JP5458295B1 - 押湯を用いない鋳造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】押湯を用いず、あるいは押湯と湯道を用いずに、高い鋳造歩留りで健全な鋳物製品を得る鋳造方法を提供する。
【解決手段】方案系の凝固モジュラスを適正に設定することで、方案系から製品の凝固収縮を補給する。
【選択図】図1

Description

発明の詳細な説明
産業上の利用分野
本発明は、鋳鉄鋳物の砂型鋳造において、押湯を用いない、あるいは押湯と湯道を用いない鋳造方案によって、高い鋳造歩留りで健全な鋳物製品を得る鋳造方法に関するものである。
鋳造においては、製品部の健全性を高めるため製品の適宜の個所に押湯を設け、押湯から製品の凝固収縮を補給することが行われており、一般的には製品の上部に設ける揚り押湯や側面に設けるサイド押湯が用いられている。しかし、いずれの場合も、押湯が鋳込重量に占める割合は、通常20〜30%であり、その結果、製品重量/鋳込重量で示される鋳造歩留りが低いという問題点がある。鋳造歩留りは、鋳造のコストを左右する重要な指標である。
鋳鉄鋳物の場合には、凝固過程で黒鉛が晶出あるいは析出していわゆる黒鉛による膨張が発生し、製品の凝固収縮を自己補償することが知られている。しかし、通常はこれでは製品の凝固収縮の補給は不十分で押湯を用いているのが従来技術である。
従来技術の事例を図17及び図18示す。図17は、製品1の上部に揚り押湯5Aを設けた鋳型の状態を示す。図18は、製品1の側面にサイド押湯5Bを設けた鋳型の状態を示す。このように設けた押湯から製品の凝固収縮を補給することで、製品の健全性を確保することが一般的に行われている。
押湯を削減する試みは、化学成分、接種、注湯温度、押湯形状などの面から行われてきたが、この40年間ほとんど進んでいない。普通鋳鉄で、一部の形状の製品において、押湯を用いないで実用上差し支えない程度の健全性が得られる場合もあるが、方案的な明確な指針、規準は明示されていない。また、球状黒鉛鋳鉄では、普通鋳鉄とは異なる凝固形態のため、押湯なしではほとんどの場合健全な製品は得られていない。
また、湯道は溶湯を鋳込むために必要な方案要素で、これは従来技術では押湯のよう減したい要素である。
従来技術について、特許文献をキーワード「鋳造×押湯」で検索した結果のうちから押湯を用いた主要な鋳造方案の例を下記に示す。
特開2008−221285 特開2007−111741 特開2005−144461 特開平10−221333 特開平10−43836 特開平9−314308 特開平8−290254 特開平8−93204 特開平5−104195 特開平5−69108
発明がが解決しようとする課題
上記のような従来技術の問題点を整理すると次のようになる。鋳造のコストを左右する重要な指標である鋳造歩留りが低いひとつの理由は、鋳込重量の20〜30%を占める押湯を用いて鋳物製品の凝固収縮を補給してその健全性を確保しているためである。もうひとつの理由は、溶湯を鋳込むために必要な湯道が鋳込重量の20〜25%を占めていることである。
上記のような問題点に鑑み、本発明では、押湯を用いない、あるいは押湯と湯道を用いないで、鋳型内の方案要素から製品の凝固収縮を補給して健全な鋳物製品を得る鋳造方法を提供する。これによって、鋳造歩留りは大幅に改善され、鋳物製品の大きなコストダウンが得られる。
なお、従来技術の特許文献に示したように、押湯及び湯道の用い方は砂型鋳造においても金型鋳造においても基本的には同じであるので、以下に説明する手段並びに実施例はいずれの鋳型、鋳造にも適用可能である。
課題を解決するための手段
(手段1)
鋳鉄鋳物の砂型鋳造において、押湯を用いず製品、湯道、湯口、湯口カップの方案要素からなる方案系を用い、該方案系の方案要素の凝固モジュラスを順番にM1、M2、M3、M4とするとき、M2、M3、M4のすべてがM1より大きい方案系とすることにより、製品の凝固収縮を湯道、湯口、湯口カップから補給することを特徴とする鋳造方法である。
従来技術の図17及び図18に示したように、一般的に鋳物製品を鋳造する場合には、製品、押湯、湯道、湯口、湯口カップの方案要素からなる方案系が用いられている。製品以外の方案要素についてその機能を説明すると、まず押湯は、製品の凝固収縮を補給することが機能である。湯道、湯口、湯口カップは注湯される溶湯を押湯及び製品に導くことが機能である。湯道は通常、上下鋳型の合せ面である見切面に水平に設けられ、湯口は上型に垂直に設けられ、湯口カップは注湯された溶湯がこぼれないように溶湯を受ける形で湯口の上部の上型上面に設けられている。
手段1では、押湯を用いず製品、湯道、湯口、湯口カップの方案要素からなる方案系を用いた。それぞれの方案要素の凝固モジュラスを順番にM1、M2、M3、M4とする。ここで凝固モジュラスとは、各方案要素の凝固の遅速を評価する一般的な指標で、体積/表面積で表示される。その単位は長さである。凝固モジュラスが大きいものは凝固が遅く、小さいものは凝固が速いことがわかっている。砂型鋳造では凝固時間は、凝固モジュラスの2乗に比例すると言われている。
