JP5473400B2 - ドライ真空ポンプおよびそのシール方法 - Google Patents
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Description
一方、真空処理室から水素ガスを含む排気対象気体を吸引及び排出するために用いられるドライ真空ポンプは、その駆動源として電磁モータを備えており、この電磁モータは構成材料として永久磁石材料を含む。永久磁石材料は鉄―ネオジム系材料が代表的であり、永久磁石材料は水分による錆が発生しやすいため、ニッケルメッキなどにより耐食性改善が行われている。また、永久磁石材料は水素を吸蔵するので水素化合物を形成し、発熱他で脆化して磁力の低下や崩壊に至ることがあり、いわゆる水素による浸食を受け易いことが知られており、電磁モータの励磁力低下が懸念される。
さらに、水素ガスは分子サイズが小さく拡散しやすいため、水素ガスは、ドライ真空ポンプの排気室からロータの回転シャフトのシール部分を通過して電磁モータ内部へと拡散し、さらには永久磁石の表面に施した薄いニッケルメッキやメッキ層のピンホールを透過して、水素による浸食を生じさせる危惧があることが判明した。
特に、結晶質シリコン系薄膜製造に見られるような、シランガスを多量の水素ガスで希釈する高希釈率製膜条件にて、1m2を超える大面積基板へ製膜処理をする場合は、真空排気ポンプの内容量に対する排気対象気体中の水素ガスの割合が増加するため、一層に水素ガスによる電磁モータの永久磁石材料機能不全を発生することが懸念される。
以上から、接触型シール機構を採用した上で、排気室の圧力変動に対しても十分にシール特性の優れたシール機構が望まれている。
すなわち、本発明にかかるドライ真空ポンプは、電磁モータによって回転駆動されるシャフトと、該シャフトに取り付けられるとともに排気室内に設けられ、真空処理室内の排気対象気体を該排気室内に吸引しかつ排出するロータと、を備えた真空処理室を排気するドライ真空ポンプにおいて、前記排気室と、該排気室の隣に位置する隣室との間には、該排気室を区画する排気室区画壁部と前記シャフトとの間をシールする排気室側シールと、該隣室を区画する隣室区画壁部と前記シャフトとの間をシールする隣室側シールとを備え、前記排気室側シールと前記隣室側シールとの間には、シールガスが供給されるガス導入空間が設けられ、前記排気室側シール及び前記隣室側シールは、それぞれ、前記排気室区画壁部側または前記隣室区画壁部側に固定された円環状の基部と、該基部から前記シャフト側へと延在する一対の円環状のリップ部とを備え、一対の前記リップ部は、前記基部から前記シャフト側へと向かうにつれて互いの間隔が漸次拡大するように延在するとともに、それぞれの先端部が、前記シャフトに対して弾性的に接触可能とされるとともに、一方の前記リップ部の変形が前記基部を介して他方の前記リップ部の変形に影響することを特徴とする。
また、排気室側シール及び隣室側シールは、一対のリップ部を備え、それぞれの先端部が、シャフトに対して弾性的に接触可能とされている。したがって、2つのリップ部によってシールを行うことができるので、より確実なシールが行われることになる。
さらに、各リップ部は、シャフト側へと向かうにつれて互いの間隔が漸次拡大するように延在する形状とされており、これらリップ部は共通の基部に接続されている。したがって、一方のリップ部が基部に対して傾斜すると、他方のリップ部も基部を介して傾斜することになるので、この傾斜方向と同方向に傾斜することになる。すなわち、排気室または隣室に接するリップ部がシャフトから離間するように傾斜すると、これに対応してシールガスが供給されるガス導入空間に接するリップ部がシャフトに近接するようになる。これとは逆に、排気室または隣室に接するリップ部がシャフトに近接するように傾斜すると、これに対応してシールガスが供給されるガス導入空間に接するリップ部がシャフトから離間するようになる。このように、一方のリップ部がシャフトから離間してシャフトとの間隙が大きくなっても、このリップ部の周方向位置に対応する他方のリップ部がシャフトに近接してシャフトとの間隙が小さくなるので、シールガスの流出量が各周方向位置にて不均一を改善するように調整されることになる。したがって、シールの周方向に圧力分布が生じていても、各周方向位置にてシールガス流量が調整されるので、高いシール性能が発揮されることになる。
なお、本発明において、「隣室」とは、排気室の隣に位置する室を意味し、例えば、潤滑室や軸受室が挙げられる。したがって、本発明は、排気室と潤滑室とのシールや、排気室と軸受室とのシールに好適である。
なお、前記シールガスの流量としては、前記排気対象気体の流量の1/10〜1/20が好適である。
