発明の背景
本発明は、削岩機を備えた穿孔ブームを有しこれによって所望の穿孔現場で穿孔を行なえる削岩リグに関するものである。削岩リグはまた、燃焼エンジンフリー駆動装置も有し、これによって穿孔現場間を移動することができる。削岩リグの駆動装置は、少なくとも1つの電気モータおよび電気駆動系、ならびに制御ユニットをさらに有し、制御ユニットは電気駆動系の負荷を制御する手段を有している。加えて、制御ユニットは、速度制御装置を有するユーザインタフェースを有する。
さらに、本発明は削岩リグの移動運転方法、および速度制御装置に関するものである。
本発明の分野は本願の独立請求項の前段でさらに詳細に記載する。
鉱山では、予定した穿孔現場で削岩リグを用いて掘削孔を穿孔する。掘削孔を穿孔し終えたら、削岩リグを次の穿孔現場に移動させて新たな穿孔扇形部または切羽を穿孔する。とくに地下鉱山では、電気モータで発生する動力によって移動運転することが有益である。移動運転に必要なエネルギーは電池に蓄積することがある。移動運転中、駆動伝達の電気部品には負荷がかかり熱を持つようになる。過熱によって部品に損傷を与えるおそれがある。そのため通常は、移動運転での最高出力を制限して駆動装置の電気部品の温度が許容限度内にとどまるようにしなければならない。出力が制限されるため、移動運転の速度を下げる必要があり、削岩リグの性能を発揮できない。
発明の簡単な説明
本発明は、新規で改良された削岩リグ、その移動運転方法、さらには速度制御装置を提供することを目的とする。
本発明による削岩リグは、負荷モニタ部が所定の制御手順に従って電気駆動系を意図的に過負荷状態にできるよう構成され、過負荷状態は所定の長さの期間を有し、これによって電気駆動系の部品の過熱を防ぎ、また定格負荷状態から過負荷状態への移行を操作者に知らせる制御ユニットが配設されていることを特徴とする。
本発明の方法は、移動運転の際、電気駆動系を所定の長さの期間、意図的に過負荷状態にし、削岩リグの操作者に過負荷状況を認識させることを特徴とする。
本発明の速度制御装置によれば、速度操作要素は、定格負荷を上回る過負荷部分で制御を行なう少なくとも1つの別の操作範囲を有するという特徴がある。
その概念は、削岩リグの電気駆動系を意図的に過負荷状態にすることで、一時的に定格負荷より高い負荷で運転することにある。別の概念は、過負荷状態を操作者に知らせて、例えば、過負荷状態を操作者自身が制御し、あるいは何らかの方法で操作者に知らせることにある。
1つの利点は、計画した通常運転時より高い動力で一時的に削岩リグを運転できることである。したがって問題は、移動運転で利用可能であって、短期間とはいえ大電力を必要とする特殊な状態を処理できる一種のパワーブースタに関するものである。そのため削岩リグの電気駆動系は、このような大きな電力を要する駆動状態に即した設計にする必要がなく、その結果、部品の過剰設計が避けられる。したがって電気駆動系は、低価格で小型の電気部品を使用できる。さらに、操作者が過負荷状態に気づき、したがって予想外の状況を生じることがないため、システムの操作性および安全性が向上する。
一実施例の基本的な概念によれば、電気駆動系は電気駆動モータを有し、これは、例えば永久磁石型のモータであってもよい。さらに、電気駆動系は、移動運転のエネルギーを蓄積する、例えば電池またはパッケージ電池などのエネルギー貯蔵部を含む。電気駆動系は周波数変換器も含み、これによって駆動モータの回転およびトルクを制御してもよい。電気駆動系は、電圧変換器や、場合により他の電気部品を含んでいてもよい。
一実施例の基本的な概念によれば、操作者がユーザインタフェースの過負荷モードを選択すると、負荷モニタ部は電気駆動系の過負荷状態を許容する。
一実施例の基本的な概念によれば、速度制御装置は少なくとも第1の操作範囲と第2の操作範囲を有する。第1の操作範囲では、部品の定格負荷が超えない程度に電気駆動系に負荷をかけることができる。このように、第1の操作範囲は通常状態を対象とする。これに対して第2の操作範囲では、電気駆動系部品の定格負荷を上回ることができる。したがって、第2の操作範囲は過負荷状態を対象とする。負荷状態を別々の操作範囲に分けると、操作者は運転がし易くなる。その場合、操作者は、負荷状態への移行を知らずに過負荷状態の使用に移行することはない。
