しかし、上記従来の鍵盤装置の基板保持構造においては、基板端部をねじにより固定しているので、部品コストがかかるだけでなく、基板のフレームへの組み付け作業に時間がかかっていた。
本発明は上記問題に対処するためになされたもので、その目的は、安価に幅の異なる複数の基板を選択的にフレームに組み付けることができ、基板のフレームへの組み付け性を良好にした鍵盤装置の基板保持構造を提供することにある。
上記目的を達成するために、本発明の特徴は、演奏者によって押離鍵操作される複数の鍵(11)と、複数の鍵を上下方向に揺動可能に支持するフレーム(12,36)と、複数の鍵の押離鍵状態を検出するための複数のスイッチ(27)が配置された基板(26,35,40)と、基板を保持する保持部であって、互いに前後方向に離間してフレームに一体的に形成された第1保持部(30,37)及び第2保持部(31,38)とを備えた鍵盤装置の基板保持構造であって、第1保持部を、フレームから上下方向に延設された壁部(30c)と、壁部から第2保持部側へ突出した第1突起部(30e)と、壁部に対して第2保持部側にて、フレームから上下方向に延設された第1ベース部(30a)とで構成するとともに、基板が第1保持部に保持された状態で第1ベース部と基板との当接部が第1突起部と基板との当接部よりも第2保持部側に位置するように第1突起部と第1ベース部とを前後方向にずらしておき、かつ第2保持部を、前後方向に変形する変形部(31b)であって、板状に形成されて、複数の鍵の並び方向に延設され、延設方向両端にて上下方向に沿って固定された変形部と、変形部から第1保持部側へ突出した第2突起部(31c)と、変形部に対して第1保持部側にて、フレームから上下方向に延設された第2ベース部(31a)とで構成し、基板の第1保持部側の端部または中間部に設けた貫通穴(26a,40a)の周縁部を第1突起部と第1ベース部の間に挟み込むとともに、基板の第2保持部側の端部または中間部に設けた貫通穴の周縁部を第2突起部と第2ベース部の間に挟み込み、変形部によって基板を壁部に押し付けて基板を保持するようにしたことにある。
上記のように構成した鍵盤装置の基板保持構造によれば、第1ベース部を壁部に対して第2保持部側に設け、かつ基板が第1保持部に保持された状態で第1ベース部と基板との当接部が第1突起部と基板との当接部よりも第2保持部側に位置するように第1突起部と第1ベース部とを前後方向にずらしたので、基板の第1保持部側が第2保持部側よりも低くなるように傾斜させた状態で、基板の第1保持部側の端部または中間部に設けた貫通孔の周縁部を、第1突起部と第1ベース部の間に侵入させることができる。そして、この状態から基板を倒して、第2保持部側の基板の端部または中間部に設けた貫通孔の周縁部を第2突起部に当接させた後、さらに基板を倒すと、変形部が押圧されて変形する。そして、第2保持部側の基板の端部または中間部に設けた貫通孔の周縁部が第2突起部を乗り越えると、変形部が元の状態に戻ろうとするため、基板が壁部へ押し付けられる。また、基板の第1保持部側の端部または中間部に設けた貫通穴の周縁部が第1突起部と第1ベース部の間に挟み込まれ、基板の第2保持部側の端部または中間部に設けた貫通穴の周縁部が第2突起部と第2ベース部の間に挟み込まれる。このようにして、基板がフレームに保持される。
また、変形部は、板状に形成されて、前記複数の鍵の並び方向に延設され、延設方向両端にて上下方向に沿って固定されている。これによれば、アコースティックピアノの鍵タッチを模擬するための揺動部材(例えばハンマー)を有する鍵盤装置であっても、第2保持部の高さを小さくすることができるので、揺動部材と変形部との干渉を避けるために鍵盤装置の高さを大きくする必要がない。したがって、揺動部材を有する鍵盤装置であっても、高さを抑えた鍵盤装置を実現できるので、鍵盤装置全体としてコストダウンできる。
