JP5484712B2 - 電子機器の粉砕方法 - Google Patents
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Description
これら希少元素は、希少故に天然鉱山からの収集には限りがあることから、前述した廃棄物を、希少元素を回収することを目的とした都市鉱山として、金、銀、プラチナなどの貴金属や希土類元素等の希少元素を回収して再利用することが試みられている。(特許文献1,4)
希少元素の含有濃度を示すTMR指数(表3に示す元素の含有濃度を示す指標)からすれば、天然鉱山に比べ高濃度であることからも、天然鉱山よりも都市鉱山を対象にするのがはるかに効率的と考えられる。
資源リスクの増大の中で、我が国の「都市鉱山」蓄積ポテンシャルの活用の重要性の認識は広まってきている。しかし、「都市鉱山」の可能性はあるものの、われわれはまだその「鉱脈」を見出しておらず、今も多くの使用済製品がリサイクルされることなく回収困難な散逸ストックとして散らばっている。
製品からの希少金属リサイクルの取り組みは、国、自治体、企業レベルさらには個人レベルを含めて強められているものの、資源リサイクルとして連結したチェーン状態を形成するにはなかなか至っていない。
この困難さの一因は、製品からの希少金属リサイクルはそれにより得られる希少金属の量よりはるかに大量の処理すべき廃棄物をともなっており、その処理コストを捻出しつつ希少金属の回収で得られる利得を、リサイクルチェーンを形成する経済主体で分割できるビジネスモデルを作るには、相当に安価なプロセスの連結でリサイクルチェーンを形成する必要があることがあげられる。
例えば、使用済電子機器基盤の含有希少金属分を地金価格にした場合、一台当たりの希少金属回収による利得は一般に期待されているものよりはるかに小さく、プロセスコストを低く抑えることの重要性がわかる。
現行のリサイクルシステム開発では、このプロセスコスト全体の低減を考えるよりは、有価なものを優先的に取り出していくピンポイント型の選別・摘出技術開発が数多く進められてきた。この技術開発も重要であるが、同時に、選別・摘出においては「安価な労働力による手選別」というオプションに勝るには高いハードルがあることも事実であった。
混在物として処理するプロセスの参考になったのは天然の鉱石の処理であり、天然の鉱石には目的元素以外に多数の副産物となる元素を含有している。現在の製錬技術はそれらを元素レベルで分離して取り出すことは得意であり、特に日本の技術はその世界の最先端にある。そこで、そのような製錬処理にかけやすいような希少金属を多く含有した原料、いわゆる「都市鉱石」、を製造できる低コストのプロセスを対象とした技術開発を行うこととした。
すなわち、
1) ヒトの認識能力、分離操作能力を極力使用しないこと
2) 回収のままの状態からの処理が容易なこと
3) 運転コストが小さく、都市立地も可能とする環境コストが小さいこと
4) 生成物の次段階での処理が容易なこと
を開発の目標とし、今回は、まず実験室レベルで、そのような可能性のあることを示すことで、「都市鉱石」製造の技術開発のひとつの例を提供することとした。
本発明は、このような実情に鑑み、部品への分解と選別作業を実質的に不要もしくは著しく低減できるようにすることを目的とする。
つまり、従来は別工程とされていた粉砕と濃縮の工程を、粉砕工程において一挙に達成し得ることとなった。
その結果、従来必要とされた廃棄物の分解作業をほとんど必要とすることなく、都市鉱山の回収作業が行えることとなり、その作業の効率を大幅に向上しえるにいたった。
特に、発明1に示すように粉砕子を用いることで、有用元素を含む粉砕物とそれ以外の粉砕物とに大きさの相違をつけることが容易になり、有用元素を含む粉砕粒子のみを回収して実質的に有用元素を濃縮する役割を容易に果たすことができた。
なお、本粉砕物が生成される明確な理由は定かではないが、電子機器に含まれる希少元素のほとんどが結晶化された無機材料に含有されており、その他の部分はプラスチック等の有機材料にて構成されている点と無縁ではないと考えられる。