一実施例の基本的な概念によれば、制御ユニットのユーザインタフェースにおいて、操作者には、電気駆動系の過負荷が選択されたことが表示される。この適用例によって、操作者は常に過負荷状態を認識できる。
一実施例の基本的な概念によれば、ユーザインタフェースにおいて、操作者には、例えば過負荷状態の時間長、過負荷状態の残り時間、過負荷による性能向上、過負荷によるトルク増加、および電気駆動系における最重要部品の温度等、電気駆動系の負荷モニタ情報が表示される。
一実施例の基本的な概念によれば、削岩リグは少なくとも1つの冷却システムを有し、これによって電気駆動系の1つ以上の電気部品が冷却される。制御システムは、過負荷モードへの移行がなされると、1つ以上の部品の冷却を増すことができる。冷却システムは液体冷却システムであってもよく、電気部品は冷却液で冷却される。冷却システムは、過負荷状態が生じることが分かっていれば、前もって切り換えてもよい。さらに、1つ以上の最重要部品の冷却をあらかじめ高めておくことによって、次の過負荷に備えることもできる。冷却により、部品の温度を過負荷状態で制御して良好に保つことができ、それにより過負荷の継続時間を長くすることができる。
一実施例の基本的な概念によれば、操作者が電力要求にて過負荷モードを要求した場合、制御ユニットは自動的に過負荷モードを立ち上げる。制御ユニットは、速度制御装置または同様の操作要素からの電力要求をモニタして、これに基づいて電力要求が定格負荷に合うものか、または過負荷モードへの移行が必要かどうかを判断する。制御ユニットは、定格負荷モードから過負荷モードへの移行を操作者に通知し、これにより操作者はモード変更を認識する。
一実施例の基本的な概念によれば、操作者が意図的に過負荷モードを受け入れた場合のみ、過負荷状態が可能になる。その場合、操作者が不用意に装置を過負荷モードで使用することはない。
一実施例の基本的な概念によれば、電気駆動系は、電気駆動系の少なくとも1つの重要部品の温度をモニタする少なくとも1つの温度センサを有する。負荷モニタ部は、過負荷状態の許容時間長を決めるに際し、温度情報を考慮する。
一実施例の基本的な概念によれば、負荷モニタ部は、次の所定の限界値、すなわち電気駆動系の重要部品のうちの少なくとも1つ以上について設定された最高温度、電気駆動系のどれか1つの部品について設定された最高温度、過負荷状態について算出された最長継続時間のうちの1つ以上に達すると、過負荷モードを中止するように構成されている。この実施例において制御ユニットは、過負荷が電気駆動系の部品を損傷させないように管理する。自動モニタにより、移動運転における操作者の責任や精神的なストレスを低減できる。
一実施例の基本的な概念によれば、負荷モニタ部は、過負荷状態の中止に先立って操作者に通知するように構成されている。その場合、操作者は、過剰なパワーブースタの中止に備えることができる。したがって、例えば、急激な電力低減によって生ずる危険な状況を避けることができる。
一実施例の基本的な概念によれば、大きなトルクと電力が必要な次の移動運転状況、すなわち障害物を乗り越える運転、移動運転の基本速度まで加速、急勾配の上り坂運転、窪みを越える運転、運搬台へ上る運転、長時間の下り坂運転のいずれかにおける電気駆動系の過負荷状態を許容する。
一実施例の基本的な概念によれば、速度制御装置に含まれる速度操作要素は、少なくとも第1の操作範囲および第2の操作範囲を含む。第2の操作範囲では、操作要素を動かすと、第1の操作範囲での操作手応えとは異なる手応えを呈する。第2の操作範囲における操作要素の操作は、例えば通常の、すなわち第1の動き領域での操作より硬くてよい。さらに、操作要素の動きのスケーリングは、第1の動き領域と第2の動き領域とで異なってもよい。
一実施例の基本的な概念によれば、速度制御装置は、第2の操作範囲への移行を検出する少なくとも1つの検出器を有する。速度制御装置、制御ユニットまたはユーザインタフェースは、過負荷状態へ移行すると、信号音、視覚的メッセージまたは振動アラームを発する。
