JP5481629B2 - 粘土光触媒およびその製造方法 - Google Patents

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本発明は粘土光触媒およびその製造方法に係り、特に、従来よりも簡易かつ環境負荷の低い、粘土光触媒およびその製造方法に関する。
これまで、人間社会における主なエネルギー源として化石燃料が用いられてきたが、この化石燃料の大量消費によって、大気中の二酸化炭素が増加し、地球温暖化などの問題が誘引されてきた。昨今、地球規模的な環境問題と地球の持続的発展を支える将来のエネルギー問題を解決するという観点から、太陽光、水、バイオマス等の再利用可能資源から化学燃料を得る技術の開発が求められている。
そのひとつとして従来から、太陽光エネルギーを化学エネルギーに変換する材料である光触媒材料が着目されている。現在、光触媒は、その親水性や酸化能力を利用した防汚処理、有害物質分解など、さまざまな分野で既に利用されている。光触媒はまた、光エネルギーを利用して水素やメタンなどの化学燃料を生産可能な材料であり、この分野でも研究開発が活発に行われていて、より高活性な光触媒材料の開発が期待されている。
さて、高活性な光触媒材料を製造する方法のひとつとして粘土鉱物が活用されている。粘土鉱物の陽イオン交換特性を利用することによって、層間の狭い領域に光触媒ナノ粒子が担持された状態に調製可能であり、これにより、高い表面積を持った光触媒材料を得ることができる。
図6A、6Bおよび6Cは、従来の粘土担持光触媒の製造方法の概要を示す説明図である。図示するように、まずモンモリロナイト等の粘土鉱物61を、水6Wなどの溶媒に分散させる(図6A)。これに光触媒前駆体(重金属イオンや錯イオン、金属水酸化物コロイドなど)6Aを添加し、イオン交換反応によって粘土層61C間にこれらの前駆体6Aを担持する(図6B)。
その後、過剰な前駆体6Aやイオン交換された陽イオン61Pを洗浄除去し(廃液6D)、乾燥して前駆体担持粘土62を得、さらにこれを400℃以上にて焼成した後、粉砕処理を経て、金属酸化物光触媒を担持した粘土鉱物(光触媒担持粘土)63が得られる(図6C)。これは、粘土層間を金属酸化物で架橋したものであるために、層間架橋粘土とも称される。従来、この方法を用いて、さまざまな粘土鉱物と光触媒前駆体の複合体の調製が試みられ、開示されている。
これまで光触媒前駆体に用いられた金属酸化物としては、たとえば、酸化鉄(III)、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化タングステン、酸化ジルコニウム等がある。このような製法による金属酸化物担持粘土鉱物としては、たとえば後掲特許文献等に開示された技術がある。また、これら光触媒を担持した粘土は、非担持の光触媒よりも高い活性を持つことも報告されている。
特開平7−313875号公報「無機多孔体、及びその製造方法」 特開2006−283061号公報「粘土複合体膜の形成方法」 特開2003−62462号公報「粘土層間包接光触媒およびその製造方法」
佐藤次雄, 殷シュウ、「層間ナノコンポジットの調製と光触媒作用」, 触媒44(4), 2002, 234-239. J. Chen, and L. Zhu, "UV-Fenton discolouration and mineralization of Orange II over hydroxyl-Fe-pillared bentonite", J. Photochem. Photobio. A: Chem., 188 (2007) 56-64.
