JP5487300B2 - シガレット用フィルターおよびシガレット - Google Patents

Description

本発明は、香料カプセルを含むシガレット用フィルターおよびシガレットに関する。

従来から、シガレット用フィルターに香料カプセルを組み込み、使用時に香料カプセルを破砕し、喫煙時に内容液の香りを楽しんだり、消火後の吸殻のにおいをマスキングすることが行われている（特許文献１〜５）。香料カプセルの詳細については、たとえば特許文献６に記載されている。このような香料カプセルを含むシガレット用フィルターには様々な問題がある。

図１（ａ）は、たばこ充填物１１を巻紙１２で巻いたたばこロッド１０と、香料カプセル２１を埋め込んだフィルタープラグ２２を巻取紙２３で巻いたフィルター２０とをチップペーパー３０で接続したシガレットを示している。香料カプセル２１は皮膜２１ａで内容液２１ｂを包み込んだ構造を有する。このようなシガレットを喫煙する際に、香料カプセル２１の皮膜２１ａをつぶすと、図１（ｂ）に示すように流れ出た内容液２１ｂはフィルタープラグ２２に吸収され、チップペーパー３０の表面に染み出ることはない。しかし、フィルタープラグ２２に埋め込まれた香料カプセル２１はつぶした感触がないので使用感に劣る。

そこで、複数のフィルタープラグを互いに離間し中空部を介して配置し、その中空部に香料カプセルを設けた構造のフィルターであれば、香料カプセルをつぶした感触が得られるので使用感に優れている。

図２（ａ）は、たばこ充填物１１を巻紙１２で巻いたたばこロッド１０と、２つのフィルタープラグ２５の間の中空部に香料カプセル２１を設けた構造のフィルター２０とをチップペーパー３０で接続したシガレットを示している。２つのフィルタープラグ２５の周囲には素材紙２６が巻かれ、両者が互いに離間し中空部を介して配置された周囲に成形紙２７が巻かれている。なお、素材紙と成形紙のいずれか一方または両方を有さないフィルタープラグも存在する（図１の場合は素材紙と成形紙を兼ねた巻取紙のみである）。通常の成形紙は透過性の高い素材で作られているため、このようなシガレットを喫煙する際に、香料カプセル２１の皮膜２１ａをつぶすと、図２（ｂ）に示すように流れ出た内容液２１ｂがチップペーパー３０の表面に染み出す。

チップペーパーの表面への内容液の染み出しを抑制するために、液体不透過性のチップペーパーおよび／またはフィルターラッパー（素材紙、成形紙、巻取紙）を用いることが考えられる。これらの素材は紙に限定されず、セロファンやプラスチック製のラップ、またはそれらの複合素材でもよい。成形紙２７を液体不透過性とした場合、図２（ｃ）に示すように流れ出た内容液２１ｂが液体不透過性の成形紙２７の内側とフィルタープラグ２５のすき間に沿ってたばこロッド１０や吸口端の方向へ移動する。そして、ついにはたばこロッド１０のたばこ充填物１１を経て、チップペーパー３０よりたばこロッド１０側の巻紙１２へ染み出しが発生する。吸口端の方向では、成形紙２７の内側とフィルタープラグ２５のすき間に沿ってフィルタープラグ２５の端面に染み出しが発生する。

この問題は、液体不透過性の成形紙２７の内側にワックスや糊を塗り、成形紙２７の内側とフィルタープラグ２５のすき間を塞ぐことによって、内溶液２１ｂが伝わるのを防ぐことができる。しかし、ワックスや糊の垢がフィルター製造装置に付着するため量産化は困難である。

特開平７−２５０６６５号公報 特開２００３−３０４８５６号公報 特表２００７−５２０２０４号公報 特表２００８−５２８０５３号公報 特表２００８−５３９７１７号公報 特表２００８−５４６４００号公報

本発明の目的は、フィルターの製造に問題を起こすことなく、使用時にチップペーパーの表面、たばこロッドの巻紙およびフィルター吸口端面への内容液の染み出しを防止することができる、香料カプセルを含むシガレット用フィルター、およびこのシガレット用フィルターを備えたシガレットを提供することにある。

