JP5479674B2 - 歯科用支台築造用ポストおよび歯科用根管充填用キット - Google Patents

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Description

本発明は、歯科用支台築造用ポストおよび歯科用根管充填用キットに関する。
失活歯の歯冠補綴は、多くの場合、歯冠部歯質が欠損していたり、大部分の歯質が非常にもろく欠けやすいため、単に歯冠補綴物を装着すると、容易に脱落することが予想される。このため、「支台築造」という歯質の補強の後に補綴物を装着する治療が行われる。このような支台築造には、歯冠部分に存在しクラウン等の補綴物を保持するコアと、根管部分に位置してコアを歯根に固定させるポストとの2つの部分からなる歯科用支台が使用され、これにより補綴物が歯牙より脱落しにくくなる。
ポストは金属、セラミック、カーボン、レジンまたはこれらの複合材料によって成型されており、通常、レジンセメント、合着セメント等によって根管内に固定される。しかしながら、ポストが埋設される根管は象牙質を切削して形成されるため、健全歯質の切削に過不足が生じる場合があり、切削が過剰な場合、歯根の脆弱化が生じやすく、切削が不足の場合、ポストの適合不良を引き起こすおそれがある。
このような問題を解決すべく、既成ポストを使用せずに、ポストを埋設させる根管を形成した後、印象採取し、根管に適合するよう鋳造されたポストを使用する方法も採用されている。しかしながらこのような方法を採用した場合、上記問題は解決されるが、印象採取および作製したポストの装着と、少なくとも2回の通院が必要となる上、印象採取後も石膏模型作製、ワックスアップ、埋没、鋳造といった煩雑な工程を踏まなければならないなどの問題を抱えている。さらに非特許文献1に記載のように、鋳造ポストなどの金属製ポストを使用すると、残存歯質と金属材料との機械的物性の乖離性が原因となって、歯根破折に至ることが懸念される。その上、これらポストを用いた治療後に根尖部に病巣が発見された場合などの再根管治療は、一般的に困難とされている。
このような状況下、特許文献1にはアクリル系有機マトリックスが含浸されている無機繊維、アクリル系有機マトリックスが含浸されている有機繊維、および金属線からなる芯材を用いたポストが提案されているが、再根管治療時には、該金属線の除去が必要なことや、金属線によるアレルギーを惹起することも懸念され、さらなる改良が求められている。
日本歯科評論第667号(1998年5月11日発行)、p.68−74 WO99/45859号公報
本発明は、歯根破折を引き起こしにくく、かつ金属アレルギーを惹起せずに失活歯の補綴治療を行うことができるとともに、必要に応じて行われる再根管治療が容易となる、歯科用支台築造用ポストおよび該歯科用支台築造用ポストを含む歯科用根管充填用キットを提供することを課題としている。
発明者らが鋭意検討した結果、歯科用切削器具で切削が容易な材料を芯材とし、該芯材がグラスファイバー繊維で被覆されてなることを特徴とする、歯科用支台築造用ポストにより上記課題を解決できることを見いだし、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明の歯科用支台築造用ポストは、易切削芯材(A)を、シラン処理したグラスファイバー繊維を編組してチューブ状に成型した被覆材(B)で被覆されてなり、易切削芯材(A)は、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂および多孔質無機化合物からなる群より選択される少なくとも1種であり、易切削芯材(A)と被覆材(B)とからなる構造物に、(メタ)アクリレート化合物と重合開始剤とから構成される有機マトリックス(C)を含浸させた後、有機マトリックス(C)を重合させて得られることを特徴としている。
さらに前記熱可塑性樹脂は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリメチル(メタ)アクリレート、トランス−1,4−ポリイソプレンおよびガッタパーチャからなる群より選ばれる少なくとも1種であってもよい。
また、前記多孔質無機化合物が、カルシウム化合物であってもよい。
本発明の歯科用根管充填用キットは、上記歯科用支台築造用ポストと歯科用根管充填材とから構成される。
本発明の歯科用支台築造用ポストおよび歯科用根管充填用キットを用いれば、歯根破折を引き起こしにくくなり、金属アレルギーを惹起せずに失活歯の補綴治療を行うことができ、さらに必要に応じて行われる再根管治療が容易となる。
以下、本発明の歯科用支台築造用ポストおよび歯科用根管充填用キットについて、必要に応じて図面を参照しながら詳述する。また、「(メタ)アクリレート」とは「アクリレート」または「メタアクリレート」を意味する。「(メタ)アクリル酸」、「(メタ)アクリロイル」についても同様である。
<歯科用支台築造用ポスト>
本発明の歯科用支台築造用ポストは、易切削芯材(A)を、グラスファイバー繊維からなる被覆材(B)で被覆されてなることを特徴とする。このような歯科用支台築造用ポストの一態様を図1に示す。
本発明の歯科用支台築造用ポストの曲げ強さは、100〜1000MPa、好ましくは138〜800MPa、より好ましくは250〜600MPaであり、曲げ弾性率は10〜60GPa、好ましくは11〜60GPa、より好ましくは12〜50GPaである。上記範囲外であると、歯根破折または歯頸部破折、あるいは補綴物の脱落または崩壊のおそれがあり、好ましくない。なお、曲げ強さおよび曲げ弾性率は、得られた歯科用支台築造用ポストをJIS T6514に記載の曲げ試験機を用いて3点曲げ加重を与えることにより測定した値を意味する。
《易切削芯材(A)》
易切削芯材(A)の形状は、通常円柱状または楕円柱状であり、円柱状であることが望ましく、また、その両端は根管内への挿入を容易にするために円錐形となっていてもよい。図1における易切削芯材(A)の形状は円柱状であり、一方端が円錐形を呈している。
易切削芯材(A)の形状が円柱状である場合、易切削芯材(A)の断面における直径R1は、通常0.1mm〜1.5mm、好ましくは0.2mm〜0.8mmの長さである。
また、直径R1は、易切削芯材(A)を後述する被覆材(B)にて被覆した後の歯科用支
台築造用ポスト断面における直径R2の長さ100%に対して、10〜90%、好ましく
は20〜80%、さらに好ましくは20〜70%の長さである。
易切削芯材(A)の形状が楕円柱状である場合、易切削芯材(A)の断面における長軸方向の直径R1 Lは、通常0.1mm〜1.5mmの長さである。易切削芯材(A)の断面における短軸方向の直径R1 Sは、長軸方向の直径R1 Lの長さ100%に対し、60%以上となる長さを有していることが好ましい。上記下限値を下回ると再根管治療の際に切削器具のガイドとなりにくく、上記上限値を上回るとポストの強度が保てないばかりか、根管内に挿入できなくなるおそれがある。
