ところで、検出対象である排ガスの空燃比がリーン空燃比からリッチ空燃比へと変化すると、そのリッチ空燃比の排ガスに含まれる還元成分(未燃物)が下流側空燃比センサの触媒層56eにおいて酸化反応を引き起こす。その結果、下流側空燃比センサのコーティング層56dから酸素が奪われるので、コーティング層56dに覆われている排ガス側電極層(外側電極)56bの酸素分圧が低下し、出力値Voxsが上昇する。
ここで、触媒層56eでの酸化反応の速度vは、排ガスに含まれる還元成分がCOであるとすると、kを定数、[CO]をCOの濃度、[O2]をO2の濃度とするとき、
v=k・[CO]・[O2]
である。
この酸化反応が発生すれば、還元成分(ここではCO)の濃度は低下する。このとき、排ガスの流量を表す吸入空気量Gaが大きいほどより多くの還元成分が触媒層56eに到達する(供給される)ので、還元成分の濃度が高い値に維持される。この結果、図4に示したように、下流側空燃比センサの出力値Voxsは、排ガスの空燃比がリーン空燃比からリッチ空燃比へと変化する場合、排ガスの流量を表す吸入空気量Gaが大きくなるほど迅速に上昇する。
これに対し、排ガスの空燃比がリッチ空燃比からリーン空燃比へと変化した場合には、コーティング層56dにO2が直接取り込まれ、「排ガス側電極層(外側電極)56bにおける酸素分圧と、大気側電極層(内側電極)56cにおける酸素分圧と、の差」が小さくなり、その結果、出力値Voxsが低下する。即ち、排ガスの空燃比がリーン空燃比へと変化した場合におけるコーティング層56dの酸素濃度(酸素分圧)は、その排ガスの酸素濃度(酸素分圧)に強く依存するが、排ガスの流量には殆ど依存しない。その結果、図5に示したように、排ガスの空燃比がリッチ空燃比からリーン空燃比へと変化する場合、酸素濃度センサの出力値Voxsの変化速度は吸入空気量Gaに実質的に依存しない。
このように、排ガスの流量(吸入空気量Ga)が大きいほど、コーティング層56dが還元状態へとより短時間にて変化するので、出力値Voxsはより迅速に増大する。これに対し、コーティング層56dが酸化状態へと変化するまでの時間は排ガスの流量(吸入空気量Ga)に依存しない。その結果、下流側空燃比センサのリーン感度(出力値Voxsがリーン空燃比に対応する値へと変化する際の応答性)は低下する。
このため、機関の運転状態が「吸入空気量Gaが急変する運転状態(加速運転状態等)」となった場合、触媒の状態が酸素過剰状態(リーン状態)であるとの判定が遅れ、機関の空燃比がリーン空燃比に維持される期間が過度に長くなり、その結果、窒素酸化物(NOx)が排出されるという問題がある。
本発明は上述した問題に対処するためになされたものであり、その目的は吸入空気量が変動する場合のエミッションをより改善することができる内燃機関の空燃比制御装置を提供することにある。
より具体的に述べると、本発明による内燃機関の空燃比制御装置は、
内燃機関の排気通路に配設された三元触媒と、
前記排気通路の前記触媒よりも下流に配設された濃淡電池型の酸素濃度センサである下流側空燃比センサと、
前記機関に供給される混合気の空燃比である機関の空燃比を制御する空燃比制御手段と、
を備える。
前記空燃比制御装置は、
(1)前記下流側空燃比センサの出力値が判定値よりも大きい場合には「前記三元触媒に流入する排ガスである触媒流入ガス」の空燃比が「理論空燃比よりも大きい空燃比であるリーン空燃比」となるように、前記機関の空燃比を制御し、且つ、
(2)前記下流側空燃比センサの出力値が前記判定値よりも小さい場合には前記触媒流入ガスの空燃比が「理論空燃比よりも小さい空燃比であるリッチ空燃比」となるように、前記機関の空燃比を制御する。
更に、前記空燃比制御装置は、
前記触媒流入ガスの空燃比が前記リーン空燃比となるように前記機関の空燃比を制御し且つ前記機関の吸入空気量が増加している場合、前記吸入空気量の所定時間あたりの変化量の大きさが大きくなるほど前記下流側空燃比センサの出力値と前記判定値との差の大きさが小さくなるように同出力値及び同判定値のうちの少なくとも一方を修正する第1の修正を行うことにより、前記出力値が前記判定値よりも大きい値から前記判定値よりも小さい値へと変化する時点を前記第1の修正を行わない場合に比較して早期に到来させる第1パラメータ修正手段を含む。
図6は、従来装置における種々の値と、本発明による空燃比制御装置(本発明装置)の一態様における種々の値と、を示したタイムチャートである。この例においては、(A)及び(B)に示したように、時刻t1にて加速運転が開始され、それにより、吸入空気量Gaが急増する。更に、(D)及び(G)に示したように、時刻t1において、下流側空燃比センサの出力値Voxsは判定値Vthよりも大きい。
そのため、従来装置は、(C)に示したように、時刻t1の時点にて目標空燃比abyfrをリーン空燃比に維持している。しかしながら、前述したように、吸入空気量Gaが増大する場合、下流側空燃比センサのリーン感度は低下する。よって、従来装置においては、(D)に示したように時刻t4に至るまで出力値Voxsは判定値Vthよりも大きい。その結果、(C)に示したように時刻t4の直後の時点まで機関の空燃比がリーン空燃比に設定されるので、(E)に示したように時刻t4前後において過大なNOxが発生して触媒の下流に排出される。
これに対し、本発明装置の一態様によれば、(G)に示したように、時刻t1以降において「所定時間における吸入空気量Gaの変化量」が大きいほど判定値Vthが大きくなるように判定値Vthが修正される。それにより、出力値Voxsと判定値Vthとの差が小さくなる。この修正は第1の修正と称呼される。この第1の修正によって、出力値Voxsが判定値Vthよりも大きい値から判定値Vthよりも小さい値へと変化する時点((G)の時刻t2)が、前記第1の修正を行わない場合((D)の時刻4を参照。)に比較して早期に到来する。その結果、本発明装置の一態様によれば、機関の空燃比がリーン空燃比に設定される期間が短くなるので、(H)に示したように、NOxの排出量を低減することができる。
なお、図6に示した本発明装置の一態様においては、第1の修正として判定値Vthを増大させる修正が行われていたが、第1の修正として出力値Voxsを減少させる修正が行われてもよい。
更に、本発明装置の他の態様における前記空燃比制御手段は、
前記触媒流入ガスの空燃比が前記リッチ空燃比となるように前記機関の空燃比を制御し且つ前記機関の吸入空気量が減少している場合、前記吸入空気量の所定時間あたりの変化量の大きさが大きくなるほど、前記下流側空燃比センサの出力値と前記判定値との差の大きさが小さくなるように同出力値及び同判定値のうちの少なくとも一方を修正する第2の修正を行うことにより、前記出力値が前記判定値よりも小さい値から前記判定値よりも大きい値へと変化する時点を前記第2の修正を行わない場合に比較して早期に到来させる第2パラメータ修正手段を含む。
図10の時刻t3〜時刻5に示したように、前記触媒流入ガスの空燃比が前記リッチ空燃比となるように前記機関の空燃比が制御され且つ前記機関の吸入空気量が減少している場合、(D)に示したように出力値及び判定値の両方を修正しないと、出力値Voxsが判定値Vthを上回る時点が遅くなる(時刻t5を参照。)。その結果、時刻t2〜時刻t5に対応する期間において、機関の空燃比がリッチ空燃比に維持されることから、時刻t5直後において出力値Voxsは非常に大きくなる。このため、出力値Voxsが次に判定値Vthを下回る時点が遅くなるので(時刻t7を参照。)、機関の空燃比は長期間に渡りリーン空燃比に維持され(時刻t5〜時刻t7に対応する期間を参照。)、それにより多量のNOxが発生する。その結果、(E)に示したように、時刻t7の直後においてNOxが触媒から流出する。
これに対し、上記本発明装置の他の態様によれば、図10の(G)の時刻t3直後に示したように、前記触媒流入ガスの空燃比が前記リッチ空燃比となるように前記機関の空燃比が制御され且つ前記機関の吸入空気量が減少している場合、前記吸入空気量の所定時間あたりの変化量の大きさが大きくなるほど出力値Voxsと判定値Vthとの差の大きさが小さくなるように出力値Voxs及び判定値Vthのうちの少なくとも一方が修正される(図10の例においては判定値Vthが減少するように修正される。)。この修正は第2の修正と称呼される。
