JP5491208B2 - 電子写真感光体、プロセスカートリッジおよび電子写真装置 - Google Patents

電子写真感光体、プロセスカートリッジおよび電子写真装置 Download PDF

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Description

本発明は、電子写真感光体ならびに電子写真感光体を有するプロセスカートリッジおよび電子写真装置に関する。
電子写真装置に搭載される電子写真感光体に用いられる光導電性物質(電荷発生物質や電荷輸送物質)として、有機光導電性物質の開発が盛んに行われている。有機光導電性物質を用いた電子写真感光体は、有機光導電性物質や樹脂(結着樹脂)を溶剤に溶解・分散させて得られる塗布液を支持体上に塗布し、これを乾燥させることによって形成された感光層を有するものが通常である。また、感光層の層構成については、支持体側から電荷発生層、電荷輸送層の順に積層してなる積層型(順層型)のものが一般的である。
有機光導電性物質を用いた電子写真感光体は、電子写真感光体として必要とされる特性のすべてを満たしているわけではない。電子写真プロセスにおいて、電子写真感光体の表面には、現像剤、帯電部材、クリーニングブレード、紙、転写部材のような種々のもの(以下「接触部材等」ともいう。)が接触する。電子写真感光体に要求される特性には、これら接触部材等との接触ストレスによる画像悪化の低減が挙げられる。特に、近年、電子写真感光体の耐久性が向上するのに伴い、上記接触ストレスによる画像悪化の低減効果の持続性が望まれている。
上記接触ストレスの緩和に関して、シロキサン構造を分子鎖中に有するシロキサン変性樹脂を上記種々の部材と接触する電子写真感光体の表面層に含有させることが提案されている。たとえば、特許文献1には、電子写真感光体の感光層に、ポリカーボネート樹脂にシロキサン構造を組み込んだ樹脂を含有させる技術が開示されている。また、特許文献2には、シロキサン構造を有するブロック共重合樹脂材料を用いて電子写真感光体の表面層中にドメインを形成する技術が開示されている。同様に、特許文献3には、電子写真感光体の電荷輸送層中にシリコーン材料を粒子状に分散させた状態で用いる技術が開示されており、放電破壊が効果的に阻止され、画像劣化(黒ポチ)を抑制できることが示されている。
特開2009−037229号公報 特開2007−004133号公報 特開2005−242373号公報
しかしながら、特許文献1〜3で開示されている電子写真感光体では、電子写真特性の維持と持続的な接触ストレスの低減の両立が達成できているわけではない。特許文献1では、電子写真感光体の感光層に、シロキサン構造を組み込んだポリカーボネート樹脂とポリアリレート樹脂を含有することにより初期の滑り性の付与がなされている。滑り性の持続性に関しても向上が見られているが、十分とはいえない。また、持続的に滑り性を付与する手法として樹脂を混合した表面層を提案しているが、特許文献1の構成による樹脂混合によるドメイン形成は光透過率の低下や感度が低くなることが記載され、シロキサンの含有量はドメイン形成が発生しないように制御されている。また、特許文献1に記載のシロキサン構造を有するポリカーボネート樹脂のシロキサン部分の含有量を高めた場合、ポリエステル樹脂中に電荷輸送物質の凝集体を形成し、繰り返し使用時の電位安定性に劣る場合があった。
特許文献2に開示されている材料は同一樹脂内に低表面エネルギーを有する成分とマトリックス成分を有する樹脂であり、この低表面エネルギーを有する成分がドメインを形成し、低表面エネルギー状態が形成されることが示されている。低表面エネルギー状態を発現するシロキサン部位は、表面移行性(界面移行性)が高く、電荷輸送層と近接する電荷発生層との界面に存在しやすいため、積層感光体では電位変動悪化の要因となることがある。特許文献2に記載の材料により作製された電子写真感光体においても上記要因による電位変動が発生する場合があった。
また、特許文献3に開示されている電荷輸送層中にシリコーン材料を粒子状に分散させた感光体においても、上記同様の表面移行性(界面移行性)のため上記要因による電位変動が発生する場合があった。
本発明の目的は、接触部材等との接触ストレスの緩和効果を持続的に発揮することができ、かつ、繰り返し使用時の電位安定性にも優れた電子写真感光体、ならびに、該電子写真感光体を有するプロセスカートリッジおよび電子写真装置を提供することにある。
本発明は、支持体と、該支持体上に設けられた電荷発生層と、該電荷発生層上に設けられた電荷輸送層を有し、かつ、該電荷輸送層が表面層である電子写真感光体において、該電荷輸送層が、電荷輸送物質と、結着樹脂として、下記式(1)で示される繰り返し構造単位および下記式(2)で示される繰り返し構造単位を有するポリエステル樹脂Aと、下記式(C)で示される繰り返し構造単位を有するポリエステル樹脂Cおよび下記式(D)で示される構造単位を有するポリカーボネート樹脂Dの少なくとも一方の樹脂を含有し、該ポリエステル樹脂A中のシロキサン部位の含有量が、該ポリエステル樹脂Aの全質量に対して5質量%以上40質量%以下であり、該電荷輸送層が、該電荷輸送物質と、該ポリエステル樹脂Cおよび該ポリカーボネート樹脂Dの少なくとも一方の樹脂により形成されたマトリックスと、該マトリックス中に該ポリエステル樹脂Aにより形成されたドメインとを有するマトリックス−ドメイン構造を有することを特徴とする電子写真感光体である。
Figure 0005491208
(式(1)中、Xは、2価のシクロアルキレン基を示す。RおよびRは、それぞれ独立に、置換もしくは無置換のアルキル基または置換もしくは無置換のアリール基を示す。Zは、炭素原子数が1以上4以下である置換もしくは無置換のアルキレン基を示す。nは、括弧内の構造の繰り返し数の平均値を示し、10以上150以下である。)
Figure 0005491208
(式(2)中、R11〜R18は、それぞれ独立に、水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基を示す。Xは、2価のシクロアルキレン基を示す。Yは、単結合、置換もしくは無置換のアルキレン基または酸素原子を示す。)
Figure 0005491208
(式(C)中、R21〜R28は、それぞれ独立に、水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基を示す。Xは、置換もしくは無置換のアルキレン基、置換もしくは無置換のアリーレン基、置換もしくは無置換のビフェニレン基、あるいは、複数のフェニレン基がアルキレン基もしくは酸素原子を介して結合した2価の基を示す。Yは、単結合、置換もしくは無置換のアルキレン基または酸素原子を示す。)
Figure 0005491208
(式(D)中、R31〜R38は、それぞれ独立に、水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基を示す。Yは、単結合、置換もしくは無置換のアルキレン基または酸素原子を示す。)

また、本発明は、上記電子写真感光体と、帯電手段、現像手段、転写手段およびクリーニング手段からなる群より選択される少なくとも1つの手段とを一体に支持し、電子写真装置本体に着脱自在であるプロセスカートリッジである。
また、本発明は、上記電子写真感光体、帯電手段、露光手段、現像手段および転写手段を有する電子写真装置である。
以上説明したように、本発明によれば、接触部材等との接触ストレスの緩和効果を持続的に発揮することができ、かつ、繰り返し使用時の電位安定性にも優れた電子写真感光体、ならびに、該電子写真感光体を有するプロセスカートリッジおよび電子写真装置を提供することができる。
本発明の電子写真感光体を有するプロセスカートリッジを備えた電子写真装置の概略構成の一例を示す図である。
本発明の電子写真感光体は、上記のとおり、支持体と、該支持体上に設けられた電荷発生層と、該電荷発生層上に設けられた電荷輸送物質および樹脂を含有する電荷輸送層を有し、かつ、該電荷輸送層が表面層である電子写真感光体において、該電荷輸送層が、電荷輸送物質と、結着樹脂として、下記式(1)で示される繰り返し構造単位および下記式(2)で示される繰り返し構造単位を有するポリエステル樹脂Aと、下記式(C)で示される繰り返し構造単位を有するポリエステル樹脂Cおよび下記式(D)で示される構造単位を有するポリカーボネート樹脂Dの少なくとも一方の樹脂を含有し、該ポリエステル樹脂A中のシロキサン部位の含有量が、該ポリエステル樹脂Aの全質量に対して5質量%以上40質量%以下であり、該電荷輸送層が、該電荷輸送物質と、該ポリエステル樹脂Cおよび該ポリカーボネート樹脂Dの少なくとも一方の樹脂により形成されたマトリックスと、該マトリックス中に該ポリエステル樹脂Aにより形成されたドメインとを有するマトリックス−ドメイン構造を有する。