また、易切削芯材(A)の長さLは適用する根管の大きさに合わせるために変動し得るものであるが、通常1〜50mm、好ましくは1〜40mmであることが好ましい。上記下限値を下回ると根管内への挿入が困難となるおそれがあり、上記上限値を上回ると、根管長よりも長くなるために切断を繰り返す手間が増えるおそれがある。
易切削芯材(A)とは、カーバイドバーなどの歯科用切削器具で切削が可能な硬さを有する材質からなる芯材を意味する。すなわち、易切削芯材(A)は、ブリネル硬度が通常2〜25、好ましくは5〜15であるのが好ましい。さらに、ASTM D785に準拠して測定される歯科用支台築造用ポストのロックウェル硬度が、通常M35〜M120、好ましくはM35〜105であるのが好ましい。上記下限値を下回ると歯科用支台築造用ポストとしての強度を保持できなくなるおそれがあり、上記上限値を上回ると切削が行いにくくなるおそれがある。このような硬度を有する易切削芯材(A)からなる歯科用支台築造用ポストは、再根管治療時の切削ガイドとして有効である。
このような易切削芯材(A)としては、具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、トランス−1,4−ポリイソプレン、ポリスチレン、ポリ(テトラフルオロエチレン)、ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリビニルフルオライド、ポリビニリデンジフルオライド、ポリカーボネート、ポリサルホン、ポリエステル、ポリアミド、ガッタパーチャ、エステルガム、パラフィンワックスなどの熱可塑性樹脂;
ポリウレタン、ウレア樹脂、不飽和ポリエステル架橋アクリル樹脂、シリコーン樹脂などの熱硬化性樹脂;
多孔質体を形成することができるリン酸水素カルシウム、リン酸二カルシウム、リン酸三カルシウム、リン酸四カルシウム、ハイドロキシアパタイト、炭酸カルシウム等のカルシウム化合物などの化合物を例示することができる。なかでも、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリメチル(メタ)アクリレート、トランス−1,4−ポリイソプレンおよびガッタパーチャが好ましい。これらの化合物は単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
易切削芯材(A)には、治療時および治療後の観察を容易にするため、さらにX線造影性を有する材料を配合することもできる。具体的には、ヨウ素原子を分子内に含む有機化合物、または金属元素を含有するフィラーをあげることができる。これらは、X線造影性を有する珪素系の材料と比べて比較的少量の配合率でX線造影性を示すので好ましい。より具体的には、アルミニウム、バリウム、ジルコニウム、ストロンチウム、チタン、鉄、銅、コバルトなどの元素を含有するフィラーを挙げることができる。
これらのうち、医療用材料としての好適な特性を有する観点から、バリウム、ジルコニウム、ストロンチウムを含有するフィラーが好ましく使用することができる。また、ジルコニウムを含有するフィラーとしては、酸化ジルコニウム、シリカジルコニウム、シリカアルミニウムジルコニウム、リン酸ジルコニウムなどのフィラーを挙げることができる。これらジルコニウムを含有するフィラーのなかでも、酸化ジルコニウムまたはシリカジルコニウムが好ましい。
《被覆材(B)》
被覆材(B)はグラスファイバー繊維からなり、歯科用支台築造用ポストに要求される曲げ強さおよび曲げ弾性などの機械的物性を保持するために用いられる。グラスファイバー繊維としては、具体的には、アルミナ(Al23)、ジルコニア、カルシウムアルミネート(CaO−Al23系)、アルミノシリケート(Na2O−Al23−SiO2系)、アルミノボロシリケート(SiO2−Al23−CaO−B23系)、バイオグラス(SiO2−Na2O−CaO−P25系)、セラブタール(SiO2−CaO−Na2O−P25−K2O−MgO系)、CPSAガラス(CaO−P25−SiO2−Al23系)、
マイカ系結晶ガラス(SiO2−B23−Al23−MgO−K2O−F系)、A−W結晶化ガラス(SiO2−CaO−MgO−P25系)、β−Ca(PO42系結晶化ガラス
(CaO−P25系)などを挙げることができる。これらのうち、アルミノシリケート、アルミノボロシリケート、CPSAガラスが好ましい。
また、グラスファイバー繊維の直径である繊維径は、通常1〜30μm、好ましくは3〜15μm、より好ましくは5〜13μmである。上記下限値を下回ると曲げ強度および曲げ弾性を低下させるおそれがあり、上記上限値を上回ると繊維が折れやすく、結果として曲げ弾性を低下させる場合がある。
このようなグラスファイバー繊維は、単独であるいは2種以上の材質および繊維径を選択し、組み合わせて使用することもできる。グラスファイバー繊維は、歯科用支台築造用ポストの長軸方向における一方の端部から他方の端部へ走向していることが好ましいが、斜行または蛇行していてもよい。ポストの強度をより向上させる観点から、隣接する繊維間等にて、撚糸あるいは交差させた糸にし、さらに編組して易切削芯材(A)を被覆し使用するのがより好ましい。この場合における自動検撚機または解撚法で測定した撚数は、通常0.5〜10回/25mm、好ましくは1〜5回/25mmであり、編組する場合の目付は、通常100〜600g/m2、好ましくは150〜550g/m2、さらに好ましくは200〜500g/m2である。上記上限値を上回ると、ポストの機械的強度が歯質
の機械的強度を上回って、歯根破折を引き起こすおそれがある。また、上記下限値を下回ると、機械的物性の低下を引き起こして、歯頸部での破折を引き起こすおそれが生じる。なお、前記目付は平面に切り開いた際の面積を元に算出するものとする。
なお、グラスファイバー繊維よるなる被覆材(B)は、ガラス短繊維より構成されたものであったり、交絡等されていないバラバラのガラス繊維が易切削芯材(A)に付着したり、後述の有機マトリックス(C)等により結着されたコンポジット形態であったりしてもよい。しかしながら、通常は、本ポストの長軸程度の長さを有するガラス長繊維より構成されていることが好ましく、または、易切削芯材(A)および有機マトリックス(C)が存在しなくても被覆材(B)のみで一体性が保持される程度に交絡または編組などによって形成されていることが好ましい。これにより、被覆材(B)に充分な曲げ強度および曲げ弾性率を付与することができ、製造も容易であり、取り扱い性も良好となる。
本発明の歯科用支台築造用ポストで使用される被覆材(B)の使用量は、歯科用支台築造用ポストの合計の容積100vol%中、5〜95vol%、好ましくは20〜80vol%の容積率となる量である。易切削芯材(A)に被覆材(B)を被覆した後の断面における被覆材(B)の外径は、その形状が円柱状の場合、通常0.2mm〜2.1mm、好ましくは0.5〜1.9mmであり、楕円柱状の場合、上記断面の長軸が通常0.2mm〜2.1mm、好ましくは0.5〜1.9mmである。上記範囲内であると、歯科用支台としての機械的・物理的物性を確保することができるが、上記下限値を下回ると、再根管治療の際に切削器具のガイドとなりにくく、上記上限値を上回ると、ポストの強度が保てないばかりか、根管内に挿入できないおそれがある。