また、前後方向の幅が壁部と第2突起部の前後方向の離間距離よりも大きい基板であっても、第1保持部及び第2保持部のうちのいずれか一方又は両方に対応した位置に組み付け用の貫通孔を設けておけば、フレームを変更することなく、組み付けることができる。例えば、演奏者に対する押鍵操作ガイドのために発光素子(例えばLED)の点灯及び消灯を制御する鍵照光回路を基板に追加することがある。そのために、鍵照光回路の無い基板に比べて大きな基板が必要になることがある。この場合でも、上記のように基板の中間部の適切な位置に組み付け用の貫通孔を設けておけば、フレームを変更することなく組み付けることができる。したがって、鍵照光機能の有無による2つのバリエーションの鍵盤装置を簡単に実現できる。上記の鍵盤装置の基板保持構造によれば、従来の基板保持構造と異なり、ねじ留めが不要なので、部品コストを削減でき、基板のフレームへの組み付け性が良好になる。
また、本発明の他の特徴は、さらに、第1ベース部から連続して壁部側へ延設されて、第1ベース部から壁部側へ向かうに従って基板からの離間距離が大きくなるように傾斜した傾斜面を有する傾斜部(30b)を設けたことにある。傾斜部を設けない場合、すなわち、壁部と第1ベース部が離間している場合は、基板の第1保持部側の端部を第1保持部に侵入させるときの基板の傾斜角度が必要以上に大きいと、壁部と第1ベース部の間に基板端が嵌り込んでしまい、組み付け性が低下することが考えられる。しかし、上記のように構成した鍵盤装置の基板保持構造によれば、第1ベース部から連続して壁部側へ延設された傾斜部を設けたので、壁部と第1ベース部の間に基板端が嵌り込むのを防ぐことができる。また、傾斜部をガイドとして用いることができるので、基板の組み付け時における傾斜角度を適切な角度に保つことができる。したがって、基板のフレームへの組み付け性がより良好になる。
また、本発明の他の特徴は、さらに、傾斜部の壁部側の端部から連続して壁部側へ延設されて、壁部に連結された連結部(30d)を設けたことにある。これによれば、連結部は壁部のリブとして機能するので、壁部の強度を向上させることができる。
なお、前記括弧内の符号は、本発明の理解を容易にするために、後述する実施形態との対応関係を示すものであるが、本発明はこれに限定されるものではない。
以下、本発明の一実施形態について図面を用いて説明する。以下の説明では、演奏者から見て手前側(図1の左側)を「前」とし、奥側(図1の右側)を「後」とする。また、演奏者から見て右側(図1の紙面の表面側)を「右」とし、左側(図1の紙面の裏面側)を「左」とする。さらに、演奏者から見て、上側(図1の上側)を「上」とし、下側(図1の下側)を「下」とする。なお、左右方向を横方向という。
図1は、本実施形態に係る基板保持構造を備えた鍵盤装置を右側から見た図である。鍵11は合成樹脂によって長尺状に一体成型されている。鍵11は、前後に延設された薄肉の上壁及び上壁の左右端からそれぞれ下方へ延設された薄肉の側壁を有し、下方に開放した中空状に形成されている。そして、鍵11は、下方に設けられたフレーム12の鍵支持部13により支持されており、後端部の回転中心14を中心として、前端部が上下方向に揺動可能となっている。
フレーム12は、樹脂の一体成型により横方向に延設されている。フレーム12は、図2A及び図2Bに示すように、それぞれ横方向に延設された前板12a及び後板12bを有する。後板12bは前板12aよりも高い位置にあり、前板12aの後端と後板12bの前端は横方向に延設された垂直板12cによって接続されている。すなわち、フレーム12の上部には、前板12a及び後板12bにより段差が形成されている。
鍵11の中間部には、フレーム12の前部に設けられた鍵ガイド15が下方から侵入しており、鍵11の前端部は、押鍵時に鍵ガイド15に案内されて上下方向に揺動する。鍵11の前部から下方に向かって駆動部16が延設されている。駆動部16は、上下に延設された薄肉の前壁及び前壁の左右端からそれぞれ後方へ延設された薄肉の側壁を有し、後方に開放した中空状に形成されている。駆動部16の下端は下端壁により閉じている。
