JP5479756B2 - 熱処理炉およびこれを用いた排ガス処理装置 - Google Patents

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Description

本発明は、半導体製造装置から排出されるシラン系ガスを含む処理対象ガスを処理するのに適した排ガス処理装置に関する。
半導体製造プロセス、特にCVD(化学的気相成長法)プロセスでは、シラン(SiH4)を代表とするシラン系ガスが使用されており、これらのシラン系ガスの多くは人の健康や地球環境に多大な影響を与えることが知られていることから、CVDチャンバーでのデポジットに使用した上記ガスを含む処理対象ガスは、加熱分解など様々な処理方式によって除害された後、大気中へと排出されている。
このような処理対象ガスの除害を行う装置として、例えば、図4に示すように、半導体製造装置1から排出された処理対象ガスFに含まれる粉塵などを入口スクラバー2で除去した後、電熱ヒータ等の熱源を備えた熱処理炉3で当該処理対象ガスFを加熱分解し、かかる加熱分解によって得られた熱処理済排ガスT中の粉塵や水溶性成分を湿式の出口スクラバー4において水との気液接触により除去する排ガス処理装置Aが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
かかる排ガス処理装置Aを用いれば、処理対象ガスF中のシラン系ガスを除害することができ、無害となった熱処理済排ガスTを大気中へと排出することができる。
特開2002−188810号公報(第3−6頁、第1図)
ここで、上述の排ガス処理装置Aでは、熱処理炉3での加熱分解によって処理対象ガスF中のシラン系ガスが固体の微細なシリカ[二酸化ケイ素(SiO2)]粉となり、熱処理炉3内の熱分解による高熱により融解したシリカが該熱処理炉3の内壁に付着して再び固化することにより、あるいは微粉状のシリカが熱処理炉3の内壁に雲状に堆積した後に該高熱により焼き固められて(シリカの表層が融解して互いに融着することにより)ガラス状になり、これを何度も繰り返すことでシリカの塊が成長することにより、最悪の場合には熱処理炉3を閉塞させてしまうことがあった。
とりわけ、太陽電池パネルの生産に用いられるCVD装置では、シラン系ガスに加えて大量の水素も使用されるので、当該CVD装置から排出される処理対象ガスFを加熱分解したときには、熱処理炉3内でシラン系ガスおよび水素が空気中の酸素と結合して生じる熱量も多くなることから、シラン系ガスだけの場合に比べて熱処理炉3内の温度が高くなりやすく、このため、上述のような熱処理炉3の閉塞が発生しやすくなると云う問題があった。
それゆえに、本発明の主たる課題は、シラン系ガスを含む処理対象ガスの加熱分解によって生じた微粉シリカによる閉塞を回避できる熱処理炉およびこれを用いた排ガス処理装置を提供することにある。
請求項1に記載した発明は、「内部に高温の排ガス処理空間20eが形成される縦長で密閉筒状のケーシング20aを有する炉本体20と、
前記ケーシング20aの天面を貫通する処理対象ガス導入管26を介して前記排ガス処理空間20eに少なくともシラン系ガスを含む処理対象ガスFを供給する処理対象ガス供給手段22と、
前記処理対象ガス導入管26に接続された空気供給管32を介して前記排ガス処理空間20eに、前記処理対象ガスFの熱分解に必要な空気A1に加えて、前記排ガス処理空間20eの温度をシリカの融点以下にする温度調節用の空気A1を供給する空気供給手段24とを備えた熱処理炉12であって、
前記処理対象ガス導入管26は、両端が閉塞された円管状に形成されており、前記ケーシング20aの外部に配設される前記処理対象ガス導入管26の他端に前記空気供給管32が貫通すると共に、前記排ガス処理空間20eに配置される前記処理対象ガス導入管26の一端部の側面に、前記処理対象ガスFおよび前記空気A1を放出するための放出孔26aが複数設けられていることを特徴とする熱処理炉12」である。
この発明によれば、処理対象ガスFに含まれるシラン系ガスが高温の排ガス処理空間20eでケイ素と水素とに熱分解された後、当該ケイ素が空気中の酸素と結びついて微粉状のシリカが生成されるが、排ガス処理空間20eには、当該空間の温度をシリカの融点以下にする温度調節用の空気が空気供給手段24から送られているので、微粉状のシリカが融解して炉本体20の内壁に付着し、あるいは、微粉状のシリカが雲状に堆積した後に堆積したシリカが焼き固められて(シリカの表層が融解して互いに融着することにより)成長するのを回避することができる。