本発明によれば、互いに離間し中空部を介して配置された複数のフィルタープラグと、前記複数のフィルタープラグ間の中空部に設けられ、皮膜内に香料を含む内容液を保持した香料カプセルと、前記フィルタープラグおよび香料カプセルの周囲に巻かれた液体不透過性のチップペーパーおよび／またはフィルターラッパー（素材紙、成形紙、または巻取紙）とを有し、前記内容液は香料と、増粘剤とを含有し、３０ｍＰａ・ｓ以上の粘度を有することを特徴とするシガレット用フィルターが提供される。

また、本発明によれば、たばこロッドと、上記のシガレット用フィルターとを備えたことを特徴とするシガレットが提供される。

本発明のシガレット用フィルターおよびシガレットは、香料カプセルの内容液に増粘剤を加えて内容液の粘度を３０ｍＰａ・ｓ以上としたことにより、使用時にチップペーパーの表面、たばこロッドの巻紙およびフィルター吸口端面への内容液の染み出しを防止することができる。

図１は、従来のシガレット用フィルターに埋め込まれた香料カプセルの内容液のフィルタープラグへの吸収を示す説明図である。 図２は、従来の他のシガレット用フィルターにおける香料カプセルの内容液のチップペーパーの表面、たばこロッドの巻紙およびフィルター吸口端面への染み出しを示す説明図である。 図３は、本発明の実施例のシガレット用フィルターを分解して示す斜視図である。 図４は、本発明の実施例のシガレット用フィルターにおいて香料カプセルの内容液のチップペーパーの表面、たばこロッドの巻紙およびフィルター吸口端面への染み出しを抑制できる様子を示す説明図である。 図５は、本発明の実施例のシガレット用フィルターにおける香料カプセルの内容液の粘度と、香料カプセルの皮膜をつぶしてから１週間後の巻紙への内容液の染み出し長さとの関係を示すグラフである。

本発明のシガレット用フィルターにおいて、複数のフィルタープラグの間の中空部に設けられた香料カプセルは、内容液が香料と、増粘剤とを含有し、３０ｍＰａ・ｓ（２５℃）以上の粘度を有する。

本発明において、内容液の粘度が３０ｍＰａ・ｓ（２５℃）未満、特に１８ｍＰａ・ｓ（２５℃）未満の場合には、香料カプセルをつぶしたときに、チップペーパーの表面、たばこロッドの巻紙およびフィルター吸口端面への内容液の染み出しが生じる。内容液の粘度は３０ｍＰａ・ｓ（２５℃）以上であることが好ましい。内容液の粘度は８０ｍＰａ・ｓ（２５℃）以上であることがより好ましい。

本発明において、香料としては、たとえばメンソール、植物精油などを用いることができる。

本発明において、香料カプセルの内容液に添加される増粘剤としては、液体増粘剤や固体増粘剤が使用可能である。液体増粘剤としては、油脂、たとえばトコフェロール、菜種油、オリーブ油、綿実油、またはシュークロース・ジアセテート・ヘキサイソブチレート（ＳＡＩＢ）などが使用可能である。このうち菜種油、またはＳＡＩＢがさらに好ましい。

増粘剤として油脂を用いる場合、内容液の１９．１〜５７．４重量％の範囲とすることが好ましい。増粘剤としてＳＡＩＢを用いる場合、内容液の４０重量％以上、より好ましくは６０重量％以上とすることが好ましい。

本発明において、内容液に含まれる、香料および増粘剤の溶媒としては、たとえば中鎖脂肪酸トリグリセリド（ＭＣＴ）を用いることができる。

本発明において、内容液は、さらに溶媒、色素、乳化剤などの他の添加剤を含有していてもよい。

本発明において、香料カプセルの皮膜には、たとえばでんぷん、デキストリン、多糖類、寒天、ジェランガム、ゼラチン、各種天然ゲル化剤、グリセリン、ソルビトール、塩化カルシウムなどを用いることができ、さらに香料や着色料を含むことができる。

