JP5468080B2 - プロセス制御のための近似的な計算を実行しうるプロセス制御システム - Google Patents

プロセス制御のための近似的な計算を実行しうるプロセス制御システム Download PDF

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Description

本発明は、プロセス機器を備えた産業プロセス制御システムに係り、より詳しくは、プロセス制御機器で生成されるコンピュータ出力の診断・評価を行う方法、およびこの方法を実施しうるプロセス制御システムに関する。
プロセス制御機器は、産業プロセスにおいて扱われるプロセス流体の圧力、温度、流量、液面高さ等のプロセス変数やプロセス条件を監視する。例えば、プロセス制御機器の一つであるプロセストランスミッタは、製造ラインにおける様々なプロセス変数の変動を監視するため、通常、製造ラインの種々の箇所に設置される。また、プロセストランスミッタは、プロセス変数の変化に応答して電気的な出力を発する複数のセンサを備えている。さらに、プロセストランスミッタは、給排水ライン、化学タンク等におけるプロセス流体の圧力に係る関数を表す電気信号を発する圧力トランスデューサを備えている。この外、各プロセストランスミッタは、プロセストランスミッタ自身およびプロセス全体の局所的および遠隔的な監視のために、センサから電気信号を受信して処理する電子部品を有している。局所的な監視を受けるプロセストランスミッタは、自ら発する出力を表示するディスプレイ(LCDスクリーン等)を備えている。一方で、遠隔的な監視をも受けるプロセストランスミッタは、プロセス制御ループ(またはプロセス制御ネットワーク)を介して、制御室等の中央監視所に電気信号を送信する電子部品を備えている。したがって、産業プロセスは、プロセス制御システム、ならびに制御ループに装備されている自動スイッチ、バルブおよびポンプ等を介して、制御室から送る信号により制御することができる。
プロセストランスミッタは、プロセス流体の質量流量(mass flow rate)等のプロセス条件を推測する際に、センサによって検出されたプロセス変数の値を利用するべく、コンピュータソフトウエアおよびハードウエアを備えた電子部品を有している。このソフトウエアは、ユーザが定義したプロセス制御用の変数(プロセス流体のパラメータ、プライマリエレメント(プロセス流体に差圧を生じさせるオリフィスプレート等)その他のハードウエアのパラメータ等)を前提として、センサによって検知されたプロセス変数のコンピュータ解析を行う。プロセス条件を正確に求めるには、プロセス変数をコンピュータ解析する際に、複雑な計算を要する。一方、前述の電子部品の構成は、一般に実行を予定されている計算の複雑さの程度に拘束される。他方、プロセストランスミッタは、一般に、4〜20mAという非常に限られた給電下(4〜20mAカレントループ)で動作する。そのため、プロセストランスミッタ内に設けられるプロセッサは、通常、パワー要求を抑えるため、クロック周波数がかなり遅い(例えば490kHz)。したがって、合理的な時間内に計算結果を得るためには、プロセストランスミッタのプロセッサにより実行される計算の複雑さを抑える必要がある。例えば、複雑な方程式は、より単純なアルゴリズムに基づく近似的な計算によって置き換えられることが多い(詳細は、米国特許第6182019号(発明者;Wiklund:Rosemount社(ミネソタ州エーデンプレーリー)に譲渡)明細書参照)。プロセストランスミッタの電子部品が行うコンピュータ解析の結果は、プロセストランスミッタが接続している制御ループを介して、制御室に送られる。現在のところ、前述の電子部品が出力する、プロセストランスミッタによる解析結果の正確性は、ユーザが、制御室に設けられたコンピュータによる複雑な方程式やアルゴリズムの計算(一部手動によるものを含む)結果を基に、評価するようになっている。そこで、プロセストランスミッタが近似的に算出したプロセス条件の近似値の正確さを、より速く判定することが求められている。
上記の課題は、本発明に係る、産業プロセス制御のために、プロセストランスミッタが計算するプロセス条件の近似値の正確さを迅速に判定する方法およびこの方法を実施しうるシステムによって解決される。本発明に係る方法およびシステムにおいては、プロセス条件の参照値を表す信号、プロセス条件の近似値を表す信号、およびこの近似値の正確さを表す信号(正確度信号)を生成する。プロセス条件の参照値を表す信号は、プロセス条件の参照式(プロセス条件に係る変数について参照式を用いる方程式)、およびプロセス制御用の変数に基づいて生成される。プロセス条件の近似値を表す信号は、プロセス条件の参照式を大まかに模したプロセス条件の近似式(プロセス条件に係る変数について近似式を用いる方程式)、およびプロセス制御用の変数に基づいて生成される。プロセス条件の近似値を表す信号は、産業プロセスの調整を図るべく、制御室のワークステーションにおいて、プロセス条件の参照値を表す信号と対比される。本発明の一態様によれば、プロセス条件の近似式で用いられる種々の係数は、プロセス条件の近似値を表す信号とプロセス条件の参照値を表す信号の差を縮小させるように調整される。本発明の他の態様によれば、プロセス条件の近似式で用いられる種々の係数は、調整された後、制御ネットワークを介してプロセストランスミッタの電子部品に伝送される。本発明のさらに他の態様によれば、プロセス制御システムを構成するハードウエアのパラメータや、プロセス流体のパラメータも調整される。
プロセス流体の供給源および制御室に接続されたプロセストランスミッタを備えるプロセス制御システムの説明図である。 図1に示すプロセストランスミッタおよび制御室の回路図である。 図1に示すプロセス制御システムと図2に示す制御室とを結び、プロセストランスミッタによるプロセス条件の近似的なコンピュータ計算の正確さを判定し、プロセス制御システムに調整を指示しうるようになっている制御ループ(フィードバックループ)を表す流れ図である。
図1は、複数の変数に対応しうるプロセストランスミッタ12を備える、本発明に係るプロセス制御システム10を示す。この図では、プロセス流体の圧力に係るプロセストランスミッタを例にとっているが、本発明の方法は、プロセス流体の温度、流量、液面高さ等に係るプロセストランスミッタを含む、あらゆる種類のプロセストランスミッタに適用することができる。本発明に係るプロセス制御システム10は、プロセストランスミッタ12,配管14、制御室16および制御ループ18からなっている。また、制御室16は、ワークステーション20と電源22を備えている。プロセストランスミッタ12は、プロセス流体Fに係る各種の変数(「プロセス変数」と呼ばれる。温度T,静圧P、差圧ΔP等)に係る電気信号を生成するため、プロセス流体の供給源である配管14に接続されている。プロセストランスミッタ12は、検知したプロセス変数の値を、制御ループ18を介して制御室16へ伝送する。したがって、プロセストランスミッタ12と制御室16は、産業プロセスを制御するプロセス制御システムの構成機器である。産業プロセスの制御形式には、受動制御と能動制御がある。また、産業プロセスを制御する前提として、プロセス変数やプロセス条件の監視が行われる。この監視は、産業プロセスの制御(または操作)を行う際に、事前にその妥当性を評価し、妥当である場合には、その制御を実行に移すためのものである。プロセストランスミッタ12は、プロセス流体Fの体積流量、質量流量、エネルギー流量等のプロセス条件を算出するために、プロセス変数を用いたコンピュータ解析を行うことができる。一方で、プロセストランスミッタ12は、複雑な数量解析を簡略化したルーチンも実行することができる。本発明に係るワークステーション20は、プロセストランスミッタ12がオンラインモードのときにも、オフラインモードのときにも、プロセス条件を計算するための数量解析を正確に実行することができる。プロセストランスミッタ12がオンラインモードの場合、プロセストランスミッタ12によるプロセス条件の近似的な計算値は、リアルタイムでワークステーション20固有の計算値(ワークステーション20でしか行えない複雑な計算の結果)と比較される。すなわち、プロセストランスミッタ12によって実行される簡略的なルーチンの計算結果は、ワークステーション12によって出力される複雑な計算の結果と直ちに比較される。他方、プロセストランスミッタ12がオフラインモードの場合、制御室は、プロセストランスミッタ12によって実行される簡略的なルーチンをエミュレートすることによって、プロセス条件についての模擬的なリアルタイムの計算結果を出力し、この結果を、ワークステーション20固有の計算値と比較する。したがって、プロセス制御システム10の初期設定に先立って、オンラインモード時にプロセストランスミッタ12によって実行されることとなる簡略的なルーチンをエミュレートした結果が、制御室16において行われる解析結果と比較される。すなわち、プロセス制御システム10のパフォーマンスは、プロセストランスミッタ12がオンライン状態になる前にも、なった後にも、適宜評価され、プロセス制御システム10の初期設定や再設定に用いられる。