鍵11の下方には、鍵11に慣性力を付与してアコースティックピアノの鍵タッチ感を模擬するため、鍵11の押離鍵操作に伴って揺動する揺動レバー17が設けられている。揺動レバー17は、合成樹脂製のレバー基部17a及び金属製の質量体17bからなる。レバー基部17aは、板状の部材であって、その下部に設けたフック部17a1にて、フレーム12の下部に設けたレバー支持部20に、ピン20aの軸線周りに回動可能に支持されている。また、レバー基部17aは、前端部に上下一対の脚部17a2,17a3を備え、上方に位置する脚部17a2は下方に位置する脚部17a3より短く形成されている。脚部17a2,17a3の間には、鍵11の駆動部16の下端壁が侵入している。脚部17a2は、鍵11の駆動部16の下端壁と、鍵11の駆動部16内であって下端壁との間に隙間を形成する図示しない中間壁との間に侵入している。駆動部16の下端壁には、ゴム、ウレタン、フエルトなどの衝撃吸収材が嵌め込まれて固着され、駆動部16の下端と脚部17a3の上面との衝突、及び駆動部16の下端と脚部18a2の下面との衝突による衝撃を緩和している。鍵11の離鍵時には、揺動レバー17の自重により、揺動レバー17の前端部が上方へ変位する。このとき、脚部17a3により駆動部16が上方へ付勢され、鍵11の前端部は上方へ変位する。一方、鍵11の押鍵時には、駆動部16の下端面が脚部17a3の上面を押圧し、揺動レバー17の前端部は下方へ変位する。
質量体17bは、板状に形成され、レバー基部17aの後端に組み付けられている。質量体17bは、全ての鍵11に対して共通としてもよいし、アコースティックピアノの鍵タッチ感をより忠実に模擬するために、低音側から高音側に向かうに従って、鍵11ごと又は鍵域ごとに質量体17bを軽くしてもよい。
また、フレーム12の前端部の下面には、フエルトなどの衝撃吸収材によって構成した長尺状の上限ストッパ21が、横方向に延設されて固着されている。この上限ストッパ21は、揺動レバー17の前端部の上方への変位を規制することにより、離鍵時における鍵11の前端部の上方への変位を規制する。また、フレーム12の前板12aの下面には、フエルトなどの衝撃吸収材によって構成した長尺状の下限ストッパ22が、横方向に延設されて固着されている。この下限ストッパ22は、揺動レバー17の後部の上方への変位を規制することにより、押鍵時における鍵11の前端部の下方への変位を規制する。
また、鍵11の中間部の下面には、スイッチ駆動部25が設けられている。スイッチ駆動部25は、基板26上に配置されたスイッチ27の上面に当接している。スイッチ27は、各鍵11ごとに設けられ、各鍵11の揺動に伴ってスイッチ駆動部25によって押圧されて、各鍵11の押離鍵状態を検出する。なお、スイッチ27は、各揺動レバー17の揺動に伴って揺動レバー17によって押圧されて、各鍵11の押離鍵状態を検出するようにしてもよい。また、基板26の中間部には上面から下面に貫通した方形状の貫通孔26aが、後述の第1保持部30に対応した位置に設けられている。基板26の前端部には、鍵照光回路28が設けられている。鍵照光回路28は、演奏者に対する押鍵操作ガイドのために、鍵11ごとに設けられた発光素子(例えばLED)の点灯及び消灯を制御するものである。基板26は、フレーム12に設けられた第1保持部30及び第2保持部31によって保持されている。
第1保持部30及び第2保持部31は、樹脂によりフレーム12に一体的に形成される。また、第1保持部30及び第2保持部31は、それぞれ横方向に間隔をおいて複数箇所に設けられている。ただし、第1保持部30及び第2保持部31は、必ずしも等間隔に配置されている必要はなく、それぞれの間隔が異なっていてもよい。
第1保持部30は、図3A及び図3Bに示すように、基板26の中間部を載置する左右一対のベース部30a,30a、基板26の組み付け時に基板26に当接してガイドする左右一対の傾斜部30b,30b、基板26の貫通孔26aの内周面に当接して基板26の前方向の位置を規定する壁部30c、壁部30cの強度を向上させる左右一対の連結部30d,30d、及び基板26の上方向の位置を規定する突起部30eからなる。なお、これらのベース部30a,30a、傾斜部30b,30b、壁部30c及び連結部30d,30dにより囲まれる前板12aの部分にはほぼ方形状の貫通孔30fが設けられている。
ベース部30a,30aは、それぞれ左右方向よりも前後方向を長くして平面視方形状に形成され、前板12aの前部上面から上方に突出しており、それらの上面30a1,30a1が前板12aの上面に平行な平面状に形成されている。傾斜部30b,30bも、それぞれベース部30a,30aとほぼ同一寸法の平面視方形状に形成され、ベース部30a,30aの前側位置にてベース部30a,30aと一体的に前板12aの上面から上方に突出している。傾斜部30b,30bの上面30b1,30b1は、それぞれベース部30a,30aの上面30a1,30a1の前端から連続して傾斜した平面状に形成されており、前方に向かうに従って低くなっている。すなわち、傾斜部30b,30bの上面30b1,30b1は、前板12aの上面に平行な平面を形成するベース部30a,30aの上面30a1,30a1の前端から前方に向かうに従って、前板12aの上面に対して近づくように傾斜した平面、言い換えれば、ベース部30a,30aの上面30a1,30a1及び基板26のベース部30a,30aとの当接面からの上下方向の離間距離が大きくなるように傾斜した平面を形成する。