一実施例の基本的な概念によれば、移動運転を下り坂で行なうと、電気駆動モータは発電機として作動するように切り換わる。その場合、駆動モータは、下り坂運転中、削岩リグを減速させると同時に電流を生成し、これは主に、削岩リグのエネルギー蓄積部の充電に使われる。減速で生成される余剰な電気エネルギーを電気制動用抵抗内の熱エネルギーに変換してもよい。これに加えて、減速で発生する余剰電気エネルギーによって、削岩リグ内の1つ以上の液圧システムの作動が可能である。これにより、余剰電気エネルギーをすべて制動用抵抗で消費させる必要がない。これによって、下り坂運転における電気駆動系のエネルギーが改善する。制動用抵抗に加えて、余剰エネルギーを受ける1つ以上のシステムがあれば、下り坂運転中、制動用抵抗を一時的に過負荷にすることができる。この適用例によれば、限られた時間長で使用可能な一種の制動ブースタが可能である。
本発明のいくつかの実施例を添付図面においてより詳細に説明する。
穿孔のため穿孔現場へ移動運転される削岩リグの概略図である。
電気駆動モータを有し、負荷モニタ部および液体冷却システムを備えた駆動装置を概略的に示す図である。
電気モータで液圧駆動伝動部を動かす第2の駆動装置を概略的に示す図である。
ないし
過負荷状態への移行とその検出を行なういくつかの速度制御装置とその関連手段を概略的に示す図である。
移動運転と駆動装置の負荷モニタに関する詳細を示す簡略図である。
電気駆動系を過負荷にする必要があるいくつかの移動運転状況を概略的に示す図である。
電気駆動系またはその部品の負荷を概略的に示すグラフである。
各図において、いくつかの実施例は明確化のために単純化して示す。各図にわたって、同様の部分は同じ参照番号で示す。
いくつかの実施例の詳細な説明
図1は、可動キャリア2を有する実現可能な削岩リグ1を示し、これには、穿孔ユニット4を搭載した1本以上の穿孔ブーム3a、3bが装備されている。穿孔ユニット4は、削岩機6を装備した送りビーム5を有してもよく、削岩機は送り装置7により送りビーム5上を移動可能である。削岩機6は、工具9へ衝撃パルスを発生させる衝撃装置8と、工具9を回転させる回転装置10を有してもよい。さらに、フラッシング装置を含んでもよい。図示された穿孔ブーム3a、およびこれに配置された穿孔ユニット4は、トンネルの切羽11または同様の穿孔現場で掘削孔を穿孔する用に供する。あるいは、ブームおよびそれに取り付けられた穿孔ユニットは、岩盤洞穴の天井および両壁に扇形状掘削孔列を穿孔するよう設計してもよい。さらに、削岩リグ1は、やはり削岩機6を有するボルト打設装置12を装備したブーム3bを有してもよい。削岩リグ1は液圧システム13を有してもよく、これは、液圧ポンプ34、液圧通路、タンク、および弁などのような必要な制御手段を含む。液圧システム13は穿孔液圧システムであってもよく、これには、穿孔ブーム3a、3bを動かすのに必要なアクチュエータ15、および削岩機6が接続されている。削岩リグ1は、削岩リグ1の各システムを制御するように構成された1つ以上の制御ユニットCも備えている。制御ユニットCは、コンピュータ、またはプロセッサ、プログラマブル論理回路もしくは当目的に適した何らかの他の制御装置を含む同様の制御装置であってもよく、これには少なくとも1つの制御手順を設定でき、その制御手順に従って操作者とは独立に、またはこれと協動して制御を実行する。
穿孔現場Pでは、削岩リグ1を用いて1つ以上の掘削孔を穿孔する。穿孔現場Pに対して定めた仕事が完了すると、削岩リグ1は、穿孔現場Pから離れて新たな穿孔現場へ、または例えば点検のために他の場所へ移動運転する。削岩リグ1は、燃焼エンジンを含まない駆動装置16を具備している。すなわち、燃焼エンジンフリーである。その代わり、駆動装置16は1つ以上の電気モータMを含み、これが移動運転に必要な動力を生成する。電気モータMはギアボックス17に接続してもよく、これからシャフトまたは同等の動力伝動部材18を介して回動力を1つ以上の車輪19に伝達する。移動運転時に必要なエネルギーはエネルギー貯蔵部Bに蓄積してもよく、これは例えば電池でよい。