本発明において、チップペーパーおよび／またはフィルターラッパー（素材紙、成形紙、または巻取紙）が液体不透過性であるということは、これらが耐油性であることを意味する。少なくともチップペーパーおよび／またはフィルターラッパーのうち香料カプセル２１と直接接触する、たとえば成形紙２７には耐油紙を用いることが好ましい。耐油性のうちでも、たとえば日本製紙パピリア株式会社製の耐油紙はフィルムやフッ素樹脂を用いていない点で好ましい。日本製紙パピリア株式会社製の耐油紙の特性を表１に示す。

本発明において、香料カプセルは複数のフィルタープラグの間の中空部に設けるほか、図１と同様にフィルタープラグの中に埋没させてもよい。

なお、本発明に係る香料カプセルは、噛みたばこ、スヌース（ＳＮＵＳ）、国際出願ＰＣＴ／ＪＰ２０１０／０５２８３５に記載された非燃焼香味吸引パイプなどにも適用することができる。

以下、本発明の実施例を説明する。

図３は本実施例で作製したシガレット用フィルターの寸法を示す斜視図である。アセテートからなるたばこロッド側および吸口側の２つのフィルターロッド２５の周囲には素材紙（図示せず）が巻かれている。２つのフィルターロッド２５は互いに離間し中空部を介して配置され、その周囲に液体不透過性（耐油性）の成形紙２７が巻かれる。２つのフィルターロッド２５の間の中空部に香料カプセル２１が配置される。香料カプセル２１は皮膜２１ａで内容液２１ｂを包み込んだ構造を有する。たばこロッド側のフィルターロッド２５の長さＬ１は１１．０ｍｍ、吸口側のフィルターロッド２５の長さＬ２は１０．０ｍｍ、中空部の長さＳは６．０ｍｍ、全長ＴＬは２７．０ｍｍであり、香料カプセル２１の直径Ｄは４．５ｍｍである。本発明においては、香料カプセル２１の内容液２１ｂが３０ｍＰａ・ｓ以上の粘度を有する。

香料カプセルの製造方法は特に限定されないが、たとえば滴下法を用いればシームレスな皮膜を有する香料カプセルを製造できるので好ましい。この方法では、二重ノズルを用い、内側ノズルから内容液を、外側ノズルから液状の皮膜物質を同時に吐出させることにより、皮膜液が継ぎ目なく内容液を包み込むことができる。

図４に示すように、本実施例のシガレット用フィルターでは、香料カプセル２１の内容液２１ｂの粘度が３０ｍＰａ・ｓ（２５℃）以上なので、香料カプセル２１の皮膜２１ａをつぶしたときに流れ出た内容液２１ｂのチップペーパーの表面、たばこロッドの巻紙およびフィルター吸口端面への染み出しを抑制することができる。また、フィルター製造装置への悪影響もない。

例１
香料としてメンソールおよび植物精油、溶媒として中鎖脂肪酸トリグリセリド（ＭＣＴ）を用意し（増粘剤なし）、表２のサンプルＡ〜Ｃの割合で混合し、香料カプセルの内容液を調製した。内容液の粘度を回転式粘度計（東機産業（株）ＴＶＢ−１０Ｍ）により測定した。

皮膜物質としてでんぷん、デキストリンおよび多糖類の混合物８重量％または２０重量％と、上記の内容液９２重量％または８０重量％とを混合し、滴下法により直径４．５ｍｍの香料カプセルを作製した。この香料カプセルを用い、図３に示すシガレット用フィルターを製造し、さらに図２（ａ）と同様のシガレットを製造した。

例２
香料としてメンソールおよび植物精油、溶媒として中鎖脂肪酸トリグリセリド（ＭＣＴ）、増粘剤として菜種油を用意し、表２のサンプルＤ〜Ｈの割合で混合し、香料カプセルの内容液を調製した。内容液の粘度を回転式粘度計（東機産業（株）ＴＶＢ−１０Ｍ）により測定した。