Figure 0005491208
上記式(1)中、Xは、2価のシクロアルキレン基を示す。RおよびRは、それぞれ独立に、置換もしくは無置換のアルキル基または置換もしくは無置換のアリール基を示す。Zは、炭素原子数が1以上4以下である置換もしくは無置換のアルキレン基を示す。nは、括弧内の構造の繰り返し数の平均値を示し、10以上150以下である。
Figure 0005491208
上記式(2)中、R11〜R18は、それぞれ独立に、水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基を示す。Xは、2価のシクロアルキレン基を示す。Yは、単結合、置換もしくは無置換のアルキレン基または酸素原子を示す。
Figure 0005491208
上記式(C)中、R21〜R28は、それぞれ独立に、水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基を示す。Xは、置換もしくは無置換のアルキレン基、置換もしくは無置換のアリーレン基、置換もしくは無置換のビフェニレン基、あるいは、複数のフェニレン基がアルキレン基もしくは酸素原子を介して結合した2価の基を示す。Yは、単結合、置換もしくは無置換のアルキレン基または酸素原子を示す。
Figure 0005491208
上記式(D)中、R31〜R38は、それぞれ独立に、水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基を示す。Yは、単結合、置換もしくは無置換のアルキレン基または酸素原子を示す。
上記式(1)中のXは、2価のシクロアルキレン基を示す。
シクロアルキレン基としては、環を構成する炭素原子数が5以上8以下のシクロアルキレン基が好ましく、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基、シクロヘプチレン基およびシクロオクチレン基が挙げられる。これらの中でも、シクロヘキシレン基が好ましい。これらのシクロアルキレン基は置換基を有してもよい。有してもよい置換基としては、アルキル基およびアリール基が挙げられる。アルキル基としては、メチル基およびエチル基が挙げられる。アリール基としては、フェニル基が挙げられる。また、Xは、1種である必要はなく、ポリエステル樹脂Aの溶解性や機械的強度を向上させるために、2種以上のXを用いてもよい。
上記式(1)中のRおよびRは、それぞれ独立に、置換もしくは無置換のアルキル基または置換もしくは無置換のアリール基を示す。アルキル基としては、メチル基およびエチル基が挙げられる。アリール基としては、フェニル基が挙げられる。これらの中でも、RおよびRは、上記接触ストレスの緩和の点で、メチル基であることが好ましい。
上記式(1)中、Zは、炭素原子数が1以上4以下である置換もしくは無置換のアルキレン基を示す。炭素原子数が1以上4以下であるアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基およびブチレン基が挙げられる。これらの中でも、ポリエステル樹脂Aと電荷輸送物質との相溶性(相分離のしにくさのこと。以下同じ。)の点で、プロピレン基が好ましい。
上記式(1)中、nは、括弧内の構造(−SiR−O−)の繰り返し数の平均値を示し、10以上150以下である。nが10以上150以下であると、電荷輸送物質とポリエステル樹脂Cあるいはポリカーボネート樹脂Dにより形成されるマトリックス中にポリエステル樹脂Aにより形成されるドメイン構造が効率的に形成される。特に、nは、20以上100以下であることが好ましい。
以下に、上記式(1)で示される繰り返し構造単位の具体例を示す。
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これらの中でも、上記式(1−1)、(1−2)、(1−4)、(1−5)で示される繰り返し構造単位が好ましい。
上記式(2)中のR11〜R18は、それぞれ独立に、水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基を示す。アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基およびブチル基が挙げられる。これらの中でもメチル基が好ましい。
上記式(2)中のXは、シクロアルキレン基を示す。
シクロアルキレン基としては、環を構成する炭素原子数が5以上8以下のシクロアルキレン基が好ましく、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基、シクロヘプチレン基およびシクロオクチレン基が挙げられる。これらの中でも、シクロヘキシレン基が好ましい。これらのシクロアルキレン基は置換基を有してもよい。有してもよい置換基としては、アルキル基が挙げられる。アルキル基としては、メチル基およびエチル基が挙げられる。また、Xは、1種である必要はなく、ポリエステル樹脂Aの溶解性や機械的強度を向上させるために、2種以上のXを用いてもよい。
上記式(2)中のYは、単結合、置換もしくは無置換のアルキレン基または酸素原子を示す。アルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基およびブチレン基が好ましく。これらの中でも、機械的強度の点で、メチレン基が好ましい。有してもよい置換基としては、アルキル基およびアリール基が挙げられる。また、有してもよい置換基同士が連結し環構造を形成する基でもよい。アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基およびブチル基などが挙げられ、中でもメチル基が好ましい。アリール基としては、フェニル基などが挙げられる。置換基同士が連結し環構造を形成する基としては、シクロアルキリデン基が挙げられ、具体的には、シクロペンチリデン基、シクロヘキシリデン基およびシクロヘプチリデン基が挙げられる。これらの中でも、シクロヘキシリデン基が好ましい。
以下に、上記式(2)で示される繰り返し構造単位の具体例を示す。
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これらの中でも、上記式(2−1)、(2−2)、(2−3)、(2−7)で示される繰り返し構造単位が好ましい。
また、本発明におけるポリエステル樹脂Aは、ポリエステル樹脂Aの全質量に対してシロキサン部位を5質量%以上40質量%以下で含有する。
本発明において、シロキサン部位とは、シロキサン部分を構成する両端のケイ素原子およびそれらに結合する基と、該両端のケイ素原子に挟まれた酸素原子、ケイ素原子およびそれらに結合する基を含む部位である。具体的にいえば、本発明において、シロキサン部位とは、たとえば、下記式(1−S)で示される繰り返し構造単位の場合、下記破線で囲まれた部位のことである。
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本発明のポリエステル樹脂Aの全質量に対するシロキサン部位の含有量が5質量%以上であると、接触ストレスの緩和効果が持続的に発揮され、かつ、電荷輸送物質およびポリエステル樹脂Cあるいはポリカーボネート樹脂Dにより形成されるマトリックス中に効率的にドメイン構造が形成される。また、シロキサン部位の含有量が40質量%以下であると、ポリエステル樹脂Aにより形成されるドメイン中で電荷輸送物質が凝集体を形成することが抑制され、電位変動が抑制される。
本発明のポリエステル樹脂Aの全質量に対するシロキサン部位の含有量は一般的な分析手法で解析可能である。以下に、分析手法の例を示す。
電子写真感光体の表面層である電荷輸送層を溶剤で溶解させた後、サイズ排除クロマトグラフィーや高速液体クロマトグラフィーのような各組成成分を分離回収可能な分取装置で、表面層である電荷輸送層に含有される種々の材料を分取する。分取されたポリエステル樹脂Aをアルカリ存在下などで加水分解させ、カルボン酸部分とビスフェノール部分に分解する。得られたビスフェノール部分に対し、核磁気共鳴スペクトル分析や質量分析により、シロキサン部分の繰り返し数やモル比を算出し、含有量(質量比)に換算する。