なお、容積率は、得られた歯科用支台築造用ポストを長軸に対して垂直に切断し、その断面を電子顕微鏡等にて観察することにより、測定することができる。
一方、被覆材(B)の内径は、通常0.1mm〜1.5mm、好ましくは0.2〜0.8mmであり、易切削芯材(A)の直径に対する比((B)の内径/(A)の直径)において、1〜20、好ましくは1〜19、より好ましくは1〜10、さらに好ましくは1〜1.5、最も好ましくは1である。前記上限値を上回るとポストの機械的強度が歯質の機械的強度を上回るおそれがあり、好ましくない。
また、易切削芯材(A)と被覆材(B)とからなる歯科用支台築造用ポストの長さは、通常1〜50mm、好ましくは1〜40mmであり、易切削芯材(A)はポストの長さ方向に貫通していることが好ましい。本発明の歯科用支台築造用ポストは通常、治療される歯牙に合わせてその長さを適宜設定することができ、埋設後、必要な時期に余剰部分を切断させる。治療に必要な長さよりも長くすることにより、治療の作業性を向上させることができるが、上記下限値を下回ると、根管内への挿入が困難となるおそれがあり、上記上限値を上回ると、根管長よりも著しく大きいため、切断を繰り返す手間を増やすおそれがある。
なお、易切削芯材(A)に被覆された後の被覆材(B)は、他の材料との明確な境界面形成する必要はない。すなわち、たとえば、被覆材(B)から他の繊維の集積体にかけて、被覆材(B)が徐々に密から疎に分布しているような形態であってもよい。このような場合、本発明の歯科用支台築造用ポストの半径(直径R2×1/2)をR、中心を原点0、放射方向をr軸としたときに、r=0〜R/2の領域(In)はr=R/2〜Rの領域(Ex)よりもグラスファイバーの平均体積含有率が低いのが好ましく、その比(Inの平均体積含有率/Exの平均体積含有率)は、通常0.5以下、好ましくは0.3以下、より好ましくは0.15以下である。または、vol%表記におけるその差(Exの平均体積含有率−Inの平均体積含有率)は、通常50vol%、好ましくは70vol%、より好ましくは85vol%以上である。なお、Inの平均体積含有率/Exの平均体積含有率、およびExの平均体積含有率−Inの平均体積含有率の上記条件を同時に満たしていてもよい。Rが上記範囲内であると、易切削芯材芯材(A)部分の歯科用切削器具による切削が容易となり、かつ不用意に健全歯質を切削しないためのガイドとすることができる。
《有機マトリックス(C)》
易切削芯材(A)および/または被覆材(B)は、機械的強度を増すために、さらに有機マトリックス(C)を含浸していてもよい。有機マトリックス(C)を含浸させる方法として、たとえば、被覆材(B)をあらかじめ有機マトリックス(C)で被覆する方法、または易切削芯材(A)と被覆材(B)とからなる構造物に有機マトリックス(C)を1.3kPa以下の減圧条件下にて浸漬させる方法などを例示することができる。
有機マトリックス(C)は、(メタ)アクリレート化合物(Cm)と、重合開始剤(Ci)とから構成されてなり、後述の通り、これらから重合物が形成される。本発明の歯科用支台築造用ポストは、有機マトリックス(C)を易切削芯材(A)および/または被覆材(B)に含浸させた後、有機マトリックス(C)を重合させておくことが望ましい。これにより、得られる歯科用支台築造用ポストのべたつきが少なくなり、取り扱いが容易となるとともに、根管内での有機マトリックス(C)の未重合を防ぎ、より強固な歯科用支台築造用ポストを得ることができる。
本発明の歯科用支台築造用ポストで使用される有機マトリックス(C)の使用量は、歯科用支台築造用ポストの合計の容積100vol%中、5〜95vol%、好ましくは20〜80vol%の容積率となる量である。また、歯科用支台築造用ポストの合計重量100重量%中、10〜60重量%、好ましくは15〜50重量%の量で使用される。上記上限値を超えると、歯科用支台としての機械的・物理的物性を得ることができなくなるおそれがある。上記容積率は、得られた歯科用支台築造用ポストを長軸に対して垂直に切断し、その断面を電子顕微鏡等にて観察することにより、算出することができる。
なお、図1のX−X線での断面図である図2には、本発明の歯科用支台築造用ポストにおける有機マトリックス(C)(4a〜4d)が示されている。すなわち、易切削芯材(A)2が多孔性の場合は、その孔に有機マトリックス(C)4aが含浸されていてもよく、被覆材(B)3の繊維間隙に有機マトリックス(C)4cが含浸されていてもよい。また、有機マトリックス(C)4bが易切削芯材(A)2と被覆材(B)3の間に層状に形成されていたり、有機マトリックス(C)4dが被覆材(B)3の外側表面に形成されていてもよい。また、有機マトリックス(C)が含浸された被覆材(B)が長繊維または短繊維となって易切削芯材(A)を被覆していたりしてもよい。
本発明に用いられる(メタ)アクリレート化合物(Cm)は、単官能(メタ)アクリレート化合物と多官能(メタ)アクリレート化合物とに大別される。
単官能(メタ)アクリレート化合物の具体例としては、
メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等の(シクロ)アルキル(メタ)アクリレート類;
2−ハイドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−ハイドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ハイドロキシブチル(メタ)アクリレート等のハイドロキシアルキル(メタ)アクリレート類;
アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート;
1,2−または2,3−ジハイドロキシプロピル(メタ)アクリレート、エリスリトールモノ(メタ)アクリレート等の(ポリハイドロキシ)アルキル(メタ)アクリレート類;ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート等のポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート類;
エチレングリコールモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、エチレングリコールモノエチルエーテル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(メタ)アクリレート、プロピレングリコールモノメチルエーテル(メタ)アクリレート等のポリアルキレングリコールモノアルキルエーテル(メタ)アクリレート類;
(テトラハイドロフラン−2−イル)(メタ)アクリレートなどの複素環を有する(メタ)アクリレート類;
パーフルオロオクチル(メタ)アクリレート、ヘキサフルオロブチル(メタ)アクリレート等のハロゲン化アルキル(メタ)アクリレート類が挙げられる。