これによれば、出力値Voxsが判定値Vthを上回る時点が早くなる(図10の(D)の時刻t5に対する(G)の時刻t4を参照。)。その結果、機関の空燃比がリッチ空燃比に維持される期間が短くなるので(図10の(F)の時刻t2〜時刻t4に対応する期間を参照。)、出力値Voxsは時刻t4直後において過大とならない。このため、出力値Voxsが次に判定値Vthを下回る時点が早くなるので(図10の(D)の時刻t7に対する(G)の時刻t6を参照。)、NOxの発生量が過大にならない。その結果、(H)に示したように、時刻t6の直後においてNOxが流出しない。
なお、図10に示した本発明の他の態様においては、第2の修正として判定値Vthを減少させる修正が行われていたが、第2の修正として出力値Voxsを増大させる修正が行われても良い。
更に、本発明装置の他の態様における前記空燃比制御手段は、
前記触媒流入ガスの空燃比が前記リッチ空燃比となるように前記機関の空燃比を制御し且つ前記機関の吸入空気量が増大している場合、前記吸入空気量の所定時間あたりの変化量の大きさが大きくなるほど前記下流側空燃比センサの出力値と前記判定値との差の大きさが小さくなるように同出力値及び同判定値のうちの少なくとも一方を修正する第3の修正を行うことにより、前記出力値が前記判定値よりも小さい値から前記判定値よりも大きい値へと変化する時点を前記第3の修正を行わない場合に比較して早期に到来させる第3パラメータ修正手段を含む。
図12の時刻t3以前に示したように、前記触媒流入ガスの空燃比が前記リッチ空燃比となるように前記機関の空燃比を制御し且つ前記機関の吸入空気量が増大している場合、(D)に示したように出力値Voxs及び判定値Vthの両方を修正しないと、出力値Voxsが判定値Vthを上回る時点が遅くなる(時刻t3を参照。)。その結果、時刻t3直後までの期間において、機関の空燃比がリッチ空燃比に維持されることから、時刻t3直後において出力値Voxsは非常に大きくなる。このため、出力値Voxsが次に判定値Vthを下回る時点が遅くなるので(時刻t6を参照。)、機関の空燃比は長期間に渡りリーン空燃比に維持され(時刻t3〜時刻t6に対応する期間を参照。)、それにより多量のNOxが発生する。その結果、(E)に示したように、時刻t6の直後において多量のNOxが触媒から流出する。
これに対し、上記本発明装置の他の態様によれば、図12の(G)の時刻t2までに示したように、前記触媒流入ガスの空燃比が前記リッチ空燃比となるように前記機関の空燃比が制御され且つ前記機関の吸入空気量が増大している場合、前記吸入空気量の所定時間あたりの変化量の大きさが大きくなるほど出力値Voxsと判定値Vthとの差の大きさが小さくなるように出力値Voxs及び判定値Vthのうちの少なくとも一方が修正される(図12の例においては判定値Vthが減少するように修正される。)。この修正は第3の修正と称呼される。
これによれば、出力値Voxsが判定値Vthを上回る時点が早くなる(図12の(D)の時刻t3に対する(G)の時刻t2を参照。)。その結果、機関の空燃比がリッチ空燃比に維持される期間が短くなるので(図12の(F)の時刻t2の直後を参照。)、出力値Voxsは時刻t2直後において過大とならない。このため、出力値Voxsが次に判定値Vthを下回る時点が早くなるので(図12の(D)の時刻t6に対する(G)の時刻t4を参照。)、NOxの発生量が過大にならない。その結果、触媒から流出するNOxの量は、(H)の時刻t4の直後に示したように、(E)の時刻t6の前後に示した場合よりも格段に少なくなる。
なお、図12に示した本発明の他の態様においては、第3の修正として判定値Vthを減少させる修正が行われていたが、第3の修正として出力値Voxsを増大させる修正が行われても良い。
このように、本発明装置の空燃比制御手段は、
前記下流側空燃比センサの出力値が判定値よりも大きい場合には前記三元触媒に流入する排ガスである触媒流入ガスの空燃比が理論空燃比よりも大きい空燃比であるリーン空燃比となるように、且つ、前記下流側空燃比センサの出力値が前記判定値よりも小さい場合には前記触媒流入ガスの空燃比が理論空燃比よりも小さい空燃比であるリッチ空燃比となるように、前記機関に供給される混合気の空燃比である機関の空燃比を制御し、且つ、
前記吸入空気量の所定時間あたりの変化量の大きさが大きくなるほど、前記下流側空燃比センサの出力値と前記判定値との差の大きさが小さくなるように同出力値及び同判定値のうちの少なくとも一方を修正することにより、前記下流側空燃比センサの出力値と前記判定値との大小関係が逆転する時点を前記修正を行わない場合に比較して早期に到来させるパラメータ修正手段を含む。
更に、前記パラメータ修正手段は、
前記触媒流入ガスの空燃比が前記リーン空燃比となるように前記機関の空燃比が制御され且つ前記機関の吸入空気量が減少している場合には、前記修正を行わないように構成されていると表現することもできる。
以下、本発明の各実施形態に係る内燃機関の空燃比制御装置について図面を参照しながら説明する。
<第1実施形態>
(構成)
図1は、本発明の第1実施形態に係る空燃比制御装置(以下、「第1制御装置」とも称呼する。)が適用される内燃機関10の概略構成を示している。機関10は、4サイクル・火花点火式・多気筒(本例において4気筒)・ガソリン燃料機関である。機関10は、本体部20、吸気系統30及び排気系統40を備えている。
本体部20は、シリンダブロック部とシリンダヘッド部とを備えている。本体部20は、ピストン頂面、シリンダ壁面及びシリンダヘッド部の下面からなる複数(4個)の燃焼室(第1気筒#1乃至第4気筒#4)21を備えている。
シリンダヘッド部には、各燃焼室(各気筒)21に「空気及び燃料からなる混合気」を供給するための吸気ポート22と、各燃焼室21から排ガス(既燃ガス)を排出するための排気ポート23と、が形成されている。吸気ポート22は図示しない吸気弁により開閉され、排気ポート23は図示しない排気弁により開閉されるようになっている。
シリンダヘッド部には複数(4個)の点火プラグ24が固定されている。各点火プラグ24は、その火花発生部が各燃焼室21の中央部であってシリンダヘッド部の下面近傍位置に露呈するように配設されている。各点火プラグ24は、点火信号に応答して火花発生部から点火用火花を発生するようになっている。
シリンダヘッド部には更に複数(4個)の燃料噴射弁(インジェクタ)25が固定されている。燃料噴射弁25は、各吸気ポート22に一つずつ(即ち、一つの気筒に対して一つ)設けられている。燃料噴射弁25は、噴射指示信号に応答し、「その噴射指示信号に含まれる指示噴射量の燃料」を対応する吸気ポート22内に噴射するようになっている。
更に、シリンダヘッド部には、吸気弁制御装置26が設けられている。この吸気弁制御装置26は、インテークカムシャフト(図示せず)とインテークカム(図示せず)との相対回転角度(位相角度)を油圧により調整・制御する周知の構成を備えている。吸気弁制御装置26は、指示信号(駆動信号)に基いて作動し、吸気弁の開弁タイミング(吸気弁開弁タイミング)を変更することができるようになっている。
吸気系統30は、インテークマニホールド31、吸気管32、エアフィルタ33、スロットル弁34及びスロットル弁アクチュエータ34aを備えている。
インテークマニホールド31は、各吸気ポート22に接続された複数の枝部と、それらの枝部が集合したサージタンク部と、を備えている。吸気管32はサージタンク部に接続されている。インテークマニホールド31、吸気管32及び複数の吸気ポート22は、吸気通路を構成している。エアフィルタ33は吸気管32の端部に設けられている。スロットル弁34はエアフィルタ33とインテークマニホールド31との間の位置において吸気管32に回動可能に取り付けられている。スロットル弁34は、回動することにより吸気管32が形成する吸気通路の開口断面積を変更するようになっている。スロットル弁アクチュエータ34aは、DCモータからなり、指示信号(駆動信号)に応答してスロットル弁34を回動させるようになっている。