しかし、従来の光触媒担持粘土の製造方法にはいくつかの課題・欠点がある。まず、従来の製法は煩雑な多段工程である。すなわち、水への粘土鉱物分散工程−前駆体陽イオンの添加工程−固液分離工程−洗浄(廃液)・乾燥工程−焼成・粉砕工程 といった多数の工程を経なくてはならない。また、従来の製法では過剰量の光触媒前駆体を必要とし、重金属を多量に含む廃液が発生するために、環境負荷が高い。
さらに、従来の製法では粘土鉱物を強制的に光触媒材料によって架橋するために、製造された光触媒担持粘土は水への分散性を著しく損なうという欠点がある。これらのことから、粘土鉱物を利用した高活性光触媒をより簡易に製造する方法が必要とされている。
したがって本発明が解決しようとする課題は、かかる従来技術の問題点・欠点を踏まえ、粘土鉱物を用いた、より簡易かつ環境負荷が低く、しかも良好な水分散性も備えた光触媒およびその製造方法を提供することである。
本願発明者は、粘土鉱物がその結晶構造中に同型置換として含むFe(II)を、酸化処理によってFe(III)へと変化させることにより、別途光触媒前駆体を用いることなく、鉄成分に由来する光触媒能力を付与した粘土鉱物が製造可能であることを見出した。そしてかかる知見に基づき、光触媒機能および調製条件の検証を通して、上述課題の解決手段としての本発明を完成するに至った。すなわち、上記課題を解決するための手段として本願で特許請求される発明、もしくは少なくとも開示される発明は、以下の通りである。
〔1〕 粘土鉱物の結晶構造中の構造鉄(鉄(II))が酸化されてなる鉄(III)を含む、粘土光触媒。
〔2〕 前記粘土鉱物がスメクタイト族粘土鉱物であることを特徴とする、〔1〕に記載の粘土光触媒。
〔3〕 前記粘土鉱物の表面に金属触媒が担持されていることを特徴とする、〔1〕または〔2〕に記載の粘土光触媒。
〔4〕 粘土鉱物の構造鉄を鉄(III)に酸化することによって光触媒を得る、粘土光触媒製造方法。
〔5〕 酸化方法が、粘土鉱物の酸化雰囲気での焼成であることを特徴とする、〔4〕に記載の粘土光触媒製造方法。
〔6〕 酸化方法が、粘土鉱物への酸化剤の使用であることを特徴とする、〔4〕に記載の粘土光触媒製造方法。
〔7〕 前記酸化剤が過酸化物であることを特徴とする、〔6〕に記載の粘土光触媒製造方法。
〔8〕 粘土鉱物がスメクタイト族粘土鉱物であることを特徴とする、〔4〕ないし〔7〕のいずれかに記載の粘土光触媒製造方法。
〔9〕 前記粘土鉱物の表面に金属触媒を担持させることを特徴とする、〔4〕ないし〔8〕のいずれかに記載の粘土光触媒製造方法。
〔10〕 〔1〕ないし〔3〕のいずれかに記載の粘土光触媒を用い、光照射下で有機物を該粘土光触媒と接触させてこれを分解し、水素その他の化学燃料を得る、化学燃料製造方法。
〔11〕 〔1〕ないし〔3〕のいずれかに記載の粘土光触媒を用い、光照射下で有機物を該粘土光触媒と接触させてこれを酸化分解する、有機物分解方法。
本発明の粘土光触媒およびその製造方法は上述のように構成されるため、これによれば、基本的には1段の反応で、しかも低温処理での工程という極めて簡易な方法により、粘土光触媒を製造、提供することができる。また、重金属を含有する有害な廃液が出ないため、環境に負荷を与えることもなく、しかも従来よりも良好な水分散性を備えた粘土光触媒を製造、提供することができる。
さらに説明すれば、本発明の粘土光触媒は従来の光触媒を別途担持した粘土鉱物と異なって、光触媒活性成分を粘土鉱物そのもの、すなわち粘土鉱物自身の構造鉄に求めるものである。つまり、重金属イオンや錯イオン、金属水酸化物コロイドなどの光触媒前駆体を別途用いることなく光触媒粘土を製造することができる。したがって、製造方法がより簡易になり、かつ重金属イオンを含む廃液も発生しないのである。
また本発明製造方法によれば、従来法と異なり、焼成によって粘土層間を強制的に架橋しないため、粘土本来の特性が損なわれずに維持され、水溶液中で分散性、イオン交換性の高い光触媒を得ることができる。
また本発明の光触媒は、有機汚染物質の酸化分解だけでなく、有機物からの化学燃料(水素、メタン)生成に活性を有するため、自然光(たとえば太陽光)エネルギーを利用したバイオマス由来資源(アルコール、有機酸等)からの化学燃料製造にも応用することができる。
