JP5487124B2 - 培地中にpCO2の一定の含有率を有する組換えタンパク質を産生するための方法 - Google Patents

培地中にpCO2の一定の含有率を有する組換えタンパク質を産生するための方法 Download PDF

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Description

本発明は、クエン酸サイクルにおいて改変された真核ホスト細胞におけるポリペプチドのリコンビナント産生のための方法であって、該細胞を、10%〜20%の範囲の一定の値に維持されている溶解されたCOの含有率(pCO)を有する培地中で培養する、方法に関する。
特定の治療用の治療タンパク質のトン規模の産生は、発現系および産生系に関する新規な要件を含意する。使用される主要な発現系は、中でも動物細胞培養系である。タンパク質を正しく折りたたみそして翻訳後に修飾する動物細胞の能力は、中でも、ヒトにおける臨床的用途の要件である。現在では、すべての組換えタンパク質の殆ど70%が、薬学的工業における動物細胞において産生され、これらの大部分がCHO細胞(Chinese hamstar Overy cells)における(Wurm, 2004)。しかしながら、微生物学的系と比較して、動物細胞培養方法は、発酵におけるより長い発生時間およびより低い最終細胞密度により特徴付けられる。したがって、産物力価および空間−時間の収率は、微生物学的方法におけるよりも低い。この欠点を補償するための1つの可能性は、代謝工学、即ち、産生細胞の遺伝子改変により、細胞増殖をコントロールし、そしてアポトーシス、即ち、プログラムされた細胞死を最小にすることである。遺伝子アプローチに加えて、培養コントロールストラテジーが適当な最適化アプローチであることが証明されるが、しかしその潜在力はしばしば過小評価されている。例えば、方法監視およびコントロールストラテジーならびに培養培地の組成を使用することにより、グリコシル化、炭素代謝、細胞増殖および細胞死に有効に影響を与えることが可能である。
したがって、方法開発は、代謝的に最適化された細胞系の開発を目的とするのみならず、最適培地条件および最適プロセスコントロールにより現存の細胞系の潜在力の最大利用も目的とする。酸素含有率および温度などの容易にコントロール可能なプロセスパラメーターとは別に、溶解した二酸化炭素の含有率などのより複雑な影響因子がプロセスコントロールのために考慮される。動物細胞培養法においては、COは、最終産物として物理的に溶解した形態で、そして水性培養培地中に炭酸水素塩として化学的に解離して蓄積する。今日、流加バッチ法(fed batch processes)において動物細胞を使用する高細胞密度法の開発は、工業的に使用される大容量発酵槽およびそれにいきわたっている静水圧と協力して、即ち、結果として31〜54mmHgの細胞生理学的値よりも5倍も高い150〜200mmHgのCO分圧において、得られる。例えば、リコンビナントCHO細胞により産生されるポリペプチド(サイトカイン)の提供のために、該細胞を37℃および5%CO(36mmHgpCO)で培養して、リコンビナントサイトカインを発現する(US 6406888B1)。Fogolin et al., Journal of Biotechnology, 2004, 109, 179-191は、遺伝子改変された細胞系CHO−K1−hGM−CSFは、37℃および5%COにおいて、リコンビナント酵母ピルビン酸カルボキシラーゼ(PYC2)を発現することを示す。この研究の結果は、PYC2の発現および減少した培養温度は、遺伝子改変された細胞系CHO−K1−hGM−CSFの細胞特異的生産性に対する追加の効果を有することを示した。更に、リコンビナントCHO細胞系の増殖速度および特異的ヒトtPA産生速度(specific human tPA production rate)に対する高められたpCO、容積モル浸透圧濃度(osmolarity)の効果は、Kimura and Miller, Biotechnology and Bioengineering, 1996, 52, 152-160により研究された。この研究の実験で使用された培地は、36mmHgpCO(5%CO)、140、195、250mmHgpCOを含有する。しかしながら、これらの著者は、最も高いリコンビナントタンパク質産生速度が、37℃および36mmHgpCO(5%CO)で達成されうるという意見であった。ハイブリドーマ、NS0、CHO、BHKおよび昆虫細胞の増殖および生産性に対する不利な効果が、このような高いpCO濃度について報告されている。工業的大規模発酵槽において、COの蓄積は制限因子である。培養培地からの溶解したCOの脱離は、プロセス工学のためのチャレンジである。したがって、培養された細胞のための酸素供給が与えられなければならない。液相への酸素移動を高めるための補正変数は、例えば、攪拌器速度および容積ガス流量である。しかしながら、これらは、部分的に細胞破壊性のせん断応力および発泡のため、自由に改変することはできない。
したがって、本発明の基礎をなす技術的問題は、上記した欠点を克服する、即ち、全体にわたり、培地中に物理的に溶解したCOの最適含有率を与える、真核ホスト細胞におけるタンパク質のリコンビナント産生のための最適化された方法を提供することである。
この技術的問題の解決は、特許請求の範囲に記載の態様により提供される。本発明に導くストラテジーは、反応器において、溶解した酸素、pH値および過圧の同時的コントロールによりpCOの設定値をコントロールするアプローチに基づいている。pCOに関係する困難と関連したできる限り多くのパラメーターの切り離されたコントロール(decoupled control)のこの合理的アプローチは、リコンビナントに産生されたタンパク質の収率が、溶解したCO10%〜20%の範囲で一定に維持されたpCO値により意外にも増加するという驚くべき発見をもたらした。更に、発酵のプロセス全体にわたるpCO濃度のコントロールは、培養生存率に対して正の効果を有し、そして高細胞密度の長期の定常期を可能とした。動物細胞の培養に適用する場合の本発明をもたらすストラテジーのそれぞれの結果を下記に要約する。
(a)pCOコントロール
in situで滅菌可能なpCOプローブに基づいて、工業的要件を満たし、そして成長発酵において成功的に実行されるpCOコントローラを研究のために開発した。同時的な独立したpCOおよびpHのコントロールにより、このpCOコントローラは、pCO−静的培養およびpCOの設定値プロフィルの発生の両方を可能とする。流加バッチモードおよびケモスタットモードにおける適用は、1Lおよび10L規模で成功的に確立された。コントロール範囲は、1.5〜25.0%pCOである。したがって、パラメーターCOについては、小規模で工業における問題を取り扱うことが可能である。
(b)過圧コントロール
pCO、pOおよびpHのコントロールとは独立に使用されうる過圧弁が、規模1L(150ミリバール過圧まで)および10L(1000バール過圧まで)のために開発された。かくして工業的バイオプロセスにおける規模トランスミッションの問題(静水圧、混合時間)は、小規模で代表させることができる。
(c)pH調節剤
塩基性pH調節のためのNaCOの使用は、増加した生存可能な細胞密度、長期の生存可能な培養期間および、結果としてCHO培養におけるモノクローナル抗体融合タンパク質の増加した空間−時間収率をもたらすことを示すことが可能であった。
(d)圧力コントロール式サンプリング
圧力コントロール式サンプリングシステムは、バイオリアクター条件(温度、過圧、pCO)下に発酵サンプルの処理を可能とする。細胞内プロセス(例えば、細胞内pH)をバイオプロセス条件下に研究することが初めて可能である。
(e)CHO細胞の細胞内pH値に対するpCOの効果
圧力コントロール式サンプリングと組み合わせにおいて開発されたpCOコントローラは、培養培地におけるpCO値の変化に対して細胞内pHの二相反応を観察することを始めて可能とした。水性溶液中のCOの解離平衡により、直接的効果としての「化学的効果」は、細胞内pH値の一時的変化(pCO増加時の細胞質ゾルの酸性化、pCO中和時の細胞質ゾルのアルカリ化)を引き起こす。この効果とは反対に、細胞の長期および恒久的反応、「生理学的効果」がある。in vitroおよびin situ(ケモスタット)での「化学的効果」により引き起こされる細胞内pHの偏りによりこの超回復(super-compensation)を観察することが始めて可能であった。pCO勾配が高ければ高いほど、細胞内pHの変化は大きかった。
(f)リコンビナントCHO細胞系によるpCOコントロール式バイオプロセスから生じる発見
●静的pCO設定値コントロールは、プロセスの強さを増加させる。
●pCOの設定値プロフィルは、バイオプロセスの合理的開発のためにバイオプロセス条件下に細胞生理学的研究と組み合わせて使用することができる。
●pCOレベルは、細胞内pH値に直接関係している。
●細胞内pH値は細胞周期相分布に関係している。
●細胞外pH値と細胞内pH値との間の増加していく勾配は、ラクテートの形成および輸送を促進する。
●培養培地のpHコントロールとは別に、pH固定のバイオプロセス(pH-static bioprocesses)におけるpCOコントロールは、グルコース制限されたプロセス条件においてすら、細胞内pH値によりラクテート形成に影響を与えることができる。
●細胞質ゾルピルビン酸カルボキシラーゼを発現するリコンビナント細胞系CHO−hGM−CSF−PYC2は、pCO感受性エネルギー代謝を示した。コントロールされた静的pCOレベルを増加させることにより、培養の過程で細胞内pH値の増加により酸化性代謝を強化することが可能であった。更に、静的にコントロールされたpCOレベルの増加と共に、長期の生存可能な培養期間、G1G0期における細胞周期の有効な維持、増加した細胞特異的生産性および100%の空間−時間収率の増加が観察された。
●静的にコントロールされたpCOバイオプロセスにおいて、長期の培養期間は、第一に、増加したpCOレベルに起因すると考えなければならず、重量モル浸透圧濃度に起因すると考えるべきではない。
●コントロールされたpCOレベルの最適プロセス値は、15%pCOにおいて見出される。
●pCOのコントロール、したがって、バイオプロセスの水性媒体中のCOの蓄積の抑制は、HCO 緩衝化培地においても、排気ガス分析により細胞培養プロセスにおける呼吸商RQの信頼可能なオンライン決定を可能とした。
開発されたカスケード式pCO コントローラの略図によるコントロールループ pCOの設定値のアンダーカット:PID1は、設定値に到達するまで、比方式(ratio-mode)で取り付けられたCO−MFCの開き幅(0〜5L・h−1)をコントロールする。pCOの設定値の超過:PID1は最初にCO−MFCを閉じ、そして設定値が連続的に正の偏差をすると、PID2(コントローラカスケード)による追加のN−MFC(0〜15L・h−1)を開く。 比ガス供給(ratio gassing)により溶解したpO およびpCO のコントロールされたガス濃度および10L攪拌容器反応器における増加したガス供給比による最大化されたCO 放出 50ミリバール過圧、0.15M NaCl、37℃、200rpm、pHコントロールされていない 比ガス供給により溶解したpO およびpCO のコントロールされたガス濃度および750ミリバール過圧で10L攪拌容器反応器における増加したガス供給比による最大化されたCO 放出 0.15M NaCl、37℃、200rpm、pHコントロールされていない バイオスタットESにおいて実行されたコントロールされた過圧システムのプロセス略図 10L攪拌容器反応器における溶解した二酸化炭素pCO (連続線)および過圧p(破線)のコントロールファクター濃度の動的設定値コントロール プロセスコントロールソフトウエアLabViewにおける開発されたPIDコントローラによる(バイオスタットES, B. Braun International;工業的生産培地、標準発酵パラメーター) 5%pCO から15%pCO への設定値サージ時に1M NaOHによるpH7.2へのpHコントロールの適定プロフィル バイオスタットES、比ガス供給30L・h−1、10L作用容積、工業的生産培地に類似したNaHCO/NaHPO/NaHPOを有する水性バッファー溶液、37℃、750ミリバール過圧 5%pCO から15%pCO への設定値サージ時に1M Na CO によるpH7.2へのpHコントロールの適定プロフィル バイオスタットES、比ガス供給30L・h−1、10L作用容積、工業的生産培地に類似したNaHCO/NaHPO/NaHPOを有する水性バッファー溶液、37℃、750ミリバール過圧 %pCO から15%pCO への設定値サージ時のpHコントロールのための1M塩基の累積エントリー バイオスタットES、比ガス供給30L・h−1、10L作用容積、工業的生産培地に類似したNaHCO/NaHPO/NaHPOを有する水性バッファー溶液、37℃、750ミリバール過圧 供給ガス混合物中の一定5%(v/v)のCO およびpH調節剤NaOHおよびNa CO それぞれによる流加バッチ発酵 生存可能細胞密度ZDL、生存率VIA、産物力価PRO(1L、CHO−MUC1、150ミリバール過圧、pH7.2、200rpm、膜ガス供給) 供給ガス混合物中の可変CO 比およびpH調節剤NaOHおよびNa CO それぞれによる流加バッチ発酵 生存可能細胞密度ZDL、生存率VIA、産物力価PRO(1L、CHO−MUC1、150ミリバール過圧、pH7.2、200rpm、膜ガス供給;図11も参照)。 供給ガス混合物中のpH依存性可変CO 比による細胞系CHO−MUC1の流加バッチ培養におけるグルコースおよびラクテート濃度 1L、CHO−MUC1、150ミリバール過圧、pH7.2、200rpm、膜ガス供給;図10も参照 流加バッチ発酵の重量モル浸透圧濃度OSMおよび生存可能細胞密度ZDL 1L、CHO−MUC1、150ミリバール過圧、pH7.2、200rpm、膜ガス供給 バイオスタットES(10L)における異なるサンプリング方法の特徴付けのための組み合わせたパラメーター 開口、密閉貯蔵:培地で完全に充填された反応チューブ(50mL、Falcon);開発されたサンプリング装置:培地で完全に充填された過圧なしの気密かつ密閉した注射器 バイオスタットESにおける大気圧下に異なるサンプリング型によるCO 損失 (0.15M NaCl、630ミリバール過圧)、in situおよびオフラインCO測定YSIおよびAVL Compact 3;培地で完全に充填された反応管(50ml、Falcon) 異なる過圧でのin situCO 平衡濃度(バイオスタットES)(A)、気密注射器による採集および過圧なしのその後の貯蔵の後のサンプル中の時間依存性CO 濃度(B) 0.15M NaCl、37℃、他には、攪拌容器における標準発酵条件 テキストに記載された成分に関してバイオスタットESの圧力コントロール式サンプリングユニットの写真 異なるサンプル容積のための3つの異なる注射器(2〜4)および支持体への注射器の正確な挿入のためのアダプタースリーブ(5)を有する開発された圧力コントロール式サンプリング装置の透明な支持ユニット(1) サンプル容積は、所定位置に後部停止板(6)を配置することにより予め選択されうる。 り付けられた注射器を有する開発された圧力維持サンプリング装置の支持体ユニットの頂面図 750ミリバール過圧でCHO−MUC1細胞系の発酵の終わりにおける細胞含有産生培地中のin situCO 濃度の比較(in situYSI; オフラインAVL Compact 3) 37℃でのサンプルの貯蔵そして測定期間に攪拌しない;培地で完全に充填された反応チューブ(50mL、Falcon) 蛍光染料SNARF−1との無圧インキュベーション、それぞれ、25分(A、B)および50分(C)の後のフローサイトメトリーによるpHi測定;それぞれ蛍光(FL2、FL3)およびそれらの強度比(比) 説明:テキスト参照 開発された圧力コントロール式サンプリング装置における蛍光染料SNARF−1との25分等圧インキュベーションの後のフローサイトメトリーによるpHi測定(D)および等圧貯蔵(25分)およびその後の蛍光染料SNARF−1との無圧インキュベーション(25分)の後のフローサイトメトリーによるpHi測定(E);それぞれ、蛍光(FL2、FL3)およびそれらの強度比(比) 説明:テキスト参照 培地中で培養されたCHO−MUC1細胞系に対する培地中の異なるpCO 欠乏の一時的細胞内アルカリ化効果 異なるインキュベーション時間にin−vitroでSNARF−1で染色された細胞懸濁液に空気によりガス供給することによるpCO欠乏。すべてのサンプルについて、細胞内pHのフローサイトメトリーによる評価の前のインキュベーションの全期間は、空気でガス供給することによる中和の期間と同じである。 培養培地中で培養されたCHO−MUC1細胞系に対する培養培地からの溶解したCO 欠乏時の初期の細胞内アルカリ化効果(<5分)および生理学的効果による細胞質ゾルのその後の酸性化(<40分) 異なるインキュベーション段階においてin−vitroでSNARF−1で染色された細胞懸濁液に空気でガス供給することによるCO欠乏。すべてのサンプルについて、細胞内pHのフローサイトメトリーによる評価の前のインキュベーションの全期間は、空気でガス供給することによる中和の期間と同じである。 5%、7%および10%の異なる出発pCO 濃度における二相pHi曲線。CHO−MUC1細胞系に対する培養培地からの溶解したCO の欠乏時の初期の細胞内アルカリ化効果(化学的効果)および初期pHiより低くなる生理学的効果によるアルカリ化のその後の超回復 異なるインキュベーション時間においてin−vitroでSNARF−1で染色された細胞懸濁液に空気でガス供給することによるCO欠乏。すべてのサンプルについて、細胞内pHのフローサイトメトリーによる評価の前のインキュベーションの全期間は、空気でガス供給することによる中和の期間と同じである。 