排気系統40は、エキゾーストマニホールド41、エキゾーストパイプ(排気管)42、上流側触媒43及び下流側触媒44を備えている。
エキゾーストマニホールド41は、各排気ポート23に接続された複数の枝部41aと、それらの枝部41aが集合した集合部(排気集合部)41bと、からなっている。エキゾーストパイプ42は、エキゾーストマニホールド41の集合部41bに接続されている。エキゾーストマニホールド41、エキゾーストパイプ42及び複数の排気ポート23は、排ガスが通過する通路を構成している。なお、本明細書において、エキゾーストマニホールド41の集合部41b及びエキゾーストパイプ42により形成される通路を、便宜上、「排気通路」と称呼する。
上流側触媒43は、セラミックからなる担持体に「触媒物質である貴金属(パラジウムPd及び白金Pt、ロジウムRd等の一種類以上)」及び「酸素吸蔵材であるセリア(CeO2)」を担持していて、酸素吸蔵・放出機能(酸素吸蔵機能)を有する三元触媒である。上流側触媒43はエキゾーストパイプ42に配設(介装)されている。上流側触媒43は所定の活性温度に到達すると、「未燃物(HC、CO及びH2等)と窒素酸化物(NOx)とを同時に浄化する触媒機能」及び「酸素吸蔵機能」を発揮する。上流側触媒43は、スタート・キャタリティック・コンバータ(SC)又は第1触媒とも称呼される。
下流側触媒44は、上流側触媒43と同様の三元触媒である。下流側触媒44は、上流側触媒43よりも下流においてエキゾーストパイプ42に配設(介装)されている。下流側触媒44は、車両のフロア下方に配設されているため、アンダ・フロア・キャタリティック・コンバータ(UFC)又は第2触媒とも称呼される。なお、本明細書において、単に「触媒」と言うとき、その「触媒」は上流側触媒43を意味する。
本制御装置は、熱線式エアフローメータ51、スロットルポジションセンサ52、機関回転速度センサ53、水温センサ54、上流側空燃比センサ55、下流側空燃比センサ56及びアクセル開度センサ57を備えている。
熱線式エアフローメータ51は、吸気管32内を流れる吸入空気の質量流量を検出し、その質量流量(機関10の単位時間あたりの吸入空気量)Gaを表す信号を出力するようになっている。
スロットルポジションセンサ52は、スロットル弁34の開度を検出し、スロットル弁開度TAを表す信号を出力するようになっている。
機関回転速度センサ53は、インテークカムシャフトが5°回転する毎に幅狭のパルスを有するとともにインテークカムシャフトが360°回転する毎に幅広のパルスを有する信号を出力するようになっている。機関回転速度センサ53から出力される信号は後述する電気制御装置60により機関回転速度NEを表す信号に変換されるようになっている。更に、電気制御装置60は、機関回転速度センサ53及び図示しないクランク角センサからの信号に基いて、機関10のクランク角度(絶対クランク角)を取得するようになっている。
水温センサ54は、内燃機関10の冷却水の温度を検出し、冷却水温THWを表す信号を出力するようになっている。
上流側空燃比センサ55は、エキゾーストマニホールド41の集合部41bと上流側触媒43との間の位置においてエキゾーストマニホールド41及びエキゾーストパイプ42の何れか(即ち、排気通路)に配設されている。上流側空燃比センサ55は、例えば、特開平11−72473号公報、特開2000−65782号公報及び特開2004−69547号公報等に開示された「拡散抵抗層を備える限界電流式広域空燃比センサ」である。
上流側空燃比センサ55は、上流側空燃比センサ55の配設位置を流れる排ガスの空燃比(触媒43に流入するガスである「触媒流入ガス」の空燃比、上流側空燃比abyfs)に応じた出力値Vabyfsを出力する。出力値Vabyfsは触媒流入ガスの空燃比が大きくなるほど(即ち、触媒流入ガスの空燃比がリーン側の空燃比になるほど)増大する。
電気制御装置60は、出力値Vabyfsと上流側空燃比abyfsとの関係を規定した空燃比変換テーブル(マップ)Mapabyfsを記憶している。電気制御装置60は、出力値Vabyfsを空燃比変換テーブルMapabyfsに適用することにより、実際の上流側空燃比abyfsを検出する(検出上流側空燃比abyfsを取得する)ようになっている。
再び、図1を参照すると、下流側空燃比センサ56は、上流側触媒43と下流側触媒44との間の位置においてエキゾーストパイプ42(即ち、排気通路)に配設されている。下流側空燃比センサ56は、周知の濃淡電池型の酸素濃度センサ(O2センサ)である。下流側空燃比センサ56は図2に示した出力値Voxsを出力する。
下流側空燃比センサ56は、図3の(A)に示した試験管状の素子部を備える。素子部は、図3の(B)に示したように、固体電解質層56aと、固体電解質層56aの外側に形成された排ガス側電極層56bと、大気室AR(固体電解質層56aの内側)に露呈し且つ固体電解質層56aを挟んで排ガス側電極層(外側電極)56bと対向するように固体電解質層56aの内側に形成された大気側電極層(内側電極)56cと、排ガス側電極層56bを覆うコーティング層56dと、そのコーティング層56dを覆う触媒層56eと、触媒層56eを覆うとともに排ガスExが接触する(図示しない保護カバーの貫通孔を通過して保護カバー内に流入した排ガスEx中に晒されるように配置される)保護層(トラップ層)56fを備える。
なお、固体電解質層56a等は板状であってもよい。触媒43から流出するガス(以下、「触媒流出ガス」とも称呼される。)は、保護カバーの貫通孔を通過して保護カバー内に流入し、次いで、保護層56f、触媒層56e及びコーティング層56dを通過して、排ガス側電極層56bに到達する。
下流側空燃比センサ56の出力値Voxsは、「排ガス側電極層(外側電極)56bにおける酸素分圧と、大気側電極層(内側電極)56cにおける酸素分圧と、の差」に応じた起電力であって、固体電解質層56aに酸素イオンの移動を生じさせる起電力である。
より具体的に述べると、出力値Voxsは、触媒流出ガスの空燃比が理論空燃比よりも小さい場合(理論空燃比よりもリッチ側の空燃比である場合)、即ち、触媒流出ガスに過剰な酸素が含まれていない場合、最大値Vmax又は最大値Vmax近傍の値(例えば、約0.9〜1.0V)となる。この場合、触媒43の状態は、一般に、酸素不足状態である(触媒内に酸素が殆ど吸蔵されていない)と判断され得る。
一方、出力値Voxsは、触媒流出ガスの空燃比が理論空燃比よりも大きい場合(理論空燃比よりもリーン側の空燃比である場合)、即ち、触媒流出ガスに過剰の酸素が含まれている場合、最小値Vmin又は最小値Vmin近傍の値(例えば、約0〜0.1V)となる。この場合、触媒43の状態は、一般に、酸素過剰状態である(触媒内に吸蔵されている酸素の量が、最大酸素吸蔵量Cmaxに近い)と判断され得る。
更に、この出力値Voxsは、触媒流出ガスの空燃比が理論空燃比よりもリッチ側の空燃比からリーン側の空燃比へと変化する際に最大値Vmaxから最小値Vminへと急激に減少する。逆に、出力値Voxsは、触媒流出ガスの空燃比が理論空燃比よりもリーン側の空燃比からリッチ側の空燃比へと変化する際に最小値Vminから最大値Vmaxへと急激に増大する。なお、最小値Vminと最大値Vmaxとの平均値は中央値Vmid(=(Vmax+Vmin)/2)又は理論空燃比相当電圧Vstと称呼される。
ところで、触媒流出ガスの空燃比がリーン空燃比からリッチ空燃比へと変化すると、そのリッチ空燃比の排ガスに含まれる還元成分(未燃物)が下流側空燃比センサ56の触媒層56eにおいて酸化反応を引き起こす。その結果、下流側空燃比センサ56のコーティング層56dから酸素が奪われるので、コーティング層56dに覆われている排ガス側電極層(外側電極)56bの酸素分圧が低下し、出力値Voxsが上昇する。