そして、各方案要素の凝固モジュラスの関係を、M2、M3、M4のすべてがM1より大きい方案系とした。これによって、湯道、湯口、湯口カップの凝固はいずれも製品よりも遅くなる。つまり、製品が凝固完了するまで、湯道、湯口、湯口カップの各方案要素の内部には未凝固の融液が残っており、これらの方案要素から製品の凝固収縮を補給することが可能である。凝固収縮を補給する圧力は、湯口と湯口カップの高さを合計した高さ(通常は上型の高さに等しい)に相当する溶湯ヘッドによる圧力によって与えられる。
本手段によって、従来技術では、製品の凝固収縮を押湯から補給していたものが、湯道、湯口、湯口カップの方案要素から補給できるようになり、押湯を用いないで健全な製品を得ることができる。その結果、鋳造歩留りが大幅に向上する。なお、本手段では押湯を用いないが、必要に応じて製品と湯道の間、あるいは湯道の途中に保温効果のため適宜の大きさの湯溜りを設けることは差し支えなく、これは湯道の一部の変形と見なせる。
なお、各方案要素の凝固モジュラスは、局所的に極小値が存在する場合には、その値を該方案要素の凝固モジュラスとみなす。
(手段2)
鋳鉄鋳物の砂型鋳造において、押湯を用いず製品、湯道、湯口、湯口カップの方案要素からなる方案系を用い、該方案系の方案要素の凝固モジュラスを順番にM1、M2、M3、M4とするとき、M2、M3、M4の少なくとも一つがM1より小さく、かつM2、M3、M4のすべてが0.6M1より大きい方案系とすることにより、製品の凝固収縮の一部を湯道、湯口、湯口カップから補給することを特徴とする鋳造方法である。
手段2では、押湯を用いず、製品、湯道、湯口、湯口カップの方案要素からなる方案系を用い、各方案要素の凝固モジュラスの関係を、M2、M3、M4の少なくとも一つがM1より小さく、かつM2、M3、M4のすべてが0.6M1(M1の0.6倍)より大きい方案系とした。これは、枠サイズ、製品大きさ、込め数などの都合で、方案系の凝固モジュラスを製品よりも大きくできない場合に用いる。
この場合、M2、M3、M4の少なくとも一つがM1より小さいことによって、湯道、湯口、湯口カップのうちの少なくとも一つの凝固は製品よりも速くなる。しかし、M2、M3、M4のすべてが0.6M1より大きいので、湯道、湯口、湯口カップの凝固時間は製品の凝固時間の約36%(凝固時間は凝固モジュラスの2乗に比例するので)よりは長くなる。つまり、製品が36%程度凝固完了するまで、湯道、湯口、湯口カップの各方案要素の内部には未凝固の融液が残っており、これらの方案要素から製品の凝固収縮の一部を補給することが可能である。凝固収縮を補給する圧力は、湯口と湯口カップの高さを合計した高さに相当する溶湯ヘッドによる圧力よって与えられる。
M2、M3、M4のすべてが0.6M1より大きい方案系とした理由を説明する。健全な製品を得るために必要な溶湯補給量は、溶湯の液体収縮、変態収縮、黒鉛による膨張、鋳型の膨張などを考慮して計算すると製品体積の約4%程度とわずかな量である。凝固にあたって液体収縮は速やかに起るので、この方案系では必要な溶湯補給量のうち約25%程度は、前述の製品凝固時間の36%の時間内で液体収縮期間での補給として、湯道、湯口、湯口カップの方案要素から補給できる。
不足の約1.5%は、製品以外の方案要素が凝固後、製品は溶湯補給がない状態で単独で凝固が進行するが、鋳鉄特有の黒鉛析出による膨張が製品内部で作用してこの不足分を補償することができる。この結果、方案系からの製品の凝固収縮の補給は必要な溶湯補給量の一部であるが、製品の黒鉛析出による自己膨張と合わされて引け巣が防止され健全な製品が得られることになる。勿論、方案系の最小凝固モジュラスが変われば、それに対応して溶湯補給の形態(液体収縮補給の比率など)は変わる。
M2、M3、M4の少なくとも一つをM1より小さくしたのは、できるだけ小さい方案系で歩留りを向上させるためである。すなわち、M2、M3、M4のすべてが0.6M1より大きければ、上記の補給は可能であるので、M2、M3、M4をいたずらに大きくする必要はないため、各方案要素を可能な限り小さくしたのである。勿論、M2、M3、M4のすべてをM1より小さくすることで最も高い歩留りを得ることができるが、それは製品形状、その凝固モジュラス、込め数などによる制約があるので方案要素の適宜のものを小さくするようにする。
本手段によっても、従来技術では、製品の凝固収縮を押湯から補給していたものが、湯道、湯口、湯口カップの方案要素からその一部を補給できるようになり、押湯を用いないで健全な製品を得ることができる。本手段では、方案系を小さくしたので、手段1よりも鋳造歩留りが向上した。
なお、本手段では、湯道、湯口、湯口カップのいずれかの凝固が製品よりも速いので、これらの方案要素から製品の凝固収縮を完全には補給できないので、補給の一部を製品の黒鉛による膨張に依存している。したがって、必ずしもすべての製品に適用できるとは限らず、製品の形状、凝固モジュラスの大きさなどによる制約がある。このため、本手段は手段1より適用できる製品に制約がある。通常、製品の凝固モジュラスが0.5cm以上の場合には本手段を適用可能である。凝固モジュラスが0.5cm以下の場合でも、製品形状が単純で、溶湯補給がし易い形状であれば可能である。