それぞれ、2.5%から5.0%へのpCO サージおよび5.0%から10%へのpCO サージを伴う連続的pCO コントロールされたプロセス(1.0L、D=0.8d −1 、pH7.0、調節剤Na CO 1M) それぞれ、5%、15%、25%および5〜15%pCO における生存可能細胞数ZDLおよび生存率VIA CHO−MUC1、10L流加バッチ、750ミリバール過圧、標準発酵条件 異なるpCO 設定値コントロールを伴うプロセスにおける細胞周期分布のG0G1期分画 CHO−MUC1、10L流加バッチ、750ミリバール過圧、標準発酵条件 工業的pCO プロフィルにおける細胞周期分画G0G1、対応するpCO 値および細胞内pHi値の転換点 5〜15%、CHO−MUC1、10L流加バッチ、750ミリバール過圧、標準発酵条件 25%pCO におけるG0G1期分画および細胞内pH値pH CHO−MUC1、10L流加バッチ、750ミリバール過圧、標準発酵条件 異なるpCO 設定値プロフィルについてのグルタミン消費の特異的速度(specific rates)qGLN CHO−MUC1、10L流加バッチ、750ミリバール過圧、標準発酵条件 グルタミンGLN当たりグルタメートGLTに関係した特異的収率係数(specific yield coefficients)Y CHO−MUC1、10L流加バッチ、750ミリバール過圧、標準発酵条件 異なるpCO 設定値プロフィルについての細胞特異的ラクテート形成速度qLAC CHO−MUC1、10L流加バッチ、750ミリバール過圧、標準発酵条件 異なるpCO 設定値プロフィルについてのラクテート形成LAC CHO−MUC1、10L流加バッチ、750ミリバール過圧、標準発酵条件 産物力価PRO MUC−IgG 10L流加バッチ、750ミリバール過圧、標準発酵条件 細胞系CHO−MUC1のグルコース制限されたケモスタットプロセス(1L) それぞれ、pHコントロールおよびpCO設定値の増加により増加した細胞特異的ラクテート形成qLAC;比増殖速度(specific growth rate)μ、流速D 細胞系CHO−MUC1のグルコース制限されたケモスタットプロセス(1L) それぞれ、グルコース、ラクテートおよびグルタミン濃度の曲線(GLC、LACおよびGLN) (a)ピルベートを介してラクテートへの基質グルコースの普通の代謝経路;(b)ピルベートおよびハイドロジェンカーボネートのオキサロアセテートへの転換および細胞質ゾルピルビン酸カルボキシラーゼPYC2によるトリカルボン酸回路(TCA)へのその後のマレートの移行を可能にすること;Irani(1999)にしたがって改変された 細胞系CHO−hGM−CSF−PYC2の流加バッチ培養:生存可能細胞密度(黒塗り記号)およびpCO 濃度(白記号)の曲線、それぞれ、5%および15%へのpCO の調節および/またはpCO の調節なし 細胞系CHO−hGM−CSF−PYC2の1L流加バッチにおける、それぞれ、コントロールされていないpCO 濃度および5%および15%のコントロールされているpCO 濃度での生存可能細胞密度ZDLおよび生存率VIA:pCO コントロールは、高度に生存可能な細胞による長期の産生期間を可能とする それぞれ、コントロールされていないpCO 、5%および15%のコントロールされたpCO による重量モル浸透圧濃度OSMおよび累積苛性アルカリ溶液インレット(1M Na CO pCOコントロールされたプロセスと比較してコントロールされていないpCOによる対数増殖期の高められた苛性アルカリインレット;重量モル浸透圧濃度曲線は、すべてのプロセスにおいて同様である。 個々のバイオプロセスにおけるラクテート濃度LAC pCOコントロールは、急速なかつ高いラクテート形成を防止する。 細胞特異的ラクテート形成速度qLAC コントロールされていないpCO(≧180時間)および5%のコントロールされたpCO(≧220時間)によるラクテート代謝が観察され得る;15%のコントロールされたpCOではラクテートの代謝なし 異なるpCO プロセス条件によるリコンビナント増殖因子hMG−CSFの細胞特異的産物形成速度SPR pCOコントロールされたプロセスと比較してpCOコントロールされていないプロセスにおける逆の活性:pCOコントロールなしに定常増殖期へのエントリー時にSPRの減少;対照的に、それぞれ、5%および15%のコントロールされたpCOによるSPRの高い増加 適切なpCO プロフィルについての発酵の終わり(培養の80%生存率)に産生された増殖因子hGM−CSFの絶対最終濃度 細胞系CHO−hGM−CSF−PYC2のpCO コントロールされていない流加バッチ培養の間の細胞周期分布比S/(G0G1)、細胞特異的産物形成速度SPRおよび細胞内pH値pHi 供給の開始の後の約0.3のpHの減少、増殖期への入りにおけるpHの増加 5%にpCO コントロールされた細胞系CHO−hGM−CSF−PYC2のpCO コントロールされた流加バッチ培養の過程における細胞周期分布比S/(G0G1)、細胞特異的産物形成速度SPRおよび細胞内pH値pHi 供給の開始の後の約0.4のpHiの減少、増殖期へのエントリー時にpHiの増加 15%にpCO コントロールされた細胞系CHO−hGM−CSF−PYC2の流加バッチ培養の間の細胞周期分布比S/(G0G1)、細胞特異的産物形成速度SPRおよび細胞内pH値pHi 供給の開始の後のpHの減少なし、pHiの最初の僅かな減少は増殖期へのエントリー時に増加し、次いでSPRとともに増加する。 コントロールされていないpCO および/または5%までおよび15%までpCO コントロールされたpCO による流加バッチプロセスの細胞特異的生産性および細胞周期相分画G0G1 1L規模、細胞系CHO−hGM−CSF−PYC2、標準発酵条件 5%のコントロールされたpCO による流加バッチプロセスのOUR、CPRおよびRQCHO−hGM−CSF−PYC2、1L流加バッチ、標準発酵条件 15%のコントロールされたpCO による流加バッチプロセスのOUR、CPRおよびRQCHO−hGM−CSF−PYC2、1L流加バッチ、標準発酵条件
したがって、本発明は、クエン酸回路において改変されている真核ホスト細胞におけるポリペプチドのリコンビナント産生のための方法であって、下記の工程:
(a)ポリペプチドの発現を可能とする条件下に適当な培地中で真核ホスト細胞を培養し、その際、培地中の溶解したCOの含有率(pCO)を10%〜20%の範囲において一定の値に維持し、
(b)細胞からまたは培地からポリペプチドを回収する、
工程を含む方法に関する。
本発明の方法により、非常に高い産物濃度が達成され、回収コストを減少させる。かくして、産物力価の増加は、小さな培養容積における所望の量の産物の産生を可能とし、これにより投資コストをより低くする。
当業者は、遺伝子の産物がクエン酸回路に関与している遺伝子を熟知しており、したがって、当業者は、クエン酸回路において改変されておりそして本発明の方法に適当な真核ホスト細胞を産生することができる(例えばIrani et al., (1999), Chen et al, (2001); Paredes et al., (1999), Bell et al., (1995))。更に、当業者は、公に入手可能なソースからすでに得ることができる上記のとおりの改変を示すホスト細胞を使用することができる。更に、当業者は、このような細胞の培養のための適当な培養条件および培地も熟知しておりそして所望のリコンビナントタンパク質を発現する遺伝子が高度に発現される条件も熟知している。培地中の溶解したCOの一定の含有率を達成するために、当業者は、下記の実施例に記載されるコントロールユニットを好ましくは利用することができる。
本明細書で使用された「一定の値」または「安定な値」という用語は、溶解したCOの含有率が、所望の設定値またはプログラムされた設定値から20%より多く逸脱しないことを指し、例えば、それは10%の設定値で8〜12%の範囲にある。
本発明の方法は、異なる真核産生細胞系を使用して行うことができる。クエン酸回路における改変、好ましくは遺伝子改変は、DNAへの同じ生物または別の生物の追加の遺伝子の挿入により、またはベクターにより、または、例えばCMVからのより有効なプロモーターを導入することによって遺伝子の活性または発現を高めることもしくは減じることにより、または1個以上のアミノ酸残基の置換、欠失もしくは付加をもたらす遺伝子のコード領域における対応する突然変異により、行うことができる。
本発明の方法の好ましい態様においては、ホスト細胞は、動物細胞、好ましくは哺乳動物細胞または昆虫細胞である。このような細胞、特にリコンビナントポリペプチドの効率的な産生のための細胞は当業者に知られている。下記の細胞系、哺乳動物細胞、例えばCHO細胞系、例えばCHO−K1、BHK、例えばBHK−21、ハイブリドーマ、NS/0、他のミエローマ細胞および昆虫細胞または他のより高級な細胞を例として示すことができる。増殖依存性方式で産生しない細胞の使用は特に好ましい。
本発明の方法の更なる態様においては、ホスト細胞は、クエン酸回路において改変されているホスト細胞である。クエン酸回路の異なる代謝経路が長い間知られてきており、関与する遺伝子およびそれらのコントロールを有する。したがって、当業者は、標準方法に従って所望の改変(1つまたは複数)を行うことができる。クエン酸回路において改変されている特に好ましいホスト細胞は、細胞質ゾルピルビン酸カルボキシラーゼ、好ましくはSaccharomyces cerevisiaeからの細胞質ゾルピルビン酸カルボキシラーゼ(PYC2、イソ酵素2)を発現する細胞である。このカルボキシラーゼをコードする遺伝子および真核細胞のトランスフォーメーションのための適当な発現ベクターは、中でも、US-Patent No. 6,706,524およびStucka et al. (1991)に記載されており;Wagner (1998); Irani (1999); Bollati Fogolin (2003); WO 00/46378も参照されたい。
US-Patent No. 6,706,524にもその製造が詳細に記載されている細胞系CHO−hGM−CSF−PYC2は、本発明の方法に特に好ましい。
本発明の方法は、ポリペプチド、例えば、糖タンパク質、融合タンパク質、抗体およびそのフラグメント、インターフェロン、サイトカイン、好ましくはhGM−CSF、増殖因子、例えばエリスロポエチン(EPO)、ホルモン等の高い収率をリコンビナント方式で得ることを可能とする。
本発明の方法の必須の特徴は、溶解したCOの含有率が、下記の実施例に記載のとおりの適当な手段を使用して一定に維持されるということである。当業者は、使用される細胞系に依存して、標準アッセイによって10〜20%の範囲内で特に適当なCOの含有率を決定することができる。一定に維持されるべき溶解したCOの含有率(pCO)は、好ましくは10〜20%、の範囲、更に好ましくは11〜19%の範囲、更に好ましくは12〜18%の範囲、更に好ましくは12.5〜17.5%の範囲、更に好ましくは13〜17%の範囲、更に好ましくは14〜16%の範囲にある。
本発明の方法は、既知の方法、例えば、バッチ法、流加バッチ法、ケモスタット法または灌流培養を使用して行うことができ、流加バッチ法が好ましい。すべての確立された型の培養容器、例えば、攪拌容器をこれらの方法のために使用することができる。好ましくは、培養システムは高い細胞密度を可能とするべきである。
一般に、真核細胞の培養に適当な任意の培地を培養培地として使用することができる。哺乳動物細胞の培養のために、IMDM、DMEMまたはHam's F12などの既知の処方に基づいておりそして場合により本発明の方法のために最適化されている培地を使用することが可能であり、それにより特定の個々の成分に関して制限はない。これは、例えば、より高い濃度の個々の成分により達成されうる。一般に、必要ならば、培地とは別に単一の栄養分を投与することも可能である。
pH範囲は、好ましくは6.7〜7.7、特に好ましくは7〜7.3である。しかしながら、他のpH範囲も考えられる。温度範囲は、例えばCHO細胞などの哺乳動物細胞では、好ましくは35〜38.5℃、特に好ましくは37℃である。しかしながら、例えば非哺乳動物細胞の場合には<35℃などの他の温度範囲も考えられる。
培地中の溶解したCOの含有率を一定に維持するために、それは、好ましくは、例えば下記の実施例に記載のとおり、質量流量コントローラ(MFC)によるカスケード式pCOコントローラを有するコントロールシステムを使用することにより一定に維持される。MFCにより、(a)供給空気中のCO比を培地中のpCOの設定値のオーバーカット分だけ増加させる、(b)供給空気中のCO比を培地中のpCOの設定値の超過分だけ減少する、および(c)設定値超過分を供給空気中のCO比の減少により十分に相殺できないならば、カスケード式コントローラが好ましくは工程(b)と組み合わせてNを送るための追加のMFCを開く、アプローチは特に好ましくそして有利である。
実施例1
材料および方法
(A)細胞系
使用したすべての細胞系は、無血清培地中の懸濁液中で培養するのに適合した。
(1)CHO−MUC1
本発明で使用される細胞系CHO−MUC1は、ATCC(American Type Culture Collection, Rockville, USA)のCHO-K1細胞系(CCL-61)に基づいている。それを、エレクトロポレーションを使用してコンフルーエント培養においてリコンビナントプラスミドMUC1−IgG2a−pcDNA3(Link et al., 2004)でトランスフェクションした。抗生物質ゲネチシン(G418)に対する耐性とは別に、サイトメガロウイルスプロモーター(CMV)の構成的コントロール下にある構築物は、MUC1−IgG2a融合タンパク質の発現も媒介する。ヒト乳がん関連ムチン糖タンパク質MUC1の細胞外部分(C末端)を、エンテロキナーゼ開裂部位を介してサブクラス2aのマウス免疫グロブリン(IgG2a)のFc部分に融合させ(N末端で)、かくしてそれは培地に分泌される。選択およびその後のサブクローニングは、本発明で使用されたクローンCHO−MUC1−IgG2a−PH3931−16TRをもたらした。この細胞系は、400μgmL−1の濃度までゲニシチン耐性を示す。
(2)CHO−hGM−CSF−PYC2
リコンビナントCHO−hGM−CSF−PYC2細胞系のクローンは、M. Bollati Fogolin(GBF mbH, Braunschweig)の好意により提供された。それらは、酵母からの細胞質ゾルピルビン酸カルボキシラーゼをコードする遺伝子を含有するプラスミドpCMVSHE−PYC2(Wagner, 1998; Irani, 1999)およびヒグロマイシン耐性をコードするpHMR272によるリコンビナント細胞系CHO−K1−hGM−CSF(Bollati Fogolin, 2001)のコトランスフェクションにより発生させられた。クローンCHO−hGM−CSF−PYC2−4D5(Bollati Fogolin, 2003)を、本発明で行われた研究で使用した。この細胞系は、リコンビナントグリコシル化「ヒト顆粒球−マクロファージコロニー刺激因子(hGM−CSF)」を培養培地中に分泌しそして250μgmL−1の濃度までヒグロマイシン耐性を示す。
(3)CHO−hGM−CSF
プラスミドpHMR272単独によるCHO−hGM−CSF細胞系の類似したトランスフェクションおよびその後の選択により誘導された細胞母集団を、PYC2発現クローンのための参照として使用した。異なる個々のクローンのこの混合母集団は、250μgmL−1の濃度までヒグロマイシン耐性を示す(Bollati Fogolin, 2003)。
(B)培養培地
株の維持および選択のために、上記抗生物質を適切な濃度で使用した。
(1)ProCHO4−CDM
市販の血清およびタンパク質不含ProCHO4−CDM(Biowhittaker Europe)が、pH滴定剤の効果の予備的研究のための菌株維持および小規模発酵槽システム(1L,Applikon)におけるCHO−MUC1細胞系の培養のために使用された。この培地は、4.30gL−1のグルコース含有率を有しそして5.00gL−1HEPESを含有する。それに、NaHCO (最終3.78gL−1)、グルタミン(最終4.1mM)、ヒポキサンチン(最終0.1mM)およびチミジン(最終0.1mM)を補充した。pH値をpH7.0に調節した。
(2)工業的製造培地(Roche Diagnostics GmbH)
この培地は、インストラクションに従って、超純水(SQ, Millipore)により調製されそしてすべての細胞系のために補充された。すべての培地を、4MNaOHによる滴定によりpH7.0に調節した。無菌ろ過(0.2μm)および無菌試験(72時間、室温)の後、これらの無血清培地を1カ月までの間保存した(4℃)。主発酵培地のグルコース濃度は、8.0gL−1である。供給方法については、高いグルコース濃度を有する培地濃縮物を使用した。
(C)オフライン分析
(1)細胞数、生存率および無菌性の評価
適当な懸濁培養から毎日採集したサンプルを汚染(バクテリア、菌類)について顕微鏡により検査した。細胞数および生存率は、手動で(光学顕微鏡)および自動で(ViCell XR, Beckman Coulter, Krefeld)評価した。0.5%(重量/容積)トリパンブルー溶液による排除法を使用して、生きている細胞の割合を決定した。死んだ細胞を同定するために、0.2%トリパンブルー溶液を、1:1の混合割合で細胞懸濁液に加え、注意深く混合し、そして死んだ細胞の数を、100倍の倍率で光学顕微鏡下にNeubauerに従う計数室(深さ0.100mm、血球計)の8つの大きな正方形を計数することにより決定した。全体の細胞の濃度から死んだ細胞の得られる濃度を減じることにより、懸濁液中の生存可能な細胞の濃度を決定する。全体の細胞の濃度に対するそれらの比は、生存率と呼ばれる。この測定原理は、ViCell XZRにおいて自動化された。トリパンブルーと混合することおよび生きている細胞と死んだ細胞との区別は、コントラスト比により達成される。このために、一体化されたカメラは、コンピュータ支援式分析のための対応するイメージを与える。
(2)培地の分析
培地に含有された基質、代謝物および産物濃度は、下記の方法を使用して培養物の無細胞培地上清(10分、200g)から得ることができる。無細胞上清の一時的貯蔵は、−80℃で行う。特記しない限り、すべての測定値および較正は、製造者のインストラクションに従って行われる。
グルコース
培養上清中のグルコースの含有率を評価するために、自動グルコース分析器(EBIO Compact, Eppendorf, Hamburg)を使用した。測定は、カップリングした酵素的電気化学的方法に基づいており、この方法においては、グルコン酸の他に、固定化されたグルコースオキシダーゼにより放出される過酸化水素を、Pt/AgCl/Ag電極で電流測定により測定する。過酸化水素の酸素への酸化から生じる電極電流は、過酸化水素濃度に正比例しており、したがってサンプルのグルコース濃度に正比例している。
ラクテート
ラクテートも、分析器(Yellow Springs Instruments, Ohio, USA)において電気−酵素的原理に従って定量される。固定化された乳酸オキシダーゼによって、ラクテートを反応させてピルベートと過酸化水素にする。過酸化水素は、グルコース定量におけると同じく定量することができる。
グルタミンおよびグルタメート
グルタミンおよびグルタメートの同時の定量は、異なるセンサ上の2つの固定化された酵素を使用する、グルコース定量に記載の原理に従って行われる。グルタミン酸オキシダーゼは、アンモニアの除去を伴うα−ケトグルタレートと過酸化水素を生じさせる、グルタメートと酸素の反応を触媒する。グルタミンセンサにおいて、グルタミナーゼは、最初にグルタメートの形成を行い、グルタメートを次いで同様に反応させる。かくして、グルタミンセンサは、溶液中の遊離グルタメートも検出し、これは分析器により計算に入れられている。
