以下、本発明の種々の実施態様を説明するに先立ち、その原理を概説する。なお、本明細書の無線通信システムとは、分散アンテナシステム(DAS)であり、1または複数の端末装置と1または複数のアンテナを介して通信を行う無線通信装置を備えている。この無線通信装置とは、ベースバンド信号処理を行う信号処理装置と、アンテナに繋がる1または複数のフロントエンド部からなる構成、更には1または複数のアンテナを含めた構成を意味するものとする。また、本明細書において使用されるブロードキャスト信号、下りのユニキャスト信号、上りのユニキャスト信号をそれぞれ第一の信号、第二の信号、第三の信号と呼ぶ場合があり、それらに対応する信号処理部、信号送受信部を、第一信号処理部、第一信号送信部、及び第二信号処理部、第二信号送受信部と呼ぶ場合がある。
図1は、本発明の分散アンテナシステムの原理を説明するための概観図である。図1において、基地局相当装置としてベースバンド信号処理を実施する信号処理装置1に、ケーブルネットワークとしての光ファイバネットワーク2を介して複数のフロントエンド部3が接続されている。各フロントエンド部3はベースバンド信号と無線周波数帯信号(Radio Frequency信号、以下、RF信号と略記する。)との変換を行う機能を有し、各フロントエンド部3と無線通信可能なエリアとして通信エリア4を定義する。各通信エリア4に属している端末8は、無線および光ファイバネットワーク2を介して信号処理装置1との通信が可能である。9は無線リンクを示している。なお、図1では、フロントエンド部3−1〜3−4等として、4セットを例示したがこれに限定されるものではない。上述の通り、フロントエンド部にアンテナが含まれるとして説明を行うが、アンテナを除外してフロントエンド部と呼んでも良い。
信号処理装置1からは、複数端末での受信が想定されている物理チャネルや物理信号で構成される第一の信号と称される、ブロードキャスト信号(BC)5と、単一端末での受信が想定されている物理チャネルや物理信号で構成される、第二の信号と称される、ユニキャスト信号(UC1)6およびユニキャスト信号(UC2)7が光ファイバネットワーク2を介して各フロントエンド部3へ送信される。ブロードキャスト信号5は、無線通信カバレッジ確保のため全フロントエンド部3−1〜3−4に対し送信され、ユニキャスト信号6および7は、各々別のフロントエンド部3−1、3−2に対し送信される。ユニキャスト信号6および7の送信範囲を一部のフロントエンド部3に絞り込み、光ファイバネットワーク2で流れる信号伝送量を削減することが、本発明のポイントであり、光ファイバ伝送量に制約がある中で、広い無線カバレッジを確保する効果を得ることができる。ユニキャスト信号6および7が、時間毎に異なるフロントエンド部3に対して送信されるように制御することで、端末8は通信エリア4のいずれかに属していれば、信号処理装置1との通信が可能となる。図中で通信エリア4−1、4−2は、ある時間においてユニキャスト信号6および7のいずれかが通信可能なエリアを示す。他の通信エリア4−3、4−4は、当該時間において、ブロードキャスト信号5のみの通信可能なエリアを示している。
なお、本図は下り通信の例を示しているが、上り通信の場合はブロードキャスト信号5が無いため、ユニキャスト信号6および7がいずれかのフロントエンド部3から信号処理装置1に対し送信される。一部のフロントエンド部3からの上り信号だけを光ファイバネットワーク2で伝送することで、上記の下り通信の例と同様、光ファイバ伝送量に制約がある中で、広い無線カバレッジを確保する効果を得ることができる。
図2Aから図2Cは、下りのユニキャスト信号を取り扱うフロントエンド部3を切り替え制御する方法を示した図である。図2Aは、全てのフロントエンド部3でブロードキャスト信号の通信を可能とするための制御である。信号処理装置1からブロードキャストアクティベーションコマンド(BC−A)10を全フロントエンド部3に通知することで、各フロントエンド部3でブロードキャスト信号を送信できるようにし、無線カバレッジを確保する。
この手順が完了した後、図2Bに示すように、信号処理装置1から全フロントエンド部3に対してブロードキャスト信号5を送信、さらにユニキャスト信号を送信させたいフロントエンド部3に対してユニキャストアクティベーションコマンド(UC−A)11と共にユニキャスト信号6および7を各々別のフロントエンド部3に対して送信する。
ユニキャスト信号6および7の送信先を変える場合は、図2Cに示すようにユニキャストアクティベーションコマンド11とユニキャスト信号6および7の送信先を切り替えることで実現できる。この方法は、フロントエンド部3がユニキャストアクティベーションコマンド11をその都度受信しない限り、暗黙的にユニキャスト信号を無効にすることを前提としている。ここでは、この前提を採用するが、明示的にユニキャスト信号を無効にするためのユニキャストデアクティベーションコマンドを通信するようにしても良いし、各フロントエンド部3に対し周期的にユニキャスト信号を有効にするようなコンフィグを実施する方法でも良い。
図3Aから図3Cは、ブロードキャスト信号を取り扱うフロントエンド部3を切り替え制御する方法を示している。図3Aは、一部のフロントエンド部3でブロードキャスト信号の通信を可能とするための制御である。システム全体のフロントエンド部3を使わなくても、無線カバレッジが確保できる無線通信システム、すなわち、各フロントエンド部3の送信電力が大きいこと、もしくは無線周波数が低くRF信号がより遠くまで到達し得る無線通信システムに適した運用である。ただし、ある一部のフロントエンド部3だけで運用している時に、無線カバレッジホールが発生する場合がある。この時、ブロードキャスト信号を取り扱うフロントエンド部3を変更することで解決する場合がある。つまり、新たな光ファイバやフロントエンド部の追加工事なしで無線カバレッジに変更を加えることができる。
図3Bはブロードバンド信号を取り扱うフロントエンド部3を変更する手順を示す。第四のフロントエンド部3−4がブロードキャスト信号5の取り扱いを停止し、第三のフロントエンド部3−3が新たにブロードキャスト信号5の取り扱いを開始する例である。新たにブロードキャスト信号5を取り扱う第三のフロントエンド部3−3に対しては、ブロードキャストアクティベーションコマンド(BC−A)10を送信し、この度ブロードキャスト信号5の取り扱いを停止する第四のフロントエンド部3−4に対しては、ブロードバンドデアクティベーションコマンド(BC−D)12を送信する。
その結果、図3Cに示すように、第一および第三のフロントエンド部3−1および3−3でブロードバンド信号5を取り扱えるようになる。ユニキャスト信号6および7も、これらのフロントエンド部3−1および3−3に対してユニキャストアクティベーションコマンド(UC−A)11と共に信号処理装置1から送信される。
以上、図2Aから図2C、および図3Aから図3Cまでで、下り通信においてユニキャスト信号を取り扱うフロントエンド部3の切り替え制御、ならびにブロードキャスト信号を取り扱うフロントエンド部3の切り替え制御について説明した。上り通信の場合は、ブロードキャスト信号が無いため、第三の信号と称される、ユニキャスト信号に対する制御のみを実施する。下り通信においてユニキャストアクティベーションコマンド(UC−A)11を受信したフロントエンド部3における、上りベースバンド信号を信号処理装置1へ転送する。ユニキャストアクティベーションコマンド(UC−A)11を受信していないフロントエンド部3においては、上り無線信号に対する受信動作を実施してもしなくても良いが、例えば端末からのランダムアクセス信号の捕捉失敗といった事態を避け、端末からの無駄なランダムアクセス信号の再送を避けるためには、全フロントエンド部3は必ず受信動作を実施し、光ファイバで転送する信号をバッファに蓄えておき、上記アクティベーションコマンド(UC−A)受信時に、該バッファの内容を、光ファイバネットワーク2を介して信号処理装置1に対し転送することが望ましい。
図4は、第1の実施例のシステム装置構成の全体を示す図である。同図において、ベースバンド信号処理を担当する信号処理装置1は、各フロントエンド部3に対するブロードキャスト信号およびユニキャスト信号に対するアクティベーションおよびデアクティベーションを制御する、信号処理装置1の遮断制御部と称される、ベースバンド(BB)制御部21と、ブロードバンド信号に関するベースバンド信号処理を実施する、第一信号処理部と称される、ブロードキャスト(BC)信号処理部22と、ユニキャスト信号に関するベースバンド信号処理を実施する、第二信号処理部と称される、ユニキャスト(UC)信号処理部23と、ブロードキャスト信号と下りユニキャスト信号との多重化、上りユニキャスト信号の多重化解除、ならびに多重化された各ブロードキャスト/ユニキャスト信号に対する光チャネル(時間/周波数/空間)の割当て、および割当て解除を制御する、信号処理装置1の多重化制御部と称される、ネットワーク側多重化制御部(MUX/DEMUX)24と、バックホールネットワーク44を介してOAM(Operation and Maintenance)装置41、ゲートウェイ(GW)装置42、モビリティ制御装置(Mobility Management Entity:MMU)43と通信を行うネットワークインターフェース(NIF)25とで構成される。