(手段3)
鋳鉄鋳物の砂型鋳造において、押湯及び湯道を用いず製品、湯口、湯口カップの方案要素からなる方案系を用い、該方案系の方案要素の凝固モジュラスを順番にM1、M3、M4とするとき、M3及びM4がM1より大きい方案系とすることにより、製品の凝固収縮を湯口、湯口カップから補給することを特徴とする鋳造方法である。
手段3では、押湯及び湯道を用いず製品、湯口、湯口カップの方案要素からなる方案系を用い、M3及びM4がM1より大きい方案系とした。これによって、湯口及び湯口カップの凝固速度は製品より遅くなる。つまり、製品が凝固完了するまで、湯口、湯口カップの各方案要素の内部には未凝固の融液が残っており、これらの方案要素から製品の凝固収縮を補給することが可能である。
本手段によっても、従来技術では、製品の凝固収縮を押湯から補給していたものが、湯口、湯口カップの方案要素から補給できるようになり、押湯及び湯道を用いないで健全な製品を得ることができる。この結果、手段1、2よりもさらに高い鋳造歩留りを得ることができる。ただし、本手段は、製品大きさ、込め数などの制約で適用できない場合もあり得る。その時は手段1又は2を利用する。
(手段4)
鋳鉄鋳物の砂型鋳造において、押湯及び湯道を用いず製品、湯口、湯口カップの方案要素からなる方案系を用い、該方案系の方案要素の凝固モジュラスを順番にM1、M3、M4とするとき、M3、M4の少なくとも一つがM1より小さく、かつM3及びM4を0.6M1より大きい方案系とすることにより、製品の凝固収縮の一部を湯口、湯口カップから補給することを特徴とする鋳造方法である。
手段4では、押湯及び湯道を用いず製品、湯口、湯口カップの方案要素からなる方案系において、M3、M4の少なくとも一つがM1より小さく、かつM3及びM4を0.6M1より大きい方案系を用いた。M3、M4の少なくとも一つがM1より小さいことによって、湯口、湯口カップの少なくとも一つの凝固は製品よりも速くなる。しかし、M3及びM4が0.6M1より大きいので、湯口及び湯口カップの凝固時間は製品の凝固時間の約36%となる。つまり、製品が36%程度凝固完了するまで、湯口及び湯口カップの各方案要素の内部には未凝固の融液が残っており、これらの方案要素から製品の凝固収縮の一部を補給することが可能である。M3、M4の少なくとも一つをM1より小さくした理由は歩留り向上のためであり、M3及びM4が0.6M1より大きい方案系とした理由は、手段2で説明したことと同じである。
本手段によっても、従来技術では、製品の凝固収縮を押湯から補給していたものが、湯口及び湯口カップの方案要素からその一部が補給できるようになり、押湯及び湯道を用いないで健全な製品を得ることができた。本手段では、手段3よりも小さい方案系を用いたので、手段3よりもさらに鋳造歩留りが向上した。
なお、本手段では、湯口、湯口カップのいずれかの凝固が製品よりも速いため、これらの方案要素から製品の凝固収縮を完全には補給できないので、補給の一部を製品の黒鉛による膨張に依存している。したがって、必ずしもすべての製品に適用できるとは限らず、製品の凝固モジュラスの大きさ、形状などによる制約がある。通常、製品の凝固モジュラスが0.5cm以上の場合には可能である。凝固モジュラスが0.5cm以下の場合でも、製品形状が単純で、溶湯補給がし易い形状であれば可能である。
手段1乃至4を総括すると、適用できる鋳造製品に関しては、手段1が最も適用範囲が広く、以下手段2、手段3、手段4の順である。また、得られる鋳造歩留りの向上効果の面では、手段4が最も効果が大きく、以下手段3、手段2、手段1である。いずれの手段を用いるかは、製品形状、凝固モジュラス、込め数、枠サイズ、材質などを考慮して決めるようにする。
(手段5)
手段1及び2のいずれか一項に記載の鋳造方法を用いて1枠内に複数の製品を鋳造する場合において、湯口中心から製品までの湯道長さが、湯道、湯口、湯口カップの方案要素の凝固モジュラスM2、M3、M4の最小値の40倍以内の位置に配置された製品について該鋳造方法を適用して押湯を用いず、40倍を超える位置に配置された製品については押湯を用いることを特徴とする鋳造方法である。
手段5では、手段1及び2のいずれか一項に記載の鋳造方法を、1枠内に複数の製品を鋳造する場合に適用するにあたって、より実用的な鋳造方法を提示するものである。このような場合、すべての製品に押湯を用いない手段1又は2を適用すると問題が発生することがある。例えば、複数の製品のうち、湯口から製品までの湯道長さが長い位置に配置された製品では、湯道途中で局部的な冷却が速い個所が発生して溶湯補給を遮断したりすることが起り易くなる。また、溶湯補給の距離が長くなるので、途中の湯道の凝固層が増加することで補給抵抗が増大したりする。
したがって、このような場合、複数の製品すべてに手段1又は2を適用して押湯を用いない方案系とするよりも、湯口に近い位置に配置された製品に手段1又は2を適用して押湯を用いず湯道、湯口、湯口カップなどの方案系から溶湯を補給し、湯口から遠い製品には従来技術の押湯を用いて溶湯を補給するようにした。この方が1枠内の製品全体の品質の安定性を考えると優れているのである。