ここで、触媒層56eでの酸化反応の速度vは、排ガスに含まれる還元成分がCOであるとすると、kを定数、[CO]をCOの濃度、[O2]をO2の濃度とするとき、
v=k・[CO]・[O2]
である。
この酸化反応が発生すれば、還元成分(ここではCO)の濃度は低下する。このとき、排ガスの流量を表す吸入空気量Gaが大きいほど多くの還元成分が触媒層56eに到達する(供給される)ので、還元成分の濃度が高い値に維持される。この結果、図4に示したように、下流側空燃比センサの出力値Voxsは、排ガスの空燃比がリーン空燃比からリッチ空燃比へと変化した場合、排ガスの流量を表す吸入空気量Gaが大きくなるほど迅速に上昇する。
これに対し、排ガスの空燃比がリッチ空燃比からリーン空燃比へと変化した場合には、コーティング層56dにO2が直接取り込まれ、「排ガス側電極層(外側電極)56bにおける酸素分圧と、大気側電極層(内側電極)56cにおける酸素分圧と、の差」が小さくなり、その結果、出力値Voxsが低下する。即ち、排ガスの空燃比がリーン空燃比へと変化した場合におけるコーティング層56dの酸素濃度(酸素分圧)は、その排ガスの酸素濃度(酸素分圧)に強く依存するが、排ガスの流量には殆ど依存しない。その結果、図5に示したように、排ガスの空燃比がリッチ空燃比からリーン空燃比へと変化した場合、酸素濃度センサの出力値Voxsの変化速度は吸入空気量Gaに実質的に依存しない。
このように、排ガスの空燃比がリッチ空燃比へと変化した際、排ガスの流量(吸入空気量Ga)が大きいほどコーティング層56dが還元状態へとより短時間にて変化するので、出力値Voxsはより迅速に増大する。これに対し、排ガスの空燃比がリーン空燃比へと変化した際、コーティング層56dが酸化状態へと変化するまでの時間は排ガスの流量(吸入空気量Ga)に依存しない。その結果、下流側空燃比センサのリーン感度(出力値Voxsがリーン空燃比に対応する値へと変化する際の応答性)は低下する。
再び、図1を参照すると、アクセル開度センサ57は、運転者によって操作されるアクセルペダルAPの操作量を検出し、アクセルペダルAPの操作量Accpを表す信号を出力するようになっている。
電気制御装置60は、「CPU、ROM、RAM、バックアップRAM、並びに、ADコンバータを含むインターフェース等」からなる「周知のマイクロコンピュータ」を含む電子回路である。
電気制御装置60が備えるバックアップRAMは、機関10を搭載した車両の図示しないイグニッション・キー・スイッチの位置(オフ位置、始動位置及びオン位置等の何れか)に関わらず、車両に搭載されたバッテリから電力の供給を受けるようになっている。バックアップRAMは、バッテリから電力の供給を受けている場合、CPUの指示に応じてデータを格納する(データが書き込まれる)とともに、そのデータを読み出し可能となるように保持(記憶)する。バックアップRAMは、バッテリが車両から取り外される等によりバッテリからの電力供給が遮断されると、データを保持することができない。即ち、それまでに保持していたデータが消失(破壊)される。
電気制御装置60のインターフェースは、前記センサ51〜57と接続され、CPUにセンサ51〜57からの信号を供給するようになっている。更に、そのインターフェースは、CPUの指示に応じて、各気筒の点火プラグ24、各気筒の燃料噴射弁25、吸気弁制御装置26及びスロットル弁アクチュエータ34a等に指示信号(駆動信号)等を送出するようになっている。なお、電気制御装置60は、取得されたアクセルペダルの操作量Accpが大きくなるほどスロットル弁開度TAが大きくなるように、スロットル弁アクチュエータ34aに指示信号を送出するようになっている。
(第1制御装置による空燃比フィードバック制御の概要)
第1制御装置は、以下に述べるように触媒43の状態(酸素吸蔵状態、触媒状態)を判定するとともに、判定された触媒43の状態に基づいて触媒43に流入する排ガス(触媒流入ガス)の空燃比(従って、機関10に供給される混合気の空燃比)をフィードバック制御する。触媒43は、触媒43が酸素をその最大酸素吸蔵量に近い値まで吸蔵している状態(即ち、酸素過剰状態、リーン状態)、及び、触媒43が酸素を殆ど吸蔵していない状態(即ち、酸素不足状態、還元状態、リッチ状態)の何れかの状態にあると判定される。
1.従来装置
第1制御装置による空燃比フィードバック制御を説明するために、先ず、本発明が適用されていない従来装置による空燃比フィードバック制御について説明する。従来装置における「目標空燃比abyfr、下流側空燃比センサ56の出力値Voxs、及び、排出されるNOxの量」は、それぞれ図6の(C)、(D)及び(E)に示されている。
従来装置は、下流側空燃比センサ56の出力値Voxsが「常に上記中央値Vmidに設定された判定値Vth」以上であるとき、触媒43の状態が酸素不足状態(リッチ状態)であると判定し、機関の空燃比を所定のリーン空燃比afLeanに設定する(図6の時刻t4以前に実質的に対応する期間、及び、時刻t5以降に実質的に対応する期間を参照。)。
従来装置は、下流側空燃比センサ56の出力値Voxsが「常に上記中央値Vmidに設定された判定値Vth」未満であるとき、触媒43の状態が酸素過剰状態(リーン状態)であると判定し、機関の空燃比を所定のリッチ空燃比afRichに設定する(図6の時刻t4〜時刻t5に実質的に対応する期間を参照。)。
ところで、図6に示した例においては、(A)の車速の変化から理解されるように、時刻t1にて加速運転が開始され、(B)に示したように、吸入空気量Gaが時刻t1〜時刻t3において増加し、時刻t3以降において減少している。更に、加速開始時点(時刻t1)において、(D)に示したように、下流側空燃比センサ56の出力値Voxsは判定値Vthよりも大きいので、従来装置は触媒43の状態はリッチ状態(酸素不足状態)であると判定し、触媒流入ガスの空燃比及び機関の空燃比に実質的に等しい目標空燃比abyfrを目標リーン空燃比afLean(理論空燃比よりも大きい空燃比)に設定している。
前述したように、下流側空燃比センサ56のリーン感度は吸入空気量Gaが大きくなるほど低下する。このため、時刻t1〜時刻t3において吸入空気量Gaが増大しているにも関らず、出力値Voxsは判定値Vthよりも大きい値を維持する。その後、(D)に示したように、出力値Voxsは時刻t4にて判定値Vthよりも大きい値から小さい値へと変化する(判定値Vthを下回る。)。
従って、従来装置は、時刻t4にて触媒43の状態はリーン状態(酸素過剰状態)であると判定し、時刻t4の直後に目標空燃比abyfrを目標リッチ空燃比afRich(理論空燃比よりも小さい空燃比)に設定する。しかしながら、時刻t4に至るまでの期間(特に、吸入空気量Gaが大きい時刻t1〜時刻t4までの期間)において「多量かつ触媒43にとって過剰なNOx」が排気通路に排出されているので、(E)に示したように、時刻t4の前後において触媒43からNOxが排出されてしまう。
2.第1制御装置
次に、第1制御装置による空燃比フィードバック制御を説明する。第1制御装置における「目標空燃比abyfr、下流側空燃比センサ56の出力値Voxs、及び、排出されるNOxの量」は、それぞれ図6の(F)、(G)及び(H)に示されている。
第1制御装置は、機関の空燃比をリーン空燃比に設定している場合(目標空燃比abyfrとして目標リーン空燃比afLeanを設定している場合、即ち、出力値Voxsが判定値Vthよりも大きい場合)であって、吸入空気量Gaが増大しているとき、「吸入空気量Gaの単位時間(所定時間)あたりの変化量ΔGa(以下、「吸入空気変化量ΔGa」とも称呼する。)」の大きさが大きくなるほど判定値Vthが大きくなるように、判定値Vthを修正する点においてのみ従来装置と相違している。この判定値Vthの修正は、便宜上、第1の修正とも称呼される。