請求項2に記載の発明は、「請求項1に記載の熱処理炉12と、
前記熱処理炉12で処理された前記処理対象ガスFを水の気化温度以上で且つバグフィルタ16における濾布50の耐熱温度以下に冷却する冷却手段14と、
前記冷却手段14で冷却された前記処理対象ガスF中のシリカを捕捉するバグフィルタ16とで構成されていることを特徴とする排ガス処理装置10」である。
この発明によれば、処理対象ガスFを水の気化温度以上で且つバグフィルタ16の濾布50の耐熱温度以下に冷却することにより、バグフィルタ16において、上記温度範囲にてガス状態である水分は濾布50を通過し、粉体であるシリカのみが当該濾布50によって捕捉されて処理対象ガスF中から除去・回収される。これにより、熱処理炉12における閉塞を回避できるだけでなく、処理対象ガスF中からシリカの粉塵を比較的高い純度で回収して、その後の廃棄物処理をスムーズに行なえるのに加え、このシリカの粉塵を有価物として活用することもできる。つまり、回収したシリカの粉塵をケイ素源として再生利用することができる。
本発明によれば、シラン系ガスを含む処理対象ガスの加熱分解によって生じたシリカが融解することによる閉塞を回避できる熱処理炉およびこれを用いた排ガス処理装置を提供することができた。
本発明を適用した排ガス処理装置を示すフロー図である。 排ガス処理空間の温度制御方法を説明するためのグラフである。 排ガス処理空間の温度制御方法を説明するためのグラフである。 従来技術を示す図である。
以下、本発明を図示実施例に従って詳述する。図1は、本発明が適用された排ガス処理装置10の概要を示すフロー図である。この図が示すように、本実施例の排ガス処理装置10は、大略、熱処理炉12、冷却手段14、バグフィルタ16および排気ファン18をこの順に接続して構成されている。
熱処理炉12は、炉本体20と、処理対象ガス供給手段22と、空気供給手段24と、制御装置25とで構成されている。
炉本体20は、耐火材および該耐火材を覆うステンレス等の金属で形成された縦長のケーシング20aを備えており、その内部には、縦長の内部空間20bが形成されている。
また、炉本体20の内側下部には、内部空間20bを上下に区切るバッフル21が設けられており、当該バッフル21によって区切られた内部空間20bの上側を排ガス処理空間20eといい、下側を排ガス冷却空間20fという(つまり、炉本体20は、排ガス処理空間20eと排ガス冷却空間20fとをひとつの筐体内に備えていることになる。)。バッフル21の中心部には、通流孔21aが設けられており、排ガス処理空間20eに導入された処理対象ガスFおよび空気A1は、当該通流孔21aを通って、排ガス処理空間20eから排ガス冷却空間20fに移動できるようになっている。
また、ケーシング20aには、排ガス処理空間20eの温度を測定し、その温度信号S5を制御装置25に発信する排ガス処理空間温度計20dが取り付けられている。
排ガス処理空間20eには、熱源として、ケーシング20aの天面から4本の電熱ヒータ20cが垂設されている(もちろん、電熱ヒータ20cの本数はこれに限られるものではなく、さらに、電熱ヒータ20cに替えて大気圧プラズマや燃料バーナーなどを熱源として用いてもよい。)。この電熱ヒータ20cは、排ガス処理空間20eをシラン系ガスが熱分解される運転開始温度(800℃程度)まで昇温するとともに、当該温度まで昇温した後は、制御装置25からの稼働・停止信号S1、S1’によってオン・オフされるようになっている。
処理対象ガス供給手段22は、太陽電池パネルの製造に用いられるCVD装置(図示せず)から排出された、大量のシラン系ガスおよび水素を含む処理対象ガスFを排ガス処理空間20eに供給する手段である。本実施例では、一端が排ガス処理空間20eに配設され、他端がケーシング20aの天面を貫通し外部に向けて縦方向に延びる、両端が閉塞された円管状の処理対象ガス導入管26と、一端が図示しないCVD装置に接続されているとともに、他端が処理対象ガス導入管26の側面に接続されており、内部に処理対象ガスFが通流する処理対象ガス通流管28とで構成されている。
処理対象ガス導入管26の一端部側面には、処理対象ガスFおよび後述する空気A1を処理対象ガス導入管26の内側から外側に向けて図中横向きに放出するための放出孔26aが複数設けられている。また、処理対象ガス通流管28には、当該処理対象ガス通流管28内の圧力値信号S2を排気ファン18のインバータ18a(後述)に送る圧力計29が取り付けられている。
