分解能に優れる半導体検出器を用いることが好ましい。
散乱線処理を行う場合には、放射線検出器にて検出されるエネルギは元のガンマ線よりも小さくなる。不良検出器が発するノイズ信号は、一般にはエネルギが低いものが多いため、散乱線処理を行わない場合には問題とならなかったノイズ信号でも、散乱線処理を行う上では重大な障害となり得る。本発明によれば、エネルギの大小に拘らず、ノイズ信号の寄与を抑えることができるため、精度の良い診断画像が提供できる。