壁部30cは、平面視方形状に形成されるとともに左右方向中央部に前方に突出する凸部を有するように形成され、傾斜部30b,30bの左右方向の中間位置にて、前板12aの上面から上方へほぼ垂直に突出している。より詳細には、壁部30cは、前板12aの上面に対して、上方に向かうに従って僅かに後方へ傾いて立設している。この壁部30cの上端は、傾斜部30b,30bの上面30b1,30b1より十分高く位置している。また、壁部30cは、その前記平面視方形状部分の前面を傾斜部30b,30bの前端面と同一にし、その平面視方形状部分の後面を傾斜部30b,30bの前端位置と後端位置との間に位置させている。壁部30cの左右両端は、左右一対の連結部30d,30dにより、傾斜部30b,30bに一体的に連結されている。連結部30d,30dは、傾斜部30b,30bの前側部分を左右方向に延設したものである。そして、連結部30d,30dの上面は、傾斜部30b,30bの上面30b1,30b1と同一平面を形成しており、後述する基板26の組み付け時には、傾斜部30b,30bの上面30b1,30b1と同様に機能する。
また、壁部30cの上端部から後方へ向かって突起部30eが突出している。突起部30eの下面30e1は、ベース部30a,30aの上面30a1,30a1と平行、すなわち前板12aの上面と平行となっている。また、基板26の組み付け時に基板26を第1保持部30内へ侵入させ易くするため、突起部30eの後側の下端が大きく面取りされている。突起部30eの下面30e1の後端(ベース部30a,30aの上面30a1,30a1に平行な突起部30eの下面30e1)と、傾斜部30b,30bの後端(すなわち、ベース部30a,30aの前端)との前後方向の位置(詳しくは、前板12aの上面に平行な前後方向の位置)が同じになるように設定されている。なお、上記のように構成した場合に比べて、基板26の組み付け性は若干低下するが、突起部30eに面取りを設けなくてもよい。この場合、突起部30eの下面30e1の後端と傾斜部30b,30bの後端(すなわち、ベース部30a,30aの前端)の前後方向の位置が同じになるように設定する。
また、第2保持部31は、図3A及び図3Cに示すように、基板26の後端部を載置する左右一対のベース部31a,31a、基板26を第1保持部側へ付勢する変形部31b、及び基板26の後方向及び上方向の位置を規定する突起部31cを有する。ベース部31a,31aは、それぞれ左右方向よりも前後方向を長くして平面視方形状に形成され、前板12aの後部上面から上方に突出している。ベース部31a,31aの上面31a1,31a1は、前板12aの上面と平行であり、第1保持部30のベース部30a,30aの上面30a1,30a1と同一平面を形成する。ベース部31,31は、それらの上面31a,31aの前端から前方に向かうに従って下方に傾斜して構成され、前板12aに一体的に連結されている。
前板12aの後部には、前板12aと後板12bの段差の立ち上がり面に沿った横長の貫通孔32が設けられている。この貫通孔32の前端面から前方にベース部31,31が突出している。また、後板12bの前部には、立ち上がり面に沿って、横方向の長さが貫通孔32と同じように長く、前後方向の幅が狭い貫通孔33(スリット)が設けられている。貫通孔32,33の横方向の位置は同じである。これにより、貫通孔32,33の間の立ち上がり部に、変形部31bが形成される。変形部31bは、前述した垂直板12cの一部を構成するもので、横方向(鍵の並び方向)に延設された板状になっている。変形部31bは、前板12a及び後板12bよりも薄肉になっている。そして、変形部31bの左右端は上下方向に沿って固定されている。すなわち、変形部31bは、その中央部分に対して前後方向の押圧力が付与されると、変形部31bの左右の両端を固定端として、前後方向に変形する。