プロセストランスミッタ12は、フランジ24、マニホールド26、インパルス管28および配管取り付け部30を介して、プロセス流体Fが流れる配管14と接続されている。プロセストランスミッタ12は、圧力センサモジュール32、回路モジュール34、および温度センサモジュール36を備えている。一の変形例として、プロセストランスミッタ12は、米国特許第5495769号(発明者;Broden外:Rosemount社(ミネソタ州エーデンプレーリー)に譲渡)明細書(参考として本明細書に引用する)に記載されているような複数の変数に対応する解析が可能なトランスミッタとすることができる。また、他の変形例として、Rosemount社(ミネソタ州エーデンプレーリー)から販売されている3051SMV型多変量解析トランスミッタとすることもできる。プロセス制御システム10と接続した圧力センサモジュール32が取り付けられているフランジ24は、プロセストランスミッタ12を、マニホールド26に接続する役割を果たしている。マニホールド26は、プロセストランスミッタ12の校正、検査、保守等の際に、プロセストランスミッタ12をプロセス流体Fから隔離する役目を担う。マニホールド26は、差圧を測定するため、プロセス流体Fとの間にそれぞれインターフェースを有する2本のインパルス管28,28に接続している。2つのインパルス管28,28は、それぞれ、配管取り付け部30,30を介して、配管14と連通している。2つの配管取り付け部30,30の間には、配管14を流れるプロセス流体F内に圧力差を生み出すプライマリエレメント38が設けられている。また、温度センサモジュール36が、一方でサーモウェル40を介して配管14に、他方で導管42を介して圧力センサモジュール32に接続されている。導管42は、突起44が設けられた箇所で、圧力センサモジュール32に接続している。
プロセス流体Fには、プライマリエレメント38(本実施形態においてはオリフィスプレート)によって、差圧ΔPが生まれる。プライマリエレメント38には、プロセス流体Fの流量を抑制しうるよう、配管14の内径よりも小径の孔が設けてある。2本のインパルス管28,28は、プライマリエレメント38に跨っている。プロセス流体Fと接する2つのインターフェース(高圧のインターフェースと低圧のインターフェース)は、マニホールド26およびフランジ24を介して、圧力センサモジュール32と通じている。圧力センサモジュール32は、プライマリエレメント38の前後におけるプロセス流体Fの差圧ΔPと静圧Pをそれぞれ検知する差圧センサと絶対圧センサ(ゲージ圧センサの場合もある)を備えている。本実施形態においては、差圧センサは、静電容量型の圧力センサセルであり、絶対圧センサは、ピエゾ圧電素子である。温度センサモジュール36(本実施形態においては、測温抵抗体(RTD;resistive temperature device))は、サーモウェル40の地点における配管14内の温度Tを計測する。温度センサモジュール36の出力は、導管42を介して、圧力センサモジュール32へ送られる。圧力センサモジュール32は、差圧センサおよび絶対圧センサ、ならびに温度センサモジュール36からの出力に基づいて電気信号を生成し、この電気信号を回路モジュール34へ送る。
回路モジュール34は、電気信号を、制御ループ18を経由してワークステーション20および/またはプロセストランスミッタ12のディスプレイ(LCDスクリーン;図示せず)へ送るためのコンポーネントを備えている。プロセストランスミッタ12は、無線ネットワークを介して制御室16と繋がることもできる。この実施形態においては、プロセストランスミッタ12は、4〜20mAカレントループで動作する2本線トランスミッタである。したがって、制御ループ18は、電源22からプロセストランスミッタ12へ給電しうる1対のワイヤからなっている。制御ループ18は、ワークステーション20を介して、制御室16とプロセストランスミッタ12が、データを送受信できるようにしている。通常、4〜20mAカレントループは、プロセストランスミッタ12において、複数のセンサ、回路モジュール34、およびディスプレイを駆動するのに十分なエネルギーを供給することができる。
回路モジュール34とワークステーション20は、プロセス条件を算出するために送られる電気信号(圧力センサモジュール32および温度センサモジュール36によって生成される)をコンピュータ解析しうるように構成されている。例えば、プライマリエレメント38を通過するプロセス流体の流量は、ユーザが特定するプロセス制御用の種々の変数に基づいて解析される。プロセス制御用の変数としては、ハードウエアのパラメータ(プライマリエレメント38の幾何形状に係る寸法等)、プロセス流体のパラメータ(粘度μ、密度ρ等)、およびプロセス変数(温度T、静圧P、差圧ΔP等)がある。したがって、配管14を通るプロセス流体の流量は、プライマリエレメント38、プロセス流体Fのパラメータ、ならびにプロセス変数(静圧P、温度T等)によって決まる。プロセス制御用の変数は、プロセス条件の参照式(各変数の参照式を基にして、質量流量Q、体積流量Q、エネルギー流量Q等のプロセス条件を求めるための方程式)と関連づけられている。例えば、質量流量Qは、下記方程式[1]から求められる。
ここで、Qは質量流量(質量の単位/単位時間)、
Nは単位変換因子(単位は種々に変わる)、
は排出係数(無次元数)、
はガス膨張因子(無次元数)、
Eはアプローチ因子の速度(無次元数)、
dはプライマリエレメントにおける絞り部の径(長さの単位)、
ρは密度(質量の単位/単位体積)、
ΔPは差圧(力の単位/単位面積)である。
上記の方程式[1]は、プロセス制御システム10に係るプロセス制御用の変数に対応する複数の(独立)変数を含んでいる。すなわち、Nは、方程式[1]を構成する種々の単位をもつ(独立)変数から、所望の単位で規定されるプロセス条件を得るための定数である。dは、プライマリエレメントの幾何形状によって定まるハードウエアのパラメータである。ΔPは、プロセス制御システム10内の差圧(プロセス変数)であり、圧力センサモジュール32により検知される。方程式[1]における各(独立)変数は、種々の参照式から求めることができる。すなわち、変数C、Y、Edおよびρ1/2は、それぞれ対応する参照式から決定される。ここでいう参照式は、よく知られたものであり、米国ガス協会(AGA;American Gas Association)の出版物や、米国の国内規格および国際規格、業界の標準的なテキスト、使用頻度の高い流体やプライマリエレメントを提供するメーカーの情報等から得ることができる。換言すれば、上記の変数C、Y、Edおよびρ1/2は、プロセス変数である温度Tおよび静圧Pを要素(変数)とする複数の参照式により与えられる。なお、あまり使われることがなく、上記のようにして参照式を得ることができないようなプロセス流体のパラメータについては、その参照式を、制御室16に設置されたワークステーション20で生成することもできる。この場合、ワークステーション20には、経験的なデータや理論的な値に基づいて、特別仕様の流体や特別仕様のプライマリエレメントのモデル動作を補間するソフトウエアを組み込む。一般に、各変数について参照式を使って方程式[1](プロセス条件の参照式)からプロセス条件の値(プロセス条件の参照値)を求めるには、対数計算や指数計算のような複雑な計算を行わなければならない。