重量モル浸透圧濃度
重量モル浸透圧濃度は、溶媒の測定単位当たりの溶解した粒子の数の目安である。定義にしたがって、脱イオン水は、通常の条件下に0℃で凝固する。1.858Kの凝固点の関連した降下は、1osmol/kgの重量モル浸透圧濃度に相当する。凝固点浸透圧計を使用する重量モル浸透圧濃度の測定は、サンプルを−7℃に冷却することで開始する。氷点以下に冷却された溶液の結晶化は、種結晶によって誘導されそして生成した熱の量は凝固点に達するまで測定される。純粋な溶媒水に対するこの差はサンプルの重量モル浸透圧濃度に正比例している。
アミノ酸
培養上清中の遊離アミノ酸の濃度は、逆相HPLC(High Performance/Pressure Liquid Chromatography)(Buntemeyer,1988)により決定された。分析を行うために、2つの高圧ポンプ(Model 420)、自動サンプリング(Model 460)ならびに蛍光検出器(Model SFM 25)およびコンピュータ支援式評価ユニット(KromaSystem 2000,version 1.60)を有する完全自動化HPLCシステムD450(Kontron Instruments Echingen)を使用した。分離は、固定相としてオクタデシルシリケートを有するRP18カラム(Ultrasphere ODS, 150mm×4.6mm、粒子サイズ5μm、Beckman, Munich)を使用して行われた。これに加えて、滞留時間を増加させるために更なるRP18カラム(Hypersil ODS, 10mm×4.6mm、粒子サイズ10μm、Techlab, Erkerode)を前置した。分離の前に、オルトフタルジアルデヒド(OPA)(Sigma, Deisenhofen)によるアミノ酸の誘導体化を行った(Lim, 1987; Beuntemeyer, 1991)。アミノ酸の第一級アミノ基は、アルカリ培地(pH>9)中でOPAおよび3−メルカプトプロピオン酸と反応して、蛍光イソインドール誘導体となる(図2.1)。検出は、340nmの波長の光で励起した後450nmの発光波長で行われた。
無細胞培養上清(500μl)をトリクロロ酢酸(100μl、36%w/v)と混合しそして沈殿したタンパク質を沈降させた(10分、15000g)。中間相を回収し(250μl)そして中和した(12.5μl NaOH 1M)。このストック溶液を、ホウ酸ナトリウムバッファー(0.4m、pH9.5)による適当な予備希釈およびアルカリ化における誘導体化に加え、その際イソインドール誘導体の不安定性により、誘導体化は、サンプルに誘導体化試薬(1mlメタノール中の50mgOPA、3−メルカプトプロピオン酸100μlおよび0.6Mホウ酸ナトリウムバッファー9ml、pH10.4)を自動添加することによりHPLC分離のほんの直前に行われた。アミノ酸誘導体のHPLC分離のために使用される勾配(Beuntemeyer, 1991)は、より極性(99%v/v 0.1m酢酸ナトリウム pH7.5、1%v/vテトラヒドロフラン)からより非極性のバッファー(30%0.085M酢酸ナトリウムpH5.2、70%メタノール)まで及んだが、これは、システインおよびプロリンを除いてすべてのアミノ酸を定量することを可能とした。第二級アミンとしてのプロリンは反応を示さず、そしてシステインは、OPAと共に非蛍光誘導体を形成する。
(3)MUC1−IgG2aELISA
この研究で培養されたCHO−MUC1細胞系により産生されたMUC1−IgG2a抗体は、そのH鎖がy型でありそしてそのサブクラスが2aであるマウス免疫グロブリンG(IgG)の代表的なものである。それは、N末端でMUC1に結合しており、それによりこの抗体の分子の検出は融合したMUC1の分子の検出を常に含む。不完全に翻訳された産物の検出を防止するために、80%より多くの細胞生存率のみを考慮した。培養上清におけるMUC1−IgG2aの定量的評価をELISAにより行った。
MUC1−IgG融合タンパク質の定量を、Link(2003)(Paker, 1990; Link, 2003)による研究に従って行った。ELISAによるMUC1−IgG定量のための吸着固体相として96ウエルイムノプレート(F96 Maxisorp, Nunc, Wiesbaden)を使用した。固体相に吸着された補足抗体は、マウスIgGに対してヤギの免疫化により得られた市販のヤギ抗マウスIgG(M-8642, Sigma, Deisenhofen)であった。供給された抗体(1mg)をPBS(25ml、最終40μgmL−1)に溶解し、アリクォートを採取し(1mL)そして−20℃で貯蔵した。使用の前に、それをPBS中で3μgmL−1に希釈した。MUC1−IgG2aおよびMUC1−IgG2a標準に関して定量されるべき上清を決定可能な抗原として使用した。標準を ELISAで使用する前に希釈バッファーにおいて1μgmL−1に予備希釈した。
基質反応性酵素としてアルカリホスファターゼ(AP)を有しそしてマウスIgGの重y鎖に特異的に結合する捕捉抗体(A-5143, Sigma, Deisenhofen)のアルカリホスファターゼコンジュゲートヤギ抗マウスIgG APを酵素標識された抗体として使用した。それを4℃で貯蔵した。アルカリホスファターゼにより、基質p−ニトロフェノールホスフェート(pNPP, N-2770, Sigma, Deisenhofen)を反応させて黄色p−ニトロフェノールとし、これを測光法により決定した。得られる染色の吸光度を、分光光度法分析器(405nm, Wallac Victor2, Perkin Elmer Life Sciences, Bad Wildbach)を使用して評価した。
Maxisorpイムノプレートを捕捉抗体ヤギ抗マウスIgGでコーティングするために、これをマイクロタイタープレートのウエルの各々にピペットで移した(100μL/ウエル)。次いで、閉じた試験プレートをインキュベーションし(4℃、14時間)、そして迅速にマイクロプレートを逆さまにしてそしてそれをスラッピングすることによりバッファーを除去した後、それを洗浄バッファーですすぎ(10回)そしてタッピングにより乾燥させた(tapped dry)。捕捉抗体の非特異的結合部位をブロックするために、ブロッキングバッファーを各ウエルに加え(200μl/ウエル)そして覆われたプレートをインキュベーションした(37℃、2時間)。次いでプレートを洗浄バッファーで洗浄し(3回)そしてタッピングによりそれを乾燥させた。
分析されるべき無細胞培養サンプルを最初に遠心し(15000g、3分)、そして得られる上清を更なる分析のために産物含有サンプルとして使用した。カラー反応の評価のための標準およびサンプルから生じる比較できる結果を得るために、希釈バッファーによる適当な予備希釈を行なって、産物濃度に関する結論を可能とした。希釈バッファー中に含有されているBSAは、非特異的結合部位のための中和剤として働いた。それぞれ、サンプル(カラム3〜12)および標準(カラム1および2)の二重の測定のために、A1〜H12に分割された予備希釈プレート(96ウエル、Nunc, Wiesbaden)の列Hに、280μL/ウエルをピペットで移した。次いで各々が希釈バッファー140μLを含有した下記の列のウエルに140μL/ステップを移すことにより一歩一歩1:2希釈を行った。
コーティングされた試験プレートのウエルに、予備希釈されたサンプルおよび標準100μLをローディングし、希釈は予備希釈プレートと同様に各列とともに増加させ、そして覆われたプレートをインキュベーションした(37℃、1時間)。
ブランクサンプルに対して分光計を釣り合わせるために、2つのウエル(下部右)を希釈バッファーのみで処理した。次いで、それをスラッピングした後、プレートを洗浄バッファーですすぎ(10回)そしてプレートをタッピングによりそれを乾燥した。次の工程において、酵素標識されたヤギ抗マウスIgG AP抗体をまず1:1000の割合で希釈バッファー中に取り込み、次いで試験プレートのウエルにピペットで移した(100μL/ウエル)。もう一度インキュベーションを行い(37℃、1時間)、次いで試験プレートを、スラッピングにより残留バッファーを除去した後洗浄バッファーで洗浄した(10回)。基質pNPPは光に感受性であるので、すべてのその後の工程は、暗所で素早く継続して行った。抗体結合したアルカリホスファターゼによる黄色産物へのp−ニトロフェニルホスフェートの反応は、基質を試験プレートの各ウエル(100μL)に加えることにより誘導された。反応した標準を有するウエルにおいて強い黄色染色(0.7〜0.8の吸光度)が観察されるまで、プレートを暗所でインキュベーションした(室温、10〜30分)。染色の評価を405nmで分光測光により行った。
(4)hGM−CSF ELISA
競合ELISA(Bollati Fogolin, 2002)を使用してサイトカインhGM−CSFを検出した。ELISAによるhGM−CSFの定量のための吸着固相として96ウエルのイムノプレート(F96 Maxisorp, Nunc, Wiesbaden)を使用した。市販のE. coliからのリコンビナント非グリコシル化HGM−CSF(Leucomax, 有効成分:モルグラモスチム、Schering-Plough corporation Kenilworth,NJ, USA)を、Maxisorpプレートをコーティングするためにおよび濃度標準として使用した。Ms. Bollati Fogolinにより親切に提供されたモノクローナルマウス抗GM−CSF抗体(M7E10)(Etcheverrigaray, 1998)を一次抗体として使用した。この抗体は、タンパク質のグリコシル化状態とは無関係にアクセス可能なhGM−CSFドメインに対して指向されている。酵素標識された抗体は、基質反応性酵素としてセイヨウワサビペルオキシダーゼを有しそしてマウスIgG一次抗体のFabフラグメントに特異的に結合するペルオキシダーゼコンジュゲートヤギ抗マウスIgG−HRP(Dianova 115-035-072, 0.8mgmL−1)であった。酵素反応が停止した後セイヨウワサビペルオキシダーゼにより橙色最終産物となるように、基質1,2−フェニレンジアミン二塩酸塩(OPD, Fluka)を反応させた。光度測定法により吸光度を評価した。得られる染色の吸光度を分光光度法分析器(492nm,測定時間1秒/ウエル、Wallac Vector2, Perkin Elmer Life Science, Bad Wildbach)において読み取った。
醗酵上清からのグルコシル化hGM−CSFに対する競合体としてE.coliからのhGM−CSFでMaxisorpイムノプレートをコーティングするために、E.coliからのhGM−CSFをマイクロタイタープレートの各ウエルにピペットで注入した(ウエルあたり100μlコーティングバッファー中の16.5ng)。次いで、閉じた試験プレートを水蒸気で飽和した雰囲気中でインキュベーションし(37℃、1時間、次いで4℃、14時間)、そしてスラッピングにより残留バッファーを除去し、洗浄バッファーですすぎ(10回)そしてタッピングによりそれを乾燥させた。標準曲線を決定するために、200〜0.195ngmL−1の範囲でグリコシル化されていないhGM−CSF標準の希釈を、希釈バッファーにより行った。培養上清からのサンプルも希釈バッファーで逐次的に1:2希釈しそしてコーティングされたマイクロタイタープレートのウエルに調製された標準と共にピペットで注入した(100μl/ウエル)。プレーンな希釈バッファーを、hGM−CSF含有標準または培養上清の競合なしの完全な結合のためのコントロールとして使用する。次いで、一次抗体M7E10(希釈バッファー中の1:100000、100μl/ウエル)を、サンプルおよび標準をローディングされたプレートのウエルに加え、そしてそれをインキュベーションした(37℃、1時間)。溶液を除去しそしてプレートを洗浄バッファーで洗浄した(7回)後、コンジュゲート抗体(希釈バッファー中の1:5000、100μl/ウエル)とのインキュベーションを行った(37℃、1時間)。プレートを洗浄した(7回)後、調製したばかりの染料溶液を加えることにより酵素反応を開始した。15分のインキュベーションの後、停止溶液(50μl/ウエル)を加えることにより反応を停止させ、そして492nmの波長で得られる吸光度を評価した(1sあたり)。
(5)フローサイトメトリー細胞分析
対応して調製されたサンプルを、FACSCalibur Caliburフローサイトメーター(Beckman Dickinson,San Jose, CA, USA)およびCellQuestソフトウエアバージョン3.3(両方ともBeckman Dickinson,San Jose, CA, USA)を使用して測定した。G4Apple MacintoshコンピュータでCellQuest 3.3、ModfitおよびFCSassist 1.0を使用して、データのオフライン分析を行った。
細胞周期相分布
個々の細胞期(G1、S、G2、M)を決定するために、単一細胞懸濁液の形態にある培養サンプルを上清から分離し(200g、7分)そして氷冷PBS中で2回洗浄した(200g、7分)。得られるペレットを激しい攪拌下に80%(v/v)メタノール(ハイグレード、Merck)の混合物(−20℃)中に一適ずつ再懸濁させそしてインキュベーションした(4℃、2時間〜2カ月)。次いで、細胞をペレット化し(200g、7分)、次いで、それらをPBS中の0.1%(w/v)サポニン(Roth)の混合物中に再懸濁させそして2回洗浄した(200g、7分)。1mL染料溶液(0.1%w/vサポニン、1gmL−1RNase S(Sigma), 0.02mgmLヨウ化プロピジウム(Sigma))中の4×10細胞の再懸濁およびインキュベーション(室温、30分)は、ピンクに染色した細胞ペレットをもたらした。最初に、RNAの酵素による分解を、氷上に保存することにより停止させ、次いで、染色した細胞をフローサイトメトリーに付した。測定を、製造者のインストラクションおよびフローサイトメトリーに関する適切な文献のプロトコール(Melamed, 1990; Givan, 1992; Shapiro, 1994; BD-Biosciences 2000)に従って行った。
細胞内pH値
動物細胞の細胞内pH値(pH)は、種々の細胞機能に関係している。細胞増殖、代謝およびタンパク質産生における改変ならびに酵素活性、輸送機構、増殖誘導および維持エネルギー要求における改変は、pHの分散を伴う(Madshus, 1988; Grinstein, 1989)。したがって、pHのコントロールは、細胞にとって基本的生物学的に重要である。細胞における多くの生物学的重要なマクロ分子の等電点は、pH7の生理学的値の付近にあり、それによりプロトン濃度の比較的小さな改変は、タンパク質および核酸のコンフォメーションおよび相互作用に対して大きな効果を有することができる。細胞質ゾルの酸性化を防止するために、Hプロトンを細胞から直接除去するかまたは炭酸水素イオンHCO を、細胞質ゾル中のプロトンを中和するために細胞に導入する。このpHコントロールのために、種々の機構が動物細胞において利用可能である(Madshus, 1988; Reusch, 1995):Na/H交換体、Na依存性および非依存性Cl/HCO 対向輸送体、Na/HCO 共輸送体、HトランスロケーティングATPアーゼ(プロトンポンプ)。
動物細胞培養において、6.6〜7.4の範囲にある外側pH(pH)と対照的に、上記した機構は、細胞は、0.1〜0.5pH単位だけ外側値から逸脱する内部pH値を能動的に維持することができることを可能とする。細胞小器官は、それらの生物学的機能を達成するために特有のpH値を有する。更に、翻訳後のタンパク質ソーティングおよびプロセシングのために、鋭敏にコントロールされたpH勾配が重要である。この細胞内コントロールの機能不全は、培養培地における有機酸および塩基、例えばラクテート、アンモニウムまたはCOの蓄積により、細胞培養において起こりうる。pHと細胞周期相との相関も記載されている。かくして、一般に、細胞が細胞周期の代謝的に活性な相にあるならば(それぞれ、Sおよび/またはG2相)、よりアルカリ性のpH値が細胞質ゾルにおいて測定される(Welsh and Al-Rubeai, 1996)。
細胞内pH値は、細胞内において刺激されるpH感受性蛍光染料を使用してフローサイトメトリーにより決定されうる。しばしばカルボキシセミナフトローダフルオルアセトキシメチルエステルまたは単にカルボキシ−SNARF−1−AMと呼ばれ、以下においてSNARF−1と呼ばれる、本発明で使用される蛍光染料、5’(および6’)−カルボキシ−10−ジメチルアミノ−3−ヒドロキシスピロ[7H−ベンゾ[c]キサンテン−7,1’(3’H)−イソベンゾフラン]−3'オンは、37℃で7.3〜7.4のpKa値を有する弱酸であり、そして488nmの波長の光で励起されると、異なる波長の2つの蛍光シグナル極大を示す(FL2: 580nm, FL3: 640nm, 図3〜7)(C-1270, Molecular Probes)。これらの発光極大の相対的相関は、pH依存性シフトを示し、したがって、細胞において励起された染料の量とは独立にpHを測定することを可能とする。
アセトキシメチル誘導体であるので、この蛍光染料は、細胞膜依存性であり、そして非特異的エステラーゼにより細胞質ゾルにおいて加水分解される。この遊離形態発蛍光団は細胞に残留しそして細胞において発光のために励起されうる。細胞内pH値を決定するために、既知のpH値の推測により較正曲線を確立しなければならない。それは、測定されるべきサンプルが由来する同じ細胞母集団に基づかなければならない(Owen, 1991; Owen, Carango et al. 1992)。これに関して、サンプルの調製期間中の反応器条件の維持および較正方法の選択は、代表的なpH値を得るために等しく重要である(Cherlet, Franck et al., 1999; Bond and Varley, 20058; Jockwer, Gaetgens et al, 2005)。
本発明においては、細胞に既知の混合比で弱酸および塩基を加えることにより定常pHiの偏りに基づく擬ゼロ点較正法(pseudo zero-point calibration method)を使用して、細胞内pH値を較正した。これにしたがえば、得られる蛍光比は新しいpHiを反映する。もしも弱酸と弱塩基の混合物のモル濃度が十分に高いならば、同じ混合物の更なる添加は、蛍光比またはpHを変化させず、それにより偏ったpHは、式3−3を満足する新しい擬ゼロ点を表す。弱酸対弱塩基の異なるモル比の濃厚な混合物がpH感受性蛍光染料をローディングされた細胞に加えられるならば、得られる蛍光比に対して擬ゼロpHをプロットすることにより較正曲線を確立することが可能である。この較正法は、フローサイトメトリーにより再現されることができ、そして実行のために少ない時間しか必要とせず、それは細胞内K濃度に依存せず、したがって、醗酵プロセスの過程において分析のために適当である。