また、本発明のドライ真空ポンプのシール方法は、電磁モータによって回転駆動されるシャフトと、該シャフトに取り付けられるとともに排気室内に設けられ、真空処理室内の排気対象気体を該排気室内に吸引しかつ排出するロータと、を備えたドライ真空ポンプのシール方法において、前記ドライ真空ポンプは、前記排気室と、該排気室の隣に位置する隣室との間には、該排気室を区画する排気室区画壁部と前記シャフトとの間をシールする排気室側シールと、該隣室を区画する隣室区画壁部と前記シャフトとの間をシールする隣室側シールとを備え、前記排気室側シールと前記隣室側シールとの間には、シールガスが供給されるガス導入空間が設けられ、前記排気室側シール及び前記隣室側シールは、それぞれ、前記排気室区画壁部側または前記隣室区画壁部側に固定された円環状の基部と、該基部から前記シャフト側へと延在する一対の円環状のリップ部とを備え、一対の前記リップ部は、前記基部から前記シャフト側へと向かうにつれて互いの間隔が漸次拡大するように延在するとともに、それぞれの先端部が、前記シャフトに対して弾性的に接触可能とされ、一方の前記リップ部の変形により、前記基部を介して、他方の前記リップ部が変形することを特徴とする。
また、排気室側シール及び隣室側シールは、一対のリップ部を備え、それぞれの先端部が、シャフトに対して弾性的に接触可能としたので、2つのリップ部によってシールを行うことができるので、より確実なシールが行われることになる。
また、各リップ部は、シャフト側へと向かうにつれて互いの間隔が漸次拡大するように延在する形状とされており、これらリップ部は共通の基部に接続されているので、シールの周方向に圧力分布が生じていても、各周方向位置にてシールガス流量が不均一を改善するように調整されるので、高いシール性能を発揮することができる。
また、排気室側シール及び隣室側シールを、排気室と潤滑室との間に設けることとしたので、排気室に対して潤滑室を挟んで位置する電磁モータ室までは排気対象ガスが漏出することが防止される。したがって、電磁モータの永久磁石が水素ガスによって浸食されることを回避することができる。
プラズマCVD装置(真空処理装置)101は、製膜室103を備えており、この製膜室103内を真空排気する系統にドライ真空ポンプ1が設けられている。製膜室103は、1m2を超える大面積ガラス基板(不図示)に対して製膜を行なう。製膜室103には、主な原料ガスであるシランガス(SiH4)および水素ガス(H2)、ならびにクリーニングガス(NF3)をそれぞれ製膜室103内に供給するガス供給流路104,105,106が接続されている。また、製膜室103には、ガスを排気する排気系統61とが設けられている。
排気系統61は、高真空用のターボ分子ポンプ(TMP)109が設けられた排気流路110と、流量調整弁(CV)111が設けられた流路112とを備えている。排気流路110と流路112との合流点Sよりも下流の流路113には、ドライ真空ポンプ(DP)1が介装されている。さらに、ドライ真空ポンプ1の下流側には、排気ライン62が設けられている。この排気ライン62は、シランガスおよび水素ガス等の可燃ガスを排気する可燃系排気ライン117と、三フッ化窒素ガス(NF3)等の支燃系ガスを排気する支燃系排気ライン118とに分岐される。可燃系排気ライン117には可燃系排気弁119aが、支燃系排気ライン118には支燃系排気弁119bが設けられている。
製膜を実施する為に、原料ガスのシランガスおよび水素ガスを供給する場合は、可燃系排気弁119aを開、支燃系排気弁119bを閉として、可燃系排気ライン117を用いる。
製膜室103内をセルフクリーニングする為にクリーニングガスの三フッ化窒素ガスを供給する場合は、可燃系排気弁119aを閉、支燃系排気弁119bを開として、支燃系排気ライン118を用いる。
また、プラズマCVD装置101には、製膜室103の圧力を計測する真空計(V)120が設けられている。
原料ガスは、水素ガスを用いて希釈され、例えば、結晶質シリコン膜形成にはシランガスに対して20倍以上に水素ガス希釈することによって膜質の向上を実現できる。
基板(不図示)を製膜室103内にセットし、製膜レシピ指示を受け、製膜レシピにしたがって製膜処理を行なう。
例えば、結晶質シリコン膜の形成において、製膜速度2.0〜2.5nm/sを得るにあたり、製膜圧力は1000〜3000Paであり、基板1m2あたりの製膜用原料ガスであるシランガスの流量は0.5〜2.0SLM/m2、水素ガスの流量は10SLM/m2以上の大流量となる。
次いで、プラズマ放電を開始され、これにより製膜が施される。
所定の製膜が行われた後、プラズマ放電を停止し、また、製膜原料ガスを停止する。MV121とTV122を開とするとともにRV123を閉とし、ターボ分子ポンプ109およびドライ真空ポンプ1による高真空排気を行ない、製膜処理した基板を搬出し、製膜処理を終了する。