方程式[1]に示すように、プロセス条件である質量流量Qは、経験的または理論的に定まる複数の変数から求められる。方程式[1]に示す各独立変数の値の正確さは、プロセス条件である質量流量Qの値の正確さに影響する。例えば、プロセス流体の密度ρは、実験データから導かれる経験的な変数であり、温度と圧力によって決まる複雑な多項式で表される。密度ρを計算する際に誤りや不正確な点があると、方程式[1]の計算全体に波及する。ρ以外の変数の計算値に誤りや不正確な点がある場合も同様である。したがって、方程式[1]におけるすべての変数を可能な限り正確に求めるのが望ましい。方程式[1]における各変数を求めるには、合理的な時間内に大きな桁数の小数演算を実行しうるプロセッサ(高速のクロック周波数をもち、かつ容量の大きなプロセッサ)を用いなければならないが、これには大きな給電を必要とする。本発明のプロセス制御システムにおけるワークステーション20は、ユーザまたはプロセストランスミッタ12から与えられるプロセス制御用の種々の変数(温度T、静圧Pおよび差圧ΔP(いずれもプロセス変数)、ならびにハードウエアのパラメータおよびプロセス流体のパラメータ)に基づき、方程式[1]で表されるようなプロセス条件の参照式から、プロセス条件をきわめて正確に求めることができる。
一方、プロセストランスミッタ12は、制御室16から独立した形でプロセス条件を求めうるようになっているのが好ましい。すなわち、プロセス条件は、ワークステーション20だけで求めるのが望ましいとは限らない。したがって、ワークステーション20がプロセス条件を正確に求めうることは、常に必要なことではない。一方、ワークステーション20は、プロセス制御システム10に関連する他のタスクを達成しうる処理能力を有することも求められる。他方、プロセストランスミッタ12は、一般に、方程式[1]から満足しうるようにプロセス条件を求める能力を有していない。なぜならば、プロセストランスミッタに用いられるプロセッサは、制御室16に設置される高性能コンピュータと比較して、一般に処理速度が遅いからである。したがって、方程式[1]は、例えば、前述の米国特許第6182019号明細書(発明者Wiklund;参考として本明細書に引用する)に記載されているように簡略化される。一般に、複雑な方程式は、チェビシェフ(Chebychev)の近似多項式やカーブフィッティングを含む補間関数を用いて簡略なものにすることができる。このような簡略化された近似式は、簡単に演算しうる形(四則算等)で表すことができる。すなわち、方程式[1]は、一部の変数の参照式を、近似式(参照式を構成する複雑な多項式を大まかに模したもの)に置き換えて、下記の方程式[2]のように表すことができる。
(かっこ内に示す各変数を表す式は、それぞれの参照式を大まかに模して求める。)
ここでいう方程式[1]の各変数の近似式は、プロセス制御用の種々の変数(プロセス変数、ハードウエアのパラメータ、プロセス流体のパラメータ等)を含む簡単な多項式により表される。この近似式の形は、用いる近似(補間)の手法とプロセス変数によって決まる。この近似のための多項式には、複数の係数が含まれており、この係数の個数は、多項式の次数によって決まる(各項に1つである)。なお、方程式[1]における2つの変数Eとdは、方程式[2]においては、ただ1個の変数(プロセス変数である温度Tと複数の係数によって決まる多項式で表される)にまとめられている。再度説明すると、近似式を表す補間関数が2次の多項式からなる場合には、近似式における係数は2個である。同じく、近似式を表す補間関数が3次の多項式である場合には、係数は3個となる。このように、方程式[2]を構成する各変数の近似式に含まれる係数の個数は、静圧Pと温度T(プロセス変数)の予想される範囲や、この近似式を表す補間関数の形によって、変数ごとに異なる。これらの係数は、方程式[2]の各変数を近似的に求めるために、プロセストランスミッタ12へ与えられる。
例えば、方程式[2]における放出係数[C]は、下記の方程式[3]によって与えられる。
ここで、Rは、プライマリエレメント38のレイノルズ数である。
レイノルズ数Rは、ハードウエアのパラメータ(例えばプライマリエレメントの絞り部の径d)およびプロセス流体Fのパラメータ(粘度μと密度ρ)によって決まる。ここで、粘度μおよび密度ρは、ともに、所定の温度および圧力の下で一定である。方程式[3]は、カーブフィッティング等によって得られるが、この係数a(プロセス変数によって決まる)を含むアルゴリズム(方程式[3])を、プロセストランスミッタで計算すれば、容易に放出係数Cを求めることができる。方程式[1]における他の変数(ガス膨張因子Y等)も、同様にカーブフィッティングを含む補間関数により近似することができる。したがって、プロセス条件は、方程式[1]で要求されるような複雑な計算を行わなくても、方程式[2]における各変数を近似する簡略的なアルゴリズムに、プロセス制御用の変数を投入すれば求めることができる。
プロセストランスミッタ12には、質量流量の近似値Q'を高速で求めることができるよう、方程式[2]における各変数(例えば[C])の近似値を与えるアルゴリズム、およびこのアルゴリズムで用いる係数が伝送される。方程式[2]における変数の近似値を与えるアルゴリズムは、プロセストランスミッタ12に伝送されると、ハードコードされる。したがって、プロセストランスミッタは、方程式[2]の変数の近似値を与えるアルゴリズムと、これに用いられる複数の係数により適宜調整される。このプロセストランスミッタ12で実行されるアルゴリズム(プロセス制御用の変数の値を求めるための参照式を大まかに模したもの)に用いられる係数の値は、ワークステーション20によって決定される。ここでいうアルゴリズムは、温度と圧力の想定範囲内におけるプロセス制御用の変数(プロセス制御システム10の予想される稼動条件に基づいて、オペレータが決定する)についてのものである。また、前記の各係数は、プロセストランスミッタ12へ送られた後、プロセストランスミッタ12内の電子部品(回路モジュール)における検索テーブルに保存される。その後、センサにより検知された所定のプロセス変数(温度T、静圧Pおよび差圧ΔP)に基づいて、方程式[2]における各変数を近似的に導出するため、それぞれの変数に対応する係数が、前記の検索テーブルから呼び出される。したがって、ワークステーション20において行うような複雑な式(例えば方程式[1])によらなくても、プロセストランスミッタ12は、質量流量Q'等のプロセス条件の近似値を、許容しうるレベルの正確さで迅速に求めることができる。
本発明によれば、プロセストランスミッタがオンラインモードであるかオフラインモードであるかに拘わらず、プロセス変数のリアルタイムデータまたはシミュレーションデータを用いて、プロセストランスミッタが求める(または求めると予想される)プロセス条件の近似値が正確なものであるか否かを判定することができる。プロセストランスミッタがオフラインモードの場合、ワークステーション20は、プロセストランスミッタ12の予想される計算出力(プロセス条件に係るもの)の正確さを判定するため、プロセス変数のシミュレーションデータを用い、方程式[1]と方程式[2]の両方からプロセス条件を求める。他方、プロセストランスミッタがオンラインモードの場合、プロセストランスミッタは方程式[2]から、ワークステーション20は方程式[1]から、それぞれ、プロセス条件を求める。すなわち、本発明に係るプロセス制御システム10においては、プロセストランスミッタがオフラインモードであっても、オンラインモードであっても、それぞれ、ワークステーション20に入力されるシミュレーションデータを用いるか、またはプロセストランスミッタ12で得られるリアルタイムのデータを用いて、方程式[1]および方程式[2]からプロセス条件を求めることができる。
方程式[2]は、その係数の値を変更するだけで、プロセス制御システム10の再調整を図ることができるようになっている。例えば、プロセス流体Fの温度と圧力が所期の稼動条件(または動作範囲)から外れると、前述の検索テーブルに保存されている係数の値からは、プロセス条件の正確な値を割り出すことができなくなる。特に、プロセス流体の物理的条件が変化すると、プロセス流体の密度の近似式[ρ1/2]を、新たに構成し直すことは困難である。本発明は、種々の機器を経由する産業プロセス一般のプロセス制御システムに係り、プロセストランスミッタで計算されるプロセス条件の近似値の正確さを迅速に判定する方法、およびこの方法を実施しうるプロセス制御システムを提供する。本発明の方法およびプロセス制御システムにおいては、プロセストランスミッタで計算されるプロセス条件の近似値が正確でない場合には、プロセストランスミッタでの計算の元となるプロセス条件の近似式に含まれる変数(簡単な多項式で近似的に表される)における係数の調整値をプロセストランスミッタに与えるようになっている。さらに、本発明の方法とプロセス制御システムにおいては、方程式[2]で用いられるような係数をつくり出す元となる参照式(プロセストランスミッタ12にハードコードされている)が適当でなくなった場合には、別の参照式に置き換える。