無機材料は有機材料に比べ、一般に硬質で破砕しやすいものであり、さらに結晶化された無機材料はより破砕されやすい傾向にあることから、ミルによる粉砕により無機材料が有機材料より急速に粉砕され微小化される現象によるものかと推測する。
本発明は、「都市鉱石」化をボールミル法という単純なプロセスで可能であることを示し、「都市鉱石」化のための安価なプロセス技術の開発の余地がまだまだ十二分にあることを示した。
本発明の方法に限っていうならば、前段階に装入を可能なサイズとするだけの簡単な破砕工程をおけばよく、簡便に導入可能なプロセスである。かつ、破砕粒子は、その後工程として、浮選、風選などでさらに濃度をあげたり、分離することも可能な上、直接湿式の溶解に掛けることができるため、銅系レアメタル以外のレアメタルもバイプロダクトとして分離して回収することができる。
さらに、このプロセス単独では熱も、水も溶媒も不要なため、周辺の環境への配慮するコストが大幅に低減でき、かつ立地も使用済み製品の発生頻度の高い都市近郊においても可能となる。
また、ボールミルの特徴上装置規模を回収規模とあわせて設定することも可能であり、多様な地域での分散処理が可能となる。さらに、生成物は粉状の破砕粒子、板状物ともにかさ密度が向上しており、輸送やそれに引き続く処理を有利にすることができる。このようなメリットがあり、使用済み製品を対象とした「都市鉱山」の開発に有効であり、小型分散型のシステムつくりに役立つものである。
表2はその一例を示すものであり、特定の金属、たとえば金(Au)の分析値を見ても、処理以前の携帯の電子実装基板中の含有率は21g中の6.8mgで0.33%だったものが本特許による粉砕物では1.4%と数倍も濃縮されていることがわかる。しかし他方で、電子機器廃棄物では対象となる金属が特定の金属に限定されることはなく、タンタル、コバルト、白金族金属などが対象となる場合もあり、そのような際に金のような特定の金属の含有率で濃縮度を評価することは不十分である。
TMR(Total Material Requirement)係数はエコロジカル・リュックサックとも呼ばれ金属を1kg得るために何kgの天然資源が必要だったかを示す量であり、それぞれの金属の希少度を反映してる。このTMRで含有金属の成分量の重みづけすることで特定の金属にとらわれず希少度の高い金属の濃縮度を判定することができる。
処理をほどこさない廃棄物のままの携帯電話機では、TMR指数が122であるのに対して、実施例の破砕粉は1044となっており希少金属の高い濃縮度が得られていることがわかる。
なお、表2に示すように、天然鉱石の採掘下限濃度をもつ仮想的な天然鉱石を想定してみる。この仮想天然鉱石の成分をTMR係数で重みづけしたTMR指数の値は1g当たり69であるから、TMR指数が1g当たり500を超えれば、天然鉱石の高品位のものも超えた「都市鉱石(urban concentrates)」にまで濃縮されているとみなされる。
本発明では、廃棄物のTMR指数の2倍以上に濃縮した粉砕粒子を得ることで、従来から問題であった分解工程の煩雑さを解消し、粉砕工程を廃棄物の濃縮に利用したもので、粉砕による有用原子の濃縮を粉砕工程にて行うことができた。
さらに、粉砕粒子が主に無機材料部品の粉砕によるものであり、これに対して粉砕片が樹脂などの有機材料部品であることによると思われる大きさの相違が著しい粉砕物を得ることができた。
この粉砕粒子と粉砕片の大きさは1mmを境にすることができたが、廃棄物の構成材料の違いにより、この数値は0.5mmから2mmの範囲で用いる粉砕子の形状や量及び粉砕時の回転速度、粉砕時間などにより調整可能である。
また、粉砕片は、粉砕粒子に比べ段差を持った大きさとなるので、両者の選別が容易である。
特に、9割以上の粉砕片が粉砕粒子の最大の大きさの2倍以上、または、7割以上のものが4倍以上となる場合は、粉砕物の粉砕粒子の回収効率を100%近くにすることができた。