本実施例においては,光ファイバネットワーク2としてTDM−PON(Time Division Multiplexing−Passive Optical Network)を前提として説明するが、WDM(Wavelength Division Multiplexing)−PONや、光ファイバをフロントエンド部3の数だけ複数束ねた空間多重、すなわち信号処理装置1を中心としたシングルスタートポロジ構成、さらにこれらの組み合わせでも実現可能であることは、同業者であれば容易に想到可能である。TDM−PONを前提とすると、このネットワーク側多重化制御部24はOLT(Optical Line Network)としての機能を有する。
フロントエンド部3は図4に示すように、システム内に複数存在し、全てのフロントエンド部3が同一構成であることを前提とする。同一構成とすることで、フロントエンド部3生産時のスケールメリットによりコストダウンを図ることができる。図4の中では、第二のフロントエンド部3−2以降は、全て第一のフロントエンド部3−1と同一構成であるため略記している。
フロントエンド部3は、フロントエンド部3内のベースバンド処理部分を制御するベースバンドフロントエンド(BB−FE)制御部31と、信号処理装置1から送信されたブロードキャスト信号そのもの、もしくはブロードキャスト信号を生成するためのパラメータからブロードキャスト信号を生成して出力する、第一信号送信部と称される、ブロードキャスト(BC)信号送信部32と、信号処理装置1から送信されたユニキャスト信号の送信と、上り受信ベースバンドユニキャスト信号を信号処理装置1へ送信する第二信号送受信部と称される、ユニキャスト(UC)信号送受信部33と、当該フロントエンド部3に割り当てられた下り光伝送チャネルからブロードキャスト信号と下りユニキャスト信号の抽出および多重化解除、当該フロントエンド部3に割り当てられた上り光伝送チャネルへのユニキャスト信号送信を実施するフロントエンド側多重化制御部(MUX/DEMUX)34と、ベースバンド信号とRF信号との間の相互変換を実施する無線信号送受信部35と、アンテナ36と、下りユニキャスト信号とブロードキャスト信号を多重化する下り多重化部(BC/UC MUX)37とで構成される。該フロントエンド側多重化制御部34は、TDM−PONにおけるONU(Optical Network Unit)としての役割を有する。
OAM装置41は、信号処理装置1に対するコンフィグパラメータの送信、本実施例によるブロードキャスト信号、マルチキャスト信号に対するアクティベーションおよびデアクティベーション制御信号の送信、および各端末8で測定した無線通信品質に関するレポートを、信号処理装置1を介して吸い上げる機能を少なくとも有する。この無線通信品質に関するレポートとして、端末の座標位置と下り受信電力が一対一で対応した情報が少なくとも含まれる。このレポートを基にOAM装置41自身が自動的に、またはOAM装置41を操作する操作者によって、アクティベーションおよびデアクティベーション制御を、信号処理装置1から離れた場所で実施できる。OAM装置41は、OAM装置41自身が該制御を実施するためのプロセッサ、人間の手によって該制御を実施するためのユーザインターフェース、ならびに端末8からの該レポートを一時記録しておくためのメモリ等から構成される。
GW装置42は、コアネットワークと、本実施例が対象とするアクセスネットワークとの境界に位置するパケット終端装置である。本実施例においては、ブロードキャスト信号および下りユニキャスト信号の供給元、ならびに上りユニキャスト信号の出力先として位置付けている。
MME装置43は、各端末のモビリティ制御を実施する装置で、ハンドオーバやページングといった機能を有する。本実施例では、ブロードバンド制御信号としてのページングメッセージの供給元として位置付けている。
図5は、本実施例のシステムの信号処理装置1のベースバンド(BB)制御部21の一構成を示す図である。ベースバンド制御部21の役割は、ネットワーク側多重化制御部24に対して、各フロントエンド部3に関するブロードキャストおよびユニキャスト信号に関するアクティベーションおよびデアクティベーションを個別に指示するインジケータとしての制御情報BCCTRL,UCCTRLを出力することである。同図において、51はスイッチ(BCSW)、52はスイッチ(UCSW)、53はフロントエンド部(FE)位置情報テーブル、54はアクティベート(BC/UC Activate)制御部である。アクティベート制御部54には、後で説明するUC信号処理部23との間に、インタフェースUE_INFO、ACT_UE_SETが設けられている。
インジケータとしての制御情報BCCTRL,UCCTRLを生成する方法は2つある。1つはOAM装置41から入力する方法、もう一つは信号処理装置1内のアクティベート(BC/UC Activate)制御部54で生成する方法である。OAM装置41からは、ユーザインターフェースを介して該制御情報を設定する方法と、該アクティベート制御部54相当の機能をOAM装置41側に搭載する方法が考えられるが、本実施例では前者の方法を前提として説明する。
OAM装置41からは、OAM装置41からの設定情報と、該アクティベート制御部54の生成結果との、どちらをネットワーク側多重化制御部24に対して出力するかのスイッチ制御するための設定を行う。このスイッチ制御は、制御信号SWCTRLを用いて、ブロードキャスト信号に対するスイッチ(BCSW)51と、ユニキャスト信号に対するスイッチ(UCSW)52に対して実施される。
アクティベート制御部54は、各フロントエンド部3に関して、ブロードキャスト信号のアクティベート/デアクティベート、およびユニキャスト信号のアクティベート/デアクティベートを制御する。制御の方法は様々考えられるが、図6および図7を用いて1つの実現方法を説明する。
図6は、信号処理装置1が、ブロードキャスト信号のアクティベート/デアクティベートをフロントエンド部毎に決定するための1つの方法を示す。最初に、光ファイバの伝送能力を考慮し、ブロードキャスト信号を取り扱うフロントエンド部3の数の上限値Nbcを設定する(S1001)。この設定はOAM装置41からユーザインターフェースを介して人手により実施することとする。
ブロードキャスト信号のアクティベート/デアクティベート制御の更新周期が来るまで待機する(S1002)。本実施例では更新周期をOAM装置41からユーザインターフェースを介して人手により設定し、アクティベート制御部54自身のセルフタイマにより該制御の更新トリガを掛けることを前提としている。しかしながら、無線カバレッジ自体が頻繁に変更する性質のものではなく、屋外であれば新たな建物が建設されたとか、屋内であればレイアウト変更をしたなどの契機で発生するものと考えられる。したがって、OAM装置41からユーザインターフェースを介して人手により更新トリガを掛ける方法でも良い。
S1002において更新トリガが掛かると、フロントエンド部3毎に評価関数を計算し、評価関数の大きい順もしくは小さい順にNbc個のフロントエンド部3を選択する。S1003に評価関数の一例を示している。すなわち、S1003では、フロントエンド部から各端末までの距離を計算して累算し、その合計値を評価関数としており、S1004で同評価関数が小さい方からNbc個のフロントエンド部を選択する処理としている。S1003を実施するためには、各フロントエンド部3の座標位置と、各端末の座標位置とをアクティベート制御部54が知っておく必要がある。
このため、図5のベースバンド制御部21の実施例では、フロントエンド部(FE)位置情報テーブル53を有し、該テーブル値を入力するためのインタフェースと、端末8の位置情報を入力するためのインタフェースUE_INFOをアクティベート制御部54に持たせている。フロントエンド部位置情報テーブル53の内容は、OAM装置41からテーブル情報(FETBL)として設定される。本実施例では、端末8の位置情報は、端末がGPS(Global Positioning System)、またはパイロット信号を使用したTDOA(Time Difference Of Arrival)ベースの測位が可能であり、測位結果をネットワーク側にフィードバックすることを前提としている。
図7は、アクティベート制御部54において、ユニキャスト信号のアクティベート/デアクティベートをフロントエンド部毎に決定するための1つの方法を示す。同図は、マルチスレッド動作を想定している。左側のスレッドは、全フロントエンド部3に適用されるアクティベーション周期と、周期内のオフセット値を決定するためのスレッドで、OAM装置41からのトリガで実施されることを想定している。S1101とS1102は実質、OAM装置41側で実施される。Nuc個のフロントエンド部3をグループ化したフロントエンドグループを1または複数形成する。各フロントエンド部3は、少なくとも1つのフロントエンドグループに所属するものとする。
S1103では、フロントエンドグループ毎に所属端末数をカウントする。具体的には、端末位置から最寄りのフロントエンド部が所属するフロントエンドグループに端末数をカウントしていく方法が考えられる。当該フロントエンド部が複数のフロントエンドグループに所属している場合は、両方のフロントエンドグループに端末数をカウントすれば良い。S1103に関する端末ループ処理が終了すると、各フロントエンドグループについて所属端末数が求められている状態となる。
