JP5492682B2 - パルプ漂白助剤及びこれを用いたパルプ漂白方法 - Google Patents
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クラフトパルプは、高い強度が特徴であるため、セメント袋や米袋等、強度を必要とする包装用紙として用いられてきた。近年、クラフトパルプは、漂白処理が施されることで高い白色度となることから、多段漂白処理が施された上質紙としての利用が一般的となっている。
未漂白パルプの漂白処理には、従来、漂白剤として塩素が使用されてきたが、塩素は、ダイオキシン等の有機塩素化合物(副生成物)を生成するため、環境に与える影響が問題となっていた。
近年では、塩素に代えて酸素、二酸化塩素、過酸化水素等を段階的に作用させる、いわゆるECF(Elemental Chlorine Free)漂白が主流となっている。
このため、ECF漂白においては、二酸化塩素の使用量の低減が求められているが、ECF漂白において二酸化塩素と共に用いられる過酸化水素は、塩素や二酸化塩素と比べて漂白力が弱いため、その使用量を増加した程度では、二酸化塩素の使用量の削減には繋がらない。
従って、ECF漂白では、二酸化塩素量を低減するため、過酸化水素の漂白力を大きく向上させる手段が必要となっている。
例えば、特許文献1〜2には、銅と特定の配位子とを組み合わせた、パルプ漂白助剤が提案されている。特許文献1〜2の発明によれば、弱酸酸性〜弱アルカリ性(pH6〜10)の範囲で、パルプを良好に漂白できる。
また、特許文献3〜4には、銅やニッケル等と特定の配位子を組み合わせた、パルプ漂白助剤が提案されている。
また、特許文献5には、銅イオン及び銅イオンと錯体を形成できる配位子化合物から構成され、蒸解後の化学パルプの漂白処理に用いるパルプ漂白助剤が提案されている。
加えて、通常、パルプの工業的製造におけるパルプ漂白は、過酸化水素によりパルプ中のリグニン等の非セルロース成分を分解・除去し、パルプの白色度を上げる効果(漂白効果)をより高めるため、pH11以上の条件下で行われる。これに対し、特許文献1〜2の発明は、弱酸性〜弱アルカリ性の領域で効果を発揮するものであり、実際の工業的製造に適応していない。また、特許文献3〜5の発明は、アルカリ蒸解によりリグニン等、非セルロース成分の大半が除去されたクラフトパルプに対して高い効果を示すものの、非セルロース成分を多量に含有した機械パルプに対する効果は満足できるものではない。さらに、特許文献5の発明は、化学パルプにパルプ漂白助剤を添加した後、アルカリ性媒体中で加圧酸素を添加し加熱処理するものであり、過酸化水素を漂白剤として用いることを想定していない。
本発明は、過酸化水素を用いたパルプの漂白処理において、pH11以上のアルカリ条件下でも、化学パルプ、機械パルプのいずれも良好に漂白できる漂白助剤及びパルプ漂白方法を目的とする。
(a)成分:下記一般式(I)で表される構成単位を有する高分子化合物であり、該高分子化合物は、同一の構成単位から構成されていてもよいし、2種以上の構成単位からなる共重合体であってもよい。
前記一般式(I)中のAがNで、かつ一般式(II)で表されるYがカルボキシル基であることが好ましく、機械パルプ用であってもよい。
(a)成分:下記一般式(I)で表される構成単位を有する高分子化合物であり、該高分子化合物は、同一の構成単位から構成されていてもよいし、2種以上の構成単位からなる共重合体であってもよい。
本発明のパルプ漂白助剤は、(a)成分:高分子化合物及び(b)成分:銅化合物を含み、過酸化水素によるパルプの漂白処理に用いられるものである。