図2は、図1に示すプロセストランスミッタ12の圧力センサモジュール32および回路モジュール34、ならびに制御室16に設置されるワークステーション20の回路図である。圧力センサモジュール32は、ひずみゲージタイプの絶対圧センサ46、差圧センサ48、温度センサ50、アナログ回路、およびセンサプロセッサユニットを備えている。一方、回路モジュール34は、出力回路を備えている。上記のアナログ回路には、信号調整回路(信号調整フィルタ)52、コンバータ回路54,およびプラチナ抵抗式サーモメータ(PRT;Platinum Resistance Thermometer)56が含まれている。一方、センサプロセッサユニットには、マイクロプロセッサ58,メモリ(EEPROM)60、およびクロック62が含まれている。また、上記回路モジュール34の出力回路には、マイクロプロセッサ64、メモリ(NVRAM)66、および通信回路68が含まれている。他方、ワークステーション20には、マイクロプロセッサ70、入力装置72、出力装置74、メモリ76、周辺機器78、および通信インターフェース80が装備されている。
絶対圧センサ46は、配管14(図1参照)内におけるプロセス流体Fのライン圧または静圧Pを検知する。一方、差圧センサ48(一般に静電容量型)は、配管14に設けられたプライマリエレメント38の前後における差圧ΔPを検知する。温度センサ(一般に測温抵抗体(RTD))50は、配管14内におけるプロセス流体Fのプロセス温度Tを検知する。絶対圧、差圧および温度の各センサ46,48,50からのアナログ出力は、信号を増幅・調整する(フィルタリングを施す)信号調整回路52へ送られる。コンバータ回路54は、各センサ46,48,50で生成されたアナログ信号を、マイクロプロセッサ58が扱いうるデジタル信号へ変換する。図2に示すように、コンバータ回路54は、アナログ入力電圧をデジタル出力に変換するV/Dコンバータと、アナログ入力静電容量をデジタル出力に変換するC/Dコンバータとを備えている。温度が変動したときには、絶対圧(ゲージ圧のこともある)および差圧を示す電気信号を補償しうるよう、プラチナ抵抗式サーモメータ(PRT)56は、絶対圧センサ46と差圧センサ48の近傍における温度を示す電気信号を、コンバータ回路54へ与える。マイクロプロセッサ58は、デジタル化されかつフィルタリングを施された各センサ信号をコンバータ回路54から受け取る。マイクロプロセッサ58は、各センサ信号を補償するとともに、メモリ60に保存されている補正定数を用いて各センサ信号に固有の誤差や非線型性を正し、センサ信号を線型化する。クロック62は、マイクロプロセッサ58にクロック信号を与える。その後、デジタル化され、補償および誤差の修正を受けたセンサ信号は、圧力センサモジュール32のマイクロプロセッサ58から、回路モジュール34のマイクロプロセッサ64へ送られる。
マイクロプロセッサ64は、センサ信号を解析し、プロセス流体のプロセス条件を割り出す。一方、メモリ66(特に、不揮発性メモリ(NVRAM))は、検索テーブルを有しており、この検索テーブルには、前述のアルゴリズム(プロセス変数(温度T、静圧P、差圧ΔP)の検知された値に基づいて、プロセス条件の近似値(質量流量Q'等)を求めるために用いられる)における係数が保存される。ハードウエアのパラメータ(プライマリエレメント38のタイプや孔dの径)およびプロセス流体のパラメータ(粘度μや密度ρ)は、制御室16から制御ループ18を介して、メモリ66へ送られる。ハードウエアとプロセス流体のパラメータは、このルート以外に、プロセストランスミッタ12と直接接続されたユーザインターフェース(図2には示していない)を介して、メモリ66へ送ることもできる。さらに、プロセス流体の一部のパラメータは、プロセス変数の関数として検索テーブルに保存しておき、検知されたプロセス変数に基づいてこのパラメータの値を計算するとともに、メモリ66に保存されているプロセス流体のこれ以外のパラメータの値と併せて、プロセス条件の近似値を求めるようにすることもできる。
プロセストランスミッタ12のマイクロプロセッサ64は、ハードウエアのパラメータ、プロセス流体のパラメータ、検知されたプロセス変数、およびアルゴリズムの係数を用いて、リアルタイムの計算を行うことができる。ここでいうリアルタイムの計算とは、方程式[2]のようなプロセス条件の近似式から、プロセス流体の質量流量Q'等のプロセス条件の近似値を求めることをいう。プロセス条件の近似値を表す信号およびセンサ信号は、ともに通信回路68から、制御ループ18を介してワークステーション20へ送られる。通信回路68は、電圧レギュレータ68A、モジュレータ回路68B、ループカレントコントローラ68Cおよびプロトコルレシーバ68D(HART(登録商標)4〜20mAレシーバ兼トランシーバ)を備えている。通信回路68は、回路モジュール34を、制御室16にあるワークステーション20の通信インターフェース80と電気的に接続させるためのものである。プロセストランスミッタ12のセンサモジュール32および回路モジュール34についての詳細は、先述の米国特許第6182019号および同第5495769号の各明細書を参照されたい。
ワークステーション20は、制御室16内に設けられ、電源22と接続されている。一般に、ワークステーション20は、プロセス変数およびプロセス条件の監視・制御を行いうるよう、対象とする産業プロセスの近傍に設置されるモバイルパソコンである。ワークステーション20は、オペレータがプロセス制御用の変数をメモリ76に入力しうるよう、キーボードやマウスを含むユーザインターフェース式の入力装置72を備えている。また、ワークステーション20は、マイクロプロセッサ70からデータを抽出しうる出力装置74(ディスプレイ等)も備えている。この外、周辺機器78(マイクロプロセッサ70との間でデータの入出力を行うために用いられるプリンタその他の装置)も、ワークステーション20に装備されている。さらに、ワークステーション20は、マイクロプロセッサ64との間でデータを送受信する通信インターフェース80も備えている。
ワークステーション20は、プロセストランスミッタ12と接続されている場合には、センサモジュール32における絶対圧センサ46、差圧センサ48および温度センサ50によって生成されたセンサ信号を、すべて解析・評価する。一方、ワークステーション20は、プロセストランスミッタ12と接続されていない場合にも、プロセストランスミッタ12の回路モジュール34が行うこととなる各センサ信号の解析・評価の正確性を判定することができる。すなわち、ワークステーション20マイクロプロセッサ70は、メモリ76に保存されている簡易ルーチン(プロセストランスミッタ12によって実行される簡略的なルーチンをエミュレートしたもの)を用いて、ユーザによってワークステーション20に入力されたプロセス制御用の変数(シミュレーションデータ;プロセストランスミッタ12にも送られる)に基づき、方程式[1]〜[3]からプロセス条件を求めることができる。