押湯を用いるか用いないかの基準値として、各種の鋳造例から得られた結果を基に、湯道、湯口、湯口カップの方案要素の凝固モジュラスM2、M3、M4の最小値(最小凝固モジュラスで、長さの単位を有する)の40倍の湯道長さとした。つまり、湯口中心から製品までの湯道長さが最小凝固モジュラスの40倍以内の位置に配置された製品に対しては手段1又は2を適用して押湯を用いず、40倍を超える位置に配置された製品に対しては手段1又は2を適用せず、従来技術の押湯を用いるようにした。このことによって複数込めの鋳造において、手段1あるいは手段2をより広く、安定して適用できるようになる。
(手段6)
手段1乃至5のいずれか一項に記載の鋳造方法において、湯口カップ上面の溶湯を保温及び/又は加熱することによって湯口カップ上面の溶湯の凝固を遅延させることを特徴とする鋳造方法である。
手段6では、手段1乃至5のいずれか一項に記載の鋳造方法において、湯口カップ上面の溶湯は空気にさらされているため酸化皮膜が発生し易く、その結果、凝固が促進されて大気圧が作用しにくい状態が生じる場合があるので、湯口カップ上面の溶湯を保温及び/又は加熱する手段を用いた。これによって、湯口カップ上面の溶湯は長時間凝固層が発生せず融液状態を保ち、湯口カップ上面から大気圧を有効に作用させることで製品の凝固収縮の補給が安定的に行われるようになる。
ここで本手段の要点である大気圧の作用について説明する。注湯が完了した時点では、各方案要素には均等に大気圧が作用しているので、方案要素から製品の凝固収縮を補給する圧力は湯口と湯口カップの合計高さ(上型の高さに等しい)に相当する溶湯ヘッドである。しかし、一定時間後に、各方案要素では表層の凝固が進行し、大気圧が作用しても、内部の融液にその圧力は伝わらない状態になる。
この時、湯口カップ上面の溶湯は、接触している空気と酸化皮膜を形成しながら表層の凝固が進行する。この凝固層が、他の方案要素と同じく大気圧が作用しても内部の融液にその圧力は伝わらない状態になれば、製品の凝固収縮を補給する圧力は、注湯完了時点と同じく湯口と湯口カップの合計高さに相当する溶湯ヘッドである。
本手段では、この一般的な状態を改善したものである。すなわち、湯口カップ上面の溶湯を保温及び/又は加熱することで、長時間凝固層を発生させず融液状態を保ち、湯口カップ上面から長時間大気圧を効かせる時間をできるだけ延長するようにした。この結果、方案系中の未凝固の融液に長時間大気圧を作用させることができ、方案系からの製品の凝固収縮の補給をより確実に行うことができるようになる。なお、大気圧1気圧は、湯口と湯口カップの合計高さに相当する溶湯ヘッド(一般に0.1〜0.2気圧)に比べ5倍以上の大きな圧力で、その効果は極めて大きいものである。
保温及び/又は加熱の方法としては、湯口カップ上面の溶湯に砂を被せる、樹脂が被覆された砂あるいは鋳型片を被せる、断熱材を被せる、耐火材を被せる、発熱材を被せる、燃料ガスを用いて加熱する、高周波加熱コイルを用いて加熱するの、いずれか一つ以上の方法を用いる。
作用
手段1では、押湯を用いず湯道、湯口、湯口カップの方案要素から製品の凝固収縮を補給できるようになり、押湯が不要になった。その結果、鋳造歩留りが大幅に向上した。
手段2では、押湯を用いず湯道、湯口、湯口カップの方案要素から製品の凝固収縮の一部を補給できるようになり、押湯が不要になった。本手段では、小さな方案系を用いたので、手段1よりもさらに鋳造歩留りが向上した。但し、本手段は手段1に比べ、製品の凝固モジュラス、形状などの制約があり適用範囲が限定される場合がある。
手段3では、押湯及び湯道を用いず湯口、湯口カップの方案要素から製品の凝固収縮を補給できるようになり、押湯及び湯道が不要になった。その結果、鋳造歩留りが手段1、2よりもさらに向上した。
手段4では、押湯及び湯道を用いず湯口、湯口カップの方案要素から製品の凝固収縮の一部を補給できるようになり、押湯及び湯道が不要になった。本手段では、凝固モジュラスの小さな方案系を用いたので、鋳造歩留りが手段3よりもさらに向上した。但し、本手段は手段3に比べ、製品の凝固モジュラス、形状などの制約があり適用範囲が限定される場合がある。
手段5では、手段1あるいは手段2を1枠内に複数の製品を鋳造する場合に適用するにあたって、より実用的な鋳造方法を提示した。これによって、複数込めの鋳造において、手段1あるいは手段2をより安定的に適用することができるようになった。
手段6では、手段1乃至5のいずれかに記載の鋳造法において、湯口カップ上面の溶湯を保温及び/又は加熱することによって湯口カップ上面の溶湯の凝固を遅延させることができ、凝固収縮の補給に大気圧を長時間有効に作用させることができるようになった。その結果、手段1乃至5の実施がさらに安定的に行えるようになった。
以下に本発明を詳細に説明するが、これら実施例によって本発明が限定されるものではない。