バイオリアクター(圧力ブランケッティングを有する)および溶解したガスの規定された組成を有する培養からの代表的サンプリングのために、本発明の結果である特定のサンプリング(Jockwer, Gaetgens et al., 2005)が開発された。pCO、圧力、pHおよび温度などの染料吸収の期間中pHに関係するパラメーターを、この装置に入力し、それにより細胞サンプルは再現可能な反応器条件下に染色される。かくして、上記方法で測定されたpHは、慣用の方法よりも良好なバイオリアクターにおける真の条件を表す。染色されたサンプルと共に、同じ母集団の染色されていないサンプルを、同一条件下のコントロールとして研究した。
溶液およびバッファー
Figure 0005487124
Figure 0005487124
開発されたサンプリング装置(Jocker, Gaetgens et al, 2005)によって適切な培養システムからのサンプリングの前に、6倍濃縮された擬ゼロ較正溶液(表3〜1)をフローサイトメーターの測定タンク(各200μL)に入れ、タンクを気密方式で密閉しそして冷所(4℃)に貯蔵した。最も高いおよび最も低い酸対塩基の混合比の2つの較正溶液を、フローサイトメーターの測定範囲の調節のために各2回調製した。決定されるべきサンプルについて、3つの測定タンクを同じ方法でHDFBS(200μl/タンク)で処理した。培養培地からサンプルを採集する前に、蛍光染料22μLを予備インキュベーションされたサンプリング装置(37℃)に入れた。無エステラーゼ培養培地における細胞の染色を、等圧および気密サンプリング期間中細胞懸濁液を混合することにより開始し、そして攪拌下に暗所で続けた(適切な反応器圧、25分、37℃)。15分のインキュベーションの後、較正溶液および測定溶液の温度を、まだ密封されそして気密な状態で、反応温度に調節する(水浴、37℃)。反応条件下の蛍光染料と細胞のインキュベーションが終わると、細胞を直ちに圧力コントロールおよび溶解したガス分析(Compact 3,Roche Diagnostics GmbH)に付し、次いで対応する測定溶液および較正溶液(各200μL)中に懸濁させて、10秒後にフローサイトメータ(FACSCalibur, Becton Dickinson)において測定する。この目的で、先ず最初に、決定されるべきサンプルの反復決定を測定バッファー(HDFBS)により行い、次いで染色された細胞のみを対応する測定バッファーにおいて逐次に測定する。各サンプルのpH値をこのサンプルのフローサイトメトリー測定の直後に測定する(Compact3, Roche Diagnostics GmbH)。
サンプリング装置の開口と染色された細胞および染色されていない細胞の溶解ガス分析との間の時間経過は5秒未満であり、フローサイトメーター測定が終わるまでの時間経過は90秒未満である。蛍光分析と外部pH値の決定との間では15秒が経過する。(圧力維持している)サンプリング装置と組み合わせたこの方法は、代表的pH値を決定することを可能とする(4.2節参照)(Chow, Hedley et al., 1996)。
測定
pH値を決定するための蛍光のフローサイトメトリー測定を、装置(FACSCalibur, Becton Dickinson)、染料(Carboxy-SNARF1-AM, Molecular Probes, Leiden, The Netherlands)について製造者のインストラクションに従っておよび関連する文献(Chow and Hedley, 1997)に従って行う。
各サンプルについて最適化されなければならない基本的設定を下記に列挙する。
●測定ウインドー1:SSC/FSC(散乱光ダイアグラム、スケーリングダブルリニアー(scaling double linear)、トータル細胞母集団)
●測定ウインドー2:カウント(リニアー)/FL2(log)(ヒストグラム)
●測定ウインドー3:カウント(リニアー)/FL3(log)(ヒストグラム)
●測定ウインドー4:カウント(リニアー)/蛍光比(FL2/FL3)
死んだ細胞、凝集および不十分に染色された細胞は、適当な限界値により測定から排除された。使用される測定装置でリアルタイムで測定ウインドー4を実施することが可能ではないので、蛍光比を、プログラムFCSassist(Becton Dickinson)を使用して計算する。プログラムCellQuest3.3(Becton Dickinson)を評価のために使用した。式3−3に従う各誘導されたpH値に対して「平均蛍光強度比」(MFI)をプロットすると、サンプルのpHを計算することを可能とする較正曲線が得られる。
(6)溶解したガス、pH値および依存性パラメーター
製造者のインストラクション(Roche 2003)に従って、溶解したガスCOおよびO、pH値の直接評価および細胞含有培養サンプル(>55μl、37℃)からのハイドロジェンカーボネートの依存性濃度および「トータルCO」の計算のために血液ガス分析器AVL Compact3 (Roche Diagnostics GmbH)を使用する。適当な生理学的サンプルの配置の後に、装置は、上記したパラメーターを自動的に決定する。この目的で、下記のミニチュアー化された電極を適度に調節した測定室に設置する。
●pH参照電極
●pH測定電極
●pO測定電極
●pCO測定電極
直接pCO測定は、pH測定の改変である。イオンを透過させない膜を介して、ガス状COのみを、測定バッファーであってそのpHが溶解したCOにより改変されている測定バッファー中に入れ、測定し、そして増幅の後に、pCO値[mmHg]として示す。それぞれ、[%]pCOおよび/またはpOへの転換は、各サンプル測定のために行われる大気圧の自動的測定の後に別々に行われる。装置に供給される較正ガスおよびバッファー溶液は、規定されたサイクルに従う自動化された較正および清浄化を可能とする。
(D)動物細胞の培養
すべての操作は、遺伝子的に改変された生物の操作のための標準操作規定および指示、安全水準S1、に従って行われた。
(E)バイオリアクター培養
すべての試験を、それぞれ無菌条件下に、1L(Applikon Biotek, Kneullwald)および10L(B. Braun Biotech International, Melsungen)の作用容積を有する市販の攪拌式反応器で行った。すべての測定された値を、測定増幅器およびアナログ−デジタルコーダ(SMP Interface, Siemens)を介してプロセスコンピュータに移しそしてプロセスコントロールソフトウエア LabView(National Instruments, USA)を使用して処理しそして記憶させた。下記のプロセスパラメーターは、培養期間全体にわたり両システムにおいて同一でありそして絶えず監視された。
Figure 0005487124
一定のガス供給速度による溶解した酸素pOのコントロールされた濃度の維持のための、窒素(N)、酸素(O)および二酸化炭素(CO)のハイグレードガス画分の混合物は、「比方式」と呼ばれる。
(1)プロセスパラメーターの測定
溶解した酸素(pO
異なる水性溶液中の溶解した酸素の濃度のin situ測定を、Clark(Inpro6000, Mettler Toledo, Urdorf, CH)にしたがって酸素電極によって行った。
溶解した二酸化炭素(pCO
異なる水性溶液中のかつ醗酵期間中の溶解した二酸化炭素の濃度のin situ測定を、市販のプローブYSI8500、Yellow Springs Instruments(Yellow Springs, USA)によって行い、および/または無細胞系における比較測定のために、プローブInPro5000、Mettler Toledo(Urdorf,CH)によって行った。両装置とも、ディスプレー方式[%CO]で操作した。これに関して、指示[%]は、較正条件下に設定された標準発酵条件下(37℃)の供給ガス混合物中のCO比[%]と水性培養培地中のCO比[%]との平衡条件を指す。
使用した較正条件およびCOのディスプレー値[%]は、プロセス期間中溶解したCOの平衡濃度の計算を可能とする。この技術分野の他の刊行物におけると同じく、本明細書において用語pCO[%]は、COの「溶解した濃度」および「分圧」に対する同義語として使用されるが、培養培地中の実際に溶解したCOの絶対濃度はそれに基づいて計算されなければならない(Zhangi, Schmelzer et al, 1999; Pattison, Swamy et al., 2000; Schmelzer, de Zengotita et al., 2000)。1%飽和は、約7.5mmHgに相当し、10%は約75mmHgに相当する。
排ガス分析
両プロセスの非水性排気中の酸素および二酸化炭素定量を、排気分析器Xentra4900(Servomex, Hamm)を使用して行う。酸素比は、常磁性的に測定され(0〜100%v/v)、二酸化炭素比は赤外線分光法により測定される(0〜25%v/v)。
pH値は、ゲル電解質を有する単一ロッドpH測定アセンブリ(Applisens, The Netherlands)を使用して測定する。液体電解質を有する慣用のpH電極と対照的に、使用されたpH電極は、オートクレーブ処理後、外部物質によるガラス膜の透過およびそれと関連した電極ドリフトを相当減少させる内圧を示す。設置および滅菌の前に、pH電極を、製造者のインストラクションに従って37℃で2つの規定されたpH値(pH4.00およびpH6.96)に対して較正する。発酵を開始する前に、血液ガス分析器による外部比較測定により正しい操作性を確実にした(Chapter 3.3.4)。培養容器のカバーに設置された2つの予備加圧されたゲル充填電極によってプロセス過圧を測定する(B. Brawn International, Melsungen; Bioengineering AG, Wald, CH)。培養容器における温度を、プローブ環に設置された反応器製造者のPT100抵抗温度計によってすべての操作段階で測定する。
(F)数学的方法
培養および発酵について、増殖および代謝速度の説明を可能とするパラメーターを分析方法により決定する。微生物系と対照的に動物細胞培養においては細胞密度が示される。一般に、乾燥バイオマスは興味がない。
生存率は、トータル細胞密度ZDGに対する生存可能な細胞密度ZDLの比を表す。
Figure 0005487124
本発明で決定されるすべての細胞密度依存性の値は、生存可能な細胞数ZDLを指す。代謝への非生存可能細胞の寄与は実質的ではないということを仮定することができる。生存率は、培養の状態に関する測定値である。増殖速度WTRは、1回間隔で起こる分裂の数を示す。
Figure 0005487124

WTR=細胞分裂速度h−1
n=時間t〜tの期間の分裂工程の数
t=時間、h
細胞数増加は下記のとおり分裂工程の数に基づいて計算される。
Figure 0005487124

N=細胞の数、細胞の総数、または生存可能な細胞の数
n=分裂工程の数
nについて解き、そして式3〜8に代入すると、増殖速度の式は次のようになる:
Figure 0005487124
比増殖速度μは、増殖速度を生存可能細胞密度と相関させることにより計算される。
Figure 0005487124

μ=比増殖速度、h−1
ZDL=細胞密度、生存可能な、細胞mL−1
t=時間、h
生存可能な細胞の数の増加については、下記式が成り立つ:
Figure 0005487124
ゆえに、μについては、下記式が成り立つ:
Figure 0005487124
特異的基質消費速度(specific substrate consumption rates)は、不連続法について容易に計算されうる。流加バッチ法における脈動式供給(ボラス)については、同じ相関を使用することができる。何故ならば、供給の期間(本発明の実験では<15s)、したがって、この時間の期間中培養された細胞による基質消費は、ゼロに向かって減少するからである。しかしながら、供給することから生じる基質、代謝物および発酵容積の任意の改変を含むことおよびそれらを数学的に調節することが必要である。(細胞)特異的消費速度((Cell-)specific consumption rates)および細胞特異的形成速度((Cell-)specific formation rates)は、しばしば異なる方法の比較を可能とする唯一のファクターである。
下記式が成り立つ:
Figure 0005487124
qS=比基質消費速度、モル細胞−1−1
S=基質濃度、モルL−1
t=時間、h
ZDL=細胞密度、生存可能な、細胞/mL
時間Δt(t−t)の期間における平均細胞数は、2つのサンプリング点間の時間間隔が十分に長いならば、対数平均により決定される:
Figure 0005487124
式3−14の考慮下に式3−13を積分すると、
Figure 0005487124
が得られる。
比産物形成速度は、基質消費速度と同様に計算される:
Figure 0005487124

SPR=qPRO=比産物形成速度、g細胞−1・h−1
PRO=産物濃度、gL−1
収率係数
基質の消費速度と産物の形成速度との相関は、収率係数Yにより示される。
Figure 0005487124

Y(AB)=Bと相関しているAについての収率係数
qA=物質Aについての細胞特異的速度、モル細胞−1・h−1
qB=物質Bの細胞特異的速度、モル細胞−1・h−1
ケモスタット
連続法では、反応器への容積流量は、反応器からの容積流量に等しい。ケモスタット法においては、抜き出された容積流における細胞サイズ分布は、反応器における細胞サイズ分布に相当する。培養容積は一定である。速度を計算するとき、流速Dを考慮しなければならない。
Figure 0005487124

D=流速、h−1
F=流量、Lh−1
=培養容積、L
反応器中の容積エレメントの平均保持時間は、保持時間τとして定義される。
Figure 0005487124

τ=保持時間、h
ゆえに、流速は、保持時間の逆数である。
結果として、ケモスタットでは、平衡において、増殖速度は流速により調節可能であるということが当てはまり、μ=Dが成り立つ。
一定の培養容積を有する連続システムにおける基質消費に関して、
Figure 0005487124

Si=培養物における基質濃度、モルL−1
So=供給物における基質濃度、モルL−1
Qs=容積消費速度、モルL−1
が成り立ち、その結果として、
Figure 0005487124
比基質消費速度を計算するために、対数平均の形態にある細胞の数は計算において更に含まれる。
Figure 0005487124
qS=比基質消費速度、モル細胞−1・h−1
1,2=t1,2における基質消費、モルL−1
特異的生産性(specific productivity)は、基質消費速度と同様に計算される:
Figure 0005487124
qPRO=比産物形成速度、g細胞−1・h−1
PRO1,2=t1,2における産物濃度、gL−1
連続法における瞬間的空間−時間収率を下記の通りに計算する:
Figure 0005487124

RZA=空間時間収率、gL−1d−1
酸素取り込み速度OUR
動物細胞培養の相対的に低い増殖速度、培養にガス供給するための本発明で使用される高い容積流量および溶解した酸素のための開発されたPIDコントローラの高いコントロール性能により、酸素釣り合いのための平衡条件を仮定することが可能である(Frahm, Blank et al., 2002)。したがって、酸素取り込みOURは、ガス相から液相への移動についての酸素移動速度OTRに等化させることができ、そして式3−25から得られる。
Figure 0005487124
溶解した酸素および溶解した二酸化炭素の濃度ならびにガス供給混合物の酸素および二酸化炭素濃度は、それぞれ、コントロール変数および補正変数であり、そしてプロセスコントロールシステムによりレジスターされる。容積関連酸素移動係数は、実験により適切なプロセス条件についてより早く決定された。
二酸化炭素発生速度CER
培養培地中のコントロールされたpCO値および同時のpHコントロールにより、COは培養培地中に蓄積されない。したがって、釣合は、溶解した酸素釣合と同様に確立されうる(Frahm, Blank et al., 2002)。
Figure 0005487124
呼吸商RQ
細胞特異的二酸化炭素発生速度qCERの細胞特異的酸素取り込み速度qOURとの相関は、呼吸商RQと呼ばれる。
Figure 0005487124

RQ =呼吸商
qCER=細胞特異的二酸化炭素発生速度、モル細胞−1−1
qOUR=細胞特異的酸素取り込み速度、モル細胞−1−1
実施例2
pCO関連プロセスパラメーターの最適化
工業的細胞発酵装置において、攪拌式反応器の異なる反応器高さにより底部領域(充填点/レベル3.5m)において350ミリバールまでの静水圧がある。無菌性の理由で、発酵槽は、更に、300ミリバールまでの過圧を伴う圧力ブランケッティングに付され、それにより、10m作用容積の産生発酵槽において、650ミリバールまでのトータル過圧が底部領域で起こりうる。この過圧で、細胞により産生されるCOは、培地中に蓄積し、そしてもしも溶解した二酸化炭素放出がガス供給により最適化されていないならば、高密度発酵による抑制レベルに達することがありうる。
動物細胞が関与するバイオプロセスで、生産規模のシミュレーションのためおよび関与したパラメーター圧力および溶解した二酸化炭素の含有率−pCOと同義である−のカップリングされていない分析のために、コントローラシステムが、溶解した酸素の濃度pOと同様に確立された。これに関して、培地中の溶解した二酸化炭素の含有率のコントロールは、異なる圧力下に可能であるべきであり、pCOコントロールシステムの補正変数はバイオリアクターに移行させることができる。かくして、ガス供給速度、攪拌速度および培養培地は、工業的パラメーターに基づいていた。
(A)培養培地における溶解した二酸化炭素の含有率のコントロール
(1)pCO コントロールの設定および方法
標準手段にしたがって、使用された反応システムは、水中で作動可能な比ガス供給(submersible ratio gassing)を備えている。pCOコントロールのために、それらのCO質量流量コントローラ(MFC, Type Brocks 5850 E CO2, 0〜5L・h−1)が、プロセスコントロールシステムLabView(Texas Instruments)において設けられた(implemented)PIDコントローラにより作動された。更に、10L攪拌式反応器によってのみ、N質量流量コントローラ(Brooks 5850 TR N2O-15 L・h−1 )が、ガス供給区域に設置され、それによりpCO飽和のためのガス供給容積流速は、30L・h−1から45L・h−1の最大値まで増加させることができる。培地中のコントロール変数pCOの測定は、不連続的に15秒毎にin situ pCOプローブYSI8500(Yellow Spring Instruments)によって行われた(3、5、3、2章)。