本発明粘土光触媒の製造原理を示す説明図である。 無酸素環境において本発明光触媒が活性を有する反応について示す説明図である。 有酸素環境において本発明光触媒が活性を有する別の反応について示す説明図である。 本発明粘土光触媒の製造方法の例(乾式)を示す説明図である。 本発明粘土光触媒の製造方法の例(湿式)を示す説明図である。 本発明粘土光触媒の製造方法の例(湿式)を示す説明図である。 各実施例光触媒等のX線回折結果を示すグラフである。 各実施例光触媒等の赤外分光分析結果を示すグラフである。 従来の粘土担持光触媒の製造方法の概要を示す説明図である。 従来の粘土担持光触媒の製造方法の概要を示す説明図である。 従来の粘土担持光触媒の製造方法の概要を示す説明図である。
本発明について、さらに詳細に説明する。
図1は、本発明粘土光触媒の製造原理を示す説明図である。また、
図2Aおよび図2Bは、本発明光触媒が活性を有する反応について示す説明図である。前者は無酸素環境、後者は有酸素環境における反応を示す。これらに図示するように本発明の粘土光触媒10は、粘土鉱物1の結晶構造中の構造鉄(鉄(II))2が、構造鉄酸化処理によって酸化されてなる鉄(III)3を含むことで、光触媒能力が獲得されたものであることを、主たる構成とする。
つまり、本発明の粘土光触媒10(以下、単に「光触媒」という場合もある。)は、同型置換によって、粘土鉱物1がその結晶構造中に含有する構造鉄Fe(II)2をFe(III)3に酸化させることにより製造するものであり、このようにして製造された粘土光触媒10は図2A等に示すように、光照射下で有機物を分解して水素やメタンを発生させたり、または有機物を酸化分解するために使用することができる。
粘土鉱物1の具体例としては、モンモリロナイト、ヘクトライト、サポナイト等のスメクタイト族、イライト、白雲母等の雲母族等を挙げることができる。これらの粘土鉱物は、八面体層内のAlをMgやFeとそれぞれ同型置換しており、その結果生じる負の層電荷を、結晶層間のNa、K、Ca2+等の交換性陽イオンで補っている。この八面体層内の同型置換によるFeが構造鉄と呼ばれ、通常はFe(II)の形態をとる。本発明は、この構造鉄Fe(II)に着目したものであり、上記いずれの粘土鉱物も本発明では使用することができ、また交換性陽イオンの種類も問わない。
ただし、本発明の光触媒を水溶液中での光触媒反応に用いる場合には、水に対して分散性が高いスメクタイト族粘土鉱物を好適に用いることができる。その中でも特に、モンモリロナイトを好適に用いることができる。
無酸素環境かつ光照射下で本発明の粘土光触媒を用い、有機物を原料として、水素やメタンといった化学燃料を製造することができる。たとえば図2Aに示すように、無酸素環境かつ光28照射下の液相中において、本粘土光触媒20にアルコール21や有機酸22などの有機物を接触反応させると、水素(H)24やメタン(CH)25といった化学燃料の生成を得ることができる。
原料有機物としては、炭素および水素原子を構成要素として含む化合物であって、粘土鉱物の層内に進入できるものであれば、特に制限なく使用することができる。たとえば、メタノール、エタノール等の炭素数1〜4の低級アルコールその他のアルコールや、ギ酸、酢酸等のカルボン酸その他の有機酸、あるいはまたアルデヒド等を好適に用いることができる。
しかも、従来技術である酸化鉄(III)担持による光触媒担持粘土よりも高い化学燃料生成性能を得ることができる。なおまた、化学燃料生成・製造のためには無酸素環境が必要であり、そのためには水相その他の液相中において反応を進行させることが望ましい。しかしながら、無酸素環境の条件を満たす限り、気相中であってもよい。
有酸素環境かつ光照射下で本発明の粘土光触媒を用い、有害な有機汚染物質などの有機物を粘土光触媒に接触させてこれを酸化分解することができる。たとえば図2Bに示すように、有酸素環境かつ光28照射下の液相中または気相中において、本粘土光触媒20にアルコール21や有機酸22などの有機物を接触反応させると、水(HO)26や二酸化炭素(CO)23に分解することができる。
COを生成可能、すなわち分解可能な有機物としては、炭素および水素原子を構成要素として含む化合物であって、粘土鉱物の層内に進入できるものであれば、特に制限なく分解・除去することができる。たとえば、メタノール、エタノール等の炭素数1〜4の低級アルコールその他のアルコールや、ギ酸、酢酸、クエン酸等のカルボン酸その他の有機酸、さらにアセトン、アセトアルデヒド、ホルムアルデヒドといったケトン・アルデヒドがあり、いずれも良好に酸化分解・除去することができる。しかも、従来技術である酸化鉄(III)担持による光触媒担持粘土よりも高い分解性能を得ることができる。