この外、プロセストランスミッタ12がオンライン状態にあっても、圧力と温度のシミュレーションデータ(T、PおよびΔP)を、ワークステーション20から制御ループ18を介して、プロセストランスミッタ12のメモリ66へ送ることができる(「オンラインテストモード」と呼ぶ)。この際、ユーザは、ハードウエアのパラメータ(プライマリエレメント38の各寸法等)、およびプロセス流体Fのパラメータ(密度ρや粘度μ等)を、入力装置72を介して、メモリ76へ入力する。入力されたハードウエアのパラメータおよびプロセス流体Fのパラメータは、制御ループ18を介して、プロセストランスミッタ12のメモリ66へ送られる。したがって、回路モジュール34のマイクロプロセッサ64は、メモリ66から、プロセス条件の近似値(プロセス流体の質量流量Q'等)の推定に必要な情報(シミュレーションデータ)を取り入れることができる。マイクロプロセッサ64は、与えられたシミュレーションデータの下でプロセス条件の値をできる限り正確に求めるべく、メモリ66の検索テーブルから必要な情報を取り出しつつ、方程式[2]を使って、プロセス条件の近似値を求める。回路モジュール34における通信回路68は、マイクロプロセッサ64が求めたプロセス条件の近似値を表す信号を、制御室16のマイクロプロセッサ70へ送る。マイクロプロセッサ70は、ハードウエアのパラメータ、プロセス流体のパラメータ、およびシミュレーションデータであるセンサ信号を用い、方程式[1] (各変数の参照式で表される)からプロセス条件の参照値を求め、これを表す信号を生成する。ついで、ワークステーション20は、このプロセス条件の参照値を、プロセストランスミッタ12から出力されたプロセス条件の近似値と対比することにより、プロセス条件の近似値を与えるプロセス条件の近似式の妥当性を判定する。その結果に応じて、必要ならば、プロセストランスミッタ12またはプロセス制御システム10に調整を加える。例えば、プライマリエレメント38を別のパラメータをもつものに取り替えたり、メモリ66内に保存されているアルゴリズムの係数(例えば、温度と圧力の予想範囲内で排出係数の近似値[C]を求めるのに用いられるアルゴリズムの係数)を変更したりする。ワークステーション20は、シミュレーションデータに基づくプロセス条件の近似値の正確さを判定するとともに、もう一方で、この判定をプロセス制御システム10全体の調整に利用する。したがって、プロセストランスミッタがオンラインモードで、かつシミュレーションデータを用いる場合、プロセス制御システム10は、産業プロセスを自動制御するためというよりも、むしろ手動で制御するために利用される。なお、産業プロセスが誤って警報を発したり、正確さに保証のない措置を講じたりするのを回避するための設定は、シミュレーションデータよりも実際のデータを用いて行う。
上記の外、オンラインモードは、各センサからのセンサ信号(リアルタイムのプロセス変数の値)を用いて、プロセストランスミッタ12のパフォーマンスをリアルタイムで評価するために用いられる。まず、ユーザは、入力装置72を介して、ハードウエアのパラメータとプロセス流体のパラメータをメモリ76へ保存する。一方、プロセストランスミッタ12から得られる温度T、静圧Pおよび差圧ΔP(プロセス変数)のリアルタイムのデータも、制御ループ18を介してワークステーション20へ送られ、メモリ76に保存される。ついで、マイクロプロセッサ70は、プロセストランスミッタ12から、プロセス条件の近似値(マイクロプロセッサ64が求めたリアルタイムの計算値)を表す信号を受け取る。したがって、マイクロプロセッサ70は、プロセス条件の参照値(質量流量Q等)を求めるのに必要な情報(リアルタイムのデータ)を得ることができる。マイクロプロセッサ70は、方程式[1]を使って、できるだけ正確にプロセス条件の参照値を求める。この後、このプロセス条件の参照値を基に、プロセストランスミッタ12が出力するリアルタイムの計算値(プロセス条件の近似値)の正確さを判定し、必要に応じ、プロセストランスミッタ12またはプロセス制御10に対する調整を行う。
プロセストランスミッタ12がオフラインモードの場合、ユーザは、入力装置72を通じて、プロセス制御用の変数(ハードウエアのパラメータ、プロセス流体のパラメータ、およびプロセス変数のシミュレーションデータ)をメモリ76に入力する。したがって、ユーザは、プロセス制御システム10の初期設定に先立って、プロセストランスミッタをオンライン状態にしなくても、制御室のコンピュータ(ワークステーション)を使って、プロセストランスミッタが所期のプロセス条件値を出力しうるか否かを検証することができる。これは、プロセストランスミッタ12を制御室16に接続し、プロセス制御用の変数をプロセストランスミッタ12へ送る時間を省けることを意味する。また、マイクロプロセッサ70は、入力されたプロセス制御用の変数を基に、プロセス条件の参照式として用いられる方程式[1]が、プロセス条件の正確な参照値を求めうるものであるか否かを判定する。さらに、マイクロプロセッサ70は、ユーザが入力するプロセス制御用の変数を利用して、方程式[2]で用いるアルゴリズム(変数を求めるための簡単な多項式)における係数を求めるために種々の数値計算を行う。例えば、マイクロプロセッサ70は、カーブフィッティングを利用して、前述の方程式[3](放出係数[C]を近似的に表す多項式)を導出する。加えて、マイクロプロセッサ70は、得られたアルゴリズムの係数の下に、プロセストランスミッタ12が行うリアルタイムの計算(方程式[2])をエミュレートし、プロセス条件の近似値を表す信号を生成する。ついで、マイクロプロセッサ70は、方程式[1]から求めたプロセス条件の参照値を表す信号を、方程式[2]から求めたロセス条件の近似値を表す信号と対比する。この結果から、プロセス制御システム10を初期設定しかつプロセストランスミッタ12をオンライン状態にする前に、必要に応じて、ハードウエアのパラメータ、プロセス流体のパラメータ、プロセス条件の近似式の形またはこれに用いられる係数(マイクロプロセッサ64の検索テーブルに保存されている)を調整する。
図3は、図1に示すプロセストランスミッタ12と、図2に示す制御室のワークステーション20とを結ぶフィードバックループ(プロセス制御システム10を自動制御する)を表す流れ図である。プロセストランスミッタ12が行うリアルタイムの計算結果を判定した後、ワークステーション20からの出力により、プロセス制御システム10を構成する種々の機器の初期設定や調整を行う。例えば、プロセストランスミッタ12がワークステーション20とオンライン状態にあるときには、ワークステーション20のマイクロプロセッサ70は、自らの出力(プロセス条件の参照値)をプロセストランスミッタ12の出力(プロセス条件の近似値)と対比し、この近似値の正確さを判定する。一方、プロセストランスミッタ12がワークステーション20とオフライン状態のときには、ワークステーション20において、プロセストランスミッタが行うリアルタイム計算をエミュレートしてシミュレーション結果を出し、プロセストランスミッタがプロセス条件の正確な近似値を出力しうるか否かを判定する。
図3に示す工程100においては、所与のプロセス制御システムにおいて、プロセス制御用の変数をどのようなものにするかを決定する。例えば、プロセス制御システム10内で調整しうるプロセス流体Fのパラメータ(粘度μ、密度ρ等)を、プロセス制御用の変数とすることができる。つぎに、所定のパラメータをもつプロセス流体Fを前提として、ハードウエアのパラメータ(プライマリエレメント38における孔の径dの大きさや、どの程度までの差圧を検知しうる差圧センサを用いるか等)、および産業プロセスの予想される動作範囲を選択する。さらに、プロセス制御システム10の稼動条件に近似した、プロセス変数(温度T、静圧P、差圧ΔP等)のシミュレーションデータを選択する。つぎに、矢印102で示すように、すでに選択してあるプロセス制御用の変数について、その値を、入力装置72を介してワークステーション20のメモリ76に保存する。この保存は、ユーザが、ワークステーション20にインストールされているソフトウエアからの指示に従って入力装置72を通じて行う形式の外に、ワークステーション20が、メモリ76内にすでに保存されているファイル(所定のテストパラメータも収めている)からデータを取り込んで行うこともできる。このように、メモリ76を経由して、マイクロプロセッサ70に、リアルタイムの計算をエミュレートするためのシミュレーションデータを送る。他方、上記のシミュレーションデータとは別に、破線の矢印104で示すように、リアルタイムの計算結果(プロセス変数の実際の値に基づくプロセス条件の近似的な値)の正確さを判定するため、プロセス変数の実際の値(リアルタイム値)を、プロセストランスミッタ12から、ワークステーション20のメモリ76へ送る。