プロセスコントロールシステム(LabYiew, National Instruments, USA)におけるコントロール変数pCOのために設けられたPIDコントローラは、カスケード方式で作動する(図1)。pCO設定値からの正の逸脱の場合には、比ガス供給におけるCO含有率は、コントローラPID1により対応して減少させられる(図1)。完全に密閉されたCOMFCにもかかわらず、コントローラPID1が、正の逸脱の場合に(例えば、細胞の産生したCOにより)pCO設定値を首尾良くコントロールしないならば、カスケード式コントローラPID2が追加のN質量流量コントローラを作動させそして多くても15L・h−1だけガス供給のトータル容積流速を適切に増加させる(図1)。
ゆえに、本明細書に記載されたpCOコントローラは、溶解した二酸化炭素の濃度の設定値のコントロールのために適当である。このpCOコントローラによって、全体の培養プロセス期間中規定されたpCO値を調節しそして培養された細胞に対するそれらの効果を分析することが今や可能である。ヘンリーの法則にしたがえば、液体中のガスの溶解度は、上のガス相中のその分圧に比例する。コントローラにより、培地中のCOの蓄積は、供給空気中のCO比を増加させることにより可能である。培養期間が進行しそして反応器中の細胞密度が増加するとともに、細胞により産生されたCOの比は培地において増加する。結果として、コントローラは、供給空気中のCO比をコントローラによって減少させることにより反応する。培養された細胞の容積二酸化炭素発生速度(CER)が非常に高くて、供給空気中のCO比のゼロまで降下する完全な減少によって、pCOのコントロール変数がもはや目標に到達できないならば、カスケード式コントローラが、ガス供給のトータル容積流量を増加させ、したがって液相からガス相へのCOの移動を増加させる。
(2)pCO およびpO コントロールのコントロール性能
COの改良された放出のための供給空気中の窒素の添加による増加したガス容積流量は、酸素コントロールに対する妨害変数として効果を現す。下記に示された設定値のコントロールによって、pOコントロールと共にpCOコントロールの適性が、1Lおよび10L容積の両方において分析された。異なる滴定剤を使用したコントローラのpHコントローラとの相互作用を下記に説明する。
コントローラ設定値の最初のパラメーターは、ZieglerおよびNichols(Rake, 1993)による推奨にしたがって決定された。この目的で、両コントロールシステムのPIDコントローラは、簡単なPコントローラ(ホールドバック時間Tv=0、リセット時間T=∞)として構成された。それぞれのコントロールシステムのクリティカルなシステム強化までの比例領域Xpの変化は、Xp,crit−をもたらす。Xp,crit−による振動をコントロールする期間は、時間Tcrit−に相当する。
Figure 0005487124
両コントロールシステムの設定値(表2)の適切なコントロールによって、動物細胞の発酵で使用するためのコントロールの品質は最適化された。両コントロールシステムは、最小初期振動時間およびコントロール偏差と互いに独立に作用する。増加したCO放出による溶解した酸素のコントロールに対する増加した容積流量の効果を最小にすることが可能であった(図4〜2および図4〜3)。
Figure 0005487124
低い過圧(50ミリバール)を伴うプロセスにおける設定値分散(培養条件下にその方式で起こらない)の場合における溶解した酸素の絶対コントロール偏差は2%未満である。同様に、溶解した二酸化炭素比のコントロール偏差は、絶対値5〜10%の設定値分散を伴う<1%(絶対)であり、これは発酵プロセスにおいては格別である(図2)。工業的産生装置における高い充填レベル、したがって液相におけるCOおよびOのこのようにして増加した溶解度のシミュレーションのための圧力ブランケッティング(750ミリバール)を伴う反応器の場合にも、実行されたコントロールの品質は、動物細胞培養プロセスのために十分である(図3)。
表3に従って行われた設定値コントロールにより、トータル容積流量を溶解したCOの放出のために増加させる(図3)ならば、溶解した酸素値だけは設定値(<4%絶対値)を一時的に超えた。<1%絶対値の偏差を伴うpCOのコントロールは非常に正確であった。pCOの設定値の時間のかかるコントロールにより、規定されたプロフィルを産生発酵から小規模へと再現することが可能であった。
下記において、本明細書で記載のpCOおよびpCOコントローラは、これらのプロセスパラメーターに関して大規模発酵槽を再現することができるために実行された過圧コントローラと組み合わせて脱カップリングされたコントロールのために最適化された。
(B)過圧コントローラ
工業的産生規模からの種々の静水圧条件のシミュレーションのために、1000ミリバール過圧までの圧力コントロールシステムが、本発明において使用された鋼製容器を有する攪拌式反応器のために開発された(10L作用容積、B. Braun, 3・5・2章)。この反応器は、pCO、pOおよびpH値のためのコントローラとは独立に規定された設定値をコントロールすることを意味した。
(1)設定および機能性
発酵槽の排気ラインの非無菌側に、圧力コントロール弁(Brooks pressure controller, Model 5866 Series, 0〜68L・h−1)を取り付けた。開き幅は、プロセスコントロールシステム(LabView)における開発されたPID圧力コントローラのための作動変数であった。コントロール変数は、ゲル充填された圧力センサによって反応器蓋の内側で測定されそしてプロセスコントロールシステムに移された。閉じた圧力コントロール弁での低いガス供給速度による圧力の遅い増加と対照的に、圧力コントロール弁の小さな開き幅によってすら圧力の急速な減少により、必要とする許容範囲内にコントロールプロセスをコントロールすることが可能ではなかった。ゆえに、更に、膜弁を排気分析器の方向において排気ラインの下流に設置したが、その弁位置は手動で予備設定することができた(図4)。
上記方式で開発された、即ち追加の膜弁を有する構成は、下記の利点を有する:
●安全余裕:操作期間中圧力コントロール弁の破損の場合に調節可能な最小圧力の維持
●圧力コントロール弁の最適以下の流速にもかかわらずコントロールプロセスの十分な慣性(最大可能な弁スループット68L・h−1、最大ガス供給速度45L・h−1
pCOコントロールのために必要な可変ガス供給速度により、膜弁だけの設置および膜弁だけによる圧力の手動調節は可能ではなかった。
(2)過圧コントロールの品質コントロール
コントロール最適化を、Ziegler and Nichols (Rake, 1993)に従って行った。pCO設定値プロフィルの同時的コントロールによる静的設定値の過圧コントロールの操作能力は、更に設定値の自動化されたプロセス時間依存性コントロールにより補充された。これは、例えば大容積産生発酵槽において一般的な混合物プロフィルのシミュレーションのための規定された過圧プロフィルの発生を可能とした。部分的に数分の混合時間により、これらの反応器における混合プロフィルは、均質に混合された反応器のモデルから逸脱しており、それに応じて、静水圧プロフィルにおける懸濁した細胞の種々の空間位置から逸脱している。図5は、産生発酵槽の圧力プロフィルに基づく10L攪拌容器における時間依存性圧力プロフィルの例を示す。同時にpCO設定値の動的コントロールが示され、これは調節された圧力プロフィルとは独立に行うことができる。
プロセス時間t=20時間とt=26時間との間の反応器過圧pの間欠的設定値のコントロールは、溶解した二酸化炭素濃度(<1%絶対)の設定値(各々750ミリバールで30分および450ミリバールで1時間)のコントロールに対する有意な効果を及ぼすことなく高品質のコントロール(±30ミリバール)を示す(図5)。これは、圧力の増加の場合にCOの増加する溶解度を考慮すると、特に重要である。同様に、pCO設定値の変化は、例えば発酵槽培地中のpCO比を窒素流量の増加により減少させるために、発酵槽へのトータルガス容積流量が50%増加したにもかかわらず、プロセスの経過中過圧のコントロールの品質のいかなる変化も示さない(図5)。1000ミリバールまでの過圧で1.5〜25%pCOの設定値をこの構成において調節および補正することができた。
酸素、圧力およびpCOを、互いに独立にかつ高品質のコントロールでコントロールすることが可能であることが示された。攪拌器の一定の低い回転速度にもかかわらず、動物細胞培養への酸素の入り込みは十分である。設定値の適切なコントロールにより、COの濃縮のシミュレーションがプロセスの経過期間中可能である。高い産生反応器における静水圧効果による圧力の変化のシミュレーションのためのプロフィルも調節することができる。したがって、全体として、考慮される工業的プロセスパラメーターのための現存の要求を動的に実行することができるということが可能である。
(C)pH調節剤
過剰代謝においては、培地培養された細胞系は、有意な量のラクテートおよび他の有機酸を産生し、これは培地中に放出されたCOと共に、プロセスの間培養培地のpH値を下げる。細胞生理学および産物品質(例えば分泌された糖タンパク質の)に対する培地におけるpH値の効果は、十分に検査された。したがって、最適化された方法においては、培地のpH値を培養された細胞懸濁液に種々の塩基を加えることにより、規定された範囲、大抵はpH6.6〜pH7.4に調節する。普通の塩基は、大抵の認可された産生装置におけるCIP(定置洗浄(clean in place))法のために利用可能なNaOHならびに大抵の細胞培養培地におけるバッファー成分であるNaCOおよび/またはNaHCOである。しばしば、COは、出発相における細胞培養法のガス供給空気に混合されて培地のpH値を低下させる。そのようにして、NaHCOを含まない培地に関してすら、ガス供給期間中加えられたCOと水性培養培地間の釣合が形成される。
ヘッド領域を介して強塩基を添加する場合に、大規模産生装置においてpH補正の負の効果が起こりうる。これに関して、数分までの長い混合時間により、滴下部位とpH測定点の間に0.8pH単位までのpH勾配が示されている(Langheinrich and Nienow, 1999)。pHコントローラの設定は、培養容器における細胞密度およびアポトーシスの誘導に対しても大きな効果を有する(Osman, Birch et al., 2001; Osman, Birch et al., 2002)。
(1)無細胞システムに対するpH調節剤の効果
塩基性pH値調節剤NaOHおよびNaCOは、種々のシミュレーションされた細胞培養条件で、しかし同一コントロール設定で比較された(図6および図7)。流加バッチプロセスにおけるCHO細胞系の培養に対するそれらの効果は、下記に記載されている。
バイオスタットESにおける同一のpHコントロール設定で、コントロールされた5%pCOを、バイオスタットにおける水性リン酸塩/炭酸水素塩バッファー混合物において調節した(30 L・h−1、37℃、200rpm、750ミリバール過圧)。結果は、7.28のpH初期値であった。次いで、プロセスコントロールシステムにおける設定値の変化により、5%pCOから15%pCOへのpCOの切替を引き起こしそしてpHコントロールを同時に開始した。この目的で、pH設定値を、NaOH(1M、図6)および/またはNaCO(1M、図7)で7.2に調節した。これらの試験条件は、培地中の細胞により産生されたCOの加速された濃厚化および引き起こされた酸性化に対して向けられる対応する塩基によるpHコントロールをシミュレーションした(図6および図7)。
NaOHを使用するpHコントロールでは、pCO設定値を変えるために2.6時間および26回の投薬が必要であった(図6)。得られる投薬頻度は10h−1である。NaCOを使用するpHコントロールでは、pCO設定時間は60%、1.6時間に減少した.(図7)。NaCOにより追加的に入れられたCOは、pCOコントローラに平行して溶解したCOの再濃縮を引き起こす。NaOHと比較して、投薬頻度(8h−1)は減少する。NaOHの代わりにNaCOの使用による塩基消費の減少の傾向を、図8の累積投薬プロフィルによって例示する。示されたpCO設定値変化について、pHコントロールのために2倍量の1M NaOHが必要である。トータルで、1M NaCO110g(0.1モル)と対照的に1M NaOH220g(0.21モル)を反応器に入れた(図8)。
したがって、ナトリウムイオンのエントリーは、両適定剤で同じである。ゆえに、示された塩基の使用による潜在的に異なる浸透圧効果により細胞培養物に対する負の効果は、pCOコントロールにより排除されうる。両適定システムの最終条件は平衡条件により同じであるので、塩基NaOHおよびNaCOは、下記の効果:投薬の数、投薬の頻度、CO釣り合いの妨害−細胞外および細胞内、により培養された細胞に対して異なる効果を有することができる。
Osman et alは、設定培養(set culture)においてマウスミエローマ細胞系GS−NS0に対するpH妨害の効果を検査した(Osman, Birch et al., 2002)。この目的で、彼らは細胞を逐次に数回pH8.0へのpH増加にさらした。何故ならば、それらはNaOHおよび/またはNaCOなどの強塩基の添加により産生発酵槽において最適以下の混合によっても起こるからである(Langheinrich and Nienow 1999)。彼らは、pH8.0へのpH偏りの増加する回数と共に、細胞生存率は減少することを見出した。同様に、pH9.0への塩基添加の増加する頻度は細胞生存率を有意に減少させた(Osman, Birch et al., 2002)。本発明におけるpH調節剤としてのNaOHの使用によって、Osman et alにより記載された両効果は役割を演じ(投薬頻度および投薬の回数の増加)、同様に、培養された細胞に対する負の効果が予測されるべきである。上記したpCOコントロールされた条件下に達成された結果と対照的に、NaOHの負の効果は、もしpCOコントロールが使用されないならば、細胞生理学に対して有意により強いことが推定されなければならない。
NaOHでの滴定による培養培地におけるCO釣合の強い妨害(長期のpCO調節時間、図6および7を比較する)は、培養培地に存在する細胞の細胞質ゾルに対する効果を有することもできるということが仮定されるべきである。この仮説は、圧力コントロールされたサンプリング装置の開発により得られた発見および小規模で培養された動物細胞に対するpH滴定剤の効果に関して下記に示された発見により支持される。
(2)1L規模でのCHO−K1細胞系の流加バッチ培養に対するpH調節剤の効果
NaOHおよびNaCOの効果の上記観察は、小規模発酵槽システム(1L Applikon)における細胞系CHO−MUC1の流加バッチ培養において評価されるべきである。記載した小さな発酵槽は、膜ガス供給および過圧を伴うFed Batch Modusを操作して、より大きい反応器の静水圧効果をシミュレーションした。加圧器ユニット(Bioengineeringにより提供される)は自動的に作動しそして圧力は廃物フィルターの後の保持弁(retention valve)によって手動で調節された。圧力測定は、ピエゾ感受性圧力センサによって特別にデザインされたアダプターピースにより無菌側で行われた。反応器において細胞の予備発酵期間中、60ミリバールの過圧を維持して、工業的増殖の小さな発酵槽をシミュレーションする。発酵槽容積の部分的回収、圧力を150ミリバールに増加させることおよび主発酵培地の使用によって、主産生プロセス(100L)をシミュレーションした。供給培地によって、グルコース比を1.0gL−1 より高く維持しそしてグルタミン比を0.8gL−1〜1.0gL−1に維持した。
下記において、プロセスの過程において達成された生きている細胞密度および生存率を、ガス供給混合物の異なるCOプロフィルについて図9および10に例示する。図9に示された結果は、ガス供給混合物中の5%(v/v)COの一定の比で実現された。しかしながら、pH7.2における手動pHコントロールでは、ガス供給混合物中のCO比は図10に示された発酵において引き続き減少した。
両COガス供給方式について、より高い生存可能な細胞密度、長期の培養期間およびより高い産物濃度は、NaOHの代わりにNaCOを使用するとき達成されうる(図9および10)。ラクテート濃度は、使用された両pH調節剤についてプロセスの全過程にわたり連続的増加を示す(図11)。
ゆえに、得られる細胞特異的ラクテート形成速度は、塩基としてNaOHを使用するとき、NaCOを使用するときよりも高い(計算されたデータは示されていない)。NaOHが調節剤として使用されるとき、400mOsmolkg−1の閾値を超える重量モル浸透圧濃度は、細胞増殖のスローダウンと相関するが、NaCOを使用するときは、細胞は指数関数的に増殖し続けて、より遅い時点で定常増殖相に入る(図12)。生産性の増加に関して文献に記載のとおり(Kim, Kim et al., 2002)、高いオスモルプロセスは本明細書に示された結果にしたがって、pH調節剤としてNaOHの替わりにNaCoの使用により更に最適化させることができる。特に、開発されたpCOコントローラと組み合わせて、その種の方法は、多分、細胞代謝、細胞生理学および産物形成に関して更に改良されうる。これらの結果に基づいて、NaCOを、本発明における更なる培養のためのpH調節剤としてもっぱら使用した。
実施例3
動物細胞の圧力ブランケッティング発酵における細胞生理学的パラメーターの測定を伴う発酵のための圧力コントロールされたサンプリング
既に上記したとおり、動物細胞の工業的発酵を大規模で行い、その場合に、Henryの法則に従って、滅菌関連過圧と組み合わせた静水圧は、培養培地中に含有されたガスの溶解度を増加させる。特に、細胞により産生されそして水性媒地中に放出された二酸化炭素の溶解度は、同様な条件下の酸素の溶解度よりも約25倍高い(Bailey and Ollis, 1986)。培養培地中の関連したそして測定するのが容易なpH値の変化は、適当なバッファーシステムおよびpH調節剤を使用することにより最小にすることができる。COは小さな非極性分子であるので、動物細胞の膜を透過することができ、したがって細胞内pH値に影響を与えることが可能である(Thomas, 1995)。
一般に、細胞含有サンプルを、分析を伴う発酵のために培養物から規定された間隔で採集する。当技術分野の状態にしたがえば、圧力ブランケッティングを伴う発酵からの慣用のサンプリング方法は、底部領域に設置された弁を開き、そして培養容器における過圧により適当な容器に圧力なしに細胞含有サンプルの規定された容積を放出することを含む。細胞懸濁液の関連したエキスパンションは、懸濁液の時間依存性脱ガス化を伴う。結果として、対応する発酵槽における溶解したガスの実際の濃度は、慣用のサンプリングに従う血液ガス分析器により不十分にしか表されえない(下記参照)。