上記いずれの反応でも、本発明の光触媒で使用可能な光の波長範囲は広範であり(波長220〜1200nm程度)、さまざまな波長の光を用いることができる。また、その光源としてはたとえば、自然光(太陽光)、蛍光灯、ハロゲンランプ、高圧水銀灯、低圧水銀灯、ブラックライト、エキシマレーザ、重水素ランプ、キセノンランプ、Hg−Zn−Pbランプ等から選ばれる1種類の光源、または波長域の異なる2種類以上の光源を組み合わせて用いることができる。とりわけ本発明の光触媒は、波長300〜400nmの光により強く応答するため、自然光を利用できる点で実用性が高い。
本発明の粘土光触媒には、上述の各構成に加え、粘土鉱物の表面に金属触媒が担持されたものも含まれる。たとえば、Ni、Pd、Pt、Ir、Ru、Au、Ag触媒等であるが、とりわけPt、RuまたはIr触媒の担持は、特に好ましい化学燃料生成効果や有機物分解効果を得ることができる。つまり、金属触媒が光触媒反応の助触媒として作用するために、光触媒反応活性を一層高めることができるものである。
上述したように本粘土光触媒は、粘土鉱物の構造鉄を鉄(III)に酸化することによって製造することができ、かかる原理に基づく光触媒製造方法はすべて本発明の範囲内である。具体的な製造方法の例としては、後述する乾式の製造方法と湿式の製造方法があるが、いずれの方法も、粘土鉱物が結晶構造中に有する構造鉄(Fe(II))を温和な環境で酸化してFe(III)へ変化させることにより光触媒を製造するものである。
図3は、本発明粘土光触媒の製造方法の例を示す説明図であり、乾式の製造方法を示す。図示するように乾式製造方法は、粘土鉱物31を酸化雰囲気で焼成することにより構造鉄(Fe(II))をFe(III)に酸化し、これにより粘土光触媒33を得ることを、主たる構成とする。なお、焼成処理を行う前に、粘土鉱物31を乾燥しておくことが望ましい。また焼成温度は、100〜400℃とすることが望ましいが、高い温度ほど円滑に酸化反応が進む。
なお、焼成温度が400℃程度の温度を超えた場合には、粘土同士が結晶水の脱離により固着するために水への分散性が著しく損なわれることとなり、光触媒反応活性が低下する。したがって、高い光触媒活性および分散性を得るためには、かかる粘土同士の固着が生じない程度の低温にて焼成することが望ましい。
図4A、4Bはともに、本発明粘土光触媒の製造方法の例を示す説明図であり、湿式の製造方法を示す。図示するように湿式製造方法は、水などの液相4L中にて粘土鉱物41に酸化剤42を添加することにより、構造鉄(Fe(II))をFe(III)に酸化し、これにより粘土光触媒43を得ることを、主たる構成とする。酸化剤42としては、過酸化物などを好適に用いることができる。
湿式の製造方法について、さらに説明する。まず第一工程として、粘土鉱物41を溶媒4Lに分散する。溶媒としては通常、水を使用すればよい。粘土鉱物41の分散濃度は通常1〜10重量%程度であるが、充分に分散可能な濃度範囲である限り、これは自由に設定することができる。
第二工程として、粘土鉱物41の分散液に過酸化物等の酸化剤42を添加する。なお過酸化物としては、過酸化水素や過硫酸塩を好適に用いることができる。酸化剤42の添加量は自由に設定できるが、1〜20重量%が望ましい。この分散液を攪拌しながら加熱することにより、構造鉄の酸化を行う。
構造鉄の酸化は室温でも進行するが、分散液温を100℃程度までの範囲で加熱することにより、酸化反応をより円滑に進行させることができる。得られた光触媒(43)は、このまま分散液として使用してもよいし、液相部分を分離洗浄、乾燥、粉末化した形態にて使用してもよい。
なお本発明の粘土光触媒は、光触媒反応による化学燃料製造プロセスや有害有機物の分解プロセスを水溶液中にて進めることに、特に大きな産業上利用性があると見込まれる。したがってこの場合、粘土鉱物としては、水分散性の観点からスメクタイト族粘土鉱物、特に分散性の高いモンモリロナイトを用いることが、より望ましい。なおまた、乾式、湿式いずれの製造方法においても、原料ベントナイトから、精製粘土(モンモリロナイト)を分離精製し、これを上記工程1以降に供することができる。