S1104では、所属端末数に応じて各フロントエンドグループに、アクティベーションされる時間率を配分する。時間率は、任意の粒度で量子化しても良い。例えば、各フロントエンドグループの時間率が取り得る値を0%、25%、50%、75%、100%の5通りとすることも可能である。一点だけ注意すべき点として、フロントエンドグループの時間率合計が100%を超えてはならない。これは、全ての時刻で発生するとは限らないが、ある時刻において想定していた光ファイバ伝送量を超えたユニキャスト信号が流れることを意味するためである。例えば、時間率100%のフロントエンドグループと、時間率25%のフロントエンドグループが存在し、それぞれがNuc個のフロントエンドをグループ化している場合、全時間の75%は時間率100%のフロントエンドグループのみアクティベートされている状態(すなわちアクティブなフロントエンド部の数はNuc)となるが、残り時間(25%)は、それに加えて時間率25%のフロントエンドグループに対してもアクティベートされた状態となり、結果としてNucの2倍のフロントエンド部に対してユニキャスト信号が流れることになるため、当初の想定(同時アクティベート数Nuc)を超えた光ファイバ伝送量が発生してしまい、結果としてユニキャスト信号同士の光ファイバ上での干渉といった問題が生じる。
S1105では、各フロントエンドグループに対して実際にアクティベートする時間周期と時間オフセット値を決定する。例えば、上記の通り時間率を25%の粒度で決定する場合、各フロントエンド部のアクティベート周期は4TTI(Transmission Time Interval)、それぞれのフロントエンド部に対し4n+k(nは整数、kはオフセット値)番目のTTIにおいてアクティベートするように決定する。同一フロントエンドグループの全フロントエンド部に対しては、kは同一値をセットする。
この結果を、図7の右側のスレッドがTTI毎に監視し、TTI毎にユニキャスト信号のアクティベート/デアクティベートをフロントエンド部3毎に決定し、ネットワーク側多重化制御部24に対し出力する。S1106は、TTI周期毎にアクティベート/デアクティベート制御情報を出力するためのセルフタイマである。S1107ではS1105の結果を参照して、各フロントエンド部が現在のTTIにおいてアクティベート/デアクティベートのいずれにすべきかを判定し、判定結果をネットワーク側多重化制御部24に対し出力する。右側のスレッドは開始後、無限ループで動作させる。
なお、図7のフローに関連して、各TTIでアクティベートされるフロントエンドグループに属する端末のグループを同様に定義できる。この端末グループをユニキャスト(UC)信号処理部23に、インタフェースACT_UC_SET経由で通知することで、パケットスケジューリングのサーチスペースを削減することができる。
以上の本実施例の動作結果を図20のテーブル160にまとめる。テーブル160のフロントエンドID161は、各フロントエンド部3に対して固有に割り振られる識別子である。フロントエンドグループ162は、図7のS1102で実施されるフロントエンド部3のグループ化によってグループ毎に割り振られる識別子(ID)である。この実施例では、4個のフロントエンド部3をグループ化してフロントエンドグループを形成している。Activateタイミング163は、図7のS1105で決定するフロントエンドグループ毎のActivateタイミングが記載されている。この実施例では、フロントエンドグループ0、1、0、2の順番で4TTI周期にてActivateされる例で、フロントエンドグループ0のActive時間率は50%、フロントエンドグループ1と2のActive時間率は25%となっている。端末ID164は、各フロントエンドグループに属する端末のIDを表す。各TTIにおいてActivateされるフロントエンドグループに属する端末のグループをユニキャスト(UC)信号処理部23に通知する。通知のインタフェースは、図5に示すACT_UE_SETである。
ユニキャスト信号処理部23は、各TTIにおいて端末に無線通信リソースを割り当てるパケットスケジューリングを実施する際、ACT_UE_SETで通知されていない端末を無線通信リソース割当て候補から外す、すなわちサーチスペースから外すことで、ユニキャスト信号処理部23の処理負荷を削減することができる。例えば、4n+2番目のTTIになったとき、当該TTIでActivateされるのはフロントエンドグループ0なので、そこに所属している端末ID0から11の端末だけが、当該TTIにおいて無線通信リソースを割り当てられる候補となる。
図8は、本実施例によるブロードキャスト(BC)信号処理部22の一構成例を示す図である。ブロードキャスト信号処理部22は、ネットワークインターフェース25およびバックホールネットワーク44を介してOAM装置41、GW装置42、およびMME装置43と接続される。機能としては、ユニキャスト信号処理部23に対するブロードキャスト信号に関するリソース割り当て情報の通知と、ネットワーク側多重化制御部24に対する、例えば同期信号やパイロット信号などの物理層信号、上位層のペイロードを載せる物理チャネルの送信シンボル系列、ならびに該ブロードキャスト信号に関するリソース割り当て情報をパケット化して出力する機能を有する。
ブロードキャスト物理層信号生成シードテーブル(BC PHY Sig. Seed Table)61は、ブロードキャスト信号をアクティベートした各フロントエンド部3で送信する物理層信号である同期信号およびパイロット信号を生成するためのパラメータを格納するテーブルである。具体的には、時間スロット番号であるTTIの通し番号やセルIDが該当する。時間スロット番号は、スロットカウント部(Slot Counter)64からスロット番号更新時に新たなスロット番号が書き込まれる。セルIDは、OAM装置41からBC_PHYSEEDとして書き込まれる。同期信号およびパイロット信号共に、フロントエンド部毎に同一信号を送信しても別信号を送信しても良い。単純な送信ダイバーシチによる通信品質の安定性を狙うのであれば同一信号、同時通信端末数増加による周波数利用効率を狙うのであれば別信号を送信することになる。本実施例では、フロントエンド部毎に別信号を送信するという前提に立つ。この前提に従うと、ブロードキャスト信号がアクティベートされたフロントエンド部毎に別々の物理層信号生成パラメータを伝送することになる。
共通無線コンフィグテーブル(Common Radio Config. Table)62は、システム内共通の無線通信に関するパラメータで、システム内の全端末が参照すべきものである。共通無線コンフィグテーブル62の内容はOAM装置41からCOM_CFGとして設定される。このパラメータの一部または全部を基にしてMAC PDU(Medium Access Control Packet Data Unit)を構成するために、ブロードキャストL2処理部(BC L2 Proc.)65により参照される。
ブロードキャストデータバッファ(BC Data Buffer)63は、User Planeデータ(BC_DATA)はGW装置42から、Control Planeデータ(PAGING)はMME装置43から入力される。入力されたデータは一旦バッファに格納され、ブロードキャストL2処理部65から、該バッファ内容の一部または全部を基にしてMAC PDUを構成するために参照される。
スロットカウント部(Slot Counter)64は、スロット時間経過毎に新たなスロット番号を発行し、ブロードキャスト物理層信号生成シードテーブル61およびユニキャスト信号処理部23に通知し、ブロードキャストL2処理部65に対しトリガを掛ける機能を有する。スロットカウント部64は自走クロックおよびクロックカウンタで構成され、例えば、スロット長が0.5msで、自走クロックが100MHzで動作する場合、クロックカウンタが50000に達した時に新たなスロット番号の発行と、スロット番号変更通知の発行を行う。
ブロードキャストL2処理部65は、共通無線コンフィグテーブル62やブロードキャストデータバッファ63から、それぞれどの程度の量のデータを取り出し、どの物理リソース(時間、周波数、およびフロントエンド部)に割り当てて伝送するかを制御する機能を少なくとも有する。これは、いわゆるパケットスケジューリングおよびリソース割当ての機能に相当する。ブロードキャスト信号は、一般的にユニキャスト信号に対して優先度は高いため、ブロードキャスト信号に対する割当て結果をユニキャスト信号処理部23に通知し、ユニキャスト信号処理部23は、ブロードキャスト信号未割当である残りの通信リソースを割り当てる。また、該割当て結果は、ネットワーク側多重化制御部24を介してフロントエンド部3に対してブロードキャスト信号と共に転送される。この転送は、フロントエンド部3側でブロードキャスト信号を割当て結果に応じて時間周波数にマッピングするのが目的である。リソース割当てされたデータはMAC PDUとして、ブロードキャストL1処理部(BC L1 Proc.)66に出力される。
ブロードキャストL1処理部66は、ブロードキャストL2処理部65から入力されたMAC PDUに関するIQ変調シンボル系列を生成する機能を有する。MAC PDUからIQ変調シンボルを生成する手順に関しては、非特許文献4,および同文献が参照するSpecificationに開示されている。ここで出力されるIQ変調シンボルは周波数領域のものである。この方法は、ブロードキャスト信号だけをサブキャリアにマッピングして、IFFT(Inverse Fast Fourier Transform)処理した時間領域信号を光ファイバネットワーク2に通す場合と比較して、光ファイバ伝送量を削減することができる。ここでの説明は、OFDMA(Orthogonal Frequency Division Multiple Access)システムを前提とした。