下記の実施例は、培地中の細胞外変化に加えて、培地中に含有された細胞の細胞内pH値に対するサンプリング方法の効果を特徴付けるこの事項に関する研究の結果を与える。圧力コントロール式サンプリングのための装置の開発、および大規模発酵および/または圧力ブランケッティングを伴う発酵における培養に伴う、動物細胞の細胞内pH値の分析にそれを適用する必要が提起される。
(A)圧力コントロール式サンプリング装置の構成および開発
(1)in situおよびオフラインpCO 測定による定性
当技術分野の状態に従うおよび開発された装置を使用する、培地中の溶解したガスの濃度に関する異なるサンプリング方法の効果を検査するために、種々の濃度の溶解した二酸化炭素および種々の圧力を10L反応器バイオスタットESにおいて設定して、工業的大規模発酵槽における種々の条件をシミュレーションした。この目的で、適切な培地に、標準発酵条件(比ガス供給30L・−1、37℃、200rpm)およびその他は実施例2(E)に示されたパラメーターの下にガス供給混合物中の規定された二酸化炭素比でガス供給した。これに関して、pH値を塩基の添加により調節しなかった。測定のために、培地中の増加する全圧により増加したCO濃度は、ガス相と平衡していた(廃物分析、Xentra 4900. Servomex)。図13は、パラメーターであって、その組み合わせにより30の実験が行われたことを示す。
溶解した二酸化炭素比の測定は、in situ pCOプローブ(yellow Springs Instruments, USA)を使用しておよび/またはサンプリングの後血液ガス分析器(AVL Compact 3, Roche Diagnostics GmbH)を使用してオフラインで行われた。図14は、水性媒体として0.15M NaClについての例示的結果を示す。これから、in situ測定値と慣用のサンプリング法との間の溶解したCOの相対的に高い損失が明らかになった(ΔpCO=30%)。
シールされた注射器の使用によるCOのより少ない損失は、主として、慣用のサンプリングでは不可避的に生じるCOを含まない周囲の空気とのより低い程度の混合に起因すると考えるべきである。注射器によるサンプリングは、反応器のサンプリング弁に直接接続されうる無菌のアダプタによって行われる(図16)。反応器の内圧は、大気圧に対して支持体に固定された注射器に気密方式で取り付けられたプランジャーを、予備設定された停止装置部へと移動させた(図17および18)。種々の反応器過圧を伴うこの好ましいサンプリング法の比較結果を、図15に示す。CO損失の更なる減少がこのサンプリング法の改変により遂行された。
この注射器に基づく反応器サンプリング技術の使用は、溶解したガス濃度の損失(ΔpCO)を30%から20%に最小にすることを既に可能とする。
サンプリング時間に反応器に行き渡っている過圧の維持は、溶解したガスの損失を更に最小にするであろう。サンプル圧の連続的測定のために、ピエゾ電気圧力レシーバをサンプリングラインに一体的に取り付けそしてデジタルディスプレーに接続した(図16)。
したがって、反応器からサンプリングユニットを切り離した後も圧力測定が可能であった。反応器レベルで指示されたサンプル圧力のコントロールおよび、その結果として、サンプルの等圧採集は、圧力ブランケット式発酵槽からそれに接続されたサンプリングユニットへと(細胞)懸濁液をゆっくりと放出することにより手動で行われた(図16)。取り付けたきざみ付きねじは、反応器からユニットを切り離した後サンプル圧の微細な調整を可能とした(図16〜18)。このようにして開発された圧力コントロール式サンプリング装置(DNP)は、数時間の期間にわたり反応器レベルの無細胞サンプル中に溶解したガス濃度を維持した(Klinger, 2006)。図17および18は、注射器およびアダプタースリーブを使用して得られた種々のサンプル容積のための支持体ユニットの写真および取り付けられた注射器を有する支持体ユニットの頂面図を示す。
開発のこの段階で、無菌構造により、動物細胞の圧力ブランケット式発酵においてサンプリングするための特別に開発されたDPNを使用しそして定性することが可能であった。バイオリアクターのスチーム滅菌可能なサンプリング弁と組み合わせた無菌カップリング(Staeubli, Switzerland)、攪拌容器の操作の無菌方式は限定されなかった(定性は示されていない)。
図19は、CHO−MUC1細胞系の圧力ブランケット式流加バッチ培養の終わりにおける、開発された圧力コントロール式サンプリング法と比較して、慣用のサンプリング法に従ってオフラインで測定されたCO濃度を例示的に示す。溶解した二酸化炭素濃度は、サンプリングの直後に異なる容器において有意に異ならないとしても、慣用のサンプリング法における溶解したCOの濃度は、既に最初の12分の間に20%減少する。ゆえに、慣用のサンプリング技術が適用されるならば、圧力ブランケッティングを伴う発酵における溶解したCOの代表的測定は、血液ガス分析器によって即時の測定によってのみ可能である。
反応器圧および反応器温度を維持しながらの、開発されたサンプリング装置の使用は、本質的な利点である。サンプリング装置は、1時間の貯蔵期間にわたり溶解したCOの最初の反応器濃度を維持する(図19)。これに関して、溶解した酸素の濃度は、いかなる時間にも限定されなかった(Klinger, 2006)。反応器の圧力およびpCO濃度は、反応器の外側で維持されるということにより、開発された圧力コントロール式サンプリング装置は、バイオリアクター条件下に培地−期間サンプル処理(medium-term sample treatment)を可能とする(<1時間)。
特に、図19において分析された時間の期間は、蛍光染料による細胞含有サンプルの処理のための最適方式において適している。何故ならば、例えば、それは細胞内pH値の測定のために必要であるからである。培養培地中のpCOレベルと細胞内pH値間の基本的相関は図4に示されているが、本明細書に記載のサンプリング装置を使用して得られたpCOコントロール式発酵の結果は実施例5〜7に示される。
下記において、異なるサンプリング法の細胞生理学的定性に関するフローサイトメトリー法の研究の例示的結果が提示される。
(2)フローサイトメトリー測定による定性
反応器条件(温度、pH値、培地の成分、溶解したガスの濃度、圧力)を維持することは、当技術分野の状態に従う慣用のプロトコールを使用する細胞内pH値のフローサイトメトリーによる決定によりある程度しか考慮されなかった。特に、圧力ブランケット式発酵からのサンプリングおよび培地の関連した脱ガス化およびサンプルに含有される細胞の生理学に対するそれらの効果には、殆ど注意が払われなかった。下記の実施例から、細胞外測定値pHおよびCOはサンプリングの後に培地において検出可能な変化を示さないとしても、培地に懸濁した細胞は、バイオリアクターにおける生理学的条件に関して既に有意に異なりうることが明らかになる。
フローサイトメトリーによる決定において開発されたサンプリング装置を使用することにより、当技術分野の状態で可能なよりも本質的に良好なバイオリアクターにおける検査された細胞の生理学的状態を表す細胞内pH値を測定することが可能である。下記の図20および21は、それぞれ、圧力コントロール式サンプリングなしに(図20)および圧力コントロール式サンプリングを使用して(図21)達成されたフローサイトメトリーによるpHi測定からの結果を示す。それぞれの図の右側の部分図解2および3においては、対応する蛍光の強度(それぞれFL2−HおよびFL3−H)が細胞サイズに対してプロットされている。左側の部分的図解1は、蛍光強度の比FL3/FL2から得られる比ピークを示す。この比は、較正値にしたがうpHi値を決定する。その値は検出チャンネル当たりカウントの数により決定される。
当技術分野の状態に従う圧力ブランケット式発酵槽におけるCHO細胞母集団のpHi値を決定するために、最初にサンプルを大気圧への減圧下に無菌方式で採集し、次いで上記したとおり25分間蛍光染料SNARF−1とインキュベーションした。フローサイトメーターにおけるその後の測定は、図20AおよびBに示された蛍光強度比を示した。図20A1においては、異なる蛍光強度を有する2つの細胞母集団に基づく二重ピークが観察されうる(図20A2およびA3)。個々のピークの適当な境界の選択にもかかわらず(図20B、上部母集団)、ピークを反応器における母集団の最初のpH値に明白に関連付けることができない。
50分の期間の後の同じサンプルの観察では(図2−20C)、細胞母集団の蛍光は、完全にシフトして、その均一性により対応する蛍光強度比の単一ピークを生じる(図20C1)。この単一のピークは、図20Aに示されたとおり一時的に二重母集団が観察されうる、蛍光細胞母集団の時間依存性変化の最終状態を表す。
この仮定は、等圧方式で得られた反応器サンプルの蛍光染料SNARF−1とのインキュベーションのために圧力コントロール式サンプリングを使用することにより確かめられるべきであった。圧力コントロール式サンプリング装置における等圧インキュベーションの後の、高い蛍光強度を有する部分的母集団(図20A2、A3におけるスキャッターダイアグラム)および対応する比ピーク(図20A1)の位置を、慣用のサンプリングに従う圧力なしのインキュベーションからのこれら(図21D2およびD3におけるスキャッターダイアグラムおよび比ピーク(図20D1))と比較するならば、下記の差が観察されうる。圧力なしのインキュベーション(当技術分野の状態にしたがう)とは反対に、25分のインキュベーションの後ですら、均一な蛍光細胞母集団(図21D2およびD3)および対応する単一の比ピーク(図21D1)が観察されうる。同じサンプルを過圧なしに更に25分間インキュベーションすると、全蛍光細胞母集団は圧力なしのインキュベーションに類似してシフトされる(図21E2およびE3;図21C2およびC3)。単一ピークの最終位置は、50分の期間の後に同一である(図21E1および図20C1)が、しかしそれらは反応器における細胞母集団の真のpHiを反映しない。
これは、エキスパンション下に圧力なしのインキュベーションの期間中、反応器からの細胞母集団は、蛍光母集団の不均一なシフトおよび一過性比二重ピークによって測定されうる時間依存性pHi変化にさらされるという理論を支持する。これらの細胞内変化は、pHおよびpCOなどの細胞外パラメーターが測定値の有意な変化を引き起こし、したがって、圧力ブランケット式発酵槽における細胞母集団の細胞内pH値の測定を相当ゆがめることがありうる前に測定することができる。
Al−Rubeai(Welsh and Al-Rubeai, 1996)は、(細胞内)脱ガス化により起こる時間依存性サブピーク(図20A1、左ピーク)を非生存可能な細胞母集団に起因すると考えた。したがって、彼らの研究に従えば、非生存可能な細胞の比と類似のサブピークにより表される細胞母集団との間に顕著な相関がある。これは、ここに提示された結果により確証されない。実際に、上記研究のために使用された細胞母集団は、>95%の生存率を示しておりそして限定なしに対数増殖期にあった。細胞質ゾルの酸性化と同時に起こる早期アポトーシスシグナルは、本明細書に示された比二重ピーク(図20、A1左ピーク)の原因として排除されうる。これにしたがって、バイオプロセスに関して、彼らは、慣用のサンプリングで観察された圧力変動は、例えば反復(流加)バッチ法に類似的に厳しいアポトーシスを誘導したことを暗示するであろうが、しかしなから、それは観察されえない。ここで観察された比二重ピークは、一過性であり、したがって、それは、圧力なしのサンプリングおよび/またはインキュベーションおよび懸濁している細胞の得られる脱ガス化にのみ起因すると考えるべきである。
実際に、本発明においては、比二重ピークは、生存率の測定可能な減少がレジスタされうる時(データは示されていない)(流加)バッチ培養の終わりにのみならず、圧力コントロール式サンプリング装置の使用によっても観察された。これらは、DNA定量(DNAフラグメントを使用する細胞サイクル分析によるサブG1ピーク)によって平行に適用されたフローサイトメトリーにより測定されたアポトーシスの後期と一致する。
したがって、本明細書に示された結果は、反応器母集団の細胞内pH値を正しく決定するために、圧力ブランケット式発酵を伴う等圧サンプリングの必要を支持する。
実施例4
動物細胞の細胞内pH値に対する溶解した二酸化炭素の含有率の効果
小さな非極性分子として、培養された細胞の代謝の産物である、物理的に溶解したCOは、特異的輸送体を必要とすることなく相対的に障害されないで(unhindered)細胞膜を透過することができる(Thomas, 1995)。しかしながら、細胞内でおよび細胞外水性媒体中で、それはハイドロジェンカーボネートと平衡しており、そのための能動輸送システムが細胞に与えられている(Hu, Seth et al., 2007)。ゆえに、種の1つの濃度の変化は、常に平衡に関与した他の種の対応する変化および、その結果としてpH値の変化を引き起こす。もしも溶解したCOおよび/またはハイドロジェンカーボネートの濃度の変化が細胞の培養培地において起こるならば、これは、常に細胞の細胞内pH値(pH)に対する時間依存性効果を有する。生理学的培地の維持、および、したがって細胞内プロセスは、部分的にエネルギー消費条件下に細胞膜における輸送体を使用することによるpHiの調節によって細胞により行われる(Madshus, 1988; Reusch, 1995)。
下記において、培養培地のpCO含有率とその中で培養された細胞のpHiとの相関を研究する。CHO−MUC1細胞系を反応器システム(ケモスタット、1L)においてコントロールされたpCO値で培養し、サンプルを反応器条件の維持下に培養し、そしてpHiの決定のために、問題の実験に従ってpH感受性蛍光染料とインキュベーションした。サンプル中のpCOの濃度をオフラインで決定し(AVL Compact 3)、そして細胞内pH値をフローサイトメトリーによって測定した。
(A)pH に対するpCO のin−vitro効果
培地における対応するpCOレベルへのpCO飽和は、フローサイトメトリーによるpHi測定の直前(<5秒)に空気で染色した細胞懸濁液にガス供給することにより達成された(AVL Compact 3)。in−vitroでの培養培地中の異なるpCO飽和による細胞内pH値に対する効果を図22に示す。異なる反応器サンプルから得られた曲線の平行なグラフは、細胞を取り囲んでいる培地中のpCO濃度と細胞の細胞内pH値との直接相関を示している。培養培地中のCO飽和が高ければ高いほど、培養培地中に含有された細胞の細胞質ゾルの一時的アルカリ化は高かった。
培養培地中の溶解したCOの欠乏による短期間細胞内アルカリ化の観察された現象は、その平衡のシフトに起因すると考えられる。培地中に物理的に溶解されそしてハイドロジェンカーボネートおよびプロトンと平衡しているCOが除去されるならば、これはpH値の増加を引き起こすであろう。何故ならば、ハイドロジェンカーボネートのヒドロニウムイオンへの結合は増加して、水の排除を伴い分散しているCOに取って代わるからである。この平衡シフトは細胞質ゾルにおいて起こり、その結果、培地中のpCO濃度の減少と共に、測定されたpHi値は図22に示されたとおり増加する。下記において、この短時間効果は、細胞内pH値に対する溶解したCOの含有率の変化の「化学的効果」と呼ばれる。
下記の研究が示すとおり、生存可能な細胞は、その環境におけるこの変化に対して能動的に反応する。図22に示された培養培地から溶解したCOが除去されるときのように、生理学的平衡状態から偏ると、説明した短期間化学的効果に加えて、細胞は「生理学的効果」(図23)の形態の反応を常に示す。pHiの二相発生がすべての実験で観察されうる(図23および24)。これに関して、CO欠乏による細胞質ゾルの短時間アルカリ化の後、常に細胞質ゾルの酸性化の相が続き、これはCO平衡のシフトと反対である。培地中のin−vitroCO欠乏のたったの30〜40分後、母集団の細胞内pH値は最初の値より低く降下した(図23および24)。これに関して、細胞外pH値の有意な変化は、使用された細胞培養培地においては測定されなかったが(図23)、これに対して、細胞外pH値は一定で、細胞内pH値は上記した二相変化を示す。
pHi偏りのこの超回復(super-compensation)は、異なる初期pCO値で観察され得(図24)、その際、培養培地中の最初の濃度とCO欠乏後の最終値との間のpCO勾配は、「化学的効果」による細胞内アルカリ化の程度を決定する(図24)。
第二相において観察された、細胞内pHの初期値より低くなる酸性化による超回復は、細胞膜をとおる能動輸送プロセスと相関させることができる。既に上記したとおり、pHiコントロールの責任を持つCHO細胞におけるいくつかの適切な輸送体がある。それらは、溶解したCO変動の前に流れ平衡によって細胞内pH値を調節する。この現象は、細胞質ゾルpH値に対する培養培地中のCO濃縮のin situ効果を検査する下記実施例において更に検討されるであろう。
(B)pHiに対するpCO のin situ効果
培養培地におけるCO欠乏に対する時間依存性細胞応答の観察されたin−vitro効果(図23および24)は、コントロールされた小規模発酵システム(Applikon 1L)においてin situでシミュレーションされるべきであった。この目的で、pCOの設定値プロフィルを連続的ケモスタット培養期間中徐々に上昇させた。図25において、得られるpHi値を、プロセス時間に関して生存可能な細胞密度に対してプロットする。
図25から分かるとおり、上記のin−vitroで観察された短時間アルカリ化および培養培地中のpCOレベルの減少の後の細胞質ゾルの長時間酸性化の効果は、対照的に、小規模発酵槽において培養培地の段階的に増加した濃厚化によってin situでも起こる。これに関連して、対応する短時間酸性化および長時間アルカリ化は、培地中の溶解したCO濃度の段階的増加に対する細胞の反応として観察されうる。より高い値へのpCOサージの後の細胞の長時間アルカリ化(図25)はこのレベル(培地中の、それぞれ、2.5%から5.0%pCOへのサージおよび5.0%から10.0%pCOへのサージ当たり+0.1pHi単位)に留まることに留意されなければならない。したがって、細胞内pH値は、培養培地のpCOレベルと直接相関していると思われる。何故ならば、このパラメーターは別として、培養条件はケモスタット法においては一定であるからである。したがって、培養培地中のpCO濃度により、生理学および代謝に関する説明した結果を伴って、細胞のpHiに影響を与える可能性がある。