図1に手段1を用いた実施例1を示す。本例では、平込め鋳造の例を示す。本図は鋳型の縦断面図であって、押湯は用いず製品1に湯道2、湯口3、湯口カップ4が方案系として設けられている。各部の凝固モジュラスM1、M2、M3、M4は、製品M1=1.6cm、湯道M2=1.7cm、湯口M3=1.75cm、湯口カップM4=1.9cmである。溶湯は湯口カップ4から湯口3、湯道2を通って製品1に注湯される。
その後凝固が進行するが、湯道2、湯口3、湯口カップ4のすべての凝固モジュラスは製品1の凝固モジュラスよりも大きいので、製品1の凝固が完了するまで、湯道2、湯口3、湯口カップ4の内部は融液状態が保たれる。したがって、製品1の凝固収縮は湯道2、湯口3、湯口カップ4から補給されることになる。その結果、製品1の内部に発生が懸念される内部引け巣の問題は解決される。なお、製品へ補給すべき凝固収縮量約4%は、本例の凝固モジュラスに対応する方案系の体積で十分補給できるわずかな収縮量である。以下の実施例においても同じである。
また、湯道2と製品1の接合部分である堰7は鋳込み時間及び給湯を考慮して適宜の大きさにする。一般的にはこの堰7の凝固モジュラスは製品1の凝固モジュラスM1の0.5〜0.7倍程度が推奨されている。本例では1.1cmを用いた。
この結果、従来技術では図17または図18のように、揚り押湯5Aまたはサイド押湯5Bを用いていたものが、押湯なしで健全な製品を得ることができるようになった。この製品の鋳造に必要な方案系の重量を従来技術と本実施例で比較すると、本実施例では、押湯がなくなり、その代わり湯道、湯口、湯口カップの凝固モジュラスを製品の凝固モジュラスよりも大きくしたのでその分わずか増加した。通常、押湯は製品にたいして45〜70%と大きいので、その差し引きでは本実施例の方が重量減少になる。したがって、鋳造歩留りが向上する。
また、押湯を用いないで健全な製品が鋳造できるもうひとつの効果は、鋳造後に押湯を除去する作業が省略できることである。これによって、後工程の簡略化が得られた。
図2に手段2を用いた実施例2を示す。本例では、押湯は用いず製品1に湯道2、湯口3、湯口カップ4が方案系として設けられている。各部の凝固モジュラスM1、M2、M3、M4は、製品M1=1.5cm、湯道M2=0.92cm、湯口M3=1.2cm、湯口カップM4=1.9cmである。溶湯は湯口カップ4から湯口3、湯道2を通って製品に注湯される。なお、湯口2と製品1の接合部分である堰7は実施例1と同様に鋳込み時間及び給湯を考慮して適宜の大きさにし、本例では1.1cmとした。
本実施例では、湯口カップ4の凝固モジュラスM4は製品の凝固モジュラスM1よりも大きいが、湯道2、湯口3の凝固モジュラスM2、M3は製品の凝固モジュラスM1よりも小さく、かつ0.6倍よりも大きい。この結果、製品1の凝固収縮にたいする方案系である湯道2、湯口3、湯口カップ4からの補給は、最小の凝固モジュラスである湯道M2=0.92cm(M2/M1=0.61)が最初に凝固するので、製品1の凝固収縮期間のうち、38%程度(これは凝固凝固モジュラスの比の二乗=(M2/M1)で計算される)の期間しか補給できない。
この場合、液体収縮は速やかに起るので、この間に製品1の凝固収縮約4%のうち、約2.5%程度が液体収縮補給として補給される。残りの約1.5%の不足分は、製品1の形状が実施例1の場合よりも単純であるので、製品1自身の凝固過程で起る黒鉛膨張によってよって補充されるので製品1は内部引け巣のない健全なものが得られる。勿論、方案系の最小凝固モジュラスが変われば、それに対応して溶湯補給の形態(液体収縮補給の比率など)は変わるが、方案系の最小凝固モジュラスが製品の凝固モジュラスの0.6倍以上であれば製品の健全性は確保される。
このように、製品1にたいし、湯道2、湯口3、湯口カップ4からなる方案系のいずれかひとつ以上の凝固モジュラスが製品1の凝固モジュラスよりも小さくても、それらの凝固モジュラスがすべて製1品の凝固モジュラスの0.6倍よりも大きければ、製品形状によっては、押湯を用いないで健全な製品を得ることができる。
この結果、本実施例でも押湯なしで健全な製品の鋳造が可能となった。ただし、製品形状、材質、注湯温度、鋳型などの鋳造条件によっては、湯道2、湯口3、湯口カップ4の大きさを調整する必要がある場合もある。
本実施例は、実施例1よりも湯道、湯口の大きさが小さくなっているので、鋳造歩留はさらに向上した。しかし、これは上記のような鋳造条件によっては、適用が難しい場合もあるので適用範囲が限定される方法である。また、押湯がなくなったので、押湯除去の後工程が簡略化された。
図3に手段3を用いた実施例3を示す。本例では、押湯及び湯道は用いず製品1に、湯口3、湯口カップ4が方案系として設けられている。各部の凝固モジュラスM1、M3、M4は、製品M1=1.8cm、湯口M3=1.9cm、湯口カップM4=1.9cmである。溶湯は湯口カップ4から湯口3を通って製品に注湯される。
その後凝固が進行するが、湯口3、湯口カップ4のすべての凝固モジュラスは製品1の凝固モジュラスよりも大きいので、製品1の凝固が完了するまで、湯口3、湯口カップ4の内部は融液状態が保たれる。したがって、製品1の凝固収縮は湯口3、湯口カップ4から補給されることになる。その結果、製品1の内部に発生が懸念される内部引け巣の問題は解決される。