空気供給手段24は、送風ファン30と空気供給管32とを備えている。
送風ファン30は、空気供給管32を介して排ガス処理空間20eに空気を供給するための送風機であり、内蔵するインバータ30aが制御装置25からの回転数信号S3に基づいて送風ファン30の回転数を制御することにより、シラン系ガスおよび水素の熱分解に必要な熱分解用の空気に加えて、排ガス処理空間20eの温度をシリカの融点以下にする温度調節用の空気を供給するようになっている(本明細書では、送風ファン30から供給される空気をまとめて「空気A1」という。)。送風ファン30から供給される空気A1の流量は、空気供給管32に取り付けられた流量計34で測定される。なお、送風ファン30から供給される空気A1の量は、上述のようにインバータ30aのみで制御するようにしてもよいし、空気供給管32において送風ファン30および流量計34の間に取り付けられたダンパ36と当該インバータ30aとを組み合わせて制御してもよい。
空気供給管32は、処理対象ガス導入管26よりも細径に形成されたパイプ材であり、その一端が送風ファン30に接続されているとともに、他端が処理対象ガス導入管26の他端を貫通してその内部に導かれて、処理対象ガス導入管26に対する処理対象ガス通流管28の接続位置よりも下流側で且つ放出孔26aよりも処理対象ガスFの上流側に配設されている。
制御装置25は、図示しないCVD装置からのシラン系ガスおよび水素の流量信号S4と、排ガス処理空間温度計20dからの温度信号S5とを受信し、これら信号S4、S5に基づき、電熱ヒータ20cに対して稼働・停止信号S1、S1’を送信するとともに、送風ファン30のインバータ30aに対して回転数信号S3を送信する装置である(なお、制御装置25の具体的な動作については後述する。)。
冷却手段14は、排ガス処理空間20eから排ガス冷却空間20fに導かれた熱処理済の処理対象ガスFに冷却用空気A2を混合してこれを冷却する装置であり、冷却用空気ファン38と冷却用空気管40とで構成されている。
冷却用空気ファン38は、冷却用空気管40を介して排ガス冷却空間20fに冷却用空気A2を供給するための送風機であり、内蔵するインバータ38aがバグフィルタ16からの温度信号S5に基づいて冷却用空気ファン38の回転数を制御することにより、所望の量の冷却用空気A2を供給するようになっている。なお、冷却用空気ファン38から供給される空気量は、上述した送風ファン30からの空気量と同様に、インバータ38aのみ、あるいは、ダンパ44と当該インバータ38aとを組み合わせて制御することができる。
冷却用空気管40は、一端が冷却用空気ファン38に接続されているとともに、他端が炉本体20における排ガス冷却空間20fに連通接続されているパイプである。当該冷却用空気管40には、流量計42が取り付けられている。
排ガス冷却空間20fとバグフィルタ16との間には、一端が排ガス冷却空間20fに連通接続されており、他端がバグフィルタ16に接続された処理対象ガス導出管41が配設されており、冷却用空気A2で冷却された処理対象ガスFは、この処理対象ガス導出管41の内部を通流してバグフィルタ16に送られる。
なお、本実施例では、冷却手段14として冷却用空気A2を混合することによって処理対象ガスFを冷却する場合を示したが、例えば、冷却手段14としてチラー等の冷却装置を処理対象ガス導出管41上に設け、処理対象ガスFを直接冷却してもよい。
バグフィルタ16は、処理対象ガスF中のシラン系ガスが熱分解することによって副生した微細なシリカ[二酸化ケイ素(SiO2)]の粉塵を処理対象ガスF中から除去および回収する装置であり、大略、ケーシング46と仕切り部材48と濾布50とで構成されている。
ケーシング46は、ステンレスなどの金属材料(もちろん、耐熱性および耐食性を有する材料であれば、他の材料であってもよい。)で形成された内部空間を有する密閉筒状体である。このケーシング46の内部空間は、仕切り部材48で上下2つの空間に仕切られ、仕切り部材48よりも下側の空間が排ガス導入空間46a、上側の空間が排ガス導出空間46bとなっている。そして、排ガス導入空間46aには、処理対象ガス導出管41の他端が連通接続されている。