駆動装置16はさらに、1つ以上の制御装置Sと1つ以上の制動用抵抗20を含んでいてもよい。このため駆動装置16は複数の電気部品Kを含み、これらが移動運転に影響を及ぼす。これら部品Kは移動運転時に負荷がかかって発熱するが、発熱の程度は各部品を通る電気エネルギーに関連している。一般に知られているように、電気部品には超えてはいけない温度限界があり、超過すると部品が破損するという結果になり得る。部品Kを保護するために、部品には一般に定格負荷が定められ、電気部品は通常、それより低い負荷で使うべきである。制御ユニットCは負荷モニタ部KVを有してもよく、これは、駆動装置16に含まれ電気駆動系に接続された1つ以上の部品Kの負荷をモニタするように構成されている。負荷モニタ部KVを用いることにより、電気駆動系の損傷、ならびにその負荷から生じる他の欠陥状態および危険状況を防止することができる。
図1は速度制御装置50も示し、これにより操作者は運転速度および出力の要求を制御ユニットCへ伝えることができ、制御ユニットは伝えられた要求に基づいて電気駆動系を制御する。このように速度制御装置50は、制御ユニットCのユーザインタフェースの一部を構成している。速度制御装置50は、機械的構造を含んでもよく、または表示もしくは同様の方法におけるソフトウェアとして実現してもよい。
さらに、削岩リグ1には液体冷却システム21を設けてもよく、これにより駆動装置16に含まれる電気部品Kを冷却できる。以下にこれを説明する。
図2は駆動装置16を示し、電気モータMは、アンチスリップ伝動経路22を介してギアボックス17に直接連結してもよく、ギアボックスは、前進方向および対応する後退方向に1つまたは2つ以上の歯車を含んでいてもよい。回転トルクは、ギアボックスから車軸24へシャフト23によって伝達してもよい。シャフト23および24の間にはアングルドライブ25等があってもよい。その場合、車輪19と電気モータMの間には、機械的なアンチスリップ伝動部がある。電気モータMは減速にも使用してよく、その場合は発電機として機能し、例えば、鉱山で走行斜面を下り走行するときにキャリア2の運動エネルギーを電気エネルギーに変換する。発生した電気エネルギーはエネルギー貯蔵部Bに蓄積して回収してもよい。利用できない余剰の電気エネルギーは、制動用抵抗20で熱エネルギーに変えてもよい。駆動装置16はさらに制御装置Sを含んでいてもよく、これは周波数変換器を有していてもよい。これによって、駆動中および制動中の両方において電気モータMの回転を無段階で制御してもよい。制御装置Sはさらに、電気駆動系における電流を制御するのに必要な他の電気制御装置を含んでもよい。制御装置Sは、例えばエネルギー貯蔵部Bおよび制動用抵抗20を電気駆動系に接続する制御手段を有してもよい。制御装置Sの動作は、制御ユニットCが制御する。
本願において、周波数変換器とは、電気駆動モータの回転速度を無段階で制御できる制御手段のことを指す。周波数変換器はインバータであってもよい。すなわち電気モータの運転を制御するDC/AC変換器であってもよい。
図2は、さらに別の適用例を破線で示し、これは電気駆動モータを伝動手段へ無滑り状態で連結するものである。左側のシャフト24に関して車輪別の電気ハブモータM1があり、これに連結して必要なギアボックスがあってもよい。さらに、シャフト24には回転トルクを1台の共通電気駆動モータM2により供給してもよい。
駆動装置16の部品Kには温度センサLを備えていてもよく、これで得られた情報は制御ユニットCおよび負荷モニタ部KVに伝えてもよい。
さらに図2からは、制御ユニットCが液体冷却システム21の作動も制御し得ることがわかる。液体冷却システム21は複数の冷却回路26a〜26dを有してもよく、そのそれぞれには駆動装置の1つ以上の電気部品Kが接続されている。冷却回路26は1つ以上のバルブまたは同等の操作部材27を備えていてもよく、これにより冷却回路26内の液体の流れに影響を及ぼすことができる。制御ユニットCは、これらの操作部材27を制御して、制御手順に従って冷却を実現するようにしてもよい。さらに、液体冷却システム21のポンプ28を制御することも可能であり、これにより本システム内における冷却液の流れを増加または減少させてもよい。また制御ユニットCは、冷却ユニット29の作動を制御して冷却液の温度に影響を及ぼすことができるようにしてもよい。必要であれば、冷却液を予冷することも可能である。