従来のこの種ミルを使用する目的が、粉砕片(粒子)全体が一定以下の大きさになるように用いられていたが本願発明では、粉砕する廃棄物に含まれる希少元素の濃度(TMR指数:関与物質総量指数のこと。物質1gの関与物質総量(Total Material Requirement))が2倍以上となった粉砕粒子(以下高含有粒子と記す。)になった時点で完了する。
本発明の実施に当たっては、大きさの異なる粉砕子を用いることが、粉砕物の大きさに有用原子を含むものとそれ以外のものとで、大きさを異ならせることに有効であった。
以下の実施例は、3種類の粉砕子を用いることを示したが、それ以上の4種類または5種類の粉砕子を用いることも可能である。
また、粉砕子の形状は球状に限らず、異形あるいは角形等の形状のものを一部に用いたりして、使用する粉砕子の形状を異ならせることも有効である。
以下の実施例は、その試行により最適な粉砕時間を求める方法を例示したものである。
粉砕の対象は、携帯電話のみならず、USBメモリやSDカードのような電子メディア、液晶カメラや携帯オーディオなどの小型電子機器に限らず、家庭用TVやDVDレコーダー、パーソナルコンピュータとその関連機器などでも粗破砕を施しミルに挿入できるサイズにすることにより処理できる。
粉化以外にも破砕と接合部の剥離が共存するため、ACアダプター、ドライヤーなど希少金属含有量の多くない機器に対しても、異種素材の固着部分からの分離効果が期待され、解体作業のより一層の簡便化に適用できる。
粉砕子として、図示するような角部を持つ異形粉砕子を用いることで、高含有粒子を効率良く得ることができ、本願発明の粉砕物を迅速に生成することができる。
当該異形粉砕子の形状として図1に示す他に、いがぐり状、角状など球と異なって不規則な衝撃を対象物に与えることのできる各種の形態が考えられる。また、大、小の球状粉砕子の両方、もしくはいずれかを異形粉砕子にしてもよい。
なお、以下の実施例において用いたミルは、次のものである。
1)遊星ボールミル
メーカー:FRITSCH
型 番 :05.20.1
定格電圧:110V
最高電力:0.55KW(無負荷時)
使用時電流:4.3A(回転5)、6.1A(回転7)
回転数 :0〜360回転
回転比 :公転(テーブル)1:自転(ポット)2
2)転動ボールミル
メーカー:TERAOKA
型 番 :8KFD−203
定格電圧:200V
消費電力:750W
使用時電力:0.88A
回転周波数:0〜60Hz
粉砕子(ボール)は、ボール大(18mmφ)、小(4.7mmφ)を体積比1:2で908個使用した。
資料は実際の携帯電話をポット内に装入できるようにおおよそ10mm角程度に切り取ったものを粉砕した。
処理時間は最長5時間とし、その中途過程でボールミルを開けて観察、計量した。
得られた試料の大きさ別重量は、表1に示す通りである。
大きさの選別は、乾式振盪フルイ法で行った。
実装基板および構造材部分の残存物は図3のように基板上にあるチップ等電子部品が分離し、めっきも離脱している。一方で基板そのものやアルミ、プラスチックなどの構造材的性質を有するものはある程度は磨耗するものの基本的な形状は保たれたまま残存しており、携帯等の電子機器からアルミ、プラスチック、基板材などの構造材と、チップやめっき中などに含まれる金、銀、パラジウム、タンタルなどの機能用希少金属を分離するのに有効である。
また、中間過程(2h)では図3の左下のように離脱前に破砕されたチップも確認され、接合部に限らずチップ等の優先破砕も利用できることも確認されている。
図4に4mm以下の粒度分布の時間変化を示すが、処理が進むことで粉末は微細になっており、離脱後のチップは、粉砕され全重量の3割程度が1mm以下になる。また、単に離脱・破砕されるだけでなくボールミルの効果で粉末化が進む。これにより、粉末中に入る希少金属の後処理工程による抽出も容易になる。