本発明に用いられる上記ポリエステル樹脂Aは、上記式(1)で示される繰り返し構造単位と上記式(2)で示される繰り返し構造単位との共重合体であるが、その共重合形態は、ブロック共重合、ランダム共重合、交互共重合などのいずれの形態であってもよい。
本発明に用いられる上記ポリエステル樹脂Aの重量平均分子量は、電荷輸送物質およびポリエステル樹脂Cあるいはポリカーボネート樹脂Dにより形成されるマトリックス中でドメイン構造を形成する点で、30,000以上200,000以下であることが好ましい。さらには、40,000以上150,000以下であることがより好ましい。
本発明において、樹脂の重量平均分子量とは、常法に従い、特開2007−79555に記載の方法により測定されたポリスチレン換算の重量平均分子量である。
本発明に用いられる上記ポリエステル樹脂Aの共重合比は、一般的な手法である樹脂のH−NMR測定による水素原子(樹脂を構成している水素原子)のピーク面積比による換算法によって確認することができる。
本発明に用いられる上記ポリエステル樹脂Aは、たとえば、ジカルボン酸エステルとジオール化合物とのエステル交換法によって合成することが可能である。また、ジカルボン酸ハライドなどの2価の酸ハロゲン化物とジオール化合物との重合反応によって合成することも可能である。
次に上記式(C)で示される繰り返し構造単位を有するポリエステル樹脂Cについて説明する。
上記式(C)中のR21〜R28は、それぞれ独立に、水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基を示す。アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基およびブチル基が挙げられる。これらの中でもメチル基が好ましい。
上記式(C)中のXは、置換もしくは無置換のアルキレン基、置換もしくは無置換のアリーレン基、置換もしくは無置換のビフェニレン基、あるいは複数のフェニレン基がアルキレン基もしくは酸素原子を介して結合した2価の基を示す。これらの中でも、置換もしくは無置換のアリーレン基、複数のフェニレン基がアルキレン基もしくは酸素原子を介して結合した2価の基が好ましい。アルキレン基としては、炭素数4〜8のアルキレン基が挙げられ、さらにはブチレン基、ヘキシレン基およびオクチレン基であることが好ましい。アリーレン基としては、フェニレン基(o−フェニレン基、m−フェニレン基、p−フェニレン基)およびナフチレン基が挙げられる。これらの中でも、m−フェニレン基およびp−フェニレン基が好ましい。複数のフェニレン基がアルキレン基、酸素原子もしくは硫黄原子を介して結合した2価の基のフェニレン基としては、o−フェニレン基、m−フェニレン基およびp−フェニレン基が挙げられる。これらの中でも、p−フェニレン基が好ましい。複数のフェニレン基を結合させるアルキレン基としては、主鎖を構成する炭素原子数が1以上4以下の置換もしくは無置換のアルキレン基が好ましい。この中でも、メチレン基が好ましい。上記各基が有してもよい置換基としては、アルキル基およびアリール基が挙げられる。アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基およびブチル基などが挙げられる。アリール基としては、フェニル基が挙げられる。これらの中でも、メチル基が好ましい。
上記式(C)中のYは、単結合、置換もしくは無置換のアルキレン基または酸素原子を示す。アルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基およびブチレン基が好ましく。これらの中でも、機械的強度の点で、メチレン基が好ましい。有してもよい置換基としては、アルキル基およびアリール基が挙げられる。また、有してもよい置換基同士が連結し環構造を形成する基でもよい。アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基およびブチル基が挙げられ、中でもメチル基が好ましい。アリール基としては、フェニル基などが挙げられる。置換基同士が連結し環構造を形成する基としては、シクロアルキリデン基が挙げられ、具体的には、シクロペンチリデン基、シクロヘキシリデン基、シクロヘプチリデン基が挙げられる。これらの中でも、シクロヘキシリデン基が好ましい。
以下に、上記式(C)で示される繰り返し構造単位の具体例を示す。
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これらの中でも、上記式(3−1)、(3−2)、(3−3)、(3−6)、(3−7)、(3−8)、(3−9)で示される基が好ましい。
次に上記式(D)で示される繰り返し構造単位を有するポリカーボネート樹脂Dについて説明する。
上記式(D)中のR31〜R38は、それぞれ独立に、水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基を示す。アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基およびブチル基が挙げられる。これらの中でも、メチル基が好ましい。
上記式(D)中のYは、単結合、置換もしくは無置換のアルキレン基または酸素原子を示す。アルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基およびブチレン基が好ましく。これらの中でも、機械的強度の点で、メチレン基が好ましい。有してもよい置換基としては、アルキル基およびアリール基が挙げられる。また、有してもよい置換基同士が連結し環構造を形成する基でもよい。アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基およびブチル基などが挙げられ、中でもメチル基が好ましい。アリール基としては、フェニル基などが挙げられる。置換基同士が連結し環構造を形成する基としては、シクロアルキリデン基が挙げられ、具体的には、シクロペンチリデン基、シクロヘキシリデン基およびシクロヘプチリデン基が挙げられる。これらの中でも、シクロヘキシリデン基が好ましい。
以下に、上記式(D)で示される繰り返し構造単位の具体例を示す。
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これらの中でも、上記式(4−1)、(4−4)、(4−5)で示される繰り返し構造単位が好ましい。
本発明における電荷輸送層は、電荷輸送物質と、ポリエステル樹脂Cおよびポリカーボネート樹脂Dの少なくとも一方の樹脂により形成されたマトリックスと、該マトリックス中にポリエステル樹脂Aにより形成されたドメインとを有するマトリックス−ドメイン構造を有している。本発明におけるマトリックス−ドメイン構造は、「海島構造」でいうならば、マトリックスが海に相当し、ドメインが島に相当する。
ポリエステル樹脂Aにより形成されたドメインは、電荷輸送物質と、ポリエステル樹脂Cおよびポリカーボネート樹脂Dの少なくとも一方の樹脂により形成されたマトリックス中に形成された粒状(島状)構造を示す。ポリエステル樹脂Aにより形成されたドメインは、前記マトリックス中にドメインが独立して存在している。このようなマトリックス−ドメイン構造は、電荷輸送層の表面観察あるいは電荷輸送層の断面観察を行うことにより確認することができる。
マトリックス−ドメイン構造の状態観察あるいはドメインの計測は、たとえば、市販のレーザー顕微鏡、光学顕微鏡、電子顕微鏡、原子力間顕微鏡を用いて測定可能である。上記顕微鏡を用いて、所定の倍率により、マトリックス−ドメイン構造の状態観察あるいはドメイン構造の計測することができる。
本発明におけるポリエステル樹脂Aにより形成されたドメインの数平均粒径は、100nm以上500nm以下であることが好ましい。また、各ドメインの粒径の粒度分布は狭いほうが塗膜およびストレス緩和の効果の均一性の観点から好ましい。本発明における数平均粒径は、本発明の電荷輸送層を垂直に切断した断面の顕微鏡観察により観測されるドメインのうち任意に100個選択し、切断されたドメインの最大径を平均化することにより算出している。