ブロードキャスト信号多重化部(BC MUX)67は、ブロードキャスト物理層信号生成シードテーブル61の出力である物理信号(同期信号およびパイロット信号)生成のためのパラメータ群と、ブロードキャストL1処理部66が出力するIQ変調シンボル系列と、ブロードキャストL2処理部65が生成する該IQ変調シンボル系列に関するリソース割り当て情報とを結合し、ネットワーク側多重化制御部24に対して出力する機能を有する。
図9は、本実施例によるユニキャスト信号処理部23の一構成例である。
ユニキャスト信号処理部23は、ネットワークインターフェース25およびバックホールネットワーク44を介してOAM装置41、GW装置42、およびMME装置43と接続される。機能としては、ユニキャスト信号がアクティベートされた各フロントエンド部に対するユニキャスト信号としてのIQシンボル系列の送信、および同フロントエンド部で受信したIQシンボル系列の受信、およびMAC PDUとIQシンボル系列との間の相互変換を実施する機能を有する。また、Layer2では、パケットスケジューリング機能を有する。ただし、ブロードキャスト信号に対して割り当てられたリソースはユニキャスト信号用には割り当てないこととする。さらに、Layer2の機能として、User−PlaneとControl−Planeの情報に対する優先度制御や、セル内ユーザ固有IDの割当てといった機能も有する。
下りユニキャスト信号L1送信処理部(DL UC L1 Proc.)71は、端末固有の下りパイロット信号を生成するためのパラメータをユニキャスト物理層信号生成シードテーブル(UC PHY Sig.Seed Table)73から入力し、該端末固有の下りパイロット信号を生成する機能と、ユニキャスト信号L2処理部(UC L2 Proc.)76から入力されるユーザデータ信号や、同ユーザデータ信号に関するリソース割り当て情報やMCS(Modulation and Coding Scheme)など、端末が該ユーザデータ信号を復調するために必要な制御情報や、当該端末固有の無線コンフィグレーションを実施するための制御情報をMAC PDUとして物理層に入力し、IQ変調シンボル系列を生成する機能とを有する。MAC PDUからIQ変調シンボルを生成する手順に関しては、ブロードキャスト信号に関するものと同一の非特許文献群に開示されている。なお、下りユニキャスト信号L1送信処理部71の出力データ線の本数は、ユニキャストアクティベートされるフロントエンド部の数と一致する。この数は、セル毎のアンテナポート数をセル数分だけ加算した数に相当する。つまり、下りユニキャスト信号L1送信処理部71は複数セル分のL1信号処理を実施することもできる。
これらの下りユニキャスト信号L1送信処理部71の出力データ(IQシンボル系列)は、一定の規則に従って出力することで各MAC PDUに対する割り当て情報を別途付加することなく、IQシンボル系列のみを送信すれば、フロントエンド部3側で実施されるブロードキャスト信号と合わせたリソースマッピングを支障なく実施することができる。まず、IQシンボル系列の送信順番を、サブキャリア番号の昇順、サブキャリア番号が一巡したらOFDMシンボル番号を増加、という順番と決定する。この時、ブロードキャスト信号がマッピングされるサブキャリアやOFDMシンボル(ブロードキャスト信号処理部22から取得可能)をスキップして、当該位置にユニキャストのブランクシンボルを挿入しないルールで、ユニキャストIQシンボル系列がブランクなしで連続になるようにする。受信側のフロントエンド部3との間で、このデータ送受信ルールを合わせておけば、ユニキャスト信号に関するリソース割り当て情報を光伝送チャネルに載せる必要が無くなり、光ファイバ伝送量を削減することができる。
上りユニキャスト信号L1受信処理部(UL UC L1 Proc.)72は、チャネル推定や受信タイミング推定を行うための端末固有の上りパイロット信号を生成するためのパラメータをユニキャスト物理層信号生成シードテーブル73から入力し、該端末固有の上りパイロット信号を生成する機能と、上り受信信号に対する復調および復号結果を情報ビット系列としてユニキャスト信号L2処理部76へ出力する機能とを有する。なお、上り復調の際に必要なリソース割り当て情報やMCSなどの情報はユニキャスト信号L2処理部76から供給される。該ユニキャスト信号L2処理部76は上り通信に関する割り当て情報やMCSなどの情報を端末に対してUplink Grantとして、端末固有の制御情報として端末に送信することを前提としている。このUplink Grantに関する仕組みは、非特許文献4,および同文献が参照するSpecificationに開示されている。上りユニキャスト信号L1受信処理部72への入力データ線の本数は、下りと同様、セル毎のアンテナポート数をセル数分だけ加算した数に相当し、上りユニキャスト信号L1受信処理部72は複数セル分のL1信号処理を実施することもできる。
ユニキャスト物理層信号生成シードテーブル73は、下りおよび上り通信で使用する端末固有のパイロット信号を生成するためのパラメータをテーブルとして保持する機能を有する。具体的には、スロット番号、セルID、セル内で割り振られる端末固有ID、ならびにユニキャスト信号L2処理部76が各端末向けに割り当てるパイロット生成用のその他パラメータ群(例えば送信周期や周波数オフセットなど)である。スロット番号は、ブロードキャスト信号処理部22から常時最新のスロット番号が供給される。セルIDは、ブロードキャスト信号処理部22に対して供給するのと同等の手順で、OAM装置41から供給される。
セル内で割り振られる端末固有IDは、ユニキャスト信号L2処理部76が各端末に重複しないように割当てる。割り当ての手順は、(1)端末からのランダムアクセス信号であるプリアンブル受信、(2)受信できたプリアンブル系列ごとに上り割り当て情報を含むUplink Grantと、仮の端末固有IDをランダムアクセス応答として送信、(3)端末から何らかの端末識別子を含んだメッセージを送信、(4)受信した該端末識別子を該仮端末固有ID宛に送信、(5)(4)で送信された信号を端末が無事に受信できれば、仮端末固有IDをそのまま端末固有IDとして使用する(Contention Resolution)。このランダムアクセスに関する手順は、非特許文献4,および同文献が参照するSpecificationに開示されている。
端末固有無線コンフィグテーブル(Dedicated Radio Config. Table)74は、例えば、非特許文献4,および同文献が参照するSpecificationに開示されているRRC(Radio Resource Control)レイヤでコンフィグされるパラメータの、端末固有の値をテーブルとして保持する機能を有する。該パラメータのデフォルト値はOAM装置41から供給される。セル内で割り振られる端末固有IDなど、ユニキャスト信号L2処理部76が各端末向けに生成するパラメータもある。ある端末に関する上りおよび下りユニキャスト信号を送受信するために参照されたり、該パラメータ自体をコンフィグパラメータとして下り物理チャネルに載せたりするために使用する。
ユニキャストデータバッファ(UC Data Buffer)75は、GW装置42と信号処理装置1との間のユニキャストデータを一時的に蓄える機能を有する。MME装置43と信号処理装置1との間の制御データ(具体的には通信システム間のハンドオーバに関わるメッセージ群)交換の際のバッファリング機能も提供する。また、ベースバンド制御部21が参照する端末位置情報(UE_INFO)もここで記憶する。
ユニキャスト信号L2処理部76は、ユニキャスト信号に対するLayer2機能(MACからRRCの範囲)を提供する。少なくとも、(a)上りおよび下り通信に関する端末へのリソース割り当てを、ブロードキャスト信号処理部22から供給されるブロードキャスト信号への割当て結果を参照して、ブロードキャスト信号が使用していない範囲で実施すること、(b)セル内の端末固有IDの割当て、および同結果をユニキャスト物理層信号生成シードテーブル73および端末固有無線コンフィグテーブル74へ供給、(c)端末固有無線コンフィグテーブル74およびユニキャストデータバッファ75から供給されるデータからMAC PDUを生成し、下りユニキャスト信号L1送信処理部71へ入力、(d)上りユニキャスト信号L1受信処理部72から供給されるMAC PDUを分解し、端末固有無線コンフィグテーブル74およびユニキャストデータバッファ75に対して供給する機能を有する。以上の通信手順に関しては、非特許文献4,および同文献が参照するSpecificationに開示されている。
なお、上記(a)における端末へのリソース割り当てを実施するにあたって、当該スロットにおいてリソース割り当てを実施しても良い端末のリストが、ベースバンド制御部21から供給される。つまり、当該スロットにおいてユニキャストアクティベートされるフロントエンド部を使用した通信可能な端末のリストに相当する。
図10は、本実施例によるネットワーク側多重化制御部24の一構成例を示す。ネットワーク側多重化制御部24は、光ファイバネットワーク2での光伝送チャネルをブロードキャスト信号、下りおよび上りユニキャスト信号に対して割り当てて、光伝送チャネル多重化および分離の機能と、各フロントエンド部3の動作を制御するためのヘッダを作成し、下り信号に付加する機能とを有する。
本実施例では光ファイバネットワーク2をTDM−PONで実現することを前提としているため、ブロードキャスト信号および各ユニキャスト信号に対して割り当てる光伝送チャネルは時分割チャネルである。