また、粘土鉱物の表面に金属触媒を担持させたものも本発明の粘土光触媒に含まれることは上述のとおりだが、金属触媒を担持させる場合、イオン交換法、光電着法、真空蒸着法、スパッタリング法など従来公知の方法を適宜用いることができる。
以下、本発明を実施例によってさらに説明するが、本発明はかかる実施例に限定されるものではない。
<実施例1 原材料の調製と乾式法での調製>
ベントナイト(日本砿研製、津軽2号)50gを5000mlの蒸留水に分散し、この分散液を遠心分離することにより、ベントナイトに含有されるモンモリロナイトを精製分離した。このモンモリロナイトを1mol/l塩化ナトリウム溶液に分散、撹拌し、交換性陽イオンをNaに置換した。その後、遠心分離によって過剰量の塩化ナトリウムを除去し、乾燥、粉砕してNa型モンモリロナイト(Na−MT)を分離した。ここで得られたNa−MTについて蛍光X線分析を行った結果、約8.3%の鉄分が認められた(表1)。得られたNa−MTの粉末10gを、電気炉を用いて大気条件において300℃で2時間焼成した。その後、室温まで冷却して光触媒Aを得た。
<実施例2 湿式法による粘土光触媒の調製>
実施例1で得たNa−MTの粉末1gを、100mlの蒸留水に分散し、この分散液に0.5gの過硫酸ナトリウムを添加した。この溶液を撹拌しながら60℃に2時間保持した。その後、遠心分離によって粘土のみを洗浄、分離した後に、乾燥、粉砕して光触媒Bを得た。
<評価1 X線回折>
図5Aは、各実施例光触媒等のX線回折結果を示すグラフである。図示するように、実施例1および実施例2で得られたNa−MT、光触媒A、光触媒Bについて粉末X線回折(島津製作所 XD−610)にて分析したところ、粘土鉱物の結晶相の変化は認められず、また、酸化処理による新たな化合物の生成も認められなかった。なお図中、符号51、52、53のグラフは、それぞれ光触媒B、光触媒A、Na−MTを示す。
<評価2 赤外分光>
図5Bは、各実施例光触媒等の赤外分光分析結果を示すグラフである。図示するように、実施例1および実施例2で得られたNa−MT、光触媒A、光触媒Bについて赤外分光法によって比較したところ、光触媒Aおよび光触媒Bの両者については、構造鉄Fe(III)に由来するピーク(780〜800cm−1、MgFe(III)OH変角振動に由来)が観察された。これより、Na−MTに含まれる構造鉄が酸化され、Fe(II)からFe(III)の形態になっていることが確認された。なお図中、符号51、52、53のグラフは、それぞれ光触媒B、光触媒A、Na−MTを示す。
<比較例1 従来の別途担持方式によるFe/MTの調製>
実施例1で得られたNa−MT1gを100mlの蒸留水に分散し、これにモンモリロナイトのイオン交換容量(約100meq/100g)に対して10倍量の三核酢酸鉄([FeO(OCOCH)水溶液を添加し、20℃で3時間攪拌することでイオン交換を行った。その後、5回の遠心分離によって粘土に未吸着の三核酢酸鉄イオンを除去し、イオン交換されたモンモリロナイトを分離した。分離した三核酢酸鉄イオン担持モンモリロナイトを乾燥し、これを大気条件において焼成し(400℃、10時間)、モンモリロナイトに酸化鉄(III)を担持した光触媒(Fe/MT)を得、比較例1とした。なお、鉄成分の量を実施例と揃えるために、Fe/MTの使用量は3.2mgとした。
<評価3 光触媒反応>
実施例1、2および比較例1の光触媒を用い、無酸素または有酸素条件における、アルコールと有機酸に対する光触媒的分解反応活性を比較した。
<3−1 無酸素条件の場合>
光触媒反応容器として、パイレックス(登録商標)ガラス製の容器(容積21ml)を用いた。これに10mgの試料(Na−MT、光触媒A、または光触媒B)を添加した後、10mlのアルコール溶液または有機酸溶液を加え、ガラス容器内をアルゴンガス(純度99.999%)で置換した。ここで、アルコールとして、1mol/lメタノール、1mol/lエタノール使用し、反応溶液のpHはNaOHの添加により、いずれも13.0に揃えた。また、有機酸としては1mol/lギ酸と1mol/l酢酸を使用し、反応溶液のpHはNaOHの添加により、いずれも5.0に揃えた。その後、容器を密閉し、水銀ランプ(照射強度110mW/cm)で光を照射し、18時間後に容器内のガスを採取し、ガスクロマトグラフを用いてガス生成量を測定した。その結果を表2に示す。