本発明におけるマトリックス−ドメイン構造を形成するためには、ポリエステル樹脂Aのシロキサン部位の含有量は、電荷輸送層中の全樹脂(全結着樹脂)の全質量に対して1質量%以上20質量%以下であることが好ましい。また、上記接触ストレスの緩和と繰り返し使用時の電位安定性の両立の観点からもポリエステル樹脂Aのシロキサン部位の含有量は、電荷輸送層中の全樹脂(全結着樹脂)の全質量に対して1質量%以上20質量%以下であることが好ましい。さらには、2質量%以上10質量%以下であることがより好ましく、接触ストレスの緩和と繰り返し使用時の電位安定性をさらに高めることが可能になる。
本発明の電子写真感光体の電荷輸送層のマトリックス−ドメイン構造は、電荷輸送物質、ポリエステル樹脂A、ならびに、ポリエステル樹脂Cおよびポリカーボネート樹脂Dの少なくとも一方の樹脂を含有する電荷輸送層用塗布液を用いて形成することができる。また、上記マトリックス−ドメイン構造は、ドメインを形成するポリエステル樹脂Aと、マトリックスを形成するポリエステル樹脂Cおよびポリカーボネート樹脂Dの少なくとも一方の樹脂のみを含有する塗布液を用いて塗膜を形成した場合においても形成することができる。一方、電荷輸送物質とシロキサン部位を有するポリエステル樹脂Aを含有する塗布液を用いて塗膜を形成すると、電荷輸送物質がシロキサン部位を有するポリエステル樹脂中で凝集体を形成する場合がある。本発明におけるマトリックス−ドメイン構造と、上記の電荷輸送物質の凝集体形成とは異なる状態である。本発明の、電荷輸送物質と、ポリエステル樹脂Cおよびポリカーボネート樹脂Dの少なくとも一方の樹脂により形成されたマトリックスと、該マトリックス中にポリエステル樹脂Aにより形成されたドメインとを有するマトリックス−ドメイン構造を有する電荷輸送層を有する電子写真感光体は、電位特性は安定的に維持される。この理由の詳細は不明であるが、本発明者らは、以下に示す現象によるものと考えている。
すなわち、本発明のマトリックス−ドメイン構造は、電荷輸送物質と、ポリエステル樹脂Cおよびポリカーボネート樹脂Dの少なくとも一方の樹脂により形成されたマトリックス中に、ポリエステル樹脂A(あるいはポリエステル樹脂A中に含有されるシロキサン部位)がドメインを形成している構造である。この場合は、マトリックスが電荷輸送物質ならびにポリエステル樹脂Cおよびポリカーボネート樹脂Dの少なくとも一方の樹脂により形成されているため、良好な電荷輸送能を保持することが可能になっている。また、ポリエステル樹脂Aにより形成されているドメイン中に、電荷輸送物質の凝集体が確認されなければ、電荷輸送物質の凝集による電荷輸送能の低下は引き起こされないと考えられる。また、電荷輸送層中にポリエステル樹脂Aにより形成されているドメインが形成されていることにより、ストレス緩和の効果が持続的に発現していると考えられる。
さらに、本発明のマトリックス−ドメイン構造のドメインを形成するポリエステル樹脂A中の構造にシクロアルキレン構造を有することで、ポリエステル樹脂Cおよびポリカーボネート樹脂Dのマトリックス中にドメインを形成しやすくなっていると考えられる。これは、マトリックスを形成するポリエステル樹脂Cおよびポリカーボネート樹脂Dが多数の芳香環構造を有するのに対し、ポリエステル樹脂Aはシクロアルキレン構造を有することに起因している。すなわち、マトリックス中の芳香環構造と相溶性の異なるシクロアルキレン構造によりポリエステル樹脂Aはドメインを形成しやすくなっている。
また、電荷輸送物質は芳香環構造を有する化合物であるため、ポリエステル樹脂A中のシクロアルキレン構造とは相溶性が異なり、結果、ドメイン中に含有される電荷輸送物質は減少し、電荷輸送物質の凝集による電荷輸送能の低下は引き起こされないと考えられる。
以下に、本発明に用いられる上記ポリエステル樹脂Aの合成例を示す。
上記式(1−1)および(2−1)で示される繰り返し構造単位を有するポリエステル樹脂A(1)の合成
下記式(5)
Figure 0005491208
で示されるジカルボン酸ハライド49.2gをジクロロメタンに溶解させ、酸ハロゲン化物溶液を調製した。また、酸ハロゲン化物溶液とは別に、下記式(6)
Figure 0005491208
で示されるシロキサン構造を有するジオール21.7gおよび下記式(7)
Figure 0005491208
で示されるジオール43.9gを10%水酸化ナトリウム水溶液に溶解させた。さらに、重合触媒としてトリブチルベンジルアンモニウムクロライドを添加して攪拌し、ジオール化合物溶液を調製した。
次に、上記酸ハロゲン化物溶液を上記ジオール化合物溶液に攪拌しながら加え、重合を開始した。重合は、反応温度を25℃以下に保ち、攪拌しながら、3時間行った。
その後、酢酸の添加により重合反応を終了させ、水相が中性になるまで水での洗浄を繰り返した。洗浄後、攪拌下のメタノールに滴下して、重合物を沈殿させ、この重合物を真空乾燥させて、上記式(1−1)および(2−1)で示される繰り返し構造単位を有するポリエステル樹脂A(A1)を80g得た。表1に示す。上記のとおりにしてポリエステル樹脂A(1)中のシロキサン部位の含有量を算出したところ、20質量%であった。また、ポリエステル樹脂A(A1)の重量平均分子量は60,000であった。表1に示す。
上記ポリエステル樹脂Aの合成例で示した合成方法を用いて、表1に示すポリエステル樹脂Aを製造した。
Figure 0005491208
本発明の電子写真感光体の表面層である電荷輸送層は、ポリエステル樹脂Aと、ポリエステル樹脂Cおよびポリカーボネート樹脂Dの少なくとも一方の樹脂を含有するが、さらに他の樹脂を混合して用いてもよい。混合して用いてもよい他の樹脂としては、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂などが挙げられる。
また、ポリエステル樹脂Cおよびポリカーボネート樹脂Dは、上記式(1)で示される繰り返し構造単位を有さないことが、上記マトリックス−ドメイン構造の効率的な形成の観点から好ましい。
本発明の電子写真感光体の表面層である電荷輸送層に含有される電荷輸送物質としては、例えば、トリアリールアミン化合物、ヒドラゾン化合物、スチリル化合物およびスチルベン化合物が挙げられる。これら電荷輸送物質は1種のみ用いてもよく、2種以上用いてもよい。また、これらの中でも、電荷輸送物質としてトリアリールアミン化合物を用いることが電子写真特性の向上の点で好ましい。
次に、本発明の電子写真感光体の構成について説明する。
上記のとおり、本発明の電子写真感光体は、支持体、該支持体上に設けられた電荷発生層、および該電荷発生層上に設けられた電荷輸送層を有する電子写真感光体である。また、電荷輸送層が電子写真感光体の表面層(最上層)である電子写真感光体である。
また、本発明の電子写真感光体の電荷輸送層は、電荷輸送物質を含有する。また、電荷輸送層は、ポリエステル樹脂A、およびポリエステル樹脂Cおよびポリカーボネート樹脂Dの少なくとも一方の樹脂を含有する。
また、電荷輸送層を積層構造としてもよく、その場合は、少なくとも最も表面側の電荷輸送層に上記マトリックス−ドメイン構造を有させる。電子写真感光体は、一般的には、円筒状支持体上に感光層を形成してなる円筒状の電子写真感光体が広く用いられるが、ベルト状、シート状などの形状とすることも可能である。
支持体としては、導電性を有するもの(導電性支持体)が好ましく、アルミニウム、アルミニウム合金、ステンレスのような金属製の支持体を用いることができる。
アルミニウムまたはアルミニウム合金製の支持体の場合は、ED管、EI管や、これらを切削、電解複合研磨(電解作用を有する電極と電解質溶液による電解および研磨作用を有する砥石による研磨)、湿式または乾式ホーニング処理したものを用いることもできる。
また、アルミニウム、アルミニウム合金または酸化インジウム−酸化スズ合金を真空蒸着によって被膜形成された層を有する金属製支持体や樹脂製支持体を用いることもできる。
また、カーボンブラック、酸化スズ粒子、酸化チタン粒子、銀粒子のような導電性粒子を樹脂などに含浸した支持体や、導電性結着樹脂を有するプラスチックを用いることもできる。
支持体の表面は、レーザー光などの散乱による干渉縞の防止などを目的として、切削処理、粗面化処理、アルマイト処理などを施してもよい。
支持体の表面が導電性を付与するために設けられた層である場合、その層の体積抵抗率は、1×1010Ω・cm以下であることが好ましく、特には1×10Ω・cm以下であることがより好ましい。