より具体的に述べると、図6の(B)及び(G)に示したように、第1制御装置は時刻t1以降において吸入空気量Gaが増大すると、時刻t1において目標空燃比abyfrが目標リーン空燃比afLeanに設定されていることから、吸入空気変化量ΔGaの大きさが大きくなるほど判定値Vthを大きくする(判定値Vthと中央値Vmidとの差の大きさが小さくなるように判定値Vthを増大させる。)。これにより、下流側空燃比センサ56のリーン感度の低下が補償される。
この修正(第1の修正)によって、出力値Voxsが判定値Vthよりも大きい値から判定値Vthよりも小さい値へと変化する時点((G)の時刻t2)が、前記第1の修正を行わない場合((D)の時刻4を参照。)に比較して早期に到来する。従って、第1制御装置は、従来装置よりも早い時点にて、目標空燃比abyfrを目標リッチ空燃比afRichへと切り替える((F)の時刻t2の直後を参照。)。その結果、(H)に示したように、NOxの排出量を低減することができる。
(作動)
次に、第1制御装置の実際の作動について説明する。
<燃料噴射制御>
第1制御装置のCPUは、図7に示した燃料噴射制御ルーチンを、任意の気筒のクランク角度が吸気上死点前の所定クランク角度となる毎に、その気筒に対して繰り返し実行するようになっている。前記所定クランク角度は、例えば、BTDC90°CA(吸気上死点前90°クランク角度)である。クランク角度が前記所定クランク角度に一致した気筒は「燃料噴射気筒」とも称呼される。CPUは、この燃料噴射制御ルーチンにより、指示燃料噴射量(最終燃料噴射量)Fiの計算及び燃料噴射の指示を行う。
任意の気筒のクランク角度が吸気上死点前の所定クランク角度と一致すると、CPUはステップ700から処理を開始し、ステップ705にてフューエルカットフラグXFCの値が「0」であるか否かを判定する。フューエルカットフラグXFCの値は、フューエルカット開始条件が成立したときに「1」に設定され、フューエルカットフラグXFCの値が「1」であるときにフューエルカット終了条件が成立したときに「0」に設定される。フューエルカットフラグXFCの値は更にイニシャルルーチンにおいて「0」に設定されるようになっている。イニシャルルーチンは、機関10が搭載された車両のイグニッション・キー・スイッチがオフからオンに変更されたときにCPUにより実行されるルーチンである。
フューエルカット開始条件は、スロットル弁開度TAが「0」であり且つ機関回転速度NEがフューエルカット回転閾値速度NEFC以上であるとき成立する。フューエルカット終了条件は、スロットル弁開度TAが「0」でなくなるか、又は、機関回転速度NEがフューエルカット終了回転閾値速度NERT以下となったとき、成立する。フューエルカット終了回転閾値速度NERTはフューエルカット回転閾値速度NEFCよりも小さい。
いま、フューエルカットフラグXFCの値が「0」であると仮定する。この場合、CPUは、ステップ705にて「Yes」と判定してステップ710に進み、「エアフローメータ51により計測された吸入空気量Ga、機関回転速度センサ53の信号に基いて取得された機関回転速度NE、及び、ルックアップテーブルMapMc(Ga,NE)」に基いて「燃料噴射気筒に吸入される空気量(即ち、筒内吸入空気量)Mc)」を取得する。筒内吸入空気量Mcは、周知の空気モデル(吸気通路における空気の挙動を模した物理法則に従って構築されたモデル)により算出されてもよい。
次に、CPUはステップ715に進み、フィードバック制御フラグXFBの値が「1」であるか否かを判定する。このフィードバック制御フラグXFBの値は、フィードバック制御条件が成立しているときに「1」に設定され、フィードバック制御条件が成立していないときに「0」に設定される。フィードバック制御条件は、例えば、以下の総ての条件が成立したときに成立する。
(A1)上流側空燃比センサ55が活性化している。
(A2)下流側空燃比センサ56が活性化している。
(A3)機関の負荷KLが閾値KLth以下である。
(A4)フューエルカットフラグXFCの値が「0」である。
このとき、フィードバック制御フラグXFBの値が「1」でなければ、CPUはステップ715にて「No」と判定してステップ720に進み、目標空燃比abyfrを理論空燃比stoich(例えば、14.6)に設定する。
次に、CPUは以下に述べるステップ725乃至ステップ740の処理を順に行い、ステップ795に進んで本ルーチンを一旦終了する。
ステップ725:CPUは、筒内吸入空気量Mcを目標空燃比abyfrで除することによって基本燃料噴射量Fbaseを算出する。基本燃料噴射量Fbaseは、機関の空燃比を目標空燃比abyfrに一致させるために必要な燃料噴射量のフィードフォワード量である。
ステップ730:CPUは、図示しないルーチンにより別途計算されているメインフィードバック量KFmainを読み込む。メインフィードバック量KFmainは、検出上流側空燃比abyfsが目標空燃比abyfrに一致するように周知のPID制御に基づいて算出される。なお、メインフィードバック量KFmainは、フィードバック制御フラグXFBの値が「0」であるとき「1」に設定される。更に、メインフィードバック量KFmainは常に「1」に設定されてもよい。即ち、メインフィードバック量KFmainを用いたフィードバック制御は本実施形態において必須ではない。
ステップ735:CPUは、基本燃料噴射量Fbaseをメインフィードバック量KFmainにより補正することによって指示燃料噴射量Fiを算出する。より具体的に述べると、CPUは、基本燃料噴射量Fbaseにメインフィードバック量KFmainを乗じることによって指示燃料噴射量Fiを算出する。
ステップ740:CPUは、「指示燃料噴射量Fiの燃料」を「燃料噴射気筒に対応して設けられている燃料噴射弁25」から噴射させるための噴射指示信号を、その燃料噴射弁25に送出する。
この結果、機関の空燃比を目標空燃比abyfrに一致させるために必要な量の燃料が燃料噴射気筒の燃料噴射弁25から噴射させられる。即ち、ステップ725乃至ステップ740は、「機関の空燃比が目標空燃比abyfrに一致するように指示燃料噴射量Fiを制御する」指示燃料噴射量制御手段を構成している。
一方、CPUがステップ715の処理を行う時点において、フィードバック制御フラグXFBの値が「1」であると、CPUはそのステップ715にて「Yes」と判定してステップ745に進み、触媒リッチ状態表示フラグXCCRORichの値が「1」であるか否かを判定する。触媒リッチ状態表示フラグXCCRORichの値は後述するルーチンにより設定される。
触媒リッチ状態表示フラグXCCRORichの値が「1」であると、CPUはステップ745にて「Yes」と判定してステップ750に進み、目標空燃比abyfrを「所定の目標リーン空燃比afLean」に設定する。
より具体的に述べると、CPUは図8に示した「目標空燃比abyfrの一つである目標リーン空燃比afLeanと、吸入空気量Gaと、の関係を規定したテーブルfL(Ga)」に、実際の吸入空気量Gaを適用することにより、目標リーン空燃比afLeanを決定する。このテーブルfL(Ga)によれば、目標リーン空燃比afLeanは、理論空燃比よりも大きい範囲の空燃比であって、且つ、吸入空気量Gaが大きいほど理論空燃比に近づく(小さくなる)空燃比となるように決定される。その後、CPUはステップ725以降に進む。従って、機関の空燃比は目標リーン空燃比afLeanに一致させられる。
これに対し、CPUがステップ745の処理を実行する時点において、触媒リッチ状態表示フラグXCCRORichの値が「0」であると、CPUはステップ745にて「No」と判定してステップ755に進み、目標空燃比abyfrを「所定の目標リッチ空燃比afRich」に設定する。
より具体的に述べると、CPUは図8に示した「目標空燃比abyfrの一つである目標リッチ空燃比afRichと、吸入空気量Gaと、の関係を規定したテーブルfR(Ga)」に、実際の吸入空気量Gaを適用することにより、目標リッチ空燃比afRichを決定する。このテーブルfR(Ga)によれば、目標リッチ空燃比afRichは、理論空燃比よりも小さい範囲の空燃比であって、且つ、吸入空気量Gaが大きいほど理論空燃比に近づく(大きくなる)空燃比となるように決定される。その後、CPUはステップ725以降に進む。従って、機関の空燃比は目標リッチ空燃比afRichに一致させられる。