今日まで、この主題事項に関する不完全な研究のみが文献に記載されている。これらは動物細胞に対するpCOの影響に関する連続法を検討したが、しかし、それらは一定の細胞母集団(サイズ分布、細胞周期相分布、代謝消費および形成速度)を保障できない細胞保持を使用する方法に基づいていた。一般に観察されうる現象は、加速された細胞増殖によるおよび一般に強化された代謝による細胞質ゾルのアルカリ化および/または休止細胞によるより高い酸性pHiである(Engasser, Marc et al., 1996; Welsh and Al-Rubeai,1996)。開発されたpCO2コントローラと組み合わせて、完全なサイズ分布にわたる細胞アウトプットでおよび一定の細胞蜜度で本発明で研究されたケモスタット法が、始めて、平衡状態における細胞の詳細な生理学的および代謝的研究の可能性を与える。かくして、pHiに対する培地中のpCO含有率の効果を、細胞増殖および細胞周期相分布により、例えばバッチ処理または細胞保持および関連したサイズ選択を伴う処理において起こる変化から切り離すことが可能である。
1990年代の早期において、Wu et alは、既に、CHO細胞における細胞内pHコントロールの単一細胞に基づくコンピュータシミュレーションに関して研究することを開始した(Wu, 1993)。Wuにより仮定された懸濁したバッチ培養における細胞増殖のための「レギュラーモデル」は、飽和方式でのCHO細胞における平衡およびアルカリ欠乏の状態でのpHi値を説明するが、しかしながら、この説明は、細胞の一過性酸性化後のpHiに関して改変を必要とする。これに関して著者により示された改変は、細胞質ゾルの急な酸性化によるNA/H対向輸送体を活性化すること、およびたとえ細胞質ゾルpHが最初のpHよりも依然としてより酸性であるとしても一旦新たな平衡が達成されると、該対向輸送体の活性を基底レベルに減少させることを可能とするCHO細胞の性質を説明する。pHおよびpCOコントロールされたケモスタット法からの上記した発見は、WuのpHi調節モデルの改変とは反対である。Wuにより記載された効果は、「化学的効果」への高い類似性を示し、これはこのようなシミュレーションにおける短時間pHi変化に対する可能な説明である。しかしながら、コントロールされたシステムにおいて一旦新しいin situ平衡状態に到達すると、「生理学的効果」が、能動輸送プロセスによるおよびWuにより仮定されたNA/H対向輸送体を活性化することにもよる超回復をうまく説得する。動物細胞の動状況モデルにおけるこの「生理学的効果」は、適切な方式で考慮されるべきである。
実施例5
10L規模での細胞系CHO−MUC1のpCOコントロールされた流加バッチ培養
異なるpH調節剤の効果に基づく上記実施例で得られた発見、in−vitroおよびin situでの細胞内pH値のpCOに対する反応およびpCOおよび過圧のコントロールストラテジーの方法の実施を下記で統合整理する。この目的で、工業的条件(過圧、pCOプロフィル、培地、処理方式)下のモデル細胞系CHO−MUC1を用いて10LバイオリアクターバイオスタットESを使用した。スピナーフラスコにおける再活性化の後、接種物をインキュベータにおいて5%COで1リットルまでの作用容積で培養した。接種の後、10L反応器における生存可能な細胞密度は、1.5×10細胞mL−1であった。10L規模のすべての更なる発酵を、一定のエネルギー移行で実施例1(E)に記載のとおりの標準発酵条件下に行った。発泡防止剤(Dow Medical Grade C)を手動で加えることにより発泡を防止した。発酵槽の過圧を750ミリバールに調節し、pCO値を、それぞれ、一定の5%、15%、25%および/または5〜15%pCOのプロフィルに調節した。5〜15%pCOの動的設定値プロフィルは、工業的製造法において発酵プロセス期間中培養培地におけるCO濃厚化をシミュレーションすることを意図する。適切な文献に従えば、25%pCOは、培養された細胞に対する有害なCO効果を有する(kimura and Miller, 1996,; Pattison, Swamy et al., 2000; de Zingotita, 2002)。
すべての培養において、コントロール基質グルコースおよびグルタミンの濃度を、毎日の脈動式供給によりそれぞれ、2〜5L−1および0.5〜1.0gL−1の範囲に維持し、その結果アミノ酸排除は防止された。発酵のためのアボート基準(abort criterion)は、不完全に翻訳された融合タンパク質および細胞のプロテアーゼにより影響を受けた融合タンパク質をELISAにおいて間違って検出しないように、80%より低い生存率であった。
(A)増殖挙動
図26は、異なるpCOコントロールプロフィルでの増殖挙動および生存率を示す。これから、下記の傾向が明らかになる。一般に、バイオリアクターにおける培養物は、pCO値が一定の設定値に調節されているならば、より低いpCO値でより速く増殖する。5%pCOでは、達成される生存可能な細胞の最大密度は、最も高く(1.3×10mL−1)そして最小時間にある(150時間)。この場合に、生存率は、比較的早く減少し、そのため、培養の期間は有意に短くなる(<200時間)。生産規模で工業的発酵槽における増殖の過程をシミュレーションするpCOプロフィルによる培養は、顕著な増殖過程を示す(pHiを示す図28も参照)。この場合に、pCO値は5%(開始)から15%(190時間以上)でありそして関連した増殖曲線は、コントロールされた一定の5%pCOの曲線と一定の15%pCOの曲線との間にある(図26)。25%pCOでは、培養は、より遅い増殖を示すが、15%pCOでの培養よりも高い生存可能な細胞密度を示す。したがって、25%pCOでも毒性効果は観察されないが、pCOの更なる増加は、技術的要因により可能ではない。生存率曲線および死亡率はすべてのコントロールされた一定のpCO値について同様である(図26)。
(B)細胞周期相分布
下記において、種々のpCO設定値プロフィルでの培養のG0G1期分画の細胞周期曲線を研究した(図27)。これに関連して、15%pCOにおける相対的に高いG0G1分画が注目されるべきであり、これは150時間から培養が停止するまで前方に増加し、したがって進行する細胞休止(cell arrestation)を反映する。
5〜15%のpCOプロフィルでの培養についてのG0G1期分画の曲線は、150時間までは、一定5%にpCOコントロールされている培養の曲線に類似している。したがって、この曲線は、15%pCOの曲線に類似している。しかしながら、この工業的pCOプロフィルは、G0G1分画減少が起こる約170時間目に特に明白な転換点を示す。これは13%のpCO値と相関する(図28)。15%へのpCO値の更なる増加およびこのレベルにおけるその固定は、G0G1期分画の更なる増加をもたらさない(図28)。しかしながら、培養開始以来一定15%pCOに調節されているプロセスでは、G0G1期分画はプロセスの終わりまで更に増加する(図27)。
(1)プロセス開発の結果
この場合に、より高いG0G1期分画が、培養開始を伴う13%(転換点G0G1期分画)の設定値の静的コントロールによって達成されうるかどうかは、検討の余地がある。したがって、本明細書で適用されたまたは類似した、動的pCO設定値プロフィルは、例えば細胞周期分布または他の細胞パラメーター(例えば、pHi、比速度)の曲線に、本明細書に示された転換点法を適用することにより、細胞(系)特異的pCO最適化のために有用である。シミュレーションされるべき工業的大規模発酵槽のプロフィルとは反対に、本明細書で示されたpCO設定値プロフィルは、ガス供給によるCO添加によるコントロールを介して外部的に適用される。工業的生産発酵槽においては、培地中で豊富化されたCOは、細胞自体により与えられる。ゆえに、対応するPHiプロフィルは、従って異なりうることが可能である。これは、もし本発明で開発された圧力コントロール式サンプリング装置を使用するならば、同様に分析できるかも知れない。
(C)細胞内pH値
PHi値はpCOコントロールのストラテジーを適用することにより影響されうることが示されたので、これは細胞周期相分布にも影響を与えるであろう。図29は、比較としてコントロールされた一定25%pCOによるプロセスでのG0G1分画およびPHi値を示す。G0G1期分画曲線における転換点(200時間)と同時に起こる細胞質ゾルにおける酸性化プロセスが観察される。したがって、研究されたCHO−K1細胞系のPHi曲線における転換点は、G0G1細胞周期の曲線における転換点と同時に起こる。
これに関連して、細胞は、全培養プロセス全体にわたりその環境において一定pCO値にさらされる。pHi値は、それが7.35に達するまで連続的に増加し、そしてG0G1期分画曲線の転換点において、pH7.0に達するまで連続的に減少する。生存率の減少の前および培養の終了前にも短時間アルカリ化が観察されうる。
一般に、この高いレベルのpCOにおいて、G0G1分画は、培養の開始時において同様に高く(図27)、これは遅い増殖挙動によって反映される。全発酵プロセス全体にわたり、G0G1期分画は小さな範囲内にある(50〜60%G0G1分画)。
細胞内酵素活性もpH依存性を示すので、pCOおよび対応するコントロールストラテジーにより細胞内pHに影響を与えることは、最適化されるべき重要なプロセスパラメーターである。BresnahanおよびDittmerは、例えば、後期G1期において、増加した特異的抗体生産性をそれぞれ、増加した細胞内pHおよび細胞周期休止と相関させた(Bresnahan, Boldogh et al., 1996; Dittmer and Mocarski, 1997)。本発明で開発されたコントローラは、培養培地のpH値および重量モル浸透圧濃度からpCOレベルを切り離すことを研究することを始めて可能とする。
pCOと中心細胞代謝(central cell metabolism)との相関を以下に説明する。
(D)グルタミンおよびグルタメート代謝
pCOの増加と共に、グルタミン摂取速度は僅かに増加し、これは特に25%pCOにおいて明白になる(図30)。比グルタミン摂取速度についての同様な出発曲線が、G0G1期分画で既に観察されたとおり(図27)、5%pCOおよび5〜15%pCOで観察されうる(図27)。
図31に例示されグルタメート対グルタミンについての収率係数に基づいて、一定のコントロールされたpCOの高い値を有するプロセスにおいては、増加したグルタミン摂取は、より低い程度にグルタメートの形成に寄与することを仮定することが可能である。形成されたグルタメートGLTと消費されたグルタミンGLNとの相関を示すY(GLT/GLN)は、平均して、一定のpCOコントロール値の増加と共により低く、そして更に異なる進行曲線を示す。進行するプロセスと共に、高いレベルの収率係数の連続的増加が5%pCOで観察されうるが、これに対して、25%pCOでは、僅かな増加のみが同様に低いレベルで観察されうる。15%pCOでは、プロセスは、プロセス全体にわたり減少する僅かな傾向を有するより一定の収率係数を示す。しかしながら、増加するpCO設定値プロフィル(5〜15%)では、対応する収率係数の曲線は不規則である。170時間における収率係数の局部的最大値が、G0G1期分画について前に同定された転換点と同時に起こる(図31および図28を比較されたい)。
(E)ラクテート代謝
細胞特異的ラクテート形成速度は、図33に示された累積ラクテート濃度曲線をもたらす図32に示された特徴を示す。これに関連して、対数増殖期(70時間〜120時間)の増加を示しそして再び培養の終りにおける(>200時間)増加を示す25%pCOでの細胞特異的曲線が注目されなければならない。検査された他の発酵は、一般に、培養の進行と共に細胞特異的ラクテート形成速度に関して減少を示す。15%pCOでの発酵は、定常増殖期における最も高い特異的ラクテート形成を示す。
(F)産物形成
5%および25%pCOのコントロールされた一定のpCO値に調節されるプロセスでの産物形成は、変化するプロセス期間により引き起こされる最終抗体濃度MUC1−IgGに関して以外はそれらの進行において何らの差も示さない。増加するpCO設定値プロフィル(図34)に規制されたプロセスの実質的により高い生産性が有意である。
(G)プロセス開発の結果
したがって、一般に、コントロールされた一定のpCOレベルにpCO調節によって、本明細書に示された条件下にプロセスの強さを高めることが可能である。本明細書に示された結果に従えば、調節されたpCO設定値プロフィルは、特に、細胞系特異的最適化のための潜在力を有する。したがって、pCOプロフィルを増加させることにより、できる限り一定の条件下に(例えば、エネルギー移動、過圧、温度、pH値)生産性を増加させることが可能であった。異なる工業関連の問題点に関して、開発されたpCOコントロールおよび過圧コントロールは、流加バッチプロセスで10Lバイオリアクターにおいて同時にかつ成功的に使用された。pCOコントロールにより得られた結果は、下記のパラメーター:細胞内pH値、細胞周期分布、中心代謝(central metabolism)(例えば、グルコース、ラクテート、グルタミン、グルタメート)、アポトーシス/培養の期間をコントロールすることにより、工業的細胞培養法の最適化のための高い潜在力を示す。
実施例6
細胞系CHO−MUC1−IgGのケモスタット培養:グルコース制限および「代謝シフト」を伴うpCO設定値コントロール
種々のpCO設定値プロフィルにより引き起こされる中心炭素代謝において認識された差は、ケモスタット法(1L)においてより詳細に研究された。
実施例1(E)に記載の1Lバイオリアクターにおいて、リコンビナントCHO−K1細胞系CHO−MUC1−IgGをケモスタット法で培養した。この目的で、プロペラ攪拌器の下で培地に一定の容積流量(2.4Lh−1)でガス供給混合物を導入したL字形ガス供給管(Applikon)によってガス供給を行った。これに関連して、頭部領域を介して新たな培地を連続的に添加するために浸漬ノズルによって底部付近の領域から細胞懸濁液を取り出し、それにより反応器容積を一定に維持した。対応する流速Dおよび増殖速度μが図35に示されており、生存可能な細胞密度は7.5(±1)×10mL−1で流量平衡の範囲内にあった。
バッチ相(<120時間)においては、基質グルコースは消費されそして培養物はラクテート再代謝を開始するために、代謝スイッチに引き渡される。この相においては、グルタミンは替わりの炭素源として十分に利用可能であり、アミノ酸制限はなかった。増加する数の生存可能細胞と共に流速Dの漸次の増加の後、pHコントロールを230時間に開始した(1M NaCOを使用してpH6.6〜pH7.0)。かくして、そのときまで優勢なラクテート再代謝を停止させそしてラクテート形成の増加が起こった。
グルコース制限されたケモスタット法においては、細胞特異的ラクテート形成速度はプロセス期間中減少した。しかしながら、増殖速度は流速に等しいままであった(図35)。この流れ平衡においてコントロールされた10%pCOから20%pCOへの設定値サージがあるならば、細胞特異的ラクテート形成速度は続く150時間の期間3倍になりそしてグルタミン摂取は減少する(図36)。内部pH値と外部pH値間の勾配のこの位置では、本発明の発見に基づいて、pHiに影響を与えることが可能であり、したがって、最適化されたpCOコントロール(培養培地中のpH設定値コントロールとの組み合わせにおいても)を介してラクテート輸送および代謝に直接影響を与えることが可能である。
実施例7
1L規模での細胞系CHO−hGM−CSF−PYC2のpCOコントロールされた流加バッチ培養
これまでに本発明で証明されたとおり、培養培地のpH値とは別に、pCOおよびpCO設定値コントロールも、グルコース制限された条件下ですら、中心代謝に有意に影響を与える。更に代謝的におよびエネルギー的に最適化された細胞培養法にとって、細胞内pH値の正確な知識は必須である。特にラクテート再代謝のための代謝スイッチは、リコンビナント細胞系における生産性の関連した増加、工業的方法のために高いプロセス強さを伴う効率的代謝経路を活性化することができるからである。ゆえに本明細書に記載の実験では、本発明で開発されたpCOプロセス工学の組み合わせは、代謝工学を介して最適化されておりそして同時にpCO感受性であるCHO細胞系を使用して行われるべきである。結果として、発酵槽でのコントロールストラテジーの所望の細胞代謝との鋭敏なアライメントが必要とされる。これに関連して、エネルギー移行も考慮されなければならない。この研究では、ガスの空チューブ速度(empty tube velocity)のパラメーターを、pCOコントロールおよび調節のために選択した。しかしながら、もし攪拌器がpOおよびpCOのためのコントロールカスケードも妨害するならば、エネルギー移行の効果は、本明細書に示された実験的セットアップに従う類似したアプローチにおいて研究されなければならない。この種の研究において、方法パラメーターは、常に培養培地の組成物の効果とは別に考慮されなければならない。
ラクテート代謝に対するpCOコントロールの直接の効果は同定されうるので、代謝工学によってラクテート代謝に関して最適化された細胞系を本発明で使用する。細胞系CHO−hGM−CSF−PYC2は、中心代謝にも影響を与える細胞質ゾル活性を有するピルビン酸カルボキシラーゼを有する(Wagner, 1998; Irani, 1999; Bollati Fogolin, 2001; Bollati Fogolin, 2003)(図37)。pCOコントロールは、細胞におけるハイドロジェンカーボネート濃度を目的を持って変化させること、したがって、培地中のpCOレベルによりピルビン酸カルボキシラーゼの基質の濃度を目的を持って変化させること、したがって中心代謝に影響を与えることを始めて可能とした。
次いで、細胞生理学および細胞代謝などのパラメーターおよび細胞内pHおよび生産性に対する種々のコントロールされたpCO濃度の効果は、増殖因子hGM−CSFを培地に分泌する細胞系CHO−hGM−CSF−PYC2の流加バッチ発酵を使用して1L規模で研究されるべきであった。10L規模に類似した一定の培養条件は、結果を、抗体産生細胞系CHO−MUC1で得られた結果と比較することを可能とする。このリコンビナント細胞系における細胞質ゾル活性を示し、そしてピルベートとハイドロジェンカーボネートとのオキサロアセテートへのアナプレロティック反応を触媒するS. cerevisiaeからのピルビン酸カルボキシラーゼは、クエン酸回路(図3b)を介して細胞による、細胞質ゾルに存在するハイドロジェンカーボネートの代謝利用を可能とする。
リコンビナント細胞質ゾルピルビン酸カルボキシラーゼを発現するBHK−PYC細胞における代謝フローの分析に従えば(Paul, 2006)、リコンビナント細胞質ゾルピルビン酸カルボキシラーゼのフローは、これに関連して検査されたプロセス条件下に非常に低かった。結果として、pCO濃度に対する依存性および前記濃度依存性により引き起こされるこの代謝経路のpH依存性が研究されるべきであった。このアプローチは意義があると考えられた。何故ならば、ハイドロジェンカーボネート濃度は、細胞質ゾルピルベートのオキサロアセテートへの反応のための重要なパラメーターであるからであり、そして本発明で得られた結果にしたがえば、培養培地中の(および、したがって細胞質ゾルにおいても)(コントロールされた)pCOレベルによりハイドロジェンカーボネート濃度に影響を与えることが可能であるからである。二次パラメーターpHiによりモデル細胞系CHO−hGM−CSF−PYC2における新たに導入された代謝経路に影響を与えることも考えられ、二次パラメーターpHiは、やはり本発明に示された結果に従えば、例えばピルビン酸カルボキシラーゼ活性および乳酸デヒドロゲナーゼ活性のpH依存性によりpCOレベルにより影響されうる。