支持体と、後述の中間層または電荷発生層との間には、レーザー光などの散乱による干渉縞の防止や、支持体の傷の被覆を目的とした導電層を設けてもよい。これは、導電性粒子を結着樹脂に分散させた導電層用塗布液を用いて形成される層である。
導電性粒子としては、たとえば、カーボンブラック、アセチレンブラックや、アルミニウム、ニッケル、鉄、ニクロム、銅、亜鉛、銀のような金属粉や、導電性酸化スズ、ITOのような金属酸化物粉体が挙げられる。
また、結着樹脂としては、例えば、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルブチラール、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂およびアルキッド樹脂が挙げられる。
導電層用塗布液の溶剤としては、例えば、エーテル系溶剤、アルコール系溶剤、ケトン系溶剤および芳香族炭化水素溶剤が挙げられる。
導電層の膜厚は、0.2μm以上40μm以下であることが好ましく、1μm以上35μm以下であることがより好ましく、さらには5μm以上30μm以下であることがより好ましい。
導電性粒子や抵抗調節粒子を分散させた導電層は、その表面が粗面化される傾向にある。
支持体または導電層と、電荷発生層との間には、バリア機能や接着機能を有する中間層を設けてもよい。中間層は、たとえば、感光層の接着性改良、塗工性改良、支持体からの電荷注入性改良、感光層の電気的破壊に対する保護のために形成される。
中間層は、結着樹脂を含有する中間層用塗布液を導電層上に塗布し、これを乾燥または硬化させることによって形成することができる。
中間層の結着樹脂としては、例えば、ポリアクリル酸類、メチルセルロース、エチルセルロース、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリアミド酸樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂などが挙げられる。
中間層の電気的バリア性を効果的に発現させる観点から、また、塗工性、密着性、耐溶剤性、抵抗の好適化の観点から、中間層の結着樹脂は熱可塑性樹脂が好ましい。具体的には、熱可塑性のポリアミド樹脂が好ましい。ポリアミド樹脂としては、溶液状態で塗布できるような低結晶性または非結晶性の共重合ナイロンが好ましい。
中間層の膜厚は、0.05μm以上7μm以下であることが好ましく、0.1μm以上2μm以下であることがより好ましい。
また、中間層において電荷(キャリア)の流れが滞らないようにするため、中間層には、半導電性粒子あるいは電子輸送物質(アクセプターのような電子受容性物質)を含有させてもよい。
支持体、導電層または中間層上には、電荷発生層が設けられる。
本発明の電子写真感光体に用いられる電荷発生物質としては、例えば、アゾ顔料、フタロシアニン顔料、インジゴ顔料およびペリレン顔料が挙げられる。これら電荷発生物質は1種のみ用いてもよく、2種以上用いてもよい。これらの中でも、特にオキシチタニウムフタロシアニン、ヒドロキシガリウムフタロシアニン、クロロガリウムフタロシアニンのような金属フタロシアニンは、高感度であるため好ましい。
電荷発生層に用いられる結着樹脂としては、例えば、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ブチラール樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、アクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂および尿素樹脂が挙げられる。これらの中でも、特には、ブチラール樹脂が好ましい。これらは単独、混合または共重合体として1種または2種以上用いることができる。
電荷発生層は、電荷発生物質を結着樹脂および溶剤とともに分散して得られる電荷発生層用塗布液を塗布し、これを乾燥させることによって形成することができる。また、電荷発生層は、電荷発生物質の蒸着膜としてもよい。
分散方法としては、たとえば、ホモジナイザー、超音波、ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミルを用いた方法が挙げられる。
電荷発生物質と結着樹脂との割合は、1:10〜10:1(質量比)の範囲が好ましく、特には1:1〜3:1(質量比)の範囲がより好ましい。
電荷発生層用塗布液に用いられる溶剤は、使用する結着樹脂や電荷発生物質の溶解性や分散安定性から選択される。有機溶剤としては、例えば、アルコール系溶剤、スルホキシド系溶剤、ケトン系溶剤、エーテル系溶剤、エステル系溶剤または芳香族炭化水素溶剤などが挙げられる。
電荷発生層の膜厚は、5μm以下であることが好ましく、0.1μm以上2μm以下であることがより好ましい。
また、電荷発生層には、種々の増感剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤などを必要に応じて添加することもできる。また、電荷発生層において電荷(キャリア)の流れが滞らないようにするために、電荷発生層には、電子輸送物質(アクセプターのような電子受容性物質)を含有させてもよい。
電荷発生層上には、電荷輸送層が設けられる。
本発明の電子写真感光体に用いられる電荷輸送物質としては、トリアリールアミン化合物、ヒドラゾン化合物、スチリル化合物、スチルベン化合物などが挙げられる。
本発明の電子写真感光体の表面層である電荷輸送層は、ポリエステル樹脂Aを含有し、かつ、ポリエステル樹脂Cおよびポリカーボネート樹脂Dの少なくとも一方の樹脂を含有するが、上述のとおり、他の樹脂をさらに混合して用いてもよい。混合して用いてもよい他の樹脂は、上述のとおりである。
電荷輸送層は、電荷輸送物質および上記各樹脂を溶剤に溶解させることによって得られる電荷輸送層用塗布液を塗布し、これを乾燥させることによって形成することができる。
電荷輸送物質と結着樹脂との割合は、4:10〜20:10(質量比)の範囲が好ましく、5:10〜12:10(質量比)の範囲がより好ましい。
電荷輸送層用塗布液に用いられる溶剤としては、例えば、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、エーテル系溶剤および芳香族炭化水素溶剤が挙げられる。これら溶剤は、単独で使用してもよいが、2種類以上を混合して使用してもよい。これらの溶剤の中でも、エーテル系溶剤または芳香族炭化水素溶剤を使用することが、樹脂溶解性の観点から好ましい。
電荷輸送層の膜厚は、5μm以上50μm以下であることが好ましく、10μm以上35μm以下であることがより好ましい。
また、電荷輸送層には、酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤などを必要に応じて添加することもできる。
本発明の電子写真感光体の各層には、各種添加剤を添加することができる。添加剤としては、例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、対光安定剤のような劣化防止剤や、有機微粒子、無機微粒子などの微粒子が挙げられる。劣化防止剤としては、例えば、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、ヒンダードアミン系対光安定剤、硫黄原子含有酸化防止剤、リン原子含有酸化防止剤が挙げられる。有機微粒子としては、例えば、フッ素原子含有樹脂粒子、ポリスチレン微粒子、ポリエチレン樹脂粒子のような高分子樹脂粒子が挙げられる。無機微粒子としては、例えば、シリカ、アルミナのような金属酸化物が挙げられる。
上記各層の塗布液を塗布する際には、浸漬塗布法(浸漬コーティング法)、スプレーコーティング法、スピンナーコーティング法、ローラーコーティング法、マイヤーバーコーティング法、ブレードコーティング法などの塗布方法を用いることができる。
図1に、本発明の電子写真感光体を有するプロセスカートリッジを備えた電子写真装置の概略構成の一例を示す。
図1において、1は円筒状の電子写真感光体であり、軸2を中心に矢印方向に所定の周速度で回転駆動される。