多官能(メタ)アクリレート化合物の具体例としては、
エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレートなどのポリ(オキシアルキレン)ジ(メタ)アクリレート類;
グリセロールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、メソ−エリスリトールジ(メタ)アクリレートまたはトリ(メタ)アクリレート、ペンタントリオールジ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンジ(メタ)アクリレートまたはトリ(メタ)アクリレート、ヘキサントリオールのジ(メタ)アクリレート、ヘキサンテトラオールのジ(メタ)アクリレートまたはトリ(メタ)アクリレート等のアルカンポリオールのジ(メタ)アクリレートまたはトリ(メタ)アクリレート類;
下記式(1)で示される多官能(メタ)アクリレート;
Figure 0005479674
(式(1)中、R1は少なくとも1個の芳香族環を有し、かつ分子中に酸素原子または
硫黄原子を有していてもよい2価の芳香族残基あるいはシクロアルキル残基であり、好ましくは下記式(2)から選択されるいずれかを示し、R2およびR3は互いに独立して水素原子またはメチル基を示し、jおよびkは正の整数を示す。);
Figure 0005479674
下記式(3)で示される脂肪族、脂環族または芳香族エポキシジ(メタ)アクリレート;
Figure 0005479674
(式(3)中、R4は少なくとも1個の芳香族環を有しかつ分子中に酸素原子または硫
黄原子を有していてもよい2価の芳香族残基あるいはシクロアルキル残基であり、好ましくは下記式(4)から選択されるいずれかを示し、R5およびR6は互いに独立して水素原子またはメチル基を示し、lは正の整数を示す。);
Figure 0005479674
下記式(5)で表される分子内にウレタン結合を有する多官能(メタ)アクリレート;
Figure 0005479674
(式(5)中、R7は少なくとも1個の芳香族環を有しかつ分子中に酸素原子または硫
黄原子を有していてもよい2価の芳香族残基あるいはシクロアルキル残基であり、好ましくは上記式(4)から選択されるいずれかを示し、R8およびR9は互いに独立して水素原子またはメチル基を示す。)などを挙げることができる。
これら化合物は、単独であるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
(メタ)アクリレート化合物(Cm)成分の配合量は、有機マトリックス(C)100重量%中、95〜99.97重量%、好ましくは97〜99.95重量%、より好ましくは98〜99.9重量%の量である。
重合開始剤(Ci)としては、具体的には、有機過酸化物、無機過酸化物、α−ジケトン化合物、ホスフィンオキサイド、有機アミン化合物、有機スルホン酸、有機スルフィン酸、無機硫黄化合物、有機リン化合物およびバルビツール酸類を挙げることができる。これらは単独であるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
これらの重合開始剤(Ci)は、便宜的に常温化学重合開始剤と光重合開始剤とに分類することができる。
常温重合開始剤としては、具体的には、ジアセチルパーオキサイド、ジプロピルパーオキサイド、ジブチルパーオキサイド、ジカプリルパーオキサイド、ジラウリルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、p,p’−ジクロルベンゾイルパーオキサイド、p,p’−ジメトキシベンゾイルパーオキサイド、p,p’−ジメチルベンゾイルパーオキサイドおよびp,p’−ジニトロジベンゾイルパーオキサイドなどの有機過酸化物類;
過硫酸アンモニウム、塩素酸カリウム、臭素酸カリウムおよび過リン酸カリウムなどの無機過酸化物類などを挙げることができる。
光重合開始剤としては、具体的には、4,4−ジクロロベンジル、ジアセチル、dl−カンファーキノン等のα−ジケトン類;
アセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1,1−ジクロロアセトフェノン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−プロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オンなどのアセトフェノン類;
ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテルなどのベンゾイン・ベンゾインアルキルエーテル類;
2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−t−ブチルアントラキノン、1−クロロアントラキノン、2−アミルアントラキノンなどのアントラキノン類;
ベンゾフェノン等のベンゾフェノン類;
トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド等のホスフィンオキサイド類などを挙げることができる。
重合開始剤(Ci)成分の配合量は、有機マトリックス(C)100重量%中、0.03〜5重量%、好ましくは0.05〜3重量%、より好ましくは0.1〜2重量%の量である。上記下限値を下回ると、(Cm)成分を硬化させることができなかったり、硬化に要する時間が著しく長くなったりして操作に影響を与えるおそれがあり、また、上記上限値を上回ると、取扱中に(メタ)アクリレート化合物(Cm)成分が単独で硬化し、上述の易切削芯材(A)および被覆材(B)と一体とならないおそれがある。
さらに本発明の歯科用支台築造用ポストにおける有機マトリックス(C)において、重合開始剤(Ci)の助剤として、必要に応じて還元性化合物(Cr)を併用することがで
きる。本発明に用いられる還元性化合物(Cr)としては、無機化合物と有機化合物とに大別される。
無機化合物としては、亜硫酸、メタ亜硫酸、メタ重亜硫酸、ピロ亜硫酸、チオ硫酸、亜ジチオン酸、ジチオン酸、次亜硫酸、ヒドロ亜硫酸およびこれらの塩類が挙げることができる。これらの中でも、亜硫酸塩が好ましく用いることができ、このような亜硫酸塩としては、具体的には、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸水素カリウムを好ましく例示することができる。
また、有機還元性化合物としては、ベンゼンスルフィン酸、o−またはp−トルエンスルフィン酸、エチルベンゼンスルフィン酸、デシルベンゼンスルフィン酸、ドデシルベンゼンスルフィン酸、クロルベンゼンスルフィン酸などの芳香族スルフィン酸またはその塩類;
N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジメチル−p−トルイジン、N,N−ジエチル−p−トルイジン、N,N−ジハイドロキシメチル−p−トルイジン、N,N−ジメチル−p−t−ブチルアニリン、N,N−ジメチルアニリジン、N,N−ジメチル−p−クロルアニリンなどのほか、下記一般式(6)