一方、CPUがステップ705の処理を実行する時点において、フューエルカットフラグXFCの値が「1」であると、CPUはそのステップ705にて「No」と判定してステップ795に直接進み、本ルーチンを一旦終了する。この場合、ステップ740の処理による燃料噴射が実行されないので、フューエルカット制御(燃料供給停止制御)が実行される。即ち、機関10の運転状態はフューエルカット運転状態となる。
<触媒状態(触媒43の酸素吸蔵状態)判定>
CPUは図9にフローチャートにより示した「触媒状態判定ルーチン」を所定時間tsの経過毎に繰り返し実行している。従って、所定のタイミングになると、CPUはステップ900から処理を開始してステップ910に進み、「現時点の吸入空気量Ga」から「前回の吸入空気量Gaold」を減じることにより、所定時間ts(単位時間)あたりの吸入空気量Gaの変化量ΔGa(吸入空気変化量ΔGa)を算出する。前回の吸入空気量Gaoldは、次のステップ920にて更新される値であり、現時点から所定時間tsだけ前の時点の吸入空気量Ga(本ルーチンが前回実行されたときの吸入空気量Ga)である。次に、CPUはステップ920に進み、現時点の吸入空気量Gaを「前回の吸入空気量Gaold」として記憶する。
次に、CPUはステップ930に進み、触媒リッチ状態表示フラグXCCRORichの値が「1」であるか否かを判定する。触媒リッチ状態表示フラグXCCRORichは、上述したイニシャルルーチンにおいて「0」に設定されるようになっている。更に、触媒リッチ状態表示フラグXCCRORichの値は、後述するように、下流側空燃比センサ56の出力値Voxsが判定値Vth以上であるとき(即ち、触媒43の状態が酸素不足状態(リッチ状態)であると判定されるとき)に「1」に設定され、下流側空燃比センサ56の出力値Voxsが判定値Vthよりも小さいとき(即ち、触媒43の状態が酸素過剰状態(リーン状態)であると判定されるとき)に「0」に設定される。
いま、触媒リッチ状態表示フラグXCCRORichの値が「1」であると仮定する。この場合、CPUはステップ930にて「Yes」と判定してステップ940に進み、「吸入空気変化量ΔGaと、暫定判定値Vthnewと、の関係」を規定したテーブルfleanvth(ΔGa)に、ステップ910にて算出した実際の吸入空気変化量ΔGaを適用することにより、暫定判定値Vthnewを決定する。
このテーブルfleanvth(ΔGa)によれば、吸入空気変化量ΔGaが負であるとき(即ち、吸入空気量Gaが減少しているとき)、暫定判定値Vthnewは中央値Vmidに設定される。更に、このテーブルfleanvth(ΔGa)によれば、吸入空気変化量ΔGaが正であるとき(即ち、吸入空気量Gaが増大しているとき)、暫定判定値Vthnewは吸入空気変化量ΔGaの大きさが大きくなるほど中央値Vmidから離れるように次第に大きくなる値に設定される。
次に、CPUはステップ950に進み、下記の(1)式に従って最終的な判定値Vth(比較値Vth、フィードバック目標値Vth)を決定する。(1)式において、Vth(n)は最終的な判定値Vth、Vth(n−1)は所定時間ts前の判定値Vth、αは0以上であり、且つ、1よりも小さい定数(例えば、1/2)である。
なお、αは「0」であってもよい。即ち、ステップ950を省略し、暫定判定値Vthnewを最終的な判定値Vthとして設定してもよい。
Vth(n)=α・Vth(n−1)+(1−α)・Vthnew …(1)
次に、CPUはステップ960に進み、下流側空燃比センサ56の出力値Voxsが「ステップ950にて決定された判定値Vth」よりも小さいか否かを判定する。このとき、出力値Voxsが判定値Vth以上であれば、CPUはステップ960にて「No」と判定してステップ970に進み、触媒リッチ状態表示フラグXCCRORichの値を「1」に設定する。即ち、この場合、触媒リッチ状態表示フラグXCCRORichの値は「1」に維持される。その後、CPUはステップ995に進んで本ルーチンを一旦終了する。
この結果、目標空燃比abyfrは目標リーン空燃比afLeanに維持・設定される(図7のステップ745及びステップ750を参照。)。従って、触媒43には過剰の酸素が流入し、所定の時間が経過すると触媒43から酸素が流出する。この結果、下流側空燃比センサ56の出力値Voxsは判定値Vth未満となる。この場合、CPUはステップ960に進んだとき、そのステップ960にて「Yes」と判定してステップ980に進み、触媒リッチ状態表示フラグXCCRORichの値を「0」に設定する。その後、CPUはステップ995に進んで本ルーチンを一旦終了する。
この結果、CPUは図7のステップ745に進んだとき、そのステップ745にて「No」と判定してステップ755に進む。従って、目標空燃比abyfrが目標リッチ空燃比afRichに設定されるので、触媒43には過剰の未燃物が流入する。更に、CPUは図9のステップ930に進んだとき、触媒リッチ状態表示フラグXCCRORichの値が「0」に設定されていることから、そのステップ930にて「No」と判定してステップ990に進み、暫定判定値Vthnewに中央値Vmidを設定する。換言すると、触媒リッチ状態表示フラグXCCRORichの値が「0」であるとき(目標空燃比abyfrが目標リッチ空燃比afRichであるとき)、暫定判定値Vthnewは吸入空気変化量ΔGaに依存せず一定値となる。その後、CPUはステップ950以降に進む。
触媒リッチ状態表示フラグXCCRORichの値が「0」に変更になった直後においては、触媒43から未燃物は流出しない。従って、出力値Voxsは判定値Vth未満であるから、CPUはステップ960及びステップ980へと進む。この結果、触媒リッチ状態表示フラグXCCRORichの値は「0」に維持される。
その後、所定の時間が経過すると触媒43から未燃物が流出する。この結果、下流側空燃比センサの出力値Voxsは判定値Vth以上となる。従って、CPUは図9のステップ960に進んだとき、そのステップ960にて「No」と判定してステップ970に進み、触媒リッチ状態表示フラグXCCRORichを「1」に設定する。この結果、目標空燃比abyfrは再び目標リーン空燃比afLeanに設定される。
以上、説明したように、第1制御装置は、
濃淡電池型の酸素濃度センサである下流側空燃比センサ56の出力値Voxsが判定値Vthよりも大きい場合には触媒流入ガスの空燃比がリーン空燃比となるように、且つ、出力値Voxsが判定値Vthよりも小さい場合には触媒流入ガスの空燃比がリッチ空燃比となるように、機関に供給される混合気の空燃比(機関の空燃比)を制御する空燃比制御手段を備える(図9のステップ960乃至ステップ980と、図7のステップ745乃至755と、等を参照。)。
更に、その空燃比制御手段は、
触媒流入ガスの空燃比がリーン空燃比となるように機関の空燃比を制御し(図9のステップ930での「Yes」との判定、図7のステップ745及びステップ750を参照。)、且つ、吸入空気量Gaが増加している場合、吸入空気量Gaの所定時間あたりの変化量(吸入空気変化量ΔGa)の大きさが大きくなるほど「下流側空燃比センサ56の出力値Voxsと判定値Vthとの差の大きさ」が小さくなるように、出力値Voxs及び判定値Vthのうちの少なくとも一方(本例においては、判定値Vth)を修正する第1の修正を行う第1パラメータ修正手段を含む(図9のステップ940のテーブル、及び、ステップ950を参照。)。
これにより、出力値Voxsが判定値Vthよりも大きい値から判定値Vthよりも小さい値へと変化する時点(図6の(G)における時刻t2)が、前記第1の修正を行わない場合(図6の(D)における時刻t4)に比較して早期に到来する。即ち、吸入空気量Gaが増大する場合の下流側空燃比センサ56のリーン感度の低下が補償される。その結果、機関の空燃比が必要以上にリーン空燃比に維持されることがないので、NOxの排出量を低減することができる(図6の(E)に対する(H)を参照。)。