回転駆動される電子写真感光体1の表面は、帯電手段(一次帯電手段:帯電ローラーなど)3により、正または負の所定電位に均一に帯電される。次いで、スリット露光やレーザービーム走査露光などの露光手段(不図示)から出力される露光光(画像露光光)4を受ける。こうして電子写真感光体1の表面に、目的の画像に対応した静電潜像が順次形成されていく。
電子写真感光体1の表面に形成された静電潜像は、現像手段5の現像剤に含まれるトナーにより現像されてトナー像となる。次いで、電子写真感光体1の表面に形成担持されているトナー像が、転写手段(転写ローラーなど)6からの転写バイアスによって、転写材(紙など)Pに順次転写されていく。なお、転写材Pは、転写材供給手段(不図示)から電子写真感光体1と転写手段6との間(当接部)に電子写真感光体1の回転と同期して取り出されて給送される。
トナー像の転写を受けた転写材Pは、電子写真感光体1の表面から分離されて定着手段8へ導入されて像定着を受けることにより画像形成物(プリント、コピー)として装置外へプリントアウトされる。
トナー像転写後の電子写真感光体1の表面は、クリーニング手段(クリーニングブレードなど)7によって転写残りの現像剤(トナー)の除去を受けて清浄面化される。次いで、前露光手段(不図示)からの前露光光(不図示)により除電処理された後、繰り返し画像形成に使用される。なお、図1に示すように、帯電手段3が帯電ローラーなどを用いた接触帯電手段である場合は、前露光は必ずしも必要ではない。
上記の電子写真感光体1、帯電手段3、現像手段5、転写手段6およびクリーニング手段7などの構成要素のうち、複数のものを容器に納めてプロセスカートリッジとして一体に結合して構成し、このプロセスカートリッジを複写機やレーザービームプリンターなどの電子写真装置本体に対して着脱自在に構成してもよい。図1では、電子写真感光体1と、帯電手段3、現像手段5およびクリーニング手段7とを一体に支持してカートリッジ化して、電子写真装置本体のレールなどの案内手段10を用いて電子写真装置本体に着脱自在なプロセスカートリッジ9としている。
以下に、具体的な実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。ただし、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例中の「部」は「質量部」を意味する。
〔実施例1〕
直径30mm、長さ260.5mmのアルミニウムシリンダーを支持体とした。
次に、SnOコート処理硫酸バリウム(導電性粒子)10部、酸化チタン(抵抗調節用顔料)2部、フェノール樹脂(結着樹脂)6部、シリコーンオイル(レベリング剤)0.001部およびメタノール4部/メトキシプロパノール16部の混合溶剤を用いて導電層用塗布液を調製した。
この導電層用塗布液を支持体上に浸漬塗布し、これを30分間140℃で硬化(熱硬化)させることによって、膜厚が15μmの導電層を形成した。
次に、N−メトキシメチル化ナイロン3部および共重合ナイロン3部をメタノール65部/n−ブタノール30部の混合溶剤に溶解させることによって、中間層用塗布液を調製した。
この中間層用塗布液を導電層上に浸漬塗布し、これを10分間100℃で乾燥させることによって、膜厚が0.7μmの中間層を形成した。
次に、CuKα特性X線回折におけるブラッグ角2θ±0.2°の7.5°、9.9°、16.3°、18.6°、25.1°および28.3°に強いピークを有する結晶形のヒドロキシガリウムフタロシアニン(電荷発生物質)10部を、シクロヘキサノン250部にポリビニルブチラール樹脂(商品名:エスレックBX−1.積水化学工業(株)製、結着樹脂)5部を溶解させた液に加えた。これを、直径1mmのガラスビーズを用いたサンドミル装置で23±3℃雰囲気下1時間分散した。分散後、酢酸エチル250部を加えることによって、電荷発生層用塗布液を調製した。
この電荷発生層用塗布液を中間層上に浸漬塗布し、これを10分間100℃で乾燥させることによって、膜厚が0.26μmの電荷発生層を形成した。
次に、下記式(CTM−1)
Figure 0005491208
で示される化合物(電荷輸送物質)8部、下記式(CTM−2)
Figure 0005491208
で示される化合物(電荷輸送物質)2部、結着樹脂として、合成例1で合成したポリエステル樹脂A(1)3部および上記式(3−1)で示される繰り返し構造単位を有するポリエステル樹脂C(1)(p−フェニレンとm−フェニレンのモル比は5:5、重量平均分子量120,000)7部を、ジメトキシメタン20部およびキシレン60部の混合溶剤に溶解させることによって、電荷輸送層用塗布液を調製した。
この電荷輸送層用塗布液を電荷発生層上に浸漬塗布し、これを1時間120℃で乾燥させることによって、膜厚が19μmの電荷輸送層を形成した。形成された電荷輸送層には電荷輸送物質とポリエステル樹脂C(1)により形成されたマトリックス中にポリエステル樹脂A(1)により形成されたドメイン構造が含有されていることが確認された。
このようにして、電荷輸送層が表面層である電子写真感光体を作製した。電荷輸送層に含有される結着樹脂の構成およびポリエステル樹脂A中のシロキサン部位の含有量を表2に示す。
次に、評価について説明する。
評価は、2,000枚繰り返し使用時の明部電位の変動(電位変動)ならびに初期および2,000枚繰り返し使用時のトルクの相対値およびトルク測定時の電子写真感光体の表面の観察について行った。
評価装置としては、キヤノン(株)製レーザービームプリンターLBP−2510(帯電(一次帯電):接触帯電方式、プロセススピード:94.2mm/s)を、電子写真感光体の帯電電位(暗部電位)を調整できるように改造して用いた。また、ポリウレタンゴム製のクリーニングブレードを、電子写真感光体の表面に対して、当接角25°および当接圧35g/cmとなるように設定した。
評価は、温度23℃、相対湿度50%環境下で行った。
<電位変動評価>
評価装置の780nmのレーザー光源の露光量(画像露光量)については、電子写真感光体の表面での光量が0.3μJ/cmとなるように設定した。電子写真感光体の表面電位(暗部電位および明部電位)の測定は、電子写真感光体の端部から130mmの位置に電位測定用プローブが位置するように固定された冶具と現像器とを交換して、現像器位置で行った。電子写真感光体の非露光部の暗部電位が−450Vとなるように設定し、レーザー光を照射して暗部電位から光減衰させた明部電位を測定した。また、A4サイズの普通紙を用い、連続して画像出力を2,000枚行い、その前後での明部電位の変動量を評価した。テストチャートは、印字比率5%のものを用いた。結果を表4中の電位変動に示す。
<トルクの相対値評価>
上記電位変動評価条件と同条件において、電子写真感光体の回転モーターの駆動電流値(電流値A)を測定した。この評価は、電子写真感光体とクリーニングブレードとの接触ストレス量を評価したものである。得られた電流値の大きさは、電子写真感光体とクリーニングブレードとの接触ストレス量の大きさを示す。
さらに、以下の方法でトルク相対値の対照となる電子写真感光体を作製した。
実施例1の電子写真感光体の電荷輸送層の結着樹脂に用いたポリエステル樹脂A(1)を、上述のポリエステル樹脂C(1)に変更した以外は実施例1と同様にして電子写真感光体を作製し、これを対照用電子写真感光体とした。
作製された対照用電子写真感光体を用いて、実施例1と同様に電子写真感光体の回転モーターの駆動電流値(電流値B)を測定した。
このようにして得られた本発明に係るポリエステル樹脂Aを用いた電子写真感光体の駆動電流値(電流値A)と、本発明に係るポリエステル樹脂Aを用いなかった電子写真感光体の回転モーターの駆動電流値(電流値B)との比を算出した。得られた(電流値A)/(電流値B)の数値を、トルクの相対値として比較した。このトルクの相対値の数値は、電子写真感光体とクリーニングブレードとの接触ストレス量の増減を示し、トルクの相対値の数値が小さいほうが電子写真感光体とクリーニングブレードとの接触ストレス量が小さいことを示す。結果を、表4中の初期トルクの相対値に示す。
続いて、A4サイズの普通紙を用い、連続して画像出力を2,000枚行った。テストチャートは、印字比率5%のものを用いた。その後、2,000枚繰り返し使用後のトルクの相対値測定を行った。2,000枚繰り返し使用後のトルクの相対値は初期トルクの相対値と同様の評価で行った。この場合、対照用電子写真感光体に対しても2,000枚繰り返し使用を行い、そのときの駆動電流値を用いて2,000枚繰り返し使用後のトルクの相対値を算出した。結果を、表4中の2,000枚後トルクの相対値に示す。