また、変形部31bの中央の前面から前方(すなわち基板26側)に向かって、突起部31cが突出しており、さらに上方へ延設されている。突起部31cは、上端から下方に向かうに従って前方への張り出しが大きくなる急傾斜の傾斜面31c1を有する。傾斜面31c1の下端の上下方向の位置は、後板12bの上面とほぼ同じ位置である。そして、傾斜面31c1の下端から後方に向かう平面状の係止面31c2上には、傾斜面31c1の下端から若干量だけ後方位置を前端面として垂直に下方へ向かう基板押圧部31c3が変形部31bと一体連結されて設けられている。突起部31cは、この突起部31cが設けられた位置の上方に位置する鍵11の左右の側壁の中間に位置する。また、前記鍵11の左右側壁の部分であって、突起部31cと前後方向の位置が同一の部分の下端は、突起部31cの上端よりも下方に位置する。すなわち、突起部31cの上部は、前記鍵11の内側に入り込んでいる。
次に、基板26のフレーム12への組み付け手順を説明する。まず、図4Aに示すように、フレーム12の上方にて、基板26の前部が後部よりも低くなるように傾斜させて、基板26の貫通孔26aと第1保持部30の突起部30eの位置を合わせる。そして、基板26を降ろして貫通孔26aに突起部30e及び壁部30cを通し、基板26の下面を傾斜部30b,30bの上面30b1,30b1に当接させる。なお、傾斜部30b,30bの上面30b1,30b1とベース部30aの上面30a1,30a1との境界部分に基板26の下面を当接させてもよい。このとき、基板26の後端は、第2保持部31の突起部31cの上方に位置する。次に、基板26を倒すようにして、基板26の後端を突起部31cに近づける。すると、図4Bに示すように、基板26の後端が傾斜面31c1に当接する。この状態では、基板26の下面とベース部30aの上面30a1,30a1とは、僅かに離間している。
この状態から、さらに基板26を倒すと、傾斜面31c1は前方に張り出しているから、基板26の後端が変形部31bを後方へ押圧して変形させる。図4Cに示すように、基板26の後端が傾斜面31c1の下端を乗り越えると、基板26の後部下面がベース部31a,31aの上面31a1,31a1に当接する。このとき、変形部31bは、元の状態に復帰しようとするため、基板押圧部31c3の前端面が基板26の後端に当接して、基板26を前方へ押し返す。すなわち、第2保持部31は、基板26を第1保持部30側へ付勢する。一方、この状態では、基板26の前部下面(貫通孔26aの後方下面)は、第1保持部30のベース部30a,30aの上面30a1,30a1に当接している。そして、基板26は、第1保持部30のベース部30a,30aの上面30a1,30a1及び第2保持部31のベース部31a,31aの上面31a1,31a1上を前方へ変位して、基板26は、貫通孔26aの後側面が壁部30cの後側面に当接した時点で停止する。
基板26が組み付けられていない状態において、第1保持部30の壁部30cと第2保持部31の壁部31c3の間隔は、貫通孔26aの内周面のうちの後側の面と基板26の後端面の間隔よりも若干小さく設定される。したがって、基板26を組み付けた状態では、変形部31bは若干後方へ変形しており、基板26を壁部30cに押し付けている。これにより、基板26の前後方向の位置が規定される。また、第1保持部30のベース部30a,30aの上面30a1,30a1と突起部30eの下面30e1との上下方向の間隔は基板26の厚さとほぼ同じに設定されているので、基板26の前端部が上面30a1,30a1と下端面30e1に挟まれることにより、基板26の前端部の上下方向の位置が規定される。一方、第2保持部31のベース部31a,31aの上面31a1,31a1と突起部31cの係止面31c2との上下方向の間隔も基板の厚さとほぼ同じに設定されているので、基板26の後端部は、上面31a1,31a1と係止面31c2に挟まれることにより、上下方向の位置も規定される。すなわち、基板26は第1保持部30と第2保持部31によって保持される。