なお、ドライ真空ポンプ1は、ルーツ型ポンプ等のメカニカルブースタポンプと排気系統を直列に組み合わせて真空排気能力を向上させて使用しても良い。
本実施形態に係るドライ真空ポンプ1は、ルーツ型ドライ真空ポンプで構成されるが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、スクロール型、回転翼型等の他の形態のドライ真空ポンプ、ルーツ型ポンプ等のメカニカルブースタポンプにも適用可能である。
電磁モータ3及び潤滑室12は、図2及び図3に示すように、排気室13の排気空間26で気体が圧縮される側(大気圧に近い側)に設けられている。このように電磁モータ3を配置することで、電磁モータ室10の気密管理を容易にすることができる。また、ドライ真空ポンプ1の起動停止時など圧力変動が発生する際には、潤滑室12と排気室13との圧力差が少ないため、第1シール機構11におけるシール特性をより確実にする効果がある。
なお、電磁モータ3は1基に限られず、複数基が設けられていてもよい。
製膜室103の他に基板予熱室なども多量の水素ガス(H2)の投入を行なうことから、同様に利用可能である。
第1シール機構11と第2シール機構16の構成は同一であるため、第1シール機構11について説明する。
図5は、第1シール機構11の構成を示す断面図であり、図3の第1シール機構11の近傍を拡大した図である。
シリンダ7とサイドカバー9の間には、ガス導入孔9aと連通する隙間Gが形成され、第1シール27及び第2シール28によってガス導入空間29が形成されている。本実施形態に係るドライ真空ポンプ1において、サイドカバー9とシリンダ7の、ガス導入空間29に臨む部分が隔壁を構成する。
また、上記構成に加え、第1シール機構11は、潤滑室12の室内において第1シャフト5に取り付けられたスリンガ30を有する。
なお、シール部材Aは、複数の部材から構成されてもよい。
また、シール部材Aは、各リップ部cの、第1シャフト5と当接する箇所に配置された摺動部材dと、固定部a及び基部bに挿入された支持部材eを有する。
同図に示すように、第1シール27は、サイドカバー9と第1シャフト5との間に配置され、主として、潤滑室12から排気室13への潤滑オイルF(又はその蒸気)の漏出を規制する機能を有する。第2シール28は、シリンダ7と第1シャフト5との間に配置され、主として、排気室13から潤滑室12への排気対象気体(特に水素ガス)の侵入を規制する機能を有する。
第1シール機構11及び第2シール機構16において、シールガスを供給するとともに、シャフトの軸方向に沿いながら、互いに反対方向に張り出す一対のリップ部cを有することで、排気対象気体が潤滑室12に侵入して電磁モータ3が排気対象気体に曝されることを更に効果的に防止する。
シールガスの導入により、ガス導入空間29が、後述する排気空間26の最大圧力よりも高い圧力(十分なシールガスの流量が得られる圧力)になるような流量に調節される。
図8に、排気対象気体として水素ガスを100SLM排気させて、シールガスとして窒素ガスを用いた場合のシールガス流量による水素ガスの潤滑室12への漏れ濃度を計測した結果を示す。シールガス(窒素ガス)流量がない場合(0SLM)では、潤滑室12の水素濃度は60ppmであったが、シールガス(窒素ガス)を5SLM以上導入することで、潤滑室12の水素濃度は計測限界以下となり、水素ガスが潤滑室12に侵入すること防止されていることが確認された。またシールガス流量を増加することで、潤滑室12の圧力が上昇しすぎると、潤滑オイルFがガス排出通路53を経由してオイルトラップ55で捕獲できなかった微量のオイルミスト分が排気ライン62へ排出されることが危惧されるので、必要以上に潤滑室12の圧力を上昇させないことが好ましい。
シールガスの流量は、1m2を超える大面積基板の結晶質シリコン膜の形成においては、例えば窒素ガスが5SLM〜10SLMであり、排気対象気体流量の略1/10〜略1/20である。
逆止弁54は、潤滑室12から排気ライン62へ向かうガスの流れを許容し、その逆の流れは禁止する。これにより、排気室13の排気孔7bから排出された製膜室(真空処理室)70の排気対象気体がガス排出通路53を介して潤滑室12へ侵入することが防止される。
このとき、第1リップ31と第2リップ32、および第3リップ33と第4リップ34は各対応するリップの変形に影響されて、シャフトとの隙間を調整するよう、密着して一体構造になっていることが好ましい。また、各リップを組み合わせる際に、相互間の位置決め可能な嵌め込み構造を設けてがあれば、第1シール27と第2シール28を精度よく構成できるので、さらに好ましい。
このように、各リップをそれぞれ別体として製作することで、製作が容易になり、コストダウンが可能となる。