なお、湯口3と製品1の接合部分である堰7は実施例1、2と同様に鋳込み時間及び給湯を考慮して適宜の大きさにする。本例では1.2cmを用いた。以下の実施例においてもほぼ同様に、製品M1の0.7倍程度とした。
この結果、押湯も湯道も用いず、湯口と湯口カップからの溶湯補給で健全な製品を得ることができるようになった。この製品の鋳造に必要な方案系の重量を従来技術と本実施例で比較すると、本実施例では、押湯と湯道がなくなり、その代わり湯口、湯口カップの凝固モジュラスを製品の凝固モジュラスよりも大きくしたのでその分わずか増加した。通常、押湯は全鋳込重量の20〜30%、湯道は約20〜25%を占めるほど大きいので、その差し引きでは本実施例の方が重量減少になる。したがって、鋳造歩留りが向上する。
また、押湯及び湯道を用いないで健全な製品が鋳造できるもうひとつの効果は、鋳造後に押湯及び湯道を除去する作業が省略できることである。これによって、後工程の大幅な簡略化が得られた。
図4に手段4を用いた実施例4を示す。本例では、押湯及び湯道は用いず製品1に湯口3、湯口カップ4が方案系として設けられている。各部の凝固モジュラスM1、M3、M4は、製品M1=1.55cm、湯口M3=0.94cm、湯口カップM4=1.9cmである。溶湯は湯口カップ4から湯口3を通って製品に注湯される。
本実施例では、湯口カップ4の凝固モジュラスM4は製品の凝固モジュラスM1よりも大きいが、湯口3の凝固モジュラスM3は製品の凝固モジュラスM1よりも小さく、かつ0.6倍よりも大きい。この結果、製品1の凝固収縮にたいする方案系である湯口3、湯口カップ4からの補給は、最小の凝固モジュラスである湯道M3=0.94cm(M3/M1=0.61)が最初に凝固するので、製品1の凝固収縮期間のうち、37%程度(これは凝固凝固モジュラスの比の二乗=(M3/M1)で計算される)の期間しか補給できない。
この場合も、液体収縮は速やかに起るので、この期間に製品1の凝固収縮約4%のうち、約2.5%程度が液体収縮補給として補給される。残りの約1.5%の不足分は、製品1の形状が実施例3の場合よりも単純であるので、製品1自身の凝固過程で起る黒鉛膨張によってよって補充されるので製品1は内部引け巣のない健全なものが得られる。この場合も、最小凝固モジュラスが変われば、溶湯補給の形態はそれにともなって変わるが、方案系の最小凝固モジュラスが製品の凝固モジュラスの0.6倍以上であれば製品の健全性は確保される。
このように、製品1にたいし、湯口3、湯口カップ4からなる方案系のいずれかひとつ以上の凝固モジュラスが製品1の凝固モジュラスよりも小さくても、それらの凝固モジュラスがすべて製品1の凝固モジュラスの0.6倍よりも大きければ、製品形状によっては、押湯を用いないで健全な製品を得ることができる。
この結果、本実施例でも押湯及び湯道なしで健全な製品の鋳造が可能となった。ただし、製品形状、材質、注湯温度、鋳型などの鋳造条件によっては、湯口3、湯口カップ4の大きさを調整する必要がある場合もある。
本実施例は、実施例3よりも湯口の大きさが小さくなっているので、鋳造歩留はさらに向上した。しかし、これは上記のような鋳造条件によっては、適用が難しい場合もあるので適用範囲が限定される方法である。また、押湯がなくなったので、押湯除去の後工程が簡略化された。
図5に手段3を用いた実施例5を示す。本図は平込め鋳型の平面図である。本例では、1枠の中に複数の製品が配置されており、押湯及び湯道は用いず製品1に、湯口3、湯口カップ4が方案系として設けられている。各部の凝固モジュラスM1、M3、M4は、製品M1=1.8cm、湯口M3=1.9cm、湯口カップM4=2.0cm(表示せず)である。溶湯は湯口カップ4から湯口3を通って製品1に注湯される。
本実施例では、1枠の中に複数の製品が鋳造される場合の例である。このように製品形状、大きさなどによっては鋳造歩留りについて、極めて効率の良い鋳造方法を採用することができる。また、湯道がないので湯口、湯口カップから短距離で安定的に溶湯の補給が可能である。
図6に手段1及び2を用いた実施例6を示す。本例では、1枠の中に複数の製品が配置されており、押湯を用いず製品1に、湯道2、湯口3、湯口カップ4が方案系として設けられている。各部の凝固モジュラスM1、M2、M3、M4は、製品M1=1.2cm、湯道M2=製品Aに対する湯道2Aは1.1cm、製品Bに対する湯道2Bは1.3cm、湯口M3=1.3cm、湯口カップM4=1.4cmである。溶湯は湯口カップ4から湯口3、湯道2を通って製品1に注湯される。
本実施例では、1枠の中に複数の製品1が鋳造される場合の例である。この場合、製品8個のうちAと表示された4個は湯口中心3Cから近く、方案系の最小凝固モジュラス1.1cmの40倍以内の位置に配置されているので、手段2を用いて小さ目の凝固モジュラスを有する湯道2Aを用いているが、Bと表示された4個は湯口中心3Cから遠く、40倍超の位置に配置されているので、長い湯道の途中での凝固進行を防ぐため手段1を用いて大きめの湯道2Bを用いるようにした。