パルプ漂白助剤は、(a)成分と(b)成分とがそれぞれ独立した2剤型であってもよいし、(a)成分と(b)成分との混合物であってもよいし、(a)成分が配位子として(b)成分由来の銅に配位し錯形成した錯体であってもよいし、これらが混在したものであってもよい。
また、例えば、パルプ漂白助剤は、(a)成分を含み(b)成分を含まない第一の水溶液と、(b)成分を含み(a)成分を含まない第二の水溶液とを備える2液型であってもよい。
本稿において「銅」の質量は、(b)成分由来の銅のみならず、水中に存在する銅イオンを含む質量である。
(a)成分は、下記一般式(I)で表される高分子化合物である。なお、(a)成分は、同一の構成単位から構成されていてもよいし、2種以上の構成単位からなる共重合体であってもよい。
なお、Yが2級又は3級のアミノ基の場合、Yは一般式(I)で表される構成単位同士を結合させる架橋種となっていてもよい。
nは0〜2の整数であり、(a)成分と銅との錯体の形成が容易となることから、1又は2が好ましい。
ここで、(a)成分の重量平均分子量は、分子量5,800〜853,000のプルラン標準(P−82、昭和電工株式会社製)を標準物質とするゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPS)による測定値である。重量平均分子量の測定は、例えば、以下の手順で行うことができる。まず、試料の乾燥物を水溶液(酢酸ナトリウム濃度:10mM、アセトニトリル濃度:20vol%)に溶解し、0.5質量%試料溶液を調製する。TSK−GelG2500PWXLとTSK−GelGMPWXL(共に東ソー株式会社製)とを連結し、カラムオーブンに設置する。前記水溶液(酢酸ナトリウム濃度:10mM、アセトニトリル濃度:20vol%)を溶離液とし、カラムオーブンの設定温度:40℃、流速:0.5mL/min、検出:RIの条件で、重量平均分子量を測定できる。
これらの(a)成分は、一種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
(b)成分である銅化合物は、水中で銅イオンを解離するものであればよく、特に水溶性の高いものが好ましい。
(b)成分としては、例えば、硫酸銅、塩化銅、硝酸銅、酢酸銅、ギ酸銅、過塩素酸銅、ヨウ素酸銅、リン酸銅、トリフルオロ酢酸銅等の2価の銅を含む水溶性塩が挙げられ、中でも、硫酸銅、塩化銅が特に好ましい。硫酸銅又は塩化銅は、水溶性が高く、(a)成分との錯体の形成が容易となり、パルプ漂白助剤による過酸化水素の漂白効果をより高めることができる。(b)成分は、無水物であってもよいし、水和物であってもよい。これらの(b)成分は、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
本発明のパルプ漂白助剤には、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じ、pH調整剤、緩衝剤等を配合できる。
本発明のパルプ漂白方法は、(a)成分及び(b)成分を含むパルプ漂白助剤を過酸化水素と併用して、被漂白物であるパルプを漂白するものである。漂白処理は、パルプを漂白する処理段階を意味し、例えば、パルプに残留するリグニンの除去、パルプの白色度の向上等を目的とした他の工程を含んでいてもよい。
図1に示すように、この製造プロセスは、蒸解工程(図中、符号10)と、第一の洗浄・脱水工程(図中、符号12)と、酸素漂白工程(図中、符号14)と、第二の洗浄・脱水工程(図中、符号16)と、過酸化水素漂白工程(図中、符号18)と、第三の洗浄・脱水工程(図中、符号20)とで概略構成されている。
本実施形態において、漂白処理は、酸素漂白工程14と、第二の洗浄・脱水工程16と、過酸化水素漂白工程18と、第三の洗浄・脱水工程20とで構成されている。