チャネル制御部81は、ブロードキャスト信号および各ユニキャスト信号に対して時分割チャネルを割り当てる機能と、同割り当てに従って下り信号の時間領域多重化、および上り信号に対する時間領域分離を、下りセレクタ83および上りセレクタ84の制御を介して実施する。ベースバンド制御部21から、ブロードキャストおよびユニキャスト信号に対するフロントエンド部3毎のアクティベート/デアクティベートが通知されるため、アクティベートされたフロントエンド部3に対して光伝送チャネルを割り当てる。
ヘッダ生成部82は、ブロードキャスト信号および各ユニキャスト信号に対して、ブロードキャスト信号および各ユニキャスト信号に対するアクティベート/デアクティベートの制御情報、およびチャネル制御部81による光伝送チャネル割当て結果に基づきヘッダを生成する機能を有する。ヘッダに関しては後ほど詳しく説明する。
下りセレクタ(DL SEL)83は、ヘッダ、ブロードキャスト信号、および各ユニキャスト信号を多重化して、光ファイバネットワーク2へ送信するデータストリームを形成する。データストリームのフォーマットに関しては後ほど詳しく説明する。
上りセレクタ(UL SEL)84は、光ファイバネットワーク2を介して1または複数のフロントエンド部3から送信されたデータストリームの多重化をほどく機能を有する。データストリームのフォーマットに関しては後ほど詳しく説明する。
電気光変換部(E/O)85および光電気変換部(O/E)86は、電気信号を光信号に変換して光ファイバネットワーク2へ送信する機能、光ファイバネットワーク2から受信した光信号を電気信号に変換する機能をそれぞれ有する。
図11は、本実施例によるフロントエンド部3の具体構成例を示す。図4の実施例で説明した通り、フロントエンド部3は、フロントエンド部3内のベースバンド処理部分を制御するベースバンドフロントエンド(BB−FE)制御部31と、信号処理装置1から送信されたブロードキャスト信号そのもの、もしくはブロードキャスト信号を生成するためのパラメータからブロードキャスト信号を生成して出力するブロードキャスト信号送信部32と、信号処理装置1から送信されたユニキャスト信号の送信と、上り受信ベースバンドユニキャスト信号を信号処理装置1へ送信するユニキャスト信号送受信部33と、当該フロントエンド部3に割り当てられた下り光伝送チャネルからブロードキャスト信号と下りユニキャスト信号の抽出および多重化解除、当該フロントエンド部3に割り当てられた上り光伝送チャネルへのユニキャスト信号送信を実施するフロントエンド側多重化制御部(MUX/DEMUX)34と、ベースバンド信号とRF信号との間の相互変換を実施する無線信号送受信部35と、下りユニキャスト信号とブロードキャスト信号を多重化する下り多重化部37とで構成される。
ベースバンドフロントエンド制御部31は、信号処理装置1から送信されたヘッダ情報を解析し、ブロードキャスト信号およびユニキャスト信号に対するアクティベート/デアクティベートの制御情報、および上り光伝送で使用する光伝送チャネルの割り当て情報を取得し、ブロードキャスト信号、下りユニキャスト信号、および上りユニキャスト信号を通すかせき止めるかをスイッチにより制御する機能と、上り光伝送チャネルをフロントエンド側多重化制御部34に通知する機能とを有する。なお、これらの制御は光伝送チャネル上でブロードキャスト送信される同期パタン(固定パタン)を検出した時点で実施することで、フロントエンド部3間の同期精度に関して、光ファイバ伝送路長以外の同期精度劣化要因を排除することができる。該同期パタンについては後ほど説明する。
ブロードキャスト信号送信部32は、ベースバンドフロントエンド制御部31からの制御信号BC_CTRLに従い、信号処理装置1から受信したブロードキャスト信号のうち、IQシンボル変換済みの物理チャネル、および併せて信号処理装置1から送信されるブロードキャスト信号のリソース割り当て情報はそのまま、同期信号やパイロット信号を生成するためのパラメータから同期信号やパイロット信号を生成して出力する。つまり、スルー出力と同期・パイロット信号生成機能を有し、これらをスイッチングする機能を有するブロードキャスト物理信号生成部91と、ブロードキャスト信号のアクティベート/デアクティベート制御結果に応じて、アクティベートであればブロードキャスト信号を後段へ流し、デアクティベートであればブロードキャスト信号送信部32でせき止める、という制御を実施するブロードキャストアクティベーションスイッチ92とで構成される。
ユニキャスト信号送受信部33は、ベースバンドフロントエンド制御部31からの制御信号UC_CTRLに従い、下りユニキャスト信号および上りユニキャスト信号に対するアクティベート/デアクティベート制御結果に応じて、アクティベートであれば後段へ流し、デアクティベートであればせき止める、という制御を実施するユニキャストアクティベーションスイッチ93と、上りユニキャスト信号に関しては時間領域受信信号を周波数領域受信信号に変換し、ガードサブキャリアを除いた有効なサブキャリア成分のみを取り出すFFT(Fast Fourier Transform)部96とで構成される。
下り多重化部37は、ブロードキャスト信号とユニキャスト信号とをサブキャリアおよびOFDMシンボルにマッピングするリソースマッピング部94と、リソースマッピング後の信号に対するIFFT(Inverse−FFT)により周波数領域信号を時間領域信号へ変換するIFFT部95とで構成される。リソースマッピング部(Maping)94には、ブロードキャスト信号に関するリソース割り当て情報が併せて入力される。これに基づき、ブロードキャスト信号とユニキャスト信号が同一サブキャリアおよびOFDMシンボルにマッピングされないように制御できる。
具体的には、図9のUC信号処理部23の実施例で説明した通り、信号処理装置1からのユニキャスト信号IQシンボル系列の送信順番を、サブキャリア番号の昇順、サブキャリア番号が一巡したらOFDMシンボル番号を増加、という順番と決定しておく。リソースマッピング部94は、サブキャリア番号カウンタおよびOFDMシンボルカウンタを有し、サブキャリア番号カウンタのカウントアップを優先し、サブキャリア番号が一巡したらOFDMシンボルカウンタを増やす、というカウンタ制御を行う。これらのカウンタ値が更新されるたびに、当該サブキャリアおよびOFDMシンボルに入力すべき信号がブロードキャスト/ユニキャストのいずれかを判断する。ここで選択されたブロードキャストまたはユニキャスト信号のいずれかから必要なデータを入力する。この時、ユニキャスト信号は信号処理装置1側で上記カウンタの増加順にIQシンボル系列を連続させているため、ユニキャストが選択されたら、該IQシンボル系列の先頭から順番にデータを読み出せばよい。ブロードキャスト信号に対しても、同様の順番並べ替えをブロードキャスト信号送信部32で実施しておくことが望ましい。
フロントエンド側多重化制御部34は、下り光伝送チャネルから当該フロントエンド部3自身に割り当てられた該光伝送チャネルからブロードキャスト信号、下りユニキャスト信号、ならびにヘッダを取得、および該ヘッダからベースバンドフロントエンド制御部31が取得した上り光伝送チャネル割当て結果に従い、上りユニキャスト信号を当該光伝送チャネルで信号処理装置1へ送信する機能を有する。
無線信号送受信部35は、下り信号をベースバンド信号からRF信号に変換する機能と、上り信号をRF信号からベースバンド信号に変換する機能とを有する。下り信号と上り信号はデュプレクサにより結合され、上り下り共用のアンテナ36に接続される。
図12は、本実施例によるフロントエンド側多重化制御部34の一構成例を示す。信号処理装置1から光ファイバネットワーク2を介して入力された下り信号は、最初に光電気変換部(O/E)88により電気信号に変換される。TDM−PONの場合、下りと上りで異なる波長を使用しているため、信号処理装置1の光電気変換部86とは機能は同等だが、取り扱う波長が異なる。電気信号に変換された下り信号は、一旦下り信号バッファ(DL BUF)104に格納される。ベースバンドフロントエンド制御部31が同期固定パタンを検出した時点で後段の下りセレクタ102からバッファ内容を読みだされる。
下りセレクタ102は、下り信号バッファ104に一時格納されている下り信号をヘッダ、ブロードキャスト信号、ユニキャスト信号に分離して、それぞれベースバンドフロントエンド制御部31、ブロードキャスト物理信号生成部91、およびユニキャストアクティベーションスイッチ93へ出力する。下り信号バッファ104に格納されている時点では、ブロードキャスト信号や各ユニキャスト信号が当該フロントエンド部3でアクティベートされているかどうかは考慮しない。ただし、ブロードキャスト信号や各ユニキャスト信号には、TDM−PONで使用する時分割光伝送チャネルを通知するための宛先ヘッダが付加されている。この宛先ヘッダが当該フロントエンド部3を指し示していない場合は、下りセレクタ102の時点で破棄する。
上り信号バッファ103は、ユニキャスト信号がアクティベートされている場合に上り受信ベースバンド信号を一旦蓄積する機能を有する。ベースバンドフロントエンド制御部31が解析した上り光伝送チャネル割り当て情報を基に、チャネル制御部101が当該上り信号バッファ103に対して、上記割り当て情報で指示された送信タイミングになったらenableを発行し、電気光変換部(E/O)87を介して光ファイバネットワーク2へ送信する。
チャネル制御部101は、ベースバンドフロントエンド制御部31から上りおよび下りの光伝送チャネルの通知を受けて、下り信号バッファ104から当該フロントエンド部3宛に信号処理装置1から送信された情報を選択し、下りデータストリームを解析しながらヘッダ、ブロードキャスト信号、ユニキャスト信号を振り分ける機能と、上り信号バッファ(UL BUF)103の内容を、適切な光伝送チャネルに載せるための制御機能とを有する。光ファイバネットワークとしてTDM−PONを仮定しているため、下りはヘッダに格納されている宛先の確認、上りはネットワーク側多重化制御部24から指示された送信タイミングで送信する制御となる。