工程106においては、マイクロプロセッサ70は、メモリ76へ与えられたプロセス制御用の変数の入力データを用いて、プロセス条件の参照式から、プロセス条件の参照値を表す信号を生成する。プロセス条件の参照式(例えば方程式[1])は、プロセス条件(プロセス流体Fの質量流量Qm等)の参照値を求めるために用いる。マイクロプロセッサ70は、質量流量Qmの参照値を正確なものにするため、倍精度型の整数演算を行う。ワークステーション20は、外部電源22に接続されているため(図2参照)、マイクロプロセッサ70は、必要に応じて、高速の演算を行いうる構成にすることができる。マイクロプロセッサ70は、温度と圧力の予想される範囲、およびすでに設定されたプロセス制御用の変数の下、種々の補間手法を用いて、プロセス条件の近似式に現れる変数を与える多項式の形、およびこの多項式で用いる係数を定める。例えば、矢印108で示すように、放出係数[Cd](方程式[3]により表される)は、カーブフィッティングにより求める。方程式[3]の形を決める際には、マイクロプロセッサ70において、各変数を表す多項式で用いる複数の係数からなる組をつくる。方程式[3]の形を決めた後は、これをマイクロプロセッサ70自身で使用するとともに、プロセストランスミッタ12へも送る。
工程110においては、マイクロプロセッサ70は、プロセストランスミッタにおけるリアルタイムの計算をエミュレートすることによって、プロセス条件の近似値を求め、これを表す電気信号を生成する。プロセス条件の近似値を求める際、マイクロプロセッサ70は、入力装置72を介してメモリ76へ保存されたプロセス制御用の変数、および同じくメモリ76に保存されている係数(カーブフィッティングにより求めたもの)を用いる。プロセス条件の近似式(例えば、プロセス流体Fの質量流量の近似値Q'を求めるための方程式[2])は、アルゴリズムの係数を与えることにより完成し、プロセス制御用の変数を投入すれば、プロセス条件の近似値を求めることができる。マイクロプロセッサ70は、浮動小数点数演算を行って、プロセス条件の近似式から、プロセス条件の近似値Q'を自ら計算し、プロセストランスミッタの回路モジュール34が、プロセス条件の近似値として、どのような値を算出するのかを推測する。なお、プロセストランスミッタ12のマイクロプロセッサ64は、制御ループ18を通じてのみ給電を受けうるように構成されている(図2参照)。一方、マイクロプロセッサ70は、倍精度型整数演算によっても、プロセス条件の近似値の正確さを判定することができる。他方、工程112(破線で囲んである)に示すように、マイクロプロセッサ70には、プロセストランスミッタ12が実行したリアルタイム演算の結果(プロセス条件の近似値)を表す信号も送られるため、このルートを通じても、マイクロプロセッサ70は、そのプロセス条件の近似値の正確さを判断することができる。ワークステーションのマイクロプロセッサ70とは別に、プロセストランスミッタ12は、プロセス制御用の変数(ユーザが入力装置72を介してワークステーション20へ与え、矢印113で示すように、プロセストランスミッタ12へも送られたもの。センサ信号から送られるプロセス変数のシミュレーションデータを含む。)を使って、プロセス条件の近似値を表す信号を生成する。プロセストランスミッタ12へ送られるシミュレーションデータ(矢印113で示す)は、ユーザがワークステーション20へ入力するか、またはマイクロプロセッサ70のテストプログラム等で自動的につくり出す。プロセストランスミッタ12のパフォーマンスのテストは、ユーザが必要と判断したときに行うことも、定期的に行うテストプログラム(自動的に実行される)の一環として行うこともできる。
工程114においては、マイクロプロセッサ70は、プロセス条件の近似値を表す信号を、プロセス条件の参照値を表す信号と比較する。この結果、近似式によって与えられる質量流量の近似値Q'(シミュレーションデータによるもの)が、プロセス条件の参照式から求められる質量流量の参照値Qよりも大きいか小さいかが分かる。ついで工程116において、両値の差から、正確度信号を生成する。この後、工程118において、正確度信号に基づき、プロセス制御システム10の調整が必要か否かを判定する。正確度信号は、ワークステーション20が自動的に対比するようになっているため、ユーザは、正確度信号を取得するために特別な操作を行う必要はない。一例として、プロセス条件の近似値は、プロセス条件の参照値の±1%の範囲内に収まることが正確さの基準となる。仮に両値の差が、この範囲内に収まるならば、プロセス制御システム10は、適正に設定されており、プロセストランスミッタをオンライン状態にしてもよいと判定される。他方、両値の差が±1%の範囲を超えるならば、プロセス制御システム10は、再設定が必要であると判定される。
ここで、両値の差が大きすぎる場合には、プロス条件の近似式(自体が適切でないという可能性がある。この場合、工程118において、プロセスの動作範囲に係るプロセス制御用の変数を変更したり、プロセス条件の参照式中の変数について別の参照式を用いたりして、新たな近似式の下で、プロセス条件の近似値を再度計算する。この際、プロセストランスミッタのメモリ66とワークステーションのメモリ76の各検索テーブルに保存されているアルゴリズムの係数は、変更される。しかし、上記質量流量の参照値Qと近似値Q'の差は、プロセス制御システム10の実際の稼動条件が、予想される稼動条件(または動作範囲:これを超えたらプロセス制御システム10の再設定が必要とされる範囲)と異なるために生じている可能性もある。この場合、プロセス制御システム10に使用されるハードウエアを別のものに取り替える。例えば、プライマリエレメント38をベンチュリタイプからオリフィスタイプに替える等である(矢印120参照)。静圧センサは、一般に、約800psi(1平方インチ当たり約800ポンドの圧力;5500kPaに相当)または約3600psi(24800kPaに相当)まで検知できる。他方、差圧センサは、一般に、約25inH2O(水柱換算で約25インチの圧力差(6.2kPaに相当))、約250inH2O(62.2kPaに相当)または約1000inH2O(約248.6kPaに相当)までの差圧を検知できる。したがって、矢印120に示すように、プロセストランスミッタ12を、プロセス制御システム10の実際の稼動条件下での使用に適した圧力センサモジュールを備えるものに取り替えることもできる。
プロセストランスミッタのパフォーマンスを評価する上で、本発明に係る方法は、従来のものよりも種々の点で優れている。第一に、ワークステーション20に、プロセストランスミッタにおけるリアルタイム計算をエミュレートするソフトウエアをインストールするため、ワークステーション20を常時プロセストランスミッタ12に接続し、かつプロセストランスミッタ12をオンライン状態にして、情報をやり取りしうる必要はない。すなわち、ワークステーション20は、プロセストランスミッタ12に接続しなくても、そのリアルタイム計算をエミュレートすることによって、プロセストランスミッタ12のパフォーマンスを評価することができる。特に、ワークステーション20がモバイルパソコンである場合、プロセス制御システム10のパフォーマンスを、産業プロセスの現場から離れた場所(市街のオフィス、ミーティング会場、営業のプレゼンテーションの場等)で、監視・評価することができる。第二に、ワークステーション20には、プロセス条件の参照式(プロセストランスミッタによるリアルタイム計算値が正確か否かを判定する際の拠り所となるもの)が適当であるか否かを判定できるソフトウエアがインストールされているため、プロセストランスミッタのパフォーマンスを判定するために、データを人為的につくり出す必要はない。
ワークステーション20は、プロセス条件の参照値と、プロセス条件の近似値(プロセストランスミッタによるリアルタイムの計算値、またはシミュレーションデータを使ってワークステーションでつくり出す値)とを自動的に比較するように設定することもできる。また、両値(最終的なプロセス条件の値)を比較するだけなく、プロセス条件を導き出す際(中間的な過程)に現れる変数の参照式による値と近似式による値とを対比しうるように設定することもできる。質量流量を例にとっていうと、プロセス条件の参照値Qと近似値Q'を対比するだけでなく、プロセス条件の参照式に現れる変数、例えば密度ρの平方根(ρ1/2)の参照式による値および近似式による値[ρ1/2]の対比や、放出係数Cの参照式による値および近似式による値[C]の対比等も行うことができるのである。対比した結果は、ワークステーション20のメモリ76に保存される。プロセス条件の参照式に現れる変数の参照式による値と近似式による値の比較は、ワークステーション20においてリアルタイムで行われるため、オペレータは、プロセス制御システム10における種々のパラメータ(変数の近似式に現れる係数等)を変更した場合の効果を確認することができる。すなわち、温度Tおよび静圧Pの特定の範囲において、プロセス条件の参照値と近似値の差が、どの変数のどの係数に起因するかを特定することができる。さらに、ワークステーション20は、プロセス条件の近似式を立てるに当たって前提とした諸条件をディスプレイに表示して、オペレータが、この前提条件がプロセス条件の近似式の正確さに影響しているか否かを検証しうるようにすることができる。換言すれば、ワークステーション20は、オペレータが、温度および圧力の大まかな予想範囲と、この予想範囲よりも狭い温度・圧力範囲を前提として定められるプロセス条件の近似式について、両範囲(大まかな範囲と狭い範囲)の適切なバランスを定める際に、これを助けることができる(矢印122参照)。