実施例1および2で得た光触媒A、光触媒Bは、Na−MTと比べて水素(H)またはメタン(CH)の生成が著しく多く、Na−MTと比べて高い光触媒活性を有していることがわかった。特に、有機酸に対する反応活性が高かった。また、酢酸を反応物とした場合には水素の生成は見られず、メタンの発生が確認された。これにより、光触媒A、光触媒Bは、酢酸をメタンに分解する光コルベ反応に対しても活性であることがわかった。
さらに、光触媒Aと光触媒Bは同等の活性を示しており、湿式と乾式のいずれの製法によっても同等の機能を持つ光触媒を製造し得ることが示された。なお、天然の粘土鉱物の構造鉄は、多少Fe(III)を含んでおり、Na−MTでわずかに確認された光触媒活性、すなわちギ酸による微量の水素生成等はこれに起因すると考えられる。
<3−2 有酸素条件の場合>
ガラス容器内をアルゴンで置換せずに、すべて大気条件にて密閉した以外は、上記3−1と同様にして光照射を行った。有機物の酸化分解によって生ずる二酸化炭素の生成量を測定した。その結果を表3に示す。
表3の結果から、酸素が存在する条件においては、光触媒Aおよび光触媒Bのいずれの光触媒も、有機物の酸化分解に対して有効な光触媒であることがわかった。また、3−1と同様に、特に有機酸の分解に有効であることが示された。なお、結果のみを記すが、各実施例光触媒はホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、クエン酸ナトリウムおよびアセトンを分解してCOを発生した。また、ホルムアルデヒドを分解した際には、Hの発生も得た。
本発明の粘土光触媒およびその製造方法によれば、有機汚染物質の酸化分解除去を効果的に行うことができる。また、有機物からの化学燃料生成にも活性を有するため、自然光エネルギーを利用し、アルコールや有機酸といったバイオマス由来資源を原料とした化学燃料製造にも応用することができる。したがって、環境関連産業、エネルギー産業、土石分野の産業、その他広範な産業分野において、利用性の高い発明である。
1、31、41…粘土鉱物
2…構造鉄(鉄(II))
3…構造鉄が酸化されてなる鉄(鉄(III))
10、20、33、43…粘土光触媒
21…アルコール
22…有機酸
23…二酸化炭素(CO
24…水素(H
25…メタン(CH
26…水(HO)
27…酸素(O
28…光
31C、41C…粘土層
31P、41P…陽イオン
42…酸化剤
4L…液相
61…粘土鉱物
61C…粘土層
61P…陽イオン
62…前駆体担持粘土
63…光触媒担持粘土
6A…光触媒前駆体
6D…廃液
6W…水

Claims (11)

  1. 粘土鉱物の結晶構造中の構造鉄(鉄(II))が酸化されてなる鉄(III)を含む、粘土光触媒。
  2. 前記粘土鉱物がスメクタイト族粘土鉱物であることを特徴とする、請求項1に記載の粘土光触媒。
  3. 前記粘土鉱物の表面に金属触媒が担持されていることを特徴とする、請求項1または2に記載の粘土光触媒。
  4. 粘土鉱物の構造鉄を鉄(III)に酸化することによって光触媒を得る、粘土光触媒製造方法。
  5. 酸化方法が、粘土鉱物の酸化雰囲気での焼成であることを特徴とする、請求項4に記載の粘土光触媒製造方法。
  6. 酸化方法が、粘土鉱物への酸化剤の使用であることを特徴とする、請求項4に記載の粘土光触媒製造方法。
  7. 前記酸化剤が過酸化物であることを特徴とする、請求項6に記載の粘土光触媒製造方法。
  8. 粘土鉱物がスメクタイト族粘土鉱物であることを特徴とする、請求項4ないし7のいずれかに記載の粘土光触媒製造方法。
  9. 前記粘土鉱物の表面に金属触媒を担持させることを特徴とする、請求項4ないし8のいずれかに記載の粘土光触媒製造方法。
  10. 請求項1ないし3のいずれかに記載の粘土光触媒を用い、光照射下で有機物を該粘土光触媒と接触させてこれを分解し、水素その他の化学燃料を得る、化学燃料製造方法。
  11. 請求項1ないし3のいずれかに記載の粘土光触媒を用い、光照射下で有機物を該粘土光触媒と接触させてこれを酸化分解する、有機物分解方法。
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