Figure 0005479674
(式(6)中、R10およびR11は互いに独立して水素原子あるいは官能基もしくは置換基を有していてもよいアルキル基であり、R12は水素原子または金属原子である。);
および/または下記一般式(7)
Figure 0005479674
(式(7)中、R13およびR14は互いに独立に水素原子またはアルキル基であり、R15は水素原子あるいは官能基もしくは置換基を有していてもよいアルキル基またはアルコキシル基である。)を挙げることができる。
上記式(6)に表される具体的な化合物としては、N−フェニルグリシン、N−トリルグリシン、N−(3−(メタ)アクリロイルオキシ−2−ハイドロキシプロピル)−N−フェニルグリシンおよび/またはこれらの塩を挙げることができる。これらの中でも、N−フェニルグリシン、および/またはその塩が好ましい。
また、上記式(7)に表される具体的な化合物としては、N,N−ジメチルアミノ安息香酸およびそのアルキルエステル、N,N−ジエチルアミノ安息香酸およびそのアルキル
エステルのほか、N,N−ジプロピルアミノ安息香酸およびそのアルキルエステル、N−イソプロピルアミノ安息香酸およびそのアルキルエステル、N−イソプロピル−N−メチルアミノ安息香酸およびそのアルキルエステルなどで代表される脂肪族アルキルアミノ安息香酸およびそのアルキルエステル類;
N,N−ジメチルアミノベンズアルデハイド、N,N−ジエチルアミノベンズアルデハイド、N,N−ジプロピルアミノベンズアルデハイド、N−イソプロピル−N−メチルアミノベンズアルデハイドなどで代表される脂肪族アルキルアミノベンズアルデハイド類;
N,N−ジメチルアミノアセチルベンゼン、N,N−ジエチルアミノアセチルベンゼン、N,N−ジプロピルアミノアセチルベンゼン、N−イソプロピルアミノアセチルベンゼン、N−イソプロピル−N−メチルアミノアセチルベンゼンなどで代表される脂肪族アルキルアミノアセチルベンゼンおよび脂肪族アルキルアミノアシルベンゼン類などを挙げることができる。
これらの還元性化合物(Cr)は、単独であるいは2種以上組み合わせて使用することができる。
還元性化合物(Cr)成分の使用量は、還元性化合物(Cr)を含む有機マトリックス(C)100重量%中、0.03〜5重量%、好ましくは0.05〜3重量%、さらに好ましくは0.1〜2重量%の量である。上記下限値を下回ると、配合の効果を発現できないおそれがあり、また、上記上限値を上回ると、取扱中に(メタ)アクリレート化合物(Cm)成分が単独で硬化し、上述の易切削芯材(A)および被覆材(B)と一体とならなくなるおそれがある。なお、(Cr)成分を使用する場合、(Cm)および(Ci)の使用量はそれぞれ、(Cr)成分を含む有機マトリックス(C)100重量%中、(Cm)が94.97〜99.94重量%、好ましくは96.95〜99.8重量%、より好ましくは97.9〜99.4重量%、(Ci)が0.03〜5重量%、好ましくは0.05〜3重量%、より好ましくは0.1〜2重量%の範囲である。
なお、有機マトリックス(C)をあらかじめ硬化させた場合には、図2に示すように、易切削芯材(A)に含浸(4a)されていたり、易切削芯材(A)と被覆材(B)の間に存在(4b)していたりする有機マトリックス(C)は、易切削芯材(A)と一体となり、全体として易切削芯材(A)を形成することとなる。ただし、硬化した有機マトリックス(C)であっても、被覆材(B)の繊維間隙に含浸されていたり(4c)、被覆材(B)の外側表面に形成されていたり(4d)する場合には、易切削芯材(A)と有機マトリックス(C)とを識別することが可能である。また、易切削芯材(A)と有機マトリックス(C)との硬化物が実質上同じ素材または組成からなるものであることも、何ら排除されるべきものではない。
<歯科用支台築造用ポストの製造方法>
本発明の歯科用支台築造用ポストの製造方法は、特に限定されず、公知の方法を採用することができる。たとえば、グラスファイバーを撚糸し、編組してチューブ状に成型した被覆材(B)の中心空洞部に、易切削芯材(A)を挿入した上で、このチューブを延伸加工し、成型する方法を例示することができる。
<歯科用根管充填用キット>
本発明における歯科用根管充填用キットは、易切削芯材(A)、被覆材(B)、および必要に応じて有機マトリックス(C)を含浸させてなる上述の歯科用支台築造用ポスト(I)と充填材(II)とから構成される。
《充填材(II)》
充填材(II)は、一般に歯科用コンポジットレジンとして使用される充填材を用いることができ、樹脂成分(D)と重合開始剤(E)とフィラー(F)(以下、(D)成分、
(E)成分、(F)成分ともいう)を配合する。
特に本発明では、樹脂成分(D)として、上述の歯科用支台築造用ポストを構成する有機マトリックス(Cm)と同一または類似したモノマー組成を有する成分を使用することが好ましい。このような樹脂成分を選択することにより、歯科用支台築造用ポスト(I)と充填材(II)との間に空隙なく樹脂を形成させることが可能となり、支台に必要な強度を保持させることができる。
さらに樹脂成分(D)として、所望により、
12−(メタ)アクリロイルオキシドデシルピリジニウムブロマイド、ベンジルビス[(メタ)アクリロイルオキシエチル]ドデシルアンモニウムクロライド、N,N,N−トリス[(メタ)アクリロイルオキシエチル]ドデシルアンモニウムクロライド、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートに10−ウンデセニルアルコールがエーテル付加した化合物などの抗菌性を有する化合物類;
(メタ)アクリル酸、マレイン酸、11−(メタ)アクリロイルオキシ−1,1−ウンデカンジカルボン酸、4−(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)トリメリット酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルアシドホスフェート、2−スルホエチル(メタ)アクリレート、2−または1−スルホ−1−または2−プロピル(メタ)アクリレート、1−または3−スルホ−2−ブチル(メタ)アクリレート、1−または2−メチル−2−スルホプロピル(メタ)アクリレート等の酸性基を含有する(メタ)アクリレート類;
3−(トリメトキシシリル)プロピル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリロイルオキシアルキル基を有するシラン化合物類;
4−スチレンスルホン酸等の酸性基を含有するビニル化合物類;
メチル(メタ)アクリルアミド、2,3−ジハイドロキシプロピル(メタ)アクリルアミド、1,1−ジメチル−2−スルホエチル(メタ)アクリルアミド、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸等の上記(メタ)アクリレートに代えて(メタ)アクリルアミドである化合物類を配合してもよい。