図13は、本実施例による無線信号送受信部35の一構成例を示す。下り多重化部37から入力される時間領域ベースバンド信号は、デジタルアナログ変換部(DAC)111によりベースバンドアナログ信号へ変換され、アップコンバータ(Up Conv.)112によりベースバンド信号からRF信号へ変換され、パワーアンプ(PA)113により増幅出力され、デュプレクサ(DUP)114を介してアンテナ36から無線電波として放射される。アンテナ36で受信した上りRF信号は、デュプレクサ114を通り、低ノイズアンプ(LNA)115により増幅され、ダウンコンバータ(Down Conv.)116によりRF信号からベースバンド信号に変換し、アナログデジタル変換部(ADC)117によりベースバンドデジタル信号へ変換され、ユニキャスト信号送受信部33に対して出力する。
図14Aから図14Dは、本実施例において光ファイバネットワーク2上で伝送される上りおよび下りデータストリームの一具体例を示す。
図14Aは、光ファイバネットワーク2上で伝送される上りおよび下りデータストリームの全体像を説明する図である。上側は下りデータストリームである。下りデータストリームの構成要素は、ブロードキャスト信号(BC Field)と、ユニキャストアクティベートされた数だけのユニキャスト信号(DL UC)、および同期固定パタン(Sync Pattern)である。それぞれの構成要素にヘッダが付加され、光伝送チャネルを分離するための情報と、ブロードキャスト信号に付加されるヘッダには、本実施例によるブロードキャスト/ユニキャストのアクティベート/デアクティベート制御情報が含まれている。TDM−PONの場合、光伝送チャネルを分離するための情報として光伝送チャネルIDを使用する。各フロントエンド部3は固有の光伝送チャネルID(LLID:Logical Link Identifier)を使用し、自身に割り当てられた光伝送チャネルID以外のユニキャスト信号を破棄するために使用する。ブロードキャスト信号および同期固定パタンに付与されるヘッダは、全フロントエンド部3で受信可能なブロードキャスト用の光伝送チャネルIDを使用する。
図14Aの下側は上りデータストリームである。上りデータストリームの構成要素は、ユニキャストアクティベートされた数だけのユニキャスト信号(UL UC)である。各ユニキャスト信号はそれぞれ異なるフロントエンド部3から送信されるため、TDM−PONの光ファイバネットワークで上記上りデータストリームを構成するためには、各フロントエンド部3に対する上り信号の送信タイミングを信号処理装置1側から指示する必要がある。TDM−PONにおける上り送信タイミング(時分割チャネル)割り当て方法は、非特許文献2に開示されている。ヘッダとしては送信元を識別する情報は不要である。ただし、TDM−PON以外の方法で光ファイバネットワーク2を実現する場合、送信元を一意に示す情報が必要となる場合がある。この情報をヘッダにセットする。
図14Bは、ブロードキャスト信号に関するデータストリームの一具体例である。ブロードキャスト信号に関するデータストリームの構成要素は、宛先が全フロントエンド部であることを示すブロードキャスト用光伝送チャネルID(BC)と、ブロードキャストおよびユニキャストに関するアクティベート/デアクティベートを各フロントエンド部に1bit(1:アクティベート、0:デアクティベート)ずつ割り当てたビットマップ(Act Bitmap)、ブロードキャスト信号に関するリソース割り当て情報(BC Alloc)、ブロードキャスト信号がアクティベートされたフロントエンド部から同一時間周波数で送信される物理チャネルIQシンボル系列(Broadcast Channels)、および同期信号やパイロット信号を生成するためのパラメータを、ブロードキャスト信号がアクティベートされたフロントエンド部毎のフィールド(PHY Seed)で構成される。
これらのうち、宛先を示すブロードキャスト用光伝送チャネルID(BC)、およびアクティベート/デアクティベートのビットマップ(Act Bitmap)がヘッダ部分に該当し、ブロードキャストアクティベート/デアクティベートを問わず全フロントエンド部3が受信するフィールドである。その他の部分はブロードキャストアクティベートされたフロントエンド部3のみが抽出するフィールドである。リソース割り当て情報および物理チャネルIQシンボル系列は、ブロードキャストアクティベートされた全てのフロントエンド部3で受信される。最後のフロントエンド部3別の同期信号およびパイロット信号生成のためのパラメータは、該ブロードキャスト用ビットマップが1になっている順番に、同ビットマップ値が0となっているフロントエンド部をスキップして前詰めで格納されている。従って、ブロードキャストアクティベートされたフロントエンド部3各々が、同ビットマップで何番目の1であるかを数えることで、何番目の該パラメータを取得すれば良いかが分かる。
図14Cは、本実施例における上りおよび下りユニキャスト信号に関するデータストリームの一具体例である。構成要素は、下りであれば宛先、上りであれば送信元を一意に示すフィールド、下り通信の場合に含まれる上り通信用に当該フロントエンド部3に割り当てる光伝送チャネル(TDM−PONの場合は上り送信タイミングと送信データ長で表される時間ゲート)、ならびに下りユニキャスト信号のIQシンボル系列(Unicast Channels and Signals)である。宛先または送信元を一意に特定するフィールドと、上り光伝送チャネルを示すフィールドがヘッダに該当し、残りの部分がペイロードである。
図14Dは、フロントエンド部3間で下り信号の送信タイミングの同期を図るための同期固定フィールドの一具体例を示す。ヘッダは、宛先がブロードキャストであることを示す光伝送チャネルID(BC)、ペイロードは固定パタン(Sync Pattern)である。つまり、光伝送チャネルIDがブロードキャスト用で、かつその後に続くパタンが予約済みのもの(図14Bのブロードキャスト用データストリームで取り得ない値、例えば全ビットが0のブロードキャスト用ビットマップなど)であれば、各フロントエンド部3は同期フィールドが入力されたものとみなす。
以上の実施例1ではOFDMAシステムを適用することを前提として説明した。ただし、CDMA(Code Division Multiple Access)システムや、TDMA(Time Division Multiple Access)システムにおいても、複数端末での受信が想定されているブロードキャスト信号と、単独端末での受信が想定されているユニキャストに分類することが可能であり、本実施例と同等のことが実現できることは、同業者であれば容易に想到できるであろう。
以上で、単一通信システムに対する第1の実施例の説明は終わりである。実施例1によれば、第一のアンテナセット変更に伴い無線カバレッジの変更が可能となる。これにより、システム運用中に新たな建物の建設や、屋内レイアウトの変更などによる無線伝搬路の変更に合わせて、無線カバレッジの調整ができる無線通信システム、無線通信装置を提供できる。
また、ブロードキャスト信号とユニキャスト信号の双方を取り扱うアンテナ、ブロードキャスト信号のみを取り扱うアンテナ、ならびに両信号を完全遮断するアンテナを設定することができ、無線カバレッジ維持と信号処理装置とアンテナとの間の信号伝送量を削減することができる。
更に、アンテナから離れた位置で、各アンテナに対するブロードキャスト信号およびユニキャスト信号に対する遮断制御ができる。
又更に、端末装置の地理分布によってブロードキャスト信号の送信範囲、ならびにユニキャスト信号の送受信範囲や頻度を自律的に変更し、端末スループットの最適化を図ることができる。
更にまた、ユニキャスト信号での通信が一時的に不可能な端末を無線通信リソース割り当ての候補から外すことで、無線通信リソース割り当てに関わるサーチスペース、ならびに処理能力を削減できる。
同様に、ブロードキャスト信号のIQシンボル系列ではなく、同信号を生成するためのパラメータをアンテナ側に送信し、アンテナ側で同パラメータに基づきブロードキャスト信号を生成することで、ブロードキャスト信号に関わる信号処理装置とアンテナとの間の伝送量を削減できる。
同様に、下りのユニキャスト信号と、端末からの上り信号を取り扱うアンテナを同一とすることで、この両者に対する遮断制御を一本化できる。
続いて、複数通信システムもしくは同一通信システムの複数周波数バンドを単一の光ファイバネットワーク2で収容するための第2の実施例を説明する。
図15は、信号処理装置およびバックホールネットワークに関する第2の実施例を説明するための図である。信号処理装置1は、通信システム毎または周波数バンド毎に1−1と1−2のように1台ずつ準備する。各々の信号処理装置1−1および1−2は、別々のネットワークインターフェース25−1および25−2を具備し、それぞれ独自のバックホールネットワーク44−1および44―2、GW装置42−1および42−2、MME装置43−1および43−2を備える。