一方、メモリ76の格納テーブルには、所与のプロセス制御用の変数の下で方程式[1]、方程式[2]、方程式[3]等を用いて得られたプロセス条件および各変数の値を保存する。つぎに、プロセストランスミッタ12における回路モジュール34のパフォーマンスをユーザに知らせるため、出力装置74および周辺機器78が用いて、レポートを作成する。このレポートは、ワークステーション20のモニタ画面等に局所的に表示したり、後の参照のためにプリンタに打ち出したりすることができる。また、このレポートの内容から、プロセス条件の計算結果をグラフィック表示したり、ユーザが各種のデータを評価する際の便宜を図るため、計算の中間過程における種々の変数の値をグラフィック表示したりすることもできる。このレポートは、プロセス制御システム10について必要な調整や修正を行うに用いられる。例えば、プライマリエレメント38は、プロセス制御システム10の実際の稼動条件の下で最適に作動しうる機器(同様の役割を果たすもの)に置き換えることができる。また、プロセストランスミッタの回路モジュール34で実行される各変数の値を求めるための近似アルゴリズムは、別のアルゴリズムがハードコードされたプロセストランスミッタ12に取り替えることによって調整することもできる。さらに、検索テーブルから呼び出す近似アルゴリズムの係数を調整したり、同じく近似アルゴリズムを得る際のカーブフィッティング(補間関数)の形状を変えたりして、プロセス条件の近似値を表す信号を調整することもできる。この外、プロセス流体を別のものに代えることもできる(矢印124参照)。上記のレポートは、対象とする産業プロセスを、業界標準または政府の定めた規格に合致させるためにも使用される。さらに、ワークステーション20は、プロセス制御システム10またはプロセストランスミッタ12が、それぞれ、どのような稼動または動作条件の下ならば、米国ガス協会(AGA)規格を逸脱することがないようにできるかを検証することもできる。
以上、本発明を、実施形態を参照して説明してきたが、当業者ならば、本発明に係る発明特定事項は、本発明の技術的範囲を逸脱しない範囲で、均等なものに置き換えたり、修正を加えたりしうることが分かるであろう。また、発明特定事項は、種々の状況や産業プロセスの構成要素に応じて、本発明の要旨の範囲内で、適宜変更を加えることができる。本発明の技術的範囲は、本明細書に掲げた特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に含まれるすべての態様に及ぶ。

Claims (33)

  1. 産業プロセスを制御するシステムにおいて、プロセス条件の計算式の正確さを判定する方法であって、
    産業プロセス制御のワークステーションで、プロセス条件の参照式とシミュレーションデータを含むプロセス制御用の変数を用いて計算したプロセス流体のプロセス条件の参照値を表す信号を生成する工程と、
    産業プロセス制御のワークステーションで、前記プロセス制御用の変数の下で、前記プロセス条件の参照式を近似するプロセス条件の近似式を生成する工程であって、前記プロセス条件の近似式は、前記産業プロセス制御のワークステーションから離れた位置の産業用プロセスのトランスミッタによって計算されるトランスミッタの式である工程と、
    前記プロセス条件の近似式に用いる係数を定める工程と、
    産業プロセス制御のワークステーションで、前記プロセス条件の近似式と前記プロセス制御用の変数と前記近似式に用いる係数に基づいて計算したプロセス流体のプロセス条件の近似値を表す信号を生成する工程と、
    前記システムを調整するために、前記プロセス条件の近似値を表す信号を、プロセス条件の参照値を表す信号と対比し、前記プロセス条件の近似値の正確度信号を生成する工程とを含む方法。
  2. 前記プロセス条件の参照値を表す信号と前記プロセス条件の近似値を表す信号との差が縮小するよう、前記プロセス条件の近似値を表す信号を再生成して前記プロセス条件の近似式に用いる係数を調整するために、前記正確度信号を用いる工程をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
  3. 前記プロセス条件の近似式に用いる調整された係数を、前記トランスミッタの式を再計算するために前記産業プロセス制御のワークステーションに接続されたプロセス制御ネットワークを介して、前記プロセストランスミッタ内の前記プロセストランスミッタの電子部品に伝送する工程をさらに含むことを特徴とする請求項2に記載の方法。
  4. 前記プロセス条件の近似式に用いる係数は、前記プロセストランスミッタの電子部品が、前記プロセス制御ネットワークとオフライン状態にある間に調整されるようになっていることを特徴とする請求項に記載の方法。
  5. 記プロセストランスミッタ内の前記プロセストランスミッタの電子部品がプロセス条件の近似値を表す信号を生成することを特徴とする請求項に記載の方法。
  6. 前記産業用プロセスのプロセストランスミッタの電子部品において、前記トランスミッタの式を用いて、前記プロセス制御用の変数、前記プロセス条件の近似式に用いる調整された係数、および検知されたプロセス変数に基づき、プロセス条件の近似値を計算する工程をさらに含むことを特徴とする請求項5に記載の方法。
  7. 前記プロセス条件の参照式は、下記数4で表されることを特徴とする請求項に記載の方法。
    (ここで、Qmは質量流量(質量の単位/単位時間)、
    Nは単位変換因子(単位は種々に変わる)、
    dは排出係数(無次元数)、
    1はガス膨張因子(無次元数)、
    Eはアプローチ因子の速度(無次元数)、
    dはプライマリエレメントにおける絞り部の径(長さの単位)、
    ρは密度(質量の単位/単位体積)、
    ΔPは差圧(力の単位/単位面積)である。)
  8. 前記プロセス条件の近似式は、下記数5で表されることを特徴とする請求項に記載の方法。
    (かっこ内に示す各変数を表す式は、それぞれの参照式を大まかに模して求める。)
  9. 前記プロセス条件の近似式においてかっこ内に示す各変数を表す式は、カーブフィッティングを含む補間技法を用いて、それぞれの参照式を大まかに模して求めるようになっていることを特徴とする請求項に記載の方法。
  10. 前記プロセス条件の近似値を表す信号は浮動小数点数演算により、前記プロセス条件の参照値を表す信号は整数演算により、それぞれ生成されるようになっていることを特徴とする請求項に記載の方法。
  11. 前記プロセストランスミッタの電子部品は、前記プロセス制御ネットワークを介して給電を受け、前記プロセス制御ネットワークは、4〜20mAカレントループ、フィールドバス、プロフィバス(Profibus)およびモドバス(Modbus)からなる群より選択されるようになっていることを特徴とする請求項に記載の方法。
  12. 前記プロセス条件の参照値を表す信号の値と、前記プロセス条件の近似値を表す信号の値をメモリに保存する工程をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
  13. 前記プロセス条件の参照値を表す信号と前記プロセス条件の近似値を表す信号を対比したレポートを作成する工程をさらに含むことを特徴とする請求項12に記載の方法。
  14. さらに、前記プロセス制御用の変数は、プロセス変数のシミュレーションデータ、前記システムにおけるハードウエアのオリジナルパラメータ、産業プロセスの動作範囲、およびプロセス流体のパラメータのうち少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
  15. 前記正確度信号に基づいて、前記ハードウエアのオリジナルパラメータを代替パラメータに置き換える工程をさらに含むことを特徴とする請求項14に記載の方法。