図3は駆動装置16の適用例を示し、電気モータMは液圧ポンプ30を作動させるように構成され、生成された液圧動力はギアボックス17に接続された液圧モータ31を駆動する。このようにして液圧駆動伝動部が関わっている。駆動装置に含まれる電気モータMは制御装置Sにより制御してもよい。駆動総理16の部品Kにおける負荷は負荷モニタ部KVによりモニタしてもよい。図3は、液圧モータ31およびギアボックスの代わりとなる液圧ハブモータH1と、シャフト24を駆動する液圧モータH2とを破線で示す。
図4aないし図4cは、速度操作要素51を有するいくつかの速度制御装置50を非常に簡単化して示す。速度操作要素により操作者は、制御ユニットCに要求を伝えて、駆動速度および動作を調節できる。
図4aおよび図4cにおいて、速度操作要素51はフレーム52に対して手で倒すことのできるジョイスティックである。速度操作要素51は、第1の操作範囲53および第2の操作範囲54を有している。第1の操作範囲53では、速度制御装置50は、駆動装置16を制御して電気駆動系とそれに接続された部品Kにそれらの定格負荷を超えない範囲で負荷をかけるように構成されている。速度操作要素51を第1の操作範囲53から第2の操作範囲54に切り換えると、より大きな電力が使用可能となり、電気駆動系における部品Kの定格負荷を上回ることができる。
図4aは、速度操作要素51が第1の操作範囲53と第2の操作範囲54とで異なる操作抗力を有してよいことを示している。速度操作要素51の操作抗力は、バネ部材55および56によって調整することができ、あるいは電動または圧力媒体作動のアクチュエータを用いて操作抗力を与えることができる。速度操作要素51を第1の操作範囲53内で操作すると、その動きは第1のバネ部材55だけで抵抗を受ける。速度操作要素51をさらに動かして第2の操作範囲54に移行すると、第2のバネ部材56もこれに作用し始める。第2の操作範囲54は、第1の操作範囲53における操作抗力F1より明らかに強い操作抗力を有し、したがって操作者は、部品Kの過負荷状態が許容される制御モードに無意識に移行してしまうことがない。
図4bでは、速度操作要素51の動きを、例えばセンサ58によって検出している。一時的に過負荷モードに移行する制御が必要な場合、速度操作要素51は、第1の操作範囲53の動き領域を越えて動かされ、これをセンサ58が検出する。第2の操作範囲54への移行を1つまたは複数の表示器59によって操作者に知らせてもよい。表示器59は、例えば表示灯でよい。または、表示器59が信号音を発する。表示器59でメッセージまたはアラームを出力することで、操作者は不用意に第1の操作範囲53から逸脱してしまうことがない。
図4cの速度制御装置50はアクセルペダルの一種であり、駆動装置またはその部品の出力は速度操作要素51を押すことで調整される。速度操作要素51の位置情報が検知器60から得られ、得られた情報は制御ユニットCに送られる。速度操作要素51をフレーム52に対して長い行程にわたって動かすと、第1の操作範囲53から第2の操作範囲54への移行が生じ、これは例えば限界スイッチ61で検出してもよい。限界スイッチ60からの検出情報を負荷モニタ部KVに送り、これによって、電気駆動系に接続された1つ以上の部品の定格負荷を上回る大きな電力が使用できる。速度制御装置50は振動警報器62を備えていてもよく、これは、過負荷領域への移行が起きると、振動によって操作者に知らせる。また、制御ユニットCのユーザインタフェースに含まれる表示装置63に過負荷状態への移行情報を表示することも可能である。表示装置63はまた、他の負荷モニタ部KV情報、例えば過負荷状態の継続時間や、負荷モニタ部が強制的に制御を第1の操作範囲に戻すまで過負荷を続ける時間の長さなどを表示してもよい。表示装置63はまた、部品Kの温度や過負荷で生ずる出力およびトルクの増加を表示してもよい。