蒸解工程10は、針葉樹、広葉樹等の木材原料を粉砕した木材チップをアルカリ剤と共に水に分散した蒸解用分散液とし、この蒸解用分散液を加熱して原料チップからリグニンを除去し、未漂白パルプを得る工程である。即ち、リグニンによって結束された結束繊維からリグニンを取り除き、結束繊維をほぐし、1本1本の繊維とするパルプ化を促進させるものである。
アルカリ剤としては、水酸化ナトリウム、硫化ナトリウム等が挙げられる。
第一の洗浄・脱水工程12は、蒸解工程10で得られた未漂白パルプを洗浄した後、脱水する工程である。本工程では、蒸解工程で分離されたリグニン等の不純物が未漂白パルプから取り除かれる。
洗浄・脱水の方法は、従来公知の方法を用いることができ、例えば、未漂白パルプを水中に分散し混合して洗浄し、次いで、プレスして脱水する方法等が挙げられる。
酸素漂白工程14は、洗浄・脱水された未漂白パルプに対して酸素脱リグニン処理を施し、酸素漂白パルプを得る工程である。
酸素脱リグニン処理は、従来公知の方法を用いることができ、例えば、未漂白パルプをアルカリ剤及び水と混合し、0.4〜0.7MPaに加圧された酸素を供給し、90〜120℃で加熱するものが挙げられる。
アルカリ剤としては、水酸化ナトリウム、硫化ナトリウム、水酸化カリウム、メタケイ酸ナトリウム、メタケイ酸カリウム等を用いることができる。
第二の洗浄・脱水工程16は、酸素漂白工程で得られた酸素漂白パルプを水で洗浄した後、脱水する工程である。本工程では、酸素漂白工程14で分離されたリグニン等の不純物が未漂白パルプから取り除かれる。
洗浄・脱水の方法は、第一の洗浄・脱水工程12と同様である。
過酸化水素漂白工程18は、酸素漂白パルプを過酸化水素とパルプ漂白助剤とを用いて漂白し、漂白パルプを含む漂白パルプ分散液を得る工程である。過酸化水素漂白工程18は、例えば、酸素漂白パルプと共に、パルプ漂白助剤及び過酸化水素、必要に応じアルカリ剤又は酸を水に分散して酸素漂白パルプ分散液とし、酸素漂白パルプ分散液中で酸素漂白パルプを漂白するものが挙げられる。
各成分の酸素漂白パルプ分散液への添加方法は、例えば、水にアルカリ剤又は酸を添加して漂白用分散媒とし、この漂白用分散媒に酸素漂白パルプを投入した後、パルプ漂白助剤を添加し、次いで過酸化水素を添加するものが挙げられる。この際、パルプ漂白助剤の添加方法は、その剤形に応じて決定でき、例えば、パルプ漂白助剤が2剤型又は2液型であれば、(a)成分と(b)成分とをそれぞれ個別に添加してもよいし、(a)成分と(b)成分とを予め混合した後に添加してもよい。
酸素漂白パルプ分散液のpHは、アルカリ剤又は酸を添加して調整できる。
アルカリ剤としては、酸素漂白工程14と同様のものが挙げられる。アルカリ剤の添加量は、酸素漂白パルプ分散液に求めるpHに応じて決定でき、例えば、酸素漂白パルプの乾燥質量に対し、好ましくは0.01〜10質量%、より好ましくは0.1〜5質量%とされる。
酸としては、塩酸、硫酸等が挙げられる。
過酸化水素漂白工程18における反応時間は、特に限定されないが、例えば、酸素漂白パルプ分散液を調製した後、30〜300分間が好ましく、120〜180分間がより好ましい。
第三の洗浄・脱水工程20は、過酸化水素漂白工程18で得られた漂白パルプ分散液を固液分離し、得られた固体を水で洗浄した後、脱水するものである。本工程では、漂白パルプ分散液中に含まれる着色成分、パルプ漂白助剤、過酸化水素等が取り除かれ、固体の漂白パルプが得られる。
過酸化水素以外の漂白剤としては、二酸化塩素、オゾン、次亜塩素酸ナトリウム等を用いることができる。
以下、機械パルプの製造プロセスにおけるパルプ漂白方法について説明する。
機械パルプの製造プロセスは、磨砕工程と、分離工程と、過酸化水素漂白工程と、洗浄・脱水工程とで概略構成される。