仕切り部材48は、ケーシング46の内部空間にて水平方向に架設され、上述のようにケーシング46の内部空間を排ガス導入空間46aと排ガス導出空間46bとに仕切るステンレス鋼板製(もちろん、耐熱性および耐食性を有する材料であれば、他の材料であってもよい。)の部材で、その表面には排ガス導入空間46aと排ガス導出空間46bとを互いに連通する複数の連通孔52が設けられている。そしてこの連通孔52には、濾布50の形状を円筒状に維持するための骨組みであるリテーナー54が、排ガス導入空間46aに突出するようにして取り付けられている。
濾布50は、PTFE(4フッ化エチレン)繊維等の耐熱性の繊維からなる布帛(不織布や織布)で構成された細長袋状の濾材で、リテーナー54の排ガス導入空間46a側表面を覆うように被せられると共に、その開口部側が仕切り部材48の連通孔52に対し、処理対象ガスFのリークがないように密着して取り付けられている。
ここで、濾布50の耐熱温度は、濾材を構成する繊維の温度に依存し、例えば、上述のように濾材がPTFE繊維からなる場合、濾布50の耐熱温度は概ね260℃前後となる。
本実施例のバグフィルタ16には、コンプレッサー56aと、該コンプレッサー56aによって発生した圧縮空気をリテーナー54の内部空間(排ガス導出空間46bに連通する側の空間)に送給するブロー配管56bとで構成されたブロー装置56が取り付けられている。濾布50の表面に堆積した粉塵がある一定以上の量となり濾布50を通過する際における処理対象ガスFの圧力損失が所定値を超えると、当該ブロー装置56を作動させ、濾布50に堆積した粉塵を圧縮空気で払い落とすようにしている。
なお、本実施例では、バグフィルタ16に4本の濾布50が用いられているが、濾布50の本数は当然4本に限られることはなく、処理対象ガスFの流量や処理対象ガスF中の粉塵(大半がシリカである。)の量に応じて濾布50の本数を適宜設定することができる。また、濾布50の長さも、処理対象ガスF中の粉塵の量、あるいはケーシング46における排ガス導入空間46aの高さに応じて適宜設定することができる。
また、バグフィルタ16の台数は1台でもよいし、複数台を一組として設置してもよい。バグフィルタ16を複数台設置することにより、その一部の運転を停止してバックアップ用とすることができ、その結果、バグフィルタ16のメンテナンスやトラブルなどの際に排ガス処理装置10全体の運転を停止する必要がなくなり、当該排ガス処理装置10の長期間連続運転が可能となる。
さらに、上述の実施例では、処理対象ガスFの粉塵を除去する装置としてバグフィルタ16を使用する場合を示したが、これに替えて電気集塵機やサイクロン集塵機など他の集塵機を用いることも可能である。これら他の集塵機を使用することにより、処理対象ガスFと接触する材質が、耐熱温度が比較的低い濾布50からステンレス等の金属になるので、冷却手段14で冷却する処理対象ガスFの上限温度の規制を緩和させることができる。しかしながら、電気集塵機であれば定常運転の際に別途電力が必要であり且つ設備が大型化する点やサイクロン集塵機であればきめ細かな差圧管理(捕集効率の維持管理)が必要になると云った点などについては考慮が必要となる。
排気ファン18は、バグフィルタ16の排出側に取り付けられた処理対象ガス放出配管58に接続されており、この排気ファン18のインバータ18aが処理対象ガス通流管28内の圧力値信号S2に基づいてファンの回転数を制御することにより、排ガス処理装置10の内部における排気ファン18よりも上流側が常に大気圧よりも低い圧力(=負圧)に保たれている。このため、処理対象ガスFや同ガス中の粉塵等が誤って排ガス処理装置10から外部へ漏れ出すことがない。
なお、本実施例の排ガス処理装置10では、バグフィルタ16のケーシング46の内面や仕切り部材48、処理対象ガス放出配管58等の内面には、処理対象ガスFに含まれるフッ化水素などの腐食性成分による腐蝕から各部を守るため、塩化ビニル、ポリエチレン、不飽和ポリエステル樹脂およびフッ素樹脂などによる耐蝕性のライニングやコーティングが施されている。
次に、以上のように構成された排ガス処理装置10を用いて処理対象ガスFを処理する手順について説明する。
太陽電池パネルの生産に用いられる図示しないCVD装置から排出された、大量のシラン系ガスおよび水素を含有する処理対象ガスFは、処理対象ガス供給手段22を経由して炉本体20の排ガス処理空間20eに供給される。