このように1枠の中に複数の製品が配置されている場合には、製品形状、大きさなどを考慮して、製品ごとに湯道の凝固モジュラスつまり湯道大きさを変えることも必要である。
図7に手段5を用いた実施例7を示す。本例では、実施例6と同じ製品個数と配置である。本例では、製品8個のうちAと表示された4個は湯口中心3Cから近く、最小凝固モジュラス1.1cmの40倍以内の位置に配置されているので、手段2を用いて小さ目の凝固モジュラスを有する湯道2を用いているが、Bと表示された4個は湯口中心3Cから遠く、最小凝固モジュラス1.1cmの40倍超の位置に配置されているので、長い湯道の途中での凝固進行が速いことを想定して従来技術の押湯5を用いるようにした。つまり、手段2と従来技術の押湯と併用した。あるいは、手段1と従来技術の併用も同じく手段5である。
この結果、製品Aは湯道、湯口、湯口カップの方案系から溶湯が補給され、製品Bはこの方案系からの溶湯補給に頼らずに押湯からの溶湯が補給され、全体としてA、Bとも健全な製品が得られることになる。この方法によっても、従来のすべての製品に押湯を設けていた場合に比べて、押湯は半減されており、大幅な鋳造歩留りの向上が得られた。
図8に手段5を用いた実施例8を示す。本例では、実施例7と類似の製品個数と配置であるが、本例では湯道2が製品A及び製品Bにたいして一部共通な部分がある場合を示した。実施例7と同様に、製品8個のうちAと表示された4個は湯口中心3Cから近い(最小凝固モジュラスの40倍以内)ので、手段2を用いて小さ目の凝固モジュラスを有する湯道2を用いているが、Bと表示された4個は湯口中心3Cから遠い(最小凝固モジュラスの40倍超)ので、長い湯道2の途中での凝固進行が速いことを想定して従来技術の押湯5を用いるようにした。
この結果、実施例7と全く同様に製品Aは湯道、湯口、湯口カップの方案系から溶湯が補給され、製品Bは湯道2及び湯口3などの方案系からの溶湯補給に頼らずに押湯5から溶湯が補給され、全体としてA、Bとも健全な製品が得られることになる。この方法によっても、従来のすべての製品に押湯を設けていた場合に比べて、押湯は半減されており、大幅な鋳造歩留りの向上が得られた。
実施例1乃至4では単純な1枠内に1個の製品が鋳造される基本的な場合を示したが、実際の量産的な鋳造においては、1枠の中に複数の製品が配置されている複数込めが一般的である。このように場合には、本例に示したように製品形状、大きさ、配置などを考慮して、製品ごとに湯道の凝固モジュラスつまり湯道大きさ変えるとともに、従来技術の押湯を併用する。つまり、一般的な量産の複数込めの鋳造において品質と鋳造歩留りを総合的に向上させるためには、手段1乃至4と従来技術の押湯を適切に併用する手段5を用いる。
図9に手段5を用いた実施例9を示す。本例では、縦型鋳造の例を示す。本図はその鋳型6の縦断面図を示し、8個の製品1が込められており、湯道2、湯口3、押湯5の方案系で構成されている。なお、縦型鋳造においては通常、湯口と湯口カップは兼用になることが多いので、ここでは単に湯口3及び湯口中心3Cと表示している。
8個の製品1のうち、湯口中心3Cから製品1までの湯道長さが短いもの(湯口3の凝固モジュラスM3の40倍以内)をAと表示している。また、湯口中心3Cから製品1までの湯道長さが長いもの(湯口3の凝固モジュラスM3の40倍超)をBと表示している。
4個の製品Aについては、湯口中心3Cから製品1までの湯道長さが短いので、湯口3、湯道2を通して凝固収縮の補給が可能であるので押湯は用いていない。また、4個の製品Bについては、湯口中心3Cから製品1までの湯道長さが短いので、湯口3、湯道2を通しての凝固収縮の補給が難しいので押湯5を用いている。
このように、手段1乃至5は実施例1乃至8に示した平込め鋳造と同様に本例の縦型鋳造においても適用可能である。製品の形状、込め数、湯道及び湯口の配置などによっては、すべての製品の凝固収縮を湯口3、湯道2を通して補給が可能である場合もある。鋳型内で押湯を用いる、用いないは鋳型の諸条件を考慮して適切に適用する。
なお、実施例1乃至9では、主として鋳型は砂型を用いた例を示したが、金型を用いても同様に手段1乃至5は適用可能である。
図10に手段6を用いた実施例10を示す。本例では、注湯後に湯口カップ上面の溶湯を保温することによって湯口カップ上面の溶湯の凝固を遅延させるために、湯口カップ上面の溶湯に砂を被せた。砂は鋳型と同じ種類のものが混入しても鋳型に影響がないので望ましい。
通常の注湯では、注湯後に湯口カップ上面の溶湯が空気にさらされるために、酸化膜が早期に形成され凝固が進行し易い。このため全体の凝固がある程度進行すると湯口カップ上面の溶湯からの大気圧の作用が効かなくなる。本例はその現象を低減するために砂によって空気遮断をして凝固を遅延させて大気圧を作用させる時間を延ばすものである。以下実施例10乃至15で同様な保温/加熱方法を示すが、いずれも基本的な作用効果は同じである。