また、図5に示すように、フレーム12には、基板26に代えて、基板26よりも前後方向の幅が小さい基板35を組み付けることもできる。基板35は、基板26から鍵照光回路を削除したもので、その前後方向の幅は、第1保持部30の壁部30cと第2保持部31の突起部31cの基板押圧部31c3の間隔よりも若干大きく設定されている。基板35のフレーム12への組み付け手順を、図6A乃至図6Cを用いて説明する。まず、図6Aに示すように、基板35の前部が後部よりも低くなるように傾斜させて、第1保持部30の傾斜部30b,30bの上面30b1,30b1に基板35の下面を当接させながら、基板35の前端を第1保持部30に侵入させる。なお、傾斜部30b,30bの上面30b1,30b1とベース部30aの上面30a1,30a1との境界部分に基板35の下面を当接させながら、基板35の前端を第1保持部30に侵入させてもよい。以降の組み付け手順は上述の基板26の組み付け手順と同様である。すなわち、図6B及び図6Cに示すように、基板35を倒して基板35の後端を第2保持部31の突起部31cの傾斜面31c1に当接させた後、さらに基板35を倒して傾斜面31c1の前端を乗り越えさせると、基板35のフレーム12への組み付けが完了する。
上述のように、基板35の前後方向の幅は、第1保持部30の壁部30cと第2保持部31の基板押圧部31c3の間隔よりも若干大きく設定されている。したがって、基板35を組み付けた状態では、変形部31bは若干後方へ変形しており、基板35を壁部30cに押し付けている。すなわち、基板35の前端は第1保持部30に当接している。これにより、基板35の前後方向の位置が規定される。また、基板35の厚さは基板26と同じなので、基板35の前端部がベース部30a,30aの上面30a1,30a1と突起部30eの下面30e1に挟まれ、基板35の後端部がベース部31a,31aの上面31a1,31a1と突起部31cの係止面31c2に挟まれることにより、基板35の上下方向の位置が規定される。すなわち、基板35は第1保持部30と第2保持部31の間に保持される。
上記実施形態においては、第1保持部30において、ベース部30a,30aを突起部30eの下面30e1よりも後方に設けた。そして、ベース部30a,30aの前端から連続して前方へ延設された傾斜部30b,30bを設け、傾斜部30b,30bの前端部と壁部30cの間に連結部30d,30dを設けた。また、連結部30d,30dの上面を、傾斜部30b,30bの上面30b1,30b1と同一平面にした。そのため、基板26,35をフレーム12に組み付けるとき、傾斜部30b、30bの上面30b1,30b1を基板26,35のガイドとして用いることができる。また、基板26においては、連結部30d,30dの上面をガイドとして用いることもできる。また、傾斜部30b,30bの上面30b1,30b1とベース部30aの上面30a1,30a1との境界部分を基板26,35のガイドとして用いることもできる。すなわち、基板26においては、基板26の下面を傾斜部30b,30bの上面30b1,30b1及び連結部30d,30dの上面に当接させるようにして基板26を傾斜させた状態で、基板26の貫通孔26aの周縁部を第1保持部内30に侵入させることができる。また、基板35においては、基板35の下面を傾斜部30b,30bの上面30b1,30b1に当接させるようにして基板35を傾斜させた状態で、基板35の前端部を第1保持部内30に侵入させることができる。また、基板26,35の下面を傾斜部30b,30bの上面30b1,30b1とベース部30a,30aの上面30a1,30a1との境界部分に当接させるようにして基板26,35を傾斜させた状態で、基板26の貫通孔26aの周縁部または基板35の前端部を第1保持部内30に侵入させることもできる。この状態から基板26,35を倒していくと、基板26,35の後端部が第2保持部31内に侵入し、変形部31bによって基板26,35が壁部30cに押し付けられて保持される。したがって、ねじで基板をボスに固定する上記従来の鍵盤装置の基板保持構造に比べて、部品コストを削減でき、より簡単に基板をフレーム12に組み付けることができる。
また、基板26,35がフレーム12に組み付けられた状態では、壁部30cは変形部31bによって前側に付勢された基板26,35を支持している。すなわち、壁部30cは、前方向へ押圧されている。そのため、壁部30cは、前記押圧力に耐え得る強度を有する必要がある。そこで、傾斜部30b,30bと壁部30cの間に連結部30d,30dを設け、連結部30d,30dがリブとして機能するようにした。そのため、前記押圧力に耐え得る程度に壁部30cの強度を高めることができる。