  16. 前記ハードウエアの前記代替パラメータは、オリフィスプレートおよびベンチュリからなる集合から選択されたプライマリエレメントまたは産業用プロセストランスミッタに係り、前記ハードウエアの前記オリジナルパラメータとは異なる範囲を含むパラメータであることを特徴とする請求項15に記載の方法。
  17. プロセストランスミッタを遠隔操作しうるようになっている産業プロセス制御用のワークステーションであって、
    プロセス制御ネットワークと接続する通信回路と、
    プロセス制御用の変数を入力するためのユーザインターフェースと、
    前記通信回路およびユーザインターフェースに接続し、プロセスのシミュレーションプロセス条件を決定するシミュレーションデータを含むプロセス制御用の変数の下で、プロセス条件の参照式を判定し、プロセス条件の参照式と前記プロセス制御用の変数に基づいて、プロセス条件の参照値を表し、前記シミュレーションプロセス条件を示す信号を生成し、前記プロセス制御用の変数と近似式に用いられ、前記プロセス制御ネットワークとはオフライン状態の産業プロセスのトランスミッタによって計算されたプロセス条件をエミュレートする前記プロセスのプロセス条件の近似値を決定する係数とを用いてプロセス条件の近似式を計算し、前記プロセス条件の参照式を近似するプロセス条件の近似式に用いられる係数、および前記プロセス制御用の変数に基づいて、プロセス条件の近似値を表す信号を生成するマイクロプロセッサとを備えるワークステーション。
  18. 前記マイクロプロセッサは、プロセス条件の近似値を表す信号を、プロセス条件の参照値を表す信号と対比するようになっていることを特徴とする請求項17に記載のワークステーション。
  19. 前記マイクロプロセッサは、前記プロセス条件の参照値を表す信号の値と、前記プロセス条件の近似値を表す信号の値とをメモリに保存し、かつ前記プロセス条件の参照値を表す信号と前記プロセス条件の近似値を表す信号を対比したレポートを作成するようになっていることを特徴とする請求項18に記載のワークステーション。
  20. 前記マイクロプロセッサは、前記プロセス条件の参照式を大まかに模するカーブフィッティングを含む補間技法を用いて、前記プロセス条件の近似式に用いられる係数をつくり出すようになっていることを特徴とする請求項18に記載のワークステーション。
  21. 前記プロセス条件の参照式は下記数6により、前記プロセス条件の近似式は下記数7により、それぞれ表されることを特徴とする請求項20に記載のワークステーション。
    (ここで、Qmは質量流量(質量の単位/単位時間)、
    Nは単位変換因子(単位は種々に変わる)、
    dは排出係数(無次元数)、
    1はガス膨張因子(無次元数)、
    Eはアプローチ因子の速度(無次元数)、
    dはプライマリエレメントにおける絞り部の径(長さの単位)、
    ρは密度(質量の単位/単位体積)、
    ΔPは差圧(力の単位/単位面積)である。)
    (かっこ内に示す各変数を表す式は、それぞれの参照式を大まかに模して求める。)
  22. 前記マイクロプロセッサは、前記プロセス条件の参照値を表す信号と前記プロセス条件の近似値を表す信号との差を縮小させるように、前記プロセス条件の近似式に用いられる係数を調整するようになっていることを特徴とする請求項18に記載のワークステーション。
  23. 前記プロセス条件の近似式に用いられる調整された係数は、前記通信回路とプロセス制御ネットワークを介して、前記プロセストランスミッタの電子部品に伝送され、かつこのプロセストランスミッタの電子部品により、前記プロセス制御用の変数および検知されたプロセス変数に基づいて、プロセス条件の近似式からプロセス条件の近似値を計算するために用いられるようになっていることを特徴とする請求項22に記載のワークステーション。
  24. 前記マイクロプロセッサは、前記プロセス条件の近似値を表す信号が、プロセス条件の参照値を表す信号との対比において、ユーザが特定した正確さの範囲内に収まるように、前記プロセス条件の近似式に用いられる係数を調整するようになっていることを特徴とする請求項22に記載のワークステーション。
  25. 産業プロセス制御システムであって、
    プロセス制御ネットワークと、
    前記プロセス制御ネットワークと接続されたプロセストランスミッタであって、
    産業プロセスのプロセス変数を計測し、このプロセス変数の値を表すセンサ信号を生成するセンサ、および
    前記センサと接続され、前記センサ信号を調整し、トランスミッタの係数を含むトランスミッタの式に基づくプロセス条件の近似値を表す信号を生成するとともに、このプロセス条件の近似値を表す信号と前記調整されたセンサ信号を、前記プロセス制御ネットワークを経由して伝送するようになっている回路モジュールを含むプロセストランスミッタと、
    前記プロセストランスミッタから所定の距離を隔てた箇所に設置されるワークステーションであって、前記プロセス制御ネットワークに接続され、プロセス条件の参照式とシミュレーションプロセス条件を含むプロセス制御用の変数に基づいてプロセス条件の参照値を表す信号、ならびにトランスミッタの式および前記プロセストランスミッタの回路モジュールで生成されるプロセス条件の近似式を、シミュレーションプロセス条件および近似値の係数を含む近似式を用いてエミュレートしてプロセス条件の近似値を表す信号を生成しうるデジタル式のプロセッサを含むワークステーションとを備える産業プロセス制御システム。
  26. 前記プロセス制御用の変数を入力しうるよう、前記デジタル式のプロセッサに接続されたユーザインターフェースをさらに備えることを特徴とする請求項25に記載の産業プロセス制御システム。
  27. 前記プロセス条件の参照値を表す信号の値、前記プロセス条件の近似値を表す信号の値、およびプロセス条件をシミュレートした値を保存しうるメモリをさらに備えることを特徴とする請求項26に記載の産業プロセス制御システム。
  28. 前記ワークステーションのプロセッサは、前記メモリに保存された値に基づくレポートを作成するようになっていることを特徴とする請求項27に記載の産業プロセス制御システム。
  29. 前記ワークステーションのプロセッサは、前記プロセストランスミッタが前記プロセス制御ネットワークとオンライン状態にある間に、前記プロセス条件の参照値を表す信号の値と、前記プロセス条件をシミュレートした値とを対比するようになっていることを特徴とする請求項27に記載の産業プロセス制御システム。
  30. 前記プロセス条件をシミュレートした値は、前記ワークステーションのプロセッサに提供されるシミュレーションデータを用いてつくり出されるようになっていることを特徴とする請求項29に記載の産業プロセス制御システム。
  31. 前記ワークステーションのプロセッサは、前記プロセストランスミッタが前記プロセス制御ネットワークとオフライン状態にある間に、前記プロセス条件の参照値を表す信号と、前記プロセストランスミッタの回路モジュールが生成したプロセス条件の近似値を表す信号とを対比するようになっていることを特徴とする請求項27に記載の産業プロセス制御システム。
  32. 前記ワークステーションのプロセッサは、前記トランスミッタの係数を係数の近似値に置き換えることを特徴とする請求項31に記載の産業プロセス制御システム。
  33. 前記プロセス条件の参照式は、下記数8で表され、
    (ここで、Qmは質量流量(質量の単位/単位時間)、
    Nは単位変換因子(単位は種々に変わる)、
    dは排出係数(無次元数)、
    1はガス膨張因子(無次元数)、
    Eはアプローチ因子の速度(無次元数)、
    dはプライマリエレメントにおける絞り部の径(長さの単位)、
    ρは密度(質量の単位/単位体積)、
    ΔPは差圧(力の単位/単位面積)である。)
    前記プロセス条件の近似式は、前記プロセス条件の参照式を大まかに模してつくり出され、
    前記プロセス条件の近似値を表す信号は、浮動小数点数演算により生成され、
    前記プロセス条件の参照値を表す信号は、整数演算により生成されるようになっていることを特徴とする請求項32に記載の産業プロセス制御システム。
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