本発明の歯科用根管充填用キットに使用される充填材(II)における樹脂成分(D)の配合量は、充填材(II)の全量100重量%中、5.97〜94.97重量%、好ましくは8.95〜79.95重量%、より好ましくは11.9〜59.9重量%の量である。上記上限値を超えると、充填材の機械的強度が残存歯質の機械的強度を上回り、歯根破折を引き起こすおそれがあり、上記下限値を下回ると、充填材の機械的強度と残存歯質の機械的強度とのバランスを良好に保持することができないおそれがある。
本発明の歯科用根管充填用キットに使用される充填材(II)における重合開始剤(E)は、上述の重合開始剤(Ci)と同様の化合物を使用することができる。
本発明の歯科用根管充填用キットに使用される充填材(II)における重合開始剤(E)の配合量は、充填材(II)の全量100重量%中、0.03〜5重量%、好ましくは0.05〜3重量%、より好ましくは0.1〜2重量%の量である。上記上限値を上回ると、保存期間中に、または根管内へ充填している最中に充填材(II)が硬化するおそれがあり、上記下限値を下回ると、根管内において充填材が硬化しないおそれがある。
充填材(II)には、さらに粘度調節のためにフィラー(F)を使用する。(F)成分としては、有機フィラー(F1)、無機フィラー(F2)および有機無機複合化フィラー(F3)を挙げることができる。
有機フィラー(F1)の例としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングルコール、ポリビニルアルコールなどのほか、ポリ(メチル(メタ)アクリレート)、ポリ(プロピル(メタ)アクリレート)など、(Cm)列挙したモノマーの単体あるいは共重合体を挙げることができる。
無機フィラー(F2)の具体例としては、ジルコニウム酸化物、ビスマス酸化物、チタン酸化物、酸化亜鉛および酸化アルミニウム粒子などの金属酸化物粉末、シリカ、炭酸ビスマス、リン酸ジルコニウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウムあるいは、CaHPO4、Ca3(PO42、Ca5(PO43OH、Ca4O(PO42、Ca82(PO46、Ca10(PO46(OH)2、CaP411、Ca(PO32、Ca227、Ca(H2PO42、Ca(H2PO42、CaO、Ca(OH)2、CaHCO3、CaCO3、CaCl2などの無機カルシウム塩、さらには、4−(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル
)トリメリット酸カルシウムや4−スチレンスルホン酸など、有機酸のカルシウム塩などの金属塩粉末、シリカガラス、アルミニウム含有ガラス、バリウム含有ガラス、ストロンチウム含有ガラスおよびジルコニウムシリケートガラスなどのガラスフィラー、銀徐放性を有するフィラー、フッ素徐放性を有するフィラーなどをあげることができる。また、樹脂成分(D)への分散性を向上させるために、これら無機フィラー(F2)に、従来公知の方法によりシラン処理、ポリマーコートなどの表面処理を施して使用してもよい。
有機無機複合化フィラー(F3)の例としては、トリメチロールプロパンメタアクリレートとシリカフィラーを混和、重合させた後に粉砕したものなどが挙げられる。
これらのフィラー(F)は、単独であるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
フィラー(F)は、粒子径が小さいほど少量の添加で粘度の調整が可能になるが、そのほかに充填材(II)の塗布感や塗布時の伸びなどの調整も可能となり、平均粒子径が、通常5nm〜50μm、好ましくは5nm〜20μmであるフィラー(F)が好ましい。
充填材(II)におけるフィラー(F)の配合量は、フィラー(F)を含む充填材(II)の全量100重量%中、5〜94重量%、好ましくは20〜91重量%、より好ましくは40〜88重量%の量である。上記下限値を下回ると、適用時の粘度が著しく低くなったり、硬化後の組成物の除去が難しくなり、上記上限値を上回ると、適用時の粘度が著しく高くなるおそれがある。
充填材(II)には、必要に応じて、さらに硬化助剤(G)を配合することができる。硬化助剤(G)としては、上述の還元性化合物(Cr)と同様の化合物を挙げることができる。
充填材(II)における硬化助剤(G)の配合量は、硬化助剤(G)を含む充填材(II)の全量100重量%中、0.03〜5重量%、好ましくは0.05〜3重量%、より好ましくは0.1〜2重量%の量である。上記上限値を上回ると保存期間中に、または根管内へ充填している最中に充填材(II)が硬化するおそれがあり、上記下限値を下回ると、配合の効果を発現できないおそれがある。なお、充填材(II)において(G)成分を配合させる場合、(D)成分、(E)成分および(F)成分の各々の使用量は、(G)成分を含む充填材(II)の全量100重量%中、(D)が5.97〜94.94重量%、好ましくは8.95〜79.9重量%、より好ましくは11.9〜59.8重量%の範囲、(E)成分が0.03〜5重量%、好ましくは0.05〜3重量%、より好ましくは0.1〜2重量%の範囲、(F)成分が5〜93.97重量%、好ましく20〜90.95重量%、より好ましくは40〜87.9重量%の範囲である。
本発明の歯科用根管充填用キットに使用される充填材(II)には、本発明の効果を損なわない限りにおいて、さらに、
4−メトキシフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノールなどの重合禁
止剤;
ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリマー;
雲母チタン、酸化チタン、オキシ塩化ビスマス、合成金雲母、マイカ、酸化鉄などの無機顔料;
青色1号、青色404号、赤色106号、赤色201号、赤色220号、赤色225号、赤色226号、赤色227号、黄色4号、グンジョウ、コンジョウなどの口腔内での組成物の識別を容易にするための着色料;
塩化マグネシウム、酢酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム等の金属塩などを添加してもよい。
本発明の歯科用根管充填用キットを用いて形成される複合体は、歯質と同程度の機械的物性を有していることが望ましい。
歯質、特に本発明の歯科用根管充填用キットにおける充填材(II)が接触する象牙質の曲げ強さは、通常138〜270MPaであり、また曲げ弾性率は通常12〜19MPaであることが知られている(例えば、「歯科材料・器械」、14(6)、p555〜562参照)。したがって、本発明の歯科用根管充填用キットを用いて形成される複合体の曲げ弾性率は、12〜19MPaであることが望ましい。上記下限値を下回ると、歯頸部での破折、または補綴物の脱落が生じるおそれがあり、また、上記上限値を上回ると、応力集中により歯根破折を引き起こすおそれがある。