磨砕工程は、原料チップを磨砕してパルプ化する工程である。磨砕方法は、従来公知の方法を用いることができ、例えば、ポケットグラインダー、チェーングラインダー、リンググラインダー、加圧グラインダー等による原料チップの摩砕や、シングルディスクリファイナー、ダブルディスクリファイナー等による原料チップの摩砕等が挙げられる。
分離工程は、磨砕されてパルプ化した原料から異物を取り除き、精選パルプを得る工程である。分離工程としては、例えば、種々の目開きのスクリーンを用い、分級する方法が挙げられる。
機械パルプの製造プロセスにおける過酸化水素漂白工程は、酸素漂白パルプに換えて、分離工程で得られた精選パルプを用いる以外、上述したクラフトパルプの製造プロセスにおける過酸化水素漂白工程と同様である。機械パルプの製造プロセスにおいても、過酸化水素漂白工程の前段及び後段の双方又はいずれか一方に、過酸化水素以外の漂白剤による漂白工程を設けてもよい。
洗浄脱水工程は、過酸化水素漂白工程で得られた漂白パルプ分散液を固液分離し、得られた固体を水で洗浄・脱水して、漂白パルプを得る工程であり、上述したクラフトパルプの製造プロセスにおける第三の洗浄・脱水工程と同じである。
加えて、本発明は、pH11以上の条件下での過酸化水素漂白工程に適用できるため、従来のパルプ製造における過酸化水素漂白工程にパルプ漂白助剤を添加するという簡単な方法で、過酸化水素の漂白効果の向上が図れる。
本実施例に用いた原料は、以下の通りである。
<(a)成分:高分子化合物>
・a−1:ポリエチレンイミノ基から構成される主鎖に、カルボキシル基を含有する側鎖を導入したアミノポリカルボン酸系高分子(商品名:Trilon P、重量平均分子量:約50000、BASF社製)
・a−2:マレイン酸とアクリル酸との共重合体(商品名:アクアリック・TL、重量平均分子量:約50000、株式会社日本触媒製)
・a−3:ポリエチレンイミン(商品名:Lupasol HF、重量平均分子量:約25000、BASF社製)
・a’−1:n−ジブチルアミン(特級試薬、和光純薬工業株式会社製)
・a’−2:アセトキシム(特級試薬、関東化学株式会社製)
・a’−3:ピリジン(特級試薬、関東化学株式会社製)
・a’−4:カテコール(特級試薬、関東化学株式会社製)
・a’−5:メルカプトコハク酸(特級試薬、和光純薬工業株式会社製)
・a’−6:2、2’−ジピリジルアミン(特級試薬、和光純薬工業株式会社製)
・CuSO4・5H2O:硫酸銅(II)5水和物(特級試薬、Mw=249.68、関東化学株式会社製)
・CuCl2・2H2O:塩化銅(II)2水和物(特級試薬、Mw=170.48、和光純薬工業株式会社製)
<(b’)成分:(b)成分の比較品である金属化合物>
・MnSO4・5H2O:硫酸マンガン(II)5水和物(特級試薬、Mw=241.07、関東化学株式会社製)
・FeSO4・7H2O:硫酸鉄(II)7水和物(特級試薬、Mw=278.01、関東化学株式会社製)
なお、表1〜7において、(b)成分についてはCu(Mw=63.54)の乾燥パルプに対する質量割合(質量ppm)、(b’)成分についてはMn(Mw=54.93)又はFe(Mw=55.84)の乾燥パルプに対する質量割合(質量ppm)を[]内に示した。
・過酸化水素:30%過酸化水素水(試薬、関東化学株式会社製)
・H2SO4:硫酸、濃度1N(特級試薬、関東化学株式会社製)
・NaOH:水酸化ナトリウム、濃度1N(特級試薬、関東化学株式会社製)
・Na2SiO3:3号ケイ酸ナトリウム溶液(試薬、昭和化学株式会社製)
漂白効果の評価は、各例で得られた漂白パルプについて、下記の方法で白色度差をもとめて評価した。