皮膜物質としてでんぷん、デキストリンおよび多糖類の混合物８重量％または２０重量％と、上記の内容液９２重量％または８０重量％とを混合し、滴下法により直径４．５ｍｍの香料カプセルを作製した。この香料カプセルを用い、図３に示すシガレット用フィルターを製造し、さらに図２（ａ）と同様のシガレットを製造した。

例３
香料としてメンソールおよび植物精油、溶媒として中鎖脂肪酸トリグリセリド（ＭＣＴ）、増粘剤としてシュークロース・ジアセテート・ヘキサイソブチレート（ＳＡＩＢ）を用意し、表２のサンプルＩ〜Ｋの割合で混合し、香料カプセルの内容液を調製した。内容液の粘度を回転式粘度計（東機産業（株）ＴＶＢ−１０Ｍ）により測定した。

皮膜物質としてでんぷん、デキストリンおよび多糖類の混合物２０重量％と、上記の内容液８０重量％とを混合し、滴下法により直径４．５ｍｍの香料カプセルを作製した。この香料カプセルを用い、図３に示すシガレット用フィルターを製造し、さらに図２（ａ）と同様のシガレットを製造した。

上記のサンプルＡ〜Ｋのシガレットについて、香料カプセルの皮膜をつぶして、１０分後にチップペーパーの表面、たばこロッドの巻紙およびフィルター吸口端面への内容液の染み出しを調べた。その結果を表２に併記する。

表２の結果から、香料カプセルの内容液の粘度が３０ｍＰａ・ｓ（２５℃）以上であれば、チップペーパーの表面、たばこロッドの巻紙およびフィルター吸口端面への内容液の染み出しを抑制できることがわかる。また、香料カプセルの内容液の粘度が８０ｍＰａ・ｓ（２５℃）以上であれば、チップペーパーの表面、たばこロッドの巻紙およびフィルター吸口端面への内容液の染み出しをより確実に抑制できることがわかっている。

例４
上記の例１〜３の試験では、香料カプセルの皮膜をつぶして、通常の喫煙時間である１０分以内にチップペーパーの表面、たばこロッドの巻紙およびフィルター吸口端面への内容液の染み出しを調べた。しかし、香料カプセルの皮膜をつぶした後により長時間が経過した後にも、たばこロッドの巻紙への内容液の染み出しが少ないことが好ましい。そこで、以下のようにして、長時間経過後の内容液の染み出しを調べた。なお、以下の試験ではカプセルの内容液に香料を含ませていない。

サンプルＬ
溶媒として中鎖脂肪酸トリグリセリド（ＭＣＴ）のみをカプセルの内容液に用いた。

サンプルＭ
溶媒として中鎖脂肪酸トリグリセリド（ＭＣＴ）４３重量％、および増粘剤として菜種油５７重量％を混合して、カプセルの内容液を調製した。

サンプルＮ、Ｏ、Ｐ
溶媒として中鎖脂肪酸トリグリセリド（ＭＣＴ）６０重量％、５０重量％、または４０重量％、および増粘剤としてＳＡＩＢ４０重量％、５０重量％、または６０重量％を混合して、カプセルの内容液を調製した。

これらの内容液の粘度を回転式粘度計（東機産業（株）ＴＶＢ−１０Ｍ）により測定した。表３にカプセル内容液の組成および粘度を示す。

皮膜物質としてでんぷん、デキストリンおよび多糖類の混合物２０重量％と、上記の内容液８０重量％とを混合し、滴下法により直径４．５ｍｍのカプセルを作製した。このカプセルを用い、図３に示すシガレット用フィルターを製造し、さらに図２（ａ）と同様のシガレットを製造した。

上記のサンプルＬ〜Ｐのシガレットについて、カプセルの皮膜をつぶして、１週間後にたばこロッドの巻紙への内容液の染み出しを調べた。この場合、内容液の染み出し長さは、一方のフィルタープラグ２５に接するたばこロッド１０の末端から測定して、巻紙へ染み出した内容液が達した位置までの距離を意味する。その結果を表３に併記する。