本発明の歯科用根管治療用キットにおける充填材(II)の使用形態としては、好ましくは、次の(1)〜(8)の使用形態を挙げることができる。
具体的には、まず、歯牙の根管拡大と消毒を行った後に、
(1)(D)成分と、(E)成分と、(F)成分と歯科用支台築造用ポスト(I)とをそれぞれ分けて保存し、別に用意された歯科用接着材を根管内に塗布して重合させた後、各成分を適量ずつ取り出し、混合したペーストを根管内に填入した後、歯科用支台築造用ポスト(I)をこの根管内にさらに挿入し、硬化させる方法;
(2)(D)成分が充填されたボトルaと、(E)成分と(F)成分とが充填されたボトルbと、歯科用支台築造用ポスト(I)とに分けて保存し、別に用意された歯科用接着材を根管内に塗布して重合させた後、ボトルaとボトルbとから適量ずつ取り出し、混合したペーストを根管内に填入した後、歯科用支台築造用ポスト(I)をこの根管内にさらに挿入し、硬化させる方法;
(3)(D)成分と(E)成分とのうち、光重合開始剤より選択される成分と(F)成分とを混合し、保存されたシリンジと歯科用支台築造用ポスト(I)とに分けて保存し、別に用意された歯科用接着材を根管内に塗布して重合させた後、シリンジより根管内に填入した充填材を填入後、歯科用支台築造用ポスト(I)をこの根管内にさらに挿入し、硬化させる方法;
(4)(D)成分と(E)成分とを混合して保存したシリンジaと、(D)成分と(F)成分とを混合して保存したシリンジbとの2筒式ミックスシリンジと、歯科用支台築造用ポスト(I)とに分けて保存し、別に用意された歯科用接着材を根管内に塗布して重合させた後、シリンジより根管内に填入した充填材を填入後、歯科用支台築造用ポスト(I)をこの根管内にさらに挿入し、硬化させる方法;
(5)(D)成分と、(E)成分と、(F)成分と歯科用支台築造用ポスト(I)とをそれぞれ分けて保存し、通法に従い根管部分の印象を採取し、作業模型を作製した後、作業模型にシリコーン系等の分離材を塗布し、各成分を適量ずつ取り出し、混合したペーストを作業模型内に填入した後、歯科用支台築造用ポスト(I)をこの作業模型内にさらに挿入し、硬化させ、別に用意した歯科用接着材を用いて、根管内に接着させる方法;
(6)(D)成分が充填されたボトルaと、(E)成分と、(F)成分とが充填されたボトルbと、歯科用支台築造用ポスト(I)とに分けて保存し、通法に従い根管部分の印象を採取し、作業模型を作製した後、作業模型にシリコーン系等の分離材を塗布し、各成
分を適量ずつ取り出し、混合したペーストを作業模型内に填入した後、歯科用支台築造用ポスト(I)をこの作業模型内にさらに挿入し、硬化させ、別に用意した歯科用接着材を用いて、根管内に接着させる方法;
(7)(D)成分と(E)成分とのうち、光重合開始剤より選択される成分と(F)成分とを混合して保存したシリンジと、歯科用支台築造用ポスト(I)とに分けて保存し、通法に従い根管部分の印象を採取し、作業模型を作製した後、作業模型にシリコーン系等の分離材を塗布し、各成分を適量ずつ取り出し、混合したペーストを作業模型内に填入した後、歯科用支台築造用ポスト(I)をこの作業模型内にさらに挿入し、硬化させ、別に用意した歯科用接着材を用いて、根管内に接着させる方法;
(8)(D)成分と(E)成分とを混合して保存したシリンジaと、(D)成分と(F)成分とを混合して保存したシリンジbとの2筒式ミックスシリンジと、歯科用支台築造用ポスト(I)とに分けて保存し、通法に従い根管部分の印象を採取し、作業模型を作製した後、作業模型にシリコーン系等の分離材を塗布し、各成分を適量ずつ取り出し、混合したペーストを作業模型内に填入した後、歯科用支台築造用ポスト(I)をこの作業模型内にさらに挿入し、硬化させ、別に用意した歯科用接着材を用いて、根管内に接着させる方法などを例示することができる。
本発明の歯科用根管充填用キットを用い、支台築造された歯牙は、次の手順によって簡便に再根管治療することができる。すなわち、クラウン等の歯冠部構造体を取り外して支台部を切削した後、歯科用支台築造用ポスト(I)の易切削芯材(A)部分を目視にて確認した後に、易切削芯材(A)部分を中心に切削することにより、残存歯髄を不要に切削することなく、再根管治療を行うことができる。
以下、実施例により本発明をさらに詳述するが、本発明は実施例により何ら限定されるものではない。
なお、評価方法および評価基準は以下の内容に従って行った。
<切削の容易さ評価方法>
抜去直後に冷凍保存したウシ前歯を解凍し、歯根部を約15mmの長さで切り出し、歯髄を抜去した。ついで歯髄腔を歯科用タービンにて拡大し、根尖孔を歯科用接着材(サンメディカル製、スーパーボンドC&B)で封鎖した。
根管表面に歯科用接着材(サンメディカル製、AQボンドプラス)を塗布し、歯科用可視光照射器(モリタ製作所製、キャンデラックス)にて30秒間可視光を照射し、トリエチレングリコールジメタアクリレート(新中村化学製NKエステル3G)7g、1,6−ビス(メタアクリロキシエトキシカルボニルアミノ)−2,2,4(3,3,5)−トリメチルヘキサン(2,2,4位と3,3,5位のトリメチル置換体との混合物、根上工業製アートレジンSH−500S)28g、カンファーキノン0.1g、N,N−ジメチル−p−トルイジン0.1g、通法によりシラン処理を行ったバリウムガラス(ショット製GM8235,平均粒径1μm)65gからなるペーストを根管に充填し、中心部に長さ10mmの歯科用支台築造用ポストを植立させ、60秒間可視光を照射し、ペーストを硬化させた。さらに硬化したペーストより露出したポストを完全に覆うように、上述のペーストを築盛し、60秒間可視光を照射し、硬化させた。続いて37℃水中に根管充填した歯牙を24時間浸漬し、再根管治療評価用歯牙を作製した。
経験3年以上の臨床歯科医10人に対し、水中より再根管治療評価用歯牙を取り出し、余剰の水分を除去した後、歯科用エンジンに接続したピーソリーマー(マニー製、No.1)を用いることだけを指示し、切削方法は指示せずに、次に示す基準によりポストの切削の容易さを3項目にわたる評価を行い、各項目ごとに最高点を5点、最低点を0点とする6段階の採点によるアンケートを実施した。アンケート結果に基づき臨床歯科医10人の合計値を求め、該合計値が40点以上を合格とした。
《切削に要する時間》:切削できなかった 0点
:非常に長く感じる 1点
:非常に短く感じる 5点
《切削にかかる負荷》:切削できなかった 0点
:非常に大きく感じる 1点
:非常に小さく感じる 5点
《リーマー破折の危険性を感じたか》:非常に感じ、操作を中止した 0点
:非常に感じた 1点
:まったく感じなかった 5点
<機械的物性の測定方法1>
万能試験機(島津製作所製オートグラフAGS−2000G)を用い、支点間距離20mm、クロスヘッドスピード1mm/minにて、得られた歯科用支台築造用ポストの曲げ強さ1および曲げ弾性係数1を測定した。
<機械的物性の測定方法2>