速度制御装置の任意的一適用例によれば、スイッチまたは表示装置によって過負荷モードを選択した場合のみ、速度操作要素51を第2の操作範囲54へ動かすことができるようにしてもよい。
図5は、駆動装置の移動運転および負荷モニタ機能に関する詳細および制御動作を示す簡略図である。穿孔後、削岩リグを削岩現場から離れるよう移動する、すなわち、移動運転する。そのため、駆動装置およびその電気部品に負荷がかかる。制御システムと、とくにそれに含まれる負荷モニタ部が電気駆動系の負荷をモニタする。負荷モニタ部は、各部品の温度、速度制御装置の使用、および特定の駆動状況ごとに各部品を流れる電力をモニタしてもよい。移動運転は、電気駆動系とそれに接続されている部品の負荷を所定の定格負荷未満に維持するように行なう。しかし、運転中には、定格負荷より大きな電力で駆動装置を使用する必要も起こり得る。負荷モニタ部は、一時的な過負荷状態を許容する、すなわち過負荷状態の継続時間を制限する制御手順を含んでいる。速度制御装置は、過負荷状態が可能な別の操作範囲を有するように構成してもよい。また、過負荷状態への移行を操作者に知らせてもよい。さらに、過負荷モードへの移行が生ずると、冷却システムによる制御システム内の部品の冷却を始めてもよい。とくに重要な部品の冷却は優先させてもよい。負荷モニタ部は電気駆動系をモニタして、所定の許容時間長が経過した場合、部品温度が許容限界値より上昇した場合、または、それ以外で過負荷に起因して損傷の恐れがある何らかの部品を負荷モニタ部が検出した場合、過負荷モードから通常モードに戻す自動制御に移行してもよい。あるいは、過負荷モードから通常モードへの移行は操作者による手操作で行なってもよい。その場合、負荷モニタ部は過負荷状態を終了する旨を操作者に通知してもよい。この通知は、該当する警報装置によって行なうとよい。
図6は、電気駆動系を一時的に過負荷状態にする必要のあるいくつかの運転状況を示す。削岩リグ1を通常より大きい電力を使用して加速64してもよい。また、上り坂運転65でも多くの電力の使用を必要とすることがある。下り坂運転66では削岩リグ1を駆動装置により減速してもよい。その場合、少なくともある程度の運動エネルギーは電気エネルギーに、さらに制動用抵抗で熱エネルギーに変換してもよい。下り坂運転のエネルギーは、電気駆動系に接続された部品を一定期間、過負荷状態にすることがあれば、改善する。過負荷状態を要するさらに別の状況としては、障害物を乗り越える運転67がある。もちろん、過負荷状態という選択は、上述した以外にも何らかの他の運転状況にも適用することができる。
図7は、負荷曲線68を時間関数として示す。通常運転状況69は、所定の定格負荷N未満で発生し、過負荷状況70は限界値Nを超えると生じる。過負荷状態は、時刻t1で始まり、負荷モニタ期間を経て時刻t2で終わる。その場合、負荷モニタ部は、期間tyだけ過負荷状態の使用を許容している。過負荷状態は一時的であり、したがって、その継続時間長は部品の熱出力に基づいて一般に決まる限界がある。継続時間長は、必ずしもあらかじめ設定しておく必要はないが、負荷モニタ部は、部品の熱抵抗、運転作業、部品を流れる電流、環境条件、および他の要因があればそれを考慮して許容時間長を決めてもよい。図7では、破線で第2の負荷曲線68'を示し、これは、過負荷を徐々に減らすと許容時間ty'が長くなることを示している。制御ユニットは、過負荷を所定の方法で減らす制御手順を有してもよい。
削岩リグの駆動装置が完全に燃焼エンジンなしであっても、削岩リグのキャリアは、燃焼エンジンを含む予備動力ユニットを有してもよい。この燃焼エンジンは、電気エネルギーを発生する発電機を駆動する。しかし予備動力ユニットは、駆動装置内に含まれず、特別な状況、例えばバッテリが上がったり損傷したりしたときにのみ使用するためのものである。
場合によっては、本願に示す特徴事項を他の特徴事項と無関係にそれ自体で用いることができる。他方、本願に示した各特徴事項を必要に応じて組み合わせて、種々の組合せを形成してもよい。
図面とその関連説明は、本発明の概念を説明するためのものである。本発明の詳細は特許請求の範囲内で変更してもよい。