複数の信号処理装置1−1および1−2が同一の通信システムで周波数バンドのみが異なる場合は、同一のGW装置42やMME装置43で一元管理する方が、周波数バンド間ハンドオフ制御の実現がし易いという観点から、ネットワークインターフェース25、バックホールネットワーク44、GW装置42、およびMME装置43を1つにまとめても良い。複数の信号処理装置1−1および1−2が異なるシステムの場合は、GW装置42でそれぞれの通信システムの通信を一旦終端し、コアネットワーク121に接続する。例えば、片方の通信システムからもう片方の通信システムへのハンドオフを実施する場合は、片方の通信システムのMME装置43−1からGW装置42−1、コアネットワーク121、もう一台のGW装置42−2を介して別の通信システムのMME装置43−2へハンドオフ関連メッセージを転送する、という仕組みである。
少なくとも、複数の信号処理装置1−1および1−2との間で、ネットワーク側多重化制御部24を一元化したネットワーク多重化制御部122を導入することが本実施例のポイントである。ネットワークインターフェース25を含んだその他の信号処理装置1関連の構成要素は、各々の信号処理装置1−1および1−2で個別に保持することとする。つまり、ポイントであるフロントエンド部毎のブロードキャスト/ユニキャストのアクティベート/デアクティベート制御は、通信システムもしくは周波数バンド毎に個別に実施する。
図15のシステムのように、複数通信システムもしくは複数周波数バンドを収容するメリットは、通信システム間もしくは周波数バンド間で光ファイバネットワーク2の伝送量を融通し合えることである。すなわち、図6や図7で説明したブロードキャスト/ユニキャスト信号を伝送するフロントエンド部の上限数(Nbc,Nuc)を通信システム等の間で調整できる。このため、複数信号処理装置1−1および1−2に対してOAM装置41は1台としている。この構成とすることで、通信システム毎のニーズの時間変化に応じた光帯域配分ができるようになり、旧世代から新世代通信システムへのマイグレーションがスムーズに実施できる。
図16は、第2の実施例における、ネットワーク側多重化制御部122の実現方法を説明した図である。機能としては、図10で示したネットワーク多重化制御部24とほぼ同様である。違いは、ベースバンド制御部21、ブロードキャスト信号処理部22、ユニキャスト信号処理部23が複数システム分存在することである。また、通信システム毎にTTIが異なることもあるため、第一の実施例で示した光ファイバ上の伝送フォーマットに通信システムを識別するためのヘッダが追加で必要となる。
図17Aは、第2の実施例における光ファイバネットワーク2上の光伝送フォーマットの実施例を示す。データフォーマットとしては、図14Aで示した通信システム毎のデータストリーム(Data Stream)と、通信システム毎のヘッダで構成される。通信システム毎のヘッダは、下り通信時の宛先(ブロードキャスト)または上り通信時の送信元フロントエンド部を識別するフィールドと、通信システムの識別子と、当該通信システムのデータストリーム長と、当該データストリーム先頭が当該通信システムのTTIの先頭かどうかを示すStart of TTIフラグと、当該データストリーム終点が当該通信システムのTTIの終点かどうかを示すEnd of TTIフラグとで構成される。
Start of TTIフラグとEnd of TTIフラグの導入意図を説明するため例を挙げる。図17Bは、2つの通信システムのヘッダ付加前のデータストリームを表す。システム1に対しシステム2のTTIが半分の例である。例えば、システム1のTTIが1msで、システム2のTTIが0.5msである。この時、図17Aに示した各通信システムのデータストリームとしてシステム1の1st TTIの1ms分と、システム2の1st TTIの0.5ms分を伝送すると、システム2の2nd TTIの0.5msを別途送信し直す必要があり、受信側の動作が複雑となる。これでも本実施例の構成を実現することは可能だが、受信側としてはデータフォーマット長を極力一定にした方が制御は簡単となる。つまり、図17Cに示すように、各時刻で送信するデータフォーマットを固定長とするため、システム1とシステム2の0.5ms分のデータストリームを毎回送信することとする。システム2に関しては、全ての時刻でStart of TTIフラグとEnd of TTIフラグはTrueとなる。システム1に関しては、時刻1と3でStart of TTIフラグがTrueでEnd of TTIフラグがFalse、時刻2と4でStart of TTIフラグがFlaseでEnd of TTIフラグがTrueとなる。TTIの先頭は、図14Dで説明したフロントエンド部3間の同期をとる基準となる。つまり、図14Dの同期固定フィールドを受信すると、TTI先頭から順にデータを出力する動作である。
データストリームは、図14Aから図14Dに示したデータストリームのフォーマットに従い、フロントエンド部3と送受信される。つまり、チャネル制御部131、下りセレクタ133、上りセレクタ134は、図10の実施例の構成とほぼ同じ機能を有する。ヘッダ生成部132は、上記の通り通信システムを識別するためのヘッダを追加で生成する機能が、図10の構成に対し追加される。
図18は、第2の実施例における、フロントエンド部3の実現方法を説明した図である。全体としては、ベースバンドフロントエンド制御部141およびフロントエンド側多重化制御部142とアンテナ36との間にシステム個別の処理系統を設け、アンテナ36側に複数システムに関するRF信号の下り通信多重化、上り通信多重化分離を実施するRF多重化分離部143を挿入する。システム毎に周波数バンドは異なるため、RF多重化分離部143の実態はバンドパスフィルタである。
ベースバンドフロントエンド制御部141は、図11および図12に示す第一の実施例の構成と比較して、ヘッダ解析結果をフロントエンド側多重化制御部142に通知する仕組みは共通だが、ヘッダに含まれるブロードキャスト/ユニキャスト信号のアクティベート/デアクティベート制御情報を基に、複数通信システムのブロードキャスト信号およびユニキャスト信号に対するスイッチ制御を実施する点が異なる。
フロントエンド側多重化制御部142は、図12で示したフロントエンド側多重化制御部34と比較して、複数通信システムを取り扱うに当たって異なる点が幾つかある。詳しくは図19に示す。1つ目は、上りデータバッファ153を通信システム毎に保持している点である。どちらの上りデータバッファ153の内容を光ファイバネットワーク2に送信するかは、上りセレクタ154で制御する。上りセレクタ154は、図17に示されるデータストリームフォーマットとなるよう、当該フロントエンド部3でユニキャストアクティベートされた複数通信システムのデータストリームを連続的に結合する。TDM−PONの仕組みにおいて、上り光伝送チャネルを表すゲート(送信タイミングおよび送信データ長)は、フロントエンド部3毎に与えられる。該送信タイミングになったら、ユニキャストアクティベートされた通信システムの全データストリームを、上記の上りセレクタ154制御により結合して光ファイバネットワーク2側へ出力する。
2つ目の相違点は、下りデータストリームに関する取り扱いである。下りデータストリームも図17に示すようなフォーマットとなっており、一旦データストリームを下りデータバッファ155に格納する。全ての通信システムに関するデータストリームを一旦格納する点が、図12に示す第一の実施例と異なる。各システムのデータストリームのヘッダから、通信システムを特定するための識別子と、各通信システムのデータストリーム内にあるヘッダ情報(図14Bから図14D)をベースバンドフロントエンド制御部141へ入力し、上り光伝送チャネルの割り当て情報と当該フロントエンド部3向けにアクティベートされた信号種別(ブロードキャスト/ユニキャスト)および通信システムに関する情報をチャネル制御部151へ入力し、チャネル制御部151は該入力結果に従って、通信システム毎にアクティベートされたブロードキャストおよびユニキャスト信号を、当該通信システムの必要なブロック(ブロードキャスト物理信号生成部91およびユニキャストアクティベートスイッチ93)へ出力するよう、下りセレクタ152を制御する。
第2の実施例によれば、第1の実施例の無線通信システム、無線通信装置を、複数の通信方式が混在した状況で適用できる。通信方式毎にブロードキャスト信号およびユニキャスト信号に対する遮断制御を個別に制御することで、通信方式個別の無線カバレッジ制御が可能となる。また、通信方式毎に信号処理装置−アンテナ間の伝送量配分を変更できる。これにより、通信方式の世代交代に伴うマイグレーションをスムーズに実施できる。
なお、本発明の種々の実施例について説明してきたが、本発明はこれらの実施例に限定されるものなく、様々な変形例が含まれうることは言うまでもない。上述した実施例は本発明のより良い理解のために説明したものであり、本発明はそれに限定されるもので無い。また、ある実施例構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることも可能であり、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、上述した各実施例の構成、機能、処理手段等は、それらの一部又は全部をソフトウェア構成のみならず、専用のハードウェア構成、あるいはそれらを共用した構成としても良いことは言うまでもない。
以上詳述した本発明は、特許請求の範囲に記載した請求項の発明以外に種々の発明を包含している。それらの一部を例示すると下記の通りとなる。
例1は、ベースバンド信号処理を実施する信号処理装置に対し、1または複数のアンテナが接続され、該アンテナを介して該信号処理装置と1または複数の端末装置が通信する無線通信システムであって、
該信号処理装置から送信される信号を、複数の該端末装置に向けて送信される第一の信号と、単一の端末装置に向けて送信される第二の信号とに分類した上で、