なお、第1制御装置において、第1の修正は判定値Vthを増大することであったが、第1の修正は出力値Voxsを修正することであってもよい。即ち、触媒流入ガスの空燃比がリーン空燃比となるように機関の空燃比を制御し、且つ、吸入空気量Gaが増加している場合、吸入空気量Gaの所定時間あたりの変化量(吸入空気変化量ΔGa)の大きさが大きくなるほど大きくなる値を出力値Voxsから減じた値(吸入空気変化量ΔGaの大きさが大きいほど出力値Voxsがより小さくなるように出力値Voxsを修正した値)を、触媒状態の判定のための出力値(判定値Vthと比較する出力値)として採用してもよい。
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態に係る空燃比制御装置(以下、「第2制御装置」とも称呼する。)について説明する。
第2制御装置は、触媒流入ガスの空燃比がリッチ空燃比となるように機関の空燃比が制御されていて(目標空燃比abyfrが目標リッチ空燃比afRichに設定されていて)、且つ、吸入空気量Gaが減少している(吸入空気変化量ΔGaが負である)場合に、吸入空気変化量ΔGaの大きさ(|ΔGa|)が大きくなるほど判定値Vthを小さくする(中央値Vmidと判定値Vthとの差が大きくなるように判定値Vthを減少させる)点のみにおいて、第1制御装置と相違している。以下、この相違点を中心に説明する。
(第2制御装置による空燃比フィードバック制御の概要)
図10の時刻t3〜時刻5に示したように、触媒流入ガスの空燃比がリッチ空燃比となるように機関の空燃比が制御され且つ吸入空気量Gaが減少している場合、第1制御装置によれば、出力値Voxs及び判定値Vthの何れもが修正されない(図10の(D)の時刻t3〜時刻t5を参照。)。そのため、第1制御装置においては、出力値Voxsが判定値Vthを上回る時点が遅くなる((D)における時刻t5を参照。)。その結果、時刻t2〜時刻t5に対応する期間において、機関の空燃比がリッチ空燃比に維持されることから、時刻t5直後において出力値Voxsは非常に大きくなる。このため、出力値Voxsが次に判定値Vthを下回る時点が遅くなるので((D)における時刻t7を参照。)、機関の空燃比は長期間に渡りリーン空燃比に維持され((C)における時刻t5〜時刻t7に対応する期間を参照。)、それにより多量のNOxが発生する。その結果、(E)に示したように、時刻t7の直後においてNOxが触媒43から流出する。
これに対し、第2制御装置によれば、図10の(G)の時刻t3直後に示したように、触媒流入ガスの空燃比がリッチ空燃比となるように機関の空燃比が制御され且つ吸入空気量Gaが減少している場合、出力値Voxsと判定値Vthとの差の大きさが小さくなるように判定値Vthが修正される(図10の例においては、吸入空気変化量ΔGaの大きさが大きいほど、判定値Vthと中央値Vmidとの差が大きくなるように判定値Vthが減少させられる。)。この修正は第2の修正と称呼される。
これによれば、出力値Voxsが判定値Vthを上回る時点が早くなる(図10の(D)の時刻t5に対する(G)の時刻t4を参照。)。その結果、機関の空燃比がリッチ空燃比に維持される期間が短くなるので(図10の(F)の時刻t2〜時刻t4に対応する期間を参照。)、出力値Voxsは時刻t4直後において過大とならない(図10の(G)を参照。)。このため、出力値Voxsが次に判定値Vthを下回る時点が早くなるので(図10の(D)の時刻t7に対する(G)の時刻t6を参照。)、NOxの発生量が過大にならない。その結果、(H)に示したように、時刻t6の直後においてNOxが流出しない。
(作動)
次に、第2制御装置の実際の作動について説明する。第2制御装置のCPUは、第1制御装置のCPUと同様、図7の燃料噴射制御ルーチンを実行する。更に、第2制御装置のCPUは、図9に代わる図11に示した「触媒状態判定ルーチン」を所定時間tsの経過毎に繰り返し実行する。図7に示したルーチンについては説明済みである。よって、以下、図11に示したルーチンについて説明する。なお、図11に示したステップであって図9にも示されたステップには、図9に示されたステップと同一の符号が付されている。
図11のルーチンは、図9のルーチンのステップ990をステップ1110に置換したルーチンである。より具体的に説明すると、CPUは、図11のステップ930にて触媒リッチ状態表示フラグXCCRORichの値が「0」であると判定すると(即ち、目標空燃比abyfrが目標リッチ空燃比afRichに設定されていると判定すると)、ステップ1110に進み、「吸入空気変化量ΔGaと、暫定判定値Vthnewと、の関係」を規定したテーブルfrichvth(ΔGa)に、ステップ910にて算出した実際の吸入空気変化量ΔGaを適用することにより、暫定判定値Vthnewを決定する。
このテーブルfrichvth(ΔGa)によれば、吸入空気変化量ΔGaが正であるとき(即ち、吸入空気量Gaが増大しているとき)、暫定判定値Vthnewは中央値Vmidに設定される。更に、このテーブルfrichvth(ΔGa)によれば、吸入空気変化量ΔGaが負であるとき(即ち、吸入空気量Gaが減少しているとき)、暫定判定値Vthnewは吸入空気変化量ΔGaの大きさ(|ΔGa|)が大きくなるほど中央値Vmidから離れるように次第に小さくなる値に設定される。その後、CPUはステップ950以降に進む。この結果、吸入空気変化量ΔGaが負であるとき判定値Vthは次第に小さくなる。
以上、説明したように、第2制御装置は、第1制御装置と同様の空燃比制御手段を備える。更に、第2制御装置の空燃比制御手段は、触媒流入ガスの空燃比がリッチ空燃比となるように機関の空燃比を制御し(図11のステップ930での「No」との判定、図7のステップ745及びステップ755を参照。)、且つ、吸入空気量Gaが減少している場合、吸入空気変化量ΔGaの大きさが大きくなるほど「下流側空燃比センサ56の出力値Voxsと判定値Vthとの差の大きさ」が小さくなるように、出力値Voxs及び判定値Vthのうちの少なくとも一方(本例においては、判定値Vth)を修正する第2の修正を行う第2パラメータ修正手段を含む(図11のステップ1110及びステップ950を参照。)。
これにより、出力値Voxsが判定値Vthよりも小さい値から判定値Vthよりも大きい値へと変化する時点(図10の(G)における時刻t4)が、前記第2の修正を行わない場合(図10の(D)における時刻t5)に比較して早期に到来する。
その結果、機関の空燃比がリッチ空燃比に維持される期間が短くなるので(図10の(F)の時刻t2〜時刻t4に対応する期間を参照。)、出力値Voxsは時刻t4直後において過大とならない。このため、出力値Voxsが次に判定値Vthを下回る時点が早くなるので(図10の(D)の時刻t7に対する(G)の時刻t6を参照。)、機関の空燃比は長期間に渡りリーン空燃比に維持されず、よって、(H)に示したように時刻t6の直後においてNOxが流出しない。
なお、第2制御装置において、第2の修正は判定値Vthを減少することであったが、第2の修正は出力値Voxsを修正することであってもよい。即ち、触媒流入ガスの空燃比がリッチ空燃比となるように機関の空燃比が制御され、且つ、吸入空気量Gaが減少している場合、吸入空気変化量ΔGaの大きさが大きくなるほど大きくなる値を出力値Voxsに加えた値(吸入空気変化量ΔGaの大きさが大きいほど出力値Voxsがより大きくなるように出力値Voxsを修正した値)を、触媒状態の判定のための出力値(判定値Vthと比較する出力値)として採用してもよい。
<第3実施形態>
次に、本発明の第3実施形態に係る空燃比制御装置(以下、「第3制御装置」とも称呼する。)について説明する。