各例で得られた漂白パルプを水道水で洗浄した後、濾取した。濾取した漂白パルプを水道水400mLに分散させ、漂白パルプの絶乾質量1g当たり0.5mLの割合でEDTA溶液(EDTA−2Na濃度 5g/L)を加え、水酸化ナトリウム(1mol/L)又は硫酸(約0.5mol/L)溶液を用いてpH4.0〜5.5の試験パルプ分散液を調製した。
この試験パルプ分散液を200g/m2になるように吸引濾過した後、プレス脱水、一晩乾燥して評価用紙を作製した。
評価用紙の白色度の測定は、日本工業規格JIS P8211に準拠して行った。
評価用紙上の所定位置4箇所を設定し、SE−2000(製品名、日本電色工業株式会社製)を用いて、当該所定位置4箇所の白色度を測定し、その平均値(ISO白色度)を各例白色度とした。
別途、(a)成分、(b)成分及び(a’)成分を添加せずに漂白した漂白パルプについて、各例白色度と同様にして白色度を測定し、これを基準白色度とした。
漂白効果の評価は、下記(1)式により算出した。
白色度差=[各例白色度]−[基準白色度] ・・・(1)
なお、白色度差が1.0ポイント以上あれば、目視であっても白さの相違が明確に分かるレベルである。また、0.5超であれば、漂白効果が有意に向上されたと評価できる。
被処理物には、針葉樹を常法によりアルカリ蒸解、酸素脱リグニン処理、及び二酸化塩素漂白処理したクラフトパルプで、白色度41.9の化学パルプである針葉樹クラフトパルプを用いた。
針葉樹クラフトパルプ1g(固形分)を円筒状の50mLガラス瓶に量り取った。
次いで、表1〜2に従い、水酸化ナトリウムを添加した後、(a)成分又は(a’)成分と、(b)成分又は(b’)成分とをそれぞれ個別に添加した。なお、表中の各成分の添加量は、針葉樹クラフトパルプの乾燥質量に対する各成分の質量割合である(以降において同じ)。
次いで、パルプ濃度が10質量%となるように、過酸化水素水溶液と水道水とを添加し、必要に応じて硫酸又は水酸化ナトリウムでpH11に調整して、化学パルプ分散液とした。なお、表中の過酸化水素量は、過酸化水素純分の値である。また、[(a’)成分]/[銅]の質量比、[(a)成分]/[(b’)成分由来の金属]の質量比を「(a)/(銅)質量比」として記載した(以降において同じ)。
そして、化学パルプ分散液を温度60℃の温浴中で120分間静置して、針葉樹クラフトパルプを漂白した。120分間静置後、化学パルプ分散液を濾過し、濾別された固形分を100倍量の質量の水道水で洗浄して漂白パルプとした。こうして得られた漂白パルプについて、白色度差を求め、その結果を表中に示す。
被処理物には、針葉樹のチップを120℃で2分間、加温処理した後、シングルディスクリファイナーにて2段階のリファイニング処理を施したサーモメカニカルパルプ(TMP)で、白色度38.0の機械パルプである針葉樹TMPを用いた。
針葉樹TMP1g(固形分)を、円筒状の50mLガラス瓶に量り取った。
次いで、表3〜7に従い、水酸化ナトリウム、ケイ酸ナトリウムを添加した後、(a)成分又は(a’)成分と、(b)成分又は(b’)成分とをそれぞれ個別に添加した。
次いで、パルプ濃度が7質量%となるように、過酸化水素水溶液と水道水とを添加し、必要に応じて硫酸又は水酸化ナトリウムでpH11に調整して、機械パルプ分散液とした。
そして、機械パルプ分散液を温度60℃の温浴中で180分間静置して、針葉樹TMPを漂白した。120分間静置後、機械パルプ分散液を濾過し、濾別された固形分を100倍量の質量の水道水で洗浄して漂白パルプとした。こうして得られた漂白パルプについて、白色度差を求め、その結果を表中に示す。