<マトリックス−ドメイン構造の評価>
上記の方法により作製された電子写真感光体に対して、電荷輸送層を垂直方向に切断した電荷輸送層の断面を超深度形状測定顕微鏡VK−9500((株)キーエンス社製)を用いて断面観察を行った。その際、対物レンズ倍率50倍とし、電子写真感光体の表面の100μm四方(10000μm)を視野観察とし、視野内にあるランダムに選択された100個の形成されたドメイン部位の最大径の測定を行った。得られた最大径より平均値を算出し、数平均粒径とした。結果を表4に示す。
〔実施例2〜43〕
実施例1において、電荷輸送層の結着樹脂を表2に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体を作製し、評価した。形成された電荷輸送層には電荷輸送物質とポリエステル樹脂Cあるいはポリカーボネート樹脂Dにより形成されたマトリックス中にポリエステル樹脂Aにより形成されたドメイン構造が含有されていることが確認された。トルク相対値の対照となる電子写真感光体は、対応する電荷輸送層中の樹脂に表2中の他構造の樹脂のみを含有する電子写真感光体を用いた。結果を表4に示す。
〔比較例1〕
実施例1において、結着樹脂として上記式(1−1)で示される繰り返し構造単位と上記式(2−1)で示される構造単位を有し、ポリエステル樹脂中のシロキサン部位の含有量が2質量%であるポリエステル樹脂(E)を使用した以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体を作製した。電荷輸送層に含有される樹脂の構成およびシロキサン部位の含有量を表3に示す。実施例1と同様に評価を行った。すべての比較例のトルク相対値の対照となる電子写真感光体は、結着樹脂としてポリエステル樹脂C(1)のみを含有する電子写真感光体を用いた。結果を表4に示す。
〔比較例2〕
実施例1において、結着樹脂として上記ポリエステル樹脂A(1)をポリエステル樹脂(E)に変更した以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体を作製した。電荷輸送層に含有される樹脂の構成およびシロキサン部位の含有量を表3に示す。実施例1と同様に評価を行った。結果を表4に示す。
〔比較例3〕
実施例1において、結着樹脂として上記式(1−1)で示される繰り返し構造単位と上記式(2−1)で示される構造単位を有し、ポリエステル樹脂中のシロキサン部位の含有量が50質量%であるポリエステル樹脂(F)を使用した以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体を作製した。電荷輸送層に含有される樹脂の構成およびシロキサン部位の含有量を表3に示す。実施例1と同様に評価を行った。結果を表4に示す。
〔比較例4〕
実施例1において、結着樹脂としてポリエステル樹脂A(1)をポリエステル樹脂(F)に変更した以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体を作製した。電荷輸送層に含有される樹脂の構成およびシロキサン部位の含有量を表3に示す。電荷輸送層には電荷輸送物質とポリエステル樹脂C(1)により形成されたマトリックス中にポリエステル樹脂(F)により形成されたドメイン構造が形成されていることが確認された。実施例1と同様に評価を行った。結果を表4に示す。
〔比較例5〕
実施例1において、結着樹脂として上記ポリエステル樹脂A(1)を下記式(G)
Figure 0005491208
で示される繰り返し構造単位を有し、ポリエステル樹脂中のシロキサン部位の含有量が20質量%であるポリエステル樹脂(G)(p−フェニレンとm−フェニレンのモル比は5:5、重量平均分子量120,000)に変更した以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体を作製した。電荷輸送層に含有される樹脂の構成およびシロキサン部位の含有量を表3に示す。実施例1と同様に評価を行った。結果を表4に示す。
〔比較例6〕
実施例1において、結着樹脂として上記ポリエステル樹脂A(1)を上記式(3−2)で示される繰り返し構造単位を有し、末端に下記式(H)
Figure 0005491208
で示される構造を有し、ポリエステル樹脂中のシロキサン部位の含有量が1.2質量%であるポリエステル樹脂(H)(p−フェニレンとm−フェニレンのモル比は5:5)に変更した以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体を作製した。電荷輸送層に含有される樹脂の構成およびシロキサン部位の含有量を表3に示す。実施例1と同様に評価を行った。結果を表4に示す。
〔比較例7〕
実施例1において、結着樹脂として上記ポリエステル樹脂A(1)を上記式(4−4)で示される繰り返し構造単位および下記式(I)
Figure 0005491208
で示される繰り返し構造単位を有し、ポリカーボネート樹脂中のシロキサン部位の含有量が84質量%であるポリカーボネート樹脂(M)に変更し、混合比を変えた以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体を作製した。電荷輸送層に含有される樹脂の構成およびシロキサン部位の含有量を表3に示す。実施例1と同様に評価を行った。結果を表4に示す。
〔比較例8〕
実施例1において、上記ポリエステル樹脂A(1)を上記式(4−4)で示される構造単位および末端に上記式(H)で示される構造を有し、樹脂中のシロキサン部位の含有量が20質量%であるポリカーボネート樹脂(N)に変えた以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体を作製した。電荷輸送層に含有される樹脂の構成およびシロキサン部位の含有量を表3に示す。実施例1と同様に評価を行った。結果を表4に示す。
〔比較例9〕
電荷発生層までは実施例1と同様に形成した。
次に、上記式(CTM−1)で示される化合物8部、上記式(CTM−2)で示される化合物(電荷輸送物質)2部、ポリエステル樹脂C(1)9.9部およびメチルフェニルポリシロキサン0.1部を、ジメトキシメタン20部およびクロロベンゼン60部の混合溶剤に溶解させることによって、電荷輸送層用塗布液を調製した。
この電荷輸送層用塗布液を電荷発生層上に浸漬塗布し、これを1時間120℃で乾燥させることによって、膜厚が19μmの電荷輸送層を形成した。電荷輸送層には電荷輸送物質とポリエステル樹脂C(1)により形成されたマトリックス中にメチルフェニルポリシロキサンにより形成されたドメイン構造が形成されていることが確認された。
このようにして、電荷輸送層が表面層である電子写真感光体を作製した。
評価は実施例1と同様に行った。結果を表4に示す。
Figure 0005491208
表2中の「樹脂A(ポリエステル樹脂A)」は、上記式(1)で示される繰り返し構造単位および上記式(2)で示される繰り返し構造単位を有するポリエステル樹脂Aを意味する。
表2中の「シロキサンの質量比A(質量%)」は、「樹脂A(ポリエステル樹脂A)」中のシロキサン部位の含有量(質量%)を意味する。
表2中の「樹脂B(他構造の樹脂)」は、ポリエステル樹脂Cおよびポリカーボネート樹脂Dの少なくとも一方の樹脂を意味する。
表2中の「シロキサンの質量比B(質量%)」は、電荷輸送層中の全結着樹脂の全質量に対する「樹脂A(ポリエステル樹脂A)」中のシロキサン部位の含有量(質量%)を意味する。
Figure 0005491208
表3中の「樹脂A」は、シロキサン部位を有する樹脂を意味する。
表3中の「シロキサンの質量比A(質量%)」は、「樹脂A」中のシロキサン部位の含有量(質量%)を意味する。
表3中の「樹脂B(他構造の樹脂)」は、シロキサン部位を含有しない構造の樹脂を意味する。
表3中の「シロキサンの質量比B(質量%)」は、電荷輸送層中の全結着樹脂の全質量に対する「樹脂A」中のシロキサン部位の含有量(質量%)を意味する。
Figure 0005491208
実施例と比較例1との比較により、電荷輸送層中のシロキサン部位を含有するポリエステル樹脂に対するシロキサン質量比が低い場合、十分な接触ストレスの緩和効果が得られていない。このことは、本評価法の初期および2,000枚後の評価においてトルク低減の効果がないことにより示されている。