外径3mm、内径1.5mm、長さ25mmのポリ塩化ビニル製透明チューブに、上述の切削の容易さ評価方法に記載したペーストを充填し、その中心部に得られた歯科用支台築造用ポストを直ちに挿入し、歯科用光照射器(モリタ製作所製アルファライトIII)を用いて可視光を3分間照射し、チューブから内容物を取り出した。万能試験機(島津製作所製オートグラフAGS−2000G)を用いて、支点間距離20mm、クロスヘッドスピード1mm/minにて、歯科用支台築造用ポストの曲げ強さ2および曲げ弾性係数2を測定した。
[実施例1]
グラスファイバー(セントラル硝子製ECG−150、繊維径9μm、撚数3.6回/25mm)を編組したチューブ(グラスファイバー200本×3束を16打、内径1.5mm、外径1.9mm、目付量300g/m2)をエタノール95g、3−メタアクリロ
キシプロピルトリメチルシラン5gからなる溶液に1時間浸漬し、溶液より取り出して室温にて10分間放置した後に、80℃で24時間乾燥させ、グラスファイバー表面をシラン処理した。続いてチューブの中心にガッタパーチャポイント(ジッペラー製、直径0.4mm、長さ28mm)を挿入し、グラスファイバーのみを長軸方向に人力にて引張応力をかけた後(周は細くなったが、長軸方向には実質的な延伸は認められなかった)、25mmに切断し、円柱状構造物を得た。さらに100gの新中村化学製NKエステル3G、100gの根上工業製アートレジンSH−500S、カンファーキノン1g、N,N−ジメチル−p−トルイジン0.1gからなる液体に得られた構造物を浸漬し、24時間後に液体より該構造物を取り出して、歯科用可視光照射器にて30秒間可視光を照射し、得られた構造物を歯科用支台築造用ポストAとした。歯科用支台築造用ポストAの直径は1.31mm、中心のガッタパーチャ径0.38mmであった。歯科用支台築造用ポストAの評価結果を表1に示す。切削は容易で、機械的物性も象牙質の歯科用支台築造用ポストと近似しており、目的を達成しうると示唆された。
[実施例2]
実施例1において、ガッタパーチャポイントに代えてポリプロピレン製縫合糸(ネスピレン:アルフレッサファーマ(株)製、直径0.4mm)を用いた以外は実施例1と同様に操作し、直径1.29mm、中心のポリプロピレン径0.40mmの歯科用支台築造用ポストBを得た。歯科用支台築造用ポストBの評価結果を表1に示す。切削は容易で、機械的物性も象牙質の歯科用支台築造用ポストと近似しており、目的を達成しうると示唆され
た。
[実施例3]
ガラスビーカーにメチルメタアクリレート10gを秤取し、重合開始剤として2,2’−アゾビスブチロニトリル0.05gを加え、撹拌して充分に混合したのち、得られた混合物を1.3kPa以下の減圧下に発泡が認められなくなるまで充分に脱気した。ガラスモールドとテープからなるモールド中へ混合物を注入した後、加熱オーブン中へ入れ、30〜100℃まで徐々に昇温して20時間重合させ、直径0.4mm、長さ30mmのポリメチルメタアクリレート製円柱を得た。
実施例1において、ガッタパーチャポイントに代えて上述のポリメチルメタアクリレート製円柱を用いた以外は実施例1と同様に操作し、直径1.34mm、中心のポリメチルメタアクリレート(径0.41mm)の歯科用支台築造用ポストCを得た。歯科用支台築造用ポストCの評価結果を表1に示す。切削は容易で、機械的物性も象牙質の歯科用支台築造用ポストと近似しており、目的を達成しうると示唆された。
[実施例4]
実施例1において、ガッタパーチャに代えてポリエチレン製フィラメント(テクノロートW1000:三井化学(株)製、直径0.38mm)を用いた以外は実施例1と同様に操作し、直径1.33mm、中心のポリプロピレン径0.38mmの歯科用支台築造用ポストDを得た。歯科用支台築造用ポストDの評価結果を表1に示す。切削は容易で、機械的物性も象牙質の歯科用支台築造用ポストと近似しており、目的を達成しうると示唆された。
[実施例5]
実施例1において、ガッタパーチャに代えてポリスチレン製円柱(プラストラクトMR15:プラストラクト社製、直径0.39mm)を用いた以外は実施例1と同様に操作し、直径1.35mm、中心のポリスチレン径0.40mmの歯科用支台築造用ポストEを得た。歯科用支台築造用ポストEの評価結果を表1に示す。切削は容易で、機械的物性も象牙質の歯科用支台築造用ポストと近似しており、目的を達成しうると示唆された。
[比較例1]
実施例1において、ガッタパーチャに代えてSUS304ワイヤーを用いた以外は実施例1と同様に操作し、直径1.33mm、中心のSUS径0.40mmの歯科用支台築造用ポストFを得た。歯科用支台築造用ポストFの評価結果を表1に示す。機械的物性は象牙質の歯科用支台築造用ポストと近似していたが、切削に要する手間が大きかった。
[比較例2]
歯科用支台築造用ポストとしてADポストII(クラレ製歯科用支台築造用ステンレスポスト、3LL)を使用した。ADポストIIの評価結果を表1に示す。なお、上述の機械的物性の測定方法1のうち、支点間距離を10mmに変更した。また上述の機械的物性の測定方法2のうち、支点間距離を10mmに変更したが、ポストは破断せずに、ペースト硬化物のみが破断したため、測定を中止した。ポストの機械的物性が高すぎることにより、根管内に植立し、支台形成を行っても歯根破折の可能性が示唆された。
Figure 0005479674
本発明の歯科用支台築造用ポストの形状を表す図である。 図1のX−X線での断面図である。
符号の説明
1: 歯科用支台築造用ポスト
2: 易切削芯材(A)
3: 被覆材(B)
4a、4b、4c、4d: 有機マトリックス(C)
L: 易切削芯材(A)の長さ
1: 易切削芯材(A)の直径
2: 歯科用支台築造用ポストの直径

Claims (4)

  1. 易切削芯材(A)を、シラン処理したグラスファイバー繊維を編組してチューブ状に成型した被覆材(B)で被覆されてなる歯科用支台築造用ポストであって、
    前記易切削芯材(A)が、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂および多孔質無機化合物からなる群より選択される少なくとも1種であり、
    易切削芯材(A)と被覆材(B)とからなる構造物に、(メタ)アクリレート化合物と重合開始剤とから構成される有機マトリックス(C)を含浸させた後、有機マトリックス(C)を重合させて得られることを特徴とする、歯科用支台築造用ポスト。
  2. 前記熱可塑性樹脂が、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリメチル(メタ)アクリレート、トランス−1,4−ポリイソプレンおよびガッタパーチャからなる群より選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする、請求項に記載の歯科用支台築造用ポスト。
  3. 前記多孔質無機化合物が、カルシウム化合物であることを特徴とする請求項またはに記載の歯科用支台築造用ポスト。
  4. 請求項1〜のいずれかに記載の歯科用支台築造用ポストと歯科用根管充填材とから構成される歯科用根管充填用キット。
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