これに対し、表2に示すように、パルプ漂白助剤を(b)成分のみとした比較例1は、白色度差が−3.4でありパルプ漂白助剤を添加しないで漂白した漂白パルプよりも白色度が劣っていた。また、パルプ漂白助剤を(a)成分のみとした比較例2は、白色度差が0.5であったものの、実施例1〜10の白色度差より劣るものであった。加えて、(a)成分に換えて、(a’)成分を用いた比較例3〜8は、白色度差が−1.9〜−3.0であり、漂白効果の向上が見られないものであった。さらに、(b)成分に換えて、(b’)成分を用いた比較例9〜10は、白色度差が0.5以下であった。これらの結果から、本発明のパルプ漂白助剤を用いることで、pH11の条件下の漂白処理において過酸化水素の漂白効果を相乗的に高められることが判った。
これに対し、表3に示すように、パルプ漂白助剤を(b)成分のみとした比較例11は、白色度差が−2.9でありパルプ漂白助剤を添加しないで漂白した漂白パルプよりも白色度が劣っていた。また、パルプ漂白助剤を(a)成分のみとした比較例12は、白色度差が0.5であったものの、実施例11〜14の白色度差より劣るものであった。加えて、(a)成分に換えて、(a’)成分を用いた比較例13〜18は、白色度差が−1.4〜−2.5であり、漂白効果の向上が見られないものであった。さらに(b)成分に換えて、(b’)成分を用いた比較例19〜20は、白色度差が0.5以下であった。これらの結果から、本発明のパルプ漂白助剤を用いることで、機械パルプに対しても、過酸化水素の漂白効果を相乗的に高められることが判った。
一方、機械パルプの乾燥質量に対する(a)成分の割合、又は機械パルプの乾燥質量に対する銅の割合が本発明の範囲外である比較例21〜26には、(a)成分及び(b)成分の添加による過酸化水素の漂白効果が見られなかった。
一方、(a)/(銅)質量比が本発明の範囲外である比較例27〜28(表7)には、(a)成分及び(b)成分の添加による過酸化水素の漂白効果が見られなかった。
12 第一の洗浄・脱水工程
14 酸素漂白工程
16 第二の洗浄・脱水工程
18 過酸化水素漂白工程
20 第三の洗浄・脱水工程
Claims (4)
- 下記(a)成分及び下記(b)成分を含み、過酸化水素によるパルプの漂白処理に用いられるパルプ漂白助剤であって、
パルプの漂白処理の際に、パルプの乾燥質量に対し前記(a)成分の質量が5〜1000質量ppm、パルプの乾燥質量に対し銅の質量が0.12〜30質量ppm、かつ[(a)成分]/[銅]で表される質量比が4〜800として、pH11〜12の条件下で用いられることを特徴とするパルプ漂白助剤。
(a)成分:下記一般式(I)で表される構成単位を有する高分子化合物であり、該高分子化合物は、同一の構成単位から構成されていてもよいし、2種以上の構成単位からなる共重合体であってもよい。
(b)成分:銅化合物。 - 前記一般式(I)中のAがNで、かつ一般式(II)で表されるYがカルボキシル基であることを特徴とする、請求項1に記載のパルプ漂白助剤。
- 機械パルプ用であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のパルプ漂白助剤。
- 下記(a)成分及び下記(b)成分を含むパルプ漂白助剤と、過酸化水素とを用いてパルプを漂白するパルプ漂白方法であって、
前記(a)成分の質量がパルプの乾燥質量に対し5〜1000質量ppm、銅の質量がパルプの乾燥質量に対し0.12〜30質量ppm、かつ[(a)成分]/[銅]で表される質量比が4〜800となるように前記パルプ漂白助剤を添加し、pH11〜12の条件下で処理することを特徴とするパルプ漂白方法。
(a)成分:下記一般式(I)で表される構成単位を有する高分子化合物であり、該高分子化合物は、同一の構成単位から構成されていてもよいし、2種以上の構成単位からなる共重合体であってもよい。
(b)成分:銅化合物。
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