前記表1における2時間粉砕の1mm未満の粒子(高含有粒子)に関するTMR指数及び、前記表1に示す粉砕実験にて投入した携帯電話器A(携帯A)と携帯電話器B(携帯B)並びに天然鉱石に関するTMR係数および、希少元素の含有量とTMR指数を表2に示す。
また、表3には、TMR係数の一覧表を示す。
金属の関与物質総量の概算:原田幸明,井島清,片桐望,大蔵隆彦:日本金属学会誌、65巻 7号(2001)、564-570元素戦略アウトルック「材料と全面代替戦略」:独立行政法人物質・材料研究機構
チップの実装された基板のみを処理し中間過程の変化を調べることでチップの脱落・粉砕の様子が確認された。
基板にICチップを一個実装しただけの単純な装入物、および、基板材のみ、アルミ板のみを同様に転動ミルに装入して、基板が粉砕されることなくチップが離脱、粉砕できることを確認している。
図5はその結果であり、1時間の処理でチップが離脱し基板とは別の固形物として認識される。さらに、時間を経ると、基板部の磨耗による重量変化は少ないが、チップは粉砕され重量が減少し、ついには全てが粉化される。
図6のように、チップの実装されていない基板材およびアルミ板で同一条件の処理を行ったが、重量変化は少なく、これらは本処理においても破砕されず磨耗による減量のみで、ほとんどを固形物として残存させることができると確認された。
上記(図5)の処理と同時にチップを実装していない基板材のみおよび単独のアルミ板を装入し重量変化を見たが、それらの損傷・粉化の割合は少なく、粉末へのこれら基板材、構造材の混入の程度を抑えることができている。
球状ではない異形粉砕子を用いるとボールの衝突時に不規則な衝撃を対象物に与えることができるため、基板に接合状態で実装されたチップを接合部以外からも破壊し、基盤からの離脱を容易にすることができる。その実施例として、チップ実装基板を、大球、異形(図1中央に示す形状のもの。)、小球を用いた粉砕子の組み合わせ(個数比1:12:25、投入量302個)と、大球、小球に異形の代わりに中球粉砕子(直径12mmφ)を加えた3種の粉砕子全てを球状のボールとした組み合わせ(個数比1:5.4:25、投入量251個)で、それぞれ電力670Wで処理してチップの離脱状況を比較した。
図7がその結果であり、大、異形、小の組み合わせでチップは粉砕されながら基板から離脱していき、効果的に粉化されていく。チップが効果的に粉砕されながら離脱していく。そのため離脱後に微粉化されており残存基板材との分離が容易であることがわかる。
USBメモリをそのまま転動ボールミルで処理しても、ミル中で分解し、基板からチップ、めっきが離脱し粉化する。
遊星ボールミルより多くの量が処理でき、かつ、高回転の必要が無いため電力投入も低レベルに抑えられる転動ボールミルで(電力176W、ボール投入量216個)、実施例3に示す組み合わせの大、中、異形の粉砕子を用いて基板に実装されたチップ等電子部品が、分離され、粉化されることを確認した。試料としては、USBメモリ装置を用い、使用時のままの状態(図8の右)で装入した。図8は12時間処理後の状態であり、堅牢なUSBメモリ装置が解体され、中から実装基板部分が露出し、その実装基板上からはチップ等の電子部品が離脱・粉化されており、転動ミルにおいてもこの技術が有効であることが示された。
Claims (3)
- 電子機器を含む廃棄物を粉砕子により粉砕して金属を含む粉砕粒子を得る粉砕方法であって、
互いに大きさが異なる3種以上の粉砕子を用いて、 0.5mmから2.0mmの範囲内で設定された所定値以下の粉砕粒子と、所定値を超える粉砕片とに分離し、前記粉砕粒子のTMR指数が前記廃棄物のTMR指数の2倍以上となった時点で粉砕を終了することを特徴とする粉砕方法。 - 9割以上の粉砕片が粉砕粒子の最大の大きさの2倍以上、または、7割以上の粉砕片が粉砕粒子の最大の大きさの4倍以上となるように粉砕することを特徴とする請求項1の粉砕方法。
- 粉砕子が、球状ではない異形の粉砕子を含むことを特徴とする請求項1または2の粉砕方法。
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