実施例と比較例2との比較により、シロキサン部位を含有するポリエステル樹脂に対するシロキサン質量比が低い場合には、本発明におけるポリエステル樹脂Cと混合してもマトリックス−ドメイン構造の形成は見られず、ストレスの緩和効果が得られていない。
実施例と比較例3との比較により、電荷輸送層中のシロキサン部位を含有するポリエステル樹脂に対するシロキサン質量比が高い場合、電荷輸送物質との相溶性が不十分となり、シロキサン部位を含有するポリエステル樹脂中に電荷輸送物質の凝集が発生することが見られている。この凝集により、電位変動を生じることが示されている。
実施例と比較例4との比較により、シロキサン部位を含有するポリエステル樹脂に対するシロキサン質量比が高い場合では、本発明のポリエステル樹脂Aと同様にマトリックス−ドメイン構造の形成が見られ、持続的にストレス緩和効果が得られている。しかしながら、電位変動が大きい結果となっている。顕微鏡観察により、ドメイン構造内に電荷輸送物質の凝集体が確認されることから、シロキサン部位を含有するポリエステル樹脂に対するシロキサン質量比が、電位変動抑制の効果の点で重要であることを示している。
実施例と比較例5との比較により、電荷輸送層中のシロキサン部位を有するポリエステル樹脂のシロキサン部位の繰り返し数の平均値が小さい場合、十分な接触ストレスの緩和効果が得られていない。このことは、本評価法の初期および2,000枚後の評価においてトルク低減の効果がないことにより示されている。以上より、接触ストレスの緩和の効果がシロキサン鎖長の長さに依存することが示されている。また、本発明のシロキサン部位を有するポリエステル樹脂であれば、シロキサン部位の繰り返し数の平均値が10であっても本願の効果が得られている。このことは、本発明のシロキサン部位を有するポリエステル樹脂Aのシクロアルキレン構造が、本発明の効果を発現していることを示している。
実施例と比較例6との比較により、末端にのみシロキサン構造を有するポリエステル樹脂の場合には、その構造上、電荷輸送層中のシロキサン部位を含有するポリエステル樹脂に対するシロキサン質量比や電荷輸送層中の全結着樹脂に対するシロキサンの質量比が低く十分に接触ストレスの緩和効果は得られないことが示されている。また、本発明のポリエステル樹脂Aとは異なりマトリックス−ドメイン構造を形成していない。以上より、接触ストレスの緩和の効果およびマトリックス−ドメイン構造の形成には、シロキサン部位のポリエステル樹脂中の配置にも依存することが示されている。
実施例と比較例7との比較により、シロキサン構造を有し、シロキサンの質量比が高いポリカーボネート樹脂とシロキサン部位を含有しないポリエステル樹脂を混合して用いた場合、接触ストレスの緩和効果が持続しないことが示されている。これは、シロキサン構造を有し、シロキサンの質量比が高いポリカーボネート樹脂の表面移行性が発現することに由来すると考えられる。
実施例と比較例8との比較により、シロキサン構造を有し、シロキサン部位の質量比をポリエステル樹脂と混合して用いてもマトリックス−ドメイン構造を形成しないように調整したポリカーボネート樹脂を用いた場合には、電位変動は抑制される結果が得られている。しかしながら、ストレス緩和の持続性に関しては、マトリックス−ドメイン構造を形成する本発明が良好な結果が得られている。このことは、ストレス緩和を持続的に行うためには、電荷輸送層内のシロキサン部位の含有量を多くする必要があるが、電位変動の悪化抑制とストレス緩和の持続性の両立にはマトリックス−ドメイン構造を形成が有効であることを示している。
実施例と比較例9との比較により、フェニルメチルシロキサンを含有させた電荷輸送層の場合には、マトリックス−ドメイン構造の形成は見られ、接触ストレスの緩和効果が持続的に見られるものの、電位変動が大きい結果となっている。フェニルメチルシロキサンのようなシロキサン構造を有するシリコーンオイル材料は電位に悪影響を及ぼすことが知られていて、これは、積層感光体における電荷発生層と電荷輸送層の界面にシリコーンオイル材料が移行することにより発現すると思われる。フェニル基の導入により界面付近への移行性は抑制されているものの十分ではないことにより、電位変動を生じていると考えられる。一方、本発明のシロキサン構造を有するポリエステル樹脂の場合には、シロキサン部位のみならず、エステル構造を有する樹脂であるため、界面への移行性は抑制され、さらにドメイン構造を形成することにより電位変動の抑制がなされていると考えられる。
1 電子写真感光体
2 軸
3 帯電手段
4 露光光
5 現像手段
6 転写手段
7 クリーニング手段
8 定着手段
9 プロセスカートリッジ
10 案内手段
P 転写材

Claims (5)

  1. 支持体と、該支持体上に設けられた電荷発生層と、該電荷発生層上に設けられた電荷輸送層を有し、かつ、該電荷輸送層が表面層である電子写真感光体において、
    該電荷輸送層が、
    電荷輸送物質と、
    結着樹脂として、下記式(1)で示される繰り返し構造単位および下記式(2)で示される繰り返し構造単位を有するポリエステル樹脂Aと、下記式(C)で示される繰り返し構造単位を有するポリエステル樹脂Cおよび下記式(D)で示される構造単位を有するポリカーボネート樹脂Dの少なくとも一方の樹脂
    を含有し、
    該ポリエステル樹脂A中のシロキサン部位の含有量が、該ポリエステル樹脂Aの全質量に対して5質量%以上40質量%以下であり、
    該電荷輸送層が、該電荷輸送物質と、該ポリエステル樹脂Cおよび該ポリカーボネート樹脂Dの少なくとも一方の樹脂により形成されたマトリックスと、該マトリックス中に該ポリエステル樹脂Aにより形成されたドメインとを有するマトリックス−ドメイン構造を有することを特徴とする電子写真感光体。
    Figure 0005491208
    (式(1)中、Xは、2価のシクロアルキレン基を示す。RおよびRは、それぞれ独立に、置換もしくは無置換のアルキル基または置換もしくは無置換のアリール基を示す。Zは、炭素原子数が1以上4以下である置換もしくは無置換のアルキレン基を示す。nは、括弧内の構造の繰り返し数の平均値を示し、10以上150以下である。)
    Figure 0005491208
    (式(2)中、R11〜R18は、それぞれ独立に、水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基を示す。Xは、2価のシクロアルキレン基を示す。Yは、単結合、置換もしくは無置換のアルキレン基または酸素原子を示す。)
    Figure 0005491208
    (式(C)中、R21〜R28は、それぞれ独立に、水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基を示す。Xは、置換もしくは無置換のアルキレン基、置換もしくは無置換のアリーレン基、置換もしくは無置換のビフェニレン基、あるいは複数のフェニレン基がアルキレン基もしくは酸素原子を介して結合した2価の基を示す。Yは、単結合、置換もしくは無置換のアルキレン基または酸素原子を示す。)
    Figure 0005491208
    (式(D)中、R31〜R38は、それぞれ独立に、水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基を示す。Yは、単結合、置換もしくは無置換のアルキレン基または酸素原子を示す。)
  2. 前記電荷輸送層中の前記シロキサン部位の含有量が、前記電荷輸送層中の全結着樹脂の全質量に対して1質量%以上20質量%以下である請求項1に記載の電子写真感光体。
  3. 前記式(1)中のnが、20以上100以下である請求項1〜2のいずれか1項に記載の電子写真感光体。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項に記載の電子写真感光体と、帯電手段、現像手段、転写手段およびクリーニング手段からなる群より選択される少なくとも1つの手段とを一体に支持し、電子写真装置本体に着脱自在であることを特徴とするプロセスカートリッジ。
  5. 請求項1〜3のいずれか1項に記載の電子写真感光体、帯電手段、露光手段、現像手段および転写手段を有することを特徴とする電子写真装置。
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