また、図５は、サンプルＭ〜Ｐについて、内容液の粘度と内容液の染み出し長さとの関係を示すグラフである。

表３に示されるように、増粘剤を含まないサンプルＬの場合、調査した１０本の全てで、１週間後に内容液の染み出し長さが５７ｍｍとなり、内容液がたばこロッド先端の巻紙まで達した。これに対して、増粘剤として菜種油またはＳＡＩＢを用いた場合、１週間後でも内容液がたばこロッド先端の巻紙まで達することはなかった。また、表３および図５から、内容液の粘度が同じであったとしても、菜種油よりもＳＡＩＢの方が、内容液の染み出し長さが短いことがわかる。

内容液の染み出し長さが長いと、ペーパークロマトグラフ現象によって巻紙に浸透した内容液の成分が分離するという問題が生じることがある。これに対して、増粘剤としてＳＡＩＢを含む内容液は、１週間後でも染み出し長さが短いので、ペーパークロマトグラフ現象による内容液の成分の分離を抑制することができる。

以下に、本願出願の当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
［１］
互いに離間し中空部を介して配置された複数のフィルタープラグと、前記複数のフィルタープラグ間の中空部に設けられ、皮膜内に香料を含む内容液を保持した香料カプセルと、前記フィルタープラグおよび香料カプセルの周囲に巻かれた液体不透過性のチップペーパーおよび／またはフィルターラッパーとを有し、前記内容液は香料と、増粘剤とを含有し、３０ｍＰａ・ｓ以上の粘度を有することを特徴とするシガレット用フィルター。
［２］
前記内容液は８０ｍＰａ・ｓ以上の粘度を有することを特徴とする［１］に記載のシガレット用フィルター。
［３］
前記増粘剤は、液体増粘剤および固体増粘剤からなる群より選択されることを特徴とする［１］に記載のシガレット用フィルター。
［４］
前記液体増粘剤は油脂またはシュークロース・ジアセテート・ヘキサイソブチレート（ＳＡＩＢ）であることを特徴とする［３］に記載のシガレット用フィルター。
［５］
前記内容液は、さらに溶媒および／または色素および／または乳化剤を含有することを特徴とする［１］に記載のシガレット用フィルター。
［６］
前記香料カプセルの前記皮膜は、さらに色素を含有することを特徴とする［１］に記載のシガレット用フィルター。
［７］
液体不透過性のチップペーパーおよび／またはフィルターラッパーが耐油紙であることを特徴とする［１］に記載のシガレット用フィルター。
［８］
たばこロッドと、［１］に記載のシガレット用フィルターとを備えたことを特徴とするシガレット。

Claims (6)

1. 互いに離間し中空部を介して配置された複数のフィルタープラグと、前記複数のフィルタープラグ間の中空部に設けられ、皮膜内に香料を含む内容液を保持した香料カプセルと、前記フィルタープラグおよび香料カプセルの周囲に巻かれた液体不透過性のチップペーパーおよび／またはフィルターラッパーとを有し、前記チップペーパーおよび／または前記フィルターラッパーが耐油紙であり、前記内容液は香料と、増粘剤とを含有し、２５℃において８０ｍＰａ・ｓ以上の粘度を有することを特徴とするシガレット用フィルター。
2. 前記増粘剤は、液体増粘剤および固体増粘剤からなる群より選択されることを特徴とする請求項１に記載のシガレット用フィルター。
3. 前記液体増粘剤は油脂またはシュークロース・ジアセテート・ヘキサイソブチレート（ＳＡＩＢ）であることを特徴とする請求項２に記載のシガレット用フィルター。
4. 前記内容液は、さらに溶媒および／または色素および／または乳化剤を含有することを特徴とする請求項１に記載のシガレット用フィルター。
5. 前記香料カプセルの前記皮膜は、さらに色素を含有することを特徴とする請求項１に記載のシガレット用フィルター。
6. たばこロッドと、請求項１に記載のシガレット用フィルターとを備えたことを特徴とするシガレット。

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