そして、排ガス処理空間20e内に供給された処理対象ガスFは、電熱ヒータ20cによる800℃以上の高温に曝されることによって加熱分解される。このとき、排ガス処理空間20e内では、下記式(1)および(2)で例示するような反応が起こり、シラン系ガスからシリカの粉塵と水が、また、水素から水がそれぞれ副生し、これら分解副生物が処理対象ガスF中に存在することになる。
SiH4 + 2O2 → SiO2 + 2H2O … 式(1)
2H2 +O2 → 2H2O … 式(2)
ここで制御装置25の動作例について図2および図3を用いて詳述する。図中の縦軸(排ガス処理空間20eの温度)におけるT1は、シラン系ガスを熱分解できる運転開始温度(800℃程度。なお、運転開始温度は、半導体製造装置で使用されるガスの種類によって適宜設定される。)を示しており、また、T2は、シリカが融解することなく運転を継続することのできる設定上限温度(例えば、1200℃)を示している。
熱処理炉12が処理対象ガスFを受け入れる準備段階において、制御装置25が電熱ヒータ20cに稼働信号S1を送信することにより、排ガス処理空間20eは、図2に示すように、所定の速さで昇温する。排ガス処理空間20eの温度がT1まで昇温すると(点P1)、処理対象ガス供給手段22を介して処理対象ガスFが排ガス処理空間20eに供給されるとともに、制御装置25は、CVD装置からの流量信号S4に基づいてシラン系ガスおよび水素の熱分解に必要な空気量を供給できる回転数信号S3を送風ファン30のインバータ30aに送信する(この段階において、電熱ヒータ20cは稼働状態のまま)。供給された処理対象ガスF中のシラン系ガスは排ガス処理空間20eで熱分解された後シリカを生成し、また、水素は空気A1中の酸素と結合して水となるが、これらの反応は発熱反応であることから、処理対象ガスFの供給開始後は、排ガス処理空間20eの昇温速度が速くなる。
処理対象ガスFの供給開始後、排ガス処理空間20eの温度が予め設定された電熱ヒータ停止温度T3に到達すると(点P2)、制御装置25は、電熱ヒータ20cに対して停止信号S1’を送信し、これを受けた電熱ヒータ20cへの電力がカットされる。その後、処理対象ガスF中のシラン系ガスおよび水素の量に基づく発熱量が排ガス処理空間20eからの損失熱量(熱処理炉12の外部へ放散される熱量や、処理対象ガスFが持ち出す熱量)を上回る場合には、排ガス処理空間20eの温度は上昇を続け(図中L1)、逆に下回る場合には、同温度は下降する(図中L2)。
排ガス処理空間20eの温度が下降を続け、電熱ヒータ再稼働温度T4に到達すると、制御装置25は、電熱ヒータ20cに対して再び稼働信号S1を送信する。これにより、排ガス処理空間20eの温度は再び上昇することから、シラン系ガスを熱分解できる運転開始温度T1を下回ることがなく、継続して処理対象ガスFの処理を行うことができる。
次に、処理対象ガスF中のシラン系ガスおよび水素の量が多いことから、電熱ヒータ20cを停止しているにもかかわらず排ガス処理空間20eの温度が上昇を続ける場合について説明する(図3)。排ガス処理空間20eの温度が上昇して予め設定された温調用空気供給開始温度T5に到達すると(点P3)、制御装置25は、シラン系ガスおよび水素の熱分解に必要な熱分解用の空気に加えて、排ガス処理空間20eを冷却するための温度調節用の空気を供給する回転数信号S3を送風ファン30のインバータ30aに送信する。さらに、排ガス処理空間20eの温度が温調用空気供給開始温度T5を超えて設定上限温度T2に近づく程、制御装置25は、温度調節用の空気量を増加させるように送風ファン30を制御するようになっている(温度調節用の空気の増量度合いは、図示するように曲線的に設定してもよいし、ステップ的に設定してもよい。)。このように、排ガス処理空間20eに温度調節用の空気が供給されると同空間の温度は降下し、設定上限温度T2を上回ることがないので、シリカが融解して炉本体20の内壁に付着したり、炉本体20の内壁に雲状に堆積した後に高熱により焼き固められたりして成長するのを回避することができる。