また、フレーム12に段差を設け、その段差の立ち上がり面内に変形部31bを構成した。変形部31bが基板26,35を前方へ付勢する付勢力は、変形部31bの上下方向の幅を変更しなくても、横方向の長さを変更することにより調整できる。そのため、フレーム12に設けた段差の高さを小さくすることができるので、第2保持部31の高さを抑制することができる。したがって、押鍵に伴って揺動レバー17が揺動しても、揺動レバー17は、第2保持部31と干渉することが無い。また、突起部31cを、同突起部31cが位置する位置の鍵11の左右の側壁の中間に配置したので、前記鍵11の内側に突起部31cの上部が入り込む。そのため、離鍵時における鍵11と第2保持部31との間隔をさらに小さくすることができる。したがって、鍵盤装置の高さをさらに抑制することができるので、鍵盤装置全体としてコストダウンできる。
なお、上記実施形態においては、第1保持部30に、傾斜部30b,30bを設けたが、傾斜部30b,30bを省略することもできる。すなわち、壁部30cとベース部30a,30aとを離間させてもよい。しかし、傾斜部30b,30bを省略した場合、基板35のフレーム12への組み付け工程において、基板35の前端を第1保持部30に侵入させるときの基板35の傾斜角度が大きいと、基板35の前端部がベース部30a,30aと壁部30cの間に嵌まり込んでしまい、基板の組み付け性が低下することが考えられる。そのため、上記実施形態のように、傾斜部30b,30bを設けるのが好ましい。
さらに、本発明の実施にあたっては、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
上記実施形態においては、フレーム12の前板12aが後板12bよりも低くなるように段差を設けた。しかし、図7に示すように、本発明は、前板が後板よりも高くなっているフレーム36にも適用される。フレーム36は、上部にそれぞれ横方向に延設された前板36a及び後板36bを有する。前板36aは後板36bよりも高い位置に設けられている。前板36aの後端と後板36bの前端は、横方向に延設された垂直板36cによって接続されている。そして、後板36bの後部には、上記実施形態の第1保持部30と同様の形状で、第1保持部30とは前後の向きを逆にした第1保持部37がフレーム36に一体的に形成されている。一方、前板36aと後板36bにより形成される段差部には、上記実施形態の第2保持部31と同様の形状で、前後の向きを逆にした第2保持部38がフレーム36に一体的に形成されている。第1保持部37と第2保持部38の前後方向の離間距離は、上記実施形態の第1保持部30と第2保持部31の離間距離と同じである。図7に示す例においては、後部に組み付け用の貫通孔40aを有する基板40を組み付けている。その他の構成は上記実施形態と同様である。
基板40のフレーム36への組み付け手順は、上記実施形態とほぼ同様である。すなわち、基板40の後部が前部よりも低くなるように傾斜させて、貫通孔40aの周縁部を第1保持部37に侵入させておき、基板40を倒して基板40の前端部を第2保持部38に侵入させるようにすればよい。また、第1保持部37と第2保持部38の前後方向の離間距離は、上記実施形態の第1保持部30と第2保持部31の離間距離と同じなので、基板40と同様の組み付け手順によって、上記実施形態の基板35をフレーム36に組み付けることもできる。すなわち、基板35の後端部を第1保持部37により、前端部を第2保持部38によって保持することができる。このように構成しても、上記実施形態と同様の効果が得られる。なお、図7に示す変形例においては、第1保持部37と第2保持部38の離間距離を上記実施形態と同じにしたが、第1保持部37と第2保持部38の離間距離は、これに限られない。すなわち、フレーム36に組み付けたい複数の異なる基板のうち、前後方向の幅が最小の基板に合わせて第1保持部37と第2保持部38の離間距離を設定すればよい。そして、他の基板には、第1保持部37に対応する位置に組み付け用の貫通孔を設ければよい。