(A)プロセス条件
コントロールされたpCOレベルに対する細胞パラメーターの依存性を研究した。接種物を上記したとおりインキュベータ中で5%COで培養した。使用したすべての接種培養物は95%より高い生存率を有していた。1L攪拌式反応器において、標準発酵条件を使用した(実施例1(E))。グルコース濃度を、濃縮された供給溶液の無菌のボーラス(最大5%v/v、1〜2d−1)を加えることにより、2〜5gL−1の範囲に維持した。これは、グルコース制限および約10gL−1以上のグルコース濃度で起こるクラブトリー効果(負のパスツール効果)の両方を防止することを可能とした。したがって、グルタミン濃度は、0.5〜1.0gL−1に維持されそしてアミノ酸制限は回避された。全培養プロセス全体にわたり、pCO値は、それぞれ、一定5%pCOおよび15%pCOであるようにコントロールされた。コントロールされていないpCO濃度での培養を参照として行った(図38)。ここでは、培養培地のpH設定値偏りは、ガス供給空気中のCOの調節された混合物により、ならびに炭酸ナトリウム溶液(1M)のコントロールされた添加により相殺された。このCOに基づくpHコントロールによって、培養プロセス期間中の酸性代謝物(例えばラクテート)の増加した形成は、供給空気中のCO比の減少をもたらすが、それは生理学的濃度よりも低くする培地中のpCO濃度の減少を引き起こすことがある(<5%)。この減少は、本明細書で使用された一定のガス供給速度でのセットアップで既に観察され得(図38)そして培養培地への酸素移動を増加させるために使用されるガス供給速度の引き続く増加により多分更に増加される。
(B)生存可能細胞密度および生存率
生存可能細胞密度および生存率は図39に示される。これに関連して、下記の傾向が観察されうる。すべての培養物は、ほぼ同じ時間間隔(170時間、7日)後に定常増殖期に達する。異なるpCOプロフィルで、最大生存可能細胞密度は、有意に異ならない(9〜11×10ml−1)。15%のコントロールされたpCOによる定常期への遅れたエントリーは、攪拌容器の接種の後培養物の最初のより低い生存率により引き起こされうる。たぶん、反応器において15%COで平衡化された培養培地への5%COでのプレ培養からの細胞の移行は、第一に生存率に対する負の効果を有する。細胞に対するこれらのpCOサージの効果は、実施例4で研究された。pCOがコントロールされていない当技術分野の従来に従う方法と比較して発酵プロセスの全体にわたるpCO濃度のコントロールは、培養物の生存率に対して正の効果を有し、そして高い細胞密度の延長された定常期を可能とする。コントロールされたpCO値が高ければ高い程、培養物はより長く生存可能である。研究されたリコンビナントCHO−K1細胞系のための最適は、5%pCOよりも15%pCOにより近い。
(C)塩基の添加および重量モル浸透圧濃度
接種時の最初のコントロールされたpCO値の調節は、pH値の同時のコントロールにより行った。したがって、高いpCO値のために添加されたCOによるpH値減少は、炭酸ナトリウム溶液の添加により相殺された。これは、図40に見られうるとおり、15%pCOでの発酵槽への塩基のより高い最初の添加を引き起こした。しかしながら、pCOコントロールなしのプロセスは、最初は何らの塩基も必要としない。何故ならば、培地の酸性化はまず最初供給空気中のCO比の減少により相殺されうるからである(図40)。コントロールされた5%pCOおよびコントロールされた15%pCOでの塩基の添加はプロセス時間80〜180時間の間隔について同じである(平行な曲線)のに対して、コントロールされていないpCOによるプロセスにおける塩基の添加は、この時間の期間顕著に増加する。かくして、15%pCOでのプロセスのみが、このプロセスが終わるまで塩基を必要とし(図40)、これは培養された細胞の代謝が依然として活性であることを含意する。しかしながら、すべての記載されたプロセスの最終重量モル浸透圧濃度は同じでありそしてプロセス期間全体にわたり同様な曲線を示す(図40)。したがって、より高い生存率による延長されたプロセス期間は重量モル浸透圧濃度に左右されないで、主としてコントロールされたpCOレベルに起因すると考えられなければならない。
(D)ラクテート代謝
異なるプロセスのラクテート形成に関しても、等級化(graduation)が観察されうる(図41)。コントロールされていないpCOプロセスは、既にプロセスの開始からより多くのラクテートを形成し、そして他のプロセスと比較して、より高い濃度最大値を達成する。次いで、減少するラクテート蓄積を伴うコントロールされた5%pCOプロセス、続いてコントロールされた15%pCOプロセスがある。
コントロールされていないpCOおよびコントロールされた5%pCOを伴うプロセスにおいて、全体の流加バッチ法にわたり(データは示されていない)それぞれ2.0〜5.0gL−1および0.5〜1.0gL−1にすべて維持された、それぞれコントロールされたグルコースおよびグルタミン濃度とは独立に、定常期へのエントリーと共にラクテート代謝が観察されうる(それぞれ180時間および220時間、図42)。このジオーキシー挙動は、コントロールされた15%pCOプロセスにおいてあまり明白ではない。その細胞特異的ラクテート形成速度(cell-specific lactate formation rate)は、培養の全経過にわたり正の範囲にあるが(図42)、しかしながら、この方法におけるラクテート蓄積は最も低い(図41)。
これらの観察は、下記の結論を可能とする:研究された流加バッチ法において、使用された細胞系CHO−hGM−CSF−PYC2は、コントロールされたpCO値でより低い最大ラクテート濃度を示した(コントロールされていないpCOプロセスと比較して15%pCOで30%減少)。定常期へのエントリーと共に観察されたラクテートの再代謝は、より高いラクテート濃度でより明白である。代謝のこの変化はグルコースまたはグルタミンの制限に結び付けられない。中心代謝(この場合にはラクテート形成が例として役立つ)は、したがってpCOのコントロールにより影響されうる。細胞質ゾルピルビン酸カルボキシラーゼを有するこのリコンビナント細胞系においては、代謝効率の増加は、培養培地中のpCOの増加により達成されうる(好ましくは、本明細書に示されたとおり、適切なコントロールおよび調節により行われた)。
(E)産物形成
特異的産物形成速度(specific product formation rate)は、異なるコントロールされたpCO値で有意に異なる(図43)。コントロールされていないpCOプロセスと比較して、特異的産物形成速度は、連続的にコントロールされたpCOで強く増加し、コントロールされた15%pCOプロセスでは、コントロールされた5%pCOプロセスと比較して平均して15%増加する(図43)。したがって、一定15%pCOまでのpCOのコントロールにより、増加した特異的産物形成速度および延長されたプロセス期間は、使用された細胞系CHO−hGM−CSF−PYC2の場合に100%の差で、hGM−CSF産物力価の最大化をもたらす(図44)。
(F)pHi細胞周期相分布および特異的生産性
下記において、増加したコントロールされたpCO濃度による増加した生産性の原因が分析されるべきであった。この目的で、異なるpCOプロフィルによる個々の発酵の細胞内pH曲線、特異的生産性および選択された細胞周期相分布を対比した。
実施例4において、pCOがpHに対してどの効果を有するかが明らかに示された。したがって、プロセスの培養培地におけるpCOジャンプは、細胞内pH値の二相変化を常に引き起こす。下記の図(図45〜47)において、細胞内pH値(脈動式供給の前に)、特異的生産性およびS期の細胞とG0G1期の細胞の百分率の比(S/G0G1)の曲線が示される。
コントロールされていないpCOによる流加バッチ培養において(図45)、最初の供給は、0.3単位だけのpHiの減少と同時に起こる。定常増殖期へのエントリーと共に、pHiは再び増加する。コントロールされたpCOプロセスと比較して、SPRは極めて低いままである。pHiも全培養期間中極めて低いレベル(pHi<7.1)に維持される。
コントロールされた5%pCO培養では(図46)、pHは、約0.3単位だけ最初の供給により、定常増殖期へのエントリーとは独立に、減少する。定常増殖期へのエントリーは、0.5単位だけのpHiの増加と同時に起こる。SPRも定常増殖期に強く増加する。全体として、pHiは、コントロールされていないpCO培養によるよりは高いレベルにある(図45)。しかしながら、それは、コントロールされた15%pCOプロセスによるよりも多く変動する(図47)。更に、定常増殖期の終りにおけるS/(G0G1)比の増加は、細胞周期の不完全な休止を示す。
コントロールされた15%pCO培養では(図47)、最初の供給の後に、pHiは、それぞれ、コントロールされていないpCOおよびコントロールされた5%pCOによる培養と対照的に、減少しない。定常増殖期へのエントリーの後ですら、pHiは僅かにのみそして短い期間減少する。全体として、コントロールされた15%pCOでは、この培養は、pHi値の最も低い変動を示しそして更に培養の間最も高いpHiレベルを示す。更にこれに関連して、一定の低い細胞周期相分画S/(G0G1)が、細胞周期の成功した休止に対応する約200時間から観察され得る(図47)。定常増殖期の間増加するSPRと組み合わさったこのように延長された生存可能培養期間は、この培養系列において最も高い最終産物力価をもたらす(図44)。
要約すると、G0G1期の細胞の細胞周期相分画と共に細胞特異的生産性(cell-specific productivity)を、図48において異なるpCOプロフィルによるプロセスについて示す。
したがって、分析された細胞系CHO−hGM−CSF−PYC2についての異なるpCOプロフィルによる示された発酵について下記の結果が要約されうる。増加するpHiは、培養された細胞の増加したG0G1期分画と相関する。増加したG0G1期分画は、細胞特異的生産性の増加と相関する。プロセスの間コントロールされたpCO設定値が高ければ高い程、定常増殖期におけるG0G1期分画はより高い。
G0G1期における細胞の休止による比生産性の増加は、文献に記載されている。例えばAMP(アデノシン一リン酸)の使用により3倍高い特異的産生形成速度(specific production formation rates)が観察された。何故ならば、対数増殖期の細胞は休止しており、したがって長い定常期に移行したからである。
本発明で追跡されたpCOコントロールのプロセスストラテジーは、CHO−hGM−CSF−PYC2について、Bollati et al.(Bollati Fogolin, 2003)による温度減少に基づくストラテジーによるよりも10倍高い(コントロールされたpCOで)産物濃度をもたらす。本発明で得られた発見に従えば、後者の場合においても、培養培地中のCOの溶解度は、温度減少により増加し、したがって、延長されたプロセス期間および延長されたG0G1期による増加した生産性における役割を演じることができるということを推定することができる。温度減少による同様な効果は既に記載されている(Bloemkolk, 1992; Moore, 1997; Kaufmann, 1999)。バッチ法とは反対に、使用される流加バッチ法において、基質の制限はもちろん回避され得そして延長されたプロセス期間が達成されうるとしても、増加したコントロールされたpCOは、より高い特異的産物形成速度にとって基本的因子である。この増加は、多分、培養培地中のCOの増加した溶解度に関係する。
(G)細胞呼吸
本発明で開発された培養培地中のpHコントロール、pCOの測定およびコントロールと組み合わせて、液相中のCOの濃厚化が相殺された(実施例2)。かくして、供給空気および排気によってCOを釣り合わせることが可能となった。二酸化炭素発生速度(CER)と酸素摂取速度(OUR)の相関は、呼吸商(RQ)をもたらす。グルコースのCOへの完全な呼吸はR=1をもたらすであろう。RQ>1は、発酵、脂質またはタンパク質同化作用によってのみ起こり、これに対してRQ値<1は、アミノ酸の不完全な酸化およびタンパク質および脂質異化作用のインディケーターである(Hauser and Wagner, 1997; Alberts, 2002)。
実施例1に記載のとおり、酸素移動速度OTRは、kLa値に基づいて計算されうる。この値は、両反応器において標準発酵条件下の再濃縮法を使用して培養培地中の標準圧力下に無細胞で決定された。大気圧下に使用された1L反応器では、kO2=3.55h−1。比例係数0.89によるガス酸素および二酸化炭素の拡散性を使用して(Frahm, Blank et al., 2002)、この反応器の値は、kO2=3.16h−1である。
供給空気中の酸素の流量容積を使用して、OURを計算した。反応器中の酸素の分圧を、酸素センサによってオンラインで測定した。pCO値に基づいて、溶解した酸素の濃度を、37℃における酸素のヘンリー定数を使用して計算した。供給空気中の酸素濃度に基づいて、理論的飽和濃度c*を計算した。これは、OTR値を計算することを可能とした。定常的なコントロールされた状態において、それぞれ、OTRはOURに等しくそしてCTRはCERに等しい。
OURと同様に、排気の測定に基づいてCERを計算することができる。図49および50は、pCOコントロールされたプロセスについてOUR、CERおよびRQ価を示す。最大値に達した後、RQ値は、コントロールされた15%pCOにおけるよりも5%pCOにおいて実質的により速い減少を示す。300時間のプロセス時間の後に、5%pCOにおけるプロセスのRQ値は、15%pCOにおけるRQ値のたったの3分の1である。コントロールされた15%pCOによるこの比較的より高い生産性のプロセスの代謝は、全プロセス期間全体にわたり、コントロールされた5%pCOによるプロセスの代謝よりもより酸化性である。
比較的高いガス容積流量により、低い細胞消費および産生速度は、供給空気および排気における濃度の差に関して釣り合わせることを可能としない。これに関して、本明細書で提示されたRQ計算は、微生物学的培養について記載された計算と比較していくらかの欠点を有する。にもかかわらず、RQ計算は、動物細胞培養プロセスにおいても発酵期間中リアルタイムでパラメーターRQを決定するためのpCOコントロールの潜在力を証明する。これは、pCOにより、結果として上記した最適化潜在力を有するpHiの目的をもった調節により、工業的な高細胞密度プロセスにおけるRQパラメーターに基づくプロセスコントロールを可能とするであろう。
産物形成は、本質的に研究された細胞系のG0G1期において起こる。コントロールされたpCOが高ければ高いほど、この期に残っている細胞の数はより大きい。したがって、より高いコントロールされたpCOにおける細胞のより高い生存率は、細胞が増加したpCOによるG0G1期においてより長く残存することを含意する。
(H)アポトーシス
より高いコントロールされたpCOレベルは、細胞培養に対する抗アポトーシス効果を有することが研究された。5相pHi曲線は、上記したすべての培養の共通の特徴であり、これは図45〜47から明らかである。すべての培養において、pHiの曲線の最後の転換点は、始まるアポトーシスを指示する公算が高い。これに関連して、細胞は、すべての培養を停止するための基準であった80%以下に生存率が減少する前に細胞内でアルカリ化する。培養に伴った細胞周期のフローサイトメトリー測定において、より高い数のDNAフラグメントが、一般にアポトーシスの後期(発芽)に観察されうるこの後期のpHi転換点(データは示されていない)の後のサブG1ピークとしても検出された。
(I)プロセス開発の結果
コントロールされていないpCOまたは低いレベル(5%)にコントロールされたpCOでは、脈動式供給は、細胞内pH値に対して望ましくない効果を有しうる(図45〜47)。この供給技術とは別に、製薬工業は、同様なプロセスにおいて全流加バッチプロセス全体にわたり連続的な供給を使用する。もしpCOがそれぞれ、相対的に一定のおよび/または高いレベルを維持するようにコントロールされていないならば(上記参照のこと)、これは、まず第一に本明細書に示された結果に基づいてコントロールされていないpHi振動を引き起こさない可能性である。しかしながら、細胞のpHiに対する同じ効果を目的に合わせて達成し、したがって、好ましくはpCOコントロールされた培養と組み合わせて、最適化されなければならない脈動式供給および連続的供給を組み合わせることにより細胞の生理学および代謝に対する同じ効果を目的に合わせて達成することが可能であろう。増殖および産生のプロセス相に適合したストラテジーが、本発明の発見に基づいて合理的に最適化されうる。HCO による高い細胞内バッファー能力により、培地中の高い(コントロールされた)pCO含有率が、より低い環境依存性pHi振動を引き起こす。
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Claims (6)

  1. クエン酸回路において改変されて細胞質ゾルピルビン酸カルボキシラーゼを発現するCHOホスト細胞におけるポリペプチドのリコンビナント産生のための方法であって、下記の工程:
    (a)ポリペプチドの発現を可能とする条件下に適当な培地中で該CHOホスト細胞を培養し、その際、培地中の溶解したCOの含有率(pCO)を12.5%〜17.5%の範囲にある一定の値に維持し、そして
    (b)細胞からかまたは培地からポリペプチドを回収する、
    を含む方法。
  2. 細胞が、CHO−hGM−CSF−PYC2である、請求項に記載の方法。
  3. ポリペプチドが、融合タンパク質、抗体もしくはそのフラグメント、インターフェロン、サイトカインまたは増殖因子である、請求項1または2に記載の方法。
  4. 流加バッチ法として行うことを特徴とする、請求項1〜のいずれかに記載の方法。
  5. 培地中の溶解したCOの含有率(pCO)を、質量流量コントローラ(MFC)によるカスケード式pCOコントローラを有するコントロールシステムによって一定に維持する、請求項1〜のいずれかに記載の方法。
  6. 供給空気中のCO比を、培地中のpCOの設定値からの不足分だけ増加させ、そして供給空気中のCO比を、培地中のpCOの設定値を超過した分だけ減少させ、そして、もし設定値を超過した分が供給空気中のCO比の減少によって十分に相殺できないならば、カスケード式コントローラがNを送るための追加のMFCを開く、請求項に記載の方法。
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