第3制御装置は、触媒流入ガスの空燃比がリッチ空燃比となるように機関の空燃比が制御されていて(目標空燃比abyfrが目標リッチ空燃比afRichに設定されていて)、且つ、吸入空気量Gaが増加している(吸入空気変化量ΔGaが正である)場合に、吸入空気変化量ΔGaの大きさ(|ΔGa|)が大きくなるほど判定値Vthを小さくする(中央値Vmidと判定値Vthとの差が大きくなるように判定値Vthを減少させる)点のみにおいて、第2制御装置と相違している。以下、この相違点を中心に説明する。
(第3制御装置による空燃比フィードバック制御の概要)
図12の時刻t3以前に示したように、触媒流入ガスの空燃比がリッチ空燃比となるように機関の空燃比が制御され且つ吸入空気量Gaが増大している場合、図12の(D)に示したように出力値Voxs及び判定値Vthの両方を修正しないと、出力値Voxsが判定値Vthを上回る時点が遅くなる((D)の時刻t3を参照。)。その結果、時刻t3直後までの期間において、機関の空燃比がリッチ空燃比に維持されることから、時刻t3直後において出力値Voxsは非常に大きくなる。このため、出力値Voxsが次に判定値Vthを下回る時点が遅くなるので(時刻t6を参照。)、機関の空燃比は長期間に渡りリーン空燃比に維持され((C)の時刻t3〜時刻t6に対応する期間を参照。)、それにより多量のNOxが発生する。その結果、(E)に示したように、時刻t6の直後において多量のNOxが触媒から流出する。
これに対し、第3制御装置によれば、図12の(G)の時刻t2までに示したように、触媒流入ガスの空燃比がリッチ空燃比となるように機関の空燃比が制御され且つ吸入空気量Gaが増大している場合、出力値Voxsと判定値Vthとの差の大きさが小さくなるように判定値Vthが修正される(図12の例においては、判定値Vthと中央値Vmidとの差が大きくなるように判定値Vthが減少させられる。)。この修正は第3の修正と称呼される。
これによれば、出力値Voxsが判定値Vthを上回る時点が早くなる(図12の(D)の時刻t3に対する(G)の時刻t2を参照。)。その結果、機関の空燃比がリッチ空燃比に維持される期間が短くなるので(図12の(F)の時刻t2の直後を参照。)、出力値Voxsは時刻t2直後において過大とならない。このため、出力値Voxsが次に判定値Vthを下回る時点が早くなるので(図12の(D)の時刻t6に対する(G)の時刻t4を参照。)、NOxの発生量が過大にならない。その結果、触媒から流出するNOxの量は、(H)の時刻t4の直後に示したように、(E)の時刻t6の前後に示した場合よりも格段に少なくなる。
(作動)
次に、第3制御装置の実際の作動について説明する。第3制御装置のCPUは、第1制御装置のCPUと同様、図7の燃料噴射制御ルーチンを実行する。更に、第3制御装置のCPUは、図9に代わる図13に示した「触媒状態判定ルーチン」を所定時間tsの経過毎に繰り返し実行する。図7に示したルーチンについては説明済みである。よって、以下、図13に示したルーチンについて説明する。なお、図13に示したステップであって図9にも示されたステップには、図9に示されたステップと同一の符号が付されている。
図13のルーチンは、図9のルーチンのステップ990をステップ1310に置換したルーチンである。より具体的に説明すると、CPUは、図13のステップ930にて触媒リッチ状態表示フラグXCCRORichの値が「0」であると判定すると(即ち、目標空燃比abyfrが目標リッチ空燃比afRichに設定されていると判定すると)、ステップ1310に進み、「吸入空気変化量ΔGaと、暫定判定値Vthnewと、の関係」を規定したテーブルfrichvth(ΔGa)に、ステップ910にて算出した実際の吸入空気変化量ΔGaを適用することにより、暫定判定値Vthnewを決定する。
このテーブルfrichvth(ΔGa)によれば、吸入空気変化量ΔGaが正であるとき(即ち、吸入空気量Gaが増大しているとき)、暫定判定値Vthnewは吸入空気変化量ΔGaの大きさ(|ΔGa|)が大きくなるほど中央値Vmidから離れるように次第に小さくなる値に設定される。同様に、テーブルfrichvth(ΔGa)によれば、吸入空気変化量ΔGaが負であるとき(即ち、吸入空気量Gaが減少しているとき)、暫定判定値Vthnewは吸入空気変化量ΔGaの大きさ(|ΔGa|)が大きくなるほど中央値Vmidから離れるように次第に小さくなる値に設定される。即ち、機関の空燃比がリッチ空燃比に設定されている場合には、吸入空気量Gaが増大しているか否かに関らず、吸入空気変化量ΔGaの大きさ(|ΔGa|)が大きいほど判定値Vthが小さくなるように決定される。その後、CPUはステップ950以降に進む。
以上、説明したように、第3制御装置は、第1制御装置と同様の空燃比制御手段を備える。更に、第3制御装置の空燃比制御手段は、触媒流入ガスの空燃比がリッチ空燃比となるように機関の空燃比を制御し(図13のステップ930での「No」との判定、図7のステップ745及びステップ755を参照。)、且つ、吸入空気量Gaが増大している場合、吸入空気変化量ΔGaの大きさが大きくなるほど「下流側空燃比センサ56の出力値Voxsと判定値Vthとの差の大きさ」が小さくなるように、出力値Voxs及び判定値Vthのうちの少なくとも一方(本例においては、判定値Vth)を修正する第3の修正を行う第3パラメータ修正手段を含む(図13のステップ1310及びステップ950を参照。)。
これにより、出力値Voxsが判定値Vthよりも小さい値から判定値Vthよりも大きい値へと変化する時点(図12の(G)における時刻t2)が、前記第3の修正を行わない場合(図12の(D)における時刻t3)に比較して早期に到来する。
よって、出力値Voxsは時刻t2直後において過大とならないので、出力値Voxsが次に判定値Vthを下回る時点が早くなる(図12の(G)の時刻t4を参照。)。その結果、触媒から流出するNOxの量は、(H)の時刻t4の直後に示したように、(E)の時刻t6の前後に示した場合よりも格段に少なくなる。
なお、第3制御装置において、第3の修正は判定値Vthを減少することであったが、第3の修正は出力値Voxsを修正することであってもよい。即ち、触媒流入ガスの空燃比がリッチ空燃比となるように機関の空燃比が制御され、且つ、吸入空気量Gaが増大している場合、吸入空気変化量ΔGaの大きさが大きくなるほど大きくなる値を出力値Voxsに加えた値(吸入空気変化量ΔGaの大きさが大きいほど出力値Voxsがより大きくなるように出力値Voxsを修正した値)を、触媒状態の判定のための出力値(判定値Vthと比較する出力値)として採用してもよい。
以上、本発明による空燃比制御装置の種々の実施形態について説明した。これらの実施形態の空燃比制御手段は、吸入空気変化量ΔGaの大きさが大きくなるほど、下流側空燃比センサ56の出力値Voxsと判定値Vthとの差の大きさが小さくなるように、出力値Voxs及び判定値Vthのうちの少なくとも一方を修正することにより、「出力値Voxsと判定値Vthとの大小関係が逆転する時点」を前記修正を行わない場合に比較して早期に到来させるパラメータ修正手段(即ち、第1〜第3パラメータ修正手段を組み合わせた手段)を含むと表現することもできる。
但し、図13の「ステップ940及びステップ1310」に示したテーブルから理解されるように、触媒リッチ状態表示フラグXCCRORichの値が「1」の場合(機関の空燃比がリーン空燃比に設定されている場合)であって吸入空気変化量ΔGaが負の場合(吸入空気量Gaが減少している場合)には、出力値Voxs及び判定値Vthの何れも修正されない。
本発明は上記実施形態に限定されることはなく、本発明の範囲内において種々の変形例を採用することができる。例えば、目標リッチ空燃比afRichは一定値であってもよい。更に、目標リーン空燃比afLeanは一定値であってもよい。また、上記実施形態の空燃比制御手段は、目標空燃比abyfrを、周知のサブフィードバック制御により変更する空燃比制御を行ってもよい。即ち、空燃比制御手段は、下流側空燃比センサ56の出力値Voxsを判定値Vthに接近させるサブフィードバック量を求め、そのサブフィードバック量により目標空燃比abyfrを修正してもよい(例えば、特開2005−171982号公報を参照。)。