さらに、本実施例の熱処理炉12では、空気供給管32の他端が処理対象ガス導入管26に対する処理対象ガス通流管28の接続位置よりも下流側で且つ処理対象ガス導入管26の放出孔26aよりも処理対象ガスFの上流側に配設されており、さらに、当該放出孔26aは、処理対象ガス導入管26の側面において、処理対象ガスFおよび空気A1を図1中横向きに放出するようになっている。これにより、処理対象ガス通流管28内の圧力変動等の発生率を極小化しつつ、処理対象ガス導入管26内(より詳しくは、空気供給管32の他端から処理対象ガス導入管26の一端までの間)で処理対象ガスFと空気A1とが十分に混合されて効率よく熱分解が行われるだけでなく、放出孔26aから横向きに放出された処理対象ガスFと空気A1とでケーシング20aの天面から垂設された電熱ヒータ20cの表面に付着したシリカ等の粉塵を払い落とすことができる。
シラン系ガスおよび水素が熱分解された後、排気ファン18の吸引力で排ガス処理空間20eからバッフル21の通流孔21aを通って排ガス冷却空間20fに導入された処理対象ガスFは、冷却手段14の冷却用空気ファン38からの冷却用空気A2が混入されることにより、バグフィルタ16に導入されるときの温度が水の気化温度以上で且つバグフィルタ16における濾布50の耐熱温度以下の温度となるように冷却された後、処理対象ガス導出管41を介してバグフィルタ16へと送られる。
そして、バグフィルタ16において、上記温度範囲にてガス状態である水分は濾布50を通過し、粉体であるシリカのみが当該濾布50によって捕捉されて処理対象ガスF中から除去・回収される。これにより、処理対象ガスF中からシリカの粉塵を比較的高い純度で回収することができ、その後の廃棄処理をスムーズに行なえるばかりでなく、このシリカの粉塵を有価物として活用することもできる。つまり、回収したシリカの粉塵をケイ素源として再生利用することができる。
なお、排ガス処理装置10で処理される処理対象ガスF中にシラン系ガスおよび水素の他にフッ素系ガスが含まれている場合には、当該フッ素系ガスが熱分解されてフッ化水素(HF)が副生されるが、このような場合、処理対象ガス導出管41に例えば消石灰(Ca(OH)2)を連続的に投入することにより、処理対象ガスF中のフッ化水素と消石灰とを式(3)のように反応させて蛍石を副生させ、この蛍石を濾布50で捕捉することにより、処理対象ガスFからフッ化水素を除去できる。
2HF + Ca(OH)2 → CaF2[蛍石] + 2H2O … 式(3)
10…排ガス処理装置
12…熱処理炉
14…冷却手段
16…バグフィルタ
18…排気ファン
20…炉本体
20a…ケーシング
20b…内部空間
20c…電熱ヒータ
20d…排ガス処理空間温度計
20e…排ガス処理空間
20f…排ガス冷却空間
21…バッフル
21a…通流孔
22…処理対象ガス供給手段
24…空気供給手段
25…制御装置
26…処理対象ガス導入管
26a…放出孔
28…処理対象ガス通流管
29…圧力計
30…送風ファン
30a…インバータ
32…空気供給管
34…流量計
36…ダンパ
38…冷却用空気ファン
40…冷却用空気管
41…処理対象ガス導出管
42…流量計
44…ダンパ
46…ケーシング
48…仕切り部材
50…濾布
52…連通孔
54…リテーナー
56…ブロー装置
56a…コンプレッサー
56b…ブロー配管
58…処理対象ガス放出配管

Claims (2)

  1. 内部に高温の排ガス処理空間が形成される縦長で密閉筒状のケーシングを有する炉本体と、
    前記ケーシングの天面を貫通する処理対象ガス導入管を介して前記排ガス処理空間に少なくともシラン系ガスを含む処理対象ガスを供給する処理対象ガス供給手段と、
    前記処理対象ガス導入管に接続された空気供給管を介して前記排ガス処理空間に、前記処理対象ガスの熱分解に必要な空気に加えて、前記排ガス処理空間の温度をシリカの融点以下にする温度調節用の空気を供給する空気供給手段とを備えた熱処理炉であって、
    前記処理対象ガス導入管は、両端が閉塞された円管状に形成されており、前記ケーシングの外部に配設される前記処理対象ガス導入管の他端に前記空気供給管が貫通すると共に、前記排ガス処理空間に配置される前記処理対象ガス導入管の一端部の側面に、前記処理対象ガスおよび前記空気を放出するための放出孔が複数設けられていることを特徴とする熱処理炉。
  2. 請求項1に記載の熱処理炉と、
    前記熱処理炉で処理された前記処理対象ガスを水の気化温度以上で且つバグフィルタにおける濾布の耐熱温度以下に冷却する冷却手段と、
    前記冷却手段で冷却された前記処理対象ガス中のシリカを捕捉するバグフィルタとで構成されていることを特徴とする排ガス処理装置。
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