図11に手段6を用いた実施例11を示す。本例では、注湯後に湯口カップ上面の溶湯を保温するために、湯口カップ上面の溶湯に樹脂が被覆された鋳型片を被せた。樹脂が被覆された砂を被せても作用効果は同じである。
図12に手段6を用いた実施例12を示す。本例では、注湯後に湯口カップ上面の溶湯を保温するために、湯口カップ上面の溶湯に断熱材を被せた。
図13に手段6を用いた実施例13を示す。本例では、注湯後に湯口カップ上面の溶湯を保温するために、湯口カップ上面の溶湯に耐火材を被せた。
図14に手段6を用いた実施例14を示す。本例では、注湯後に湯口カップ上面の溶湯を保温するために、湯口カップ上面の溶湯に発熱剤を被せて加熱した。
図15に手段6を用いた実施例15を示す。本例では、注湯後に湯口カップ上面の溶湯を保温するために、湯口カップ上面の溶湯を燃料ガスによって加熱した。
図16に手段6を用いた実施例16を示す。本例では、注湯後に湯口カップ上面の溶湯を保温するために、湯口カップ上面の溶湯を、高周波加熱コイルを用いて加熱した。なお、実施例10乃至16は、砂型鋳造及び金型鋳造に適用可能である。
発明の効果
以上説明した通り、本発明は、押湯を用いずあるいは押湯と湯道を用いず、方案系からの溶湯補給によって健全な製品を、高い鋳造歩留りで製造する鋳造方法を提供した。また、より一般的な複数込めの鋳造に対して、これらの基本的な方法と従来技術を併用した方法も提示した。その結果、次のような効果が得られた。
(1)方案系を利用した新規な製品への溶湯補給方法によって、製品の引け巣欠陥を防 止しながら大幅な鋳造歩留りの向上が得られた。
(2)押湯あるいは押湯と湯道が削減されたので方案系が簡素化され、注湯後のバラシ 作業が簡略化された。
本発明の実施例1を示す図である。 本発明の実施例2を示す図である。 本発明の実施例3を示す図である。 本発明の実施例4を示す図である。 本発明の実施例5を示す図である。 本発明の実施例6を示す図である。 本発明の実施例7を示す図である。 本発明の実施例8を示す図である。 本発明の実施例9を示す図である。 本発明の実施例10を示す図である。 本発明の実施例11を示す図である。 本発明の実施例12を示す図である。 本発明の実施例13を示す図である。 本発明の実施例14を示す図である。 本発明の実施例15を示す図である。 本発明の実施例16を示す図である。 従来技術の押湯の一例を示す図である。 従来技術の押湯の別例を示す図である。
1 製品
2 湯道
2A 湯道
2B 湯道
3 湯口
3C 湯口中心
4 湯口カップ
5 押湯
5A 揚り押湯
5B サイド押湯
6 鋳型
7 堰
8 砂
9 樹脂が被覆された砂の鋳型片
10 断熱材
11 耐火材
12 発熱材
13 燃料ガスを用いた加熱
14 高周波加熱コイルを用いた加熱

Claims (6)

  1. 鋳鉄鋳物の砂型鋳造において、押湯を用いず製品、湯道、湯口、湯口カップの方案要素からなる方案系を用い、該方案系の方案要素の凝固モジュラスを順番にM1、M2、M3、M4とするとき、M2、M3、M4のすべてがM1より大きい方案系とすることにより、製品の凝固収縮を湯道、湯口、湯口カップから補給することを特徴とする鋳造方法。
  2. 鋳鉄鋳物の砂型鋳造において、押湯を用いず製品、湯道、湯口、湯口カップの方案要素からなる方案系を用い、該方案系の方案要素の凝固モジュラスを順番にM1、M2、M3、M4とするとき、M2、M3、M4の少なくとも一つがM1より小さく、かつM2、M3、M4のすべてが0.6M1より大きい方案系とすることにより、製品の凝固収縮の一部を湯道、湯口、湯口カップから補給することを特徴とする鋳造方法。
  3. 鋳鉄鋳物の砂型鋳造において、押湯及び湯道を用いず製品、湯口、湯口カップの方案要素からなる方案系を用い、該方案系の方案要素の凝固モジュラスを順番にM1、M3、M4とするとき、M3及びM4がM1より大きい方案系とすることにより、製品の凝固収縮を湯口、湯口カップから補給することを特徴とする鋳造方法。
  4. 鋳鉄鋳物の砂型鋳造において、押湯及び湯道を用いず製品、湯口、湯口カップの方案要素からなる方案系を用い、該方案系の方案要素の凝固モジュラスを順番にM1、M3、M4とするとき、M3、M4の少なくとも一つがM1より小さく、かつM3及びM4が0.6M1より大きい方案系とすることにより、製品の凝固収縮の一部を湯口、湯口カップから補給することを特徴とする鋳造方法。
  5. 請求項1及び2のいずれか一項に記載の鋳造方法を用いて1枠内に複数の製品を鋳造する場合において、湯口中心から製品までの湯道長さが、湯道、湯口、湯口カップの方案要素の凝固モジュラスM2、M3、M4の最小値の40倍以内の位置に配置された製品について該鋳造方法を適用して押湯を用いず、40倍を超える位置に配置された製品については押湯を用いることを特徴とする鋳造方法。
  6. 請求項1乃至5のいずれか一項に記載の鋳造方法において、注湯後に湯口カップ上面の溶湯を保温及び/又は加熱することによって湯口カップ上面の溶湯の凝固を遅延させることを特徴とする鋳造方法。
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