該第一の信号を該端末装置に向けて送信する1または複数の該アンテナで構成される第一のアンテナセットを選択し、
該第二の信号を該端末装置に向けて送信する1または複数の該アンテナで構成される第二のアンテナセットは、該第一のアンテナセットに包含され、
該第二のアンテナセットを構成する該アンテナの組み合わせは、該第一のアンテナセットの範囲内で、システム動作中に任意に変更できることを特徴とする無線通信システムである。
例2は、例1の無線通信システムであって、
該第一のアンテナセットを構成する該アンテナの組み合わせは、該アンテナシステムが具備する全ての該アンテナの中から、システム動作中に任意に変更できることを特徴とする無線通信システムである。
例3は、例1の無線通信システムであって、
該アンテナは、該第一の信号と該第二の信号を合成する多重化手段を具備し、該多重化手段に入力される該第一の信号と該第二の信号とのそれぞれに対し、個別に遮断制御ができることを特徴とする無線通信システムである。
例4は、例3の無線通信システムであって、
該アンテナ毎に該第一の信号および該第二の信号に対し各々遮断制御を実施するかしないかを示すインジケータを、該信号処理装置が該アンテナに対し送信し、該アンテナは受信した該インジケータを基に該遮断制御の実施または不実施を判断することを特徴とする無線通信システムである。
例5は、例4の無線通信システムであって、
該インジケータは、該アンテナの位置情報と、該端末装置の位置情報とを基に該信号処理装置が自律的に生成することを特徴とする無線通信システムである。
例は、例3の無線通信システムであって、
該遮断制御により決定する該第二の信号を送信する該第二のアンテナセットのうち、少なくとも1つの該アンテナと通信可能な該端末装置を、無線通信リソースの割当て候補とすることを特徴とする無線通信システムである。
例7は、例1の無線通信システムであって、
該信号処理装置から該アンテナに送信される該第一の信号として、該第一の信号を生成するためのパラメータを送信し、該パラメータを受信した該アンテナ側で該第一の信号を自律的に生成することを特徴とする無線通信システムである。
例8は、例1記載の無線通信システムであって、
該端末装置から送信される信号を受信する1または複数の該アンテナで構成される第三のアンテナセットは、該第二のアンテナセットと同一であることを特徴とする無線通信システムである。
例9は、複数の通信方式が混在し、該通信方式間で1または複数のアンテナを共有し、該通信方式毎にベースバンド信号処理を実施する信号処理装置を具備し、複数の該通信方式のうち1または複数での通信が可能な1または複数の端末装置が、該アンテナを介して該端末装置が通信可能な該通信方式の該信号処理装置と通信する無線通信システムであって、
該通信方式毎に該信号処理装置から送信される信号を、複数の該端末装置に向けて送信される第一の信号と、単一の端末装置に向けて送信される第二の信号とに分類した上で、
該通信方式毎の該第一の信号を該端末装置に向けて送信する1または複数の該アンテナで構成される第一のアンテナセットを選択し、
該通信方式毎の該第二の信号を該端末装置に向けて送信する1または複数の該アンテナで構成される第二のアンテナセットは、該第一のアンテナセットに包含され、
該通信方式毎の該第二のアンテナセットを構成する該アンテナの組み合わせは、当該通信方式に関する該第一のアンテナセットの範囲内で、システム動作中に任意に変更できることを特徴とする無線通信システムである。
例10は、例9記載の無線通信システムであって、
該通信方式毎の該第一のアンテナセットを構成する該アンテナの組み合わせは、該アンテナシステムが具備する全ての該アンテナの中から、システム動作中に該通信方式個別で任意に変更できることを特徴とする無線通信システムである。
例11は、例9記載の無線通信システムであって、
該アンテナは、該通信方式毎に該第一の信号と該第二の信号を合成する多重化手段を具備し、該多重化手段に入力される該第一の信号と該第二の信号とのそれぞれに対し、該通信方式毎に個別に遮断制御ができることを特徴とする無線通信システムである。
例12は、例11記載の無線通信システムであって、
該通信方式毎該アンテナ毎に該第一の信号および該第二の信号に対し各々遮断制御を実施するかしないかを示すインジケータを、該信号処理装置が該アンテナに対し送信し、該アンテナは受信した該インジケータを基に、該通信方式毎に該遮断制御の実施または不実施を判断することを特徴とする無線通信システムである。
例13は、例12記載の無線通信システムであって、
該通信方式毎の該インジケータは、該アンテナの位置情報と、当該通信方式での通信が可能な該端末装置の位置情報とを基に該信号処理装置が自律的に生成することを特徴とする無線通信システムである。
例14は、例11記載の無線通信システムであって、
該通信方式毎の該遮断制御により決定する該第二の信号を送信する該第二のアンテナセットのうち、少なくとも1つの該アンテナと通信可能、かつ当該通信方式での通信が可能な該端末装置を、当該通信方式における無線通信リソースの割当て候補とすることを特徴とする無線通信システムである。
例15は、例9記載の無線通信システムであって、
該通信方式毎に該信号処理装置から該アンテナに送信される該第一の信号として、該第一の信号を生成するためのパラメータを送信し、該パラメータを受信した該アンテナ側で該通信方式毎の該第一の信号を自律的に生成することを特徴とする無線通信システム。
例16は、例9記載の無線通信システムであって、
該通信方式毎に、当該通信方式で通信が可能な該端末装置から送信される信号を受信する1または複数の該アンテナで構成される第三のアンテナセットは、該第三のアンテナセットと同一であることを特徴とする無線通信システムである。
例17は、例9記載の無線通信システムであって、
該通信方式間で、該第一のアンテナセットに含まれる該アンテナの数、および該第二のアンテナセットに含まれる該アンテナの数の上限値を設定し、かつ該上限値をシステム動作中に変更可能であることを特徴とする無線通信システムである。
例18は、ベースバンド信号処理を実施する信号処理装置に、1または複数のアンテナが接続され、該アンテナを介して該信号処理装置と1または複数の端末装置が通信する無線通信装置であって、
該信号処理装置と、該アンテナを含むフロントエンド部との間にケーブルネットワークを構成し、
該信号処理装置は、複数の該端末装置に向けて送信される第一の信号に対してベースバンド信号処理する第一信号処理手段と、
単一の端末装置に向けて送信される第二の信号と、該端末装置から送信される第三の信号に対してベースバンド信号処理する第二信号処理手段と、
該アンテナ各々に対して該第一の信号に対する遮断制御信号、および該第二の信号と該第三の信号に対する遮断制御信号を生成する遮断制御手段と、
該信号処理装置から該ケーブルネットワークを介して1または複数の該フロントエンド部へ送信される該第一の信号、該第二の信号、および該遮断制御信号を多重化、ならびに1または複数の該フロントエンド部から該ケーブルネットワークを介して該信号処理装置へ送信される該第三の信号の、該フロントエンド部間多重化解除を実施する多重化制御手段を具備し、
該フロントエンド部は、該信号処理装置から送信される該遮断制御信号を解析し、該第一の信号に対する遮断の有無、および該第二の信号と該第三の信号に対する遮断の有無を制御するフロントエンド制御手段と、
該信号処理装置から受信した該第一の信号を該制御に従い出力または遮断する第一信号送信手段と、
該信号処理装置から受信した該第二の信号、および該端末装置から受信した該第三の信号を該制御に従い出力または遮断する第二信号送受信手段と、
該第一信号送信手段の出力と、該第二信号送受信手段による該端末装置向け出力とを合成する下り信号合成手段と、
該下り信号合成手段の出力を無線周波数アナログ信号に変換する機能と、該端末装置から受信した無線周波数アナログ信号をベースバンドデジタル信号に変換して該第二信号送受信手段へ出力する無線信号送受信手段と、
を具備することを特徴とする無線通信装置である。
例19は例18記載の無線通信装置であって、
該信号処理装置において該第一信号処理手段、該第二信号処理手段、該遮断制御手段を複数の通信方式個別に具備し、
該フロントエンド部において該第一信号送信手段、該第二信号送受信手段、該下り信号合成手段、該無線信号送受信手段を複数の通信方式個別に具備し、
該信号処理装置の該多重化制御手段、および該フロントエンド部の該フロントエンド制御手段を複数の該通信方式間で共有し、
該アンテナと、複数の該通信方式毎の該無線信号送受信手段との間に、該無線周波数アナログ信号の多重化および分離を行う無線周波数信号多重化分離手段を具備し、
該アンテナおよび該ケーブルネットワークを複数の該通信方式間で共有することを特徴とする無線通信装置である。
例20は、1または複数の端末装置と1または複数のアンテナを介して通信する無線通信装置であって、
アンテナ各々に接続される1または複数のフロントエンド部との間でケーブルネットワークを構成する、ベースバンド信号処理を実施する信号処理装置を備え、
信号処理装置は、複数の端末装置に向けて送信される第一の信号に対してベースバンド信号処理する第一信号処理部と、
単一の端末装置に向けて送信される第二の信号に対してベースバンド信号処理する第二信号処理部と、
アンテナ各々に対して、第一の信号、第二の信号に対する遮断制御信号を生成する遮断制御部と、
信号処理装置からケーブルネットワークを介してフロントエンド部へ送信される第一の信号、第二の信号、遮断制御信号の多重化を実施する多重化制御部とを具備する構成の無線通信装置である。