このとき、各リップはサイズが異なることから、第1リップ31と第2リップ32、および第3リップ33と第4リップ34をそれぞれ別体として製作してもよい。
ドライ真空ポンプ1の運用に応じて、圧力差に対する各リップ構造を設けることで、より一層にシール特性が向上する。したがって、排気対象気体に含まれる多量の水素ガスによる電磁モータ3の永久磁石材の水素浸食がより一層に阻止され、電磁モータ3の信頼性がより一層に高められる。
3 電磁モータ
4 回転伝達機構
5 シャフト
6,15 ロータ
11,16 シール機構
12 潤滑室
13 排気室
29 ガス導入空間
31 第1リップ
32 第2リップ
33 第3リップ
34 第4リップ
61 排気系統
62 排気ライン
101 真空処理装置(プラズマCVD装置)
103 真空処理室(製膜室)
104,105,106 ガス供給流路
110 排気流路
111 流量調整弁
112,113 流路
117 可燃系排気ライン
118 支燃系排気ライン
120 真空計
F 潤滑オイル
Claims (7)
- 電磁モータによって回転駆動されるシャフトと、
該シャフトに取り付けられるとともに排気室内に設けられ、真空処理室内の排気対象気体を該排気室内に吸引しかつ排出するロータと、
を備えたドライ真空ポンプにおいて、
前記排気室と、該排気室の隣に位置する隣室との間には、該排気室を区画する排気室区画壁部と前記シャフトとの間をシールする排気室側シールと、該隣室を区画する隣室区画壁部と前記シャフトとの間をシールする隣室側シールとを備え、
前記排気室側シールと前記隣室側シールとの間には、シールガスが供給されるガス導入空間が設けられ、
前記排気室側シール及び前記隣室側シールは、それぞれ、前記排気室区画壁部側または前記隣室区画壁部側に固定された円環状の基部と、該基部から前記シャフト側へと延在する一対の円環状のリップ部とを備え、
一対の前記リップ部は、前記基部から前記シャフト側へと向かうにつれて互いの間隔が漸次拡大するように延在するとともに、それぞれの先端部が、前記シャフトに対して弾性的に接触可能とされるとともに、一方の前記リップ部の変形が前記基部を介して他方の前記リップ部の変形に影響することを特徴とするドライ真空ポンプ。 - 前記電磁モータを収容する電磁モータ室は、前記排気室に対して前記隣室を挟んだ位置に設けられ、
前記隣室は、潤滑オイルが貯留される潤滑室とされ、
前記排気対象気体には、水素ガスが含まれていることを特徴とする請求項1に記載のドライ真空ポンプ。 - 前記基部と一対の前記リップ部とは、一体にて構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のドライ真空ポンプ。
- 一対の前記リップ部をそれぞれ別部材とし、これらリップ部の基端部を互いに固定して組み付けることによって前記基部を構成することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のドライ真空ポンプ。
- 各前記リップは、前記シャフトと接触する部位がポリテトラフルオロエチレンとされていることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のドライ真空ポンプ。
- 前記シールガスの流量は、前記排気対象気体の流量の1/10〜1/20であることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載のドライ真空ポンプ。
- 電磁モータによって回転駆動されるシャフトと、
該シャフトに取り付けられるとともに排気室内に設けられ、真空処理室内の排気対象気体を該排気室内に吸引しかつ排出するロータと、
を備えたドライ真空ポンプのシール方法において、
前記ドライ真空ポンプは、前記排気室と、該排気室の隣に位置する隣室との間には、該排気室を区画する排気室区画壁部と前記シャフトとの間をシールする排気室側シールと、該隣室を区画する隣室区画壁部と前記シャフトとの間をシールする隣室側シールとを備え、
前記排気室側シールと前記隣室側シールとの間には、シールガスが供給されるガス導入空間が設けられ、
前記排気室側シール及び前記隣室側シールは、それぞれ、前記排気室区画壁部側または前記隣室区画壁部側に固定された円環状の基部と、該基部から前記シャフト側へと延在する一対の円環状のリップ部とを備え、
一対の前記リップ部は、前記基部から前記シャフト側へと向かうにつれて互いの間隔が漸次拡大するように延在するとともに、それぞれの先端部が、前記シャフトに対して弾性的に接触可能とされ、
一方の前記リップ部の変形により、前記基部を介して、他方の前記リップ部が変形することを特徴とするドライ真空ポンプのシール方法。
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